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特許7377522カレントトランス、カレントトランス用ケース及びカレントトランス用ケースの密閉方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】カレントトランス、カレントトランス用ケース及びカレントトランス用ケースの密閉方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/30 20060101AFI20231102BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H01F38/30
H01F17/06 D
H01F17/06 K
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019199792
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072411
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390010386
【氏名又は名称】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博之
(72)【発明者】
【氏名】野村 智和
(72)【発明者】
【氏名】張野 健二
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-115176(JP,U)
【文献】実開昭62-186414(JP,U)
【文献】実開昭58-120634(JP,U)
【文献】特開2016-82379(JP,A)
【文献】特開2010-153731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00-31/01
G01R 31/24-31/25
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/20-38/42
H04B 1/76- 3/44
H04B 3/50- 3/60
H04B 7/00- 7/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線としての電力線が貫通する中空部を有し、第1コア部と第2コア部との組み合わせからなる磁性コアと、
前記磁性コアに二次巻線として巻回された信号取出線と、
前記第1コア部を収容する第1ケース部と前記第2コア部を収容する第2ケース部との組み合わせからなるケースとを備え、
前記第1ケース部のケース端面には第1の凹凸形状が設けられており、
前記第1ケース部のケース端面と対向する前記第2ケース部のケース端面には前記第1の凹凸形状に噛み合う第2の凹凸形状が設けられており、
前記第1の凹凸形状は、前記第1コア部のコア端部の周囲を取り囲む凹部を含み、
前記第2の凹凸形状は、前記凹部に入り込む凸部を含み、
前記第1ケース部のケース端面と前記第2ケース部のケース端面との間の隙間にグリス剤が充填されていることを特徴とするカレントトランス。
【請求項2】
前記凹部内に入り込んだ前記凸部の先端部は、前記凹部の底面と接触しない、請求項1に記載のカレントトランス。
【請求項3】
前記第1コア部は、第1及び第2のコア端面を有し、
前記第2コア部は、前記第1及び第2のコア端面にそれぞれ接合される第3及び第4のコア端面とを有し、
前記第1ケース部は、前記第1コア部の前記第1及び第2のコア端面をそれぞれ取り囲む第1及び第2のケース端面を有し、
前記第2ケース部は、前記第2コア部の前記第3及び第4のコア端面をそれぞれ取り囲む第3及び第4のケース端面とを有する、請求項1に記載のカレントトランス。
【請求項4】
前記第1のケース端面には前記第1のコア端面の周囲を取り囲む第1の凹部が設けられており、
前記第3のケース端面には前記第1の凹部に入り込む第1の凸部が設けられている、請求項3に記載のカレントトランス。
【請求項5】
前記第2のケース端面には前記第2のコア端面の周囲を取り囲む第2の凹部が設けられており、
前記第4のケース端面には前記第2の凹部に入り込む第2の凸部が設けられている、請求項4に記載のカレントトランス。
【請求項6】
前記第4のケース端面には前記第4のコア端面の周囲を取り囲む第2の凹部が設けられており、
前記第2のケース端面には前記第2の凹部に入り込む第2の凸部が設けられている、請求項4に記載のカレントトランス。
【請求項7】
前記第1のケース端面には前記第1のコア端面の周囲を取り囲む第1の凹部と第1の凸部が設けられており、
前記第3のケース端面には前記第1の凹部に入り込む第2の凸部と前記第1の凸部が入り込む第2の凹部が設けられている、請求項3に記載のカレントトランス。
【請求項8】
前記第1ケース部のケース端面と前記第2ケース部のケース端面との間の前記隙間が前記ケースの外面まで延在している、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカレントトランス。
【請求項9】
前記凸部の先端部と前記磁性コアとの間に前記隙間が設けられており、前記隙間に前記グリス剤が充填されている、請求項2に記載のカレントトランス。
【請求項10】
前記凸部の先端部は前記磁性コアに接触している、請求項2に記載のカレントトランス。
【請求項11】
一次巻線としての電力線が貫通する中空部を有し、第1コア部と第2コア部との組み合わせからなる磁性コアと、前記磁性コアに二次巻線として巻回された信号取出線とを備えたカレントトランスを収容するためのケースであって、
前記第1コア部を収容する第1ケース部と、
前記第2コア部を収容する第2ケース部と、からなり、
前記第1ケース部のケース端面には第1の凹凸形状が設けられており、
前記第1ケース部のケース端面と対向する前記第2ケース部のケース端面には前記第1の凹凸形状に噛み合う第2の凹凸形状が設けられており、
前記第1の凹凸形状は、前記第1コア部のコア端部の周囲を取り囲む凹部を含み、
前記第2の凹凸形状は、前記凹部に入り込む凸部を含み、
前記凹部にグリス剤が充填されていることを特徴とするカレントトランス用ケース。
【請求項12】
前記第1ケース部のケース端面と前記第2ケース部のケース端面とを接合したとき、前記凹部に前記凸部が入り込み、前記凹部内に充填されていた前記グリス剤を前記凸部が押し出し、押し出されたグリス剤がケース端面間を埋めることにより、水分の入り込みを防ぐことを特徴とする請求項11に記載のカレントトランス用ケース。
【請求項13】
請求項11に記載のカレントトランス用ケースの密閉方法であって、
前記第1コア部が収容された第1ケース部及び前記第2コア部が収容された第2ケース部をそれぞれ用意するステップと、
前記凹部に所定量のグリス剤を注ぎ入れるステップと、
前記凹部に前記凸部が入り込むことで前記凹部内の前記グリス剤が押し出されてケース端面間に前記グリス剤が充填されるように、前記第1ケース部のケース端面と前記第2ケース部のケース端面とを接合するステップを備えることを特徴とするカレントトランス用ケースの密閉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレントトランスに関し、特に、屋外、半屋外、地下、トンネル等で好ましく使用される分割型高周波カレントトランスの構造に関する。また本発明は、そのようなカレントトランスを収容するためのカレントトランス用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
電力線の各種監視や電力線通信のカプラーとして高周波カレントトランスが用いられている(例えば特許文献1、2参照)。高周波カレントトランスによれば、電力線の導体に接触させることなく、高周波信号を注入・抽出することができる。また高周波カレントトランスの磁性コアが分割型である場合には、既存の電力線を加工することなく容易に設置することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-223018号公報
【文献】特開2006-005888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁性コアの材料としては、フェライトの他、必要に応じて金属材料を採用することがある。しかし、洞道内のような湿気が多い場所また水没する環境下で金属製の磁性コアを採用する場合、その防錆対策が必要となる。防錆対策としては、磁性コアの表面に塗装を施すことが一般的である。
【0005】
しかし、シール材等で磁気ギャップの厚さを厳密にコントロールする必要がある高周波カレントトランスの性格上、磁性コアの分割断面を塗装することはできない。そのため、磁性コアの断面付近から錆が発生するという問題がある。
【0006】
磁性コアの分割断面の錆の発生を防止するため、設置後の磁性コアの断面付近にグリスを塗布したり防水テープ巻き付けたりする方法があるが、設置工数の増加や作業者の技量差により作業結果にばらつきが発生するだけでなく、防錆性能を確保できない場合もある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、分割型の磁性コアの断面付近に防錆処理を施すことなく、ケース構造により磁性コアの錆の発生を防止することが可能なカレントトランス及びカレントトランス用ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によるカレントトランスは、一次巻線としての電力線が貫通する中空部を有し、第1コア部と第2コア部との組み合わせからなる磁性コアと、前記磁性コアに二次巻線として巻回された信号取出線と、前記第1コア部を収容する第1ケース部と前記第2コア部を収容する第2ケース部との組み合わせからなるケースとを備え、前記第1ケース部のケース端面には第1の凹凸形状が設けられており、前記第1ケース部のケース端面と対向する前記第2ケース部のケース端面には前記第1の凹凸形状に噛み合う第2の凹凸形状が設けられており、前記第1ケース部のケース端面と前記第2ケース部のケース端面との間の隙間にグリス剤が充填されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、分割型の磁性コアの断面付近に防錆処理を施すことなく、ケースを閉じるだけで磁性コアの防錆性能を確保でき、カレントトランスの信頼性の向上と設置工数の低減を図ることができる。
【0010】
本発明において、前記第1の凹凸形状は凹部を含み、前記第2の凹凸形状は前記凹部に入り込む凸部を含むことが好ましい。この構成により、凹部内に充填されたグリス剤を凸部が押し出して第1ケース部と第2ケース部との間の隙間をグリス剤で埋めることができ、ケース構造により磁性コアの錆の発生を防止することができる。
【0011】
本発明において、前記第1コア部は、第1及び第2のコア端面を有し、前記第2コア部は、前記第1及び第2のコア端面にそれぞれ接合される第3及び第4のコア端面とを有し、前記第1ケース部は、前記第1コア部の前記第1及び第2のコア端面をそれぞれ取り囲む第1及び第2のケース端面を有し、前記第2ケース部は、前記第2コア部の前記第3及び第4のコア端面をそれぞれ取り囲む第3及び第4のケース端面とを有することが好ましい。
【0012】
本発明において、前記第1のケース端面には第1の凹部が設けられており、前記第3のケース端面には前記第1の凹部に入り込む第1の凸部が設けられていることが好ましい。この場合において、前記第2のケース端面には第2の凹部が設けられており、前記第4のケース端面には前記第2の凹部に入り込む第2の凸部が設けられていることが好ましい。あるいは、前記第4のケース端面には第2の凹部が設けられており、前記第2のケース端面には前記第2の凹部に入り込む第2の凸部が設けられていることが好ましい。前者の場合、凹部は第1ケース部だけに設けられ、第2ケース部には設けられていないので、第1コア部だけをグリス剤の充填対象とすればよく、グリス剤の充填作業を容易に行うことができる。また後者の場合、第1及び第2ケース部の形状を同一にすることができるので、部品の共通化により量産性を向上させることができる。
【0013】
本発明において、前記第1のケース端面には第1の凹部と第1の凸部が設けられており、前記第3のケース端面には前記第1の凹部に入り込む第2の凹部と前記第1の凸部が入り込む第2の凹部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、複雑な噛み合わせにより第1ケース部と第2ケース部との間の密着性を向上させることができ、防錆性能をさらに高めることができる。
【0014】
本発明において、前記第1ケース部のケース端面と前記第2ケース部のケース端面との間の前記隙間が前記ケースの外面まで延在していることが好ましい。この構成によれば、過度な圧力を受けたグリス剤がケース内部や磁性コアの接合面に入り込むことを防ぐことができる。
【0015】
本発明において、前記凸部の先端部と前記磁性コアとの間に前記隙間が設けられており、前記隙間に前記グリス剤が充填されていることが好ましい。あるいは、前記凸部の先端部は前記磁性コアに接触していることが好ましい。
【0016】
また、本発明によるカレントトランス用ケースは、一次巻線としての電力線が貫通する中空部を有し、第1コア部と第2コア部との組み合わせからなる磁性コアと、前記磁性コアに二次巻線として巻回された信号取出線とを備えたカレントトランスを収容するためのケースであって、前記第1コア部を収容する第1ケース部と、前記第2コア部を収容する第2ケース部とを有し、前記第1ケース部のケース端面には第1の凹凸形状が設けられており、前記第1ケース部のケース端面と対向する前記第2ケース部のケース端面には前記第1の凹凸形状に噛み合う第2の凹凸形状が設けられており、前記第1ケース部並びに前記第2ケース部のケース端面に設けられた凹部にグリス剤が充填されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、分割型の磁性コアの断面付近に防錆処理を施すことなく、ケースを閉じるだけで磁性コアの防錆性能を確保でき、カレントトランスの信頼性の向上と設置工数の低減を図ることができる。
【0018】
本発明によるカレントトランス用ケースは、前記第1ケース部のケース端面と前記第2ケース部のケース端面とを接合したとき、一方のケース端面の凹部に他方のケース端面の凸部が入り込み、前記凹部内に充填されていた前記グリス剤を前記凸部が押し出し、押し出されたグリス剤がケース端面間を埋めることにより、水分の入り込みを防ぐことが好ましい。この構成によれば、ケースを閉じるだけで第1ケース部と第2ケース部との隙間をなくして磁性コアの防錆性能を確保でき、カレントトランスの信頼性の向上と設置工数の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、設置作業者に負担をかけることなくかつ誰が施工しても均一な防錆性能を確保することが可能なカレントトランス及びカレントトランス用ケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態によるカレントトランスの構造を示す略断面図である。
図2図2は、カレントトランスの磁性コアの分解斜視図である。
図3図3は、カレントトランスの第2ケース部を第1ケース部から切り離した状態を示す略斜視図である。
図4図4は、図3のカレントトランスの平面図であって、(a)は略上面図、(b)は略側面断面図である。
図5図5は、カレントトランスの第1ケース部と第2ケース部とを組み合わせた状態を示す略側面断面図である。
図6図6は、カレントトランスの第2ケース部を第1ケース部から切り離した状態を示す略側面断面図である。
図7図7は、本発明の第2の実施の形態によるカレントトランスの構造であって、第1ケース部と第2ケース部とを組み合わせた状態を示す略側面断面図である。
図8図8は、本発明の第2の実施の形態によるカレントトランスの構造であって、第2ケース部を第1ケース部から切り離した状態を示す略側面断面図である。
図9図9は、本発明の第3の実施の形態によるカレントトランスの構造の一部の拡大図であって、第1ケース部と第2ケース部とを組み合わせた状態を示す略側面断面図である。
図10図10は、本発明の第3の実施の形態によるカレントトランスの構造の一部の拡大図であって、第2ケース部を第1ケース部から切り離した状態を示す略側面断面図である。
図11図11は、本発明の第4の実施の形態によるカレントトランスの構造の一部の拡大図であって、第1ケース部と第2ケース部22とを組み合わせた状態を示す略側面断面図である。
図12図12は、本発明の第4の実施の形態によるカレントトランスの構造の一部の拡大図であって、第2ケース部22を第1ケース部21から切り離した状態を示す略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるカレントトランスの構造を示す略断面図である。また図2は、カレントトランスの磁性コアの分解斜視図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施形態によるカレントトランス1は、トロイダルコアを半割りしてなる分割型の磁性コア10と、磁性コア10に二次巻線として巻回された信号取出線15と、磁性コア10を収容するケース20とを備えている。ケース20には磁性コア10の中空部10aを貫通する中空部20aが設けられており、カレントトランス1の一次巻線としての電力線5は、ケース20の中空部20aと共に磁性コア10の中空部10aを貫通するように設けられている。また信号取出線15の両端は、防水処理された配線引出口20bからケース20の外側に引き出されている。
【0024】
磁性コア10は金属材料からなり、ともに半円環状を有する第1コア部11と第2コア部12との組み合わせからなる。第1及び第2コア部11,12の各々は、外周面Sと、内周面Sと、磁性コア10の中心軸と直交する2つの主面Ss1,Ss2と、トロイダルコアを半割りしたときの周方向の分割断面である2つの端面S,Sとを有している。以下、第1コア部11の2つの端面をS11a,S11bと称し、第2コア部12の2つの端面をS12a,S12bと称する。
【0025】
ケース20は、第1コア部11を収容する第1ケース部21と、第2コア部12を収容する第2ケース部22と、第1ケース部21と第2ケース部22とを連結する連結部23とを有し、第1ケース部21及び第2ケース部22の互いに着脱自在に構成されている。ケース20は樹脂製であってもよく、金属製であってもよい。
【0026】
図3は、カレントトランス1の第2ケース部22を第1ケース部21から切り離した状態を示す略斜視図である。また、図4は、図3のカレントトランス1の平面図であって、(a)は略上面図、(b)は略側面断面図である。図5及び図6は、カレントトランス1の略側面断面図であって、図5は、第1ケース部21と第2ケース部22とを組み合わせた状態、図6は、第2ケース部22を第1ケース部21から切り離した状態を示している。
【0027】
図3乃至図6示すように、第1ケース部21は、第1コア部11の2つの主面Ss1,Ss2及び外周面Sをカバーする外側カバー部21Aと、第1コア部11の内周面Sをカバーする内側カバー部21Bとで構成されており、第1コア部11の2つの端面S11a,S11b以外は第1ケース部21に覆われている。第2ケース部22は、第2コア部12の2つの主面Ss1,Ss2及び外周面Sをカバーする外側カバー部22Aと、第2コア部12の内周面Sをカバーする内側カバー部22Bとで構成されており、第2コア部12の2つの端面S12a,S12b以外は第2ケース部22に覆われている。第1コア部11と第2コア部12とを組み合わせてケース20を閉じたとき、第1コア部11の一方の端面S11aは第2コア部12の一方の端面S12aに接合され、第1コア部11の他方の端面S11bは第2コア部12の他方の端面S12bに接合される。
【0028】
第1コア部11の2つの端面S11a,S11bと略同一平面を構成する第1ケース部21の端面S21a,S21b(ケース端面)には、凹部31(第1の凹凸形状)が設けられており、凹部31の中には規定量のグリス剤25が充填されている。本明細書において、グリス剤25とは適度な粘弾性を持ち、磁性コア10の金属材料を腐食させることがない材質であればよく、グリースその他の潤滑剤に限らず、例えばシーラント剤やコーキング剤といった合成樹脂等を含むものである。凹部31は平面視で第1コア部11の端面S11a,S11bの周囲を取り囲むようにその略全周に設けられるが、第1ケース部21の端面S21a,S21bの周囲の一部に設けることも可能である。
【0029】
一方、第2コア部12の2つの端面S12a,S12bと略同一平面を構成する第2ケース部22の2つの端面S22a,S22b(ケース端面)には、凸部32(第2の凹凸形状)が設けられている。凸部32は、第2ケース部22を第1ケース部21と組み合わせたときに第1ケース部21の端面S21a,S21bに設けられた凹部31と噛み合うように構成されている。
【0030】
カレントトランス1を電力線に設置する場合、電力線が磁性コア10の中空部10aを貫通するように第1コア部11と第2コア部12とを組み合わせる。このとき、図5に示すように、グリス剤25を入れた第1ケース部21の凹部31に第2ケース部22の凸部32が入り込み、凹部31内のグリス剤25を押し出す。押し出されたグリス剤25は、第1ケース部21と第2ケース部22との間の隙間20gを埋めるので、磁性コア10の接合面間への水分の入り込みを防ぐことができる。
【0031】
また、第1ケース部21と第2ケース部22との間の隙間20gはケース20の外面まで延在してグリス剤の排出口を構成しており、余剰のグリス剤25はこの隙間20gからケース外に排出される。そのため、過度な圧力を受けたグリス剤25がケース20内部や磁性コア10の接合面に入り込むことを防ぐことができる。本実施形態において隙間20gは凸部32の先端部と磁性コア10との間にも存在しており、この隙間にもグリス剤25が充填されているが、グリス剤25には適度な圧力がかかるので、磁性コア10の接合面を確実に保護することができる。また、適正な粘性を持つグリス剤25を選択することで、カレントトランス1が水没してもグリス剤25が水で流されることがなく、防錆性能を維持することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によるカレントトランス1は、第1コア部11を収容する第1ケース部21の端面S21a,S21bに凹部31を設け、第2コア部12を収容する第2ケース部22の端面S22a,S22bに凸部32を設け、第1コア部11と第2コア部12とを組み合わせるために第1ケース部21と第2ケース部22を組み合わせたときに凸部32が凹部31に入り込み、凹部31内に充填されたグリス剤25が押し出されて第1ケース部21の端面S21a,S21bと第2ケース部22の端面S22a,S22bとの間の隙間20gを埋めるので、カレントトランス1の防錆性能を高めることができる。
【0033】
図7及び図8は、本発明の第2の実施の形態によるカレントトランスの構造を示す略側面断面図であって、図7は、第1ケース部21と第2ケース部22とを組み合わせた状態、図8は、第2ケース部22を第1ケース部21から切り離した状態を示している。
【0034】
図7及び図8に示すように、このカレントトランス1の特徴は、第1ケース部21の一方の端面S21aに凹部31が形成され、他方の端面S21bには凸部32が形成されている点にある。同様に、第1ケース部21の一方の端面S21aと対向する第2ケース部22の一方の端面S22aには凸部32が形成され、第1ケース部21の一方の端面S21bと対向する第2ケース部22の他方の端面S22bには凹部31が形成されている点にある。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0035】
本実施形態によるカレントトランス1は、第1の実施の形態と同様に防錆性能を高めることができる。さらに、第1ケース部21と第2ケース部22とを同一形状にすることができ、部品の共通化により量産性を向上させることができる。
【0036】
図9及び図10は、本発明の第3の実施の形態によるカレントトランスの構造の一部を拡大して示す略側面断面図であって、図9は、第1ケース部21と第2ケース部22とを組み合わせた状態、図10は、第2ケース部22を第1ケース部21から切り離した状態を示している。
【0037】
図9及び図10に示すように、このカレントトランス1の特徴は、第1ケース部21側の一方及び他方の端面S21a,S21bに凹部31mと凸部32mの両方が形成され、第2ケース部22側の一方及び他方の端面S22a,S22bには第1ケース部21側と噛み合う凸部32nと凹部31nの両方が設けられている点にある。第1ケース部21と第2ケース部22とを組み合わせたとき、第1ケース部21の凸部32mは第2ケース部22の凹部31nに入り込み、凹部31n内のグリス剤25を押し出す。また第2ケース部22の凸部32nは第1ケース部21の凹部31mに入り込み、凹部31m内のグリス剤25を押し出す。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。本実施形態によるカレントトランス1は、複雑な噛み合わせにより第1ケース部21と第2ケース部22との間の密着性を向上させることができ、防錆性能をさらに高めることができる。
【0038】
図11及び図12は、本発明の第4の実施の形態によるカレントトランスの構造の一部を拡大して示す略側面断面図であって、図11は、第1ケース部21と第2ケース部22とを組み合わせた状態、図12は、第2ケース部22を第1ケース部21から切り離した状態を示している。
【0039】
図11及び図12に示すように、このカレントトランス1の特徴は、第2ケース部22側に設けられた凸部32の先端部と磁性コア10との間に隙間がなく、凸部32の先端部が磁性コア10に密着している点にある。その他の構成は第1の実施の形態と実質的に同一である。本実施形態によるカレントトランス1は、第1の実施の形態と同様に防錆性能を高めることができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0041】
例えば、上記実施形態において磁性コア10は円形の環状コアであるが、矩形の環状コアであってもよい。また、上記実施形態においてケース20は矩形のケースであるが、円形のケースであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 カレントトランス
5 電力線
10 磁性コア
10a 磁性コアの中空部
11 第1コア部
12 第2コア部
15 信号取出線
20 ケース
20a ケースの中空部
20b 配線引出口
20g 隙間
21 第1ケース部
21A 第1ケース部の外側カバー部
21B 第1ケース部の内側カバー部
22 第2ケース部
22A 第2ケース部の外側カバー部
22B 第2ケース部の内側カバー部
23 連結部
25 グリス剤
31,31m,31n 凹部
32,32m,32n 凸部
11a,S11b 第1コア部の端面
12a,S12b 第2コア部の端面
21a,S21b 第1ケース部の端面
22a,S22b 第2ケース部の端面
,S 第1及び第2コア部の端面
第1及び第2コア部の内周面
第1及び第2コア部の外周面
s1,Ss2 第1及び第2コア部の主面
図1
図2
図3
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図5
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図12