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特許7377549改善された座席、人間工学椅子、又は車椅子の座席アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】改善された座席、人間工学椅子、又は車椅子の座席アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/025 20060101AFI20231102BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20231102BHJP
   A47C 3/026 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A47C3/025
A61G5/12 701
A47C3/026
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020557391
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2019050443
(87)【国際公開番号】W WO2019137955
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】18150823.5
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520250992
【氏名又は名称】スーパーシーティング ベーフェーベーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ヘイデン,バルト
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0103221(US,A1)
【文献】米国特許第03897104(US,A)
【文献】欧州特許第00296578(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/025
A61G 5/12
A47C 3/026
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基部ユニット(101)と、シートユニット(102)と、背面支持ユニット(103)とを備える座席アセンブリ(100)であって、
前記シートユニット(102)及び前記背面支持ユニット(103)の双方は、股関節の高さにおいて前記シート基部ユニット(101)に対する共通の旋回軸(P)を有し、
前記シートユニット(102)及び前記背面支持ユニット(103)は、股関節の高さにおいて一対で対向し、前記座席アセンブリ(100)の各側で前記共通の旋回軸(P)上にある旋回点(104)によって、前記シート基部ユニット(101)に接続され、
ロックおよび開放のいずれか一方が可能であり、前記シート基部ユニット(101)、前記シートユニット(102)および前記背面支持ユニット(103)の全てが互いに接続された状態で、3つのタイプの動き制御手段を更に備え、
前記シートユニット(102)および前記背面支持ユニット(103)の両方を前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させる旋回運動を制御するか、もしくは前記シートユニット(102)のみを前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させる旋回運動を制御する第1のタイプの動き制御手段によるか、
前記背面支持ユニット(103)のみを前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させる旋回運動を制御する第2のタイプの動き制御手段によるか、
前記背面支持ユニット(103)が固定位置にある状態で、前記シートユニット(102)を前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させる旋回運動を制御する第3のタイプの動き制御手段により、
前記座席アセンブリ(100)に及ぼされる力により旋回運動が可能になる、座席アセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の座席アセンブリ(100)であって、前記動き制御手段は、ガススプリング(105、105'、106、106'、107)、ダンパー、又はアクチュエーターである、座席アセンブリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の座席アセンブリ(100)であって、前記動き制御手段の少なくとも1つの端部は、前記一対の対向する旋回点(104)のそれぞれの半径上に又はそれに平行して位置する、座席アセンブリ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の座席アセンブリ(100)であって、前記シートユニット(102)および前記背面支持ユニット(103)の両方を前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させる前記旋回運動を制御するか、もしくは前記シートユニット(102)のみを前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させる前記旋回運動を更に制御するために、前記シート基部ユニット(101)においてガイドレールを備える、座席アセンブリ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の座席アセンブリ(100)であって、第1のタイプの動き制御手段によって制御される、前記シートユニット(102)及び前記背面支持ユニット(103)の両方を前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させる前記旋回運動は、独立して行うことができ、又は前記シートユニット(102)及び前記背面支持ユニット(103)は、組み合わせて旋回することができ、又は一時的に旋回不能とすることができる、座席アセンブリ。
【請求項6】
請求項5に記載の座席アセンブリ(100)であって、一時的に旋回不能となる前記シートユニット(102)及び前記背面支持ユニット(103)は、前記動き制御手段のうちの1つをロックすることによって制御される、座席アセンブリ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の座席アセンブリ(100)であって、前記シートユニット(102)及び前記背面支持ユニット(103)は、前記シート基部ユニット(101)に対して前記共通の旋回軸(P)の周りに前後に旋回可能である、座席アセンブリ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の座席アセンブリ(100)であって、前記背面支持ユニット(103)は、法線軸(N)に対して角度(α)を有する背もたれ(108)を備える、座席アセンブリ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の座席アセンブリ(100)であって、股関節の高さは、前記シートユニット(102)の3 cm~20 cm上方、又は前記シートユニット(102)の5 cm~15 cm上方の範囲である、座席アセンブリ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の座席アセンブリ(100)の旋回機構の使用方法であって、(i)前記シートユニット(102)及び前記背面支持ユニット(103)の双方を、第1の動き制御手段によって前記シート基部ユニット(101)に対してともに前後に旋回させることと、(ii)前記シートユニット(102)のみを、前記第1の動き制御手段によって前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させることと、(iii)前記背面支持ユニット(103)のみを、第2の動き制御手段によって前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させることと、を含む旋回運動を可能にする、旋回機構の使用方法。
【請求項11】
(iv)第3の動き制御手段によって、前記背面支持ユニット(103)が固定位置にある状態で、前記シートユニット(102)を前記シート基部ユニット(101)に対して前後に旋回させることを更に含む、請求項10に記載の旋回機構の使用方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の座席アセンブリ(100)を備える、人間工学椅子。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の座席アセンブリ(100)を備える、車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、座席システムの座席アセンブリに関し、特に、座席の快適性及び機能を向上させ、旋回運動のような人体の生理学的運動、生体力学、及び体格(physiognomy)に基づく疲労を低減させる人間工学椅子又は車椅子の座席アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
標準的な椅子及び車椅子は、背面支持部と座席構造体との間が90度であるか又は垂直に近く、そのような構造体に座る場合、そのような椅子又は車椅子に座る人が、過度に垂直になるか、前方に傾きすぎて体が倒れるか、又はそうでなければ、人が後方にもたれて、過剰に前方に滑り出ることで、前方にずり下がった位置に移動することから、不快感及び疲労がもたらされる。しかしながら、背面支持部及び座席を、可変の傾斜角及びヒンジ点を介して位置を調節可能にする一方で、座席ユニットを、そのようなヒンジ点を介して上下に傾斜させることができることで改善が見られる。しかしながら、座席の不快感は、そのような改善にもかかわらず依然として存在し、その間、人体は、不自然な、多くの場合、緊張位置にあることを依然として強いられる。そのような傾斜可能な背面支持部の場合、人の体は前方に押されるか又は伸び広がる。現在の傾斜シートは、筋肉及び皮膚組織に不可避の負荷及び応力をもたらし続けている。したがって、特に人体の自然な動き及び構造的メカニズムに従った更なる改善が必要とされる。
【0003】
一般的に座席システムの分野において、又は人間工学椅子、中でも例えば事務椅子に関して同等の意見及び/又は結論をもたらすことができるが、当該技術分野に係る可動であり得る又は更には2部分からなる背面支持部を設ける場合、円滑でない姿勢を持続的にとり続けることになるため、座席の快適性に関して十分に満足できるものではない。
【0004】
特に人間工学目的及び/又は車椅子用途で全体的に改善された座席システムの、改善された座席アセンブリを提供する必要があることが明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特に、可能であれば治療目的をも有する人間工学椅子又は車椅子の、改善された座席アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様において、基礎フレーム又はシート基部ユニットと、シートユニットと、背面支持ユニットとを備える座席アセンブリであって、シートユニット及び背面支持ユニットの双方が、股関節又は転子点の高さにおいてシート基部ユニットに対する共通の旋回軸を有する、座席アセンブリが提供される。この共通の旋回軸は、例えば、基礎フレームの床プラットフォーム又は地面に対して平行であり、例えば、座席アセンブリの側面(例えば、肘掛けによって画定される)に対して垂直である。シートユニット自体は、シートフレームと、シート又は着座部とを備えることができ、一方、背面支持ユニットも、例えば、背面支持フレーム及び背もたれが、基礎床プラットフォーム又は地面に対して垂直であるものとして規定された法線軸に対して或る角度をなす2部分構造である。基礎フレーム又はシート基部ユニットは、用途に応じて、例えばプラットフォーム若しくはT字形構造のようになっており、又は更には車椅子の場合、車輪に設けられる等の、異なるアーキテクチャとすることができる。シートユニット及び背面支持ユニットは、基礎フレーム又はシート基部ユニットに取り付けられる。さらに、シートユニット及び背面支持ユニットは、股関節の高さにおける、及び座席アセンブリの各肘掛け側の共通の旋回軸に位置する一対の対向する旋回点によって、フレーム又はシート基部ユニットに接続することができる。股関節の高さは、シートユニットの3 cm~20 cm上方、好ましくはシートユニットの5 cm~15 cm上方の範囲とすることができる。さらに、この股関節の高さは、シートの背面から10 cm~35 cm、好ましくは15 cm~30 cmの距離の範囲とすることができる。一実施形態によれば、シートユニット及び背面支持ユニットは、共通の旋回軸の周りにフレーム又はシート基部ユニットに対して前後に旋回可能である。
【0007】
座席アセンブリは、全てのユニットを互いに接続しながら、シートユニット及び/又は上記背面支持ユニットの、フレーム又はシート基部ユニットに対する旋回運動を制御する動き制御手段を更に備えることができ、座席アセンブリに及ぼされる力によって、旋回運動が可能になる。概して、この力は、着座中に生じるが、別様に、例えば、何者かが椅子を押すか、又は座席アセンブリに自動操作及び制御機構が設けられている場合、(遠隔)制御ボタンによって力を生成することも可能である。換言すれば、人間工学椅子又は車椅子は、力が必ずしも人間の働きかけ(のみ)によって生じるわけでなく、(一部)自動的に実行することができるように動力付きとすることができる。力のタイプ及び量に応じて、旋回運動が異なる可能性がある。例えば、背面支持部のみを傾斜させる、又はシートのみを上下に動かす、又は座席アセンブリ構造全体を旋回させる際に、いくつかの旋回運動が可能である。1つ以上の旋回運動を可能にするか又は固定する、及び/又は座席アセンブリユニットを互いに固定若しくは固定解除するために、動き制御手段を開放(解放)又はロックすることができる。例えば、ユニットを固定する又は取り付ける場合、これらのユニットは、独立して更に動かすのではなく、1つの単一の実体としてともに旋回する。動き制御手段は、例えば、ガススプリング、ダンパー、又はアクチュエーター、例えば空気式シリンダー等である。さらに、動き制御手段は、純粋に機械的であるか又は電気制御することができる。動き制御手段は、半開放又は半ロックすることもでき、すなわち、動的制御を見越すことができ、したがって、例として、例えば部分的に緩衝されるものとして設置又は制御される可変の緩衝体を備えるアクチュエーターを、旋回運動を制御するのに用いることができる。一実施形態によれば、アクチュエーターは、異なる抵抗を有する緩衝及び停止機能が設けられたガススプリングである。さらに、アクチュエーターは、電気制御することができる。一実施形態によれば、アクチュエーターは、例えばポリマー等の変形可能な材料から作製される。一実施形態において、動き制御手段の少なくとも1つの端部は、一対の対向する旋回点のそれぞれの半径上又はそれに平行して位置する。この半径は、股関節又は転子点に中心を有する円の半径として規定することもできる。
【0008】
シートユニット及び上記背面支持ユニットの旋回運動は、独立して行うことができ、又はこれらのユニットは、組み合わせて旋回させることができる。さらに、シートユニット及び背面支持ユニットの一方又は双方は、一時的に旋回不能にすることができ、これは、動き制御手段のうちの1つをロックすることによって制御することができる。一実施形態によれば、共通の旋回軸の周りのそのような旋回運動は、現実の、すなわち実際の運動が旋回軸上の旋回点において行われるものとして解釈することができる。しかしながら、別の実施形態によれば、この旋回運動は、垂直方向に達成することもでき、すなわち、動き制御手段は、シートユニット及び背面(back)支持ユニットの旋回運動を可能にするように構成される。旋回中心は、股関節又は転子点によって規定され、例えば、円の中心が股関節又は転子点によって規定される円形ガイドレールにおいて実際の運動が行われる。したがって、座席アセンブリは、例えば、旋回運動を更に制御するために、基礎フレーム又はシート基部ユニットに埋め込まれたガイドレールを更に備えることができる。
【0009】
本発明の第2の態様において、(i)シートユニット及び背面支持ユニットの双方を、第1の動き制御手段によってフレーム又はシート基部ユニットに対してともに前後に旋回させるステップと、(ii)シートユニットのみを、第1の動き制御手段によってフレーム又はシート基部ユニットに対して前後に旋回させるステップと、(iii)背面支持ユニットのみを、第2の動き制御手段によってフレーム又はシート基部ユニットに対して前後に旋回させるステップとを含む、本発明の第1の態様に係る座席アセンブリの旋回機構が提供される。上述したステップは、この順序で行っても異なる順序でも行ってもよい。実際、常に特定の順序である必要はなく、ステップの全てが、異なる時点で及び複数回、ランダムに行われてもよい。ステップのうちのいくつかは、同時に行うか、又はいくらか重複することも更に可能である。一実施形態によれば、旋回機構は、(iv)第3の動き制御手段によって、背面支持ユニットが固定位置にある状態で、シートユニットをフレーム又はシート基部ユニットに対して前後に旋回させるステップを更に含むことができる。
【0010】
本発明の第3の態様において、本発明の第1の態様に係る座席アセンブリを備える人間工学椅子が提供される。例えば、車のシート等の自動車用途、並びに事務椅子、又は作業用椅子、又は家具分野のスツール、オフィス設備及び/又は作業環境インフラにも言及することができる。スツール又は丸椅子(tabouret)の場合、背面支持ユニットが存在しなくてもよいことが留意される。一実施形態によれば、シートユニットには、もたらされる動きに従って形状を変える又は調節する変形可能なカバー、シート、又は布地が設けられる。このように、シートが座っている人により良好に接続し、すなわち圧力点が更に低減される一方で、更なる座席の快適性をもたらすことができる。一例として、発泡材料又は変形可能なエラストマーをそのようなシートカバーに用いることができる。
【0011】
本発明の第4の態様において、本発明の第1の態様に係る座席アセンブリを備える車椅子が提供される。車輪及び軸は、本発明の座席アセンブリの特徴に従って特定の設計及び調節が必要であるが、これらの車輪及び軸は、本発明の本質的な部分をなさないことが留意される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明に係る座席アセンブリの機能原理の一実施形態の概略図である。
図1B】本発明に係る座席アセンブリの機能原理の別の実施形態の概略図である。
図1C】本発明に係る人間工学椅子の設計の一部の一実施形態の図である。
図1D】本発明に係る人間工学椅子の原型の一実施形態の図である。
図1E】本発明に係る人間工学設計の椅子の一実施形態の図である。
図2】背面支持フレームの他のアーキテクチャを表す、図1Aの座席アセンブリの機能原理の代替的な実施形態の図である。
図3】(a)本発明に係る、座席アセンブリの背面支持フレームを股関節に仮想的に接続する一実施形態を示す図、及び(b)本発明に係る、座席アセンブリのシートフレームを股関節に仮想的に接続する一実施形態を示す図である。
図4】本発明に係るガイドレールを備える座席アセンブリの一実施形態の図である。
図5】(a)本発明に係る、座席アセンブリのガススプリングの設置の一実施形態を示す図、及び(b)本発明に係る、座席アセンブリのシートユニットを股関節に仮想的に接続する回転ロッドと組み合わせた、座席アセンブリのガススプリングの一実施形態の図である。
図6】可能な動きを別個に示す(a、b、c)又は全てまとめて示す(d)、本発明に係る車椅子の一実施形態の概略図である。
図7】(a)背面斜視図及び(b)正面斜視図で与えられた、本発明に係る座席アセンブリを備える車椅子の一実施形態の図である。
図8】本発明によって規定されるシートと骨盤との角度を明確にするために、(a)後方にもたれている人又は(b)真っ直ぐに座っている人を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の原点は、人体の関節運動(hinges)及び回転を座席システムにおける旋回運動に変換し、最終的に、特に人間工学を目的とした動的及び革新的な椅子又は一般的に座席アセンブリを創出することに関する。本発明に係る改善された座席アセンブリを用いることで、圧力点、皮膚の完全性(skin integrity)の問題、筋肉の阻害、体の滑り、剪断力、並びに緊張及び非機能姿勢が低減されるか又は更には排除される。さらに、本発明は、そのような人間工学及び体格システムを、適切に設計された(車)椅子に転用する際に要求され、全ての機能が、美観的に優れた見た目で、外観はシンプルであるがかなり精緻で非常に実用的なモデルに統合されている。使用者及び環境の双方を満足させる解決策が提供される。
【0014】
図1Aでは、本発明に係る座席アセンブリ100の機能原理の一実施形態が概略的に示されている。ここで示されている座席アセンブリ100は、基礎フレーム又はシート基部ユニット101を備え、その上に、シートユニット102及び背面支持ユニット103が取り付けられる。図1Aにおける基礎フレーム101は、床115に対して平行な長さLを有し、いわゆる水平に設置された状態で位置決めされる。シートユニット102自体は、シート又は着座部122と、シートフレーム120とから構成され、一方、背面支持ユニット103は、背面支持フレーム110に取り付けられた背もたれ108を備える。シートフレーム120及び背面支持フレーム110の双方は、図の面、すなわち図1Aの面に対して垂直な軸P上にある股関節又は転子点に接続される。股関節又は転子点は、股関節の高さ(高さhとも称する)にある旋回点である。この高さhは、変動することができ、例えば、50 cm~60 cmの範囲又は約55 cmである。さらに、シートユニット102及び背面支持ユニット103の双方は、例えば、ガススプリング若しくはダンパー、又はアクチュエーター等の動き制御手段111、112、113、114に接続される。この用語が示唆するように、これらの動き制御手段111、112、113、114は、座席アセンブリ100の主な部分間の動きを制御するために設けられる。より詳細には、第1のタイプの動き制御手段111、112が、着座部122を基礎フレーム101に接続し、手段111を介した前後の旋回運動と、手段112を介した前後の旋回運動とを可能にすることを示している。したがって、動き制御手段111、112は、シートユニット102の前後の傾斜を制御する。第1のタイプの動き制御手段111、112は、ロック又は開放することができる。ロック時、シート基部位置又は着座部122の位置は、固定されたままである。開放時、シート基部位置又は着座部122の位置は、変更することができるか、又は、使用者、すなわち座席アセンブリ100に座っている人の動き及び/又は筋緊張及び/又は位置に適合することができる。動き制御手段111、112は、対にして、すなわち座席アセンブリ100の片側又は各側に1つの部品を有して設けることができる。これは、図1Cのガススプリング105、105'、106、106'、すなわち第1の対105、105'及び第2の対106、106'を参照することでよりよく示される。シートユニット102と背面支持ユニット103との間の第2のタイプの手段113は、背面支持ユニット103の動作を制御し、より詳細には、背もたれ108の後方へのリクライニング及び前後の旋回を制御する。第2のタイプの動き制御手段113も、ロック又は開放することができる。ロック時、背もたれ108の位置は、固定されたままである。開放時、背もたれ108の位置は、変更することができるか、又は、使用者、すなわちシートに座っている人の動き及び/又は筋緊張及び/又は位置に適合することができる。背面支持ユニット103と基礎フレーム101との間の第3のタイプの手段114は、可変のシート傾斜を維持しながら背面支持ユニット103の固定を制御する、すなわち、背面支持ユニット103に対して固定されたままでシートユニット102の旋回運動を制御するために設けられる。ここでも、第3のタイプの動き制御手段114は、ロック又は開放することができる。ロック時、背もたれ108の位置は固定されたままでありながら、開放した第2のタイプの動き制御手段113、及びシートユニット102の位置を変化させる第1のタイプの動き制御手段112、111(開放又はロック)の変化によって、シートユニット102の位置を独立して変化させることができる。開放時、背面支持ユニット103及びシートユニット102の動きは、シートユニット102及び背面支持ユニット103をともに変化させる(空間的に傾斜させる)ように、第2のタイプの動き制御手段113がロックされ、第1のタイプの動き制御手段112、111が開放又はロックされた状態で、シート及び背面支持部に空間的傾斜を与えるのと並行して生じることができる。
【0015】
図1Aに示されているように、シートユニット102又は着座部122は、特に、水平又は着座セクション122Aと、垂直又は背面セクション122Bとから構成される。換言すれば、シートユニット102は、骨盤領域を含む着座部を包含する。特に、本発明の一実施形態に係るシート及び骨盤支持部を備えるシートユニット102を参照すると、アクチュエーターによる制御の有無にかかわらず、例えば、ベルクロテープ(例えば、車椅子の場合)又は別の機構を用いて、図8に示されているシートと骨盤の方向との間の角度として規定されたシートと骨盤との角度を調整することが可能である。図8において、シートと骨盤との角度は、2本の直線と、その間を接続する楕円形ヒンジによって示されている。図8の(a)では、人が後方にもたれており、したがって、シートと骨盤との角度は90度を超える。一方、図8の(b)では、人が真っ直ぐに座っており、したがって、シートと骨盤との角度は約90度である。いくつかの状況において、(車椅子)シートの使用者のシートと骨盤との角度は、固定されているか又は調整が制限される場合があり、したがって、調整を可能にすることを必要とする場合がある。例えば、これは、シートアセンブリフレーム上でブラケットを摺動させ、骨盤の動きに従うことができるように(車椅子)シート上に設けられたベルクロテープの張力を調整することによって可能になる。さらに、これは、(図8における楕円形ヒンジの高さにおける)角度を調整する別の機構によって行うことができ、アクチュエーターによって行うこともできる。背面支持ユニット103は、腰側及び背側領域をカバーする。したがって、解剖学的運動軸の周りの分割がもたらされ、これについては、以下に更に説明される。本発明によれば、座席アセンブリは、特定の部分又はセグメントに分割することができ、十分に選択されたセグメントは、座席アセンブリの正しい特定の機能を行う。一実施形態によれば、以下の部分若しくはセグメント、そのいくつかの要素、又はそのような要素の組合せが、本発明に係る座席アセンブリのために特に選択される。
・シートユニット102の、水平シートとして画定することができる着座部122A、及び骨盤の背面の高さにのみ背面セクションとして画定することができる骨盤部分122B。
・骨盤の背面の上の背面セクションとして画定される背面支持ユニット103。
【0016】
さらに、着座部122A及び骨盤部分122Bを備えるシートユニット102は、以下のように更に分割することができる。
・背面セクションのうち、背面セクション又は骨盤部分122Bを含む背面セクションからシートの約1/3の距離に位置する着座ノブ160又は坐骨結節までのみを占める水平シートとして画定される部分着座部122A1。
・水平シートの残り2/3のシート距離として画定される部分着座部122A2。
・個々に動作可能である、上記シートユニットセグメントの全ての左右に分割された部分。
【0017】
さらに、背面支持ユニット103は、更に分割することもできる。
・個々に動作可能である、上記背面支持ユニットセグメントの全ての左右に分割された部分。
【0018】
左右の分割部を用いると、座席アセンブリの非対称の動作又は運動が実現可能であり、それにより、特に、半身麻痺又は脊柱側弯症を患う人々を、改善された着座快適性及び位置合わせで支持又は収容することができる。
【0019】
上述した部分又はセグメントの全ては、解剖学的運動のために股関節(仮想又は現実)の周りで一緒に、独立して、又は互いに連続して動くことができ、互いに独立して、又は一緒に、又は連続して動的に(自動的に)又は静的に(固定的に調整可能に)動くことができる。そのような動きは、異なるタイプのアクチュエーター(例えば、ガススプリング、ポリマー、モーター)、制御システム(例えば、センサー、セグメントに対する使用者の圧力、使用者の動き)、及び操作システム(例えば、ボタン、レバー、電気制御部)によって実現することができる。これらの部分又はセグメントが全て一緒に動くことができるか、別個に動くことができるか、又は連続して動くことができるかに応じて、異なる着座機能が適用可能である。
【0020】
図1Aにおいて、シート基部ユニット101の基礎フレームは、図面内で水平に設置されているが、図1Bは、本発明に係る座席アセンブリの機能原理の別の実施形態を概略的に示しており、ここでは、シート基部ユニット101は、床又は地面115に対してむしろ垂直に設定されていることが見て取れる。実際、図1Bの二重線のシート基部ユニット101は、第2の水平部分117に対して垂直の第1の垂直部分116を有するものとして規定され、第1の垂直部分116は、地面115に対しても垂直である。T字形構造のシート基部ユニット101の第2の水平部分117は、床115に対して平行に配置される。さらに、図1Bにおいて、1つのみの第1のタイプの動き制御手段111が、前後の旋回運動を示すとともに、灰色太線のシートユニット102をシート基部ユニット101に接続するように与えられる。シートユニット102は、ここでも、背もたれ108の動きを制御する第2のタイプの動き制御手段113を介して黒色太線の背面支持ユニット103に接続され、背面支持ユニット103とシート基部ユニット101との間に、背面支持部に固定されながら着座部122の動きを制御する第3のタイプの動き制御手段114が設けられる。全ての動き制御手段111、113、114は、破線で示されている。背もたれ108は、地面115に対して垂直な法線Nに対して角度αをなす。動き制御手段113を介して背もたれ108を動かすことで、法線Nに対する角度αを変更する。したがって、背もたれ108の位置は、座席アセンブリに寄りかかる人に適合することができる。寄りかかる際、角度αは増大し、人が再び前方に乗り出すと再度減少する。矢印m1及びm2は、可能な旋回運動を示している。一例として、座席アセンブリの寸法は、例えば、高さhが約55 cmであり、長さDが約60 cmである水平部分117を有し、シート奥行きdが約45 cmであり、そのうち、旋回点までの距離dPが約20 cmであり、また、シート高さsが約25 cmであり、そのうち、旋回点までの高さsPが約10 cmである。高さhは、例えば、事務椅子用途では変更することができる。さらに、上述した全ての寸法は、使用者集団内の生体測定的ばらつきに応じて変化し得る。ここで規定されたとおりのdPの場合、旋回点は、シートユニット102に対して中心にある必要はなく、さらには、着座部122の正面よりも背もたれ108側の近くに位置することが明らかとなる。さらに、この特定の例では、背もたれ108の長さbは、例えば20 cmであり、法線Nに対して例えば10度の角度αで位置する。
【0021】
図1Cは、本発明に係る座席アセンブリ100としての人間工学椅子の設計の一部の一実施形態を示している。シートユニット102及び背面支持ユニット103が、共通の旋回軸P上に位置する同じ対の旋回点104を介して取り付けられる、シート基部ユニット101の一部が示されている。シートユニット102をシート基部ユニット101に接続しながら、シートユニット102を前後に旋回させる第1のタイプの動き制御手段は、ここではガススプリング105、105'、106、106'、すなわち、第1の対のガススプリング105、105'及び第2の対のガススプリング106、106'によって示されている。ここでは、ガススプリングの代わりに他の(タイプの)アクチュエーターも用いることもできる。ここで、シートユニット102を背面支持ユニット103に接続しながら、背面支持ユニット103の旋回運動を制御する第2のタイプの動き制御手段が、ガススプリング107によって示されている。ガススプリング107の代替として、シートユニット102と背面支持ユニット103との間の接続及び旋回運動は、一対の動き制御手段を介してもたらすこともでき、したがって、ガススプリング117、117'は、別の可能な解決策として提示される。
【0022】
図1Dにおいて、本発明に係る座席アセンブリ100としての人間工学椅子の原型の画像実施形態が与えられている。第1のタイプの動き制御手段111、112は、椅子の各側に明確に示されている。ここでは、第2のタイプの動き制御手段113は、シートユニット102を背面支持ユニット103に接続するアクチュエーターである。図1Dのこの実施形態では、図1Cの実施形態と同様に、背面支持ユニット103の固定の選択肢はもはや提供されない。換言すれば、第3のタイプの動き制御手段114は、これらの人間工学椅子の例では提示されない。これは、非医療用途では許容可能であり得るが、例えば、医療目的の車椅子又は複雑な座席構成では、第3のタイプの動き制御手段114があった方が好ましい。
【0023】
図1Eにおいて、本発明に係る座席アセンブリ100を備える人間工学設計椅子の一実施形態が示されている。シートユニット102及び背面支持ユニット103が、共通の旋回軸P上にある同じ対の旋回点104を介して取り付けられるシート基部ユニット101が示されている。図1Cと同様に、ここでは、ガススプリング106'、107(図示されていないガススプリング106を含む)も、シートユニット102及び背面支持ユニット103の動き制御のために存在している。この実施形態では、図1Cの椅子の右内側にあるガススプリング105'(椅子の左内側におけるガススプリング105を含む)は、図1Eでは、例えば変形可能なポリマーである別のタイプのアクチュエーター150'(及びアクチュエーター150、それぞれ図示されていない)に置き換えられている。特に、このタイプのアクチュエーターは、この種の椅子設計に必要となる又は要求される動きの変化又は規模がここでは少ないことから、ガススプリングの代わりに用いられる。上述のように、図1Eには示されていないが、アクチュエーター150によって置き換えられたガススプリング105も、例えば、変形可能なポリマーである。変形可能なポリマー150、150'は、例えば、ガススプリング105、105'よりもサイズ又は体積が小さく、それにより、椅子設計内に設けられる動き制御システムは、小型化及び簡略化される。
【0024】
図2は、他の背面支持フレームアーキテクチャを示す、図1Aの座席アセンブリ100の機能原理の代替的な実施形態を示している。図2の(a)及び(c)に示されているように、座席アセンブリ200の背面支持フレーム210、210''は、必ずしも背もたれ208を股関節又は転子点204に直接接続しない。ここでは、異なる座席用途の転子点204との間接的な接続が示されている。さらに、背面支持フレーム210'は、図2の(b)に示されているように、部分的に湾曲することができる。
【0025】
図3を参照すると、本発明によれば、シートユニット302及び背面支持ユニット303を股関節又は転子点304に仮想的に接続する、すなわち、ユニット302、303のそれぞれを股関節又は転子点304に中心がある円形ガイドレール309、319と接続することも可能である。図3の(a)は、座席アセンブリの背面支持ユニット303、より詳細にはその背面支持フレーム310を、股関節304にガイドレール309を介して仮想的に接続する一実施形態を示し、一方、図3の(b)は、座席アセンブリのシートユニット302、より詳細にはそのシートフレーム320を、股関節304にガイドレール319を介して仮想的に接続する一実施形態を示している。
【0026】
図4は、本発明に係るガイドレール409、419を備える座席アセンブリ400の一実施形態を示している。背面支持ユニット403は、転子点404に直接接続され、一方、背面支持フレーム410は、シート基部ユニット401に埋め込まれ、円の中心が転子点404にある円形ガイドレール409に接続される。シートユニット402は、ここでも円の中心が転子点404にあり、シート基部ユニット401に埋め込まれた別の円形ガイドレール419に接続される。ガイドレール409、419の前後には、ダンパー又はアクチュエーター411、412、414(又は別のタイプの動き制御手段)が設けられる。2つのガイドレール409、419間に、互いの間の動きを制御し、又はシートユニット402及び背面支持ユニット403が1つの実体としてともに動くようにロック位置にともに固定する更なるダンパー又はアクチュエーター413が設けられる。全ての他のダンパー又はアクチュエーター411、412、414は、異なるシーケンスで開放又はロックすることもできる。図4の座席アセンブリ400の構想に基づく特定の実施形態では、揺動機能を有する椅子も提示され得る。特に、医療又はヘルスケア用途では、例えば、電気アクチュエーターの使用の有無にかかわらず、痙攣患者又は不安若しくは興奮状態の人々のために可変の緩衝体が設けられる等、そのような揺動椅子の複数の変形形態が非常に有用であり得る。
【0027】
可能な動き制御手段としてのガススプリングの使用を再び参照すると、図5の(a)は、本発明に係る座席アセンブリのガススプリングの設置の特定の実施形態を示している。ガススプリング511、512は、シートユニット502又は特にその着座部522の旋回運動を制御するために、シートユニット502の着座部522に取り付けられる。図5の(a)の左側には、動きを伴わない設置状態が示されているが、図5の(a)の右側には、動作シミュレーションが概説され、矢印で示されている。転子の周りの仮想旋回点は、ガススプリング511をロックするとともにガススプリング512を開放するか、ガススプリング512をロックするとともにガススプリング511を開放することによって生じ、それにより、シートユニット502の傾斜を制御する。シートユニット502の傾斜は、ガススプリング511、512の双方をロックすることによって特定の位置に固定することができる。それに対して、図5の(b)は、一方の端部が円形状523に従い、他端部がシートユニット502の着座部522に取り付けられた回転ロッド524との組合せにおいて、座席アセンブリのガススプリング521の一実施形態を示している。ここでは、座席アセンブリのシートユニット502は、本発明に従って股関節に仮想的に接続され、すなわち、転子の周りの仮想旋回点が生じる。シート基部傾斜位置を制御する間、図5の(b)の左側には、動きを伴わない設置状態が示され、一方、図5の(a)の右側には、動作シミュレーションが概説され、薄い重ね合わせ画像によって示されている。一方のガススプリング構成の動作、及び他方のハイブリッド構成の動作は、同等のものであり、すなわち、与えられた2つの例には類似した動作曲線が生成される。図5に示されているような類似の機構を、背面支持ユニットに(シートユニット502とともに又は別個に)適用することができる。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、座席アセンブリ600としての車椅子が、そのような(車)椅子の可能な動きを概略的に示す図6において考察される。最初に、図6の(a)に示されているように、背面支持ユニット603の傾斜角は、車椅子に座っている人が寄りかかるときに適合することができる。シートユニット602は、図6の(b)に示されている背面支持ユニット603とは別個に又は独立して上下に傾斜することができる。例えば、図1Aにおいて言及したような第3の動き制御手段113によってシートユニット602に固定された背面支持ユニット603を備える場合、シートユニット602及び支持ユニット603の双方は1つの単一のユニットとしてともに旋回することができる。これは、図6の(c)に示されている。図6の(d)において、図6の(a)、(b)、及び(c)から可能な全ての旋回運動がまとめて示されている。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、既存の椅子又は特に車椅子を、後付けキットによって、本発明に係る座席アセンブリとともに調整することができる。一般的な既存の椅子の中で、制限は考慮されず、特定のタイプの除外もしない。本発明に係る座席アセンブリにそのような後付けキットを設置する方法は、以下のとおりとすることができる。
・既存の車椅子から背面部分及び着座部分を取り外す。
・既存のフレームにブラケットを取り付け、股関節の高さに回転点を形成する。
・シートユニット(水平シート+骨盤部分)を追加し、それを回転点の周りに直接又は間接的に動かす。必要に応じて、既存の着座部分を骨盤部分に(ブラケットによって)追加することによって変換することができる。
・シートユニットの動きを制御するアクチュエーターを配置する(本発明に関して、例えば図1の記載に関して他の場所で言及した異なるタイプ及び動作選択肢を参照)。
・同様に回転点の周りに直接又は間接的に移動することができる腰側及び背側の背面セクションを配置する。必要に応じて、既存の背面は、背面部分を旋回点に接続するブラケットによって接続を形成しながら、腰側及び背側の背面部分のみが残るように、背面の部分を取り外すことによって変換することができる。
・背面ユニットの動きを制御するアクチュエーターを配置する(本発明に関して、例えば図1の記載に関して他の場所で言及した異なるタイプ及び動作可能性を参照)。
【0030】
後付けキットは、シートユニット及び/又は背面支持ユニット(様々な高さのもの)の変換を含むことができ、及び/又は、例えば、1/3が背面シート及び骨盤領域で、2/3が正面シートである等、シートユニットを部分分割して提供することができる。さらに、キットは、左右で個別に調整可能なアクチュエーターによって、シート及び/又は背面支持ユニットの非対称設定まで拡張することができる。シート及び/又は背面支持ユニットの非対称設定により、例えば、脊柱側弯症を患う人々に応じて、体の左右のいずれかの部分の座席快適性を補正又は調整することができる。さらに、キットは、本発明に係るシートユニット及び背面支持ユニットに概して用いられるものと同じ股関節旋回軸の周りに可動であるシートユニットの正面部分の更なる分割(正面シートの半分~2/3)を含むこともでき、したがって、アクチュエーターによって操作及び制御される腰部の曲げ伸ばしをより多く提供する。例えば、更に上述したようなこれらのガススプリング又は電気駆動アクチュエーターを参照するが、異なるタイプのアクチュエーターを使用可能とすることができる。これは、腰部に障害のある人々にとっての解決策を提供するため、又は起立機能を可能にするために、左右で互いに別個に及び独立して行うことも可能であるものとする。後付けキットの特定の用途又は実施形態に対するここに記載されている分割は、実際、本発明に係る一般的な座席アセンブリに対しても解釈され、したがって、後付けするか否かが考慮される椅子のタイプに制限はないことが留意される。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、座席アセンブリを備える車椅子は、ここで、対称動作又は非対称動作における可能な動きを伴って記載されている。異なる可能な動きを伴うそのような座席アセンブリは、例えば、人間工学椅子、車両用椅子、デザイン家具椅子等の他のタイプの椅子にも適用可能とすることができることが留意される。図7、より詳細には図7の(a)の座席アセンブリ700を参照すると、矢印M1によって示されている第1の動きが、背面支持ユニット703の背もたれ708の高さにおいて決定される。矢印M1は、背もたれ708を前後に動かすことができることを示している。背面支持ユニット703及びその背もたれ708は、それぞれ、背面左部分703L、708L及び背面右部分703R、708Rに更に分割することができる。図7の(a)及び図7の(b)の双方において、車椅子を表面から左側Lの左部分及び表面から右側Rの右部分である2つの同一の半部分に分割するように、表面又は平面が概説されている。さらに、そのような左右の分割により、背面左部分703L、708L及び背面右部分703R、708Rは、互いに別個に及び独立して制御することができ、背面左部分703L、708Lのみが矢印M1に従って動くか、又は背面左部分703L、708Lが背面右部分703R、708Rとは異なる度合いで動くようになっている。したがって、非対称の動きが可能になり、ここでは、背面部分703L、708L、703R、708Rについて記載される。特に、椅子又は車椅子のヘルスケア又は医療用途の非対称動作は、非常に有用とすることができる。実際、本発明とは無関係に、背面支持ユニット又は特に背もたれが、患者に必要な非対称の補正を可能にするために、更なる材料によって調節されることが実際によくある。そのような調節は、例えば、背もたれの上側左右において追加の側方クッション部品を追加することによって行うことができるが、同じ構想は、下側背面部分にも適用可能とすることができる。本発明では、材料の追加はもはや必要なく、非対称の補正又は調節は、座席アセンブリ700の分割された部分を設置及び制御することによって実行することができる。
【0032】
座席の快適性を向上させる可能な補正とともに行われる座席アセンブリ700の別の動きが、図7の(b)に示されているように矢印M2によって決定される。特に、骨盤補正は、当該技術分野において一般的に知られているようにストレッチバンドによって行うことができる。そのようなストレッチバンドは、特に、車椅子において、例えば車椅子の下側背面に、シートのすぐ上又はシートに隣接して存在する。代替的に、本発明を参照すると、骨盤補正もねじ740によって可能であり、それに伴って、下側背面722Bが前後に動くことを可能にする。さらに、下側背面の左側部分及び右側部分に対するM2に沿った非対称の動きは、左側ねじ740L及び右側ねじ740Rを独立して制御することによって可能になり得る。
【0033】
図7の(a)を再び参照すると、更なる動きが矢印M3によって規定されている。着座部722、より詳細には、シートユニット702の水平平面又はシート722Aは、正面シート部分722A1及び背面シート部分722A2に分割することができるが、正面シート部分722A1は、背面シート部分722A2とは別個に及び独立して動かすことができる。したがって、シート722Aは、2つの部分に分割される。例として、これらの2つの部分は、正面が2/3及び背面が1/3である場合、シート722Aの1/3及び2/3として、又は、正面が半分及び背面が半分である場合、シート722Aの2つの半部分として互いに関連する。これらの2つの部分間の他の関係、例えば2/5及び3/5等も本発明に包含される。正面シート部分722A1の上下の動きは、M3によって示されるように適用可能である。そのような上下の動きは、例えば、股関節において設けられ、正面シート部分722A1に接続されたアクチュエーターによって可能になるとともに更には駆動される。さらに、正面シート部分722A1は、別個に及び独立して制御される左側部分722A1L及び右側部分722A1Rに分割することができ、それにより、左脚及び右脚の座席快適性の非対称動作又は補正を実行することができる。特に、例えば脳卒中による半身麻痺又は部分麻痺を患う人々にとって、そのような非対称の動きは非常に望まれている。
【符号の説明】
【0034】
100:座席アセンブリ
101:シート基部ユニット
102:シートユニット
103:背面支持ユニット
104:旋回点
105、105'、106、106':ガススプリング
107:ガススプリング
108:背もたれ
111:動き制御手段
112:動き制御手段
113:第2のタイプの動き制御手段
113:第3の動き制御手段
114:第3のタイプの動き制御手段
115:床又は地面
116:第1の垂直部分
117、117':ガススプリング
117:第2の水平部分
122:着座部
150、150':アクチュエーター
150、150':変形可能なポリマー
200:座席アセンブリ
204:股関節又は転子点
208:背もたれ
210、210'':背面支持フレーム
210':背面支持フレーム
302:シートユニット
303:背面支持ユニット
304:股関節又は転子点
309、319:円形ガイドレール
309:ガイドレール
310:背面支持フレーム
319:ガイドレール
320:シートフレーム
400:座席アセンブリ
401:シート基部ユニット
402:シートユニット
403:背面支持ユニット
404:転子点
409、419:ガイドレール
409:円形ガイドレール
410:背面支持フレーム
411、412、414:ダンパー又はアクチュエーター
413:ダンパー又はアクチュエーター
419:円形ガイドレール
502:シートユニット
511、512:ガススプリング
521:ガススプリング
522:着座部
524:回転ロッド
600:座席アセンブリ
602:シートユニット
603:背面支持ユニット
700:座席アセンブリ
702:シートユニット
703:背面支持ユニット
703L、708L:背面左部分
703R、708R:背面右部分
708:背もたれ
722:着座部
722A:水平平面又はシート
722A1:正面シート部分
722A1L:左側部分
722A1R:右側部分
722A2:背面シート部分
722B:下側背面
740:骨盤補正もねじ
740L:左側ねじ
740R:右側ねじ

図面訳
図5
1ガススプリング+ガススプリング
2転子点の周りの初期固定
3必要?
41つの特定の点の周りの回転
5設置方法は?
6ガススプリング+回転
7レール内を移動する軸
8運動自由度が非常に少ない
9シートが前方に倒れる
10レール上に圧力は生じない

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8