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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】噴射ノズル付き管継手
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/24 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
B01D21/24 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020016506
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021122766
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】301019367
【氏名又は名称】株式会社オクト
(74)【代理人】
【識別番号】100142941
【弁理士】
【氏名又は名称】京和 尚
(72)【発明者】
【氏名】増田 伊三雄
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-077490(JP,A)
【文献】実開昭51-144962(JP,U)
【文献】特開平09-290801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
B08B 1/00-13/00
C02F 11/00-11/20
F16L 13/00-59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水タンクの排出口と大径のホースとを接続する管継手の内部に噴射ノズルを備えた噴射ノズル付き管継手であって、
前記噴射ノズル付き管継手には、廃水タンクの排出口との接続部と大径のホースとの接続部との中間部に穿孔された穴を貫通して金属管が設けられ、さらに、廃水タンクの排出口に向けて前記金属管が90度に折り曲げられ、前記排出口との接続部内部ではその先端部に噴射ノズルが形成されており、
前記噴射ノズル付き管継手の前記排出口との接続部が廃水タンクの排出口に接続されたのち、前記金属管を通って前記噴射ノズルから噴出された高圧水又は圧縮空気が噴流となって廃水タンクの沈殿物に衝突すると、衝撃により破砕された沈殿物が廃水と共に排出口から排出されることを特徴とする噴射ノズル付き管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水タンクの排出口から沈殿物を排出する噴射ノズル付き管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業等で発生した廃水を貯留する廃水タンクが知られている。一般に廃水タンクは、タンク内に貯留された廃水をタンク下部の排出口から排出するようにしている。
【0003】
廃水の種類は多岐に渡り、廃水の中にアスファルトやコンクリートの切削粉、塗料の破片、食物のカスなどの微細な固形物が混じる場合ある。そして、廃水タンクの底にそれらの固形物が沈殿し泥状の沈殿物を生じる場合がある。
【0004】
それらの沈殿物は、高い粘性を有するようになる場合がある。さらに、泥状の沈殿物が固まる場合もある。沈殿物が固まり廃水タンクの底の排出口を塞いでしまうと、廃水を排出できなくなる場合もある。そのため、廃水の排出を行う前に沈殿物の除去が必要となる。
【0005】
タンク底に沈殿した沈殿物の除去を手作業で行うと手間がかかることから、タンクの入口部に圧力流体を噴射する噴射ノズルを具備した沈殿物の除去装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1に記載された沈殿物の除去装置によれば、圧力水をタンク内面全面に噴射してタンク内面に付着した沈殿物の洗浄を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-267003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、一般に排出口はタンクの底に設置されているのに対し、特許文献1の沈殿物の除去装置はタンク内面全面に噴射するものなので、タンクの底の排出口近くに固まった沈殿物を効果的に除去することができない。
【0009】
また、タンク内面から泥状の沈殿物がかたまりとなって剥がれ落ちたような場合には、その沈殿物のかたまりが排出口をふさいでしまう場合もある。
【0010】
そこで、本発明では、廃水タンクの底に固形物が沈殿し泥状の沈殿物を生じる場合であっても、排出口周辺の沈殿物を確実に破砕でき、廃水をスムーズに排出できる噴射ノズル付き管継手を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る噴射ノズル付き管継手は、廃水タンクの排出口と大径のホースとを接続する管継手の内部に噴射ノズルを備えた噴射ノズル付き管継手であって、前記噴射ノズル付き管継手には、廃水タンクの排出口との接続部と大径のホースとの接続部との中間部に穿孔された穴を貫通して金属管が設けられ、さらに、廃水タンクの排出口に向けて前記金属管が90度に折り曲げられ、前記排出口との接続部内部ではその先端部に噴射ノズルが形成されており、前記噴射ノズル付き管継手の前記排出口との接続部が廃水タンクの排出口に接続されたのち、前記金属管を通って前記噴射ノズルから噴出された高圧水又は圧縮空気が噴流となって廃水タンクの沈殿物に衝突すると、衝撃により破砕された沈殿物が廃水と共に排出口から排出されることを特徴とする。
【0012】
第1の発明に係る噴射ノズル付き管継手は、沈殿物に向け高圧水又は圧縮空気を噴射し沈殿物が破砕されることで、排出口から廃水と共に沈殿物をスムーズに排出することができる。また、管継手に噴射ノズルが設けられているので、排出口に噴射ノゾル付き管継手を接続するだけで、沈殿物の排出準備が行える。
【発明の効果】
【0013】
廃水タンク底の排出口付近に沈殿物が固まった場合であっても、廃水タンクの外から排出口を通して沈殿物に高圧水又は圧縮空気を噴射することにより沈殿物を破砕することができる。そして、廃水とともに沈殿物を排出口から排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る噴射ノズル付き管継手である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】廃水タンクに本発明に係る沈殿物の排出装置を設置した様子である。
図4図3のB部詳細断面図である。
図5】廃水と共に破砕された大小の沈殿物の固まりが排出口を通って外部に排出される様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る廃水タンク沈殿物の排出方法、及びその実施に使用する噴射ノズル付き管継手を用いた廃水タンク沈殿物の排出装置について以下、添付図面を参照しながら具体的な発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
(廃水タンク沈殿物の排出装置の構成)
図1は、噴射ノズル付き管継手1の全体図である。噴射ノズル付き管継手1に使用されている管継手2には、本実施の形態ではカムロック3(登録商標)が使用されている。カムロック3は、カプラー4とカムアーム5とから構成されている。カムロック3をタンク側のアダプター35(図4に示す)と接続する際には、カプラー4に付属したカムアーム5を最上部まで押し上げた状態で、カプラー4をアダプター35に差し込む。両側のカムアーム5を同時にカプラー4の側面に当たるまで下ろすことにより、アダプター35と強固に接続することができる。
【0017】
図1に示した6の部分は、カプラー4のうちアダプター35との接続部である。また、7はカプラー4のうちホース25(図4に示す)との接続部である。そして、アダプター35との接続部6とホース25との接続部7との間には中間部8が設けられている。中間部8には、噴射ノズルから噴射する流体を供給するための供給部9が設けられている。なお、本実施の形態は、管継手としてカムロック3を使用する例を説明するが、本発明はカムロック3以外の管継手にも適用できることはもちろんである。
【0018】
図2は、図1のA-A断面図である。アダプター35(図4に示す)との接続部6内部には、アダプター35側に向けて噴射ノズル11が設けられている。噴射ノズル11は、金属管12の先端部に形成されている。金属管12は、噴射ノズル11と前述した供給部9とを連絡している。図2に示されるように、金属管12は90度に折り曲げられている。
【0019】
金属管12は、カプラー4の中間部8に穿孔された穴を貫通している。金属管12が貫通するカプラー4の穴の周囲は水密となるようろう付け、あるいは溶接される。金属管12には、エルボジョイント13、レデューサ14、手動バルブ15及びカップラー16が接続されて供給部9が構成されている。
【0020】
図3は、廃水タンク22に本発明に係る沈殿物の排出装置21を設置した様子を説明する図である。廃水タンク22は、左側槽23と右側槽24とを有しており、中央部隔壁30を中心として左右対称形状に構成されている。廃水タンク22は、トラックの荷台に搭載されて搬送される。図3に示される廃水タンク22は、2槽から構成されることで、一方の槽には清水を満たし、他方の槽には廃水を満たすようにできる。実際の作業においては、一方の槽(左側槽23)に清水を満たしてアスファルト道路の切断現場等に向かう。
【0021】
現場では、清水を用いてアスファルト切断機の冷却・洗浄を行いながら、切断作業で発生したアスファルトの切粉が混じった廃水を他方の槽(右側槽24)に満たすことができる。廃水が右側槽24に満たされ、沈殿物が右側槽24下部で固まった場合でも、本発明の排出装置21を用いることで、廃水と共に沈殿物を排出口から排出することができる。
【0022】
廃水タンク22の左側槽23と右側槽24の下部には、それぞれボールバルブ29が設けられている。ボールバルブ29の先端にはアダプター35が取り付けられている。このアダプター35が排出口として機能する。
【0023】
図3に示すように、右側槽24のアダプター35(排出口35)には、図1で説明した噴射ノズル付き管継手1が接続されている。噴射ノズル付き管継手1の管継手にはカムロックが用いられているので、アダプター35(排出口35)に容易に接続することができる。噴射ノズル付き管継手1には、大径のホース25が接続されている。
【0024】
沈殿物の排出装置21は、噴射ノズル付き管継手1の他に、高圧水供給装置26と高圧水ホース27とから構成される。高圧水ホース27は、両端に口金具を備えている。高圧水ホース27は、高圧水供給装置26の取り出し口28と噴射ノズル付き管継手1の供給部9(カップラー16)とを接続する。なお、高圧水供給装置26に代えて圧縮空気供給装置を用いて沈殿物の排出装置を構成してもよい。その場合は、廃水を排出する際に廃水タンク22が密閉できることが望ましい。
【0025】
(廃水タンク沈殿物の排出方法)
上述した廃水タンク沈殿物の排出装置21を使用する、廃水タンク沈殿物の排出方法について、以下に説明する。
【0026】
図4は、図3のB部詳細断面図である。廃水タンク22の底には、排出部32が形成されている。廃水タンク22の底板33は、排出部32に向かって傾斜している。排出部32には側方に向け排出パイプ34が配置され、その先端には接続フランジ39が溶着されている。
【0027】
接続フランジ39には、ボールバルブ29が接続されている。接続フランジ39とボールバルブ29の一方のフランジとは、図示しない複数のボルトとナットによって固定されている。ボールバルブ29にはアダプター35が接続されている。ボールバルブ29の他方のフランジとアダプター35とは、図示しない複数のボルトとナットによって固定されている。
【0028】
アダプター35には噴射ノズル付き管継手1(カプラー4)が接続されている。アダプター35の排出方向の端部とカプラー4との接触面にはパッキン36が配置されている。噴射ノズル付き管継手1(カプラー4)のホース25との接続部7はホース25の内径部に差し込まれている。カプラー4とホース25とが重合したホース25外周部は、バンド37によって締め付けられている。
【0029】
噴射ノズル付き管継手1の供給部9には、高圧水ホース27が接続されている。高圧水ホース27には高圧水供給装置26(図3参照)の取り出し口28から高圧水が供給されている。図4に示した状態では、手動バルブ15は閉じられている。
【0030】
図4では、ボールバルブ29内部の通路41は弁42によって閉じられている。弁42は、ボールバルブ29の上部のレバー43と回転シャフト44によってつながっている。弁42をレバー43によって回転操作することで、ボールバルブ29の開閉操作できるようになっている。
【0031】
図4に示すように、廃水タンク22内部には廃水51(ハッチングを施された部分)が満たされている。廃水タンク22下部には沈殿物52(別のハッチングが施された部分)が沈殿している。沈殿物52は、ボールバルブ29の弁42の廃水タンク22側まで詰まった状態となっている。この状態でレバー43を操作してボールバルブ29の弁42を開いても沈殿物52が固まっているので廃水51が出てこない。
【0032】
手動バルブ15を操作し、高圧水ホース27から噴射ノズル11に高圧水を供給する。すると、図5に示すように、噴射ノズル11から噴出された高圧水が噴流53となって沈殿物52に衝突する。衝突の衝撃により沈殿物52は破砕される。廃水タンク22下部の沈殿物52が削り取られ沈殿物52の層が薄くなると、廃水51の圧力により沈殿物52の層が一気に崩れる。すると、廃水51と共に大小の沈殿物52の固まりが排出口を通って外部に向け流れ出す。
【0033】
図5は、廃水51と共に大小の沈殿物52の固まりがボールバルブ29、アダプター35、噴射ノズル付き管継手1、ホース25を通って外部に排出される様子を説明している。このように、本発明に係る廃水タンク沈殿物の排出方法を用いた沈殿物の排出装置21によれば、沈殿物52に向け高圧水を噴射し沈殿物52が破砕されることで、排出口から廃水51と共に沈殿物52をスムーズに排出することができる。
【0034】
なお、沈殿物52の排出が完了したところで図3に示す高圧水供給装置26からの高圧水の供給を停止することで、噴射ノズル11からの噴流53の噴出を止める。その時には、廃水51の排出を阻害する沈殿物52は無くなっているので、廃水51は継続してスムーズに排出される。
【0035】
上述した実施の形態では、噴射ノズル付き管継手1の噴射ノズル11から高圧水を噴射する例を説明したが、高圧水に代えて圧縮空気を噴射するようにしてもよい。この場合は、廃水タンク22を密閉するようにすれば、沈殿物52のより高い排出効果が望める。すなわち、噴射ノズル付き管継手1の噴射ノズル11から噴出された圧縮空気が廃水タンク22の廃水51の上部に溜まり廃水51の圧力を高める。圧力の高まった廃水51は、排水口に向け沈殿物52を強力に押し出すようになる。そのため、圧縮空気による沈殿物52の破砕効果と相まって排出口から廃水51と共に沈殿物52をスムーズに排出することができる。
【符号の説明】
【0036】
1:噴射ノズル付き管継手
2:管継手
3:カムロック
11:噴射ノズル
21:沈殿物の排出装置
22:廃水タンク
51:廃水
52:沈殿物
図1
図2
図3
図4
図5