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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ガラスロール
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/18 20060101AFI20231102BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20231102BHJP
   B65H 75/14 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B65H75/18 Z
B32B1/08 Z
B65H75/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019222354
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021091517
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073357(JP,A)
【文献】特開2015-051912(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074383(WO,A1)
【文献】特開2013-023290(JP,A)
【文献】特開平09-309669(JP,A)
【文献】特開2003-285978(JP,A)
【文献】特開2009-242114(JP,A)
【文献】特開2001-122520(JP,A)
【文献】特開2015-074513(JP,A)
【文献】特開平02-075575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/18
B32B 1/08
B65H 75/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯と、前記巻芯の周りにロール状に巻き取られた帯状ガラスフィルムとを備えるガラスロールであって、
前記巻芯が、シャフトと組み付けるための内筒部と、前記内筒部よりも外周側に配置され且つ前記帯状ガラスフィルムの巻き取りの芯体となる外筒部と、前記内筒部と前記外筒部とを連結する連結部とを有し、
前記内筒部の外周面と前記外筒部の内周面との相互間に隙間が形成され、
前記巻芯が延びる方向における前記隙間の両端にそれぞれ前記連結部が配置され、
前記隙間内で且つ前記両端の前記連結部の相互間に、前記内筒部と前記外筒部とを連結して前記巻芯を補強する補強部材を備え、
前記補強部材が中心に貫通孔を有する円盤状に形成されると共に、円盤の軸線が前記内筒部および前記外筒部の軸線と一致し
前記内筒部の全長が前記外筒部の全長よりも長く、
前記内筒部の両端部が、前記外筒部の両端部からそれぞれ食み出していることを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
前記内筒部の肉厚よりも前記外筒部の肉厚が大きいことを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項3】
前記帯状ガラスフィルムを間に挟んで前記帯状ガラスフィルムの幅方向一方側と他方側とのそれぞれに、前記帯状ガラスフィルムの幅方向へのずれを規制する規制部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスロール。
【請求項4】
前記規制部材が、前記外筒部の外周面に装着されたフランジ状部材であることを特徴とする請求項に記載のガラスロール。
【請求項5】
前記フランジ状部材が、前記フランジ状部材の軸線周りで複数の部分フランジに分割されると共に、前記複数の部分フランジが、相互に組付けおよび組付けの解除が可能に構成され、
前記複数の部分フランジの組付けおよび組付けの解除に伴って、前記外筒部の外周面に対する前記フランジ状部材の固定および固定の解除が可能に構成されていることを特徴とする請求項に記載のガラスロール。
【請求項6】
前記フランジ状部材の内周面の径が、前記外筒部の外周面の径よりも大きく、
前記フランジ状部材が、周方向に沿って間隔を空けて配置された複数の締結具を有し、
前記複数の締結具の各々は、締付けに伴って前記フランジ状部材の内周面から進出して前記外筒部の外周面に当接すると共に、締付けの解除に伴って前記外筒部の外周面から前記フランジ状部材の内周面側に後退し、
前記複数の締結具の締付けおよび締付けの解除に伴って、前記外筒部の外周面に対する前記フランジ状部材の固定および固定の解除が可能に構成されていることを特徴とする請求項に記載のガラスロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラスロールに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、帯状ガラスフィルムの輸送や保管を行うための形態として、巻芯の周りに帯状ガラスフィルムをロール状に巻き取ってなるガラスロールが利用されている。
【0003】
ここで、特許文献1にはガラスロールの一例が開示されている。同文献に開示されたガラスロールでは巻芯が円筒状をなしており、シャフトを挿通させるための貫通孔が形成されている。帯状ガラスフィルムを巻き取る際には、貫通孔を介してシャフトと組み付けた巻芯を回転させながら帯状ガラスフィルムを巻き取っていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/074383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のガラスロールにおいては、下記のような解決すべき問題があった。
【0006】
すなわち、巻芯の周りに巻き取られた帯状ガラスフィルムは、当然ながら湾曲しているため、常に曲げ応力が作用した状態に置かれている。従って、曲げ応力に起因した帯状ガラスフィルムの破損を防止する観点から、帯状ガラスフィルムが過度に湾曲しないように巻取径(ガラスロールの内周面の径)を設定する必要がある。
【0007】
しかしながら、上述の観点に基づいて設定した最適な巻取径(以下、推奨巻取径と表記)は、帯状ガラスフィルムの巻き取りに通常用いるシャフトの径と比較して相当に大きい場合がある。このような場合、円筒状をなす巻芯の外径を推奨巻取径に合わせると共に、内径をシャフトの径と合わせる必要が生じることから、両者の寸法差に対応させて巻芯の肉厚を不当に大きくしなければならない。そして、このような肉厚の大きい巻芯を使用した場合、その分だけ必然的にガラスロールが重くなり、輸送や保管を行うにあたって不利になるという問題があった。
【0008】
上述の事情に鑑みなされた本発明は、ガラスロールの軽量化を図ることを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明は、巻芯と、巻芯の周りにロール状に巻き取られた帯状ガラスフィルムとを備えるガラスロールであって、巻芯が、シャフトと組み付けるための内筒部と、内筒部よりも外周側に配置され且つ帯状ガラスフィルムの巻き取りの芯体となる外筒部と、内筒部と外筒部とを連結する連結部とを有し、内筒部の外周面と外筒部の内周面との相互間に隙間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本ガラスロールに備わった巻芯は、シャフトと組み付けるための内筒部と、帯状ガラスフィルムの巻き取りの芯体となる外筒部との双方を有する。これにより、巻芯は、帯状ガラスフィルムの推奨巻取径と巻取用のシャフトの径との間に寸法差がある場合でも、この寸法差に対して好適に対応できる。その上、内筒部の外周面と外筒部の内周面との相互間に隙間が形成されているので、巻芯は、その重量化を回避することもできる。このとおり、本ガラスロールは、重量化を招くことなく上記の寸法差に対応が可能な巻芯を備えている。その結果、ガラスロールの軽量化が可能となる。
【0011】
上記の構成では、内筒部の肉厚よりも外筒部の肉厚が大きいことが好ましい。
【0012】
このようにすれば、外筒部の剛性を確保しやすくなることから、巻芯(外筒部)の周りに巻き取られた帯状ガラスフィルムの重量が大きい場合であっても、巻芯の変形を防止する上で有利となる。
【0013】
上記の構成では、内筒部の全長と外筒部の全長とが同一長さであり、連結部が、内筒部の端面および外筒部の端面の双方に当接して端面同士の位置を揃える第一部材と、内筒部の外周面と外筒部の内周面との相互間に介在する第二部材とを備えていてもよい。
【0014】
このようにすれば、連結部が第一部材を備えることで、巻芯の内筒部の端面と外筒部の端面との位置が揃えられた状態となり、結果として、内筒部と外筒部との間での軸線方向(帯状ガラスフィルムの幅方向に等しい)に沿った位置ずれが防止される。従って、両者の位置ずれに起因して、帯状ガラスフィルムの巻き取り時に巻芯に振れが発生するような恐れが可及的に排除される。その結果、巻き取りに伴った帯状ガラスフィルムの巻きずれが略存在しないガラスロールとすることが可能となる。さらに、連結部が第二部材を備えることにより、巻芯の剛性を高めることもできる。
【0015】
上記の構成では、内筒部の全長と外筒部の全長とが同一長さであり、連結部が、内筒部の端部の外周面と外筒部の端部の内周面との相互間に介在する介在部であってもよい。
【0016】
このようにすれば、連結部が介在部のみでなることから、連結部の重量を可及的に抑制できる。従って、巻芯の軽量化、ひいてはガラスロールの更なる軽量化を図ることが可能になる。加えて、連結部が介在部として内筒部の端部の外周面と外筒部の端部の内周面との相互間に介在している。このため、簡易な構造によって巻芯の剛性を高めることもできる。
【0017】
上記の構成では、内筒部の全長が外筒部の全長よりも長く、内筒部の両端部が、外筒部の両端部からそれぞれ食み出していてもよい。
【0018】
このようにすれば、外筒部の両端部からそれぞれ食み出た内筒部の両端部について、これをガラスロールの取り扱いに好適に利用することが可能となる(例えば、内筒部の両端部を支持部材により支持する等)。そのため、輸送時や保管時におけるガラスロールの取り扱いを容易にすることができる。
【0019】
上記の構成では、隙間内に、外筒部と内筒部とを連結して巻芯を補強する補強部材を備えることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、巻芯の剛性を高める上で一層有利となる。従って、帯状ガラスフィルムの重量による巻芯の変形を更に防止しやすくなる。
【0021】
上記の構成では、帯状ガラスフィルムを間に挟んで帯状ガラスフィルムの幅方向一方側と他方側とのそれぞれに、帯状ガラスフィルムの幅方向へのずれを規制する規制部材を備えることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、規制部材を備えることで、とりわけガラスロールの輸送時の振動により帯状ガラスフィルムが幅方向にずれることを好適に回避できる。
【0023】
上記の構成では、規制部材が、外筒部の外周面に装着されたフランジ状部材であることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、簡易な構造によって確実に帯状ガラスフィルムの幅方向へのずれを回避することが可能となる。
【0025】
上記の構成では、フランジ状部材が、フランジ状部材の軸線周りで複数の部分フランジに分割されると共に、複数の部分フランジが、相互に組付けおよび組付けの解除が可能に構成され、複数の部分フランジの組付けおよび組付けの解除に伴って、外筒部の外周面に対するフランジ状部材の固定および固定の解除が可能に構成されていてもよい。
【0026】
このようにすれば、外筒部の外周面に対するフランジ状部材の固定および固定の解除を容易に行うことができる。そのため、ガラスロールを構成する帯状ガラスフィルムの幅寸法が変更になった場合においても、この変更に対応するようにフランジ状部材の位置を簡便に調節することが可能となる。
【0027】
上記の構成では、フランジ状部材の内周面の径が、外筒部の外周面の径よりも大きく、フランジ状部材が、周方向に沿って間隔を空けて配置された複数の締結具を有し、複数の締結具の各々は、締付けに伴ってフランジ状部材の内周面から進出して外筒部の外周面に当接すると共に、締付けの解除に伴って外筒部の外周面からフランジ状部材の内周面側に後退し、複数の締結具の締付けおよび締付けの解除に伴って、外筒部の外周面に対するフランジ状部材の固定および固定の解除が可能に構成されていてもよい。
【0028】
このようにしても、外筒部の外周面に対するフランジ状部材の固定および固定の解除を容易に行い得る。従って、ガラスロールを構成する帯状ガラスフィルムの幅寸法が変更になった場合でも、この変更に対応してフランジ状部材の位置を簡便に調節できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ガラスロールの軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ガラスロールを示す断面図である。
図2】ガラスロールの変形例を示す断面図である。
図3】ガラスロールの変形例を示す断面図である。
図4】ガラスロールに備わったフランジ状部材を示す側面図である。
図5図4におけるA‐A断面を示す断面図である。
図6】ガラスロールに備わったフランジ状部材の変形例を示す側面図である。
図7図6におけるB‐B断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係るガラスロールについて、添付の図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1に示すように、ガラスロール1は、主たる構成要素として、巻芯2と、巻芯2の周りにロール状に巻き取られた帯状ガラスフィルム3と、帯状ガラスフィルム3の幅方向へのずれを規制する規制部材としてのフランジ状部材4とを備えている。
【0033】
帯状ガラスフィルム3は、帯状保護シート5と重ね合わされた状態で巻芯2の周りに巻き取られている。帯状保護シート5は、帯状ガラスフィルム3と比較して幅寸法が大きくなっており、帯状保護シート5の幅方向両端部は、帯状ガラスフィルム3の幅方向両端部からそれぞれ食み出している。
【0034】
帯状ガラスフィルム3は、当該帯状ガラスフィルム3に先行して巻芯2に巻き取られるリーダー(図示省略)と連結されている。リーダーは可撓性を有する帯状シートである。そして、帯状ガラスフィルム3は、先行するリーダーにより牽引されることで、巻芯2へと誘導されたのち巻き取られていく。このため、図1では図示を省略しているが、実際には巻芯2の周りで帯状ガラスフィルム3よりも内周側にリーダーが巻き取られている。
【0035】
帯状ガラスフィルム3は可撓性を有しており、一例として厚みは300μm以下に形成されている。ここで、巻き取りに適した可撓性を付与する観点から、帯状ガラスフィルム3の厚みは200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。一方、強度不足を防止する観点から、帯状ガラスフィルム3の厚みは1μm以上であることが好ましい。また、同様に強度不足を防止する観点から、帯状ガラスフィルム3の幅方向両端部は、レーザー切断(レーザー割断、レーザー溶断等)により切断された端部であることが好ましい。
【0036】
帯状ガラスフィルム3の成形方法や組成は、特に限定されるものではないが、ここではオーバーフローダウンドロー法により成形された無アルカリガラスである。なお、ここで言う「無アルカリガラス」とは、アルカリ成分を実質的に含有しないガラスであり、具体的には、アルカリ金属酸化物が1000ppm以下(好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下)のガラスである。
【0037】
帯状保護シート5は可撓性を有しており、一例として厚みは200μm以下に形成されている。帯状保護シート5としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)シートを使用することが可能である。本実施形態では、保護シート5は、帯状ガラスフィルム3とは非接着であるが、勿論これに限定されるものではなく、帯状ガラスフィルム3と保護シート5とが接着されていても良い。また、ガラスフィルム3と保護シート5とが接着された上で、さらに別体の保護シート5を非接着で設けても良い。
【0038】
巻芯2は、帯状ガラスフィルム3の巻取時にシャフト(図示省略)と組み付けるための内筒部6と、帯状ガラスフィルム3の巻き取りの芯体となる外筒部7と、内筒部6と外筒部7とを連結する連結部8とを有する。帯状ガラスフィルム3の巻取時には、内筒部6の内周面6a(貫通孔)を介してシャフトと組み付けた巻芯2を回転させつつ、帯状ガラスフィルム3を巻き取っていく。
【0039】
ここで、巻芯2の材質としては、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、PA(ポリアミド)、ABS樹脂等を使用することが可能である。
【0040】
内筒部6と、当該内筒部6よりも外周側に配置された外筒部7とにより、巻芯2は二重管構造を有する。内筒部6と外筒部7とは共通した軸線9を有しており、両筒部6,7は共に円筒状に形成されている。内筒部6の外周面6bと外筒部7の内周面7aとの相互間には隙間10が形成されている。内筒部6の全長と外筒部7の全長とは同一長さである。一方、内筒部6の肉厚と外筒部7の肉厚とを比較すると、外筒部7の肉厚の方が大きくなっている。勿論この限りではなく、両筒部6,7の肉厚が同一の大きさであってもよいし、内筒部6の肉厚が外筒部7の肉厚よりも大きくてもよい。
【0041】
連結部8は、内筒部6および外筒部7の一方側端部と他方側端部とのそれぞれに対応するように一対が備わっている。連結部8は、中心に貫通孔を有する円盤状に形成されており、円盤の軸線は内筒部6および外筒部7の軸線9と一致している。連結部8がなす円盤の内径は、内筒部6の内径(内筒部6の内周面6aの径)に等しく、円盤の外径は、外筒部7の外径(外筒部7の外周面7bの径)に等しくなっている。
【0042】
連結部8は、内筒部6の端面6cおよび外筒部7の端面7cの双方に当接して端面6c,7c同士の位置を揃える第一部材11と、内筒部6の外周面6bと外筒部7の内周面7aとの相互間に介在する第二部材12とを備える。ここでは第一部材11と第二部材12とが連続して一体的に形成されているが、両部材11,12が別々に配置されていてもよい。第一部材11の存在により、両筒部6,7の間での軸線9に沿う方向の位置ずれが防止される。また、第二部材12の存在により、巻芯2の剛性が高められる。
【0043】
隙間10内には、内筒部6と外筒部7とを連結して巻芯2を補強する補強部材13が配置されている。補強部材13は、内筒部6および外筒部7の全長における中間に対応する位置に存する。補強部材13は、中心に貫通孔を有する円盤状に形成されており、円盤の軸線は内筒部6および外筒部7の軸線9と一致している。なお、ここでは単一の補強部材13が配置されているが、勿論複数の補強部材13が配置されていてもよい。一方、補強部材13の配置は必須ではなく、例えば両筒部6,7の全長が短いような場合には取り除いてもよい。
【0044】
ここで、巻芯2の構成は、図1に示した構成に限定されるものではない。例えば図2図3に示すような構成としてもよい。以下、両図に示した他の構成について説明する。なお、他の構成の説明において、図1に示した構成で説明済みの要素と実質的に同一の要素については、他の構成の説明で参照する図面に同一符号を付すことで重複する説明を省略し、図1に示した構成との相違点についてのみ説明する。
【0045】
図2に示す巻芯2が、図1に示した巻芯2と相違している点は、連結部8の構成である。本巻芯2においては、連結部8が、内筒部6の端部の外周面6bと外筒部7の端部の内周面7aとの相互間に介在する介在部14のみでなる。介在部14は、中心に貫通孔を有する円盤状に形成されており、円盤の軸線は内筒部6および外筒部7の軸線9と一致している。介在部14の存在により、巻芯2の剛性が高められる。また、連結部8が介在部14のみでなることで、巻芯2(ガラスロール1)の軽量化が図られる。
【0046】
図3に示す巻芯2が、図1に示した巻芯2と相違している点は、内筒部6の全長が外筒部7の全長よりも長い点である。これにより、本巻芯2においては、内筒部6の両端部が、外筒部7の両端部からそれぞれ食み出している。なお、内筒部6の両端部は、外筒部7の両端部から均等に同じ長さだけ食み出している。内筒部6における食み出した部位の存在により、輸送時や保管時におけるガラスロール1の取り扱いを容易にできる。一例としては、食み出した部位を支持部材(図示省略)により支持すること等が可能になる。
【0047】
図1に示すように、フランジ状部材4は、巻芯2における外筒部7の外周面7bに装着されている。フランジ状部材4は、相対的に外径の小さい小径部4aと、相対的の外径の大きい大径部4bとを有する。なお、フランジ状部材4の軸線は、内筒部6および外筒部7の軸線9と一致している。
【0048】
フランジ状部材4は、帯状ガラスフィルム3を挟むようにして一対が備わっており、帯状ガラスフィルム3の幅方向一方側と他方側とにそれぞれ配置される。フランジ状部材4の大径部4bは、帯状ガラスフィルム3と帯状保護シート5とのうち、帯状保護シート5とのみ当接する。詳細には、大径部4bは、帯状ガラスフィルム3の幅方向両端部からそれぞれ食み出した帯状保護シート5の幅方向両端部と当接する。つまり、一対のフランジ状部材4,4について、一方のフランジ状部材4の大径部4bと他方のフランジ状部材4の大径部4bとの間隔は、帯状ガラスフィルム3の幅寸法よりも長くなっている。フランジ状部材4は、外筒部7の外周面7bに対する固定および固定の解除が可能となっている。これにより、帯状ガラスフィルム3(帯状保護シート5)の幅寸法に合わせてフランジ状部材4を装着する位置の変更が可能である。
【0049】
図4および図5に示すように、フランジ状部材4は、当該フランジ状部材4の軸線9の周りで二つの部分フランジ15,16に分割されている。詳細には、フランジ状部材4が、軸線9の周りの半周分(180°)を占める部分フランジ15と、残りの半周分(180°)を占める部分フランジ16とに分割されている。両部分フランジ15,16は、締結具としてのボルト17を介して、相互に組付けおよび組付けの解除が可能になっている。なお、図4および図5には、両部分フランジ15,16の組付けを解除した状態を示している。両図に示す状態の下では、外筒部7の外周面7bに対するフランジ状部材4の固定が解除されており、フランジ状部材4の位置を軸線9に沿う方向に自在に移動させることが可能である。
【0050】
両部分フランジ15,16の各々には、フランジ状部材4の小径部4aに連なるようにして突合せ部18が形成されている。両部分フランジ15,16の各々において、突合せ部18は、小径部4aを間に挟んで一対が形成されている。両部分フランジ15,16を組付けた際には、部分フランジ15側の突合せ部18と部分フランジ16側の突合せ部18とが相互に接触した状態で突き合わされる。両部分フランジ15,16のいずれの突合せ部18にも貫通孔18aが形成されており、貫通孔18aにはボルト17が挿通されている。そして、ボルト17の頭部とは反対側の端部から締結具としてのナット(図示省略)を締め付けることで、両部分フランジ15,16の突合せ部18が突き合わされ、両部分フランジ15,16が組付けられる。これに伴って、両部分フランジ15,16でなるフランジ状部材4の内周面4cが外筒部7の外周面7bと嵌合し、フランジ状部材4が外筒部7の外周面7bに対して固定される。
【0051】
なお、ここではフランジ状部材4が二つの部分フランジ15,16に分割されているが、勿論この限りではない。フランジ状部材4が軸線9の周りで三つ以上の部分フランジに分割されるようにしてもよい。また、ここでは規制部材としてフランジ状部材4を用いているが、勿論この限りではない。フランジ状部材4に代えて中心に貫通孔を有する円盤を規制部材として用いてもよい。
【0052】
また、フランジ状部材4の構成は、図4および図5に示した構成に限定されるものではない。例えば図6および図7に示すような構成としてもよい。以下、両図に示した他の構成について説明する。なお、他の構成の説明において、図4および図5に示した構成で説明済みの要素と実質的に同一の要素については、他の構成の説明で参照する図面に同一符号を付すことで重複する説明を省略し、図4および図5に示した構成との相違点についてのみ説明する。
【0053】
図6および図7に示すように、本フランジ状部材4においては、当該フランジ状部材4の内周面4cの径が外筒部7の外周面7bの径よりも大きくなっている。フランジ状部材4は、締結具としてのボルト19を四本有しており、四本のボルト19が周方向に沿って間隔を空けて配置されている。ここでは軸線9の周りで90°毎にボルト19が配置されている。四本のボルト19は、いずれも小径部4aに取り付けられている。詳細には、小径部4aを径方向に貫通した貫通孔4aaの内周面に雌ネジが形成されており、この雌ネジと各ボルト19の雄ネジとが噛み合った状態となっている。なお、ここでは軸線9の周りで90°毎にボルト19が配置され、合計四本のボルト19が配置されているが、勿論この限りではない。ボルト19の合計本数は五本以上であってもよいし、三本以下(最低二本)であってもよい。複数本のボルト19は、その合計本数によらず軸線9の周りで均等に配置されることが好ましい。
【0054】
各ボルト19は、締付けに伴ってフランジ状部材4の内周面4c(小径部4aの内周面)から進出して外筒部7の外周面7b(図6および図7に示すT点)に当接する。一方、各ボルト19は、締付けの解除に伴って外筒部7の外周面7b(T点)からフランジ状部材4の内周面4c(小径部4aの内周面)側に後退する。これら四本のボルト19の締付けおよび締付けの解除に伴って、外筒部7の外周面7bに対するフランジ状部材4の固定および固定の解除が可能になっている。
【0055】
以下、上記のガラスロール1による主たる作用・効果について説明する。
【0056】
ガラスロール1が備える巻芯2は、シャフトと組み付けるための内筒部6と、帯状ガラスフィルム3の巻き取りの芯体となる外筒部7との双方を有する。これにより、巻芯2は、帯状ガラスフィルム3の推奨巻取径と巻取用のシャフトの径との間に寸法差がある場合でも、この寸法差に対して好適に対応できる。その上、内筒部6の外周面6bと外筒部7の内周面7aとの相互間に隙間10が形成されているので、巻芯2は、その重量化を回避することもできる。このとおり、ガラスロール1は、重量化を招くことなく上記の寸法差に対応が可能な巻芯2を備えている。その結果、ガラスロール1の軽量化が可能となる。
【0057】
以下、上記のガラスロール1の製造方法について説明する。
【0058】
最初に、巻芯2における外筒部7の外周面7bからフランジ状部材4を取り外す。また、巻芯2における内筒部6の内周面6a(貫通孔)を巻取用のシャフトと組み付ける。次に、シャフトの駆動に伴って巻芯2を回転させつつ、リーダーにより牽引した帯状ガラスフィルム3を帯状保護シート5と重ね合わせた状態で巻芯2の周りに巻き取っていく。巻き取りが完了すると、最後に、外筒部7の外周面7bに対してフランジ状部材4を固定して装着する。以上によりガラスロール1が完成する。
【0059】
ここで、本発明に係るガラスロールは、上記の実施形態で説明した構成に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、帯状ガラスフィルム3の幅寸法が、帯状保護シート5の幅寸法よりも小さくなっている。しかしながら、両者の大小関係が逆になっていてもよい。この場合、帯状保護シート5の幅方向両端部からそれぞれ食み出した帯状ガラスフィルム3の幅方向両端部を、フランジ状部材4の大径部4bに当接させるにあたり、大径部4bにおける当接部を緩衝材(例えばシリコンゴムや発泡樹脂等)で構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0060】
1 ガラスロール
2 巻芯
3 帯状ガラスフィルム
4 フランジ状部材(規制部材)
4c フランジ状部材の内周面
6 内筒部
6b 内筒部の外周面
6c 内筒部の端面
7 外筒部
7a 外筒部の内周面
7b 外筒部の外周面
7c 外筒部の端面
8 連結部
9 軸線
10 隙間
11 第一部材
12 第二部材
13 補強部材
14 介在部
15 部分フランジ
16 部分フランジ
19 ボルト(締結具)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7