(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】入力支援装置、入力支援システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 40/166 20200101AFI20231102BHJP
G06F 40/232 20200101ALI20231102BHJP
【FI】
G06F40/166
G06F40/232
(21)【出願番号】P 2019220996
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-10-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019 特許・情報フェア&コンファレンス展示会にて入力支援システムを公開した。(展示日:令和1年11月6日)
(73)【特許権者】
【識別番号】399021943
【氏名又は名称】アイビーリサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 正人
【審査官】木村 大吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021648(JP,A)
【文献】特開2019-121164(JP,A)
【文献】特開2001-243245(JP,A)
【文献】特開2013-175136(JP,A)
【文献】特開平10-198691(JP,A)
【文献】特開平10-269235(JP,A)
【文献】国際公開第2009/066501(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 40/00-40/58
G06F 3/0484
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報端末において入力された入力文を取得する取得部と、
複数の文献データのうち、前記入力文に関連付けられた書類に含まれている1つ又は複数の語を含む、1つ又は複数の前記文献データを選択する選択部と、
前記選択部が選択した1つ又は複数の前記文献データに含まれている複数の文から、前記入力文に類似する類似文を抽出する抽出部と、
前記類似文を含む前記文献データに含まれている複数の文から、前記類似文の次の文を、前記入力文の次に入力する候補文として予測する予測部と、
前記候補文を含む予測情報を、前記情報端末へ送信する送信部と、
を有する、入力支援装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記情報端末において所定の記号又は改行の直前に入力された前記入力文を取得する、
請求項1に記載の入力支援装置。
【請求項3】
前記抽出部は、前記入力文に含まれている複数の語が出現する順序及び位置の少なくとも一方と、前記文献データの文に含まれている複数の語が出現する順序及び位置の少なくとも一方とを比較することによって、前記類似文を抽出する、
請求項1又は2に記載の入力支援装置。
【請求項4】
前記文献データに含まれている第1文と、前記第1文の次の第2文とを関連付けた関連データを記憶している記憶部をさらに有し、
前記予測部は、前記関連データにおいて、前記入力文に類似する前記第1文に関連付けられている前記第2文を、前記候補文として予測する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の入力支援装置。
【請求項5】
プロセッサを、
入力文の入力を受け付ける受付部、
複数の文献データのうち、前記入力文に関連付けられた書類に含まれている1つ又は複数の語を含む、1つ又は複数の前記文献データを選択する選択部、
前記選択部が選択した1つ又は複数の前記文献データに含まれている複数の文から、前記入力文に類似する類似文の次の文を、前記入力文の次に入力する候補文として表示部に表示させる表示制御部、及び
前記候補文が選択された場合に、選択された前記候補文を前記入力文の次に挿入する編集部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
前記受付部は、前記表示部に表示されている第1領域において、前記入力文の入力を受け付け、
前記編集部は、所定操作が行われた場合に、前記第1領域に含まれている文を、前記表示部に表示されている前記第1領域とは異なる第2領域に移動させる、
請求項
5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記編集部は、前記第1領域に含まれている改行を除去した上で、前記第1領域に含まれている文を前記第2領域に移動させる、
請求項
6に記載のプログラム。
【請求項8】
情報端末と、入力支援装置とを含み、
前記入力支援装置は、
前記情報端末において入力された入力文を取得する取得部と、
複数の文献データのうち、前記入力文に関連付けられた書類に含まれている1つ又は複数の語を含む、1つ又は複数の前記文献データを選択する選択部と、
前記選択部が選択した1つ又は複数の前記文献データに含まれている複数の文から、前記入力文に類似する類似文を抽出する抽出部と、
前記類似文を含む前記文献データに含まれている複数の文から、前記類似文の次の文を、前記入力文の次に入力する候補文として予測する予測部と、
前記候補文を含む予測情報を、前記情報端末へ送信する送信部と、
を有し、
前記情報端末は、
前記入力文を前記入力支援装置へ送信する送信部と、
前記入力支援装置が送信した前記予測情報に含まれている前記候補文を表示部に表示させる表示制御部と、
前記候補文が選択された場合に、選択された前記候補文を前記入力文の次に挿入する編集部と、
を有する、入力支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文の入力を支援する入力支援装置、入力支援システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、特許文献において異なる位置に共通して出現している複数の語句を抽出し、抽出した複数の語句を所定の出力テンプレートを用いて出力するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献等の文献は、多数の文を含み、かつ専門的な内容であるため、ユーザにとって文献を読むことも作成することも大きな労力を要する。特許文献1に記載されたシステムは、ユーザが文献を読むことを支援することができるが、ユーザが文献を作成すること、すなわちユーザが文を入力することを支援することはできない。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、ユーザが文を入力する労力を削減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の入力支援装置は、情報端末において入力された入力文を取得する取得部と、文献データに含まれている複数の文から、前記入力文に類似する類似文を抽出する抽出部と、前記類似文を含む前記文献データに含まれている複数の文から、前記類似文の次の文を、前記入力文の次に入力する候補文として予測する予測部と、前記候補文を含む予測情報を、前記情報端末へ送信する送信部と、を有する。
【0007】
前記取得部は、前記情報端末において所定の記号又は改行の直前に入力された前記入力文を取得してもよい。
【0008】
前記抽出部は、前記入力文に含まれている複数の語が出現する順序及び位置の少なくとも一方と、前記文献データの文に含まれている複数の語が出現する順序及び位置の少なくとも一方とを比較することによって、前記類似文を抽出してもよい。
【0009】
前記入力支援装置は、前記文献データに含まれている第1文と、前記第1文の次の第2文とを関連付けた関連データを記憶している記憶部をさらに有し、前記予測部は、前記関連データにおいて、前記入力文に類似する前記第1文に関連付けられている前記第2文を、前記候補文として予測してもよい。
【0010】
前記入力支援装置は、複数の前記文献データのうち、前記入力文に関連付けられた書類に含まれている1つ又は複数の語を含む、1つ又は複数の前記文献データを選択する選択部をさらに有し、前記抽出部は、前記選択部が選択した1つ又は複数の前記文献データに含まれている複数の文から、前記類似文を抽出してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様のプログラムは、プロセッサを、入力文の入力を受け付ける受付部、文献データに含まれている複数の文から、前記入力文に類似する類似文の次の文を、前記入力文の次に入力する候補文として表示部に表示させる表示制御部、及び前記候補文が選択された場合に、選択された前記候補文を前記入力文の次に挿入する編集部、として機能させる。
【0012】
前記受付部は、前記表示部に表示されている第1領域において、前記入力文の入力を受け付け、前記編集部は、所定操作が行われた場合に、前記第1領域に含まれている文を、前記表示部に表示されている前記第1領域とは異なる第2領域に移動させてもよい。
【0013】
前記編集部は、前記第1領域に含まれている改行を除去した上で、前記第1領域に含まれている文を前記第2領域に移動させてもよい。
【0014】
本発明の第3の態様の入力支援システムは、情報端末と、入力支援装置とを含み、前記入力支援装置は、前記情報端末において入力された入力文を取得する取得部と、文献データに含まれている複数の文から、前記入力文に類似する類似文を抽出する抽出部と、前記類似文を含む前記文献データに含まれている複数の文から、前記類似文の次の文を、前記入力文の次に入力する候補文として予測する予測部と、前記候補文を含む予測情報を、前記情報端末へ送信する送信部と、を有し、前記情報端末は、前記入力文を前記入力支援装置へ送信する送信部と、前記入力支援装置が送信した前記予測情報に含まれている前記候補文を表示部に表示させる表示制御部と、前記候補文が選択された場合に、選択された前記候補文を前記入力文の次に挿入する編集部と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ユーザが文を入力する労力を削減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る入力支援システムの模式図である。
【
図2】実施形態に係る入力支援システムのブロック図である。
【
図3】入力画面を表示している情報端末の正面図である。
【
図4】抽出部が類似文を抽出する方法及び予測部が候補文を予測する方法を説明するための模式図である。
【
図5】入力画面を表示している情報端末の正面図である。
【
図6】入力画面を表示している情報端末の正面図である。
【
図7】実施形態に係る入力支援方法のシーケンス図である。
【
図8】変形例に係る入力支援装置のブロック図である。
【
図9】選択部が文献データを選択する方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[入力支援システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る入力支援システムSの模式図である。入力支援システムSは、特許明細書等の書類(文書)を作成するための文の入力を支援するシステムである。入力支援システムSは、情報端末1と、入力支援装置2とを含む。入力支援システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0018】
情報端末1は、ユーザに対して情報を表示するとともに、ユーザによる文の入力を受け付けるコンピュータである。情報端末1は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等である。
【0019】
入力支援装置2は、情報端末1における文の入力を支援する、サーバ等のコンピュータである。入力支援装置2は、インターネット、ローカルエリアネットワーク等のネットワークを介して、情報端末1と通信可能である。
【0020】
入力支援システムSが実行する処理の概要を以下に説明する。ユーザは、情報端末1において、特許明細書等の書類を作成するための入力文を入力する。情報端末1は、入力された入力文を、入力支援装置2へ送信する。
【0021】
入力支援装置2は、過去に作成された特許明細書等の文献データを予め記憶している。入力支援装置2は、文献データに含まれている複数の文から、情報端末1において入力された入力文に類似する類似文を抽出する。次に入力支援装置2は、抽出した類似文を含む文献データに含まれている複数の文から、類似文の次の文を、入力文の次に入力する候補文として予測する。そして入力支援装置2は、候補文を含む予測情報を、情報端末1へ送信する。
【0022】
情報端末1は、入力支援装置2が送信した予測情報に含まれている候補文を、表示部に表示させる。そして情報端末1は、ユーザによっていずれかの候補文が選択された場合に、選択された候補文を入力文の次に挿入する。
【0023】
このように入力支援システムSは、ユーザによって入力された文と、過去に作成された文献データとに基づいて、次に入力する候補文を表示し、入力された文の次に挿入可能にする。これにより、入力支援システムSは、ユーザが文を入力する労力を削減できる。
【0024】
[入力支援システムSの構成]
図2は、本実施形態に係る入力支援システムSのブロック図である。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示したもの以外のデータの流れがあってよい。
図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0025】
情報端末1は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15とを有する。制御部11は、表示制御部111と、受付部112と、送信部113と、受信部114と、編集部115とを有する。表示部14は、情報を表示可能な液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等を含む。操作部15は、タッチパネル、キーボード等を含む。
【0026】
通信部13は、入力支援装置2との間で通信をするための通信インタフェースである。通信部13は、通信を行うためのプロセッサ、コネクタ、アンテナ等を含む。通信部13は、入力支援装置2から受信した通信信号に所定の処理を行ってデータを取得する。また、通信部13は、外部に送信すべきデータに所定の処理を行って通信信号を生成し、生成した通信信号を入力支援装置2に送信する。
【0027】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部11が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部12は、情報端末1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部11との間でデータの授受を行ってもよい。
【0028】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、表示制御部111、受付部112、送信部113、受信部114及び編集部115として機能する。表示制御部111は、表示部14に情報を表示させる制御をする。受付部112は、操作部15に対するユーザの操作を受け付ける。送信部113は、通信部13を介して入力支援装置2に情報を送信する。受信部114は、通信部13を介して入力支援装置2から情報を受信する。編集部115は、ユーザによって入力された文を編集する。制御部11の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部11の機能の少なくとも一部は、制御部11がネットワーク経由で実行されるプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0029】
入力支援装置2は、制御部21と、記憶部22と、通信部23とを有する。制御部21は、取得部211と、抽出部212と、予測部213と、送信部214とを有する。
【0030】
通信部23は、情報端末1との間で通信をするための通信インタフェースである。通信部23は、通信を行うためのプロセッサ、コネクタ、アンテナ等を含む。通信部23は、情報端末1から受信した通信信号に所定の処理を行ってデータを取得する。また、通信部23は、外部に送信すべきデータに所定の処理を行って通信信号を生成し、生成した通信信号を情報端末1に送信する。
【0031】
記憶部22は、制御部21が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部22は、入力支援装置2の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部21との間でデータの授受を行ってもよい。
【0032】
制御部21は、例えばCPU等のプロセッサであり、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部211、抽出部212、予測部213及び送信部214として機能する。制御部21の機能の少なくとも一部は電気回路によって実行されてもよい。また、制御部21の機能の少なくとも一部は、制御部21がネットワーク経由で実行されるプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0033】
本実施形態に係る入力支援システムSは、
図2に示す具体的な構成に限定されない。情報端末1及び入力支援装置2は、それぞれ2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。例えば入力支援装置2は、単一のコンピュータによって構成されてもよく、互いに連携する複数のコンピュータによって構成されてもよく、コンピュータ資源の集合であるクラウドによって構成されてもよい。また、情報端末1が、入力支援装置2の機能の一部又は全部を実施してもよい。また、入力支援装置2が、情報端末1の機能の一部又は全部を実施してもよい。
【0034】
[入力支援方法の説明]
本実施形態に係る入力支援システムSが実行する入力支援方法を以下に説明する。情報端末1において入力支援システムSを利用するためのアプリケーション(プログラム)が実行されると、表示制御部111は、書類を作成するための文の入力を受け付ける入力画面を表示部14に表示させる。
【0035】
図3は、入力画面を表示している情報端末1の正面図である。入力画面は、入力欄141と、文書欄142と、挿入ボタン143とを含む。入力欄141は、ユーザによる文(文字列)の入力を受け付けるための領域である。文書欄142は、ユーザによって入力された文を特許明細書等の書類として記録するための領域である。挿入ボタン143は、入力欄141に含まれている文を文書欄142に移動するための仮想的なボタン(アイコン)である。
【0036】
受付部112は、入力欄141に特許明細書等の書類を作成するための入力文を入力するためのユーザの操作を受け付ける。受付部112が入力欄141内に所定の記号又は改行(改行記号)を入力する操作を受け付けた場合に、送信部113は、当該記号又は改行の直前の入力文(すなわち、前回入力された記号又は改行と、今回入力された記号又は改行との間の入力文)を、入力支援装置2へ送信する。所定の記号を入力する操作は、例えば、1つの入力文の後に句点(「。」)を入力する操作である。改行を入力する操作は、例えば、1つの入力文の後に改行を入力する操作(すなわち新たな行を作成する操作)である。入力支援システムSは、ユーザが1つの文を入力した後に句点や改行を入力することを契機として後述の候補文を提示できるため、文字入力の自然な流れを阻害しづらい。
【0037】
入力支援装置2において、取得部211は、情報端末1が送信した入力文(すなわち、所定の記号又は改行の直前に入力された入力文)を取得する。抽出部212は、文献データに含まれている複数の文から、取得部211が取得した入力文に類似する類似文を抽出する。
【0038】
図4(a)は、抽出部212が類似文を抽出する方法を説明するための模式図である。入力支援装置2の記憶部22は、過去に作成された特許明細書等の複数の文献データDを予め記憶している。文献データDは、文献の内容を表す複数の文を含むファイル又はデータベースである。
【0039】
抽出部212は、取得部211が取得した入力文S1及び文献データDの文に対して所定の処理(例えば、既知の形態素解析処理)を行うことによって、入力文S1及び文献データDの文それぞれに含まれている、複数の語を特定する。抽出部212は、取得部211が取得した入力文S1に含まれている複数の語が出現する順序及び位置の少なくとも一方と、文献データDの文に含まれている複数の語が出現する順序及び位置の少なくとも一方とを比較し、それらの間の類似度を算出する。
【0040】
類似度は、例えば複数の語が出現する順序が近似しているほど(すなわち、入力文S1及び文献データDの文において複数の同一語の並び順が似ているほど)大きく、複数の語が出現する順序が近似していないほど小さく設定される。また、類似度は、例えば複数の語が出現する位置が近似しているほど(すなわち、入力文S1及び文献データDの文において同一語の位置間の距離が近いほど)大きく、複数の語が出現する位置が近似していないほど小さく設定される。
【0041】
そして抽出部212は、算出した類似度が所定条件を満たす1つ又は複数の類似文S2(例えば、類似度が高い順に所定個数の類似文S2)を抽出するとともに、抽出した1つ又は複数の類似文S2を含む1つ又は複数の文献データDを特定する。
【0042】
抽出部212は、所定の記号又は改行の直前に入力された複数の入力文S1を用いて、類似文S2を抽出してもよい。この場合に、抽出部212は、文献データDに含まれている複数の文から、所定の記号又は改行の直前に入力された複数(例えば3つ)の入力文S1に類似する類似文S2を抽出する。抽出部212が用いる入力文S1の数と、抽出部212が抽出する類似文S2の数とは同じであってもよく、異なっていてもよい。これにより、抽出部212は、所定の記号又は改行の直前に入力された複数の入力文S1を用いて類似性を判定できるため、文脈を考慮して適切な類似文S2を抽出できる。
【0043】
予測部213は、抽出部212が抽出した類似文S2に基づいて、入力文S1の次に入力する候補文S3を予測する。
図4(b)は、予測部213が候補文を予測する方法を説明するための模式図である。
【0044】
予測部213は、類似文S2を含む文献データDに含まれている複数の文から、当該類似文S2の次の文を、入力文S1の次に入力する候補文S3として予測する。抽出部212が複数の類似文S2を抽出した場合には、当該複数の類似文S2を含む文献データDに含まれている複数の文から、複数の候補文S3を予測する。
【0045】
抽出部212及び予測部213は、ここに示した具体的な方法に限られず、その他の方法で候補文S3を予測してもよい。
図4(a)、
図4(b)に示した方法では、抽出部212及び予測部213は、記憶部22に記憶された文献データDを逐次読み出しているが、文献データDにおいて連続する2つの文を関連付けた関連データ(学習データ)を用いてもよい。
【0046】
この場合に、記憶部22は、文献データDに対して所定の処理(例えば、既知の機械学習処理)を行うことによって生成された、文献データDに含まれている第1文と、第1文の次の第2文とを関連付けた関連データを予め記憶している。関連データが含む第1文は、文献データDに含まれている文自体であってもよく、当該文の特徴部分(例えば漢字、数字、アルファベット等)を抜き出した文であってもよい。
【0047】
抽出部212は、記憶部22に記憶された関連データに含まれている複数の第1文から、取得部211が取得した入力文に類似する類似文S2を抽出する。予測部213は、関連データにおいて、抽出部212が類似文S2として抽出した第1文に関連付けられた第2文を、入力文S1の次に入力する候補文S3として予測する。このような方法により、抽出部212及び予測部213は、文献データDを記憶部22から逐次読み出す必要がないため、候補文S3の予測に掛かる時間を削減できる。
【0048】
送信部214は、予測部213が予測した1つ又は複数の候補文を含む予測情報を、情報端末1へ送信する。情報端末1において、受信部114は、入力支援装置2が送信した予測情報を受信する。表示制御部111は、受信部114が受信した予測情報に含まれている候補文を、表示部14に表示させる。
【0049】
図5、
図6は、入力画面を表示している情報端末1の正面図である。表示制御部111は、
図5の上図に示すように、入力画面において、入力欄141に重畳して又は入力欄141の近傍に、受信部114が受信した予測情報に含まれている1つ又は複数の候補文を含む候補欄144を表示させる。
【0050】
受付部112は、候補欄144に含まれている1つ又は複数の候補文のうちいずれかを選択するためのユーザの操作を受け付ける。受付部112が候補文を選択する操作を受け付けた場合に、編集部115は、
図5の下図に示すように、選択された候補文を、入力欄141内で入力文の次に、上述の記号又は改行が付加されていない状態で挿入する。これにより、ユーザは、過去の文献データにおいて入力文に類似する文の次に入力された候補文を容易に把握できるとともに、候補文を入力文として効率的に利用できる。
【0051】
さらに受付部112は、入力欄141内で挿入された候補文を修正する操作を受け付けてよい。また、受付部112は、候補文を選択する操作を行わずに受け付ける前に、入力欄141内で次の入力文の入力を受け付けてもよい。すなわち、受付部112は、入力欄141に入力される複数の文を受け付けてもよい。
【0052】
受付部112が、入力文の次に挿入される候補文の選択を受け付けた後に、又は次の入力文の入力を受け付けた後に、入力欄141内で上述の記号又は改行を入力する操作を受け付けた場合に、受付部112は再び入力文の入力を受け付け、表示制御部111は再び候補文を表示する。
【0053】
受付部112は、ユーザが入力欄141に含まれている文を確定する場合に、挿入ボタン143を選択するためのユーザの操作を受け付ける。受付部112が挿入ボタン143を選択する操作を受け付けた場合に、編集部115は、
図6に示すように、入力欄141(第1領域)に含まれている文を、文書欄142(第2領域)に移動させる。このとき、編集部115は、入力欄141に含まれている複数の文の間に改行が存在する場合、当該改行を除去し、段落番号(例えば、所定の書式で表されている連続番号)を付与した上で、入力欄141に含まれている文を文書欄142に移動させる。その後、ユーザは、操作部15に対して、文書欄142に含まれている文を修正する操作を行ってもよい。
【0054】
受付部112は、ユーザが文書欄142に含まれている文を記録する場合に、文書を記録するためのユーザの操作(例えば、入力画面を閉じる操作)を受け付ける。受付部112が文書を記録する操作を受け付けた場合に、編集部115は、文書欄142に含まれている文を、書類として記憶部12に記憶させる。また、編集部115は、自動的に、文書欄142に含まれている文を書類として記憶部12に記憶させてもよい。これにより、入力支援システムSは、ユーザが入力した文を整形した上で記録できるため、ユーザが書類を作成するための手間を削減できる。
【0055】
[入力支援方法のシーケンス]
図7は、本実施形態に係る入力支援方法のシーケンス図である。情報端末1において、表示制御部111は、書類を作成するための文の入力を受け付ける入力画面を表示部14に表示させる。受付部112は、特許明細書等の書類を作成するための入力文を入力するためのユーザの操作を受け付ける(S11)。受付部112が所定の記号又は改行を入力する操作を受け付けた場合に、送信部113は、当該記号又は改行の直前の入力文を、入力支援装置2へ送信する(S12)。
【0056】
入力支援装置2において、取得部211は、情報端末1が送信した入力文(すなわち、所定の記号又は改行の直前に入力された入力文)を取得する。抽出部212は、文献データに含まれている複数の文から、取得部211が取得した入力文に類似する類似文を抽出する(S13)。予測部213は、抽出部212が抽出した類似文に基づいて、入力文の次に入力する候補文を予測する(S14)。送信部214は、予測部213が予測した1つ又は複数の候補文を含む予測情報を、情報端末1へ送信する(S15)。
【0057】
情報端末1において、受信部114は、入力支援装置2が送信した予測情報を受信する。表示制御部111は、受信部114が受信した予測情報に含まれている候補文を、表示部14に表示させる(S16)。受付部112は、1つ又は複数の候補文のうちいずれかを選択するためのユーザの操作を受け付ける。受付部112が候補文を選択する操作を受け付けた場合に、編集部115は、選択された候補文を、入力文の次に挿入する(S17)。
【0058】
受付部112が挿入ボタンを選択する操作を受け付けた場合に、編集部115は、入力文の入力を受け付けるための第1領域に含まれている文を、入力文を書類として記録するための第2領域に移動させる。受付部112が文書を記録する操作を受け付けた場合に、編集部115は、第2領域に含まれている文を、書類として記憶部12に記憶させる(S18)。
【0059】
[変形例]
特許明細書等の第1書類には、特許請求の範囲等の第2書類が関連付けられている場合がある。第1書類は、第2書類に含まれている複数の単語の少なくとも一部を含むことによって、第2書類と関連付けられている書類である。本変形例に係る入力支援システムSは、ユーザが書類を作成する際に、当該書類に関連付けられている書類の内容に基づいて、候補文の予測に用いる文献データを絞り込む。
【0060】
図8は、本変形例に係る入力支援装置2のブロック図である。
図2に示した構成に加えて、入力支援装置2の制御部21は、さらに選択部215を有する。入力支援システムSのその他の構成は、
図2と同様である。
【0061】
図9は、選択部215が文献データDを選択する方法を説明するための模式図である。
受付部112は、特許請求の範囲等の関連書類DDの内容を入力するためのユーザの操作を受け付ける。関連書類DDは、ユーザが後で入力する入力文によって構成される特許明細書等の書類に関連付けられている書類である。情報端末1の送信部113は、入力された内容を、関連書類DDとして入力支援装置2へ送信する。入力支援装置2において、取得部211は、情報端末1が送信した関連書類DDを、記憶部22に記憶させる。
【0062】
選択部215は、関連書類DDに対して所定の処理(例えば、既知の形態素解析処理)を行うことによって、取得部211が取得した関連書類DDに含まれている、1つ又は複数の語を特定する。選択部215は、記憶部22に予め記憶された複数の文献データDの中から、関連書類DDに含まれている1つ又は複数の語を含む、1つ又は複数の文献データDを選択する。すなわち、選択部215は、ユーザが後で入力する入力文に関連付けられた関連書類DDの内容に基づいて、候補文の予測に用いる文献データDを絞り込む。選択部215は、取得部211が関連書類DDを取得したタイミングで文献データDを選択してもよく、取得部211が入力文を取得したタイミングで文献データDを選択してもよい。
【0063】
送信部214は、選択部215が選択した1つ又は複数の文献データDの少なくとも一部(例えば題名や要約)を情報端末1へ送信してもよい。この場合に、情報端末1において、表示制御部111は、
図3に示す入力画面において、1つ又は複数の文献データDの少なくとも一部を表示部14に表示させる。受付部112は、入力画面に表示されている1つ又は複数の文献データDのうちいずれかを選択するためのユーザの操作を受け付ける。受付部112が文献データDを選択する操作を受け付けた場合に、編集部115は、選択された文献データDの内容を、文書欄142に挿入する。これにより、本変形例に係る入力支援システムSは、関連書類DDに含まれている語を含む文献データDの内容が文書欄142に挿入された状態で書類の作成を開始することができ、ユーザが書類を作成する手間を削減できる。
【0064】
取得部211は、情報端末1が送信した入力文(すなわち、所定の記号又は改行の直前に入力された入力文)を取得する。入力文は、特許明細書等の書類を作成するための文であり、関連書類DDに関連付けられている。抽出部212は、選択部215が選択した1つ又は複数の文献データDに含まれている複数の文から、取得部211が取得した入力文S1に類似する類似文S2を抽出する。そして予測部213は、抽出部212が抽出した類似文S2に基づいて、入力文S1の次に入力する候補文S3を予測する。このように、本変形例に係る入力支援システムSは、関連書類DDを考慮して候補文の予測に用いる文献データDを絞り込めるため、候補文の予測に必要な計算量を削減しながら、より適切な候補文を予測できる。
【0065】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る入力支援システムSは、過去に作成された文献データからユーザによって入力された入力文に類似する類似文を抽出し、文献データにおいて類似文の次の文を候補文としてユーザに対して表示する。さらに入力支援システムSは、ユーザが候補文を選択した場合に、選択された候補文を入力文の次に挿入する。これにより、入力支援システムSは、ユーザに対して候補文を提示し、候補文を入力文として利用できるようにするため、ユーザが書類を作成するための文を入力する労力を削減できる。
【0066】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0067】
情報端末1及び入力支援装置2のプロセッサは、
図7に示す入力支援方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、情報端末1及び入力支援装置2のプロセッサは、
図7に示す入力支援方法を実行するためのプログラムを記憶部から読み出し、該プログラムを実行して入力支援システムSの各部を制御することによって、
図7に示す入力支援方法を実行する。
図7に示す入力支援方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0068】
S 入力支援システム
1 情報端末
11 制御部
111 表示制御部
112 受付部
113 送信部
114 受信部
115 編集部
14 表示部
2 入力支援装置
21 制御部
211 取得部
212 抽出部
213 予測部
214 送信部
215 選択部
22 記憶部