(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】アネキシンのコアドメイン、並びに抗原送達及びワクチン接種におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20231102BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20231102BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231102BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20231102BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231102BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231102BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C12N15/12
A61K38/17
A61K39/00 H
A61P31/00
A61P35/00
C07K14/435 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2018564358
(86)(22)【出願日】2017-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2017063985
(87)【国際公開番号】W WO2017211964
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-15
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500431380
【氏名又は名称】ドイチェス クレープスフォルシュングスツェントルム シュティフトゥング デス エッフェントリッヒェン レヒツ
【氏名又は名称原語表記】Deutsches Krebsforschungszentrum Stiftung des oeffentlichen Rechts
【住所又は居所原語表記】Im Neuenheimer Feld 280, 69120 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】フジュピ,ファトミレ
(72)【発明者】
【氏名】クランメル,ペテル
(72)【発明者】
【氏名】ウェイド,ハイコ
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】松本 淳
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/130525号(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)
(a)配列番号1の41~344アミノ酸、
(
b)配列番号6の41~344アミノ酸、
から選択される1つのアミノ酸配列からなる単離されたアネキシンコアドメイン、又は
(i-a)
上記(a)
又は(b)のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列からなる単離されたアネキシンコアドメインであって、
抗原提示を増強しT細胞応答を誘導する能力を有する単離されたアネキシンコアドメイン、及び
(ii)MHC又はHLAにより提示される少なくとも1つの抗原性ペプチド
を含む、タンパク質結合物又は融合タンパク質。
【請求項2】
前記MHC又はHLAにより提示される抗原性ペプチドは、βhCG
、Pmel17、HER2/neu、WT1、メソテリン、CEA、gp100
、TRP-2、NY-BR-1、NY-CO-58、MN(gp250)
、チロシナーゼ、テロメラーゼ、SSX2、MUC-1、MART1、melan-A、NY-ESO-1、MAGE-1、MAGE-3、MAGE-A3、p53、及び高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)からなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項1に記載のタンパク質結合物又は融合タンパク質。
【請求項3】
前記タンパク質結合物又は前記融合タンパク質は、共刺激性分子若しくはその免疫原性断片、又は共刺激性の第2のペプチド配列に更に結合/融合されている、請求項1又は2に記載のタンパク質結合物又は融合タンパク質。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載
の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項5】
前記抗原性ペプチドのコーディング配列は、βhCG
、Pmel17、HER2/neu、WT1、メソテリン、CEA、gp100
、TRP-2、NY-BR-1、NY-CO-58、MN(gp250)
、チロシナーゼ、テロメラーゼ、SSX2、MUC-1、MART1、melan-A、NY-ESO-1、MAGE-1、MAGE-3、MAGE-A3、p53、及び高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)からなる群から選択されるタンパク質に由来するMHC又はHLAにより提示される抗原性ペプチドをコードしている、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
前記コーディング配列は、少なくとも1つの樹状細胞(DC)刺激性の核酸配列に融合されている、請求項
5に記載の核酸。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載の核酸を発現する組換え発現ベクター。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質結合物若しくは融合タンパク質及び担体を含む、医薬組成物。
【請求項9】
ワクチンである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
被験体における感染性疾患又は癌の治療又は予防において使用するための、請求項8又は9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
被験体における感染性疾患又は癌の治療又は予防において使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質結合物又は融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、抗原特異的免疫応答の誘導、及び/又は感染性疾患及び/又は癌の治療若しくは予防のために効果的な抗原送達及び抗原提示を媒介するためのアネキシンコアドメインを含む、免疫原性組成物、例えばDNAワクチンを含むワクチン、及びその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
適応免疫応答の開始の中心は、専門的抗原提示細胞(APC)であり、該細胞は、それらの細胞表面上でMHCクラスI及びMHCクラスII複合体に結合された抗原由来ペプチドを提示する(非特許文献1)。細胞質ゾルタンパク質はプロテアソームにより分解され、CD8陽性T細胞により認識されるMHCクラスI複合体上に載せられるが、外因性タンパク質(例えば、食作用された細菌又はアポトーシス細胞由来)の貪食は、エンドソーム/リソソーム分解、そしてCD4陽性T細胞に対して提示するMHCクラスII複合体上での提示をもたらす。さらに、樹状細胞(DC)等のAPCは、貪食されたタンパク質に由来するペプチドをMHCクラスI経路中に輸送して、CD8陽性T細胞に対して提示することも可能であり、その過程は、交差提示と呼ばれている(非特許文献2)。APC様機能を満たすことが記載された種々の細胞型の中でも、DCは最も効果的であるとみなされる(非特許文献3)。APC:T細胞相互作用に従って、T細胞受容体(TCR)連結は、例えばインターロイキン(IL)-2及びインターフェロン-γのようなサイトカインの分泌を特徴とする初期T細胞活性化(プライミング)をもたらす(非特許文献4)。活性化T細胞は、2種の主要な系譜であるCD4陽性Tヘルパー細胞(Th)及びCD8陽性細胞傷害性T細胞に分類することができる異なる型のエフェクターT細胞への分裂及び分化に向かうこととなる。細胞傷害性T細胞は、標的細胞において直接的にアポトーシスを誘導するが、その一方で、Th細胞は、サイトカインの産生により免疫応答を指令し、Th1、Th2、及びTh17の主要なサブセットに分類されている(非特許文献5)。それらのエフェクター機能をまとめると、Th1細胞は、細胞性免疫の活性化に必要であり、その一方で、Th2細胞は、体液性免疫応答を誘導する。Th17細胞は、真菌類のような細胞外病原体に対する免疫に関与すると考えられている。抗腫瘍免疫応答に関しては、効果的なCD8陽性T細胞応答の誘導は、腫瘍拒絶に重要であるとみなされており、多くの腫瘍ワクチン接種様式は、CD8陽性T細胞の抗腫瘍応答を誘導することに至っていない(非特許文献6)。このように、APCによる効果的な抗原提示は、適応免疫の誘導のために中心的な役割を担う。
【0003】
アネキシンは、カルシウム及びリン脂質に結合するタンパク質のファミリーを含む。真菌類を除く全ての真核生物界並びに植物及び動物において、20種を超えるメンバーが見出されている。アネキシンは、30 kDaから40 kDaの間の範囲の分子量を有し(アネキシンVIだけは66 kDa)、目立った構造的特徴を有する。アネキシンのアミノ末端ドメインは、それぞれのアネキシンメンバーにおいて配列及び長さ(11~196の範囲)が多様である。それに対して、約70個のアミノ酸残基から構成される4個(アネキシンVIの場合だけは8個)のαヘリカルドメインからなるカルボキシ末端領域は、アネキシン間で良く保存されている。カルシウム結合部位及びリン脂質結合部位は、カルボキシ末端ドメインに位置している。全てのアネキシンのCa2+結合類似性は、それらの共通の一次構造、固有のN-末端ドメイン(「テール」)、及び保存されたC-末端ドメイン(「コア」)によるものである。アネキシンVIを除いて、保存されたC-末端ドメインは常に「エンドネキシンフォールド」と呼ばれるホモロジーが高まった領域を含む約70アミノ酸の4つのリピート(アネキシンVIは8つ有する)から構成される。C末端コアの他に、アネキシンは、より大幅に可変のN末端ヘッド部を有する。このドメインが、それぞれのアネキシンに、エンドサイトーシス及びエキソサイトーシス、細胞骨格調節、並びに膜電気伝導度及び膜組織化を含む細胞過程の多様な範囲において固有の機能を授ける。そのような様々な過程へのそれらの関与を考えると、アネキシンが様々な疾患病理にも関与していることは驚くべきことではない。アネキシン機能における調節不全を直接の原因とする単一の疾患状態は存在せず、幾つかの病態は、アネキシンにより加減されると示唆されている。Fatimathas及びMoss(非特許文献7)は、癌、糖尿病、及び自己免疫障害の抗リン脂質抗体症候群の進行におけるアネキシンの役割についての深まりつつある証拠を述べている。
【0004】
全てのアネキシンにおいて、脂質結合は、全てのアネキシンファミリーのメンバーの間で高度に保存されているC-末端コアドメインにより媒介される(非特許文献8、非特許文献9)。それに対して、アネキシンのN-末端は、配列が様々である。AnxA1のN-末端に相当するペプチドは、N-ホルミルペプチド受容体(FPR)ファミリーのメンバーに結合し、急性炎症及び慢性炎症の幾つかのモデルにおいて好中球の通過遊走(transmigration)の減少をもたらすことが示された(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。AnxA1のN-末端ペプチドのFPRファミリーのメンバーへの結合により誘導される下流のシグナル伝達は、ERKの活性化を引き起こすが、p38又はJNKの活性化は引き起こさない(非特許文献14、非特許文献15)。全ての高等真核生物における多数のアネキシンファミリーのメンバーの存在は、細胞生物学におけるアネキシンについての根本的な役割を示唆している。しかしながら、個々のアネキシンファミリーのメンバーを欠いたマウスは厳密な表現型を有しないことから、幾つかのアネキシンは(部分的に)重複した機能を有することが示唆される(非特許文献8、非特許文献16)。実際に、アネキシンの機能的冗長性は、膜トラフィッキング、PLA2活性の阻害、及び血液凝固の観点から証明された(非特許文献8)。
【0005】
特許文献1には、関節炎若しくは関節炎性疾患を患う被験体の治療方法、又は被験体における関節炎若しくは関節炎性疾患の予防方法であって、上記被験体に、治療的有効量のアネキシン機能を減衰させる作用物質を投与することを含む、方法が記載されている。また、作用物質のための様々なスクリーニング方法も提供される。
【0006】
特許文献2には、腫瘍抑制遺伝子であるアネキシンVIIの非機能的アレルを含むノックアウト遺伝子導入マウスが記載されている。このマウスは、アネキシン腫瘍抑制疾患から生ずる腫瘍の治療において有用な潜在的治療剤のためのスクリーニングモデルとして使用される。
【0007】
特許文献3には、アネキシンA2とADAM 17との間の結合の阻害を基礎とする、炎症性疾患の治療において有効な化合物のスクリーニングが記載されている。
【0008】
特許文献4には、ホルミルペプチド受容体1誘発性のネクロトーシス関連疾患としての、重症の粘膜疹、皮膚紅斑、体表糜爛、水疱、及び擦創の治療のための有効成分をスクリーニングする方法が記載されている。スクリーニングされる有効成分は、ホルミルペプチド受容体1のアネキシンA1への結合により誘発されるネクロトーシスを阻止することが可能な物質であると考えられている。
【0009】
特許文献5には、アネキシンIIに結合する化合物を介して、内皮細胞における脈管形成を阻止し、内皮細胞におけるアポトーシスを選択的に誘導する方法が開示されている。これらの化合物及びこれらの化合物の使用方法は、望ましくない脈管形成を特徴とする疾患又は障害の治療において有用であるとみなされる。また、アネキシンIIに結合する化合物と薬学的に許容可能なビヒクルとを含有する医薬組成物、及びそのような化合物を同定する方法も提供される。
【0010】
特許文献6には、抗アネキシン抗体及び該抗体の使用、並びにそれらのリガンドであるアネキシンの使用が開示される。そのようなアネキシン及び抗アネキシン抗体は、アポトーシスの検出のために有用であり、癌、自己免疫疾患、心臓血管疾患、及び/又は血管疾患の診断及び/又は治療のための医薬組成物の製造のために有用である。
【0011】
特許文献7には、免疫細胞上のデクチン-1と免疫細胞を活性化することが可能な抗デクチン-1特異抗体又はその断片との結合のための組成物及び方法、並びにインフルエンザ感染症の治療又は予防を、それを必要とする被験体において行う方法であって、その被験体に、インフルエンザ抗原と融合された抗デクチン-1抗体を含む組成物を治療的有効量、投与することを含む、方法が開示されている。非特許文献17では、アポトーシス細胞及び壊死細胞の認識及び取り込みにおけるC型レクチンのCLEC4L/DC-SIGN、CLEC9A/DNGR1、及びCLEC7A/デクチン-1の役割、及び/又は瀕死の細胞及び死細胞の免疫原性に対するそれらの作用が述べられている。
【0012】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質-1(LRP-1)は、掃去機能及びシグナル伝達機能の両方を示す膜受容体である。LRP-1と相互作用する多種多様な細胞外リガンド、並びに細胞質足場タンパク質及びシグナル伝達タンパク質は、胚形成及び発生等の生理学的過程においてのみならず、癌及び神経学的障害を含む重篤な病理学的状況においても主要な役割を担う(非特許文献18)。細胞表面アネキシンVIは、酸性pH結合部位又は受容体として機能し得て、そしてまたα2-マクログロブリン認識の関連において中性pHでLRP-1との共同受容体としても機能し得る(非特許文献19)。
【0013】
Arurと同僚達(非特許文献20)及びTzelepisら(非特許文献21)は、免疫学的にサイレントであり、T細胞応答を引き起こさないとみなされるアポトーシス細胞の食作用の過程におけるアネキシンA1の役割を記載している。同じ出版物において、Tzelepisと同僚達により、交差提示の過程における内因性アネキシンA1の役割が更に記載された。この出版物では、アネキシンA1は、樹状細胞の細胞質ゾル中で作用するメディエーターとして記載されている。したがって、この出版物は、抗原提示及び交差提示を保証する外因性メディエーターとしてのアネキシンコアドメインの使用を可能にしない。
【0014】
Andersenと同僚達(非特許文献22)は、アネキシンA2のToll様受容体(TLR)2への結合を記載している。TLR2を引き金として、アネキシンA2はワクチンアジュバントとして作用することができ、TLR媒介性DC活性化、並びに共刺激性表面分子の上方調節及び抗原交差提示のような過程が増強される。この出版物は、DC中への抗原送達に関して言及していない。
【0015】
Tzelepisら(非特許文献23にて)は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)(Mtb)感染の間に、貪食リガンドのアネキシン1は、DCにおけるエフェロサイトーシスを増加し、DC抗原提示機構の能力を内因的に増強するDC交差提示における重要なメディエーターであることを開示している。アネキシン1欠損マウスは、Mtb感染に対して高感受性であり、Mtb抗原特異的CD8陽性T細胞応答の欠陥を示した。
【0016】
最後に、Weydと同僚達(非特許文献24、非特許文献25)は、マウスにおいてアネキシンA1、アネキシンA5、アネキシンA13、及びアネキシンコアドメインが、炎症性DCの発生を防止し、アポトーシス細胞に発現されたモデル抗原のオボアルブミン(OVA)に対する細胞性免疫応答を抑制したことを開示している。
【0017】
特異的に又は優先的にDCと反応し、抗原提示を媒介する試薬は、腫瘍又は感染性疾患抗原に対して強力な免疫応答を誘導する標的指向性作用物質としての大きな可能性を有する。これらの細胞特異的な標的指向性作用物質を、骨髄移植及び臓器移植又はその他の自己免疫障害において、強力な抗原提示細胞(例えば、DC)を排除するトキシンを送達するように操作することもできた。したがって、そのようなDC特異的結合剤は、大きな治療的価値及び診断的価値を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許出願公開第2002-052358号
【文献】国際公開第01/10199号
【文献】特開2014-095643号
【文献】国際公開第2014/126127号
【文献】国際公開第02/17857号
【文献】国際公開第2005/027965号
【文献】米国特許出願公開第2014/0322214号
【非特許文献】
【0019】
【文献】Verboogen, Dingjan et al. 2016
【文献】Segura and Amigorena 2015
【文献】Kambayashi and Laufer 2014
【文献】Grakoui, Bromley et al. 1999
【文献】Lutz 2016
【文献】Buhrman and Slansky 2013
【文献】Fatimathas and Moss 2010
【文献】Gerke and Moss 2002
【文献】Moss and Morgan 2004
【文献】Walther, Riehemann et al. 2000
【文献】Strausbaugh and Rosen 2001
【文献】Ernst, Lange et al. 2004
【文献】Perretti and Dalli 2009
【文献】Hayhoe, Kamal et al. 2006
【文献】Pupjalis, Goetsch et al. 2011
【文献】Farber, De Rose et al. 2003
【文献】Connie Hesseによる学位論文、CLEC7A/Dectin-1 attenuates the immune response against dying and dead cells, Friedrich-Alexander-University Erlangen-Nuernberg, 2011
【文献】Emonard, Theret et al. 2014
【文献】Ling, Chen et al. 2004
【文献】Arur, Uche et al. 2003
【文献】Tzelepis, Verway et al. 2015
【文献】Andersen, Xia et al. 2016
【文献】Tzelepis et al. Annexin 1 regulates DC efferocytosis and cross-presentation during Mycobacterium tuberculosis infection. J Clin Invest. 2015 Feb;125(2):752-68. Epub 2014 Dec 22
【文献】Weyd, Abeler-Dorner et al. 2013
【文献】Linke, Abeler-Dorner et al. 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の課題は、そのような新しい試薬を提供し、これらの試薬を新しい効果的な療法の開発において使用することである。本発明のその他の課題及び態様は、本発明の以下の説明を読み次第、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、配列番号1~配列番号3及び配列番号6~配列番号8の群から選択される配列内に示されるアネキシンコアドメインのアミノ酸配列を含む、又は配列番号1~配列番号3及び配列番号6~配列番号8の群から選択される配列内に含まれるアネキシンコアドメインのアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、最も好ましくは99%同一であるアミノ酸配列を含むと定義される単離されたアネキシンコアドメインに関する。コアドメインの定義は、本明細書で以下の実施例の節において提供される。特に、配列番号1~配列番号3及び配列番号6~配列番号8の群から選択されるアミノ酸配列中に示されるコアドメインのアミノ酸配列からなる、又は配列番号1~配列番号3及び配列番号6~配列番号8の群から選択されるアミノ酸配列中に示されるコアドメインのアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、最も好ましくは99%同一であるアミノ酸配列からなるアネキシンコアドメインが好ましい。
【0022】
本発明はまた、本明細書に記載される少なくとも1つのアネキシンコアドメイン(i)と、MHC(好ましくはHLA)により提示され得る少なくとも1つの抗原性ペプチド(ii)とを含む、タンパク質結合物又は融合タンパク質を提供する。該抗原性ペプチドは、腫瘍、又は感染因子、病原体、若しくは内因性タンパク質に由来し得る。本発明はまた、融合物及び/又は結合物並びにその他の治療組成物を含む各々のワクチンを提供する。
【0023】
特定の実施形態においては、本発明のタンパク質結合物又は融合タンパク質は、アネキシンコアドメインと、MHCにより提示され得る少なくとも1つの抗原性ペプチドとの間に共有結合を有する。また、上記共有結合がリンカー分子又はペプチドを含む、本発明の結合物又は融合タンパク質も含まれる。適切なリンカー分子の選択は、関連技術において十分に確立されている。本発明の幾つかの実施形態においては、リンカーは、
図10に示されるリンカーのアミノ酸配列(配列番号15)、又は
図10Bに示されるリンカー配列(配列番号15)と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0024】
本発明の幾つかの態様及び実施形態においては、上記融合タンパク質は、配列番号13に示される核酸により、又は配列番号13と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するその核酸変異体によりコードされる。好ましくは、本発明の融合タンパク質は、配列番号14のアミノ酸配列、又は配列番号14と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するその変異体のアミノ酸配列を含む。
【0025】
本明細書で使用される用語「融合タンパク質」は、人工的なタンパク質様構築物に関連し、その起源及び/又は特別な機能により定義される少なくとも2つの異なるアミノ酸配列を含むタンパク質を意味する。この態様においては、本発明の融合タンパク質は、アネキシンではない別のタンパク質の第2のアミノ酸配列に融合されたアネキシンコアドメインのアミノ酸配列を含み、上記別のタンパク質は、上記第2のタンパク質又はその断片がMHC複合体を介して細胞上に提示されるという意味で抗原性である。さらに、本発明による融合タンパク質という用語は、核酸、糖類、又は放射性標識若しくは蛍光標識のためのマーカー等の非タンパク質分子をも含むそのような融合タンパク質を更に含む。
【0026】
驚くべきことに、本発明による構築物は、免疫刺激(増強)作用を有することが見出された。このように、アネキシンコアドメイン複合体及び/又は融合物を含む本発明の組成物は、様々なDC標的療法において、例えば抗原提示を増強するために、及び/又は様々な標的細胞若しくは病原体に対するT細胞応答、例えば細胞傷害性T細胞(CTL)応答を誘導するために、又は抗原提示細胞(APC)介在性疾患を処置するために使用することができる。本発明は、驚くべきことに、抗原性分子、例えば抗原性ペプチドと、本明細書に記載されるアネキシンコアドメインとを組み合わせることで、上記抗原性配列の免疫調節作用が大幅に増強されることを見出した。特定の理論に縛られるものではないが、アネキシンコアドメインを抗原性分子に結合させることで、樹状細胞等の抗原提示細胞の抗原プロセシング及びMHC提示が増強される。したがって、本発明は大まかには、MHC、好ましくはヒトMHC(HLA)を介した抗原性分子の抗原提示を増強するための製品及び方法を可能にする。
【0027】
本明細書で使用される場合に、用語「抗原」は、免疫応答、例えばT細胞媒介性免疫応答を主要組織適合抗原(MHC)細胞タンパク質上での抗原提示により惹起し、抗原特異的T細胞応答を引き起こすことが可能な物質を指す。制御性T細胞(Treg)の場合において、抗原に対する応答は、その他のエフェクター細胞、例えばヘルパーT細胞(Th)及び/又は細胞傷害性T細胞(Tc)による免疫応答の低下又は改善である。熟練した免疫学者であれば、T細胞に対して提示するためにプロセシングされる抗原について言及される場合に、用語「抗原」は、MHCによりT細胞受容体に対して提示されるT細胞エピトープである抗原のそれらの部分(例えば、ペプチド断片)を指すものと認識するはずである。表現「抗原」がセルフ-又は自己-により修飾される場合に、これは、MHC分子中に通常存在するが、T細胞応答の引き金ともなるセルフ抗原又は自己抗原を指す。B細胞媒介性免疫応答の関連で「抗原」に特異的な抗体の形で使用される場合に、抗体の可変ドメイン(軽鎖及び重鎖)の相補性決定領域に結合する抗原の部分、すなわち結合部分は、線状エピトープ又は三次元エピトープであり得る。特定の場合においては、本発明のワクチン又は融合タンパク質若しくはタンパク質結合物により送達される抗原は、抗原提示細胞により取り込まれ、提示の前に、例えば抗体又は融合タンパク質の1つ以上の部分の開裂によりプロセシングされる。
【0028】
本明細書で使用される場合に、用語「抗原性ペプチド」は、B細胞及び/又はT細胞のいずれかにより特異的に認識されるポリペプチド抗原のその部分を指す。B細胞は、抗体産生を介して外来の抗原決定基に応答する一方で、Tリンパ球は、細胞性免疫を媒介する。このように、T細胞応答における抗原性ペプチドは、MHCの関係において抗原特異的T細胞受容体により認識される抗原の部分である。
【0029】
本明細書で使用される場合に、用語「エピトープ」は、免疫グロブリンに特異的に結合することが可能である、又は主要組織適合複合体(MHC)タンパク質(例えば、クラスI又はクラスII)によりT細胞受容体に対して提示され得る任意のタンパク質決定基を指す。エピトープ決定基は一般的に、T細胞受容体に対して特定のアミノ酸側基を提示する、例えば溝、ペプチド側基、及びT細胞受容体の特定の電荷特徴により溝内に特定のその他の残基を有するMHC分子の溝内にはまる5個~30個のアミノ酸の長さの短鎖ペプチドである。一般的に、解離定数が1 mM、100 nM、又は更に10 nMである場合に、抗体は抗原に対して特異的に結合する。
【0030】
本明細書で使用される場合に、用語「抗原提示細胞」(APC)は、T細胞を活性化することが可能であり、限定されるものではないが、特定のマクロファージ、B細胞、及び樹状細胞を含む細胞である。「樹状細胞」(DC)は、リンパ組織又は非リンパ組織中に見られる形態学的に類似した細胞型の多様な集団の任意のメンバーを指す。これらの細胞は、それらの特徴的な形態、高いレベルの表面MHC-クラスIIの発現により特徴付けられる(Steinman, et al., Ann. Rev. Immunol. 9:271 (1991);そのような細胞の記載については引用することにより本出願の一部をなす)。これらの細胞は、本明細書に記載されるように、多数の組織起源から、適切には末梢血から単離され得る、又はマウス骨髄から分化され得る。樹状細胞結合タンパク質は、樹状細胞上にその受容体が発現されている任意のタンパク質を指す。例としては、GM-CSF、IL-1、TNF、IL-4、CD40L、CTLA4、CD28、及びFLT-3リガンドが挙げられる。抗原性ペプチドは、HLA分子(MHCクラスI及び/又はMHCクラスII)により提示され得る、T細胞応答、例えば細胞傷害性T細胞(CTL)応答を誘導するペプチド配列を含む。通常、これらのペプチドは、8個から30個の間の、好ましくは8個から24個の間のアミノ酸の長さであり、MHCクラスIペプチドは通常は、8個から10個の間の長さであり、かつMHCクラスIIペプチドは通常は、21個から25個の間のアミノ酸の長さである。これらの抗原性ペプチドについての同定(「スクリーニング」)方法は、同様に知られており、in vivo法又はin vitro法及びin silico法の両方を含み得る。
【0031】
アネキシンコアドメイン及び抗原性ペプチドの各々の結合物(すなわち、異なる成分、すなわちアネキシン及びペプチドの間に導入された非共有結合又は共有結合を含む)の製造方法、並びに各々の融合タンパク質の製造方法(すなわち、これらの成分の組換えクローニング後の1つのタンパク質の発現)は、当該技術分野でよく知られている。
【0032】
本発明に関連して、用語「アネキシンコアドメイン」は、抗原提示を媒介するために必要かつ十分であるアネキシン(又はそのホモログ)のためのポリペプチドの最小断片を指す/表すものと理解されるものとする(下記も参照のこと)。幾つかの好ましいタンパク質様アネキシンコアドメインは、本明細書で先に定義されている。この能力(生物学的機能)は、当該技術分野で既知の多くの方法において本明細書で、例えば以下に実施例で記載されるように試験することができる。この能力は更に、当該技術分野で既知の多くの方法において各々の文献に記載されるように試験することができる。アネキシンコアドメインの例に関しては、以下の
図7も参照のこと。また、その用語は、本明細書に記載されるように、特に、脊椎動物、特に哺乳動物(特に、ヒト)のアネキシン遺伝子及び/又はタンパク質及び/又はmRNA及び/又はコア断片(コアドメイン)を含むものとする。その用語はまた、種々の調製物中のアネキシンコアドメイン、例えば細胞の関連においては、上記コアドメインを組換え発現する細胞中のアネキシンコアドメイン、細胞及びその画分、特に生物学的に活性な画分(fractions)から精製されたアネキシンコアドメインを含んでいる。
【0033】
タンパク質凝集物は、免疫応答を増強させることが知られている。タンパク質凝集物がそのような強力な抗体応答を媒介する機構は、完全には理解されていない。しかしながら、その効力は、少なくとも部分的に、その多価タンパク質がB細胞の免疫グロブリン等の細胞表面受容体に広範囲に交差結合して、B細胞を活性化する能力によるものであると考えられている。したがって、本発明に関連して、本発明のタンパク質結合物又は融合タンパク質を凝集させて、免疫応答を更に増強させることは1つの実施形態である。これは、抗原性分子を直接的に又はリンカー配列を介して多量体化させて、本発明によるアネキシンコアドメインとの融合のための繰り返しの抗原性配列を有する多抗原性ペプチドが形成される多量体型抗原性ペプチドを使用することによって達成することができる。その一方で、本発明の融合タンパク質は、該融合タンパク質に共有結合された、タンパク質結合物又は融合タンパク質の凝集を誘導する部分、例えばタンパク質多量体化ドメイン又は二量体化ドメインを更に含み得る。そのようなタンパク質多量体化ドメインの1つの特に好ましい例は、コイルドコイルドメイン、例えばそのようなドメインを有する複数のポリペプチドの三量体化を促進するイソロイシンジッパードメインである。タンパク質多量体化のための修飾の更なる好ましい例は、結合型ビオチン又はビオチン化配列を、タンパク質のストレプトアビジンと一緒に使用することである。本発明に関連したもう1つの選択肢として、タンパク質凝集のための作用物質と組み合わされた本発明の融合タンパク質の組成物が提供される。
【0034】
融合タンパク質はまた、核酸コーディングのレベルで、上記タンパク質又はペプチドの部分、すなわちアネキシンコアドメイン及び各々の抗原性ペプチド又は抗原の2つ以上の配列を直列的にかつ正しいコーディング領域で配置することによって作製することもできる。融合タンパク質は、例えば固相タンパク質合成、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を含むin vitroでのDNAの操作を可能にする分子技術を含む当業者に既知の方法によって合成される。
【0035】
本発明に関連して、用語「C型レクチン受容体」、「デクチン-1」、「DC-SIGN」、及び「LRP-1」は、実施例及び、例えばレクチン-Fc融合タンパク質に関する上述のHesseにおいて記載され、試験されるアネキシンのコアドメインに結合するのに必要かつ十分である、1種以上の受容体の最小断片を示す/表すと理解されるものとする。この能力は更に、当該技術分野で既知の多くの方法において各々の文献に記載されるように試験することができる。また、その用語は、本明細書に記載されるヒト受容体遺伝子及び/又はタンパク質及び/又はmRNA及び/又は断片(結合部、断片、又はドメイン)の哺乳動物(特に、マウス)ホモログを含むものとする。その用語はまた、種々の調製物中の1種以上の受容体及び/又は該1種以上の受容体の最小断片、例えば細胞の関連においては、上記1種以上の受容体及び/又は該1種以上の受容体の最小断片を(組換え)発現する細胞中の1種以上の受容体及び/又は該1種以上の受容体の最小断片、細胞及びその画分から精製された1種以上の受容体及び/又は該1種以上の受容体の最小断片を含んでいる。
【0036】
C型レクチン受容体のファミリーのメンバーとしてのデクチン-1及びDC-SIGN、並びにLRP-1を用いて、研究された全てのアネキシンのコアドメインに高い親和性で結合する新規のDC表面受容体を同定することができた。これは、デクチン-1、DC-SIGN、及びLRP-1が、免疫応答及び抗原提示の誘導に対するアネキシン媒介性の効果を担うことを示している。
【0037】
特異的受容体を介したDCに対するアネキシンの効果は、抗原提示の新規の分子機構であり、癌及び腫瘍の療法のためだけでなく、マウス及びヒト等の哺乳動物における感染性疾患のための両方に多くの新規の可能性をもたらす。
【0038】
国際公開第2009/049892号には、少なくともアネキシンコアドメイン又はその機能的変異体を含む動員ポリペプチド(a)、ベイトポリペプチド(b)、及び発光団を含む第1のポリペプチド(A)が記載されている。その発明による組成物は、全多重タンパク質複合体内及び/又はその間でのタンパク質-タンパク質相互作用を測定するために使用することができる。医学関連タンパク質-タンパク質相互作用を調節する試験化合物のライブラリー中で試験化合物を同定するための、その発明による方法の使用が記載されているが、具体的な疾患の内容は一切開示されていない。国際公開第2009/049892号は、アネキシンと、デクチン-1、DC-SIGN、及び/又はLRP-1との相互作用に関して一切言及しておらず、また治療関連の化合物及び/又は組成物のスクリーニングについては実施可能要件を満たしていない。
【0039】
国際公開第2005/027965号には、アネキシンI及びその他のアネキシンが、上記アネキシンの1つ若しくはその断片又は受容体に対する抗体のいずれかの結合によって刺激又は遮断され得た特異的受容体に関連付けられることが記載されている。このように、アネキシン及び/又はその機能的断片及び/又はアネキシン若しくはその機能的断片を含む融合タンパク質は、免疫系を調節するために使用されることが述べられている。国際公開第2005/027965号は、抗原提示を媒介するためのアネキシンコアドメイン自体の使用に関して言及しておらず、こうしてまた治療関連の化合物及び/又は組成物のスクリーニングについては実施可能要件を満たしていない。
【0040】
骨髄由来DC(BMDC)を、アネキシンコアドメインとモデル抗原のオボアルブミン(OVA)とを含む融合タンパク質にin vitroで曝露することで、表面MHCクラスI分子中にOVA由来ペプチドの十分な抗原提示がもたらされる(
図1)と共に、CD8陽性T細胞及びCD4陽性T細胞の両方の強く増幅された特異的T細胞刺激がもたらされた(
図2及び
図3)。これらの結果は、アネキシンコアドメインが、抗原提示及び抗原交差提示において今まで認められていなかった役割を有することを示唆している。したがって、アネキシンコアドメインに媒介される抗原提示の操作が、ワクチン接種方略のデザインに際して有用であり、したがって癌(腫瘍抗原を用いたワクチン接種)又は感染性疾患を患う患者に有益であることが判明し得る。アネキシンコアドメインが、DCに外因的に投与され、抗原に結合された場合に抗原送達及び抗原提示を媒介するこの機構は、アネキシンA1の記載される内因性の細胞質ゾル性機能(Tzelepis, Verway et al. 2015)とは本質的に異なることに留意すべきである。この機構はまた、Toll様受容体2に結合するアネキシンA2の記載されたワクチンアジュバント機能(Andersen, Xia et al. 2016)とも異なる。それというのも、本明細書に記載されるアネキシンコアドメインは、TLRを介してDC刺激を媒介せず、抗原送達及び抗原(交差)提示を媒介するからである。
【0041】
上記抗原ペプチドは、βhCG、gp100又はPmel17、HER2/neu、WT1、メソテリン、CEA、gp100、MART1、TRP-2、NY-BR-1、NY-CO-58、MN(gp250)、イディオタイプ、チロシナーゼ、テロメラーゼ、SSX2、MUC-1、MART1、melan-A、NY-ESO-1、MAGE-1、MAGE-3、MAGE-A3、及び高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)からなる群から選択されるタンパク質に由来する、本発明によるタンパク質結合物又は融合タンパク質が好ましい。
【0042】
本発明による使用のためのその他の抗原性ペプチドには、腫瘍関連抗原、例えば患者から得られた自己癌抗原から選択される癌ペプチドが含まれる。癌抗原の非限定的な例としては、白血病及びリンパ腫、神経腫瘍、例えば星状細胞腫又はグリア芽腫、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頸部癌、胃腸腫瘍、胃癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、尿生殖器腫瘍、例えば子宮頸癌、子宮癌、卵巣癌、膣癌、精巣癌、前立腺癌若しくは陰茎癌、骨腫瘍、脈管性腫瘍、又は口唇、上咽腔、咽頭及び口腔、食道、直腸、胆嚢、胆道系、喉頭、肺及び気管支、膀胱、腎臓、脳及び神経系のその他の部分、甲状腺の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、並びに白血病に由来する抗原が挙げられる。具体的な態様においては、上記組成物は、CEA、前立腺特異抗原(PSA)、HER-2/neu、BAGE、GAGE、MAGE 1~4、6及び12、MUC(ムチン)(例えば、MUC-1、MUC-2等)、GM2及びGD2ガングリオシド、ras、myc、チロシナーゼ、MART(黒色腫抗原)、MARCO-MART、サイクリンB1、サイクリンD、Pmel 17(gpl00)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコアミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺癌のpsm、前立腺血清抗原(PSA)、PRAME(黒色腫抗原)、β-カテニン、MUM-1-B(黒色腫偏在性変異遺伝子産物)、GAGE(黒色腫抗原)1、BAGE(黒色腫抗原)2~10、C-ERB2(Her2/neu)、EBNA(エプスタインバールウイルス核抗原)1~6、gp75、ヒトパピローマウイルス(HPV)E6及びE7、p53、肺耐性タンパク質(LRP)、Bcl-2、並びにKi-67から選択される腫瘍関連抗原から選択される抗原性ペプチドを更に含む。
【0043】
本発明に関連して使用するための更なる抗原性ペプチド又は抗原は、ウイルス抗原から選択される。用語「ウイルス抗原」には、ウイルスに対する免疫応答を引き出す任意の物質が含まれる。例としては、レトロウイルス科、特にHIV-I及びHIV-LP、ピコルナウイルス科、特にポリオウイルス及びA型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、特にヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、カリシウイルス科、特に胃腸炎を引き起こす株、トガウイルス科、特にウマ脳炎ウイルス及び風疹ウイルス、フラビウイルス科、特にデング熱ウイルス、脳炎ウイルス及び黄熱病ウイルス、コロナウイルス科、特にコロナウイルス、ラブドウイルス科、特に水疱性口内炎ウイルス及び狂犬病ウイルス、フィロウイルス科、特にエボラウイルス及び/又はマールブルクウイルス、パラミクソウイルス科、特にパラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス及び呼吸器多核体ウイルス、オルトミクソウイルス科、特にインフルエンザウイルス、ブンガウイルス科、特にハンターンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス及びナイロウイルス、アレナウイルス科、特に出血熱ウイルス、レオウイルス科、特にレオウイルス、オルビウイルス及びロタウイルス、ビルナウイルス科、ヘパドナウイルス科、特にB型肝炎ウイルス、パルボウイルス科、特にパルボウイルス、パポーバウイルス科、特にパピローマウイルス、シミアンウイルス-40(SV40)及びポリオーマウイルス、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科、特に単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘-帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス科(Poxviridae)、特に天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス及びポックスウイルス、及びイリドウイルス科、特にアフリカ豚コレラウイルス、C型肝炎ウイルス、及びHPV L6、HPV L7、それらの断片及び誘導体が挙げられる。
【0044】
本発明に関連して使用するための更なる抗原性ペプチド又は抗原は、細菌抗原から選択される。本明細書で使用される場合に、用語「細菌抗原」には、細菌に対する免疫応答を引き出す任意の物質が含まれる。例としては、ヘリコバクター種、特にヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、ボレリア種、特にボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ種、特にレジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリア種、特にM.ツベルクローシス(M. tuberculosis)、M.アビウム(M. avium)、M.イントラセルラーレ(M. intracellulare)、M.カンサシイ(M. kansasii)、M.ゴルドナエ(M. gordonae)、スタフィロコッカス種、特にスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ナイセリア種、特にN.ゴノレア(N. gonorrhoeae)、N.メニンギティディス(N. meningitidis)、リステリア種、特にリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ストレプトコッカス種、特にS.ピオゲネス(S. pyogenes)、S.アガラクティエ(S. agalactiae)、S.ファエカリス(S. faecalis)、S.ボビス(S. bovis)、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)、嫌気性ストレプトコッカス種、病原性カンピロバクター種、エンテロコッカス種、ヘモフィルス種、特にヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、バシラス種、特にバシラス・アントラシス(Bacillus anthracis)、コリネバクテリウム種、特にコリネバクテリウム・ジフテリアエ(Corynebacterium diphtheriae)、エリジペロスリックス種、特にエリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、クロストリジウム種、特にC.パーフリンジェンス(C. perfringens)、C.テタニ(C. tetani)、エンテロバクター種、特にエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ種、特にクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ種、特にパスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス種、フソバクテリウム種、特にフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラス種、特にストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、トレポネーマ種、特にトレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、レプトスピラ、病原性エシェリキア種、及びアクチノマイセス種、特にアクチノマイセス・イスラエリイ(Actinomyces israelii)が挙げられる。
【0045】
本発明によるタンパク質結合物又は融合タンパク質が更に好ましく、上記結合物又は上記融合タンパク質は、共刺激性分子若しくはその免疫原性断片、又は共刺激性の第2のペプチド配列に更に結合/融合されている。
【0046】
さらに、本発明の別の態様は、本発明による融合タンパク質又はタンパク質結合物をコードする核酸に関する。コーディング配列は、βhCG、gp100又はPmel17、HER2/neu、WT1、メソテリン、CEA、gp100、MART1、TRP-2、NY-BR-1、NY-CO-58、MN(gp250)、イディオタイプ、チロシナーゼ、テロメラーゼ、SSX2、MUC-1、MART1、melan-A、NY-ESO-1、MAGE-1、MAGE-3、MAGE-A3、及び高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)からなる群から選択されるタンパク質に由来する抗原をコードすることが好ましい。上記コーディング配列は、少なくとも1つの(追加の)DC刺激性の核酸配列に融合されていることが更に好ましい。また、複数の抗原性ペプチド、例えば1つの腫瘍疾患において見られる複数の配列、又は個々の腫瘍において見られる患者特異的抗原の融合物を使用することもできる。
【0047】
さらに、本発明の別の態様は、本発明による核酸を発現する組換え発現ベクターに関する。
【0048】
本発明はまた、配列番号1~配列番号3及び配列番号6~配列番号8から選択される配列に示されるコアドメインのアミノ酸配列を含む単離されたアネキシンコアドメインに関する。該ドメインの範囲は、本明細書で実施例の節において提供される。上記配列からなるドメイン、又は上記配列から本質的になるドメイン(例えば、該ドメインの機能を妨げない5個~10個のアミノ酸伸長を有する)が好ましい。本発明による方法において更に使用することができる本発明によるアネキシンコアドメインは、既知のアネキシン又はその機能的断片(すなわち、本明細書に記載される受容体に結合することができる)のいずれかから得ることができ、好ましくは、ヒト又はマウスのアネキシン1、5及び13コアドメイン、好ましくは配列番号1~配列番号3及び配列番号6~配列番号8による配列中に含まれる配列、又は配列番号1、2、3、6、7若しくは8による配列中に含まれるコアの配列によるコアドメイン、又はそれらの機能的断片、より好ましくは
図8に示される枠で囲われた配列によるコアドメインの群から選択される。
【0049】
本発明における用語「接触」は、1つ以上の結合する可能性のある物質/抗原と、アネキシンコアドメインとの間の任意の相互作用を意味し、それにより、該2つの成分のいずれも、互いに独立して、液相中、例えば溶液中若しくは懸濁液中にあってもよく、又は例えば本質的に平坦な表面の形の、若しくは粒子、微粒子(pearls)等の形の固相に結合されていてもよい。
【0050】
本発明のもう1つの態様は、感染性疾患又は癌の治療又は予防のための医薬組成物を製造する方法であって、本発明によるタンパク質結合物若しくは融合タンパク質、又は本発明による核酸、又は本発明による発現ベクターを、適切な作用物質又は担体と混合する工程を含む、方法に関する。
【0051】
このように、本発明の化合物は、適切な補助物質及び/又は添加剤と混合され得る。そのような物質は、相互作用する化合物の安定性、可溶性、生体適合性、若しくは生物学的半減期を増大する薬理学的に許容可能な物質を含み、又は例えば静注液、スプレー、バンドエイド若しくは丸薬のような特定の適用経路のために含まれる必要がある物質若しくは材料を含む。
【0052】
医薬組成物、例えば全身的又は局所的に、任意の慣用の経路によって、特に腸内で、例えば経口で、例えば錠剤若しくはカプセル剤の形で、非経口で、例えば注射可能な液剤若しくは懸濁液剤の形で、局所的に、例えばローション剤、ゲル剤、軟膏剤、若しくはクリーム剤の形で、又は経鼻形若しくは坐剤形において投与される医薬組成物を製剤化するための担体、賦形剤、及び方略は、当業者によく知られており、かつ各々の文献に記載されている。
【0053】
したがって、本発明の別の態様は、本発明によるタンパク質結合物若しくは融合タンパク質、又は本発明による核酸、又は本発明による発現ベクターを含む、医薬組成物である。医薬組成物は、ワクチンであることが好ましい。
【0054】
作用物質、例えば複合体又は融合物の投与は、該作用物質が標的細胞に至ることを可能にする任意の方法によって達成され得る。これらの方法には、例えば注射、貯留、植え込み、坐剤、経口摂取、吸入、局所投与、又は作用物質による標的細胞への到達が達成される任意の他の投与方法が含まれる。注射は、例えば静脈内注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射又は腹腔内注射であり得る。植え込みには、植え込み可能な薬物送達システム、例えばミクロスフェア、被覆マイクロ粒子、ヒドロゲル、ポリマー型リザーバ、コレステロールマトリクス、ポリマーシステム、例えばマトリクス侵食及び/又は拡散システム、及び非ポリマーシステム、例えば圧縮ペレット剤、融合ペレット剤、又は部分融合ペレット剤の挿入が含まれる。坐剤には、グリセリン坐剤が含まれる。経口摂取投与物は、腸溶被覆され得る。吸入は、吸入器内のエアロゾルと一緒に作用物質を、単独で又は吸収され得る担体に付着させて投与することを含む。作用物質は、液体中に、例えば溶解形又はコロイド形で懸濁させることができる。該液体は、溶剤、不完全溶剤、又は非溶剤であり得る。多くの場合に、水又は有機液体を使用することができる。
【0055】
特定の実施形態においては、上記化合物(活性化剤又は阻害剤)は、組換え核酸、例えばアネキシンコアドメイン又は抗原RNAを投与することにより被験体へと投与される。好ましくは、該組換え核酸は、遺伝子治療用ベクターである。
【0056】
本発明のもう1つの態様は、上記医薬組成物が、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、アレルギー又は癌を治療又は予防するための追加の薬学的有効成分、すなわち化学療法剤を更に含む、本明細書に記載される方法又は使用に関する。
【0057】
本発明のもう1つの態様は、本明細書に記載される疾患(例えば、下記参照)の予防及び/又は治療において使用するための、単離されたアネキシンコアドメイン、アネキシンコアドメインと少なくとも1種の抗原との複合体若しくは融合物、任意に少なくとも1種の抗原若しくはアレルゲン性化合物に結合された活性化抗体、又は本発明による医薬組成物に関する。可溶性であるか、又は担体、例えばリポソーム若しくはラテックスビーズに結合されている、本発明による使用のための複合体又は融合物が好ましい。
【0058】
さらに、本発明のもう1つの態様は、患者における感染性疾患又は癌を治療又は予防する方法であって、上記患者に、有効量の単離されたアネキシンコアドメイン、アネキシンコアドメインと少なくとも1種の抗原若しくはアレルゲン性化合物との複合体若しくは融合物、任意に少なくとも1種の抗原若しくはアレルゲン性化合物に結合された活性化抗体、又は本発明による方法により得られた医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。
【0059】
一般的に、担当医は、特定された化合物と、任意にまたその他の個々の患者データ(臨床データ、家族歴、DNA等)も処置の基礎とし、処置はこれらの要因の組み合わせを基礎としても行われ得る。本発明のこの方法は、例えば、個々の免疫学的診断データと、患者の臨床的情報及び一般的な健康管理統計とを統合して、例えば個人用医薬をその患者に適用することを可能にすることを含む。薬物有効性、薬物相互作用、及びその他の患者状況条件についての重要な情報も使用することができる。
【0060】
上記処置される哺乳動物がマウス、ラット又はヒトである、本発明による治療方法が好ましい。
【0061】
好ましくは、本発明の有効作用物質(好ましくは、本発明のアネキシンコアドメイン、又はタンパク質結合物若しくは融合タンパク質)は、上記の活性化剤、例えば抗体、ヌクレオチド、又はアネキシンコアドメイン/受容体結合の活性化結合化合物を含む医薬組成物の形で投与される。好ましくは、上記患者はヒトである。処置とは、例えば疾患又は状態、すなわち免疫学的疾患、例えば免疫不全、感染性疾患又は癌を予防、治療すること、その症状を軽減すること、又は上記疾患又は状態を治癒することを含むものと解釈される。
【0062】
一般的に、担当医は、特定された化合物と、任意にまたその他の個々の患者データ(臨床データ、家族歴、DNA等)も処置の基礎とし、処置はこれらの要因の組み合わせを基礎としても行われ得る。本発明のこの方法は、例えば、個々の癌診断データと、患者の臨床的情報及び一般的な健康管理統計とを統合して、例えば個人用医薬をその患者に適用することを可能にすることを含む。薬物有効性、薬物相互作用、及びその他の患者状況条件についての重要な情報も使用することができる。
【0063】
上記処置される哺乳動物がマウス、ラット又はヒトである、本発明による治療方法が好ましい。
【0064】
より好ましくは、処置される癌は、固形腫瘍、例えば乳癌、骨癌、卵巣癌、肝臓癌、腎臓癌、及び肺癌から選択される固形腫瘍である。
【0065】
好ましくは、有効作用物質は、本発明の医薬組成物、例えばタンパク質結合物又は融合タンパク質の形で投与され、上記患者はヒトである。処置とは、例えば疾患又は状態、すなわち癌を予防、治療すること、その症状を軽減すること、又は上記疾患又は状態を治癒することを含むものと解釈される。処置は一般的に、治療的有効量の本発明のタンパク質結合物又は融合タンパク質を、その処置を必要とする被験体に投与することを含む。
【0066】
もう1つの態様においては、本発明は、被験体のワクチン接種のための方法であって、本発明のタンパク質結合物又は融合タンパク質を、ワクチン接種を必要とする被験体に投与することを含む、方法を提供する。本発明のタンパク質結合物又は融合タンパク質は、好ましくはワクチン組成物の形であり、少なくとも1種の担体及び/又は賦形剤及び/又はワクチンアジュバントを更に含む。
【0067】
本明細書に開示される医薬組成物、特にワクチン組成物は、好ましくは1種以上の免疫刺激性化合物、例えばアジュバントを更に含む。「アジュバント」は、免疫応答の発生を非特異的に増強させる作用物質である。一般的なアジュバントには、本発明の融合タンパク質が吸着される無機物(ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)の懸濁液、油中水型及び水中油型を含むエマルジョン(及び二重エマルジョン及び転相可能なエマルジョンを含むその別形)、リポ糖類、リポ多糖、免疫刺激性核酸(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)、リポソーム、Toll様受容体アゴニスト(特に、TLR2アゴニスト、TLR4アゴニスト、TLR7/8アゴニスト、及びTLR9アゴニスト)、及びそのような成分の様々な組み合わせが含まれる。
【0068】
「有効量」は、抗原提示を増加させる、本明細書に記載される1種以上の化合物又は医薬組成物の量である。その量は、上記疾患及び/又は状態に関して見られる症状を緩和する。
【0069】
本発明はまた、感染性疾患又は癌のリスクがある被験体を処置する方法であって、治療的有効量のアネキシンコアドメイン結合物が供給される、方法を含む。上記疾患のリスクがある状態は、例えば該疾患の家族歴、該疾患の素因を与える遺伝子型、又は該疾患の素因を与える表現型症状から生じ得る。
【0070】
哺乳動物患者は、ラット、マウス、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ウマ、サル、又はヒトであってよく、マウス、ラット、又はヒトが好ましい。
【0071】
さらに、本発明のもう1つの好ましい態様は、本明細書に記載される本発明によるワクチン接種のための材料を1個の又は別個の容器中に含む、好ましくは本発明によるスクリーニング手段を含むキットに関する。任意に、該キットは、本明細書に記載される本発明による方法を実施するための説明書を含む。
【0072】
上記キットは、(iii)バッファー、(iv)希釈剤、(v)フィルタ、(vi)針、又は(v)注射器の1つ以上を更に含み得る。その容器は、好ましくは瓶、バイアル、注射器、又は試験管であり、多用途容器であり得る。該容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成されていてよい。好ましくは、上記キット及び/又は容器は、説明書を再構成及び/又は使用のための指示が表示される容器上に又は該容器を伴って含む。
【0073】
ウェスタンブロット及び/又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の群から選択される方法のための材料を含む、本発明によるキットが好ましい。例えば、ラベルが、凍結乾燥された配合物を、ELISA等の上記方法のために適した特定の抗体濃度に再構成させるべきであることを指摘し得る。
【0074】
上記キットが、本明細書に記載されるアネキシンコアドメイン及び/又はその機能的部分及び変異体に特異的なモノクローナル抗体又はその断片を含む、本発明による使用が更に好ましい。
【0075】
以下の図面、配列及び実施例は、単に本発明を説明するために用いられ、本発明の範囲を実施例に記載される本発明の特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての参照文献は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1A】アネキシンコアドメイン及びモデル抗原のオボアルブミンを含む融合タンパク質(Anx-OVA)が、抗原のOVA単独と比較して大幅に増強された樹状細胞(DC)上のMHCクラスI分子における抗原交差提示をもたらすことを示す図である。A)実験の略図。マウス骨髄由来のDCを、OVA又はAnx-OVAと一緒にインキュベートした。DC上のMHC I分子内で交差提示されたOVA由来ペプチドSIINFEKL(配列番号4)を、特異抗体(抗MHC-SIINFEKL抗体25-D1.16、eBioscience社)によって検出した。B)等量(500 nM)のOVA又はAnx-OVAと一緒に12時間にわたりインキュベートした後にフローサイトメトリーにおいて検出された交差提示されたOVA由来ペプチドSIINFEKLに対して陽性のDCの図(N=3)。
【
図2A】アネキシンコアドメイン及びモデル抗原のオボアルブミンを含む融合タンパク質(Anx-OVA)と一緒にDCをインキュベートすることで、抗原のOVA単独と一緒にインキュベートした場合と比較して大幅に増強されたCD8陽性T細胞活性化がもたらされることを示す図である。A)実験の略図。マウス骨髄由来のDCを、OVA又はAnx-OVAと一緒にインキュベートした。CD8陽性T細胞活性化は、OVA由来のSIINFEKL(配列番号4)ペプチドに対して特異的な遺伝子導入T細胞受容体を有するCD8陽性OT-I T細胞を使用して検出された。T細胞活性化は、インターフェロン-γ(IFN-γ)の分泌により検出された。B)マウス骨髄由来のDCを、等量のOVA若しくはAnx-OVAと一緒に、又はポジティブコントロールとしての精製されたSIINFEKLペプチドと一緒にインキュベートした。12時間のインキュベートの後に、DCをOT-I T細胞と一緒に更に3日間~5日間にわたって共培養した。OT-I T細胞活性化は、ELISAにおいてIFN-γ分泌を測定することにより検出された(N=3)。
【
図3A】アネキシンコアドメイン及びモデル抗原のオボアルブミンを含む融合タンパク質(Anx-OVA)と一緒にDCをインキュベートすることで、抗原のOVA単独と一緒にインキュベートした場合と比較して大幅に増強されたCD4陽性T細胞活性化がもたらされることを示す図である。A)実験の略図。マウス骨髄由来のDCを、OVA又はAnx-OVAと一緒にインキュベートした。CD4陽性T細胞活性化は、OVA由来のISQAVHAAHAEINEAGR(配列番号5)ペプチドに対して特異的な遺伝子導入T細胞受容体を有するCD4陽性OT-II T細胞を使用して検出された。T細胞活性化は、インターロイキン-2(IL-2)の分泌により検出された。B)マウス骨髄由来のDCを、等量のOVA又はAnx-OVAと一緒にインキュベートした。12時間のインキュベートの後に、DCをOT-II T細胞と一緒に1日間にわたって共培養した。OT-II T細胞活性化は、ELISAにおいてIL-2分泌を測定することにより検出された。
【
図4A】アネキシンコアドメイン及びモデル抗原のオボアルブミンを含む融合タンパク質(Anx-OVA)と一緒にDCをインキュベートすることで、抗原のOVA単独と一緒にインキュベートした場合と比較して大幅に増強されたCD4陽性T細胞活性化がもたらされることを示す図である。A)実験の略図。マウス骨髄由来のDCを、OVA又はAnx-OVAと一緒にインキュベートした。CD4陽性T細胞活性化は、OVA由来のISQAVHAAHAEINEAGR(配列番号5)ペプチドに対して特異的な遺伝子導入T細胞受容体を有するCD4陽性OT-II T細胞を使用して検出された。T細胞活性化は、インターフェロン-γ(IFN-γ)の分泌により検出された。B)マウス骨髄由来のDCを、等量のOVA又はAnx-OVAと一緒にインキュベートした。12時間のインキュベートの後に、DCをOT-II T細胞と一緒に更に3日間~5日間にわたって共培養した。OT-II T細胞活性化は、ELISAにおいてIFN-γ分泌を測定することにより検出された。
【
図5】様々なアネキシンが、受容体LRP-1と高い親和性で結合することを示す図である。示された組換えアネキシン及びアネキシンA1コアドメインの、固定化されたLRP-1への結合は、水晶振動子マイクロバランスにより検出された。組換えアネキシンは、3種の異なる濃度で分析された。示されたアネキシン及びアネキシンA1コアドメインのLRP-1への近似結合曲線が示されている。全てのアネキシン及びコアアネキシンA1ドメインについて計算された親和性は、50 nM~300 nMの範囲である。マウスアネキシンA1(mAnxA1):黒塗りの丸、マウスアネキシンA1コアドメイン(mAnxA1コア):白抜きの丸、マウスアネキシンA5(mAnxA5):黒塗りの正方形、マウスアネキシンA13(mAnxA13):白抜きの正方形。
【
図6-1】幾つかのアネキシンが、受容体デクチン-1と高い親和性で結合することを示す図である。A)ELISAにおける、示された固定化されたC型レクチン分子への組換えアネキシンA1(アネキシンI)及びアネキシンA5(アネキシンV)の結合の分析。B)表面分子デクチン-1へのマウスアネキシンA1、アネキシンA5、アネキシンA13、及びアネキシンA1コアドメインの結合の表面プラズモン共鳴分光法のセンサーグラム。示された濃度の示された組換えアネキシンは、固定化されたデクチン-1に結合可能であり、結合された分子は、表面プラズモン共鳴により測定された。デクチン-1に対するアネキシンの親和性は、ナノモーラー範囲(約100 nM)であると計算された。
【
図7】代表的なアネキシンタンパク質のドメイン構造を示す図である。12種のヒトアネキシンのその他の脊椎動物において示されるオーソログは、同様の構造を有し、コア領域(黒色)中に4つのリピートの厳密な保存を伴い、かつアミノ末端領域(網掛け)中に長さ及び配列の変動を有する。ヒトANXA1及びANXA2は、相互作用するS100タンパク質ファミリーのメンバーを伴う二量体として示される。その他のモデル生物についてのドメイン構造は、関連のゲノムシーケンシングプロジェクトにより利用可能となった公共データに由来するものである。特徴:S100Ax、カルシウム結合タンパク質のS100ファミリーの示されたメンバーの結合部位、P、既知のリン酸化部位、K、KGD共有派生形質(タンパク質の保存された遺伝した特徴)、I、コドン挿入(+xは、挿入されたコドンの数を示す)、S-A/b、メジャーバリアント(A)におけるアミノ酸及びマイナーバリアント(b)におけるアミノ酸を有する非同義的コード多型(SNPs)、N、推定ヌクレオチド結合部位、D、コドン欠失(-xは、欠失されたコドンの数を示す)、A、選択的スプライシングされたエキソン、Myr、ミリストイル化。それぞれのタンパク質の全長は、右側に示されている。Moss and Morgan. The annexins. Genome Biol. 2004; 5(4): 219から抜粋した。
【
図8-1】FASTA形式でのアクセッション番号と、ヒト及びマウスのアネキシンA1、A5、及びA13のタンパク質配列のアライメントを示す図である。アネキシンのコアドメインの保存された配列は、枠で囲われている。*(アスタリスク)は、単独の完全に保存された残基を有する位置を示している。:(コロン)は、類似性が高い特性の群間の保存を示している。.(ピリオド)は、類似性が低い特性の群間の保存を示している。
【
図9】アネキシンコアドメイン及びモデル抗原のオボアルブミンを含む融合タンパク質(Anx-OVA)によるワクチン接種が、抗原のOVA単独と比較してワクチン接種効力を大きく改善することを裏付ける図である。A)実験の略図。C57BL/6野生型マウスを、動物1匹当たりに400 pMolのOVA又はAnx-OVAで免疫化した。抗原(OVA)特異的CD8陽性T細胞の誘導は、蛍光標識されたSIINFEKL-MHCクラスI四量体を使用してワクチン接種をしてから7日後に検出された。B)及びC)1群当たりに3匹のマウスの平均として(B)、及び各々の個別の動物について(C)の、示されたワクチン接種後の全てのCD8陽性T細胞内のOVA特異的CD8陽性T細胞の頻度を示す結果。OVA:オボアルブミン、Anx-OVA:アネキシンコアドメイン、連結配列及びオボアルブミンを含む融合タンパク質、-:ワクチン接種無し。
【
図10】ワクチン接種のために使用されるAnx-OVA融合タンパク質のDNA配列(配列番号13)(A)及びアミノ酸配列(配列番号14)(B)を示す図である。淡灰色の網掛け:ヒトアネキシンA1コアドメイン、網掛け無し:リンカー配列、暗灰色の網掛け:オボアルブミン(OVA)。
【発明を実施するための形態】
【0077】
配列番号1~配列番号3及び配列番号6~配列番号8は、それぞれ本発明の関連において使用されるヒト及びマウスのアネキシン1、5、及び13の配列を示す。
【0078】
配列番号4及び5は、本発明の関連において使用されるペプチド配列を示す。
【0079】
配列番号9~12は、本発明において使用されるプライマー配列を示す。
【実施例】
【0080】
配列
配列は、以下の通りである:
【0081】
【0082】
マウス
C57BL/6マウスは、Jackson Laboratory社から購入した。全てのマウスは、特定病原菌不在施設で保持した。
【0083】
細胞
組換えマウスGM-CSFを使用してBM前駆細胞のBMDCへの分化のために、1×106個の細胞を、24ウェルプレート中でRPMI 1640完全培地(10%のFCS、10 U/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、300 mg/1 L-グルタミン、20 ng/mlのGM-CSF(Immunotools社))中で1×106個の細胞/mlの密度で播種した。2日後に、その培地を新しい培地により置き換えた。4日後に、その培地の半分を取り除き、新しい培地により置き換えた。実験は、分化の7日~8日後に実施した。
【0084】
組換えコアドメイン-抗原融合タンパク質の作製
マウス(m)AnxA1-OVA-pET41aプラスミドを、ニワトリオボアルブミン(OVA、NM_205152又はNP_990483、それぞれアミノ酸140から)を、C末端FLAGタグ、PreScissionプロテアーゼ開裂部位、及びプロテインAタグを有する改変されたpET41a中にクローニングすることにより作製した。さらに、2つのフレキシブルなリンカー及びタバコエッチウイルス(TEV)開裂部位を、mAnxA1とOVAとの間に導入した。連続的なPCRを、以下のプライマーを使用して実施した:
Fw_1:5'GGCGGAGGTTCAGGCGGAGGTTCAGATCAAGCCAGAGAGCTCATC 3';(配列番号9)、
Fw_2: 5'GAAAACTTGTATTTCCAGGGCGGCGGAGGTTCAGGCG 3';(配列番号10)、
Fw_3: 5'GGATCCGGCGGAGGTTCAGGCGGAGGTTCAGAAAACTTGTATTTCCAGGGCGG 3'(配列番号11)、及び、
Rev: 5'GGATCCAGGGGAAACACATCTGCCAAAG 3'(配列番号12)。
【0085】
最終的なPCR産物を、Promega社製のpGEM(商標)-T easy vector systemを使用してサブクローニングした。エシェリキア・コリBL21(DE3)pLysS株(Promega社)を使用して、融合タンパク質を発現させた。上記ベクターで形質転換されたE.コリのオーバーナイト培養物を使用して、50 μg/mlのカナマイシン及び34 μg/mlのクロラムフェニコールを含有する4 LのLB培地に接種した。培養物を、A600nmが0.6に達するまで180 rpmで撹拌した。発現を、37℃で4時間にわたり1 mMのイソプロピル-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を使用して誘導した。細胞を遠心分離により回収し、-20℃で凍結貯蔵した。プロテインAタグ付き組換え融合タンパク質を含有する細胞ペレットを、本来の細菌溶解バッファー中に再懸濁し、凍結及び融解の6回のサイクルによって破壊した。細胞抽出物を、IgG Sepharose 6 Fast Flowビーズ(GE Healthcare社)上にロードした。LPSの除去は、以前に記載されたようにして(Reichelt, Schwarz et al. 2006、Zimmerman, Petit Frere et al. 2006)、0.1%のTriton X-114(Sigma-Aldrich社)を含有するTBSで洗浄することにより達成された。Triton X-114は、0.05%のTween-20を含有するTBSで洗浄することにより除去した。PreScissionプロテアーゼ(GE Healthcare社)による融合タンパク質の開裂、及びGlutathione Sepharose Beads 4B(Amersham Biosciences社)を使用したPreScissionプロテアーゼの除去の後に、組換えタンパク質をPBSから透析で分離した。滅菌濾過後に、タンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce)を使用して測定し、LPS含量を、Limulus Amoebocyte Lysateアッセイ(Lonza社)を使用して測定した。
【0086】
組換えタンパク質は、エシェリキア・コリBL21(DE3)pLysS株(Promega社)中でpET41aベクター(Novagen社)から発現させた。アネキシンA1コアドメイン及び全長ニワトリオボアルブミンの融合タンパク質をコードするPCR産物を、C末端FLAGタグ、PreScissionプロテアーゼ開裂部位、及びプロテインAタグを有するpET41a中にクローニングした。細菌溶解物(10000×g、4℃で40分間)を、予備平衡したIgG Sepharose 6 Fast Flowビーズ(GE Healthcare社)上にロードした。LPSの除去は、0.1%のTriton X-114(Sigma社)を含有するTBSで洗浄することにより達成された。Triton X-114は、0.05%のTween-20(Gerbu社)を含有するTBSで洗浄することにより除去した。PreScissionプロテアーゼ(GE Healthcare社)による融合タンパク質の開裂、及びPreScissionプロテアーゼの除去の後に、組換えタンパク質をPBSから透析で分離した。全てのアネキシンA1調製物中のLPS含量は、製造業者の使用説明書に従いLimulus Amoebocyte Lysateアッセイ(Lonza社)を使用して5 EU/mg未満であると測定された。
【0087】
in vitroでの抗原提示の検出
C57BL/6野生型マウス由来の2×105個のBMDCを、500 nM若しくは示された量の組換えオボアルブミン(OVA、Sigma社)、又はアネキシンコアドメイン-OVA融合タンパク質と一緒にインキュベートした。8時間~12時間後に、DCをPBSで洗浄し、MHCクラスI中のOVA由来ペプチドSIINFEKLに対する蛍光標識された抗体(抗体25-D1.16、eBioscience社)と一緒にインキュベートした。SIINFEKL陽性細胞を、FACS(FACS-Canto、Becton-Dickinson社)において検出した。
【0088】
DC及びT細胞の共培養並びにT細胞活性化
C57BL/6野生型マウス由来の2×105個のBMDCを、500 nM若しくは示された量の組換えオボアルブミン(OVA、Sigma社)、又はアネキシンコアドメイン-OVA融合タンパク質と一緒にインキュベートした。12時間後に、1×106個の磁気的に精製(Easysep、Stemcell Technologies社)された、OT-Iマウス又はOT-IIマウスのそれぞれの脾臓由来のCD8陽性T細胞又はCD4陽性T細胞を上記DC培養物に添加した。1日~2日後(インターロイキン-2)、又は3日~5日後(インターフェロン-γ)に、示されたサイトカインは、培養上清中でELISA(Becton-Dickinson社)によって測定された。
【0089】
アネキシンとLRP-1との間の結合の親和性の測定
LRP-1の種々のアネキシン(アネキシンA1、A5、及びA13)への結合の親和性の測定のために、装置A100(ATTANA社)を使用した。LRP-1を、製造業者の使用説明書に従ってLNBカルボキシチップ上に固定化させた。これを達成するために、最初に該チップを、製造業者の使用説明書に従ってEDC/SulfoNHSを用いて活性化させ、次いで酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.0)中の精製LRP1(5 μg/ml~15 μg/ml)を、そのチップ上に70 Hz~100 Hzでの周波数の増加が得られるまで注入した。次いで、該チップ上の残りの結合スポットを、エタノールアミンの2回の注入を用いて飽和させ、該チップをPBS中で緩衝させた。種々のアネキシンと一緒にインキュベートするために、アネキシンを2 mMのカルシウムを有するPBS中で6種の異なる濃度で調製し、3回反復で測定した。それぞれのアネキシンの注入後に、該チップは、次のアネキシンの注入の前に5 mMのEDTA/PBS及び3 MのNaClで再生させた。
【0090】
ELISAによる種々の受容体についてのアネキシン結合測定
アネキシンへの結合についての試験のために、推定受容体分子、その断片、又は融合タンパク質(例えば、LRP-11、単独のLRP-1ドメイン、又はデクチン-1 Fcタンパク質)を、コーティングバッファー(炭酸塩-重炭酸塩-1.5 gのNa2CO3、2.93 gのNaHCO3、蒸留水、1リットル、pH 9.6まで)中で10 μg/mlでELISAプレート上に固定化する。洗浄(3×PBS Tween 0.01%)及びブロッキング(PBS中の1%のカゼイン)の後に、種々の濃度の組換えアネキシンを、ウェル中で2時間にわたりインキュベートし、引き続き5回の洗浄工程(PBS-Tween 0.05%)を行う。次いで、結合されたアネキシンは、該組換えアネキシンタンパク質に適した二次試薬(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識された二次抗体又はビオチン標識された二次抗体と共にストレプトアビジン標識されたHRP)により検出され、それらは、ELISAプレートリーダー中で適切な基質(例えば、OPD)との反応性によって測定される。該アッセイはまた、種々のアネキシンをプレート上に固定化し、そして組換え受容体分子、その断片、又は融合タンパク質(例えば、LRP-11、単独のLRP-1ドメイン、又はデクチン-1 Fcタンパク質)でプロービングすることによっても実施することができる。
【0091】
表面プラズモン共鳴によるアネキシン-デクチン1についての結合親和性測定
表面プラズモン共鳴(SPR)は、受容体リガンド相互作用をリアルタイムで解析し、結合の親和性及び動態を把握する上での有用なツールである。SPRは、アナライトと呼ばれるリガンドと受容体との会合及び解離の動態を測定するための技術である。アナライト又は受容体は、金被膜を有するセンサチップ上に固定化され得る。どちらが固定化されているかに応じて、アナライト及び受容体のどちらか一方との会合は、金被膜との接触において層の屈折率の変化を引き起こす。これは、表面層での屈折率の変化として測定され、SPRシグナルとして共鳴単位(RU)で記録される。デクチン-1で被覆された表面の調製のために、デクチン-1を、10 μl/分の流速で固定化した。そのCM5チップを、N-エチル-N'-(ジエチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の混合物を10分間にわたり注入することにより活性化し、そして酢酸バッファー(pH 5.5)中の100 μg/mL及び10 μg/mLのデクチン-1を7分間にわたり注入することにより官能化させた。次いで、残りの活性化されたカルボキシル基を、1 Mのエタノールアミンを10分間にわたり注入することにより封鎖した。対照フローセルを、上記のようにEDC/NHSに続きエタノールアミンで処理した。種々のアネキシンの濃度勾配を、デクチン-1で官能化された表面上に10 μL/分で注入し、60秒間の時間にわたり接触させ、300秒間の時間にわたり解離させ、引き続き100 mMのメチル-α-D-マンノピラノシドを使用して30 μL/分で30秒間にわたり再生させた。実験データを、Biacore S20 T100評価ソフトウェアを使用して解析した。アネキシン-デクチン-1複合体相互作用についての1:1相互作用モデルに基づく動態解析は、Scrubber2(BioLogic Software社、オーストラリア、キャンベル)を使用して実施した。
【0092】
図9において、in vivo実験は、アネキシンコアドメイン及びモデル抗原のオボアルブミンを含む融合タンパク質(Anx-OVA)によるワクチン接種が、抗原のOVA単独と比較してワクチン接種効力を大きく改善することを裏付けている。
【0093】
引用された参考文献
Andersen, B. M., J. Xia, A. L. Epstein, J. R. Ohlfest, W. Chen, B. R. Blazar, C. A. Pennell and M. R. Olin (2016). "Monomeric annexin A2 is an oxygen-regulated toll-like receptor 2 ligand and adjuvant." J Immunother Cancer 4: 11.
Arur, S., U. E. Uche, K. Rezaul, M. Fong, V. Scranton, A. E. Cowan, W. Mohler and D. K. Han (2003). "Annexin I is an endogenous ligand that mediates apoptotic cell engulfment." Dev Cell 4(4): 587-598.
Buhrman, J. D. and J. E. Slansky (2013). "Improving T cell responses to modified peptides in tumor vaccines." Immunol Res 55(1-3): 34-47.
Emonard, H., L. Theret, A. H. Bennasroune and S. Dedieu (2014). "Regulation of LRP-1 expression: make the point." Pathol Biol (Paris) 62(2): 84-90.
Ernst, S., C. Lange, A. Wilbers, V. Goebeler, V. Gerke and U. Rescher (2004). "An annexin 1 N-terminal peptide activates leukocytes by triggering different members of the formyl peptide receptor family." J Immunol 172(12): 7669-7676.
Farber, S. A., R. A. De Rose, E. S. Olson and M. E. Halpern (2003). "The zebrafish annexin gene family." Genome Res 13(6A): 1082-1096.
Fatimathas, L. and S. E. Moss (2010). "Annexins as disease modifiers." Histol Histopathol 25(4): 527-532.
Gerke, V. and S. E. Moss (2002). "Annexins: from structure to function." Physiol Rev 82(2): 331-371.
Grakoui, A., S. K. Bromley, C. Sumen, M. M. Davis, A. S. Shaw, P. M. Allen and M. L. Dustin (1999). "The immunological synapse: a molecular machine controlling T cell activation." Science 285(5425): 221-227.
Hayhoe, R. P., A. M. Kamal, E. Solito, R. J. Flower, D. Cooper and M. Perretti (2006). "Annexin 1 and its bioactive peptide inhibit neutrophil-endothelium interactions under flow: indication of distinct receptor involvement." Blood 107(5): 2123-2130.
Kambayashi, T. and T. M. Laufer (2014). "Atypical MHC class II-expressing antigen-presenting cells: can anything replace a dendritic cell?" Nat Rev Immunol 14(11): 719-730.
Ling, T. Y., C. L. Chen, Y. H. Huang, I. H. Liu, S. S. Huang and J. S. Huang (2004). "Identification and characterization of the acidic pH binding sites for growth regulatory ligands of low density lipoprotein receptor-related protein-1." J Biol Chem 279(37): 38736-38748.
Linke, B., L. Abeler-Dorner, V. Jahndel, A. Kurz, A. Mahr, S. Pfrang, L. Linke, P. H. Krammer and H. Weyd (2015). "The tolerogenic function of annexins on apoptotic cells is mediated by the annexin core domain." J Immunol 194(11): 5233-5242.
Lutz, M. B. (2016). "Induction of CD4(+) Regulatory and Polarized Effector/helper T Cells by Dendritic Cells." Immune Netw 16(1): 13-25.
Moss, S. E. and R. O. Morgan (2004). "The annexins." Genome Biol 5(4): 219.
Perretti, M. and J. Dalli (2009). "Exploiting the Annexin A1 pathway for the development of novel anti-inflammatory therapeutics." Br J Pharmacol 158(4): 936-946.
Pupjalis, D., J. Goetsch, D. J. Kottas, V. Gerke and U. Rescher (2011). "Annexin A1 released from apoptotic cells acts through formyl peptide receptors to dampen inflammatory monocyte activation via JAK/STAT/SOCS signalling." EMBO Mol Med 3(2): 102-114.
Reichelt, P., C. Schwarz and M. Donzeau (2006). "Single step protocol to purify recombinant proteins with low endotoxin contents." Protein Expr Purif 46(2): 483-488.
Segura, E. and S. Amigorena (2015). "Cross-Presentation in Mouse and Human Dendritic Cells." Adv Immunol 127: 1-31.
Strausbaugh, H. J. and S. D. Rosen (2001). "A potential role for annexin 1 as a physiologic mediator of glucocorticoid-induced L-selectin shedding from myeloid cells." J Immunol 166(10): 6294-6300.
Tzelepis, F., M. Verway, J. Daoud, J. Gillard, K. Hassani-Ardakani, J. Dunn, J. Downey, M. E. Gentile, J. Jaworska, A. M. Sanchez, Y. Nedelec, H. Vali, M. Tabrizian, A. S. Kristof, I. L. King, L. B. Barreiro and M. Divangahi (2015). "Annexin1 regulates DC efferocytosis and cross-presentation during Mycobacterium tuberculosis infection." J Clin Invest 125(2): 752-768.
Verboogen, D. R., I. Dingjan, N. H. Revelo, L. J. Visser, M. ter Beest and G. van den Bogaart (2016). "The dendritic cell side of the immunological synapse." Biomol Concepts 7(1): 17-28.
Walther, A., K. Riehemann and V. Gerke (2000). "A novel ligand of the formyl peptide receptor: annexin I regulates neutrophil extravasation by interacting with the FPR." Mol Cell 5(5): 831-840.
Weyd, H., L. Abeler-Dorner, B. Linke, A. Mahr, V. Jahndel, S. Pfrang, M. Schnolzer, C. S. Falk and P. H. Krammer (2013). "Annexin A1 on the surface of early apoptotic cells suppresses CD8+ T cell immunity." PLoS One 8(4): e62449.
Zimmerman, T., C. Petit Frere, M. Satzger, M. Raba, M. Weisbach, K. Dohn, A. Popp and M. Donzeau (2006). "Simultaneous metal chelate affinity purification and endotoxin clearance of recombinant antibody fragments." J Immunol Methods 314(1-2): 67-73.
【符号の説明】
【0094】
図面訳
図1A
anti-MHC-SIINFEKL 抗MHC-SIINFEKL
図1B
o/n オーバーナイト
% MHC I-SIINFEKL Positive cells MHC I-SIINFEKL陽性細胞の%
図2A
CD8
+ T cells CD8陽性T細胞
Interferon-γ secretion インターフェロン-γ分泌
図3A
CD4
+ T cells CD4陽性T細胞
Interleukin-2 secretion インターロイキン-2分泌
図4A
CD4
+ T cells CD4陽性T細胞
Interferon-γ secretion インターフェロン-γ分泌
図4B
peptide ペプチド
図5
Frequency 周波数
mAnxA core mAnxAコア
Time (sec) 時間(秒)
図6
Absorbance 吸光度
Annexin-I アネキシン-I
Annexin-V アネキシン-V
Dectin1-hFc デクチン1-hFc
Response[RU](O=baseline) 応答(RU)(0=基線)
Annexin A1 アネキシンA1
Annexin A1 core domain アネキシンA1コアドメイン
Annexin A5 アネキシンA5
Annexin A13 アネキシンA13
Time (s) 時間(秒)
(continued) (続き)
図7
Hono sapiens ホモ・サピエンス
Ciona intestinalis and C. savignyi カタユウレイボヤ及びユウレイボヤ
Drosophila melanogaster キイロショウジョウバエ
Bombyx mori カイコ
Caenorhabditis elegans カエノラブディティス・エレガンス
Schistosoma mansoni About 9 proteins マンソン住血吸虫 約9タンパク質
Dictyostelium discoideum キイロタマホコリカビ
Viridiplantae 緑色植物亜界
Giardia lamblia About 7 proteins ランブル鞭毛虫 約7タンパク質
Protein length (amino acids) タンパク質長(アミノ酸)
図8
(continued) (続き)
図9
Anx-OVA(400 pMol or] OVA(400 pMol) Anx-OVA(400 pMol)又はOVA(400 pMol)
Tetramer staining 四量体染色
7d 7日
wt 野生型
OVA-specific CD8
+ T cells[%] OVA特異的CD8陽性T細胞(%)
図10
Anx-OVA fusionprotein, DNA-sequence Anx-OVA融合タンパク質、DNA配列
Anx-OVA fusionprotein, aminoacid-sequence Anx-OVA融合タンパク質、アミノ酸配列
huAnxA1 Core huAnxA1コア
flexible Linker フレキシブルなリンカー
ovalbumin (OVA) オボアルブミン(OVA)
【配列表】