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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】車両開閉体の開閉制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20231102BHJP
   E05F 15/622 20150101ALI20231102BHJP
【FI】
B60J5/10 K
E05F15/622
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019182736
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021059137
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】林 悦子
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036602(JP,A)
【文献】特開2006-183391(JP,A)
【文献】特開平06-137027(JP,A)
【文献】特開2013-023866(JP,A)
【文献】特開2008-082166(JP,A)
【文献】特開昭58-080082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00 - 5/14
E05F 15/00 - 15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両開閉体を開閉駆動する開閉駆動部と、
前記車両開閉体の回動速度が予め設定された目標速度で変化するように前記開閉駆動部をフィードバック制御する開閉処理を実行する制御部と、
を備え、
前記開閉処理は、前記車両開閉体が全閉位置と全開位置の間を回動する際、前記車両開閉体を加速させながら回動させる加速域と、前記車両開閉体を一定速度で回動させる定速域と、前記車両開閉体を減速させながら回動させる減速域とで実行するものであり、
前記制御部は、前記開閉処理を中断した後、前記車両開閉体を再駆動する再駆動処理を実行する場合、前記車両開閉体の回動速度が予め設定した再駆動時間で前記一定速度に到達する再駆動速度で変化するように前記開閉駆動部をフィードバック制御
前記再駆動時間は、前記開閉処理における前記加速域の開始から前記車両開閉体が前記一定速度に達するまでの時間よりも短い、車両開閉体の開閉制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記再駆動処理での再駆動速度が前記加速域での目標速度に到達することにより前記開閉処理に切り替える、請求項1に記載の車両開閉体の開閉制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記再駆動処理での再駆動速度が前記減速域での目標速度に到達することにより前記開閉処理に切り替える、請求項1に記載の車両開閉体の開閉制御装置。
【請求項4】
車両開閉体を開閉駆動する開閉駆動部と、
前記車両開閉体の回動速度が予め設定された目標速度で変化するように前記開閉駆動部をフィードバック制御する開閉処理を実行する制御部と、
を備え、
前記開閉処理は、前記車両開閉体が全閉位置と全開位置の間を回動する際、前記車両開閉体を加速させながら回動させる加速域と、前記車両開閉体を一定速度で回動させる定速域と、前記車両開閉体を減速させながら回動させる減速域とで実行するものであり、
前記制御部は、停止信号に基づいて前記車両開閉体の開閉動作を停止する停止処理を実行する場合、前記一定速度の前記車両開閉体が予め設定した停止時間で停止する停止速度で変化するように、前記開閉駆動部をフィードバック制御
前記停止時間は、前記開閉処理における前記減速域の開始から前記車両開閉体が停止するまでの時間よりも短い、車両開閉体の開閉制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記停止処理が前記加速域で実行される場合、前記停止処理の開始から、前記車両開閉体の回動速度が前記停止速度で変化するように、前記開閉駆動部をフィードバック制御する、請求項4に記載の車両開閉体の開閉制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記停止処理が前記減速域で実行される場合、前記停止処理の開始から、前記車両開閉体の回動速度が前記停止速度で変化するように、前記開閉駆動部をフィードバック制御する、請求項4に記載の車両開閉体の開閉制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両開閉体の開閉制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両開閉体の開閉制御では、車両開閉体を開閉動作の途中で停止させ、その停止位置から回動動作を再開させることがある。この場合、車両開閉体の開度によっては、トルクが大きくて回動しない場合や、トルクが小さくて必要以上に速く回動してしまうことがある。また、このトルクは路面の勾配、環境温度、ドアの開度により変化し、安定しない。
【0003】
従来、一定の割合でPWM信号のデューティ比を変更することで車両開閉体であるバックドアの回動速度を減速する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来の開閉制御では、PWM信号のデューティ比を変更してモータの駆動速度を変化させているだけであり、実際には車両開閉体の開閉動作を所定速度で安定して行うことが難しい。また、車両開閉体の回動動作を加速させる場合については考慮されていない。このため、車両開閉体の開閉制御を適切に行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-166252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車両開閉体の開閉制御をスムーズに行うことができる車両開閉体の開閉制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、車両開閉体を開閉駆動する開閉駆動部と、前記車両開閉体の回動速度が予め設定された目標速度で変化するように前記開閉駆動部をフィードバック制御する開閉処理を実行する制御部と、備え、前記開閉処理は、前記車両開閉体が全閉位置と全開位置の間を回動する際、前記車両開閉体を加速させながら回動させる加速域と、前記車両開閉体を一定速度で回動させる定速域と、前記車両開閉体を減速させながら回動させる減速域とで実行するものであり、前記制御部は、前記開閉処理を中断した後、前記車両開閉体を再駆動する再駆動処理を実行する場合、前記車両開閉体の回動速度が予め設定した再駆動時間で前記一定速度に到達する再駆動速度で変化するように前記開閉駆動部をフィードバック制御前記再駆動時間は、前記開閉処理における前記加速域の開始から前記車両開閉体が前記一定速度に達するまでの時間よりも短い、車両開閉体の開閉制御装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、再駆動時間で、車両開閉体の再駆動速度を定速域の目標速度に復帰させることができる。このため、車両開閉体の開閉動作で受けるトルクの影響を排除して、スムーズに開閉制御することが可能となる。
【0009】
前記制御部は、前記再駆動処理での再駆動速度が前記加速域での目標速度に到達することにより前記開閉処理に切り替えるのが好ましい。
【0010】
前記制御部は、前記再駆動処理での再駆動速度が前記減速域での目標速度に到達することにより前記開閉処理に切り替えるのが好ましい。
【0011】
これらの構成によれば、適切な回動速度を設定し、早期に本来の開閉制御に復帰させることができる。
【0012】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、車両開閉体を開閉駆動する開閉駆動部と、前記車両開閉体の回動速度が予め設定された目標速度で変化するように前記開閉駆動部をフィードバック制御する開閉処理を実行する制御部と、を備え、前記開閉処理は、前記車両開閉体が全閉位置と全開位置の間を回動する際、前記車両開閉体を加速させながら回動させる加速域と、前記車両開閉体を一定速度で回動させる定速域と、前記車両開閉体を減速させながら回動させる減速域とで実行するものであり、前記制御部は、停止信号に基づいて前記車両開閉体の開閉動作を停止する停止処理を実行する場合、前記一定速度の前記車両開閉体が予め設定した停止時間で停止する停止速度で変化するように、前記開閉駆動部をフィードバック制御前記停止時間は、前記開閉処理における前記減速域の開始から前記車両開閉体が停止するまでの時間よりも短い、車両開閉体の開閉制御装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、車両開閉体の開閉動作の停止を予め設定した停止時間で早期に実現でき、トルクの影響を排除してスムーズに開閉制御できる。
【0014】
前記制御部は、前記停止処理が前記加速域で実行される場合、前記停止処理の開始から、前記車両開閉体の回動速度が前記停止速度で変化するように、前記開閉駆動部をフィードバック制御するのが好ましい。
【0015】
この構成によれば、加速域であっても早期に車両開閉体の回動を停止させることができる。
【0016】
前記制御部は、前記停止処理が前記減速域で実行される場合、前記停止処理の開始から、前記車両開閉体の回動速度が前記停止速度で変化するように、前記開閉駆動部をフィードバック制御するのが好ましい。
【0017】
この構成によれば、減速域での減速度合いを超えて早期に車両開閉体の回動を停止させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、再駆動処理により車両開閉体の回動速度を再駆動速度で変化するようにフィードバック制御するようにしたので、トルクの影響を排除して車両開閉体の開閉制御をスムーズに行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る車両の後方部を示す斜視図である。
図2図1のスピンドルドライブ機構を示す断面図である。
図3】本実施形態に係る開閉制御装置を示すブロック図である。
図4図2の開閉制御装置で実行する自動開放処理を示すフローチャートである。
図5図4の認証処理を示すフローチャートである。
図6図4の解錠処理を示すフローチャートである。
図7図4の開閉処理を示すフローチャートである。
図8図1に示すバックドアの開閉処理における開閉位置と回動速度の関係を示すグラフである。
図9図2の開閉制御装置で実行する停止処理を示すフローチャートである。
図10図8の開閉処理において停止処理を実行した際の変化を示すグラフである。
図11図2の開閉制御装置で実行する再駆動処理を示すフローチャートである。
図12図8の開閉処理において再駆動処理を実行した際の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1に示すように、車体1の後方部には開口部2が形成されている。開口部2には車両開閉体の一例であるバックドア3が設けられている。バックドア3は、上方部に設けた支軸(図示せず)を中心として車体1に回動可能に取り付けられている。バックドア3は、開閉駆動部の一例であるスピンドルドライブ機構4により回動する。すなわち、スピンドルドライブ機構4は、バックドア3の両側にそれぞれ配置され、駆動によりバックドア3を、支軸を中心として開口部2を開放する全開位置と、開口部2を閉鎖する全閉位置との間で回動させる。
【0022】
図2に示すように、各スピンドルドライブ機構4は、電動モータ9等が収容される第1ハウジング5と、スピンドル12等が収容される第2ハウジング6とを備える。
【0023】
第1ハウジング5の一端部にはドア側連結部材7が固定されている。ドア側連結部材7は、バックドア3に設けたジョイントボール8と回動可能に連結されている。第1ハウジング5内には電動モータ9が収容されている。電動モータ9の回転数は回転センサ10によって検出されるようになっている。回転センサ10には、ホール素子を使用する磁気センサ、LED(発光ダイオード)及びPD(フォトダイオード)を使用する光学センサ等が使用できる。電動モータ9の回転軸9aは、減速ギア機構11を介して第2ハウジング6内のスピンドル12に接続されている。第1ハウジング5の他端部は第2ハウジング6に連結されている。
【0024】
第2ハウジング6には、スピンドル12とスピンドルナット13が収容されている。スピンドル12にはスピンドルナット13が螺合している。スピンドルナット13は、スピンドル12の正逆回転により第2ハウジング6内を軸方向に往復移動する。スピンドルナット13の前端部には筒状のプッシュロッド14の後端部が固定されている。プッシュロッド14の前端部には外筒15の前端部が固定されている。プッシュロッド14と外筒15は同軸上に配置されている。プッシュロッド14と外筒15の間には、外径側にコイルスプリング16が、内径側に内筒17がそれぞれ配置されている。また、プッシュロッド14の前端部には車体側連結部材18が固定されている。車体側連結部材18は車体1に設けたジョイントボール19と回動可能に連結されている。
【0025】
スピンドルドライブ機構4では、電動モータ9を駆動して回転軸9aを正回転させると、スピンドル12が正回転し、スピンドルナット13が第2ハウジング6の他端側へと移動する。これにより、第2ハウジング6に対する外筒15及びプッシュロッド14の突出量が増加し、バックドア3が開方向に回動する。また、電動モータ9を駆動して回転軸9aを逆回転させると、スピンドルナット13も逆回転し、スピンドルナット13が第2ハウジング6の一端側へと移動する。これにより、第2ハウジング6に対する外筒15及びプッシュロッド14の突出量が減少し、バックドア3が閉方向に回動する。
【0026】
図3に示すように、バックドア3には、ドアラッチ装置20、バックドア開閉装置21、ドア開スイッチ22、ドア閉スイッチ23、等が設けられている。ここでは、ドア開スイッチ22とドア閉スイッチ23で機能を分けているが、両方の機能を備えたドア開閉スイッチとしてもよい。また、ドア開スイッチ22とドア閉スイッチ23は、バックドア3の外側に設けられるハンドルスイッチや内部に設けられるゲートスイッチで代用してもよい。さらに、これらスイッチを設ける位置は特に限定されるものではない。
【0027】
ドアラッチ装置20は、ラッチ24を正逆回転させるラッチモータ25を備える。ラッチ24の回転位置は、フルラッチスイッチ26、ハーフラッチスイッチ27及びリリーススイッチ28などによってそれぞれ検出される。フルラッチスイッチ26は、ラッチ24が車体1の開口部2に露出するストライカに完全に係合するフルラッチ位置を検出する。リリーススイッチ28は、ラッチ24がストライカから離脱可能な状態に移行したリリース位置を検出する。ハーフラッチスイッチ27は、フルラッチ位置とリリース位置の間のハーフラッチ位置を検出する。
【0028】
ドア開スイッチ22及びドア閉スイッチ23はバックドア3の外面に設けられている(図1参照)。ドア開スイッチ22又はドア閉スイッチ23を操作すると、ドア開操作信号又はドア閉操作信号が制御装置29に出力される。制御装置29では、ドア開操作信号又はドア閉操作信号に基づいてスピンドルドライブ機構4にPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力する。スピンドルドライブ機構4は、モータ駆動回路30にてPWM信号を受信し、このPWM信号に基づいて電動モータ9を駆動制御してバックドア3を全閉位置から全開位置又はその逆へと回動させる。
【0029】
バックドア開閉装置21は、マイクロコンピュータ、入出力回路等からなる制御装置29を備える。制御装置29には、スピンドルドライブ機構4、ドアラッチ装置20、ドア閉スイッチ23、ドア開スイッチ22、BCM31(Body Control Module)等が接続されている。
【0030】
続いて、バックドア3の自動開放処理について説明する。
【0031】
図4に示すように、バックドア3の自動開放処理は、認証処理(ステップS100)、解錠処理(ステップS200)及び開閉処理(ステップS300)により行う。
【0032】
図5に示すように、認証処理では、制御装置29で、ドア開スイッチ22からドア開操作信号を受信したか否かを判断する(ステップS110)。ドア開操作信号を受信すれば、BCM30に電子キーの認証を要求する(ステップS111)。
【0033】
BCM30では、制御装置29からの認証要求を受けると(ステップS120)、電子キーに対して認証コードの送信要求を行う(ステップS121)。BCM30で、電子キーから送信された認証コードを受信すれば(ステップS122)、受信した認証コードと、予め登録されている正規コードとを比較し(ステップS123)、比較結果を制御装置29に送信する(ステップS124)。
【0034】
制御装置29では、比較結果に基づいて、認証コードと正規コードが合致していれば(ステップS112:YES)、解錠処理を実行し(ステップS113)、合致していなければ(ステップS112:NO)、自動開放処理を終了する。
【0035】
図6に示すように、解錠処理(ステップS200)では、ドアラッチ装置20にリリース信号を出力する(ステップS201)。ドアラッチ装置20では、入力されたリリース信号に基づいてラッチモータ25を駆動する。ここで、リリーススイッチ28によってラッチ24がリリース位置に回動しているか否かを判断する(ステップS202)。ラッチ24がリリース位置に回動し、リリーススイッチ28からオン信号が入力されれば、開閉処理(ステップS300)を実行する。所定時間内にリリーススイッチ28からオン信号が入力されなければ、ドアラッチ装置20で不具合が発生したとしてエラーを報知し(ステップS203)、自動開放処理を終了する。
【0036】
図7に示すように、開閉処理(ステップS300)では、スピンドルドライブ機構4にPWM信号を出力し(ステップS301)、バックドア3の開放動作を開始させる。この間、回動位置算出処理を実行する。回動位置算出処理では、回転センサ10によって電動モータ9の回転数を検出する(ステップS302)。そして、バックドア3の全閉位置からの電動モータ9の回転数に基づいて、バックドア3の回動位置を算出する(ステップS303)。
【0037】
本実施形態では、回転センサ10は、一方のスピンドルドライブ機構4に設けられており、他方のスピンドルドライブ機構4は、この回転センサ10によって検出された回転速度に基づいて、モータ駆動回路30に出力するPWM信号のデューティ比がフィードバック制御される。但し、回転センサ10を両方のスピンドルドライブ機構4に設け、検出される回転速度の平均値を算出し、算出された平均値に基づいて両方のスピンドルドライブ機構4をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0038】
バックドア3の開放動作は、全閉位置から全開位置までを、加速域、定速域、減速域の3段階で行う。図8のグラフでは、横軸がバックドア3の開閉位置(電動モータ9の回転数)、縦軸がバックドア3の回動速度(電動モータ9の回転速度)をそれぞれ示す。原点Oが全閉位置、右端Xが全開位置、左側の直角三角形が加速域、中央の長方形が定速域、右側の直角三角形が減速域である。台形状のグラフが目標速度TSの変化を示す。
【0039】
加速域では、目標速度TSは電動モータ9の回転数に対して回転速度が徐々に大きくなる加速用目標速度ATSに設定されている。そして、この加速用目標速度ATSが得られるように、モータ駆動回路30に出力するPWM信号のデューティ比をフィードバック制御する。これにより、バックドア3は停止状態から加速しながら回動する。
【0040】
定速域では、目標速度TSは電動モータ9の回転速度が一定値に維持される定速用目標速度CTSに設定されている。そして、この定速用目標速度CTSが得られるように、モータ駆動回路30に出力するPWM信号のデューティ比をフィードバック制御する。これにより、バックドア3は一定速度で回動する。
【0041】
減速域では、目標速度TSは電動モータ9の回転速度が徐々に減少する減速用目標速度DTSに設定されている。そして、この減速用目標速度DTSが得られるように、モータ駆動回路30に出力するPWM信号のデューティ比をフィードバック制御する。これにより、バックドア3の回動速度が徐々に低下して全開位置で停止する。
【0042】
以上のようにしてバックドア3が全開位置に回動したと判断すれば(ステップS304)、スピンドルドライブ機構4の電動モータ9へのPWM信号の出力を停止し(ステップS305)、ドアの自動開放処理を終了する。なお、バックドア3が全開位置に回動したか否かは、例えば、ステップS303で算出したバックドア3の回動位置や、電動モータ9の駆動開始からの経過時間等に基づいて判断すればよい。
【0043】
自動開放処理の実行途中で、バックドア3の回動を強制的に停止させる場合、次のようにしてバックドア3の停止処理を実行する。
【0044】
図9に示すように、バックドア3の停止処理(ステップS400)は、ドア閉スイッチ23からの入力信号などの開閉開始要求に基づいて(ステップS401)、電動モータ9の駆動を停止する。自動開放処理の実行途中でバックドア3の回動を強制的に停止させるのは、ユーザが通常よりも早期に回動動作を停止させたい場合であると判断できる。そこで、前記各速度域では、次のようにしてバックドア3の回動動作を停止させるまでの時間を短縮するようにしている。
【0045】
バックドア3を定速域で停止させる場合、通常開放動作の減速域でバックドア3を停止させるよりも十分に短い、予め設定した停止時間で停止させる。すなわち、図10の2点鎖線で示すように、前記停止時間でバックドア3が停止できるような減速用目標速度DTSを設定する(ステップS402)。そして、電動モータ9の回転速度がこの減速用目標速度DTSで変化するように、モータ駆動回路30に出力するPWM信号をフィードバック制御し(ステップS403)、デューティ比を減少させる。これにより、停止処理の開始から通常よりも短い時間でバックドア3を停止させることができる。
【0046】
バックドア3を加速域又は減速域の途中で停止させる場合、電動モータ9の回転速度は定速域での回転速度に至っていないか(図10中、点P1で示す。)、そこから低下している(図10中、点P2で示す。)。この場合、この時点P1,P2から定速域で停止させる場合と同様に、電動モータ9の回転速度を減速用目標速度RSに従って変化させる。すなわち、加速域又は減速域での電動モータ9の回転速度の変化度合いを、前記定速域で前記停止処理を実行する場合と同様な変化度合いに変更する。これにより、加速域又は減速域のいずれの場合であっても、バックドア3の回動を停止させるまでの時間を短縮化することができる。
【0047】
以上のようにしてバックドア3を回動途中で停止させた場合、ユーザの操作に応じて回動を再開させる必要がある。本実施形態では、次のようにしてバックドア3の再駆動処理を行う。
【0048】
図11に示すように、バックドア3の再駆動処理(ステップS500)は、ドア開スイッチ22からの入力信号などの開閉開始要求に基づいて(ステップS501)、電動モータ9を再駆動する。すなわち、短時間で前記開閉処理に於ける定速用目標速度に到達するように、次のようにして電動モータ9への印加電圧をフィードバック制御する。
【0049】
再駆動の開始から予め設定した再駆動時間で前記通常目標速度に到達するように、再駆動目標速度を設定し(ステップS502)、この再駆動目標速度が得られるようにモータ駆動回路30に出力するPWM信号をフィードバック制御し(ステップS503)、PWM信号のデューティ比を増大させる。再駆動時間は、通常開放動作の加速域でバックドア3を開放する場合よりも短い時間とする。
【0050】
バックドア3を加速域の途中で停止させた状態(図12中、点P3で示す。)から電動モータ9を再駆動する場合、前記開閉処理に於ける定速域での目標速度(定速域目標速度CTS)に到達する前に、再駆動する電動モータ9の目標速度(再駆動目標速度RDTS)が加速域での目標速度(加速域目標速度ATS)に到達する(図12中、点P4で示す。)。そこで、再駆動処理の途中で、回転速度が加速用目標速度に到達すれば(ステップS504)、その後は加速域目標速度ATSに従ってフィードバック制御する(ステップS505)。再駆動処理により、バックドア3を自動開放処理する場合と同じ状態に短時間で復帰させることができる。
【0051】
バックドア3を定速域で停止させた状態(図12中、点P5で示す。)から電動モータ9を再駆動する場合、再駆動目標速度RDTSに従ってフィードバック制御し、定速域目標速度CTSに到達して(図12中、点P6で示す。)から通常開放動作に復帰させる。
【0052】
バックドア3を減速域の途中で停止させた状態(図12中、点P7で示す。)から電動モータ9を再駆動する場合、通常開放動作でバックドア3を開放するよりも十分に短い時間で全開位置まで回動させることができるようにフィードバック制御する。ここでは、前記同様、再駆動の開始から予め設定した再駆動時間で前記通常目標速度に到達するように、再駆動目標速度RDTSを設定し、この再駆動目標速度RDTSが得られるように電動モータ9への印加電圧をフィードバック制御する。再駆動処理の途中で、減速用目標速度DTSに到達すれば(図12中、点8で示す。)、この減速用目標速度DTSが得られるように電動モータ9への印加電圧をフィードバック制御する。また再駆動処理の途中で、バックドア3が全開位置に到達すれば、強制的に電動モータ9の駆動を停止するようにすればよい。
【0053】
なお、バックドア3の自動閉鎖処理は、前記自動開放処理と同様に、全閉位置から全開位置までを加速域、定速域、減速域の3段階で行い、各速度域で電動モータ9を前記同様にして駆動制御する。したがって、バックドア3の自動閉鎖処理についての説明は省略する。
【0054】
前記実施形態に係る車両開閉体の開閉制御装置によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)バックドア3の停止処理を実行することにより、通常よりも短時間で開閉動作を停止させることができる。
(2)バックドア3の再駆動処理を実行することにより、短時間で通常開閉処理へと復帰させることができる。
(3)バックドア3を回動させる際に必要となるトルクの大小に拘わらず、予め設定した時間で確実に回動を停止させたり、再駆動させたりすることができる。例えば、坂道の途中で駐車又は停車した状態からバックドア3を開閉し、開閉途中で停止させたり、停止後に再駆動させたりする場合には、バックドア3を回動させる際に必要なトルクは平地の場合とは相違する。この場合でも、目標速度を設定し、その目標速度でバックドア3が回動するようにフィードバック制御することで、予め設定した時間で確実に回動を停止させたり、再駆動させたりすることができる。
【0055】
本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0056】
前記実施形態では、車両開閉体の一例としてバックドア3を開閉制御する場合について説明したが、スライドドアやガルウィング等の他のタイプのドアであっても同様に開閉制御することができる。
【0057】
前記実施形態では、スピンドルドライブ機構4を2つ設ける場合について説明したが、一方を本願発明のスピンドル機構とし、他方をガススプリング等の電動モータ5を備えないダンパー機構とし、同様に開閉制御するようにしてもよい。
【0058】
前記実施形態では、前述の各処理をソフトウェアで実行する構成としたが、これらの処理を実行するハードウェアで構成することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1…車体
2…開口部
3…バックドア(車両開閉体)
4…スピンドルドライブ機構(開閉駆動部)
5…第1ハウジング
6…第2ハウジング
7…ドア側連結部材
8…ジョイントボール
9…電動モータ
10…回転センサ
11…減速ギア機構
12…スピンドル
13…スピンドルナット
14…プッシュロッド
15…外筒
16…コイルスプリング
17…内筒
18…車体側連結部材
19…ジョイントボール
20…ドアラッチ装置
21…バックドア開閉装置
22…ドア開スイッチ
23…ドア閉スイッチ
24…ラッチ
25…ラッチモータ
26…フルラッチスイッチ
27…ハーフラッチスイッチ
28…リリーススイッチ
29…制御装置(制御部)
30…モータ用駆動回路
31…BCM
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