(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】フィルター構造体
(51)【国際特許分類】
B01D 46/10 20060101AFI20231102BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B01D46/10 E
B01D39/20 B
(21)【出願番号】P 2019174116
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【氏名又は名称】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 将司
(72)【発明者】
【氏名】山岸 拓人
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153751(JP,A)
【文献】実開昭48-103967(JP,U)
【文献】特開2007-160275(JP,A)
【文献】特開2002-071181(JP,A)
【文献】実開平06-011822(JP,U)
【文献】実開昭57-009032(JP,U)
【文献】登録実用新案第3067922(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00-39/20
B01D45/00-46/90
F24F7/04-7/06
F24F13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンへの空気の流入口となる吸込口と、前記吸込口の周囲を区画するフード内壁と、前記吸込口を覆うように前記フード内壁から所定距離を開けて設置される整流板とを備えるレンジフードにおいて、前記整流板と前記吸込口との間の位置に取り付けられるフィルター構造体であって、
板形状のフィルター本体と、
前記フィルター本体の前記整流板側の面を覆う非通気性のボトムカバーとを備え
、
前記ボトムカバーは、更に前記フィルター本体の側面の一部を覆うように皿状に形成されている、フィルター構造体。
【請求項2】
ファンへの空気の流入口となる吸込口と、前記吸込口の周囲を区画するフード内壁と、前記吸込口を覆うように前記フード内壁から所定距離を開けて設置される整流板とを備えるレンジフードにおいて、前記整流板と前記吸込口との間の位置に取り付けられるフィルター構造体であって、
板形状のフィルター本体と、
前記フィルター本体の前記整流板側の面を覆う非通気性のボトムカバーとを備え
、
前記フィルター本体の前記吸込口側の面を覆うトップカバーを更に備え、
前記トップカバーは、前記吸込口に連通する開口が形成され、
前記ボトムカバーは、係止部が形成され、
前記トップカバーは、前記係止部と係止することのできる被係止部が形成され、
前記係止部と前記被係止部とが係止した状態において、前記フィルター本体は厚さ方向に圧縮される、フィルター構造体。
【請求項3】
前記ボトムカバーは、更に前記フィルター本体の側面の一部を覆うように皿状に形成されている、請求項
2記載のフィルター構造体。
【請求項4】
前記フィルター本体は、厚さが3cm~15cmである、請求項1から請求項
3のいずれかに記載のフィルター構造体。
【請求項5】
前記フィルター本体は、ガラス繊維不織布である、請求項1から請求項
4のいずれかに記載のフィルター構造体。
【請求項6】
前記ボトムカバーは、耐熱性を有する合成樹脂製である、請求項1から請求項
5のいずれかに記載のフィルター構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフィルター構造体に関し、特に整流板付きレンジフードに取り付けて油汚れを防止する為のフィルター構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、整流板を備えるタイプのレンジフード(整流板付きレンジフード)が存在する。このタイプのレンジフードは、フード部と整流板の間の隙間から吸気を行う構造となっており、この隙間を通過する気体の風速が速くなるため、これより前のタイプのレンジフードと比較して吸引力が向上している。
【0003】
このような整流板付きレンジフードに対して、汚れ防止のために使用されるフィルターが提案されている。
【0004】
特許文献1には、ポリエステル繊維等の溶融性合成繊維と、レーヨン繊維等の非溶融性繊維とを混合して繊維ウェブを形成した後、難燃性熱可塑性樹脂からなる繊維間結合のためのバインダーをスプレー等によって繊維ウェブに付与することで製造される不織布及びこれを用いたフィルターが開示されている。バインダーにはリン系の水溶性難燃化合物等の難燃剤が添加されており、このようなフィルターをレンジフードや換気扇の汚れ防止用フィルターとして用いた場合には、この難燃剤がフィルターの不織布の全体に存在していることにより、万一火がフィルターに触れたとしても容易には燃焼しないようになっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにバインダーを用いた不織布は、バインダーが不織布の表層のみに塗布され不織布の内方まで十分に浸透しておらず、繊維が脱落する場合がある。又、バインダーを内方まで十分に浸透させて内方の繊維同士の接着性を高めた場合には、繊維間の隙間がバインダーで埋まるか狭くなってしまうことにより通気性が低下してしまう虞がある。不織布をフィルターとして用いる場合、通気性が低下してしまうとフィルターとしての濾過機能に悪影響を及ぼしかねない。
【0006】
これに対し、特許文献2には、所定の厚さを有する平板状のガラス繊維不織布(ガラス繊維を主な素材とする不織布)のフィルターであって、整流板と吸込口との間の位置に取り付けられるものが開示されている。このようなフィルターであれば、バインダーを使用しないため、難燃性と通気性の両立を図ることができる。
【0007】
これらの他、特許文献3には、フード部の下端部に取り付けて整流板及び吸込口を覆うフィルターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-236320号公報
【文献】特開2018-153751号公報
【文献】特開2017-015297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2のフィルターでは、長時間の使用に伴って、フィルターが捕集した油が下方に漏れ出て、整流板を汚す虞があった。
【0010】
又、特許文献3のフィルターでは、使用後、フィルターが捕集した油が下方に垂れ、ガスコンロやIH調理器等の調理器具を汚す虞があった。
【0011】
以上のように、従来のフィルターにあっては、整流板等への汚れ防止効果の点で改善の余地があった。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、汚れ防止効果を高めたフィルター構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ファンへの空気の流入口となる吸込口と、吸込口の周囲を区画するフード内壁と、吸込口を覆うようにフード内壁から所定距離を開けて設置される整流板とを備えるレンジフードにおいて、整流板と吸込口との間の位置に取り付けられるフィルター構造体であって、板形状のフィルター本体と、フィルター本体の整流板側の面を覆う非通気性のボトムカバーとを備え、ボトムカバーは、更にフィルター本体の側面の一部を覆うように皿状に形成されているものである。
【0014】
このように構成すると、フィルター本体を少なくともその側面から空気が通過することにより捕集された油が、ボトムカバーに集まる。又、ボトムカバーを持ってフィルター構造体を取り付けることができる。更に、捕集した油が漏れ出難くなると共に、フィルター本体の位置が安定する。
請求項2記載の発明は、ファンへの空気の流入口となる吸込口と、吸込口の周囲を区画するフード内壁と、吸込口を覆うようにフード内壁から所定距離を開けて設置される整流板とを備えるレンジフードにおいて、整流板と吸込口との間の位置に取り付けられるフィルター構造体であって、板形状のフィルター本体と、フィルター本体の整流板側の面を覆う非通気性のボトムカバーとを備え、フィルター本体の吸込口側の面を覆うトップカバーを更に備え、トップカバーは、吸込口に連通する開口が形成され、ボトムカバーは、係止部が形成され、トップカバーは、係止部と係止することのできる被係止部が形成され、係止部と被係止部とが係止した状態において、フィルター本体は厚さ方向に圧縮されるものである。
このように構成すると、フィルター本体を少なくともその側面から空気が通過することにより捕集された油が、ボトムカバーに集まる。又、ボトムカバーを持ってフィルター構造体を取り付けることができる。更に、捕集した油の一部がトップカバーに付着する。更に、トップカバー及びボトムカバーを持ってフィルター構造体を取り付けることができる。更に、フィルター本体を上下から圧縮して固定可能となる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、ボトムカバーは、更にフィルター本体の側面の一部を覆うように皿状に形成されているものである。
【0016】
このように構成すると、捕集した油が漏れ出難くなると共に、フィルター本体の位置が安定する。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、フィルター本体は、厚さが3cm~15cmであるものである。
【0024】
このように構成すると、側面から流入した空気を濾過することのできる十分な大きさとなる。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、フィルター本体は、ガラス繊維不織布であるものである。
【0026】
このように構成すると、バインダーを用いずに繊維が結合して構成される。
【0027】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、ボトムカバーは、耐熱性を有する合成樹脂製であるものである。
【0028】
このように構成すると、長時間の使用に伴いフィルター構造体が高温に達しても軟化や溶融が起こり難い。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、フィルター本体を少なくともその側面から空気が通過することにより捕集された油が、ボトムカバーに集まるため、整流板の汚れを防止する。又、ボトムカバーを持ってフィルター構造体を取り付けることができるため、取り付け易くなる。更に、捕集した油が漏れ出難くなると共に、フィルター本体の位置が安定するため、整流板の汚れをより防止する。
請求項2記載の発明は、フィルター本体を少なくともその側面から空気が通過することにより捕集された油が、ボトムカバーに集まるため、整流板の汚れを防止する。又、ボトムカバーを持ってフィルター構造体を取り付けることができるため、取り付け易くなる。更に、捕集した油がトップカバーに付着するため、フード内壁の汚れを更に防止する。更に、トップカバー及びボトムカバーを持ってフィルター構造体を取り付けることができるため、更に取り付け易くなる。更に、フィルター本体を上下から圧縮して固定可能となるため、輸送や廃棄に便宜となる。
【0030】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、捕集した油が漏れ出難くなると共に、フィルター本体の位置が安定するため、整流板の汚れをより防止する。
【0034】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、側面から流入した空気を濾過することのできる十分な大きさとなるため、油の捕集性が良好となる。
【0035】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、バインダーを用いずに繊維が結合して構成されるため、通気性と汚れの捕集性を両立することができる。
【0036】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、長時間の使用に伴いフィルター構造体が高温に達しても軟化や溶融が起こり難いため、フィルター構造体の使用状態が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】この発明の第1の実施の形態によるフィルター構造体の開状態を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示したII-IIラインの概略端面図である。
【
図3】
図1に示したフィルター構造体の閉状態を示す概略斜視図である。
【
図4】
図1に示したフィルター構造体を整流板付きレンジフードへ取り付ける過程を示す概略斜視図である。
【
図5】フィルター構造体を取り付けた状態における
図4に示したV-Vラインの概略端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1はこの発明の第1の実施の形態によるフィルター構造体の開状態を示す概略斜視図であり、
図2は
図1に示したII-IIラインの概略端面図である。
【0039】
これらの図を参照して、フィルター構造体1は、厚さ10cmの板形状のガラス繊維不織布であるフィルター本体2と、フィルター本体2の下面7を覆うボトムカバー3と、フィルター本体2の上面8を覆うトップカバー4とから主に構成されている。フィルター本体2は、荷重が加えられても断裂等の構造的な破壊が生じず変形可能である。
【0040】
尚、本発明において、上下方向については、整流板と吸込口との間の位置に取り付けられた場合を基準として、吸込口側を上方向と言い、整流板側を下方向と言う。又、フィルター本体2の厚さとは、特筆しない限り、取付前の状態の厚さを言う。
【0041】
ボトムカバー3は、合成樹脂(塩化ビニル樹脂)製であって、非通気性且つ油と反応しない性質を有する。
【0042】
又、ボトムカバー3は、フィルター本体2の下面7だけでなく更に側面9の一部(下方端からフィルター本体2の通気性に実質的に影響のない部分まで)を覆うように皿状に形成されている。即ち、皿状のボトムカバー3にフィルター本体2が納まっている。
【0043】
更に、ボトムカバー3の四隅には、係止部としての下方に突出する凹部12a~12dが形成されている。
【0044】
トップカバー4は、上述したボトムカバー3と同様に合成樹脂(塩化ビニル樹脂)製であって、非通気性且つ耐油性である。
【0045】
又、トップカバー4の中央(後述するフィルター構造体1の取付け状態における吸込口に対応する位置)には、その周縁が平面視矩形状である開口11が形成されている。従って、トップカバー4は、中央の開口11を除いた部分においてフィルター本体2の上面を覆うと換言することもできる。
【0046】
更に、ボトムカバー3及びトップカバー4は、面ファスナー(図示せず)を用いてフィルター本体2と接合されている。面ファスナーは、片面粘着加工を施しており、粘着面側をボトムカバー3及びトップカバー4に接着している。
【0047】
更に、開口11の周囲及び四隅から縦横方向に延伸した箇所には、上方に突出するリブ14(リブ14a、14b)が形成されている。これによって、開口11が存在していてもトップカバー4の強度が維持されている。更に、開口11の近傍には、両面テープ10a、10bが取り付けられている。更に、トップカバー4の四隅には、被係止部としての下方に突出する凸部13a~13dが形成されている。凸部13a~13dの各々の位置及び形状は、上述した凹部12a~12dの各々と対応している。そのため、ボトムカバー3とトップカバー4とを上下方向に相対的に近づけることで、凹部12a~12dの各々と凸部13a~13dの各々とが係止した状態になり、フィルター本体2は厚さ方向(上下方向)に圧縮された状態(閉状態)で固定される。そのため、輸送や廃棄に便宜となる。
【0048】
ここで、特に
図2を参照して、フィルター構造体1による空気の濾過について説明する。
【0049】
ボトムカバー3が非通気性であるため、フィルター構造体1を通過しようとする空気は、矢印16a、16bで示すようにフィルター本体2の側面9a、9bから通過し始め、矢印17a、17bで示すようにフィルター本体2を厚さ方向とは垂直な方向に進みながら濾過されていき、矢印18で示すように開口11から出ていき濾過が完了する。
【0050】
このフィルター構造体1は、整流板付きレンジフード(以下、単に「レンジフード」と称する場合がある)に対して好適に用いられる。
【0051】
図3は
図1に示したフィルター構造体の閉状態を示す概略斜視図である。
【0052】
同図を参照して、上述したようにボトムカバー3とトップカバー4とが、それぞれの凹部12a~12d及び凸部13a~13dが係止することでフィルター本体2が厚さ方向に圧縮されている。このような閉状態で輸送や販売に供される。
【0053】
使用時には、凹部12a~12dの各々と凸部13a~13dの各々との係止を解除する。これによって、フィルター本体2はその形状復元力により
図1に示したような開状態に移行する。
【0054】
次に、
図4は
図1に示したフィルター構造体を整流板付きレンジフードへ取り付ける過程を示す概略斜視図であり、
図5はフィルター構造体を取り付けた状態における
図4に示したV-Vラインの概略端面図である。
【0055】
これらの図を参照して、フィルター構造体1は、油汚れ防止のため、レンジフード50に取り付けられる。ここで、レンジフード50は、ファンへの空気の流入口となる吸込口55と、吸込口55の周囲を区画するフード内壁58と、吸込口55を下方において覆うようにフード内壁58から所定距離を開けて設置される整流板53とを備えるタイプのものである。又、吸込口55には、内部フィルター56が設けられ、更に吸込口55の上方において、シロッコファンのファン57が設けられている。更に、フード内壁58の周縁から垂下して整流板53と隙間を設けるようにフード部51が備えられている。整流板53は、フード部51又はフード内壁58と、ヒンジ等の公知の手段により脱着自在に連結されている。
【0056】
フィルター構造体1の取付けに際しては、まず整流板53を取り外し、
図4の矢印61で示すようにフィルター構造体1をレンジフード50の整流板53と吸込口55との間の位置に入れ、トップカバー4の開口11が吸込口55と連通する位置として両面テープ10a、10bを用いてフード内壁58に取り付ける。このようにして、
図5で示す取付け状態に移行する。このとき、合成樹脂製のボトムカバー3を持って取り付けることができるため、形状変化し易いフィルター本体2に直接触れることが無いため取り付け易い。又、トップカバー4がある場合は、トップカバー4及びボトムカバー3を持って上下からフィルター本体2を固定しながらフィルター構造体1を取り付けることができるため、フィルター本体2の変形が主に厚さ方向となるように規制することができ、更に取り付け易くなる。又、両面テープ10a、10bを用いてフィルター構造体1を上方からも支持することで、フィルター本体2が自重で嵩が低下することを防止でき、整流板とフード内壁との間の位置を隙間無く埋め易くなる。
【0057】
取付け状態において、フィルター本体2の厚さは、設置するレンジフード50の整流板53とフード内壁58とに当接状態となるように設定されている。即ち、整流板53とフード内壁58との間隔Dと同一であるか、あるいはフィルター本体2の厚さが間隔Dまで圧縮されたとしても濾過機能や通気性に支障が出ない程度に間隔Dよりも長く設定されている。尚、フィルター構造体1におけるボトムカバー3やトップカバー4の厚さは数mm程度であり無視できるため、フィルター本体2の厚さはフィルター構造体1の厚さと同視できる。このように構成することで、形状復元性の高いフィルター構造体1となるため、閉状態で輸送した後の使用に便宜となる。
【0058】
使用に際しては、矢印62a、62bで示すように整流板53とフード部51の矩形リング状の下端部52との隙間の部分から取り込まれた空気は、フィルター本体2に入り込み、矢印63a、63bで示すように吸込口55へとフィルター本体2の厚さに対して直交する方向において空気が通過し、空気に含まれる塵埃や油汚れ等が濾過され、濾過された空気は矢印64で示すようにファン57で外部に排出される。
【0059】
そして使用の結果、フィルター本体2を少なくともその側面9a、9bから空気が通過することにより捕集された油が、下方に溜まりボトムカバー3に集まるため、整流板53の汚れを防止する。
【0060】
又、ボトムカバー3が上述したように皿状に形成されていることで、捕集した油が漏れ出難くなると共に、フィルター本体2の位置が安定するため、整流板53の汚れをより防止する。
【0061】
更に、捕集された油の一部は濾過される空気の流れに沿って吸込口55やフード内壁58の方向に進むことがあるが、フィルター構造体1は上述したトップカバー4を備えることで、捕集した油がトップカバー4に付着するため、吸込口55やフード内壁58の汚れを更に防止する。
【0062】
尚、上記の本発明の実施の形態では、特定の寸法及び形状のフィルター本体、フィルター構造体及びレンジフードについて説明したがこれに限られない。レンジフードのフード部や整流板のサイズに応じて適宜フィルター本体の形状は設定することができる。
【0063】
又、上記の本発明の実施の形態では、フィルター本体の厚さが、設置するレンジフードの整流板とフード内壁とに当接状態となるように設定されていたが、フィルター本体の厚さはこれに限られない。尚、フィルター本体の厚さは3cm~15cmであることが好ましい。このように構成することで、側面から流入した空気を濾過することのできる十分な大きさとなるため、油の捕集性が良好となる。
【0064】
更に、上記の本発明の実施の形態では、フィルター本体はガラス繊維不織布であったが、他の素材からなるものであっても良い。尚、ガラス繊維、ロックウール又は難燃性合成樹脂からなるものであることが好ましい。難燃性合成樹脂は、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂繊維に化学的又は物理的な処理(例えば、有機系又は無機系の難燃剤を合成樹脂繊維表面に付着させたり、これらの難燃剤を合成樹脂繊維中に予め含有させたり、合成樹脂の化学構造にハロゲンなどの難燃性の高い成分を組み入れたりする処理等)により難燃性を付与したものからなる不織布や、メラミン樹脂等の難燃性の高い樹脂を発泡させたような通気性のあるスポンジ状物等が例示できる。フィルター構造体の設置箇所は使用状態において高温に達する場合もあるため、このように構成することで、バインダーを用いずに繊維が結合して構成され、難燃性に優れ、水分や油分に反応する虞が低く、フィルター本体全体としての通気性を確保したものとなる。そのため、通気性と汚れの捕集性を両立することができる。
【0065】
更に、上記の本発明の実施の形態では、ボトムカバーは特定の素材からなるものであったが、例えばポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の他の素材からなるものであっても良い。尚、塩化ビニル樹脂等の耐熱性を有する合成樹脂製であることが好ましい。このように構成することで、長時間の使用に伴いフィルター構造体が高温に達しても軟化や溶融が起こり難いため、フィルター構造体の使用状態が安定する。
【0066】
更に、上記の本発明の実施の形態では、ボトムカバーはフィルター本体の側面の一部を覆うように皿状に形成されていたが、皿状に形成されていなくとも良い。
【0067】
更に、上記の本発明の実施の形態では、フィルター構造体はトップカバーを備えていたが、トップカバーを備えていなくとも良い。この場合、使用時にフィルター本体を通過した空気はフィルター本体の上面全体から抜け出ていくことともなるが、取付け状態においてフィルター本体の上面がフード内壁と近接するように構成していれば使用に支障は生じない。
【0068】
更に、上記の本発明の実施の形態では、トップカバーの開口が特定の形状であったが、取付け状態において吸込口の少なくとも一部に連通するものであれば他の形状であっても良い。
【0069】
更に、上記の本発明の実施の形態では、ボトムカバーの係止部及びトップカバーの被係止部が特定の構造であったが、互いに係止することができるものであれば他の構造であっても良い。
【0070】
更に、上記の本発明の実施の形態では、閉状態においてフィルター本体は厚さ方向に圧縮されていたが、厚さ方向に圧縮されないものであっても良い。
【0071】
更に、上記の本発明の実施の形態では、フィルター本体は開状態において整流板とフード内壁とに当接状態となる厚さに復元していたが、汚れを捕集できる程度に形状が復元するものであれば良い。
【0072】
更に、上記の本発明の実施の形態では、トップカバーやボトムカバーがフィルター本体に対して特定の構造で固定されていたが、ホットメルト等の他の構造で固定されていても良い。又、固定されていなくとも良い。
【0073】
更に、上記の本発明の実施の形態では、トップカバーがフード内壁に対して特定の構造で固定されていたが、磁石等の他の構造で固定されていても良い。このとき、両面テープや磁石等がトップカバーの開口の近傍に設置されていると、吸込口と開口との位置決めとなり便宜である。
【0074】
更に、上記の本発明の実施の形態では、トップカバーがフード内壁に対して固定されていたが、固定されていなくとも良い。
【0075】
更に、上記の本発明の実施の形態では、トップカバーに特定形状のリブが形成されていたが、リブは他の形状であっても良い。又、リブが形成されていなくとも良い。
【0076】
更に、上記の本発明の実施の形態では、フィルター構造体はレンジフードへの取付けに際して、整流板を取り外して開状態のフィルター構造体を取り付けていたが、整流板を取り外すことなく取り付けても良いし、閉状態のフィルター構造体を設置した後に開状態に移行しても良い。
【符号の説明】
【0077】
1…フィルター構造体
2…フィルター本体
3…ボトムカバー
4…トップカバー
7…下面
8…上面
9…側面
11…開口
12…凹部
13…凸部
50…レンジフード
53…整流板
55…吸込口
57…ファン
58…フード内壁
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。