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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】金属構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
B23K20/12 310
B23K20/12 366
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020035837
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021137830
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】506263882
【氏名又は名称】京浜ラムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一平
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215206(JP,A)
【文献】特開2010-245085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属構造体の製造方法であって、
前記金属構造体は、互いに垂直方向に重ね合わされた状態で摩擦撹拌接合により接合される2つの金属部材を含み、前記2つの金属部材は、互いに前記垂直方向に重ね合わされることにより前記2つの金属部材の間に内部空間を有する組立体を形成するように構成され、
前記製造方法は、
前記2つの金属部材を準備する準備工程と、
前記2つの金属部材を前記垂直方向に重ね合わせることにより前記組立体を形成する組立工程と、
前記組立体を前記垂直方向に見た時に前記内部空間と重ならない位置において、少なくとも1つの金属製固定部材を少なくとも部分的に、前記組立工程において前記垂直方向に重ね合わされた前記2つの金属部材に対して前記垂直方向に挿入することにより、前記2つの金属部材を互いに前記垂直方向に固定する固定工程と、
前記摩擦撹拌接合のためのツールを回転させながら前記組立体の上面に挿入し、前記ツールが、前記金属製固定部材による固定位置を通り、且つ前記固定位置において前記2つの金属部材の各々の一部と共に前記金属製固定部材の少なくとも一部が前記摩擦撹拌接合の範囲に含まれるように、前記ツールを移動させることにより、前記2つの金属部材を接合する接合工程とを
有する。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記接合工程において、前記摩擦撹拌接合は、前記金属製固定部材の径が前記摩擦撹拌接合の範囲内に含まれるように実施される。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法であって、
前記金属製固定部材は、前記2つの金属部材に対して前記垂直方向に挿入される胴部と、前記胴部の一端部に設けられ、前記胴部より大きな径を有し、前記胴部が前記2つの金属部材に対して挿入された時に前記2つの金属部材を押さえつけるように作用する頭部とを有する。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1に記載の製造方法であって、
前記固定工程では、複数の前記金属製固定部材が、前記組立体を前記垂直方向に見た時に前記内部空間と重ならない位置において、互いに間隔を空けて、少なくとも一つの列を成して並ぶように設けられ、
前記接合工程では、前記複数の前記金属製固定部材による複数の前記固定位置の各々を通るように、前記ツールを前記少なくとも一つの列に沿って移動させることにより、前記2つの金属部材を接合する。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法であって、
前記金属構造体は、前記内部空間が前記列に沿って延びる形状を有するように構成される。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1に記載の製造方法であって、
前記2つの金属部材は、互いに前記垂直方向に重ね合わされることにより前記2つの金属部材の間に、互いに独立し且つ互いに平行に延びる形状を有する複数の内部空間を有する組立体を形成するように構成され、
前記固定工程では、複数の金属製固定部材が、隣り合う2つの内部空間の間で一つの列を成して並ぶように設けられる。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1に記載の製造方法であって、
前記金属構造体は、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に対して接触又は近接するように設置される伝熱用金属構造体である。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1に記載の製造方法であって、
前記金属構造体は、前記内部空間が空洞である状態で用いられる中空金属構造体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属構造体として、本体部と蓋部とを備える金属構造体がある。本体部には、蓋溝が形成される。本体部の蓋溝の底面には、更に凹溝が形成される。蓋溝には、蓋部が嵌め合わされる。蓋溝周辺における本体部と蓋部とが接合される。これにより、凹溝と蓋部とにより囲われる空間が、内部空間となり、流体の流路として使用可能となる。このような金属構造体は、伝熱用金属構造体として使用され得る。伝熱用金属構造体は、例えば、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に接触若しくは近接するように配置される。例えば、対象物から熱を逃がす場合には、当該流路に冷却媒体を流し、対象物から、金属本体部及び冷却媒体へ熱を伝達させることにより、対象物の熱を逃がすことができる。
【0003】
特許文献1は、金属構造体に関して、摩擦攪拌接合により、蓋溝周辺における本体部と蓋部とを接合する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-240706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製造工程の煩雑化や製造装置の複雑化を抑制乃至防止しつつ、接合部位における欠陥の発生と、摩擦撹拌接合のツールの破損とを抑制乃至防止できる金属構造体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、金属構造体の製造方法について検討した。
【0007】
図1(a)及び(b)を参照して、金属構造体の製造方法の一例について説明する。図1に係る組立体110aは、本体部101と、蓋部102とを含む。組立体110aにおける本体部101と蓋部102とが摩擦撹拌接合されることにより、金属構造体が製造される。図1(a)及び(b)は、当該製造方法における接合工程を示している。
【0008】
1つの本体部101は、矩形板状体である。本体部101は、凹部101rを上面101sに有する。凹部101rは、矩形状を有している。1つの蓋部102は、矩形板状体である。蓋部102は、凹部101rに対して鉛直方向Wに嵌め合わされるように構成されている。蓋部102が凹部101rに嵌合されることにより、組立体110aが形成される。
【0009】
図中では示されていないが、凹部101rの底面には、さらに、複数の溝が形成されている。複数の溝は、互いに平行であり且つ互いに独立しており、方向Pに延びる形状を有する。方向Pは、溝が延びる方向である。従って、蓋部102が凹部101rに嵌合されることにより、複数の溝が、複数の内部空間となる。各内部空間は、例えば、気体又は液体等の流体の流路として用いられることができる。即ち、1つの蓋部102を1つの本体部101に組み合わせることにより、並列した複数の内部空間を形成できる。
【0010】
複数(例えば4つ)の固定治具111は、それぞれ、蓋部102の各角に位置する。方向Pに沿って、2つの固定治具111が設けられている。複数の固定治具111は、互いに間隔を空けて、上方から蓋部102を押すように固定される。この状態で、摩擦撹拌接合のツール105を本体部101の上面101sに挿入する。そして、水平に方向Pへ向けて移動させることにより、本体部101と蓋部102とを接合する。ツール105は、本体部101を貫通して蓋部102に到達するように挿入される先端部105aを有する。ツール105は、円柱状を有する。先端部105aは、ツール105の先端に設けられ、ツール105よりも小さい径の円錐台形状を有する。摩擦撹拌接合の接合範囲117は、図1(b)に示すように、蓋部102の位置において、本体部101を貫通して蓋部102に至る。
【0011】
1つの蓋部102が、互いに並列し且つ互いに独立した複数の内部空間を形成可能な大きさを有し、且つ、方向Pにおける固定治具111間の距離Zが長い場合、図1(b)に示すような事象が生じる場合がある。即ち、蓋部102に対してツール105を挿入して水平方向に走行させる時には、ツール105の摩擦熱により、蓋部102に、蓋部102を浮き上がらせる方向に変形する応力Kが発生する場合がある。その場合、蓋部102と本体部101との間に、隙間Lが発生する。その結果、先端部105aだけではなく、ツール105も蓋部102と接触してしまう。摩擦熱が本体部101に伝わり難くなる。その結果、接合部位において欠陥が生じたり、ツール105が破損したりするおそれが生じる。
【0012】
その一方で、距離Zを短くするために、方向Pに並ぶ固定治具111の数を増やすと、製造装置が複雑化したり、製造工程が煩雑化したりするおそれもある。
【0013】
そこで、本発明者は、金属構造体の製造方法として、以下の方法を検討した。
【0014】
図2図4を参照して、金属構造体の製造方法の他の一例について説明する。組立体110a(本体部101及び蓋部102)は、図1に示す組立体110aと同様の構成を有している。但し、図2(b)、図3(b)及び図4(b)では、内部空間103(103A~103D)が示されている。具体的に、凹部101rの底面には、複数(4つの)の溝が形成されている。複数の溝は、互いに平行であり且つ互いに独立しており、方向Pに延びる形状を有する。蓋部102が凹部101rに嵌合されることにより、複数の溝が、複数の内部空間103(103A~103D)となる。各内部空間103(103A~103D)の両側では、凹部101rの底部が、内部空間103の存在によって、凸部104(104A~104E)となっている。内部空間103Aの両側に凸部104A、104Bが位置する。内部空間103Bの両側に凸部104B、104Cが位置する。内部空間103Cの両側に凸部104C、104Dが位置する。内部空間103Dの両側に凸部104D、104Eが位置する。
【0015】
図2(a)に示すように、ツール105が方向Pに沿って直線状に移動する経路は、凸部104C(図2(a)参照)を通る。方向Pは、ツール105が移動する方向でもある。凸部104Cの両側において凸部104Cと隣り合う凸部104B、104Dの上方において、蓋部102を押さえるように、長尺固定バー113が設置される。2本の長尺固定バー113は、方向Pと平行乃至実質的に平行に設置される。各長尺固定バー113は、複数(例えば3つ)の固定治具111によって固定される。複数の固定治具111は、方向Pにおいて互いに間隔を空けて配置される。この状態で、ツール105が、凸部104Cと蓋部102とを接合するように方向Pに沿って移動する。
【0016】
上述した接合方法によれば、方向Pにおいては、凹部101rの全域にわたって、長尺固定バー113が配置される。そのため、図1(b)に示すような方向Pにおける隙間Lは生じ難い。しかし、固定治具111により長尺固定バー113を介して蓋部102を本体部101に固定していても、ツール105の摩擦熱により、方向Pと直交する方向において、蓋部102を浮き上がらせる方向に変形する力が発生する場合がある。その場合、図2(b)に示すように、蓋部102と本体部101との間に、隙間Mが発生する。具体的に、凸部104Dと蓋部102との間に隙間Mが発生すると共に、凸部104Bと蓋部102との間に隙間Mが発生する。
【0017】
当該接合方法では、図2(b)に示すように、凸部104Cと蓋部102とが接合される。接合範囲117は、図3(b)に示すように、蓋部102から凸部104Cに至る。次に、図3(a)及び(b)に示すように、凸部104Dと蓋部102との接合が行われる。このとき、凸部104Dの両側において凸部104Dと隣り合う凸部104C、104Eの上方において、蓋部102を押さえるように、長尺固定バー113が設置される。しかし、隙間Mは、引き続き残ってしまう。この状態で、ツール105が、凸部104Dと蓋部102とを接合するように方向Pに沿って移動する。
【0018】
その結果、図4(b)に示すように、凸部104Dと蓋部102とは、隙間Mを有した状態で接合される。次に、図4(a)及び(b)に示すように、凸部104Bと蓋部102との接合が行われる。このとき、凸部104Bの両側において凸部104Bと隣り合う凸部104A、104Cの上方において、蓋部102を押さえるように、長尺固定バー113が設置される。しかし、隙間Mは、引き続き残ってしまう。この状態で、ツール105が、凸部104Bと蓋部102とを接合するように方向Pに沿って移動する。その結果、凸部104Bと蓋部102とも、隙間Mを有した状態で接合される。その後、図示しないが、凸部104Aと蓋部102との接合が行われる。続いて、凸部104Eと蓋部102との接合が行われる。これにより、各内部空間103の両側における凸部104と蓋部102との接合が完了する。加えて、方向Pにおける内部空間103(103A~103D)の両端を封止するように、方向Pと垂直な方向にツール105を移動させる。以上により、各内部空間103(103A~103D)の周囲における凸部104と蓋部102との接合が完了する。
【0019】
上述の方法においても、図1に示した方法と同じように、ツール105の経路の中に、本体部101と蓋部102との隙間(隙間M)を有する部分が含まれる。そのため、接合時に、先端部105aだけではなく、ツール105も蓋部102と接触してしまう。摩擦熱が本体部101に伝わり難くなる。その結果、接合部位において欠陥が生じたり、ツール105が破損したりするおそれがある。しかし、固定治具111を用いて蓋部102を押圧することにより本体部101と蓋部102とを固定する方法では、隙間Mの発生を抑制乃至防止することは容易ではない。固定治具111によって押さえられる領域の面積の拡大やその力の増強は、製造工程の煩雑化や製造装置の複雑化を招くおそれがある。
【0020】
本発明は、上述した知見に基づいて完成された発明である。本発明は、例えば、以下のような構成を採用することができる。
【0021】
(1) 金属構造体の製造方法であって、
前記金属構造体は、互いに垂直方向に重ね合わされた状態で摩擦撹拌接合により接合される2つの金属部材を含み、前記2つの金属部材は、互いに前記垂直方向に重ね合わされることにより前記2つの金属部材の間に内部空間を有する組立体を形成するように構成され、
前記製造方法は、
前記2つの金属部材を準備する準備工程と、
前記2つの金属部材を前記垂直方向に重ね合わせることにより前記組立体を形成する組立工程と、
前記組立体を前記垂直方向に見た時に前記内部空間と重ならない位置において、少なくとも1つの金属製固定部材を少なくとも部分的に前記2つの金属部材に対して前記垂直方向に挿入することにより、前記2つの金属部材を互いに前記垂直方向に固定する固定工程と、
前記摩擦撹拌接合のためのツールを回転させながら前記組立体の上面に挿入し、前記ツールが、前記金属製固定部材による固定位置を通り、且つ前記固定位置において前記2つの金属部材の各々の一部と共に前記金属製固定部材の少なくとも一部が前記摩擦撹拌接合の範囲に含まれるように、前記ツールを移動させることにより、前記2つの金属部材を接合する接合工程とを
有する。
【0022】
(1)の製造方法によれば、固定工程では、組立体を垂直方向に見た時に内部空間と重ならない位置において、少なくとも1つの金属製固定部材を少なくとも部分的に2つの金属部材(例えば、本体部及び蓋部)に対して垂直方向に挿入することにより、2つの金属部材を互いに垂直方向に固定する。接合工程では、摩擦撹拌接合のためのツールを回転させながら組立体の上面に挿入し、ツールが、金属製固定部材による固定位置を通り、且つ固定位置において2つの金属部材の各々の一部と共に金属製固定部材の少なくとも一部が摩擦撹拌接合の範囲に含まれるように、ツールを移動させることにより、2つの金属部材を接合する。金属製固定部材を用いた固定は、固定治具を用いて押さえる固定と異なり、金属部材が浮き上がるような変形を抑制乃至防止できる。従って、接合部位における欠陥の発生、及び摩擦撹拌接合のツールの破損を、抑制乃至防止できる。また、金属製固定部材の設置自体は、比較的容易且つ簡便であり、製造工程の煩雑化や製造装置の複雑化を抑制乃至防止できる。
【0023】
金属製固定部材は、例えば、2つの金属部材に対して垂直方向に挿入されることができる形状を有している。垂直方向は、2つの金属部材が重ね合わされる方向である。金属製固定部材は、例えば、棒形状の部材である。金属製固定部材としては、例えば、ボルト、ピン等が挙げられる。金属製固定部材は、予め2つの金属部材に設けられた孔に挿入されてもよく、2つの金属部材に孔が設けられていない状態で挿入されてもよい。金属製固定部材は、2つの金属部材の材料と同じ材料からなってもよく、異なる材料からなってもよい。金属製固体部材は、2つの金属部材に挿入される部分において外周にネジ溝が形成されていることが好ましい。金属製固定部材は、2つの金属部材に挿入されない部分を有していてもよく、全体的に2つの金属部材に挿入されるように構成されていてもよい。
【0024】
(2) (1)の製造方法であって、
前記接合工程において、前記摩擦撹拌接合は、前記金属製固定部材の径が前記摩擦撹拌接合の範囲内に含まれるように実施される。
【0025】
(2)の製造方法によれば、金属製固定部材の径が摩擦撹拌接合の範囲内に含まれる。そのため、接合範囲におけるボイドの発生が抑制乃至防止されることができる。接合部位における欠陥の発生がより効果的に防止されることができる。
【0026】
(3) (1)又は(2)の製造方法であって、
前記金属製固定部材は、前記2つの金属部材に対して前記垂直方向に挿入される胴部と、前記胴部の一端部に設けられ、前記胴部より大きな径を有し、前記胴部が前記2つの金属部材に対して挿入された時に前記2つの金属部材を押さえつけるように作用する頭部とを有する。
【0027】
(3)の製造方法によれば、金属製固定部材によって2つの金属部材をより強く固定できる。従って、接合時における金属部材の変形をより効果的に抑制乃至防止できる。接合部位における欠陥の発生と、摩擦撹拌接合のツールの破損とをより効果的に抑制乃至防止できる。なお、頭部は、頭部の少なくとも一部が金属部材(例えば蓋部)に挿入されるように2つの金属部材に挿入されてもよい。胴部は、外周にネジ溝が設けられていてもよい。胴部の他端部(即ち先端部)は、特に限定されず、例えば、平坦であってもよく(所謂平先)、尖っていてもよい(所謂トガリ先)。
【0028】
(4) (1)~(3)のいずれか1の製造方法であって、
前記固定工程では、複数の前記金属製固定部材が、前記組立体を前記垂直方向に見た時に前記内部空間と重ならない位置において、互いに間隔を空けて、少なくとも一つの列を成して並ぶように設けられ、
前記接合工程では、前記複数の前記金属製固定部材による複数の前記固定位置の各々を通るように、前記ツールを前記少なくとも一つの列に沿って移動させることにより、前記2つの金属部材を接合する。
【0029】
(4)の製造方法によれば、製造工程の煩雑化や製造装置の複雑化をより効果的に抑制乃至防止できると共に、接合部位における欠陥の発生と、摩擦撹拌接合のツールの破損とをより効果的に抑制乃至防止できる。
【0030】
(5) (4)の製造方法であって、
前記金属構造体は、前記内部空間が前記列に沿って延びる形状を有するように構成される。
【0031】
(5)の製造方法によれば、直線状の内部空間を効率良く形成できる。製造工程の煩雑化や製造装置の複雑化をより効果的に抑制乃至防止できる。
【0032】
(6) (1)~(5)のいずれか1の製造方法であって、
前記2つの金属部材は、互いに前記垂直方向に重ね合わされることにより前記2つの金属部材の間に、互いに独立し且つ互いに平行に延びる形状を有する複数の内部空間を有する組立体を形成するように構成され、
前記固定工程では、複数の金属製固定部材が、隣り合う2つの内部空間の間で一つの列を成して並ぶように設けられる。
【0033】
(6)の製造方法によれば、互いに独立し且つ互いに平行に延びる複数の直線状の内部空間を効率良く形成できる。製造工程の煩雑化や製造装置の複雑化をより効果的に抑制乃至防止できる。
【0034】
(7) (1)~(6)のいずれか1の製造方法であって、
前記金属構造体は、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に対して接触又は近接するように設置される伝熱用金属構造体である。
【0035】
(7)の製造方法によれば、製造工程の煩雑化や製造装置の複雑化を抑制乃至防止しつつ、接合部位における欠陥の発生と、摩擦撹拌接合のツールの破損とを抑制乃至防止できる。内部空間を流体の流路とすることにより、例えば、流体の密閉性に優れた流路が密に配置された金属構造体を実現できる。即ち、高い密閉性により、優れた伝熱性を有する金属構造体を実現できる。即ち、(7)の製造方法によれば、製造方法の煩雑化や製造装置の複雑化を抑制乃至防止しつつ、伝熱用として好適な金属構造体を製造できる。
【0036】
(8) (1)~(6)のいずれか1の金属構造体であって、
前記金属構造体は、前記内部空間が空洞である状態で用いられる中空金属構造体である。
【0037】
(8)の製造方法によれば、製造工程の煩雑化や製造装置の複雑化を抑制乃至防止しつつ、接合部位における欠陥の発生と、摩擦撹拌接合のツールの破損とを抑制乃至防止できる。内部空間を空洞とすることにより、例えば、空洞が密に配置された金属構造体を実現できる。即ち、製造方法の煩雑化や製造装置の複雑化を抑制乃至防止しつつ、構造体の機械的強度、重量及びサイズの組合せに関する設計自由度が高い中空金属構造体を製造できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、製造工程の煩雑化や製造装置の複雑化を抑制乃至防止しつつ、接合部位における欠陥の発生と、摩擦撹拌接合のツールの破損とを抑制乃至防止できる金属構造体の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1(a)は、第一参考例に係る金属構造体の製造方法における接合工程を説明するための斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のA-A線断面を模式的に示す説明図である。
図2図2(a)は、第二参考例に係る金属構造体の製造方法における接合工程において中央列に対して行われる摩擦撹拌接合の様子を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のB-B線断面を模式的に示す説明図である。
図3図3(a)は、第二参考例に係る金属構造体の製造方法における接合工程において右列に対して行われる摩擦撹拌接合の様子を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のB-B線断面を模式的に示す説明図である。
図4図4(a)は、第二参考例に係る金属構造体の製造方法における接合工程において左列に対して行われる摩擦撹拌接合の様子を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のB-B線断面を模式的に示す説明図である。
図5図5(a)は、一実施形態に係る蓋部を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のC-C線断面を模式的に示す説明図である。
図6図6(a)は、一実施形態に係る本体部を模式的に示す斜視図であり、図6(b)は、図6(a)のD-D線断面を模式的に示す説明図である。
図7図7(a)は、一実施形態に係る組立体を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のE-E線断面を模式的に示す説明図であり、図7(c)は、図7(b)に示す断面において金属製固定部材を設ける様子を模式的に示す説明図である。
図8図8(a)~(c)は、それぞれ、金属製固定部材の一例を模式的に示す断面図であり、図8(d)は、固定位置における摩擦撹拌接合の様子を模式的に示す断面図である。
図9図9(a)は、一実施形態に係る製造方法の接合工程の一部を模式的に示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)のF-F線断面を模式的に示す説明図である。
図10図10(a)は、一実施形態に係る製造方法の接合工程の一部を模式的に示す斜視図であり、図10(b)は、図10(a)のF-F線断面を模式的に示す説明図である。
図11図11(a)は、一実施形態に係る製造方法の接合工程の一部を模式的に示す斜視図であり、図11(b)は、図11(a)のF-F線断面を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実施形態に係る金属構造体の製造方法について、以下に説明する。実施形態に係る金属構造体は、2つの金属部材として、蓋部2と本体部1とを含む。
【0041】
先ず、実施形態に係る蓋部について、図5(a)~(b)を参照して説明する。
【0042】
蓋部2は、金属製の板状体である。蓋部2は、図5(a)に示すように、平面視において、矩形状を有する。蓋部2は、図5(b)に示すように、断面視矩形状を有する。蓋部2は、銅製である。蓋部2を構成する金属は、摩擦攪拌の摩擦熱によって軟化することにより塑性流動可能な金属材料であれば、特に限定されない。当該金属としては、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの少なくとも1種を含む合金が挙げられる。蓋部2には、複数の取付孔16が形成されている。より具体的には、取付孔16の上側部16bが形成されている。取付孔16の形状については、後述する。複数の取付孔16は、蓋部2の上面において、図5(a)に示すように、方向Pに沿う複数の列18A~18Cを成すように形成されている。方向Pは、後述するように、ツール5が移動する方向と平行又は実質的に平行である。各列18A~18Cでは、複数の取付孔16は、方向Pに沿って互いに間隔を空けるように配置されている。なお、図中には示されていないが、蓋部2には、後述する内部空間3に対する冷媒等の流体の注入口又は排出口として用いられる貫通孔が形成されていてもよい。貫通孔は、例えば、方向Wに沿って蓋部2を貫通する孔である。取付孔16は、摩擦撹拌接合によって部分的又は全体的に消滅するが、貫通孔は、摩擦撹拌接合の対象ではない。
【0043】
次に、実施形態に係る本体部について、図6(a)~(b)を参照して説明する。
【0044】
本体部1は、金属製の板状体である。本体部1を構成する金属は、摩擦攪拌の摩擦熱によって軟化することにより塑性流動可能な金属材料であれば、特に限定されない。当該金属としては、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの少なくとも1種を含む合金が挙げられる。本体部1と蓋部2とは、同じ金属で構成されてもよく、異なる金属で構成されてもよい。本体部1は、図6(a)に示すように、平面視において、矩形状を有する。また、本体部1の上面には、矩形状の凹部7が形成されている。凹部7は、蓋部2が凹部7に嵌合されることができる形状及び大きさを有している。平面視において、凹部7の外縁の形状は、矩形状である。凹部7の深さは、蓋部2の厚さと同じ又は実質的に同じである。本体部1の凹部7の底面には、複数の取付孔16が形成されている。より具体的には、取付孔16の下側部16aが形成されている。取付孔16の形状については、後述する。複数の取付孔16は、凹部7の底面において、図6(a)に示すように、方向Pに沿う複数の列18A~18Cを成すように形成されている。各列18A~18Cでは、複数の取付孔16は、方向Pに沿って互いに間隔を空けるように配置されている。上述した貫通孔は、本体部1に形成されてもよいが、本体部1に形成されないことが好ましい。本体部1は、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に対して接触又は近接する伝熱面として好適に利用されることができる。
【0045】
図6(b)に示すように、凹部7の底面には、複数の内部空間3が形成されている。内部空間3は、図6(a)には示されていない。内部空間3は、方向Pに沿って延びる溝形状を有している。内部空間の形状は、特に限定されない。内部空間は、U字状であってもよく、ジグザグ形状であってもよい。1つの金属構造体における内部空間の数は、特に限定されず、1つ又は複数である。内部空間3は、本体部1及び蓋部2によって画成される。図6(b)に示すように、方向Pと直交する方向において、互いに隣り合う内部空間3の間に、取付孔16が位置する。取付孔16の下側部16aの外周には、ネジ溝が形成されている。全ての取付孔16に対して摩擦撹拌接合が行われた結果、内部空間3は、上述した貫通孔を除いて、密閉されていることが好ましい。
【0046】
次に、実施形態に係る組立体について、図7(a)~(c)を参照して説明する。
【0047】
組立体10aは、図7(a)に示すように、本体部1と蓋部2とを含む。組立体10aは、本体部1と蓋部2とが方向Wに重ね合わされることにより形成される。蓋部2が本体部1の凹部7に嵌合されることにより、組立体10aが形成されている。
【0048】
組立体10aは、図7(b)に示すように、複数の内部空間3を有している。複数の内部空間3は、方向Pに沿って互いに平行をなすように延びる形状を有している。組立体10aにおいては、図7(b)に示すように、上側部16bと、下側部16aとが連通することにより、取付孔16が形成されている。複数の取付孔16は、図7(a)に示すように、方向Pに沿って互いに間隔を空けるように配置され、列18A~18Cを成している。各列18A~18Cは、隣り合う内部空間3の間に位置する。従って、組立体10aを方向Pに沿って見ても、取付孔16は、内部空間と重ならない。なお、本実施形態では、図7(b)に示すように、隣り合う内部空間3の間には、取付孔16が配置されているが、最も外側の内部空間3の外側には、取付孔16が配置されていない。最も外側の内部空間3の外側にも、取付孔16が配置されていてもよい。
【0049】
図7(c)に示すように、各取付孔16に、金属製固定部材15が挿入される。金属製固定部材15は、胴部15aと、頭部15bとからなる。胴部15aの外周には、ネジ溝が形成されている。頭部15bの径は、胴部15aの径よりも大きい。本実施形態においては、図7(b)に示すように、頭部15bの一端(下端)は、胴部15aと連続している。頭部15bは、円板形状を有する部分と、図中で下方に描かれた胴部15aに近づくにつれて径が小さくなる円錐台形状を有する部分とからなる。取付孔16は、金属製固定部材15と対応する形状を有する。即ち、取付孔16の上側部16bは、図7(b)に示すように、小径部16bSと、大径部16bLとを有する。小径部16bSは、頭部15bの径と同じ大きさの径を有する。小径部16bSは、下側部16aと連通しており、下側部16aと共に、胴部15aを受け入れる。大径部16bLは、小径部16bSの径よりも大きい径を有する。大径部16bLは、図中で下方に描かれた小径部16bSに近づくにつれて径が小さくなる円錐台形状を有する部分を含んでいる。大径部16bLは、小径部16bSと連通している。大径部16bLの円錐台形状を有する部分の頂部(下端部)が、小径部16bSと連通している。大径部16bLは、頭部15bの少なくとも一部を受け入れる。
【0050】
下側部16aの外周には、ネジ溝が形成されている。そのため、金属製固定部材15をネジ締めするように挿入すると、金属製固定部材15の胴部15aは、取付孔16の下側部16aに挿入されていく。これにより、頭部15bは、大径部16bLに受け入れられる。胴部15aが下側部16aに更に深く挿入されると、頭部15bが蓋部2と方向Pに接触する。その結果、頭部15bが蓋部2と方向Pにおいて係合する。以上のように、取付孔16への金属製固定部材15の挿入により、本体部1と蓋部2とが固定される。このように本体部1と蓋部2とが金属製固定部材15によって固定された状態において、金属製固定部材15が設けられた位置が「固定位置」である。
【0051】
次に、実施形態に係る金属製固定部材について、図8(a)~(d)を参照して説明する。
【0052】
金属製固定部材15の形状は、上述した例に限定されない。金属製固定部材15の形状としては、特に限定されず、例えば、図8(a)~(c)に示す形状が挙げられる。
【0053】
図8(a)に示す例では、胴部15aは、柱状体である。頭部15bは、胴部15aの径よりも大きい径を有する円板状体であり、胴部15aの一端(図中上端)に胴部15aと一体的に設けられている。頭部15bの一部が、取付孔16に受け入れられている。
【0054】
図8(b)に示す例では、胴部15aは、柱状体である。頭部15bは、図8(a)と同様に、円板状体である。図8(b)に示す胴部15aは、図8(a)に示す胴部15aよりも長い。頭部15bは、取付孔16に全く受け入れられていない。言い換えると、取付孔16は、頭部15bを受け入れるための部分を有していない。取付孔16は、上述した大径部16bLに相当する部分を有していない。
【0055】
図8(c)に示す例では、胴部15aは、柱状体である。頭部15bは、図7(c)に示す例と同様に、円板形状を有する部分と、図中で下方に描かれた胴部15aに近づくにつれて径が小さくなる円錐台形状を有する部分とからなる。但し、円錐台形状を有する部分の側面が、図中下方に膨らむように湾曲している。
【0056】
図7及び図8(a)~(c)のいずれの例においても、金属製固定部材15が2つの金属部材(本体部1及び蓋部2)に設けられた時に金属製固定部材15と2つの金属部材との間に空隙又は実質的な空隙が生じないように金属製固定部材15と2つの金属部材とが面接触することが好ましい。摩擦撹拌接合によって金属部材内にボイドが生じたり、金属構造体の外部及び/又は内部空間3と連通する空隙が生じたりすることが抑制乃至防止されることができる。また、いずれの例においても、金属製固定部材15は、方向Wにおいて頭部15bの外周部と本体部1との間に蓋部2が挟まれると共に、胴部15aが本体部1と固定されるように、本体部1及び蓋部2に設けられる。
【0057】
図8(d)は、摩擦撹拌接合のツール5の先端部5aが、金属製固定部材15による固定位置に挿入された時の様子を示す断面図である。方向Pと直交する方向(図中横方向)において、摩擦撹拌接合の接合範囲17の幅は、少なくとも金属製固定部材15の頭部15bの高さにおいて、頭部15bの径よりも広いことが好ましい。接合範囲17は、金属製固定部材15の頭部15bの外周を含むことが好ましい。接合範囲17の幅は、少なくとも金属製固定部材15の高さにおいて、胴部15aの径よりも広いことが好ましい。接合範囲17は、金属製固定部材15の胴部15aの外周を含むことが好ましい。摩擦撹拌接合は、接合範囲17が三部材境界の全周を含むように実施されることが好ましい。三部材境界は、組立体10aにおける本体部1と蓋部2と金属製固定部材15との境界であり、金属製固定部材15の外周の全周を囲う。これにより、ボイドや空隙が発生することが抑制乃至防止されることができる。
【0058】
接合範囲17の深さは、蓋部2の厚さよりも大きい。接合範囲17の深さは、本体部1及び蓋部2の厚さの合計よりも小さい。即ち、方向Wにおいて、接合範囲17は、蓋部2を越えて本体部1に到達するが、本体部1を貫通しない。摩擦撹拌接合は、方向Wにおいて、接合範囲17が、金属製固定部材15の径を全て含むように実施されることが好ましいが、部分的に含むように実施されてもよい。摩擦撹拌接合は、金属製固定部材15の径方向において、接合範囲17が、金属製固定部材15の径を全て含むように実施されることが好ましいが、部分的に含むように実施されてもよい。図8(d)に示すように、摩擦撹拌接合の接合範囲17は、金属製固定部材15の全体を含むことが好ましい。上述したようなボイドや空隙が発生することが抑制乃至防止されることができる。
【0059】
次に、実施形態に係る金属構造体の製造方法について説明する。
【0060】
<準備工程>
先ず、準備工程では、本体部1(図6(a)及び(b)参照)が準備されると共に、蓋部2(図5(a)及び(b)参照)が準備される。本体部1及び蓋部2は、それぞれ「金属部材」に相当する。準備工程においては、取付孔16が形成された本体部1及び蓋部2が準備されてもよい。また、準備工程において、取付孔16が形成されていない本体部1及び蓋部2が準備されるとともに、本体部1及び蓋部2の各々に取付孔16が形成されてもよい。準備工程において、取付孔16が形成されていない本体部1及び蓋部2が準備され、後述する組立工程において、本体部1及び蓋部2が組み立てられると共に、本体部1及び蓋部2に取付孔16が形成されてもよい。取付孔16は、組立体10a(図7(a)~(c)参照)を垂直方向Wに見た時に内部空間3と重ならない位置に形成される。
【0061】
<組立工程>
組立工程では、本体部1と蓋部2とが垂直方向Wに重ね合わされる。蓋部2が本体部1の凹部7に嵌合されるように、蓋部2が、本体部1上に載置される。これにより、内部空間3を有する組立体10aが形成される。組立体10aでは、垂直方向Wにおいて、本体部1が下に位置し、蓋部2が上に位置する(図7(a)~(c)参照)。
【0062】
<固定工程>
固定工程では、少なくとも1つの金属製固定部材15を、少なくとも部分的に、本体部1及び蓋部2に対して垂直方向Wに挿入することにより、本体部1と蓋部2とを互いに垂直方向Wに固定する。金属製固定部材15は、部分的に又は全体的に、取付孔16に挿入される。本実施形態では、金属製固定部材15を取り付けるための取付孔16が蓋部2及び本体部1に形成されているが、取付孔16は、蓋部2のみに形成されていてもよい。取付孔16は、必須の構成ではない。即ち、取付孔16は形成されていなくてもよい。例えば、金属製固定部材15がネジであり、固定工程において、金属製固定部材15が、蓋部2及び本体部1に直接ねじ込まれてもよい。
【0063】
<接合工程>
接合工程について、図9図12を参照して説明する。接合工程は、組立体10aに対して行われる。例えば、本体部1の周辺は、固定治具11によって押さえられている。これにより、本体部1は固定されている。接合工程では、本体部1と蓋部2とが摩擦攪拌接合により接合される。摩擦攪拌用装置(図示せず)のツール5が、当該接合工程で用いられる。ツール5は、耐熱性及び耐摩耗性が高い材料により形成されている。ツール5は、先端に先細りの先端部5aを有する円柱状体である。ツール5は、回転しながら移動するように、摩擦攪拌用装置が備える駆動装置により制御される。具体的に、ツール5は、回転しながら、本体部1及び蓋部2に対する相対的な昇降移動と、本体部1及び蓋部2に対する相対的な平行移動とを行うことが可能である。昇降移動は、垂直方向Wへの移動である。平行移動は、例えば、方向Pへの移動である。ツール5の先端部5aには、外周面に螺旋状のネジ溝(図示せず)が設けられている。
【0064】
上述の固定工程で設けられた複数の金属製固定部材15は、列18A~18Cを成している。接合工程では、先ず、図9(a)及び(b)に示すように、摩擦撹拌接合のツール5が、中央の列18Bに沿って移動することにより、列18Bに対して摩擦撹拌接合が行われる。接合工程では、ツール5を回転させながら、組立体10aに挿入する。ツール5は、組立体10aの上面から挿入される。ツール5は、摩擦撹拌接合が本体部1に到達するように挿入される。
【0065】
次に、図10(a)及び(b)に示すように、列18Cに対して摩擦撹拌接合が行われる。次に、図11(a)及び(b)に示すように、列18Aに対して摩擦撹拌接合が行われる。このように、左右方向に並ぶ複数列(三列以上)の金属製固定部材15に対して順に摩擦撹拌接合を行う場合、その順番は、例えば、以下のように定められることが好ましい。即ち、次に摩擦撹拌接合が行われる列は、左右両側に残る未処理の列の数ができるだけ多くなるように選択される。三列の場合、中央の列が第一列となる。七列の場合、中央の列が第一列となる。この場合、左右両側に残る未処理の列は、それぞれ、三列である。そのため、次に摩擦撹拌接合が行われる列は、当該三列における中央の列となる。これにより、摩擦撹拌接合に起因する変形や隙間の発生を防止乃至抑制できる。
【0066】
上述した製造方法により製造された金属構造体の用途は、特に限定されない。金属構造体は、例えば、内部空間3が空洞である状態で用いられる中空金属構造体であってもよい。また、金属構造体は、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に対して接触又は近接するように設置される伝熱用金属構造体であってもよい。金属構造体は、密閉性に優れた内部空間3を有する。互いに接合された本体部1及び蓋部2は、内部空間3と、金属構造体の外部との間における流体の出入りを遮断できる。金属構造体は、内部空間3が流体の流路又は貯留部として機能するように好適に用いられ得る。当該流体は、例えば、気体又は液体である。金属構造体が伝熱用金属構造体として用いられる場合、流体は、例えば、冷媒等の伝熱用流体である。
【0067】
なお、金属構造体の製造方法は、準備工程、組立工程、固定工程及び接合工程以外の工程を有していてもよい。例えば、金属構造体の製造方法は、固定工程と接合工程との間に、本体部1と蓋部2との仮接合工程を有していてもよい。仮接合工程は、破線状に摩擦撹拌接合を行う工程である。固定工程は、金属製固定部材15により、複数の点で、本体部1と蓋部2とを固定する工程である。接合工程は、摩擦撹拌接合により、線状に本体部1と蓋部2とを固定する工程である。このように、複数の点での固定と、線状での固定との間に、破線状での固定を行うことにより、変形がより効果的に防止乃至抑制されることができる。また、接合工程の後に、接合工程により生じたバリを除去するための平坦処理が行われてもよい。さらに、接合工程において、ツール5を傾斜させてもよい。
【0068】
また、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、材料、構造、形状などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、構造、形状などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 本体部
1r 凹部
1s 上面
2 蓋部
3 内部空間
5 ツール
5a 先端部
7 凹部
10a 組立体
11 固定治具
13 長尺固定バー
15 金属製固定部材
15a 胴部
15b 頭部
16 取付孔
16a 下側部
16b 上側部
17 (摩擦撹拌接合による)接合範囲
18A~18C (取付孔16の)列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11