(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】硬化性組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 71/02 20060101AFI20231102BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20231102BHJP
C08G 65/336 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
C08L71/02
C08L33/04
C08G65/336
(21)【出願番号】P 2019120439
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208889
【氏名又は名称】岡田 教子
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】楠田 智
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/117902(WO,A1)
【文献】特開2006-291021(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192914(WO,A1)
【文献】特開2014-234396(JP,A)
【文献】特開平10-251552(JP,A)
【文献】特開2011-195741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C09J
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、
トリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、
加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体と、
シラノール縮合触媒とを含む硬化性組成物であって、
上記硬化性組成物が、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有する上記ポリオキシアルキレン系重合体と、1分子当たり平均で0.5~1.5個のトリアルコキシシリル基を有する上記ポリオキシアルキレン系重合体と、1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する上記(メタ)アクリレート系重合体と、上記シラノール縮合触媒の混合物
であり、
上記1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、上記1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して、上記1分子当たり平均で0.5~1.5個のトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体が、0.5~10質量部であり、
上記1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、上記1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の比(上記1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体の質量/上記1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の質量)が、0.6~9であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、1分子当たり平均で0.5~1.5個のトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体と、シラノール縮合触媒とを混合す
る硬化性組成物の製造方法であって、
上記1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、上記1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して、上記1分子当たり平均で0.5~1.5個のトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体が、0.5~10質量部であり、
上記1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、上記1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の比(上記1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体の質量/上記1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の質量)が、0.6~9であることを特徴とする硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属に対する付着性に優れた硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属間に形成された隙間を埋めるために硬化性組成物が用いられている。近年、製造効率の向上の観点から工場内(インライン)において金属間の隙間に硬化性組成物を充填して硬化させることが行なわれている。従って、硬化性組成物を速やかに硬化させて次工程に移行させる必要がある。
【0003】
硬化性組成物は、空気中又は被着体中の水分と反応して硬化する。一方、金属は透湿性が低いと共に、金属自体に含まれる水分も少なく、金属間に充填した硬化性組成物は、水分の供給量が少ないために硬化に時間がかかるという問題点を有している。
【0004】
そこで、硬化性組成物中に反応性の高い触媒を含有させることによって、硬化性組成物の硬化性を向上させることも考えられるが、硬化性組成物の被着体、特に金属に対する接着性が低下するという別の問題を生じる。
【0005】
硬化性組成物として、特許文献1には、(a)反応性ケイ素基を含有するオキシアルキレン系重合体、(b)ジブチル錫塩と正珪酸エチルの反応生成物、(c)エポキシ樹脂、(d)(c)の潜在性硬化剤となるケチミン化合物を含有する湿気硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記湿気硬化性樹脂組成物は、金属に対する接着性が依然として不十分であると共に、金属間に形成された隙間の変形に対する追従性が低いという問題点を有する。
【0008】
本発明は、金属間に形成された隙間に配設された場合にあっても優れた硬化性を有すると共に、金属に対する接着性に優れており、更に、金属間に形成された隙間の変形に対する追従性に優れた硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、
ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、
トリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、
加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体と、
シラノール縮合触媒とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性組成物は、金属間に形成された隙間に配設された場合にあっても優れた硬化性を有すると共に、金属に対する接着性にも優れている。更に、本発明の硬化性組成物は、金属間に形成された隙間の変形に対して優れた追従性を有する。従って、本発明の硬化性組成物は、接着剤、塗料、コーティング剤、感圧接着剤、シーラントなどの様々な用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)]
硬化性組成物は、ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を含有している。ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を含有していることによって、硬化性組成物は、硬化性及び金属に対する接着性に優れている。
【0012】
ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)は、主鎖が、一般式:-(R-O)n-(式中、Rは炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0013】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられ、接着剤組成物の硬化物が伸び性に優れているので、ポリオキシプロピレンを含むことが好ましい。
【0014】
ジアルコキシシリル基中のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等などが挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0015】
ジアルコキシシリル基としては、例えば、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基などを挙げることができる。ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、ジアルコキシシリル基を単独又は二種以上含有していてもよい。
【0016】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、ジアルコキシシリル基の他に、ウレタン結合をさらに有していてもよい。ウレタン結合は、ポリオキシアルキレン系重合体に極性を付与することができ、これにより硬化性組成物の硬化物に、優れた伸び性を付与することができる。
【0017】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介してジアルコキシシリル基を有していてもよいし、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介することなくジアルコキシシリル基を有していてもよい。
【0018】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介してジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシル基を有するプレポリマーと、ジアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【0019】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシル基を有するプレポリマーとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール、及びポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレングリコールなどが挙げられる。
【0020】
ジアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物としては、1-イソシアネートメチルジメトキシシラン、2-イソシアネートエチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメトキシシラン、3-イソシアネートブチルジメトキシシラン、3-イソシアネートペンチルジメトキシシラン、及び1-イソシアネートプロピルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0021】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介してジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を合成するには、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーと、ジアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを混合して混合物を得、この混合物を撹拌して上記プレポリマーのヒドロキシ基と、上記化合物のイソシアネート基とを反応させてウレタン結合を形成させることにより行うことができる。また、上記混合物を加熱しながら撹拌することにより、反応を促進させることができる。
【0022】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介することなくジアルコキシシリル基を有しているポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、末端に水酸基などの官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、次いで、得られた反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化することによって製造することができる。
【0023】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、5000~50000が好ましく、8000~20000がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が5000以上であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上し、金属間に形成された隙間の変形に対する追従性が向上する。ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が5000以上であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上し、金属間に形成された隙間の変形に対する追従性が向上する。
【0024】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、ポリオキシアルキレン系重合体6~7mgを採取し、採取したポリオキシアルキレン系重合体を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo-DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてポリオキシアルキレン系重合体の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0025】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてポリオキシアルキレン系重合体をBHTを含むo-DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量を測定することができる。
【0026】
ポリオキシアルキレン系重合体における数平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0027】
[トリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)]
硬化性組成物は、トリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)を含有している。硬化性組成物は、トリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)を含有していることによって、硬化性組成物の硬化性が向上する。
【0028】
トリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)の主鎖は、ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)と同様であるので、説明を省略する。
【0029】
トリアルコキシシリル基中のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等などが挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0030】
トリアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などが挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体(B)は、トリアルコキシシリル基を単独又は二種以上含有していてもよい。
【0031】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)は、トリアルコキシシリル基の他に、ウレタン結合をさらに有していてもよい。ウレタン結合は、ポリオキシアルキレン系重合体に極性を付与することができ、これにより硬化性組成物の硬化物に、優れたゴム弾性を付与し、金属間に形成された隙間の変形に対する優れた追従性を付与することができる。
【0032】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)は、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介してトリアルコキシシリル基を有していてもよいし、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介することなくトリアルコキシシリル基を有していてもよい。
【0033】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介してジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシル基を有するプレポリマーと、トリアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【0034】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシル基を有するプレポリマーとしては、ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体で用いられるプレポリマーと同様であるので、説明を省略する。
【0035】
トリアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物としては、1-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、2-イソシアネートエチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートブチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、及び1-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介してトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を合成するには、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーと、トリアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを混合して混合物を得、この混合物を撹拌して上記プレポリマーのヒドロキシ基と、上記化合物のイソシアネート基とを反応させてウレタン結合を形成させることにより行うことができる。また、上記混合物を加熱しながら撹拌することにより、反応を促進させることができる。
【0037】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介することなくトリアルコキシシリル基を有しているポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、末端に水酸基などの官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、次いで、得られた反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化することによって製造することができる。
【0038】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)の数平均分子量は、5000~30000が好ましく、8000~20000がより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が5000以上であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上し、金属間に形成された隙間の変形に対する追従性が向上する。ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が30000以下であると、硬化性組成物の硬化物は、適度な架橋密度を有することから、ゴム弾性が向上し、金属間に形成された隙間の変形に対する追従性が向上する。
【0039】
[加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体]
硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体(C)を含有している。硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体(C)を含有していることによって、硬化性及び金属に対する接着性に優れている。
【0040】
(メタ)アクリレート系重合体(C)によれば、ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及びトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)による硬化性組成物の硬化速度の向上を阻害することなく、硬化性組成物の金属に対する接着性を向上させることができる。
【0041】
(メタ)アクリレート系重合体(C)における加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。
【0042】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0043】
加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化性を向上させることができるので、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、トリアルコキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基がより好ましい。
【0044】
(メタ)アクリレート系重合体(C)の主鎖骨格としては、(メタ)アクリレート系モノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリレート系重合体が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0045】
(メタ)アクリレート系重合体(C)の主鎖を構成する(メタ)アクリレート系モノマーとして、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-[アクリロイルオキシ]エチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、及び2-[アクリロイルオキシ]エチル-2-ヒドロキシプロピルフタル酸などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0046】
(メタ)アクリレート系重合体(C)において、他のモノマーを共重合することも可能である。このようなモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4-ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン-1,4-ジオール-ジビニルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオール-ジビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4-ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3-アミノプロピルビニルエーテル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0047】
(メタ)アクリレート系重合体(C)の主鎖骨格としては、エチル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートの共重合体、及びメチル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましく、エチルアクリレート及びn-ブチルアクリレートの共重合体が特に好ましい。主鎖骨格が上記共重合体からなる(メタ)アクリレート系重合体(B)によれば、ジアルコシキシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及びトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)による硬化性組成物の硬化速度の向上を阻害することなく、硬化性組成物の金属に対する接着性をより向上させることができる。
【0048】
(メタ)アクリレート系重合体(C)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリレート系重合体(C)への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、分子中に不飽和基を導入した(メタ)アクリレート系重合体に、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法などを利用することができる。
【0050】
(メタ)アクリレート系重合体(C)の重量平均分子量は、2000~50000が好ましく、2500~10000がより好ましく、2500~5000が特に好ましい。(メタ)アクリレート系重合体(C)の重量平均分子量が2000以上であると、硬化性組成物の金属に対する接着性が向上し、更に、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。(メタ)アクリレート系重合体(C)の重量平均分子量が50000以下であると、硬化性組成物の金属に対する接着性が向上する。
【0051】
[シラノール縮合触媒]
本発明の硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有している。シラノール縮合触媒とは、ポリオキシアルキレン系重合体(A)が有するジアルコキシシリル基、ポリオキシアルキレン系重合体(B)が有するトリアルコキシシリル基及び(メタ)アクリレート系重合体(B)が有する加水分解性シリル基が加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接結合しているヒドロキシ基(≡Si-OH)を意味する。
【0052】
シラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。また、他の酸性触媒や塩基性触媒もシラノール縮合触媒として用いることができる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0053】
シラノール縮合触媒としては、ジオクチル錫系化合物が好ましく、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫モノデカネート、ジオクチル錫ビスエトキシシリケート、ジオクチル錫オキシビスエトキシシリケートが好ましく、ジオクチル錫オキサイドとアルコキシシラン化合物との反応物であるジオクチル錫化合物がより好ましい。これらのシラノール縮合触媒によれば、硬化性組成物の硬化速度を容易に調整することができる。また、上記シラノール縮合触媒は、23℃以下の低温であっても液状であるため、冬期などの低温環境下であっても取扱性に優れる硬化性組成物を提供することができる。
【0054】
[アミノシランカップリング剤]
硬化性組成物は、アミノシランカップリング剤をさらに含有していてもよい。アミノシランカップリング剤とは、1分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを有している化合物を意味する。アミノシランカップリング剤を上述した(メタ)アクリレート系重合体(C)と組合せて用いると、これらの相乗効果により、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(B)による硬化性組成物の硬化速度の向上を阻害することなく、硬化性組成物の金属に対する接着性をより向上させることができる。
【0055】
アミノシランカップリング剤として、具体的には、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0056】
アミノシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤によれば、(メタ)アクリレート系重合体(C)との相乗効果が得られ易く、硬化性組成物の金属に対する接着性をより向上させることができる。
【0057】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤を含んでいることが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0058】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0059】
[充填剤]
硬化性組成物は、充填剤を含んでいることが好ましい。充填剤によれば、機械的強度に優れている硬化物を得ることが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0060】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができる。これらの充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0061】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01~5μmが好ましく、0.05~2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシムによれば、機械的強度及び伸び性に優れている硬化物を得ることができ、且つ金属に対して優れた接着性を有している硬化性組成物を提供することができる。
【0062】
炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されていることが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシムが凝集することを抑制することができる。
【0063】
[耐候安定剤]
硬化性組成物は、耐候安定剤をさらに含んでいることが好ましい。耐候安定剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び光安定化剤が好ましく挙げられる。耐候安定剤は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0064】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](融点118℃)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](融点52℃)、及びN,N′-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)](融点158℃)などが挙げられる。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、BASF社製 IRGANOX(登録商標)1135(融点5℃)などの市販品を用いることもできる。
【0065】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、具体的には、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(融点130℃)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(融点139℃)、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(融点139℃)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(融点84℃)、及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(融点104℃)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、BASF社製 TINUVIN(登録商標)384-2(融点10℃以下)などの市販品を用いることもできる。
【0066】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物(融点10℃以下)、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物(融点135℃)、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}](融点118℃)、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重縮合物(融点63℃)などが挙げられる。
【0067】
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0068】
硬化性組成物の製造方法を説明する。硬化性組成物は、ジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、トリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B)と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体(C)と、シラノール縮合触媒と、必要に応じて添加される添加剤を混合することによって製造することができる。
【0069】
具体的には、硬化性組成物は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、1分子当たり平均で0.5~1.5個のトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体と、シラノール縮合触媒と、必要に応じて添加される添加剤とを混合することによって製造することが好ましい。混合は減圧下で行うことが好ましい。
【0070】
即ち、硬化性組成物は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、1分子当たり平均で0.5~1.5個のトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体と、シラノール縮合触媒と、必要に応じて添加される添加物との混合物であることが好ましい。
【0071】
硬化性組成物を製造するために用いられるジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体において、1分子当たりのジアルコキシシリル基の数平均個数は0.5~1.5個が好ましい。平均個数が0.5個以上であると、硬化性組成物の硬化物の硬化性が向上する。平均個数が1.5個以下であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。
【0072】
硬化性組成物を製造するために用いられるトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体において、1分子当たりのトリアルコキシシリル基の数平均個数は0.5~1.5個が好ましい。平均個数が0.5個以上であると、硬化性組成物の硬化物の硬化性が向上する。平均個数が1.5個以下であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。
【0073】
硬化性組成物を製造するために用いられる加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体において、1分子当たりの加水分解性シリル基の数平均個数は0.1~3個が好ましく、0.2~2.5個がより好ましい。平均個数が0.1個以上であると、硬化性組成物の硬化物の硬化性が向上する。平均個数が3個以下であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上し、金属間に形成された隙間の変形に対する追従性が向上する。
【0074】
ポリオキシアルキレン系重合体又は(メタ)アクリレート系重合体における、1分子中における加水分解性シリル基の数平均個数は、1H-NMRにより求められる、ポリオキシアルキレン系重合体又は(メタ)アクリレート系重合体中の加水分解性シリル基由来のピーク面積の比により、算出することができる。
【0075】
硬化性組成物を製造するにあたって、1分子当たり平均で0.5~1.5個のトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体の使用量は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体及び1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して0.5~10質量部が好ましく、1~8質量部がより好ましい。1分子当たり平均で0.5~1.5個のトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体の混合量が0.5質量部以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。1分子当たり平均で0.5~1.5個のトリアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体の混合量が1.5個以下であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上し、金属間に形成された隙間の変形に対する追従性が向上する。
【0076】
硬化性組成物を製造するにあたって、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の比(1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体の質量/1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の質量)は、0.6~9が好ましい。上記比率が0.6以上であると、硬化性組成物の硬化物の耐候性が向上するため、優れたゴム弾性を維持し、硬化性組成物の硬化物は、金属間に形成された隙間の変形に対する優れた追従性を長期間に亘って安定的に維持する。上記比率が9以下であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上し、金属間に形成された隙間の変形に対する追従性が向上する。
【0077】
硬化性組成物を製造するにあたって、シラノール縮合触媒の使用量は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体及び1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。シラノール縮合触媒の使用量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。シラノール縮合触媒の使用量が10質量部以下であると、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱い性が向上する。
【0078】
硬化性組成物を製造するにあたって、アミノシランカップリング剤の使用量は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体及び1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して0.5~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。アミノシランカップリング剤の使用量が0.5質量部以上であると、硬化性組成物の金属に対する接着性が向上する。アミノシランカップリング剤の使用量が10質量部以下であると、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱い性が向上する。
【0079】
硬化性組成物を製造するにあたって、脱水剤の使用量は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体及び1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。脱水剤の使用量が0.5質量部以上であると、硬化性組成物の貯蔵安定性が向上する。脱水剤の使用量が20質量部以下であると、硬化性組成物の硬化性が向上する。
【0080】
硬化性組成物を製造するにあたって、充填剤の使用量は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体及び1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して1~700質量部が好ましく、10~200質量部がより好ましい。充填剤の使用量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物の金属に対する接着強度が向上する。充填剤の使用量が700質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性が向上する。
【0081】
硬化性組成物を製造するにあたって、酸化防止剤の使用量は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体及び1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましい。
【0082】
硬化性組成物を製造するにあたって、紫外線吸収剤の使用量は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体及び1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0083】
硬化性組成物を製造するにあたって、光安定剤の使用量は、1分子当たり平均で0.5~1.5個のジアルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体及び1分子当たり平均で0.1~3個の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリレート系重合体の総量100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0084】
このようにして製造された硬化性組成物は、空気中又は被着体中に含まれる水分と反応して硬化する。硬化性組成物は、僅かな水分量であっても速やかに硬化する。従って、湿気透過性の低い金属間に形成された隙間に硬化性組成物が充填(配設)された場合にあっても、硬化性組成物は速やかに硬化し、硬化性組成物の硬化物は金属に対して優れた接着性を発現する。
【0085】
更に、硬化性組成物の硬化物は、優れたゴム弾性を有しているので、硬化性組成物の硬化後において、金属が雰囲気温度の変化によって膨張収縮を生じても、硬化性組成物の硬化物は、金属の膨張収縮に順応して弾性的に変形し、金属に対する接着状態を安定的に維持することができる。
【0086】
従って、硬化性組成物は、接着剤、塗料、コーティング剤、感圧接着剤、シーラントなどの様々な用途に用いることができる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
実施例及び比較例にて用いられた化合物を以下に示す。
【0089】
[ポリオキシアルキレン系重合体(A)]
・主鎖骨格がポリオキシプロピレンであり、且つ主鎖骨格の末端にウレタン結合を介してジメトキシシリル基を有しているポリオキシアルキレン系重合体(A1)(1分子当たりのジメトキシシリル基の数平均個数:0.7個、数平均分子量:20000、カネカ社製 商品名「S-203」)
・主鎖骨格がポリオキシプロピレンであり、且つ主鎖骨格の末端にウレタン結合を介してジメトキシシリル基を有しているポリオキシアルキレン系重合体(A2)(1分子当たりのジメトキシシリル基の数平均個数:2.1個、数平均分子量:20000、カネカ社製 商品名「S-303」)
【0090】
[ポリオキシアルキレン系重合体(B)]
・主鎖骨格がポリオキシプロピレンであり、且つ主鎖骨格の末端にトリメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(B1)(1分子当たりのトリメトキシシリル基の数平均個数:1.4個、数平均分子量:18000、カネカ社製 商品名「サイリルSAX510」)
【0091】
[(メタ)アクリレート系重合体(C)]
・主鎖骨格がメチルメタクリレート単位及びブチルアクリレート単位からなり且つトリメトキシシリル基を有している(メタ)アクリレート系重合体(C1)(1分子当たりのトリメトキシシリル基の数平均個数:0.3個、東亞合成社製 商品名「US6150」、重量平均分子量:4000)
・主鎖骨格がメチルメタクリレート単位及びブチルアクリレート単位からなり且つジメトキシシリル基を有している(メタ)アクリレート系重合体(C2)(1分子当たりのジメトキシシリル基の数平均個数:2.0個、カネカ社製 商品名「SA310S」、重量平均分子量:24000)
【0092】
[シラノール縮合触媒]
・ (1、1、3、3-テトラブチル-1、3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、日東化成社製 商品名「ネオスタンU-130」)
【0093】
[アミノシランカップリング剤]
・N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM-603)
【0094】
[充填剤]
・脂肪酸により表面処理されたコロイダル炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製 商品名「カルファイン200M」、平均粒子径:0.05μm)
【0095】
[脱水剤]
・ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 商品名「KBM-1003」)
【0096】
(実施例1~7、比較例1~4)
ポリオキシアルキレン系重合体(A)、ポリオキシアルキレン系重合体(B)、(メタ)アクリレート系重合体(C)、シラノール縮合触媒、アミノシランカップリング剤、充填剤及び脱水剤を表1に示した配合量となるように密封した攪拌機中で減圧しながら均一になるまで混合することにより硬化性組成物を得た。
【0097】
得られた硬化性組成物について、タックフリータイム、伸び物性及び金属接着性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0098】
(タックフリータイム)
硬化性組成物のタックフリータイムをJIS A5758に準拠して、23℃及び相対湿度50%の環境下で測定した。
【0099】
(伸び物性)
硬化性組成物の伸び物性をJIS A1439に準拠して、硬化性組成物を23℃及び相対湿度50%の環境下で7日養生して得られた硬化皮膜の3号ダンベルの伸び率を測定した。
【0100】
(金属接着性)
被着体としてステンレス板(SUS)を2枚用意した。硬化性組成物を一枚のステンレス板上に四角柱状(断面:一辺10mmの正方形、長さ:100mm)に塗工した後、硬化性組成物上にもう一枚のステンレス板を配設して積層体を形成した。積層体を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下に7日間放置させることによって硬化性組成物を硬化させて硬化物を得た。
【0101】
積層体の一枚のステンレス板を硬化性組成物の硬化物から剥離し、この時の硬化物の破壊状態を目視により確認した。表1において、ステンレス板を硬化物から剥離する際に、硬化物が全て凝集破壊したものを「○」とし、硬化物が凝集破壊した部分と界面破壊した部分とがあったものを「△」とし、硬化物が全て界面破壊したものを「×」とした。
【0102】
硬化物の凝集破壊とは、被着体から硬化物を剥離する際に、硬化物が破壊した状態を意味する。また、硬化物の界面破壊とは、被着体から硬化物を剥離する際に、被着体と硬化物との界面で剥離した状態を意味する。硬化性組成物の硬化物の接着力が高いほど凝集破壊を生じ、硬化性組成物の硬化物の接着力が低いほど界面破壊を生じる。
【0103】
ステンレス板の代わりにアルミニウム板を用いて上記と同様の要領で金属接着性2を評価した。
【0104】