(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】金属塩の分離方法
(51)【国際特許分類】
B01D 9/02 20060101AFI20231102BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20231102BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20231102BHJP
C22B 26/20 20060101ALI20231102BHJP
C22B 26/22 20060101ALI20231102BHJP
C01G 51/00 20060101ALI20231102BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20231102BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20231102BHJP
C01F 5/00 20060101ALI20231102BHJP
C01F 11/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B01D9/02 602E
C22B3/44 101Z
C22B23/00 102
C22B26/20
C22B26/22
B01D9/02 601B
B01D9/02 608B
B01D9/02 625E
C01G51/00 Z
C01G53/00 B
C01G49/00 K
C01F5/00
C01F11/00
(21)【出願番号】P 2019158908
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-089708(JP,A)
【文献】特開2013-151383(JP,A)
【文献】特開平05-254846(JP,A)
【文献】特開平08-157219(JP,A)
【文献】六川暢了,アルコールによるアンモニア性アルカリ溶液からのコバルトの濃縮および析出,資源と素材,1994年,110巻、7号,567-570頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 9/00-9/04
C22B 1/00-61/00
C01G 25/00-47/00;49/10-99/00
C01G 49/00-49/08
C01F 1/00-17/38
H01M 4/13-4/1399
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩を含む水溶液から、金属塩を分離する方法であって、
前記金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、
アルコールを添加する工程、
Mg、Fe、La、Pr、Srの金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩を晶析させる工程を備
え、
前記硫酸アンモニウムを添加する工程および前記アルコールを添加する工程において、前記硫酸アンモニウムを添加した後に前記アルコールを添加してもよいし、前記アルコールを添加した後に前記硫酸アンモニウムを添加してもよいし、または、前記硫酸アンモニウムと前記アルコールとを同時に添加してもよい、
金属塩の分離方法。
【請求項2】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノールから選ばれる、一種又は二種以上の混合物である、請求項1に記載の金属塩の分離方法。
【請求項3】
前記硫酸アンモニウムの濃度を2mol/L未満とする、請求項1または2に記載の金属塩の分離方法。
【請求項4】
複数種類の金属塩を含む水溶液から、該複数種類の金属塩中の少なくとも一つの金属塩を分離する方法であって、
前記複数種類の金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、
アルコールを添加する工程、
前記少なくとも一つの金属塩が
Mg、Fe、La、Pr、Srの金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩であり、これを晶析させる工程を備
え、
前記硫酸アンモニウムを添加する工程および前記アルコールを添加する工程において、前記硫酸アンモニウムを添加した後に前記アルコールを添加してもよいし、前記アルコールを添加した後に前記硫酸アンモニウムを添加してもよいし、または、前記硫酸アンモニウムと前記アルコールとを同時に添加してもよい、
金属塩の分離方法。
【請求項5】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノールから選ばれる、一種又は二種以上の混合物である、請求項4に記載の金属塩の分離方法。
【請求項6】
前記硫酸アンモニウムの濃度を3mol/L以下とする、請求項4または5に記載の金属塩の分離方法。
【請求項7】
複数種類の金属塩を含む水溶液から、該複数種類の金属塩中の少なくとも一つの金属塩を分離する方法であって、
前記複数種類の金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、
アルコールを添加する工程、
前記少なくとも一つの金属塩を晶析させる工程を備え、
前記複数種類の金属塩がコバルトの塩、および、ニッケルの塩であって、晶析させる少
なくとも一つの金属塩がニッケルの塩であ
り、
前記硫酸アンモニウムを添加する工程および前記アルコールを添加する工程において、前記硫酸アンモニウムを添加した後に前記アルコールを添加してもよいし、前記アルコールを添加した後に前記硫酸アンモニウムを添加してもよいし、または、前記硫酸アンモニウムと前記アルコールとを同時に添加してもよい、
金属塩の分離方法。
【請求項8】
複数種類の金属塩を含む水溶液から、該複数種類の金属塩中の少なくとも一つの金属塩を分離する方法であって、
前記複数種類の金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、
アルコールを添加する工程、
前記少なくとも一つの金属塩を晶析させる工程を備え、
前記複数種類の金属塩がコバルトの塩、および、リチウムの塩であって、晶析させる少
なくとも一つの金属塩がコバルトの塩であ
り、
前記硫酸アンモニウムを添加する工程および前記アルコールを添加する工程において、前記硫酸アンモニウムを添加した後に前記アルコールを添加してもよいし、前記アルコールを添加した後に前記硫酸アンモニウムを添加してもよいし、または、前記硫酸アンモニウムと前記アルコールとを同時に添加してもよい、
金属塩の分離方法。
【請求項9】
複数種類の金属塩を含む水溶液から、該複数種類の金属塩中の少なくとも一つの金属塩を分離する方法であって、
前記複数種類の金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、
アルコールを添加する工程、
前記少なくとも一つの金属塩を晶析させる工程を備え、
前記複数種類の金属塩が鉄の塩、マグネシウムの塩、ニッケルの塩、および、バナジウムの塩であって、晶析させる少なくとも一つの金属塩が鉄の塩、マグネシウムの塩、および、ニッケルの塩であ
り、
前記硫酸アンモニウムを添加する工程および前記アルコールを添加する工程において、前記硫酸アンモニウムを添加した後に前記アルコールを添加してもよいし、前記アルコールを添加した後に前記硫酸アンモニウムを添加してもよいし、または、前記硫酸アンモニウムと前記アルコールとを同時に添加してもよい、
金属塩の分離方法。
【請求項10】
複数種類の金属塩を含む水溶液から、該複数種類の金属塩中の少なくとも一つの金属塩
を分離する方法であって、
前記複数種類の金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、
前記少なくとも一つの第一の金属塩を晶析させる工程、
アルコールを添加する工程、
前記少なくとも一つの第二の金属塩を晶析させる工程を備
え、
前記複数種類の金属塩がストロンチウムの塩、コバルトの塩、および、セシウムの塩であって、晶析させる少なくとも一つの第一の金属塩がストロンチウムの塩であり、晶析させる少なくとも一つの第二の金属塩がコバルトの塩である、
金属塩の分離方法。
【請求項11】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノールから選ばれる、一種又は二
種以上の混合物である、請求項10に記載の金属塩の分離方法。
【請求項12】
前記硫酸アンモニウムの濃度を3mol/L以下とする、請求項10または11に記載
の金属塩の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属塩を含む水溶液から金属塩を分離する方法、および、複数種類の金属塩を含む水溶液から特定の金属塩を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属含有資源あるいは金属含有製品は通常多くの金属種の混合物として存在する。一般に、純粋な物質を得るためには様々な手法を組み合わせて分離を行う必要があるが、通常、多くの複雑な工程を経て行われている。したがって、分離工程の負荷の軽減を図るためには、簡便な手法で粗分離、さらには精製を行うことが重要となる。簡便な手法で粗分離、さらには精製をも行うことができる手法として、晶析が挙げられる。
【0003】
従来,晶析は反応晶析、物理晶析などに分類される手法で行われている。
反応晶析は対象となる金属種に対し化学反応を行い、溶媒に難溶解性を示す物質に変化させて結晶を得る手法であるが、液相に再溶解する場合、酸、アルカリなどが必要になること、得られる結晶は先に溶解している塩の形態とは異なる化合物となるデメリットがある。
【0004】
一方、物理晶析は、塩を含む溶媒(溶液)の温度を低下させる、あるいは溶液を加熱して気相に溶媒を移動させ、過飽和に相当する結晶を得る手法であるが、得られる結晶の形態は溶解している塩と同じというメリットがあるものの、晶析操作の際には冷却、加熱等のエネルギーの出入りが必要となり、常温常圧下では操作を行うことは難しい。
【0005】
この他、アミノ酸や医薬品などの結晶を得る場合、塩を含む水溶液に対してエタノール、プロパノールなどを添加して晶析を行う貧溶媒添加法(特許文献1)があるが、これらは基本、対象となる溶質がアルコールに溶けにくい性質を利用した水-アルコール系での晶析であり、金属塩の様にアルコール類にも溶解するような系ではこの手法を使うことは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、簡便な分離・精製手法である晶析を用いて、金属塩を含む水溶液から金属塩を分離・精製することはこれまで実現できていなかった。
そこで、本願は、金属塩を含む水溶液から、晶析により金属塩を分離・精製する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の知見を得た。
・本発明者は、多種類の金属イオンが存在する溶液に硫酸アンモニウムを加え、金属塩を晶析させる手法を提案している(特願2019-020046)。この手法によると、バナジウム、マグネシウム、鉄、ニッケル等が含まれる溶液に硫酸アンモニウムを添加すると、バナジウム以外の金属が晶析し、液相にバナジウムが残存すると共に固相に他の金属塩が析出し、結果バナジウムと他の金属塩とで分離される。しかし、この手法では、バナジウムの純度を上げるためには多量の硫酸アンモニウムの添加を必要とすることから、分離後の溶液から硫酸アンモニウムを回収するプロセスの構築が必須である。したがって、硫酸アンモニウムの使用量を少なくした状態で金属塩の分離ができればより低コストで分離プロセスの構築が可能になると考えられる。
【0009】
・本発明者は、硫酸アンモニウム-金属塩水溶液系にあらたにアルコールを添加することで、従来の硫酸アンモニウム使用量を低減しつつ、液相から固相に金属塩の固体(水に再可溶可)を得ることができ、さらに液相に存在する金属種によってその晶析挙動が異なることを見出した。
・この手法は、見方を変えると金属塩水溶液に硫酸アンモニウムとアルコールとを添加することで、常温、常圧下で、水に再可溶が可能な金属塩を晶析させる新しい技術とも言える。
【0010】
以上の知見のもと、本発明者は、以下の発明を完成させた。
第1の本発明は、金属塩を含む水溶液から、金属塩を分離する方法であって、前記金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、アルコールを添加する工程、金属塩を晶析させる工程を備える、金属塩の分離方法である。
【0011】
第1の本発明において、前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノールから選ばれる、一種又は二種以上の混合物であることが好ましい。
【0012】
第1の本発明において、前記硫酸アンモニウムの濃度を2mol/L未満とすることが好ましい。
【0013】
第2の本発明は、複数種類の金属塩を含む水溶液から、該複数種類の金属塩中の少なくとも一つの金属塩を分離する方法であって、前記複数種類の金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、アルコールを添加する工程、前記少なくとも一つの金属塩を晶析させる工程を備える、金属塩の分離方法である。
【0014】
第2の本発明において、前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノールから選ばれる、一種又は二種以上の混合物であることが好ましい。
【0015】
第2の本発明において、前記硫酸アンモニウムの濃度を3mol/L以下とすることが好ましい。
【0016】
第2の本発明において、前記複数種類の金属塩がコバルトの塩、および、ニッケルの塩であって、晶析させる少なくとも一つの金属塩がニッケルの塩であることが好ましい。
【0017】
第2の本発明において、前記複数種類の金属塩がコバルトの塩、および、リチウムの塩であって、晶析させる少なくとも一つの金属塩がコバルトの塩であることが好ましい。
【0018】
第2の本発明において、前記複数種類の金属塩が鉄の塩、マグネシウムの塩、ニッケルの塩、および、バナジウムの塩であって、晶析させる少なくとも一つの金属塩が鉄の塩、マグネシウムの塩、および、ニッケルの塩であることが好ましい。
【0019】
第3の本発明は、複数種類の金属塩を含む水溶液から、該複数種類の金属塩中の少なくとも一つの金属塩を分離する方法であって、前記複数種類の金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、前記少なくとも一つの第一の金属塩を晶析させる工程、
アルコールを添加する工程、前記少なくとも一つの第二の金属塩を晶析させる工程を備える、金属塩の分離方法である。
【0020】
第3の本発明において、前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノールから選ばれる、一種又は二種以上の混合物であることが好ましい。
【0021】
第3の本発明において、前記硫酸アンモニウムの濃度を3mol/L以下とすることが好ましい。
【0022】
第3の本発明において、前記複数種類の金属塩がストロンチウムの塩、コバルトの塩、および、セシウムの塩であって、晶析させる少なくとも一つの第一の金属塩がストロンチウムの塩であり、晶析させる少なくとも一つの第二の金属塩がコバルトの塩であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本願の金属塩の分離方法によれば、金属塩を含む水溶液から、簡便な分離・精製手法である晶析により金属塩を分離・精製することができる。
また、本願の金属塩の分離方法は、常温常圧下で操作が可能であり、得られる結晶は分離対象の水溶液中に存在する塩の形態として固相または液相に回収が可能であり、固相として得られた結晶は水に再可溶な塩である。また、添加する溶媒の一例であるメタノールは、結晶ろ過後のろ液を減圧蒸留することで簡単に回収が可能である。さらに、金属塩回収後のろ液のアルコール濃度を高くすることで、硫酸アンモニウムの晶析を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本願の金属塩の分離方法の実施形態の一例を示すフロー図である。
【
図2】(a)はLiの硫安晶析の結果を示す図であり、(b)はLiのメタノール晶析の結果を示す図であり、(c)はLiに対する本願方法の結果を示す図である。
【
図3】(a)はVの硫安晶析の結果を示す図であり、(b)はVのメタノール晶析の結果を示す図であり、(c)はVに対する本願方法の結果を示す図である。
【
図4】(a)はCoの硫安晶析の結果を示す図であり、(b)はCoのメタノール晶析の結果を示す図であり、(c)はCoに対する本願方法の結果を示す図である。
【
図5】(a)はNiの硫安晶析の結果を示す図であり、(b)はNiのメタノール晶析の結果を示す図であり、(c)はNiに対する本願方法の結果を示す図である。
【
図6】Niに対して硫酸ナトリウム存在下でメタノールストリップを行った結果である。
【
図7】Mgに対する本願方法の結果を示す図である。
【
図8】Feに対する本願方法の結果を示す図である。
【
図9】Laに対するメタノール晶析を行った結果、および、本願方法の結果を示す図である。
【
図10】Prに対するメタノール晶析を行った結果、および、本願方法の結果を示す図である。
【
図11】Co、Ni混合系に対する本願方法の結果を示す図である。
【
図12】Li、Co混合系に対する本願方法の結果を示す図である。
【
図13】V、Fe、Mg、Ni混合系に対する本願方法の結果を示す図である。
【
図14】Sr、Co、Cs混合系に対する本願方法の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<金属塩の分離方法>
本発明の金属塩の分離方法は、金属塩を含む水溶液から、金属塩を分離する方法であって、前記金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する工程、アルコールを添加する工程、金属塩を晶析させる工程を備える。
【0026】
(金属塩を含む水溶液)
金属塩を含む水溶液は、分離対象である金属塩が溶解している水溶液であれば、特に限定されず、金属塩を水に溶解させて調製した溶液であってもよいし、金属および/または金属塩を含む固体を硫酸、塩酸等の酸で浸出した酸浸出液であってもよい。また、含有している金属塩は単数でも複数でもよい。複数の金属塩を含有している場合は、それぞれの金属塩の晶析のし易さの違いを利用して、一部の金属塩を選択的に分離することが可能である。
【0027】
水溶液に含まれる晶析対象の金属種としては、一般的なベースメタルである鉄、マグネシウム、銅等の他、レアメタルであるニッケル、コバルト、バナジウム、セシウム、ストロンチウムなど、さらにはプラセオジム、ランタンなどの希土類金属類などが挙げられる。
【0028】
水溶液中の金属塩の濃度は、特に限定されないが、通常、0.001mol/L~1mol/Lの範囲の金属塩濃度の水溶液が使用される。金属塩の濃度が低すぎる場合は、金属塩の晶析がしづらくなる場合があり、逆に、金属塩の濃度が高すぎる場合は、精製が不十分となる場合がある。
【0029】
(硫酸アンモニウムを添加する工程)
本願の金属塩の分離方法では、まず、金属塩を含む水溶液に、硫酸アンモニウムを添加する。本願の方法においては、得られる溶液の硫酸アンモニウム濃度は、下限が好ましくは0.01mol/L以上、より好ましくは0.05mol/L以上、さらに好ましくは0.1mol/L以上であり、上限が好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2mol/L以下、さらに好ましくは2mol/L未満、さらに好ましくは1mol/L以下、さらに好ましくは0.5mol/L以下である。
【0030】
(アルコールを添加する工程)
上記工程で得られた溶液に、アルコールを添加する。使用できるアルコールとしては、水に対して貧溶媒性を示し誘電率が水よりも低い値を示すメタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられ、これらは二種以上を混合しても使用してもよい。中でも、安価で回収し易いメタノールが好ましい。
アルコールの添加量は、添加後の溶液のアルコール濃度が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上となるようにする。
【0031】
上記のように、硫酸アンモニウムを添加した後にアルコールを添加してもよいし、工程を逆にして、アルコールを添加した後に、硫酸アンモニウムを添加してもよいし、または、硫酸アンモニウムとアルコールとを同時に添加してもよい。なお、硫酸アンモニウムを後に添加する場合は、アルコールを除いた溶液を基準として上記の濃度となるように添加すればよい。
【0032】
(金属塩を晶析させる工程)
上記の工程により、硫酸アンモニウムおよび/またはアルコールを添加した後に、必要により、溶液を、振とう、撹拌により溶液を混合することが好ましい。混合時間は、特に限定されず、硫酸アンモニウムが溶解すればよく、例えば、10秒~10分程度とすることができる。
【0033】
その後、溶液を静置することにより、金属塩が晶析する。静置する時間は、金属塩が晶析するのに十分な時間でればよく、例えば、10分~3時間程度とすることができる。
【0034】
金属塩が晶析した後、ろ過により固液分離を行い、固相として晶析した金属塩を得ることでき、また、液相として晶析しなかった金属塩を含む溶液を得ることができる。晶析した金属塩は、元の溶液と同様のアルコール濃度および硫酸アンモニウム濃度を有する水溶液で洗浄してもよい。
晶析しなかった金属塩を含む液相に対しては、異なる条件(硫酸アンモニウム添加量および/またはアルコール添加量を変えて)にて、繰り返して本願の方法を行うことにより、特定の金属塩を分離する操作を繰り返してもよい。
例えば、最初に、硫酸アンモニウムを添加した後に、第一の金属塩を晶析させて、その後、さらに、アルコールを添加した後に、第二の金属塩を晶析させてもよい。
以上の操作は、通常、常温・常圧で行うが、必要に応じて温度、圧力を変えて行ってもよい。
【0035】
<複数の金属塩から特定の金属塩の選択的分離方法>
(固相として分離可能な金属塩)
上記した本願の金属塩の分離方法によって、晶析させて固相として分離することが可能な金属塩としては、Co、Ni、Mg、Fe、La、Pr、Srの金属塩を挙げることができる。また、これら固相として分離可能な金属塩の中でも、それぞれの晶析のし易さは異なっているので、その違いを利用して、これら金属塩間での選択的分離も可能である。
【0036】
例えば、所定の条件下においては、Ni金属塩は、Co金属塩に比べて、晶析がし易く、Co金属塩と、Ni金属塩をそれぞれ、0.01~1mol/L含む水溶液において、硫酸アンモニウム濃度を好ましくは0.05~1mol/L、より好ましくは0.1~0.5mol/Lとし、メタノール濃度を好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上とする。メタノール濃度の上限は特に限定されないが、効果が飽和する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0037】
なお、「固相として晶析可能」とは、分離前の溶液中の分離対象である金属塩を100質量%として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは99質量%以上を固相として晶析可能であることを意味する。
【0038】
(液相として分離可能な金属塩)
また、本願の金属塩の分離方法によって、液相として分離することが可能な金属塩としては、Li、V、Csの金属塩を挙げることができる。Liの金属塩は、本願の分離方法においては実施的に晶析されない。ここで、「液相として分離可能」とは、分離前の水溶液に含まれる金属塩のうち、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上が液相に残存するという意味である。
【0039】
例えば、Li金属塩を0.01~1mol/L含む水溶液において、硫酸アンモニウム濃度を好ましくは0.01~5mol/L、メタノール濃度を好ましくは5~90質量%として、本願の分離方法を実施したとしても、Liの金属塩は晶析されない。このため、上記した固相として分離可能な金属塩との分離が可能となる。
【0040】
Vの金属塩については、所定のアルコール濃度において、液相として分離することが可能となる。アルコール濃度は、50質量%未満が好ましい。また、硫酸アンモニウムの濃度は特に限定されず、幅広い濃度において、Vの金属塩を液相として分離可能である。例えば、0.01~5mol/Lとすることが可能である。
【0041】
また、固相として、Fe、Mg、Niなどのベースメタルを分離する場合は、これらの固相として晶析させるべく、硫酸アンモニウムの濃度を、好ましくは1~3mol/L、より好ましくは1.5~2.5mol/Lとする。
【0042】
また、例えば、塩化ストロンチウム、硝酸コバルト、塩化セシウムをそれぞれ0.01~1mmol/L含む水溶液に対して、硫酸アンモニウムを0.5~2mol/Lとなるように添加することで、ストロンチウムを固相として晶析することができる。
さらには、アルコールを好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~25質量%となるように添加することで、コバルトを固相として晶析することができ、セシウムを液相として分離することができる。
【0043】
図1に、本願の分離方法の実施形態の一例を示す。所定濃度の硫酸アンモニウムならびにメタノールを含む金属塩の水溶液の調製を行った後、数分にわたり撹拌、振とうを行いその後静置し、固相として金属塩を晶析させる。その後、ろ過により固液分離を行い、固相として晶析した金属塩を、液相として晶析しなかった金属塩を含む溶液を得る。
【実施例】
【0044】
<比較例1(Liに対する硫安晶析およびメタノール晶析)>
図2(a)に硝酸リチウム水溶液に対して硫酸アンモニウム(硫安)を添加した場合、(b)にメタノールのみを添加した場合における、液相中リチウムの残存率fと液相中のリチウムの重量W
Liを示す。
図2(a)、(b)より、硝酸リチウム水溶液においては、硫酸アンモニウム、メタノール共に結晶の生成は確認できなかった。
【0045】
<実施例1(Liに対する硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
図2(c)に、硫酸アンモニウム0.25mol/L存在下で、種々のメタノール濃度の下で晶析を行った結果を示す。図より、リチウムは本実験条件範囲内ではいずれの濃度においても固相に結晶を得ることはできなかった。
この結果より、リチウムを含む水溶液に対しメタノールストリップ(硫酸アンモニウム+メタノール)を行った場合、液相にリチウムが溶解したまま存在することがわかる。つまり、この結果は、リチウムとリチウム以外の金属塩とを分離できる可能性を示唆している。
【0046】
<比較例2(Vに対する硫安晶析およびメタノール晶析)>
図3(a)に、五酸化バナジウムを0.2mol/L硫酸に溶解して得た溶液に対して硫酸アンモニウムを用いて晶析操作を行った結果を、
図3(b)にメタノールを用いて晶析を行った結果を示す。
硫酸アンモニウムで晶析を行った場合、本実験条件範囲内ではバナジウムの晶析は生じなかった。一方、メタノールを用いて晶析を行った場合にはメタノール濃度が50~80質量%程度までは一部が固相に析出したものの、他の領域ではほとんどが液相に存在した。
【0047】
<実施例2(Vに対する硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
図3(c)に、五酸化バナジウムを0.2mol/L硫酸に溶解して得た溶液に対して硫酸アンモニウム存在下でメタノールストリップを行った場合の結果を示す。
この場合、メタノールのみで晶析を行った場合とは異なり、50質量%程度まで液相に安定に存在した。この結果から、バナジウムを含む溶液に対して硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップを行った場合、バナジウムはメタノール濃度50質量%程度では固相に析出せず液相に存在することが明らかとなった。つまり、この結果は、バナジウムとバナジウム以外の金属塩とを分離できる可能性を示唆している。
【0048】
<比較例3(Coに対する硫安晶析およびメタノール晶析)>
図4(a)に硝酸コバルト水溶液に対して硫酸アンモニウムを用いて晶析を行った結果を示す。
図4(a)より、硫酸アンモニウムの濃度が1mol/Lを超えた付近から徐々固相に析出し、5mol/L程度では液相の残存率が10%程度に達することが分かる。
この時のコバルト結晶の色はバラ色のような赤色を示し,また,ろ過により結晶を分離した後に水に添加すると,水に対して再溶解し,この結果より水に対して再溶解が可能な塩として結晶が回収されたことが分かる。
図4(b)に、コバルトに対してメタノール晶析を行った結果を示す。
図4(b)より、硝酸コバルトはいずれのメタノール濃度においてもすべて液相に残存し、メタノール中に安定に存在していることが分かる。
【0049】
<実施例3(Coに対する硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
硝酸コバルト水溶液に対して硫酸アンモニウム濃度が0.25mol/Lあるいは1mol/Lの下でメタノールストリップを行った結果を
図4(c)に示す。
図4(c)より、硫酸アンモニウムのみではコバルトが析出することがなかった硫酸アンモニウム濃度においても、メタノールを添加することで10質量%を過ぎたあたりから急激に固相にコバルトが晶析し始めることが分かる。比較例3のCoに対する硫安晶析の結果では、硫酸アンモニウムが5mol/L程度で液相の残存率が10%程度に達したが、これに比べて、硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップでは、硫酸アンモニウム濃度が1/5(1mol/L)または1/20(0.25mol/L)程度で固相に晶析させることが可能になることが分かる。
【0050】
<比較例4(Niに対する硫安晶析およびメタノール晶析)>
図5(a)に硝酸ニッケル水溶液に対して硫安晶析を行った結果を示す。図より、本実験条件においては硫安濃度が1mol/Lを超えたあたりからNiが固相に晶析し、5mol/L程度でほぼすべてが固相に移動することが分かる。
図5(b)は水/メタノール系において種々のメタノール濃度の下で硫酸ニッケルの溶解性を調べた結果を示す。図より、この系においてはいずれのメタノール濃度においてもNiは安定的に液相に溶解していることが分かる。図には示さないが硝酸ニッケルを用いた場合でも同様の傾向を示した。
【0051】
<実施例4(Niに対する硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
図5(c)は、硝酸ニッケル水溶液に対して種々の硫酸アンモニウム濃度の下でメタノールストリップを行った場合の、液相におけるNiの重量を示した図である。
図5(c)より、硫安を添加した系ではメタノールを添加することで急激に固相にNiが析出することが分かる。また、硫酸アンモニウム濃度が高くなるとメタノールの濃度が希薄であっても析出しやすい傾向にあることが分かる。
なお、
図5(a)の結果とあわせてみると、硫酸アンモニウム存在下でメタノールストリップを行った際の硫酸アンモニウム濃度では、水系の場合にはNiが固相に析出しないことが分かる。このことから、メタノール存在下では、金属が析出し始める硫酸アンモニウム濃度は低くなることが分かり、結果、硫安添加量は激減したことが分かる。具体的には、硫安晶析の場合には、硝酸ニッケルの大部分を固相に移動させるには、少なくとも2mol/Lの硫酸アンモニウムの添加が必要となっているが(
図5(a))、硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップでは、その1/4(0.5mol/L)、1/8(0.25mol/L)の硫酸アンモニウム濃度にて、同様の結果を得ることが可能となる。
【0052】
<比較例5(Niに対する硫酸ナトリウム存在下でのメタノールストリップ)>
図6に、硫酸ニッケル水溶液に対して、硫酸アンモニウムの代わりに硫酸ナトリウムを用いてメタノールストリップを行った結果を示す。
図より、硫酸アンモニウムの代わりに硫酸ナトリウムを用いた場合には晶析現象は生じないことが分かる。なお、図には示さないが硫酸アンモニウムの代わりに硝酸アンモニウムを用いて実験を行った場合も晶析現象は観測されず、このことから、液に溶解した際にアンモニアイオンと、2段階以上に解離するアニオンを有する塩の使用が望ましいことが示唆された。
【0053】
<実施例5(Mgに対する硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
図7にMgが存在する系でメタノールストリップを行った結果を示す。硫酸アンモニウムによる晶析実験の結果から、この系においては硫酸アンモニウムが1mol/Lの濃度においてもマグネシウムは晶析しないことが確認されているが、硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップを行った場合には、硫酸アンモニウムの濃度が0.25mol/L程度であってもメタノール濃度45質量%で晶析することが分かる。
【0054】
<実施例6(Feに対する硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
図8にFeを含む系に対して硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップを行った結果を示す。この場合も、硫酸アンモニウム濃度が0.5mol/L程度でも液相中のFeの濃度が減少すると共に固相中に固体が晶析する結果を得た。
【0055】
<比較例6(Laに対するメタノール晶析)>
図9に、Laを含む溶液に対してメタノール晶析を行った結果を示す(○:硫酸アンモニウムが0mol/L)。本実験条件範囲内ではランタンの晶析は生じなかった。
【0056】
<実施例7(Laに対する硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
図9にLaを含む溶液に対して硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップを行った結果を示す(△および□)。
図9は塩化ランタン水溶液に所定の濃度の硫酸アンモニウムを添加し、さらにメタノールを添加した場合の、液相におけるランタンの残存率を示した図である。
図9よりメタノールの濃度が40質量%を超えたあたりから、塩化ランタンが急激に固相に晶析し始めることが分かる。また、硫酸アンモニウムの濃度が高くなるにつれ、析出し始めるメタノールの濃度も低下することが分かる。
【0057】
<比較例7(Prに対するメタノール晶析)>
図10に、Prを含む溶液に対してメタノール晶析を行った結果を示す(○:硫酸アンモニウムが0mol/L)。本実験条件範囲内ではプラセオジムの晶析は生じなかった。
【0058】
<実施例8(Prに対する硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
図10にPrを含む溶液に対して硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップを行った結果を示す(△および□)。
図10は塩化プラセオジム水溶液に所定の濃度の硫酸アンモニウムを添加し、さらにメタノールを添加した場合の、液相におけるプラセオジムの残存率を示した図である。
図10よりメタノールの濃度が40質量%を超えたあたりから、塩化プラセオジムが急激に固相に晶析し始めることが分かる。また、硫酸アンモニウムの濃度が高くなるにつれ、析出し始めるメタノールの濃度も低下することが分かる。また、Laの場合に比べ、Prの場合は、硫酸アンモニウムの濃度が低くても比較的固相に析出することが分かる。
【0059】
<実施例9(CoとNiが共存する系における硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
図11に、Co、Ni混合系に対して、硫酸アンモニウム濃度を0.25mol/Lとしてメタノールストリップを行った結果を示す。混合系においては、メタノール濃度が20質量%を超えたあたりから両金属種とも固相に析出しはじめるものの、液相の濃度wには両金属間で若干の差があることが分かる。これを分離係数αで表すと
図11(上図)の様になり、メタノール濃度37質量%では分離係数が10を超えることが分かる。したがって、両金属は硫酸アンモニウムの濃度およびメタノールの濃度を最適化することで、ある程度分離が可能になることが示唆された。
【0060】
<実施例10(LiとCoが共存する系における硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
図12にリチウムイオンバッテリーからのCoとLiの分離を目的とし、Li/Co混合系で硫酸アンモニウムが0.25mol/L存在する溶液に対しメタノールストリップを行った結果を示す。
図12より、メタノール濃度40質量%以上で大部分のCoが固相に析出し分離係数は14.9(メタノール濃度:44.3質量%)に達し、結果コバルトとリチウムは固相と液相とに良好に分離された。
【0061】
<実施例11(Vと他の夾雑金属種(Fe、Mg、Ni)とを含む系に対する硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)>
硫酸酸性水溶液に、V、Fe、Mg、および、Ni(該金属の酸化物や硫酸塩を含む物質)を溶解させた溶液に対してメタノールストリップを行った。処理前の金属含有量を
図13(a)に、処理後のろ液中の金属含有量を
図13(b)に、及び、析出した固体を水に再溶解させた場合の金属塩含有量を
図13(c)にそれぞれ示した。
処理は、Vを185mg/L、Mgを52mg/L、Niを26.9mg/L、Feを12.2mg/L含み、硫酸アンモニウムが2mol/L存在する溶液に対し、メタノール濃度45質量%で晶析操作を行った。
図13(b)の結果を見ると、硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップによりV以外の金属種は固相に析出し、液相にはほぼVのみが存在することが分かる。また、
図13(c)は固相に析出した固体を水に溶解させて分析した結果であるが、各金属種に関する物質収支がほぼとれており、液相から固相に析出したことによって処理液中のVの純度が飛躍的に高まったことが分かる。
このことから、本願発明の方法(硫酸アンモニウム存在下でのメタノールストリップ)を巧みに利用することで、常温、常圧下で得たい金属を固相と液相に分配することができ、本手法の広がりが期待できる。
【0062】
<実施例12(Cs、Sr、Coを含む系に対するメタノールストリップ)>
塩化ストロンチウム、硝酸コバルト、塩化セシウムをそれぞれ0.1mmol/L含む水溶液50mlに対し、硫酸アンモニウム、さらにはメタノールを添加してストロンチウム、コバルト、および、セシウムの相互分離を行った結果を
図14に示す。
図14(a)には初期の各金属含有量を、
図14(b)には
図14(a)の溶液に硫酸アンモニウム濃度が1mol/Lになるように硫酸アンモニウムを添加した時の液相中の各金属の重量を示している。硫酸アンモニウムを添加することでストロンチウムの大部分が晶析し、この時点でストロンチウムが固相に分離された。
次いでこの溶液をろ過した後、さらにメタノールを19質量%、あるいは、28質量%になるように添加したところ、液相から固相にコバルトが晶析し、セシウムが液相に残存する傾向を示した。この結果から、硫酸アンモニウムとメタノールの濃度を最適化することで3種類の金属の相互分離が行うことができることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の金属塩の分離方法は、基本は、液相に溶解している金属を水溶性の固相として回収することが望まれる分野において利用可能である。例えば、Niメッキ浴からのNiの再生、Cs/Sr/Coの相互分離(放射性核種の分離)、LiイオンバッテリーのLi/Coのリサイクル、廃モーターからの希土類金属の分離・回収、硫酸浸出液からの各種金属の分離・回収、重質油燃焼灰からのVの分離・精製、重金属含有排水からの重金属の分離・回収(排水処理)において、利用の可能性がある。