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  • 特許-旋回流路を有する温度調整装置 図1
  • 特許-旋回流路を有する温度調整装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】旋回流路を有する温度調整装置
(51)【国際特許分類】
   F22G 5/12 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
F22G5/12 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019230065
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021099173
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ リチャード スリー
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-021412(JP,U)
【文献】特開平01-184309(JP,A)
【文献】特開平08-286764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22G 1/00-7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象流体が流れる基準流路、
基準流路に連続して対象流体の流れを旋回させる旋回流路を生じさせるセパレータ部であって、回転羽根部を有するセパレータ部
対象流体の温度を調整するための調整用流体を注入する注入部を有する注入手段、
を備えた旋回流路を有する温度調整装置において、
注入手段は、セパレータ部が有する回転羽根部に調整用流体を噴射することによって、対象流体の旋回方向に沿って調整用流体を注入する、
ことを特徴とする旋回流路を有する温度調整装置。
【請求項2】
請求項1に係る旋回流路を有する温度調整装置において、
注入手段の注入部は、旋回流路又は旋回流路近傍に配置されている、
ことを特徴とする旋回流路を有する温度調整装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る旋回流路を有する温度調整装置において、
対象流体の圧力を調整するための圧力調整手段、
を備えたことを特徴とする旋回流路を有する温度調整装置。
【請求項4】
請求項3に係る旋回流路を有する温度調整装置において、
注入手段は、調整用流体を注入することによって、対象流体の温度を低下させるように温度を調整し、
圧力調整手段は、対象流体の圧力を低下させるように圧力を調整する、
ことを特徴とする旋回流路を有する温度調整装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る旋回流路を有する温度調整装置は、流入した流体を旋回させるための旋回流路を有しており、さらに当該流体の温度を調整する機構を備えた温度調整装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回流路を有する温度調整装置としては、たとえば蒸気の温度を低下させるための減温装置であって、気水分離機能を備えた減温装置がある。
【0003】
産業プラントには、一般にボイラーで生成された蒸気等を供給先の機器に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されている。このような生成蒸気の蒸気圧は、一般に供給先の機器における使用蒸気圧よりも高く設定されている。したがって、供給先の機器の手前で使用条件に合った圧力にまで減圧調整される。ところで、蒸気を減圧調整すると高圧蒸気は過熱蒸気になる。このため、飽和温度に減温する必要があり、このために設けられているのが減温装置である。
【0004】
また、搬送される蒸気は、移送途中の放熱によってその一部が凝縮し、配管内にドレンを発生させる。このドレンが蒸気と共に移送された場合、産業プラントにおける生産物の品質低下や、蒸気による装置の加熱効率の低下といった作動トラブルを生じさせるため、配管内に発生したドレンは可能な限り除外する必要がある。
【0005】
このため、一般に配管系統にはスチームトラップが設けられ、適宜、自動的に配管外にドレンを排出するようになっているが、ドレンの一部は蒸気に巻き込まれて飛沫状になるため、蒸気中にドレンが混入した状態で移送される。
【0006】
このため、減温装置に気水分離機構としてサイクロンセパレータが内蔵されているものがある。サイクロンセパレータは蒸気に旋回流を生じさせ、気相と液相の比重差を利用して、遠心力で蒸気からドレンの水滴を分離して排出する。これによって、ドレンを取り除いた乾いた蒸気を機器に供給することができる。
【0007】
このようなサイクロンセパレータ機構を備えた減温装置としては、後記特許文献1に開示されている気水分離器2がある。この気水分離器2の本体3の上部には、過熱蒸気ライン1に接続された入口6が形成されており、この入口6から過熱蒸気が本体3内に流入する。そして、流入した蒸気は本体3内に設けられている旋回羽根11に沿って旋回し、その遠心力で蒸気中から水分が分離する。
【0008】
また、本体3の入口6の上部には注入口25が形成されており、ポンプ26によって加圧された冷却水が注水ライン27を通じて注入口25から注水される。この加圧された冷却水は、旋回する過熱蒸気に混合され、過熱蒸気は飽和温度に減温される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実開平2-21412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術においては、注入される冷却水が蒸気の旋回流を阻害する虞がある。すなわち、前述のように、注入される冷却水はポンプ26によって加圧された状態で入口6の上部から注入されるため、その注入の勢いを受け、蒸気の旋回流に影響を与えて旋回速度が弱められる虞がある。旋回流が阻害されると蒸気中からの水分の分離が不十分になる虞がある。
【0011】
そこで本願に係る旋回流路を有する温度調整装置は、これらの問題を解決することを目的とし、流体の旋回流を阻害することを回避しつつ、流体の温度調整を確実に行うことができる旋回流路を有している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願に係る旋回流路を有する温度調整装置は、
対象流体が流れる基準流路、
基準流路に連続しており、対象流体の流れを旋回させる旋回流路、
対象流体の温度を調整するための調整用流体を注入する注入部を有する注入手段、
を備えた旋回流路を有する温度調整装置において、
注入手段は、対象流体の旋回方向に沿って調整用流体を注入する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願に係る旋回流路を有する温度調整装置においては、注入手段が、対象流体の温度を調整するための調整用流体を注入する。そして、注入手段は、対象流体の旋回方向に沿って調整用流体を注入する。このため、流体の旋回流を阻害することを回避しつつ、流体の温度調整を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願に係る旋回流路を有する温度調整装置の第1の実施形態を示すパイロット式減圧弁2の一部断面図である。
図2図1に示すパイロット式減圧弁2における蒸気の旋回流の方向と注水方向との関係を模式的に表した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る旋回流路を有する温度調整装置の下記の要素に対応している。
【0016】
パイロット式減圧弁2・・・温度調整装置
給水管4・・・注入手段
給水口4a・・・注入部
流入路32・・・基準流路
メインバルブ51、メイン弁座55・・・圧力調整手段
矢印102方向に沿った流路・・・旋回流路
蒸気・・・対象流体
冷却水・・・調整用流体
【0017】
[第1の実施形態]
本願に係る旋回流路を有する温度調整装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、本願に係る旋回流路を有する温度調整装置をパイロット式減圧弁に適用した例を掲げる。
【0018】
(パイロット式減圧弁の構成の説明)
産業プラントには、一般にボイラーで生成された蒸気を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されている。この生成蒸気の圧力を、給先の機器の使用条件に合った圧力にまで減圧調整するために、配管系統に設置されるのがパイロット式減圧弁である。
【0019】
本実施形態におけるパイロット式減圧弁2は、蒸気の減圧機能のほか、スケールの除去機、蒸気中のドレンの分離・除去機能、ドレンの自動排出機能、及び蒸気の減温機能を備えている。
【0020】
図1に示すように、パイロット式減圧弁2のボディー10の開口下端にはセパレータボディー12がボルトによって固定されており、このセパレータボディー12の開口下端はトラップカバー14によって閉じられている。また、ボディー10の開口上端にはパイロットボディー60がボルトによって固定されており、このパイロットボディー60の開口上端にはさらにスプリングケース75がボルトによって固定されている。
【0021】
ボディー10の一方側面には、ボディー10の内部空間に通じる流入路32が形成されている。そして、ボディー10のフランジ31を介して一次側配管45がボルトで固定され、流入路32は一次側配管45に接続されている。また、ボディー10の他方側面には、ボディー10の内部空間に通じる流出路34が形成されており、フランジ33を介して二次側配管46がボルトで固定され、流出路34は二次側配管46に接続されている。なお、一次側配管45と二次側配管46とが同軸上に取り付けられるように、フランジ31とフランジ33とが設けられている。
【0022】
ボディー10の内部空間には、周面に5枚の回転羽根を有する略円筒形状のセパレータ42が配置されている。セパレータ42の5枚の回転羽根には、それぞれ一方の側面になだらかに傾斜する傾斜壁が設けられている。そして、セパレータ42の外側にはスクリーン40が取り付けられている。
【0023】
セパレータボディー12の開口下端を閉じるトラップカバー14には、オリフィスが形成されたトラップ弁座20が取り付けられている。さらに、トラップカバー14には下向きに排水口22が形成されており、トラップ弁座20に形成されたオリフィスを介してセパレータボディー12の内部空間と排水口22とは連通している。
【0024】
また、セパレータボディー12内には、中空形状のフロート16が浮動可能に収納されており、通常時、フロート16は自重によってフロート支持部26及びトラップ弁座20に着座して、トラップ弁座20に形成されたオリフィスを閉塞している。なお、セパレータボディー12内には、フロート16の浮上を規制するフロートカバー18が固定されている。
【0025】
ボディー10には、メイン弁座55が設けられている。メイン弁座55はボディー10の中心軸に沿った貫通穴を備えており、セパレータ42の内部空間と流出路34とを連通させている。メイン弁座55の下方にはメインバルブ51が中心軸方向に移動可能に配置されており、小スプリング52の付勢を受けてメインバルブ51は常時、矢印111方向(上昇方向)に加圧されている。なお、メイン弁座55とメインバルブ51とで構成する弁機構を基点として、セパレータ42側が一次側、流出路34側が二次側である。
【0026】
メイン弁座55の上方には、ボディー10の内部に形成されたシリンダー59が位置しており、このシリンダー59内にピストン57が中心軸に沿って配置されている。ピストン57は流出路34を横切り、さらにメイン弁座55の貫通穴を貫通して、ピストン57の下端がメインバルブ51に当接している。ピストン57は、シリンダー59内において昇降可能に保持されており、ピストン57が矢印112方向に下降したとき、ピストン57の下端が小スプリング52の付勢力に抗してメインバルブ51を押し下げる。すなわち、ピストン57の昇降に応じてメインバルブ51が移動し、メイン弁座55の開度が調整される。
【0027】
パイロットボディー60の上部には、パイロット弁座67が設けられており、パイロット弁座67の内部を中心軸に沿ってパイロットバルブ63が貫通している。このパイロットバルブ63は、パイロットスプリング65の付勢を受けて常時、矢印111方向(上昇方向)に加圧されている。
【0028】
パイロットバルブ63が配置されている空間は、一次側バイパス61を介して流入路32と連通している。流入路32を通じて流入する蒸気はスクリーン66を透過し、蒸気中に混入しているスケール等がスクリーン66によって捕捉される。なお、パイロットバルブ63が配置されている空間は、パイロットバイパス68を介してピストン57の上面側に形成されるシリンダー59の空間にも連通している。
【0029】
パイロットボディー60の上部開口部には、ダイヤフラム72が設けられており、パイロットバルブ63の上端面はダイヤフラム72に当接している。また、スプリングケース75内には調整スプリング71が収納されており、ダイヤフラム72を矢印112方向(下降方向)に押圧している。
【0030】
スプリングケース75の上部には調整ネジ77が螺入されており、操作頭部はスプリングケース75から突出している。調整ネジ77を螺入操作することによって、ダイヤフラム72に対する調整スプリング71の押圧力を調整することができる。なお、突出している調整ネジ77の頭部は、スプリングケース75に対して着脱可能なキャップ78によって覆われている。そして、ダイヤフラム72の下面側の空間は、二次側バイパス62を介して流出路34に連通している。
【0031】
本実施形態においては、ボディー10の流出路34の下側近傍に貫通孔が形成されており、この貫通孔に給水管4が嵌め入れられている。この給水管4は、さらにスクリーン40を貫通し、給水管4の先端である給水口4aがスクリーン40の内側に向けて突出している。そして、給水管4を通じ、給水ポンプ(図示せず)によって加圧された冷却水が給水口4aから噴射される。
【0032】
(パイロット式減圧弁の動作の説明)
以下に、パイロット式減圧弁2が備える(1)スケールの除去、(2)蒸気中のドレンの分離・除去、(3)ドレンの自動排出、(4)蒸気の減圧、及び(5)蒸気の減温の各機能についての動作を説明する。
【0033】
(1)スケールの除去
一次側配管45を通じて移送された蒸気は、流入路32からボディー10内に矢印101方向に沿って流入し、スクリーン40を透過する。スクリーン40はメッシュ部材で構成されているため、蒸気中に混入しているスケールが、スクリーン40を透過する際に捕捉される。また、スケール以外の異物もスクリーン40によって捕捉される。これによって、スケール等が取り除かれた状態の蒸気をパイロット式減圧弁2から送出することができる。
【0034】
(2)蒸気中のドレンの分離・除去
スクリーン40を透過した蒸気は、セパレータ42の円筒形状に沿って外周を旋回し、各回転羽根に形成された傾斜壁に導かれ、セパレータ42の周囲を螺旋方向(矢印102方向)に数回転する。
【0035】
この蒸気の螺旋状の旋回によって遠心力が生じ、比重の大きな水についてはより大きな遠心力が働く。この結果、蒸気中に混入しているドレンは遠心力によって外側に飛ばされ、蒸気から分離・除去される。外側に飛ばされたドレンは水滴となってボディー10及びセパレータボディー12の内壁に付着し、内壁を伝って流れ落ちてセパレータボディー12の底部にドレン24として滞留する。
【0036】
(3)ドレンの自動排出
前述のように、セパレータボディー12内には、フロート16が浮動可能に収納されている。セパレータボディー12の底部にドレン24が滞留し、ドレンの水位が一定のレベルを超えた場合、フロート16は図1に示す状態から浮上し、トラップ弁座20に形成されたオリフィスを開放する。
【0037】
これによって、滞留しているドレン24は、配管系統の高圧に基づく勢いに従い、トラップ弁座20のオリフィスから排水口22に抜け、矢印104方向に排水される。排水後、ドレン24の水位は下がり、これに従ってフロート16も沈下して図1に示す状態に復位し、トラップ弁座20のオリフィスを閉塞する。なお、トラップ弁座20のオリフィスは常時、水没した状態にあるため、オリフィスから蒸気漏れが生じることはない。
【0038】
(4)蒸気の減圧
一次側配管45を通じて高圧で流入した蒸気は、セパレータ42の周囲を螺旋状に旋回した後、下側から矢印102方向に沿ってセパレータ42内に進入する。そして、メイン弁座55とメインバルブ51とで構成する弁機構を蒸気が通過し、これによって二次側の蒸気圧が一次側の蒸気圧よりも低くなり、減圧蒸気が矢印103方向に沿って流出路34から流出する。
【0039】
なお、減圧される二次側の蒸気圧は、自在に設定することができる。すなわち、キャップ78を取り外した上、調整ネジ77を螺入操作すれば、ダイヤフラム72に加えられる調整スプリング71の付勢力を調整することができる。これによって、パイロット弁座67の開度が調整され、これを通じてメイン弁座55の開度が制御されて、二次側の蒸気圧が任意の圧力に設定される。
【0040】
ところで、一次側の高圧蒸気は圧力変動が比較的大きいことから、減圧後の二次側の蒸気圧については可能な限り安定させた状態で、パイロット式減圧弁2から送り出す必要がある。このために、二次側バイパス62を通じて、流出路34から二次側の蒸気圧がダイヤフラム72に加えられるようになっている。
【0041】
ダイヤフラム72は調整スプリング71によって矢印112方向に加圧されおり、反対側から矢印111方向に加えられる二次側の蒸気圧やパイロットスプリング65の付勢力との間で、ダイヤフラム72はバランスを保つ。そして、このダイヤフラム72のバランス状態に従ってパイロットバルブ63の中心軸方向における位置が決定し、これによってパイロット弁座67の開度が調整される。
【0042】
そして、パイロット弁座67の開度に応じ、一次側バイパス61を介して流入する一次側の蒸気圧がピストン57の上面に加えられ、ピストン57が中心軸方向に上下移動し、メイン弁座55の開度が制御される。
【0043】
以上のような機構によって、二次側の蒸気圧の変動に従い、メイン弁座55の開度が制御されて二次側の蒸気圧が安定する。たとえば、二次側の蒸気圧が安定状態から低下した場合、ダイヤフラム72は矢印112方向に押し下げられ、これに従ってパイロットバルブ63はパイロットスプリング65の付勢力に抗して下降し、パイロット弁座67の開度は大きくなる。これによって、ピストン57の上面に回り込む一次側の蒸気流量が増加し、メインバルブ51は小スプリング52の付勢力に抗して下降する。これによって、メイン弁座55の開度が大きくなり、二次側の蒸気圧が上昇し安定状態を回復する。
【0044】
(5)蒸気の減温
前述のように、ボディー10には給水管4が設けられており、給水管4の給水口4aから加圧された冷却水がボディー10内に噴射される。この冷却水はスクリーン40を透過し、セパレータ42の周囲を螺旋状に旋回する蒸気に向けて噴射され、蒸気に混合される。
【0045】
図2は、蒸気の旋回流の方向と注水方向との関係を模式的に表した平面図である。図2に示すように、給水管4の先端部分は、水平方向において蒸気の旋回流の方向と同一方向に屈曲して形成されている。これによって、給水管4の給水口4aは、蒸気の螺旋方向である矢印102方向に向けて配置されることになり、冷却水は螺旋状に旋回する蒸気の流れに沿って給水口4aから矢印109方向に向けて噴射される。
【0046】
したがって、矢印102方向への蒸気の旋回流を阻害することを回避できる。また、給水管4の給水口4aが、蒸気の旋回流路の近傍に配置されているため、より円滑に冷却水を蒸気の旋回流に混合することができる。
【0047】
こうして噴射された冷却水は、旋回する蒸気中に分散して混合し、蒸気との間で熱交換される。蒸気と熱交換された冷却水は飽和温度に達して直ちに蒸発し、この際発生する潜熱によって蒸気は飽和温度まで減温される。蒸発しなかった余剰の冷却水は、前述のドレンの分離・除去と同様、蒸気の螺旋状の旋回によって外側に飛ばされ、ボディー10及びセパレータボディー12の内壁を伝って流れ落ちてドレン24として滞留する。そして、フロート16が浮上した際、排水口22から排水される。
【0048】
なお、本実施形態におけるパイロット式減圧弁2は前述のように減圧機能を有しており、減圧機構としてメイン弁座55及びメインバルブ51が設けられている。そしてこの影響を受け、この弁機構の直前の一次側の蒸気圧は圧力変動が激しい。
【0049】
このため、冷却水を注水しても分散に偏りが生じることがあり、効率的な減温を行うことができない。この点、本実施形態においては、螺旋状に旋回する蒸気に向けて冷却水を噴射するため、より偏りのない冷却水の分散を実現することができる。
【0050】
また、激しい圧力変動の影響を受け、蒸気の旋回流が不安定になることがあるが、本実施形態においては、螺旋状に旋回する蒸気の流れに沿って冷却水を噴射するため、蒸気の旋回流の不安定を増長することがない。
【0051】
[その他の実施形態]
前述の実施形態において示した構成及び動作は、本願に係る旋回流路を有する温度調整装置の一例であり、注入手段が、対象流体の旋回方向に沿って調整用流体を注入するものである限り他の構成を採用することができる。たとえば、前述の実施形態においては、給水管4がスクリーン40を貫通し、給水口4aがスクリーン40の内側に配置されていたが、給水口4aをスクリーン40の下側に配置し、スクリーン40を避けて蒸気に噴射してもよい。
【0052】
また、対象流体として蒸気を例示したが、蒸気以外の流体を対象としてもよい。さらに、調整用流体として冷却水を例示したが、温度調整が可能な流体であれば他の流体を採用することもできる。
【0053】
また、前述の実施形態においては、旋回流路を有する温度調整装置としてセパレータを有するパイロット式減圧弁2を例示したが、直動式減圧弁に本願に係る旋回流路を有する温度調整を適用することもできる。さらに、前述の実施形態においては、温度調整として減温を例示し、圧力調整として減圧を例示したが、減温や減圧以外の調整を行う調整装置に本願に係る旋回流路を有する温度調整を適用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
2:パイロット式減圧弁 4:給水管 4a:給水口 32:流入路
51:メインバルブ 55:メイン弁座

図1
図2