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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】採血用穿刺具
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/151 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
A61B5/151 100
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022005906
(22)【出願日】2022-01-18
(62)【分割の表示】P 2019083439の分割
【原出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2022048211
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】399118748
【氏名又は名称】株式会社フタバ
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲雄
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】実公昭50-033909(JP,Y1)
【文献】特開2012-075628(JP,A)
【文献】特開2015-042569(JP,A)
【文献】特開2017-042190(JP,A)
【文献】特開2010-058211(JP,A)
【文献】実開昭49-076276(JP,U)
【文献】特開2010-221025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/15-5/151
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状の持ち手部分と、該持ち手部分の長手方向の一端部に形成された採血針部分とからなる採血用穿刺具であって、
前記持ち手部分の一面には、長手方向に複数の凹凸が形成され、前記複数の凹凸は、平面で見て略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状を成しており、それぞれの略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状の突端が前記採血針部分の方向を指向していることを特徴とする採血用穿刺具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断あるいは検査等の目的で少量の血液を採取するために使用される採血用穿刺具(ランセット)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、診断あるいは検査等の目的のために微量の血液を採血する場合、医師、看護士等、施術者の手に小型のランセットを把持し、その針先(刃先)を、患者等、被施術者の耳たぶや指頭等、所要部位に穿刺することで採血が行われている。下記特許文献1には、そのようなランセット(採血用穿刺具)の一例が示されている。そのような従来のランセットは、長手状の持ち手部分と、該持ち手部分の長手方向の一端部に形成された採血針部分とからなり、持ち手部分の一面において長手方向に複数の凹凸パターンが形成されている。施術者が持ち手部分を指先で持ってランセットを操作するとき、持ち手部分を持つ手の親指が凹凸パターンに掛かるので、フィット感が得られるという利点がある。このような従来のランセットにおいては、前記凹凸パターンは、丸みを帯びた山形(若しくは台形)を成しており、山(若しくは台形)のスロープの傾斜度合いは、採血針部分寄りの箇所とその反対側の箇所とでは、同等であった。また、施術者が持ち手部分を指先で持って採血操作するときの作業性を向上させることについては配慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭51-16486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、施術者が持ち手部分を指先で持って採血操作するときの作業性を向上させる工夫を施した採血用穿刺具(ランセット)を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る採血用穿刺具は、長手状の持ち手部分と、該持ち手部分の長手方向の一端部に形成された採血針部分とからなる採血用穿刺具であって、前記持ち手部分の一面には、長手方向に複数の凹凸が形成され、前記複数の凹凸は、平面で見て略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状を成しており、それぞれの略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状の突端が前記採血針部分の方向を指向していることを特徴とする。このような緩いV字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状の複数の凹凸の連なりは、持ち手部分を握った施術者の指(例えば親指)が、採血針部分の方向に動いて採血操作を行うとき、該緩いV字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状の凹み部分(つまり、採血針部分の方を指向している突端の反対側)に施術者の指(例えば親指)が掛り易いので、被施術者の皮膚に採血針部分を刺す際に微妙なコントロールがし易いものとなり、操作性が向上し、かつ、良好なフィット感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一開示例に係る採血用穿刺具の平面図。
図2】同開示例に係る採血用穿刺具の側面図。
図3図1のA-A’線矢視縦断面の端面図。
図4】同開示例に係る採血用穿刺具における山型形状断面を持つ凹凸を拡大して示す側面図。
図5図1のB-B’線矢視横断面の拡大図。
図6図1のC-C’線矢視横断面の拡大図。
図7】1つの山型形状(凹凸)における採血針部分の斜面及びその反対側の斜面の緩/急度合いの一例を拡大して示す側面図。
図8】採血操作時の施術者の指先の動きとの関連を示す拡大側面図。
図9】山型形状(凹凸)の頂部の変形例を示す拡大側面図。
図10】山型形状(凹凸)の斜面の輪郭の変形例を示す拡大側面図。
図11】別の開示例に係る採血用穿刺具の平面図。
図12】持ち手部分の一平面において形成される複数の凹凸の配置の種々のパターンを概略的に示す平面略図。
図13】さらに別の開示例に係る採血用穿刺具の平面図。
図14】さらなる開示例に係る採血用穿刺具の平面図。
図15】本発明の変形例に係る採血用穿刺具の平面図。
図16】本発明の一実施例に係る採血用穿刺具を示し、(a)は平面図、(b)は長手方向に沿う中央縦断面の部分的な拡大端面図。
図17】採血針部分の配置の変形例を示す部分平面略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0008】
添付図面において、図16が本発明の主たる実施例を示し、図15はその変形例を示す。図1図14は、本発明の理解を深めるための一助となる技術的開示例を示す。
【0009】
図1図6に示す開示例において、採血用穿刺具(ランセット)1は、長手状の持ち手部分2と、該持ち手部分2の長手方向の一端部に形成された採血針部分3とからなる。この採血用穿刺具(ランセット)1は、一例として、ステンレススチールのような金属の薄板をプレス加工することで所定の形状に成形されてなるものである。持ち手部分2の一面(図1に見える平面)には、図2あるいは図3に示すように、長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11が形成され、この山型形状において採血針部分3とは反対側の斜面11aが採血針部分3の側の斜面11bよりも急峻となっている。詳しくは、図4に示すように、1つの山型形状(つまり、凹凸11)は、採血針部分3とは反対側の相対的に急峻な斜面11aと、採血針部分3の側の相対的に緩い斜面11bと、幅狭のフラットな頂部11cと、幅狭のフラットな(若しくは溝状の)底部11dとを含む。図5は、1つの山型形状(つまり、凹凸11)を頂部11cの部分で切断した横断面を示し、図6は、1つの山型形状(つまり、凹凸11)を底部11dの部分で切断した横断面を示す。この複数の凹凸11を特徴づける非対称的な傾斜の山型形状断面とは、換言すると、ほぼ鋸歯形状に類した形状と言える。
【0010】
1つの山型形状(つまり、凹凸11)における斜面11a,11bの緩/急度合いの一例を、さらに拡大して、図7により説明する。図7において、角度αは、1つの山型形状(凹凸11)における前記採血針部分3とは反対側の斜面11aが前記長手方向に沿う水平線Hに対してなす角度を示し、角度βは、1つの山型形状(凹凸11)における前記採血針部分3の側の斜面11bが前記水平線Hに対してなす角度を示す。本開示においては、α>βであることを特徴とする。これに限定されないが、好ましい開示例において、角度αは45度以上であり、角度βは45度未満である。また、これに限定されないが、好ましい開示例において、1つの山型形状(凹凸11)における採血針部分3の側の斜面11bと採血針部分3とは反対側の斜面11aとの間でなす角度γは鋭角(90度以下又は未満)であってよい。
【0011】
一開示例に係る採血用穿刺具(ランセット)1は、上記のように構成されているので、図8に示すように施術者が持ち手部分2を指先で持って採血針部分3の方向Xに押す操作を行うとき、採血針部分3とは反対側の急峻な斜面11aに施術者の指(典型的には親指)の腹20が引掛かるので、針先が被施術者の皮膚に触れて採血するときの指の掛かり具合がよく、滑りにくく、かつ、指先の力をコントロールし易いものとなり、操作性が向上する。また、採血針部分3の側の斜面11bは相対的に緩い傾きとなるので、指にスムーズに若しくは柔らかくフィットするものとなり、良好なフィット感を確保することができる。こうして、操作性の向上と良好なフィット感を両立させた採血用穿刺具(ランセット)1が提供される。
【0012】
上記開示例では、山型形状(凹凸11)の頂部11cは幅狭のフラットに形成されているが、これに限らない。例えば、図9(a)に示すように、山型形状(凹凸11)の頂部は、丸みをもたせた頂部11c’であってもよい。あるいは、図9(b)に示すように、山型形状(凹凸11)の頂部は、角度を成した頂部11c”であってもよい。
【0013】
また、上記開示例では、山型形状(凹凸11)における採血針部分3の側の斜面11b及びその反対側の斜面11aの両方が直線的(又は略直線的)であるが、これに限らない。例えば、図10に示すように、山型形状(凹凸11)における採血針部分3の側の斜面11b及びその反対側の斜面11aの両方(若しくは少なくとも一方)が、略曲線的な輪郭を含んでいてもよい。このように山型形状(凹凸11)の斜面11a及び/又は11bが略曲線的である場合、各斜面の前記水平線Hに対してなす角度α、βは、該斜面11a、11bの平均的な傾きを示す直線状の傾きラインC、Dを想定して定めるようにしてよい。
【0014】
また、図1の開示例では、長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11の横幅(長手方向Xに直角をなす向きの幅)が、持ち手部分2の中央線に沿って、幾分幅狭に形成されているが、これに限らない。例えば、図11に示すように、長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11の横幅(長手方向Xに直角をなす向きの幅)が、持ち手部分2の中央線に沿って、幅広に形成されていてもよい。変形例として、長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11の横幅(長手方向Xに直角をなす向きの幅)が、長手方向に沿って変化するようになっていてもよい。例えば、持ち手部分2を持った施術者の親指が置かれ易い位置又は範囲(例えば、持ち手部分2の中央部分寄りの位置又は範囲)で幅広とされ、そこから離れるにつれて徐々に幅狭になるように形成してもよい。
【0015】
なお、図11では、長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ幅広の複数の凹凸11の長手方向の範囲が、持ち手部分2の中央寄りの所定部分に配置されている。しかし、これに限らず、図11のような長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ幅広の複数の凹凸11の長手方向の範囲が、持ち手部分2の長手方向のより長い範囲で、例えば、持ち手部分2の長手方向Xのほぼ全域にわたって、設けられてもよい。同様に、前記図1では、長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ幅狭の複数の凹凸11の長手方向の範囲が、持ち手部分2の長手方向に沿って長い範囲にわたって配置されているが、しかし、これに限らず、図1のような長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ幅狭の複数の凹凸11の長手方向の範囲が、持ち手部分2の中央寄りの所定部分(比較的短い範囲)で設けられてもよい。
【0016】
また、長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11の配置は、図1あるいは図11に示すような持ち手部分2の中央線に沿う配置に限らず、任意のパターンで配置してよい。図12は、持ち手部分2の一平面において形成される複数の凹凸11の配置のいくつかのパターンを概略的に示す図である。図において、網目模様で示した範囲が、長手方向Xに非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11(勿論、上述したように、この山型形状において採血針部分3とは反対側の斜面11aが採血針部分3の側の斜面11bよりも急峻となっているもの)の配置を概略的に示している。例えば、図12(a)の例では、持ち手部分2の一平面のほぼ全体にわたって、長手方向Xに非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11が配置される。図12(b)の例では、持ち手部分2の一平面の片側(図で上側)寄りに、長手方向Xに非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11が配置され、図12(c)の例では、持ち手部分2の一平面の反対の片側(図で下側)寄りに、長手方向Xに非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11が配置される。図12(d)の例では、持ち手部分2の一平面において2列で(図で上側と下側に)、長手方向Xに非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11が配置される。勿論、2列に限らず、2列以上で配置してもよい。また、図12(e)の例では、凹凸11の横幅(長手方向Xに直角をなす向きの幅)が異なる2種のパターン11-1,11-2が持ち手部分2の平面の適宜箇所に配置される。例えば、図12(e)において、パターン11-1は凹凸11の横幅が前記図11に示したような幅広のものであり、パターン11-2は凹凸11の横幅が前記図1に示したような幅狭のものである。勿論、2種のパターンに限らず、凹凸11の横幅の異なる2種以上のパターンを配置してもよい。なお、図12(e)の変形例として、持ち手部分2の重要な部分(典型的には中央寄りの領域)に配置されたパターン11-1を異なる傾斜の斜面11a、11bを持つ構造とし、他のパターン11-2は従来型の構造(つまり、複数の凹凸をなす各山(若しくは台形)のスロープの傾斜度合いが採血針部分寄りの箇所とその反対側の箇所とで同等であるもの)であってもよい。
【0017】
また、上記開示例では、前記持ち手部分2に設ける長手方向Xに非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11の並び方向が長手方向Xに一致している(すなわち平行となっている)が、これに限らず、長手方向Xに完全に一致することなく、適宜に斜めになっていてもよい。図13は、そのような配列を例示するもので、(a)及び(b)共に、山型形状断面を持つ複数の凹凸11の並び方向Sは、長手方向Xに対して幾分斜めの角度を成している。長手方向Xに対して並び方向Sが成す角度は、それほど大きいものではなく、好ましくは45度未満、さらに好ましくは30度未満程度であってよい。図13(a)の例では、複数の凹凸11の各頂部11cが延びる方向が長手方向Xに対して略直角となっている。これに対して、図13(b)の例では、複数の凹凸11の各頂部11cが延びる方向は、並び方向Sに対して略直角となっている。図13(a)及び(b)のどちらの配列も、持ち手部分2の一面には、長手方向Xに非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11が形成され、この山型形状において前記採血針部分3とは反対側の斜面11aが前記採血針部分3の側の斜面11bよりも急峻となっている、という本発明の技術範囲に属する。なお、図13の例では、並び方向Sの向きは、採血針部分3に近づくにつれて下がるが(図で下向き)、これに限らず、採血針部分3に近づくにつれて上がる(図で上向き)ようになっていてもよい。
【0018】
図14は、非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11の配列の変形例を示す平面図である。この変形例においては、前記持ち手部分2に設ける長手方向Xに非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11の並び方向は、図1図11等と同様に、長手方向Xに一致している(すなわち平行となっている)が、複数の凹凸11の各頂部11cが延びる方向は、その並び方向つまり長手方向Xに対して直角の方向(図中、Y方向)ではなく、矢印Tで示すように、幾分斜めになっている。図14のA-A’線矢視縦断面は、概ね、前記図3と同様に表される。すなわち、前記図3及び図4等に示されるものと同様に、図14の採血用穿刺具(ランセット)1においても、1つの山型形状(つまり、凹凸11)は、採血針部分3とは反対側の相対的に急峻な斜面11aと採血針部分3の側の相対的に緩い斜面11bとを含むという特徴を有している。複数の凹凸11の並び方向つまり長手方向Xに直角の方向Yに対して、各頂部11cが延びる方向Tが成す角度は、それほど大きいものではなく、好ましくは45度未満、さらに好ましくは30度未満程度であってよい。
【0019】
図15は、非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸11の配列の変形例を示す平面図である。この変形例においては、凹凸11は、平面視において、大略、緩いV字形(若しくは楔形)を成しており、緩いV字(若しくは楔)の突端が採血針部分3の方を指向している。図15のA-A’線矢視縦断面は、概ね、前記図3と同様に表される。すなわち、前記図3及び図4等に示されるものと同様に、図15の採血用穿刺具(ランセット)1においても、1つの山型形状(つまり、凹凸11)は、採血針部分3とは反対側の相対的に急峻な斜面11aと採血針部分3の側の相対的に緩い斜面11bとを含むという特徴を有している。特に、図15の実施例にみられるような緩いV字形(若しくは楔形)の複数の凹凸11の連なりは、持ち手部分2を握った施術者の指(例えば親指)が、採血針部分3の方向に動いて採血操作を行うとき、該緩いV字形(若しくは楔形)の凹み部分(つまり、採血針部分3の方を指向している突端の反対側)に施術者の指(例えば親指)が掛かり易くなるので、操作性が向上し、かつ、良好なフィット感が得られる。従って、図15の変形例によれば、採血針部分3とは反対側の相対的に急峻な斜面11aと採血針部分3の側の相対的に緩い斜面11bによる操作性及びフィット感の向上と相まって、より一層の操作性及びフィット感の向上を図ることができる。なお、図15において、緩いV字(若しくは楔)の突端に角度をもたせず、適宜に丸めてもよい。つまり、明確な緩いV字(若しくは楔)形に限らず、略U字に湾曲した形状(丸みのある形状)としてもよい。
【0020】
図15に示されたような、複数の凹凸11が平面で見て略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状を成す構造例は、1つの山型形状(つまり、凹凸11)が採血針部分3とは反対側の相対的に急峻な斜面11aと採血針部分3の側の相対的に緩い斜面11bとを含むという特徴を持たない構造において適用しても有利な効果を奏する。図16はそのような実施例を示し、(a)は平面図、(b)は長手方向Xに沿う中央縦断面の部分的な拡大端面図である。図16に示す採血用穿刺具(ランセット)1は、長手状の持ち手部分2と、該持ち手部分2の長手方向の一端部に形成された採血針部分3とからなり、前記持ち手部分2の一面には、長手方向に複数の凹凸21が形成され、前記複数の凹凸21は、平面で見て略V字形又は楔形(若しくは略U字に湾曲した形状でもよい)を成しており、それぞれの略V字形又は楔形(若しくは略U字に湾曲した形状)の突端が前記採血針部分3の方向を指向している。複数の凹凸21をなす各山(若しくは台形)は、採血針部分3の反対側の斜面(スロープ)21aと、採血針部分3寄りの斜面(スロープ)21bと、頂部21cと、底部21dを含み、両斜面(スロープ)21a、21bの傾き度合いは、図16(b)に示すように略同等であってよい。つまり、持ち手部分2に形成された複数の凹凸21は、長手方向Xに対称的な傾斜(略同等の斜面21a、21b)の山型形状断面を持つ。勿論、図9図10に示したような頂部11cの変形は、図16の実施例の頂部21cに対しても適用可能であり、その他本明細書で述べる種々の変形が図16の実施例に対しても適宜適用され得る。
【0021】
図16の実施例に示されたような緩いV字形又は楔形(若しくは略U字に湾曲した形状)の複数の凹凸21の連なりは、持ち手部分2を握った施術者の指(例えば親指)が、採血針部分3の方向に動いて採血操作を行うとき、該緩いV字形又は楔形(若しくは略U字に湾曲した形状)の凹み部分(つまり、採血針部分3の方を指向している突端の反対側)に施術者の指(例えば親指)が掛かり易くなるので、被施術者の皮膚に採血針部分3を刺す際に微妙なコントロールがし易いものとなり、操作性が向上し、かつ、良好なフィット感が得られる。なお、この種の採血用穿刺具(ランセット)1の一般的サイズと施術者の指(例えば親指)へのフィット感を考慮すると、持ち手部分2の横幅方向(Y方向)には、図16(a)に示すように1つの略V字形又は楔形(若しくは略U字に湾曲した形状)だけが存在しているのが好ましい。しかし、これに限らず、持ち手部分2の横幅方向(Y方向)に、少なくとも1つの略V字形又は楔形(若しくは略U字に湾曲した形状)が存在していればよい。
【0022】
上記各開示例及び実施例においては、採血針部分3が持ち手部分2の長手方向の一端部の中央部に形成されているが、これに限らない。例えば、図17(a)に示すように、持ち手部分2の長手方向の一端部の上方寄りに採血針部分3を形成してもよいし、あるいは、図17(b)に示すように、持ち手部分2の長手方向の一端部の下方寄りに採血針部分3を形成してもよい。また、採血針部分3の針(刃)の形状は、図示したものに限らず、任意の針(刃)形状を採用してよい。
【0023】
上記各開示例及び実施例においては、採血用穿刺具(ランセット)1は、ステンレススチールのような金属の薄板をプレス加工することで所定の形状に成形されてなるものであるとしたが。これに限らない。例えば、持ち手部分2をプラスチック等で形成し、この持ち手部分2に金属製の採血針部分3を取り付ける構造としてもよい。この取り付け構造は、採血針部分3を固定又は半固定する構造でもよいし、着脱自在とする構造であってもよい。
【0024】
以上説明した開示例若しくは実施例に係る採血用穿刺具の特徴のいくつかを要約して列挙すると次のとおりである。
(1)長手状の持ち手部分と、該持ち手部分の長手方向の一端部に形成された採血針部分とからなる採血用穿刺具であって、前記持ち手部分の一面には、長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸が形成され、この山型形状において前記採血針部分とは反対側の斜面が前記採血針部分の側の斜面よりも急峻となっていることを特徴とする採血用穿刺具。
(2)前記山型形状における前記採血針部分とは反対側の斜面のなす角度は、前記長手方向に沿う水平線に対して45度以上であり、前記山型形状における前記採血針部分の側の斜面のなす角度は、前記長手方向に沿う水平線に対して45度未満である、上記(1)に記載の採血用穿刺具。
(3)前記山型形状における前記採血針部分の側の斜面と前記山型形状における前記採血針部分とは反対側の斜面との間でなす角度が鋭角である、上記(1)又は(2)に記載の採血用穿刺具。
(4)前記山型形状の頂部は幅狭のフラットに形成されていることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の採血用穿刺具。
(5)前記山型形状の頂部には丸みをもたせてあることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の採血用穿刺具。
(6)前記山型形状の頂部は角度を成していることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の採血用穿刺具。
(7)前記山型形状における前記採血針部分の側の斜面及び前記山型形状における前記採血針部分とは反対側の斜面の少なくとも一方が、略直線的であることを特徴とする、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の採血用穿刺具。
(8)前記山型形状における前記採血針部分の側の斜面及び前記山型形状における前記採血針部分とは反対側の斜面の少なくとも一方が、略曲線的な輪郭を含むことを特徴とする、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の採血用穿刺具。
(9)前記複数の凹凸は、平面で見て略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状を成しており、それぞれの略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状の突端が前記採血針部分の方向を指向していることを特徴とする、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の採血用穿刺具。
(10)長手状の持ち手部分と、該持ち手部分の長手方向の一端部に形成された採血針部分とからなる採血用穿刺具であって、前記持ち手部分の一面には、長手方向に複数の凹凸が形成され、前記複数の凹凸は、平面で見て略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状を成しており、それぞれの略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状の突端が前記採血針部分の方向を指向していることを特徴とする採血用穿刺具。
(11)前記持ち手部分に形成された前記複数の凹凸は、長手方向に非対称的な傾斜の山型形状断面を持ち、この山型形状において前記採血針部分とは反対側の斜面が前記採血針部分の側の斜面よりも急峻となっていることを特徴とする上記(10)に記載の採血用穿刺具。
(12)前記持ち手部分に形成された前記複数の凹凸は、長手方向に対称的な傾斜の山型形状断面を持つことを特徴とする上記(10)に記載の採血用穿刺具。
【符号の説明】
【0025】
1 採血用穿刺具(ランセット)
2 持ち手部分
3 採血針部分
11 非対称的な傾斜の山型形状断面を持つ複数の凹凸
11a 採血針部分とは反対側の斜面
11b 採血針部分の側の斜面
11c 頂部
11d 底部
20 施術者の指の腹
21 平面で見て略V字形又は楔形若しくは略U字に湾曲した形状を成した複数の凹凸
21a 採血針部分とは反対側の斜面
21b 採血針部分の側の斜面
21c 頂部
21d 底部
図1
図2
図3
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