(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】点検監視システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/12 20060101AFI20231102BHJP
G05D 1/10 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G05D1/12 B
G05D1/10
(21)【出願番号】P 2020130414
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】甲木 義人
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176710(WO,A1)
【文献】特開平07-056631(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003479(WO,A1)
【文献】特開平10-171535(JP,A)
【文献】特開2014-071614(JP,A)
【文献】特開2020-091580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/12
G05D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの一方の側に設けられた光源と、
前記プラントの他方の側に配置される無人飛行体と、
を備え、
前記無人飛行体は、
前記光源から放射される直進光を受光する受光部と、
前記直進光が前記受光部に照射するように姿勢を制御する制御部と、
前記プラントの環境情報を取得するセンサと、
を含み、
前記センサは、前記無人飛行体が前記直進光の光路に沿って飛行する間に前記プラントの環境情報を取得し、
前記制御部は、取得された前記環境情報を記憶し、
前記無人飛行体の前方飛行のために前記一方の側に設けられた第1ターゲットと、
前記無人飛行体が前方飛行時の姿勢のまま後方飛行するために前記他方の側に設けられた第2ターゲットと、
をさらに備え、
前記無人飛行体は、
前記第1ターゲットに接近したときに第1信号を出力する第1近接センサと、
前記第2ターゲットに接近したときに第2信号を出力する第2近接センサと、
を含み、
前記制御部は、
前記第1信号を検出した場合には、前方飛行を停止して後方飛行に切り替え、
前記第2信号を検出した場合には、後方飛行を停止し、
前記第1ターゲットは、前記一方の側に離間して2つ設けられ、
前記第1近接センサは、前記2つの第1ターゲットに対向するように設けられ、
前記制御部は、2つの前記第1信号を検出した場合に前記無人飛行体の飛行を停止して後方飛行に切り替え、2つの前記
第1信号のうち1つの前記第1信号を検出した場合に前記無人飛行体の飛行の方向を修正する点検監視システム。
【請求項2】
前記受光部は、
前記直進光の照射を検出可能な第1受光領域と、
前記第1受光領域を取り囲んで設けられ、前記直進光の照射を検出可能な第2受光領域と、
を含み、
前記制御部は、前記直進光の照射位置が前記第2受光領域であることを検出した場合には、前記直進光の照射位置が前記第1受光領域となるように、前記無人飛行体の姿勢を補正する請求項1記載の点検監視システム。
【請求項3】
前記センサは、カメラと、前記プラントの環境データを取得する環境センサと、を含み、
前記制御部は、
前記カメラで取得した画像データを、前記画像データを取得した時刻に関連付けて記憶し、
前記時刻に同期して前記環境センサで環境データを取得して記憶する請求項1
または2に記載の点検監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、抄紙機設備の点検を自動的に行うことを可能にする点検監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントに設置された装置や機器等の点検や設置環境の調査等のため、定期、不定期の点検が行われる。点検のための人材確保の困難性や自動データ収集のためのセンシングシステム等の導入による費用増大の抑制、点検もれの防止等のために、簡素で自動化された点検システムの導入が求められている。
【0003】
たとえば、水処理プラントにおける巡回点検の事例がある(たとえば、特許文献1等)。この事例では、無線やGPSを利用するドローンに赤外線カメラを含むカメラを搭載し、環境の監視やプラント各機器のセンサデータの確認を実施する。そして、収集したデータをデータサーバ等に無線送信し、データ解析装置によって、解析可能に構築されたシステムとされている。このため、人が巡回する必要がなくなることで、人的コストの削減や、ドローンの巡回によって、オンライン計器の役割を担うことができ、高価なオンライン計器導入コストの削減を実現している。
【0004】
また、他の事例では、ボイラ等の煙突の内部点検を、ドローンにカメラを搭載して映像で確認できるようにして、ゴンドラを用いて人の目で実施していた点検作業を部分的に自動化するものがある(たとえば、特許文献2等)。この例では、ドローンを線状のガイドに沿って操作することによって、GPS等の無線通信環境によらず、ドローンの操作を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/176710号
【文献】特許第6505927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製紙プラントでは、定点カメラによる管理や人による目視が困難な箇所が多い。たとえば、連窯やボイラの内部検査においては、内部が酸欠となる危険もあり、人間が立ち入って点検することは困難である。
【0007】
抄紙機設備の中でも、ドライヤ設備は、湿った紙を温度の高い円筒に押し付け、乾燥させる設備で、抄紙機設備の中でも最もエネルギーコストが高く、かつ増産時のボトルネックになりやすい。そのため、このようなドライヤ設備では、設備能力・健全性が特に重視される。したがって、ドライヤ設備の構成機器の点検・監視はとても重要である。一方で、ドライヤ設備では、高温多湿であり、かつ操業時にはフード(囲い)がされており、人による目視確認が困難である。また、構成機器が大型のため、設備が長期間止まる定修時に人手をかけて点検を行っている。
【0008】
定点カメラやセンサでのデータ収集を実施しようにも、大型のドライヤ設備になると、フード内は高さ10m、幅10m、長さ50m以上もあるため、計測点が多く、定点計測がセンサ等の数量・コスト的にも困難である。また、建屋のコンクリートや多数の設備の干渉により、屋内でのGPSやWiFi等の無線通信を使用することが難しい箇所も多く、特許文献1のようにドローンを無線通信で飛行制御をすることが難しく、屋内設備への適用が困難な場合が多い。また、特許文献2の技術のように線状のガイドを常時設けるのは、操業上の妨げとなり、点検のたびに設けるのでは作業工数が増大するため、適用が困難な場合が多い。
【0009】
この発明の実施形態は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、カメラやセンサを搭載した無人飛行体にて、容易に設備の点検・監視ができる点検監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る点検監視システムは、プラントの一方の側に設けられた光源と、前記プラントの他方の側に配置される無人飛行体と、を備える。前記無人飛行体は、前記光源から放射される直進光を受光する受光部と、前記直進光が前記受光部に照射するように姿勢を制御する制御部と、前記プラントの環境情報を取得するセンサと、を含む。前記センサは、前記無人飛行体が前記直進光の光路に沿って飛行する間に前記プラントの環境情報を取得する。前記制御部は、取得された前記環境情報を記憶する。この点検監視システムは、前記無人飛行体の前方飛行のために前記一方の側に設けられた第1ターゲットと、前記無人飛行体が前方飛行時の姿勢のまま後方飛行するために前記他方の側に設けられた第2ターゲットと、をさらに備える。前記無人飛行体は、前記第1ターゲットに接近したときに第1信号を出力する第1近接センサと、前記第2ターゲットに接近したときに第2信号を出力する第2近接センサと、を含む。前記制御部は、前記第1信号を検出した場合には、前方飛行を停止して後方飛行に切り替え、前記第2信号を検出した場合には、後方飛行を停止する。前記第1ターゲットは、前記一方の側に離間して2つ設けられる。前記第1近接センサは、前記2つの第1ターゲットに対向するように設けられる。前記制御部は、2つの前記第1信号を検出した場合に前記無人飛行体の飛行を停止して後方飛行に切り替え、2つの前記第1信号のうち1つの前記第1信号を検出した場合に前記無人飛行体の飛行の方向を修正する。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態では、カメラやセンサを搭載した無人飛行体にて、容易に設備の点検・監視ができる点検監視システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る点検監視システムを例示する模式的な平面図である。
【
図3】
図3(a)は、第1の実施形態の点検監視システムの一部を例示する模式的な平面図である。
図3(b)は、第1の実施形態の点検監視システムの一部を例示する模式的な正面図である。
【
図4】第1の実施形態の点検監視システムの一部を例示する模式的なブロック図である。
【
図5】
図5(a)は、第1の実施形態の点検監視システムの一部を例示する模式的な正面拡大図である。
図5(b)は、第1の実施形態の点検監視システムの動作を説明するための模式的な側面図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、第1の実施形態の点検監視システムの動作を説明するための模式的な平面図である。
【
図7】第1の実施形態の点検監視システムの動作を説明するためのブロック線図である。
【
図8】第2の実施形態に係る点検監視システムを例示する模式的なの分散制御システムの動作を説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る点検監視システムを例示する模式的な平面図である。
図2は、抄紙機の模式的な側面図である。
図1に示すように、本実施形態の点検監視システム100は、ドローン10と、光源30と、を備える。本実施形態の点検監視システム100は、好ましくは、飛行ターゲット32a,32b,34a,34bをさらに備える。
【0015】
本実施形態の点検監視システム100では、ドローン(無人飛行体)10は、カメラや各種センサを搭載し、抄紙機を構成するロール等の機器の間を飛行する間にロール等の機器の状態や機器設置箇所の環境等の情報を収集する。操作者は、ドローン10を回収することによって、収集した情報を取得することができる。
【0016】
光源30は、直進する光線(直進光)を発光し、直進光は、ロール等の機器の間に光路を形成する。ドローン10は、直進光の光路に沿って機器の間を飛行し、各種情報を収集する。
【0017】
ドローン10が飛行を開始する位置および飛行を終了または飛行方向を反転する位置には、飛行ターゲット32a,32b,34a,34bが設けられている。ドローン10は、飛行ターゲット32a,32bに接近すると、飛行を停止する。ドローン10は、その後、飛行方向を反転して後退飛行する。後退飛行とは、ドローン10の向きはそのままにして、逆方向に飛行することをいう。すなわち、後退飛行とは、ドローン10が向きを変えずに光源から遠ざかるように飛行することをいう。
【0018】
この例では、ドライヤパートの点検監視の例が示されている。ドライヤパートでは、複数のロールが配置され、ロール間を乾燥する紙が搬送される。ドローン10は、2つのロール1,2の間を光路に沿って飛行しながら、ロール1,2の間でロール1,2を含む設置機器等の状況を撮影し、搭載されたセンサに応じた環境情報に関するデータを収集する。
【0019】
図2に示すように、ドライヤパートのロール1~4は、所定の間隔で配置され、隣接するロール間を紙5が搬送される。ロール1~4に巻き付けられた紙5には、フェルト用ロール6a~6dが吸湿性のあるフェルト7,8を押し付けており、紙5の水分は、押し付けられたフェルト7,8によって吸い取られる。フェルト7,8は、フェルト用ロール6a~6dによって紙5とともに搬送される。
【0020】
この例では、光源30は、ロール1,2の間であって、フェルト用ロール6bとロール3との間に光路を形成するように設けられている。
【0021】
図1に戻って説明を続ける。
飛行ターゲット32a,32b(第1ターゲット)は、ドローン10の飛行終了位置に設けられている。ドローン10の飛行終了位置は、飛行方向を反転する位置でもある。この例では、飛行ターゲット32a,32bは、光源30に隣接して配置され、光源30は、飛行ターゲット32a,32bの間に配置されている。ドローン10は、光源30が発光する直進光による光路に沿って飛行し、飛行ターゲット32a,32bに近づくと、直進飛行を停止する。その後、ドローン10は、光路に沿って後退飛行する。
【0022】
飛行ターゲット34a,34b(第2ターゲット)は、ドローン10の飛行開始位置に配置されている。飛行ターゲット34a,34bは、直進光の光路に沿う方向で、飛行ターゲット32a,32bに対向する位置にそれぞれ配置されている。飛行方向を反転させたドローン10は、飛行ターゲット34a,34bに近づくと、直進飛行を停止する。
【0023】
飛行開始位置は、点検開始のためにドローン10を載置したり、点検終了したドローン10から収集データを回収したりするために、たとえば、ドライヤパートの作業側(ワークサイド、WS)に設定される。この場合には、飛行終了位置は、機器側(ドライブサイド、DS)に設定される。
【0024】
ドローン10は、上述の直進光の光路に沿った往復飛行を、あらかじめ設定された回数繰り返し、所望の環境情報等に関するデータを収集する。
【0025】
光源30は、飛行終了位置または飛行終了位置よりも遠方に配置される。光源30は、たとえば点状光を出力する。光源30は、線状の光源であってもよい。後述する受光部14の領域14a,14b(
図5(a))に照射された場合に、どの領域14a,14bに照射されているのか判定することができれば、照射時の形状は上述に限らない。
【0026】
光源30は、設置された位置から、ドローン10の飛行開始位置まで十分な強度で到達する能力を有していればよい。抄紙機の設置環境、たとえば高温高湿度の環境であって目視によって十分な視程が確保できない条件の場合には、十分な受光強度が得られるように、光の波長等が適切に選定される。
【0027】
図3(a)は、本実施形態の点検監視システムの一部を例示する模式的な平面図である。
図3(b)は、本実施形態の点検監視システムの一部を例示する模式的な正面図である。
図3(a)および
図3(b)は、本実施形態の点検監視システム100のドローン10の構成を示している。
【0028】
図3(a)および
図3(b)に示すように、ドローン10は、胴体部11と、飛行動力部12a~12dと、受光部14と、近接センサ15a~15dと、カメラ16と、環境センサ18と、を含む。ドローン10は、飛行姿勢、飛行方向等を自動的に制御して、自律的に飛行可能であれば、図の形状、形態に限らない。
【0029】
胴体部11は、飛行動力部12a~12d、受光部14、近接センサ15a~15d、カメラ16および環境センサ18を支持するとともに、後述する制御部を内蔵する。
【0030】
飛行動力部12a~12dは、飛行推進のためのプロペラやプロペラを駆動する電動機および電動機を制御する制御回路等を含んでいる。飛行動力部12a~12dは、支持腕を介して、胴体部11の周囲四隅に設けられている。飛行動力部12a~12dは、それぞれの電動機および制御回路、ならびに、胴体部11内に設けられた制御部および他の制御回路等によってドローン10の飛行姿勢をあらかじめ設定した状態、たとえば床面に対してほぼ平行な状態になるように制御する。また、これらの制御部等によって飛行方向を決定し、制御する。
【0031】
受光部14は、ドローン10の正面に設けられている。受光部14は、2次元平面を有する部材を有し、2次元平面で、光源30から放射される直進光を受光する。受光部14は、直進光を受光する場合には、その2次元平面が直進光にほぼ垂直になるようにドローン10の正面に設けられている。
【0032】
近接センサ15a~15dは、ドローン10の光源30への進行方向の正面側の2箇所および光源30からの後退方向の正面(背面)側の2箇所に設けられている。近接センサ15a,15bは、正面側の2箇所に設けられ、近接センサ15c,15dは、背面側の2箇所に設けられている。この例では、近接センサ15a~15dは、飛行動力部12a~12dの下端にそれぞれ設けられている。近接センサ15a,15bは、飛行ターゲット32a,32bに近づくと、飛行ターゲット32a,32bとの距離に応じた信号を出力する。近接センサ15c,15dは、飛行ターゲット34a,34bに近づくと、飛行ターゲット34a,34bとの距離に応じた信号を出力する。また、近接センサ15a~15dは、ドローン10の飛行を妨げるような位置に存在する障害物等に近づくと、その距離に応じた信号を出力する。
【0033】
近接センサ15a~15dは、たとえば磁気センサや静電センサ等である。音響センサ、光学センサ、マイクロ波を用いたセンサ等を用いてもよい。接近する対象物の材料に応じて、適切な種類のセンサを用いることができる。互いに干渉するセンサを用いる場合には、動作期間を分割することによって混在させることができる。
【0034】
カメラ16は、胴体部11に設けられている。カメラ16は、ドローン10が飛行している周囲の環境を撮影する。カメラ16は、ドローン10の上下左右をそれぞれ撮影するように複数台設けてもよいし、広角撮影用レンズを有するカメラを設けるようにしてもよい。カメラ16は、可視光に限らず、赤外線や所望の波長の光を撮影できるようにしてもよい。カメラ16は、点検する環境に応じて適切なものとすることができる。カメラ16よって動画を撮影するようにしてもよく、撮影された画像データから、機器の振動のデータを得ることもできる。
【0035】
環境センサ18は、ドローン10が飛行している周囲の環境の諸元のデータを取得する。環境センサ18は、複数種類のデータを取得するために取得するデータに応じたセンサを1つまたは複数個設けることができる。取得するデータは、点検する環境に応じて適切に設定することができ、たとえば、温度、湿度、有毒ガスを含む各種ガスの有無、濃度等とすることができ、これらに適応するセンサが選定される。近赤外線分光センサを用いることによって、機器等に付着した付着物の成分分析が可能になり、点検対象物の劣化診断に利用することができる。
【0036】
ドローン10は、カメラ16および環境センサ18によって、あらかじめ設定された周期、タイミングで所望の画像データおよび環境諸元のデータを取得し、保存する。保存されたデータは、ドローン10の飛行終了後に回収される。
【0037】
収集されたデータは、後述するセンサデータ収集・記憶部26(
図4)に、データの種別ごとに記録されるが、カメラ16での撮影時刻に同期するように環境センサ18によるデータを取得するようにしてもよい。これによって、画像データおよび各環境データは、時刻で同期されるので、環境データの取得位置あるいは場所を推定することができ、データ解析用等に利用することができる。
【0038】
図4は、本実施形態の点検監視システムの一部を例示する模式的なブロック図である。
図4に示すように、ドローン10は、制御部20を含む。制御部20は、たとえば胴体部11の内部に設けられる。制御部20は、受光検知部22と、障害物センサ検知部24と、センサデータ収集・記憶部26と、飛行出力制御演算部28と、含む。
【0039】
受光検知部22は、受光部14に接続されている。受光検知部22は、受光部14で受光している直進光の照射位置を判定する。これにより、ドローン10は、光路に沿って飛行しているか否かを判断することができる。
【0040】
図5(a)は、本実施形態の点検監視システムの一部を例示する模式的な正面拡大図である。
図5(b)は、本実施形態の点検監視システムの動作を説明するための模式的な側面図である。
図5(a)に示すように、受光部14は、2次元平面に複数の領域14a,14bを含んでいる。複数の領域14a,14bは、光が当たると、その領域に対応する信号が生成され、出力される。領域14a(第1受光領域)は、受光部14の中心を含む領域である。領域14b(第2受光領域)は、領域14aの周囲を取り囲む領域である。
【0041】
図5(b)に示すように、光源30は、直進光を発光し、出射された直進光は、受光部14に照射される。各領域14a,14bを含む受光部14は、直進光にほぼ垂直に配置される。ドローン10が直進光に沿って直進する場合には、直進光は、中央の領域14aを照射する。ドローン10が直進光の光路から外れると、直進光は、中央の領域14aから周囲の領域14bを照射するようになる。受光検知部22は、いずれの領域で直進光の照射を受けているかを検出し、照射を受けた領域から信号を出力する。制御部20は、信号が出力された領域を判定することによって、直進光に沿って飛行しているか否かを判定することができる。
【0042】
制御部20は、受光部14および受光検知部22によって、直進光の照射位置が領域14aになるように、飛行方向を制御する。制御部20は、照射位置が領域14bとなった場合には、照射位置が領域14aに戻るように飛行方向を制御する。制御部20は、照射位置が領域14bとなった場合には、それまでとは逆方向に飛行方向を補正して、照射位置が領域14aに入るか試行する。所定時間試行しても照射位置が領域14aに入らない場合には、別の方向、たとえばそれまでの方向とは90°異なる方向に飛行方向を補正して試行する。これを照射位置が領域14aに入るまで繰り返す。
【0043】
図4に戻って説明を続ける。
障害物センサ検知部24は、近接センサ15a~15dに接続されている。近接センサ15a~15dは、飛行ターゲットや障害物に近づくと距離に応じた信号を生成し、出力する。そのため、障害物センサ検知部24は、出力された信号によって、いずれの近接センサ15a~15dが飛行ターゲットあるいは障害物に接近しているかを検出することができる。
【0044】
本実施形態の点検監視システム100では、ドローン10が通過できない場所をドローン10に飛行させることはなく、ドローン10の飛行中の上下左右の空間は十分確保されている。しかしながら、なんらかの事情で、ドローン10が点検中の場所に配置された機器等に接近した場合には、進行方向の2つのうちの1つの近接センサがその機器等に接近するので、障害物として認識することができる。
【0045】
図3において説明したように、ドローン10は、飛行方向前方に2箇所、後退飛行方向に2箇所の近接センサ15a~15dを有している。ドローン10は、これらのいずれが物体を検知するかによって、飛行の停止の判断または障害物の判断をすることができる。
【0046】
図6(a)および
図6(b)は、第1の実施形態の点検監視システムの動作を説明するための模式的な平面図である。
近接センサ15a~15dは、ドローン10の飛行方向に応じて、アクティブとなるセンサが切り替わる。ドローン10が光源30に向かって飛行する場合には、近接センサ15a,15bがアクティブとされる。ドローン10が光源30から遠ざかる後退飛行をする場合には、近接センサ15c,15dがアクティブとされる。
【0047】
図6(a)に示すように、飛行ターゲット32a,32bは、ドローン10の飛行方向の前方に2箇所設けられている。ドローン10の前方に設けられた2つの近接センサ15a,15bが飛行ターゲット32a,32bに接近した場合には、これら2つの近接センサ15a,15bから信号が出力される。図示しないが、ドローン10が後退飛行する場合も同様に、2つの近接センサ15c,15dが飛行ターゲット34a,34bに接近することによって信号が出力される。
【0048】
図6(b)に示すように、ドローン10は、障害物Oa,Obの間を飛行している。ドローン10は、近接センサ15a,15bを有しており、近接センサ15aの側に障害物Oaがあり、近接センサ15bの側に障害物Obが存在している。
【0049】
近接センサ15bが障害物Obに所定の距離よりも近づくと、その距離に応じた信号が生成され出力される。図示しないが、近接センサ15aが障害物Oaに所定の距離よりも近づくとその距離に応じた信号が生成される。
【0050】
このようにして、障害物センサ検知部24は、近接センサが出力する信号の数を用いて、飛行終了(飛行方向反転)または障害物の接近のいずれの状況かを検出することができる。
【0051】
飛行出力制御演算部28は、受光検知部22から出力される信号および障害物センサ検知部24から出力される信号にもとづいて、飛行動力部12a~12dの出力を制御する。
【0052】
図7は、本実施形態の点検監視システムの動作を説明するためのブロック線図である。
図7に示すように、飛行出力制御演算部28は、受光検知部22および障害物センサ検知部24に接続されている。受光検知部22は、領域14a,14bの位置に応じた信号を出力して飛行出力制御演算部28に供給する。
【0053】
飛行出力制御演算部28は、受光検知部22から入力された信号が、飛行出力制御演算部28に領域14a,14bのいずれであるかを判定する(処理P1)。
【0054】
飛行出力制御演算部28は、入力された信号が受光部14の中心(領域14a)からの信号であると判定する(処理P2)。この場合には、飛行出力制御演算部28は、飛行動力部12a~12dに対して出力を維持するように指令する(処理P3)。
【0055】
飛行出力制御演算部28は、入力された信号が受光部14の周辺(領域14b)からの信号であると判定する(処理P4)。この場合には、飛行出力制御演算部28は、飛行動力部12a~12dに対して出力を補正するように指令する(処理P5)。
【0056】
このようにして、ドローン10は、直進光の光路に沿って飛行することができる。
【0057】
飛行出力制御演算部28は、障害物センサ検知部24から入力された信号がいくつあるか判定する(処理P11)。
【0058】
飛行出力制御演算部28は、入力された信号が1つであると判定する(処理P12)。この場合には、飛行出力制御演算部28は、障害物を検知したものと判定し(処理P13)、処理P5を実行して、飛行動力部12a~12dの出力を補正する。
【0059】
飛行出力制御演算部28は、入力された信号が2つであると判定する(処理P14)。この場合には、飛行出力制御演算部28は、飛行ターゲット32a,32bを検知したものと判定し、飛行動力部12a~12dにドローン10を一旦停止させ、続いて、飛行方向を反転し、飛行ターゲット32a,32bから遠ざかるように後退飛行させるように指令する(処理P15)。
【0060】
飛行出力制御演算部28は、入力された信号がない場合には、検出動作を繰り返す。
【0061】
このようにして、ドローン10は、障害物を回避しつつ、飛行反転位置を認識することができる。
【0062】
上述では、飛行反転や飛行終了の位置判定を飛行ターゲット32a,32b,34a,34bと近接センサ15a~15dを用いることで実現したが、ドローンの飛行速度がほぼ一定にできる経路では、飛行距離、飛行時間および飛行速度を用いて、位置判定をすることができる。これにより、制御部の処理負担を軽減し、より簡便なシステムを構成することができる。
【0063】
センサデータ収集・記憶部26は、カメラ16および環境センサ18に接続されている。センサデータ収集・記憶部26では、カメラ16によって撮影された画像データや環境センサ18によって取得された各種データの収集開始タイミング、収集周期および収集終了タイミング等があらかじめ設定されている。
【0064】
データの収集開始タイミングは、たとえばドローン10の飛行開始時刻から所定時間経過したタイミングとしてもよいし、飛行開始時刻と同時としてもよい。データの収集周期は、データを取得する設備やデータの種類等に応じて任意に設定される。データの収集周期は、往復飛行回数に応じて変えるようにしてもよい。たとえば、1往復目の周期よりも2往復目の周期を長く設定する等することができる。データの収集終了タイミングは、飛行終了と同時としてもよいし、飛行終了後所定期間経過後等としてもよい。
【0065】
上述したように、収集する各データまたは一部のデータにデータ取得時刻を関連付けて、センサデータ収集・記憶部26に記録するようにしてもよい。
【0066】
このようにして、点検のための各種データを収集することができる。
【0067】
本実施形態の点検監視システム100の効果について説明する。
本実施形態の点検監視システム100では、ドローン10は、受光部14を備えており、受光部14に照射される光の位置によって、ドローン10の飛行姿勢や飛行方向のずれを検出することができる。このようなずれを適切に補正するよう制御することによって、ドローン10は、光源30から発光される直進光の光路に沿って飛行することができる。光源30が発光する光が含む波長や強度等を適切に設定することによって、高温かつ高湿度の環境となる抄紙機のドライヤパート内の設備点検を自動的に行うことができる。
【0068】
ドローン10および光源30の組を複数組用意し、所望の箇所ごとにこれらの組を配置し、同時あるいは連続的にデータ収集をすることによって、抄紙機の点検箇所のうち、人手で点検不能な箇所のデータを短時間で効率よく収集することができる。
【0069】
本実施形態では、光路を用いてドローン10を誘導するので、電波の届かないフード内や遮蔽された施設内等においても点検作業を行うことができる。光路は、直進光とするので、直線状の点検経路が確保できれば、ドローンのためのガイド部材を別に設置することなく、いつでも点検作業を実施することができる。
【0070】
ドローン10は、光源30からの出射光が受光部14の適切な領域14aに常に照射されるように飛行姿勢、方向を修正して飛行するので、床面に水平に飛行する場合に限らず、高低差のある点検箇所でも容易に飛行することができる。
【0071】
ドローン10は、近接センサ15a~15dを有することができるので、多少の障害物が存在する設備内であっても、無線に頼ることなく、ドローン10を自動的に飛行させることができる。
【0072】
本実施形態では、ドローン10は、スタンドアローンであり、センサ等の取得データ収集のための新たなネットワーク等のシステム構築をする必要がない。データの回収は、ドローン10をUSB等のインタフェースで接続することによって、容易に行うことができる。
【0073】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、光源30を別に用意したが、本実施形態では、ドローンが光源を搭載する。
図8は、本実施形態に係る点検監視システムを例示する模式的な平面図である。
図8に示すように、本実施形態の点検監視システム200は、ドローン210と、測距用反射板230と、を備える。第1の実施形態の場合と同様に、飛行ターゲット32a,32b,34a,34bをさらに備えるようにしてもよい。
【0074】
本実施形態では、ドローン210は、距離センサ214を有する。距離センサ214は、たとえばレーザ光のような波長のそろった光を発光する。距離センサ214が発光した光は、直進光となり、ドローン210の飛行方向に設けられた測距用反射板230に照射される。照射された光は、測距用反射板230によって反射され、距離センサ214で受光される。距離センサ214は、第1の実施形態と同様の区分された複数の領域を有しており、受光された領域に応じた信号を出力する。
【0075】
距離センサ214は、発光時の光の位相および反射された光の位相を用いて、ドローン210と測距用反射板230との距離を計算する。制御部では、距離センサ214によって計算された測距用反射板230との間の距離が所定値に達したことを検出したときに、ドローン210の飛行を停止する。
【0076】
本実施形態の点検監視システム200では、光源を有する距離センサ214を有するドローン210を備えているので、別途光源のための電源を用意する必要がなく、より簡便にシステムを構築することができる。
【0077】
上述では、点検監視システム100,200について、主として抄紙機への適用例について説明したが、抄紙機に限らず、他のプラント、たとえばフィルム製造プラントや鉄鋼プラント等、各種プラントに適用できるのはいうまでもない。
【0078】
以上説明した実施形態によれば、カメラやセンサを搭載した無人飛行体にて、容易に設備の点検・監視ができる点検監視システムを実現することができる。
【0079】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
1~4、6a~6d ロール、5 紙、7,8 フェルト、10,210 ドローン、12a~12d 飛行動力部、14 受光部、15a~15d 近接センサ、16 カメラ、18 環境センサ、20 制御部、22 受光検知部、24 障害物センサ検知部、26 センサデータ収集・記録部、28 飛行出力制御演算部、30 光源、32a,32b,34a,34b 飛行ターゲット、100,200 点検監視システム、214 距離センサ