IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミズホ株式会社の特許一覧

特許7377587ロック装置、クランプスライダおよび医療装置
<>
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図1
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図2
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図3
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図4
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図5
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図6
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図7A
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図7B
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図8
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図9
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図10A
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図10B
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図11
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図12
  • 特許-ロック装置、クランプスライダおよび医療装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ロック装置、クランプスライダおよび医療装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 63/00 20060101AFI20231102BHJP
   A61G 13/02 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F16D63/00 L
A61G13/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023552533
(86)(22)【出願日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2023022537
【審査請求日】2023-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000193612
【氏名又は名称】ミズホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】小尾 卓也
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2397717(EP,A1)
【文献】国際公開第2012/155892(WO,A2)
【文献】欧州特許出願公開第2813722(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0183907(US,A1)
【文献】特表2016-500432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 9/00-15/12
A61G 99/00
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのガイドレールを用いて案内されるクランプスライダに設けられるロック装置であって、
前記ガイドレールに当接して、前記クランプスライダの動きを固定させるロック部と、
前記ロック部を前記ガイドレールに当接させる固定力を加える固定力部と、
前記ロック部と前記固定力部との間に配置され、前記固定力部からの固定力を前記ロック部に伝達可能な第1の転動体と、
第1の転動体と前記固定力部との間に配置され、前記第1の転動体と当接し、前記ガイドレールに沿った方向に移動することにより、前記クランプスライダの動きをロックまたはロック解除する第2の転動体と、
前記第2の転動体と前記固定力部との間に配置され、前記第2の転動体と当接し、前記固定力部からの固定力を前記第2の転動体に伝達可能な第3の転動体と、
を備えたことを特徴とするロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロック装置において、
前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体が、互いに当接して前記固定力部から前記ロック部の方向に一列に並んだ状態により、前記クランプスライダの動きをロックすることを特徴とするロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロック装置において、
前記一列に並んだ状態が、
前記第2の転動体を、前記ガイドレールに沿った方向に移動させて、前記第1の転動体および前記第3の転動体の間に押し込める方向に作用させ、前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体の中心が一直線に並んだ配置を超えた状態であることを特徴とするロック装置。
【請求項4】
請求項2に記載のロック装置において、
前記一列に並んだ状態になるように、前記第2の転動体を、前記第1の転動体および前記第3の転動体の間に押し込める方向に作用させる第1のピストンロッドと、
前記第1のピストンロッドと対向した位置にあり、前記第2の転動体を、前記一列に並んだ状態から外させる第2のピストンロッドと、
を更に備えたことを特徴とするロック装置。
【請求項5】
請求項4に記載のロック装置において、
前記第1のピストンロッドが、前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体と当接する各当接面を有し、前記第2の転動体に対する当接面が、他の当接面よりも突出していることを特徴とするロック装置。
【請求項6】
請求項4に記載のロック装置において、
前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体を納めるケージを有し、
前記ケージは、前記第1のピストンロッドが通過できる開口部を有し、
前記ケージは、前記第1のピストンロッドとは反対側で、前記一列に並んだ状態で、各転動体と当接可能な内部面を有することを特徴とするロック装置。
【請求項7】
請求項5に記載のロック装置において、
前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体を納めるケージを有し、
前記ケージは、前記第1のピストンロッドが通過できる開口部を有し、
前記ケージは、前記第1のピストンロッドとは反対側で、前記一列に並んだ状態で、各転動体と当接可能な内部面を有し、
前記内部面が、前記第2の転動体に対応した凹みを有することを特徴とするロック装置。
【請求項8】
請求項1に記載のロック装置において、
前記第2の転動体を、油圧により前記ガイドレールに沿った方向に移動させることを特徴とするロック装置。
【請求項9】
請求項1に記載のロック装置において、
前記固定力部が、バネ機構により前記固定力を発生させることを特徴とするロック装置。
【請求項10】
請求項1に記載のロック装置において、
前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体は、円柱体であることを特徴とするロック装置。
【請求項12】
基台に対して移動可能なテーブルと、前記テーブルの移動方向を規定するガイドレールと、前記ガイドレールに対して案内されて動きをロックするクランプスライダと、を備えた医療装置において、
前記クランプスライダが、
前記ガイドレールに当接して、前記クランプスライダの動きを固定させるロック部と、
前記ロック部を前記ガイドレールに当接させる固定力を加える固定力部と、
前記ロック部と前記固定力部との間に配置され、前記固定力部からの固定力を前記ロック部に伝達可能な第1の転動体と、
第1の転動体と前記固定力部との間に配置され、前記第1の転動体と当接し、前記ガイドレールに沿った方向に移動することにより、前記クランプスライダの動きをロックまたはロック解除する第2の転動体と、
前記第2の転動体と固定力部との間に配置され、前記第2の転動体と当接し、前記固定力部からの固定力を前記第2の転動体に伝達可能な第3の転動体と、
を有することを特徴とする医療装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック装置、クランプスライダおよび医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手術室または処置室で使用される手術台等の医療装置は、患者を載せるテーブルを、医療行為の状況に応じて、テーブルのスライドをロックし、ロックを解除するロック装置が開発されている。例えば、特許文献1には、ガイドレールを用いて案内されるキャリッジに設けられるブレーキング兼クランピング装置であって、スライドくさび伝動装置を介して操作可能な少なくとも1つの摩擦ロック装置を有していて、摩擦ロック装置は、ハウジング内に支承されていてガイドレールに圧着可能な少なくとも1つの押圧部材を有しており、スライドくさび伝動装置は、摩擦ロック装置を負荷するために少なくともばね力を用いて一方の方向に運動させられ、かつ負荷解除のためには少なくとも1つのピストンによって空気力又は液圧による圧力を用いて逆方向に運動させられ、スライドくさび伝動装置のスライドくさびは、少なくとも1つの転動体を介して押圧部材に作用し、転動体はケージ内に支承されているブレーキング兼クランピング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-517571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スライドするスライドくさびの傾斜により、押圧部材がガイドレールの方に押し当てられるため、くさびの傾斜が小さい場合は、ロック状態でくさびが噛み込んでしまい解除ができないことがあり、一方、くさびの傾斜が大きい場合は、ロック状態でも反力も大きいため、くさびをスライド方向に常に強く押し続ける必要があった。そのため、ロックおよびロック解除の切り替えと、ロック状態を維持し易さとを、同時に満たすことが難しかった。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、ロックおよびロック解除の切り替えが的確にでき、ロック状態を維持し易いロック装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも1つのガイドレールを用いて案内されるクランプスライダに設けられるロック装置であって、前記ガイドレールに当接して、前記クランプスライダの動きを固定させるロック部と、前記ロック部を前記ガイドレールに当接させる固定力を加える固定力部と、前記ロック部と前記固定力部との間に配置され、前記固定力部からの固定力を前記ロック部に伝達可能な第1の転動体と、第1の転動体と前記固定力部との間に配置され、前記第1の転動体と当接し、前記ガイドレールに沿った方向に移動することにより、前記クランプスライダの動きをロックまたはロック解除する第2の転動体と、前記第2の転動体と前記固定力部との間に配置され、前記第2の転動体と当接し、前記固定力部からの固定力を前記第2の転動体に伝達可能な第3の転動体と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロック装置において、前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体が、互いに当接して前記固定力部から前記ロック部の方向に一列に並んだ状態により、前記クランプスライダの動きをロックすることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のロック装置において、前記一列に並んだ状態が、前記第2の転動体を、前記ガイドレールに沿った方向に移動させて、前記第1の転動体および前記第3の転動体の間に押し込める方向に作用させ、前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体の中心が一直線に並んだ配置を超えた状態であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のロック装置において、前記一列に並んだ状態になるように、前記第2の転動体を、前記第1の転動体および前記第3の転動体の間に押し込める方向に作用させる第1のピストンロッドと、前記第1のピストンロッドと対向した位置にあり、前記第2の転動体を、前記一列に並んだ状態から外させる第2のピストンロッドと、を更に備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のロック装置において、前記第1のピストンロッドが、前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体と当接する各当接面を有し、前記第2の転動体に対する当接面が、他の当接面よりも突出していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のロック装置において、前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体を納めるケージを有し、前記ケージは、前記第1のピストンロッドが通過できる開口部を有し、前記ケージは、前記第1のピストンロッドとは反対側で、前記一列に並んだ状態で、各転動体と当接可能な内部面を有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5に記載のロック装置において、前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体を納めるケージを有し、前記ケージは、前記第1のピストンロッドが通過できる開口部を有し、前記ケージは、前記第1のピストンロッドとは反対側で、前記一列に並んだ状態で、各転動体と当接可能な内部面を有し、前記内部面が、前記第2の転動体に対応した凹みを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1に記載のロック装置において、前記第2の転動体を、油圧により前記ガイドレールに沿った方向に移動させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1に記載のロック装置において、前記固定力部が、バネ機構により前記固定力を発生させることを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、請求項1に記載のロック装置において、前記第1の転動体、前記第2の転動体および前記第3の転動体は、円柱体であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項11に記載の発明は、ガイドレールが案内されるハウジングの溝部と、前記溝部内の空間に突き出て、前記ガイドレールに当接して、前記クランプスライダの動きを固定させるロック部と、前記ロック部を前記ガイドレールに当接させる固定力を加える固定力部と、前記ロック部と前記固定力部との間に配置され、前記固定力部からの固定力を前記ロック部に伝達可能な第1の転動体と、第1の転動体と前記固定力部との間に配置され、前記第1の転動体と当接し、前記ガイドレールに沿った方向に移動することにより、前記クランプスライダの動きをロックまたはロック解除する第2の転動体と、前記第2の転動体と固定力部との間に配置され、前記第2の転動体と当接し、前記固定力部からの固定力を前記第2の転動体に伝達可能な第3の転動体と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項12に記載の発明は、基台に対して移動可能なテーブルと、前記テーブルの移動方向を規定するガイドレールと、前記ガイドレールに対して案内されて動きをロックするクランプスライダと、を備えた医療装置において、前記クランプスライダが、前記ガイドレールに当接して、前記クランプスライダの動きを固定させるロック部と、前記ロック部を前記ガイドレールに当接させる固定力を加える固定力部と、前記ロック部と前記固定力部との間に配置され、前記固定力部からの固定力を前記ロック部に伝達可能な第1の転動体と、第1の転動体と前記固定力部との間に配置され、前記第1の転動体と当接し、前記ガイドレールに沿った方向に移動することにより、前記クランプスライダの動きをロックまたはロック解除する第2の転動体と、前記第2の転動体と固定力部との間に配置され、前記第2の転動体と当接し、前記固定力部からの固定力を前記第2の転動体に伝達可能な第3の転動体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガイドレールに当接させてクランプスライダの動きを固定させるロック部とロック部をガイドレールに当接させる固定力を加える固定力部との間に順に配置された、第1の転動体、第2の転動体および第3の転動体において、第2の転動体が第1の転動体および第3の転動体間に入り込み、固定力部からの固定力がロック部に伝達してクランプスライダの動きをロックし、逆に、第2の転動体が抜けてロックが解除されるので、ロックおよびロック解除の切り替えが的確にでき、かつ、容易にロック状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るクランプスライダの内部の構成の一例を示す斜視図である。
図2図1のクランプスライダの外側の構成の一例を示す斜視図である。
図3図1のクランプスライダの外側の構成の一例を示す斜視図である。
図4図3のクランプスライダの断面の一例を示す断面図である。
図5図3のクランプスライダの断面の一例を示す斜視断面図である。
図6図1の第1ピストンロッドの一例を示す斜視図である。
図7A図1のケージの一例を示す斜視図である。
図7B図1のケージの一例を示す斜視図である。
図8図1のケージと各部材との配置の一例を示す斜視図である。
図9図1のケージと各部材との配置の一例を示す断面図である。
図10A】クランプスライダの動作例を示す断面図である。
図10B】クランプスライダの動作例を示す断面図である。
図11図1のクランプスライダを利用した手術台の外観の一例を示す斜視図である。
図12図11の手術台の横スライド部の一例を示す斜視図である。
図13図11の手術台の基台における昇降部の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、クランプスライダ等に対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0021】
[1.クランプスライダおよび各パーツの構成および機能概要]
(1.1 クランプスライダの構成および機能概要)
【0022】
まず、本発明の一実施形態に係るクランプスライダの構成および概要機能について、図1から図6を用いて説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係るクランプスライダの概略構成の一例を示す斜視図である。図2および図3は、図1のクランプスライダの外側の構成の一例を示す斜視図である。図4は、図3のクランプスライダ1のA-A線断面の一例を示す断面図である。図5は、図3のクランプスライダ1のA-A線断面の一例を示す斜視断面図である。図6は、クランプスライダの第1ピストンロッドの一例を示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るクランプスライダ1は、ガイドレールRに対してスライド可能に設置されるハウジング部10と、ガイドレールRに対してクランプスライダ1の動きをロックおよびロック解除を行うロック・解除部20と、油圧によりロック・解除部20のロックおよびロック解除を行う油圧部30、35と、ガイドレールに当接させる固定力を加えるバネ部40と、ロック・解除部20を構成する一部の部材を収容するケージ50と、を備える。
【0025】
なお、少なくともロック・解除部20とバネ部40とから、ガイドレールを用いて案内されるクランプスライダに設けられるロック機構のロック装置を構成する。また、ロック装置は、油圧部30、35およびケージ50を有してもよい。
【0026】
クランプスライダ1は、ガイドレールRに対してスライドさせる対象にボルト等で固定され、対象のスライドの動きを固定したり、解除したりする。例えば、クランプスライダ1が、手術台に設置された場合、手術台のテーブルのスライドの動きを固定したり、解除したりする。なお、液晶や半導体等の搬送装置、工作機械等のガイドレールに沿ってスライドさせる対象に、本願のロック装置を適用できる。
【0027】
図1から図4に示すように、ハウジング部10は、ガイドレールRをスライドさせる溝部11と、油圧部30を収容する貫通孔12と、油圧部35を収容する貫通孔13と、ケージ50を収容する収容空間14と、ロック・解除部20の押圧部材21を収容する貫通孔15と、バネ部40を収容する貫通孔16と、を有する。ハウジング部10の材質は、合金鋼、炭素鋼、銅、銅合金、鉄鋳物、アルミニウム、ステンレス等の金属である。
【0028】
溝部11は、ガイドレールRに沿った方向D1に、ガイドレールRを収容できる大きさに溝が形成されている。
【0029】
貫通孔12は、ガイドレールRに沿った方向D1の中心軸C1を有する円筒形で、油圧部30のピストン等を収容できる大きさに形成されている。貫通孔12は、ハウジング部10の外側に開口する開口部を有し、接続孔14aを介して収容空間14に連通している。
【0030】
貫通孔13は、ガイドレールRに沿った方向D1の中心軸C1を有する円筒形で、油圧部35のピストン等を収容できる大きさに形成されている。貫通孔13は、ハウジング部10の外側に開口する開口部を有し、接続孔14bを介して収容空間14に連通している。
【0031】
収容空間14は、ケージ50等を収容できる大きさに形成されている。
【0032】
貫通孔15は、中心軸C1と直交する中心軸C2を有する円筒形で、押圧部材21を収容できる大きさに形成されている。貫通孔15は、ハウジング部10の溝部11に開口する開口部を有し、収容空間14に連通している。
【0033】
貫通孔16は、中心軸C2を有する円筒形で、バネ部40の皿バネやバネピストン等が収容できる大きさに形成されている。貫通孔16は、ハウジング部10の外側に開口する開口部を有し、収容空間14に連通している。貫通孔16の外側の開口部には、積層させた皿バネ42を収容できるバネ収容部42aと、ネジ構造で嵌合している。
【0034】
図2に示すように、ハウジング部10は、ガイドレールRに対してスライドさせる対象にボルト等で取り付ける取付部材5を有する。溝部11と反対側のハウジング部10の表面に凹みが形成され、取付部材5が埋め込まれている。取付部材5の中央部で、ハウジング部10にボルト等で固定されている。取付部材5の4箇所に、取り付け対象に取り付けるためのボルト穴が形成されている。
【0035】
なお、クランプスライダ1とガイドレールRとの動きは、相対的である。例えば、クランプスライダ1の取付部材5により取り付けられた取付対象が、基台等に設置されたガイドレールR上を案内されて動いてもよいし、基台等に設置された取付対象に取り付けられたクランプスライダ1上を、テーブルに取り付けられた少なくとも1つのガイドレールRが案内されてスライドしてもよい。
【0036】
図1図4および図5に示すように、ロック・解除部20は、ガイドレールRに当接する押圧部材21と、バネ部40からの固定力を押圧部材21に伝達可能な第1の転動体22と、第1の転動体22と当接し、ガイドレールRに沿った方向D1に移動することにより、クランプスライダ1の動きを固定または解除する第2の転動体23と、第2の転動体23と当接し、バネ部40からの固定力を第2の転動体23に伝達可能な転動体24と、を有する。第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24は、固定力部であるバネ部40からの固定力を、ロック部の一例である押圧部材21に伝達する固定力伝達部を形成する。
【0037】
押圧部材21は、ガイドレールRに当接して、クランプスライダ1の動きを固定させるロック部の一例である。押圧部材21の材質は、炭素鋼、合金鋼、鋼、ステンレス、銅合金等の金属製である。押圧部材21のガイドレールRとの当接部は、ブレーキシューの機能を有する。
【0038】
押圧部材21は、ほぼ円柱形状で、鍔部21aを有する。鍔部21aの径は、貫通孔15の径より大きく、収容空間14側に存在し、押圧部材21が、貫通孔15から、溝部11に抜け出ないようになっている。鍔部21aが、収容空間14の内壁に対応する部分には、弾力性があるリング部材が挿入されている。このリング部材は、収容空間14の貫通孔15側の開口部の周りである収容空間14の内壁に当接している。このリング部材により、押圧部材21は、第1の転動体22側に付勢されている。このため、ロック解除状態で、第1の転動体22からの固定力が緩んでも、押圧部材21と第1の転動体22との接触が離れないようになっている。このためガタつきが発生しない。リング部材の材質として、ウレタン、ゴム等の弾性を有するものが好ましい。リング部材は、金属の皿バネ等の弾性がある部材でもよい。なお、リング部材は、無くてもよい。
【0039】
第1の転動体22の形状は、円柱形である。円柱体である第1の転動体22の中心軸は、中心軸C1および中心軸C2と直交している。第1の転動体22は、押圧部材21とバネ部40との間に配置されている。第1の転動体22は、押圧部材21と第2の転動体23との間に、互いに接触して配置されている。第1の転動体22の円柱面と押圧部材21の鍔部21a側の底面とが、接触している。第1の転動体22の円柱面と、第2の転動体23の円柱面とが接触している。第1の転動体22は、押圧部材21および第2の転動体23に対して転がり接触可能にもなっている。
【0040】
第1の転動体22は、ロック部と固定力部との間に配置され、固定力部からの固定力をロック部に伝達可能な第1の転動体の一例である。
【0041】
第2の転動体23の形状は、円柱形である。円柱体である第2の転動体23の中心軸は、中心軸C1および中心軸C2と直交している。第2の転動体23は、第1の転動体22とバネ部40との間に配置されている。第2の転動体23は、第1の転動体22と第3の転動体24の間に、互いに円柱面が接触して配置されている。第2の転動体23は、第1の転動体22および第3の転動体24に対して転がり接触可能にもなっている。第2の転動体23は、第1の転動体22と当接し、ガイドレールRに沿った方向に移動することにより、クランプスライダ1の動きを固定または解除する。
【0042】
第2の転動体23は、第1の転動体と固定力部との間に配置され、第1の転動体と当接し、ガイドレールに沿った方向に移動することにより、クランプスライダの動きをロックまたはロック解除する第2の転動体の一例である。
【0043】
第3の転動体24の形状は、円柱形である。円柱体である第3の転動体24の中心軸は、中心軸C1および中心軸C2と直交している。第3の転動体24は、第2の転動体23とバネ部40との間に互いに接触して配置されている。第3の転動体24の円柱面と第2の転動体23の円柱面とが接触している。第3の転動体24の円柱面とバネ部40のバネピストン41の底面とが、接触している。第3の転動体24は、第2の転動体23および第2のバネピストン41の底面に対して転がり接触可能にもなっている。第3の転動体24は、第2の転動体23と当接し、バネ部40からの固定力を第2の転動体23に伝達可能になっている。
【0044】
第3の転動体24は、第2の転動体と固定力部との間に配置され、第2の転動体と当接し、固定力部からの固定力を第2の転動体に伝達可能な第3の転動体の一例である。
【0045】
第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24の中心軸は、互いに平行である。
【0046】
第1の転動体22、第2の転動体23、および、第3の転動体24の材質は、合金鋼、炭素鋼、ステンレス、セラミック等の摩耗が少ない材質が好ましい。なお、第1の転動体22、第2の転動体23、および、第3の転動体24の形状は、円柱体が好ましいが、球体でもよい。
【0047】
油圧部30は、油圧の作動油が漏れないようにパッキング機構を有する蓋部材31と、作動油により中心軸C1方向に摺動するピストン32と、中心軸C1方向にピストン32に接続したピストンロッド33と、を有する。
【0048】
蓋部材31は、貫通孔12の一方を塞ぐように、固定されている。蓋部材31に作動油が供給される供給口を有する。油圧部30は、蓋部材31を介して、油圧ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0049】
ピストン32は、ピストン32の片側の中央部に、ピストンロッド33の一端と嵌合する嵌合穴が形成されている。
【0050】
ピストン32の材質は、鋼、ステンレス、アルミニウム、銅合金である。
【0051】
ピストン32には、作動油が漏れ出ないように、ゴム等のエラストマ製のリング部材が設置されている。ピストン32が、貫通孔12内を摺動する。ピストン32が摺動しやすく、かつ、作動油が漏れないように、貫通孔12の内壁とピストン32との間に、面粗度や精度を高くしたいためのチューブ形状の部材が挿入されている。チューブ形状の部材の材質として、鋼、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、銅合金等が挙げられる。
【0052】
図6に示すように、ピストンロッド33は、第2の転動体23と当接する当接部33aと、第1の転動体22および第3の転動体24と当接する当接部33bと、ピストンロッド33の嵌合穴に嵌合する嵌合部33cと、当接部33b側から中心軸C3方向に途中まで削られたような4つの凹部33dと、を有する。当接部33aは、ピストンロッド33の摺動方向に第2の転動体23側に、当接部33bよりも僅かに突出している。この僅かな突出は、第2の転動体23の直径に対して、1%~5%が好ましい。この僅かな突出は、後述するケージ50の内部面55の面55aの凹部と対応するので、内部面55の面55aの凹部と同等であることが好ましい。なお、僅かな突出は5%よりも大きくてもよいが、固定力は低下する。
【0053】
ピストンロッド33は、一列に並んだ状態になるように、第2の転動体を、第1の転動体および第3の転動体の間に押し込める方向に作用させる第1のピストンロッドの一例である。ピストンロッド33は、第1の転動体、第2の転動体および第3の転動体と当接する各当接面を有し、第2の転動体に対する当接面が、他の当接面よりも突出している第1のピストンロッドの一例である。
【0054】
図4および図5に示すように、ピストンロッド33の中心軸C3が、中心軸C1に一致するように、ピストンロッド33は、貫通孔12から接続孔14a内に設置される。当接部33aおよび当接部33bは、収容空間14内に存在する。ピストンロッド33が、接続孔14a内を摺動する。
【0055】
ピストンロッド33の材質として、鋼、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、銅合金等が挙げられる。
【0056】
油圧部35は、油圧の作動油が漏れないようにパッキング機構を有する蓋部材36と、作動油により中心軸C1方向に摺動するピストン37と、中心軸C1方向にピストン37に接続したピストンロッド38と、を有する。
【0057】
蓋部材36は、貫通孔13の一方を塞ぐように、固定されている。蓋部材36に作動油が供給される供給口を有する。油圧部35は、蓋部材36を介して、油圧ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0058】
ピストン37は、ピストン37の片側の中央部に、ピストンロッド38の一端と嵌合する嵌合穴が形成されている。ピストン37の材質等は、ピストン32と同じである。ピストン37が、貫通孔13内を摺動する。ピストン32が摺動しやすく、かつ、作動油が漏れないように、貫通孔13の内壁とピストン37との間に、貫通孔12の場合と同様に、チューブ形状の部材が挿入されている。
【0059】
ピストンロッド38は、第2の転動体23と当接する当接部と、ピストン37の嵌合穴に嵌合する本体部と、を有する。ピストンロッド38は、第2の転動体23のみに当接させるため、ピストンロッド33よりも径が小さい円柱形の本体部を有し、ピストンロッド38の当接部は、細い四角柱の形状になっている。ピストンロッド38円柱形の本体部の一端が、そのまま、嵌合部になっている。
【0060】
ピストンロッド38は、第1のピストンロッドと対向した位置にあり、第2の転動体を、一列に並んだ状態から外させる第2のピストンロッドの一例である。
【0061】
図4および図5に示すように、ピストンロッド38の軸が、中心軸C1に一致するように、ピストンロッド38は、貫通孔13から接続孔14b内に設置される。ピストンロッド38の当接部は、収容空間14内に存在する。ピストンロッド38の本体が、接続孔14b内を摺動する。なお、ピストンロッド38の材質は、ピストンロッド33と同じである。
【0062】
油圧部30および油圧部35によって、ピストンロッド33と、ピストンロッド38とは、逆方向に連動して運動させられる。すなわち、ピストンロッド33が、第2の転動体23の方に突き出るときは、ピストンロッド38は、蓋部材36側に引っ込む。ピストンロッド38が、第2の転動体23の方に突き出るときは、ピストンロッド33が、蓋部材31側に引っ込む。このように、油圧部30および油圧部35が、第2の転動体23を、油圧によりガイドレールRに沿った方向に移動させる。
【0063】
バネ部40は、中心軸C2方向に摺動するバネピストン41と、バネピストン41に対して押圧部材21に向かう方向に固定力を発生させる複数の皿バネ42と、ロックおよびロック解除を検知するためのロック・解除センサ部43と、を有する。
【0064】
バネピストン41は、第3の転動体24と当接する当接部41aと、複数重ねた皿バネ42の孔に通すバネ軸部41bと、を有する。バネピストン41の形状は径が異なる円柱を重ねた形で、当接部41aの径が、バネ軸部41bより大きい。バネピストン41の材質は、ピストンロッド33等と同じである。
【0065】
皿バネ42は、炭素鋼、合金鋼鉄、ステンレス鋼等の鋼鉄製である。皿バネ42およびバネピストン41は、バネ収容部42a内に収容される。皿バネ42が、主にガイドレールRに当接させる固定力を発生させる。皿バネ42の代わりに、コイルバネでもよい。
【0066】
このように、バネ部40は、ロック部の一例である押圧部材21をガイドレールRに当接させる固定力を加える固定力部の一例である。バネ部40は、バネ機構により固定力を発生させる固定力部の一例である。
【0067】
ロック・解除センサ部43は、円柱形の金属製の部材により形成されている。ロック・解除センサ部43は、収容部43aの円柱形の孔に挿入され、バネピストン41の動きに追従して、変位し、中心軸C2方向に変位する。中心軸C2方向に変位を検知する変位センサ(図示せず)が、ロック・解除センサ部43の突出部に設置される。収容部43aは、4本のボルトにより、バネ収容部42aに固定されている。この変位センサは、例えば、ロック・解除センサ部43の中心軸C2方向の動きに応じて、ON-OFFになるスイッチである。ロック状態で、ロック・解除センサ部43によりスイッチが押されて、電気的に接触してスイッチONになり、ロック解除で、ロック・解除センサ部43が引っ込み、電気的に接触が離れて、スイッチOFFになる。このように動作するように、変位センサの位置が調整される。
【0068】
(1.2 ケージ50の構成および機能概要)
次に、ケージ50の構成および機能の概要について、図を用いて説明する。図7Aおよび図7Bは、図1のケージの一例を示す斜視図である。
【0069】
図7Aおよび図7Bに示すように、ケージ50は、第1の転動体22用の開口部51と、第3の転動体24用の開口部52と、ピストンロッド33用の開口部53と、ピストンロッド38用の開口部54と、を有する。開口部51は、円柱形のケージ50の一方の底面の端面50aに形成され、開口部52は、円柱体の他方の底面の端面50bに形成される。開口部53、54は、円柱形状のケージ50の円柱面に形成される。
【0070】
ケージ50は、円柱形の金属部材に対して、第1の転動体22および第3の転動体24が中心軸C4の方向に変位可能に、かつ、ピストンロッド33、38および第2の転動体23がピストンロッドの摺動方向に変位可能に、開口部51、52、53、54および内部の空間が形成されている。ケージ50の材質として、合金鋼、炭素鋼、ステンレス等が挙げられる。
【0071】
開口部51の形状は、第1の転動体22の長軸方向の断面形状の矩形である。開口部52の形状は、第3の転動体24の長軸方向の断面形状の矩形である。開口部53の形状は、ピストンロッド33の当接部33a、33bが摺動できる形状である。開口部54の形状は、ピストンロッド38の当接部が摺動できる形状である。
【0072】
ケージ50は、第1の転動体22、第2の転動体23、第3の転動体24、ピストンロッド33およびピストンロッド38を覆うように収容する。ケージ50は、これら複数の転動体の所定の配置を維持できるように収容する。例えば、ケージ50は、ロック状態の配置、およびロック解除状態の配置において、第1の転動体22、第2の転動体23、第3の転動体24の配置が安定するように作用する。また、ケージ50は、ロック状態およびロック解除状態の間の遷移における配置の変化がスムーズに行われるように、作用する。ケージ50は、収容空間14内において、ケージ50の中心軸C4が、中心軸C1に平行になるように設置される。ケージ50は、収容空間14内において、中心軸C1方向に変位可能に収容されている。
【0073】
このように、ケージ50は、第1の転動体、第2の転動体および第3の転動体を納めるケージの一例である。また、開口部53は、第1のピストンロッドが通過できる開口部の一例である。
【0074】
ケージ50は、内部に中心軸C4に平行な内部面55を有する。内部面55は、第2の転動体23が当接可能な面55aと、第1の転動体22および第3の転動体24が中心軸C4の方向に摺動可能な面55bとを有する。面55aは、面55bよりも、僅かに開口部54側に形成され、内部面55の凹み形状になっている。ロックの際に、第2の転動体23が、第1の転動体22および第3の転動体24よりも開口部54側に僅かに寄って配置可能になっている。内部面55の凹みである面55aと、ピストンロッド33の突出した当接部33aの出っ張りと、は対応している。この僅かな凹みは、第2の転動体23の直径に対して、1%~5%が好ましい。ピストンロッド33の当接部33aに対応するので、ピストンロッド33の当接部33bに対する当接部33aの突出と同等であることが好ましい。なお、この僅かな凹みは5%よりも大きくてもよいが、固定力は低下する。
【0075】
このように、内部面55が、第1のピストンロッドとは反対側で、一列に並んだ状態で、各転動体と当接可能な内部面の一例である。内部面55が、第2の転動体に対応した凹みを有する内部面の一例である。
【0076】
(1.3 ケージ50と各部材との配置)
次に、ケージ50と、油圧部30、35およびロック・解除部20の各部材との配置について、図8および図9を用いて説明する。図8は、ケージ50と各部材との配置の一例を示す斜視図である。図9は、ケージ50と各部材との配置の一例を示す、図8のB―B線断面図である。
【0077】
図8および図9は、ロック状態を示す図である。図8および図9に示すように、ガイドレールRに沿った方向D1に、ピストンロッド33と、転動体22、23、24と、ピストンロッド38と、配置される。転動体22、23、24と、ピストンロッド33およびピストンロッド38の一部が、ケージ50に収容される。第1の転動体22と、第2の転動体23と、第3の転動体24とは、ロック状態で、方向D1と直交して、ほぼ1直線状に配置される。
【0078】
ロック状態では、ピストンロッド33の突出した当接部33aにより、第2の転動体23が、第1の転動体22および第3の転動体24よりも、ピストンロッド38側にある。ケージ50の面55aの一部が、第2の転動体23を受け止めている。第1の転動体22および第3の転動体24は、ピストンロッド33の当接部33bと、ケージ50の面55bとに挟まれている。
【0079】
ピストンロッド33とケージ50とは、ケージ50の開口部53を通して、方向D1に互いに摺動できるようになっている。ピストンロッド38とケージ50とは、ケージ50の開口部52を介して、方向D1に互いに摺動できるようになっている。
【0080】
第1の転動体22の一部は、ケージ50の開口部51から、中心軸C2の方向に、端面50aから突出して、押圧部材21に固定力を加えるようになっている。第3の転動体24の一部は、ケージ50の開口部54から、中心軸C2の方向に、端面50bから突出して、バネピストン41の当接部41aと当接している。
【0081】
第1の転動体22と、第2の転動体23と、第3の転動体24とが、ほぼ1直線状に並んだ状態で、バネピストン41からの固定力が、直接、ガイドレールRに加わる状態のロック状態になる。すなわち、第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24が、互いに当接してバネ部40から押圧部材21の方向に一列に並んだ状態になる。
【0082】
さらに、第2の転動体23が、ピストンロッド38側に僅かにずれた状態で、ケージ50内部で、ピストンロッド33の当接部33a、33bと、ケージ50の内部面55の面55a、55bにより、第1の転動体22と第2の転動体23と第3の転動体24とが、挟まれて固定されるので、振動等の外力があっても、ロック状態が、安定する。すなわち、ピストンロッド33の当接部33aが、第2の転動体23を、ガイドレールRに沿った方向に移動させて、第1の転動体22および第3の転動体24の間に押し込める方向に作用させ、第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24の中心が一直線に並んだ配置を超えた状態になる。この僅かなずれは、第2の転動体23の直径に対して、1%~5%が好ましい。なお、この僅かなずれは5%よりも大きくてもよいが、固定力は低下する。
【0083】
[2.クランプスライダ1の動作例]
次に、クランプスライダ1のロックおよびロック解除の動作例について、図を用いて説明する。図10Aは、クランプスライダ1のロック解除状態を示す断面図である。図10Bは、クランプスライダ1のロック状態を示す断面図である。
【0084】
(2.1 ロック解除状態)
図10Aは、クランプスライダ1とガイドレールRとが互いに自由にスライドできるロック解除状態を示している。図10Aに示すように、ロック解除状態では、油圧部30の作動油が蓋部材31とピストン32との空間から取り出されるように、油圧が制御され、蓋部材31とピストン32との空間は狭まっている。また、このロック解除状態では、油圧部35の作動油が蓋部材36とピストン37と空間に供給されるように、油圧が制御されて、蓋部材36とピストン37と空間が広がっている。
【0085】
油圧によりピストン37を介して、ピストンロッド38が、第2の転動体23側にスライドし突出し、第2の転動体23を押し出した状態になっている。一方、油圧によりピストン32を介して、ピストンロッド33が蓋部材31側に引っ込んだ状態になっている。
【0086】
第2の転動体23が中心軸C1の方向に押し出され、3つの転動体の並びから外れた状態になり、第1転動体22へのバネ部40からの固定力の伝達が切れた状態となる。このため、押圧部材21へのバネ部40からの固定力が弱くなり、鍔部21aのリング部材により、押圧部材21が、第1の転動体22と共に、バネ部40側に移動し、ガイドレールRから離れた状態になっている。
【0087】
すなわち、第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24が、互いに当接してバネ部40から押圧部材21の方向に一列に並んだ状態から、第2の転動体23が外されることで、バネ部40からの固定力が、押圧部材21に、十分に伝達できなくなる。
【0088】
(2.2 ロック状態)
図10Bは、ガイドレールRがクランプスライダ1によりロックされたロック状態を示している。図10Bに示すように、ロック状態では、油圧部30の作動油が蓋部材31とピストン32と空間に供給されるように、油圧が制御されて、蓋部材36とピストン37と空間が広がっている。また、このロック状態では、油圧部35の作動油が蓋部材36とピストン37との空間から取り出すように、油圧が制御され、蓋部材36とピストン37との空間は狭まっている。
【0089】
油圧によりピストン32を介して、ピストンロッド33が、3つの転動体22、23、24側に押し出され、油圧によりピストン37を介して、ピストンロッド38が蓋部材36側に引っ込んだ状態になっている。ピストンロッド33の当接面と、ケージ50の内部面55との間に挟まれ、3つの転動体22、23、24が、中心軸C2方向にほぼ一直線に並んだ状態になっている。さらに詳細には、図8および図9に示したように、第2の転動体23が、ピストンロッド38側に僅かにずれた状態で固定されている。第2の転動体23は、ピストンロッド33の当接部33aと、ケージ50の内部面55の面55aとの間に挟まれている。第1の転動体23および第3転動体24は、ピストンロッド33の当接部33bと、ケージ50の内部面55の面55bとの間に挟まれている。
【0090】
3つの転動体22、23、24が、中心軸C2方向にほぼ一直線に並んだ状態で、バネ部40からの固定力が、押圧部材21に作用して、押圧部材21がガイドレールRを押しつける。ガイドレールRは、押圧部材21と、ハウジング部10の溝部11の向こう側の壁と間に挟まれ、固定される。
【0091】
すなわち、第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24が、互いに当接してバネ部40から押圧部材21の方向に一列に並んだ状態で、第3の転動体24は、バネ部40からの固定力を第2の転動体23に対して、十分に伝達可能になり、第1の転動体22は、バネ部40からの固定力を押圧部材21に対して、十分に伝達可能になる。
【0092】
(2.3 ロック解除状態からロック状態への遷移)
次に、図10Aのロック解除状態から図10Bのロック状態への遷移、すなわち、ブレーキおよび固定について説明する。
【0093】
図10Aから図10Bに示すように、油圧の制御により、ピストンロッド33が、中心軸C1方向の3つの転動体22、23、24側に移動する。特に、ピストンロッド33が、第2の転動体23を、第1の転動体22と第3の転動体24の間に押し込める。第2の転動体23が油圧により、中心軸C1方向に移動する。
【0094】
第2の転動体23が押し込められるとき、第2の転動体23と円柱面が互いに接触している第1の転動体22は、押圧部材21側に移動し、押圧部材21をガイドレールR側に移動させる。第3の転動体24は、第2の転動体23の中心軸C1方向の動きと共に、バネピストン41側に移動する。第3の転動体24に当接するバネピストン41も、中心軸C2の方向でロック・解除センサ部43側に移動し、皿バネ42が縮まり、バネ部40の固定力が増加していく。すなわち、第3の転動体24が、皿バネ42の力により、第2の転動体23側に押し戻される力が増加していく。ロック・解除センサ部43は、バネピストン41の動きに追従して、ハウジング部10の外側に向かって移動していく。
【0095】
図10Aに示すように、第2の転動体23が押し込められるとき、ケージ50が、ピストンロッド38の本体部に当接している。第1の転動体22および第3の転動体24は、ケージ50の内部面55の面55bにより、中心軸C1方向の移動が制限される。そのため、ピストンロッド33からの油圧の力が、第2の転動体23と円柱面で接触した第1の転動体22を介して、押圧部材21をガイドレールR側に移動し、十分働くようになっている。
【0096】
押圧部材21が、ガイドレールRに接触しブレーキがかかり、押圧部材21からの固定力が、所定以上になるとロックがかかる状態になる。第2の転動体23が、さらに押し込まれ、3つの転動体22、23、24の中心が、中心軸C2方向に、一直線に並んだとき、バネ部40の固定力が最大になる。
【0097】
さらに、ピストンロッド33の当接部33aにより、第2の転動体23が、ピストンロッド38側に僅か移動する。このとき、第1の転動体22および第3の転動体24は、ピストンロッド33の当接部33bと、ケージ50の内部面55の面55bとに挟まれて、3つの転動体22、23、24は固定され安定する。3つの転動体22、23、24の中心が、中心軸C2方向に一直線に並んだ状態から僅かにずれるが、3つの転動体22、23、24は、ほぼ一直線で、ガイドレールRを十分にロックして、図10Bに示すようにロックが完了する。
【0098】
(2.4 ロック状態からロック解除状態への遷移)
次に、図10Aのロック解除状態から図10Bのロック状態への遷移、すなわち、ロック解除について説明する。
【0099】
図10Bから図10Aに示すように、油圧の制御により、ピストンロッド38が、中心軸C1方向の3つの転動体22、23、24側に移動する。特に、ピストンロッド38が、第2の転動体23を、第1の転動体22と第3の転動体24の間から、押し出す。
【0100】
このとき、ピストンロッド38の油圧の力が所定値以上になると、3つの転動体22、23、24の中心が、中心軸C2方向に、一直線に並んだ、バネ部40の固定力が最大になる状態を乗り越える。一旦、乗り越えると、第1の転動体22および第3の転動体24と、円柱面が互いに接触している第2の転動体23は、急に外れ、押圧部材21のバネ部40からの固定力の伝達が切れて、一気にロックが解除される。
【0101】
第3の転動体24は、第2の転動体23の中心軸C1方向の動きと共に、押圧部材21側に移動する。第3の転動体24に当接するバネピストン41も、中心軸C2の方向で押圧部材21側に移動し、皿バネ42が緩み、バネ部40の固定力も減少する。ロック・解除センサ部43は、バネピストン41の動きに追従して、押圧部材21側に、すなわち、ハウジング部10の内側に移動する。
【0102】
実施形態に係るクランプスライダ1によれば、ガイドレールRに当接させてクランプスライダ1の動きを固定させる押圧部材21と、押圧部材21をガイドレールRに当接させる固定力を加えるバネ部40との間に順に配置された、第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24において、第2の転動体23が第1の転動体22および第3の転動体24間に入り込み、バネ部40からの固定力が押圧部材21に伝達してクランプスライダ1の動きをロックし、逆に、第2の転動体23が抜けてロックが解除されるので、ロックおよびロック解除の切り替えが的確にでき、かつ、容易にロック状態を維持することができる。また、実施形態に係るクランプスライダ1によれば、ロック状態とロック解除状態との間の遷移を素早く行うことができる。
【0103】
従来技術のように、スライドくさびの場合、ガイドレールRを固定する固定力が一定である。そのため、固定力を大きくするためには、くさびの角度を小さくして、より並行に近い角度にする必要があった。しかし、くさびの角度が平行に近いと、杭が撃ち込まれたように、くさびがはまり込んでしまって、ロック解除できなくなる恐れがあった。
【0104】
一方、本願のように、スライドくさびでなく、転動体の場合、転動体23が押されて、3つの転動体22、23、24の中心が、中心軸C2方向に、一直線に並んだとき、バネ部40の固定力が最大になる。一直線になる前も直線に近づくにつれて、バネ部40を押し返す力が強くなり、バネ部40のより強いバネ力を発生させることができる。さらに、第2の転動体23を、ピストンロッド38により、容易に3つの転動体の並びから外すことができるので、容易にロック解除ができる。
【0105】
また、従来技術のように、スライドくさびであって、くさびの傾斜が小さい場合は、くさびを大きくスライドさせる必要があったが、実施形態に係るクランプスライダ1は、転動体を大きくずらす必要が無いため、より小型化することができる。
【0106】
第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24が、互いに当接してバネ部40から押圧部材21の方向に一列に並んだ状態により、クランプスライダ1の動きをロックする場合、バネ部40からの固定力が、一列に並んだ第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24を介して、直接、押圧部材21に作用するので、クランプスライダ1の動きが、確実にロックされる。
【0107】
一列に並んだ状態が、第2の転動体23を、ガイドレールRに沿った方向に移動させて、第1の転動体22および第3の転動体24の間に押し込める方向に作用させ、第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24の中心が一直線に並んだ配置を超えた状態である場合、第2の転動体23が一直線に並んだ配置を一旦超えているので、第2の転動体23を逆方向に戻らせる方向の障壁となり、ロック状態が安定化し、ロック状態をより維持し易くなる。
【0108】
一列に並んだ状態になるように、第2の転動体23を、第1の転動体22および第3の転動体24の間に押し込める方向に作用させるピストンロッド33と、ピストンロッド33と対向した位置にあり、第2の転動体23を、一列に並んだ状態から外させるピストンロッド38と、を更に備えた場合、ガイドレールRに沿った方向に作用するピストンロッド33およびピストンロッド38により、ロックおよびロック解除の切り替えが的確にでき、かつ、容易にロック状態を維持することができる。また、これにより、ロック状態とロック解除状態との間の遷移を素早く行うことができる。
【0109】
ピストンロッド33が、第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24と当接する当接部33aおよび当接部33bを有し、第2の転動体23に対する当接部33aの当接面が、当接部33bの当接面よりも突出している場合、第2の転動体23が一直線に並んだ配置を一旦超えさせるように、突出分僅かに押し込めることができるので、第2の転動体23を逆方向に戻らせる方向の障壁となり、ロック状態が安定化し、ロック状態をより維持し易くなる。
【0110】
第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24を納めるケージ50を有し、ケージ50は、ピストンロッド33が通過できる開口部53を有し、ケージ50は、ピストンロッド33とは反対側で、一列に並んだ状態で、各転動体と当接可能な内部面55を有する場合、ピストンロッド33とケージ50の内部面55とで、一列に並んだ状態で、各転動体を挟んで固定でき、ロック状態がより安定化し、ロック状態をより維持し易くなる。
【0111】
第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24を納めるケージ50を有し、ケージ50は、ピストンロッド33が通過できる開口部53を有し、ケージ50は、ピストンロッド33とは反対側で、一列に並んだ状態で、各転動体と当接可能な内部面55を有し、内部面55が、第2の転動体23に対応した凹みの面55aを有する場合、第2の転動体23が、各転動体の中心が一直線に並んだ配置を超えた状態で、各転動体22、23、24を固定でき、ロック状態がより安定化する。
【0112】
第2の転動体23を、油圧によりガイドレールRに沿った方向に移動させる場合、油圧であるため、静かに確実に第2の転動体23を移動させることができる。
【0113】
バネ機構により固定力を発生させる場合、固定力の駆動機構を小型化できる。特に、皿バネ42により、より小型化できる。
【0114】
第1の転動体22、第2の転動体23および第3の転動体24は、円柱体である場合、楔と異なり、円柱面同士が接触して、第2の転動体23が、ロック時に第1の転動体22および第3の転動体24の間に入り込み、ロック解除時に抜ける動作をするので、ロック状態およびロック解除状態が明確に切り替わり、ロック状態とロック解除状態との間の遷移を素早く行うことができる。また、第2の転動体23を逆方向に戻らせる方向の障壁を形成させることが可能で、ロック状態が安定化させることが可能である。
【0115】
[3.適用例]
次に、本願のクランプスライダ1を適用した手術台について、図11から図13を用いて説明する。図11は、クランプスライダ1を利用した手術台の外観の一例を示す斜視図である。図12は、図11の手術台の横スライド部の一例を示す斜視図である。図13は、図11の手術台の基台における昇降部の一例を示す斜視図である。
【0116】
クランプスライダ1を適用した手術台60は、長手方向にスライドするテーブル61と、短手方向にスライドする横スライド部62と、高さ方向を調節するための昇降部63と、手術室等に床上に置かれる基台64と、テーブル61等を動かすための油圧を制御するコントローラ65と、を備える。
【0117】
テーブル61の裏側には、平行の2本のガイドレールRが、ボルト等で固定されている。
【0118】
図12に示すように、横スライド部62には、板部材62aに、クランプスライダ1が取付部材5においてボルト等で1台固定されている。横スライド部62に対して、2本のテーブル61のガイドレールRが、スライド可能になっている。ガイドレールRの1本に、クランプスライダ1が作用して、コントローラ65の指令により、油圧により、テーブル61の長手方向の動きが、ロックされたり、解除されたりする。
【0119】
なお、横スライド部62の裏側には、図13で示される平行の3本のガイドレールRが、ボルト等で固定されている。
【0120】
図13に示すように、昇降部63に、3本のガイドレールRのうち、真ん中のガイドレールR用に、クランプスライダ1が取付部材5ボルト等で1台固定されている。昇降部63に対して、3本のテーブル61のガイドレールRが、スライド可能になっている。ガイドレールRの1本に、クランプスライダ1が作用して、コントローラ65の指令により、油圧により、横スライド部62の短手方向の動きが、ロックされたり、解除されたりする。
【0121】
クランプスライダ1を使用することにより、ロック状態から解除への移行が素早くできるので、ロックされたテーブル61を素早く解除して、スライドさせることができる。このため、手術中においても、ロックおよびロック解除の切り替えが的確にでき、ロック状態において、テーブル61を的確に固定できる。
【符号の説明】
【0122】
1:クランプスライダ
10:ハウジング部
20:ロック・解除部
21:押圧部材(ロック部)
22:第1の転動体
23:第2の転動体
24:第3の転動体
30、35:油圧部
33:ピストンロッド(第1のピストンロッド)
38:ピストンロッド(第2のピストンロッド)
40:バネ部(固定力部)
50:ケージ

【要約】
ロックおよびロック解除の切り替えが的確にでき、ロック状態を維持し易いロック装置等を提供する。少なくとも1つのガイドレールRを用いて案内されるクランプスライダ1に設けられるロック装置であって、ガイドレールに当接して、クランプスライダの動きを固定させるロック部(21)と、ロック部をガイドレールに当接させる固定力を加える固定力部(40)と、ロック部と固定力部との間に配置され、固定力部からの固定力をロック部に伝達可能な第1の転動体22と、第1の転動体と固定力部との間に配置され、第1の転動体と当接し、ガイドレールに沿った方向に移動することにより、クランプスライダの動きをロックまたはロック解除する第2の転動体23と、第2の転動体と固定力部との間に配置され、第2の転動体と当接し、固定力部からの固定力を第2の転動体に伝達可能な第3の転動体24と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13