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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】機能性フィルター
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/10 20060101AFI20231102BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20231102BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20231102BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20231102BHJP
   F24F 1/0073 20190101ALI20231102BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B01D46/10 Z
B01D46/10 B
B01D46/42 A
A61L9/01 B
A61L9/16 F
F24F1/0073
F24F13/28
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019003190
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020110762
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】足立 将司
(72)【発明者】
【氏名】山岸 拓人
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-154325(JP,A)
【文献】特開2013-121556(JP,A)
【文献】特開2005-152793(JP,A)
【文献】特開2003-299923(JP,A)
【文献】実用新案登録第2555517(JP,Y2)
【文献】特開平11-248211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D46/00-46/90
B01D39/00-39/20
A61L9/00-9/22
F24F8/00-8/99
F24F1/0073
F24F13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に貼着して通過する気体をろ過すると共に、埃汚れが蓄積して交換時期が到来したことを目視で判別できるフィルターであって、
銀を含む抗微生物性微粒子が付着された、厚みが1~2mm、目付けが20~50g/mの不織布からなるフィルター層と、
前記フィルター層の一方面の一部に粘着剤により形成された、対象物へ貼着するための粘着剤層とを備え、
前記抗微生物性微粒子の前記不織布に対する付着量が0.01~5.0g/mの範囲であり、
前記対象物は吸気口又は通気口に装着されるカバーであり、
前記フィルター層は、前記粘着剤層が形成されている領域の少なくとも一部が白色又は淡色であり、
前記粘着剤層は、透明又は前記不織布と同色若しくは近似色であると共に、交換時期を表示する形態に形成された表示粘着剤層を含む、
機能性フィルター。
【請求項2】
対象物に貼着して通過する気体をろ過するためのフィルターであって、
銀と亜鉛とを含む無機化合物の微粒子である抗微生物性微粒子が付着された、厚みが1~2mm、目付けが20~50g/mの不織布からなるフィルター層と、
前記フィルター層の一方面の一部に粘着剤により形成された、対象物へ貼着するための粘着剤層とを備え、
前記抗微生物性微粒子の前記不織布に対する付着量が0.01~5.0g/mの範囲である、
機能性フィルター。
【請求項3】
前記粘着剤層は透明又は前記不織布と同色若しくは近似色である、請求項2記載の機能性フィルター。
【請求項4】
前記フィルター層は、前記粘着剤層が形成されている領域の少なくとも一部が白色又は淡色である、請求項2又は請求項3記載の機能性フィルター。
【請求項5】
前記粘着剤層は、交換時期を表示する形態に形成された表示粘着剤層を含む、請求項2から請求項4のいずれかに記載の機能性フィルター。
【請求項6】
前記抗微生物性微粒子は、抗ウイルス機能、抗菌機能、及び、抗黴機能のうちの少なくとも1つの機能を備える、請求項1から請求項5のいずれかに記載の機能性フィルター。
【請求項7】
前記抗微生物性微粒子は、銀と亜鉛を含む無機化合物の微粒子である、請求項1記載の機能性フィルター。
【請求項8】
前記粘着剤層は、主剤、硬化剤、及び紫外線吸収剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されるものであって、
前記主剤は、数平均分子量が15000~25000のポリウレタンポリオールを含み、
前記硬化剤は、前記主剤100重量部に対して6~8重量部含まれ、
前記紫外線吸収剤は、前記主剤100重量部に対して0.25~0.5重量部含まれる、請求項1から請求項7のいずれかに記載の機能性フィルター。
【請求項9】
前記粘着剤層の表面に積層された剥離シートを更に含む、請求項1から請求項8のいずれかに記載の機能性フィルター。
【請求項10】
前記対象物は、エアコンディショナーの吸気口又は空気清浄機の吸気口に装着されるカバーを含む、請求項1から請求項9のいずれかに記載の機能性フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性フィルターに関し、特に、エアコンディショナー(以下、「エアコン」と言う)や空気清浄機等の吸気口や部屋の通気口に装着されるカバー等の対象物に貼着して、通過する気体をろ過するための機能性フィルターに関し、更に、抗ウィルス機能、抗菌機能、抗黴機能等の抗微生物機能を有する機能性フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアコンや空気清浄機の吸気口や部屋の通気口や換気口等が埃で汚れるのを緩和すると共に、通過する空気中の埃を除去して空気を清浄化する目的で、吸気口や通気口等にフィルターを取り付けることがある。
【0003】
特許文献1には、このようなエアコン吸気口用フィルターとして、不織布から成り、この不織布の一方面の一部に粘着剤層を形成して、取付作業を簡便化したものが記載されている。
【0004】
又、特許文献2には、不織布の一方面に、「とりかえてネ」等の交換時期を示す文字を無色の粘着剤層で形成することにより、埃汚れが蓄積して交換時期が到来したことを目視で判別できるようにしたエアコン吸気口用のフィルターが記載されている。このフィルターにおいては、一般的には不織布が白色又は淡色であり、粘着剤層が形成されていない不織布の部分では、空気が不織布内部を通過するに従い空気中に含まれる埃が蓄積することにより黒く汚れていくのに対し、文字を粘着剤で形成した部分は空気の流通が抑えられるため、不織布内部に埃が蓄積されにくい。その結果、フィルターの経時使用により粘着剤層が形成されていない不織布の部分が全体的に埃汚れで黒く変色するのに対し、粘着剤で形成された文字が白く浮き上がるようになり、交換時期が文字により表示されるようになる。
【0005】
又、特許文献3には、抗菌機能を持たせるために酸化チタン等の光触媒微粒子を不織布等から成るフィルターに付着させた抗菌フィルターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-154325号公報
【文献】特開2003-299923号公報
【文献】特開2000-107270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1又は特許文献2に記載されるようなエアコン吸気口用のフィルターに抗菌機能を持たせ、フィルターを通過する空気に対する清浄化機能を高めようとする場合、特許文献3に記載の技術を利用することが考えられる。特許文献3の従来技術を適用したフィルターは光触媒粒子の抗菌性を利用するものであるが、光触媒は合成樹脂等に対しても分解作用を有する。このため、光触媒粒子を付着させたフィルターを光が当たる状態で長期間使用したり保管したりすると、粘着剤層に光触媒が悪影響を与え、粘着剤層の変色や劣化を引き起こすおそれがある。又、粘着剤層が劣化することにより、例えばエアコンの吸気口に装着されるカバーに貼り付けたフィルターを取り外す際に、粘着剤層の一部が吸気口のカバーの表面に残留する「糊残り」と言う問題を生じさせることがある。更に、フィルターに含まれる光触媒が、これを貼り付けたエアコンの吸気口のカバー等にも同様に作用して、これらの変色や劣化を生じさせる可能性もあった。
【0008】
そこで、このような問題を解決するため、光触媒粒子に代えて抗ウィルス機能、抗菌機能、抗黴機能等の抗微生物機能を有する銀を含む微粒子をフィルターに付着させることで、フィルターに抗微生物機能を付与することを試みた。試験したところ、銀を含む微粒子を付着させることにより抗微生物機能を発現することは認められたが、フィルター自体が灰色又は黒色になるため、使用前から汚れているような印象を使用者に与えかねないと共に、経時的に使用して埃が蓄積した状態になっても無色の粘着剤で形成した文字等が明瞭に表示されにくいという問題のあることが判った。その原因について検討した結果、抗微生物機能を備える銀を含む微粒子は一般にその粒子自体が黒色あるいは灰色を呈するために、この粒子をフィルターに付着させた場合、フィルター自体が灰色を呈することになるためであることが判った。従って、交換時期を示す文字を粘着剤層で形成したとしても、埃汚れによる交換時期の判別が困難になるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、銀を含む微粒子を付着させて抗微生物性を付与した場合において、粘着剤層により形成した交換時期を示す文字等の意匠が、交換時期が到来したならば明瞭に表示されるように構成した機能性フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、対象物に貼着して通過する気体をろ過すると共に、埃汚れが蓄積して交換時期が到来したことを目視で判別できるフィルターであって、銀を含む抗微生物性微粒子が付着された、厚みが1~2mm、目付けが20~50g/mの不織布からなるフィルター層と、フィルター層の一方面の一部に粘着剤により形成された、対象物へ貼着するための粘着剤層とを備え、抗微生物性微粒子の不織布に対する付着量が0.01~5.0g/mの範囲であり、対象物は吸気口又は通気口に装着されるカバーであり、フィルター層は、粘着剤層が形成されている領域の少なくとも一部が白色又は淡色であり、粘着剤層は、透明又は不織布と同色若しくは近似色であると共に、交換時期を表示する形態に形成された表示粘着剤層を含むものである。
【0011】
このように構成すると、フィルター層を構成する厚み1~2mm及び目付け20~50g/mの不織布が、通過する気体中の埃等を濾過すると共に、抗微生物性微粒子が気体及び吸着した埃等に存在する微生物に対し抗微生物機能を発揮する。フィルター層の一方面に設けた粘着剤層で対象物に貼り付けることができる。機能性フィルターの使用を継続すると、不織布における粘着剤層が形成されていない部分は気体の流通量が多いため埃等の捕捉による埃等の蓄積により黒く汚れが進行するのに対し、粘着剤層が形成されている部分では気体の流通が少ないため埃等の蓄積が抑制される。不織布に対する銀を含む抗微生物性微粒子の付着量が0.01~5.0g/mの範囲なので、必要な抗微生物機能を備えると共に、銀を含む抗微生物性微粒子の付着による不織布の色調変化を抑えることができるので不織布に形成された粘着剤層による交換時期の判別性に影響を与えにくくなる。又、粘着剤層が透明又は不織布と同色若しくは近似色となる。又、フィルター層における、粘着剤層が形成されることにより埃等の蓄積が抑制される領域の少なくとも一部が、白色又は淡色となる。更に、機能性フィルターの使用を継続したとき、表示粘着剤層が形成された部分も、気体の流通が少なく埃等の蓄積が抑制される。
請求項2記載の発明は、対象物に貼着して通過する気体をろ過するためのフィルターであって、銀と亜鉛とを含む無機化合物の微粒子である抗微生物性微粒子が付着された、厚みが1~2mm、目付けが20~50g/m の不織布からなるフィルター層と、フィルター層の一方面の一部に粘着剤により形成された、対象物へ貼着するための粘着剤層とを備え、抗微生物性微粒子の不織布に対する付着量が0.01~5.0g/m の範囲であるものである。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明の構成において、粘着剤層は透明又は不織布と同色若しくは近似色であるものである。
【0013】
このように構成すると、粘着剤層が透明又は不織布と同色若しくは近似色となる。
【0014】
請求項記載の発明は、請求項又は請求項記載の発明の構成において、フィルター層は粘着剤層が形成されている領域の少なくとも一部が白色又は淡色であるものである。
【0015】
このように構成すると、フィルター層における、粘着剤層が形成されることにより埃等の蓄積が抑制される領域の少なくとも一部が、白色又は淡色となる。
【0016】
請求項記載の発明は、請求項から請求項のいずれかに記載の発明の構成において、粘着剤層は、交換時期を表示する形態に形成された表示粘着剤層を含むものである。
【0017】
このように構成すると、機能性フィルターの使用を継続したとき、表示粘着剤層が形成された部分も、気体の流通が少なく埃等の蓄積が抑制される。
【0018】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の構成において、抗微生物性微粒子は、抗ウィルス機能、抗菌機能、及び、抗黴機能のうちの少なくとも1つの機能を備えるものである。
【0019】
このように構成すると、機能性フィルターが、抗微生物性微粒子により、抗ウィルス機能、抗菌機能、及び、抗黴機能のうちの少なくとも1つの機能を発揮する。
【0020】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明の構成において、抗微生物性微粒子は、銀と亜鉛を含む無機化合物の微粒子であるものである。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の構成において、粘着剤層は、主剤、硬化剤、及び紫外線吸収剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されるものであって、主剤は、数平均分子量が15000~25000のポリウレタンポリオールを含み、硬化剤は、主剤100重量部に対して6~8重量部含まれ、紫外線吸収剤は、主剤100重量部に対して0.25~0.5重量部含まれるものである。
【0022】
このように構成すると、粘着剤層を2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成し、主剤を数平均分子量が15000~25000のポリウレタンポリオールを含むものとし、硬化剤を主剤100重量部に対して6~8重量部含まれるものとしたので、粘着剤層は適度の粘着力と凝集力とを備える。粘着剤に含ませた紫外線吸収剤は、粘着剤層に照射される紫外線を吸収する。
【0023】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の構成において、粘着剤層の表面に積層された剥離シートを更に含むものである。
【0024】
このように構成すると、粘着剤層の表面が剥離シートで覆われ、機能性フィルターの使用時には剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させることができる。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の構成において、対象物は、エアコンディショナーの吸気口又は空気清浄機の吸気口に装着されるカバーを含むものである。
【0026】
このように構成すると、機能性フィルターは、エアコンディショナーの吸気口又は空気清浄機の吸気口に装着されるカバーに取り付けられる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、不織布を厚み1~2mm及び目付け20~50g/mとしたので、エアコンや空気清浄機等の吸気口用のフィルターとして最適なろ過性能を発揮し、必要な強度も備えるものとなる。銀を含む微粒子は一般に黒色を呈するが、不織布に対する銀を含む抗微生物性微粒子の付着量を0.01~5.0g/mの範囲とすることにより、抗微生物機能を有効にしつつ、不織布に形成された粘着剤層による交換時期の判別が容易となる。機能性フィルターの使用継続に伴い、吸着した埃等が蓄積することで不織布の色濃度に変化が生じるが、不織布における粘着剤層が形成されている部分と形成されていない部分との間で埃等の蓄積量に差が生じることに基づき、色濃度の変化程度に差異が生じる。この色濃度の差異を観察することにより使用者は、機能性フィルターの交換時期を把握又は予測することが可能となる。従って、本発明においては、不織布に対する銀を含む抗微生物性微粒子の付着量を0.01~5.0g/mの範囲とすることにより、抗微生物機能と機能性フィルターの交換時期の判別性を両立することが可能となる。又、粘着剤層を透明又は不織布と同色若しくは近似色としたので、表面から粘着剤層が視認しにくくなり、粘着剤層が形成された部分においても不織布の色調が明瞭に表示される。従って、機能性フィルターの使用継続に伴い、不織布における粘着剤層が形成された部分と形成されていない部分との間の色濃度の変化程度の差異が明瞭化するので、使用者が機能性フィルターの交換時期を判別するのが容易になる。又、粘着剤層が形成されることにより埃等の蓄積が抑制される領域の少なくとも一部が白色又は淡色であるから、機能性フィルターの継時的使用による色濃度の変化程度の差異を明確に判別することが可能となり、使用者が機能性フィルターの交換時期を適切に判別することができる。更に、フィルター層において、表示粘着剤層の周囲が埃等の蓄積により黒く汚れていくのに対し、表示粘着剤層の部分は埃等の蓄積が抑制される結果、表示粘着剤層の交換時期を示す形態を視覚的に認識できるようになる。これにより使用者が、機能性フィルターの交換時期を適切に判別することができる。
請求項2記載の発明は、不織布を厚み1~2mm及び目付け20~50g/m としたので、エアコンや空気清浄機等の吸気口用のフィルターとして最適なろ過性能を発揮し、必要な強度も備えるものとなる。銀を含む微粒子は一般に黒色を呈するが、不織布に対する銀を含む抗微生物性微粒子の付着量を0.01~5.0g/m の範囲とすることにより、抗微生物機能を有効にしつつ、不織布に形成された粘着剤層による交換時期の判別が容易となる。機能性フィルターの使用継続に伴い、吸着した埃等が蓄積することで不織布の色濃度に変化が生じるが、不織布における粘着剤層が形成されている部分と形成されていない部分との間で埃等の蓄積量に差が生じることに基づき、色濃度の変化程度に差異が生じる。この色濃度の差異を観察することにより使用者は、機能性フィルターの交換時期を把握又は予測することが可能となる。従って、本発明においては、不織布に対する銀を含む抗微生物性微粒子の付着量を0.01~5.0g/m の範囲とすることにより、抗微生物機能と機能性フィルターの交換時期の判別性を両立することが可能となる。又、銀と亜鉛とを含む抗微生物性微粒子が化学的に安定しているため抗微生物性が長期間維持できるので、抗微生物性と交換時期の判別性を高レベルで両立することが可能となる。又、粘着剤層の物性や貼着対象に悪影響を与えない。
【0028】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明の効果に加えて、粘着剤層を透明又は不織布と同色若しくは近似色としたので、表面から粘着剤層が視認しにくくなり、粘着剤層が形成された部分においても不織布の色調が明瞭に表示される。従って、機能性フィルターの使用継続に伴い、不織布における粘着剤層が形成された部分と形成されていない部分との間の色濃度の変化程度の差異が明瞭化するので、使用者が機能性フィルターの交換時期を判別するのが容易になる。
【0029】
請求項記載の発明は、請求項又は請求項記載の発明の効果に加えて、粘着剤層が形成されることにより埃等の蓄積が抑制される領域の少なくとも一部が白色又は淡色であるから、機能性フィルターの継時的使用による色濃度の変化程度の差異を明確に判別することが可能となり、使用者が機能性フィルターの交換時期を適切に判別することができる。
【0030】
請求項記載の発明は、請求項から請求項のいずれかに記載の発明の効果に加えて、フィルター層において、表示粘着剤層の周囲が埃等の蓄積により黒く汚れていくのに対し、表示粘着剤層の部分は埃等の蓄積が抑制される結果、表示粘着剤層の交換時期を示す形態を視覚的に認識できるようになる。これにより使用者が、機能性フィルターの交換時期を適切に判別することができる。
【0031】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の効果に加えて、機能性フィルターを流通する気体及び吸着した埃等に対し、抗ウィルス機能、抗菌機能、及び、抗黴機能のうちの少なくとも1つの機能を及ぼして、機能性フィルターを通過した気体を清浄化することができる。
【0032】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明の効果に加えて、銀を含む抗微生物性微粒子が化学的に安定しているため抗微生物性が長期間維持できるので、抗微生物性と交換時期の判別性を高レベルで両立することが可能となる。又、粘着剤層の物性や貼着対象に悪影響を与えない。
【0033】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の効果に加えて、粘着剤層が適度の粘着力と凝集力とを備えるから、機能性フィルターをエアコンの吸気口や室内の通気口に装着されるカバーに取り付けたときには容易には脱落しない粘着力を発揮し、取り外したときにはカバー表面に糊残りを生じさせない。紫外線吸収剤を含むので、紫外線に対する粘着剤の耐久性を向上させることができる。
【0034】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の効果に加えて、粘着剤層が剥離シートで覆われるので、使用前の取り扱い性が優れると共に使用時まで粘着剤層の物性を良好に保持することができる。
【0035】
請求項10記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の効果に加えて、エアコンディショナーの吸気口を通過する気体又は空気清浄機の吸気口を通過する気体の埃等を濾過すると共に、通過する気体に対し抗微生物作用を及ぼして、通過する気体を清浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の第1の実施の形態による機能性フィルターの正面図であって、(A)は使用開始前の状態を示し、(B)は使用継続により交換時期が到来した状態を示すものである。
図2図1のII-II線における拡大断面図であって、厚みを誇張して示すものである。
図3】本発明の第2の実施の形態による機能性フィルターの正面図であって、(A)は使用開始前の状態を示し、(B)は使用継続により交換時期が到来した状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態による機能性フィルターの正面図であって、(A)は使用開始前の状態を示し、(B)は使用継続により交換時期が到来した状態を示すものであり、図2は、図1のII-II線における拡大断面図であって、厚みを誇張して示すものである。
【0038】
始めに図1及び図2を参照して、機能性フィルター1の構成の概略を説明する。この機能性フィルター1は、例えばエアコンや空気清浄機の吸気口や部屋の通気口に装着されるカバー等の対象物(不図示)に貼り付けて通過する気体をろ過するためのものであり、不織布からなるフィルター層2と、フィルター層2の一方面の一部に粘着剤により形成された、対象物へ貼着するための透明な又は不織布と同色の粘着剤層3と、粘着剤層3の表面に積層された剥離シート5を備える。又、粘着剤層3は、機能性フィルター1の交換時期を表示する文字等を表記する形態に形成された表示粘着剤層4を含んでいる(以下、フィルター層2における粘着剤層が形成される面2bを「裏面」、その反対面2aを「表面」と言う)。尚、使用開始前の状態を示す図1の(A)において破線で示される粘着剤層3は、実際にはフィルター層2の表面2aからは視認されにくいものである。
【0039】
本例の機能性フィルター1は、フィルター層2に銀を含む抗微生物性微粒子が付着されていること、及び、抗微生物性微粒子の不織布に対する付着量を0.01~5.0g/mの範囲に設定したところを特徴としている。
【0040】
次に、機能性フィルターの各構成要素について説明する。
【0041】
[フィルター層]
(1)不織布:フィルター層2を構成する不織布は、埃等の捕捉と気体の流通とを両立させるため、厚みを1~2mm、特に1.2~1.5mmとすることが好ましく、目付けは20~50g/m、特に30~40g/mの範囲とすることが好ましい。不織布の厚さが1mm未満、又は、目付けが30g/m未満の場合は、十分な埃等の捕捉機能を発揮しないおそれがある。厚さが2mmを超えるか、又は、目付けが50g/mを超えると、気体の流通抵抗が大きくなり、エアフィルターとしての実用性が損なわれるおそれがある。
【0042】
不織布の構成繊維としては、天然繊維、合成繊維、及びこれらの混合物のいずれも使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリプロピレン又はプロピレン主体の共重合体繊維、モダクリルを含むアクリル繊維等の合成繊維を好適に使用できる。
【0043】
不織布の製造方法については限定的ではなく、例えばケミカルボンド法やサーマルボンド法等の公知の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。
【0044】
不織布の色は、継続的に使用して不織布の内部及び表面に埃が蓄積することにより黒ずみが進行する状態を認識し得るような色とされる。この実施の形態では、不織布の全体を白色としている。
【0045】
(2)抗微生物性微粒子
銀を含む抗微生物性微粒子とは、銀を含む微粒子であって、ウィルス、細菌、黴等の微生物を死滅させる作用又は繁殖を抑制する作用を有するものであればよく、種類は限定されない。通常は、有機又は無機の適当な担体に銀を担持させた形態で使用される。この実施の形態では、銀を含む抗微生物性微粒子として、銀と亜鉛を含む無機化合物、銀・タングステン、銀・酸化チタン、鉄・酸化チタン等の微粒子が使用されるがこれに限定されるものではない。ただし、その中のでも、化学的に安定しているため抗微生物性が長期間維持できるので、抗微生物性と交換時期の判別性を高レベルで両立することが可能となると共に、粘着剤層の物性や貼着対象に悪影響を与えない、という点から銀と亜鉛を含む無機化合物の微粒子が特に好ましい。
【0046】
銀を含む抗微生物性微粒子を不織布に付着させる方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、抗微生物性微粒子を分散させたバインダー樹脂溶液中に不織布をディッピングして付着させる方法、上記の樹脂溶液をスプレー等にて不織布に塗布する方法、不織布の繊維表面を加熱により溶融させた状態で銀を含む微粒子を不織布に散布することで固着させる方法などが挙げられる。これらのうちディッピングは、不織布の内部にまで抗生物性微粒子を均一に付着させることができるので好ましい。
【0047】
銀を含む微粒子は一般に灰色又は黒色を呈するため、付着量を多くすると、銀を含む抗微生物性微粒子の付着により不織布の色調が灰色へと変化するため、不織布の埃汚れの進行状態を認識するのが困難になるおそれがある。そこで、銀を含む抗微生物性微粒子の不織布に対する付着量を、0.01~5.0g/mの範囲、好ましくは0.016~3.0g/mの範囲、より好ましくは0.05~2.3g/mの範囲に設定することにより、フィルター層2が抗微生物機能を発揮することと、不織布に形成された粘着剤層による交換時期の判別機能とを両立させることが可能となる。付着量が下限値の0.01g/m未満であると、十分な抗微生物機能を発揮できないおそれがある。上限値の5.0g/mを超えると、表面2aが使用前から灰色となるため、使用により埃等が蓄積した状態となっても不織布に形成された粘着剤層による交換時期の判別がしにくくなる可能性がある。
【0048】
[粘着剤層]
フィルター層2の一方面(裏面2b)の一部には、粘着剤により粘着剤層3が形成される。使用する粘着剤は、特に限定されず、主剤及び硬化剤を含む2液混合型粘着剤や、ホットメルト粘着剤等を用いることができる。2液混合型粘着剤を用いる場合は、2液混合型ポリウレタン系粘着剤を使用するのが好ましい。更に必要に応じ、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0049】
粘着剤の色は透明とするのが好ましいが、不織布と同色又は近似色としてもよい。これにより、使用開始前の状態では、フィルター層2の表面2a側から見たときに、粘着剤層3を視認しにくくなる。
【0050】
この実施の形態では、以下に例示するような主剤、硬化剤、及び、添加剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤が用いられる。
【0051】
(主剤)
主剤は、主成分として数平均分子量15000~25000(好ましくは18000~23000)であるポリウレタンポリオールを含む。主剤中におけるポリウレタンポリオールの割合は、通常95重量%以上とし、更には99重量%以上とする。従って、主剤中のポリウレタンポリオールの割合は100重量%であってもよい。ポリウレタンポリオールは、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを、触媒存在下又は無触媒で有機ポリイソシアネ-ト化合物と反応させてなるものであり、公知又は市販のものを使用することができる。尚、使用するポリウレタンポリオールの選定に当たり、分子量の測定は、島津製作所製「Prominence」を用いて実施することができる(カラム:TOSOH製TSKgelGMH×2本連結、検出器:RID-10A、溶媒:THF、流速:1ml/分)。
【0052】
(硬化剤)
硬化剤には、例えば脂肪族系多官能イソシアネート等を好適に用いることができる。硬化剤の配合比率は、主剤100重量部に対し、6~8重量部とする。
【0053】
(添加剤)
効果を妨げない範囲内において、必要に応じ、2液混合型ポリウレタン系粘着剤中に対し、例えば、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤等の添加剤を加えることができる。これらのうち特に、紫外線吸収剤を含むことが望ましい。紫外線吸収剤の添加量は、所望する特性に応じ適宜設定され、例えば主剤100重量部に対し、0.25~0.5重量部の範囲とすることができる。
【0054】
主剤、硬化剤、及び添加剤に関し、これらは公知又は市販のものを使用できる。
【0055】
(粘着剤層の形成方法)
粘着剤層を不織布に形成する方法は、公知の方法を採用することができる。例えば粘着剤を不織布に直接塗布するか、又は一旦剥離シート等に粘着剤を塗布した上で剥離シートと不織布を接触させることにより不織布に粘着剤を転写する等の方法により間接的に塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥(固化)させる方法を採用することができる。
【0056】
直接的又は間接的に粘着剤層を不織布に塗布するにあたっての塗布方法は、限定されないが、例えばローラー、スプレー、刷毛、印刷等によって実施することができる。即ち、公知の装置を使用した、例えばロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等をいずれも採用することができる。間接的に塗布する場合は、例えばシリコーンコートが施された剥離シートに粘着剤をロール等にて印刷した後、この剥離シートの粘着剤層側を不織布と接触させロール等で圧着することにより、不織布に粘着剤層を転写する方法等が採用できる。
【0057】
尚、粘着剤(主剤又は硬化剤)を塗布するにあたり、必要に応じて粘着剤を、例えば酢酸エチル等の有機溶剤で適宜希釈してもよい。この場合の希釈率は限定的ではなく、例えば主剤100重量部に対し1~30重量部の有機溶媒を配合することにより希釈することができる。
【0058】
塗布した塗膜を固化させる方法は、加熱による方法、紫外線による方法等のいずれも採用することができるが、特に加熱による方法が好ましい。加熱温度は、所望の粘着剤層を形成できる温度であれば特に限定されないが、2液混合型ポリウレタン系粘着剤の場合、通常は120~140℃、特に125~130℃の範囲に設定するのが好ましい。尚、粘着剤にホットメルト粘着剤を用いる場合、通常、ホットメルトは高温で流動性を持つので、加熱とは逆に、常温に冷却することが好ましい。
【0059】
(粘着剤層の塗布面積)
フィルター層2を構成する不織布の裏面2bに対する粘着剤層3が形成される部分の面積比率は、通常10~40%程度、特に15~30%とすることが望ましい。面積比率が10%未満であると、粘着力が不足するおそれがあり、40%を超えると通気量を確保できなくなるおそれがある。
【0060】
(粘着剤層の厚み)
固化後の粘着剤層の厚みは、対象物に対し必要とする粘着性能等に応じ適宜設定することができ、通常は100~300μm、特に180~230μmの範囲とすることが好ましい。厚みが100μm未満であると、粘着性の維持が難しくなるおそれがあり、300μmを超えた厚みとしても粘着性能が変化しない。
【0061】
(表示粘着剤層)
粘着剤層3の一部は、交換時期を表示する形態に形成された表示粘着剤層4を含む。この実施の形態では、「とりかえてネ」の文字Lやハート等のマークMを粘着剤で形成したが、文字やマークは任意のものを採用することができる。又、表示粘着剤層4が文字やマークを含まず、単なるストライプや格子の形態であってもよい。いずれの形態でも、経時的な埃の蓄積によりこれらの部分が視覚的に認識できるものであれば、交換時期を示す表示粘着剤層4として機能する。
【0062】
次に、以上のように構成された機能性フィルター1の使用態様を説明する。
【0063】
この実施の形態の機能性フィルター1は、例えばエアコンや空気清浄機等の吸気口や部屋の通気口に適用される。ここでは吸気口に適用する場合を例にして説明する。使用に際しては、剥離シート5を引き剥がして粘着剤層3を露出させ、機能性フィルター1の裏面側を吸気口のカバー等に貼り付ける。機能性フィルター1は、銀を含む抗微生物性微粒子を付着させているが、図1の(A)に示すように、使用開始時は全体が白色であり、粘着剤層3は透明なので、表面2a側から粘着剤層3を視認しにくくなっている。使用を継続すると、フィルター層2における粘着剤層3が形成されない部位では、通過する空気中の埃を不織布が捕捉し、これが蓄積することで不織布の黒ずみが進行する。これに対し、フィルター層2における粘着剤層3が形成されている部位では、空気の流通が抑制されるため、埃の蓄積が進行せず、不織布にはあまり埃等が蓄積しない。その結果、使用開始前には図1の(A)に示すように殆ど判別できなかった文字LやマークM等が、時間経過に伴い、図1の(B)に示すように、周囲が埃等の蓄積により黒くなることによって白抜き状態となり、明瞭に読み取ることができるようになる。このようにして、機能性フィルター1における埃の蓄積がある程度まで進行すると、表示粘着剤層4によって形成されたフィルター交換時期を示す文字等が、周囲の部分との色濃度差により出現するから、使用者にフィルター交換時期を知らせることができる。
【0064】
又、この実施の形態の機能性フィルターは、フィルター層2を構成する不織布に、銀を含む抗微生物性微粒子を付着させたから、通過する気体及び捕捉した埃等に対し、抗ウィルス機能、抗菌機能、抗黴機能等の抗微生物機能を発揮して、気体の清浄化を図ることができる。
【0065】
このように、この実施の形態の機能性フィルター1は、流通する気体に対する抗微生物機能と、表示粘着剤層4の表示機能との両立を実現させたものである。
【0066】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態による機能性フィルターの正面図であって、(A)は使用開始前の状態を示し、(B)は使用継続により交換時期が到来した状態を示すものである。
【0067】
この実施の形態の機能性フィルター11を構成する各素材については、第1の実施の形態の機能性フィルター1と共通なので、ここでは相違点を説明する。
【0068】
この機能性フィルター11は、不織布からなるフィルター層12の一部に、白色又は淡色の可変色領域12aを形成し、その他の部分を灰色又は黒色の不変色領域12bとし、可変色領域12aの裏面側に、交換時期を表示する文字等を表記する形態に形成された表示粘着剤層14を形成したところを特徴としている。尚、使用開始前の状態を示す図3の(A)において破線で示される表示粘着剤層14は、実際にはフィルター層12の表面からは視認されにくいものである。
【0069】
以上のように構成された機能性フィルター11は、例えばエアコンや空気清浄機等の吸気口のカバー等に貼り付けて使用される。使用開始時の機能性フィルター11は、図3の(A)に示すように、可変色領域12aが白色であり、不変色領域12bは灰色又は黒色である。使用を継続すると、可変色領域12aにおける粘着剤層3が形成されない部位では、埃が蓄積することで不織布の黒ずみが進行する。これに対し可変色領域12a内の表示粘着剤層14が形成されている部位では、埃の蓄積が進行せず、不織布があまり黒ずまない。その結果、使用開始前には図3の(A)に示すように判別できなかった文字等が、時間経過に伴い色濃度差が生じて図3の(B)に示すように白抜き状態となり、明瞭に読み取ることができるようになる。尚、可変色領域12aにおける表示粘着剤層14以外の部位については、埃の蓄積により周囲の不変色領域12bと色濃度差が無くなって視覚的に同化するようにしてもよい。
【0070】
このようにして、機能性フィルター11に埃がある程度まで蓄積されると、表示粘着剤層14によって形成されたフィルター交換時期を示す文字等が出現して、使用者にフィルター交換時期を知らせることができる。
【0071】
又、この実施の形態にあっては、不変色領域12bについては、灰色又は黒色としたので、銀による着色を考慮する必要が無い。従って、不変色領域12bにおける銀を含む抗微生物性微粒子の付着量を可変色領域12aよりも高めて、抗微生物機能を増大させることが可能である。
【0072】
尚、本発明の機能性フィルターは、エアコンや空気清浄機の吸気口のほか、部屋の通気口や換気口に装着されるカバーを対象とすることができる。
【0073】
又、第1の実施の形態では、フィルター層を構成する不織布には白色のものを用いたが、埃の蓄積による不織布の色調変化を認識できるものであれば不織布の色調は特に限定されるものではないが、一般的に流通している不織布は白色又は淡い色ものが多いので入手しやすさの観点からも、それらが好適に使用できる。
【0074】
更に、白色のフィルター層の表面に、灰色又は黒色で文字や記号等の意匠を印刷等により描くことにより、あるいはフィルター層の裏面に灰色や黒色等の有色の粘着剤で表示粘着剤層を形成することにより、使用を継続して埃が蓄積すると、意匠の周囲が着色して黒ずむ結果、使用前に有していた色濃度差が低減して意匠が視認しにくくなった状態を交換時期とする構成も可能である。
【0075】
又、抗微生物性微粒子としては、銀を含む抗微生物性微粒子と共に、銅、金、亜鉛等の他の抗微生物機能を有する金属を含む抗微生物性微粒子又は他の抗微生物性成分と併用してもよいし、銀を含む抗微生物性微粒子中にこれらの金属を含むものであってもよい。
【実施例
【0076】
本実施例は、主にエアコンの吸気口への取り付けを想定したものであり、実施例1~3及び比較例1~4のフィルターを作製した。
実施例1~3及び比較例1~4の機能性フィルターを構成する不織布として、ポリエチレンテレフタレート繊維を主体とする市販の不織布(目付け30g/m、厚み1.0mm±10%(メーカー公称値))を複数準備した。
【0077】
次いで、それらの不織布に抗微生物性を有する微粒子として、銀を含む微粒子、又は酸化チタンからなる微粒子を表1に記載の量を付着させることで、実施例1から実施例3及び比較例1から比較例3のフィルターを構成する不織布を得た。又、比較例4のフィルターを構成する不織布は元の不織布をそのまま用いた。
【0078】
尚、実施例1~3並びに比較例1及び比較例2においては、銀を含む微粒子としては抗ウイルス性を備えた銀と亜鉛を含む無機化合物を用い、抗菌及び抗黴性を備えたピリジンの誘導体の一種で有機亜鉛錯体であるジンクピリチオン(付着量は2.0g/mに固定)を併用することで抗微生物性の付与を試みた。更に、比較例3を構成する不織布にはジンクピリチオンは用いずに酸化チタンからなる微粒子を付着させることで抗微生物性の付与を試みた。
【0079】
このようにして得られた実施例1~3及び比較例1~4を構成する不織布に粘着剤層を形成するために、シリコーンコートが施された剥離シート上にロールコーター法にて粘着剤層を塗布した後、剥離シートの粘着剤層側と先ほどの不織布の片面とを接触させてロールにて圧着することで不織布に図1に示すような粘着剤層を転写して形成し、適宜この粘着剤層を乾燥させることにより実施例1~3及び比較例1~4のフィルターを得た。
【0080】
尚、本実施例及び比較例を構成する粘着剤層としては、主剤、硬化剤、及び紫外線吸収剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤を用い、その詳細は下記のとおりである。
・主剤:数平均分子量が約20000のポリウレタンポリオール
・硬化剤:主剤100重量部に対して7.0重量部
・紫外線吸収剤:主剤100重量部に対して0.4重量部
・不織布に対する粘着剤層が占める面積割合:不織布全体の約20%
・粘着剤層(乾燥後)の厚み:200μm±20μm
【0081】
以上のようにして、得られた実施例1~3及び比較例1~4の各フィルターについて、1)抗微生物機能、2)使用継続により出現する交換時期を表示する文字等の視認性、及び、3)粘着剤層の糊残りの程度について、試験を行った。
【0082】
「抗微生物機能」は、抗ウィルス機能については「ISO18184」に準拠して、試験対象ウイルスとしてはA型インフルエンザウイルス(H3N2)を用い、抗ウイルス活性値について3以上であったものを○、3未満を×として評価した。
【0083】
又、抗菌機能については「JIS1902」に準拠して、試験対象の菌は、黄色ブドウ球菌、大腸菌とし、抗菌活性値が2以上のものを○とした。
【0084】
抗黴機能については「JIS Z2911」に準拠して、乾式法にて、以下の4種類の黴を使用して試験を行った。
Aspergillus niger NBRC 105649
Penicillium citrinum NBRC 6352
Chaetomium globosum NBRC 6347
Myrothecium verrucaria NBRC 6113
【0085】
「交換時期を表示する文字等の視認性」については、試料をエアコン(パナソニック製 CS-F368C2)の吸気口に貼り付け、この状態でエアコンを、運転モード=自動運転モード、設定温度=25℃、運転時間=8時間/日×3か月で運転し、3か月後の汚れた状態の試料を、2m離れた場所から肉眼で観察して、表示された文字が判別できるか否かを調べた。そして観察者10人のうち、判別できたのが8人以上のときは「○」、判別できたのが7~4人のときは「△」、判別できたのが3人以下のときは「×」と判定した。
【0086】
「粘着剤の糊残り」については、試料をPS製又はABS製の板の表面(いずれも鏡面)に貼り付けた状態で、25℃、常湿の状態、又は、40℃、湿度75%の状態下に維持して3か月経過後、板から引き剥がした後の状態を観察した。機能性フィルターを貼着対象物であるPS製又はABS製の板より剥がした際に、対象物に視認できる糊残りが全く無い場合を「○」と評価し、影響の無い程度にわずかに残っている場合を「△」と評価し、糊残りが視認でき、残った糊を拭き取る等の処置をしないと新たに機能性フィルターを貼り付けできない状態を「×」と評価した。
【0087】
試験結果を下記表1に示す。
【0088】
【表1】
表1の結果から、本発明は、優れた抗ウィルス機能、抗菌機能及び抗黴機能の発揮と、使用継続による埃等の蓄積により交換時期を示す文字等が明瞭に表示される機能との両立ができることが判る。更に、比較例3の酸化チタンからなる微粒子を用いたフィルターと比較して、上記の機能を備えつつ粘着剤の糊残りも生じない、実用性に優れた機能性フィルターを提供できることが判る。尚、本発明の実施例においては主にエアコンの吸気口への取り付けを想定した機能性フィルターを例示したが、埃等の汚れを抑制する目的で用いられるフィルターであって抗微生物機能を要求されるものであれば、上記に挙げた用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0089】
1…機能性フィルター
2…フィルター層
2a…表面
2b…裏面
3…粘着剤層
4…表示粘着剤層
5…剥離シート
11…機能性フィルター
12…フィルター層
12a…可変色領域
12b…不変色領域
14…表示粘着剤層
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1
図2
図3