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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】塗布ノズル及び塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20231102BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019140459
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021023837
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000108753
【氏名又は名称】タツモ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十川 良則
(72)【発明者】
【氏名】山本 真理
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅也
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-036856(JP,A)
【文献】国際公開第2014/117823(WO,A1)
【文献】特開2012-239930(JP,A)
【文献】国際公開第2005/115720(WO,A1)
【文献】特開2017-131797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/02
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット状の吐出口を持ったノズル本体と、
前記ノズル本体内に設けられており、前記吐出口まで延びたスリット部と、
前記ノズル本体内において前記スリット部に塗布液を供給する流路と、
を備え
前記流路は、前記ノズル本体内において複数に分岐しており、分岐後の流路がそれぞれ前記スリット部の上流端の複数箇所に直結しており、
前記スリット部は、前記流路の直結箇所についての前記吐出口からの高さが部分的に低くなるように構成されている、塗布ノズル。
【請求項2】
スリット状の吐出口を持ったノズル本体と、
前記ノズル本体内に設けられており、前記吐出口まで延びたスリット部と、
前記ノズル本体内において前記スリット部に塗布液を供給する流路と、
を備え、
前記流路は、前記ノズル本体内において複数に分岐しており、分岐後の流路がそれぞれ前記スリット部の上流端の複数箇所に直結しており、
前記流路は、前記スリット部への直結箇所が、前記吐出口がスリット状に延びている横方向において部分的に密になるように配置されたものである、塗布ノズル。
【請求項3】
塗布膜の全体の厚さが乾燥後に均一となるように当該塗布膜の塗布直後の両縁部の厚さを大きくするために、前記スリット部への前記流路の直結箇所が、前記横方向において両端部で密になるように配置されている、請求項2に記載の塗布ノズル。
【請求項4】
前記流路は、前記ノズル本体内において分岐し、且つ、分岐後の流路が更に分岐したものであり、複数回に亘って分岐した流路がそれぞれ前記スリット部の前記複数箇所に直結している、請求項1~3の何れかに記載の塗布ノズル。
【請求項5】
前記分岐後の各流路は、分岐前の流路よりも断面積が小さい、請求項1~4の何れかに記載の塗布ノズル。
【請求項6】
前記スリット部よりも断面積が大きいマニホールド部を更に備え、
前記スリット部は、前記流路が直結した上流側の第1スリット部と、前記吐出口まで延びた下流側の第2スリット部と、を含み、
前記マニホールド部は、前記第1スリット部と前記第2スリット部との間に設けられている、請求項1~の何れかに記載の塗布ノズル。
【請求項7】
前記マニホールド部は、塗布液が集まりやすい箇所が形成されるように前記第2スリット部への出口が部分的に傾斜したものである、請求項に記載の塗布ノズル。
【請求項8】
前記スリット部の前記上流端は、前記流路が直結した箇所から前記吐出口側へ斜めに傾斜した形状を呈している、請求項1~の何れかに記載の塗布ノズル。
【請求項9】
スラリーの塗布に用いられる、請求項1~の何れかに記載の塗布ノズル。
【請求項10】
請求項1~の何れかに記載の塗布ノズルを備え、当該塗布ノズルから塗布液を吐出して塗布対象の表面に塗布膜を形成する、塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布ノズル及びそれを備えた塗布装置に関し、特にスリット状の吐出口を持ったスリットノズル及びそれを備えた塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スリットノズルは、一般的に、スリット状の吐出口を持ったノズル本体と、当該ノズル本体内において横方向(吐出口がスリット状に延びている方向)に拡がったマニホールド部と、当該マニホールド部から吐出口まで延びたスリット部と、マニホールド部に塗布液を供給するための流路と、を備えており、当該流路が、マニホールド部の中央付近の1箇所に直結している(例えば、特許文献1参照)。このようなスリットノズルでは、吐出口からの塗布液の吐出量が横方向において均一になるように、マニホールド部の中央付近に流入した塗布液をマニホールド部内で横方向に十分に拡げると共に、塗布液の流れのムラを抑制する必要があり、そのためには、マニホールド部の容積を大きくする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-182576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記スリットノズルで塗布液を塗布した場合、マニホールド部内の広い範囲で塗布液が滞留していることを、解析によって見出した。また、マニホールド部内では、流路が直結した箇所から離れるほど塗布液の滞留が顕著になることも、本発明者が見出した。
【0005】
近年、上記スリットノズルを備えた塗布装置を用いて、スラリー(固体粒子が懸濁した液体)の薄膜を形成したいという要望がある。しかし、本発明者は、スラリーを塗布液として用いた場合には、マニホールド内の広い範囲でスラリーが滞留し、それが原因で、滞留したスラリー中で固体粒子が凝集し、当該固体粒子の凝集物がそのまま吐出される虞があると考える。このような凝集物は、塗布膜の平滑性や特性に悪影響を及ぼし得る。尚、溶液(溶質が溶媒に溶解した液体)を塗布液として用いた場合には、マニホールド内で溶液が滞留したとしても凝集物が生じないため、マニホールド内での滞留が問題になることはなかった。
【0006】
そこで本発明の目的は、塗布液としてスラリーを用いた場合でも凝集物が生じにくい塗布ノズル及びそれを備えた塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る塗布ノズルは、スリット状の吐出口を持ったノズル本体と、スリット部と、流路と、を備える。スリット部は、ノズル本体内に設けられており、吐出口まで延びている。流路は、ノズル本体内において、スリット部の上流端の少なくも1箇所に直結しており、スリット部に塗布液を供給する。
【0008】
上記塗布ノズルによれば、隙間幅の狭いスリット部に、塗布液が、流路から直接流れ込むことにより、その塗布液は、滞留することなくスリット部内を横に拡がりながら下流側へ流れる。従って、スリット部内の横方向における全ての箇所で、塗布液が縦方向に流れやすくなる。
【0009】
本発明にかかる塗布装置は、上記塗布ノズルを備え、当該塗布ノズルから塗布液を吐出して塗布対象の表面に塗布膜を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗布液としてスラリーを用いた場合でも凝集物が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】塗布装置を例示した概念図である。
図2】塗布ノズルの分解斜視図である。
図3】塗布ノズルの第1本体構成部を内面側から見て示した平面図である。
図4】第1変形例に係る塗布ノズルの一例を示した概念図である。
図5】第1変形例に係る塗布ノズルの他の例を示した概念図である。
図6】第1変形例に係る塗布ノズルの更なる他の例を示した概念図である。
図7】第2変形例に係る塗布ノズルを示した概念図である。
図8】第3変形例に係る塗布ノズルを示した概念図である。
図9】第4変形例に係る塗布ノズルを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1]塗布装置の構成
図1は、塗布装置を例示した概念図である。図1に示されるように、塗布装置は、チャック部1と、塗布液供給部2と、制御部3と、を備える。
【0013】
<チャック部1>
チャック部1は、ステージ11と、ステージ駆動部12と、を含む。
【0014】
ステージ11は、載置面11aを上方へ向けた状態で設置されており、載置面11aの所定位置に載せられた塗布対象T(塗布膜が形成される対象)を吸引することにより、当該塗布対象Tを所定位置からずれないように固定する。尚、ステージ11は、吸引力で塗布対象Tを所定位置に固定するものに限らず、静電気力で固定するもの等、塗布対象Tを所定位置に固定できる様々なステージに変更できる。
【0015】
ステージ駆動部12は、所定方向D1におけるステージ11の移動を可能にする機構であり、制御部3からの指令に従ってステージ11の動作(移動方向や移動速度など)を制御する。
【0016】
<塗布液供給部2>
塗布液供給部2は、塗布ノズルKと、ノズル駆動部21と、送液ポンプ22と、を含む。
【0017】
塗布ノズルKは、スリット状の吐出口50aを持ったスリットノズルであり、吐出口50aをステージ11の載置面11aに向けた状態で設置されている。また、塗布ノズルKは、吐出口50aがスリット状に延びている方向(図1では、紙面に垂直な方向。以下、「横方向D2」と称す)が、ステージ11の載置面11aに平行であって且つ所定方向D1(ステージ11の移動方向)に垂直になるように、配置されている。尚、塗布ノズルKの詳細については、後述する。
【0018】
ノズル駆動部21は、塗布ノズルKの高さ方向の移動を可能にする機構であり、制御部3からの指令に従って、塗布対象Tに対する塗布ノズルKの高さ位置を調整する。
【0019】
送液ポンプ22は、塗布液を塗布ノズルKに送る。具体的には、送液ポンプ22は、制御部3からの指令に従って塗布ノズルKへの塗布液の供給量を調整することにより、塗布ノズルKからの塗布液の吐出量を調整する。
【0020】
<制御部3>
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)やマイクロコンピュータなどの処理装置で構成されており、塗布装置が備える様々な動作部(チャック部1や塗布液供給部2を含む)を制御する。
【0021】
[2]塗布ノズルの構成
塗布ノズルKは、ノズル本体50と、スリット部51と、流路52と、マニホールド部53と、を備える(図1参照)。
【0022】
図2は、塗布ノズルKの分解斜視図である。図2に示されるように、ノズル本体50は、第1本体構成部501と、第2本体構成部502と、これらの間に介在するシム部503と、から構成されている。
【0023】
第1本体構成部501及び第2本体構成部502は、互いに対向する平面501a及び平面502aをそれぞれ有している。また、シム部503は、所定の厚さを持った平板であり、平面501a及び502aの間に介在することにより、自身の厚さ分だけ平面501a及び502aを互いに離間させる。これにより、ノズル本体50内において平面501a及び502aの間に隙間が設けられ、当該隙間が、吐出口50aと、当該吐出口50aまで延びたスリット部51と、になる。また、吐出口50a及びスリット部51の隙間幅W(不図示)が、シム部503(平板)の厚さで規定される。
【0024】
具体的には、シム部503には、吐出口50a及びスリット部51となる箇所に、それらの形状に応じた切欠き503cが設けられている。そして、シム部503は、自身の両面をそれぞれ平面501a及び502aに密着させた状態で、第1本体構成部501と第2本体構成部502とによって挟まれる。尚、図2では、第1本体構成部501の平面501aに、スリット部51になる領域が一点鎖線で示されている。また、図3は、第1本体構成部501を内面(平面501a)側から見て示した平面図である。図3においても、スリット部51になる領域が一点鎖線で示されている。
【0025】
図2及び図3に示されるように、ノズル本体50には、塗布液が供給される供給口50bと、当該供給口50bからスリット部51まで塗布液を導く流路52と、が設けられている。そして、流路52は、ノズル本体50内において複数に分岐しており、分岐後の流路52の先端部52cがそれぞれスリット部51の上流端51aの複数箇所に直結している(図3参照)。
【0026】
具体的には、第1本体構成部501に、その外面から平面501aまで貫通した貫通孔501bが設けられており、当該貫通孔501bの入口が供給口50bになっている。また、第1本体構成部501の平面501aには、貫通孔501bの出口から延びた溝501cが凹設されており、当該溝501cは、複数に分岐すると共に、分岐後の先端部501d(分岐後の流路52の先端部52cになる部分)の位置が、平面501aのうちのスリット部51の上流端51aになる箇所に配置されている。そして、当該溝501cが先端部501dを除いてシム部503で塞がれることにより、溝501c内を通ってスリット部51の上流端51aに直結する通路がノズル本体50内に形成され、当該通路と貫通孔501bとによって流路52が構成される。
【0027】
ここで、流路52内の塗布液の流れは、流路52の内壁面との摩擦により、当該内壁面の近傍で遅くなり、特に内壁面に角がある場合には当該角の近傍で塗布液が停滞しやすくなる。よって、流路52の内壁面は、角が少ない又は角がない滑らかな面であることが好ましい。このため、溝501cは、その内壁面がU字状になるように形成される。尚、この形状は一例に過ぎず、流路52の内壁面の形状(即ち、流路52の断面形状)は、塗布液の種類などに応じて適宜変更されてもよい。
【0028】
図3では、流路52は、供給口50bから延びた1つの流路が4つに分岐したものであり、分岐後の4つの流路52の先端部52cがそれぞれ、スリット部51の上流端51aの4箇所に直結している。具体的には、分岐後の4つの流路52は、横方向D2における4箇所でスリット部51に直結している。このような構成によれば、スリット部51に対して、横方向D2における複数箇所から塗布液を供給することが可能になる。また図3では、スリット部51への流路52の直結箇所が、横方向D2において等間隔且つ均等に配置されている。このような構成によれば、塗布液が、流路52の分岐により横方向D2に均等に分配されてスリット部51に供給されることになる。
【0029】
そして、流路52よりも隙間幅Wの狭いスリット部51に、塗布液が、流路52から直接流れ込むことにより、その塗布液は、滞留することなくスリット部51内を横に拡がりながら下流側へ流れ、その後、隣の流路52からスリット部51に流れ込んだ塗布液と重なり合う。これにより、スリット部51において、塗布液の流れのムラが抑制される。
【0030】
図3では更に、スリット部51の上流端51aが、分岐後の流路52が直結した各箇所(直結箇所)から吐出口50a側へ斜めに傾斜した形状を呈している。具体的には、上流端51aは、各直結箇所から左右へ逆V字状に傾斜している。ここで、塗布液内に気泡が混入又は発生した場合、その気泡は、スリット部51内において自身に生じた浮力によって上流側へ移動する。そして、上記上流端51aの形状によれば、気泡は、スリット部51内を上流側へ移動する際に上流端51aの傾斜に沿って上昇することで、流路52の直結箇所まで効率良く導かれる。
【0031】
また、流路52に導かれた気泡は、流路52内を上流側へ移動し、流路52の上流側に設けられたベントポート(不図示)を通って塗布ノズルK外へ排出される。このとき、気泡が流路52内を上流側へ移動しやくなるように、図3では、流路52のうちの分岐点から左右へ拡がる部分に、吐出口50a側へ斜めに向かう傾斜が設けられている。
【0032】
マニホールド部53は、ノズル本体50内においてスリット部51の途中に設けられた空洞部分であり、断面積(横方向D2に平行であって且つ平面501aに垂直な面での断面積)がスリット部51より大きい。具体的には、第1本体構成部501の平面501aのうちのスリット部51となる領域(シム部503と重ならずに切欠き503c内に露出する領域)に、マニホールド部53となる溝501eが凹設されている。そして、マニホールド部53は、横方向D2においてスリット部51の端から端まで吐出口50aと平行に延びている。
【0033】
換言すれば、スリット部51は、流路52が直結した上流側の第1スリット部51Aと、吐出口50aまで延びた下流側の第2スリット部51Bと、を含み、マニホールド部53は、第1スリット部51Aと第2スリット部51Bとの間に設けられている。そして、上流側の第1スリット部51Aからマニホールド部53への入口53aが、横方向D2においてマニホールド部53の端から端まで拡がっており、また、下流側の第2スリット部51Bへのマニホールド部53からの出口53bも、横方向D2においてマニホールド部53の端から端まで拡がっている。更に、当該マニホールド部53の出口53bが、吐出口50aと平行に延びている。
【0034】
従って、マニホールド部53には、横方向D2において端から端まで拡がった入口53aから、第1スリット部51Aで流れのムラが抑制された塗布液が流れ込む。即ち、マニホールド部53には、横方向D2における何れの箇所からも、第1スリット部51Aからの塗布液が流れ込む。また、塗布液は、流路52の分岐により横方向D2に均等に分配されてスリット部51に供給されたものであるため、マニホールド部53の入口53aには、横方向D2における全域に亘って塗布液が均一に流れ込みやすい。
【0035】
そして、マニホールド部53に流れ込んだ塗布液は、マニホールド部53内に一旦貯留されることで流れのムラが更に抑制される。その後、マニホールド部53内の塗布液は、横方向D2において端から端まで拡がった出口53bから第2スリット部51Bへ流れ出る。また、マニホールド部53の出口53bが吐出口50aと平行に延びているため、第2スリット部51Bへの流出後の塗布液の流れが、横方向D2における全域に亘って均一になりやすく、その結果として、吐出口50aからは、横方向D2における全域に亘って塗布液が均一に吐出されやすくなる。よって、塗布ノズルKを用いて塗布対象Tの表面に塗布膜を形成した場合、当該塗布膜の厚さが均一になりやすい。
【0036】
マニホールド部53には、横方向D2における全域に第1スリット部51Aからの塗布液が流れ込み、また、その塗布液は、第1スリット部51Aにおいて流れのムラが抑制されたものである。従って、マニホールド部53は、流れ込んでくる塗布液に対して、必要な分だけ付加的に流れのムラを抑制できればよい。よって、上述した塗布ノズルKによれば、マニホールド部53の断面積を、従来のスリットノズル(マニホールド部の中央付近の1箇所に流路が直結した従来のスリットノズル)に設けられるマニホールド部の断面積より小さくすることができる。そして、マニホールド部53の断面積を小さくすることにより、準備段階で塗布ノズルK内を満たすための塗布液の量を少なくすることができる。
【0037】
更に、上述した塗布ノズルKによれば、第1スリット部51A、マニホールド部53、及び第2スリット部51Bの何れの部分においても、横方向D2における全ての箇所で、塗布液が縦方向D3(平面501aに平行であって且つ横方向D2に垂直な方向)に流れやすくなる。よって、塗布ノズルK内において塗布液は滞留しにくくなり、従って、塗布液としてスラリーを用いた場合でも凝集物が生じにくくなる。
【0038】
また、塗布液が、第1スリット部51A、マニホールド部53、及び第2スリット部51Bを順に流れることにより、隙間幅Wが小さい箇所、大きい箇所、小さい箇所を順に通過することになる。よって、塗布液は、吐出口50aに至るまでに収縮と膨張とを繰り返して流れることになる。そして、このような収縮と膨張との繰返しによれば、塗布液としてスラリーを用いた場合において当該スラリー中に凝集物がたとえ生じたとしても、その凝集物が解砕されやくなる。
【0039】
[3]変形例
[3-1]第1変形例
上述した塗布ノズルKによれば、吐出口50aから塗布液が均一に吐出されるが故に、塗布膜の厚さが均一になりやすい。一方、塗布膜を乾燥した場合、塗布液の種類や乾燥の条件などによっては乾燥後の厚さが均一にならないことがある。一例として、塗布膜の中央部よりも縁部(所定方向D1に平行な縁に近い部分)で収縮率が大きく、それが原因で、中央部よりも縁部で乾燥後の厚さが小さくなることがある。そこで、塗布ノズルKは、乾燥後の厚さが均一になるように塗布液を吐出できるものに変形されてもよい。以下、3つの例について具体的に説明する。
【0040】
(1)流路を変形した例
図4は、第1変形例に係る塗布ノズルKの一例を示した概念図である。図4に示されるように、流路52は、スリット部51への直結箇所が横方向D2において等間隔且つ均等に配置されたもの(図3参照)に限らず、当該直結箇所が、収縮率が大きい部分に対応させて密に配置されたものであってもよい。即ち、流路52は、スリット部51への直結箇所が横方向D2において部分的に密になるように配置されたものであってもよい。図4では、収縮率が塗布膜の中央部よりも縁部で大きくなる場合において、スリット部51への流路52の直結箇所を、横方向D2における両端部において密になるように配置した構成が示されている。
【0041】
このような構成によれば、収縮率が大きい部分に対応した箇所において、直結箇所が密になっている分、流路52からスリット部51に供給される塗布液の量が多くなり、その結果として、収縮率が大きい部分への塗布液の吐出量が増えて、その部分での塗布膜の厚さが大きくなる。よって、塗布膜の乾燥後における全体の厚さが均一になるように、収縮率を考慮して塗布膜の厚さを部分的に変化させることが可能になる。
【0042】
(2)スリット部を変形した例
図5は、第1変形例に係る塗布ノズルKの他の例を示した概念図である。図5に示されるように、スリット部51は、流路52の直結箇所の全ての高さ(縦方向D3におけるマニホールド部53又は吐出口50aからの高さ)が同じになるように構成されたもの(図3参照)に限らず、収縮率が大きい部分に対応した直結箇所の高さが低くなるように構成されてもよい。即ち、スリット部51は、流路52の直結箇所についてのマニホールド部53又は吐出口50aからの高さが部分的に低くなるように構成されてもよい。図5では、収縮率が塗布膜の中央部よりも縁部で大きくなる場合において、流路52の直結箇所の高さを横方向D2における両端部において低くした構成が示されている。
【0043】
このような構成によれば、収縮率が大きい部分に対応した箇所において、直結箇所の高さが低くなっている分、流路52からスリット部51を介してマニホールド部53及び吐出口50aに供給される塗布液の量が多くなり、その結果として、収縮率が大きい部分への塗布液の吐出量が増えて、その部分での塗布膜の厚さが大きくなる。よって、塗布膜の乾燥後における全体の厚さが均一になるように、収縮率を考慮して塗布膜の厚さを部分的に変化させることが可能になる。
【0044】
(3)マニホールド部を変形した例
図6は、第1変形例に係る塗布ノズルKの更なる他の例を示した概念図である。図6に示されるように、マニホールド部53は、出口53bが吐出口50aと平行に延びていているもの(図3参照)に限らず、出口53bが、収縮率が大きい部分に対応した箇所に塗布液が集まるように部分的に傾斜したものであってもよい。即ち、マニホールド部53は、塗布液が集まりやすい箇所が形成されるように出口53bが部分的に傾斜したものであってもよい。図6では、収縮率が塗布膜の中央部よりも縁部で大きくなる場合において、マニホールド部53の出口53bを、横方向D2における両端部において外側へ向けて斜め下方へ傾斜させた構成が示されている。
【0045】
このような構成によれば、収縮率が大きい部分に対応した箇所において、マニホールド部53の出口53bが傾斜していて塗布液が集まりやすい分、当該出口53bから第2スリット部51Bへ流れ出る塗布液の量が多くなり、その結果として、収縮率が大きい部分への塗布液の吐出量が増えて、その部分での塗布膜の厚さが大きくなる。よって、塗布膜の乾燥後における全体の厚さが均一になるように、収縮率を考慮して塗布膜の厚さを部分的に変化させることが可能になる。
【0046】
[3-2]第2変形例
図7は、第2変形例に係る塗布ノズルKを示した概念図である。図7に示されるように、塗布ノズルKは、マニホールド部53がない構成を有していてもよい。この構成においても、スリット部51内の横方向D2における全ての箇所で、塗布液が縦方向D3に流れやすくなる。よって、塗布ノズルK内において塗布液は滞留しにくくなり、従って、塗布液としてスラリーを用いた場合でも凝集物が生じにくくなる。
【0047】
[3-3]第3変形例
図8は、第3変形例に係る塗布ノズルKを示した概念図である。図8に示されるように、塗布ノズルKにおいて、ノズル本体50に複数の供給口50bが設けられ、当該複数の供給口50bから延びた流路52が、分岐せずに、スリット部51の上流端51aの複数箇所にそれぞれ直結していてもよい。この場合、複数の供給口50bには、塗布ノズルKに塗布液を供給するための外部配管が次のように接続される。即ち、外部配管は複数に分岐され、分岐後の配管の先端部がそれぞれ供給口50bに接続される。
【0048】
このような構成においても、塗布液が、外部配管の分岐により横方向D2に分配されてスリット部51に供給されることになる。そして、塗布液は、流路52よりも隙間幅Wの狭いスリット部51に流れ込むことにより、スリット部51内を横に拡がりながら下流側へ流れ、その後、隣の流路52からスリット部51に流れ込んだ塗布液と重なり合う。これにより、スリット部51において、塗布液の流れのムラが抑制される。
【0049】
[3-4]第4変形例
図9は、第4変形例に係る塗布ノズルKを示した概念図である。図9に示されるように、塗布ノズルKは、分岐後の各流路52の断面積が分岐前の流路52の断面積よりも小さくなるように構成されていてもよい。例えば、供給口50bに近い1つ目の分岐点において、断面積を1/2に変化させ、2つ目の分岐点において断面積が更に1/2に変化させることができる。即ち、分岐後の流路52の断面積の総和が、分岐前の流路52の断面積と等しくなるように、流路52の断面積を変化させることができる。これにより、流路52内における塗布液の流速を、上流側から下流側まで一定にすることができる。よって、下流側に行くほど流れが遅くなって塗布液の停滞領域が拡がることを防止できる。また、流路52全体の容積が小さくなるため、準備段階で塗布ノズルK内を満たすための塗布液の量をより少なくすることができる。
【0050】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0051】
本発明には、塗布ノズルKの構成として、例えば、スリット部51の上流端51aの1箇所にだけ流路52が直結した構成や、スリット部51の上流端51aや流路52に傾斜がない構成なども含まれる。また、本発明には、上述した実施形態及び第1~第4変形例の幾つかを適宜組み合わせた構成も含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 チャック部
2 塗布液供給部
3 制御部
K 塗布ノズル
T 塗布対象
W 隙間幅
11 ステージ
11a 載置面
12 ステージ駆動部
21 ノズル駆動部
22 送液ポンプ
50 ノズル本体
50a 吐出口
50b 供給口
51 スリット部
51A 第1スリット部
51B 第2スリット部
51a 上流端
52 流路
52c 先端部
53 マニホールド部
53a 入口
53b 出口
D1 所定方向
D2 横方向
D3 縦方向
501 第1本体構成部
501a 平面
501b 貫通孔
501c 溝
501d 先端部
501e 溝
502 第2本体構成部
502a 平面
503 シム部
503c 切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9