(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】バイオマーカーおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20231102BHJP
C12Q 1/689 20180101ALI20231102BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20231102BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231102BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231102BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12Q1/689 Z ZNA
C12Q1/6874
C12N15/09 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2020514306
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 AU2018050471
(87)【国際公開番号】W WO2018209398
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-11
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519408401
【氏名又は名称】マイクロバイオ・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Microbio Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】フラビア・ハイゲンス
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C12Q 1/00 - 1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の、Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesからなる群から選択される少なくとも1つの細菌を同定または分類する方法であって、前記試料からの細菌16S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の少なくとも一部分を、その中の、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653に対応する位置における一塩基多型(SNP)の存在の有無について分析することを含み、
前記試料中の前記少なくとも1つの細菌は、下記の基準にしたがって同定または分類される方法:
(A)前記少なくとも1つの細菌が、273位にAがあり653位にTがあるとき、グラム陽性細菌であると判定され;または
(B)前記少なくとも1つの細菌が、440位にTがあるとき、グラム陽性細菌であると判定され;または
(C)前記少なくとも1つの細菌が、412位にTがあるとき、Staphylococcus aureusであると同定され;または
(D)前記少なくとも1つの細菌が、647位にGがあるとき、Enterococcus属に属すると分類され;または
(E)前記少なくとも1つの細菌が、653位にGがあるとき、Enterobacter cloacaeであると同定され;または
(F)前記少なくとも1つの細菌が、378位にAがあり488位にTがあるとき、または488位および647位にTがあるとき、Streptococcus pneumoniaeであると同定され;または
(G)前記少なくとも1つの細菌が、378位にAがあり488位または647位にAがあるとき、Streptococcus agalactiaeであると同定され;または
(H)前記少なくとも1つの細菌が、378位にGがあり488位または647位にAがあるとき、Streptococcus pyogenesであると同定され;または
(I)前記少なくとも1つの細菌が、273位、440位および647位にAがあるとき、Acinetobacter calcoaceticusであると同定され;または
(J)前記少なくとも1つの細菌が、273位にTがあり653位にTがあるとき、Escherichia coliであると同定され;または
(K)前記少なくとも1つの細菌が、273位にTがあり488位および647位にCがあり653位にAがあるとき、Klebsiella pneumoniaeであると同定され;または
(L)前記少なくとも1つの細菌が、440位および488位にCがあり647位にTがあるとき、Proteus mirabilisであると同定され;または
(M)前記少なくとも1つの細菌が、440位にAがあり647位にTがあるとき、Pseudomonas aeruginosaであると同定される。
【請求項2】
種を区別するために融解曲線分析を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Staphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisが、412位のSNPの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて互いから区別され;Enterococcus faecalisおよびEnterococcus faeciumが、647位のSNPの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて互いから区別され;Serratia marcescensおよびEnterobacter aerogenesが、440位、488位および647位のいずれか1つにあるSNPの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて互いから区別され;またはEnterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Streptococcus agalactiaeおよびStreptococcus pyogenesが、378位のSNPの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて互いから区別される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が、喀痰、血液、脳脊髄液または尿を含む生体試料である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記分析工程が、高分解能融解分析、5’ヌクレアーゼ消化、分子ビーコン、オリゴヌクレオチドライゲーション、マイクロアレイ、制限断片長多型、抗体検出方法、直接配列決定または任意のその組合せを使用して前記SNPの存在の有無を判定することを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの細菌が処置剤に抵抗性であるかどうか判定する工程をさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、配列番号16~35に示すヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを含む単離されたプローブのパネルと合わせられ、ここで、各プローブのオリゴヌクレオチドが配列番号16~35の1つに示すヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記単離されたプローブのパネルがアレイまたはバイオチップに含まれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
対象におけるAcinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesからなる群から選択される少なくとも1つの細菌による細菌感染の診断を支援する、または抗生物質による処置の決定を支援する方法であって、
前記対象から採取された試料において少なくとも1つの細菌を請求項1から8のいずれかに記載の方法によって同定または分類すること;および
該同定または分類の結果を、前記診断の支援または前記抗生物質による処置の決定の支援として提供すること
を含む、方法。
【請求項10】
試料中の
、Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesからなる群から選択される少なくとも1つの細菌を同定または分類することが可能である単離されたプローブのパネルであって、細菌16S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653に対応する位置における一塩基多型(SNP)
と結合すること、
前記SNPを検出することまたはその存在の有無を同定することが可能である、単離されたプローブのパネル。
【請求項11】
前記単離されたプローブが、配列番号16~35に示すヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含み、ここで、各プローブのオリゴヌクレオチドが配列番号16~35の1つに示すヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載の単離されたプローブのパネル。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の単離されたプローブのパネルを含むアレイ。
【請求項13】
固体基材および請求項10または請求項11に記載の単離されたプローブのパネルを含むバイオチップ。
【請求項14】
試料中の少なくとも1つの細菌を分類または同定するためのキットであって、請求項10もしくは請求項11に記載の単離されたプローブのパネル;請求項12に記載のアレイ;または請求項13に記載のバイオチップを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を同定および/または分類する方法および薬剤に一般的に関する。本方法および薬剤は、細菌の場合16SリボソームRNA遺伝子または遺伝子生成物の中の、ならびに酵母生物体および糸状菌の場合18SリボソームRNA遺伝子または遺伝子生成物の中の多型の検出に基づく。本発明は、本発明の診断方法に基づく細菌、酵母生物体または糸状菌の感染症の治療のための方法も特徴とする。
【背景技術】
【0002】
試料中の微生物(細菌など)、酵母生物体および糸状菌の迅速で正確な同定または分類が非常に望ましい。
【0003】
第1に、および最も重要なこととして、そのような感染症の迅速で正確な診断は、有効な治療または療法の早期の実行を可能にすることによって、患者の生死の分かれ目となる可能性がある。
【0004】
迅速で正確な同定または分類は、さもなければ生物体の福祉または溶液、材料もしくは食品の生産の質に対する脅威をもたらすかもしれない、汚染された溶液、材料または食品中の微生物、酵母生物体または糸状菌を管理、制御、根絶および/または除去する有効な制御措置の実行を助けることができる。
【0005】
さらに、迅速で正確な同定または分類は、試料中の天然の微生物、酵母生物体および糸状菌集団で、例えば、例えば、微生物多様性、門スペクトルおよび/または相対的門存在度の生態学的研究のために、または例えば腸、呼吸および皮膚の障害などの生物体の病的状態における正常状態からの平衡の逸脱をモニタリングするために助けることができる。
【0006】
療法、治療またはモジュレーションの後に、微生物、酵母または糸状菌を迅速におよび正確に同定または分類することが望ましいこともある。例えば、迅速な微生物同定または分類は、抗生物質、ステロイド、免疫モジュレータ、事前事後の生物質、土または水処理、濾過、滅菌処置および消毒剤の使用の分析で有益であることがある。
【0007】
現在、市販されているほとんどの診断技術は、培養を使用した試料からの生きている微生物、酵母生物体および糸状菌の単離および同定を一般的に必要とするが、この技術は、かなりのターンアラウンド時間ならびに最適以下の感度、特異性および的中率からマイナスの影響を受ける。それは、生物体のより広範囲にわたる取扱いを必要とすることもあり、そのことは、特にセキュリティに敏感な生物剤などの一部の生物体のために特に望ましくないかもしれない。
【0008】
利用可能な代替の診断技術には、特に培養と併用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用が含まれる。しかし、そのような技術の問題は、培養の結果または関連した臨床上のもしくは身体的症状の不在下での初期の陽性PCR結果への信頼の欠如である。そのような技術の別の問題は、培養と同様に、宿主核酸のバックグラウンドにおける少量の微生物核酸を検出しようと試みるときの感度および特異性の欠如である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、細菌、酵母生物体および/または糸状菌の正確な診断のための迅速で信頼できる技術への認知された必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
様々な態様では、本発明は、細菌を含む原核生物の間での16S(スベドベリ単位)リボソームRNA(16S rRNA)遺伝子の高い保存、ならびに酵母生物体および糸状菌の間での18SリボソームRNA(18S rRNA)遺伝子の高い保存に一部基づき、さらに、試料中の微生物、特に細菌微生物、および酵母生物体および/または糸状菌の同定および分類において有益なことがある、16S rRNA遺伝子および18S rRNA遺伝子の中の複数の一塩基多型(SNP)の発見に一部基づく。
【0011】
一般的に言って、細菌を含む原核生物は16S rRNAを含有し、それは原核生物リボソームの30S小サブユニットの構成成分である。16S rRNAは長さが概ね1,500ヌクレオチドであり、16S rRNA遺伝子(16S rDNAとも呼ばれる)によってコードされ、それは、一般的に23Sおよび5S rRNA遺伝子も含有する共転写されたオペロンの一部である。16S rRNA遺伝子のDNA配列(したがって、16S rRNA分子のRNA配列)は原核生物の間で高度に保存されているが、変異領域がある(Weisberg W.G., et al., 1991)。
【0012】
同様に、酵母および糸状菌の18S rRNA遺伝子は、原核生物の16S rRNA遺伝子の相同体である。18S rRNAは、40Sの小さい真核生物リボソームサブユニットの構成成分である。18S rRNA遺伝子のDNA配列(したがって、18S rRNA分子のRNA配列)は、酵母および糸状菌で同じく高度に保存されている。
【0013】
本発明の第1の態様により、試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定するか、部分的に同定するか、または分類する方法が提供される。
一実施形態では、前記方法は、試料からの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、試料からの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分を、少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の存在の有無について分析することを含み、
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653の少なくとも1つに対応する位置にあり;または
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分における少なくとも1つのSNPは、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の中にあるかもしくはそれに対応し;または
試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体もしくは糸状菌は、少なくとも1つのSNPの存在の有無に基づいて同定されるか、部分的に同定されるか、もしくは分類される。
別の実施形態では、前記方法は、試料からの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、試料からの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分を、少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の存在の有無について分析することを含み、
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にあり;
試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌は、少なくとも1つのSNPの存在の有無に基づいて同定されるか、部分的に同定されるか、または分類される。
【0014】
本発明の第2の態様により、対象において細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を同定するか、部分的に同定するか、分類するかまたは診断する方法が提供される。
一実施形態では、前記方法は、対象からの試料中の細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分における少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の存在の有無について分析することを含み;
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653の少なくとも1つに対応する位置にあり;または、
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分における少なくとも1つのSNPは、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の中にあるかもしくはそれに対応し;または、
16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分における少なくとも1つの前記SNPの存在の有無は、対象において細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を同定するか、部分的に同定するか、分類するかまたは診断するために使用される。
別の実施形態では、前記方法は、対象からの試料中の細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分における少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の存在の有無について分析することを含み;
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にあり;
16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分における少なくとも1つの前記SNPの存在の有無は、対象において細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を同定するか、部分的に同定するか、分類するかまたは診断するために使用される。
【0015】
本発明の第3の態様により、細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を有する対象を治療する方法であって、
対象において細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を同定するか、部分的に同定するか、分類するかまたは診断するために、第2の態様の方法によって対象において細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を同定するか、部分的に同定するか、分類するかまたは診断すること;
対象において細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を治療するための療法または治療薬を対象に投与すること、
を含む方法が提供される。
【0016】
本発明の第4の態様により、少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールまたは試薬が提供される。
【0017】
第4の態様の一実施形態では、少なくとも1つの単離された前記プローブ、ツールまたは試薬は、試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定するか、部分的に同定するか、または分類することが可能であり、プローブ、ツールまたは試薬は、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を結合、検出することまたはその存在の有無を同定することが可能であり、
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653の少なくとも1つに対応する位置にあり;または
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の中にあるかもしくはそれに対応する。
【0018】
第4の態様の別の実施形態では、少なくとも1つの単離された前記プローブ、ツールまたは試薬は、試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定するか、部分的に同定するか、または分類することが可能であり、プローブ、ツールまたは試薬は、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を結合、検出することまたはその存在の有無を同定することが可能であり、
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にある。
【0019】
第4の態様の別の実施形態により、少なくとも1つの単離された前記プローブ、ツールまたは試薬は、少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を含む試料と少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を含まない試料とを区別することが可能であり、プローブ、ツールまたは試薬は、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を結合、検出することまたはその存在の有無を同定することが可能であり、
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653の少なくとも1つに対応する位置にあり;または
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の中にあるかもしくはそれに対応する。
【0020】
第4の態様の別の実施形態により、少なくとも1つの単離された前記プローブ、ツールまたは試薬は、少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を含む試料と少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を含まない試料とを区別することが可能であり、プローブ、ツールまたは試薬は、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を結合、検出することまたはその存在の有無を同定することが可能であり、
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にある。
【0021】
本発明の第5の態様により、試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定するか、部分的に同定するか、または分類する方法が提供される。
一実施形態では、前記方法は:
第4の態様の少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールまたは試薬を試料と合わせること;および
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の存在の有無に基づいて、少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定するか、部分的に同定するか、または分類することを含み、
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653の少なくとも1つに対応する位置にあり;または
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の中にあるかもしくはそれに対応する。
別の実施形態では、前記方法は:
第4の態様の少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールまたは試薬を試料と合わせること;および
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の存在の有無に基づいて、少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定するか、部分的に同定するか、または分類することを含み、
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にある。
【0022】
本発明の第6の態様により、第4の態様の複数の単離された前記プローブ、ツールまたは試薬を含むアレイ(特に、マイクロアレイ)が提供される。
【0023】
本発明の第7の態様により、固体基材および第4の態様の少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールまたは試薬を含むバイオチップが提供される。
【0024】
本発明の第8の態様により、キットまたはアッセイが提供される。
【0025】
第8の態様の一実施形態では、キットまたはアッセイは、試料中の少なくとも1つの細菌または少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌を分類または同定するためのものであり、前記キットまたはアッセイは:第4の態様の少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬;第6の態様のアレイ;および/または第7の態様のバイオチップを含む。
【0026】
第8の態様の別の実施形態では、キットまたはアッセイは、少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を含む試料と少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を含まない試料とを区別することが可能であり、キットまたはアッセイは、第4の態様のプローブ、ツールまたは試薬を含む。
【0027】
本発明の第9の態様により、少なくとも1つの一塩基多型(SNP)が提供される。
一実施形態では、少なくとも1つの前記SNPは、試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を分類するか、同定するか、または部分的に同定するための指標として使用するために、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分に存在し;
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653の少なくとも1つに対応する位置にあり;または
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の中にあるかもしくはそれに対応する。
別の実施形態では、少なくとも1つの前記SNPは、試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を分類するか、同定するか、または部分的に同定するための指標として使用するために、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分に存在し、
ここで、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にある。
【0028】
本発明の第10の態様により、第1の態様に規定される、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)、または、第4の態様の少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールもしくは試薬の、試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌の同定、部分的同定または分類における使用が提供され、ここで、少なくとも1つの前記細菌、酵母生物体または糸状菌は、試料からの16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPの存在の有無に基づいて同定されるか、部分的に同定されるか、または分類される。
【0029】
本発明の第11の態様により、本発明の第1、第2、第3または第5の態様のいずれか1つの方法で使用するための、プローブ、ツールまたは試薬を含むキットが提供される。
【0030】
本発明のさらなる態様が、下で提供される。
【0031】
本発明の第12の態様により、試料中の少なくとも1つの細菌の同定または試料中の細菌の分類で使用するためのまたは使用するときの、16S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP);または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の同定または試料中の酵母生物体もしくは糸状菌の分類で使用するためのまたは使用するときの、18S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)が提供される。
【0032】
本発明の第13の態様により、試料中の1つの細菌の同定または試料中の細菌の分類で使用するためのまたは使用するときの、少なくとも1つのSNPを含有する試料中の16S rRNA遺伝子の少なくとも一部分を特異的に結合するか、検出するかまたは同定することが可能である、少なくとも1つの前記プローブ、ツールまたは試薬;または、試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の同定または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の分類で使用するためのまたは使用するときの、少なくとも1つのSNPを含有する試料中の18S rRNA遺伝子の少なくとも一部分を特異的に結合するか、検出するかまたは同定することが可能である、少なくとも1つの前記プローブ、ツールまたは試薬が提供される。
【0033】
本発明の第14の態様により、試料中の少なくとも1つの細菌の同定または試料中の細菌の分類で使用するためのまたは使用するときの、配列番号16~35、56または57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、少なくとも1つの前記プローブ、ツールまたは試薬;または、試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の同定または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の分類で使用するためのまたは使用するときの、配列番号53~55のいずれか1つに示すヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬が提供される。
【0034】
本発明の第15の態様により、第12の態様に規定される少なくとも1つのSNP、または第13もしくは第14の態様に規定される少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬の、試料中の少なくとも1つの細菌の同定または試料中の細菌の分類における使用であって、上記の試料からの16S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPの存在に基づいて少なくとも1つの前記細菌が同定されるかまたは前記細菌が分類される、使用;または、第12の態様に規定される少なくとも1つのSNP、または第13もしくは第14の態様に規定される少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬の、試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の同定または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の分類における使用であって、上記の試料からの18S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPの存在に基づいて少なくとも1つの前記酵母生物体もしくは糸状菌が同定または分類される、使用;が提供される。
【0035】
本発明の第16の態様により、試料中の少なくとも1つの細菌を同定する方法であって、第1の態様に規定される少なくとも1つのSNPについて試料からの16S rRNA遺伝子を分析することを含み、少なくとも1つの細菌は少なくとも1つのSNPの存在に基づいて同定される方法;または試料中の少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌を同定する方法であって、第12の態様に規定される少なくとも1つのSNPについて試料からの18S rRNA遺伝子を分析することを含み、少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌は少なくとも1つのSNPの存在に基づいて同定される方法が提供される。
【0036】
一実施形態では、試料中の少なくとも1つの細菌を同定する方法であって、細菌16S rRNA遺伝子の中の、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653の少なくとも1つに対応する位置にある、少なくとも1つのSNPについて試料からの核酸を分析することを含み、少なくとも1つの細菌は少なくとも1つのSNPの存在に基づいて同定される方法が提供される。
【0037】
本発明の第17の態様により、試料中の細菌を分類する方法であって、第1の態様に規定される少なくとも1つのSNPについて試料からの16S rRNA遺伝子を分析することを含み、細菌は少なくとも1つのSNPの存在に基づいて分類される方法;または、試料中の少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌を分類する方法であって、第12の態様に規定される少なくとも1つのSNPについて試料からの18S rRNA遺伝子を分析することを含み、少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌は少なくとも1つのSNPの存在に基づいて分類される方法が提供される。
【0038】
本発明の第18の態様により、試料中の少なくとも1つの細菌を同定する方法であって、
第13または第14の態様に規定される少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬を試料と合わせること;および
上で広く記載される試料からの16S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPの存在に基づいて少なくとも1つの細菌を同定することを含む方法;または、
試料中の少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌を同定する方法であって、
第13または第14の態様に規定される少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬を試料と合わせること;および
上で広く記載される試料からの18S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPの存在に基づいて少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌を同定することを含む方法が提供される。
【0039】
本発明の第19の態様により、試料中の細菌を分類する方法であって、
第13または第14の態様に規定される少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬を試料と合わせること;および
上で広く記載される試料からの16S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPの存在に基づいて細菌を分類することを含む方法;または
試料中の少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌を分類する方法であって、
第13または第14の態様に規定される少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬を試料と合わせること;および
上で広く記載される試料からの18S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPの存在に基づいて少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌を分類することを含む方法が提供される。
【0040】
本発明の第20の態様により、対象において細菌感染を診断する方法であって、第12の態様に規定される少なくとも1つのSNPについて対象から得た試料からの16S rRNA遺伝子を分析することを含み、細菌感染は、少なくとも1つのSNPの存在に基づいて試料中の少なくとも1つの原因細菌を同定することによって診断される方法;または対象において少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌の感染を診断する方法であって、第12の態様に規定される少なくとも1つのSNPについて対象から得た試料からの18S rRNA遺伝子を分析することを含み、少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌の感染は、少なくとも1つのSNPの存在に基づいて試料中の少なくとも1つの原因酵母生物体または糸状菌を同定することによって診断される方法が提供される。
【0041】
本発明の第21の態様により、対象において細菌感染を診断する方法であって、
第13または第14の態様に規定される少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬を対象から得た試料と合わせること;および
上で広く記載される試料からの16S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPの存在に基づいて試料中の少なくとも1つの原因細菌を同定することによって細菌感染を診断することを含む方法;または
対象において少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌の感染を診断する方法であって、
第13または第14の態様に規定される少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬を対象から得た試料と合わせること;および
上で広く記載される試料からの18S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPの存在に基づいて試料中の少なくとも1つの原因細菌を同定することによって少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌の感染を診断することを含む方法が提供される。
【0042】
本発明の第22の態様により、細菌感染を有する対象を治療する方法であって、
第20または第21の態様に規定される方法によって試料中の少なくとも1つの原因細菌を同定することによって細菌感染を診断すること;および
同定された少なくとも1つの原因細菌を処置するための療法または治療薬を対象に投与し、それによって細菌感染を治療することを含む方法;または
少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌の感染を有する対象を治療する方法であって、
第20または第21の態様に規定される方法によって試料中の少なくとも1つの原因細菌を同定することによって少なくとも1つの酵母生物体または糸状菌の感染を診断すること;および
同定された少なくとも1つの原因酵母生物体または糸状菌を処置するための療法または治療薬を対象に投与し、それによって細菌感染を治療することを含む方法が提供される。
【0043】
本発明の第23の態様により、試料中の少なくとも1つの細菌の同定または試料中の細菌の分類のためのオリゴヌクレオチドプローブのアレイであって、上で広く記載される試料中の16S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むプローブ;または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の同定または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の分類のためのオリゴヌクレオチドプローブのアレイであって、上で広く記載される試料中の18S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むプローブが提供される。
【0044】
本発明の第24の態様により、試料中の少なくとも1つの細菌の同定または試料中の細菌の分類のためのオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、前記プローブは、上で広く記載される試料中の16S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイ;または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の同定または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の分類のためのオリゴヌクレオチドプローブを含むマイクロアレイであって、前記プローブは、上で広く記載される試料中の18S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイが提供される。
【0045】
本発明の第25の態様により、固体基材および試料中の少なくとも1つの細菌の同定または試料中の細菌の分類のための少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含むバイオチップであって、少なくとも1つの前記プローブは、上で広く記載される試料中の16S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むバイオチップ;または、固体基材および試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の同定または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の分類のための少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含むバイオチップであって、少なくとも1つの前記プローブは、上で広く記載される試料中の18S rRNA遺伝子の中の少なくとも1つのSNPにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むバイオチップが提供される。
【0046】
本発明の第26の態様により、試料中の少なくとも1つの細菌の同定または試料中の細菌の分類のためのキットまたはアッセイであって、上記の少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬;上記のオリゴヌクレオチドプローブのアレイ;上記のマイクロアレイ;および/または上記のバイオチップを含むキットまたはアッセイ;または、試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の同定または試料中の少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の分類のためのキットまたはアッセイであって、上記の少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬;上記のオリゴヌクレオチドプローブのアレイ;上記のマイクロアレイ;および/または上記のバイオチップを含むキットまたはアッセイが提供される。
【0047】
本発明の第27の態様により、対象において感染を同定するか、部分的に同定するか、分類するかまたは診断する方法が提供される。第27の態様の一実施形態では、前記感染は、細菌、酵母生物体または糸状菌の感染であり、前記方法は、対象から得た生体試料を、少なくとも1つの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分、または少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の特性について検査することを含み、ここで、前記検査は、少なくとも1つの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分、または少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を検出することを含み、
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653の少なくとも1つに対応する位置にあるか;または
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の中にあるかまたはそれに対応するか;または
試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌は、少なくとも1つのSNPの存在の有無に基づいて同定されるか、部分的に同定されるか、分類されるかまたは診断される。
第27の態様の別の実施形態では、前記感染は、細菌、酵母生物体または糸状菌の感染であり、前記方法は、対象から得た生体試料を、少なくとも1つの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分、または少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の特性について検査することを含み、ここで、前記検査は、少なくとも1つの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分、または少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を検出することを含み、
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にあり;
試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌は、少なくとも1つのSNPの存在の有無に基づいて同定されるか、部分的に同定されるか、分類されるかまたは診断される。
【0048】
本発明の第1~27の態様の特徴は、該当する場合、下記のようであってよい。
【0049】
一実施形態では、細菌16S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの前記SNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置のSNPから選択される。一部の実施形態では、複数のSNPを本発明の方法において使用することができる。例えば、少なくとも2つのSNP、少なくとも3つのSNP、少なくとも4つのSNP、少なくとも5つのSNP、少なくとも6つのSNP、少なくとも7つのSNP、少なくとも8つのSNP、少なくとも9つのSNP、少なくとも10個のSNPまたはさらに少なくとも11個のSNPを使用することができる。
【0050】
一実施形態では、細菌16S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの前記SNPは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653に対応する位置のSNPから選択される。一部の実施形態では、複数のSNPを本発明の方法において使用することができる。例えば、少なくとも2つのSNP、少なくとも3つのSNP、少なくとも4つのSNP、少なくとも5つのSNP、少なくとも6つのSNPまたはさらに少なくとも7つのSNPを使用することができる。
【0051】
別の実施形態では、細菌16S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの前記SNPは、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の中にあってもまたはそれに対応してもよい。配列番号43に示す細菌16S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の位置746、764、771または785(または、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置737、755、762または776)の少なくとも1つに対応する位置にあってもよい。少なくとも1つの前記SNP、少なくとも2つの前記SNP、少なくとも3つの前記SNPまたは少なくとも4つの前記SNPを使用することができる。
【0052】
別の実施形態では、酵母生物体または糸状菌の18S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号37に示す18S rRNA遺伝子の中にあってもまたはそれに対応してもよい。酵母生物体または糸状菌の18S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPは、配列番号37に示す18S rRNA遺伝子の位置343、371、388、416および467の少なくとも1つに対応する位置にあってもよい。少なくとも1つの前記SNP、少なくとも2つの前記SNP、少なくとも3つの前記SNP、少なくとも4つの前記SNPまたは少なくとも5つの前記SNPを使用することができる。
【0053】
さらなる実施形態では、前記方法は、試料からの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または試料からの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分を、
細菌16S rRNA遺伝子の中の、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653に対応する位置にある一塩基多型;または
細菌16S rRNA遺伝子の中の、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の位置746、764、771および785に対応する位置にある一塩基多型;または
酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子の中の、配列番号37に示す18S rRNA遺伝子の位置343、371、388、416および467に対応する位置にある一塩基多型
の存在の有無について分析することを含む。
【0054】
さらなる実施形態では、前記方法は、試料からの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または試料からの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分を、
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも4つに対応する位置にある一塩基多型;または
酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子の中の、配列番号37に示す18S rRNA遺伝子の位置343、371、388、416および467に対応する位置にある一塩基多型
の存在の有無について分析することを含む。
【0055】
一部の実施形態では、1つまたは複数の細菌は、哺乳動物(例えば、ヒト)関連の細菌、土壌関連の細菌および水関連の細菌の中から選択される。特定の実施形態では、1つまたは複数の細菌は、1つまたは複数の敗血症関連の細菌であってよい。
【0056】
一部の特定の実施形態では、1つまたは複数の細菌は、以下の少なくとも1つの中から選択される:Acinetobacter spp.;Actinobaccillus spp.;Actinomadura spp.;Actinomyces spp.;Actinoplanes spp.;Aeromonas spp.;Agrobacterium spp.;Alistipes spp.;Anaerococcus spp.;Arthrobacter spp.;Bacillus spp.;Bacteroides spp.;Brucella spp.;Bulleidia spp.;Burkholderia spp.;Cardiobacterium spp.;Citrobacter spp.;Clostridium spp.;Cornyebacterium spp.;Dermatophilus spp.;Dorea spp;Enterobacter spp.;Enterococcus spp.;Erysipelothrix spp.;Escherichia spp.;Eubacterium spp.;Ewardsiella spp.;Faecalibacterium spp.;Filifactor spp.;Finegoldia spp.;Flavobacterium spp.;Francisella spp.;Gallicola spp.;Haemophilus spp.;Helococcus spp.;Holdemania spp.;Hyphomicrobium spp.;Klebsiella spp.;Lactobacillus spp.;Legionella spp.;Listeria spp.;Methylobacterium spp.;Micrococcus spp.;Micromonospora spp.;Mobiluncus spp.;Moraxella spp.;Morganella spp.;Mycobacterium spp.;Neisseria spp.;Nocardia spp.;Paenibacillus spp.;Parabacteroides spp.;Pasteurella spp.;Peptoniphilus spp.;Peptostreptococcus spp.;Planococcus spp.;Planomicrobium spp.;Plesiomonas spp.;Porphyromonas spp.;Prevotella spp.;Propionibacterium spp.;Proteus spp.;Providentia spp.;Pseudomonas spp.;Ralstonia spp.;Rhodococcus spp.;Roseburia spp.;Ruminococcus spp.;Salmonella spp.;Sedimentibacter spp.;Serratia spp.;Shigella spp.;Solobacterium spp.;Sphingomonas spp.;Staphylococcus spp.;Stenotrophomonas spp.;Streptococcus spp.;Streptomyces spp.;Tissierella spp.;Vibrio spp.;およびYersinia spp.。
【0057】
一部のより特定の実施形態では、1つまたは複数の細菌は、以下の少なくとも1つの中から選択される:Acinetobacter baumannii;Acinetobacter calcoaceticus;Bacteroides fragilis;Bacteroides vulgatus;Citrobacter freundii;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus avium;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella oxytoca;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Staphylococcus hominis;Staphylococcus saprophyticus;Stenotrophomonas maltophilia;Streptococcus agalactiae;Streptococcus anginosus;Streptococcus constellatus;Streptococcus intermedius;Streptococcus milleri;Streptococcus mitis;Streptococcus mutans;Streptococcus oralis;Streptococcus pneumoniae;Streptococcus pyogenes;Streptococcus sanguinis;およびStreptococcus sobrinus。
【0058】
特定の実施形態では、1つまたは複数の細菌は、以下の少なくとも1つの中から選択される:Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniae;およびStreptococcus pyogenes。
【0059】
特定の実施形態では、1つまたは複数の細菌は、以下の少なくとも1つの中から選択される:Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniae;Streptococcus pyogenes;Listeria monocytogenes;Clostridium perfringens;Corynebacterium jeikeium;Bacteroides fragilis;Neisseria meningitides;Haemophilus influenzae;Salmonella sp.;およびStaphylococcus epidermidis。別の実施形態では、1つまたは複数の細菌は、以下の少なくとも1つの中から選択される:Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniae;Streptococcus pyogenes;Listeria monocytogenes;Clostridium perfringens;Corynebacterium jeikeium;Bacteroides fragilis;Neisseria meningitides;Haemophilus influenzae;Salmonella sp.;Staphylococcus epidermidis;Bacillus anthracis、Clostridium botulinum、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomallei。
【0060】
一実施形態では、1つまたは複数の細菌は、セキュリティセンシティブな生体作用物質(SSBA)である。SSBAは、階層1作用物質または階層2作用物質であってよい。例示的な階層1作用物質には、以下の1つまたは複数が含まれる:Bacillus anthracis(炭疽)およびYesinia pestis(ペスト)。例示的な階層2作用物質には、以下の1つまたは複数が含まれる:Clostridium botulinum(ボツリヌス菌中毒、特に毒素産生株);Francisella tularensis(野兎病);Salmonella Typhi(腸チフス)およびVibrio cholerae(特にコレラ血清型O1またはO139)。一実施形態では、1つまたは複数の細菌は、以下からなる群の少なくとも1つの中から選択される:Bacillus anthracis、Clostridium botulinum、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomallei。
【0061】
一実施形態では、酵母生物体は、以下の少なくとも1つの中から選択することができる:Candida spp.、Cryptococcus spp およびRhodotorula spp.。例示的なCandida spp.は、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida stellatoidea、Candida krusei、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Candida guilliermondii、Candida viswanathii、Candida aurisおよびCandida lusitaniaeの少なくとも1つを含むことができる。例示的なCryptococcus spp.は、Cryptococcus neoformansおよびCryptococcus gattiiの少なくとも1つを含むことができる。例示的なRhodotorula spp.は、Rhodotorula mucilaginosaであってよい。
【0062】
一実施形態では、糸状菌は、以下の少なくとも1つから選択することができる:Aspergillus spp.およびFusarium spp.。例示的なFusarium spp.は、Fusarium solani、Fusarium oxysporum、Fusarium verticillioides、Fusarium proliferatum、Fusarium avenaceum、Fusarium bubigeum、Fusarium culmorum、Fusarium graminearum、Fusarium langsethiae、Fusarium poae、Fusarium sporotrichioides、Fusarium tricinctumおよびFusarium virguliforme;の少なくとも1つ、特にFusarium solani、Fusarium oxysporum、Fusarium verticillioidesおよびFusarium proliferatumの少なくとも1つを含むことができる。例示的なAspergillus spp.は、Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、Aspergillus clavatus、Aspergillus lentulus、Aspergillus terreusおよびAspergillus nidulans;の少なくとも1つ、特にAspergillus fumigatus、Aspergillus flavusおよびAspergillus clavatusの少なくとも1つ;より特にAspergillus fumigatusを含むことができる。
【0063】
一実施形態では、酵母生物体または糸状菌は、以下からなる群の中の少なくとも1つである:Candida albicans、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Fusarium sp.、Aspergillus fumigatusおよびCryptococcus neoformans。
【0064】
一実施形態では、細菌、酵母生物体または糸状菌は、ヒト病原体である。
【0065】
一部の実施形態では、本発明の方法は、全身炎症応答症候群(SIRS)を有する対象からの血液を分析して、SIRSの発生原因(例えば、細菌、酵母生物体または糸状菌)を決定するために使用することができる。他の実施形態では、本発明の方法は、対象が細菌、酵母生物体または糸状菌の感染源を有する敗血症を有するかどうか決定するために使用することができる。両方の実施形態では、本発明の方法は、試料中に存在する細菌、酵母生物体または糸状菌の存在を判定し、それを区別しおよび/または同定するために使用することができる。
【0066】
SIRSは、感染性の病因または非感染性の病因(すなわち、感染陰性のSIRSまたはinSIRS)を有することができる圧倒的な全身反応である。敗血症は、感染の間に起こるSIRSである。この場合における敗血症は、臨床医によって(感染が疑われるとき)、または生物体の培養を通して診断される。SIRSおよび敗血症は、心臓および呼吸速度、体温および白血球数における変化を含むいくつかの非特異的宿主応答パラメータによって規定される(Levy et al., 2003;Reinhart et al., 2012)。
【0067】
一部の実施形態では、少なくとも1つのSNPまたは少なくとも1つのプローブ、ツールもしくは試薬は、試料中の細菌をグラム陽性の1つまたは複数の細菌またはグラム陰性の1つまたは複数の細菌として分類するために使用することができる。
【0068】
例えば、一部の実施形態では、1つまたは複数の細菌は、上記のSNPのいずれか1つ、特に配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653の少なくとも1つに基づいてグラム陽性に分類することができる。そのような一実施形態では、1つまたは複数の細菌は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273および653に対応する位置のSNPに基づいて分類することができ、ここで、273位にAがあり、653位にTがあるとき、1つまたは複数の細菌はグラム陽性であると判定される。
【0069】
例えば、別の実施形態では、1つまたは複数の細菌は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の440位に対応する位置の少なくとも1つのSNPに基づいてグラム陽性に分類することができ、ここで、440位にTがあるとき、1つまたは複数の細菌はグラム陽性であると判定される。逆に、440位にTがないとき、1つまたは複数の細菌はグラム陰性であると判定される。
【0070】
さらに他の実施形態では、少なくとも1つのSNPまたは少なくとも1つのプローブ、ツールもしくは試薬は、試料中の細菌、酵母生物体または糸状菌の群を分類するために使用することができる。
【0071】
例えば、一部の実施形態では、細菌は、上記のSNPから選択される少なくとも1つのSNPに基づいて特定の属に属すると分類することができる。そのような一実施形態では、細菌は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置412および647に対応する位置のSNPから選択される少なくとも1つのSNPに基づいて特定の属に属すると分類することができる。例えば、試料中の1つまたは複数の細菌は、412位にTがあるとき、Staphylococcus属に属すると分類することができる。例えば、試料中の1つまたは複数の細菌は、647位にGがあるとき、Enterococcus属に属すると分類することができる。
【0072】
さらに他の実施形態では、少なくとも1つのSNPまたは少なくとも1つのプローブ、ツールもしくは試薬は、上記の通り試料中の細菌を同定するために使用することができる。
【0073】
例えば、細菌Enterobacter cloacaeは、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の653位に対応する位置の少なくとも1つのSNPに基づいて試料の中で同定することができ、ここで、653位にGがあるとき、細菌Enterobacter cloacaeが同定される。
【0074】
例えば、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus agalactiaeおよびStreptococcus pyogenesから選択される細菌は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置378および488に対応する位置のSNPに基づいて試料の中で同定することができ、ここで、細菌は:378位にAがあり、488位にTがあるときはStreptococcus pneumoniaeであり;378位にAがあり、488位にAがあるときはStreptococcus agalactiaeであり;378位にGがあり、488位にAがあるときはStreptococcus pyogenesである。
【0075】
例えば、一実施形態では、Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter cloacae;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesの中から選択される細菌は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653に対応する位置にあるSNPに基づいて試料の中で同定することができ、ここで、細菌は:273、440および647位にAがあるときはAcinetobacter calcoaceticusであり;653位にGがあるときはEnterobacter cloacaeであり;273位にTがあり、653位にTがあるときはEscherichia coliであり;273位にTがあり、488および647位にCがあり、653位にAがあるときはKlebsiella pneumoniaeであり;440および488位にCがあり、647位にTがあるときはProteus mirabilisであり;440位にAがあり、647位にTがあるときはPseudomonas aeruginosaであり;378、488および647位にAがあるときはStreptococcus agalactiaeであり;488および647位にTがあるときはStreptococcus pneumoniaeであり;378位にGがあり、488および647位にAがあるときはStreptococcus pyogenesである。
【0076】
例えば、別の実施形態では、Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter cloacae;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenes の中から選択される細菌は、以下の表に示すSNPの存在に基づいて試料の中で同定することができる:
【0077】
【0078】
例えば、別の実施形態では、Escherichia coli、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pyogenes、Proteus mirabilis、Enterobacter cloacae、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Acinetobacter calcoaceticus、Enterococcus faecalis、Listeria monocytogenes、Staphylococcus aureus、Clostridium perfringens、Corynebacterium jeikeium、Bacteroides fragilis、Neisseria meningitidis、Haemophilus influenzae、Serratia marcescens、Salmonella sp.およびStaphylococcus epidermidisの中から選択される細菌は、以下の表に示すSNPの存在に基づいて試料の中で同定することができる:
【0079】
【0080】
別の実施形態では、Bacillus anthracis、Clostridium botulinumA型、Clostridium botulinumB型、Clostridium botulinumC型、Clostridium botulinumD型、Clostridium botulinumG型、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomalleiの中から選択される細菌は、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の位置746、764、771または785に対応する位置のSNPに基づいて、試料の中で同定することができ、ここで、細菌は:746位にTがあり、764位にAがあり、771位にCがあり、785位にGがあるときはBacillus anthracisであり;746位にTがあり、764位にGがあり、771位にCがあり、785位にTがあるときはClostridium botulinumA型またはClostridium botulinumB型であり;746位にTがあり、764位にAがあり、771位にTがあり、785位にTがあるときはClostridium botulinumC型であり;746位にCがあり、764位にAがあり、771位にTがあり、785位にTがあるときはClostridium botulinumD型であり;746位にTがあり、764位にGがあり、771位にCがあり、785位にGがあるときはClostridium botulinumG型であり;746位にCがあり、764位にGがあり、771位にTがあり、785位にGがあるときはYersinia pestisであり;746位にTがあり、764位にAがあり、771位にGがあり、785位にGがあるときはFrancisella tularensisであり;746位にCがあり、764位にAがあり、771位にTがあり、785位にGがあるときはVibrio choleraeであり;746位にCがあり、764位にGがあり、771位にCがあり、785位にGがあるときはBurkholderia pseudomalleiである。
【0081】
例えば、別の実施形態では、Bacillus anthracis、Clostridium botulinumA型、Clostridium botulinumB型、Clostridium botulinumC型、Clostridium botulinumD型、Clostridium botulinumG型、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomalleiの中から選択される細菌は、以下の表に示すSNPの存在に基づいて試料の中で同定することができる:
【0082】
【0083】
上記の生物体を同定するために使用された4つのSNPの累積差別指数は、1SNPでは0.667;2SNPでは0.889;3SNPでは0.944;および4SNPでは0.972である。
【0084】
配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の746位は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の737位に対応する。配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の764位は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の755位に対応する。配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の771位は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の762位に対応する。配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の785位は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の776位に対応する。
【0085】
したがって、別の実施形態では、Bacillus anthracis、Clostridium botulinumA型、Clostridium botulinumB型、Clostridium botulinumC型、Clostridium botulinumD型、Clostridium botulinumG型、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomalleiの中から選択される細菌は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置737、755、762または776に対応する位置のSNPに基づいて試料の中で同定することができ、ここで、細菌は:737位にTがあり、755位にAがあり、762位にCがあり、776位にGがあるときはBacillus anthracisであり;737位にTがあり、755位にGがあり、762位にCがあり、776位にTがあるときはClostridium botulinumA型またはClostridium botulinumB型であり;737位にTがあり、755位にAがあり、762位にTがあり、776位にTがあるときはClostridium botulinumC型であり;737位にCがあり、755位にAがあり、762位にTがあり、776位にTがあるときはClostridium botulinumD型であり;737位にTがあり、755位にGがあり、762位にCがあり、776位にGがあるときはClostridium botulinumG型であり;737位にCがあり、755位にGがあり、762位にTがあり、776位にGがあるときはYersinia pestisであり;737位にTがあり、755位にAがあり、762位にGがあり、776位にGがあるときはFrancisella tularensisであり;737位にCがあり、755位にAがあり、762位にTがあり、776位にGがあるときはVibrio choleraeであり;737位にCがあり、755位にGがあり、762位にCがあり、776位にGがあるときはBurkholderia pseudomalleiである。
【0086】
別の実施形態では、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Fusarium spp.、Aspergillus fumigatusおよびCryptococcus neoformansの中から選択される酵母生物体または糸状菌は、配列番号37に示す18S rRNA遺伝子の位置343、371、388、416および467に対応する位置にあるSNPに基づいて試料の中で同定することができ、ここで、酵母生物体または糸状菌は:343位にCがあり、371位にAがあり、388位にTがあり、416位にGがあり、467位にGがあるときはCandida albicansであり;343位にCがあり、371位にAがあり、388位にCがあり、416位にGがあり、467位にCがあるときはCandida tropicalisであり;343位にCがあり、371位にAがあり、388位にCがあり、416位にGがあり、467位にGがあるときはCandida parapsilosisであり;343位にTがあり、371位にAがあり、388位にCがあり、416位にGがあり、467位にGがあるときはCandida glabrataであり;343位にCがあり、371位にCがあり、388位にTがあり、416位にTがあり、467位にGがあるときはFusarium spp.であり;343位にCがあり、371位にCがあり、388位にTがあり、416位にCがあり、467位にGがあるときはAspergillus fumigatusであり;343位にCがあり、371位にAがあり、388位にTがあり、416位にTがあり、467位にGがあるときはCryptococcus neoformansである。
【0087】
例えば、別の実施形態では、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Fusarium spp.、Aspergillus fumigatusおよびCryptococcus neoformansの中から選択される酵母生物体または糸状菌は、以下の表に示すSNPの存在に基づいて試料の中で同定することができる:
【0088】
【0089】
細菌、酵母生物体または糸状菌は、上記のSNPの1つまたは複数に基づいて部分的に同定するかまたは分類することができる。
【0090】
一実施形態では、本発明の方法における(特に、第1および第2の態様における)分析の前に、核酸が試料から抽出される。別の実施形態では、方法における(特に、第1および第2の態様における)分析工程は、核酸の増幅を含むことができる。核酸は、転写されたRNAを増幅する1つまたは複数のオリゴヌクレオチド/プライマーを使用する、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)および逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を限定されずに含む、当技術分野で公知の任意の方法によって増幅することができる。
【0091】
SNPは、以下を限定されずに含む、当技術分野で公知の任意の方法によって分析することができる:高分解能融解分析、5’ヌクレアーゼ消化(5’ヌクレアーゼ消化を含む)、分子ビーコン、オリゴヌクレオチドライゲーション、マイクロアレイ、制限断片長多型;抗体検出方法;直接配列決定または任意のその組合せ。一実施形態では、方法における(特に、本発明の第1および第2の態様における)分析工程は、高分解能融解分析、5’ヌクレアーゼ消化、分子ビーコン、オリゴヌクレオチドライゲーション、マイクロアレイ、制限断片長多型、抗体検出方法;直接配列決定または任意のその組合せを使用して少なくとも1つのSNPの存在の有無を判定することを含む。SNPは、以下を限定されずに含む当技術分野で公知の任意の方法によって検出することができる:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);リガーゼ連鎖反応(LCR);ハイブリダイゼーション分析;高分解能融解分析;5’ヌクレアーゼ消化を含むヌクレアーゼによる消化;分子ビーコン;オリゴヌクレオチドライゲーション;マイクロアレイ;制限断片長多型;抗体検出方法;直接配列決定;または任意のその組合せ。
【0092】
例えば、一部の実施形態では、細菌の同定または細菌の分類は、上で広く記載されるSNPおよびそれらの周囲のDNA配列のDNA融解特性、好ましくは高分解能融解分析にさらに基づくことができる。
【0093】
例えば、一部のそのような実施形態では、本発明の方法は、上で広く記載されるSNPおよびそれらの周囲のDNA配列のDNA融解特性をさらに分析するために、高分解能融解(HRM)分析をさらに含むことができる。特定の実施形態では、HRM分析は、SNPの少なくとも1つおよび少なくとも1つの挿入蛍光色素を含有するDNA増幅生成物(すなわち、アンプリコン)を形成すること、ならびにその融点(Tm)を通してDNA増幅生成物を加熱することを含むことができる。DNA増幅生成物に組み込まれている蛍光色素を使用して、HRMはリアルタイムでモニタリングされる。蛍光レベルは、二本鎖のDNAの量が低減するに従って蛍光が低減するので温度上昇に伴いモニタリングされる。蛍光および温度における変化は、融解曲線として知られるグラフにプロットすることができる。
【0094】
当業者が理解するように、2つのDNA鎖が分離するDNA増幅生成物のTmは予測可能であり、DNA増幅生成物を形成するヌクレオチド塩基の配列に依存する。したがって、融解曲線は異なって出現するので、多型(すなわち、1つまたは複数のSNP)を含有するDNA増幅生成物を含むDNA増幅生成物を区別することが可能である。実際、一部の実施形態では、周囲のDNA配列における差に基づいて、同じ多型を含有するDNA増幅生成物を区別することが可能である。
【0095】
例えば、Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesの中から選択される細菌は、以下の表に示すSNPの存在ならびにSNPおよびそれらの周囲のDNA配列のDNA融解特性に基づいて試料の中で同定することができる:
【0096】
【0097】
例えば、Escherichia coli、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pyogenes、Proteus mirabilis、Enterobacter cloacae、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Acinetobacter calcoaceticus、Enterococcus faecalis、Listeria monocytogenes、Staphylococcus aureus、Clostridium perfringens、Corynebacterium jeikeium、Bacteroides fragilis、Neisseria meningitidis、Haemophilus influenzae、Serratia marcescens、Salmonella sp.、Staphylococcus epidermidisの中から選択される細菌は、表2に示すSNPの存在ならびにSNPおよびそれらの周囲のDNA配列のDNA融解特性に基づいて試料の中で同定することができる。
【0098】
一実施形態では、Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesから選択される細菌は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653に対応する位置にあるSNPならびにSNPおよびそれらの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて試料の中で同定することができる。
【0099】
例えば、Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter cloacae;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesの中から選択される細菌は、上記のSNP位置および/またはSNPおよびそれらの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて試料の中で同定することができる。
【0100】
一部の実施形態では、Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Serratia marcescensおよびEnterobacter aerogenesから選択される細菌は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置412、440、488および647に対応する位置にあるSNPに基づいて試料の中で個々に同定することができ、ここで:Staphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisは、412位にTがあるとき同定することができ、次に、412位のSNPの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいてお互いからさらに区別することができ;Enterococcus faecalisおよびEnterococcus faecium は、647位にGがあるとき同定することができ、次に、647位のSNPの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいてお互いからさらに区別することができ;Serratia marcescensおよびEnterobacter aerogenesは、440および647位にCがあり、488位にTがあるとき同定することができ、次に、位置440、488および647のいずれか1つにあるSNPの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいてお互いからさらに区別することができる。
【0101】
他の実施形態では、Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Streptococcus agalactiaeおよびStreptococcus pyogenesから選択される細菌は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の378位に対応する位置の少なくとも1つのSNP、および378位のSNPの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて試料の中で同定することができる。
【0102】
例えば、Bacillus anthracis、Clostridium botulinumA型、Clostridium botulinumB型、Clostridium botulinumC型、Clostridium botulinumD型、Clostridium botulinumG型Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomalleiの中から選択される細菌は、以下の表に示すSNPの存在ならびにSNPおよびそれらの周囲のDNA配列のDNA融解特性に基づいて試料の中で同定することができる:
【0103】
【0104】
上記のように、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の746位は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の737位に対応する。配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の764位は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の755位に対応する。配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の771位は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の762位に対応する。配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の785位は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の776位に対応する。
【0105】
一実施形態では、Bacillus anthracis、Clostridium botulinumA型、Clostridium botulinumB型、Clostridium botulinumC型、Clostridium botulinumD型、Clostridium botulinumG型、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomalleiから選択される細菌は、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の位置746、764、771または785(または、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置737、755、762または776)に対応する位置にあるSNPならびにSNPおよびそれらの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて試料の中で同定することができる。
【0106】
例えば、Bacillus anthracis、Clostridium botulinumA型、Clostridium botulinumB型、Clostridium botulinumC型、Clostridium botulinumD型、Clostridium botulinumG型、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomalleiの中から選択される細菌は、上記のSNP位置および/またはSNPおよびそれらの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて試料の中で同定することができる。
【0107】
別の例では、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Fusarium spp.、Aspergillus fumigatusおよびCryptococcus neoformansの中から選択される酵母生物体または糸状菌は、以下の表に示すSNPの存在ならびにSNPおよびそれらの周囲のDNA配列のDNA融解特性に基づいて試料の中で同定することができる:
【0108】
【0109】
一実施形態では、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Fusarium spp.、Aspergillus fumigatusおよびCryptococcus neoformansから選択される酵母生物体または糸状菌は、配列番号37に示す18S rRNA遺伝子の位置343、371、388、416および467に対応する位置にあるSNPならびにSNPおよびそれらの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて試料の中で同定することができる。
【0110】
例えば、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Fusarium spp.、Aspergillus fumigatusおよびCryptococcus neoformansの中から選択される酵母生物体または糸状菌は、上記のSNP位置および/またはSNPおよびそれらの周囲のDNAの高分解能融解曲線分析に基づいて試料の中で同定することができる。
【0111】
一部の実施形態では、分析、同定、分類および/または診断の前に、核酸を試料から抽出することができる。一般的に、分析、同定、分類および/または診断は、核酸の増幅を含むことができる。一部の実施形態では、分析、同定、分類および/または診断は、対象に例えば抗生物質などの治療剤を投与することをさらに含むことができる。別の実施形態では、治療の方法(例えば、本発明の第3の態様におけるような)は、少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌が治療剤に抵抗性であるかどうか判定する工程をさらに含むことができる。
【0112】
一実施形態では、任意の適する試料を本発明の方法において使用することができる。例示的な試料は、喀痰、唾液、血液、脳脊髄液または尿試料を含むことができる。
【0113】
プローブ、ツールまたは試薬は、限定されずに、オリゴヌクレオチド、プライマー、核酸、ポリヌクレオチド、DNA、cDNA、RNA、ペプチドまたはポリペプチドであってよい。これらは、例えば、一本鎖もしくは二本鎖であってよく、天然に存在するか、単離されたか、精製されたか、化学改変されたか、組換えか、または合成されたかであってよい。
【0114】
プローブ、ツールまたは試薬は、限定されずに、少なくとも1つのSNPを含有する試料中の16S rRNA遺伝子または18S rRNA遺伝子の少なくとも一部分に特異的に結合するか、それを検出するかまたは同定することが可能である、抗体または他のタイプの分子または化学実体であってよい。
【0115】
プローブ、ツールまたは試薬は、上記のものの任意の数または組合せであってよく、数および組合せは、達成すべき所望の結果-例えば、ゲノムレベル(遺伝子タイピング)またはRNA転写レベルでのSNPの検出に依存する。
【0116】
プローブ、ツールまたは試薬は、単離されたものであってよい。プローブ、ツールまたは試薬は、検出可能に標識化されてもよい。検出可能な標識は、増幅反応に含まれてもよい。適する標識には、蛍光色素、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2’,7’-ジメトキシ-4’,5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)またはN,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、放射性標識、例えば32P、35S、3H;等が含まれる。標識は、高親和性結合パートナー、例えばアビジン、特異的抗体等を有する、増幅されたDNAがビオチン、ハプテン等にコンジュゲートされる2段階システムであってよく、ここで、結合パートナーは、検出可能な標識にコンジュゲートされる。標識は、プライマーの片方または両方にコンジュゲートされてもよい。あるいは、増幅において使用されるヌクレオチドのプールは、増幅生成物に標識を組み込むために標識化される。
【0117】
特定の実施形態では、少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬は、ゲノムレベルまたは転写レベルでの、好ましくは前者でのSNPの特異的結合、検出または同定のためである。
【0118】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬は、表1から7のいずれか1つに示す少なくとも1つのSNPを含有する試料中の16S rRNAもしくは18S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の少なくとも一部分に特異的に結合するか、それを検出するかまたは同定するためである。
【0119】
細菌、酵母生物体もしくは糸状菌を同定、部分的に同定、分類するとき、または細菌、酵母生物体もしくは糸状菌の感染を同定、部分的に同定もしくは診断するとき、単一のプローブ(特にプライマー)を各試料で使用することができ、または、複数のプローブ(特にプライマー)を各試料で(すなわち、ワンポットにおいて)使用することができる。そのようなプローブ(特にプライマー)は、増幅(PCRなど)から得た生の溶液に加えることができる。
【0120】
一実施形態では、少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬は2つのプライマーを含むことができ、その各々は、上記のSNPを含有する、細菌16S rRNA遺伝子(または遺伝子生成物)の少なくとも一部分、または酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子(または遺伝子生成物)の少なくとも一部分にハイブリダイズする。別の実施形態では、少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬は、上記のSNPを含有する、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分にハイブリダイズするプローブを含むことができる。
【0121】
一実施形態では、少なくとも1つの前記プローブ、ツールまたは試薬は、配列番号16~35および53~57の少なくとも1つに示す配列と、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列相同性または同一性を有するヌクレオチド配列を有する(または含むもしくはそれからなる)オリゴヌクレオチドを含む。前記プローブ、ツールまたは試薬は、プライマーであってよい。前記プローブ、ツールまたは試薬は、配列番号16~35および53~57の少なくとも1つに示すヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0122】
一態様では、本発明は、少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールまたは試薬を提供し、ここで、少なくとも1つの単離された前記プローブ、ツールまたは試薬は、配列番号16~35および53~57の少なくとも1つに示す配列と、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列相同性または同一性を有するヌクレオチド配列を有する(または含むもしくはそれからなる)オリゴヌクレオチドを含む。前記プローブ、ツールまたは試薬は、プライマーであってよい。
【0123】
配列番号43に示す16S rRNA配列の中のSNPの同定(特に、表3のSNPの同定)のために適するプライマーは、下の表に示す通りであってよい。
【0124】
【0125】
配列番号37に示す18S rRNA配列の中のSNPの同定(特に、表4のSNPの同定)のために適するプライマーは、下の表に示す通りであってよい。
【0126】
【0127】
本明細書に記載される特徴のいずれも、本発明の範囲内の本明細書に記載される他の特徴のいずれか1つまたは複数との任意の組合せで組み合わせることができる。
【0128】
上記は、主に16S rRNAおよび18S rRNA遺伝子の使用を議論する。しかし、上記は、16S rRNAおよび18S rRNAならびに他の16S rRNAおよび18S rRNA遺伝子生成物にも適用可能である。したがって、一部の実施形態では(該当する場合)、上下の16S rRNA遺伝子および18S rRNA遺伝子への言及は、16S rRNA遺伝子生成物(または、16S rRNA)および18S rRNA遺伝子生成物(または、18S rRNA)で置き換えることができる。
【0129】
この明細書におけるいかなる先行技術への言及も、その先行技術が普通の一般的な知識の一部をなすということの承認でもいかなる形の示唆でもなく、それととるべきでもない。
【図面の簡単な説明】
【0130】
本発明の様々な実施形態が、以下の図面を参照して記載される。
【
図1】
図1は、以下の細菌種からの16S rRNA分子をコードする代表的遺伝子のCLUSTALW配列アラインメントを示す:Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenes。CLUSTALWアラインメントによって判定される可変配列を取り出した。配列番号1に示すE. coliからの16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653に対応する位置にあるSNPは、整列させた配列の中の対応するヌクレオチドと一緒に強調されている。
【
図2】
図2は、実施例1で試験した以下の15の細菌種のための正規化された高分解能融解(HRM)曲線グラフを示す:Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenes。
【
図3】
図3は、ベースラインとしてEscherichia coliを使用した、
図2に示す15の細菌種のための差HRM曲線グラフを示す。
【
図4】
図4は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の412位に対応する位置のSNPを含有するアンプリコンのためのStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisの正規化HRM曲線グラフを示す。
【
図5】
図5は、ベースラインとしてS. aureusを使用した、
図4に示すStaphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisのための差HRM曲線グラフを示す。
【
図6】
図6は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の378位に対応する位置のSNPを含有するアンプリコンのためのEnterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesの正規化HRM曲線グラフを示す。
【
図7】
図7は、ベースラインとしてE. faecalisを使用した、
図6に示すEnterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesのための差HRM曲線グラフを示す。
【
図8】
図8は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の412位に対応する位置のSNPを含有するアンプリコンのためのEscherichia coli、Enterobacter cloacae、Serratia marcescens、Acinetobacter calcoaceticus、Enterobacter aerogenes、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniaeおよびProteus mirabilisの正規化HRM曲線グラフを示す。
【
図9】
図9は、ベースラインとしてEscherichia coliを使用した、
図8に示すEscherichia coli、Enterobacter cloacae、Serratia marcescens、Acinetobacter calcoaceticus、Enterobacter aerogenes、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniaeおよびProteus mirabilisのための差HRM曲線グラフを示す。
【
図10】
図10は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の378位に対応する位置のSNPを含有するアンプリコンのためのStreptococcus agalactiae、Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesの正規化HRM曲線グラフを示す。
【
図11】
図11は、ベースラインとしてStreptococcus pneumoniaeを使用した、
図10に示すStreptococcus agalactiae、Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesのための差HRM曲線グラフを示す。
【
図12】
図12は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の412位に対応する位置のSNPを含有するアンプリコンのためのEscherichia coli、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter aerogenes、Enterobacter cloacaeおよびSerratia marcescensの正規化HRM曲線グラフを示す。
【
図13】
図13は、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の412位に対応する位置のSNPを含有するアンプリコンのためのStreptococcus pneumonaie、Streptococcus agalactiaeおよびStreptococcus pyogenesの正規化HRM曲線グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0131】
配列表への鍵
【0132】
配列番号1:Escherichia coliの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_102804.1);
【0133】
配列番号2:Staphylococcus aureusの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_075000.1);
【0134】
配列番号3:Staphylococcus epidermidisの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_074995.1);
【0135】
配列番号4:Streptococcus pneumoniaeの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_074564.1);
【0136】
配列番号5:Streptococcus agalactiaeの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_040821.1);
【0137】
配列番号6:Streptococcus pyogenesの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_074091.1);
【0138】
配列番号7:Enterococcus faecalisの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_074637.1);
【0139】
配列番号8:Enterococcus faeciumの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_042054.1);
【0140】
配列番号9:Proteus mirabilisの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_074898.1);
【0141】
配列番号10:Serratia marcescensの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_041980.1);
【0142】
配列番号11:Enterobacter aerogenesの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_024643.1);
【0143】
配列番号12:Enterobacter cloacaeの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_028912.1);
【0144】
配列番号13:Klebsiella pneumoniaeの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_036794.1);
【0145】
配列番号14:Pseudomonas aeruginosaの16S rRNA遺伝子(Genbank受託NR_074828.1);
【0146】
配列番号15:Acinetobacter calcoaceticusの16S rRNA遺伝子(Genbank受託AB302132.1);
【0147】
配列番号16:フォワードプライマー(CCTCTTGCCATCGGATGTG);
【0148】
配列番号17:リバースプライマー(CCAGTGTGGCTGGTCATCCT);
【0149】
配列番号18:フォワードプライマー(GGGAGGCAGCAGTAGGGAAT);
【0150】
配列番号19:フォワードプライマー(CCTACGGGAGGCAGCAGTAG);
【0151】
配列番号20:リバースプライマー(CGATCCGAAAACCTTCTTCACT);
【0152】
配列番号21:フォワードプライマー(AAGACGGTCTTGCTGTCACTTATAGA);
【0153】
配列番号22:リバースプライマー(CTATGCATCGTTGCCTTGGTAA);
【0154】
配列番号23:フォワードプライマー(TGCCGCGTGAATGAAGAA);
【0155】
配列番号24:フォワードプライマー(GCGTGAAGGATGAAGGCTCTA);
【0156】
配列番号25:フォワードプライマー(TGATGAAGGTTTTCGGATCGT);
【0157】
配列番号26:リバースプライマー(TGATGTACTATTAACACATCAACCTTCCT);
【0158】
配列番号27:リバースプライマー(CCAGTGTGGCTGGTCATCCT);
【0159】
配列番号28:リバースプライマー(CGCTCGCCACCTACGTATTAC);
【0160】
配列番号29:フォワードプライマー(GTTGTAAGAGAAGAACGAGTGTGAGAGT);
【0161】
配列番号30:リバースプライマー(CGTAGTTAGCCGTCCCTTTCTG);
【0162】
配列番号31:フォワードプライマー(GCGGTTTGTTAAGTCAGATGTGAA);
【0163】
配列番号32:フォワードプライマー(GGTCTGTCAAGTCGGATGTGAA);
【0164】
配列番号33:フォワードプライマー(TCAACCTGGGAACTCATTCGA);
【0165】
配列番号34:リバースプライマー(GGAATTCTACCCCCCTCTACGA);
【0166】
配列番号35:リバースプライマー(GGAATTCTACCCCCCTCTACAAG);
【0167】
配列番号36:Aspergillus fumigatus株MJ-X6の18SリボソームRNA遺伝子、完全配列(GenBank受託HM590663.1);
【0168】
配列番号37:Candida albicansの18SリボソームRNA遺伝子、完全配列(GenBank受託AF114470.1);
【0169】
配列番号38:Candida glabrata株SZ2の18SリボソームRNA遺伝子、部分配列(GenBank受託KT229542.1);
【0170】
配列番号39:Candida parapsilosisの18SリボソームRNA遺伝子、部分配列(GenBank受託DQ218328.1);
【0171】
配列番号40:Candida tropicalisの18SリボソームRNA遺伝子、部分配列(GenBank受託AH009771.2);
【0172】
配列番号41:Cryptococcus neoformans var. grubii H99の18SリボソームRNA rRNA(GenBank受託/NCBI参照配列:XR_001045463.1);
【0173】
配列番号42:Fusarium sp.株Z10の18SリボソームRNA遺伝子、部分配列(GenBank受託MF973465.1);
【0174】
配列番号43:Bacillus anthracis株2000031664の16SリボソームRNA遺伝子、部分配列(GenBank受託AY138383.1);
【0175】
配列番号44:Burkholderia pseudomalleiの16S rRNA遺伝子(GenBank受託AJ131790.1);
【0176】
配列番号45:Clostridium botulinumA型の16S RNA rrn遺伝子(GenBank受託X68185.1);
【0177】
配列番号46:Clostridium botulinumB型の16S RNA rrn遺伝子(GenBank受託X68186.1);
【0178】
配列番号47:Clostridium botulinumC型の16S rRNA rrn遺伝子(GenBank受託X68315.1);
【0179】
配列番号48:Clostridium botulinumD型の16S RNA rrn遺伝子(GenBank受託X68187.1);
【0180】
配列番号49:Clostridium botulinumG型の16S rRNA rrn遺伝子(GenBank受託X68317.1);
【0181】
配列番号50:Francisella tularensis株B-38の16SリボソームRNA、部分配列(GenBank受託/NCBI参照配列:NR_029362.1);
【0182】
配列番号51:Vibrio cholerae株DL2の16SリボソームRNA遺伝子、部分配列(GenBank受託MG062858.1);
【0183】
配列番号52:Yersinia pestisの16S rRNA遺伝子、単離株:SS-Yp-116(GenBank受託AJ232238.1);
【0184】
配列番号53:フォワードプライマー(CATCCAAGGAAGGCAGCAGGCGCG);
【0185】
配列番号54:リバースプライマー(GTTCAACTACGAGCTTTTTAAC);
【0186】
配列番号55:リバースプライマー(GTTCGACTACGAGCTTTTTAAC);
【0187】
配列番号56:フォワードプライマー(GTGTAGCGGTGAAATGCGTAGAG);
【0188】
配列番号57:リバースプライマー(TCGTTTACCGTGGACTACCAGGG).
【0189】
詳細な説明
1.定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるそれらに類似するかまたは同等であるいかなる方法および材料も本発明の実施または試験で使用することができるが、好ましい方法および材料が記載されている。本発明の目的上、以下の用語が下で定義される。
【0190】
冠詞「a」および「an」は、本明細書でその冠詞の文法上の目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は1つの要素または複数の要素を意味する。
【0191】
「増幅生成物」または「アンプリコン」は、核酸増幅技術によって生成された核酸生成物を指す。
【0192】
本明細書で用いる用語「生体試料」は、患者または対象由来の、抽出されたか、未処置であるか、処置されたか、希釈されたか、または濃縮されたものであってよい試料を指す。好適には、生体試料は、毛髪、皮膚、爪、組織または体液、例えば喀痰、唾液、脳脊髄液、尿および血液を限定されずに含む、患者または対象の体の任意の部分から選択される。
【0193】
本明細書およびクレーム(あるならば)では、単語「含んでいる(comprising)」ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprise)」を含むその派生語は、明記された整数の各々を含むが、1つまたは複数のさらなる整数の含有を排除しない。
【0194】
本明細書で用いるように、「対応する」核酸位置またはヌクレオチドは、2つ以上の核酸分子の整列した遺伝子座に存在する位置またはヌクレオチドを指す。関連したかまたは変異体のポリヌクレオチドは、当業者に公知である任意の方法によって整列させることができる。そのような方法は一致を一般的に最大にし、手動アラインメントの使用、ならびに利用可能な多数のアラインメントプログラム(例えば、BLASTN)および当業者に公知である他のものの使用などの方法を含む。ポリヌクレオチドの配列を整列させることによって、当業者は、同一のヌクレオチドをガイドとして使用して、対応するヌクレオチドまたは位置を同定することができる。例えば、E. coliの16S rRNA(配列番号1に示す)をコードする遺伝子の配列を、別の種からの16S rRNAをコードする遺伝子と整列させることによって、当業者は、保存されたヌクレオチドをガイドとして使用して対応する位置およびヌクレオチドを同定することができる。
【0195】
「遺伝子」は、ゲノム上の特異的座位を占有し、転写および/もしくは翻訳の調節配列ならびに/またはコード領域ならびに/または非翻訳配列(すなわち、イントロン、5’および3’非翻訳配列)からなる遺伝形質の単位を意味する。
【0196】
「遺伝子生成物」は、遺伝子の生成物を意味する。例えば、16S rRNA遺伝子の遺伝子生成物は、16S rRNAを含む。同様に、18S rRNA遺伝子の遺伝子生成物は、18S rRNAを含む。遺伝子生成物は、例えば、rRNA配列に由来するcDNA配列も含む。遺伝子生成物は、rRNA遺伝子の中のSNPが生成物において対応する変化をもたらすだろうrRNAの生成物を含むこともできる。
【0197】
「相同性」は、同一であるかまたは保存的置換を構成する核酸またはアミノ酸の百分率を指す。相同性は、GAP(Deveraux et al. 1984)などの配列比較プログラムを使用して判定することができ、それは参照により本明細書に組み込まれる。この方法では、本明細書に引用されるものに類似のまたは実質的に異なる長さの配列はアラインメントへのギャップの挿入によって比較することができ、そのようなギャップは、例えばGAPによって使用される比較アルゴリズムによって判定される。
【0198】
本明細書において、「ハイブリダイゼーション」は、DNA-DNAハイブリッドまたはDNA-RNAハイブリッドを生成するための相補性ヌクレオチド配列の対形成を表すために使用される。DNAでは、AはTと対になり、CはGと対になる。RNAでは、UはAと対になり、CはGと対になる。この点に関しては、本明細書で用いる用語「一致」および「ミスマッチ」は、相補性核酸鎖における対形成ヌクレオチドのハイブリダイゼーションの可能性を指す。上で指摘した古典的A-TおよびG-C塩基対などのマッチしているヌクレオチドは、効率的にハイブリダイズする。ミスマッチは、効率的にハイブリダイズしないヌクレオチドの他の組合せである。ヌクレオチド記号は、以下の表に示す:
【0199】
【0200】
「単離された」は、その天然の状態においてそれに通常付随する構成成分が実質的にまたは事実上含まれない材料を意味する。
【0201】
本明細書で用いる用語「オリゴヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合を通して連結される多数のヌクレオチド残基(デオキシヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはその関連した構造変異体もしくは合成類似体)で構成されるポリマーを指す(または、その関連した構造変異体または合成類似体)。したがって、用語「オリゴヌクレオチド」はヌクレオチド残基およびそれらの間の連結が天然に存在するヌクレオチドポリマーを一般的に指すが、この用語が、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロアミデート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、2-O-メチルリボ核酸などを限定されずに含む様々な類似体もその範囲に含むことが理解される。分子の正確なサイズは、特定の適用によって異なることができる。オリゴヌクレオチドは長さが一般的に約10から30ヌクレオチド残基と一般的にかなり短いが、しかしこの用語は任意の長さの分子を指すことができるが、用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は大きなオリゴヌクレオチドのために一般的に使用される。
【0202】
用語「患者」および「対象」は互換的に使用され、ヒトまたは他の哺乳動物の患者および対象を指し、本発明の方法を使用して検査または治療される任意の個体を含む。しかし、「患者」は、症状が存在することを暗示していないことが理解される。本発明の範囲に含まれる適した哺乳動物には、限定されずに、霊長類、畜産動物(例えば、ヒツジ、雌ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、臨床試験動物(例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、コンパニオン動物(例えば、ネコ、イヌ)および狩猟野生動物(例えば、コアラ、クマ、野生のネコ、野生のイヌ、オオカミ、ディンゴ、キツネなど)が含まれる。
【0203】
本明細書で用いる用語「多型」は、別の個体の相同領域におけるヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較したときの、所与の領域のヌクレオチドまたはアミノ酸配列における差、特に、同じ種の個体の間で異なっている所与の領域のヌクレオチドまたはアミノ酸配列における差を指す。多型は、参照配列に対して一般的に規定される。多型は、単一ヌクレオチドの差、複数のヌクレオチドにおける差ならびに単一または複数のヌクレオチドの挿入、反転および欠失;ならびに単一アミノ酸の差、複数のアミノ酸の配列における差ならびに単一または複数のアミノ酸の挿入、反転および欠失を含む。「多型部位」は、変異が起こる遺伝子座である。多型が核酸配列に存在し、多型部位の特定の1つまたは複数の塩基の存在に言及する場合、本発明はその部位の相補鎖の上の1つまたは複数の相補的塩基を包含することを理解すべきである。
【0204】
本明細書で用いる用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、mRNA、RNA、rRNA、cRNA、cDNAまたはDNAを指す。本用語は、長さが30ヌクレオチド残基より大きいオリゴヌクレオチドを一般的に指す。
【0205】
「プライマー」は、DNAの鎖と対にしたとき、適する重合剤の存在下でプライマー伸長生成物の合成を開始することが可能であるオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは増幅の最高効率のために好ましくは一本鎖であるが、代わりに二本鎖であってもよい。プライマーは、重合剤の存在下で伸長生成物の合成をプライミングするのに十分に長くなければならない。プライマーの長さは、適用、用いる温度、鋳型反応条件、他の試薬およびプライマーの供給源を含む多くの因子に依存する。例えば、標的配列の複雑性によって、オリゴヌクレオチドプライマーは15~35またはより多くのヌクレオチド残基を一般的に含有するが、それはより少ないヌクレオチド残基を含有することができる。プライマーは、例えば約200ヌクレオチドから数キロベースまたはより多くの大きなポリヌクレオチドであってもよい。プライマーは、それがハイブリダイズして合成開始のための部位の役割をするように設計される鋳型の上の配列に「実質的に相補的である」ように選択することができる。「実質的に相補的である」は、標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズするためにプライマーが十分に相補的であることを意味する。一部の実施形態では、プライマーはそれがハイブリダイズするように設計されている鋳型とのミスマッチを含有しないが、これは必須でない。例えば、非相補的ヌクレオチド残基をプライマーの5’末端に付着させることができるが、プライマー配列の残りは鋳型に相補的である。あるいは、非相補的ヌクレオチド残基またはひと続きの非相補的ヌクレオチド残基をプライマーに散在させることができるが、ただし、プライマー配列が、それとハイブリダイズし、それによってプライマーの伸長生成物の合成のための鋳型を形成するために、鋳型の配列と十分な相補性を有する場合に限る。
【0206】
「プローブ」は、特異的配列または部分配列または別の分子の他の部分に結合する分子を指す。別途指示がない限り、用語「プローブ」は、相補的塩基対形成を通して、しばしば「標的ポリヌクレオチド」と呼ばれる別のポリヌクレオチドに結合するポリヌクレオチドプローブを一般的に指す。プローブは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーによっては、プローブとの完全な配列相補性を欠いている標的ポリヌクレオチドに結合することができる。プローブは、直接または間接的に標識化することができる。
【0207】
本明細書において、用語「敗血症」は、臨床医学におけるその通常の意味に従って使用され、例えば、細菌感染症などの全身性および/または血液媒介性の感染症を含む。
【0208】
用語「敗血症関連細菌」は、対象において敗血症を引き起こすことができると同定されたか、または敗血症の対象の血液において同定された細菌を指す。したがって、「哺乳動物(例えば、ヒト)敗血症関連細菌」は、哺乳動物(例えば、ヒト)対象において敗血症を引き起こすことができると同定されたか、または敗血症の哺乳動物(例えば、ヒト)対象の血液において同定された細菌を指す。哺乳動物(例えば、ヒト)敗血症関連細菌の例には、Acinetobacter baumannii、Actinobacillus hominis、Actinomyces massiliensis、Aeromonas hydrophila、Bacillus anthracis、Bacteroides fragilis、Brucella abortus、Burkholderia cepacia、Campylobacter coli、Campylobacter fetus、Campylobacter jejuni、Campylobacter lari、Cardiobacterium valvarum、Chlamydia trachomatis、Chlamydophila abortus、Chlamydophila pneumoniae、Citrobacter freundii、Clostridium difficile、Clostridium perfringens、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium jeikeium、Corynebacterium urealyticum、Dermatophilus congolensis、Edwardsiella tarda、Enterobacter aerogenes、Enterobacter cloacae、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Erysipelothrix rhusiopathiae、Escherichia coli、Eubacterium desmolans、Flavobacterium ceti、Haemophilus ducreyi、Haemophilus influenzae、Haemophilus parahaemolyticus、Haemophilus parainfluenzae、Helicobacter cinaedi、Helicobacter pylori、Klebsiella oxytoca、Klebsiella pneumonia、Lactobacillus intestinalis、Legionella pneumophila、Leptospira interrogans、Listeria monocytogenes、Micrococcus luteus、Mobiluncus curtisii、Moraxella catarrhalis、Morganella morganii、Mycobacterium tuberculosis、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Nocardia asteroids、Nocardia brasiliensis、Pasteurella multocida、Peptostreptococcus stomatis、Porphyromonas gingivalis、Prevotella buccae、Prevotella intermedia、Prevotella melaninogenica、Proteus mirabilis、Providencia alcalifaciens、Pseudomonas aeruginosa、Rhodococcus equi、Salmonella enterica、Serratia marcescens、Shigella dysenteriae、Shigella sonnei、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、Stenotrophomonas maltophila、Streptococcus agalactiae、Streptococcus anginosus、Streptococcus bovis、Streptococcus constellatus、Streptococcus dysgalactiae、Streptococcus intermedins、Streptococcus mitis、Streptococcus mutans、Streptococcus oralis、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus sanguinis、Streptococcus sobrinus、Streptomyces anulatus、Streptomyces somaliensis、Veillonella atypica、Veillonella denticariosi、Veillonella dispar、Veillonella parvula、Veillonella rogosae、Vibrio cholerae、Yersinia enterocoliticaおよびYersinia pestisが含まれる。
【0209】
本明細書で用いるように、「敗血症」は、推定されたかまたは確認された感染過程を有するSIRSであると規定される。感染過程の確認は、感染因子の微生物学的な培養または単離を使用して判定することができる。免疫学的観点から、敗血症は微生物または全身感染への全身性応答であると見ることができる。
【0210】
本明細書で用いるように、「全身炎症性応答症候群(SIRS)」は、以下の測定可能な臨床特性の2つ以上を有する非特異的傷害から生じる臨床応答を指す;38度を超えるかもしくは36度未満の体温、毎分90を超える心拍数、毎分20を超える呼吸数、1mm3につき12,000を超えるかもしくは1mm3につき4,000未満の白血球数(全白血球)、または10%を超えるバンド好中球百分率。免疫学的観点から、それは、傷害(例えば、大手術)または全身性炎症への全身性応答を表すものと見ることができる。したがって、本明細書で用いるように、「感染陰性SIRS(inSIRS)」は、上記の、しかし識別可能な感染過程の不在下での臨床応答を含む。
【0211】
本明細書で用いる用語「配列同一性」は、比較ウインドウにわたって配列がヌクレオチドベースまたはアミノ酸ベースで同一である程度を指す。したがって、「配列同一性百分率」は、比較ウインドウにわたって2つの最適に整列させた配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G)が両方の配列に存在する位置の数を決定してマッチした位置の数を与え、マッチした位置の数を比較ウインドウの中の位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割り、結果を100倍にして配列同一性百分率(%配列同一性)を与えることによって計算される。
【0212】
本明細書で用いるように、用語一塩基多型(SNP)は、ゲノム配列の中の単一のヌクレオチド(A、T、CまたはG)が変更される(例えば、置換、付加または欠失を通して)ときに起こる、ヌクレオチド配列変異を指す。SNPは、原核生物または真核生物の微生物のゲノムなどのゲノムのコード(遺伝子)および非コード領域の両方に存在することができる。
【0213】
本明細書で用いるように、用語「治療」、「治療する」などは、所望の薬理学的および/または生理的効果を得ることを指す。この効果は、感染、状態もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防する点から予防的であってもよく、ならびに/または、感染、状態および/またはその感染もしくは状態に起因する有害作用のための部分的もしくは完全な治癒の点で治療的であってもよい。本明細書で用いる「治療」は、哺乳動物(例えば、ヒト)における感染または状態のいかなる治療も包含し、(a)感染または状態を抑制すること、すなわちその発達を抑えること;および(b)感染または状態を軽減すること、すなわち感染または状態の退行を引き起こすことを含む。
【0214】
2.本発明の多型
本発明は、細菌の16S rRNA遺伝子の中の(したがって、16S rRNA分子内の)SNPが、細菌の個々の種を同定するために、および/または属に基づいてまたはグラム陽性であるかもしくはグラム陰性であると細菌を分類するために使用することができるという判定に一部基づく。本発明は、18S rRNA遺伝子の中の(したがって、18S rRNA分子内の)SNPが、酵母生物体または糸状菌を同定、部分的に同定または分類するために使用することができるという判定にも一部基づく。
【0215】
2.1 16S rRNAの中のSNPを用いた細菌の分類
本発明は、属に基づいて細菌種を分類するための方法、ならびに試料中の細菌のグラム状態を判定するための、すなわち、その細菌がグラム陽性またはグラム陰性であるか判定する方法を提供する。
【0216】
本明細書に実証されるように、配列番号1に示すE. coliの16S rRNA遺伝子の位置273および653に対応する、16S rRNAをコードする遺伝子(したがって、16S rRNA分子自体)のヌクレオチド位置の多型は、哺乳動物(例えば、ヒト)病原体(血液培養によって単離される、最も一般的に見出される細菌種を含む(Karlowsky et al.2004))を特に含む、試料中の選択された細菌種のグラム状態を判定するために使用することができる。
【0217】
最も詳細には、および
図1に示すように、本発明は、以下の中から選択される細菌種を分類するための方法を提供する:Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenes。
【0218】
例えば、上の段落に掲載される試料中の細菌の1つのグラム状態を判定するための方法は、試料からの核酸を、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273および653に対応する位置にある16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することを含み、ここで、273位のAおよび653位のTは、試料中のその細菌がグラム陽性であることを示す。
【0219】
試料中の上の前記細菌の1つのグラム状態を判定するための別の方法は、試料からの核酸を、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の440位にある16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することを含み、ここで、440位のTは、試料中のその細菌がグラム陽性であることを示す。
【0220】
試料中の上の前記細菌の少なくとも1つを特定の属に属すると分類するための方法は、試料からの核酸を、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置412および647に対応する位置にある16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することを含み、ここで:412位のTは、その細菌がStaphylococcus属に属することを示し;または、647位のGは、その細菌がEnterococcus属に属することを示す。
【0221】
2.2 16S rRNAのSNPを使用した細菌の同定ならびに18S rRNAを使用した酵母生物体および糸状菌の同定
本発明は、試料中の細菌を同定するための方法も提供する。
【0222】
本明細書に実証されるように、配列番号1に示すE. coliの16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653のいずれか1つに対応する、16S rRNAをコードする遺伝子(したがって、16S rRNA分子自体)のヌクレオチド位置の多型は、哺乳動物(例えば、ヒト)病原体(血液培養によって単離される、最も一般的に見出される細菌種を含む(Karlowsky et al.2004))を特に含む、試料中の細菌を同定するために使用することができる。
【0223】
一実施形態では、および
図1に示すように、本発明は、以下の中から選択される細菌を同定するための方法を提供する:Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenes。
【0224】
上記のSNPを使用して試料中の上記の細菌種を同定するための一般的な規則は、表1および/または表5に示す。
【0225】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の653位に対応する位置にある16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、細菌Enterobacter cloacaeを試料の中で同定することができ、ここで、653位のGは、その細菌がEnterobacter cloacaeであることを示す。
【0226】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置378および488に対応する位置にある16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenes から選択される細菌を試料の中で同定することができ、ここで:378位のAおよび488位のTは、その細菌がStreptococcus pneumoniaeであることを示し;378位および488位のAは、その細菌がStreptococcus agalactiaeであることを示し;378位のGおよび488位のAは、その細菌がStreptococcus pyogenesであることを示す。
【0227】
上記の細菌から、本方法は、試料からの核酸を、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653に対応する位置にある16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによってAcinetobacter calcoaceticus;Enterobacter cloacae;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenesから選択される細菌を試料の中で同定することができ、ここで:位置273、440および647のAは、その細菌がAcinetobacter calcoaceticusであることを示し;653位のGは、その細菌がEnterobacter cloacaeであることを示し;273位および653位のTは、その細菌がE. coliであることを示し;273位のT、488位および647位のC、ならびに653位のAは、その細菌がKlebsiella pneumoniaeであることを示し;440位および488位のC、ならびに647位のTは、その細菌がProteus mirabilisであることを示し;440位のAおよび647位のTは、その細菌がPseudomonas aeruginosaであることを示し;位置378、488および647のAは、その細菌がStreptococcus agalactiaeであることを示し;488位および647位のTは、その細菌がStreptococcus pneumoniaeであることを示し;378位のGならびに488位および647位のAは、その細菌がStreptococcus pyogenesであることを示す。
【0228】
上記のものに加えて、本発明の方法は、試料中の以下の細菌の存在を同定するために使用することもできる:Staphylococcus aureus;S. epidermidis;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Serratia marcescensおよびEnterobacter aerogenes。本方法も、試料からの核酸を、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653のいずれか1つに対応する位置にある16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することを含み、ここで:412位のTは、その試料が細菌Staphylococcus aureusおよび/またはS. epidermidisを含むことを示し;647位のGは、その試料が細菌Enterococcus faecalisおよび/またはEnterococcus faeciumを含むことを示し;440位および647位のCならびに488位のTは、その試料が細菌Serratia marcescensおよび/またはEnterobacter aerogenesを含むことを示す。
【0229】
上記に加えて、本発明の方法は、試料中のStaphylococcus aureus;S. epidermidis;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Serratia marcescensおよびEnterobacter aerogenesの各々を同定するために使用することもできる。本方法は、試料からの核酸を高分解能融解分析によってさらに分析することを含む(下の3.8を参照する)。高分解能融解分析は、異なる細菌に由来するが同じSNP(複数可)を含有する核酸配列を、周囲のヌクレオチド塩基における変異に基づいてお互いと区別することを可能にする。
【0230】
別の実施形態では、本発明は、以下の中から選択される細菌を同定するための方法を提供する:Escherichia coli、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pyogenes、Proteus mirabilis、Enterobacter cloacae、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Acinetobacter calcoaceticus、Enterococcus faecalis、Listeria monocytogenes、Staphylococcus aureus、Clostridium perfringens、Corynebacterium jeikeium、Bacteroides fragilis、Neisseria meningitidis、Haemophilus influenzae、Serratia marcescens、Salmonella sp.およびStaphylococcus epidermidis。上記のSNPを使用して試料中の上記の細菌種を同定するための一般的な規則は、表2に示す。
【0231】
同様に、本明細書に実証されるように、配列番号43に示すBacillus anthracisの16S rRNA遺伝子の位置746、764、771または785(または、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置737、755、762または776)に対応する、16S rRNAをコードする遺伝子(したがって、rRNA分子自体)のヌクレオチド位置の多型は、哺乳動物(例えば、ヒト)病原体(セキュリティセンシティブな生体作用物質として知られる病原体を含む)を特に含む、試料中の細菌を同定するために使用することができる。
【0232】
一実施形態では、以下の中から選択される細菌を同定するための方法が提供される:Bacillus anthracis、Clostridium botulinumA型、Clostridium botulinumB型、Clostridium botulinumC型、Clostridium botulinumD型、Clostridium botulinumG型、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomallei。
【0233】
上記のSNPを使用して試料中の上記の細菌種を同定するための一般的な規則は、表3および/または表6に示す。
【0234】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号43の16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、細菌Bacillus anthracisを試料の中で同定することができ、ここで、746位のT、764位のA、771位のCおよび785位のGは、その細菌がBacillus anthracisであることを示す。
【0235】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号43の16SrRNA遺伝子(または、16SrRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、Clostridium botulinumA型またはClostridium botulinumB型から選択される細菌を試料の中で同定することができ、ここで、746位のT、764位のG、771位のCおよび785位のTは、その細菌がClostridium botulinumA型またはClostridium botulinumB型であることを示す。
【0236】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号43の16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、細菌Clostridium botulinumC型を試料の中で同定することができ、ここで、746位のT、764位のA、771位のTおよび785位のTは、その細菌がClostridium botulinumC型であることを示す。
【0237】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号43の16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、細菌Clostridium botulinumD型を試料の中で同定することができ、ここで、746位のC、764位のA、771位のTおよび785位のTは、その細菌がClostridium botulinumD型であることを示す。
【0238】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号43の16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、細菌Clostridium botulinumG型を試料の中で同定することができ、ここで、746位のT、764位のG、771位のCおよび785位のGは、その細菌がClostridium botulinumG型であることを示す。
【0239】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号43の16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、細菌Yersinia pestisを試料の中で同定することができ、ここで、746位のC、764位のG、771位のTおよび785位のGは、その細菌がYersinia pestisであることを示す。
【0240】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号43の16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、細菌Francisella tularensisを試料の中で同定することができ、ここで、746位のT、764位のA、771位のGおよび785位のGは、その細菌がFrancisella tularensisであることを示す。
【0241】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号43の16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、細菌Vibrio choleraeを試料の中で同定することができ、ここで、746位のC、764位のA、771位のTおよび785位のGは、その細菌がVibrio choleraeであることを示す。
【0242】
上記の細菌から、試料からの核酸を、配列番号43の16S rRNA遺伝子(または、16S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、細菌Burkholderia pseudomalleiを試料の中で同定することができ、ここで、746位のC、764位のG、771位のCおよび785位のGは、その細菌がBurkholderia pseudomalleiであることを示す。
【0243】
上に加えて、本発明の方法は、試料中のBacillus anthracis、Clostridium botulinumA型、Clostridium botulinumB型、Clostridium botulinumC型、Clostridium botulinumD型、Clostridium botulinumG型、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomalleiの各々を同定するために使用することもできる。本方法は、試料からの核酸を高分解能融解分析によってさらに分析することを含む(下の3.8を参照する)。
【0244】
同様に、本明細書に実証されるように、配列番号37に示すCandida albicansの18S rRNA遺伝子の位置343、371、388、416および467に対応する、18S rRNAをコードする遺伝子(したがって、rRNA分子自体)のヌクレオチド位置の多型は、哺乳動物(例えば、ヒト)病原体を特に含む、試料中の細菌を同定するために使用することができる。
【0245】
一実施形態では、以下の中から選択される酵母生物体または糸状菌を同定するための方法が提供される:Candida albicans、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Fusarium spp.、Aspergillus fumigatusおよびCryptococcus neoformans。
【0246】
上記のSNPを使用して試料中の上記の細菌種を同定するための一般的な規則は、表4および/または表7に示す。
【0247】
上記の酵母生物体または糸状菌から、試料からの核酸を、配列番号37の18S rRNA遺伝子(または、18S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、酵母生物体Candida albicansを試料の中で同定することができ、ここで、343位のC、371位のA、388位のT、416位のGおよび467位のGは、その酵母生物体がCandida albicansであることを示す。
【0248】
上記の酵母生物体または糸状菌から、試料からの核酸を、配列番号37の18S rRNA遺伝子(または、18S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、酵母生物体Candida tropicalisを試料の中で同定することができ、ここで、343位のC、371位のA、388位のC、416位のGおよび467位のCは、その酵母生物体がCandida tropicalisであることを示す。
【0249】
上記の酵母生物体または糸状菌から、試料からの核酸を、配列番号37の18S rRNA遺伝子(または、18S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、酵母生物体Candida parapsilosisを試料の中で同定することができ、ここで、343位のC、371位のA、388位のC、416位のGおよび467位のGは、その酵母生物体がCandida parapsilosisであることを示す。
【0250】
上記の酵母生物体または糸状菌から、試料からの核酸を、配列番号37の18S rRNA遺伝子(または、18S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、酵母生物体Candida glabrataを試料の中で同定することができ、ここで、343位のT、371位のA、388位のC、416位のGおよび467位のGは、その酵母生物体がCandida glabrataであることを示す。
【0251】
上記の酵母生物体または糸状菌から、試料からの核酸を、配列番号37の18S rRNA遺伝子(または、18S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、酵母生物体Cryptococcus neoformansを試料の中で同定することができ、ここで、343位のC、371位のA、388位のT、416位のTおよび467位のGは、その酵母生物体がCryptococcus neoformansであることを示す。
【0252】
上記の酵母生物体または糸状菌から、試料からの核酸を、配列番号37の18S rRNA遺伝子(または、18S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、糸状菌Fusarium spp.を試料の中で同定することができ、ここで、343位のC、371位のC、388位のT、416位のTおよび467位のGは、その糸状菌がFusarium spp.であることを示す。
【0253】
上記の酵母生物体または糸状菌から、試料からの核酸を、配列番号37の18S rRNA遺伝子(または、18S rRNAもしくはそのDNAコピー)の中のSNPについて分析することによって、糸状菌Aspergillus fumigatusを試料の中で同定することができ、ここで、343位のC、371位のC、388位のT、416位のCおよび467位のGは、その糸状菌がAspergillus fumigatusであることを示す。
【0254】
上に加えて、本発明の方法は、試料中のCandida albicans、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Fusarium spp.、Aspergillus fumigatusおよびCryptococcus neoformansの各々を同定するために使用することもできる。本方法は、試料からの核酸を高分解能融解分析によってさらに分析することを含む(下の3.8を参照する)。
【0255】
3.本発明により細菌、酵母生物体および糸状菌を同定および/または分類するための特異的多型のためのスクリーニング
対象からの生体試料の単離、生体試料の処理、ゲノムDNAの抽出、RNAの抽出、DNAの検出および特徴付け、RNAの検出および特徴付け、DNAの配列決定、DNA配列の分析、SNPの遺伝子タイピング研究、RNAの位置決めおよび同定、RNAプロファイリングおよびRNAスクリーニング、RNAの配列決定、RNA配列の分析の工程/技術は、任意の適する方法で実行することができる。
【0256】
試料中の細菌種を分類および/または同定するために、1つまたは複数のSNPを検出するための当技術分野で公知である任意の方法を本明細書に記載される方法において使用することができる。特定の実施形態では、本方法は、別のものではなく1細菌種(または、酵母生物体もしくは糸状菌種)を絞り込むことか、または一部の場合には確認することを促進する。試料中の一塩基多型に対応する特定の位置でのヌクレオチドの存在を判定するために、多数の方法が当技術分野で公知である。多型の検出のための様々なツールには、限定されずに、DNA配列決定、スキャン技術、ハイブリダイゼーションベースの技術、伸長ベースの分析、高分解能溶融分析、組込みベースの技術、制限酵素ベースの分析およびライゲーションベースの技術が含まれる。
【0257】
本発明による方法は、16S rRNAもしくは18S rRNA遺伝子の中の、16S rRNAもしくは18S rRNA分子内の、またはそのDNAコピーの中の本明細書に記載される多型を、いずれの鎖についても同定することができる。一部の例では、多型を検出する方法は増幅の第1の工程を利用し、増幅は、16S rRNAもしくは18S rRNA遺伝子から、または16S rRNAもしくは18S rRNA分子のDNAコピーからであってよい。
【0258】
核酸は、対象からの生体試料から、または環境試料、例えば空気、土もしくは水試料、濾液、食物または製造品、または表面から、例えば医療器具もしくは作業場所表面からのスワップからであってよい。対象は、ヒト対象または非ヒト対象、例えば哺乳動物対象、例えば霊長類、畜産動物(例えば、ヒツジ、雌ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、臨床試験動物(例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、コンパニオン動物(例えば、ネコ、イヌ)および狩猟野生動物(例えば、コアラ、クマ、野生のネコ、野生のイヌ、オオカミ、ディンゴ、キツネなど)であってよい。対象からの生体試料は、体液、例えば血液、唾液、喀痰、尿、脳脊髄液、糞便、細胞、組織または生検を非限定的に含む、対象の体の任意の部分からであってよい。他の例では、核酸は、培養細胞から得られる。
【0259】
本発明の方法によって分析される核酸は、試料の中にある間に分析することができるか、または、分析の前に先ず試料から抽出、例えば試料から単離してもよい。試料から核酸を単離するための任意の方法を本発明の方法において使用することができ、そのような方法は当業者に周知である。抽出された核酸は、DNAおよび/またはRNA(mRNAまたはrRNAを含む)を含むことができる。一部の例では、分析の前に逆転写のさらなる工程が方法に含まれてもよい。したがって、分析される核酸は、16S rRNA遺伝子、18S rRNA遺伝子、16S rRNA、18S rRNA、16S rRNAもしくは18S rRNAのDNAコピー、またはその任意の組合せを含むことができる。核酸は、16S rRNA遺伝子、18S rRNA遺伝子、16S rRNA、18S rRNA、または16S rRNAもしくは18S rRNAのDNAコピーの部分を含有することもでき、SNPについて分析される核酸位置を含有する部分を提供する。
【0260】
一部の場合には、本方法は、核酸の増幅を含む。このような場合には、適する核酸増幅技術は当業者に周知であり、例えばAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, Inc. 1994-1998)に記載されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば米国特許第5,422,252号に記載される鎖置換増幅(SDA)、例えばLiu et al. (1996)ならびに国際公開第92/01813号および国際公開第97/19193号に記載されるローリングサークル複製(RCR)、例えばSooknanan et al., (1994), ligase chain reaction (LCR)に記載される核酸配列ベースの増幅(NASBA)、単一配列反復分析(SSR)、分枝状DNA増幅アッセイ(b-DNA)、転写増幅および自律的配列複製、ならびに、例えばTyagi et al. (1996)に記載されるQ-βレプリカーゼ増幅を含む。
【0261】
そのような方法は、例えば1つまたは複数のSNPを含有する標的ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする増幅プライマー対を含む、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを利用することができる。本発明の方法の実施において有益なオリゴヌクレオチドプローブは、例えば、SNPの位置を含む標的ポリヌクレオチドの一部に相補的でありそれにまたがるオリゴヌクレオチドを含むことができ、多型部位(すなわち、SNP)の特異的ヌクレオチドの存在は、プローブの選択的ハイブリダイゼーションの存在の有無によって検出される。そのような方法は、標的ポリヌクレオチドおよびハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドをエンドヌクレアーゼと接触させること、および多型部位のヌクレオチドの存在がプローブの対応するヌクレオチドに相補的であるかどうかによってプローブの切断生成物の存在の有無を検出することをさらに含むことができる。
【0262】
プライマーは、任意の便利な合成方法を使用して製造することができる。そのような方法の例は、「Protocols for Oligonucleotides and Analogues; Synthesis and Properties」、Methods in Molecular Biology Series, Volume 20, Ed. Sudhir Agrawal, Humana ISBN: 0-89603-247-7, 1993に見出すことができる。検出を促進するために、プライマーを標識化することもできる。
【0263】
SNPの検出のために有益な任意の方法を本発明において使用することができ、SNP遺伝子タイピングのための多くの異なる方法が当技術分野で公知である(レビューについては、Syvanen, A. C. (2001);Kim, S. and Misra, A., (2007)、を参照する)。そのような方法は、「反応」(例えば、ハイブリダイゼーション、ライゲーション、伸長および切断)および続く「分離」(例えば、固相マイクロタイタープレート、微粒子またはアレイ、ゲル電気泳動、溶液相均一または半均一)を含む、連続した3工程の使用からなることができる。全ての適用のために理想的なSNP遺伝子タイピング方法は1つもなく、様々なパラメータ、例えば分析するSNPの試料サイズおよび数を考慮して最も適当な方法を決定することは当業者の技術の範囲内である。
【0264】
臨床使用に特に役立ち、少数のSNPへの照会に依存する例示的技術は、迅速、高感度(試料中の核酸の増幅を通して)、一段階、リアルタイム測定出力、多重化および自動化可能、比較的安価、ならびに正確であり、例には、限定されずに、TaqMan(登録商標)アッセイ(5’ヌクレアーゼアッセイ、Applied Biosystems)、高分解能融解分析、LUX(登録商標)(Invitrogen)またはScorpion(登録商標)プローブ(Sigma Aldrich)などの分子ビーコンプローブ、および鋳型による(template directed)色素組込み(TDI、Perkin Elmer)が含まれる。
【0265】
例えば、TaqMan(登録商標)(Applied Biosystems)は、対立遺伝子特異的プローブとのハイブリダイゼーション、均一溶液相および蛍光共鳴エネルギー転移の組合せを使用する。TaqMan(登録商標)アッセイは、核酸を増幅するためのフォワードおよびリバースプライマーならびにTaq DNAポリメラーゼと共に、SNP部位(複数可)にわたって結合するように設計された標識プローブを分解するためのTaq DNAポリメラーゼの5’-ヌクレアーゼ活性に依存する。反応、分離および検出は全て同時に実行し、反応の進行に従って結果をリアルタイムに読み取ることができる。そのようなアプローチは多数のSNPを同時に分析することに役立たないが、それは、少数のSNPを相応な費用で速やかに、高感度におよび正確に照会するのに特に適する。
【0266】
一部の方法が他より適することがあるが、試料中の細菌および/または複数の細菌を分類および/または同定するために、1つまたは複数のSNPを検出するための当技術分野で公知の任意の方法を本明細書に記載される方法において使用することができる。そのような方法の非限定例は、下に記載される。
【0267】
3.1 核酸配列決定技術
一部の実施形態では、多型は、核酸配列決定技術によって同定される。具体的には、SNP遺伝子座にわたる増幅生成物は、伝統的な配列決定方法(例えば、「サンガー法」(Sanger, F., et al. (1975)としても知られる「ジデオキシ媒介連鎖終止反応法」、および「マクサム-ギルバート法」(Maxam, A. M., et al., 1977)としても知られる「化学的分解方法」)を使用して配列決定をすることができ、両参考文献は、SNP遺伝子座でのヌクレオチドの存在を判定するために参照により本明細書に組み込まれる。
【0268】
Boyce-Jacinoら、米国特許第6,294,336号は、SNPがポリヌクレオチド標的に選択的に結合する最も3’のヌクレオチドとなる部位でポリヌクレオチド標的に選択的に結合するプライマーを利用することによって、核酸分子(DNAまたはRNA)の配列を決定するための固相配列決定方法を提供する。変性高圧液体クロマトグラフィーまたは質量分析などの他の配列決定技術を用いることもできる。
【0269】
他の例示的な例では、配列決定方法は、Pyrosequencing(商標)として知られる技術を含む。DNA重合の間にデオキシヌクレオチドが組み込まれるときはいつでも、このアプローチはピロリン酸の生成に基づく。ピロリン酸の生成はルシフェラーゼ触媒反応に連動し、加えた特定のデオキシヌクレオチドが組み込まれるならば発光をもたらし、定量的で特徴のあるパイログラムを与える。試料処理は、ビオチン化プライマーによるPCR増幅、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズ(または、他の固相)の上のビオチン化一本鎖アンプリコンの単離、および配列決定プライマーのアニーリングを含む。試料はPyrosequence(商標)によって次に分析され、それは、スルフリラーゼおよびルシフェラーゼ、ならびに組み込まれていない分子の分解のためのピラーゼを含む、指示反応のために必要とされるいくつかの酵素および基質を加える。試料は、4つのデオキシヌクレオチドの付加によって次に調べられる。発光は電荷結合素子(CCD)カメラで検出することができ、組み込まれたヌクレオチドの数に比例する。
結果は、パターン認識によって自動的に割り当てられる。
【0270】
あるいは、「ミクロシークエンシング」方法を使用して、本発明の方法は核酸の中の多型部位でのヌクレオチドの存在を同定することができる。ミクロシークエンシング方法は、「所定」部位における単一のヌクレオチドだけの同一性を判定する。そのような方法は、標的ポリヌクレオチドにおける多型の存在および同一性の判定において特に有用である。そのようなミクロシークエンシング方法、ならびに多型部位におけるヌクレオチドの存在を判定するための他の方法は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,294,336号に議論されている。
【0271】
ミクロシークエンシング方法には、国際公開第92/15712号に開示される、Genetic Bit Analysis(商標)方法が含まれる。DNAの中の多型部位を検査するためのさらなるプライマー誘導ヌクレオチド組込み手順も、記載されている(Komher, J.S., et al., 1989;Sokolov, B.P., 1990;Syvanen, A.C., et al., 1990;Kuppuswamy, M.N., et al., 1991;Prezant, T.R., et al. 1992;Ugozzoli, L., et al., 1992;Nyren, P., et al. 1993;および国際公開第89/10414号)。これらの方法は、多型部位の塩基を区別するために標識デオキシヌクレオチドの組込みに全て頼るという点で、Genetic Bit Analysis(商標)と異なる。そのようなフォーマットでは、シグナルが組み込まれるデオキシヌクレオチドの数に比例するので、同じヌクレオチドのランに存在する多型はランの長さに比例するシグナルをもたらすことができる(Syvanen, A.C., et al. 1993)。
【0272】
さらなるミクロシークエンシング方法が米国特許第4,656,127号および仏国特許第2,650,840号(国際公開第91/02087号)によって提供され、それらは、多型部位のヌクレオチドの同一性を判定するための溶液ベースの方法を含む。米国特許の方法におけるように、すなわち多型部位の直ぐ3’側の対立遺伝子配列に相補的であるプライマーが用いられる。
【0273】
他の例示的な例では、米国特許第5,002,867号は、オリゴヌクレオチドプローブの複数の混合物とのハイブリダイゼーションを通して核酸配列を判定するための方法を例えば記載する。そのような方法により、標的ポリヌクレオチドの配列は、1つの位置に不変のヌクレオチドを、および他の位置に変異ヌクレオチドを有するプローブのセットと標的が逐次的にハイブリダイズすることを可能にすることによって判定される。本方法は、標的をプローブのセットとハイブリダイズさせ、次にセットの少なくとも1つのメンバーが標的にハイブリダイズすることが可能である部位の数(すなわち、一致の数)を判定することによって、標的のヌクレオチド配列を判定する。この手順は、一般的にプローブのセットの各メンバーが試験されるまで繰り返される。
【0274】
あるいは、蛍光偏光法検出(FP-TDI)アッセイ(Chen et al. 1999)による鋳型による(template-directed)色素-ターミネーター組込みアッセイは、ミニシークエンシングまたは一塩基伸長アッセイとも呼ばれるプライマー伸長アッセイのバージョンである(Syvanen, A.C., et al., 1990)。プライマー伸長アッセイは、SNPを検出することが可能である。DNA配列決定プロトコールは、多型部位から直ぐ上流の標的DNAにアニールされるSNP特異的配列決定プライマーの直ぐ3’側の1塩基の性質を確認する。DNAポリメラーゼおよび適当なジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)の存在下で、多型部位の標的DNA配列によって決定づけられる通り、プライマーは特異的に1塩基伸長する。どのddNTPが組み込まれるか判定することによって、標的DNAに存在する対立遺伝子(複数可)を推測することができる。
【0275】
3.2 多型ハイブリダイゼーションに基づく技術
ヌクレオチド配列の中の多型を検出するハイブリダイゼーション技術には、限定されずに、TaqMan(登録商標)アッセイ(Applied Biosystems)、ドットブロット、逆ドットブロット、多重対立遺伝子特異的診断アッセイ(MASDA)、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)(Jobs et al. 2003)、分子ビーコンおよびサザンブロットを含めることができる。
【0276】
ヌクレオチド配列の中のSNPを同定するためのTaqMan(登録商標)アッセイ(5’ヌクレアーゼアッセイまたは5’消化アッセイとしても知られる)は、標的DNAにハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドプローブを置換および切断して蛍光シグナルを生成する、Taqポリメラーゼのヌクレアーゼ活性に基づく。特定のSNPに特異的であるTaqMan(登録商標)プローブが必要とされ、各プローブは、5’末端に付着している異なる蛍光色素および3’末端に付着しているクエンチャーを有する。プローブが無傷であるとき、クエンチャーは蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によって蛍光団と相互作用し、それらの蛍光をクエンチングする。PCTアニール工程の間、TaqMan(登録商標)プローブは標的DNAにハイブリダイズする。伸長工程では、蛍光色素はTaqポリメラーゼのヌクレアーゼ活性によって切断され、レポーター色素による蛍光の増加につながる。ミスマッチプローブは、断片化なしで置換される。2つの異なる色素のシグナル強度を測定することによって、試料の遺伝子型が判定される。
【0277】
別の有益なSNP同定方法にはDASH(動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション)が含まれ、それは、多型を同定するために反応温度を着実に増加させるときの(PCR生成物)ハイブリダイゼーションを標的にするためのプローブ(オリゴヌクレオチド)の動的追跡を包含する(Prince, J.A., et al. 2001)。
【0278】
一部の実施形態では、多数の試料(>500)の分析のために、多重対立遺伝子特異的診断アッセイ(MASDA)を使用することができる。MASDAでは、DNA配列を識別するために、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを利用する。多重DNA試料を固体支持体の上に固定化し、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブのプールで単一のハイブリダイゼーションを実行する。所与の試料に存在する特異的多型に相補的であるいかなるプローブも、標的DNAによってプールから事実上親和性精製される。結合したASO(複数可)の化学的または酵素的配列決定によって生成される、配列特異的バンドパターン(フィンガープリント)は、特異的突然変異(複数可)を容易に同定する。
【0279】
とりわけ分子ビーコンおよびScorpion(登録商標)プローブを含む、いくつかの代替のハイブリダイゼーションベースの技術がある(Tyagi, S. and Kramer, F.R. 1996;Thelwell et al., 2000)。分子ビーコンは、それらの5’および3’末端に蛍光性レポーターおよびクエンチャー色素を有するオリゴヌクレオチドで構成される。オリゴヌクレオチドの中心部分は標的配列にわたってハイブリダイズするが、5’および3’隣接領域はお互いに相補的である。それらの標的配列にハイブリダイズしていないとき、5’および3’隣接領域はハイブリダイズしてステムループ構造を形成し、レポーターおよびクエンチャー色素の近接性のために蛍光はほとんどない。しかし、それらの標的配列へのハイブリダイゼーションの後には、色素は分離して蛍光の大きな増加がある。ミスマッチのプローブ-標的ハイブリッドは、正確に相補的なハイブリッドより実質的に低い温度で解離する。「ビーコン」アプローチには、いくつかの変異形がある。Scorpion(登録商標)プローブは類似しているが、プローブの一部としてPCRプライマー配列を組み込む。より近年の「二重鎖」フォーマットも、開発されている。
【0280】
一部の実施形態では、SNPを同定するさらなる方法は、SNP-IT(商標)方法(Orchid BioSciences,Inc.Princeton、N.J.)を含む。一般に、SNP-IT(商標)は、3工程のプライマー伸長反応である。第1の工程では、標的ポリヌクレオチドは捕捉プライマーとのハイブリダイゼーションによって試料から単離され、それは第1レベルの特異性を提供する。第2の工程では、捕捉プライマーは標的SNP部位で終止ヌクレオチド三リン酸から伸長し、それは第2レベルの特異性を提供する。第3の工程では、伸長したヌクレオチド三リン酸は、以下を含む様々な公知のフォーマットを使用して検出することができる:直接蛍光、間接蛍光、間接比色アッセイ、質量分析、蛍光偏光法等。反応は、SNPstream(商標)機器(Orchid BioSciences,Inc.Princeton、N.J.)を使用した自動化フォーマットの384ウェルフォーマットにおいて処理することができる。
【0281】
これらの実施形態では、増幅生成物は、放射性プローブの有る無しでサザンブロット分析によって検出することができる。そのような方法では、例えば、多型遺伝子座の非常に低いレベルの核酸配列を含有するDNAの小さい試料が増幅され、サザンブロット技術により、または同様にドットブロット分析により分析される。非放射性プローブまたは標識の使用は、増幅された高レベルのシグナルで促進される。あるいは、増幅された生成物を検出するのに使用されるプローブは、例えば放射性同位体、蛍光性化合物、生物発光化合物、化学発光性化合物、金属キレータまたは酵素により直接的にまたは間接的に検出可能的に標識化することができる。
【0282】
ヌクレオチド配列をスクリーニングするために、ハイブリダイゼーション条件、例えば塩濃度および温度を調整することもできる。サザンブロットおよびハイブリダイゼーションプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience)、pages 2.9.1-2.9.10に記載される。プローブは、ランダムオリゴマーおよびDNAポリメラーゼのクレノウ断片とのハイブリダイゼーションのために標識化することができる。製造業者のプロトコールに従ってReady-To-Go DNA標識化ビーズ(Pharmacia Biotech)などの市販キットを使用して、非常に高い特異性活性のプローブを得ることができる。高い反復配列含有量を有する可能な競合プローブ、ならびにハイブリダイゼーションおよび洗浄のストリンジェンシーは、使用する各プローブのために個々に決定される。あるいは、候補配列の断片はPCRによって生成することができ、特異性は、齧歯動物-ヒト体細胞ハイブリッドパネルを使用し、断片をサブクローニングして検証することができる。これは、配列決定およびプローブとしての使用のための大きなプレップを可能にする。所与の遺伝子断片が特徴付けられると、PCR生成物のゲルまたはカラム精製によって、小さいプローブ調製物を達成することができる。
【0283】
ドットブロット、逆ドットブロット、多重およびMASDAフォーマットにおいて使用できる適した材料は、当技術分野で周知であり、例には、ナイロンおよびニトロセルロース膜が限定されずに含まれる。
【0284】
3.3 多型スキャン技術
ヌクレオチド配列の中の多型を検出するための本発明によって企図されるスキャン技術には、限定されずに、化学的ミスマッチ切断(CMC)(Saleeba, J. A et al., 1992)、ミスマッチ修復酵素切断(MREC)(Lu, A.L. and Hsu, I.C, 1992)、化学的切断技術、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Wartell et al., 1990;Sheffield et al., 1989)、温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)(Salimullah, et al. 2005)、恒常変性剤ゲル電気泳動(CDGE)、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析(Kumar, D. et al., 2006)、ヘテロ二本鎖分析(HA)(Nagamine, C.M., et al., 1989)、マイクロサテライトマーカー分析および一本鎖多型アッセイ(SSPA)含めることができる。
【0285】
一部の実施形態では、本発明のSNPはCMCを通して検出され、ここで、放射標識化されたDNA野生型配列(すなわち、プローブ)は、推定上の変更を含有する増幅された配列にハイブリダイズしてヘテロ二本鎖を形成する。ヘテロ二本鎖の中のミスマッチバブルを取り除くために、化学的改変および続くピペリジン切断が使用される。変性ヘテロ二本鎖のゲル電気泳動およびオートラジオグラフィーは、切断生成物の可視化を可能にする。ミスマッチのシトシンのために誤対合したチミジンおよびヒドロキシルアミンの改変のために、四酸化オスミウムを使用する。さらに、プローブDNAのアンチセンス鎖の標識は、アデノシンおよびグアノシンミスマッチの検出を可能にする。ミスマッチの化学的切断は、長いDNA断片における突然変異のほぼ100%を検出するのに使用することができる。さらに、この方法は、試験断片の中の突然変異の精密な特徴付けおよび正確な位置付けを提供する。最近、この方法は、多重化も可能にし、それによって操作の数を低減する蛍光性プライマーを使用することによって、CMCを自動化のためにより好適にするように改善された。あるいは、PCRによって組み込まれる蛍光標識dUTPは、標的およびプローブDNA鎖の両方の内部標識を、したがって各可能なハイブリッドの標識を可能にし、突然変異検出の可能性を2倍にし、事実上100%の検出を保証する。
【0286】
他の実施形態では、本発明のSNPを同定するためにミスマッチ修復酵素切断(MREC)アッセイが使用される。MRECは、ミスマッチ含有DNAに特異的であるニッキング酵素系に依存する。目的の配列はPCRによって増幅され、ホモおよびヘテロ二本鎖種は、増幅させた生成物を変性させ、再アニールさせることによってPCRの末端に生成させることができる。これらのハイブリッドはミスマッチ修復酵素で処理され、次に変性ゲル電気泳動によって分析される。MRECアッセイは、3つのミスマッチ修復酵素を利用する。MutYエンドヌクレアーゼはミスマッチからアデニンを取り除き、A/TおよびC/G塩基転換ならびにG/CおよびT/A塩基転位の両方を検出するのに有益である。哺乳動物のチミングリコシラーゼはT/G、T/CおよびT/Tミスマッチからチミンを取り除き、G/CおよびA/T塩基転位ならびにA/TおよびG/CおよびT/AおよびA/T塩基転換を検出するのに有益である。ヒトまたは子ウシ胸腺からの全タイプのエンドヌクレアーゼまたはトポイソメラーゼIは、全8つのミスマッチを認識することができ、任意のヌクレオチド置換を調べるために使用することができる。MRECは、両方のDNA鎖に組み込むことができる特異的標識を使用することができ、したがって、所与の部位における全ての4つの可能なヌクレオチド置換の同定を可能にする。
【0287】
一部の実施形態では、ヌクレオチド配列の中のSNPを同定するために、米国特許第5,217,863号に記載される化学的切断分析が使用される。ヘテロ二本鎖分析と同様に、化学的切断は、ミスマッチ対立遺伝子配列がお互いにハイブリダイズするときにもたらされる、異なる特性を検出する。ゲルの上での変更された遊走速度としてこの差を検出する代わりに、この差は、例えばヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムを、その後ピペリジンを使用して、化学的切断へのハイブリッドの感受性の変化において検出される。
【0288】
本発明によって企図される切断方法の中で、RNアーゼAは、ヘテロ二本鎖ミスマッチ分析の原理に依存する。RNアーゼ切断方法では、PCR増幅によって得られる、放射標識化されたリボプローブとDNA間のRNA-DNAヘテロ二本鎖は、RNA:DNAハイブリッドにおけるミスマッチの場所で一本鎖RNAを切断するRNアーゼAの能力を活用することによって、RNアーゼAによって酵素的に切断される。これの後に、電気泳動およびオートラジオグラフィーが続く。突然変異の存在および位置は、所与のサイズの切断生成物によって示される(Meyers, R.M., et al., 1985;Gibbs, R.A. and Caskey, T., 1987)。
【0289】
酵素的または化学的切断を通して、ミスマッチを検出するのにDNAプローブを使用することもできる;Cotton, et al., 1988;Shenk et al., 1975およびNovack et al., 1986を参照する。
【0290】
一部の実施形態では、本発明の16S rRNA遺伝子の中の多型について調べるために、Invader(登録商標)アッセイ(Third Wave(商標)技術)を用いることができる。例えば、Invader(登録商標)アッセイは、2つの重複するオリゴヌクレオチドが標的DNAに完全にハイブリダイズするときに形成される三次元構造の認識、およびFlapエンドヌクレアーゼによる切断の特異性に基づく(Lyamichev, V. et al., 1999)。
【0291】
あるいは、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)は、配列変異体を分離および同定する有益な技術である。DGGEは恒常濃度ポリアクリルアミドゲルスラブにおいて一般的に実行され、線形に増加する量の変性剤(通常、ホルムアミドおよび尿素、カソードからアノードへ)の存在下でキャストされる。DGGEの変異体は、遊走経路に沿って温度勾配を用い、TGGEとして知られる。DGGEまたはTGGEによる分離は、部分的に融解したDNA分子のゲル内の電気泳動移動度が未融解分子と比較して大いに低減されるという事実に基づく。
【0292】
一部の実施形態では、Smith-Sorenson et al., 1993に詳細に記載の通りに、恒常変性ゲル電気泳動(CDGE)は、ヌクレオチド配列の中のSNPを検出するのに有益である。所与のDNA二重鎖は、恒常変性剤のゲルの中で所定の特徴的方法で融解する。突然変異は、この動きを変更する。特異的突然変異を決定するために、異常遊走断片は単離され、配列決定される。
【0293】
他の実施形態では、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析は、本発明のSNPを検出するための方法を提供する。SSCPは、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分離した一本鎖DNA分子の移動度の変化に基づく方法である。電気泳動移動度は分子のサイズおよび形状の両方に依存し、一本鎖DNA分子はそれ自身を折り畳んで二次構造体を生成し、それは、配列依存的に分子内相互作用によって決定される。単一ヌクレオチド置換は二次構造体を、およびその結果として、一本鎖の電気泳動移動度を変更することができ、オートラジオグラフの上でバンドシフトをもたらす。一本鎖の高次構造を変更する所与のヌクレオチド変異の能力は、十分な理論モデルに基づいて予測可能でなく、ループにまたは二次構造体の長い安定したステムに起こる塩基変化は、SSCPによって検出することができないかもしれない。標準のSSCPは、150~200bpの断片における配列変更の検出において最大信頼度に到達する。放射能ベースのSSCP分析のそれと等しい感度での突然変異の検出を可能にする、より高度なプロトコールが開発されている。これらの方法はPCRにおいて蛍光標識プライマーを使用し、蛍光ベースの自動化配列決定機器によって生成物を分析する。多色蛍光SSCPはあらゆるレーンに内部標準を含ませることも可能にし、それは、各レーンからのデータを互いに対して比較するために使用することができる。検出率を増加させる他の変異体には、ジデオキシフィンガープリント法(ddF)および制限エンドヌクレアーゼフィンガープリント法(REF)に基づくジデオキシ配列決定アプローチが含まれる。
【0294】
ddF方法はSSCPおよびサンガージデオキシ配列決定法の組合せであり、それは1つのジデオキシヌクレオチドによるサンガー配列決定反応の非変性ゲル電気泳動を含む。この方法では、例えば、SNPを同定するために250bpの断片をスクリーニングすることができる。REFは、1kbを超える断片のスクリーニングを可能にする、SSCPのより複雑な改変である。REFのために、標的配列はPCRで増幅され、5~6つの異なる制限エンドヌクレアーゼで独立して消化され、非変性ゲルの上でSSCPによって分析される。6つの制限酵素が使用される場合、配列の変異が6つの異なる制限断片に存在し、このように12個の異なる一本鎖セグメントを生成する。これらの断片のいずれか1つにおける移動度シフトは、本発明のSNPの存在を正確に指摘するのに十分である。得られる制限パターンは、調査領域中の変更の位置確認を可能にする。
【0295】
一部の実施形態では、ヘテロ二本鎖分析(HA)は、PCR生成物またはヌクレオチド配列における一塩基置換を検出する。HAは、放射性同位体も専門装置もなしで迅速に実行することができる。HA方法は、PCR生成物の加熱および再変性による、1つまたは複数の位置に異なるヌクレオチドを有する配列の間でのヘテロ二本鎖の形成を利用する。ミスマッチ塩基を囲んでいるより開放的な二本鎖構成のために、ヘテロ二本鎖はそれらの対応するホモ二本鎖よりゆっくり移動し、続いて、低減した移動度のバンドとして検出される。HA方法によって検出される特定の一塩基置換の能力は、ミスマッチ塩基を知ることだけによって予測することはできないが、その理由は、隣接したヌクレオチドがミスマッチ領域の構成に実質的な影響を及ぼし、長さに基づく分離はヌクレオチド置換を明らかに見落とすからである。使用するアクリルアミドの温度、ゲル架橋および濃度の最適化、ならびにグリセロールおよびスクロースは、突然変異した試料の分解能を強化する。HA方法は放射性同位体も専門装置もなしで迅速に実行することができ、配列決定をした遺伝子の中の既知の突然変異および多型について多数の試料をスクリーニングする。HAがSSCPと併用されるとき、DNA断片の中の全ての変更の最高100%を容易に検出することができる。
【0296】
一部の実施形態では、ヌクレオチドミスマッチを認識するタンパク質、例えばE. coliのmutSタンパク質の使用は、本発明の16S rRNAの中の多型を検出するのに用いることができる(Modrich 1991)。mutSアッセイでは、タンパク質は、2つの配列の間のヘテロ二本鎖におけるヌクレオチドミスマッチを含有する配列だけに結合する。
【0297】
さらなる実施形態では、多型検出は、マイクロサテライトマーカー分析を用いて実行することができる。例えば約10センチモルガン(cM)の平均ゲノム間隔を有するマイクロサテライトマーカーは、当技術分野で公知の標準のDNA単離方法を使用して用いることができる。
【0298】
上記のSSPA分析および近い関係のあるヘテロ二本鎖分析方法は、一塩基多型についてのスクリーニングのために使用することができる(Orita, M. et al., 1989)。
【0299】
3.4 多型分析のためのヌクレオチドアレイおよび遺伝子チップ
本発明は、多型位置に隣接している配列を含むオリゴヌクレオチド、例えば、少なくとも12nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約20ntまたは少なくとも約25ntの、またはそれより長いオリゴヌクレオチドのアレイの使用を通してSNPを同定する方法をさらに企図し、ここで、アレイの上の別個の位置は本発明のSNPを含有する配列の1つまたは複数に相補的である。そのようなアレイは連続したオリゴヌクレオチドを含むことができ、それぞれは異なる多型に特異的にハイブリダイズすることができる。アレイの例については、Hacia et al., 1996およびDe Risi et al., 1996を参照する。
【0300】
ヌクレオチドアレイは、必要に応じて、本発明の多型の全てかそのサブセットを含むことができる。1つまたは複数の多型形態が、アレイに存在してもよい。アレイの上のオリゴヌクレオチド配列は、長さが一般的に少なくとも約12nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約20ntまたは少なくとも約25ntであるか、またはそれより長く、例えば100~200ntの長さである。アレイの例については、Ramsay 1998;Hacia et al., 1996;Lockhart et al., 1996およびDe Risi et al., 1996を参照する。
【0301】
DNAハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用するDNA試料のアレイなどの生体試料のマイクロアレイを作製するために、いくつかの方法が利用可能である。そのようなアレイの例は、PCT出願国際公開第95/35505号;米国特許出願番号第5,445,934号;およびDrmanac et al., 1993において詳細に議論される。Yershov et al. 1996は、オリゴヌクレオチドアレイの代替の構築を記載する。オリゴヌクレオチドアレイの構築および使用は、Ramsay (1998)、によってレビューされる。
【0302】
ヌクレオチド配列の中の多型を同定するために高密度オリゴヌクレオチドアレイを使用する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Milosavljevic et al., 1996は、短いオリゴマーへのハイブリダイゼーションによるDNA配列認識を記載する(Drmanac et al., 1998およびDrmanac and Drmanac, 1999も参照する)。未知の突然変異の同定のためのアレイの使用が、Ginot 1997によって提案される。
【0303】
既知の突然変異の検出は、Hacia et al. 1996;Cronin et al., 1996;および他に記載される。遺伝子マッピングにおけるアレイの使用は、Chee et al., 1996;Sapolsky and Lishutz, 1996およびShoemaker et al., 1996において議論される。
【0304】
相補性DNAマイクロアレイによる遺伝子発現パターンの定量的モニタリングは、Schena et al., 1995およびDeRisi et al., 1997に記載される。Wodicka et al., 1997は、S. cerevisiaeにおいてゲノムワイド発現モニタリングを実行する。
【0305】
オリゴヌクレオチドの高密度マイクロアレイは当技術分野で公知であり、市販されている。アレイの上のオリゴヌクレオチド配列は、既知の標的配列に対応する。アレイに存在するオリゴヌクレオチドの長さは、ハイブリダイゼーションがミスマッチの存在にどの程度感受性であるかの重要な因子である。通常、オリゴヌクレオチドは長さが少なくとも約12nt、より普通には長さが少なくとも約15nt、好ましくは長さが少なくとも約20nt、より好ましくは長さが少なくとも約25ntであり、長さは約35ntより長くなく、長さは通常約30nt未満である。
【0306】
オリゴヌクレオチドの大きなアレイの生成方法は、光誘導合成技術を用いた米国特許第5,134,854号および米国特許第5,445,934号に記載される。コンピュータ制御のシステムを使用することによって、いくつかの反応部位での同時カップリングを通して、単量体の不均一なアレイがポリマーの不均一なアレイに変換される。あるいは、例えば国際公開第95/35505号に記載の通りに、マイクロアレイは前合成されたオリゴヌクレオチドの固体基材の上への沈着によって生成される。
【0307】
標識ゲノム試料のハイブリダイゼーションを検出するために、マイクロアレイを調べることができる。蛍光マークされた標的を装置で検出するための方法および装置は、当技術分野で公知である。一般的に、そのような検出装置は、顕微鏡および基材に光を誘導するための光源を含む。x-y移動ステージが基材の位置を変更する間、光子計数管は基材からの蛍光を検出する。対象方法において使用することができる共焦検出装置は、米国特許第5,631,734号に記載される。走査型レーザー顕微鏡は、Shalon et al. 1996に記載される。適当な励起系を用いたスキャンが、使用する各蛍光団のために実行される。スキャンから生成されるデジタル画像は、以降の分析のために次に合わされる。任意の特定のアレイ要素のために、1つの核酸試料からの蛍光シグナルの比が他の核酸試料からの蛍光シグナルと比較され、相対シグナル強度が判定される。
【0308】
蛍光検出によって採集されるデータを分析するための方法は、当技術分野で公知である。データ分析は、採集されるデータから基材位置に対応する蛍光強度を判定する工程、外れ値、すなわち所定の統計的分布からそれているデータを取り除く工程、および残りのデータから標的の相対的な結合親和性を計算する工程を含む。生じるデータは画像として提示することができ、各領域の強度は標的とプローブの間の結合親和性によって異なる。
【0309】
マイクロチップ技術を通した核酸分析も、本発明に適用可能である。この技術では、数千の別個のオリゴヌクレオチドプローブをシリコンチップの上のアレイに適用することができる。分析する核酸は蛍光標識化され、チップの上のプローブにハイブリダイズされる。これらの核酸マイクロチップを使用して核酸-タンパク相互作用を研究することも可能である。この技術を使用することによって、突然変異の存在を判定すること、分析する核酸を配列決定すること、または目的の遺伝子の発現レベルを測定することができる。本方法は、多くの、さらに数千のプローブの一度の並行処理の1つであり、分析の速度を非常に増加させることができる。
【0310】
mRNA転写の変更は、当業者に公知である任意の技術によって検出することができる。これらには、ノーザンブロット分析、PCR増幅およびRNアーゼ保護が含まれる。減少したmRNA転写は、配列の変更を示す。
【0311】
アレイ/チップ技術の適用は、既に多くのケースで成功している。
【0312】
例えば、突然変異のスクリーニングは、BRCA1遺伝子、S. cerevisiaeの突然変異体株、およびHIV-1ウイルスのプロテアーゼ遺伝子において行われている(Hacia et al., 1996;Shoemaker et al., 1996;Kozal et al., 1996)。SNPの検出で使用するための様々なフォーマットのチップを、カスタマイゼーションにより生成することができる。
【0313】
SNPの検出に有益であるアレイベースのタイリング戦略は、欧州特許第785280号に記載される。簡潔には、多数の特異的多型のために、一般的にアレイを「タイリングする」ことができる。「タイリング」は、目的の標的配列に相補的である配列、ならびにその配列の予め選択された変異、例えば、単量体、すなわちヌクレオチドの基本セットの1つまたは複数のメンバーによる1つまたは複数の所与の位置の置換で構成されるオリゴヌクレオチドプローブの規定のセットの合成を指す。タイリング戦略は、PCT出願国際公開第95/11995号にさらに記載される。一部の実施形態では、いくつかの特異的SNPのためにアレイが「タイリング」される。詳細には、アレイはいくつかの検出ブロックを含むようにタイリングされ、各検出ブロックは特異的SNPまたはSNPのセットに特異的である。例えば、検出ブロックは、特異的SNPを含む配列セグメントにわたるいくつかのプローブを含むようにタイリングすることができる。各対立遺伝子に相補的であるプローブを確保するために、プローブはSNP位置が異なる組で合成される。SNP位置が異なるプローブに加えて、検出ブロックの中で一置換プローブも一般的にタイリングされる。そのような方法は、本明細書に開示されるSNP情報に容易に適用することができる。
【0314】
これらの一置換プローブは、残りのヌクレオチド(A、T、G、CおよびUから選択される)で置換される、多型からのいずれかの方向のある特定の数の塩基におよびその数までの塩基を有する。一般的に、タイリングされた検出ブロックの中のプローブは、SNPから5塩基離れているものおよびそこまでの配列位置の置換を含む。人工的なクロスハイブリダイゼーションから実際のハイブリダイゼーションを区別するために、一置換プローブは、タイリングされたアレイのための内部対照を提供する。標的配列とのハイブリダイゼーションおよびアレイの洗浄の終了後に、標的配列がハイブリダイズするアレイの位置を判定するためにアレイが調べられる。調べたアレイからのハイブリダイゼーションデータは、SNPのどの対立遺伝子または複数の対立遺伝子が試料中に存在するか確認するために次に分析される。ハイブリダイゼーションおよびスキャンは、PCT出願国際公開第92/10092号および国際公開第95/11995号および米国特許第5,424,186号に記載の通りに実行することができる。
【0315】
したがって、一部の実施形態では、チップは、長さが約15ヌクレオチドの断片の核酸配列のアレイおよびそれに相補的である配列またはその断片を含むことができ、断片は、少なくとも約8つの連続したヌクレオチド、好ましくは10、15、20、より好ましくは25、30、40、47または50の連続したヌクレオチドを含み、多型塩基を含有する。一部の実施形態では、多型塩基は、ポリヌクレオチドの中心から5、4、3、2または1ヌクレオチドの範囲内にあり、より好ましくはポリヌクレオチドの中心にある。他の実施形態では、チップは、本発明の任意の数のポリヌクレオチドを含有するアレイを含むことができる。
【0316】
PCT出願国際公開第95/251116号に記載の通りに、化学的カップリング手順およびインクジェット塗布装置を使用してオリゴヌクレオチドを基材の表面に合成することができる。別の態様では、真空システム、熱、UV、機械的または化学的結合手順を使用して、cDNA断片またはオリゴヌクレオチドを基材の表面に配置し、連結するために、ドット(または、スロット)ブロットに類似した「グリッド」アレイを使用することができる。上記のそれらなどのアレイは、手動で、または利用可能な装置(スロットブロットまたはドットブロット装置)、材料(任意の適する固体支持体)および機械(ロボット機器を含む)を使用して生成することができ、8、24、96、384、1536、6144またはそれより多くのオリゴヌクレオチド、または市販機器の効率的使用に役立つ任意の他の数を含有することができる。
【0317】
そのようなアレイを使用して、本発明は、試料中の本発明のSNPを同定する方法を提供する。そのような方法は、試験試料を、本発明の少なくとも1つのSNP位置に対応する1つまたは複数のオリゴヌクレオチドプローブを含むアレイとインキュベートすること、および試験試料からの核酸の、オリゴヌクレオチドプローブの1つまたは複数への結合について検査することを含む。そのようなアッセイは、多くのSNP位置および/またはそれらのSNP位置の対立遺伝子変異体に対応するオリゴヌクレオチドプローブを含むアレイを一般的に含み、その少なくとも1つは本発明のSNPである。
【0318】
核酸分子を試験試料とインキュベートする条件は、変化する。インキュベーション条件は、アッセイで用いるフォーマット、用いる検出方法、およびアッセイで使用する核酸分子のタイプおよび性質に依存する。当業者は、一般的に利用可能なハイブリダイゼーション、増幅またはアレイアッセイフォーマットのいずれか1つを、本明細書に開示される新規SNPを用いるように容易に適合させることができることを認める。そのようなアッセイの例は、Chard, T, An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, The Netherlands (1986);Bullock, G. R. et al., Techniques in Immunocytochemistry, Academic Press, Orlando, Fla. Vol. 1 (I 982), Vol. 2 (1983), Vol. 3 (1985);Tijssen, P., Practice and Theory of Enzyme Immunoassays: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, The Netherlands (1985)に見出すことができる。
【0319】
SNPを分析するために、多成分統合化システムを使用することもできる。そのようなシステムは、PCRおよび毛細管電気泳動反応などのプロセスを、単一の機能的装置に小型化および区画化する。そのような技術の例は米国特許第5,589,136号に開示され、それはチップにおけるPCR増幅および毛細管電気泳動の統合を記載する。
【0320】
統合化システムは、主にマイクロ流動力学的システムが使用されるときに想定することができる。これらのシステムは、マイクロチップの上に含まれるガラス、シリコン、石英またはプラスチックウエハーの上に設計されるマイクロチャネルのパターンを含む。可動部分なしの機能的顕微鏡的バルブおよびポンプを作製するために、試料の動きは、マイクロチップの異なる領域にわたって加えられる電気的、電気浸透圧的または流体静力学的力によって制御される。電圧を変えることによって微加工チャネルの間の交点で液流量を制御し、マイクロチップの異なる部分にわたってポンプ輸送するための液流速を変化させる。
【0321】
SNPの遺伝子タイピングのために、マイクロ流動力学的システムは、例えば、核酸増幅、ミニシークエンシングプライマー伸長、毛細管電気泳動およびレーザー誘起蛍光検出などの検出方法を統合することができる。
【0322】
第1の工程では、DNA試料は好ましくはPCRによって増幅される。次に、増幅生成物は、ddNTP(各ddNTPのための特異的蛍光)および標的化多型塩基の直ぐ上流にハイブリダイズする適当なオリゴヌクレオチドミニシークエンシングプライマーを使用した、自動化されたミニシークエンシング反応に付される。3’末端の伸長が完了すると、毛細管電気泳動によってプライマーは組み込まれていない蛍光性ddNTPから分離される。毛細管電気泳動において使用される分離媒体は、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコールまたはデキストランであってよい。単一ヌクレオチドプライマー伸長生成物の中に組み込まれたddNTPは、レーザー誘起蛍光検出によって同定される。このマイクロチップは、少なくとも96~384個の試料またはそれより多くを並行して処理するために使用することができる。
【0323】
3.5 多型の検出のための伸長ベースの技術
ヌクレオチド配列の中の多型を検出するための伸長ベースの技術には、欧州特許出願公開番号第0332435号およびNewton et al., 1989に開示される、増幅抵抗性突然変異システム(ARMS)としても知られる対立遺伝子特異的増幅、ならびにGibbs et al. 1989によって企図される多型のクローニング(COPS)を限定されずに含めることができる。
【0324】
伸長ベースの技術(ARMS)は、遺伝子タイピングのために対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)PCRプライマーを使用する。このアプローチでは、PCRのために使用する2つのオリゴヌクレオチドプライマーの1つは、多型部位に、最も一般的にはその部位を標的にするプライマーの3’末端に結合するように設計される。注意深く制御された条件(アニーリング温度、マグネシウム濃度等)の下では、PCRプライマーの3’末端のヌクレオチドが多型部位の塩基に相補的であり、ミスマッチが増幅に「抵抗性」である場合にだけ増幅は起こる。
【0325】
突然変異誘発分離PCR(MS-PCR)と命名されたARMSアプローチの変異形は、異なる長さの2つのARMSプライマーを含み、各々はある部位の異なる多型に特異的である。この方法は、異なる多型のために異なる長さのPCR生成物を与える。
【0326】
3.6 多型を検出するためのライゲーションベースのアッセイ
SNP検出の別の一般的な方法は、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイを包含する。いくつかのアプローチは、DNA鋳型にハイブリダイズしている2つの隣接したオリゴヌクレオチドを連結することができる酵素であるDNAリガーゼを利用する。このアプローチの特異性は、ライゲーション部位におけるハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドとDNA鋳型の間の完全な一致の必要条件から来る。オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)アッセイでは、突然変異部位を囲んでいる配列は先ず増幅され、1つの鎖は3つのライゲーションプローブのための鋳型の役目をし、これらのうちの2つは対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)であり、第3は共通プローブである。ライゲーション生成物の検出のために、多数のアプローチを使用することができる。例えば、2つのASOは蛍光またはハプテン標識で差別的に標識化することができ、ライゲーション生成物はそれぞれ蛍光または比色酵素結合免疫吸着検定法によって検出することができる。電気泳動ベースのシステムについては、蛍光検出と一緒の移動度調節剤タグまたはプローブ長の変動の使用は、単一のチューブにおけるいくつかの単一ヌクレオチド置換の多重遺伝子タイピングを可能にする。アレイの上で使用するとき、ASOはチップ上の特異的な場所またはアドレスで見つけることができる。PCR増幅DNAを次に加えることができ、アレイ上の特異的アドレスでの標識オリゴヌクレオチドへのライゲーションを測定することができる。
【0327】
3.7 シグナル発生多型検出アッセイ
一部の実施形態では、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)は、16S rRNA遺伝子の中の多型を同定する方法であると考えられている。FRETは、2つの色素分子の電子励起状態の間での相互作用のために起こる。励起は、光子の放出なしで、1つの(ドナー)色素分子から他の(受容体)色素分子に移転する。これは距離依存性であり、すなわちドナーおよび受容体色素は近接していなければならない。ハイブリダイゼーションプローブシステムは、蛍光色素で標識化された2つのオリゴヌクレオチドからなる。ハイブリダイゼーションプローブ対は、標的DNA上の隣接領域にハイブリダイズするように設計される。各プローブは、異なるマーカー色素で標識化される。2つの色素の相互作用は、両方ともそれらの標的に結合しているときだけに起こることができる。ドナープローブは3’末端、受容体プローブは5’末端が蛍光団で標識化される。PCRの間、2つの異なるオリゴヌクレオチドは標的DNAの隣接領域にハイブリダイズし、そのため、オリゴヌクレオチドに結合している蛍光団がハイブリッド構造体に近接する。ドナー蛍光団(F1)は外部光源によって励起され、次にその励起エネルギーの一部を隣接する受容体蛍光団(F2)に渡す。励起された受容体蛍光団(F2)は異なる波長で光を放射し、それは、次に分子近接性について検出および測定することができる。
【0328】
他の実施形態では、一塩基伸長、磁気分離および化学発光に基づくMagSNiPer方法は、ヌクレオチド配列の中のSNP同定のためのさらなる方法を提供する。一塩基ヌクレオチド伸長反応は、その3’末端がタグ標識ddNTPを有するSNP部位に連続しているビオチン化プライマーで実行される。次に、ストレプトアビジンを有する磁気コーティングビーズによってプライマーが捕捉され、組み込まれていない標識ddNTPは磁気分離によって取り除かれる。磁気ビーズは、アルカリ性ホスファターゼにコンジュゲートしている抗タグ抗体とインキュベートされる。磁気分離による過剰のコンジュゲートの除去後、化学発光を測定することによってSNPタイピングが実行される。標識ddNTPの組込みは、アルカリ性ホスファターゼによって誘導される化学発光によってモニタリングされる。
【0329】
一部の実施形態では、蛍光偏光法は、ヌクレオチド配列の中の多型を同定するための方法を提供する。例えば、多型を含有する増幅されたDNAが、対立遺伝子特異的色素標識ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸および市販されている改変Taq DNAポリメラーゼの存在下で、オリゴヌクレオチドプライマー(多型部位に隣接したDNA鋳型にハイブリダイズするように設計される)とインキュベートされる。プライマーは鋳型の上に存在する対立遺伝子に特異的である色素-ターミネーターによって伸長し、蛍光団の分子量を概ね10倍増加させる。反応の終了時に、反応混合物の中の2つの色素-ターミネーターの蛍光偏光は、分離も精製もなしで直接的に分析される。この均一なDNA診断方法は高度に高感度および特異的であることが示され、多数の試料の自動化遺伝子タイピングのために適する。
【0330】
他の実施形態では、二本鎖DNA断片における一塩基差を検出し、同定するための方法として、表面増強ラマン散乱を使用することができる(Chumanov, G 1999を参照する)。単一分子の検出のために、SERSも使用された(Kneipp, K, 1997)。SERSは、ナノメートルの大きさの金属構造に付着している分子からの非常に増加したラマンシグナルをもたらす。
【0331】
例示的な例には、検出が蛍光クエンチングによるプライマー伸長アッセイに基づく、Xiao and Kwok 2003によって議論される遺伝子タイピング方法が含まれる。蛍光クエンチング検出(FQ-TDI)アッセイによる鋳型による(template-directed)色素-ターミネーター組込みは、蛍光色素R110-およびR6G-標識アシクロターミネーターの強度は、それらがDNAオリゴヌクレオチドプライマーに組み込まれると普遍的にクエンチされるとの観察に基づく。2つの対立遺伝子色素の蛍光クエンチングの速度をリアルタイムで比較することによって、DNA試料中のSNPの頻度を測定することができる。動的FQ-TDIアッセイは、遺伝子タイピングおよび対立遺伝子頻度推定の両方において高度に正確で、再現可能である。
【0332】
3.8 高分解能融解分析
特定の実施形態では、16S rRNA遺伝子の中の、16S rRNA分子の中の、またはそのDNAコピーの中の、本明細書に記載されるSNP(複数可)に基づいて試料中の1つまたは複数の細菌を分類および/または同定するために、本発明の方法は高分解能融解(HRM)分析を利用する。
【0333】
HRMは、挿入蛍光色素によって染色されたPCR生成物(すなわち、アンプリコン)がその融点(Tm)を通して加熱されるときの、蛍光変化の正確なモニタリングに基づく。伝統的な融解と対照的に、HRM分析における情報は、計算されたTmだけでなく融解曲線の形で含有されるので、HRMは分光法の形と考えることができる。HRM分析は単一工程の閉鎖的なチューブ方法であり、増幅および融解はリアルタイムPCR機器の上で単一のプロトコールとして実行することができる。
【0334】
本発明の実施形態では、この方法は、本明細書に記載されるSNPの1つまたは複数を含有する標的ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズする増幅プライマー対を利用する。増幅反応混合物は蛍光色素を含有し、それは結果として生じるアンプリコンに組み込まれる。
【0335】
結果として生じるアンプリコンは、約50℃から約95℃の範囲内の温度の漸増(すなわち、0.01~0.5℃)によるHRMに次に付される。この過程の間のある時点で、アンプリコンの融点に到達し、DNAの2本の鎖は分離するかまたは別々に「融解」する。
【0336】
アンプリコンに組み込まれる蛍光色素を使用して、HRMはリアルタイムでモニタリングされる。色素の蛍光レベルは温度が上昇する間中モニタリングされ、二本鎖DNAの量が低減するに従って蛍光は低減する。蛍光および温度における変化は、融解曲線として知られるグラフにプロットすることができる。
【0337】
当業者が理解するように、2本のDNA鎖が分離するアンプリコンのTmは予測可能であり、アンプリコンを形成するヌクレオチド塩基の配列に依存する。したがって、融解曲線は異なって出現するので、多型(すなわち、1つまたは複数のSNP)を含有するアンプリコンを含むアンプリコンを区別することが可能である。実際、一部の実施形態では、周囲のDNA配列における差に基づいて、同じ多型を含有するアンプリコンを区別することが可能である。
【0338】
HRM曲線は、多くの異なる戦略によってお互いから識別することができる。例えば、多くの場合、HRM曲線は、曲線形状における明らかな差に基づいておよび/またはTmに基づいて識別することができ、0.2℃の差が有意であると考えられている。他の場合には、規定の曲線がベースラインとして使用され、他の正規化曲線がベースラインに対してプロットされる、差グラフ分析を使用することができる(Price, E.P. et al. 2007を参照する)。さらに他の場合には、全ての温度での蛍光のための平均±1.96標準偏差から第3および第97パーセンタイル値を導くことを含む、差グラフに基づく方法を使用することができる(Andersson, P. et al., 2009およびMerchant-Patel, S. et al. 2008を参照する)。
【0339】
4.ツール、試薬、プライマー、プローブ、キットおよび処理系
本明細書は、細菌、酵母生物体もしくは糸状菌を同定、部分的に同定もしくは分類するための、または、細菌、酵母生物体もしくは糸状菌による感染を診断するための「ツール」として様々なSNPをどのように使用することができるかについて説明する。このSNPの知見は、細菌、酵母生物体もしくは糸状菌を同定、部分的に同定もしくは分類するための、または、細菌、酵母生物体もしくは糸状菌による感染を診断するための、遺伝子/対立遺伝子ベースのおよび遺伝子生成物ベースのプローブ、ツール、試薬、方法およびアッセイを発明者が開発することを可能にする。
【0340】
当業技術者は、本明細書で、特に表1~9および11で提供される情報に基づいて、広範囲の遺伝子/対立遺伝子ベースのおよび遺伝子生成物ベースのプローブ、ツール、試薬、方法およびアッセイを容易に設計、生成または製造することができる。
【0341】
一般的に、本明細書において概説されるSNPに基づく、またはそれを考慮して開発されたそのようなプローブ、ツールまたは試薬は、例えば、遺伝子もしくはその遺伝子の一部、RNA遺伝子生成物もしくはそのRNA遺伝子生成物の一部、または他の遺伝子生成物もしくはその一部に特異的に結合すること、それを検出、同定、特徴付けまたは定量化することができる。
【0342】
一般的に、そのようなプローブ、ツールまたは試薬は、例えばゲノムレベルまたは転写レベルでの多型の検出のためであってよい。
【0343】
一般的に、そのようなプローブ、ツールまたは試薬は、遺伝子または遺伝子生成物(RNAなど)を検出することが可能な抗体または他のタイプの分子もしくは化学実体であってもよい。
【0344】
より具体的には、プローブ、ツールおよび試薬には、限定されずに、以下を含めることができる:
1.16S rRNA、16S rDNA、18S rRNAまたは18S rDNAの単離、精製、合成または組み換えられた形態、または、目的のSNPを含有する断片を含むその断片-一本鎖または二本鎖。
2.16S rRNA、16S rDNA、18S rRNAまたは18S rDNAの天然に存在しないポリヌクレオチド、組換えポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはcDNAの形態、または、目的のSNPを含有する断片を含むその断片-一本鎖または二本鎖。
3.1または2の核酸またはポリヌクレオチドを含む発現ベクター、組換え細胞または生体試料。
【0345】
プローブ、ツールまたは試薬は、限定されずに、遺伝子または遺伝子生成物(RNAまたはポリペプチド)を検出することが可能な抗体または他のタイプの分子もしくは化学実体であってもよい。
【0346】
少なくとも1つのプローブ、ツールまたは試薬は、上記のものの任意の数または組合せであってよく、この数および組合せは、達成すべき所望の結果-例えば、ゲノムレベル(遺伝子タイピング)、RNAレベルでの多型の検出に依存する。
【0347】
本発明により16S rRNA遺伝子または18S rRNA遺伝子の中の1つまたは複数のSNPを検出するために必要とされる全ての必須の材料および試薬は、キットの中に一緒にまとめることができる。キットは、適当な標識検出用試薬、陽性および陰性対照、蛍光色素、洗浄溶液、ブロッティングメンブラン、マイクロタイタープレート、希釈緩衝液などを含んでもよい。例えば、多型の同定のための核酸ベースの検出キットは、以下の1つまたは複数を含むことができる:(i)グラム陽性細胞および/またはグラム陰性細胞からの核酸(陽性対照として使用することができる);および(ii)分析するSNP位置(複数可)を含有する16S rRNA遺伝子または18S rRNA遺伝子の少なくとも一部分に特異的にハイブリダイズするプライマーおよび/またはプローブ、ならびに適宜、疑われるSNP部位の、またはその周囲の1つまたは複数の他のマーカー。増幅のために必要な反応混合物を提供するために、様々なポリメラーゼ(用いる核酸増幅技術によって、逆転写酵素、Taq、Sequenase(商標)DNAリガーゼ等)を含む核酸増幅に適する酵素、デオキシヌクレオチドおよび緩衝液が含まれてもよい。そのようなキットは、適する手段の中に、各個々の試薬および酵素、ならびに各プライマーまたはプローブのための個別の容器も一般的に含む。キットは、本明細書に記載されるアッセイの1つを実行するための様々な装置および試薬;および/または本明細書に規定されるSNPの存在を同定するためにキットを使用するための印刷された説明書を特徴として有することもできる。
【0348】
一部の実施形態では、本明細書に一般的に記載される方法は、少なくとも一部、適切にプログラムされたコンピュータシステムなどの処理システムによって実行される。上記の方法の実行を可能にするマイクロプロセッサー実行アプリケーションソフトを備えた、独立型コンピュータを使用することができる。あるいは、本方法は、少なくとも一部、分散型アーキテクチャの一部として動作する1つまたは複数の処理システムによって実行することができる。例えば、核酸分子へのプローブのハイブリダイゼーションを検出することによって、ある位置でSNPの存在を検出するのに処理システムを使用することができる。1つまたは複数のSNPの検出に基づいて細菌のグラム状態または同一性またはグループ分けを判定するために、処理システムを使用することもできる。一部の例では、ユーザーによって処理システムに入力されるコマンドは、これらの判定において処理システムを支援することができる。
【0349】
一例では、処理システムは、少なくとも1つのマイクロプロセッサー、メモリ、入力/出力装置、例えばキーボードおよび/または表示装置、ならびにバスを通して相互接続される外部インターフェースを含む。外部インターフェースは、処理システムを周辺装置、例えば通信ネットワーク、データベースまたは記憶装置に接続するために利用することができる。マイクロプロセッサーは、SNP検出および/または微生物の同定もしくは分類処理の実行を可能にするために、ならびに任意の他の要求される処理、例えばコンピュータシステムとの通信を実行するために、メモリに格納されるアプリケーションソフトの形の命令を実行することができる。アプリケーションソフトは1つまたは複数のソフトウェアモジュールを含むことができ、適する実行環境、例えばオペレーティングシステム環境などの中で実行することができる。
【0350】
4.1 16S rRNA遺伝子または18S rRNA遺伝子のためのプライマー、プローブ、キットおよび処理システム
本発明は、試料中の1つまたは複数の細菌、酵母生物体または糸状菌を分類および/または同定するために、16S rRNA遺伝子または18S rRNA遺伝子の1つまたは複数の位置にあるSNPを判定するために本明細書に記載される方法において使用することができる、プローブおよびプライマーを提供する。
【0351】
本発明のプライマーおよびプローブは、SNP位置(複数可)を含有する16S rRNA遺伝子または18S rRNA遺伝子(または、16S rRNA分子もしくはそのDNAコピーまたは18S rRNA分子もしくはそのDNAコピー)の少なくとも一部分にハイブリダイズする。例えば、プライマーは1つまたは複数のSNPに隣接している配列にハイブリダイズすることができ、プローブは1つまたは複数のSNPを含む配列にハイブリダイズすることができる。16S rRNA遺伝子または18S rRNA遺伝子の公知の配列に基づいて、本発明の方法で使用するための適当なプライマーおよびプローブを設計することは、当業者の技術の適用範囲内である。
【0352】
細菌種の16S rRNAの中の、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および/または653に対応する位置にあるSNPが分析される本発明の方法のために有益であるプライマーおよびプローブの非限定的な例には、実施例1に記載されるものが含まれる。
【0353】
例えば、273位のSNPを検出するために、例示的なフォワードプライマーには、
CCTCTTGCCATCGGATGTG(配列番号16)が含まれ、例示的なリバースプライマーには、CCAGTGTGGCTGGTCATCCT(配列番号17)、CGATCCGAAAACCTTCTTCACT(配列番号20)、CTATGCATCGTTGCCTTGGTAA(配列番号22)、TGATGTACTATTAACACATCAACCTTCCT(配列番号26)、AACGCTCGGATCTTCCGTATTA(配列番号27)、CGCTCGCCACCTACGTATTAC(配列番号28)、CGTAGTTAGCCGTCCCTTTCTG(配列番号30)、GGAATTCTACCCCCCTCTACGA(配列番号34)、およびGGAATTCTACCCCCCTCTACAAG(配列番号35)が含まれる。
【0354】
378位のSNPを検出するために、例示的なフォワードプライマーには、CCTCTTGCCATCGGATGTG(配列番号16)、CCTACGGGAGGCAGCAGTAG(配列番号18)、およびGGGAGGCAGCAGTAGGGAAT(配列番号19);が含まれ、例示的なリバースプライマーには、CGATCCGAAAACCTTCTTCACT(配列番号20)、CTATGCATCGTTGCCTTGGTAA(配列番号22)、TGATGTACTATTAACACATCAACCTTCCT(配列番号26)、AACGCTCGGATCTTCCGTATTA(配列番号27)、CGCTCGCCACCTACGTATTAC(配列番号28)、CGTAGTTAGCCGTCCCTTTCTG(配列番号30)、GGAATTCTACCCCCCTCTACGA(配列番号34)、およびGGAATTCTACCCCCCTCTACAAG(配列番号35)が含まれる。
【0355】
412位のSNPを検出するために、例示的なフォワードプライマーには、CCTCTTGCCATCGGATGTG(配列番号16)、CCTACGGGAGGCAGCAGTAG(配列番号18)、GGGAGGCAGCAGTAGGGAAT(配列番号19)、およびAAGACGGTCTTGCTGTCACTTATAGA(配列番号21);が含まれ、例示的なリバースプライマーには、CTATGCATCGTTGCCTTGGTAA(配列番号22)、TGATGTACTATTAACACATCAACCTTCCT(配列番号26)、AACGCTCGGATCTTCCGTATTA(配列番号27)、CGCTCGCCACCTACGTATTAC(配列番号28)、CGTAGTTAGCCGTCCCTTTCTG(配列番号30)、GGAATTCTACCCCCCTCTACGA(配列番号34)、およびGGAATTCTACCCCCCTCTACAAG(配列番号35)が含まれる。
【0356】
440位のSNPを検出するために、例示的なフォワードプライマーには、CCTCTTGCCATCGGATGTG(配列番号16)、CCTACGGGAGGCAGCAGTAG(配列番号18)、GGGAGGCAGCAGTAGGGAAT(配列番号19)、AAGACGGTCTTGCTGTCACTTATAGA(配列番号21)、TGCCGCGTGAATGAAGAA(配列番号23)、GCGTGAAGGATGAAGGCTCTA(配列番号24)、およびTGATGAAGGTTTTCGGATCGT(配列番号25);が含まれ、例示的なリバースプライマーには、TGATGTACTATTAACACATCAACCTTCCT(配列番号26)、AACGCTCGGATCTTCCGTATTA(配列番号27)、CGCTCGCCACCTACGTATTAC(配列番号28)、CGTAGTTAGCCGTCCCTTTCTG(配列番号30)、GGAATTCTACCCCCCTCTACGA(配列番号34)、およびGGAATTCTACCCCCCTCTACAAG(配列番号35)が含まれる。
【0357】
488位のSNPを検出するために、例示的なフォワードプライマーには、CCTCTTGCCATCGGATGTG(配列番号16)、CCTACGGGAGGCAGCAGTAG(配列番号18)、GGGAGGCAGCAGTAGGGAAT(配列番号19)、AAGACGGTCTTGCTGTCACTTATAGA(配列番号21)、TGCCGCGTGAATGAAGAA(配列番号23)、GCGTGAAGGATGAAGGCTCTA(配列番号24)、TGATGAAGGTTTTCGGATCGT(配列番号25)、およびGTTGTAAGAGAAGAACGAGTGTGAGAGT(配列番号29);が含まれ、例示的なリバースプライマーには、CGTAGTTAGCCGTCCCTTTCTG(配列番号30)、GGAATTCTACCCCCCTCTACGA(配列番号34)、およびGGAATTCTACCCCCCTCTACAAG(配列番号35)が含まれる。
【0358】
647位および/または653位のSNPを検出するために、例示的なフォワードプライマーには、CCTCTTGCCATCGGATGTG(配列番号16)、CCTACGGGAGGCAGCAGTAG(配列番号18)、GGGAGGCAGCAGTAGGGAAT(配列番号19)、AAGACGGTCTTGCTGTCACTTATAGA(配列番号21)、TGCCGCGTGAATGAAGAA(配列番号23)、GCGTGAAGGATGAAGGCTCTA(配列番号24)、TGATGAAGGTTTTCGGATCGT(配列番号25)、GTTGTAAGAGAAGAACGAGTGTGAGAGT(配列番号29)、GCGGTTTGTTAAGTCAGATGTGAA(配列番号31)、GGTCTGTCAAGTCGGATGTGAA(配列番号32)、およびTCAACCTGGGAACTCATTCGA(配列番号33);が含まれ、例示的なリバースプライマーには、GGAATTCTACCCCCCTCTACGA(配列番号34)、およびGGAATTCTACCCCCCTCTACAAG(配列番号35)が含まれる。
【0359】
同様に、細菌種の16S rRNA遺伝子または16S rRNAの中の、配列番号43に示す16S rRNA遺伝子の位置746、764、771または785(または、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置737、755、762または776)に対応する位置にあるSNPが分析される本発明の方法のために有益であるプライマーおよびプローブの非限定的な例には、表8に記載されるものが含まれる。
【0360】
同様に、細菌種の18S rRNA遺伝子または18S rRNAの中の、配列番号37に示す18S rRNA遺伝子の位置343、371、388、416および467にあるSNPが分析される本発明の方法のために有益であるプライマーおよびプローブの非限定的な例には、表9に記載されるものが含まれる。
【0361】
5.本発明の方法の適用
本発明の方法は、試料、例えば、対象からの試料、または環境試料、例えば土もしくは水の試料、または装置もしくは機器(例えば、医療または手術機器)もしくは作業台の表面からとられる試料の中の細菌、酵母生物体または糸状菌を分類および/または同定するために有益である。そのような分類または同定は、細菌、酵母生物体または糸状菌を取り除くか、根絶するかまたはその数を低減するための処置クールを決定するために次に使用することができる。本発明の方法の任意の2つ以上を組み合わせてもよい。例えば、試料からの核酸は、本発明の方法を使用して16S rRNA遺伝子の中のSNPの存在について分析することができる。これは、グラム陽性細菌かまたはグラム陰性細菌が試料中に存在するか判定するために実行することができる。細菌はさらにグループ分けすることができるか、または細菌の素性を判定するかもしくは2、3の可能性のうちの1つに絞り込むこともできる。例えば、上の開示から明らかになるように、試料中の細菌を分類するかまたはさらに同定するために、配列番号1に示す16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653に対応する位置にあるSNPを調査することができる。
【0362】
クリニック、救急室、一般病棟および集中治療室の臨床医のところに、感染症または疑わしい感染症を有する対象がしばしば診察に訪れる。そのような患者は、異常な体温、増加した心拍数および呼吸数、ならびに異常な白血球数の非診断的臨床徴候をしばしば有する。臨床医は、患者が感染を有するかどうか、感染の重症度、患者を病院に入院させるかどうか(まだ入院していない場合)、感染源、抗生物質を使用するかどうか、もしそうならば抗生物質の種類、経路および用量を決めなければならない。患者における感染の存在は、最も一般的には、患者から試料をとって培養液の中で生物体を増殖させることによって調査されている。生物体が増殖すると、それをグラム染色して同定することができる。しかし、多くの感染患者(>50)では、生物体を培養することが可能でない。同定された生物体がない場合、臨床医は臨床判断およびしばしば組み合わせられる広域抗生物質の使用に頼らなければならない。病原生物体の素性についても感受性についても知識がない広域抗生物質の無差別使用は、患者における抗生物質耐性の発達、抗生物質の濫用および潜在毒性の副作用につながる。血液培養は高感度な方法(1~100cfu/mL)であるが、それは採血試料が生存可能な生物体を含有するときだけであり、常にそうであるとは限らない。
【0363】
したがって、本発明の方法は、対象が感染を有するかどうか、もしそうならば、感染を引き起こしている細菌、酵母生物体または糸状菌の分類に基づいて適当な治療クールを臨床医が決定するのを助けるのに特に有益である。
【0364】
さらに、本発明の方法は、対象から全血をとってから数時間以内のグラム陽性およびグラム陰性生物体の識別を容易にする。本発明の方法は効率的な時間で実行することも可能であり、そのため、数日内ではなく数時間以内にその結果が臨床医に利用可能である。そのような属性は、臨床医が細菌、酵母生物体または糸状菌の存在を鋭敏に検出すること、および治療(例えば、グラム状態に特異的な抗生物質の使用、またはその細菌のさらなるグループ分けもしくは同定)についての情報に基づいた決定をすることを可能にする。これらの改善は、不必要に入院させられる患者数の低減、細菌、酵母生物体および糸状菌、負荷後に調査される感染の重症度(および他の因子)の高感度検出、広域抗生物質/医薬品の使用の低減、広域抗生物質の下の患者時間の低減、抗生物質/医薬品からの毒性の低減、医薬品への耐性(特に抗生物質耐性)の発達の低減をもたらすことができる。
【0365】
本発明は、対象における細菌、酵母生物体または糸状菌による感染の診断、および陽性診断後の感染の管理にも拡張する。本明細書に記載される、16S rRNAまたは18S rRNAの中の1つまたは複数のSNPを分析する方法は、細菌、酵母生物体もしくは糸状菌感染を対象が有するかどうか判定するために、および/または試料中の細菌、酵母生物体もしくは糸状菌の群もしくは種を同定するために使用することができる。本明細書に記載される方法は、細菌をグラム陽性菌またはグラム陰性菌として分類するためにさらに使用することができる。
【0366】
5.1 管理および療法
本発明の方法の結果に基づいて、必要な場合、対象を適切に管理し、療法を投与することができる。例えば、細菌感染症の管理は、例えば、治療的に有効な抗生物質のクールなどの治療剤の投与を含むことができる。
【0367】
一般的に、治療剤は、薬学的に許容される担体と一緒に医薬(または、対象が非ヒト対象である場合は獣医学的)組成物の形で、およびそれらの意図された目的を達成するのに有効な量で投与される。対象に投与される活性化合物の用量は、感染の症状の低減もしくは軽減および/または対象からの細菌の低減もしくは排泄などの有益な応答を対象において経時的に達成するのに十分であるべきである。投与すべき薬学的に活性な化合物(複数可)の量は、治療される対象、例えば、その年齢、性別、体重および一般健康状態に依存してもよい。この点に関しては、投与のための活性化合物(複数可)の正確な量は、開業医の判断に依存する。細菌感染症の治療または予防において投与される活性化合物(複数可)の有効量の決定では、開業医は、感染の重症度、ならびに、炎症、血圧異常、頻脈、呼吸促迫、発熱、悪寒、嘔吐、下痢、皮膚発疹、頭痛、錯乱、筋痛および発作を含む、感染に伴う任意の症状の重症度を評価することができる。いかなる事象においても、当業者は、治療剤および適する治療レジメンの適する投薬量を不相応な実験なしで容易に決定することができる。
【0368】
主要器官への酸素供給を増加させるため、主要器官への血流を増加させるためおよび/または炎症性応答を低減するために、治療剤は補助的(対症的)療法と協調して投与することができる。そのような補助的療法の例示的な例には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、静脈内生理食塩水および酸素が含まれる。
【0369】
本発明の態様を下記項にさらに記載する:
[項1]
試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定、部分的に同定、または分類する方法であって、前記試料からの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、前記試料からの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分を、少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の存在の有無について分析することを含み、
前記細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分の中の前記少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す前記16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にあり;
前記試料中の前記少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌は、前記少なくとも1つのSNPの存在の有無に基づいて同定、部分的に同定、または分類される方法。
[項2]
対象において細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を同定、部分的に同定、分類または診断する方法であって、前記対象からの試料中の細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分における少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の存在の有無を分析することを含み;
前記細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分の中の前記少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す前記16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にあり;
前記16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分、または前記18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分における前記少なくとも1つのSNPの存在の有無は、前記対象において前記細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を同定、部分的に同定、分類または診断するために使用される方法。
[項3]
細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を有する対象を処置する方法であって、
前記対象において前記細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を同定、部分的に同定、分類または診断するために、上記項2に記載の方法によって前記対象において前記細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を同定、部分的に同定、分類または診断すること;
前記対象において前記細菌、酵母生物体または糸状菌の感染を処置するための処置法または処置剤を前記対象に投与すること
を含む方法。
[項4]
前記試料が、喀痰、血液、脳脊髄液または尿を含む生体試料である、上記項1から3のいずれか1項に記載の方法。
[項5]
前記分析工程が、高分解能融解分析、5’ヌクレアーゼ消化、分子ビーコン、オリゴヌクレオチドライゲーション、マイクロアレイ、制限断片長多型、抗体検出方法、直接配列決定または任意のその組合せを使用して前記少なくとも1つのSNPの存在の有無を判定することを含む、上記項1から4のいずれか1項に記載の方法。
[項6]
前記少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌が処置剤に抵抗性であるかどうか判定する工程をさらに含む、上記項1から5のいずれか1項に記載の方法。
[項7]
試料中の少なくとも1つの細菌を同定する方法であって、前記試料からの核酸を、細菌16S rRNA遺伝子の中の、配列番号1に示す前記16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647および653の少なくとも1つに対応する位置にある少なくとも1つのSNPについて分析することを含み、前記少なくとも1つの細菌は前記少なくとも1つのSNPの存在に基づいて同定される方法。
[項8]
前記細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分の中の前記少なくとも1つのSNPが、配列番号1に示す前記16S rRNA遺伝子の位置737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にある、上記項1から6のいずれか1項に記載の方法。
[項9]
前記酵母生物体または糸状菌の18S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の前記少なくとも一部分の中の前記少なくとも1つのSNPが、配列番号37に示す前記18S rRNA遺伝子または遺伝子生成物の位置343、371、388、416および467の少なくとも1つに対応する位置にある、上記項1から6のいずれか1項に記載の方法。
[項10]
前記試料からの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、前記試料からの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分を、
前記細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分の中の、配列番号1に示す前記16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも4つに対応する位置にある一塩基多型;または
前記酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分の中の、配列番号37に示す前記18S rRNA遺伝子の位置343、371、388、416および467に対応する位置にある一塩基多型
の存在の有無について分析することを含む、上記項1から6のいずれか1項に記載の方法。
[項11]
前記細菌が、または前記細菌感染症が、Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniae;Streptococcus pyogenes;Listeria monocytogenes;Clostridium perfringens;Corynebacterium jeikeium;Bacteroides fragilis;Neisseria meningitides;Haemophilus influenzae;Salmonella sp.およびStaphylococcus epidermidisからなる群から選択される少なくとも1つであるか、またはそれによって引き起こされる、上記項1から6のいずれか1項に記載の方法。
[項12]
前記細菌が、または前記細菌感染症が、Bacillus anthracis、Clostridium botulinum、Yersinia pestis、Francisella tularensis、Vibrio choleraeおよびBurkholderia pseudomalleiからなる群から選択される少なくとも1つであるか、またはそれによって引き起こされる、上記項1から6のいずれか1項に記載の方法。
[項13]
前記酵母生物体または糸状菌が、Candida albicans、Candida tropicalis、Candida parapsilosis、Candida glabrata、Fusarium sp.、Aspergillus fumigatusおよびCryptococcus neoformansからなる群から選択される少なくとも1つである、上記項1から6のいずれか1項に記載の方法。
[項14]
対象において感染症を同定、部分的に同定、分類または診断する方法であって、前記感染症が細菌、酵母生物体または糸状菌の感染であり、前記方法が、前記対象から得た生体試料を、少なくとも1つの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分、または少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の特性について検査することを含み、前記検査が、前記少なくとも1つの細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分、または前記少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を検出することを含み、
前記細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物もしくはその一部分の中の前記少なくとも1つのSNPが、配列番号1に示す前記16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にあり;
前記試料中の前記少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌が、前記少なくとも1つのSNPの存在の有無に基づいて同定、部分的に同定、分類または診断される方法。
[項15]
試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定、部分的に同定、または分類することが可能である少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールまたは試薬であって、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を結合すること、検出することまたはその存在の有無を同定することが可能であり、
前記細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分の中の前記少なくとも1つのSNPが、配列番号1に示す前記16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にある、プローブ、ツールまたは試薬。
[項16]
配列番号16~35および53~57の少なくとも1つに示すヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、上記項15に記載の少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールまたは試薬。
[項17]
試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定、部分的に同定、または分類する方法であって、
上記項15または上記項16に記載の少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールまたは試薬を前記試料と合わせること;および
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)の存在の有無に基づいて、前記少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を同定、部分的に同定、または分類することを含み、
前記細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分の中の前記少なくとも1つのSNPが、配列番号1に示す前記16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にある、方法。
[項18]
上記項15または上記項16に記載の1つを超える前記単離されたプローブ、ツールまたは試薬を含むアレイ。
[項19]
固体基材および上記項15または上記項16に記載の少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールまたは試薬を含むバイオチップ。
[項20]
試料中の少なくとも1つの細菌または少なくとも1つの酵母生物体もしくは糸状菌を分類または同定するためのキットまたはアッセイであって、上記項15もしくは上記項16に記載の少なくとも1つのプローブ、ツールもしくは試薬;上記項18に記載のアレイ;および/または上記項19に記載のバイオチップを含むキットまたはアッセイ。
[項21]
細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の、試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌を分類、同定、または部分的に同定するための指標として使用するための少なくとも1つの一塩基多型(SNP)であって、
前記細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の前記少なくとも一部分の中の前記少なくとも1つのSNPは、配列番号1に示す前記16S rRNA遺伝子の位置273、378、412、440、488、647、653、737、755、762および776の少なくとも1つに対応する位置にある、一塩基多型(SNP)。
[項22]
上記項1に記載の、細菌16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または、酵母生物体もしくは糸状菌の18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)、または、上記項15もしくは上記項16に記載の少なくとも1つの単離されたプローブ、ツールもしくは試薬の、試料中の少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌の同定、部分的同定、または分類における使用であって、前記少なくとも1つの細菌、酵母生物体または糸状菌が、前記試料からの前記16S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分、または前記18S rRNA遺伝子もしくは遺伝子生成物の少なくとも一部分の中の少なくとも1つのSNPの存在の有無に基づいて同定、部分的に同定、または分類される使用。
この明細書全体で「一実施形態」または「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、この明細書全体の様々な場所における語句「一実施形態では」または「ある実施形態では」の出現は、同じ実施形態を必ずしも全て指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の組合せの中で任意の適する方法で組み合わせることができる。
【0370】
法規に従って、本発明は、構造的または方法論的特徴に多かれ少なかれ特異的な言葉で記載された。本明細書に記載される手段が本発明の実行の好ましい形態を含むので、本発明は、示されるかまたは記載される特異的特徴に限定されないことを理解すべきである。したがって、本発明は、当業者によって適切に解釈される添付の請求項(あるならば)の正しい範囲の中のその形態または改変形のいずれかの形で請求される。
【0371】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願および刊行物の開示は、ここに参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0372】
本発明が容易に理解され、実際に実行されるように、特定の好ましい実施形態が以下の非限定的な実施例を通して記載される。
【実施例1】
【0373】
この実験の目的は、本発明の16S rRNA SNP-HRMアッセイを使用して敗血症と診断された患者から頻繁に単離される最も多発している細菌種のうちの15種を区別することであった。
【0374】
実験手順
合計で、以下の15細菌種を試験した:Acinetobacter calcoaceticus;Enterobacter aerogenes;Enterobacter cloacae;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;Escherichia coli;Klebsiella pneumoniae;Proteus mirabilis;Pseudomonas aeruginosa;Serratia marcescens;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Streptococcus agalactiae;Streptococcus pneumoniaeおよびStreptococcus pyogenes。
【0375】
これらの細菌種は37℃で一晩、ブレインハート・インフュージョンブロスで培養し、その後、QIAgen DNeasy血液および組織キット(Qiagen、Australia)を使用して、各分離株からゲノムDNAを抽出した。
【0376】
16S rDNA-SNPプライマー(配列番号16~35、Sigma Aldrich、Australia、によって作製された)が、以下のように命名された7つのSNPを包含する領域を増幅するように設計された:配列番号1に示す16S rRNA遺伝子のSNP273、SNP378、SNP412、SNP440、SNP488、SNP647およびSNP653。PCR生成物のサイズは、79bpから96bpの範囲内であった。
【0377】
15細菌種を区別するために、リアルタイムPCRおよびその後のHRM分析を使用した。リアルタイムPCR HRM方法は、以下の通りであった:1μlの抽出したDNA(1~3ng)を、10μlの2×SYBRグリーンPCR Mastermix(Invitrogen、Australia)および8pmolの各プライマーを含有する19μlの反応mastermixに加えた。これらの反応のための温度サイクルは、以下の通りであった:50℃で2分間、95℃で2分間、その後、95℃で15秒、52℃で20秒および72℃で35秒、72℃で2分間の保持、50℃で20秒の保持のサイクルを40サイクル、HRM:0.05℃ずつ上昇する65℃から95℃への傾斜(Rotor-Gene 6000、Qiagen、Australia)。
【0378】
HRMデータを複数の方法で分析するために、Rotor-Gene 6000ソフトウェア(バージョン1.7.34または1.7.87)を使用した。正規化された生の融解曲線は、蛍光の減少を温度上昇に対して示し、差曲線は、ユーザー定義の曲線をベースライン(すなわち、x軸)として示すものであるが、他の正規化された曲線をそのベースラインに対して示す。差グラフを使用して融解曲線を「同じ」または「異なる」と呼ぶための判定基準が発明者および共同研究者によって以前に開発され、公開された(例えば、Stephens, A.J., et al. 2008;Merchant-Patel, S., et al. 2010を参照する)。
【0379】
HRM曲線グラフで試料を区別することができる2つの方法がある。融解曲線の形状は曲線の形状の詳細を示し、曲線シフトは他の曲線からの曲線の熱(温度)オフセットを示す。
【0380】
上で一般的に記載されるように、このソフトウェアは、正規化された融解曲線としてまたは差曲線として使用するHRM融解曲線分析を可能にする。正規化曲線分析は、解釈および分析を助けるために、全てのHRM曲線の同じ開始および終了蛍光シグナルレベルでの比較を可能にする。差曲線分析は、各試料および所与の対照の融解曲線の間の差を示す。
【0381】
この実験では、試験した各細菌種のためにHRM曲線を識別するために、形状およびシフトの両アプローチを使用した。各それぞれの細菌種のために融点のシフトを判定するために、0.2℃の融点差を各細菌種の融解曲線間の有意差と考えた。
【0382】
細菌種の間の形状差を判定するために、差曲線分析を使用した。>5の正規化された蛍光単位の幅の差は、異なる細菌種の融解曲線がコンパレーター種と異なることを示す。したがって、曲線形状のこれらの差は、各それぞれの細菌種のDNA配列における差を示す。
【0383】
結果
図2~11は、この実施例で試験した15細菌種を区別するために使用した、正規化されたおよび差の融解曲線グラフを示す。
【0384】
15細菌種の各々は、Rotor-Gene 6000ソフトウェア(バージョン1.7.34または1.7.87)のHRM分析設定において、種特異的遺伝子型で指定した。細菌種差曲線の比較のために、「キャリブレータ」または「参照」(
図3に示すグラフのY軸の上で「0」で示す)としてEscherichia coliを使用した。
図3に示すように、他の14細菌種の全ては、Escherichia coliの「0」の線からかなり異なる曲線を示した。種差別化の別の例は
図5に示し、ここで「キャリブレータ」または「参照」(Y軸上の「0」の位置)としてStaphylococcus aureusが選択され、示すようにStaphylococcus epidermidisは完全に別個の曲線を有する。
【0385】
尿および血漿中の細菌の融解曲線特異性を、表11に示す。
【0386】
【0387】
考察
この実施例は、敗血症などの生命にかかわる疾患を引き起こすことが知られている15の異なる細菌種を区別するために7つの高度識別性SNPだけを適用することの有用性を実証する。結果は、本発明の方法が高度に特異的で迅速なことも示し、その両方はDNA診断アッセイの重要な必要条件である。この方法は、高度識別性SNPを包含するPCR生成物のDNA融解曲線に基づいて、2つの分離株が同じであるかまたは異なるかを正確に判定する。これらの遺伝子標的を調べることは、このアプローチが「ラボオンチップ」装置および専用の完全自動化リアルタイムPCR機器などの新興技術への適合に特に馴化し易いことを意味する。マイクロ流体力学における急速に進歩する技術革新と組み合わせると、本発明の方法は、「ポイント・オブ・ケア」の診断に適する装置への転換に適する。
【実施例2】
【0388】
本発明の有用性を実証するために、200個の血液培養陽性患者試料を、標準の臨床微生物学および本発明の方法の両方によって調査した。
【0389】
標準の臨床微生物学試験は、BacTAlertシステムを利用し、続いて細菌種同定のためのMALDI生物型特定方法によって、ルーチンの血液培養手順によって実験室で実行した。これは、BacTAlert血液培養ボトルを自動連続モニタリングインキュベーションに入れ、5~7日間インキュベートすることを含んだ。血液培養ボトルが陽性であることがわかると(最低12時間のインキュベーション)、ボトルをBacTAlert機器から取り出し、増殖培地のアリコートを取り出して細菌培養寒天プレートの上に継代培養した。アガープレートを37℃で少なくとも4時間、または可視的増殖が出現するまでインキュベートする。その後、単一の細菌コロニーを標的プレートの上に置き、マトリックス溶液を加える。プレートを生物型特定機器に挿入し、MALDI-TOFスペクトルをソフトウェアによって生成させる。細菌の同定を提供するために、このスペクトルを参照ライブラリーと比べる。この方法のための合計時間は、およそ16~18時間である。標準の臨床微生物学試験は、Pathology Queenslandによって実行された。
【0390】
本発明によって使用する方法においては、BacTAlert血液培養機での5日間のインキュベーションの後に100個の血液培養陰性試料から血液培養液(1mL)を採集し、抽出まで4℃で保存した。血液培養液(1mL)は、Pathology QueenslandのDiagnostic Microbiology Departmentのスタッフによって200個の血液培養陽性試料からも採集され、DNA抽出まで4℃で保存された。1mLの試料からの宿主DNAの除去、病原体富化およびDNA抽出を可能にするMolYsis(商標)コンプリート5キット(Molzym Life Science、Germany)を使用して、全ての試料(血液培養陰性および血液培養陽性)から微生物DNAを単離した。
【0391】
全部で300個のDNA抽出物を、以下の通りにリアルタイムPCRフォーマットを使用した試験に付した:1マイクロリットルの抽出したDNA(1~3ng)を、10μlの2×SYBRグリーンPCR Mastermix(Life Technologies、Australia)および8pmolの各プライマーを含有する19μlの反応mastermixに加えた。これらの反応のための温度サイクルは、以下の通りだった:50℃で2分間、95℃で2分間、その後、95℃で15秒、52℃で20秒および72℃で35秒、72℃で2分間の保持、50℃で20秒の保持のサイクルを40サイクル、HRM:HRM:0.05℃ずつ上昇する65℃から95℃への傾斜(RotorGeneQ、Qiagen、Australia)。適切な対照(鋳型なし(NTC)および試験した各細菌種のための細菌参照DNAからなる陽性対照)を含め、全ての試料は2反復で実行した。結果までの時間は、±3.5時間であると記録された。
【0392】
結果を表にして、試験の終わりにPathology Queenslandから得た血液培養微生物学結果と関連付けた。
【0393】
結果
試験の結果を表12に示す。
【0394】
【0395】
好都合にも、本発明の方法は、臨床微生物学結果と比較したとき、99%の特異性を得ることができた(しかし、臨床微生物学および本発明の方法が異なる結果を得た2つの試料については、どちらの方法が誤った結果をもたらしたか不明である)。本発明の方法は、約3.5時間以内に、かつ、患者試料の最小限の処理で結果を得ることができた。対照的に、臨床微生物学結果は患者試料のより多大な処理を必要とし、得るのに約16~18時間を要した。
【0396】
引用文献
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