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特許7377473マンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】マンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/02 20060101AFI20231102BHJP
   B66B 25/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B66B23/02 A
B66B25/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022186586
(22)【出願日】2022-11-22
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔 久▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】永島 宏
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-037996(JP,A)
【文献】特開平07-187551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンコンベヤのブレーキの制動トルクを調整するための制動トルク調整装置であって、
前記ブレーキは、回転本体部と、前記回転本体部に対して回転方向に回転可能な可動部と、前記可動部を前記回転本体部とともに回転軸方向両側から挟み込む挟込部と、前記挟込部を前記回転本体部に固定する固定部と、を備え、
前記固定部は、前記挟込部と前記回転本体部を挿通するボルトと、前記ボルトに螺合するナットと、前記ボルトの頭部と前記ナットのうち何れか一方と前記挟込部との間に配置される座金と、前記座金と前記挟込部との間に配置され、前記挟込部を前記回転本体部へ向かって加圧する弾性部材と、を備え、
前記制動トルク調整装置は、前記座金と前記挟込部のうち何れか一方に当接する本体部と、前記本体部に固定され、前記座金と前記挟込部のうち何れか他方の位置を検出するセンサと、を備え
前記本体部は、前記座金を挟んで前記挟込部の反対側に配置される横フレームと、前記横フレームから前記挟込部へ向かって延びて前記挟込部に当接する縦フレームと、を備え、
前記センサは、前記座金の位置を検出する、マンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置。
【請求項2】
前記センサは複数設けられ、複数の前記センサは、前記座金の周方向に異なる位置を検出する、請求項1に記載のマンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置。
【請求項3】
前記センサは、前記横フレームに固定され、前記座金に接触可能な接触式の変位センサである、請求項1又は2に記載のマンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置。
【請求項4】
前記縦フレームは、前記挟込部に当接する先端面に磁石を備える、請求項1又は2に記載のマンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置。
【請求項5】
前記センサに接続され、前記センサによる検出値を表示する表示器をさらに備える、請求項1又は2に記載のマンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置。
【請求項6】
前記ボルトと前記ナットを締結するための締結工具をさらに備える、請求項1又は2に記載のマンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置。
【請求項7】
マンコンベヤのブレーキの制動トルクを調整するための制動トルク調整装置であって、
前記ブレーキは、回転本体部と、前記回転本体部に対して回転方向に回転可能な可動部と、前記可動部を前記回転本体部とともに回転軸方向両側から挟み込む挟込部と、前記挟込部を前記回転本体部に固定する固定部と、を備え、
前記固定部は、前記挟込部と前記回転本体部を挿通するボルトと、前記ボルトに螺合するナットと、前記ボルトの頭部と前記ナットのうち何れか一方と前記挟込部との間に配置される座金と、前記座金と前記挟込部との間に配置され、前記挟込部を前記回転本体部へ向かって加圧する弾性部材と、を備え、
前記制動トルク調整装置は、前記座金と前記挟込部のうち何れか一方に当接する本体部と、前記本体部に固定され、前記座金と前記挟込部のうち何れか他方の位置を検出するセンサと、を備え、
前記センサは複数設けられ、複数の前記センサは、前記座金の周方向に異なる位置を検出する、マンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、マンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マンコンベヤは、回転駆動するスプロケットに巻き掛けられることによって回転して走行する無端環状のステップチェーンと、ステップチェーンに接続されることによってステップチェーンとともに走行する複数のステップと、を備えている。スプロケットには、駆動チェーンによって駆動装置から駆動力が伝達される。
【0003】
マンコンベヤは、例えば駆動チェーンが何等かの理由で切断した場合、スプロケットの回転を停止させるための補助ブレーキ(ポールブレーキ)を備えている(例えば、特許文献1)。補助ブレーキは、スプロケットから突出したブロックに、駆動チェーンの切断に伴って突出するポール(爪)を係合させることにより、強制的にスプロケットの回転を停止させる。
【0004】
ところで、スプロケットに直接ブロックを突出させて設けた場合、ポールとの係合により大きな力が加わり、折損するおそれがある。そこで、スプロケットに接し、スプロケットとは個別に回転可能なラチェットリングを設け、当該ラチェットリングにブロックを設けて、ポール係合時に過大な力がスプロケットに加わらないようにすることがある。ポールがブロックに係合した場合、ラチェットリングとスプロケットの間の動摩擦による制動トルクによって、スプロケットの回転を停止させる。
【0005】
ラチェットリングは、弾性部材の弾性力によってスプロケットに圧接されており、弾性部材の撓み量を調整して弾性力を変化させることで、制動トルクを調整できる。しかしながら、弾性部材の撓み量を検出する装置がないため、弾性部材の撓み量を調整して制動トルクを調整することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-30882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、課題は、弾性部材の撓み量を検出することができるマンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
マンコンベヤのブレーキの制動トルクを調整するための制動トルク調整装置であって、
前記ブレーキは、回転本体部と、前記回転本体部に対して回転方向に回転可能な可動部と、前記可動部を前記回転本体部とともに回転軸方向両側から挟み込む挟込部と、前記挟込部を前記回転本体部に固定する固定部と、を備え、
前記固定部は、前記挟込部と前記回転本体部を挿通するボルトと、前記ボルトに螺合するナットと、前記ボルトの頭部と前記ナットのうち何れか一方と前記挟込部との間に配置される座金と、前記座金と前記挟込部との間に配置され、前記挟込部を前記回転本体部へ向かって加圧する弾性部材と、を備え、
前記制動トルク調整装置は、前記座金と前記挟込部のうち何れか一方に当接する本体部と、前記本体部に固定され、前記座金と前記挟込部のうち何れか他方の位置を検出するセンサと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るマンコンベヤの全体図
図2】同実施形態に係るマンコンベヤの要部図
図3図2のIII-III線の要部拡大断面図
図4】同実施形態に係る制動トルク調整装置の正面図
図5】同実施形態に係る制動トルク調整装置の平面図
図6】同実施形態に係る制動トルク調整装置をマンコンベヤにセットした状態を示す要部図
図7】同実施形態に係る制動トルク調整装置の使用状態を示す正面図
図8】別実施形態に係る制動トルク調整装置の使用状態を示す正面図
図9】別実施形態に係るマンコンベヤの要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図面において、構成要素の寸法は、例えば、理解を容易にするために、実際の寸法に対して拡大、縮小して示す場合があり、また、各図面の間での寸法比は、一致していない場合がある。なお、各図面において、例えば、理解を容易にするために、構成要素の一部を省略して示す場合がある。
【0011】
第1、第2等の序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、構成要素は、この用語によって特に限定されるものではない。なお、序数を含む構成要素の個数は、特に限定されず、例えば、一つでもよい場合がある。また、以下の明細書及び図面で用いられる序数は、特許請求の範囲に記載された序数と異なる場合がある。
【0012】
以下、マンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置における一実施形態について、図1図7を参照しながら説明する。
【0013】
まず、マンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置を説明することに先立って、ブレーキを備えるマンコンベヤについて、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、マンコンベヤの構成等の理解を助けるために例示するものであり、マンコンベヤの構成を限定するものではない。
【0014】
図1に示すように、マンコンベヤ1は、例えば、躯体に設置される構造体2と、人(乗客)を搬送する搬送部3と、搬送部3を第1方向D1で挟むように配置される一対(図1においては、一つのみ図示している)の欄干部4と、搬送部3及び欄干部4を駆動させる駆動部5と、装置全体を制御する処理部6とを備えていてもよい。
【0015】
各図において、第1方向D1は、水平方向と平行な方向である第1横方向(「幅方向」ともいう)D1であり、第2方向D2は、水平方向と平行な方向であって、且つ、第1横方向D1と直交する第2横方向(「前後方向」ともいう)D2であり、第3方向D3は、第1横方向D1及び第2横方向D2と直交する鉛直方向であって、上下方向D3である。
【0016】
本実施形態に係るマンコンベヤ1は、人を搬送するために、踏面が階段状になるエスカレータであるが、斯かる構成に限られない。例えば、マンコンベヤ1は、人を搬送するために、踏面が平面状となる移動歩道(動く歩道)であってもよい。
【0017】
構造体2は、例えば、本実施形態のように、第2横方向D2のそれぞれの端部に配置される機械室2a,2aを備えていてもよい。また、構造体2は、例えば、複数の枠材で構成されるトラス構造又はケタ構造としてもよい。
【0018】
マンコンベヤ1は、例えば、本実施形態のように、機械室2a,2aを上方から覆うように、構造体2に取り付けられる床プレート1aを備えていてもよい。これにより、床プレート1aは、搬送部3に乗り降りするために、搬送部3の第2横方向D2の各端部に配置される乗降部1b,1bを構成している。
【0019】
搬送部3は、例えば、本実施形態のように、駆動部5に駆動されることによって回転して走行する無端環状の走行部3aと、走行部3aに接続されることによって走行部3aと共に走行し、人が乗る踏面を有する複数のステップ3bとを備えていてもよい。特に限定されないが、走行部3aは、例えば、ローラチェーンとしてもよい。
【0020】
また、例えば、走行部3aは、第1横方向D1に離れて一対設けられ、複数のステップ3bは、一対の走行部3a,3aの間に配置されていてもよい。そして、ステップ3bは、それぞれの走行部3aに対して第1横方向D1を軸にして回転可能に接続されていてもよい。
【0021】
欄干部4は、例えば、回転して走行する無端環状の手摺ベルト4aと、手摺ベルト4aを支持する欄干本体部4bと、欄干本体部4bの下部を覆うカバー部4cとを備えていてもよい。なお、例えば、手摺ベルト4aが駆動部5の駆動によって走行し、手摺ベルト4aの走行は、ステップ3bの走行と同期してもよい。
【0022】
図1及び図2に示すように、駆動部5は、例えば、ステップ3bが反転するように走行部3aが巻き掛けられて且つ第1横方向D1を軸にして回転する第1及び第2回転部7,8と、回転部7,8を回転させる駆動源9と、駆動源9の駆動を第1回転部7に伝達させる伝達部10と、第1回転部7の回転を制動する第1ブレーキ11とを備えていてもよい。
【0023】
駆動源9は、例えば、本実施形態のように、モータ9aと、モータ9aの駆動により回転する第3回転部9bと、第3回転部9bの回転を制動する第2ブレーキ9cとを備えていてもよい。第3回転部9bは、例えば、減速機を介して間接的にモータ9aの駆動を受けていてもよく、また、例えば、モータ9aの駆動をモータ9aから直接的に受けていてもよい。
【0024】
伝達部10は、例えば、本実施形態のように、第1回転部7及び第3回転部9bにそれぞれ巻き掛けられる環状部材としてもよい。これにより、第1回転部7は、第3回転部9b及び伝達部10を介して、モータ9aの駆動を受ける。特に限定されないが、伝達部10は、例えば、チェーンやベルトとしてもよい。
【0025】
なお、マンコンベヤ1は、例えば、伝達部10を備えていなくてもよい。例えば、第1回転部7は、第3回転部9bと直接的に噛み合うことによって、第3回転部9bからモータ9aの駆動を受けてもよい。即ち、第1回転部7と第3回転部9bとは、歯車機構であってもよい。
【0026】
図2に示すように、マンコンベヤ1は、例えば、第1回転部7の回転速度を検出する速度検出部12と、装置の異常を検出する異常検出部13とを備えていてもよい。なお、速度検出部12及び異常検出部13の構成は、特に限定されず、また、異常検出部13が検出する異常の内容は、特に限定されない。
【0027】
速度検出部12は、例えば、第1回転部7の外周の歯を検出する各種センサ(例えば、近接センサ、光電センサ)であってもよい。また、速度検出部12は、例えば、第1回転部7の回転を検出する回転検出センサ(例えば、エンコーダ)であってもよい。
【0028】
異常検出部13は、例えば、本実施形態のように、伝達部10の切断の有無を検出する各種センサ(例えば、接触センサ、近接センサ)であってもよい。また、異常検出部13は、例えば、第1回転部7の逆回転の有無を検出する各種センサ(例えば、近接センサ、光電センサ)であってもよく、斯かる構成においては、異常検出部13は、例えば、速度検出部12を兼用していてもよい。
【0029】
図2及び図3に示すように、第1回転部7は、例えば、回転軸7aと、走行部3aに巻き掛けられる第1回転本体部7bと、伝達部10に巻き掛けられる第2回転本体部7cと、第1回転本体部7bと第2回転本体部7cとを固定する第1固定部7dとを備えていてもよい。これにより、第1回転本体部7b及び第2回転本体部7cは、互いに不動に固定されており、回転軸7aを軸として一体となって回転する。
【0030】
また、第1ブレーキ11は、例えば、本実施形態のように、第1回転本体部7b及び第2回転本体部7cに対して回転方向(第1回転部7の回転方向であって、周方向)に回転可能な可動部14と、可動部14を第2回転本体部7cに加圧して接触させる加圧部15と、可動部14と回転方向で係合する係合部16と、係合部16を動作させる動作部17とを備えていてもよい。
【0031】
例えば、本実施形態のように、可動部14は、第2回転本体部7c及び加圧部15間に配置される可動本体部14aを備えており、加圧部15は、第2回転本体部7cとの間で可動本体部14aを挟み込む挟込部15aと、挟込部15aと第2回転本体部7cとを固定する第2固定部15bとを備えている、という構成でもよい。なお、第1ブレーキ11は、例えば、本実施形態のように、可動本体部14a及び第2回転本体部7c間と可動本体部14a及び挟込部15a間とに、それぞれ摩擦材11aを備えていてもよい。
【0032】
また、可動部14は、例えば、本実施形態のように、係合部16と回転方向で係合するために、可動本体部14aから突出する突出部14bを備えていてもよい。また、動作部17は、例えば、本実施形態のように、動作源(例えば、電磁シリンダ)17aと、動作源17aと係合部16とを接続し、動作源17aの動作によって係合部16を移動させる接続リンク17bとを備えていてもよい。
【0033】
これにより、係合部16は、突出部14bと係合する係合位置(図2及び図3の位置)と突出部14bから離れる退避位置(図示していない)との間で、移動する。そして、係合部16が係合位置に位置し、係合部16と突出部14bとが回転方向で係合することによって、可動部14の回転は、停止される。このとき、可動部14及び第1回転部7間に摩擦力が発生し、当該摩擦力は、第1ブレーキ11の制動トルクとなる。
【0034】
したがって、第1回転部7に力が加えられていても、第1ブレーキ11が第1回転部7を制動することによって、第1回転部7の回転が停止している場合には、可動部14及び第1回転部7間に、第1ブレーキ11の静摩擦による制動トルクが発生している。一方で、第1回転部7に力が加えられ、第1ブレーキ11が第1回転部7を制動するにも関わらず、第1回転部7が回転している場合には、可動部14及び第1回転部7間に、第1ブレーキ11の動摩擦による制動トルクが発生している。
【0035】
なお、第1ブレーキ11の構成は、特に限定されず、第1ブレーキ11は、第1回転部7に制動トルクを加えられる構成であればよい。また、第2ブレーキ9cの構成も、特に限定されず、例えば、第2ブレーキ9cは、第3回転部9bに制動トルクを加えられる構成であればよい。
【0036】
また、特に限定されないが、第1ブレーキ11が制動する場合は、例えば、異常検出部13が異常(例えば、伝達部10の切断、第1回転部7の逆回転、モータ9aの過負荷)を検出した場合や、マンコンベヤ1の主電源がオフである場合としてもよい。また、特に限定されないが、第2ブレーキ9cが制動する場合は、例えば、通常運転時(省エネ運転時)でステップ3bの走行が停止している場合や、マンコンベヤ1の主電源がオフである場合としてもよい。
【0037】
挟込部15aは、円環状に形成されている。第2固定部15bは、通常、挟込部15aの周方向に複数設けられる。本実施形態では、8つの第2固定部15bが挟込部15aの周方向に等間隔で設けられている(図6を参照)。
【0038】
また、第2固定部15bは、挟込部15a及び第2回転本体部7cを挿通するボルト15cと、ボルト15cに螺合するナット15dと、ナット15dと挟込部15aの間に配置される座金15eと、座金15eと挟込部15aの間に配置され、挟込部15aを第2回転本体部7cへ向かって加圧する弾性部材15fと、を備えていてもよい。
【0039】
ボルト15cは、挟込部15a及び第2回転本体部7cにそれぞれ形成された取付孔を挿通する。ボルト15cは、第1回転本体部7bに形成された貫通孔から挿入される。また、ボルト15cは、第2回転本体部7cに固定される。ナット15dは、ボルト15cの先端部に螺合する。
【0040】
座金15eは、弾性部材15fの弾性力によって、常時、ナット15dと接する。座金15eは、弾性部材15fと当接するフランジを有している。
【0041】
弾性部材15fは、座金15eと挟込部15aの間に配置され、座金15eと挟込部15aに互いに離れる方向に弾性力を付与する。弾性部材15fは、本実施形態のように、皿バネであってもよい。また、弾性部材15fは、コイルバネ等であってもよい。
【0042】
前述のように、第1ブレーキ11の制動トルクは、可動部14及び第1回転部7間の摩擦力、より具体的には、可動部14と挟込部15aとの間の摩擦力、及び可動部14と第2回転本体部7cとの間の摩擦力に依存する。そのため、第2固定部15bの弾性部材15fによる弾性力、すなわち弾性部材15fの撓み量を調整して、挟込部15aを第2回転本体部7cへ向かって加圧する力を変化させることによって、可動部14及び第1回転部7間の摩擦力を変化させ、第1ブレーキ11の制動トルクを調整することができる。
【0043】
次に、制動トルク調整装置の構成について、図4及び図5を参照しながら説明する。制動トルク調整装置100は、図4及び図5に示すように、本体部101と、本体部101に固定されるセンサ102と、を備えている。
【0044】
本体部101は、横フレーム101aと、横フレーム101aの両端から突出するように延びる一対の縦フレーム101bと、を備えている。本体部101は、正面視で略逆U字状に形成されている。
【0045】
横フレーム101aは、例えば矩形板状に形成されている。横フレーム101aは、中心に形成された円形の貫通孔101cを備えている。
【0046】
縦フレーム101bは、例えば矩形枠状に形成されている。矩形枠状に形成することで縦フレーム101bを計量化できる。一対の縦フレーム101bは、同一形状に形成されている。一対の縦フレーム101bの間隔は、座金15eの外径よりも大きくなっている。
【0047】
縦フレーム101bは、2本の固定ボルト101dで横フレーム101aに固定されている。固定ボルト101dは、横フレーム101aから縦フレーム101bとは反対側に突出して延びていてもよい。
【0048】
縦フレーム101bは、先端面に磁石101eを備えていてもよい。磁石101eは、縦フレーム101bに埋設されている。
【0049】
センサ102は、本体部101の横フレーム101aに固定されている。センサ102は、特に限定されないが、本実施形態のように、接触子102aを有する接触式の変位センサであってもよい。また、センサ102は、複数設けられてもよい。本実施形態では、2つのセンサ102が設けられている。2つのセンサ102は、図5に示すように、横フレーム101aの貫通孔101cを挟んで両側に配置されている。2つセンサ102の間隔は、座金15eの外径よりも小さくなっている。
【0050】
また、制動トルク調整装置100は、センサ102に接続され、センサ102による検出値を表示する表示器103を備えていてもよい。表示器103は、有線又は無線でセンサ102に接続される。本実施形態の表示器103は、ケーブルで2つのセンサ102に接続されている。
【0051】
表示器103は、2つのセンサ102による検出値をそれぞれ表示することができる。また、表示器103は、例えば2つのセンサ102による検出値の平均値を演算して、その平均値を表示するようにしてもよい。表示器103は、例えばバッテリが内蔵されている。
【0052】
また、制動トルク調整装置100は、ナット15dを締結するための締結工具104を備えていてもよい。締結工具104は、特に限定されないが、ラチェットレンチでもよい。締結工具104は、本実施形態のように、ラチェットハンドル104aとソケット104bを備えていてもよい。ソケット104bは、本体部101の横フレーム101aに形成された貫通孔101cを挿通して、ラチェットハンドル104aに取り付けられる。これにより、締結工具104は、本体部101と一体として構成される。ラチェットハンドル104aは、図5に示すように、本体部101に対してソケット104bを中心として回転することができる。このとき、固定ボルト101dが横フレーム101aから突出して延びているため、締結工具104による締結作業中に、回転したラチェットハンドル104a(図5に二点鎖線で示す)がセンサ102に接触することを防止して、センサ102の故障を抑制できる。
【0053】
次に、制動トルク調整装置100の使用方法について、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0054】
初めに、例えば制動トルク調整装置100を平滑面上に置いて、センサ102のゼロ点を調整してもよい。具体的には、制動トルク調整装置100を平滑面上に置くことで、センサ102の接触子102aの先端は、縦フレーム101bの先端面と同一面上に位置するため、この状態で表示器103の表示をゼロに設定する。これにより、センサ102による検出値(接触子102aの変位量)は、縦フレーム101bの先端面からの高さ(距離)となる。
【0055】
次いで、図6に示すように、制動トルク調整装置100を第2固定部15bにセットする。制動トルク調整装置100は、図7に示すように、ソケット104bをナット15dに嵌めることで位置決めされる。このとき、横フレーム101aは、座金15eを挟んで挟込部15aの反対側に配置される。また、縦フレーム101bは、横フレーム101aから座金15eの横を通って挟込部15aに向かって延びて挟込部15aに当接するように配置される。縦フレーム101bは、挟込部15aに当接する先端面に磁石101eを備えているため、縦フレーム101bの先端面は、挟込部15aへ吸着する。これにより、本体部101は、挟込部15aに対して固定される。
【0056】
また、センサ102の接触子102aは、座金15eの上面に接触して押し込まれる。接触子102aの変位量は、表示器103に表示される。なお、2つのセンサ102は、座金15eの周方向に異なる位置を検出するため、2つのセンサ102による検出値を平均することで、測定誤差を減らすことができる。また、表示器103に表示される2つの検出値により、座金15eが挟込部15aに対して平行であるか否かを判別できる。
【0057】
縦フレーム101bの先端面は、挟込部15aに当接しているため、接触子102aの変位量は、挟込部15aの上面から座金15eの上面までの高さ(距離)h1である。この高さh1から座金15eのフランジの厚みを引くことで弾性部材15fの高さ(長さ)h2が算出できるため、センサ102によって弾性部材15fの撓み量を検出できる。このとき、センサ102による検出値は、表示器103に表示されるが、表示器103は、センサ102にケーブルで接続されているため、センサ102から離れた位置で検出値を確認できる。
【0058】
第1ブレーキ11に規定の制動トルクを発生させるためには、弾性部材15fは、所定の撓み量に調整される必要がある。センサ102によって検出された弾性部材15fの撓み量が所定の撓み量からずれている場合、表示器103でセンサ102による検出値を確認しながら、締結工具104によってナット15dを回して弾性部材15fの撓み量を調整する。同様に、複数の第2固定部15bについて、弾性部材15fの撓み量を調整する。これにより、所定の撓み量となるように弾性部材15fの撓み量を調整し、規定の制動トルクとなるように制動トルクを調整することができる。
【0059】
[1]
以上より、制動トルク調整装置100は、本実施形態のように、マンコンベヤ1のブレーキ(本実施形態においては、第1ブレーキ)11の制動トルクを調整するための制動トルク調整装置100であって、前記ブレーキ11は、回転本体部(本実施形態においては、第2回転本体部)7cと、前記回転本体部7cに対して回転方向に回転可能な可動部14と、前記可動部14を前記回転本体部7cとともに回転軸方向両側から挟み込む挟込部15aと、前記挟込部15aを前記回転本体部7cに固定する固定部(本実施形態においては、第2固定部)15bと、を備え、前記固定部15bは、前記挟込部15aと前記回転本体部7cを挿通するボルト15cと、前記ボルト15cに螺合するナット15dと、前記ボルト15cの頭部と前記ナット15dのうち何れか一方(本実施形態においては、ナット15d)と前記挟込部15aとの間に配置される座金15eと、前記座金15eと前記挟込部15aとの間に配置され、前記挟込部15aを前記回転本体部7cへ向かって加圧する弾性部材15fと、を備え、前記制動トルク調整装置100は、前記座金15eと前記挟込部15aのうち何れか一方(本実施形態においては、挟込部15a)に当接する本体部101と、前記本体部101に固定され、前記座金15eと前記挟込部15aのうち何れか他方(本実施形態においては、座金15e)の位置を検出するセンサ102と、を備える、という構成が好ましい。
【0060】
斯かる構成によれば、本体部101に固定されたセンサ102によって、座金15eと挟込部15aの位置関係が分かるため、座金15eと挟込部15aとの間に配置された弾性部材15fの撓み量を検出できる。
【0061】
[2]
また、上記[1]の制動トルク調整装置100においては、本実施形態のように、前記本体部101は、前記座金15eを挟んで前記挟込部15aの反対側に配置される横フレーム101aと、前記横フレーム101aから前記挟込部15aへ向かって延びて前記挟込部15aに当接する縦フレーム101bと、を備え、前記センサ102は、前記座金15eの位置を検出する、という構成が好ましい。
【0062】
斯かる構成によれば、ナット15dを回す際に不動の挟込部15aを基準として、座金15eの位置を検出するため、弾性部材15fの撓み量を正確に検出できる。
【0063】
[3]
また、上記[1]又は[2]の制動トルク調整装置100においては、本実施形態のように、前記センサ102は複数(本実施形態においては、2つ)設けられ、複数の前記センサ102は、前記座金15eの周方向に異なる位置を検出する、という構成が好ましい。
【0064】
斯かる構成によれば、複数のセンサ102による検出値を平均することで、測定誤差を減らすことができる。
【0065】
[4]
また、上記[2]の制動トルク調整装置100においては、本実施形態のように、前記センサ102は、前記横フレーム101aに固定され、前記座金15eに接触可能な接触式の変位センサである、という構成が好ましい。
【0066】
斯かる構成によれば、センサ102によって座金15eの位置を適切に検出できる。
【0067】
[5]
また、上記[2]の制動トルク調整装置100においては、本実施形態のように、前記縦フレーム101bは、前記挟込部15aに当接する先端面に磁石101eを備える、という構成が好ましい。
【0068】
斯かる構成によれば、本体部101を挟込部15aに対して固定することができる。
【0069】
[6]
また、上記[1]又は[2]の制動トルク調整装置100においては、本実施形態のように、前記センサ102に接続され、前記センサ102による検出値を表示する表示器103をさらに備える、という構成が好ましい。
【0070】
斯かる構成によれば、センサ102から離れた位置で、センサ102による検出値を表示器103によって確認できる。これにより、例えば、据付後のマンコンベヤ1において目視が困難な第2固定部15bについて、弾性部材15fの撓み量を検出することができる。
【0071】
[7]
また、上記[1]又は[2]の制動トルク調整装置100においては、本実施形態のように、前記ボルト15cと前記ナット15dを締結するための締結工具104をさらに備える、という構成が好ましい。
【0072】
斯かる構成によれば、弾性部材15fの撓み量を確認しながら、締結工具104によってナット15dを回して弾性部材15fの撓み量を調整することができる。
【0073】
なお、制動トルク調整装置100は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、制動トルク調整装置100は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0074】
(A)上記実施形態に係る制動トルク調整装置100においては、本体部101は、座金15eを挟んで挟込部15aの反対側に配置される横フレーム101aと、横フレーム101aから挟込部15aへ向かって延びて挟込部15aに当接する縦フレーム101bと、を備え、センサ102は、座金15eの位置を検出する、という構成である。しかしながら、制動トルク調整装置100は、斯かる構成に限られない。例えば、図8に示すように、本体部101は、座金15eを挟んで挟込部15aの反対側に配置される横フレーム101aと、横フレーム101aから座金15eへ向かって延びて座金15eに当接する縦フレーム101bと、を備え、センサ102は、挟込部15aの位置を検出する、という構成でもよい。
【0075】
(B)上記実施形態に係る制動トルク調整装置100においては、センサ102は2つ設けられ、2つのセンサ102は、座金15eの周方向に異なる位置を検出する、という構成である。しかしながら、制動トルク調整装置100は、斯かる構成に限られない。例えば、センサ102は1つのみ設けられてもよい。また、例えば、3つ以上のセンサ102が設けられてもよい。
【0076】
(C)上記実施形態に係る制動トルク調整装置100においては、センサ102は、横フレーム101aに固定され、座金15eに接触可能な接触式の変位センサである、という構成である。しかしながら、制動トルク調整装置100は、斯かる構成に限られない。例えば、センサ102は、縦フレーム101bに固定されてもよい。また、例えば、センサ102は、非接触式の変位センサでもよい。
【0077】
(D)上記実施形態に係る制動トルク調整装置100においては、縦フレーム101bは、挟込部15aに当接する先端面に磁石101eを備える、という構成である。しかしながら、制動トルク調整装置100は、斯かる構成に限られない。例えば、締結工具104のソケット104bは、口径内に磁石を備える、という構成でもよい。
【0078】
(E)上記実施形態に係る制動トルク調整装置100においては、センサ102に接続され、センサ102による検出値を表示する表示器103をさらに備える、という構成である。しかしながら、制動トルク調整装置100は、斯かる構成に限られない。例えば、制動トルク調整装置100は、必ずしも表示器103を備える必要はない。また、表示器103は、センサ102に無線で接続されてもよい。
【0079】
(F)上記実施形態に係る制動トルク調整装置100においては、ボルト15cとナット15dを締結するための締結工具104をさらに備える、という構成である。しかしながら、制動トルク調整装置100は、斯かる構成に限られない。例えば、締結工具104は、制動トルク調整装置100と別体として構成されてもよい。
【0080】
(G)上記実施形態に係る制動トルク調整装置100においては、マンコンベヤ1の第1ブレーキ11の制動トルクを調整するための制動トルク調整装置100であって、ブレーキ11は、第2回転本体部7cと、第2回転本体部7cに対して回転方向に回転可能な可動部14と、可動部14を第2回転本体部7cとともに回転軸方向両側から挟み込む挟込部15aと、挟込部15aを第2回転本体部7cに固定する第2固定部15bと、を備え、第2固定部15bは、挟込部15aと回転本体部7cを挿通するボルト15cと、ボルト15cに螺合するナット15dと、ボルト15cの頭部とナット15dのうちナット15dと挟込部15aとの間に配置される座金15eと、座金15eと挟込部15aとの間に配置され、挟込部15aを第2回転本体部7cへ向かって加圧する弾性部材15fと、を備える、という構成である。しかしながら、制動トルク調整装置100は、斯かる構成に限られない。制動トルク調整装置100は、マンコンベヤ1の第1ブレーキ11の制動トルクを調整するための制動トルク調整装置100であって、第1ブレーキ11は、第2回転本体部7cと、第2回転本体部7cに対して回転方向に回転可能な可動部14と、可動部14を第2回転本体部7cとともに回転軸方向両側から挟み込む挟込部15aと、挟込部15aを第2回転本体部7cに固定する第2固定部15bと、を備え、第2固定部15bは、図9に示すように、挟込部15aと回転本体部7cを挿通するボルト15cと、ボルト15cに螺合するナット15dと、ボルト15cの頭部とナット15dのうちボルト15cの頭部と挟込部15aとの間に配置される座金15eと、座金15eと挟込部15aとの間に配置され、挟込部15aを第2回転本体部7cへ向かって加圧する弾性部材15fと、を備える、という構成でもよい。このとき、締結工具104によってボルト15cを回すことで、弾性部材15fの撓み量を調整する。
【符号の説明】
【0081】
1…マンコンベヤ、1a…床プレート、1b…乗降部、2…構造体、2a…機械室、3…搬送部、3a…走行部、3b…ステップ、4…欄干部、4a…手摺ベルト、4b…欄干本体部、4c…カバー部、5…駆動部、6…処理部、7…第1回転部、7a…回転軸、7b…第1回転本体部、7c…第2回転本体部、7d…第1固定部、8…第2回転部、9…駆動源、9a…モータ、9b…第3回転部、9c…第2ブレーキ、10…伝達部、11…第1ブレーキ、11a…摩擦材、12…速度検出部、13…異常検出部、14…可動部、14a…可動本体部、14b…突出部、15…加圧部、15a…挟込部、15b…第2固定部、15c…ボルト、15d…ナット、15e…座金、15f…弾性部材、16…係合部、17…動作部、17a…動作源、17b…接続リンク、100…制動トルク調整装置、101…本体部、101a…横フレーム、101b…縦フレーム、101c…貫通孔、101d…固定ボルト、101e…磁石、102…センサ、102a…接触子、103…表示器、104…締結工具、104a…ラチェットハンドル、104b…ソケット、D1…第1横方向、D2…第2横方向、D3…上下方向、h1…挟込部の上面から座金の上面までの高さ、h2…弾性部材の高さ
【要約】
【課題】 弾性部材の撓み量を検出することができるマンコンベヤのブレーキの制動トルク調整装置を提供する。
【解決手段】 マンコンベヤのブレーキの制動トルクを調整するための制動トルク調整装置であって、ブレーキは、回転本体部と、回転本体部に対して回転方向に回転可能な可動部と、可動部を回転本体部とともに回転軸方向両側から挟み込む挟込部と、挟込部を回転本体部に固定する固定部と、を備え、固定部は、挟込部と回転本体部を挿通するボルトと、ボルトに螺合するナットと、ボルトの頭部とナットのうち何れか一方と挟込部との間に配置される座金と、座金と挟込部との間に配置され、挟込部を回転本体部へ向かって加圧する弾性部材と、を備え、制動トルク調整装置は、座金と挟込部のうち何れか一方に当接する本体部と、本体部に固定され、座金と挟込部のうち何れか他方の位置を検出するセンサと、を備える。
【選択図】 図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9