(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
C09K3/00 R
(21)【出願番号】P 2017165822
(22)【出願日】2017-08-30
【審査請求日】2020-04-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】岡 孝生
(72)【発明者】
【氏名】勢旗 志郎
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】中村 和正
【審判官】植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105291(JP,A)
【文献】特開2013-124292(JP,A)
【文献】特開2013-213202(JP,A)
【文献】粘度科学,2015,Vol.53(2),p.26-36
【文献】粘度ハンドブック第二版,1987,p.106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含み、
下記成分(B)の2種類以上の無機塩の選択において、
無機のリチウム塩、マグネシウム塩、
およびカリウム
塩からなる群(B-1)と、
無機のナトリウム塩、およびバリウム塩からなる群(B-2)とから、
それぞれ1種類以上を選択し、
前記成分(B-1)と前記成分(B-2)との質量比(B-1/B-2)が0.1~10であることを特徴とする未加硫ゴム用防着剤。
(A)スメクタイト
(B)炭酸カルシウム
、CaMg(CO
3
)
2
、CaFe(CO
3
)
2
、およびアンケライト(CaMg(CO
3
)
2
とCaFe(CO
3
)
2
との中間固溶体)を除く無機炭酸塩、
硫酸カルシウムを除く無機硫酸塩、無機塩化物、
ならびに無機リン酸塩からなる群から選択される2種類以上の無機塩
(C)界面活性剤
(D)前記成分(A)以外の無機珪酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸カルシウム、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
【請求項2】
成分(A)~(D)の質量の合計に対して、
成分(A)の含有率が10質量%以上50質量%以下であり、
成分(C)の含有率が2質量%以上25質量%以下である請求項1記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項3】
成分(A)~(D)の質量の合計に対して、
成分(B)の含有率が0.1質量%以上20質量%以下であり、
成分(D)の含有率が5質量%以上87.9質量%以下である請求項2記載の未加硫ゴム用防着剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の未加硫ゴム用防着剤と、
水と、
を含むことを特徴とする未加硫ゴム用防着剤水分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴムの生産加工の現場においては、シート状等に成形された未加硫ゴムを、次の成形、加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねたり、折り畳んだりして貯蔵することがある。このような貯蔵時において、未加硫ゴム同士が密着し、剥がれなくなることを防止する目的で、未加硫ゴムの表面に防着剤(密着防止剤)を付着させることが行われている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
防着剤を未加硫ゴムの表面に付着させる方法としては、例えば、防着剤を水に分散させた懸濁液を用いるウェット法がある。具体的には、まず、シート状等に成形された後の高温状態(例えば、80~150℃)にある未加硫ゴムの表面に懸濁液を付着させる。付着させる方法としては、例えば、懸濁液をシャワー設備により散布したり、懸濁液の入った槽に高温状態の未加硫ゴムを短時間浸漬(ディップ)したりする方法がある。付着した懸濁液中の水分は、未加硫ゴムの熱により急速に蒸発、乾燥し、それにより、未加硫ゴムの表面に防着剤の被膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
未加硫ゴム用防着剤に対する要望として、防着剤起因の異物低減がある。防着剤起因の異物は、例えば、防着剤乾燥固化物の塊に由来する。より具体的には、例えば、防着処理中に発生する防着剤乾燥固化物の塊がゴム練り工程において崩壊しにくく、ゴム練りでゴム中に微細に分散せず、そのままグリーンタイヤ等の未加硫ゴム中に残る。そして、前記未加硫ゴムがそのまま成型、加硫されて製品となることで、前記防着剤乾燥固化物の塊が製品中に残り、異物となると、タイヤ等の製品の外観が損なわれる場合がある等問題があった。
【0006】
未加硫ゴム用防着剤の成分としては、防着性を向上させる効果が高いスメクタイトがよく用いられる。スメクタイトを含む未加硫ゴム用防着剤は、乾燥固化により強固な防着被膜を形成するため防着性に優れるが、反面、前記防着被膜の硬度が高いことによりゴム練りの応力で防着剤の乾燥固化した塊が崩壊せず異物発生につながるおそれがある。
【0007】
このため、例えば、スメクタイトを主とする珪酸塩を減らし、炭酸カルシウムやタルクを多く用いることで防着剤乾燥固化物硬度を下げタイヤ異物を抑制することが試みられている(特許文献1)。しかし、炭酸カルシウムやタルク主体では、固化物硬度の低減効果は高いが、防着性が悪化し、防着性と異物低減との両立は困難である。
【0008】
そこで、本発明は、防着性と、防着剤起因の異物低減とを両立可能な未加硫ゴム用防着剤、および未加硫ゴム用防着剤水分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の未加硫ゴム用防着剤は、下記成分(A)~(D)を含むことを特徴とする。
(A)スメクタイト
(B)炭酸カルシウムを除く無機炭酸塩、無機硫酸塩、無機塩化物、および無機リン酸塩からなる群から選択される2種類以上の無機塩
(C)界面活性剤
(D)前記成分(A)以外の無機珪酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸カルシウム、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
【0010】
本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液は、
前記本発明の未加硫ゴム用防着剤と、
水と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の未加硫ゴム用防着剤によれば、未加硫ゴムの表面に十分な防着被膜を形成することが可能であるため、高い防着性を得ることができる。また、本発明の未加硫ゴム用防着剤によれば、硬度が低い前記防着被膜を得ることができるため、防着剤起因の異物低減が可能である。すなわち、本発明の未加硫ゴム用防着剤、または、それを用いた本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液によれば、防着性と、防着剤起因の異物低減とを両立可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0013】
本発明の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液は、例えば、成分(A)~(D)の質量の合計に対して、成分(A)の含有率が10質量%以上50質量%以下であり、成分(C)の含有率が2質量%以上25質量%以下であってもよい。
【0014】
本発明の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液は、例えば、成分(A)~(D)の質量の合計に対して、成分(B)の含有率が0.1質量%以上20質量%以下であり、成分(D)の含有率が5質量%以上87.9質量%以下であってもよい。
【0015】
[スメクタイト(A)]
スメクタイト(A)(成分(A))は、特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト、および、モンモリロナイトを含有するベントナイト等が挙げられる。成分(A)は、スメクタイトを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上のスメクタイトを併用してもよい。
【0016】
成分(A)は、例えば、防着性を担う成分として機能する。具体的には、例えば、成分(A)が被膜を形成することで、防着性を発揮し得ると考えられる。本発明の未加硫ゴム用防着剤中における成分(A)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、前記成分(A)~(D)の質量の合計に対して、10質量%以上50質量%以下、10質量%以上45質量%以下、10質量%以上40質量%以下、15質量%以上40質量%以下、または17質量%以上40質量%以下であってもよい。前記成分(A)の含有率が前記下限値以上であると、より良好な防着性が得られやすい。一方、前記成分(A)の含有率が前記上限値以下であると、本発明の防着剤乾燥固化物硬度の低減効果がより有効に得られ、より良好な異物抑制効果を得ることができる。
【0017】
成分(A)(スメクタイト)は、例えば、スメクタイトを含む無機化合物の形態で用いてもよい。前記形態としては、例えば、前記無機化合物の粉末等である。その場合、前記無機化合物中のスメクタイト含有率の測定方法は、特に限定されないが、例えば、下記の測定方法により測定できる。
【0018】
(スメクタイト含有率の測定方法)
スメクタイトを含む無機化合物をX線回折により分析し、2θ=7°付近に出現するスメクタイト由来の回折ピーク強度からスメクタイト含有率を算出する。スメクタイト含有率を定量する際のX線回折の分析条件は、下記のとおりとする。
X線回折分析条件
・測定装置:X‘Pert PRO MRD(PANalytical社製)
・ターゲット:Cu
・管電圧:45kV
・管電流:40mA
・スキャン軸:ゴニオ
・スキャン範囲:5°~60°
・ステップサイズ:0.03°
・ステップ時間:12.7秒
・発散スリット:1/2°
・散乱スリット:1°
・受光スリット:なし
【0019】
[無機塩(B)]
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、炭酸カルシウムを除く無機炭酸塩、無機硫酸塩、無機塩化物、および無機リン酸塩からなる群から選択される2種類以上の無機塩(B)(成分(B))は、例えば、主に滑剤として働く(滑り性を付与する)と考えられる。無機塩(B)(成分(B))としては、特に限定されず、例えば、以下のとおりである。
【0020】
成分(B)は、例えば、無機のアルカリ金属の炭酸塩、硫酸塩、塩化物、およびリン酸塩、並びに、無機のアルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸カルシウムを除く)、硫酸塩、塩化物、およびリン酸塩の中から選択された2種類以上の無機塩であってもよい。成分(B)は、例えば、リチウム、ナトリウム、およびカリウムからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属の塩、並びに、マグネシウム、カルシウム、およびバリウムからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属の塩(炭酸カルシウムを除く)の中から選択された2種類以上の無機塩であってもよい。成分(B)は、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、およびリン酸バリウムの中から選択された2種類以上の無機塩であってもよい。特に、リチウム塩は、防着性を向上させる効果の点で好ましい。
【0021】
例えば、防着性をより向上させる観点から、2種類以上の無機塩の選択において、無機のリチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩の群(B-1)と、無機のナトリウム塩、バリウム塩の群(B-2)とから、それぞれ、1種類以上を選択することが好ましい。この場合において、前記B-1とB-2との質量比(B-1/B-2)は、例えば、0.1~10、または0.2~1であってもよい。
【0022】
無機のリチウム塩は、一般的に高価であるため、例えば、コスト抑制の点から、2種類以上の無機塩のうちの少なくとも一つは、リチウム塩以外の無機塩であることが好ましい。この場合において、無機のリチウム塩とリチウム塩以外の無機塩との質量比(無機のリチウム塩/リチウム塩以外の無機塩)は、例えば、0.1~2、または0.2~1であってもよい。
【0023】
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における成分(B)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、前記成分(A)~(D)の質量の合計に対して、0.1質量%以上20質量%以下、0.1質量%以上18質量%以下、0.1質量%以上15質量%以下、0.1質量%以上13質量%以下、または0.1質量%以上10質量%以下であってもよい。前記成分(B)の含有率が前記下限値以上であると、より良好な滑性が得られる。一方、前記成分(B)の含有率が前記上限値以下であると、さらにコスト抑制に繋がる。
【0024】
[界面活性剤(C)]
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、界面活性剤(C)(成分(C))は、例えば、未加硫ゴム用防着剤に濡れ性および水への分散性を付与する働きをする。界面活性剤(C)(成分(C))としては、特に限定されず、例えば、下記(1)~(5)等が挙げられる。また、界面活性剤(C)は、界面活性剤を1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
(1)高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルキル(又はアルケニル)アミドエーテルカルボン酸塩、アシルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤
(2)高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノ硫酸エステル塩等の硫酸エステル型アニオン界面活性剤
(3)アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤
(4)アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤
(5)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型のノニオン界面活性剤
【0025】
アニオン界面活性剤の対イオンは、特に限定されず、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンが好ましい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
アニオン界面活性剤としては、未加硫ゴムの表面との濡れ性により優れる防着剤懸濁液(水分散液)が得られることから、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩が好ましく、α-オレフィンスルホン酸塩としては、α-オレフィンスルホン酸Na塩「リポラン(登録商標)LB-840」(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、ジアルキルスルホコハク酸塩としては、ジオクチルスルホサクシネートNa塩がより好ましい。
【0027】
ノニオン界面活性剤は、特に限定されず、本発明では、例えば、下記式(1)で表されるノニオン界面活性剤を用いることができる。下記式(1)のノニオン界面活性剤は、アニオン界面活性剤とともに、防着剤懸濁液(水分散液)の未加硫ゴムの表面に対する表面張力を低下させることに加えて、防着剤の未加硫ゴムの表面への付着性を効果的に高める作用を奏するものと推測される。ただし、この推測は、本発明をなんら限定しない。
RO-(AO)n-H (1)
【0028】
前記式(1)中、Rは、炭素数が8~18の脂肪族炭化水素基を示す。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。Rの炭素数は、成分(A)の分散性に優れる点から、好ましくは12~16であり、12~13がさらに好ましい。
AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基を示し、nは、AOの平均付加モル数である。
nは、例えば、1~30、1~25、または1~20であってもよい。具体的には、界面活性能が低下し、成分(A)の分散性が低下することを防止する観点から、nは、1以上(すなわち、0ではない)が好ましい。また、親水性が高くなりすぎることによる付着性低下を防止する観点から、nは、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。nが、好ましくは1~30の範囲、より好ましくは1~25の範囲、さらに好ましくは1~20の範囲であれば、成分(A)の分散性がさらに向上し、かつ、未加硫ゴム表面の疎水性が高い場合にも、被覆に充分な粘弾性を与えることで付着性を向上させるものと推測される。ただし、この推測は、本発明をなんら限定しない。
【0029】
炭素数2~4のオキシアルキレン基とは、例えば、炭素数2~4のアルキレンオキサイドの付加重合により形成される重合単位である。炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、具体的には、エチレンオキサイドが付加して形成されるオキシエチレン基(EO)、プロピレンオキサイドが付加して形成されるオキシプロピレン基(PO)、および、ブチレンオキサイドが付加して形成されるオキシブチレン基(BO)がある。(AO)nは、その構造中に、少なくともオキシエチレン基(EO)を含み、オキシエチレン基(EO)のみでもよいし、オキシエチレン基(EO)とさらに他のオキシアルキレン基とを含んでもよい。(AO)nが、オキシエチレン基(EO)と、オキシプロピレン基(PO)と、オキシブチレン基(BO)とのうち複数種類を含む場合、これらの基は、ブロック状に配列していても、ランダムに配列していてもよい。(AO)nは、例えば、親水性、疎水性のバランスに優れる点から、オキシエチレン基(EO)のみからなることが好ましい。
【0030】
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における界面活性剤(C)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、前記成分(A)~(D)の質量の合計に対して、2質量%以上25質量%以下、2質量%以上23質量%以下、2質量%以上20質量%以下、2質量%以上18質量%以下、または5質量%以上18質量%以下であってもよい。界面活性剤(C)の含有率が前記下限値以上であれば、ゴムに対する防着液(防着剤水分散液)の濡れ性が不足することにより、ハジキが発生する等の問題が起こりにくく、前記上限値以下であれば、起泡が多くなり使用の際に設備からオーバーフローするという問題が起こりにくい。
【0031】
[成分(D)]
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、前記成分(A)以外の無機珪酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸カルシウム、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質(D)(成分(D))は、例えば、主に滑剤として働く(滑り性を付与する)と考えられる。
【0032】
成分(D)において、前記無機珪酸塩は、特に限定されず、例えば、カオリン(カオリンクレーともいう)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、セリサイト、ネフェリン・サイヤナイト等の珪酸塩が挙げられる。前記金属酸化物は、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物が挙げられる。前記金属水酸化物は、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物が挙げられる。
【0033】
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における成分(D)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、前記成分(A)~(D)の質量の合計に対して、5質量%以上87.9質量%以下、10質量%以上85質量%以下、15質量%以上80質量%以下、または20質量%以上75質量%以下であってもよい。前記成分(D)の含有率が前記下限値以上であると、ゴム同士やゴムと設備との滑りがより良好となりやすい。一方、前記成分(D)の含有率が前記上限値以下であると、本発明の防着剤乾燥固化物硬度の低減効果がより有効に得られ、より良好な異物抑制効果を得ることができる。
【0034】
[任意成分]
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、成分(A)~(D)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本発明の未加硫ゴム用防着剤には、必要に応じて、例えば、任意成分として、消泡剤、濡れ性補助剤、粘性補助剤、異物低減補助剤等の添加剤等が含まれていてもよい。
【0035】
消泡剤としては、特に限定されず、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;鉱物油;シリコーン油;等が挙げられる。前記消泡剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0036】
濡れ性補助剤としては、特に限定されず、例えば、アルコール類が挙げられ、より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、ヘキサノール、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、マルチトール、スクロース、エリスリトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、多価アルコールのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの付加物等が挙げられる。前記濡れ性補助剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0037】
粘性補助剤としては、特に限定されず、例えば、水溶性高分子類が挙げられ、より具体的には、例えば、蛋白類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、水溶性ウレタン樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ブタジエン樹脂、水溶性フェノール樹脂等の合成水溶性高分子;キサンタンガム、グアーガム、ウェランガム、ローカストビーンガム、ダイユータンガム、タマリンドガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、アラビアガム、カラギーナン、ラムザンガム、サクシノグリカン、タラガム、ジェランガム、カラヤガム、ペクチン、アルギン酸誘導体、セルロースエーテル類等の天然水溶性高分子が挙げられる。前記粘性補助剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0038】
また、本発明の未加硫ゴム用防着剤には、例えば、その粉体流動を抑制する等の目的で、水を含有させてもよい。その場合、水の含有率は、特に限定されず、例えば、2~3質量%程度である。
【0039】
[未加硫ゴム用防着剤、未加硫ゴム用水分散液および防着処理済み未加硫ゴム]
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前述のとおり、スメクタイト(成分(A))を含有する。スメクタイトは、防着性を担う成分であるため、良好な防着性を得るためには、前述のとおり、防着剤中の含有率が前記下限値以上であることが好ましい。一方、防着剤中の含有率が前記上限値以下であれば、前述のとおり、本発明の防着剤乾燥固化物硬度の低減効果がより有効に得られ、より良好な異物抑制効果を得ることができるため好ましい。なお、スメクタイトには、水を含んだ状態で流通するものもあるが、本明細書においてスメクタイトの含有率といった場合、該含有率は、水の量を含まない値である。
【0040】
本発明の未加硫ゴム用防着剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、未加硫ゴム用防着剤の全ての成分、すなわち、成分(A)~(D)と、必要に応じて配合される任意成分とを混合することにより製造できる。混合に用いる装置としては、例えば、撹拌羽根を容器内に備えた構成の装置等を使用できる。具体的には、例えば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動撹拌または撹拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、撹拌装置が複数組み合わされたスーパーミキサー(株式会社カワタ製)、ハイスピードミキサー(株式会社アーステクニカ製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等の多機能粉体混合機等も使用できる。また、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミル等の乾式粉砕機を用いてもよい。
【0041】
また、未加硫ゴム用防着剤の全ての成分のうち、液体成分を少なくとも1種使用する場合には、例えば、未加硫ゴム用防着剤の製造のために、前記液体成分を液体成分以外の混合物に対して吹付けたり散布したりするスプレー装置、シャワー装置等を併用してもよい。
【0042】
粉末状の未加硫ゴム用防着剤とする場合、粉末防着剤全体に対する成分(A)~(D)の質量の合計の割合は100質量%でもよい。また、水および/またはその他の前記任意成分を含む場合、成分(A)~(D)の質量の合計の割合は特に限定されず、例えば、未加硫ゴム用防着剤の質量全体に対し、80質量%以上、85質量%以上97質量%以下、または85質量%以上95質量%以下である。
【0043】
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液として用いることができる。本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液の製造方法は、特に限定されない。例えば、前述のように、本発明の未加硫ゴム用防着剤の全ての成分を混合し、本発明の未加硫ゴム用防着剤を製造した後に、それを水中に分散させて、本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液としてもよい。また、例えば、本発明の未加硫ゴム用防着剤の各成分を、それぞれ水中に溶解または分散させ、水中で混合することにより、本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液としてもよい。前記各成分を溶解または分散させる方法も特に限定されず、例えば、粉末状の未加硫ゴム用防着剤を、攪拌槽内で所定量の水に分散させればよい。本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液中における、前記成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)の含有率は、特に限定されず、例えば、本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液全体の質量に対し、0.5質量%以上10質量%以下、0.5質量%以上8質量%以下、0.5質量%以上6質量%以下、または0.5質量%以上4質量%以下である。
【0044】
未加硫ゴム用防着剤水分散液とする場合、前記未加硫ゴム用防着剤水分散液中における水以外の成分の質量の合計に対する成分(A)~(D)の合計の含有率は、例えば、90質量%以上100質量%以下、90質量%以上99質量%以下、または93質量%以上98質量%以下である。
【0045】
このように未加硫ゴム用防着剤水分散液として製造した場合、そのまま後述のウェット法等により未加硫ゴム表面に塗布して使用することもできる。前記のように未加硫ゴム用防着剤水分散液とする場合、成分(B)を含むことで、未加硫ゴム用防着剤水分散液の粘度が増加するので、これを後述のウェット法等により未加硫ゴムに塗布する際、均質に塗布しやすくなり好ましい。
【0046】
本発明の未加硫ゴム用防着剤を用いた防着処理済み未加硫ゴムの製造方法は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤を未加硫ゴムの表面に付着させて防着処理する防着処理工程を有する。このようにして製造された防着処理済み未加硫ゴムは、積み重ねたり、折り畳んだりして貯蔵されても、例えば、未加硫ゴム同士が密着し、剥がれなくなるのを防止できる。
【0047】
前記防着処理工程は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液を前記未加硫ゴムの表面に付着させ、さらに水を揮発させることにより、前記未加硫ゴムの表面に前記本発明の未加硫ゴム用防着剤を付着させる工程であってもよい。より具体的には、前記防着処理工程は、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液(防着剤懸濁液)を未加硫ゴムの表面に付着させる懸濁液付着工程(水分散液付着工程)と、未加硫ゴムの表面の前記防着剤懸濁液を乾燥して、防着剤からなる被膜を未加硫ゴムの表面に形成する乾燥工程とを有することが好ましい。このような防着処理工程を、例えば、ウェット法という。
【0048】
本発明の防着処理済み未加硫ゴムの製造方法において、前記ウェット法は、特に限定されず、例えば、一般的な未加硫ゴム用防着剤におけるウェット法と同様にして行うことも可能である。前記防着剤懸濁液(水分散液)中における前記本発明の未加硫ゴム用防着剤の濃度は、特に限定されず、任意に調整可能であり、例えば、前述のとおりであり、より具体的には、例えば、2~3質量%とすることができる。
【0049】
前記懸濁液付着工程では、例えば、シート状等に成形された時の熱により高温状態(例えば、80~150℃程度)にある未加硫ゴムに対して、防着剤懸濁液を付着させることが好ましい。
【0050】
前記懸濁液付着工程の具体的方法としては、例えば、防着剤懸濁液を未加硫ゴムにシャワー装置で散布する方法、防着剤懸濁液の入った槽に未加硫ゴムを短時間浸漬するディップ法が挙げられる。また、塗布装置を用いて防着剤懸濁液を未加硫ゴムに塗布する方法等を採用してもよく、これらの方法を適宜併用してもよい。
【0051】
本発明によれば、前述のとおり、防着性と、防着剤起因の異物低減とを両立可能である。本発明の未加硫ゴム用防着剤がこのような効果を奏する理由(メカニズム)は、必ずしも明らかではないが、次のように推測される。すなわち、防着性発現を担う成分である成分(A)が少ない量でも、無機塩である成分(B)により、防着剤の未加硫ゴムの表面への付着性を効果的に高め、防着剤懸濁液が表面にムラなく付着する効果があると推測される。これにより、本発明によれば、優れた防着剤が得られると推測される。これにより、本発明の未加硫ゴム用防着剤から調製された防着剤懸濁液は、防着剤起因の異物(例えば、タイヤ異物)の発生を抑制するとともに、未加硫ゴムの表面を効率的に覆うため良好な防着性を得られるものと考えられる。ただし、これらは、推測されるメカニズムの一例であり、本発明をなんら限定しない。
【0052】
本発明によれば、従来困難であった防着性と防着剤起因の異物低減の両立を達成できる。本発明の未加硫ゴム用防着剤を適用可能なゴム種は、特に制限されず、未加硫のゴムであればよい。前記ゴム種としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等のゴムや、これらのうちの複数種が混合されたゴムが挙げられる。
【実施例】
【0053】
[実施例1~20、参考例1~4および比較例1~3]
下記表1~3に示す重量(質量)比率で、各成分を混練して、均一粉体からなる各例の防着剤を調製した。そして、得られた各防着剤を水道水に攪拌しながら加え、防着剤の濃度が2質量%である防着剤懸濁液を調製した。実施例1~20は、下記表1および2に示すとおり、(A)~(D)成分を全て配合した。これに対し、下記表3に示すとおり、比較例1は、成分(A)、(C)、(D)を配合したが、成分(B)を配合せず、比較例2および3は、成分(A)、(C)、(D)を配合したが、成分(B)の無機塩を1種類のみしか配合しなかった。なお、下記表1~3に記載された各成分の製品名(商品名)および製造元を、下記表4に示す。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
表1~3に記載の実施例1~20、参考例1~4および比較例1~3の各防着剤懸濁液(水分散液、濃度2質量%)を用いて、下記の評価を行った。
【0059】
<評価>
各種評価には、評価用ゴムとして下記の未加硫NR/BRゴムを用いた。
【0060】
(未加硫NR/BRゴム)
NR(RSS♯3)70質量部とBR(JSR(株)製、商品名「BR-01」)30質量部の合計100質量部に対して、ホワイトカーボン(東ソー・シリカ(株)製、商品名「ニップシールVN-3」)10質量部と、ISAFブラック(東海カーボン(株)製、商品名「シースト6」)30質量部と、JSRAROMA(プロセスオイル)(日本サン石油(株)製、商品名「アロマ790」)15質量部と、亜鉛華(ハクスイテック(株)製、亜鉛華2種)3質量部と、ステアリン酸(日油(株)製、椿)1質量部と、6PPD(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクラック6C」)1質量部と、CBS(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ-G」)1質量部と、硫黄(鶴見化学(株)製)1.5質量部とを配合した(合計162.5質量部)未加硫NR/BRゴム。
【0061】
(1)防着剤乾燥固化物の異物評価
実施例1~20、参考例1~4および比較例1~3の各例に従い配合した各防着剤を5質量%になるよう防着剤懸濁液を作製し、ビーカーに入れて、100℃に設定した熱風乾燥機にて24時間乾燥させ、室温に戻し乾燥物を得た。その後、乾燥物を2mm角に切り出し、800gの上記の未加硫ゴム(未加硫NR/BRゴム)を温度80~120℃のオープンロールで練っているところに、各例10個の防着剤乾燥固化物を加え、さらに5分間練った後、ゴムシート(厚さ:5~8mm、60cm×15cm)とし、繰り出された直後の前記ゴムシート中の異物を確認した。具体的には、前記ゴムシートにおける目視で確認可能な0.5mm角以上の大きさの防着剤乾燥固化物の個数をカウントし、個数が4個以下を合格と判定した。
【0062】
(2)付着性の評価
上記の未加硫ゴム(未加硫NR/BRゴム)を温度80~120℃のオープンロールで練り出してゴムシート(厚さ:5~8mm、60cm×15cm)とし、繰り出された直後の前記ゴムシートを、実施例1~20、参考例1~4および比較例1~3の各例で得られた防着剤懸濁液(温度40℃)1Lに約1秒間浸漬した。その後、前記ゴムシートをすばやく垂直に引き上げ、室温下で静置した。前記ゴムシートの表面積を100%とした際の、防着剤乾燥被膜(防着剤乾燥固化物の被膜)の均質性、被膜の厚み(一様の膜厚で覆われている)を目視にて確認し、下記1~5の5段階で判定した。
1:ハジキが発生している。
2:被膜が縦縞状やマダラ状被膜である。
3:被膜が縦縞状やマダラ状でない薄い均質被膜である。
4:被膜が縦縞状やマダラ状でない均質被膜である。
5:被膜が縦縞状やマダラ状でないやや厚い均質被膜である。
【0063】
上記のように、80~120℃のオープンロールで繰り出され、表面が高温状態にあるゴムを、防着剤懸濁液にごく短時間(約1秒間)浸漬させただけで、付着した防着剤懸濁液から水分が急速に蒸発しても、縦縞状、マダラ状等のムラがない均一な薄膜状態で、防着剤がゴム表面に残存できる付着状態が好ましい。
【0064】
本発明の実施例1~20については、いずれも均質被膜(評価4以上)が得られた。一方、比較例1については、マダラ状の被膜(評価2)となった。また、比較例2および3については、いずれも均質被膜(評価3)が得られたが、実施例1~20には及ばなかった。
【0065】
(3)防着性の評価
上記の未加硫ゴム(未加硫NR/BRゴム)を温度80~120℃のオープンロールで練り出してゴムシート(厚さ:5~8mm、60cm×15cm)とし、繰り出された直後の前記ゴムシートを、実施例1~20、参考例1~4および比較例1~3の各例で得られた防着剤懸濁液(温度40℃)1Lに約1秒間浸漬した。その後、前記ゴムシートをすばやく垂直に引き上げ、室温下において垂直状態で静置し、自然乾燥した。
【0066】
その後、前記ゴムシートを6cm×15cmにカットし、2枚を重ね合わせて積層状態の試験片とした。前記試験片に対して、一方の面から垂直方向に1t/m2の荷重をかけ、60℃、12時間放置した。
【0067】
その後、前記試験片を室温に戻し、引張り試験機〔AGS-500D型、SHIMADZU〕を用いて180°剥離試験を行い、引っ張り速度300mm/minで剥離抗力(N/cm)を測定した。
【0068】
剥離抗力が2.0N/cm以下の場合、大きな負荷なくゴムシートを剥がすことができ、防着性能は良好であると判断できる。剥離抗力が2.0N/cm超の場合、ゴムシートを剥がす時の負荷が大きく、防着性能は不良であると判断できる。さらに剥離抗力が3.0N/mm超の場合、ゴムシートは密着しており、通常の作業現場での剥離は困難であると判断できる。
【0069】
本発明の実施例1~20については、いずれも剥離抗力が2.0N/cm以下の良好な防着性能が得られた。一方、比較例1~3については、いずれも剥離抗力が2.0N/cmを超える不良の結果となった。
【0070】
また、上記評価結果のうち、防着剤乾燥固化物の異物評価については、前記表1~3に示した。表1および2に示したとおり、2種類以上の無機塩(成分(B))を用いた実施例1~24は、防着剤乾燥固化物の異物評価、付着性の評価、および防着性能の評価ともに良好であった。これに対し、無機塩(成分(B))を配合しなかった比較例1、並びに、無機塩(成分(B))を1種類のみしか配合しなかった比較例2および3では、防着剤乾燥固化物の異物評価は良好であった(異物の個数が少なかった)ものの、前述のとおり、付着性が低く、防着性が実施例と比較して劣っていた。すなわち、比較例1~3は、いずれも、防着性と、防着剤起因の異物低減とを両立できていなかった。
【0071】
なお、比較例1~3の未加硫ゴム用防着剤水分散液は、実施例と比較して粘度が低かった。この粘度が低いことに起因して、前述のとおり付着性が実施例よりも劣っていたと考えられる。