(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】設備の検証装置及び検証方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
G01M17/007 H
(21)【出願番号】P 2020002752
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】塚田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚文
(72)【発明者】
【氏名】高田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】大谷 勇一
(72)【発明者】
【氏名】川上 哲哉
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-122766(JP,A)
【文献】特開2017-049627(JP,A)
【文献】特開2000-329831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0310248(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07- 11/07
G06F 11/28- 11/36
G06F 11/22- 11/277
G01R 31/00- 31/01
G01R 31/24- 31/25
G01M 17/00- 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対して要求データを送信可能で且つ前記対象物から応答データを受信可能な設備から送信された要求データを受信する受信部と、前記設備が行う複数の処理に夫々対応した応答データを記憶するデータ記憶部と、前記要求データ受信時、前記データ記憶部に記憶され
且つ前記要求データに対応する応答データを
前記設備に送信する送信部と、
前記要求データに対応する応答データに基づき前記設備の動作検証を行う検証部とを備えた設備の検証装置において、
前記データ記憶部は、前記複数の処理の実行順序が規定されると共に単一の要求データに対して前記複数の応答データが割付けられたデータテーブルを有し、
前記検証部は、前記設備の最終処理における動作検証が完了してから前記最終処理から順々に実行順序を遡るように動作検証を行うことを特徴とする設備の検証装置。
【請求項2】
前記複数の処理の実行される順序と、前記単一の要求データに対応し且つ並列関係にある複数の応答データとにより前記データテーブルを生成するデータ生成部を有することを特徴とする請求項1に記載の設備の検証装置。
【請求項3】
前記検証部は、複数の処理と、前記複数の処理に割付けられた複数の応答データと、前記複数の応答データが送信された時刻とを有する検証結果を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の設備の検証装置。
【請求項4】
前記設備が検査設備であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の設備の検証装置。
【請求項5】
対象物に対して要求データを送信可能で且つ前記対象物から応答データを受信可能な設備の検証方法において、
前記設備から送信された要求データを受信する受信部と、前記設備が行う複数の処理に夫々対応した応答データを記憶するデータ記憶部と、前記要求データ受信時、前記データ記憶部に記憶され
且つ前記要求データに対応する応答データを
前記設備に送信する送信部とを予め準備する準備工程と、
前記設備が行う複数の処理に夫々対応した応答データを前記データ記憶部に記憶させると共に、前記複数の処理の実行順序を規定し且つ単一の要求データに対して前記複数の応答データを割付けるデータ割付工程と、
前記要求データに対応する応答データに基づき前記設備の最終処理における動作検証が完了してから前記最終処理から順々に実行順序を遡るように動作検証を行う動作検証工程と、
を有することを特徴とする設備の検証方法。
【請求項6】
前記複数の処理の実行される順序と、前記単一の要求データに対応し且つ並列関係にある複数の応答データ
とを含むデータテーブルを生成するデータ生成工程を有することを特徴とする請求項5に記載の設備の検証方法。
【請求項7】
前記動作検証工程は、複数の処理と、前記複数の処理に割付けられた複数の応答データと、前記複数の応答データが送信された時刻とを有する検証結果を生成することを特徴とする請求項5又は6に記載の設備の検証方法。
【請求項8】
前記設備が検査設備であることを特徴とする請求項5~7の何れか1項に記載の設備の検証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に対して要求データを送信可能で且つ対象物から応答データを受信可能な設備の検証装置及び検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両には、各種動作を自動的に電子制御する制御機器が多数使用されている。それ故、車両生産ラインの最終工程において、完成車両に搭載された各種制御機器が設計仕様に対して適切に機能しているか否かについて検査設備により検証されている。
このような検査設備は、制御機器の機能及び性能に基づく要求データ(入力条件)と、正常な制御機器が検査設備からの要求データに対して行う動作結果とを予めデータテーブルに保有している。
【0003】
図9に示すように、車両Vの検査設備40のデータレコーダから延びるケーブル40bがコンベア上の完成車両Vの電子コントロールユニットから延びる制御ケーブルVbに接続された後、検査設備40がデータテーブルに基づき要求データを送信する。
検査設備40は、電子コントロールユニットから受信した応答データ(動作結果)をデータテーブルと照合し、適否を表示部40aに表示する。オペレータは、表示部40aに表示された照合結果(OK表示,NG表示)を確認して車両Vに搭載された制御機器の動作適否を判定する。
【0004】
特許文献1のテストケース作成装置及びテストケース作成方法は、対象となる製品の動作仕様を並行化の概念を有する状態遷移図として形式的に記述する動作仕様記述手段と、状態遷移図を探索すると共に所定状態から状態遷移図上の状態遷移を選択して結果を出力する状態遷移図探索手段と、アクション(出力、処理)とイベント(入力、条件)との関係に基づき禁止された遷移を管理して状態遷移図探索手段の遷移選択の操作を制御するアクション/イベント関係管理手段とを有している。これにより、検証漏れのないテストケース(データテーブル)を作成している。
【0005】
前述したような検査設備を仕様変更した場合、或いは新たに検査設備を製作する場合、動作検証機能を確保するため、検査設備自身の作動を検証する必要がある。
検査設備の作動を検証する際、複数の完成車両を準備して制御機器の動作を実際に確認することは、非効率的である。そこで、近年、実際の完成車両を用いることなく、コンピュータや制御機器の機能を模倣可能なエミュレータ(Emulator)を用いて検証している。
エミュレータは、検査設備から要求データを受信し、この要求データに対応した応答データを完成車両に代わって検査設備に送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のテストケース作成装置及びテストケース作成方法は、エミュレータを用いることを前提としたものではないが、データテーブルの作成を自動化することにより、データテーブルの作成効率を向上することが可能である。
しかし、特許文献1の技術では、データテーブルを作成するための専用の制御プログラムが必要になるため、設備全体が大掛かりになり、設備の制御が複雑化する虞がある。
【0008】
また、検査設備の作動をエミュレータを用いて検証する場合、検査設備の制御処理を全て網羅した検証専用の制御フローを新たに作成する必要がある。
即ち、検査設備の仕様変更等の際、オペレータは、データテーブル作成用プログラムの作成に加えて、OK判定となる制御フローを全て作成してOK表示を確認すると共にNG判定となる制御フローを全て作成してNG表示を確認しなければならない。
特に、要求データ及び応答データの項目数が多い場合や、他の処理よりも先行する処理にサブループ処理が含まれた検証を行う場合、処理手順が大規模になり、オペレータが検査設備の処理手順を漏れなく全て網羅する制御フローを作成することは容易ではない。
【0009】
本発明の目的は、仮想環境における設備の検証を容易化しつつ、検証漏れのない制御処理手順を作成可能な設備の検証装置及び検証方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の設備の検証装置は、対象物に対して要求データを送信可能で且つ前記対象物から応答データを受信可能な設備から送信された要求データを受信する受信部と、前記設備が行う複数の処理に夫々対応した応答データを記憶するデータ記憶部と、前記要求データ受信時、前記データ記憶部に記憶され且つ前記要求データに対応する応答データを前記設備に送信する送信部と、前記送信部から送信された応答データに基づき前記設備の動作検証を行う検証部とを備えた設備の検証装置において、前記データ記憶部は、前記複数の処理の実行順序が規定されると共に単一の要求データに対して前記複数の応答データが割付けられたデータテーブルを有し、前記検証部は、前記設備の最終処理における動作検証が完了してから前記最終処理から順々に実行順序を遡るように動作検証を行うことを特徴としている。
【0011】
この設備の検証装置では、前記設備から送信された要求データを受信する受信部と、前記設備が行う複数の処理に夫々対応した応答データを記憶するデータ記憶部と、前記要求データ受信時、前記データ記憶部に記憶され且つ前記要求データに対応する応答データを前記設備に送信する送信部とを有するため、実機である対象物を準備することなく応答データを送信することができ、仮想環境で設備の動作を検証することができる。
前記データ記憶部は、前記複数の処理の実行順序が規定されると共に単一の要求データに対して前記複数の応答データが割付けられたデータテーブルを有するため、設備が行うべき全検証作業を実行順序が規定された処理毎に分類することができ、設備の単一の処理を一単位とした動作バリエーションを容易に抽出することができる。
前記検証部は、前記設備の最終処理における動作検証が完了してから前記最終処理から順々に実行順序を遡るように動作検証を行うため、設備が行うべき全検証作業を処理毎に短時間で漏れなく実行することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記複数の処理の実行される順序と、前記単一の要求データに対応し且つ並列関係にある複数の応答データとにより前記データテーブルを生成するデータ生成部を有することを特徴としている。
この構成によれば、設備が行うべき全検証作業を処理毎に対応した並列概念として分類することができ、データテーブルを容易に作成することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記検証部は、複数の処理と、前記複数の処理に割付けられた複数の応答データと、前記複数の応答データが送信された時刻とを有する検証結果を生成することを特徴としている。
この構成によれば、全検証作業を時系列で管理することができ、検証作業の未完了をリスト形式で容易に判定することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記設備が検査設備であることを特徴としている。
この構成によれば、検査設備が行うべき全検証作業を処理毎に短時間で漏れなく実行することができる。
【0015】
請求項5の設備の検証方法は、対象物に対して要求データを送信可能で且つ前記対象物から応答データを受信可能な設備の検証方法において、前記設備から送信された要求データを受信する受信部と、前記要求データ受信時、前記データ記憶部に記憶され且つ前記要求データに対応する応答データを前記設備に送信する送信部とを予め準備する準備工程と、前記設備が行う複数の処理に夫々対応した応答データを記憶すると共に、前記複数の処理の実行順序を規定し且つ単一の要求データに対して前記複数の応答データを割付けるデータ割付工程と、前記要求データに対応する応答データに基づき前記設備の最終処理における動作検証が完了してから前記最終処理から順々に実行順序を遡るように動作検証を行う動作検証工程と、を有することを特徴としている。
【0016】
この設備の検証方法では、前記設備から送信された要求データを受信する受信部と、前記設備が行う複数の処理に夫々対応した応答データを記憶するデータ記憶部と、前記要求データ受信時、前記データ記憶部に記憶され且つ前記要求データに対応する応答データを前記設備に送信する送信部とを予め準備する準備工程を有するため、実機である対象物を準備することなく応答データを送信することができ、仮想環境で設備の動作を検証することができる。
前記設備が行う複数の処理に夫々対応した応答データを前記データ記憶部に記憶させると共に、前記複数の処理の実行順序を規定し且つ単一の要求データに対して前記複数の応答データを割付けるデータ割付工程を有するため、設備が行うべき全検証作業を実行順序が規定された処理毎に分類することができ、設備の単一の処理を一単位とした動作バリエーションを容易に抽出ることができる。前記送信部から送信された応答データに基づき前記設備の最終処理における動作検証が完了してから前記最終処理から順々に実行順序を遡るように動作検証を行う動作検証工程を有するため、設備が行うべき全検証作業を処理毎に短時間で漏れなく実行することができる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記複数の処理の実行される順序と、前記単一の要求データに対応し且つ並列関係にある複数の応答データとを含むデータテーブルを生成するデータ生成工程を有することを特徴としている。
この構成によれば、設備が行うべき全検証作業を処理毎に対応した並列概念として分類することができ、データテーブルを容易に作成することができる。
【0018】
請求項7の発明は、請求項5又は6の発明において、前記動作検証工程は、複数の処理と、前記複数の処理に割付けられた複数の応答データと、前記複数の応答データが送信された時刻とを有する検証結果を生成することを特徴としている。
この構成によれば、全検証作業を時系列で管理することができ、検証作業の未完了をリスト形式で容易に判定することができる。
【0019】
請求項8の発明は、請求項5~7の何れか1項の発明において、前記設備が検査設備であることを特徴としている。
この構成によれば、検査設備が行うべき全検証作業を処理毎に短時間で漏れなく実行することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の設備の検証装置及び検証方法によれば、仮想環境における検査設備の検証を容易化しつつ、検証漏れのない制御処理手順を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1に係る検査ラインを模式的に示す全体構成図である。
【
図2】検査設備の制御処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】エミュレータの検証処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】従来の車両検査設備の検査工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の実施例1について
図1~
図8に基づいて説明する。
本実施例1に係る検証装置は、実機に対して要求データ(入力条件)を送信すると共に実機からの要求データに対する応答データ(動作結果)を受信する検査設備の処理動作を、実機の機能を信号的に模倣可能なエミュレータ(Emulator)を用いることで実機が存在していない仮想環境において検証する装置である。
【0024】
図1に示すように、完成車両の検査ラインLは、通常、実機である完成車両を搬送するコンベア1と、このコンベア1に沿って所定の間隔毎に配置された複数の検査ステーションSt1~St3と、これらの検査ステーションSt1~St3間をオペレータによって適宜持ち運び可能なエミュレータ2とを備えている。尚、エミュレータ2は、単一でも良く、各検査ステーションSt1~St3毎に設けても良い。
【0025】
検査ステーションSt1~St3には、検査設備3~5が夫々配設されている。
コンベア1により搬送される車両が何れかの検査ステーションSt1~St3に搬送された際、該当する検査ステーションSt1~St3に配置された検査設備3~5のデータレコーダ(図示略)から延びるケーブルが車両の電子コントロールユニットから延びる制御ケーブルに接続され、車両に搭載された制御機器(例えば、シート制御装置等)の動作が順次確認される。検査設備3~5は、要求データを送信すると共に、電子コントロールユニットから受信する応答データを各々が保有するデータテーブルと照合することで制御機器の動作適否を確認し、OK又はNG表示を行う。
【0026】
検査設備3~5は、完成車両を検査する検査工程で実行される通常モードと、検査設備4自身を検査する検査工程で実行される検証モードとを選択実行可能に構成されている。
例えば、検査設備4は、要求データを送信可能な送信部(図示略)と、応答データを受信可能な受信部(図示略)と、工場のホストコンピュータ(図示略)に接続されると共に受信した応答データと設計仕様に適合したデータ(正確な動作結果)が記載されたデータテーブルとを照合する制御部(図示略)と、照合結果をOK又はNG表示を行う表示部4a(モニタ)と、伝送ケーブル4b等を備えている。検査設備3,5は、検査対象である制御機器の検査項目を除き、検査設備4と同様の構成である。
【0027】
検査設備4は、選択された通常モードにおいて、ケーブル4bが完成車両の電子コントロールユニットから延びる制御ケーブルに接続されたタイミングで、以下の3項目を要求データとして自動的に順次送信する。
(処理1)車両番号の要求(「車両番号は適正か」)
(処理2)仕向地の要求(「仕向地は適正か」)
(処理3)制御機器の動作適否の要求(「動作は適正か」)
検査設備4から要求データを受信した車両は、要求データに対応した応答データを検査設備4に対して送信する。
【0028】
図2のフローチャートに基づき、検査設備4が、通常モードで実行する制御処理手順について説明する。尚、図中、Si(i=1,2,…)は、各ステップを示す。
図2に示すように、検査設備4は、処理1の段階で、車両から受信した応答データ(車両番号)が正確ではない場合(S1 No)、表示部4aにNGが表示され(S5)、処理2,3は実行されない。また、検査設備4は、処理1がOKであっても(S1 Yes)、処理2がNG(仕向地が不適合)の場合(S2 No)、処理3を実行することなく、NGを表示する(S5)。つまり、処理1~3が全てOK判定されたときのみ(S1 Yes,S2 Yes,S3 Yes)、OK表示される(S4)。
オペレータは、表示部4aに表示された検査結果を確認して完成車両の適否を判定する。
【0029】
一方、検査設備4がエミュレータ2に電気的に接続された場合、検査設備4は検証モードに自動的に切り替えられる。検査設備4は、検証モードにおいて、通常モードで実行する制御処理手順とは異なり、エミュレータ2と電気的に接続されてからエミュレータ2による制御処理が完了するまでの間、処理1~3を実行するための自動送信を無制限に繰り返している。
【0030】
次に、エミュレータ2(検証装置)について説明する。
エミュレータ2は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)により構成され、車両に搭載された制御機器の正常状態及び異常状態の応答データ(送信信号)を、信号種別、出力値、出力時間及び出力先アドレス等全て模擬可能に形成されている。
これにより、検査設備4を車両が存在しない仮想環境で動作させて、検査設備4の動作の適否を検証している。尚、以下の検証装置の説明は、設備の検証方法の説明を含むものである。
【0031】
図3に示すように、エミュレータ2は、検査設備4の各処理1~3と複数の応答データからなるデータテーブルT(
図4参照)を通常モードで実行する検査設備4の制御処理手順に基づき作成するデータ生成部21と、作成されたデータテーブルTを記憶する記憶部22と、最終処理3における動作検証が全て完了してから順々に通常モードの実行順序を遡るように検査設備4の動作検証を行う検証部23と、検査設備4からの要求データを受信可能な受信部24と、動作検証のための応答データを検査設備4に送信可能な送信部25を主な構成要素としている。
【0032】
図4に示すように、データテーブルTは、検査設備4が行う実行順序が規定された処理1~3と、各処理に対応した正常状態及び異常状態の全ての動作バリエーションとが記載されるように作成されている。各動作バリエーションには、データパターン番号とデータ内容(応答データ)とが紐付けされる。具体的には、例えば、単一の「車両番号は適正か」という要求データを送信する処理1に対して、正確な車両番号(OK)であるデータ内容「1111」がデータパターン番号「インプット1-1」と規定され、車両番号が記載されていない(NG)というデータ内容「0」がデータパターン番号「インプット1-2」と規定され、誤った車両番号(NG)であるデータ内容「FF」がデータパターン番号「インプット1-3」と予め規定されている。
【0033】
同様に、処理2,3についても、各々、OKであるデータ内容がデータパターン番号を介して予め規定され、NGであるデータ内容がデータパターン番号を介して予め規定されている。各処理に対してOK及びNG各データ内容は、概念的に並列関係になるように設定されている。これにより、オペレータによる各項目の抽出を容易にしている。
尚、「~の動作を行いなさい」という要求データに対して、OKである「~の動作をしました」というデータ内容と共に、「~の動作をできません」、「異なる動作の実施」、或いは「回答なし」という4通りのNGデータ内容でデータテーブルTを構成しても良い。また、処理2のように、OKであるデータ内容が複数存在しても良い。
更に、データテーブルTの項目は、少なくとも、処理、データパターン番号、及びデータ内容が存在すれば良く、その他の項目は、省略可能である。
【0034】
検証部23は、検査設備4の最終処理3における動作検証が全て完了してから最終処理3から一つずつ実行順序を遡るように動作検証が行われるように構成されている。
具体的には、処理1,2をOKと模擬的に見做した後、データテーブルT中、処理3に規定された全てのデータ内容についてOK又はNG表示を行い、この判定結果をオペレータが確認する。これにより、処理1,2にて発生する可能性がある重複した検証フローを回避することができ、全検証作業を短時間で漏れなく実行することができる。
処理3の検証後、処理2の検証を行い、処理2の検証後、処理1の検証が行われる。
【0035】
検証部23は、データ内容毎に検査設備4に対して応答データを返信すると共に、各データ内容を送信した時刻を記憶している。
図5に示すように、検証部23は、エミュレータ2が、現在実行中の処理の全応答データを検査設備4に返信した場合、処理毎に返信した日時をデータテーブルTの処理時刻欄に記録している。
【0036】
図6に示すように、検証部23は、処理時刻が記録されたデータテーブルTを時間降順に並び直してデータテーブルTAを作成し、実施時刻記録リストとしてデータテーブルTAを印字出力する。また、オペレータによるデータテーブルTの読み出し操作が行われた場合、表示部4aにデータテーブルTAが表示される。
図7に示すように、検証部23は、処理1のデータ内容のうち何れかのデータ内容が送信されていない場合、例えば、検査設備4の不具合に起因して処理1の全応答データの返信が完了しない場合、検査設備4にて、データテーブルTの読み出し操作が行われても、処理1の処理時刻欄がブランク(空白)のデータテーブルTBが表示される。
【0037】
図8のフローチャートに基づき、エミュレータ2の検証処理手順について説明する。
尚、図中、Si(i=11,12,…)は、各ステップを示す。また、検査設備4は、エミュレータ2の制御処理が終了するまで
図2に示す制御処理を無制限に繰り返す。
【0038】
まず、S11にて検査設備4からの要求データ等各種情報を読み込む。
次に、現在実行中の処理の番号(以下、実行処理番号と略す。)、及び現在取得されているデータパターン番号(以下、取得済データパターン番号と略す。)を一旦初期化して(S12)、S13に移行する。
【0039】
S13では、基点を決定する。
ここで、基点とは、
図2に示す処理1~3の検証を実行する上で、必ず通る地点である。
本実施形態では、例として「スタート」(開始点)を基点として設定する。
尚、処理1~3に先行して必ず通る処理が別に存在する場合には、この上流側処理を「スタート」に代えて基点に設定することが可能である。
【0040】
次に、最終処理を決定する(S14)。
最終処理とは、検査設備4の検証を行う全ての処理のうち最後に検証を行う処理である。具体的には、検査設備4が行う処理1~3を全てYesにしたとき、基点直前の判断を伴う処理(処理3)に相当している。
【0041】
次に、実行処理番号を特定する(S15)。
エミュレータ2は、決定された最終処理から検証を開始するため、検査設備4の検証を開始する場合、最終処理である処理3を実行処理番号として特定する。
次に、実行処理における最初のデータパターン番号を取得する(S16)。
例えば、今回初めて処理3を検証する場合、データテーブルTに基づきデータパターン番号(インプット3-1)を取得する。
【0042】
S17では、取得済データパターンのデータ内容が検査設備4に未返信か否か判定する。
S17の判定の結果、取得済データパターンのデータ内容が検査設備4に未返信の場合、S18に移行して、現在の取得済データパターン番号を特定し、S19に移行する。
S19では、特定した実行処理番号及び取得済データパターン番号を記憶する。
次に、データテーブルTに基づき特定した実行処理番号における取得済データパターンのデータ内容を検査設備4に返信し(S20)、S21に移行する。
【0043】
S21では、実行処理が基点か否か判定する。
S21の判定の結果、実行処理が基点の場合、基点の直前処理の検証が完了しているため、基点の直前処理の全取得済データパターンに実施した処理時刻を記録する(S22)。S21の判定の結果、実行処理が基点ではない場合、実行処理の検証が完了したか否か判定する(S26)。
【0044】
S26の判定の結果、実行処理の検証が完了した場合、基点の処理は完了していないものの、現在実行している処理は完了したため、実行処理の全取得済データパターンに実施した処理時刻を記録する(S22)。S26の判定の結果、実行処理の検証が完了していない場合、未検証のデータパターンが存在するため、検証済のデータパターンの処理時刻を記録することなく、S24に移行する。
【0045】
S23では、現在の実行処理から遡って実行順序が一つ前の処理を実行処理に設定する。
S24では、基点の処理が完了したか否か判定する。S24の判定の結果、基点の処理が完了した場合、検査設備4の検証が全て完了したため、実施時刻記録リスト(データテーブルTA)を印字(出力)して終了する。S24の判定の結果、基点の処理が完了していない場合、新たに設定された実行処理の番号を特定するため、S15に移行する。
【0046】
S17の判定の結果、取得済データパターンのデータ内容が検査設備4に返信済の場合、S27に移行する。S27では、取得済データパターンがこの実行処理で検証する最後のデータパターンか否か判定する。S27の判定の結果、取得済データパターンがこの実行処理で検証する最後のデータパターンである場合、実行処理を完了し(S28)、S29に移行する。
【0047】
S29では、取得済データパターン番号を特定し、S19に移行する。
S27の判定の結果、取得済データパターンがこの実行処理で検証する最後のデータパターンではない場合、この実行処理で未だ検証されていないデータパターンが存在しているため、検証されていない次のデータパターンを取得済データパターンに設定し(S30)、S17に移行する。
【0048】
次に、上記エミュレータ2の作用、効果について説明する。
本実施形態によれば、検査設備4から送信された要求データを受信する受信部24と、検査設備4が行う複数の処理1~3に夫々対応したデータ内容(応答データ)が記載されたデータテーブルTを記憶する記憶部22と、要求データ受信時、記憶部22に記憶されたデータ内容を送信する送信部25とを有するため、実機である対象物を準備することなくデータ内容を送信することができ、仮想環境で検査設備4の動作を検証することができる。記憶部22は、複数の処理1~3の実行順序が規定されると共に単一の要求データに対して複数のデータ内容が割付けられたデータテーブルTを有するため、検査設備4が行うべき全検証作業を実行順序が規定された処理毎に分類することができ、検査設備4の単一の処理を一単位とした動作バリエーションを容易に抽出することができる。
検証部23は、検査設備4の最終処理3における動作検証が完了してから最終処理3から順々に実行順序を遡るように動作検証を行うため、検査設備4が行うべき全検証作業を処理毎に短時間で漏れなく実行することができる。
【0049】
複数の処理1~3の実行される順序と、単一の要求データに対応し且つ並列関係にある複数のデータ内容とによりデータテーブルTを生成するデータ生成部21を有するため、検査設備4が行うべき全検証作業を処理毎に対応した並列概念として分類することができ、データテーブルTを容易に作成することができる。
【0050】
検証部23は、複数の処理1~3と、複数の処理1~3に割付けられた複数のデータ内容と、複数のデータ内容が送信された時刻とを有する実施時刻記録リスト(データテーブルTB)を生成するため、全検証作業を時系列で管理することができ、検証作業の未完了をリスト形式で容易に判定することができる。
【0051】
検証対象となる設備が検査設備4であるため、検査設備4が行うべき全検証作業を処理毎に短時間で漏れなく実行することができる。
【0052】
また、この設備の検証方法では、検査設備4から送信された要求データを受信する受信部24と、検査設備4が行う複数の処理1~3に夫々対応したデータ内容(応答データ)を記憶する記憶部22と、要求データ受信時、記憶部22に記憶されたデータ内容を送信する送信部25とを予め準備する準備工程を有するため、実機である対象物を準備することなくデータ内容を送信することができ、仮想環境で検査設備4の動作を検証することができる。検査設備4が行う複数の処理1~3に夫々対応したデータ内容を記憶部22に記憶させると共に、複数の処理1~3の実行順序を規定し且つ単一の要求データに対して複数のデータ内容を割付けるデータ割付工程を有するため、検査設備4が行うべき全検証作業を実行順序が規定された処理毎に分類することができ、検査設備4の単一の処理を一単位とした動作バリエーションを容易に抽出ることができる。送信部25から送信されたデータ内容に基づき検査設備4の最終処理3における動作検証が完了してから最終処理3から順々に実行順序を遡るように動作検証を行う動作検証工程を有するため、検査設備4が行うべき全検証作業を処理毎に短時間で漏れなく実行することができる。
【0053】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、車両の検査設備4の検証装置及び検証方法の例を説明したが、特に検査設備に限られず、加工設備等種々の設備に適用可能である。また、対象物が車両の検査設備の例を説明したが、車両に限られるものではない。
【0054】
2〕前記実施形態においては、検査設備4が処理1~3を実行する例を説明したが、処理の数は3つに限られず、2以下であっても良く、4以上の処理を実行可能な設備であっても良い。
【0055】
3〕前記実施形態においては、エミュレータ2に電気的に接続された場合、検証モードに自動的に切り替えられる検査設備4の例を説明したが、検査設備4にモード切替手段を設け、任意に切替可能に構成しても良い。
【0056】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0057】
2 エミュレータ
4 検査設備
21 データ生成部
22 記憶部
23 検証部
24 受信部
25 送信部
T,TA データテーブル