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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】シートフレーム用の溝状部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/03 20060101AFI20231102BHJP
   B21D 39/02 20060101ALI20231102BHJP
   B21D 19/08 20060101ALI20231102BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20231102BHJP
   F16B 5/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B21D39/03 B
B21D39/02 Z
B21D19/08 C
F16B4/00 G
F16B5/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023533360
(86)(22)【出願日】2023-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2023008196
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2022034028
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】396008934
【氏名又は名称】松本工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】黄 浩
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-075018(JP,A)
【文献】特開2005-127676(JP,A)
【文献】特開平05-058341(JP,A)
【文献】特開2013-046930(JP,A)
【文献】特開2013-112229(JP,A)
【文献】特開2009-285044(JP,A)
【文献】実開昭61-059301(JP,U)
【文献】特開平11-081581(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0072391(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/03
B21D 39/02
B21D 19/08
F16B 4/00
F16B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレーム用の溝状部材の接合方法であって、
底面部と左右一対の側面部とを有する断面略コの字形状の第1溝状部材および第1溝状部材とほぼ同一の断面形状で底面部と左右一対の側面部とを有する断面略コの字形状の第2溝状部材を準備する第1工程と、
この第1溝状部材に第2溝状部材を嵌合することにより、それらの底面部同士および左右の側面部同士を密着させる第2工程と、
この第1溝状部材に第2溝状部材が嵌合した部分において、その底面部にスポットカシメ加工を施し、同時に、左右の側面部にはそれらの側面部を内側に向かって折り曲げるヘミング加工を施すことにより、これら第1溝状部材と第2溝状部材とを接合する第3工程とを備えたシートフレーム用の溝状部材の接合方法
【請求項2】
上記第2工程において第1溝状部材の底面部と第2溝状部材の底面部とはそれらが嵌合した部分での全面において平面同士が密着した請求項1に記載のシートフレーム用の溝状部材の接合方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一対の所定長さの断面略コの字形状の溝状部材の端部同士を嵌合させて接合したシートフレーム用の溝状部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断面がコの字形状の長尺板材は、例えば強度部材として各種製品・部品に用いられている。
例えば自動車シートの強度保持におけるシートフレームでは断面コの字形状の溝状部材を使用するが、この溝状部材の長さを延長する際、同一断面形状の2本の部材は端部同士を嵌合してこれを溶接により接合することが一般的である。
また、断面コの字形状の2部材を接合するには、特許文献1,2に示す構造、方法が従来より知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-296246号公報
【文献】特開2005-88077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の接合構造にあっては、以下のような不都合が生じていた。すなわち、溶接による接合では板材同士の接合は、その溶接部分において熱ひずみが発生する。また、異種素材間での接合はできない。
一方、特許文献1に示す金属板のエンボス成形方法では、エンボス成形の前に、重ね板をダイと接触する側の金属板表面に重ね合わせ、次いで金属板表面に重ね板を重ね合わせた状態で、複数の円形突起の縦壁部となる部分に対してしごき成形を行い、複数の円形突起を完成させる。この円形突起により接合するものである。
よって、複数の凸部を設けたパンチと、それに対応する複数の凹部を設けたダイとからなる一対のプレス金型を用意するだけで、ステンレス鋼板や高張力鋼板などでも、エンボス成形品を得ることができる。
【0005】
さらに、特許文献2における板材の接合方法によれば、複数枚の板材が打込みリベットにより接合されてなる。とともに、打込みリベットによる接合部の周囲近傍には、表裏いずれか一方の面が陥没し他方の面が膨出する凹凸部が前記複数枚の板材の塑性変形により形成される。
この結果、振動や大きな荷重が作用する構造体や比較的重量のある構造体を構成する板材同士においても、簡便且つ低コストの方法によって、板材同士の回転やズレに対する強度等の接合強度を大きく向上させることができる。さらに、接合による板材の歪み等の変形を少なく抑えることが可能である。
【0006】
しかしながら、これらの接合方法を、断面コの字形の溝状部材同士の接合に適用する場合、その接合強度においては未だ不十分とされることがあった。また、溝状部材の側板の端部処理は別工程において曲げ加工を行う必要があった。
そこで、発明者は、この接合において2溝状部材の接合とその端部処理とを1工程で行うことにより、プロセスの簡易化、作業効率のアップを達成することを可能とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、シートフレーム用の溝状部材の接合方法であって、底面部と左右一対の側面部とを有する断面略コの字形状の第1溝状部材および第1溝状部材とほぼ同一の断面形状で底面部と左右一対の側面部とを有する断面略コの字形状の第2溝状部材を準備する第1工程と、この第1溝状部材に第2溝状部材を嵌合することにより、それらの底面部同士および左右の側面部同士を密着させる第2工程と、この第1溝状部材に第2溝状部材が嵌合した部分において、その底面部にスポットカシメ加工を施し、同時に、左右の側面部にはそれらの側面部を内側に向かって折り曲げるヘミング加工を施すことにより、これら第1溝状部材と第2溝状部材とを接合する第3工程とを備えたシートフレーム用の溝状部材の接合方法である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記第2工程において第1溝状部材の底面部と第2溝状部材の底面部とはそれらが嵌合した部分での全面において平面同士が密着した請求項1に記載のシートフレーム用の溝状部材の接合方法である
【0009】
第1溝状部材および第2溝状部材は、いずれも断面略コの字形状の長尺材である。すなわち、これらの第1溝状部材および第2溝状部材は、底面部とこの底面部の両端から立ち上がる左右一対の側面部とを備えている。また、断面略コの字形状の第1溝状部材の溝状の空間に、同じく断面略コの字形状の第2溝状部材を嵌合することにより、これらの嵌合部分の底面部同士および一対の側面部同士を密着させる。
これらの第1溝状部材および第2溝状部材の嵌合部分でその底面部にスポットカシメ加工により底面カシメ部を形成すると同時に、一対の側面部に内側に向けて折り曲げたヘミング加工により一対の縁折り部を形成することにより、これら第1溝状部材および第2溝状部材を接合する
【0010】
すなわち、底面部と左右一対の側面部とを有する断面略コの字形状の第1溝状部材、第2溝状部材を準備し、これら第1溝状部材、第2溝状部材の全部または一部を、その底面部同士、側面部同士を密着させた嵌合状態として、この嵌合部分の底面部にスポットカシメ加工を施すと同時に、一対の側面部同士に対してヘミング曲げ加工を施すことにより、第1溝状部材、第2溝状部材を接合する。
具体的には、まず、底面部と一対の側面部とからなる断面が略コの字形状の第1溝状部材および第2溝状部材を準備する。
次に、第1溝状部材と第2溝状部材とは、いずれも同じく断面略コの字形状であって、それらの全部または一部、例えばその長さ方向での端部(対向する端部)同士が嵌合される。その後、この嵌合部分(重なり部)において、底面部にスポットカシメ加工、および一対の左右の側面部に内側に曲げるヘミング曲げ加工を同時に施す。
この加工は、プレス機においてポンチとダイとに所定の形状の凸部、凹部を形成し、被加工材である溝状部材(嵌合部分)をプレス加工することにより、同時に(1ストローク)にて行うことが可能である。
なお、スポットカシメ加工では複数個の底面カシメ部を形成することができる。例えば底面部にて三角形に配置される、3つの底面カシメ部を形成することができる。この場合は、溝状部材の長さ方向のみならずその幅方向での接合についても確実に行えることとなる。面同士の接合強度が増す。
【0011】
上記第3工程では、底面部のスポットカシメと同時に、これら左右一対の側面部の縁部についてはヘミング曲げ加工を施す。その結果、縁部については当該部分の強度の向上と、作業・取り扱いでの安全性、利便性が向上する。
さらに、このヘミング曲げ加工と同時にこれら左右一対の縁折り部にはスポットカシメ加工による側面カシメ部を形成することができる。その結果、単一の工程(第3工程)において縁折り部のヘミング加工と同時に当該縁折り部に側面カシメ部を形成することができる。
一対の側面部に加工形成された一対の側面カシメ部は、左右の側面部の補強、位置ずれ防止の役割も有する。
【0012】
なお、第1溝状部材,第2溝状部材は、所定長さを有するとともに、その接合される部分(例えば長さ方向の端部)同士が、嵌合される。この嵌合部分については3パターン、すなわち同じ長さの溝状部材同士が全長にわたって嵌合する場合、それらの端部同士が嵌合し,接合された結果として全体長さが延長される場合、一方の溝状部材が他方のそれより短く、短い部材の長い部材に重なってその重なり部分のみが嵌合される場合である。
よって、その嵌合部分の断面形状はほぼ同じであって、例えば所定幅の底面部と、底面部の幅方向両端が90°(直角)に底面より立ち上がる一対の側面部とを有している。この場合、底面部の幅、側面部の高さは、ほぼ同じ(板厚を除いて)であって、第1溝状部材の内方に第2溝状部材が密着してはめ込まれることとなる。また、外側の第1溝状部材にあっては一対の側面部の上端が内側に向かって90°(水平に)だけ屈曲して所定長さだけ突出している。なお、これらの溝状部材の板厚は任意であり、さらに、これらの溝状部材の材質も同じでも、異なる素材であってもよい。鉄板、鋼板、アルミ板、またSUS材、表面処理鋼板などであってもよい。
【0013】
具体的には、所定幅を有して平坦面として構成される底面部に対してその幅方向の両端から垂直に立ち上がる左右一対の側面部を備えた断面略コの字形状の第1溝状部材および第2溝状部材にあって、例えばそれらの端部同士が嵌合状態とされる。この嵌合状態とは、それらの端部における底面部(平坦面)同士および一対の側面部同士が密着した状態となることである。なお、異なる長さの溝状部材同士、同じ長さのそれの全長にわたって、またはその一部が嵌合する場合を含む。
そして、上記第1溝状部材および第2溝状部材の嵌合部分でそれらが密着して重なった底面部において底面カシメ部がスポットカシメ加工により形成されている。底面カシメ部は例えば嵌合部分の内側から外方に向かってポンチを所定の外力を加えて押しつけることにより、当該部分に塑性変形を起こし、例えば円形の所定深さの穴(凹部)を形成することを含む。穴の形状は問わない。穴の個数も問わない。それらの延在方向において直線上に2個のカシメ穴を形成することなどを含む。さらに、この底面カシメ部は溝状部材の外側に向かって突出させたが、ダイに凸部を設けることでその内方に向かって突出した形状とすることも可能である。
また、上記嵌合部分では、左右一対の側面部のそれぞれにおいて密着して重なった左側面部同士、また右側面部同士において、内曲げのヘミング加工により縁折り部がそれぞれ形成されている。ヘミング加工とは、ヘミング曲げとも称されて側面部においてその上端部分を180°折り返し平らに押しつぶす加工である。つぶし曲げ、あざ折りとも称される。左右の縁折り部は、溝状部材の長さ方向において同じ位置でも異なる位置でもよい。また、1カ所でも複数箇所であってもよい。
【0014】
なお、例えば上記底面カシメ部は3個形成され、それらの配置は三角形とされた溝状部材の接合構造である。底面上に三角形の配置とすることで、面同士の縦横のずれを防止することができる。接合強度が、例えば単一のカシメ部とした場合よりもより高くなる。
【0015】
また、左右一対の縁折り部に、これらの側面部同士の接合を確実にするためスポットカシメ加工により側面カシメ部(所定形状の凹部など)を形成するものである。側面カシメ部は例えばそれぞれ複数個、延在方向において離間して形成してもよい。
【0016】
第1溝状部材および第2溝状部材の断面形状においては、側面部と底面部との間の角度は直角に限られず、鈍角であってもよい。この結果、鈍角断面は直角断面よりも、上下方向の外力による曲げモーメントに対しての断面係数が大となる。すなわち、上下曲げに強くなる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、シートフレーム用の溝状部材の接合構造において、接合部分の強度(曲げ、圧縮、引っ張り)を高めることができる。よって、溝状部材を所望の長さまで延長することができる。または、溝状部材を2重に重ねることも容易にできる。また、異種材同士を接合することができる。例えば鋼板とアルミ板、厚みの異なる板材同士である。さらに、接合に際して溶接部分を排除することができる。よって、接合部分には熱ひずみが発生することもない。そのひずみ除去についての二次的な加工処理が不要である。
また、これら一対の側面部のそれぞれにおいて第2のカシメ部によりその接合強度をさらに高めることができる。
底面部と側面部とがなす角度は直角に限られず、鈍角とすることにより、その接合強度(曲げ強度など)はさらに増すこととなる。断面係数が大きくなるからである。
さらにまた、底面部に形成したカシメ部については、三角形の3頂点について配置することにより、これらの溝状部材同士の平面上での位置決めを強固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施例1に係るシートフレーム用の溝状部材の接合構造を示す斜視図である。
図2】この発明の実施例1に係るシートフレーム用の溝状部材の接合構造を示す平面図である。
図3】この発明の実施例1に係るシートフレーム用の溝状部材の接合構造を示す側面図である。
図4図3におけるB-B線矢視断面図である。
図5】この発明の実施例2に係るシートフレーム用の溝状部材の接合構造を示す斜視図である。
図6】この発明の実施例2に係るシートフレーム用の溝状部材の接合構造を示す平面図である。
図7図6におけるD-D線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明に係るシートフレーム用の溝状部材の接合構造およびその接合方法の一実施例を説明する。
図1図4は実施例1に係るシートフレーム用の溝状部材の接合構造およびその接合方法を説明するための図である。
これらの図において示すように、ほぼ同一の断面略コの字形状を有する第1溝状部材11および第2溝状部材21はそれらの長さ方向の端部11A,21A同士が嵌合されている。すなわち、第1溝状部材11,第2溝状部材21は、いずれも例えばSUS板を屈曲して断面が略コの字形状としたレール状の長尺材であって、第1溝状部材11の長さ方向の一端部11Aを外側材として、第2溝状部材21の長さ方向の端部(対向する側の端部)21Aを内側材として嵌合されている。この嵌合部分の長さは任意とする。
すなわち、第1溝状部材11は、所定幅の平坦な底面部12と、底面部12の幅方向の両端部から鈍角を有して立ち上がる左右一対の側面部13A,13Bと、これらの側面部13A,13Bの上端がほぼ直角に内向きにそれぞれ折り曲げられた張出片14A,14B(これらは所定間隔を有して対向している)とを有している。張出片14A,14Bが対向して張り出しているが、その張り出した先端同士の間には所定の間隔が形成されており、その底面部12の上方は開放されている。
同様に、第2溝状部材21は、底面部22、左右一対の側面部23A,23B、左右一対の張出片24A,24Bを有して構成されている。
上記嵌合部分11A,21Aにおいては、これらの平坦な底面部12,22同士は密着しており、また、平坦な左側面部13A,23A同士および右側面部13B,23B同士も密着している。この場合、内側の底面部22は外側(下側)の底面部12よりもその幅は、側面部13A,13Bの板厚分だけ小さい(短い)。とともに、側面部13A,13Bの高さも、密着する側面部23A,23Bのそれよりも板厚分だけ高い(長い)。なお、張出片14A,14Bの張り出し長さは、張出片24A,24Bのそれとほぼ同じとされている。
【0020】
これらの図において、嵌合部分11A,21Aにおいては、重ね合わされたその底面部12,22に底面カシメ部である2つのカシメ穴部31,32がスポットカシメ加工により形成されている。2つのカシメ穴部31,32の穴径、穴深さは任意とし、またそれらの形成位置は底面部板のほぼ中間位置(中央位置)で所定間隔を有して離間している。
また、側面部13Aと重なる側面部23Aおよび側面部13Bと密着した側面部23Bは、いずれも、その嵌合部分11A,21Aにおいてヘミング曲げ加工によりその張出片14A,24A同士および張出片14B,24B同士が内側に折り曲げられてヘミング曲げ部(縁折り部)33,34をそれぞれ形成している。すなわち、当該部位の左右の側面部においては板材が180°折り返されて平らに押しつぶされている。
さらに、このヘミング曲げ部(縁折り部)33,34においては、それぞれヘミングカシメ加工が施されている。すなわち、嵌合部分でその長さ方向での中央位置で、内側面の側においては左右一対の側面カシメ部(長溝状)35,36が設けられている。側面カシメ部35,36は一定幅で上下に伸びる溝形状であって、内側が凹み、外側が凸となる。
【0021】
本発明の一実施例に係る溝状部材の接合方法については以下の通りである。
まず、第1工程では、底面部と底面部の両端から立ち上がる一対の側面部とを備えた断面略コの字形状の第1溝状部材および第2溝状部材を準備する。
次に、第2工程では、これら第1溝状部材および第2溝状部材の端部同士を嵌合させる。このとき、底面部同士、左右一対の側面部同士は密着する。
さらに、第3工程では、この密着嵌合部分において底面部にスポットカシメ加工を、左右の側面部にはヘミング曲げ加工を同時に施す(それぞれに縁折り部を形成する)。この結果、第1溝状部材は第2溝状部材と強固に接合されることとなる。また、非溶接接合のため部材における熱ひずみなどの発生は皆無である。
具体的には、第1溝状部材と第2溝状部材とは、いずれも同じく断面コの字形状(略コの字形状を含む)であって、それらの全部または一部、例えばその長さ方向での端部(対向する端部)同士が嵌合され、その後に嵌合部(重なり部)において、底面部にスポットカシメ加工、一対の左右の側面部にヘミング曲げ加工を同時に施すこととなる。
この加工は、プレス機においてポンチとダイとに所定の形状の凸部、凹部を形成し、被加工材である溝状部材(嵌合部分)をプレス加工することにより、同時に(1ストローク)にて行うことが可能である。
例えば底面部にて三角形に配置された、スポットカシメによる3つの底面カシメ部を形成することができる。この場合は、溝状部材の長さ方向のみならずその幅方向での接合についても確実に行えることとなる。面同士の接合強度が増す。
なお、上記第3工程では、上記一対の縁折り部にスポットカシメ加工による一対の側面カシメ部をそれぞれ形成する。
第3工程では、底面部のスポットカシメと同時に、これら左右一対の側面部の縁部についてはヘミング曲げ加工を施す。その結果、縁部については当該部分の強度の向上と、作業・取り扱いでの安全性、利便性が向上する。
さらに、一対の側面部に加工形成された一対の側面カシメ部は、左右の側面部の補強、位置ずれ防止の役割も有する。
【0022】
なお、スポットカシメ加工とは、重ねた2枚のプレート(板材)にポンチで孔を貫くように押し込み、2枚のプレートを塑性変形させて接合する。穴状に少ない加工圧力を加えて接合する方法である。底面に対して裏側に向かって凸のカシメ部であるが、その逆も可能である。
ポンチ、ダイにおけるプレス金型を使用しての加工によるため、所定の金型を使用することにより、1ストロークにて複数箇所での複数の加工が可能となっている。これにより、高強度の接合が可能であるとともに、強度の異方性がなく、力の方向にも左右されず強固な接合を得ることができる。非加熱加工での接合となり、溶接に不適な部材同士の組み合わせ、異種素材同士の組み合わせ接合を可能とする。
なお、上記カシメ部とは具体的には凹部または凸部を意味する。凹部とは2部材の重なりあった嵌合部分において、カシメスポット加工による円筒形状の突部(凸部)がその内側に向かって突出する場合(凸部)と、外側に向かって突出する場合(凹部)を示す。
また、これらの溝状部材同士の接合方法においては、スポットカシメ加工とヘミング折り加工とを同時に、すなわち1つの動作、例えばプレス金型の下降動作において行うことができる。
【0023】
次に、図5図7を参照してこの発明の第2の実施例について説明する。この実施例で用いる第1溝状部材51,第2溝状部材61はその断面が略同一のコの字形状である。これらの溝状部材51,61は、それぞれ、底面部52,62と、その幅方向両端から直角に立ち上がる一対の側面部53,63とにより構成されている。この場合は、第1溝状部材51、第2溝状部材61の製造が簡易となり、その嵌合においても位置ズレなく組み合わせることが容易となる。
具体的には、長尺の第1溝状部材51の長さ方向の一端部において、長尺の第2溝状部材61の一端部(対向する端部)が内側に密着して嵌合されて固定されている。
これら第1溝状部材51および第2溝状部材61は、いずれもその断面が略コの字形状である。すなわち、これらの第1,第2溝状部材51,61は、いずれも、上側が開放されて、所定幅の底面部52,62と、この底面部の両端からそれぞれ立ち上がる一対の側面部53,63とを備える。
第1溝状部材51の底面部52の板幅は、第2溝状部材61の底面部62のそれと略同じである。実際は第2溝状部材61の板厚の2倍+底面部62の幅=第1溝状部材51の底面部52の幅である。
これら断面略コの字形状の第1,第2溝状部材51,61について、それらの延在方向の端部における底面部52,62同士および一対の側面部53,63同士を密着させた状態で嵌合してこれらは接合される。
そして、上記第1,第2溝状部材51,61の嵌合部分でそれらの底面部52,62(密着して重ね合わされている)においては、スポットカシメ加工により凹部(底面カシメ部)71が、上記嵌合部分でその一対の側面部53,63にはヘミング加工により一対の縁折り部72が形成されている。
溝状部材は、所定長さ、所定幅、所定厚さの長尺の金属板材を断面コの字形状に成形してある。すなわち、所定幅の底面部52、62、これら底面部の幅方向の両端から略90°の角度で立ち上がる一対の側面部53,63(右側面部、左側面部)、立ち上がり高さは左右同一である。嵌合された状態で外側に位置するこれら一対の側面部53にあっては、その上端部が溝の内方に向かって90°屈曲して突出している(張出片)。
ヘミング曲げを、この二重に重ね合わされた左側面板部53,63および右側面板部53,63について共に適用しこれを加工する。
なお、接合方法においては、上記実施例とほぼ同等である。すなわち、一対の断面コの字の溝状部材の準備、次に、それらの嵌合(端部同士または一方が短い場合でその全体が嵌合される場合もある)、さらには底面部のスポットカシメと側面部のヘミング加工とを金型の1下降ストロークで行う。ポンチには所定部位に凸部が、ダイにはこれと対向する凹部を形成することもある。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、シートフレーム用の溝状部材同士を接合する技術として有用である。例えばシートフレーム材の接合に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
11 第1溝状部材、
12 底面部、
13A,13B 側面部、
21 第2溝状部材、
22 底面部、
23A,23B 側面部、
31,32 底面カシメ部、
33,34 縁折り部、
35,36 側面カシメ部。
【要約】
断面コの字形状の長尺材同士を接合する際、溶接による熱ひずみが発生する。接合作業が煩雑である。底面部の両端から側面部が立ち上がる形状、すなわち断面略コの字形状の第1溝状部材の端部に、同一形状の第2溝状部材でその対向する端部を嵌合する。底面部同士、側面部同士は密着させておく。この嵌合部分にて底面部にはスポットカシメ加工による底面カシメ部を形成する。また、その一対の側面部はいずれもヘミング曲げにより一対の縁折り部を形成する。さらに、これら縁折り部にはスポットカシメ加工により側面カシメ部をそれぞれ形成する。これら3種の加工を金型の1加工工程で行う。接合強度が増すとともに熱ひずみ発生をなくし、かつ効率の良い接合作業を行える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7