(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】属性の識別装置および識別方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/41 20060101AFI20231102BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20231102BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20231102BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G01S7/41
G01S13/34
G01S13/58 200
G08G1/01 F
(21)【出願番号】P 2020083417
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】星 将広
(72)【発明者】
【氏名】矢野 邦哲
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】京地 清介
(72)【発明者】
【氏名】千々和 憂希
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200083(JP,A)
【文献】特開2010-250501(JP,A)
【文献】特開2019-128634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0391250(US,A1)
【文献】米国特許第9661470(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G08G 1/01
G06V 10/20-10/36
G06V 20/50-20/59
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象エリアへと電波を送信するとともに前記検知対象エリアからの電波を受信してレーダスキャンを行うレーダ装置から出力されるレーダデータを周波数解析して周波数スペクトルを出力する周波数解析部と、
前記周波数スペクトルに基づいて前記検知対象エリア内を移動する物標に関するレーダ信号点それぞれの相対速度を計算する速度計算部と、
前記周波数スペクトルのピークを検出して前記レーダ信号点を抽出する信号点抽出部と、
抽出された前記レーダ信号点のクラスタを生成するクラスタ生成部と、
前記クラスタの代表点を特定する代表点特定部と、
前記代表点を含む関心領域を設定する関心領域設定部と、
前記関心領域に含まれる前記レーダ信号点それぞれの前記相対速度の値別に信号強度情報を計算する信号強度特定部と、
所定の時間長さぶんの前記レーダスキャンごとの前記相対速度の値と前記信号強度情報の値との組み合わせデータの集合を時系列に配列した上で、前記組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された前記組み合わせデータの集合との対比における相関値を計算する相関計算部と、
前記相関値を用いて前記物標の属性を判別する識別部と、を有する、
ことを特徴とする属性の識別装置。
【請求項2】
前記識別部が、機械学習のアルゴリズムを用いて前記物標の属性を判別する、
ことを特徴とする請求項1に記載の属性の識別装置。
【請求項3】
検知対象エリアへと電波を送信するとともに前記検知対象エリアからの電波を受信してレーダスキャンを行うレーダ装置から出力されるレーダデータを周波数解析して周波数スペクトルを出力する処理と、
前記周波数スペクトルに基づいて前記検知対象エリア内を移動する物標に関するレーダ信号点それぞれの相対速度を計算する処理と、
前記周波数スペクトルのピークを検出して前記レーダ信号点を抽出する処理と、
抽出された前記レーダ信号点のクラスタを生成する処理と、
前記クラスタの代表点を特定する処理と、
前記代表点を含む関心領域を設定する処理と、
前記関心領域に含まれる前記レーダ信号点それぞれの前記相対速度の値別に信号強度情報を計算する処理と、
所定の時間長さぶんの前記レーダスキャンごとの前記相対速度の値と前記信号強度情報の値との組み合わせデータの集合を時系列に配列した上で、前記組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された前記組み合わせデータの集合との対比における相関値を計算する処理と、
前記相関値を用いて前記物標の属性を判別する処理と、を有する、
ことを特徴とする属性の識別方法。
【請求項4】
機械学習のアルゴリズムを用いて前記物標の属性を判別する、
ことを特徴とする請求項3に記載の属性の識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、属性の識別装置および識別方法に関し、特に、電波を用いて物標としての歩行者の属性を識別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者の属性を識別する技術として、例えば、25台のカメラからなる多視点同期歩容撮影システムを構築して、広い年齢層の被験者の歩容を撮影することで歩容データベースを作成し、性別と年齢とのそれぞれに関して識別実験を行った結果に基づいて性別および年齢の識別に適した分類として子供、成人男性、成人女性、および高齢者という4つのクラスを設定し、前記4つのクラスへの識別を行う、技術が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】万波秀年ほか「歩容における性別・年齢の分類と特徴解析」,電子情報通信学会論文誌 D,社団法人電子情報通信学会,2009年,Vol.J92-D,No.8,pp.1373-1382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、個人の属性を識別するために多数のカメラが必要とされるような大掛かりなシステムは、実用的とは言い難い、という問題がある。また、実環境での使用を考慮した場合、画像では特に人同士の重なりなどの背景変化に弱く、部位ごとの周波数特徴を効果的に抽出することは困難である、という問題がある。
【0005】
そこで本発明は、簡便な機器構成によって歩行者の属性の識別を高精度に行うことが可能な属性の識別装置および識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、検知対象エリアへと電波を送信するとともに前記検知対象エリアからの電波を受信してレーダスキャンを行うレーダ装置から出力されるレーダデータを周波数解析して周波数スペクトルを出力する周波数解析部と、前記周波数スペクトルに基づいて前記検知対象エリア内を移動する物標に関するレーダ信号点それぞれの相対速度を計算する速度計算部と、前記周波数スペクトルのピークを検出して前記レーダ信号点を抽出する信号点抽出部と、抽出された前記レーダ信号点のクラスタを生成するクラスタ生成部と、前記クラスタの代表点を特定する代表点特定部と、前記代表点を含む関心領域を設定する関心領域設定部と、前記関心領域に含まれる前記レーダ信号点それぞれの前記相対速度の値別に信号強度情報を計算する信号強度特定部と、所定の時間長さぶんの前記レーダスキャンごとの前記相対速度の値と前記信号強度情報の値との組み合わせデータの集合を時系列に配列した上で、前記組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された前記組み合わせデータの集合との対比における相関値を計算する相関計算部と、前記相関値を用いて前記物標の属性を判別する識別部と、を有する、ことを特徴とする属性の識別装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の属性の識別装置において、前記識別部が、機械学習のアルゴリズムを用いて前記物標の属性を判別する、ことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、検知対象エリアへと電波を送信するとともに前記検知対象エリアからの電波を受信してレーダスキャンを行うレーダ装置から出力されるレーダデータを周波数解析して周波数スペクトルを出力する処理と、前記周波数スペクトルに基づいて前記検知対象エリア内を移動する物標に関するレーダ信号点それぞれの相対速度を計算する処理と、前記周波数スペクトルのピークを検出して前記レーダ信号点を抽出する処理と、抽出された前記レーダ信号点のクラスタを生成する処理と、前記クラスタの代表点を特定する処理と、前記代表点を含む関心領域を設定する処理と、前記関心領域に含まれる前記レーダ信号点それぞれの前記相対速度の値別に信号強度情報を計算する処理と、所定の時間長さぶんの前記レーダスキャンごとの前記相対速度の値と前記信号強度情報の値との組み合わせデータの集合を時系列に配列した上で、前記組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された前記組み合わせデータの集合との対比における相関値を計算する処理と、前記相関値を用いて前記物標の属性を判別する処理と、を有する、ことを特徴とする属性の識別方法である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の属性の識別方法において、機械学習のアルゴリズムを用いて前記物標の属性を判別する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明や請求項3に記載の発明によれば、相対速度の値と信号強度情報の値との組み合わせデータの集合の時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された前記組み合わせデータの集合との対比として計算される相関値を用いて物標の属性を判別するようにしているので、物標の属性に応じた特有の性質を的確に把握して物標の属性の識別を高精度に行うことが可能となる。
【0011】
また、レーダ(電波)であれば、画像処理のような複雑な前処理を施す必要がなく、物標それぞれの速度成分を定量的に抽出することができるので、周波数領域の特徴を簡易かつ高精度に求めることが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明や請求項4に記載の発明によれば、機械学習のアルゴリズムを用いるようにしているので、相対速度の値と信号強度情報の値との組み合わせデータの集合の時系列の配列に関する、時間軸方向における相関値に基づいて物標の属性の識別を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態に係る属性の識別装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1の属性の識別装置における処理手順であるとともにこの発明の実施の形態に係る属性の識別方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】速度・強度の時系列データの一例を示すグラフである。
【
図4】相関計算部における相関値の計算の仕方を説明する図である。
【
図5】クラスタについての相関値の集合のデータの一例を示すグラフである。
【
図6】クラスタの相関値の集合における相関値のピーク間の差分を説明する図である。
【
図7】クラスタの相関値の集合における相関値の極大値および極小値を説明する図である。
【
図8】クラスタの相関値の集合の、高速フーリエ変換処理後のL
1ノルムの例を示す図である。
【
図9】クラスタの相関値の集合に関する、データのシフト回ごとの相関値の変動について、男性の場合と女性の場合との比較の例を示す図である。
【
図10】クラスタの相関値の集合に関する、高速フーリエ変換処理後のL
1ノルムについて、男性の場合と女性の場合との比較の例を示す図である。
【
図11】相関値に纏わる3つの指標についての直交3軸座標系に、クラスタ毎にプロットした例を示す図である。
【
図12】
図11に示すデータについてサポートベクターマシンを用いて判別処理を行って超平面を計算した結果を示す図である。
【
図13】物標を手先に限定した場合の、クラスタの相関値の集合に関する、データのシフト回ごとの相関値の変動の例を示す図である。(A)は成人の場合の図である。(B)は子供の場合の図である。
【
図14】物標をももに限定した場合の、クラスタの相関値の集合に関する、データのシフト回ごとの相関値の変動の例を示す図である。(A)は成人の場合の図である。(B)は子供の場合の図である。
【
図15】物標を手先に限定した場合の、クラスタの相関値の集合に関する、高速フーリエ変換処理後のL
1ノルムの例を示す図である。(A)は成人の場合の図である。(B)は子供の場合の図である。
【
図16】物標をももに限定した場合の、クラスタの相関値の集合に関する、高速フーリエ変換処理後のL
1ノルムの例を示す図である。(A)は成人の場合の図である。(B)は子供の場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係る属性の識別装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2は、属性の識別装置1における処理手順であるとともにこの発明の実施の形態に係る属性の識別方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0016】
この属性の識別装置1は、検知対象エリア内の移動物体を物標として検知して前記物標の属性を識別する装置であり、主として、信号処理部2と、物標位置検出部3と、物標計算部4と、特徴量計算部5と、識別部6と、を備える。属性の識別装置1は、具体的には、検知対象エリア内を移動している人の属性を識別する。
【0017】
この実施の形態に係る属性の識別装置1は、検知対象エリアへと電波を送信するとともに前記検知対象エリアからの電波を受信してレーダスキャンを行うレーダ装置から出力されるレーダデータを周波数解析して周波数スペクトルを出力する周波数解析部21と、周波数スペクトルに基づいて検知対象エリア内を移動する物標に関するレーダ信号点それぞれの相対速度を計算する速度計算部23と、周波数スペクトルのピークを検出してレーダ信号点を抽出する信号点抽出部31と、抽出されたレーダ信号点のクラスタを生成するクラスタ生成部32と、クラスタの代表点を特定する代表点特定部34と、代表点を含む関心領域を設定する関心領域設定部41と、関心領域に含まれる前記レーダ信号点それぞれの前記相対速度の値別に信号強度情報を計算する信号強度特定部42と、所定の時間長さぶんのレーダスキャンごとの相対速度の値と信号強度情報の値との組み合わせデータの集合を時系列に配列した上で、前記組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された前記組み合わせデータの集合との対比における相関値を計算する相関計算部51と、相関値を用いて物標の属性を判別する識別部6と、を有する、ようにしている(
図1参照)。
【0018】
また、この実施の形態に係る属性の識別方法は、検知対象エリアへと電波を送信するとともに前記検知対象エリアからの電波を受信してレーダスキャンを行うレーダ装置から出力されるレーダデータを周波数解析して周波数スペクトルを出力する処理(ステップS1)と、周波数スペクトルに基づいて検知対象エリア内を移動する物標に関するレーダ信号点それぞれの相対速度を計算する処理(ステップS3)と、周波数スペクトルのピークを検出してレーダ信号点を抽出する処理(ステップS4)と、抽出されたレーダ信号点のクラスタを生成する処理(ステップS5)と、クラスタの代表点を特定する処理(ステップS6)と、代表点を含む関心領域を設定する処理(ステップS7)と、関心領域に含まれる前記レーダ信号点それぞれの前記相対速度の値別に信号強度情報を計算する処理(ステップS8)と、所定の時間長さぶんのレーダスキャンごとの相対速度の値と信号強度情報の値との組み合わせデータの集合を時系列に配列した上で、前記組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された前記組み合わせデータの集合との対比における相関値を計算する処理(ステップS9)と、相関値を用いて物標の属性を判別する処理(ステップS10、S11)と、を有する、ようにしている(
図2参照)。
【0019】
この発明では、例えば、レーダ方式としてFMCW(Frequency Modulated-Continuous Wave の略;周波数変調連続波)方式のレーダスキャンを行うレーダ装置によって取得されて出力されるレーダデータが用いられ得る。FMCW方式では、周波数変調した連続波を送信するとともに物標の表面で反射された反射波を受信し、送信信号と受信信号との間での周波数差に基づいて物標の位置や相対速度を検出する。なお、FMCW方式では、周波数が三角波状または鋸波状に変化する電波(送信信号)が送信される。
【0020】
この発明で用いられ得るレーダデータを出力するレーダ装置としては、例えば、送信部と受信部とを備えて電波を送信するとともに受信する機能を備え、FMCW方式のレーダスキャンを行ってレーダデータを出力する装置が挙げられる。
【0021】
レーダ装置の送信部としては、例えば、所定電圧を生成して出力する電圧発生器、電圧発生器から出力される前記所定電圧に応じた周波数を有する電波(送信信号)を生成して出力する電圧制御発振器、および、電圧制御発振器から出力される電波(送信信号)を検知対象エリアへと送信波として送信する(別言すると、出射する、放射する)送信アンテナなどを含む仕組みが挙げられる。
【0022】
送信部は、例えば79GHz帯、60GHz帯、或いは76GHz帯の周波数を有する電波(尚、「ミリ波」とも呼ばれる)を生成して送信アンテナを介して送信する。なお、この発明では、高周波数帯の電波を利用することが好ましい。
【0023】
レーダ装置の受信部としては、例えば、送信アンテナから送信された電波(即ち、送信波)が検知対象エリア内を移動する物標の表面で反射された電波(即ち、反射波;「ドップラ反射波」とも呼ばれる)を含む電波を受信波として受信する受信アンテナ、送信部から供給される電波(送信信号)と受信アンテナから出力される電波(受信信号)とをミキシングして差分信号を生成して出力するミキサ、および、ミキサから出力される差分信号に対して所定のサンプリング周波数を用いてサンプリング処理(別言すると、アナログ-デジタル変換処理)を施して前記差分信号をデジタルデータに変換してデジタル信号を出力するA/D変換器などを含む仕組みが挙げられる。
【0024】
なお、FMCW方式では、単数もしくは複数のアンテナによってアレーアンテナが形成され、受信アンテナとしてのアレーアンテナによって電波(反射波)を受信する。そして、ミキサおよびA/D変換器は、受信アンテナごとに設けられる。
【0025】
レーダ装置から出力されるレーダデータとしての差分信号は、送信部から供給される電波(送信信号)の周波数成分と受信アンテナから出力される電波(受信信号)の周波数成分との差の周波数成分を有する信号(つまり、ビート周波数を有する信号であり、「ビート信号」とも呼ばれる)である。
【0026】
レーダ装置は、例えば、あくまで一例として挙げると、自動車などの車両に取り付けられて車両周囲の所定範囲を検知対象エリアとしたり、建物などの構造物に取り付けられて構造体周囲や建物敷地内の所定範囲を検知対象エリアとしたりする。
【0027】
信号処理部2は、レーダ装置から出力されるレーダデータ(即ち、レーダ生データ、レーダRawデータ)の周波数解析を行うとともに物標の位置および相対速度を計算する。信号処理部2は、周波数解析部21、位置計算部22、および速度計算部23を含んで構成され、レーダ装置から出力されるレーダデータとしての差分信号に対して周波数解析を施して、検知対象エリア内を移動する物標を検知して前記物標の位置および相対速度を計算する。
【0028】
属性の識別装置1は、レーダ装置から出力されるレーダデータを記録して格納しておく記憶部を備えて前記記憶部からレーダデータを読み込んで用いるようにしてもよく、また、レーダ装置から出力されてサーバなどの外部記憶装置に格納されているレーダデータを読み込んで用いるようにしてもよい。
【0029】
周波数解析部21は、レーダ装置(具体的には、受信部のA/D変換器)から出力されるレーダデータ(別言すると、波形データ)としての差分信号(別言すると、ビート信号;尚、デジタル信号である)の周波数解析を行う。周波数解析部21は、具体的には、1回のレーダスキャンあたりのサンプリング時間幅(例えば、50ミリ秒間)ぶんの波形データ、具体的には差分信号(ビート信号)の振幅(即ち、受信レベル)に対して高速フーリエ変換処理を施して前記差分信号の振幅の周波数分布を示す周波数スペクトルを生成し、スペクトル強度および位相情報を出力する。周波数スペクトルは、差分信号に含まれる各周波数成分の振幅(受信レベル)を示す。
【0030】
高速フーリエ変換処理に際しては、検知対象とする物標の例えば移動速度が考慮されるなどした上で、前記物標の移動によって発生し得る周波数の範囲が設定されるとともに周波数間隔がドップラ周波数として設定される。周波数解析部21は、つまり、レーダ装置から出力されるレーダデータ(波形データ)についてドップラ成分、すなわち差分信号のドップラ周波数ごとのスペクトル強度と位相とを周波数解析して求める。
【0031】
位置計算部22は、周波数解析部21から出力される周波数スペクトルにおける位相情報に基づいて、レーダ装置(具体的には、レーダ装置の受信アンテナ)と検知対象の物標との間の距離に関する距離情報、および、レーダ装置(具体的には、レーダ装置の受信アンテナ)に対する前記物標の方位角度に関する角度情報を生成して出力する。距離情報および角度情報は、ドップラ周波数ごとに求められる。
【0032】
差分信号の位相情報に基づく距離や方位角度の計算の仕法は、公知の手法が存在し、また、この発明では特定の手法には限定されないので、ここでは詳細の説明は省略する。例えば、レーダ装置と物標との間の距離は、送信波の周波数と受信波の周波数との差がレーダ装置と物標との間の距離に比例して増減する、ことを利用する手法などの公知の手法によって計算され得る。また、レーダ装置に対する物標の方位角度は、具体的には例えば、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification の略)法やESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques の略)法などの公知の測角方式によって計算され得る。
【0033】
速度計算部23は、周波数解析部21における周波数解析で用いられたドップラ周波数のそれぞれを用いて、レーダ装置(具体的には、レーダ装置の受信アンテナ)に対する物標の速度である相対速度(具体的には、送信波が物標の表面で反射した時の瞬時の相対速度)を計算して出力する。すなわち、相対速度は、ドップラ周波数ごとに求められる。
【0034】
相対速度の計算の仕法は、公知の手法が存在し、また、この発明では特定の手法には限定されないので、ここでは詳細の説明は省略する。例えば、相対速度は、レーダに対して相対的に移動している物標の表面で反射して受信アンテナによって受信される電波(即ち、受信波)の周波数は、送信アンテナから送信される電波(即ち、送信波)の周波数に対して、前記物標の表面で反射した際に受信波が前記物標の速度による影響を受け、ドップラ効果により、前記物標とレーダ装置との間の相対速度に応じてシフトする、ことを利用する手法などの公知の手法によって計算され得る。
【0035】
信号処理部2は、上記の処理により、レーダ装置から出力されるレーダデータ(即ち、レーダ生データ、レーダRawデータ)に対して信号処理/周波数解析を施して、速度成分ごとの、直交座標系における強度分布を示した平面図であるPPI(Plan Position Indicator の略;平面図表示)を生成し、4次元データ(X,Y,I,V)を出力する。なお、XおよびYは、x軸とy軸とが相互に直交する2次元直交座標系におけるx座標およびy座標(単位:m)である。Iは信号強度(受信レベル)(単位:dB)であり、Vは相対速度(単位:km/h)である。信号処理部2から出力される4次元データ(X,Y,I,V)の相対速度V[km/h]は、必要に応じ、相対速度Vの値が例えば0.1[km/h]などの所定のピッチで区分された上で相対速度Vの実際の値が前記区分に当てはめられて、相対速度のランクとして出力されるようにしてもよい。
【0036】
物標位置検出部3は、信号処理部2における処理結果を用いて、物標としての移動している人を検出するとともに前記移動している人に関する情報を計算する。物標位置検出部3は、信号点抽出部31、クラスタ生成部32、追尾処理部33、および代表点特定部34を含んで構成され、信号処理部2から出力される、信号処理部2における処理結果である4次元データ(X,Y,I,V)を用いて、検知対象エリア内を移動している人を検出して前記移動している人に関する情報を計算する。
【0037】
信号点抽出部31は、信号処理部2の周波数解析部21によって生成される周波数スペクトルを用いて、所定の大きさの振幅を有するピークに対応するドップラ周波数(別言すると、ピーク周波数)を検出して、検知対象エリア内を移動する物標に関するレーダ信号点の周波数として抽出する。具体的には、信号点抽出部31は、ピークの検出のための閾値を設定し、周波数スペクトルの振幅について、前記閾値以上の振幅をピークと判定して抽出する。
【0038】
ピークの検出・抽出の仕法は、特定の方法・方式に限定されるものではなく、クラッタと物標とを区別して物標からの反射成分と考えられる周波数を検出・抽出することができればどのような方法・方式であってもよい。ピークの検出・抽出の仕法として、具体的には例えばCFAR(Constant False Alarm Rate の略)アルゴリズムが用いられるようにしてもよい。
【0039】
信号点抽出部31は、また、位置計算部22から出力されるドップラ周波数ごとの距離情報および角度情報を用いて、空間位置を座標軸とする座標系における、上記において検出されたドップラ周波数(ピーク周波数)に対応するレーダ信号点の分布に関する分布情報を生成して出力する。座標系としては、例えば、レーダ装置の設置位置を基準とした、動径距離と動径方向とについての極座標系、または、左右方向における距離と奥行方向における距離とについての直交座標系が用いられる。
【0040】
クラスタ生成部32は、信号点抽出部31から出力されるレーダ信号点の分布情報を用いてクラスタリング処理を行い、空間位置を座標軸とする座標系における、レーダ信号点のクラスタを生成する。
【0041】
クラスタの生成の仕法は、特定の方法・方式に限定されるものではなく、例えば、信号点抽出部31によって検出・抽出されたレーダ信号点の密度に基づくなどして物標についてのレーダ信号点の集まりをクラスタリングする、言い換えると、相互の位置関係が一定距離以内で近接しているレーダ信号点の集まりを括って抽出することができればどのような方法・方式であってもよい。クラスタの生成の仕法として、具体的には例えばDBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise の略)がクラスタリングアルゴリズムとして用いられるようにしてもよい。クラスタ生成部32によって生成されるクラスタのそれぞれが1つの物標に対応する。
【0042】
クラスタ生成部32によって生成される各クラスタを区別して一意に特定するための識別符号をNとする(Nは、例えばシリアル番号)。そして、クラスタNについての、当該のクラスタNに含まれるレーダ信号点それぞれの相対速度(即ち、信号処理部2の速度計算部23によって計算される各ドップラ周波数に対応するレーダ信号点の相対速度)の値の集まりのことを「クラスタNの相対速度の値の集合」と呼ぶ。
【0043】
なお、物標位置検出部3は、検知対象エリアで検知された物標が、延いてはクラスタ生成部32によって生成されたクラスタが、移動している人に関するものであるか否かを判別・識別した上で、移動している人に関するクラスタに対してのみ識別符号Nを付するようにしてもよい。検知された物標が移動している人であるか否かを判別・識別したり、生成されたクラスタが移動している人に関するものであるか否かを判別・識別したりする仕法は、公知の手法が存在し、また、この発明では特定の手法には限定されないので、ここでは詳細の説明は省略する。
【0044】
追尾処理部33は、過去に検出されている物標を追尾する処理を、クラスタ生成部32によって生成されたクラスタNごと(即ち、物標ごと)に行う。つまり、追尾処理部33は、連続する時点においてクラスタ生成部32によって生成される、同一の物標に関するクラスタを関連づけることにより、過去のレーダスキャンによって検出されて識別符号Nが付されているクラスタの追尾処理を行う。
【0045】
クラスタ/物標の追尾の仕法は、公知の手法が存在し、また、この発明では特定の手法には限定されないので、ここでは詳細の説明は省略する。例えば、クラスタ/物標の追尾は、追尾フィルタとしてα-βフィルタ、カルマンフィルタ、或いはパーティクルフィルタを用いる手法などの公知の手法によって行われ得る。
【0046】
追尾処理部33は、必要に応じ、クラスタ生成部32によって生成されるクラスタそれぞれの代表点を決定した上で追尾処理を行うようにしてもよい。例えば、追尾処理部33は、1つのクラスタとして認識された信号点群について、当該の信号点群に含まれる信号点それぞれの位置の、信号強度(受信レベル)I[dB]を重みとして用いた加重平均の位置を計算するなどして、前記1つのクラスタに含まれる複数の信号点を1点に集約した上で追尾処理を行うようにしてもよい。
【0047】
代表点特定部34は、クラスタ生成部32によって生成されるとともに追尾処理部33によって追尾されるクラスタNごとに、各レーダスキャンにおける、物標としてのクラスタNの代表点を特定する。代表点特定部34は、各クラスタNの例えば重心位置を代表点の位置として特定して、クラスタNごとに特定した代表点の位置座標X[m],Y[m]の組み合わせを出力する。
【0048】
物標計算部4は、物標位置検出部3における処理結果を用いて、特徴量計算部5による次の処理における関心領域を設定するとともに前記関心領域に関する情報を計算する。物標計算部4は、関心領域設定部41、信号強度特定部42、およびVTデータ生成部43を含んで構成され、物標位置検出部3から出力される、物標位置検出部3における処理結果を用いて、特徴量計算部5による次の処理における関心領域を設定して前記関心領域に関する情報を計算する。
【0049】
関心領域設定部41は、クラスタNごとに、物標位置検出部3の代表点特定部34から出力される各クラスタNの代表点の位置を中心とする所定の範囲を関心領域として設定する。関心領域として設定される範囲は、特定の大きさや形状に限定されるものではなく、検知対象の物標の特に動作速度に纏わる特性を適切に把握することが考慮されるなどした上で、適当な大きさや形状に適宜設定される。関心領域は、具体的には例えば、クラスタNの代表点の位置座標X[m],Y[m]を中心とする±1[m]の四角形で囲まれる範囲に設定されることが考えられる。
【0050】
関心領域の大きさや形状は、予め固定的に設定されて関心領域設定部41に格納されているようにしてもよく、或いは、関心領域設定部41に対してユーザが適宜設定可能であるようにしてもよい。
【0051】
関心領域設定部41は、さらに、信号処理部2から出力される4次元データ(X,Y,I,V)の入力を受け、前記4次元データ(X,Y,I,V)のうち、関心領域として設定されている範囲に含まれているデータのみを抜き出す。関心領域設定部41は、つまり、関心領域として設定されている範囲に含まれている、全ての速度成分についての強度データを出力する。
【0052】
信号強度特定部42は、関心領域設定部41から出力される関心領域に関する4次元データ(X,Y,I,V)を速度成分ごとに参照し、速度成分別に、関心領域に関する強度情報を生成する。信号強度特定部42は、具体的には、クラスタNの関心領域に関する4次元データ(X,Y,I,V)について、相対速度V[km/h]ごとに、例えば、信号強度(受信レベル)I[dB]のうちの最大値Imaxを特定して関心領域に関する強度情報としたり、信号強度I[dB]の平均値Iavgを計算して関心領域に関する強度情報としたりする。
【0053】
ここで、信号強度特定部42によって特定されたり計算されたりする所定の特性をもった信号強度I[km/h]のことを「信号強度情報」と呼ぶ。つまり、信号強度特定部42は、クラスタNごとの、関心領域に関する、相対速度Vの値と信号強度情報の値(例えば、最大値Imax,平均値Iavg[dB])との組み合わせデータを出力する。
【0054】
VTデータ生成部43は、信号強度特定部42から出力される関心領域に関する信号強度情報を用いて、各レーダスキャンの実行時刻に基づく経過時間T[秒]および相対速度V[km/h]と、これら経過時間T[秒]と相対速度V[km/h]との組み合わせに対応する信号強度情報(例えば、最大値Imax,平均値Iavg[dB])と、の組み合わせデータを生成する。
【0055】
信号処理部2、物標位置検出部3、および物標計算部4による処理は、レーダスキャンごとに行われる。すなわち、1回のレーダスキャンが行われるたびに、クラスタNごとの、関心領域に関する、経過時間T[秒]と相対速度V[km/h]と信号強度情報(例えば、最大値Imax,平均値Iavg[dB])との組み合わせデータが作成される。
【0056】
特徴量計算部5は、物標計算部4における処理結果を用いて、物標としての移動している人の属性を識別するための特徴量を計算する。特徴量計算部5は、相関計算部51、周期計算部52、振幅計算部53、および相関変換部54を含んで構成され、物標計算部4から出力される、前記物標計算部4おける処理結果を用いて、検知対象エリア内を移動している人に関する特徴量を計算する。下記において説明する特徴量計算部5による処理は、その都度断らないが、クラスタNごとに(言い換えると、クラスタN各々を単位として)行われる。
【0057】
相関計算部51は、物標計算部4のVTデータ生成部43から出力される経過時間T[秒]と相対速度V[km/h]との組み合わせに対応する信号強度情報(例えば、最大値Imax,平均値Iavg[dB])のデータを用いて相関分析を行う。
【0058】
相関計算部51は、具体的には、まず、所定の時間長さぶん(言い換えると、レーダスキャンの所定の回数ぶん)のレーダスキャンごとの相対速度Vの値と信号強度情報の値との組み合わせデータの集合を時系列(言い換えると、レーダスキャンの実行順)に配列する。時系列で配列された、レーダスキャンごとの相対速度Vの値と信号強度情報の値との組み合わせデータの集合のことを「速度・強度の時系列データ」と呼ぶ。
【0059】
相関計算部51から出力される速度・強度の時系列データの一例を
図3に示す。
図3は、各レーダスキャンの実行時刻に基づく経過時間T[秒](即ち、1回のレーダスキャンあたりのサンプリング時間幅(例えば、50ミリ秒間)とレーダスキャンの実行回数とを掛け合わせたもの)を横軸とするとともに相対速度V[km/h]の値を縦軸として、経過時間T[秒]と相対速度V[km/h]との組み合わせに対応する信号強度(受信レベル)I[dB]のうちの最大値Imax[dB]を明暗で表して表示したものである。
図3では、最大信号強度が、弱い場合は暗く表示され、強い場合は明るく表示されている。速度・強度の時系列データは、時系列における、物標に関する瞬時の速度の分布情報であるとも言える。なお、
図3および
図5~
図16は、2.5秒ぶん(言い換えると、50回分のレーダスキャン)のデータが用いられて整理されている。
【0060】
ここで、レーダ装置を用いて得られる相対速度の情報は、物標としての移動している人の胴体速度だけでなく、頭、上腕、前腕・手先、大腿、および下腿・足先などの様々な部位の速度成分を同時に取得している。したがって、移動している人の頭、胴体、上腕、前腕・手先、大腿、および下腿・足先などの各部位の速度の情報が内在することになるため、レーダスキャンごとの相対速度Vの値と信号強度情報の値(
図3に示す例では、最大信号強度の値)との組み合わせデータを時系列に並べることにより、各部位の運動/動作の周期が重畳して現れるようになる。
【0061】
相関計算部51は、続いて、速度・強度の時系列データについて、レーダスキャンごとの相対速度Vの値と信号強度情報の値との組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら内積を計算して、シフト前の、時系列で配列された組み合わせデータの集合との対比における相関値を計算する(
図4参照)。組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つシフトさせる際、時系列の最後の時点に配置されている組み合わせデータは時系列の最初の時点へと配置される(
図4参照)。相関値の計算は、時系列で配列された組み合わせデータの数と同じだけシフトを繰り返して行われる。なお、
図4に示す例では、時系列で配列された組み合わせデータの数が50であり、シフト実行回が50回目のデータは、シフト前の、時系列で配列された組み合わせデータの集合と一致する。
【0062】
相関計算部51は、速度・強度の時系列データを構成する、レーダスキャンごとの相対速度Vの値と信号強度情報の値との組み合わせデータを時間軸方向にシフトさせた回(「データのシフト回」とも表記する)ごとの相関値を出力する。相関計算部51によって計算される、クラスタNについてのデータのシフト回ごとの相関値の集まりのことを「クラスタNの相関値の集合」と呼ぶ。
【0063】
相関計算部51から出力されるクラスタNの相関値の集合のデータの一例を
図5に示す。
図5は、データのシフト回を横軸とするとともに相関値を縦軸として、データのシフト回ごとの相関値の変動を折れ線で表して表示したものである。
図5では、物標の運動の周期が重なったときに相関値のピークが現れる。
【0064】
周期計算部52は、相関計算部51から出力されるクラスタNの相関値の集合を用いて、クラスタNの相関値の集合を時系列(即ち、速度・強度の時系列データについての時間軸方向のシフトの実行順)に配列したときの、相関値のピーク間の差分の平均値を計算して出力する。
【0065】
クラスタNの相関値の集合(即ち、時系列で配列された相対速度Vの値と信号強度情報の値との組み合わせデータを時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された組み合わせデータの集合との対比における相関値の集まり)における相関値のピーク間の差分D1,D2,D3は、物標の動作の周期性を表す指標である(
図6参照)。すなわち、相関値のピーク間の差分の平均値により、物標の運動周期(ここでは、移動している人の歩行に纏わる動作の周期)の遅速を把握することが可能となる。なお、シフト実行回が50回目のデータは、シフト前の、時系列で配列された組み合わせデータの集合と一致するので相関値が1であり、周期計算部52による処理においては相関値のピークとしては扱わない。
【0066】
振幅計算部53は、相関計算部51から出力されるクラスタNの相関値の集合を用いて、クラスタNの相関値の集合を時系列(即ち、速度・強度の時系列データについての時間軸方向のシフトの実行順)に配列したときの、相関値の極大値および極小値の平均と分散とを計算して出力する。
【0067】
クラスタNの相関値の集合における相関値の極大値Ex1,Ex2,Ex3,Ex4および極小値En1,En2,En3,En4,En5は、物標の動作の振幅を表す指標である(
図7参照)。すなわち、相関値の極大値および極小値の平均や分散により、物標の運動の振幅や変動(ここでは、移動している人の歩行に纏わる動作の振れ幅やばらつき)の大小を把握することが可能となる。なお、シフト実行回が50回目のデータは、シフト前の、時系列で配列された組み合わせデータの集合と一致するので相関値が1であり、振幅計算部53による処理においては相関値の極大値としては扱わない。
【0068】
相関変換部54は、相関計算部51から出力されるクラスタNの相関値の集合を用いて、高速フーリエ変換を行い、L1ノルムを計算して出力する。相関変換部54は、具体的には、以下の処理を行う。
【0069】
1)相関計算部51から出力される、所定の時間長さぶん(言い換えると、レーダスキャンの所定の回数ぶん)の、データのシフト回ごとの相関値の平均(「相関平均値」と呼ぶ)を算出する。
2)データのシフト回ごとの相関値と相関平均値との差(「シフト回ごとの相関差分」と呼ぶ)を算出する。
3)シフト回ごとの相関差分に対して高速フーリエ変換処理を施す。具体的には、シフト回ごとの相関値の大きさ(言い換えると、振幅)に対して高速フーリエ変換処理を施して相関値の振幅の分布を示すパワースペクトルを生成する。
4)高速フーリエ変換処理の結果の絶対値をとり、前記絶対値を2乗する。
5)上記4の結果として算出される、前記絶対値を2乗した値の集合のうちの最大値で、前記絶対値を2乗した値のそれぞれを割り、前記絶対値を2乗した値を0から1までの範囲で正規化する。
【0070】
上記の処理により、クラスタNの相関値の集合の、高速フーリエ変換処理後のL
1ノルムが求められ、相関変換部54は、高速フーリエ変換処理後のL
1ノルムとして、高速フーリエ変換後の周波数と振幅との組み合わせデータを出力する(
図8参照)。
【0071】
上記により、特徴量計算部5は、クラスタNごとの、相関値のピーク間の差分の平均値、相関値の極大値および極小値の平均と分散、さらに高速フーリエ変換後のL1ノルムとしての周波数および振幅の組み合わせデータを出力する。
【0072】
識別部6は、特徴量計算部5から出力されるクラスタNごとの各種指標の組み合わせデータに基づいて、クラスタNごとに物標の属性を識別する。識別部6は、具体的には例えば、クラスタNに対応する、物標としての移動している人の性別や年代を判別する。
【0073】
人の属性の判別について、識別部6は、例えば、機械学習のアルゴリズムの1つであるサポートベクターマシンを用いて判別処理を行うようにしてもよい。
【0074】
この場合は、識別部6は、例えば、クラスタNの相関値の集合の、相関値のピーク間の差分の平均値x1、相関値の極大値および極小値の平均の値x2、ならびに相関値の極大値および極小値の分散の値x3を変数として含むとともに係数f1、f2、およびf3を含む式(下記の数式1参照)を用いて人の属性の判別処理を行う。数式1について、例えば、クラスタNが男性についてのレーダ信号点群である場合はy=0とされ、クラスタNが女性についてのレーダ信号点群である場合はy=1とされる。
(数1) y=f(x1,x2,x3,f1,f2,f3)
【0075】
数式1の係数f1、f2、およびf3は、サポートベクターマシンが用いられて予め決定される。係数f1、f2、およびf3の値は、男性についてのレーダ信号点群で構成されるクラスタNの相関値の集合の、相関値のピーク間の差分の平均値x1、相関値の極大値および極小値の平均の値x2、ならびに相関値の極大値および極小値の分散の値x3、ならびにyの値(即ち、0)の組み合わせ(複数の組み合わせ)と、女性についてのレーダ信号点群で構成されるクラスタNの相関値の集合の、相関値のピーク間の差分の平均値x1、相関値の極大値および極小値の平均の値x2、ならびに相関値の極大値および極小値の分散の値x3、ならびにyの値(即ち、1)の組み合わせ(複数の組み合わせ)と、を含む教師データが用意され、この教師データを男性についてのクラスタと女性についてのクラスタとに分離するための平面(「超平面」と呼ばれる)が最大のマージンを有するように決定される。
【0076】
識別部6は、上記によって予め決定された係数f1、f2、およびf3を含む数式1に、特徴量計算部5から出力されるクラスタNの相関値のピーク間の差分の平均値x1、相関値の極大値および極小値の平均の値x2、ならびに相関値の極大値および極小値の分散の値x3を代入して求められるyの値に基づいて、前記クラスタNが、男性についてのレーダ信号点群であるのか、或いは、女性についてのレーダ信号点群であるのかを判別する。
【0077】
ここで、識別部6は、クラスタNの相関値の集合を時系列に配列したときの、相関値のピーク間の差分の平均値x1、相関値の極大値および極小値の平均の値x2、ならびに相関値の極大値および極小値の分散の値x3のうちの少なくとも一つを用いて人の属性の判別処理を行うようにしてもよい。さらに、識別部6は、クラスタNの相関値の集合の、高速フーリエ変換処理後のL1ノルムのみを用いて人の属性の判別処理を行うようにしてもよく、或いは、上記平均値x1、平均の値x2、および分散の値x3のうちの少なくとも一つと前記L1ノルムとを組み合わせて用いて人の属性の判別処理を行うようにしてもよい。識別部6は、また、人の属性として、例えば、成人であるか子供であるかを判別するようにしてもよい。
【0078】
また、識別部6は、人の属性の判別について、機械学習のアルゴリズムの1つであるニューラルネットワーク、具体的には例えばRNN(Reccurent Neural Network の略)であるLSTM(Long-Short Term Memory の略)アルゴリズムを用いて判別処理を行うようにしてもよい。
【0079】
次に、このような構成の属性の識別装置1および属性の識別方法の動作や作用などについて
図2も用いて説明する。
【0080】
まず、信号処理部2の周波数解析部21が、レーダ装置から出力されるレーダデータ(別言すると、波形データ;具体的には、差分信号の振幅)としてのデジタル信号に対して高速フーリエ変換を用いて周波数解析を行って周波数スペクトルを生成し、差分信号のドップラ周波数ごとのスペクトル強度および位相情報を出力する(ステップS1)。
【0081】
次に、位置計算部22が、周波数解析部21から出力される位相情報に基づいて、ドップラ周波数ごとに、レーダ装置と検知対象の物標との間の距離を計算するとともにレーダ装置に対する前記物標の方位角度を計算し、計算の結果得られる距離情報および角度情報を出力する(ステップS2)。また、速度計算部23が、周波数解析部21における周波数解析で用いられたドップラ周波数を用いて、ドップラ周波数ごとに相対速度を計算して出力する(ステップS3)。
【0082】
次に、物標位置検出部3の信号点抽出部31が、信号処理部2の周波数解析部21によって生成される周波数スペクトルにおけるピークに対応するドップラ周波数(別言すると、ピーク周波数)を検出するとともに、位置計算部22から出力されるドップラ周波数ごとの距離情報および角度情報を用いて、前記検出されたドップラ周波数(ピーク周波数)に対応するレーダ信号点の分布情報を生成して出力する(ステップS4)。また、クラスタ生成部32が、前記分布情報を用いてクラスタリング処理を行い、レーダ信号点のクラスタを生成する(ステップS5)。さらに、代表点特定部34が、クラスタNの代表点(例えば、重心位置)を特定する(ステップS6)。この際、追尾処理部33が、連続する時点においてクラスタ生成部32によって生成される、同一の物標に関するクラスタを関連づけることにより、クラスタNの追尾処理を行う。
【0083】
次に、物標計算部4の関心領域設定部41が、クラスタNの代表点の位置を中心とする所定の範囲を関心領域として設定した上で、関心領域に関する4次元データ(X,Y,I,V)を出力する(ステップS7)。続いて、信号強度特定部42が、関心領域に関する4次元データ(X,Y,I,V)を速度成分ごとに参照し、速度成分別に、関心領域に関する信号強度情報を生成し(ステップS8)、また、VTデータ生成部43が、前記信号強度情報を用いて、各レーダスキャンの実行時刻に基づく経過時間T[秒]および相対速度V[km/h]と、これら経過時間T[秒]と相対速度V[km/h]との組み合わせに対応する信号強度情報(例えば、最大値Imax,平均値Iavg[dB])と、の組み合わせデータを生成する。
【0084】
次に、特徴量計算部5の相関計算部51が、物標計算部4のVTデータ生成部43から出力される経過時間T[秒]と相対速度V[km/h]との組み合わせに対応する信号強度情報(例えば、最大値Imax,平均値Iavg[dB])のデータを用いて、所定の時間長さぶんのレーダスキャンごとの前記データの集合を時系列に配列して速度・強度の時系列データを作成し、作成した速度・強度の時系列データについて、レーダスキャンごとの相対速度Vの値と信号強度情報の値との組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された組み合わせデータの集合との対比における相関値を計算する(ステップS9)。
【0085】
続いて、周期計算部52が、相関計算部51から出力されるクラスタNの相関値の集合を時系列(即ち、速度・強度の時系列データについての時間軸方向のシフトの実行順)に配列したときの、相関値のピーク間の差分の平均値を計算する。また、振幅計算部53が、相関計算部51から出力されるクラスタNの相関値の集合を時系列(即ち、速度・強度の時系列データについての時間軸方向のシフトの実行順)に配列したときの、相関値の極大値および極小値の平均と分散とを計算する。さらに、相関変換部54が、相関計算部51から出力されるクラスタNの相関値の集合に対して高速フーリエ変換を行ってL1ノルムを計算する(ステップS10)。
【0086】
次に、識別部6が、特徴量計算部5から出力される、クラスタNごとの、相関値のピーク間の差分の平均値、相関値の極大値および極小値の平均と分散、ならびに高速フーリエ変換後のL1ノルムとしての周波数および振幅の値に基づいて、クラスタNごとに物標としての移動している人の属性を識別する(ステップS11)。なお、具体的には、相関値のピーク間の差分の平均値、相関値の極大値および極小値の平均と分散、ならびに高速フーリエ変換後のL1ノルムのうちの少なくとも一つに基づいて、物標としての移動している人の属性を識別するようにすればよい。
【0087】
ここで、人の属性の違いによる、レーダデータに表れる特性の比較の例を説明する。
【0088】
図9は、物標が男性である場合の、50回のレーダスキャンによって取得されたレーダデータについてのクラスタNの相関値の集合と、物標が女性である場合の、50回のレーダスキャンによって取得されたレーダデータについてのクラスタNの相関値の集合とのそれぞれに関して、データのシフト回ごとの相関値の変動を折れ線で表して表示して1つのグラフ上に整理したグラフである。
図9から、男性と女性とではデータのシフト回ごとの相関値の変動に明らかな違いがあることが看取され、データのシフト回ごとの相関値の変動に基づいて、男性であるか女性であるかを判別することが、延いては人の属性を識別することが可能であることが確認される。
【0089】
図10は、物標が男性である場合の、50回のレーダスキャンによって取得されたレーダデータについてのクラスタNの相関値の集合と、物標が女性である場合の、50回のレーダスキャンによって取得されたレーダデータについてのクラスタNの相関値の集合とのそれぞれに関して(尚、レーダデータは
図9に関連して用いたものと同じである)、高速フーリエ変換処理後のL
1ノルムの値を折れ線で表示して1つのグラフ上に整理したグラフである。
図10から、男性と女性とではL
1ノルムの値に明らかな違いがあることが看取され、L
1ノルムの値に基づいて男性であるか女性であるかを判別することが、延いては人の属性を識別することが可能であることが確認される。
【0090】
図11は、相関値のピーク間の差分の平均値(図では「周期」と表記)、相関値の極大値および極小値の平均の値、ならびに相関値の極大値および極小値の分散の値についての直交3軸座標系に、レーダデータから検出・抽出されたクラスタについて計算される値に基づいてクラスタごとにプロットした結果である。
図11に示すクラスタのそれぞれについては、男性についてのクラスタであるのか女性についてのクラスタであるのかが分かっている。
図11に示す結果から、男性についてのクラスタと女性についてのクラスタとに分離するための平面が存在すると考えられる。
【0091】
図12は、
図11に示すデータについてサポートベクターマシンを用いて判別処理を行って超平面を計算した結果である。
図12に示す結果から、相関値のピーク間の差分の平均値、相関値の極大値および極小値の平均の値、ならびに相関値の極大値および極小値の分散の値を適切に組み合わせて用いることにより、機械学習のアルゴリズムを用いて男性であるか女性であるかを判別することが、延いては人の属性を識別することが可能であることが確認される。
【0092】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。具体的には、この発明の要旨は、所定の時間長さぶんのレーダスキャンごとの相対速度Vの値と信号強度情報の値との組み合わせデータの集合を時系列に配列した上で、前記組み合わせデータの時系列の配列を時間軸方向に1つずつシフトさせながら、シフト前の、時系列で配列された前記組み合わせデータの集合との対比として計算される相関値を用いて物標の属性を判別することであり、この要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、この発明が適用される装置の具体的な構成は上記の実施の形態における属性の識別装置1に限定されるものではなく、具体的な装置構成は種々の態様があり得る。
【0093】
また、上記の実施の形態では特徴量計算部5がクラスタNの相関値の集合を時系列に配列したときの、相関値のピーク間の差分の平均値、相関値の極大値および極小値の平均、ならびに相関値の極大値および極小値の分散を計算するとともに識別部6が前記指標のうちの少なくとも一つを用いて人の属性の判別処理を行うようにしているが、相関計算部51によって計算されて出力されるクラスタNの相関値の集合を用いて計算される、物標としての移動している人の属性を識別するための特徴量としての指標は前記したものには限定されない。例えば、クラスタNの相関値の集合における相関値の極大値および極小値の中央値やレンジなどが計算されて判別処理に用いられるようにしてもよい。
【0094】
また、代表点特定部34および関心領域設定部41が人の特定の部位に限定して関心領域を設定して前記関心領域に関して取得されたレーダデータが用いられるようにしてもよい。この点に関連して、
図13は、物標を手先に限定した場合の、50回のレーダスキャンによって取得されたレーダデータについてのクラスタNの相関値の集合に関して、データのシフト回ごとの相関値の変動を折れ線で表して表示したグラフであり、(A)は成人についての結果であり、(B)は子供についての結果である。これら
図13の(A)と(B)との比較から、成人と子供とではデータのシフト回ごとの相関値の変動に明らかな違いがあることが看取され、物標が手先に限定されたレーダデータを用いることにより、或いは、物標として手先を含むレーダデータを用いることにより、データのシフト回ごとの相関値の変動に基づいて成人であるか子供であるかを判別することが、延いては人の属性を識別することが可能であることが確認される。また、
図13の(A)と(B)との整理から、相関値の極大値および極小値の分散が、成人の手先は1.1760となり、子供の手先は0.0773となる。また、相関値の極大値および極小値の平均が、成人の手先は0.9982となり、子供の手先は0.9991となる。これらの結果から、成人と子供とでは相関値の極大値および極小値の特に分散が大きく異なるので、物標が手先に限定されたレーダデータを用いることにより、或いは、物標として手先を含むレーダデータを用いることにより、データのシフト回ごとの相関値の極大値および極小値の分散に基づいて成人であるか子供であるかを判別することが、延いては人の属性を識別することが可能であることが確認される。
【0095】
図14は、物標をももに限定した場合の、50回のレーダスキャンによって取得されたレーダデータについてのクラスタNの相関値の集合に関して、データのシフト回ごとの相関値の変動を折れ線で表して表示したグラフであり、(A)は成人についての結果であり、(B)は子供についての結果である。これら
図14の(A)と(B)との比較から、成人と子供とではデータのシフト回ごとの相関値の変動に明らかな違いがあることが看取され、物標がももに限定されたレーダデータを用いることにより、或いは、物標としてももを含むレーダデータを用いることにより、データのシフト回ごとの相関値の変動に基づいて成人であるか子供であるかを判別することが、延いては人の属性を識別することが可能であることが確認される。また、
図14の(A)と(B)との整理から、相関値の極大値および極小値の分散が、成人のももは1.8927となり、子供のももは0.2078となる。また、相関値の極大値および極小値の平均が、成人のももは0.9988となり、子供のももは0.9988となる。これらの結果から、成人と子供とでは相関値の極大値および極小値の特に分散が大きく異なるので、物標がももに限定されたレーダデータを用いることにより、或いは、物標としてももを含むレーダデータを用いることにより、データのシフト回ごとの相関値の極大値および極小値の分散に基づいて成人であるか子供であるかを判別することが、延いては人の属性を識別することが可能であることが確認される。
【0096】
図15は、物標を手先に限定した場合の、50回のレーダスキャンによって取得されたレーダデータについてのクラスタNの相関値の集合に関して、高速フーリエ変換処理後のL
1ノルム(具体的には、周波数と振幅との組み合わせデータ)を折れ線で表示したグラフであり、(A)は成人についての結果であり、(B)は子供についての結果である。これら
図15の(A)と(B)との比較から、成人と子供とではL
1ノルムの値に明らかな違いがあることが看取され、物標が手先に限定されたレーダデータを用いることにより、或いは、物標として手先を含むレーダデータを用いることにより、L
1ノルムの値に基づいて成人であるか子供であるかを判別することが、延いては人の属性を識別することが可能であることが確認される。
【0097】
図16は、物標をももに限定した場合の、50回のレーダスキャンによって取得されたレーダデータについてのクラスタNの相関値の集合に関して、高速フーリエ変換処理後のL
1ノルム(具体的には、周波数と振幅との組み合わせデータ)を折れ線で表示したグラフであり、(A)は成人についての結果であり、(B)は子供についての結果である。これら
図16の(A)と(B)との比較から、成人と子供とではL
1ノルムの値に明らかな違いがあることが看取され、物標がももに限定されたレーダデータを用いることにより、或いは、物標としてももを含むレーダデータを用いることにより、L
1ノルムの値に基づいて成人であるか子供であるかを判別することが、延いては人の属性を識別することが可能であることが確認される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
この発明は、簡便な機器構成によって歩行者の性別や年代などの属性の識別を高精度に行うことができるので、例えば、自動車の運転支援に関する分野や侵入者検知に関する分野において有用な技術として適用され得る。
【符号の説明】
【0099】
1 属性の識別装置
2 信号処理部
21 周波数解析部
22 位置計算部
23 速度計算部
3 物標位置検出部
31 信号点抽出部
32 クラスタ生成部
33 追尾処理部
34 代表点特定部
4 物標計算部
41 関心領域設定部
42 信号強度特定部
43 VTデータ生成部
5 特徴量計算部
51 相関計算部
52 周期計算部
53 振幅計算部
54 相関変換部
6 識別部