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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】採尿具
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20231102BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N33/48 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023068454
(22)【出願日】2023-04-19
【審査請求日】2023-04-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598056733
【氏名又は名称】株式会社▲高▼橋型精
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光広
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-114226(JP,A)
【文献】登録実用新案第3103280(JP,U)
【文献】特開2004-069577(JP,A)
【文献】特開2020-024197(JP,A)
【文献】特開2016-114542(JP,A)
【文献】中国実用新案第211270437(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を貯留可能な凹状の採取部と、
前記採取部の周縁側から外に延びる取っ手部とを備え、
前記取っ手部は、長辺同士が接続された複数の帯状部位が前記長辺の部分で上下に折り返されて重ね合わされた状態に構成され、
前記採取部と前記取っ手部は、水解紙または水溶紙からなる紙製のベース材を備え、前記採取部の少なくとも底部側には、透水性低下材が塗布され、便器に水洗可能に構成され
前記取っ手部が接続されていない前記採取部の上端縁には、前記採取部の側壁の撓みを抑止するための、ひさし状に突出する突片状部位を備え、
前記採取部と前記取っ手部と前記突片状部位は、同一の前記ベース材を用いて一体に形成される
採尿具。
【請求項2】
前記採取部は、三角錐台状の凹状に形成され、前記取っ手部が取付けられる部位と反対の頂点側に注ぎ口を有し、
前記突片状部位は、前記三角錐台状の2辺にそれぞれ設けるとともに、その2辺に設けたそれぞれの前記突片状部位の前記注ぎ口側は離反するように形成される
請求項1に記載の採尿具。
【請求項3】
前記帯状部位は4つ有する請求項1に記載の採尿具。
【請求項4】
複数の前記帯状部位の前記長辺のうち、隣接する前記帯状部位の長辺と接続されていない一方の前記長辺には、固定用部位が連続して形成され、
前記固定用部位は、前記重ね合わされた状態の複数の前記帯状部位を巻き付けた状態に構成する
請求項1に記載の採尿具。
【請求項5】
前記固定用部位には接着剤層を有し、
前記接着剤層を介して前記固定用部位を対向する前記帯状部位に接着固定する
請求項4に記載の採尿具。
【請求項6】
前記固定用部位は、前記帯状部位の短辺の2倍以上の幅を有し、
前記取っ手部の左右両側に対向し、
前記接着剤層は、少なくとも前記帯状部位との非接続側の側縁付近に設ける
請求項5に記載の採尿具。
【請求項7】
前記採取部の内側表面に、検査用の薬剤又は試薬が塗布され得る請求項1から6のいずれか1項に記載の採尿具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家庭や医療機関その他の各種の場所において、例えば女性から尿を採取する際に役立つ採尿具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば医療機関等において検尿等するために採尿する場合、使い捨ての採尿カップ等が使用され、ユーザはその採尿カップを手で持った状態で排尿カップに尿が溜まるように排尿することが行われる。採尿カップは、一般に紙コップが用いられる。また、健康診断や人間ドックを始めとして各種検診における検尿は、朝起きてすぐの尿を採取する必要から、自宅等の医療機関外で採取が行われる。自宅等で採尿する際に用いる採尿具としては、例えば特許文献1に開示される折り畳み可能な採尿容器のように、扁平に折り畳むことで未使用時にコンパクトに収納することが可能なプラスチック製の採尿具が用いられる。
【文献】登録実用新案第3088494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来一般に用いられる採尿具は、紙製の採尿カップや特許文献1に開示され採尿容器は、一般に男女共用であり、いずれも採尿具のカップ部分をユーザが直接手で持った状態で自己の放尿のタイミングに採尿具を所定位置に持って行きカップ部分に尿がたまるようにするため、誤って尿が手や衣服にかかることがあり、衛生上の問題がある。特に女性においては不自然な姿勢で採尿するためこの傾向が高い。
【0004】
さらに、上記の検査のための採尿は中間尿を採取する必要があり、放尿の途中で採尿具を適切な位置に配置させるのは、特に女性にとっては煩雑で、尿が手等にかかるおそれがより高くなる。
【0005】
さらに紙製の採尿カップや、特許文献1に開示されたプラスチック製の採尿容器等の採尿具は、いずれも可燃性であるため、採尿の使用後は可燃物として廃棄することはできる。しかし、家庭内のゴミ箱・ゴミ袋に一時的に捨て保留する必要がある。採尿具で採取した尿は、提出用の容器に移し替え、残りは便器内に廃棄するが、一部は採尿具の内壁あるいは外壁に付着した状態で採尿具に残る。使用後にゴミ箱等に廃棄するまでの移動途中で、採尿後に残った尿が垂れて室内を汚すおそれがある。また、仮にそのように垂れることなくゴミ箱等に使用済みの採尿具を廃棄できたとしても、可燃ゴミとして捨てるまでは室内に保管した状態となり、気分的に好ましくない状態となる。
【0006】
さらには、ユーザが感染症などに罹患していて、尿に細菌やウイルスなどが混入している場合、採尿具に残った尿がゴミ箱等に一時的に保管されることになり、衛生上好ましくない。
【0007】
上述した課題はそれぞれ独立したものとして記載しているものであり、本発明は、必ずしも記載した課題の全てを解決できる必要はなく、少なくとも一つの課題が解決できればよい。またこの課題を解決するための構成についても単独で分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る採尿具は、尿を貯留可能な凹状の採取部と、前記採取部の周縁側から外に延びる取っ手部とを備え、前記取っ手部は、長辺同士が接続された複数の帯状部位が前記長辺の部分で上下に折り返されて重ね合わされた状態に構成され、前記採取部と前記取っ手部は、紙製のベース材を備え、前記採取部の少なくとも底部側には、透水性低下材が塗布され、便器に水洗可能に構成される。
【0009】
(2)複数の前記帯状部位の前記長辺のうち、隣接する前記帯状部位の長辺と接続されていない一方の前記長辺には、固定用部位が連続して形成され、前記固定用部位には接着剤層を有し、前記固定用部位は、前記重ね合わされた状態の複数の前記帯状部位を巻き付けた状態で前記接着剤層を介して前記固定用部位を対向する前記帯状部位に接着固定するとよい。
【0010】
(3)前記固定用部位は、前記帯状部位の短辺の2倍以上の幅を有し、前記取っ手部の左右両側に対向し、前記接着剤層は、少なくとも前記帯状部位との非接続側の側縁付近に設けるとよい。
【0011】
(4)前記取っ手部は、前記採取部と非接続側の先端が前記採取部の上端縁よりも上に位置するように傾斜配置されるとよい。
【0012】
(5)前記取っ手部が接続されていない前記採取部の上端縁には、ひさし状に突出する突片状部位を備えるとよい。
【0013】
(6)前記採取部は、三角錐台状の凹状に形成され、前記取っ手部が取付けられる部位と反対の頂点側に注ぎ口を有し、前記突片状部位は、前記三角錐台状の2辺にそれぞれ設けるとともに、その2辺に設けたそれぞれの前記突片状部位の前記注ぎ口側は離反するように形成されるとよい。
【0014】
(7)前記採取部の内側表面に、検査用の薬剤又は試薬が塗布され得るとよい。
【0015】
(8)前記採取部の前記底部は平坦面に構成され、前記採取部に尿が貯留された状態で自立可能に構成されるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下に示す少なくとも一つの効果を奏することができる。ユーザは、便器に座った状態で、採取部を適切な位置に配置し、採尿することができる。また、女性であっても自分で採尿する際に排尿している途中の適宜のタイミングで採取部を適切な位置に配置し、中間尿を効率よく簡単に採取することができる。また、ユーザは、採取部から離れた取っ手部を持った状態で採尿することで、手等に尿がかかるおそれを可及的に抑制できる。使用後は、そのまま便器に廃棄することができ、保留した尿が周囲に垂れることなどを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の採尿具の好適な一実施形態の使用可能状態を示す図であり、(a)は採尿具の平面図、(b)はその正面図、(c)は(a)におけるc-c矢視断面図、(d)は(b)におけるd-d矢視断面図を示している。
図2図2は本発明の採尿具の好適な一実施形態の未使用時の状態を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
図3図3は使用状態を示す平面図である。
図4図4は本発明の採尿具の別の実施形態を示す図である。
図5図5は本発明の採尿具のさらに別の実施形態を示す図である。
図6図6は本発明の採尿具のさらに別の実施形態を示す図である。
図7図7は本発明の採尿具のさらに別の実施形態を示す図である。
図8図8は本発明の採尿具のさらに別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0019】
図1は、本発明に係る採尿具の好適な一実施形態の使用可能状態を示す図であり、図2はユーザに配付等された際における未使用時の状態を示す図である。図1に示すように、採尿具10は、略三角錐台状の凹状部位を有する採取部11と、採取部11の上端縁の2辺に設けられた、ひさし状に外側に突出した突片状部位12と、採取部11の突片状部位12が設けられていない1辺側に設けられる外部に延びる取っ手部13を備える。後述するように、採取部11と突片状部位12と取っ手部13は、一つのシート状物を加熱状態で成型して製造され、一体化している。また、採尿具10は、水に溶ける紙やフィルムの積層体から構成される。
【0020】
採取部11は、略三角形状の底部11aを有する。底部11aの略三角形は、例えば略正三角形或いは略二等辺三角形がよく、その三角形の底辺側に取っ手部13を配置する。この取っ手部13は、第1側壁部11bを介して接続される。また、取っ手部13と対向しない2つの斜辺に繋がるように形成される左右の第2側壁部11cは、底辺に対向する頂点側で接続される。また、第1側壁部11bの左右両側縁は、それぞれ第2側壁部11cと接続される。また、第1側壁部11bは、全体的に後方側すなわち外側に向けてやや倒れた状態となり、左右の第2側壁部11cは、上方外側に向けて傾斜する傾斜面となる。これにより、底部11aと、第1側壁部11bと、2つの第2側壁部11cで囲まれる空間は、上述したように略三角錐台状の凹状部位となる。
【0021】
また、第2側壁部11c同士が接続される接続部位15は、底部11aの頂点から斜め前上方に向かって延びた状態になる。そして、その接続部位15の上端、すなわち、2つの第2側壁部11cが繋がる上端縁の前端が、採取部11に貯留された尿の注ぎ口16となり、採尿した後、採取部11を前側が下向きになるように傾けると、その注ぎ口16から外部に排出できる。そして、底部11aの前方側の頂点から注ぎ口16に向けては直線上の接続部位15で繋がり、左右の第2側壁部11cの内面間の間隔も前方すなわち注ぎ口16に向かって徐々に短くなるため、採取部11に貯留された尿は、スムーズに注ぎ口16に向けて案内される。よって、例えば、注ぎ口16の直下に、提出用の容器の開口部を位置させると、採取部11に貯留された尿が注ぎ口16に案内されて排出され、容器にスムーズに移し替えることができる。また、採取部11の凹状部位は、注ぎ口16に向けて先端先細り状に構成されており、貯留された尿の多少に関わらず効率よく注ぎ口16に案内され、注ぎ口16から外部に排出される際には、広がることなく細幅で容器に注ぐことができる。
【0022】
また、採取部11の凹状の空間は、例えば10cc以上より好ましくは50cc程度の尿が貯留可能な容積とするとよい。この程度の容量にすることで、採取部11には検査に必要十分な尿を貯留することができるととともに、必要以上に多く貯留されて採取部11で保持する尿の重量が大きくなり過ぎることを抑止し、紙や所定のフィルムから構成されていても例えば採尿中に採尿具10が変形して採取部11から尿が漏れ出てしまうことを抑制できる。
【0023】
突片状部位12は、2つの第2側壁部11cの上端縁に連続して配置される。突片状部位12は、水平方向すなわち底部11aと平行な方向に延びるように形成される。そして、突片状部位12は一種のリブとなり、第2側壁部11cが補強され、撓むことが抑止され、傾斜面の状態を保持する。また、突片状部位12の隣接する側の端部12aは離反するように構成する。これにより、2つの第2側壁部11cが接続される接続部位15の上方端部側の延長線上には突片状部位12が存在せず、注ぎ口16から排出される尿が、突片状部位12に接触して吸収されることを可及的に抑制できる。
【0024】
取っ手部13は、長辺同士が接続された複数(本実施形態では、4つ)の帯状部位13aが長辺の部分で上下に折り返されて重ね合わされた状態に構成される(図1(d)等参照)。このように上下に折り返されて重ね合わされることで、取っ手部13は、左右方向に一定の厚さが確保されて厚さ方向(左右方向)の強度が増して取っ手部13が左右に湾曲するのを抑制する効果が高くなる。また、帯状部位13aが上下方向の略垂直面内に位置するように起立することから、取っ手部13の長手方向に対する上下方向への応力が高く、その上下方向に湾曲するのを抑制する。取っ手部13は、紙などから構成され、例えば1つの帯状部位13aの部分では、ユーザがその部分を握った力で変形してしまうおそれがあるが、上述したように複数枚を重ね合わすことで強度が増し、取っ手部13を握ったとしても過度に変形することなく、帯板状の状態を保持することができる。
【0025】
さらに本実施形態では、取っ手部13は、採取部11に対して後方側に延びるように設けられ、平面視で採取部11の底部11aの底辺と直交するように配置される。そして、取っ手部13は、底部11aを水平面とした場合の垂直面内において、先端すなわち後方に向けて上昇するように傾斜配置される。これにより、例えばユーザが、取っ手部13の先端側(採取部11から離れた側)を手に持った(指で摘まんだ)場合、採尿具10を底部11aが水平になるような姿勢にすると、採取部11の上端縁は手の位置から所定距離低い位置に位置する。よって、例えばユーザが洋式トイレの便座に座った状態で、便器の手前側から採取部11を便器内に挿入しユーザの身体の下方に位置させること、さらには、採取部11の底部11aが略水平に位置させることが容易に行える。
【0026】
よって、例えば放尿開始直後はそのまま便器に対して排出し、適宜のタイミングで採取部11を身体の下方の適切な位置に位置させることで、検査のために必要な中間尿を採取することができる。このとき、ユーザは、便器に座りながら採取部から離れた取っ手部13を持った状態で採取部11の位置を調整でき、尿が手等にかかるおそれが可及的に抑制できる。
【0027】
取っ手部13は、複数の帯状部位13aが、長辺同士が繋がった矩形状部位の当該長辺部分を折り曲げることで形成するが、その複数の帯状部位13aのうち左右両端に位置する帯状部位は一方の長辺は別の帯状部位13aと非接続となる。そこで本実施形態では、左右両側の一方(例えば右側)の帯状部位13aの非接続の長辺に矩形状の固定用部位17を連続して設ける。固定用部位17は、長辺の長さが取っ手部13を構成する帯状部位13aの長辺よりも短くし、採取部11から離れた先端側の位置は取っ手部13の先端に一致させる。
【0028】
固定用部位17の下面の所定位置には、接着剤層18を更に備える。そしてこの接着剤層18も、水に溶けるものを用いて構成するとよい。なお、接着剤層18は、使用前において剥離紙により被覆される。またこの接着剤層18は、少なくとも帯状部位13aとの非接続側の側縁付近に設ける(図2参照)。さらに本実施形態では、固定用部位17の左右方向の横幅wは、帯状部位13aの短辺の長さの2倍程度としている。
【0029】
これにより、固定用部位17の一方の長辺が取っ手部13の右側縁に繋がっているため、複数の帯状部位13aが折り畳まれて形成される取っ手部13の繋がっていない方の左側面側に回り込ませるとで、固定用部位17の接着剤層18が設けられるフリーな長辺側が取っ手部13を一周して取っ手部13の右側面側を覆うように構成される。このとき、接着剤層18が、取っ手部13の右側面に対向するため、その接着剤層18を介して固定用部位17と、取っ手部13が接着固定され、図1(d)に示すように固定用部位17にて取っ手部13の略全周が覆われ、取っ手部13を構成する4つの帯状部位13aが広がるのが抑制され、強度がより増す。
【0030】
図1(c)に示すように、本実施形態では、採取部11は、紙製のベース材21の内面の底部11a側に透水性低下材28を配置した構成とする。紙製のベース材21は、単層紙原材または積層紙原材から形成されている。当該紙は、水に分解される水解紙や水に溶ける水溶紙を用いると良い。透水性低下材28は、例えばベース材21の内表面に、所定の塗料を塗布して成膜すると良い。この透水性低下材28に用いる塗料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリオレフィン等を含む塗料を使用するとよく、セルロースを主成分とする塗料を使用しても良い。
【0031】
透水性低下材28は、紙のように水にすぐに溶けることはないものの、一定時間経過すると水に溶ける材質である。一定時間は、例えば塗布する量により調整することができ、例えば3分程度は溶けないように構成するとよい。
【0032】
透水性低下材28を用いることで、採取部11内に尿が溜まったとしても、透水性低下材28はすぐに溶けたり破けたりすることなく、採取部11はカップ状の形態を保持し、当該尿を所定時間貯留することができる。この所定時間の間に採尿し、採取部11にたまった尿を提出用の容器に移し替えるとよい。そして、透水性低下材28は、水に溶ける材質のため採取後は採尿具10をそのまま便器内に廃棄することで、水洗できる。よって、使用後に採尿具を持ち運びその途中で尿が垂れて周囲を汚す事態の発生を可及的に抑制できる。さらには、ユーザが感染症などに罹患していて、尿に細菌やウイルスなどが混入している場合であっても、採尿具10をそのまま便器に廃棄し、水洗することができるので、従来のように採尿具に残った尿がゴミ箱等に一時的に保管されることもなく、衛生的である。
【0033】
またこの透水性低下材28を形成する部位は、上記の説明では、採取部11の内表面としたが、外表面或いは両方に設けてもよい。さらにこの透水性低下材28は、本実施形態では採取部11の全体すなわち底部11aと第1側壁部11b並びに第2側壁部11cの全体にわたり配置するようにしたが、例えば底部11aの全体と、第1側壁部11bと第2側壁部11cの下方所定領域までにしてもよい。下方所定領域は、使用時に尿が貯留され得る範囲とするとよい。実際の使用に際しては、採取部11の上端縁に至る全体に尿が貯留されることは考えにくく、下方の一部の領域に貯留されることが多い。そこで、その貯留が想定される領域或いはそれに所定のマージンを取った上方部位まで透水性低下材28を配置するとよい。但し、本実施形態のように全体に透水性低下材28を配置する構造とすると、採取部11の上端縁いっぱいまで尿を貯留された場合や、そのようなことがなくても第1側壁部11b或いは第2側壁部11cの上端縁付近に尿がかかった場合にも透水性低下材28が溶けるまで採取部11の形状を維持できるので良い。
【0034】
さらに本実施形態では、上述したように採取部11は略三角錐台状の凹状であり、底部11aは略三角形で平坦面としている。そして、採取部11に尿を採取した状態で、図1(b)に示すように、底部11aを床面や洗面台や物品棚やテーブルその他の平坦な場所50に置いた場合に、採尿具10が自立可能に構成する。すなわち、採取部11に所定量の尿が貯留された状態では尿の重量が加わり、取っ手部13から手を離しても取っ手部13が斜めに立った状態で倒れることなく自立する。これにより、例えばユーザは採尿した後、採尿具10を所定の場所50に仮置きし、容器を準備したりすることができる。
【0035】
図1に示す使用可能状態の採尿具10は、例えば図2に示す未使用状態の採尿具10′の適宜位置を折り曲げて製造するとよい。未使用状態の取っ手部13′は、図2(a)に示すように、4つの帯状部位13aが横並びに繋がった展開状態の矩形シート状からなり、その矩形シート状の一辺側に矩形状に展開された固定用部位17′が配置される。未使用状態では、固定用部位17′は、4つの帯状部位13aと一枚のシート状に形成される。
【0036】
また、採取部11は、底部11aと接続部位15が型押しされて予め略三角錐台の凹状部位が形成されている。すなわち、本実施形態の採尿具10の製造に際して、水溶紙及びまたは水解紙やフィルム材等の所定の材料シートを適宜層重ね合わせるとともに、採取部11の内表面になる部分に透水性低下材28を形成する所定の塗料を塗布したシート状物を所望形状に打ち抜くと同時に、熱プレスにより成型することで、図2に示すように凹状の採取部11と展開状態の各部位が形成される。そして、取っ手部13′が展開状態となっていることから、使用状態における採取部11の横幅よりも広がった形状となっている。
【0037】
また、各帯状部位13aが接続される長辺部分は、左右方向の中央が谷折り線部位25となり、その谷折り線部位25の両側に位置する長辺部分は山折り線部位26となる。その谷折り線部位25で谷折りし、山折り線部位26で山折りすることで、4つの帯状部位13aは上述したように長辺の部分で上下に折り返されて重ね合わされた状態に構成され、固定用部位17′は、開いた状態のままとなる(図3(a)参照)。また、この折り曲げ処理に伴い、左右の第2側壁部11cの取っ手部13側が引き予去られて間隔が短くなるとともに(図3(a)参照)、取っ手部13の先端側が立ち上がる。この後、展開状態の固定用部位17′を折り曲げて取っ手部13の周囲に巻き付けるとともに、適宜のタイミングで接着剤層18の剥離紙を外し、固定用部位17とそれに対向する取っ手部13の表面とを接着固定し、使用可能状態の採尿具10となる。
【0038】
さらに本実施形態では、図示省略するが、採取部11、突片状部位12、取っ手部13並びに固定用部位17の外周縁に沿って、押圧力の高い線素片が破線状に表れる縁取りが形成される。このような高圧力の高い線素片と加圧していない部分を交互に形成することで、積層して製造された採尿具が剥離しにくくなるし、使用に際しての採取部11、突片状部位12、取っ手部13並びに固定用部位17等の強度が調整される。また、このような高圧力高い線素片は、外周縁に沿った位置に形成するに限ることはなく、適宜位置に形成することで、強度を高めるとよい。
【0039】
一方、高い押圧力で加圧することで例えばベース材21の一部等が破断してミシン目のようになることがあり、係るミシン目は水の浸透を助長する。したがって、ミシン目の模様を増やしたり減らしたりすること、破線の太さ,ピッチ等を調整することで、採尿具が水に溶ける速度を調整することができる。厚さ方向に貫通するミシン目は、取っ手部13に形成するとよく、当該ミシン目は採取部11には設けないようにする。
【0040】
また、谷折り線部位25と山折り線部位26は、例えば、折る位置が分かるように印刷などの目印を付けるとよいが、折り癖を付けるとより好ましい。さらに、本実施形態では、谷折り線部位25と山折り線部位26の線状の部分に、上述した押圧力の高い線素片が破線状に表れるように形成すると、線素片の部分が折り癖の付けられた状態となり、線素片の配置方向に沿って折り曲げやすくなるので良い。
【0041】
上述した実施形態では、突片状部位12、取っ手部13及び固定用部位17は、本実施形態で透水性低下材28を配置せずベース材21から構成したが、突片状部位12、取っ手部13及び固定用部位17の一部または全部に透水性低下材28を塗布して設けるとよい。
【0042】
また上述した実施形態では、固定用部位17の横幅を帯状部位13aの短辺の長さの2倍程度にしたが、本発明はそれに限ることはなく2倍以上としてもよいし、例えば図4(a)に示すように帯状部位13aの短辺の長さ程度にしてもよい。短辺の長さ程度にした場合、図4(c)に示すように、固定用部位17を、非接続側の帯状部位13a側に回し込み、接着剤層18を用いて固定する。このようにした場合、谷折りされて対向する中央側の2つの帯状部位13a同士は非接触でフリーな状態となる。この図示の例のようにフリーな状態のままとしてもよいし、帯状部位13a同士を接着剤層等で接着してもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、紙製のベース材21に透水性低下材28を配置する構成にしたが、本発明はこれに限ることはなく、例えば図5に示すように、ベース材21に水解性或いは水溶性のフィルム材24を介在させるとよい。図示の例では、2つの紙層22,23の間にフィルム材24を配置したサンドイッチ構造から構成する。各紙層22,23は、単層紙原材または積層紙原材から形成されている。当該紙層は、水に分解される水解紙や水に溶ける水溶紙を用いると良い。フィルム材24は、水で分解する材質或いは水に溶ける材質のものを用いるが、所定時間はその形状を維持し採取部11内に尿を保持する機能を有する。このようにすると、採取部11内に例えば尿が溜まったとしても、フィルム材24はすぐに溶けたり破けたりすることなくカップ状の形態を保持し、当該尿を所定時間貯留することができる。そしてフィルム材24は、水解性或いは水溶性の材質のため、尿の採取後は採尿具10をそのまま便器内に廃棄することで、水洗できる。
【0044】
このフィルム材24は、例えば樹脂製のフィルム材とするとよく、例えばPVA系樹脂フィルムを採用するとよい。またPVA系樹脂は、例えば冷水(たとえば5℃)可解性に優れたものを有するものとするとよい。このようにすると、採尿具を便器に廃棄した際に、便器内に貯留されている水や排水される水などにより容易に溶けるので良い。
【0045】
さらに採取部11は、生理食塩水の注入から3分後の保持率が15%以上であることが好ましい。なお、フィルム材24もトイレに流すことから、たとえば尿を満杯に収容した場合において、180秒間は、上記保持率は85%以下または95%以下であることが好ましい。
【0046】
このフィルム材24の実装は、例えば、図5に拡大して示す図から明らかなように、採取部ベース材を構成する2層の紙層22と紙層23の間にフィルム材24を挟み込んだ3層構造としたため、以下の効果を発揮するのでよい。
【0047】
すなわち、例えば排尿量が少なく採取部11の底部11a側に少しの尿がたまった状態では、採取部11の第1側壁部11b並びに第2側壁部11cの上側の領域は尿が存在せず尿と非接触の状態となる。係る場合、採取部11の内周面側に設けた紙層22に接触した尿が当該紙層22の毛細管現象により上方に進み、溜まった尿の表面よりも上方部位に位置しているフィルム材24にも、その表面に配置される紙層22を介して尿が接触し、確実に所定時間で溶けるのを促進する。
【0048】
また、後述するように採尿具10を使用後に廃棄する場合、そのままトイレに流すべく、そのまま採尿具10ごと着座式の便器に落とすことになる。このとき、便器に溜まっている水の量と、採尿具10の落下位置の関係などから、採尿具10の全体が水に浸かるとはかぎらず、例えば採取部11の一部が水に浸かることがある。このような場合でも、本実施形態では採取部11の外側に紙層23を配置したため、当該紙層23の一部でも水に浸かると、その紙層23の毛細管現象により、かかる水は採取部11の全体に進み、内側のフィルム材24の全体に接触する。これにより、水に溶けるフィルム材24が、確実に所定時間で溶ける。
【0049】
フィルム材24の両面に紙層22,23を配置したサンドイッチ構造にすることで、上述した効果を奏することができるので好ましいが、いずれかの効果を発揮すべき一方のみに紙層を設ける構成としてもよい。
【0050】
さらにこのフィルム材24は、本実施形態では採取部11の全体すなわち底部11aと第1側壁部11b並びに第2側壁部11cの全体にわたり配置するようにしたが、例えば底部11aの全体と、第1側壁部11bと第2側壁部11cの下方所定領域までにしてもよい。下方所定領域は、使用時に尿が貯留され得る範囲とするとよい。実際の使用に際しては、採取部11の上端縁に至る全体に尿が貯留されることは考えにくく、下方の一部の領域に貯留されることが多い。そこで、その貯留が想定される領域或いはそれに所定のマージンを取った上方部位までフィルム材24を配置するとよい。但し、本実施形態のように全体にフィルム材24を配置する構造とすると、採取部11の上端縁いっぱいまで尿を貯留された場合や、そのようなことがなくても第1側壁部11b或いは第2側壁部11cの上端縁付近に尿がかかった場合にもフィルム材24が溶けるまで採取部11の形状を維持できるので良い。
【0051】
さらには、突片状部位12、取っ手部13及び固定用部位17は、本実施形態ではフィルム材24を配置しない2層(紙層22,23)の積層紙から構成したが、突片状部位12、取っ手部13及び固定用部位17の一部または全部にフィルム材24を介在される3層構造とするとよい。また、2層構造にする場合、その2層の紙層22,23は、採取部11を構成する紙層22,23とは連続した(すなわち、同一枚葉の)もので形成するとよい。
【0052】
図6はさらに別の実施形態を示している。突片状部位12の隣接する側の端部12aを離反するに際し、それぞれの端部12aの位置を、注ぎ口16の先端位置から所定距離後退させるとよい。このようにすると、注ぎ口16から排出される尿は、より確実に突片状部位12に接触することを抑止し、効果的に外部の容器に移し替えることができる。
【0053】
図7は、さらに別の実施形態を示している。上述した実施形態では、図2に示すように、谷折り線部位25と山折り線部位26に押圧力の高い線素片が破線状に表れるように形成したが、本実施形態では、この線素片29を、谷折り線部位25と山折り線部位26特に山折り線部位26よりも長い範囲に形成している。これにより、取っ手部13並びに第1側壁部11bの強度が増す。
【0054】
また、上述した各実施形態のように、取っ手部13に巻き付ける固定用部位17は必ずしも設ける必要は無く、複数の帯状部位13aを折り返されて重ね合わせた状態のままの構成としてもよい。その場合に、好ましくは、帯状部位13a同士を接着固定すると、取っ手部13の強度が増す。
【0055】
接着固定するのは、上述した実施形態のように、帯状部位13aの長辺方向に延びるように両面接着テープを貼り付けて接着剤層18を形成するようにしてもよいが、例えば図8に示すように、帯状部位13aの短辺方向に延びるように接着剤層18を配置してもよい。このように短辺方向に延びるように接着剤層18を形成すると、一つの接着剤層18で複数の帯状部位13aを接着することができる。
【0056】
また、上述した各実施形態において、接着剤層を設けない構成としてもよい。
【0057】
上述した各実施形態等において、各層を構成する紙層は、1または複数枚の紙を積層して構成される。枚数は全体的に同じにしてもよいが、部位により異ならせると良く、採取部11の枚数が、取っ手部13の部分に使用される紙の枚数より多くするとよい。採取部11の枚数を多くすることで、採尿時に凹状の状態を長く保てるので良い。また、取っ手部13の部分の枚数を少なくするとよい。そのようにすると、採尿具全体の紙の使用量を削減し、採尿具を便器に廃棄した際に、短時間で溶けたり分解したりして、例えば節水タイプ(例えば排水が6リットルなど)の便器であっても、一回の排水で確実に水洗できるのでよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、採取部11は、略三角錐台状の凹状に形成したが、その形状は任意であり、各種の形状を採りうるが、角錐台のようにすると、底部11aが平坦面になり、採尿具10を自立可能に構成しやすいのでよく、さらに、注ぎ口16も形成しやすいのでよい。なお、自立可能に構成するためには、円錐台その他の底部が平坦な形状にするとよい。
【0059】
また、上述した各実施形態において、採取部11の内側表面の所定部位、例えば底部11a等の貯留された尿が触れる部位に、妊娠検査薬や尿検査のための各種の検査用の薬剤又は試薬を塗布しておくとよい。このようにすると、ユーザが、自宅等で簡易的な検査を行え、簡単に健康管理が行える。また、所定部位は、底部11aに限らず、第1側壁部11bや第2側壁部11cとしてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、ユーザが女性の場合を例にして説明したが、本発明のユーザは男性でもよい。例えば、採尿具10をそのまま便器に廃棄して水洗することで同居人その他に感染するのを防いだり、各種の試薬等を塗布して自宅等で自分で簡易的な検査を行ったりする効果は、男性の利用でも好ましい効果となる。
【0061】
以上、本発明の様々な側面を実施形態並びに変形例を用いて説明してきたが、これらの実施形態や説明は、本発明の範囲を制限する目的でなされたものではなく、本発明の理解に資するために提供されたものであることを付言しておく。本発明の範囲は、明細書に明示的に説明された構成や製法に限定されるものではなく、本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも、その範囲に含むものである。本発明のうち、特許を受けようとする構成を、添付の特許請求の範囲に特定したが、現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても、本明細書に開示される構成を、将来的に特許請求する可能性があることを、念のために申し述べる。
【符号の説明】
【0062】
10 :採尿具
11 :採取部
11a :底部
11b :第1側壁部
11c :第2側壁部
12 :突片状部位
13 :取っ手部
13a :帯状部位
15 :接続部位
16 :注ぎ口
17 :固定用部位
18 :接着剤層
21 :ベース材
22 :紙層
23 :紙層
24 :フィルム材
25 :谷折り線部位
26 :山折り線部位
28 :透水性低下材
29 :線素片
【要約】
【課題】 女性が手等を汚すことなく自分で中間尿を採取し、使用後は周囲を汚すことなく廃棄することができる採尿具を提供する。
【解決手段】 尿を貯留可能な凹状の採取部11と、採取部の周縁側から外に延びる取っ手部13を備える。取っ手部は、長辺同士が接続された複数の帯状部位13aが長辺の部分で上下に折り返されて重ね合わされた状態に構成され、採取部と取っ手部は、紙製のベース材を備え、採取部の少なくとも底部側には、透水性低下材が塗布され、便器に水洗可能に構成される。
【選択図】 図1
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8