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特許7377635溶銑鍋用れんが及びこれをライニングした溶銑鍋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】溶銑鍋用れんが及びこれをライニングした溶銑鍋
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/103 20060101AFI20231102BHJP
   C21C 1/06 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C04B35/103
C21C1/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019120191
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021004160
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高原 信作
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一茉
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-160066(JP,A)
【文献】特開平09-278544(JP,A)
【文献】特開2018-127376(JP,A)
【文献】特開平05-070248(JP,A)
【文献】特開2012-031026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/103
C21C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火原料配合物に有機バインダーを添加して混練し成形後、熱処理して得られる溶銑鍋用れんがであって、
耐火原料配合物は、粒度1mm以上5mm未満の珪石を5質量%以上20質量%以下、アルミナ質原料を45質量%以上80質量%以下、黒鉛を5質量%以上20質量%以下、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を0.3質量%以上4質量%以下含有すると共に、炭化珪素の含有率が20質量%以下(0を含む)、粒度1mm以上5mm未満のろう石の含有率が10質量%以下(0を含む)であり、
かつ、粒度1mm以上5mm未満のろう石を含有する場合、粒度1mm以上5mm未満の珪石の含有率との合計が20質量%以下であり、しかも目地を設けてライニングされることで目地開きを抑制できる、溶銑鍋用れんが。
【請求項2】
アルミナ質原料は、バンケツ、ボーキサイト、ムライト、焼結アルミナ、及び電融アルミナから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の溶銑鍋用れんが。
【請求項3】
さらにシリコン、炭化ホウ素、ガラス粉末、マグネシア、カーボンブラック、ピッチ粉末のうち1種又は2種以上を耐火原料配合物100質量%中に占める割合として合量で5質量%以下含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶銑鍋用れんが。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶銑鍋用れんがをライニングした溶銑鍋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑を運搬するための溶銑鍋に内張り材として使用される溶銑鍋用れんが及びこれをライニングした溶銑鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
溶銑鍋の内張り材としては、加熱冷却に伴う熱衝撃に対応する容積安定性が特に重要であることから、従前よりアルミナ・炭化珪素・炭素耐火物を基本に、冷却時の目地開きを回避するために残存膨張性を付与するための残存膨張性原料が添加されている。冷却時に目地開きが生じると稼働時に溶銑侵入を生じやすいからである。
【0003】
例えば特許文献1には、「粒径80μm以上の粒を80重量%以上含む高熱膨張性かつ高残存膨張性のシリカまたはシリカ・アルミナ質原料20~80重量%、アルミナ質原料20~77重量%、炭素材料または炭素材料と炭化珪素3~30質量%と樹脂系結合剤よりなることを特徴とする溶銑容器用不焼成耐火物」が開示されている(特許請求の範囲参照)。また、特許文献1によれば、「シリカあるいはシリカ・アルミナ質原料中のSiO成分は加熱されることでα石英からβ石英、クリストバライトへの変態や、さらに高温でのブローチングによる高熱膨張と高残存膨張性のためれんがの目地開きが防止される」とされている(2頁左下欄12~16行参照)。そして、特許文献1の実施例には、耐火原料配合物100質量%中に、粒度65μm以上が85%以上のシリカ・アルミナ質原料としてろう石を20質量%含有する例(第1表実施例1)や、粒度65μm以上が85%以上のシリカとして珪石を25質量%含有する例(第1表実施例3)が開示されている。
しかしながら、ろう石は、パイロフィライトを主体として石英、カオリナイト、セイサイトなどの副構成鉱物も含んでおり、これらのうちの石英は前述のようにれんがに残存膨張を与えるが、ろう石を20質量%含有する場合、ろう石中のパイロフィライトやアルカリ成分、及び他の原料中の不純物により、れんが中の液相生成量が増加するため耐食性が低下する問題がある。
一方、珪石を25質量%含有する場合、シリカ成分の増加が耐スラグ侵食性の低下に直結し、寿命の低下を生じることになる。さらに、れんが中のアルミナ骨材とシリカ成分と他の低融成分(酸化鉄、アルカリ等)との反応により生成する液相の増加で焼結が促進され、れんがの緻密化や塑性変形を生じる。その結果、長期間の使用による稼働面側の変質や、焼結進行に伴う緻密化が進み、末期には亀裂や剥離、目地開きに伴う目地への溶銑侵入が表面化し、耐用不安定を生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-22167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐食性に優れしかも残存膨張性を有する溶銑鍋用れんが及びこれをライニングした溶銑鍋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アルミナ及び黒鉛を主体とする溶銑鍋用れんがにおいて、耐火原料配合物中に粒度1mm以上5mm未満の珪石を5質量%以上20質量%以下使用することで、耐食性及び残存膨張性に優れる溶銑鍋用れんがが得られることを知見した。
【0007】
すなわち、本発明によれば、次の1~4に記載の溶銑鍋用れんが及びこれをライニングした溶銑鍋が提供される。
1.
耐火原料配合物に有機バインダーを添加して混練し成形後、熱処理して得られる溶銑鍋用れんがであって、
耐火原料配合物は、粒度1mm以上5mm未満の珪石を5質量%以上20質量%以下、アルミナ質原料を45質量%以上80質量%以下、黒鉛を5質量%以上20質量%以下、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を0.3質量%以上4質量%以下含有すると共に、炭化珪素の含有率が20質量%以下(0を含む)、粒度1mm以上5mm未満のろう石の含有率が10質量%以下(0を含む)であり、
かつ、粒度1mm以上5mm未満のろう石を含有する場合、粒度1mm以上5mm未満の珪石の含有率との合計が20質量%以下であり、しかも目地を設けてライニングされることで目地開きを抑制できる、溶銑鍋用れんが。
2.
アルミナ質原料は、バンケツ、ボーキサイト、ムライト、焼結アルミナ、及び電融アルミナから選択される1種又は2種以上である、前記1に記載の溶銑鍋用れんが。
3.
さらにシリコン、炭化ホウ素、ガラス粉末、マグネシア、カーボンブラック、ピッチ粉末のうち1種又は2種以上を耐火原料配合物100質量%中に占める割合として合量で5質量%以下含有することを特徴とする前記1又は2に記載の溶銑鍋用れんが。
4.
前記1乃至3のいずれか1項に記載の溶銑鍋用れんがをライニングした溶銑鍋。
【0008】
なお、本発明でいう粒度とは、耐火原料粒子を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒度1mm以上の珪石とは、篩い目が1mmの篩い目を通過しない珪石のことで、粒度5mm未満の珪石とは、篩い目が5mmの篩いを通過する珪石のことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐火原料配合物中に粒度1mm以上5mm未満の珪石を特定量使用することで、耐食性の低下を抑制しつつ、十分な残存膨張を得ることができる。これにより溶銑鍋の寿命を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の溶銑鍋用れんがにおいて、まずその耐火原料配合物には、粒度1mm以上5mm未満の珪石を5質量%以上20質量%以下、アルミナ質原料を45質量%以上80質量%以下、黒鉛を5質量%以上20質量%以下、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を0.3質量%以上4質量%以下、並びに炭化珪素を20質量%以下(0を含む)で、それぞれ使用する。
【0011】
このように本発明の耐火原料配合物には、粒度1mm以上5mm未満の珪石を使用する。アルミナ及び黒鉛を主体とするれんが中において、珪石を含有するとシリカ量が増加するため耐スラグ性が低下する問題があるが、珪石の粒度が大きいほど耐スラグ性の低下を抑制することができる。
また、本発明の溶銑鍋用れんがはマトリックス部に黒鉛を含有しており、粒度1mm未満の微粒の珪石の膨張はこのマトリックス部に一部が吸収されるため、れんが全体としては十分な残存膨張効果が得られないことになる。これに対して、粒度1mm以上の粗粒の珪石は、その珪石の粗粒及びアルミナ質原料の粗粒と接する部分が多いこと、さらには粗粒どうしの距離が近いことから珪石の膨張は黒鉛の多いマトリックス部にほとんど吸収されることなく、れんが全体を膨張することができる。
【0012】
以上の観点からは、本発明の耐火原料配合物には、粒度1mm以上の珪石を使用する。なお、珪石の粒度が大きくなりすぎると成形時の坏土の充填性が悪くなるため、本発明の耐火原料配合物に使用する珪石の粒度は1mm以上5mm未満とする。
ただし、粒度1mm未満の珪石は、粒度1mm以上5mm未満の珪石との合量を100質量%としたときに20質量%以下であれば含有していても大きな影響がないため許容できる。また、粒度5mm以上の珪石も少量であれば許容でき、例えば5質量%以下とすることができる。
耐火原料配合物100質量%中に占める割合で、粒度1mm以上5mm未満の珪石の含有率が5質量%未満では残存膨張の効果が不十分となり、20質量%を超えると耐食性が低下する。
【0013】
珪石としては、珪石れんが等の耐火物の原料として通常使用されているもので、天然で採掘された原料を使用することができ、SiO含有率が95質量%以上のものを好適に使用することができる。なお、珪石中においてSiOは石英として含有されている。
【0014】
アルミナ質原料は、溶銑中のスラグに対して耐食性に優れるため使用し、具体的には耐火原料配合物100質量%中に占める割合で45質量%以上80質量%の含有率で使用する。その含有率が45質量%未満では耐食性が不十分となり、80質量%を超えると耐熱衝撃性が低下する。
アルミナ質原料としては、バンケツ、ボーキサイト、ムライト、焼結アルミナ、及び電融アルミナから選択される1種又は2種以上を好適に使用することができる。具体的には、バンケツはAl含有率が80質量%以上のものを、ボーキサイトはAl含有率が85質量%以上のものを、ムライトはAl含有率が65質量%以上のものを、焼結アルミナはAl含有率が95質量%以上のものを、電融アルミナはAl含有率が95質量%以上のものを、それぞれ好適に使用することができる。
これらのアルミナ質原料は、使用される溶銑鍋の操業条件に応じて選択することができ、単独あるいは複数のアルミナ質原料を併用して使用することができる。また、焼結アルミナや電融アルミナよりも不純物の多いバンケツやボーキサイトを使用する場合には、珪石あるいはろう石の使用量を少なくすることで耐食性の低下を抑制することができる。
なお、アルミナ質原料は、微粒(粒度1mm未満)から粗粒(粒度1mm以上)までの全粒度範囲で使用することができる。
【0015】
黒鉛は、耐熱衝撃性を確保するために使用し、具体的には耐火原料配合物100質量%中に占める割合で5質量%以上20質量%以下の含有率で使用する。その含有率が5質量%未満では耐熱衝撃性が不十分となり、20質量%を超えると稼働中の強度発現が抑制され、内部亀裂の発生や耐摩耗性の低下を生じ、また、れんがの熱伝導性が上昇し溶銑温度の低下を招く。
黒鉛としては、鱗状黒鉛等、耐火物の原料として通常使用されているものを使用することができ、粒度0.5mm未満のものを好適に使用することができる。
【0016】
アルミニウム及び/又はアルミニウム合金は酸化防止及び強度付与のために使用し、具体的には耐火原料配合物100質量%中に占める割合で0.3質量%以上4質量%の含有率で使用する。その含有率が0.3質量%未満では酸化防止及び強度付与の効果が十分には得られず、4質量%を超えると過度の焼結効果により耐熱衝撃性の低下を生じ、亀裂・剥離の懸念が増大する。
これらアルミニウム、アルミニウム合金、及び後述するシリコン等のその他の金属としても、耐火物の原料として通常使用されているものを使用することができ、粒度0.1mm未満のものを好適に使用することができる。なお、アルミニウム合金としてはアルミニウムマグネシウム合金、アルミニウムシリコン合金等が挙げられる。
【0017】
一方、ろう石は石英を含有するため、これを使用すると残存膨張が得られるが、珪石よりもその効果は小さいため基本的には使用しなくてもよい。ただし、珪石単独使用の場合は600℃付近、及び1300℃付近で急激な膨張を生じる場合があり、急激な膨張による亀裂発生を避けるため、ろう石を珪石と併用することで緩やかな膨張に調整することが可能になる。したがって、溶銑鍋の操業条件に応じて、粒度1mm以上5mm未満のろう石を耐火原料配合物100質量%中に占める割合で10質量%以下含有(使用)することができる。ただし、粒度1mm以上5mm未満のろう石を含有(使用)する場合、粒度1mm以上5mm未満の珪石との合量が20質量%以下となるようにする。
ろう石としても、耐火物の原料として通常使用されているものを使用することができ、その粒度は珪石と同様に1mm以上5mm未満のものを好適に使用することができる。なお、ろう石には熱処理した焼ろう石もあるが、本発明では熱処理を行わないものを使用する。
【0018】
本発明の耐火原料配合物には、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を使用しているため酸化防止効果を有しているが、さらに酸化防止効果を高めたい場合、あるいは耐熱衝撃性を高めたい場合には、炭化珪素を耐火原料配合物100質量%中に占める割合で20質量%以下の含有率で使用することができる。その含有率が20質量%を超えると稼働面付近の過度の焼結を生じやすくなることから構造的スポーリングの懸念が高くなり、また、稼働時にCO雰囲気中の反応で分解生成するシリカの影響で耐食性低下への懸念も生じる。
炭化珪素としては、SiC含有率が85質量%以上のもので、粒度0.3mm未満のものを好適に使用することができる。
【0019】
なお、本発明の耐火原料配合物には、上記以外で耐火物に汎用されている耐火原料として、アルミニウム又はアルミニウム合金以外の金属(例えばシリコン)、炭化ホウ素、ガラス粉末、マグネシア、カーボンブラック及びピッチ粉末のうち1種又は2種以上を耐火原料配合物100質量%中に占める割合で、合量として5質量%以下の含有率で使用することができる。
【0020】
本発明の溶銑鍋用れんがは、上記の耐火原料配合物にフェノール樹脂等の有機バインダーを添加して混練し、成形後に熱処理することで得られる。ここで、有機バインダーは成形後及び熱処理後の強度を得るため、さらには使用中の受熱によってカーボンボンドを形成するため等の公知の目的で使用し、一般的な不焼成れんがで使用されている公知な有機バインダーを混練時に製造条件に合わせて一般的な割合で添加することができる。具体的には耐火原料配合物100質量に対して外掛けで1質量%以上5質量%以下の範囲とすることができる。同様に熱処理温度も通常の有機バインダーを使用した不焼成れんがの公知の熱処理温度の範囲内であれば問題なく採用することができる。具体的には160℃以上800℃以下とすることができる。
そして、この溶銑鍋用れんがをライニングすることで、本発明の溶銑鍋を得ることができる。
【実施例
【0021】
表1及び表2に示すそれぞれの耐火原料配合物に、有機バインダーとしてフェノール樹脂を耐火原料配合物100質量に対して外掛けで3質量%添加して、混練後にフリクションプレスで230×114×100mmのれんが形状に成形し、250℃で熱処理することで各実施例及び各比較例のれんがを得た。
なお、表1及び表2において、電融アルミナ及び焼結アルミナはAl含有率が97質量%、バンケツはAl含有率が82質量%、ボーキサイトはAl含有率が87質量%、電融ムライトはAl含有率が66質量%のものを使用し、珪石はSiO含有率が97質量%のものを使用した。また、ろう石としてはAl含有率が17質量%の低アルカリろう石を使用し、炭化珪素としてはSiC含有率が90質量%のものを使用した。さらに、鱗状黒鉛は固定炭素が85質量%のものを、ガラス粉末としては硼珪酸ガラスを、マグネシアはMgO含有率が95質量%の電融マグネシアを、ピッチは軟化点が230度のものを使用した。
【0022】
得られたれんがについて、見掛気孔率、圧縮強さ、及び残存膨張率を測定するとともに、耐食性及び耐熱衝撃性を評価した。
見掛気孔率は、50×50×50mmの角柱試料を用い、溶媒を白灯油としJIS R 2205に準拠して測定した。圧縮強さは、50×50×50mmの角柱試料を用い、JIS R 2206に準拠して測定した。
残存膨張率は、直径50mm×高さ50mmの円柱試料を用い、0.2MPaの荷重下で1400℃×3時間保持の熱処理前後の試料の高さの変化から測定した。
耐食性は上底45×下底105×高さ60×長さ120mmの台形れんが形状の試料を用い、回転スラグ侵食試験法により、1500℃×1時間侵食を5回繰り返し、試験前後の試料中心線厚さの差異(mm)から侵食量(mm)を求めた。侵食剤としては銑鉄とC/S=1.1の高炉スラグを使用した。表1及び表2において耐食性は比較例4の侵食量(mm)を100として指数で表示した。この指数が小さいほど耐食性に優れるということである。
耐熱衝撃性の評価においては、40×40×190mmの大きさの試料を、1400℃×3時間還元焼成の後、1500℃の溶銑に90秒浸漬後、30秒水冷の熱衝撃を10回繰り返す試験を行い、亀裂・剥落の状態を観察した。表中で、「優」は試験後に亀裂・剥落がなかったもの、「良」は軽微な亀裂・剥落が発生したもの、「可」は中程度の亀裂・剥落が発生したもの、「不可」は大きな亀裂・剥落が発生したものである。
なお、総合的な合否については、残存膨張率が1.20%以上、耐食性指数が100以下、及び耐熱衝撃性が「優」、「良」又は「可」のものを合格、残存膨張率が1.20%未満、耐食性指数が100超、又は耐熱衝撃性が「不可」のものを不合格とした。
【0023】
なお、見掛気孔率、及び圧縮強度は、れんがの基本的物性の一つであり、れんがの耐食性や耐熱衝撃性に影響を及ぼすことは当業者によく知られており、当業者への参考情報として測定した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表1において、実施例1から実施例5は、粒度1mm以上5mmの珪石の含有率が異なるものであるが、いずれも本発明の範囲内であり残存膨張率及び耐食性に優れている。なお、実施例4で使用した珪石は、粒度1mm未満の割合が粒度1mm以上5mm未満の珪石との合量を100質量%としたときに20質量%の珪石である。
【0027】
これらに対して比較例1は、粒度1mm以上5mm未満の珪石の含有率が2質量%と本発明の下限値を下回っており、残存膨張率が不足する結果となった。また、比較例2は粒度1mm以上5mm未満の珪石の含有率が25質量%と本発明の上限値を上回っており、耐食性が劣る結果となった。
比較例3は、粒度1mm未満の珪石を15質量%使用したものであるが、実施例3と比較して残存膨張率が小さく、耐食性も劣る結果となった。
比較例4は珪石の代わりに粒度1mm以上5mm未満のろう石を使用したものであるが、残存膨張率が不足する結果となった。
比較例5は、ろう石を4質量%含有しているが珪石が3質量%と本発明の下限値を下回っており残存膨張が不足している。
比較例6はアルミナ質原料の含有率が37質量%と本発明の下限値を下回っており、耐食性に劣る結果となり、比較例7はアルミナ質原料の含有率が85質量%と本発明の上限値を上回っており耐熱衝撃性が劣る結果であった。
【0028】
表2において、実施例6から実施例9は電融アルミナの代わりに焼結アルミナ、バンケツ、ボーキサイト、及び電融ムライトをそれぞれ使用し、かつ粒度1mm以上5mm未満の珪石と粒度1mm以上5mm未満のろう石とを併用するとともにアルミニウムとシリコンを併用したものであるが、残存膨張率及び耐食性に優れる結果となった。
【0029】
実施例10は電融アルミナとバンケツとを併用したもの、実施例11は、アルミニウムマグネシウム合金、炭化ホウ素、ピッチ粉末、ガラス、マグネシア、及びカーボンブラックを使用したもの、実施例12及び実施例13はアルミニウムの含有率を変化させたもの、実施例14はアルミニウムとアルミニウムマグネシウム合金を併用したもの、実施例15は炭化珪素の含有率を20質量%と増加したものであるが、いずれも本発明の範囲内であり残存膨張率及び耐食性に優れる結果となった。
【0030】
一方、比較例8は、粒度1mm以上5mm未満の珪石と粒度1mm以上5mm未満のろう石との合計が25質量%と本発明の範囲外、比較例9は粒度1mm以上5mm未満のろう石が15質量%と本発明の範囲外でありいずれの場合も耐食性に劣る結果となった。
【0031】
また、比較例10は、アルミニウム及びアルミニウム合金を使用していないため耐酸化性が低下した結果耐食性が低下し、比較例11はアルミニウムの含有率が5質量%と本発明の上限値を上回ったため耐熱衝撃性が低下した。
【0032】
比較例12は炭化珪素の含有率が25質量%と本発明の上限値を上回っており、耐食性に劣る結果となった。
【0033】
比較例13は黒鉛の含有率が本発明の下限値を下回ったため耐熱衝撃性が低下し、比較例14は黒鉛の含有率が本発明の上限値を上回ったため耐食性が低下する結果となった。
【0034】
実施例3と比較例4のれんがを溶銑鍋の側壁にライニングして使用したところ、実施例3のれんがをライニングした側壁は、比較例4のれんがをライニングした側壁に比べて、その寿命が約1.4倍になることを確認した。