(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】送信ユニットを較正するためのシステムおよび方法、ならびに送信ユニットを較正するためのシステムを備えた船舶
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20231102BHJP
B63B 35/50 20060101ALI20231102BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20231102BHJP
B63G 8/38 20060101ALI20231102BHJP
G01S 13/74 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G01S5/14
B63B35/50
B63B49/00 Z
B63G8/38
G01S13/74
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018143001
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-02-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】10 2017 117 498.2
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503195311
【氏名又は名称】エアバス・ディフェンス・アンド・スペース・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キットマン クラウス
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ サイモン
【合議体】
【審判長】濱野 隆
【審判官】田邉 英治
【審判官】岡田 吉美
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-516190(JP,A)
【文献】特表2012-513032(JP,A)
【文献】特表2003-506930(JP,A)
【文献】特開2009-270901(JP,A)
【文献】特表2009-503992(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0073351(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0022214(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0142587(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0326923(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0231498(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0247184(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0257831(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/14
G01S 5/30
G01S 11/02-11/10
G01S 13/74-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ユニット(1)を較正するためのシステム(10)であって、
少なくとも4つの送信ユニット(1、2、3、4)の配置(20)、
を含み、
前記少なくとも4つの送信ユニット(1、2、3、4)のうちの第1の送信ユニット(1)は、前記第1の送信ユニット(1)の設定点位置(1a)に関する位置データ(31)を格納しており、
前記第1の送信ユニット(1)は、残りの3つの送信ユニット(2、3、4)の各々に第1の送信信号(11)を発信するように設計され、
前記残りの3つの送信ユニット(2、3、4)の各々は、前記第1の送信信号(11)を受信し、前記第1の送信信号(11)を受信した後、前記第1の送信ユニット(1)に第1の応答信号(12)を返信するように設計され、
前記第1の送信ユニット(1)は、前記返信された第1の応答信号(12)に基づいて、前記残りの3つの送信ユニット(2、3、4)に対する、前記第1の送信ユニット(1)の相対位置データ(41)を決定するように設計され、
前記第1の送信ユニット(1)は、前記格納された位置データ(31)と前記決定された相対位置データ(41)との間の偏位(d)を検出し、前記検出された偏位(d)に基づいて、前記第1の送信ユニット(1)の伝送パラメータの較正を実行するように設計さ
れ、
前記第1の送信ユニット(1)の前記較正は、前記第1の送信ユニット(1)の時間パラメータおよび/または周波数パラメータの設定を含む、システム(10)。
【請求項2】
前記第1の送信ユニット(1)は、前記第1の送信信号(11)および前記第1の応答信号(12)の伝播時間の測定値に基づいて、前記残りの3つの送信ユニット(2、3、4)に対する前記第1の送信ユニット(1)の前記相対位置データ(41)を算定するように設計される、
請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記少なくとも4つの送信ユニット(1、2、3、4)のうちの第2の送信ユニット(2)は、前記第1の送信ユニット(1)に向け第2の送信信号(13)を発信するように設計され、
前記第1の送信ユニット(1)は、前記第2の送信信号(13)を受信し、前記第2の送信信号(13)を受信した後、前記第2の送信ユニット(2)に向け第2の応答信号(14)を返信するように設計され、
前記第2の送信ユニット(2)は、前記第2の応答信号(14)に基づいて、前記第1の送信ユニット(1)の前記伝送パラメータの前記較正をチェックするように設計される、
請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記第2の送信ユニット(2)は、前記第2の送信ユニット(2)の位置に関する位置データ(51)を格納しており、
前記第1の送信ユニット(1)の前記伝送パラメータの前記較正は、前記第2の送信信号(13)および前記第2の応答信号(14)の伝播時間と、前記第2の送信ユニット(2)の前記位置に関する前記格納された位置データ(51)との比較に基づいて遂行される、
請求項3に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記第1の送信信号(11)および前記第2の送信信号(13)は、いずれもレーダー信号であり、および/または
前記第1の応答信号(12)および前記第2の応答信号(14)は、いずれもレーダー信号である、
請求項3または4に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記第1の送信信号(11)および前記第2の送信信号(13)は、いずれも無線信号の形でのビーコン信号であり、
前記第1の応答信号(12)および前記第2の応答信号(14)は、いずれも無線信号の形でのビーコン信号である、
請求項3~5の何れか一項に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記第1の送信ユニット(1)は、前記残りの3つの送信ユニット(2、3、4)のうちの少なくとも1つの第1の応答信号(12)が到来しない場合、前記システム(10)の故障を確認するように設計される、
請求項1~6の何れか一項に記載のシステム(10)。
【請求項8】
少なくとも4つの送信ユニット(1、2、3、4)の前記配置(20)の各送信ユニット(1、2、3、4)は、少なくとも4つの送信ユニット(1、2、3、4)の前記配置(20)に対して移動している対象体(200)の相対位置の決定が可能となるように、前記配置(20)に対して移動している対象体(200)からのレーダー信号(15)を受信し、それに応じて前記移動している対象体(200)に向け応答信号(16)を発信するように設計される、
請求項1~
7の何れか一項に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記配置(20)は、合計8つの送信ユニット(1、2、3、4、5、6、7、8)を含み、そのうちの少なくとも6つの送信ユニット(1、2、3、4、5、6)は、1つの平面(110)中に実質上配置される、
請求項1~
8の何れか一項に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記合計8つの送信ユニット(1、2、3、4、5、6、7、8)のうちの2つの送信ユニット(7、8)は、前記平面(110)から或る距離をとって配置される、
請求項
9に記載のシステム(10)。
【請求項11】
請求項1~
10の何れか一項に記載のシステム(10)を備えた船舶(100)。
【請求項12】
少なくとも4つの送信ユニット(1、2、3、4)の前記配置(20)が航空機(200)のための着艦区域(111)を囲む、
請求項
11に記載の船舶(100)。
【請求項13】
送信ユニット(1)を較正するための方法であって、
設置環境中に少なくとも4つの送信ユニット(1、2、3、4)を配置するステップ(S1)と、
前記少なくとも4つの送信ユニット(1、2、3、4)のうちの第1の送信ユニット(1)の設定点位置(1a)に関する位置データ(31)を格納するステップ(S2)と、
第1の送信信号(11)を残りの3つの送信ユニット(2、3、4)の各々に向け発信するステップ(S3)と、
前記発信された第1の送信信号(11)を前記残りの3つの送信ユニット(2、3、4)の各々によって受信し、続いて、前記残りの3つの送信ユニット(2、3、4)の各々によって第1の応答信号(12)を前記第1の送信ユニット(1)に返信するステップ(S4)と、
返信された前記第1の応答信号(12)に基づいて、前記残りの3つの送信ユニット(2、3、4)に対する前記第1の送信ユニット(1)の相対位置データ(41)を決定するステップ(S5)と、
前記格納された位置データ(31)と前記決定された相対位置データ(41)との間の偏位(d)を検出し、前記検出された偏位(d)に基づいて、前記第1の送信ユニット(1)の伝送パラメータの較正を実行するステップ(S6)と、
を含
み、
前記第1の送信ユニット(1)の前記較正は、前記第1の送信ユニット(1)の時間パラメータおよび/または周波数パラメータの設定を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電波のための送信・受信ユニットの較正に関する。具体的には、本発明は、送信ユニットを較正するためのシステムに関する。さらに、本発明は、送信ユニットを較正するためのシステムを備えた船舶、および送信ユニットを較正するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
現今、位置決定のために無線信号がよく使われる。この場合、ナビゲートの対象体から到来する無線信号に対する応答として、様々な送信ユニットまたは無線ビーコンによってかかる無線信号がその対象体に送信され、これにより位置が決定できる。時として、例えば、送信ユニットの機能不良または故障によって個別の無線ビーコンを交換しなければならないことがある。一般原則として、これは、保全および修理作業の一環として保全要員によってマニュアルで実行され、第1には時間を要し、第2には高い保全コストをもたらし得る。保全要員によって無線ビーコンが交換されている間、その無線ビーコンは使用できず、これもまた、特にナビゲーションシステムの信頼性に悪影響を与える可能性がある。さらに、この保全作業は、しばしば悪使用条件、特に劣悪な天候状態の下で、担当要員によって実行される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、送信ユニットの配置中の送信ユニットの較正を改良または簡単にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、諸独立請求項の主題によって達成される。諸従属請求項および以降の説明から典型的な実施形態が明らかになる。
【0005】
本発明の一態様によれば、送信ユニットの較正のためのシステムが明示(specify)される。本システムは、少なくとも4つの送信ユニットの配置を含む。本配置は、静的な、または移動するプラットフォーム上に位置する設置環境中に設けることができる。これら少なくとも4つの送信ユニットのうちの第1の送信ユニットは、該第1の送信ユニットの設定点位置に関する位置データを格納している。この設定点位置に関する位置データは、第1の送信ユニットの記憶部に格納でき、第1の送信ユニットの望ましい空間位置を表す。第1の送信ユニットは、残りの3つの送信ユニットの各々に向け第1の送信信号を発信するように設計される。残りの3つの送信ユニットの各々は、これを受けて第1の送信信号を受信し、第1の送信信号を受信した後、第1の送信ユニットに向け第1の応答信号を返信するように設計される。第1の送信ユニットは、返信された第1の応答信号および/または第1の送信信号に基づいて、残りの3つの送信ユニットに対する第1の送信ユニットの相対位置データ、具体的には空間位置情報を決定するように設計される。この相対位置データは、第1の送信ユニットの当該配置内の実際の位置を表すことができる。第1の送信ユニットは、該第1の送信ユニットの設定点位置に関する格納された位置データと、決定された相対位置データとの間の、例えば幾何学的偏位を検出し、検出された偏位に基づいて、第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正を実行するように設計される。
【0006】
本発明での意味において、較正は、格納された位置データと決定された相対位置データとの間の偏位の検出、そしてまた、伝送パラメータを補正するために検出された偏位を利用することを含み得る。この偏位は、信号の伝播時間における偏位からもたらされ得る。較正は、当該配置に対し移動している対象体のナビゲーションのためその後に使用が可能な、調整されセットされた送信ユニットの配置を得るために、必要となり得る。したがって、較正の後は、シグナリングに関し調整されセットされた該配置を、該配置自体に対し移動している対象体の位置を決定するためのナビゲーションシステムとして使用することが可能である。
【0007】
本発明による、送信ユニットを較正するためのシステムを使って、送信ユニットの配置内、特に無線ビーコン送信ユニットの配置内の伝送パラメータの自己適合を遂行することが可能である。言い換えれば、例えば、送信ユニットの配置内への物理的設置の後、第1の送信ユニットは、時間パラメータまたは周波数パラメータなど、その伝送特性の自動的適合を行うことが可能である。例えば、送信ユニットの配置内の或る送信ユニットが故障し、その結果前記送信ユニットを別の送信ユニット、此処では第1の送信ユニット、と交換しなければならない場合などに、第1の送信ユニットのかかる設置が必要となり得る。このような場合、その設置は保全要員によって実行することができる。新規の第1の送信ユニットが設置された後、第1の送信ユニットの実際の位置が、第1の送信ユニットの設定点位置から偏位していることがあり得る。この偏位は、本発明によるシステムによって、具体的にはその較正によって、効率的仕方で補償することが可能である。この較正の過程で、例えば、第1の送信ユニットの伝送パラメータの補正が行われ、この補正または補正された伝送パラメータは、前述の偏位を考慮に入れる。かくして、十分に較正された送信ユニットの配置を提供することができる。具体的には、この較正の結果、全送信ユニットの伝送パラメータを相互に対し調整することができる。
【0008】
これは、保全要員によって実行されることになる第1の送信ユニットのマニュアルでの較正の必要を省くことを可能にする。具体的には、レーザータキメータを使わないで、送信ユニットの交換および送信ユニットの関連する較正を行うことができる。それどころか、送信ユニットの配置内の新規に設置された送信ユニットの自律的なまたは自動的なセットまたは較正が可能である。さらに、較正過程での不正確さを回避することが可能である。したがって、本システムは、ローカルなナビゲーションシステムを較正するためのシステムと見なしてもよい。
【0009】
送信ユニットを較正するための本システムは、したがって、送信ユニットが無線ビーコンの形で航空機のための着艦支援施設(landing aid)として使われている、船舶または艦船において特に有益であることは明らかであろう。上記により、本発明によるシステムによって、無線電波用の送信・受信ユニットの較正が提供される。しかして、これら送信ユニットは、無線ビーコンまたは発光ビーコン用の送信機であり且つ受信機であり得る。具体的には、これら送信ユニットは、無線送信機且つ無線受信機とすることができる。
【0010】
少なくとも4つの送信ユニットを、相互に対し特定の空間的配置で位置付けることが可能である。この場合、これら送信ユニットは、それぞれ相互に対し所定の距離に配置することができる。送信ユニットは、例えば、例として三角形または正方形など、特定のパターンに配置されてよい。また、4つより多い送信ユニットをこの配置の中に設けることもできる。これらの送信ユニットは、例えば、信号すなわち送信信号を発信するように、だが、また、例えば応答信号などの発信された信号を受信するようにも設計される。言い換えれば、これら送信ユニットは、送信信号を発信し、且つ、応答信号すなわち受付信号を受信することが可能である。
【0011】
全ての送信ユニットは記憶部を含むことができる。この記憶部は、例えば、測定信号、具体的には、伝播時間の測定信号を格納するためのデータメモリである。第1の送信ユニットは、しかして、該第1の送信ユニットの少なくとも1つの設定点位置が格納される記憶部を含むことが可能である。本発明での意味において、設定点位置とは、例えば、送信ユニットの或る望ましい位置である。設定点位置は、したがって、最終的にセットされ、調整され、使用可能なナビゲーションシステムを提供することが可能な、当該配置内の諸送信ユニットの望ましい位置を指す。もしこれら送信ユニットがそれぞれの設定点位置に正確に位置していたとすれば、較正はもはや必要ないことになろう。
【0012】
第1の送信ユニット中に設定点位置を格納する作業は、第1の送信ユニットの当該配置中への設置の前または後にマニュアルで実施することができる。しかしながら、第1の送信ユニットが、事前プログラムされたパラメータまたは値として、設定点位置を既に有していることも可能である。すなわち、設定点位置を、第1の送信ユニットの記憶部中に工場出荷時に既に事前格納することが可能で、これにより、第1の送信ユニットは、該ユニットのために事前格納された設定点位置の近傍に持ってくるだけで、その後にこれも十分に較正する必要があるだけとなろう。
【0013】
しかして、第1の送信ユニットは、残りの少なくとも3つの送信ユニットに向け第1の送信信号を送信し、これに応じて前記少なくとも3つの、あるいはそれよりも多い場合も、送信ユニットは、いずれも該第1の送信信号を受信する。第1の送信信号を受信した後、これら少なくとも3つの送信ユニットは、各々、第1の送信信号の受信を受けて第1の応答信号を生成し、前記第1の応答信号を第1の送信ユニットに返信する。送信された第1の送信信号および返信された第1の応答信号に基づいて、第1の送信ユニットは、次いで第1の送信信号の相対位置データを決定することが可能で、この相対位置データは、残りの3つの送信ユニットの各々に対する第1の送信ユニットの相対的な位置、取りも直さず実際の位置についての情報を有する。すなわち、例えば、第1の送信信号および/またはそれぞれの第1の応答信号の伝播時間の測定値から、残りの3つの送信ユニットのそれぞれに対する第1の送信ユニットの距離を計算することが可能で、最終的に全体的配置内の第1の送信ユニットの相対位置が得られる。しかして、各送信ユニットの間の距離は信号の既知の伝播速度を考慮に入れてこれら伝播時間の測定値から計算することができる。このように、残りの3つの送信ユニットに対する第1の送信ユニットの実際の位置を決定することが可能である。かくして、送信ユニットの配置内の第1の送信ユニットの実際の空間的位置が分かる。
【0014】
しかる後、第1の送信ユニットは、第1の送信ユニットの設定点位置に関する格納された位置データと、決定された相対位置データとの間の偏位を検出し、検出された偏位に基づいて、該送信ユニットの伝送パラメータの較正を行うことができる。すなわち、第1の送信ユニット自体が、偏位、具体的には第1の送信ユニットの設定点位置と、該第1の送信ユニットの決定された相対位置との間の幾何学的距離を確かめることが可能である。このため、第1の送信ユニットは、制御部、具体的にはデータ処理部を含むことが可能で、該制御部が偏位を確認しそれに応じ較正を実行する。全送信ユニットが、それぞれ、送信信号および応答信号の発信と受信とを実行できる制御部を備えてよい。この制御部は、データ処理システムまたはプロセッサであってよい。
【0015】
この較正では、信号伝送特性の変化をもたらす偏差をさらに考慮することが可能である。これらは、例えば、温度変化によりもたらされ送信および応答信号の伝送応答特性に影響する可能性がある偏差など、システム固有の特性であり得る。例えば、個別送信ユニットの温度による遅延が発生することがあり、これは本較正によって補償が可能である。
【0016】
第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正によって達成されることは、該第1の送信ユニットが、空間的に不正確な可能性のある設置であっても、シグナリングに関して調整の取れた仕方で、送信ユニットの配置の中に組み込みができることである。このことは、伝送パラメータが、第1の送信ユニットの不正確な位置付け、および第1の送信ユニット中のシステム固有の矛盾を考慮に入れることが可能な仕方で較正されることを意味する。この結果として、第1の送信ユニットが、再び送信ユニットの全体配置と協同するために、すなわち当該配置の他の送信ユニットとともにシグナリングに関し調整されしかして当該配置の中に組み込まれるために、送信信号または応答信号は、必要な時間シフトまたは異なる周波数を使って、第1の送信ユニットによって発信されまたはそれぞれ返信される。言い換えれば、本較正は、このようにして、送信ユニットの実際の配置の信号の伝播時間と、送信ユニットの最適の配置内の信号の伝播時間との偏差を補償または埋め合わせることができる。
【0017】
一般に、不正確な設置、すなわち不正確な位置への第1の送信ユニットの設置、およびシステム固有の誤差に基づく偏位は、したがって、伝送パラメータの較正によって補償することが可能である。
【0018】
送信ユニットを較正するための本システムは、第1の送信ユニットだけでなく、例えば、保全による配置の送信ユニットの交換の場合などに、送信ユニットの当該配置内の他の任意の送信ユニットに適用することができる。
【0019】
第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正の後、送信ユニットのセットされたまたはバランスされた配置を提供することが可能である。このセットされた配置は、以降、当該配置に対し移動している対象体のための航行支援施設(navigation aid)として使用されてよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、第1の送信ユニットは、第1の送信信号および第1の応答信号の伝播時間の測定値に基づいて、残りの3つの送信ユニットに対する該第1の送信ユニットの相対位置データを算定するように設計される。
【0021】
本発明による、第1の送信ユニットを較正するためのシステムは、1つ以上のやり取りステップを含むことができる。例として、第1の送信ユニットの第1の較正の後、再度、送信信号を残りの3つの送信ユニットに向け発信することができ、これに応じ、残りの3つの送信ユニットによって応答信号が返信される。再び偏位が確認された場合、第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正が再度行われる。この手順は、偏位が所定の偏位限度値を下回るかまたは偏位が完全に排除されるまで繰り返される。
【0022】
すなわち、第1の送信ユニットと残りの3つの送信ユニットの各々との間の距離は、第1の送信信号および/またはそれぞれの応答信号の伝播時間の測定値から計算が可能で、これらから、最終的に全体配置内の第1の送信ユニットの相対位置が得られる。これら送信ユニットの間の距離は、しかして、これら信号の既知の伝播速度を考慮に入れて伝播時間の測定値から計算が可能である。
【0023】
本発明のさらなる実施形態によれば、少なくとも4つの送信ユニットのうちの第2の送信ユニットは、第1の送信ユニットに向け第2の送信信号を発信するように設計される。第1の送信ユニットは、この第2の送信信号を受信し、第2の送信信号を受信した後、第2の送信ユニットに向け第2の応答信号を返信するように設計される。この場合、第2の送信ユニットは、第2の応答信号に基づいて、第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正をチェックするように設計される。
【0024】
言い換えれば、第2の送信ユニットによって、第1の送信ユニットの伝送パラメータが正確に較正されているかどうかのチェックを行うことができる。このチェックは、第2の送信ユニットが、第2の送信信号および/または第2の応答信号に基づいて伝播時間の測定を行い、前記伝播時間の測定の結果と該伝播時間の期待値とを比較することによって遂行できる。したがって、本発明によるシステムは、較正の正確さまたは品質のチェックも含む。この確認の過程で、第2の送信ユニットは、前の第1の送信ユニットと同様に伝播時間の測定を実行し、次いで、測定された伝播時間と、第1の送信ユニットと第2の送信ユニットとの間でのこれら信号の伝播時間の期待値と、の比較に基づいて、第1の送信ユニットの較正の正確さを検証することが可能である。
【0025】
本発明のさらなる実施形態によれば、第2の送信ユニットは、該第2の送信ユニットの位置に関する位置データを格納している。第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正は、第2の送信信号および第2の応答信号の伝播時間と、第2の送信ユニットの位置に関する格納された位置データとの比較に基づいて遂行される。
【0026】
このように、第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正が、第1の送信信号および第1の応答信号の伝播時間の測定に基づいて実行された後でも、第2の送信信号および第2の応答信号の伝播時間の測定と、さらに第2の送信ユニットの格納された位置データとに基づいて、第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正を再度行うことが可能である。かくして本システムの余力が向上される。またこれは、それぞれの比較時に、確認された偏位を低減できることを意味する。
【0027】
さらに、第2の送信ユニットの格納された位置についての情報によって、あらかじめ第2の送信信号の位置が判明しているので、第1の送信ユニットへの第2の送信信号、および第2の送信ユニットに戻る第2の応答信号の伝播時間に対する期待値を事前に定義することが可能である。例として、第2の送信ユニットと第1の送信ユニットとの間の伝播時間に対する期待値は、第2の送信ユニットの位置に関する格納された位置データのおかげで第2の送信ユニットの正確な位置が既知であることと、第1の送信ユニットがその設定点位置に位置していること(較正された第1の送信ユニットに対する仮定上の伝播時間)との前提に基づいている。送信信号が第2の送信ユニットから第1の送信ユニットに発信され、応答信号が第1の送信ユニットから第2の送信ユニットに返信されると、第2の送信ユニットに対する第1の送信ユニットの実際の相対位置が、伝播時間(完全には較正されていない第1の送信ユニットに対する実際の伝播時間)から決定できる。次いで、仮定上の伝播時間と実際の伝播時間との間の差異または偏差に基づいて、新たな較正を実行することができる。言い換えれば、前記新たな較正は、第1の送信ユニットによるのではなく代わりに第2の送信ユニットによる、偏位の測定に基づいている。このように、第2の送信ユニットによって、第1の送信ユニットの較正または較正の品質のチェックをさらに利用可能にすることができる。
【0028】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1の送信信号および第2の送信信号はいずれもレーダー信号である。
【0029】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1の応答信号および第2の応答信号はいずれもレーダー信号である。
【0030】
送信信号および応答信号は無線ベースの信号であってよい。具体的には、これらは無線周波ベースの測定信号とすることができる。レーダー信号は、これらが、たとえ悪天候条件であっても信頼をもって使用できるという点で、光信号に勝る利点を有する。したがって、較正のための、しかして較正によって整備され、セットされたナビゲーションシステムでもある本システムは、船舶または艦船上で使用するのに適している。
【0031】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1の送信ユニットは、残りの3つの送信ユニットのうちの少なくとも1つの第1の応答信号が到来しない場合、システムの故障を確認するように設計される。
【0032】
この場合、不十分な応答信号が第1の送信ユニットに返信され、その結果、残りの3つの送信ユニットに対する第1の送信ユニットの相対位置データの明確な決定は不可能である。したがって、故障は、第1の送信ユニット具体的には第1の送信ユニットの制御部によって確認され、故障であれば較正は行われない。
【0033】
残りの全ての送信ユニットによって第1の応答信号が第1の送信ユニットに返信された場合にだけ、第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正を行うとの規定を設けることができる。別なやり方として、すなわち異常メッセージが出された場合に、第1の送信ユニットによって残りの3つの送信ユニットに向け送信信号を再度発信する、との規定を設けることも可能である。或る送信ユニットの応答信号がまたも到来せず、異常メッセージが出た場合に、第1の送信ユニットが、残りの全ての送信ユニットから応答信号を得るまでさらに繰り返すよう示す手順についての規定を設けてもよい。
【0034】
また一方、第1の送信ユニットによって異常メッセージが確認された後は、第1の送信ユニットに対し対応するコマンドが発行された場合だけを除き、第1の送信ユニットが他の送信ユニットに新たな送信信号を発信しないようにすることも可能である。かかるコマンドは、例えば、保全要員によって事前に定めることが可能である。確認された異常メッセージは、例えば、視覚、聴覚、または触覚信号の形で異常事項出力によって保全要員に示すことができる。
【0035】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1の送信信号および第2の送信信号は、いずれも無線信号の形でのビーコン信号である。
【0036】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1の応答信号および第2の応答信号は、いずれも無線信号の形でのビーコン信号である。
【0037】
しかして、これらの信号は、航海において使用される航路標識とすることができる。送信ユニットを較正するための本システムは、好ましくは、船舶の送信ユニット用に使用される。このビーコン信号は、例えば、送信ユニットの配置に対する対象体の相対位置および/または方位を決定するために使用することが可能な、無線ビーコンまたは発光ビーコンである。ビーコン信号は、残りの3つの送信ユニットに対する第1の送信ユニットの相対位置を決定するために、あらかじめ使用することができる。
【0038】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1の送信ユニットの較正は、該第1の送信ユニットの時間パラメータおよび/または周波数パラメータの設定を含む。
【0039】
これは、第1の送信ユニットによる送信信号の発信に対する時間値または時間点がセットされることを意味する。加えてまたは代わりに、第1の送信ユニットにより発信される第1の送信信号の周波数をセットすることも可能である。例として、時間パラメータもしくは時間値および/または周波数パラメータもしくは周波数値が定義される。時間パラメータおよび/または周波数パラメータの設定および定義は、第1の送信ユニット自体によって遂行することができる。言い換えれば、これら時間パラメータおよび/または周波数パラメータは、格納された位置データと決定された相対位置データとの間の確認された偏位を考慮に入れて補正される。偏位をもたらす第1の送信ユニットの位置誤差を考慮に入れるために、時間パラメータおよび/または周波数パラメータは斯く補償される。
【0040】
本発明のさらなる実施形態によれば、少なくとも4つの送信ユニットの配置の各送信ユニットは、当該配置に対して移動している対象体のレーダー信号を受信し、それを受けて、少なくとも4つの送信ユニットの該配置に対し移動対象体の相対位置が決定可能となるように、その移動対象体に向け応答信号を発信するように設計される。
【0041】
これらにより、送信ユニットの配置に対し移動している対象体をナビゲートするための航行支援(navigation aid)を提供することが可能である。この移動対象体は、例えば、航空機、具体的にはヘリコプタまたは飛行機である。この送信ユニットの配置は、例えば、航空機の着陸敷地(landing site)の領域の中に配備され、これにより、該配置の送信ユニットによって航空機に向け発信された応答信号に基づいて、航空機のためのナビゲーション情報を提供することができる。かかるナビゲーション情報は、送信ユニットの配置に対する航空機の相対位置および/または方位を含むことが可能である。
【0042】
本発明のさらなる実施形態によれば、この配置は、1つの平面に実質上配置された、合計で8つの送信ユニット、少なくとも6つの送信ユニットを含む。
【0043】
4つの送信ユニットの配置の前述の全ての特質は、しかして8つの送信ユニットにも適用可能で、この場合も、送信ユニットの伝送パラメータの較正は、本発明によるシステムによって常に実行される。これは、保全作業の一環として送信ユニットを交換する場合に必要となり得、この作業では、新しい送信ユニット、此処では第1の送信ユニットが配置中に設置され、このとき、適合または設定された送信ユニットの配置が航行支援のため提供できるように、その実際の位置に基づいて較正する必要がある。この平面は、航空機、具体的にヘリコプタのための着陸面を形成することができる。
【0044】
本発明のさらなる実施形態によれば、合計8つの送信ユニットのうちの2つの送信ユニットは該平面から或る距離をとって配置される。
【0045】
このことは、或る距離に配置されたこれら2つの送信ユニットが当該平面中に位置していないということである。或る距離に配置されたこれらの送信ユニットは、例えば、該平面に平行に走る連絡ライン(connecting line)上に所在する。
【0046】
該平面の外側に配置された送信ユニットによって、ナビゲーションの正確さを、特に、航空機が、該平面の近傍にしかして平面中に配置された送信ユニットの領域中に位置しているときに、さらに向上させることができる。これは、平面上で、対象体が離艦するとき、および着艦するときに有益であり得る。
【0047】
本発明の一態様によれば、本発明による送信ユニットを較正するための前述のシステムを備えた船舶が明示される。
【0048】
この船舶は、例えば、艦船、特に軍用艦である。本船舶は、送信ユニットの配置の諸送信ユニットによって標識された、または囲まれたヘリコプタ着艦ポートを備えることができる。
【0049】
本発明のさらなる実施形態によれば、少なくとも4つの送信ユニットの配置が航空機のための着艦区域を囲む。
【0050】
しかして、航空機の着艦区域の直ぐ近くに無線ビーコンを設けることが可能で、これにより、たとえ悪環境状態の下でも、船舶に対し航空機の安全なナビゲーションを遂行することができる。本システムによって、送信ユニット、しかして送信ユニットの配置の較正が実行されれば、当該送信ユニットの配置に対し移動対象体をナビゲートできる、ローカルな相対航法(relative navigation)を提供することが可能である。
【0051】
本発明の一態様によれば、本発明による前述のシステムを備えたプラットフォームが明示される。このプラットフォームは、静的なプラットフォームであっても、移動するプラットフォームであってもよい。したがって、本プラットフォームは、例えば、輸送車両、石油掘削プラットフォーム、ヘリコプタ離着陸ポートなどであってよい。
【0052】
さらには、本プラットフォームは航空機とすることも可能である。例として、本プラットフォームは有人または無人の航空機に組み込まれ、しかして、同様に有人でも無人でもよい航空機とすることが可能な移動対象体の、プラットフォームを備えた側の航空機に対するナビゲーションを提供することができる。具体的には、本発明によるシステムを備えたこのプラットフォームは飛行機であってよく、これに対して有人または無人の飛行機がそれら自体を正確に測位または方位付けできるように、これら諸エスコート機の前述の飛行機に対するナビゲーションが必要となる。この正確な測位または方位付けの遂行を可能にするために、本発明によるシステムは、全ての送信ユニットに対する、とりわけシステムの中に新規に組み込まれた送信ユニットに対する較正を前もって実行することができる。
【0053】
さらに、本プラットフォームは陸上車両であってもよい。例えば該プラットフォームは軍用陸上車両である。しかして、この陸上車両に対して移動している対象体のナビゲーションを提供することが可能である。例として、有人または無人の航空機をこの陸上車両に対しナビゲートすることができる。
【0054】
本発明の一態様によれば、送信ユニットを較正するための方法が明示される。本方法の1つのステップは、設置環境中に少なくとも4つの送信ユニットを配置するステップを伴う。さらなるステップは、該少なくとも4つの送信ユニットのうちの第1の送信ユニットの設定点位置に関する位置データを第1の送信ユニット中に格納するステップを伴う。さらなるステップは、第1の送信信号を残りの3つの送信ユニットの各々に向け発信するステップを伴う。さらなるステップは、発信された第1の送信信号を残りの3つの送信ユニットの各々によって受信し、その後、これら残りの3つの送信ユニットの各々によって第1の応答信号を第1の送信ユニットに返信するステップを伴う。さらなるステップは、返信された第1の応答信号に基づいて、残りの3つの送信ユニットに対する第1の送信ユニットの相対位置データを決定するステップを伴う。さらなるステップは、格納された位置データと決定された相対位置データとの間の偏位を検出し、検出された偏位に基づいて、第1の送信ユニットの伝送パラメータの較正を実行するステップを伴う。本方法の個別のステップは、任意の順序で、または前述した順序で実行することが可能である。
【0055】
較正された配置の稼働開始時の自動較正によって、ローカルの相対航法の精度が向上される。
【0056】
本配置は、例えば、当該平面から或る距離にある2つの送信ユニットなど、いわゆる一次構成に対する平面の外側に配置された送信ユニットを含むことができる。
【0057】
本較正は、送信ユニットが曝された環境条件からもたらされ得る、送信ユニットの一切の偏差を補正する。例として、これらの送信ユニットは、極地での、しかも高日射の下での海洋作業の過程で使用される。これは、個別の送信ユニットの較正による偏位の補正または補償を必要とする。
【0058】
本発明による、送信ユニットを較正するためのシステムによって、具体的に言えば、送信ユニットの較正された配置によって、軍用暗号化全地球衛星ナビゲーションシステム(GNSS:global satellite navigation systems)に依るよりも高い精度を備えた、自律的なローカルナビゲーションを遂行することが可能である。さらに、絶対座標系または地球座標系から航空機の座標系または着艦プラットフォームの座標系への座標軸系の変換に由来する遅延を生じることなく、リアルタイムで移動対象体に航行基準を提供することが可能である。その結果として、適切な場合着艦プラットフォームを取り囲む送信ユニットの配置に対する、移動対象体の位置決定に対する高い更新レートが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1A】本発明の一例示的な実施形態による、少なくとも4つの送信ユニットの配置を示す。
【
図1B】本発明の一例示的な実施形態による、各々が制御部と記憶部とを含む送信ユニットを示す。
【
図2】本発明の一例示的な実施形態による、8つの送信ユニットの配置を備えた船舶の平面図を示す。
【
図3】本発明の一例示的な実施形態による、8つの送信ユニットの配置を備えた船舶の側面図を示す。
【
図4】本発明の一例示的な実施形態による、送信ユニットを較正するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
これら図中の図示は概略であり縮尺通りではない。
【0061】
以下の諸図の説明において異なる図中で同じ参照符号が用いられている場合、それらは同一または類似の要素を指す。但し、同じまたは類似の要素が異なる参照符号で示されることもある。
【0062】
図1Aは、送信ユニット1、2、3、4の配置20内の第1の送信ユニット1を較正するためのシステム10を示す。この配置は、静的なプラットフォーム、または
図1には描かれていない移動するプラットフォーム上に配備することが可能である。少なくとも4つの送信ユニット1、2、3、4のうちの第1の送信ユニット1は、残りの3つの送信ユニット2、3、4の各々に向けて第1の送信信号11を発信するように設計される。残りの3つの送信ユニット2、3、4の各々は、第1の送信信号11を受信し、第1の送信信号11を受信した後、第1の送信ユニット1に向けて第1の応答信号12を返信するように設計される。
【0063】
第1の送信ユニット1は、返信された第1の応答信号12に基づいて、残りの3つの送信ユニット2、3、4に対する第1の送信ユニット1の相対位置データ41を決定するように設計され、この相対位置データ41は、第1の送信ユニット1の制御部40によって決定され、前記制御部は
図1B中に示されている。この相対位置データ41は、第1の送信ユニット1からそれぞれの残りの送信ユニット2、3、4への第1の送信信号11の伝播時間の測定値から、ならびに残りの送信ユニット2、3、4から第1の送信ユニット1への第1の応答信号12の伝播時間の測定値から算定される。例として、第1の送信ユニット1から第2の送信ユニット2への第1の送信信号11の伝播時間、および第2の送信ユニット2から第1の送信ユニット1に戻る応答信号12の伝播時間が測定され加算される。しかして、第1の送信ユニット1と第2の送信ユニット2との間の距離は、これら信号の既知の伝播速度を考慮に入れて、これらの伝播時間の測定値から計算することが可能である。
【0064】
第1の送信ユニット1は、該第1の送信ユニット1の設定点位置1aに関する位置データ31をさらに格納している。設定点位置1aは、
図1Aに示されている。
図1Bは、設定点位置1aに関する格納された位置データ31が、第1の送信ユニット1の記憶部30中に格納または事前プログラムされていることを示す。残りの3つの送信ユニット2、3、4に対する第1の送信ユニット1の相対位置データ41は、第1の送信ユニット1の制御部40または処理部40によって決定される。
【0065】
第1の送信ユニット1、具体的には第1の送信ユニット1の制御部40は、設定点位置1aに関する格納された位置データ31と、決定された相対位置データ41とを比較する。第1の送信ユニット1または制御部40は、格納された位置データ31と決定された相対位置データ41との間の偏位dを検出する。検出された偏位dに基づき、次いで、第1の送信ユニット1によって、該第1の送信ユニット1の伝送パラメータの較正が実行される。この較正もまた、第1の送信ユニット1の制御部40によって実行することができる。
【0066】
図1Bは、第2の送信ユニット2を示し、該ユニットは、例えば、第2の送信ユニット2の設定点位置2aおよび/または実際の位置などの位置に関する位置データ51を格納している記憶部50を含む。第2の送信ユニット2は、制御部60をさらに含み、該制御部は、例えば、第2の送信ユニット2によって発信された第2の送信信号13および第1の送信ユニット1によって返信された第2の応答信号14の伝播時間の測定値から、第1の送信ユニット1に対する第2の送信ユニット2の相対位置データ61を算定するように設計される。第1の送信ユニット1の伝送パラメータの較正は、しかして、第2の送信信号13および第2の応答信号14の伝播時間と、第2の送信ユニット2の位置に関する格納された位置データ51との比較に基づいて実行することができる。
【0067】
図2は、送信ユニット1を較正するためのシステム10を備えた船舶100を示す。船舶100は、艦船、具体的には航空母艦であってよい。このために、船舶100は、
図2には示されていない航空機のための着艦面(landing area)または着艦区域(landing region)111を備えることができる。システム10は、8つの送信ユニット1、2、3、4、5、6、7、8の配置20を備え、このうちの6つの送信ユニット1、2、3、4、5、6は、1つの平面110に配置され、この平面110は着艦面を形成し、平面110中に位置する6つの送信ユニット1、2、3、4、5、6は、航空機のための着艦区域111を囲んでいる。
【0068】
図3は、
図2の船舶100の側面図を示す。
図3は、送信ユニット7および8が平面110中に配置されておらず、該平面から或る距離にあることを明瞭に表している。これと対照的に、6つの送信ユニット1、2、3、4、5、6は平面110中に配置されている。システム10または配置20が使える状態であれば、すなわち送信ユニット1、2、3、4、5、6、7、8が、相互にセットされ、調整され、較正されていれば、航空機200によって送信ユニット1、2、3、4、5、6、7、8に向け送信信号15が発信され、これら送信ユニット1、2、3、4、5、6、7、8が、送信信号15を受信した後、航空機200に向けそれぞれ応答信号16を返信するという事実によって、全送信ユニット1、2、3、4、5、6、7、8が、該航空機を航行させるためのナビゲート手段として使用可能であり、船舶100、しかして配置20に対する航空機200の相対位置の決定および/または方位の決定が、送信信号15および応答信号16の伝播時間の測定値に基づき引き続きに算定される。かくして、船舶100上への航空機200の安全な着艦を確実にすることができる。この場合、送信ユニット1、2、3、4、5、6、7、8の配置20は任意であってよい。
図2および
図3は、かかる配置20の単なる一例を示す。
【0069】
図4は、送信ユニット1を較正するための方法に対するフローチャートを示す。方法の1つのステップS1は、設置環境中に少なくとも4つの送信ユニット1、2、3、4を配置するステップを伴う。さらなるステップS2は、該少なくとも4つの送信ユニット1、2、3、4のうちの第1の送信ユニット1の設定点位置1aに関する位置データ31を格納するステップを伴う。さらなるステップS3は、第1の送信信号11を残りの3つの送信ユニット2、3、4の各々に向け発信するステップを伴う。さらなるステップS4は、残りの3つの送信ユニット2、3、4の各々によって、発信された第1の送信信号11を受信し、その後、該残りの3つの送信ユニット2、3、4の各々によって、第1の応答信号12を第1の送信ユニット1に返信するステップを伴う。さらなるステップS5は、返信された第1の応答信号12に基づいて、残りの3つの送信ユニット2、3、4に対する第1の送信ユニット1の相対位置データ41を決定するステップを伴う。加えて、さらなるステップS6は、格納された位置データ31と決定された相対位置データ41との間の偏位dを検出し、検出された偏位dに基づいて、第1の送信ユニット1の伝送パラメータの較正を実行するステップを伴う。