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  • 特許-フィルタ回路及び複合フィルタ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】フィルタ回路及び複合フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20231102BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20231102BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20231102BHJP
   H03H 7/46 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H9/54 Z
H03H9/17 F
H03H7/46 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019138691
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021022850
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】奥出 貴之
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/096799(WO,A1)
【文献】特開2013-168996(JP,A)
【文献】特開2012-049758(JP,A)
【文献】特開2009-207116(JP,A)
【文献】特開2016-136687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列腕に配置された複数の第1共振子と、
並列腕に配置された複数の第2共振子と、
前記直列腕において、前記第1共振子に並列に接続され、かつ前記第1共振子の一端から他端までの経路配置された少なくとも1つの第3共振子と、
を備え
前記第3共振子の反共振周波数は、前記第2共振子の共振周波数以上であり、
前記第3共振子の反共振周波数は、前記第2共振子の共振周波数と前記第2共振子の反共振周波数との和を2で割った値よりも低く、
前記経路配置された少なくとも1つの第3共振子の合成容量は、前記第2共振子の静電容量よりも小さい、
フィルタ回路。
【請求項2】
前記第3共振子の反共振周波数は、前記複数の第2共振子のいずれの反共振周波数よりも低い、
請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項3】
前記直列腕の両端には、入力端子及び出力端子が設けられており、
前記直列腕には、少なくとも3つの前記第1共振子が配置されており、
前記少なくとも3つの第1共振子のうち、前記入力端子の最も近くに配置された第1共振子及び前記出力端子の最も近くに配置された第1共振子の各々に、前記第3共振子が並列に接続されていない、
請求項1又は2に記載のフィルタ回路。
【請求項4】
前記複数の第1共振子のうちの少なくとも2つの各々に、前記第3共振子が並列に接続されている、
請求項1からのいずれか一項に記載のフィルタ回路。
【請求項5】
前記複数の第1共振子の少なくとも1つに、前記経路配置された複数の前記第3共振子が並列に接続されている、
請求項1からのいずれか一項に記載のフィルタ回路。
【請求項6】
前記第1共振子に、互いに並列に接続されている複数の前記第3共振子が前記第1共振子に接続されている、
請求項1からのいずれか一項に記載のフィルタ回路。
【請求項7】
受信フィルタと送信フィルタとを備える複合フィルタ装置であって、
前記受信フィルタ又は前記送信フィルタのうちの少なくとも一方が、請求項1からのいずれか一項に記載のフィルタ回路を含む、
複合フィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ回路及び複合フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話などの無線通信機には、特定の信号をフィルタリングするためのフィルタ回路が用いられている。例えば、特許文献1には、ラダー型のフィルタ回路に関する技術が開示されている。ラダー型のフィルタ回路は、入力端子と出力端子とを接続する直列腕と、一端が直列腕に接続され、もう一端が接地された並列腕と、を有するフィルタ回路である。直列腕及び並列腕には、各種の共振子が配置される。特許文献1では、周波数帯域を有効活用するために、直列腕に配置された第1共振子に第3共振子を並列に接続することで、急峻なカットオフ特性を有するフィルタ回路の実現を意図した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/025055号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のフィルタ回路は、カットオフ特性を急峻にする方法として、第1共振子に接続された第3共振子の共振周波数及び反共振周波数のみに着目した技術である。また、第3共振子の反共振周波数は、フィルタ回路のカットオフ特性に影響を与える。しかしながら、特許文献1に記載のフィルタ回路では、第3共振子の反共振周波数は、並列腕に配置された第2共振子の反共振周波数に固定されている。このため、フィルタ回路の通過帯域におけるカットオフ特性を高める余地があると考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、通過帯域の低周波数側において、カットオフ特性を高めることが可能なフィルタ回路及び複合フィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るフィルタ回路は、直列腕に配置された複数の第1共振子と、並列腕に配置された複数の第2共振子と、直列腕において、第1共振子に並列に接続された、直列に接続された少なくとも1つの第3共振子と、を備え、第3共振子の反共振周波数は、第2共振子の反共振周波数よりも低く、直列に接続された少なくとも1つの第3共振子の合成容量は、第2共振子の静電容量よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通過帯域の低周波数側において、カットオフ特性を高めることが可能なフィルタ回路及び複合フィルタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る送信フィルタ回路を含むデュプレクサの構成例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る送信フィルタ回路の構成を示す図である。
図3】第1~第3共振子のインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
図4】第1実施形態に係る送信フィルタ回路の挿入損失の周波数特性を示すグラフである。
図5】第2実施形態に係る送信フィルタ回路の構成を示す図である。
図6】第3実施形態に係る送信フィルタ回路の構成を示す図である。
図7】第4実施形態に係る送信フィルタ回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<1.第1実施形態>
<<1-1.デュプレクサの構成>>
図1は、本発明の第1実施形態に係るフィルタ回路を含むデュプレクサ10の構成例を示す図である。本実施形態に係るデュプレクサ10は、例えば携帯電話等の移動体通信機に用いられる。
【0011】
図1に示されるように、デュプレクサ10は、例えば、送信フィルタ回路1と、受信フィルタ回路5と、送信入力端子T1と、受信出力端子T2と、共通端子T3と、を備える。共通端子T3は、送信フィルタ回路1の送信出力端子と、受信フィルタ回路5の受信入力端子とを兼ねている。デュプレクサ10は、共通端子T3を経由して、アンテナ20に接続されている。
【0012】
送信フィルタ回路1には、送信回路(不図示)から出力される送信信号が送信入力端子T1を経由して供給される。送信フィルタ回路1は、送信入力端子T1から共通端子T3に所定の周波数帯域の信号を通過させ、その他の周波数帯域の信号を減衰させる機能を有する。送信フィルタ回路1を通過した送信信号は、共通端子T3を経由してアンテナ20から基地局に送信される。
【0013】
受信フィルタ回路5には、アンテナ20により基地局から受信された受信信号が、共通端子T3を経由して供給される。受信フィルタ回路5は、所定の周波数帯域の信号を通過させ、その他の周波数帯域の信号を減衰させる機能を有する。受信フィルタ回路5を通過した受信信号は、受信出力端子T2を経由して受信回路(不図示)に供給される。
【0014】
本実施形態では、本発明に係るフィルタ回路が、送信フィルタ回路1に適用される例について説明する。
【0015】
<<1-2.送信フィルタ回路の構成>>
図2は、第1実施形態に係る送信フィルタ回路1の構成を示す図である。図2に示す送信フィルタ回路1の右側の端部は、送信入力端子T1に接続されている。一方、送信フィルタ回路1の左側の端部は、共通端子T3に接続されている。なお、図5図7を参照して後述する送信フィルタ回路においても、同様にして、右側の端部は送信入力端子T1に、左側の端部は共通端子T3に接続されているものとする。
【0016】
本実施形態に係る送信フィルタ回路1は、複数の共振子が直列及び並列に接続されたラダー型のフィルタ回路である。具体的には、送信フィルタ回路1は、直列腕に配置されたn個の第1共振子a1~anと、並列腕に配置されたn-1個の第2共振子b1~bn-1と、を備える。第2共振子b1~bn-1の各々は、グラウンド端子g1~gn-1のうちの1つに接続されている。例えば、第2共振子b1は、グラウンド端子g1に接続されている。さらに、本実施形態に係る送信フィルタ回路1は、送信入力端子T1から3番目に近くに配置された第1共振子an-2に並列に接続された、第3共振子c1を備えている。
【0017】
これらの第1共振子、第2共振子、及び第3共振子のそれぞれの数は一例であり、これに限定されない。また、第1共振子a1~an、第2共振子b1~bn-1、及び第3共振子c1を構成する素子は特に限定されないが、例えば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタ、圧電薄膜共振子等のフィルタ、又はバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)フィルタ等であってもよい。
【0018】
図3は、第1共振子、第2共振子及び第3共振子のインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。破線で示された第1インピーダンス特性31は、第1共振子a1~anのインピーダンスの周波数特性である。また、実線で示された第2インピーダンス特性32は、第2共振子b1~bn-1のインピーダンスの周波数特性である。さらに、一点鎖線で示された第3インピーダンス特性33は、第3共振子c1のインピーダンスの周波数特性である。
【0019】
本実施形態では、説明を簡単にするために、第1共振子a1~anの各々のインピーダンス特性が同一であるものとして説明するが、第1共振子a1~anの各々のインピーダンス特性は、互いに異なっていてもよい。同様に、第2共振子b1~bn-1の各々のインピーダンス特性が同一であるものとして説明するが、第2共振子b1~bn-1の各々のインピーダンス特性は、互いに異なっていてもよい。
【0020】
より詳細に説明すると、本実施形態では、第1共振子a1~anの共振周波数frs1~frsnがfrsであるものとして説明するが、共振周波数frs1~frsnの各々は互いに異なっていてもよい。また、第1共振子a1~anの反共振周波数fas1~fasnがfasであるものとして説明するが、反共振周波数fas1~fasnの各々は互いに異なっていてもよい。また、第2共振子b1~bn-1の共振周波数frp1~frpn-1がfrpであるものとして説明するが、共振周波数frp1~frpn-1の各々は互いに異なっていてもよい。さらに、第2共振子b1~bn-1の反共振周波数fap1~fapn-1がfapであるものとして説明するが、反共振周波数fap1~fapn-1の各々は互いに異なっていてもよい。
【0021】
第1インピーダンス特性31において、インピーダンスは、共振周波数frsで最小となり、反共振周波数fasで最大となる。また、第2インピーダンス特性32において、インピーダンスは、共振周波数frpで最小となり、反共振周波数fapで最大となる。さらに、第3インピーダンス特性33において、インピーダンスは、第3共振子c1の共振周波数frc1(図示せず)で最小となり、反共振周波数fac1で最大となる。ここで、これらの周波数の関係は、以下の式(1)及び(2)を満たす。
【0022】
frp<fac1<fmp<fap<fas・・・(1)
frc1<frp<frs・・・(2)
【0023】
ここで、fmpは、第2共振子の共振周波数frpと反共振周波数fapとの和を2で割った値である。また、ここでは、第2共振子の反共振周波数fapと第1共振子の共振周波数frsとが一致しているものとする。なお、図3及び式(1)では、第3共振子c1の反共振周波数fac1が第2共振子の反共振周波数fapよりも高い関係となっているが、fac1とfrpとは同じであってもよい。
【0024】
式(1)及び(2)の関係は、第1共振子a1~anのインピーダンス特性の各々が互いに異なり、さらに、第2共振子b1~bn-1のインピーダンス特性の各々が異なっている場合にも適用することができる。具体的には、第2共振子b1~bn-1の共振周波数と反共振周波数との和を2で割った値をfmp1~fmpn-1、とすると、これらの第1共振子a1~an、第2共振子b1~bn-1、及び第3共振子c1における共振周波数、反共振周波数、及び共振周波数と反共振周波数との和を2で割った値は下記の関係式(3)を満たす。
【0025】
(frp1~frpn-1)≦fac1<(fmp1~fmpn-1)<(fap1~fapn-1)
・・・(3)
【0026】
式(3)より、第3共振子c1の反共振周波数fac1は、第2共振子b1~bn-1の共振周波数frp1~frpn-1の中で最も高い共振周波数以上である。また、反共振周波数fac1は、第2共振子b1~bn-1のいずれの反共振周波数fap1~fapn-1よりも低い。さらに、反共振周波数fac1は、第2共振子b1~bn-1の共振周波数と反共振周波数との和を2で割ったfmp1~fmpn-1のいずれよりも低い。
【0027】
また、本実施形態では、上記の周波数は下記の式(4)の条件も満たしている。
【0028】
frc1<(frp1~frpn-1)<(frs1~frsn)・・・(4)
【0029】
すなわち、第3共振子c1の共振周波数frc1は、第2共振子b1~bn-1のいずれの共振周波数frp1~frpn-1よりも低い。さらに、第2共振子b1~bn-1のいずれの共振周波数frp1~frpn-1も、第1共振子a1~anのいずれの共振周波数frs1~frsnよりも低い。
【0030】
また、第1共振子、第2共振子、及び第3共振子は、櫛形電極を含んでいる。以下、櫛形電極を含むこれらの共振子の静電容量(すなわち、各共振子の静電容量)をIDT(Inter Digital Transducer)容量と称する。第2共振子b1~bn-1の各々のIDT容量をそれぞれCb1~Cbn-1、第3共振子c1のIDT容量(すなわち、第3共振子c1の合成容量)をCc1とすると、本実施形態では、下記の式(5)が満たされている。
【0031】
Cc1<(Cb1~Cbn-1)・・・(5)
【0032】
すなわち、第3共振子c1のIDT容量Cc1は、第2共振子b1~bn-1のいずれのIDT容量Cb1~Cbn-1よりも低い。このため、第3共振子c1のQ値は、第2共振子b1~bn-1のいずれのQ値よりも高くすることができる。
【0033】
<<1-3.送信フィルタ回路の挿入損失>>
図4は、図2に示した送信フィルタ回路1の挿入損失の周波数特性である第2損失特性35を示すグラフである。比較のために、図4には、第3共振子c1を備えていない送信フィルタ回路の挿入損失の周波数特性である、第1損失特性34が破線で示されている。なお、第1損失特性34と第2損失特性35とは、frp以下の周波数及びfac1以上の周波数において、略一致しているものとする。
【0034】
第1損失特性34及び第2損失特性35は、第2共振子の共振周波数frp及び第1共振子の反共振周波数fasに極を有している。つまり、第1損失特性34及び第2損失特性35において、低周波数側のカットオフ特性は第2共振子b1~bn-1の共振周波数frp1~frpn-1により実現されており、高周波数側のカットオフ特性は第1共振子a1~anの反共振周波数fas1~fasnにより実現されている。
【0035】
上述したように、本実施形態に係る送信フィルタ回路1は、反共振周波数fac1を有する第3共振子c1を備えている。第3共振子c1の反共振周波数fac1は、第2共振子b1~bn-1のいずれの反共振周波数fap1~fapn-1よりも低い。さらに、第3共振子c1のIDT容量Cc1は、第2共振子b1~bn-1のいずれのIDT容量Cb1~Cbn-1よりも低い。このため、第3共振子c1のQ値は、第2共振子b1~bn-1のいずれのQ値よりも高くすることができる。このため、通過帯域の低周波数側において、送信フィルタ回路1におけるカットオフ特性が高められる。具体的には、第2損失特性35では、第2共振子b1~bn-1の反共振周波数fapよりも低い周波数、より具体的には共振周波数frpから反共振周波数fac1の周波数において、第1損失特性34のカットオフ特性よりも急峻なカットオフ特性が実現されている。
【0036】
また、本実施形態では、第3共振子c1の反共振周波数fac1は、第2共振子の共振周波数frp以上である。このため、送信フィルタ回路1の第2損失特性35の共振周波数frp以上の周波数において、より確実にカットオフ特性を高めることができる。その理由について説明する。第3共振子c1の反共振によりインピーダンスが高くなると、インピーダンスが高い周波数となる信号ではインピーダンス整合がとれない。このため、当該信号は、反射されて通過できない。この結果、より確実にカットオフ特性を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態では、第3共振子c1の反共振周波数fac1は、第2共振子b1~bn-1の共振周波数と反共振周波数との和を2で割った値fmp1~fmpn-1よりも低い。このため、送信フィルタ回路1の第2損失特性35の低周波数側において、より確実に、カットオフ特性を高めることができる。
【0038】
また、本実施形態では、直列腕に配置された少なくとも3つの第1共振子a1~anのうち、送信入力端子T1の最も近くに配置された第1共振子an及び送信出力端子の最も近くに配置された第1共振子a1の各々に、第3共振子が並列に接続されていない。一般的に、端子に近いほど、過渡的に高い電圧がかかりやすい。このため、送信入力端子T1の最も近くに配置された第1共振子an及び送信出力端子の最も近くに配置された第1共振子a1の各々に、第3共振子が並列に接続されていないことで、第3共振子に過渡的に高い電圧がかかることが抑止される。この結果、送信フィルタ回路1の耐電圧を高めることができる。
【0039】
<2.第2実施形態>
第2実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0040】
図5は、本発明の第2実施形態に係る送信フィルタ回路2の構成を示す図である。第2実施形態に係る送信フィルタ回路2では、第1実施形態に係る送信フィルタ回路1の構成に加えて、送信入力端子T1から2番目に近くに配置された第1共振子an-1に、第3共振子c2が並列に接続されている。これにより、1つの第3共振子が第1共振子に接続されている場合よりも、送信フィルタ回路2の低周波数側におけるカットオフ特性を高めることができる。
【0041】
ここで、2つの第3共振子c1及びc2のいずれの反共振周波数fac1及びfac2も、第2共振子b1~bn-1のいずれの反共振周波数fap1~fapn-1よりも低い。さらに、2つの第3共振子c1及びc2のいずれのIDT容量Cc1及びCc2も、第2共振子b1~bn-1のいずれのIDT容量Cb1~Cbn-1よりも小さい。これにより、送信フィルタ回路2の挿入損失の低周波数側において、カットオフ特性を高めることができる。
【0042】
また、2つの第3共振子c1及びc2の反共振周波数fac1及びfac2は、互いに異なっていてもよい。これらの反共振周波数fac1及びfac2が互いに異なるように適切に設計することで、挿入損失の周波数特性において、より広い周波数の範囲で、低周波数側のカットオフ特性を高めることができる。
【0043】
また、2つの第3共振子c1及びc2のいずれの反共振周波数fac1及びfac2も、第2共振子b1~bn-1の共振周波数frp1~frpn-1の最も高い共振周波数以上であってもよい。これにより、送信フィルタ回路2の挿入損失の低周波数側において、より確実に、カットオフ特性を高めることができる。
【0044】
上記第2実施形態では、2つの第3共振子c1及びc2が接続されている送信フィルタ回路2について説明したが、送信フィルタ回路に接続される第3共振子の数は、2つに限られず、3つ以上であってもよい。このとき、3つ以上の第3共振子の各々の反共振周波数が互いに異なることで、送信フィルタ回路1の挿入損失において、さらに広い周波数範囲で、低周波数側のカットオフ特性を高めることができる。
【0045】
なお、接続される第3共振子の数を増やすことで、より広い周波数範囲で、送信フィルタ回路2の低周波数側におけるカットオフ特性を高めることができるが、接続される第3共振子の数が増えるとともに、挿入損失が大きくなる。このため、挿入損失の大きさと、カットオフ特性とのバランスを考慮して、第3共振子の数は適宜設計されてもよい。
【0046】
<3.第3実施形態>
第3実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0047】
図6は、本発明の第3実施形態に係る送信フィルタ回路3を示す図である。第3実施形態に係る送信フィルタ回路3では、送信入力端子T1から3番目に近くに配置された第1共振子an-2に、互いに並列に接続されている2つの第3共振子c3及びc4が接続されている。ここで、2つの第3共振子c3及びc4のいずれの反共振周波数fac3及びfac4も、第2共振子b1~bn-1のいずれの反共振周波数fap1~fapn-1よりも低い。さらに、2つの第3共振子c3及びc4のIDT容量Cc3とCc4の合成容量が、第2共振子b1~bn-1のいずれのIDT容量Cb1~Cbn-1よりも小さい。これにより、送信フィルタ回路3の挿入損失の低周波数側におけるカットオフ特性を高めることができる。
【0048】
また、2つの第3共振子c3及びc4の反共振周波数fac3及びfac4は、互いに異なっていてもよい。反共振周波数fac3及びfac4が互いに異なることで、挿入損失の周波数特性において、より広い周波数範囲で、低周波数側のカットオフ特性を高めることができる。
【0049】
また、2つの第3共振子c3及びc4のいずれの反共振周波数fac3及びfac4も、第2共振子b1~bn-1の共振周波数frp1~frpn-1の最も高い共振周波数以上であってもよい。これにより、送信フィルタ回路2の挿入損失の低周波数側において、より確実に、カットオフ特性を高めることができる。
【0050】
第3実施形態に係る送信フィルタ回路3では、送信入力端子T1から3番目に近くに配置された第1共振子an-1に、第3共振子c3及びc4が接続されている。これに限らず、互いに並列に接続された複数の第3共振子は、第1共振子a1~anのいずれに接続されていてもよい。
【0051】
第3実施形態に係る送信フィルタ回路3では、第1共振子an-2に、互いに並列に接続された2つの第3共振子c3及びc4が接続されている。これに限らず、第1共振子に、互いに並列に接続された3つ以上の第3共振子が並列に接続されていてもよい。さらに、複数の第1共振子の各々に、互いに並列に接続された2つ以上の第3共振子が、並列に接続されていてもよい。この場合、これらの第3共振子のうちの少なくとも2つ以上の反共振周波数が互いに異なっていてもよい。これにより、挿入損失の周波数特性において、より広い周波数範囲で、低周波数側のカットオフ特性を高めることができる。
【0052】
<4.第4実施形態>
第4実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0053】
図7は、第4実施形態に係る送信フィルタ回路4の構成を示す図である。第4実施形態に係る送信フィルタ回路4では、送信入力端子T1から3番目に近くに配置された第1共振子an-2に、直列に接続された2つの第3共振子c5及びc6が、並列に接続されている。
【0054】
2つの第3共振子c5及びc6のいずれの反共振周波数fac5及びfac6も、第2共振子b1~bn-1の反共振周波数fap1~fapn-1のいずれよりも低い。さらに、これらの第3共振子c5及びc6のIDT容量Cc5及びCc6の合成容量は、第2共振子b1~bn-1のIDT容量Cb1~Cbn-1のいずれよりも小さい。これにより、送信フィルタ回路3の挿入損失の低周波数側におけるカットオフ特性を高めることができる。
【0055】
また、2つの第3共振子c5及びc6のいずれの反共振周波数fac5及びfac6も、第2共振子b1~bn-1の共振周波数frp1~frpn-1の最も高い共振周波数以上であってもよい。これにより、送信フィルタ回路2の挿入損失の低周波数側において、より確実に、カットオフ特性を高めることができる。
【0056】
また、2つの第3共振子c5及びc6の反共振周波数fac5及びfac6は、互いに異なっていてもよい。反共振周波数fac5及びfac6が互いに異なることで、送信フィルタ回路2の挿入損失の低周波数側において、より広い周波数範囲で、カットオフ特性を高めることができる。
【0057】
第4実施形態に係る送信フィルタ回路4では、1つの第1共振子an-2に、直列に接続された2つの第3共振子c5及びc6が接続されている。これに限らず、第1共振子には、直列に接続された3つ以上の第3共振子が並列に接続されていてもよい。これにより、挿入損失の周波数特性において、より広い周波数範囲で、低周波数側のカットオフ特性を高めることができる。
【0058】
また、第3実施形態に係る送信フィルタ回路4では、送信入力端子T1から3番目の第1共振子an-1に第3共振子c5及びc6が接続されているが、直列に接続された複数の第3共振子は、第1共振子a1~anのいずれに接続されていてもよい。さらに、複数の第1共振子に、直列に接続された複数の第3共振子が並列に接続されていてもよい。
【0059】
<5.補足>
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0060】
上記実施形態では、主に、第3共振子の反共振周波数が、複数の第2共振子b1~bn-1のいずれの反共振周波数fap1~fapn-1よりも低い場合について説明した。これに限らず、第3共振子の反共振周波数は、複数の第2共振子b1~bn-1の反共振周波数fap1~fapn-1の少なくとも1つの反共振周波数以上であってもよい。この場合、当該第3共振子の反共振周波数は、複数の第2共振子b1~bn-1の反共振周波数fap1~fapn-1の少なくとも1つよりも低い。
【0061】
また、上記実施形態では、本発明に係るフィルタ回路が、デュプレクサが備える送信フィルタに適用される例について説明した。これに限らず、本発明に係るフィルタ回路は、デュプレクサが備える受信フィルタに適用されてもよいし、送信フィルタ及び受信フィルタの両フィルタに適用されてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、本発明に係るフィルタ回路がデュプレクサに適用される例について説明した。これに限らず、本発明に係るフィルタ回路は、複数のフィルタ回路を備える、各種の複合フィルタ装置に適用することができる。複合フィルタ装置は、例えば、2つのフィルタ回路を複合した上述のデュプレクサ、3つのフィルタ回路を複合したトライプレクサ、4つのフィルタ回路を複合したクアッドプレクサ、又は8つのフィルタ回路を複合したオクタプレクサなどを含んでもよい。この場合、複合フィルタ装置が備えるフィルタ回路のうちの少なくとも1つが、本発明に係るフィルタ回路を含む。
【0063】
上述した複合フィルタ装置が備える各構成要素は、同じチップにモジュールとして形成されていてもよく、あるいは別々のチップに形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1~4…送信フィルタ回路、5…受信フィルタ回路、10…デュプレクサ、20…アンテナ、31…第1インピーダンス特性、32…第2インピーダンス特性、33…第3インピーダンス特性、34…第1損失特性、35…第2損失特性、a1~an…第1共振子、b1~bn-1…第2共振子、c1~c6…第3共振子、frs…第1共振子の共振周波数、fas…第1共振子の反共振周波数、frp…第2共振子の共振周波数、fap…第2共振子の反共振周波数、fac…第3共振子の反共振周波数、T1…送信入力端子、T2…受信出力端子、T3…共通端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7