(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 17/08 20060101AFI20231102BHJP
F25D 19/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F25D17/08 302
F25D19/00 522C
(21)【出願番号】P 2019183035
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊野 真二
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031504(JP,A)
【文献】国際公開第2006/013762(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/08
F25D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口を有する断熱箱体(3)からなる貯蔵庫本体(4)と、
貯蔵庫本体(4)の天壁(10)の下面に取付けられて、熱交換室(11)を区画する合成樹脂製のカバー(12)と、
熱交換室(11)の内部に配された熱交換器(13)とファンユニット(14)と、
を備える貯蔵庫において、
カバー(12)は、熱交換室(11)の下方を区画して後方に向かって下り傾斜する底壁(20)と、底壁(20)の左右側の縁部から上方に向かって立設された左右一対の側壁(21・21)と、両側壁(21)の上端部に連設されて左右方向に張り出し形成されたフランジ部(37)とを含み、
左右のフランジ部(37・37)のそれぞれの前端部には、ビス止め用の通孔(41)が開設されており、
左右の通孔(41・41)の前端縁を結んでビス止め位置(L)を規定したとき、底壁(20)のビス止め位置(L)よりも前方には、熱膨張に由来するカバー(12)の変形を吸収するための変形吸収部(50)が形成されており、
変形吸収部(50)は、底壁(20)の前端縁に連続するベース壁(51)と、ベース壁(51)に連続する前横壁(52)とを含み、
ベース壁(51)は、上方に向かって膨出される上湾曲部(53)と、上湾曲部(53)の前端に連続して上方に向かって起立する前縦壁(54)とを含み、
前縦壁(54)に連続する前横壁(52)の前端縁が、前方に向かって突出する凸部(55)と、後方に向かって陥入する凹部(56)とが交互に連続する凹凸状に形成されていることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項2】
上湾曲部(53)は、左右方向に列設された複数個の膨出部(60)からなり、
各膨出部(60)は、平面視において、左右方向に伸びる辺の左右端(60A・60B)と、該辺よりも前方側に位置する頂点(60C)の3点で規定される三角形状に形成されており、
各膨出部(60)の頂点(60C)の位置と、変形吸収部(50)の前端縁の凸部(55)の頂点(55A)の位置とが、左右方向において一致するように構成されている、請求項1記載の貯蔵庫
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵室の内壁面に固定されたプラスチック製のカバーで熱交換室が区画されるとともに、熱交換室の内部に熱交換器とファンユニットとが配されている貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫などの貯蔵庫の分野において、熱交換室を区画するカバーと貯蔵室の内壁面と間に隙間が形成されることを防ぐことで、熱交換室からの冷気の漏出を抑えて、効率的な冷気循環を実現することは、例えば特許文献1に公知である。特許文献1に記載の冷却貯蔵庫では、貯蔵室の天板にカバーをビス止め固定することで熱交換室が形成されている。カバーは、貯蔵室の天壁に沿うフランジ部を備えており、このフランジ部と貯蔵室の天板との間には、例えば、緩衝材、各種ゴム、コーキング材等からなる変形可能部材が配設されている。このようにフランジ部と貯蔵室の天板との間に変形可能部材が配設されていると、天板の平面度が低い場合でも、フランジ部と天壁との間の隙間を塞ぐことができるので、冷気循環の効率を向上させて、冷却貯蔵庫の省エネルギー化を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにカバーのフランジ部と貯蔵室の天板との間に変形可能部材を配設する構成では、変形可能部材の厚み寸法を超えてカバーが変形したときに、天板とカバーとの間に隙間が生じることが避けられない。すなわち、この種の貯蔵庫では、庫内温度が変化したときに、熱膨張によりカバーにうねりが生じて、天板との間に大きな隙間ができるおそれがあるが、特許文献1のように変形可能部材を配設する構成では、当該うねりに適切に対応することができない。このように熱膨張によりカバーにうねりが生じることを防ぐためには、例えばカバーに補強板を取付けて、カバーの剛性を上げることが考えられるが、その場合には補強板を取付けた分だけ、カバーのコストアップを招来する。
【0005】
本発明は、熱膨張によりカバーにうねりが生じることを防ぐことができ、カバーと貯蔵室の天壁との間に隙間が生じることを抑えて省エネルギー化を図ることができる、貯蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前面に開口を有する断熱箱体3からなる貯蔵庫本体4と、貯蔵庫本体4の天壁10の下面に取付けられて、熱交換室11を区画する合成樹脂製のカバー12と、熱交換室11の内部に配された熱交換器13とファンユニット14と、を備える貯蔵庫を対象とする。カバー12は、熱交換室11の下方を区画して後方に向かって下り傾斜する底壁20と、底壁20の左右側の縁部から上方に向かって立設された左右一対の側壁21・21と、両側壁21の上端部に連設されて左右方向に張り出し形成されたフランジ部37とを含む。左右のフランジ部37・37のそれぞれの前端部には、ビス止め用の通孔41が開設されており、左右の通孔41・41の前端縁を結んでビス止め位置Lを規定したとき、底壁20のビス止め位置Lよりも前方には、熱膨張に由来するカバー12の変形を吸収するための変形吸収部50が形成されている。そして、変形吸収部50の左右方向に走る前端縁が、前方に向かって突出する凸部55と、後方に向かって陥入する凹部56とが交互に連続する凹凸状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
変形吸収部50は、底壁20の前端縁に連続するベース壁51と、ベース壁51に連続する前横壁52とを含む。ベース壁51は、上方に向かって膨出される上湾曲部53と、上湾曲部53の前端に連続して上方に向かって起立する前縦壁54とを含む。前縦壁54に連続する前横壁52の前端縁が、前方に向かって突出する凸部55と、後方に向かって陥入する凹部56とが交互に連続する凹凸状に形成されている。
【0008】
上湾曲部53は、左右方向に列設された複数個の膨出部60からなる。各膨出部60は、平面視において、左右方向に伸びる辺の左右端60A・60Bと、該辺よりも前方側に位置する頂点60Cの3点で規定される三角形状に形成されている。各膨出部60の頂点60Cの位置と、変形吸収部50の前端縁の凸部55の頂点55Aの位置とが、左右方向において一致するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の貯蔵庫1では、熱交換室11を区画する合成樹脂製のカバー12の底壁20のビス止め位置Lよりも前方に、熱膨張に由来するカバー12の変形を吸収するための変形吸収部50を設けた。また、変形吸収部50の左右方向に走る前端縁を、前方に向かって突出する凸部55と、後方に向かって陥入する凹部56とが交互に連続する凹凸状に形成した。これによれば、貯蔵庫本体4の前面の開口から暖気が入ってカバー12の前端部が熱膨張する場合であっても、その前端縁が隣り合う凹部56と凸部55との間の間隔寸法が小さくなる方向に変形することで、当該前端縁が上下方向に変形する「うねり」が生じることを防ぐことができる。以上より、本発明によれば、カバー12の前端縁に「うねり」が生じて、カバー12の前端縁と貯蔵庫本体4の天壁10との間に隙間が生じることを防ぐことができるので、当該隙間からの熱交換室11内へ不用意に暖気が進入し、或いは当該隙間から貯蔵庫本体4内の貯蔵室2内に冷気が漏出することに由来する冷却効率の低下や冷気循環効率の低下を抑えることが可能となり、貯蔵庫1の省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
変形吸収部50を、底壁20の前端縁に連続するベース壁51と、ベース壁51に連続する前横壁52とを含むものとし、ベース壁51を、上方に向かって膨出される上湾曲部53と、上湾曲部53の前端に連続して上方に向かって起立する前縦壁54とを含むものとすることができる。これによれば、上湾曲部53と前縦壁54とによりベース壁51を補強して、当該ベース壁51が熱変形することを防ぐことができるので、より確実に前端縁が凹凸状に形成された前横壁52のみを、隣り合う凹部56と凸部55との間の間隔寸法が小さくなる方向に熱変形させることができる。以上より、カバー12の前端縁と貯蔵庫本体4の天壁10との間に隙間が生じることをより確実に防いで、貯蔵庫1の省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
上湾曲部53を、左右方向に列設された複数個の膨出部60からなるものとしていると、上湾曲部53を一つの膨出部で構成する形態に比べて、ベース壁51をより強固に補強することができる。また、各膨出部60を、平面視において、左右方向に伸びる辺の左右端60A・60Bと、該辺よりも前方側に位置する頂点60Cの3点で規定される三角形状に形成し、各膨出部60の頂点60Cの位置と、変形吸収部50の前端縁の凸部55の頂点55Aの位置とを、左右方向において一致させていると、各膨出部60の前端位置と変形吸収部50の前端位置とを近接対峙させることができるので、変形吸収部50の前端縁のみを確実に熱変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る貯蔵庫を構成するカバーの前端部分を下方から見た平面図である。
【
図2】本発明に係る貯蔵庫の概略縦断側面図である。
【
図3】カバーの下方から見た平面図であり、
図2のB-B線断面図である。
【
図6】カバーの天壁への取付構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例) 本発明に係る貯蔵庫を業務用冷蔵庫(以下単に「冷蔵庫」と記す。)に適用した実施例を
図1~
図8に示す。本実施例における前後、左右、上下とは、
図1、
図2、および
図5に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後、左右、上下の表記に従う。
図2に示すように本実施例に係る冷蔵庫1は、貯蔵室2を備える断熱箱体3からなる本体ケース(貯蔵庫本体)4と、貯蔵室2の前面に形成された前面開口を開閉する断熱扉5とを備える。本体ケース4の上方には機械室6が設けられており、その内部には、冷却装置を構成する圧縮機7、凝縮器8、および凝縮器ファン9などが設置されている。
【0014】
図2乃至
図4に示すように、本体ケース4の天壁10の下面には、熱交換室11を区画するとともに、ドレンパンを兼ねるカバー12が装着されている。熱交換室11の内部には、1つの冷却器(熱交換器)13と、左右一対のファンユニット14とが配設されている。冷却器13は、天壁10の下面に吊り下げられている。ファンユニット14は、天壁10の前部と冷却器13の前部との間に形成された取付座に装着されている。ファンユニット14と対峙するカバー12の前方には吸込口16が形成されており、カバー12の後方の本体ケース4の後壁17との間には吹出口18が形成されている。
【0015】
圧縮機7と凝縮器ファン9とを運転しつつファンユニット14を駆動すると、
図2の矢印に示すように、貯蔵室2内の空気がファンユニット14によって吸込口16から熱交換室11内に吸引され、この空気が冷却器13内を流通する間に熱交換によって冷却されて冷気とされたのち、吹出口18から貯蔵室2内に吹出される。これにより、貯蔵室2内の空気が循環されて貯蔵室2内が冷却される。
【0016】
カバー12は、天壁10を覆う底壁20と、底壁20の左右両側に配される一対の側壁21・21とを有する樹脂成型品であり、上方に開口を有する略四角形の浅皿状に形成されている。カバー12の底壁20は、ファンユニット14と対峙して、吸込口16が開設された前側のダクト領域22と、冷却器13と対峙して、下方に凹む山形に形成された後側のドレイン領域23とで構成される。ダクト領域22を構成するダクト壁24には、縦横方向にマトリクス状に複数個の吸込口16が配設されており、本実施例では、左右方向に8個(8行)、前後方向に11個(11列)の計88個の吸込口16が設けられている。各吸込口16は、上下端に開口を有する左右横長の楕円状の筒体で構成されており、前方側の5つの列を構成する各吸込口16の筒体の高さ寸法は、後方側の6つの列を構成する各吸込口16の筒体の高さ寸法よりも大きく設定されている。
図4に示すように、前方側のダクト壁24(24A)の傾斜角度は、後方側のダクト壁24(24B)の傾斜角度よりも僅かに大きく設定されている。
【0017】
ドレイン領域23は、最下部に形成されて前後方向に走る排水路25を備える断面U字状の溝壁26と、排水路25に向かって下り傾斜するドレイン流下壁27とで構成される。ドレイン流下壁27は、ダクト壁24に連続して排水路25に向かって穏やかに傾斜する前傾斜壁27Aと、前傾斜壁27Aよりも後方に形成されて排水路25に向かって穏やかに傾斜する左右の傾斜壁27B・27Bとで構成される。左右の傾斜壁27B・27Bの後側の縁部には奥壁27Cが立ち上がり形成されており、この奥壁27Cには、排水路25に連続する排水部28が後方に向かって突設されている。排水路25および排水部28は、カバー12の左右方向の中央から少し右側に寄った位置に形成されており、天壁10へカバー12を装着したとき、後方に行くに従って下り傾斜するように構成されている。
【0018】
図2に示すように、本体ケース4の後壁17の内部と底壁29の下面には、天壁10の近傍からケース外部に至る排水管からなるドレイン流路30が設けられている。ドレイン流路30の上端部に臨む本体ケース4の後壁17には、カバー12の排水部28を受け入れる接続筒31が設置されており、カバー12を天壁10に装着したとき、排水部28は接続筒31内に進入し、排水部28とドレイン流路30とは接続されるようになっている。ドレイン流路30の終端は、下方に開口する排水口32に至っており、この排水口32に接続される図外の排水ホース等を介して、ドレイン水は庫外に排出される。以上より、冷却器13から滴下する凝結水や除霜動作時に発生する除霜水などのドレイン水は、カバー12のドレイン領域23を構成するドレイン流下壁27により排水路25で集められ、排水部28と接続筒31を介してドレイン流路30に送り込まれたのち、排水口32から庫外に排出される。
【0019】
図6に示すように、カバー12を構成する左右の側壁21は、側面視で前後方向に長い略三角形状に形成されており、その後端部には、後方に向かって下り傾斜して、本体ケース4の後壁内面に当接する奥端片35が後方に向かって突設されている。
図3に示すように、奥端片35の後端縁は、ドレイン流下壁27を構成する左右の傾斜壁27B・27Bの後端縁よりも後方寄りに位置しており、奥端片35が本体ケース4の後壁17に当接するようにカバー12を天壁10に装着したとき、奥壁27Cと本体ケース4の後壁17との間には、吹出口18となる開口が形成されるようになっている。
図5において、符号36は側壁21に設けられた補強部となる凹入部を示す。各凹入部36は、側方視において四角形状に形成されており、その上辺部分が側面よりも内側に進入している(
図8参照)。左右の各側壁21には、5つずつ凹入部36が形成されている。
【0020】
各側壁21の上端縁には、前後方向に真直ぐに伸びる水平部分と、奥端片35の上端部に位置する傾斜部分とが形成されており、水平部分の上端には、カバー12を本体ケース4の天壁10に取付けるためのフランジ部37が形成されている。フランジ部37は、側壁の水平部分の上縁から左右外方向(水平外方向)に張り出し形成された、前後に長いフランジ壁38で構成される。各フランジ壁38の盤面中央には、補強用の凹部39が陥没形成されており、各フランジ壁38の前端部にはビス40用の通孔41が開設されている。
図5および
図8において符号42は、奥端片35の補強を目的として、当該奥端片35の傾斜部分の上縁に張り出し形成された後フランジを示す。
【0021】
図6に示すように、本体ケース4の天壁10の下面の左右の両側には、フランジ部37の後端部を前方側から差込装着して、フランジ部37を支持するためのホルダー45が固定されている。以上より、ホルダー45にフランジ部37の後端部を前方側から差込み装着したうえで、通孔41を介してビス40を天壁10にねじ込むことで、本体ケース4にカバー12を装着固定することができる。
【0022】
本実施例に係るカバー12には、底壁20の前方に、熱膨張に由来するカバー12の変形を吸収するための変形吸収部50が形成されている。変形吸収部50は、底壁20の前端縁に連続するベース壁51と、ベース壁51に連続する前横壁52とを含む。
図1に示すように、フランジ部37の前端に形成された左右の通孔41・41の前端縁を結んでビス止め位置Lを規定したとき、このビス止め位置Lよりも前方の領域に変形吸収部50は形成されている。
【0023】
図7に示すように、変形吸収部50を構成するベース壁51は、上方に向かって膨出される上湾曲部53と、上湾曲部53の前端に連続する前縦壁54とを含み、この前縦壁54に連続して前横壁52が連設されている。
図1および
図5に示すように、変形吸収部50の左右方向に走る前端縁、すなわち前横壁52の前端縁は、前方に向かって突出する凸部55と、後方に向かって陥入する凹部56とが交互に連続する凹凸状に形成されており、ここでは、凹部56と凸部55とが滑らかな湾曲線で連続する凹凸波状に形成されている。
【0024】
図1および
図7に示すように、上湾曲部53は、左右方向に列設された複数個の膨出部60で構成される。各膨出部60は、平面視で三角形状に形成されている。より詳しくは、各膨出部60は、左右方向に伸びる辺の左右端60A・60Bと、該辺よりも前方側に位置する頂点60Cの3点で規定される三角形状に形成されている。三角形状に形成された各膨出部60の頂点60Cの位置と、変形吸収部50の前端縁の凸部55の頂点55Aの位置とは、左右方向において一致するように構成されている。
【0025】
以上のように、本実施例の冷蔵庫においては、カバー12の底壁20のビス止め位置Lよりも前方に、熱膨張に由来するカバー12の変形を吸収するための変形吸収部50を設け、さらに変形吸収部50の左右方向に入る前端縁を、前方に向かって突出する凸部55と、後方に向かって陥入する凹部56とが交互に連続する凹凸状に形成したので、本体ケース4の前面の開口から暖気が入ってカバー12の前端縁が熱膨張する場合であっても、この前端縁が隣り合う凹部56と凸部55との間の間隔寸法が小さくなる方向に変形することで、すなわち、左右方向に変形することで、当該前端縁が上下方向に変形する「うねり」が生じることを防ぐことができる。これにより、カバー12の前端縁に「うねり」が生じて、カバー12の前端縁と本体ケース4の天壁10との間に隙間が生じることを防ぐことができるので、当該隙間からの熱交換室11内へ不用意に暖気が進入し、或いは当該隙間から貯蔵室2内に冷気が漏出することに由来する冷却効率の低下や冷気循環効率の低下を抑えて、冷蔵庫1の省エネルギー化を図ることができる。
【0026】
変形吸収部50を底壁20の前端縁に連続するベース壁51と、ベース壁51に連続する前横壁52とを含むものとし、ベース壁51を、上方に向かって膨出される上湾曲部53と、上湾曲部53の前端に連続して上方に向かって起立する前縦壁54とを含むものとしたので、上湾曲部53と前縦壁54とによりベース壁51を補強して、当該ベース壁51が熱変形することを防ぐことができ、より確実に前端縁が凹凸状に形成された前横壁52のみを、隣り合う凹部56と凸部55との間の間隔寸法が小さくなる方向(左右方向)に熱変形させることができる。これにより、カバー12の前端縁と本体ケース4の天壁10との間に隙間が生じることをより確実に防いで、冷蔵庫1の省エネルギー化を図ることができる。
【0027】
上湾曲部53を、左右方向に列設された複数個の膨出部60からなるものとしたので、上湾曲部53を一つの膨出部で構成する形態に比べて、ベース壁51をより強固に補強することができる。また、各膨出部60を、平面視において、左右方向に伸びる辺の左右端60A・60Bと、該辺よりも前方側に位置する頂点60Cの3点で規定される三角形状に形成し、各膨出部60の頂点60Cの位置と、変形吸収部50の前端縁の凸部55の頂点55Aの位置とを、左右方向において一致させたので、各膨出部60の前端位置と変形吸収部50の前端位置とを近接対峙させることが可能となり、変形吸収部50の前端縁のみを確実に熱変形させることができる。
【0028】
上記実施例においては、本発明の貯蔵庫を業務用冷蔵庫に適用した例を示したが、本発明はこれに限られず、ショーケース等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 貯蔵庫(冷蔵庫)
3 断熱箱体
4 貯蔵庫本体(本体ケース)
11 熱交換室
12 カバー
13 熱交換器(冷却器)
14 ファンユニット
20 底壁
21 側壁
37 フランジ部
41 ビス止め用の通孔
50 変形吸収部
51 ベース壁
52 前横壁
53 上湾曲部
54 前縦壁
55 凸部
55A 凸部の頂点
56 凹部
60 膨出部
60A 膨出部の左右端
60B 膨出部の左右端
60C 膨出部の頂点
L ビス止め位置