(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】がん治療のためのKRASG12C阻害剤及び1種以上の薬学的に活性な追加の薬剤を含む併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20231102BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231102BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20231102BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20231102BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/06
A61K31/282
A61K39/395 U
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019205987
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-11-10
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ラッセル・リップフォード
(72)【発明者】
【氏名】ジュード・ロバート・キャノン
(72)【発明者】
【氏名】アン・ワイ・サイキ
(72)【発明者】
【氏名】カレン・ルイーズ・レックス
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/051291(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/119183(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/217651(WO,A1)
【文献】特表2017-528488(JP,A)
【文献】特許第6785819(JP,B1)
【文献】KAREN REX; ET AL,ABSTRACT 3090: IN VIVO CHARACTERIZATION OF AMG 510-A POTENT AND SELECTIVE KRAS(G12C) 以下備考,CANCER RESEARCH,米国,2019年07月,VOL:79, NR:13, SUPPL. S,PAGE(S):3090(1-2),https://doi.org/10.1158/1538-7445.AM2019-3090,COVALENT SMALL MOLECULE INHIBITOR IN PRECLINICAL KRAS(G12C)CANCER MODELS
【文献】BRIAN A. LANMAN; ET AL,ABSTRACT 4455: DISCOVERY OF AMG 510, A FIRST-IN-HUMAN COVALENT INHIBITOR OF KRAS(G12C) FOR 以下備考,CANCER RESEARCH,米国,2019年07月,VOL:79, NR:13, SUPPL. S,PAGE(S):4455(1-2),https://doi.org/10.1158/1538-7445.AM2019-4455,THE TREATMENT OF SOLID TUMORS
【文献】ClinicalTrials.gov archive, 3 April 2019, NCT03600833:A Phase 1, Study Evaluating the Safety, Tolera,http://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT03600883?V 9=View#StudyPageTop [検索日:06/10/2021]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記がん
は非小細胞肺がん、小腸がん、虫垂がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、膵臓がん、皮膚がん、胃がん、鼻腔がん、又は胆管がんである、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
前記がんは膵臓がんである、請求項
1又は2に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記がんは結腸直腸がんである、請求項
1又は2に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前
記がんは非小細胞肺が
んである、請求項
1又は2に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はカルボプラチンである、請求項
1~5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤は抗PD-1
抗体である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
前記抗PD-1
抗体は、AMG404、ペムブロリズマブ、
又はニボルマブ
である、請求項
1~5及び7のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記抗PD-1
抗体はペムブロリズマブである、請求項
1~5及び7のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
前記抗PD-1抗体はニボルマブである、請求項
1~5及び7のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
前記抗PD-1抗体が、配列番号1を含む重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1アミノ酸配列、配列番号2を含むHC CDR2アミノ酸配列、配列番号3を含むHC CDR3アミノ酸配列、配列番号4を含む軽鎖(LC)CDR1アミノ酸配列、配列番号5を含むLC CDR2アミノ酸配列、及び配列番号6を含むLC CDR3アミノ酸配列を含む、請求項1~5及び7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗PD-1抗体が、配列番号7の重鎖可変領域配列、及び配列番号8の軽鎖可変領域を含む、請求項1~5及び7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗PD-1抗体が、配列番号9の重鎖配列、及び配列番号10の軽鎖配列を含む、請求項1~5及び7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗PD-1阻害剤は、AMG404である、
請求項1~5及び7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はMEK阻害剤である、請求項
1~5に記載の
医薬組成物。
【請求項16】
前記MEK阻害剤は、トラメチニブ、ピマセルチブ、PD-325901、MEK162、TAK-733、GDC-0973又はAZD8330である、請求項
15に記載の
医薬組成物。
【請求項17】
前記MEK阻害剤はトラメチニブである、請求項
16に記載の
医薬組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はEGFR阻害剤である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項19】
前記EGFR阻害剤は、アファチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ
、セツキシマブ
、又はパニツムマブである、請求項
18に記載の
医薬組成物。
【請求項20】
前記EGFR阻害剤はアファチニブである、請求項
19に記載の
医薬組成物。
【請求項21】
前記EGFR阻害剤は
パニツムマブである、請求項
19に記載の
医薬組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はSHP2阻害剤である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項23】
前記SHP2阻害剤はRMC4550である、請求項
22に記載の
医薬組成物。
【請求項24】
前記SHP2阻害剤はRMC4630である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤は
mTOR阻害剤である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項26】
前記mTOR阻害剤は、エベロリムスである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はPI3K阻害剤である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項28】
前記PI3K阻害剤は、AMG511又はブパルリシブである、請求項
27に記載の
医薬組成物。
【請求項29】
前記PI3K阻害剤は、AMG511である、請求項
28に記載の
医薬組成物。
【請求項30】
前記PI3K阻害剤は、ブパルリシブである、請求項
28に記載の
医薬組成物。
【請求項31】
前記少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はAKT阻害剤である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項32】
前記AKT阻害剤はAZD5363である、請求項
31に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は2019年6月24日に出願された米国仮特許出願第62/865,819号明細書、2019年年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/821,376号明細書、及び2018年11月19日に出願された米国仮特許出願第62/769,355号明細書の優先権及び利益を主張し、これらの全ては、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<配列表>
本願は、電子フォーマットの配列表と共に出願されている。配列表は、A-2326-US-NP_SeqList_102919_ST25.txt(2019年10月29日作成)という名称のファイルで提供されており、15.4kbのサイズである。電子フォーマットの配列表における情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、特にがん治療のためのKRASG12C阻害剤及び1種以上の、薬学的に活性な追加の薬剤を含む、併用療法を提供する。本発明はまた、がん治療のための、KRASG12C阻害剤、及び1種以上の薬学的に活性な追加の薬剤を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
KRAS遺伝子変異は、膵臓がん、肺腺がん、結腸直腸がん、胆嚢がん、甲状腺がん、及び胆管がんで一般的である。KRAS変異はまた、NSCLC患者の約25%において観察され、いくつかの研究では、KRAS変異がNSCLC患者の負の予後因子であることが示されている。最近、V-Ki-ras2 Kirstenラット肉腫ウイルスがん遺伝子相同体(KRAS)変異は、結腸直腸がんにおける上皮成長因子受容体(EGFR)標的療法に対する耐性を付与することが見出されており、したがって、KRASの変異状態は、重要な情報をTKI療法の処方前に提供することができる。まとめると、膵臓がん、肺腺がん、又は結腸直腸がんを有する患者、特にKRAS変異を特徴とするがんを有すると診断された患者、及び化学療法後にまで進行した患者を含む患者のための新しい医学的治療が必要とされている。残基G12、G13、及びQ61における発がん性KRAS変異は、固形悪性腫瘍で見出される最も一般的なRAS変異の代表的なものである。最近、スイッチIIポケット(SIIP)に隣接する変異体システインと反応し、KRASをその不活性なGDP結合状態にロックする共有結合小分子阻害剤で、KRASG12Cが標的化できることが実証された。
【0005】
KRASはヒトがんにおいて最も頻繁に変異するがん遺伝子であり、腫瘍内で重要なシグナル伝達タンパク質をコードする。KRASG12C変異体はシステインを保有し、当該箇所は、有望な前臨床活性を有する共有結合阻害剤を設計するために利用されてきた。本発明者らは、新規な結合相互作用及び著しく増強された効力及び選択性を有する一連の阻害剤を最適化した。これらの努力は、臨床開発において最初のKRASG12C阻害剤であるAMG510の発見に繋がった。臨床前AMG510治療は、KRAS p.G12C腫瘍を退縮させ、化学療法及び標的薬剤の抗腫瘍有効性を有意に改善した。免疫コンピテントマウスでは、AMG510による治療は炎症誘発性腫瘍微小環境をもたらし、免疫チェックポイント阻害と組み合わせて永続性のある治癒をもたらした。治癒したマウスは、同質遺伝子KRAS p.G12D腫瘍の増殖を拒絶し、共有抗原に対する適応免疫を示唆している。AMG510は最初の投薬コホートにおける臨床的抗腫瘍活性の予備的証拠を示し、有効な治療を欠く患者のための潜在的に形質転換的な治療を表す。
【0006】
KRAS腫瘍タンパク質は、腫瘍細胞の増殖及び生存に関与する細胞内シグナル伝達経路の必須メディエーターであるGTPアーゼである。正常細胞では、KRASは分子スイッチとして機能し、不活性なGDP結合状態と活性なGTP結合状態との間を交互に繰り返す。これらの状態間の遷移は、GTPをロードし、KRASを活性化するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)、及びKRASを不活性化するGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)によって触媒されるGTP加水分解によって促進される。GTPのKRASへの結合は、RAF-MEK-ERK(MAPK)を含むシグナル伝達経路を誘発するエフェクターの結合を促進する。KRASの体細胞性活性化変異はがんの特徴であり、GAPの会合を妨げ、それによってエフェクター結合を安定化し、KRASシグナル伝達を増強する。KRAS変異腫瘍を有する患者は、有意に芳しくない転帰及びより悪い予後を有する。腫瘍型のサブセットについて、いくつかのMAPK経路タンパク質(例えば、MEK、BRAF、EGFR)の臨床的に認可された阻害剤が存在するが、現在まで、KRAS変異腫瘍に対して選択的である臨床分子は存在しない。さらに、いくつかのMAPK経路標的療法は、臨床的有効性の欠如のために、KRAS変異腫瘍の治療には禁忌である。さらに、非腫瘍又は非変異体選択的治療は、正常細胞におけるMAPKシグナル伝達の阻害のために、標的毒性を導入することができる。これは、このような薬剤を標準治療又は免疫療法と組み合わせるための有用性を制限し得る。したがって、正常細胞に責任を課さない腫瘍選択的治療法の開発に対する、かなりの満たされていない必要性が存在する。
【0007】
KRAS p.G12Cは、肺腺がんの約13%、結腸直腸がんの3%、及び他の固形腫瘍の2%に存在する。KRASG12Cの変異体システインは、KRASの不活性GDP結合型に存在するポケット(P2)に隣接して存在する。P2と変異体システインとの近接は、共有結合阻害剤の広範な探索に繋がった。KRASG12Cの最初に報告された求電子スクリーニングはARS-1620の最終的な同定に繋がり、これは、前臨床KRAS p.G12Cモデルにおけるインビボ有効性を示す。Araxes PharmaのARS-1620は概念証明、変異体選択的KRAS阻害のマイルストーンであったが、前臨床試験のツール化合物として位置づけられた。Amgen,Inc.の科学者らは、KRASG12Cの以前には利用されていなかった表面溝を利用し、有効性及び選択性を実質的に高めた、一連の新規なアクリルアミド系分子を同定した。集中的な求電子スクリーニング及び構造に基づく設計は、ヒトの臨床試験に到達した最初のKRASG12C阻害剤であるAMG510の発見に至った(www.clinicaltrials.gov NCT03600883を参照されたい)。本発明は、AMG510の説得力のある前臨床活性、単独療法として、又は他の療法と併用した場合に腫瘍細胞殺傷を増強するその能力、及び腫瘍微小環境の免疫療法に対する感受性をこの上なく見事に高める免疫細胞浸潤に対する劇的な影響を含む。臨床的有効性についての予備的証拠もまた、本明細書で提示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
【0009】
【化1】
AMG510、又はその薬学的に許容される塩;及び1種以上の治療薬又は薬学的に活性な薬剤;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0010】
本発明は、AMG510、又は薬学的に許容される塩と少なくとも1種の治療薬との併用により、非限定的に肺がん、結腸がん及び膵臓がんを含む固形腫瘍などのがんを治療する方法をさらに含み、治療薬は、抗PD-1抗体、化学療法薬、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤、PI3K阻害剤、及びAKT阻害剤から選択される。
【0011】
本発明はさらに、2つのKRASG12C対立遺伝子を含む、単離された細胞株を含み、その細胞株はCT-26 KRAS pG12Cである。
【0012】
本発明はさらに、2つのKRASG12C対立遺伝子を含む細胞株を作製する方法であって、
a)2つのKRASG12C対立遺伝子が生成されるよう、2つのKRAS対立遺伝子両方のヌクレオチドの置換を誘発するCRISPR構築物とともに、2つのKRASG12D対立遺伝子を含む細胞株をインキュベートする工程;及び
b)2つのKRASG12C対立遺伝子を含む細胞株の単離工程、
を含む方法を含む。
【0013】
<実施形態の最初のセット>
【0014】
1.本発明の一実施形態では、本発明は膵臓がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及び少なくとも1種の化学療法薬を投与することを含む。
【0015】
2.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及び少なくとも1種の化学療法薬を投与することを含む。
【0016】
3.本発明の別の実施形態では、本発明は、結腸がんがKRAS p.G12Cの変異を有する、実施形態2に記載の方法を含む。
【0017】
4.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及び化学療法薬を投与することを含む。
【0018】
いくつかのそのような実施形態では、肺がんは非小細胞肺がんである。
【0019】
5.本発明の別の実施形態では、本発明は、膵臓がんがKRAS p.G12Cの変異を有する、実施形態1に記載の方法を含む。
【0020】
6.本発明の別の実施形態では、本発明は、化学療法薬がカルボプラチンである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0021】
7.本発明の別の実施形態では、本発明は膵臓がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びMEK阻害剤を投与することを含む。
【0022】
8.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びMEK阻害剤を投与することを含む。
【0023】
9.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びMEK阻害剤を投与することを含む。
【0024】
10.本発明の別の実施形態では、本発明は、肺がんがp.KRAS G12Cの変異を有する、実施形態9に記載の方法を含む。
【0025】
11.本発明の別の実施形態では、本発明は、MEK阻害剤がトラメチニブである、実施形態7~10のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0026】
12.本発明の別の実施形態では、本発明は、MEK阻害剤がピマセルチブ、PD-325901、MEK162、TAK-733、GDC-0973又はAZD8330である、実施形態7~10のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0027】
13.本発明の別の実施形態では、本発明は膵臓がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びEGFR阻害剤を投与することを含む。
【0028】
14.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びEGFR阻害剤を投与することを含む。
【0029】
15.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びEGFR阻害剤を投与することを含む。
【0030】
16.本発明の別の実施形態では、本発明は、EGFR阻害剤がアファチニブである、実施形態13~15のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0031】
17.本発明の別の実施形態では、本発明は、EGFR阻害剤がエルロチニブである、実施形態13及び15のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0032】
18.本発明の別の実施形態では、本発明は、EGFR阻害剤がラパチニブである、実施形態15に記載の方法を含む。
【0033】
19.本発明の別の実施形態では、本発明は膵臓がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びSHP2阻害剤を投与することを含む。
【0034】
20.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びSHP2阻害剤を投与することを含む。
【0035】
21.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びSHP2阻害剤を投与することを含む。
【0036】
22.本発明の別の実施形態では、本発明は、SHP2阻害剤がRMC-4550から選択される、実施形態19~21のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0037】
23.本発明の別の実施形態では、本発明は、SHP2阻害剤がRMC4550である、実施形態22に記載の方法を含む。
【0038】
24.本発明の別の実施形態では、本発明は膵臓がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びPI3K阻害剤を投与することを含む。
【0039】
25.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びPI3K阻害剤を投与することを含む。
【0040】
26.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びPI3K阻害剤を投与することを含む。
【0041】
27.本発明の別の実施形態では、本発明は、PI3K阻害剤がAMG511である、実施形態24~26のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0042】
28.本発明の別の実施形態では、本発明は、PI3K阻害剤がブパルリシブである、実施形態26に記載の方法を含む。
【0043】
29.本発明の別の実施形態では、本発明は膵臓がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びAKT阻害剤を投与することを含む。
【0044】
30.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びAKT阻害剤を投与することを含む。
【0045】
31.本発明の別の実施形態では、本発明は、AKT阻害剤がAZD5363である、実施形態29~30のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0046】
32.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及びEGFR抗体を投与することを含む。
【0047】
33.本発明の別の実施形態では、本発明は、EGFR抗体がセツキシマブである、実施形態32に記載の方法を含む。
【0048】
32.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及び抗PD-1抗体を投与することを含む。
【0049】
33.本発明の別の実施形態では、本発明は、抗PD-1抗体がAMG404、ペムブロリズマブ及びニボルマブから選択される、実施形態32に記載の方法を含む。
【0050】
34.本発明の別の実施形態では、本発明は、抗PD-1抗体がペムブロリズマブである、実施形態33に記載の方法を含む。
【0051】
35.本発明の別の実施形態では、本発明は、抗PD-1抗体がAMG404である、実施形態33に記載の方法を含む。
【0052】
36.本発明の別の実施形態では、本発明は、抗PD-1抗体がニボルマブである、実施形態33に記載の方法を含む。
【0053】
37.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0054】
【化2】
又はその薬学的に許容される塩;カルボプラチン;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0055】
38.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0056】
【化3】
又はその薬学的に許容される塩;トラメチニブ;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0057】
39.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0058】
【化4】
又はその薬学的に許容される塩;アファチニブ;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0059】
40.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0060】
【化5】
又はその薬学的に許容される塩;エルロチニブ;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0061】
41.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0062】
【化6】
又はその薬学的に許容される塩;ラパチニブ;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0063】
42.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0064】
【化7】
又はその薬学的に許容される塩;RMC-4550;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0065】
43.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0066】
【化8】
又はその薬学的に許容される塩;AMG511;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0067】
44.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0068】
【化9】
又はその薬学的に許容される塩;ブパルリシブ;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0069】
45.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0070】
【化10】
又はその薬学的に許容される塩;AZD5363;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0071】
46.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0072】
【化11】
又はその薬学的に許容される塩;セツキシマブ;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0073】
47.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0074】
【化12】
又はその薬学的に許容される塩;抗PD-1抗体;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0075】
48.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0076】
【化13】
又はその薬学的に許容される塩;AMG404;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0077】
49.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0078】
【化14】
又はその薬学的に許容される塩;ペムブロリズマブ;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0079】
50.本発明の別の実施形態では、本発明は
【0080】
【化15】
又はその薬学的に許容される塩;ニボルマブ;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0081】
51.本発明の別の実施形態では、本発明は、KRASG12C阻害剤が
【0082】
【化16】
又はその薬学的に許容される塩である、実施形態1~4又は7~36のいずれか1つに記載の方法を含む。
【0083】
52.本発明の別の実施形態では、本発明は固形腫瘍を治療するために、KRASG12C阻害剤とMEK阻害剤との併用を含む。
【0084】
53.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療するために、KRASG12C阻害剤とMEK阻害剤との併用を含む。
【0085】
54.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療するために、KRASG12C阻害剤とMEK阻害剤との併用を含む。
【0086】
55.本発明の別の実施形態では、本発明は膵臓がんを治療するために、KRASG12C阻害剤とMEK阻害剤との併用を含む。
【0087】
56.本発明の別の実施形態では、本発明は固形腫瘍を治療するために、KRASG12C阻害剤と化学療法薬との併用を含む。
【0088】
57.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療するために、KRASG12C阻害剤と化学療法薬との併用を含む。
【0089】
58.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療するために、KRASG12C阻害剤と化学療法薬との併用を含む。
【0090】
59.本発明の別の実施形態では、本発明は膵臓がんを治療するために、KRASG12C阻害剤と化学療法薬との併用を含む。
【0091】
60.本発明の別の実施形態では、本発明は固形腫瘍を治療するために、KRASG12C阻害剤とEGFR阻害剤との併用を含む。
【0092】
61.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療するために、KRASG12C阻害剤とEGFR阻害剤との併用を含む。
【0093】
62.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療するために、KRASG12C阻害剤とEGFR阻害剤との併用を含む。
【0094】
63.本発明の別の実施形態では、本発明は膵臓がんを治療するために、KRASG12C阻害剤とEGFR阻害剤との併用を含む。
【0095】
64.本発明の別の実施形態では、本発明は固形腫瘍を治療するために、KRASG12C阻害剤と抗PD-1抗体薬との併用を含む。
【0096】
65.本発明の別の実施形態では、本発明は肺がんを治療するために、KRASG12C阻害剤と抗PD-1抗体薬との併用を含む。
【0097】
66.本発明の別の実施形態では、本発明は結腸がんを治療するために、KRASG12C阻害剤と抗PD-1抗体薬との併用を含む。
【0098】
67.本発明の別の実施形態では、本発明は膵臓がんを治療するために、KRASG12C阻害剤と抗PD-1抗体薬との併用を含む。
【0099】
68.本発明の別の実施形態では、本発明は、対象の膵臓がん、肺がん、又は結腸がんの管理又は治療用の薬剤を製造するために、化学療法薬と組み合わせたKRASG12C阻害剤の使用を含む。
【0100】
69.本発明の別の実施形態では、本発明は、対象の膵臓がん、肺がん、又は結腸がんの管理又は治療用の薬剤を製造するために、MEK阻害剤と組み合わせたKRASG12C阻害剤の使用を含む。
【0101】
70.本発明の別の実施形態では、本発明は、対象の膵臓がん、肺がん、又は結腸がんの管理又は治療用の薬剤を製造するために、EGFR阻害剤と組み合わせたKRASG12C阻害剤の使用を含む。
【0102】
71.本発明の別の実施形態では、本発明は、対象の膵臓がん、肺がん、又は結腸がんの管理又は治療用の薬剤を製造するために、抗PD-1抗体と組み合わせたKRASG12C阻害剤の使用を含む。
【0103】
72.本発明の別の実施形態では、本発明は、2つのKRASG12C対立遺伝子を含む、単離された細胞株を含む。
【0104】
73.本発明の別の実施形態では、本発明は、細胞株がCT-26 KRAS p.G12Cである、実施形態68に記載の細胞株を含む。
【0105】
74.本発明の別の実施形態では、本発明は、2つのKRASG12C対立遺伝子を含む細胞株を作製する方法であって、
a)2つのKRASG12C対立遺伝子が生成されるよう、2つのKRAS対立遺伝子両方のヌクレオチドの置換を誘発するCRISPR構築物とともに、2つのKRASG12D対立遺伝子を含む細胞株をインキュベートする工程;及び
b)2つのKRASG12C対立遺伝子を含む細胞株の単離工程を含む方法、
を含む。
【0106】
75.本発明の別の実施形態では、本発明は、CRISPR構築物が配列CTTGTGATGGTTGGAGCTGA(配列番号21)を含む、実施形態70に記載の方法を含む。
【0107】
76.本発明の別の実施形態では、本発明はがんを治療する方法を含み、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及び少なくとも1種の追加の化学療法薬を投与することを含む。
【0108】
77.本発明の別の実施形態では、本発明は、固形腫瘍を治療するために、KRASG12C阻害剤と抗PD-1抗体薬との併用を含む。
【0109】
78.本発明の別の実施形態では、本発明は、対象の膵臓がん、肺がん、又は結腸がんの管理又は治療用の薬剤を製造するために、少なくとも1種の追加の化学療法薬と組み合わせたKRASG12C阻害剤の使用を含む。
【0110】
79.本発明の別の実施形態では、本発明は、KRASG12C阻害剤が
【0111】
【化17】
又はその薬学的に許容される塩である、実施形態76に記載の方法を含む。
【0112】
80.本発明の別の実施形態では、本発明は、KRASG12C阻害剤が
【0113】
【化18】
又はその薬学的に許容される塩である、実施形態77に記載の併用を含む。
【0114】
81.本発明の別の実施形態では、本発明は、KRASG12C阻害剤が
【0115】
【化19】
又はその薬学的に許容される塩である、実施形態78に記載の使用を含む。
【0116】
82.本発明の別の実施形態では、本発明は、肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、実施形態78に記載の使用を含む。
【0117】
<実施形態の第2のセット>
【0118】
1.本発明の別の実施形態では、本発明はがんを治療する方法に関し、その方法はそれを必要とする患者に、治療有効量のKRASG12C阻害剤及び少なくとも1種の追加の薬学的に活性な薬剤を投与することを含む。
【0119】
2.さらなる実施形態では、KRASG12C阻害剤は、
【0120】
【化20】
又はその薬学的に許容される塩である、実施形態1に記載の方法。
【0121】
3.さらなる実施形態では、がんはKRAS p.G12C変異を有する、実施形態1に記載の方法。
【0122】
4.さらなる実施形態では、がんは膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、虫垂がん、子宮内膜がん、又は小腸がんである、実施形態1に記載の方法。
【0123】
5.さらなる実施形態では、がんは膵臓がんである、実施形態4に記載の方法。
【0124】
6.さらなる実施形態では、がんは結腸直腸がんである、実施形態4に記載の方法。
【0125】
7.さらなる実施形態では、がんは肺がんである、実施形態4に記載の方法。
【0126】
8.さらなる実施形態では、肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である、実施形態7に記載の方法。
【0127】
9.さらなる実施形態では、がんは虫垂がんである、実施形態4に記載の方法。
【0128】
10.さらなる実施形態では、がんは子宮内膜がんである、実施形態4に記載の方法。
【0129】
11.さらなる実施形態では、がんは小腸がんである、実施形態4に記載の方法。
【0130】
12.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は、カルボプラチン、抗PD-1阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤、PI3K阻害剤又はAKT阻害剤である、実施形態1に記載の方法。
【0131】
13.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はカルボプラチンである、実施形態12に記載の方法。
【0132】
14.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は抗PD-1阻害剤である、実施形態12に記載の方法。
【0133】
15.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤は、AMG404、ペムブロリズマブ、及びニボルマブから選択される、実施形態14に記載の方法。
【0134】
16.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤はペムブロリズマブである、実施形態15に記載の方法。
【0135】
17.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤はAMG404である、実施形態15に記載の方法。
【0136】
18.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤は、ニボルマブである、実施形態15に記載の方法。
【0137】
19.さらなる実施形態では、少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はMEK阻害剤である、実施形態12に記載の方法。
【0138】
20.さらなる実施形態では、MEK阻害剤は、トラメチニブ、ピマセルチブ、PD-325901、MEK162、TAK-733、GDC-0973又はAZD8330である、実施形態19に記載の方法。
【0139】
21.さらなる実施形態では、MEK阻害剤はトラメチニブである、実施形態20に記載の方法。
【0140】
22.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はEGFR阻害剤である、実施形態12に記載の方法。
【0141】
23.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤は、アファチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、又はセツキシマブである、実施形態22に記載の方法。
【0142】
24.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤はアファチニブである、実施形態23に記載の方法。
【0143】
25.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤はセツキシマブである、実施形態23に記載の方法。
【0144】
26.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はSHP2阻害剤である、実施形態12に記載の方法。
【0145】
27.さらなる実施形態では、SHP2阻害剤はRMC4550である、実施形態26に記載の方法。
【0146】
28.さらなる実施形態では、SHP2阻害剤はRMC4630である、実施形態26に記載の方法。
【0147】
29.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はPI3K阻害剤である、実施形態12に記載の方法。
【0148】
30.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はAMG511又はブパルリシブである、実施形態29に記載の方法。
【0149】
31.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はAMG511である、実施形態30に記載の方法。
【0150】
32.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はブパルリシブである、実施形態30に記載の方法。
【0151】
33.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はAKT阻害剤である、実施形態12に記載の方法。
【0152】
34.さらなる実施形態では、AKT阻害剤はAZD5363である、実施形態33に記載の方法。
【0153】
35.さらなる実施形態では、
【0154】
【化21】
又はその薬学的に許容される塩;少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【0155】
36.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は、カルボプラチン、抗PD-1阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤、PI3K阻害剤又はAKT阻害剤である、実施形態35に記載の組成物。
【0156】
37.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はカルボプラチンである、実施形態36に記載の組成物。
【0157】
38.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は抗PD-1阻害剤である、実施形態36に記載の組成物。
【0158】
39.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤は、AMG404、ペムブロリズマブ、及びニボルマブから選択される、実施形態38に記載の組成物。
【0159】
40.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤はペムブロリズマブである、実施形態39に記載の組成物。
【0160】
41.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤はAMG404である、実施形態39に記載の組成物。
【0161】
42.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤はニボルマブである、実施形態39に記載の組成物。
【0162】
43.さらなる実施形態では、少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はMEK阻害剤である、実施形態36に記載の組成物。
【0163】
44.さらなる実施形態では、MEK阻害剤は、トラメチニブ、ピマセルチブ、PD-325901、MEK162、TAK-733、GDC-0973又はAZD8330である、実施形態43に記載の組成物。
【0164】
45.さらなる実施形態では、MEK阻害剤はトラメチニブである、実施形態44に記載の組成物。
【0165】
46.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はEGFR阻害剤である、実施形態36に記載の組成物。
【0166】
47.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤は、アファチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、又はセツキシマブである、実施形態46に記載の組成物。
【0167】
48.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤はアファチニブである、実施形態47に記載の組成物。
【0168】
49.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤はセツキシマブである、実施形態47に記載の組成物。
【0169】
50.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はSHP2阻害剤である、実施形態36に記載の組成物。
【0170】
51.さらなる実施形態では、SHP2阻害剤はRMC4550である、実施形態50に記載の組成物。
【0171】
52.さらなる実施形態では、SHP2阻害剤はRMC4630である、実施形態50に記載の組成物。
【0172】
53.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はPI3K阻害剤である、実施形態36に記載の組成物。
【0173】
54.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はAMG511又はブパルリシブである、実施形態53に記載の組成物。
【0174】
55.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はAMG511である、実施形態54に記載の組成物。
【0175】
56.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はブパルリシブである、実施形態54に記載の組成物。
【0176】
57.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はAKT阻害剤である、実施形態36に記載の組成物。
【0177】
58.さらなる実施形態では、AKT阻害剤はAZD5363である、実施形態57に記載の組成物。
【0178】
59.さらなる実施形態では、キットであり、そのキットはKRASG12C阻害剤、又はその薬学的に許容される塩;及び少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤を含む。
【0179】
60.さらなる実施形態では、KRASG12C阻害剤は
【0180】
【化22】
又はその薬学的に許容される塩である、実施形態59に記載のキット。
【0181】
61.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は、カルボプラチン、抗PD-1阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤、PI3K阻害剤又はAKT阻害剤である、実施形態59に記載のキット。
【0182】
62.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はカルボプラチンである、実施形態59に記載のキット。
【0183】
63.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は抗PD-1阻害剤である、実施形態59に記載のキット。
【0184】
64.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤は、AMG404、ペムブロリズマブ、及びニボルマブから選択される、実施形態63に記載のキット。
【0185】
65.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブである、実施形態64に記載のキット。
【0186】
66.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤はAMG404である、実施形態64に記載のキット。
【0187】
67.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤は、ニボルマブである、実施形態64に記載のキット。
【0188】
68.さらなる実施形態では、少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はMEK阻害剤である、実施形態61に記載のキット。
【0189】
69.さらなる実施形態では、MEK阻害剤は、トラメチニブ、ピマセルチブ、PD-325901、MEK162、TAK-733、GDC-0973又はAZD8330である、実施形態68に記載のキット。
【0190】
70.さらなる実施形態では、MEK阻害剤はトラメチニブである、実施形態69に記載のキット。
【0191】
71.さらなる実施形態では、少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はEGFR阻害剤である、実施形態61に記載のキット。
【0192】
72.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤は、アファチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、又はセツキシマブである、実施形態61に記載のキット。
【0193】
73.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤はアファチニブである、実施形態62に記載のキット。
【0194】
74.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤はセツキシマブである、実施形態62に記載のキット。
【0195】
75.さらなる実施形態では、少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はSHP2阻害剤である、実施形態61に記載のキット。
【0196】
76.さらなる実施形態では、SHP2阻害剤はRMC4550である、実施形態75に記載のキット。
【0197】
77.さらなる実施形態では、SHP2阻害剤はRMC4630である、実施形態75に記載のキット。
【0198】
78.さらなる実施形態では、少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はPI3K阻害剤である、実施形態61に記載のキット。
【0199】
79.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はAMG511又はブパルリシブである、実施形態78に記載のキット。
【0200】
80.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はAMG511である、実施形態79に記載のキット。
【0201】
81.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はブパルリシブである、実施形態79に記載のキット。
【0202】
82.さらなる実施形態では、少なくとも1種の、薬学的に活性な追加の薬剤はAKT阻害剤である、実施形態61に記載のキット。
【0203】
83.さらなる実施形態では、AKT阻害剤はAZD5363である、実施形態82に記載のキット。
【0204】
84.さらなる実施形態では、キットはがんを治療するためのものである、実施形態59に記載のキット。
【0205】
85.さらなる実施形態では、がんはKRAS p.G12C変異を有する、実施形態84に記載のキット。
【0206】
86.さらなる実施形態では、がんは膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、虫垂がん、子宮内膜がん、又は小腸がんである、実施形態84に記載のキット。
【0207】
87.さらなる実施形態では、がんは膵臓がんである、実施形態86に記載のキット。
【0208】
88.さらなる実施形態では、がんは結腸直腸がんである、実施形態86に記載のキット。
【0209】
89.さらなる実施形態では、がんは肺がんである、実施形態86に記載のキット。
【0210】
90.さらなる実施形態では、肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である、実施形態89に記載のキット。
【0211】
91.さらなる実施形態では、がんは虫垂がんである、実施形態86に記載のキット。
【0212】
92.さらなる実施形態では、がんは子宮内膜がんである、実施形態86に記載のキット。
【0213】
93.さらなる実施形態では、がんは小腸がんである、実施形態86に記載のキット。
【0214】
94.さらなる実施形態では、対象のがんの管理又は治療用の薬剤の製造のための、少なくとも1種の追加の化学療法薬と併用するKRASG12C阻害剤の使用。
【0215】
95.さらなる実施形態では、KRASG12C阻害剤は、
【0216】
【化23】
又はその薬学的に許容される塩である、実施形態94に記載の使用。
【0217】
96.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤とともに、がんの治療に使用するKRASG12C阻害剤である化合物。
【0218】
97.さらなる実施形態では、KRASG12C阻害剤は、
【0219】
【化24】
又はその薬学的に許容される塩である、実施形態96に記載の化合物。
【0220】
98.さらなる実施形態では、がんはKRAS p.G12C変異を有する、実施形態96に記載の化合物。
【0221】
99.さらなる実施形態では、がんは膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、虫垂がん、子宮内膜がん、又は小腸がんである、実施形態96に記載の化合物。
【0222】
100.さらなる実施形態では、がんは膵臓がんである、実施形態99に記載の化合物。
【0223】
101.さらなる実施形態では、がんは結腸直腸がんである、実施形態99に記載の化合物。
【0224】
102.さらなる実施形態では、がんは肺がんである、実施形態99に記載の化合物。
【0225】
103.さらなる実施形態では、肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である、実施形態102に記載の化合物。
【0226】
104.さらなる実施形態では、がんは虫垂がんである、実施形態99に記載の化合物。
【0227】
105.さらなる実施形態では、がんは子宮内膜がんである、実施形態99に記載の化合物。
【0228】
106.さらなる実施形態では、がんは小腸がんである、実施形態99に記載の化合物。
【0229】
107.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は、カルボプラチン、抗PD-1阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤、PI3K阻害剤又はAKT阻害剤である、実施形態96に記載の化合物。
【0230】
108.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はカルボプラチンである、実施形態107に記載の化合物。
【0231】
109.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は抗PD-1阻害剤である、実施形態107に記載の化合物。
【0232】
110.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤は、AMG404、ペムブロリズマブ、及びニボルマブから選択される、実施形態109に記載の化合物。
【0233】
111.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤はペムブロリズマブである、実施形態110に記載の化合物。
【0234】
112.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤はAMG404である、実施形態110に記載の化合物。
【0235】
113.さらなる実施形態では、抗PD-1阻害剤はニボルマブである、実施形態110に記載の化合物。
【0236】
114.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はMEK阻害剤である、実施形態107に記載の化合物。
【0237】
115.さらなる実施形態では、MEK阻害剤は、トラメチニブ、ピマセルチブ、PD-325901、MEK162、TAK-733、GDC-0973又はAZD8330である、実施形態114に記載の化合物。
【0238】
116.さらなる実施形態では、MEK阻害剤はトラメチニブである、実施形態115に記載の化合物。
【0239】
117.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はEGFR阻害剤である、実施形態107に記載の化合物。
【0240】
118.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤は、アファチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、又はセツキシマブである、実施形態117に記載の化合物。
【0241】
119.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤はアファチニブである、実施形態118に記載の化合物。
【0242】
120.さらなる実施形態では、EGFR阻害剤はセツキシマブである、実施形態118に記載の化合物。
【0243】
121.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はSHP2阻害剤である、実施形態107に記載の化合物。
【0244】
122.さらなる実施形態では、SHP2阻害剤はRMC4550である、実施形態121に記載の化合物。
【0245】
123.さらなる実施形態では、SHP2阻害剤はRMC4630である、実施形態121に記載の化合物。
【0246】
124.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はPI3K阻害剤である、実施形態107に記載の化合物。
【0247】
125.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はAMG511又はブパルリシブである、実施形態124に記載の化合物。
【0248】
126.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はAMG511である、実施形態125に記載の化合物。
【0249】
127.さらなる実施形態では、PI3K阻害剤はブパルリシブである、実施形態125に記載の化合物。
【0250】
128.さらなる実施形態では、少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤はAKT阻害剤である、実施形態107に記載の化合物。
【0251】
129.さらなる実施形態では、AKT阻害剤はAZD5363である、実施形態128に記載の化合物。
【0252】
130.さらなる実施形態では、KRASG12C阻害剤及び少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は同時に投与される、実施形態1に記載の方法。
【0253】
131.さらなる実施形態では、KRASG12C阻害剤及び少なくとも1種の薬学的に活性な追加の薬剤は別々に投与される、実施形態1に記載の方法。
【0254】
本発明のさらなる実施形態は、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、PD-1阻害剤、MEK阻害剤、Pi3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とを含む併用を含む。本発明のさらなる実施形態は、がん治療のための併用を含み、その併用は、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、PD-1阻害剤、MEK阻害剤、Pi3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とを含む。本発明のさらなる実施形態は、がん治療のために、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、PD-1阻害剤、MEK阻害剤、Pi3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とを含む併用方法を含む。本発明のさらなる実施形態は、がん治療のための併用を含み、その併用は、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、PD-1阻害剤、MEK阻害剤、Pi3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とを含み、その使用はその併用薬の自己投与を含む。
【0255】
本発明のさらなる実施形態は、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、PD-1阻害剤、MEK阻害剤、Pi3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とをさらに含む併用薬の処方を含む、がんの治療方法を含む。本発明のさらなる実施形態は、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、PD-1阻害剤、MEK阻害剤、Pi3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とをさらに含む併用薬を、それを必要とする対象に処方することを含む、がんの治療方法を含む。
【0256】
本発明のさらなる実施形態は、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、PD-1阻害剤、MEK阻害剤、Pi3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤、又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とを含む併用薬を使用してがんを治療する方法を含み、そうした方法は、前記併用薬を処方集にリストすること、及びそのようながんの治療を必要とする患者に指示することをさらに含む。
【0257】
本発明のさらなる実施形態は、がん治療のために、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、PD-1阻害剤、MEK阻害剤、Pi3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤、又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とを含む併用薬の使用方法を含み、そうした方法は、そのようながんの治療を必要とする患者が自己投与のために前記併用薬を購入することを含む。
【0258】
本発明のさらなる実施形態は、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、抗PD-1阻害剤、MEK阻害剤、Pi3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とを含む併用薬の投与を、それを必要とする対象に指導することを含む、がんの治療方法を含む。
【0259】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載の併用薬の
A]処方、
B]販売及び販売目的の広告、
C]購入、
D]自己投与のための指導、又は
E]投与
を含む、がん治療のプロセスを含む(ただし、この併用薬は、がん治療を必要とする対象に対して、がん治療のために規制機関により認可されている)。
【0260】
本発明のさらなる実施形態は、がんの治療のために、KRASG12C阻害剤と、化学療法薬、PD-1阻害剤、MEK阻害剤、PI3K選択的阻害剤、EGFR阻害剤、TOR阻害剤、SHP2阻害剤、又はAKT阻害剤から選択される別の治療薬とを含む併用薬を供給する方法を含み、前記方法は医師、薬局、患者、又は保険会社に、前記併用薬の販売に対して払い戻しを行うことを含む。
【0261】
明確にするために記すと、「指導」という用語は、その一般的に理解されている定義に加えて、規制機関によって認可されたラベル上の情報を含むことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0262】
【
図1】
図1は、カルボプラチンと併用したAMG510が、NCI-H358、NSCLC腫瘍の増殖抑制を増強することを示す。
【
図2】
図2は、MEK阻害剤PD-325901と併用したAMG510が、NSCLCのNCI-H358異種移植モデルで増強された効力をもたらすことを示す。
【
図3】
図3は、インビボでAMG510が、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍の増殖を阻害することを示す。
【
図4】
図4は、抗PD-1抗体と併用したAMG510が、KRAS p.G12C変異がんのマウスモデルで、生存性の増加及び永続性のある治癒をもたらすことを示す。
【
図5】
図5は、AMG510による治療が、CT-26 G12C-H10腫瘍でCD8+及びCD4+T細胞浸潤の増加をもたらすことを示す。
【
図6】
図6は、AMG510による治療が、CT-26 G12C-H10腫瘍でPD-L1陽性好中球の増加をもたらすことを示す。
【
図7】
図7は、相加性過剰マトリックスが相乗的相互作用の領域を識別することを示す。
【
図8】
図8は、自己交差マトリックスモデルの相加性を実験的に示す。
【
図9】
図9は、AMG510がRMC-4550(SHP2i)及びトラメチニブ(MEKi)の両方と相乗作用し、NCI-H358細胞株で細胞殺滅を達成することを示す。
【
図10】
図10は、アファチニブ又はRMC-4550の単剤活性の欠如がMIA PaCA-2細胞株での比較的弱い相乗作用に寄与し得ることを示す。
【
図11】
図11は、3D培養での組み合わせが、相乗作用の増大を露呈し得ることを示す。
【
図12】
図12は、AMG510×トラメチニブがNCI-H358で相乗作用を有することを示す。
【
図13】
図13は、NCI-H358細胞株においてAMGの自己交差を示す。
【
図14】
図14は、NCI-H358細胞株においてトラメチニブの自己交差を示す。
【
図15】
図15は、AMG510×トラメチニブがMIA PaCa-2細胞株において弱い相乗作用を有することを示す。
【
図16】
図16は、3D培養がMIA PaCa-2におけるAMG510×トラメチニブの相乗作用を向上させることを示す。
【
図17】
図17は、NCI-H1373細胞株におけるAMG510×トラメチニブ(3D)を示す。
【
図18】
図18はCT-26 KRAS p.G12Cにおける各単剤の高い効力のために、AMG510×トラメチニブが弱い相乗作用を有することを示す。
【
図19】
図19は、AMG510×PD-325901がMIA PaCa-2において弱い相乗作用を有することを示す。
【
図20】
図20は、AMG510×アファチニブがNCI-H358細胞株において相乗作用を有することを示す。
【
図21】
図21は、AMG510×アファチニブがMIA PaCa-2細胞株において弱い相乗作用を有することを示す。
【
図22】
図22は、3D培養がMIA PaCa-2細胞株においてAMG510×アファチニブの相乗作用を向上させないことを示す。
【
図23】
図23は、NCI-H1373細胞株におけるAMG510×アファチニブ(3D)を示す。
【
図24】
図24は、AMG510×アファチニブがCT-26 KRAS p.G12Cにおいて適度な相乗作用を有することを示す。
【
図25】
図25は、AMG510×ラパチニブがNCI-H358細胞株において相乗作用を有することを示す。
【
図26】
図26は、AMG×エルロチニブがNCI-H358細胞株において適度な相乗作用を有することを示す。
【
図27】
図27は、MIA PaCa-2細胞株においては、エルロチニブ活性の欠如に起因して、AMG510×エルロチニブの相乗作用が観察されないことを示す。
【
図28】
図28は、SW837においては、インビボでのセツキシマブ活性の欠如に起因して、AMG510×セツキシマブの相乗作用が観察されないことを示す。
【
図29】
図29は、AMG510×RMC-4550がNCI-H358細胞株において相乗作用を有することを示す。
【
図30】
図30は、AMG510×RMC-4550がMIA PaCa-2細胞株において弱い相乗作用を有することを示す。
【
図31】
図31は、AMG510×RMC-4550がCT-26 KRAS p.G12Cにおいて適度な相乗作用を有することを示す。
【
図32】
図32は、AMG510×AMG511がNCI-H358細胞株において適度な相乗作用を有することを示す。
【
図33】
図33は、AMG510×AMG511がMIA PaCa-2細胞株において弱い相乗作用を有することを示す。
【
図34】
図34は、AMG510×AMG511がCT-26 KRAS p.G12Cにおいて適度な相乗作用を有することを示す。
【
図35】
図35は、AMG510×ブパルリシブ(BKM120)がNCI-H358細胞株において適度な相乗作用を有することを示す。
【
図36】
図36は、AMG510×AZD5363がNCI-H358細胞株において弱い相乗作用を有することを示す。
【
図37】
図37は、AMG5120×AZD5363がMIA PaCa-2において弱い相乗作用を有することを示す。
【
図38】
図38は、AMG510が、2D培養におけるCT-26 KRAS p.G12CのKRASシグナル伝達を阻害することを示す。
【
図39】
図39は、マウスCT-26 KRAS p.G12C細胞が、3D培養におけるAMG510に感受性を有することを示す。
【
図40-1】
図40(a)は、GDP及びARS-1620に結合したKRAS
G12C/C51S/C80L/C118SのX線共結晶構造を示す(PDB ID:5V9U)。
図40(b)は、1.65Åの分解能で、GDP及びAMG510に結合したKRAS
G12C/C51S/C80L/C118SのX線共結晶構造を示す(PDB ID:まだ割り当てられていない)。
図40(c)は、精製KRAS
G12C/C118A又はKRAS
C118Aタンパク質(n=4)を用いた、SOS1で触媒されたヌクレオチド交換アッセイで測定した、AMG510及びARS-1620の生化学的活性を示す。
【
図40-2】
図40(d)は、質量分析によって決定されたAMG510及びARS-1620の反応速度特性を示す(n≧2)。
図40(e)は、2時間処理後のERK1/2リン酸化の阻害によって測定した、NCI-H358及びMIA PaCa-2におけるAMG510及びARS-1620の細胞活性を示す(n=2)。
【
図40-3】
図40(f)は、2時間処理後のNCI-H358及びMIA PaCa-2細胞におけるAMG510によるERKリン酸化の阻害及びKRAS
G12Cの占有率を示す(n=3)。
図40(g)は、72時間処理後の細胞生存率に対する作用によって測定された、NCI-H358及びMIA PaCa-2におけるAMG510及びARS-1620の細胞活性を示す(n=3)。
【
図40-4】
図40(h)は、ERKリン酸化の阻害によって決定された、AMG510及びARS-1620の反応速度特性を示す(n≧2)。
【
図41-1】
図41(a)は、4時間又は24時間処理後のNCI-H358又はMIA PaCa-2における細胞シグナル伝達に対する影響を、AMG510の用量応答と共に示す。
図41(b)は、24時間までの時点における、0.1μM AMG510による処理後のNCI-H358又はMIA PaCa-2の細胞シグナル伝達に対する影響を示す。
【
図41-2】
図41(c)は、2時間処理後のERK1/2リン酸化の阻害によって測定(n≧2)した、KRAS p.G12C及び非KRAS p.G12C変異体細胞株パネルに対して横断的なAMG510の細胞活性を示す。
図41(d)は、72時間処理後の細胞生存率に対する作用によって測定した、KRAS p.G12C及び非KRAS p.G12C変異体細胞株パネルに対して横断的なAMG510の細胞活性を示す。
【
図41-3】
図41(e)は、生存率用量応答曲線が少なくともn=2の実験の代表的な例であることを示す。AMG510による72時間の処理が、接着性単層培養又はスフェロイド培養条件下の細胞生存率に及ぼす影響(n=2)。
図41(f)は、1μMのAMG510で4時間処理した後の、NCI-H358全細胞溶解物のシステインプロテオーム分析を示す(n=5)。
【
図42-1】
図42(a)、(b)は、AMG510がインビボでKRAS p.G12C変異腫瘍のERK1/2リン酸化を阻害することを示す。MIA PaCa-2 T2(
図42(a))又はNCI-H358(
図42(b))腫瘍を有するマウスに、ビヒクル経口又はAMG510(全ての他の棒)経口のいずれかで単回用量を投与し、2時間後(
図42(a)、(b))に採取し、MSD免疫アッセイによって測定したp-ERKレベルについて評価した。血漿及び腫瘍試料を採取し、AMG510濃度について分析した(それぞれ、赤三角、白抜き黒丸)。データは、ビヒクルに対する対照のパーセントとして示す。データは、平均腫瘍体積±SEM(n=3/群)を表す。
図42(a)、(b)、
****P<0.0001;
*P<0.05(ダネット法による)。
【
図42-2】
図42(c)、(d)は、AMG510がインビボでKRAS p.G12C変異腫瘍のERK1/2リン酸化を阻害することを示す。MIA PaCa-2 T2腫瘍を有するマウスに、ビヒクル経口又はAMG510(全ての他の棒)経口のいずれかで単回用量を投与し、示されているように経時的に採取し、MSD免疫アッセイによって測定したp-ERKレベルについて評価した。血漿及び腫瘍試料を採取し、AMG510濃度について分析した(それぞれ、赤三角、白抜き黒丸)。データは、ビヒクルに対する対照のパーセントとして示す。データは、平均腫瘍体積±SEM(n=3/群)を表す。
****P<0.0001;
*P<0.05(ダネット法による)。
図42(e)は、質量分析を用いたKRAS
G12Cの共有結合修飾の、投薬レジメンにわたる、AMG510治療結果を示し、これはMIA PaCa-2 T2を有するマウスのp-ERK阻害に相関する。
図42(f)は、質量分析を用いたKRAS
G12Cの共有結合修飾の、投薬レジメンにわたる、AMG510治療結果を示し、これはNCI-H358を有するマウスのp-ERK阻害に相関する。
図42(g)は、質量分析を用いたKRAS
G12Cの共有結合修飾の、経時的なAMG510の治療結果を示し、これはMIA PaCa-2 T2を有するマウスのp-ERK阻害に相関する。
【
図43-1】
図43(a)は、定着したMIA PaCa-2 T2KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスに、ビヒクル又はAMG510のいずれかを投与したことを示す。AMG510は、KRAS p.G12C変異腫瘍のインビボ増殖を選択的に阻害する。データは平均腫瘍体積±SEM(n=10/群)を表す。
****P<0.0001、
*P<0.05(ダネット法による治療群に対するビヒクルの比較)、
#P<0.05(対応のあるt検定回帰)、
****P<0.0001(RM二元配置ANOVAによる)。
図43(b)は、定着したNCI-H358KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスに、ビヒクル又はAMG510のいずれかを投与したことを示す。AMG510は、KRAS p.G12C変異腫瘍のインビボ増殖を選択的に阻害する。データは平均腫瘍体積±SEM(n=10/群)を表す。
****P<0.0001、
*P<0.05(ダネット法による治療群に対するビヒクルの比較)、
#P<0.05(対応のあるt検定回帰)、
****P<0.0001(RM二元配置ANOVAによる)。
【
図43-2】
図43(c)は、定着したCT-26 KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスに、ビヒクル又はAMG510のいずれかを投与したことを示す。AMG510は、KRAS p.G12C変異腫瘍のインビボ増殖を選択的に阻害する。データは平均腫瘍体積±SEM(n=10/群)を表す。
****P<0.0001、
*P<0.05(ダネット法による治療群に対するビヒクルの比較)、
#P<0.05(対応のあるt検定回帰)、
****P<0.0001(RM二元配置ANOVAによる)。
図43(d)は、ビヒクル又はAMG510のいずれかで治療したマウスを用いた、KRAS
G12CNSCLC PDXモデルにおける腫瘍増殖の効果を示す。AMG510は、KRAS p.G12C変異腫瘍のインビボ増殖を選択的に阻害する。データは平均腫瘍体積±SEM(n=10/群)を表す。
【
図43-3】
図43(e)は、AMG510で治療された2人のKRAS p.G12C肺がん患者からのCTスキャンを示す。代表的な治療前(「ベースライン」)及び治療後(R
xの)スキャン。左側:上部パネルは肺の左上葉を表し、下部パネルは肺の右下葉を表す。右側:上部パネルは肺の左上葉を表し、下部パネルは胸膜を表す。AMG510は、KRAS p.G12C変異腫瘍のインビボ増殖を選択的に阻害する。
図43(f)は、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスに、ビヒクル又はAMG510を投与したことを示す。AMG510治療マウス(100mg/kg)からの、個々のCT-26 KRAS p.G12C腫瘍のプロット。
図43(g)は、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスに、ビヒクル又はAMG510を投与したことを示す。AMG510治療マウス(200mg/kg)からの、個々のCT-26 KRAS p.G12C腫瘍のプロット。100mg/kg群の継続治療は、多分、p-ERKの不完全な阻害に起因して、退縮が持続しなかった(
図3i)ことを示唆した(延長データ
図2a)。したがって、200mg/kg用量のAMG510を評価したところ、p-ERKのほぼ完全な阻害をもたらし(延長データ
図2a)、10例のうち8例の永続性のある治癒をもたらし(
図3j)、AMG510の血漿レベルは細胞IC90のすぐ下であった(延長データ
図2h)。
【
図44-1】
図44(a)は、NCI-H358腫瘍異種移植片に対してカルボプラチンと併用したAMG510を表す。データは平均腫瘍体積±SEM(n=10/群)を表す。a
***P<0.001(各単剤に対する併用治療のダネット法による比較)、
#P<0.001(対応のあるt検定回帰)、c
****P<0.001(各単剤に対する併用治療のダネット法による比較)、#P<0.001(対応のあるt検定回帰)。全ての治療群からの結果は、ビヒクルと比較して有意であった(
****P<0.0001(ダネット法による))。
図44(b)は、Loewe相加過剰アルゴリズムを用いて標的薬剤と併用したAMG510の相乗作用のスコアを計算し、より高いスコア(より暗い赤色)はより強い相乗相互作用を示すヒートマップとして表している。
【
図44-2】
図44(c)は、NCI-H358腫瘍異種移植片上に対してMEK阻害剤(PD-0325901)と併用したAMG510を表す。データは平均腫瘍体積±SEM(n=10/群)を表す。a
***P<0.001(各単剤に対する併用治療のダネット法による比較)、#P<0.001(対応のあるt検定回帰)、c
****P<0.001(各単剤に対する併用治療のダネット法による比較)、
#P<0.001(対応のあるt検定回帰)。全ての治療群からの結果は、ビヒクルと比較して有意であった(
****P<0.0001(ダネット法による))。
【
図45-1】
図45(a)は、ビヒクル、AMG510、抗PD-1、又は抗PD-1と併用したAMG510のいずれかで治療した個々のマウスの、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍の増殖を示す(n=10/群)。丸印付きの線は、腫瘍のないマウスを表す。
図45(b)は、代用生存エンドポイント(腫瘍サイズ>800mm
3)のKaplan Meier分析を示す。Mantel-Coxの
****P<0.001(ビヒクル対照に対して);
#P<0.005(AMG510又は抗PD-1単独に対する併用)。
【
図45-2】
図45(c)は、ビヒクル、AMG510、抗PD-1、抗PD-1と併用したAMG510、又はMEKiのいずれかで4日間にわたって治療し、フローサイトメトリーによって免疫表現型を決定したマウスのCT-26 KRAS p.G12C腫瘍を示す(n=8/群)。
****P<0.0001、
***P<0.001、
**P<0.01、
*P<0.05(ビヒクル対照とのテューキー法による比較);NS=有意でない。
図45(d)は、2日間の治療後にCT-26 KRAS p.G12C腫瘍から、RNAが単離されたことを示す(n=5/群)。遺伝子発現及びスコアを、NanoStringの技術によって計算した(方法を参照されたい)。
****P<0.0001、
***P<0.001(テューキー法による)。
【
図45-3】
図45(e)は、インターフェロンガンマ(「IFNγ」)の存在下又は非存在下、AMG510による24時間治療後の、CT-26 KRAS p.G12C細胞上におけるMHCクラスI抗原H-2K
dの、フローサイトメトリーによって測定した細胞表面発現を示す。分泌されたIFN-γのレベルを、ELISpotアッセイにより測定した(n=4~5/群)。
図45(f)は、AMG510+抗PD-1治療で治癒し、CT-26 KRAS p.G12C、CT-26、又は4T1細胞で再検証したマウスの個々の腫瘍増殖を示す。
【
図45-4】
図45(g)は、脾臓細胞を採取し、示されている細胞、CT-26、CT-26 KRAS p.G12C又は4T1細胞で検証したことを示す。
*P=0.0269(対照対併用の、対応のないt検定比較)。
図45(h)は、AMG510の治療が、炎症誘発性腫瘍微小環境を誘発することを示す。ビヒクル、AMG510、抗PD-1、抗PD-1と併用したAMG510、又はMEKiのいずれかで4日間にわたって治療したマウスからの、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍の免疫表現型を、免疫組織染色(n=5/群)、CD3/Ki67に対する免疫組織染色によって決定した。Ki67免疫陽性染色は青色で核用であり、CD3とCD8免疫陽性染色は褐色で細胞質用である。(h)中の矢印は、CD3及びKi67に対する二重の免疫陽性を有する細胞の例を指す。
【
図45-5】
図45(i)は、AMG510による治療が炎症誘発性腫瘍微小環境を誘発し、ビヒクル、AMG510、抗PD-1、抗PD-1と併用したAMG510、又はMEKiのいずれかで4日間にわたって治療したマウスからの、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍の免疫表現型を、免疫組織染色(n=5/群)、CD8に対する免疫組織染色によって決定した。Ki67免疫陽性染色は青色で核用であり、CD3とCD8免疫陽性染色は褐色で細胞質用である。
【
図46-1】
図46(a)は、精製KRAS
G12C/C118A又はKRAS
C118Aタンパク質を用いたSOS1で触媒されたヌクレオチド交換アッセイで測定した、AMG510及びその非反応性プロピオンアミド類似体の生化学的活性を示す(n≧2)。データは、示されている独立した反復数に対する平均±SDを表す。
図46(b)は、計算された最大反応速度、並びに最大速度の半分を達成するAMG510及びARS-1620の濃度を示す。データは、示されている独立した反復数に対する平均±SDを表す。
図46(c)は、t
1/2=12.2分を有するNCI-H358細胞の、RMC-4550によるERKリン酸化の阻害を示す(n=2)。データは、示されている独立した反復数に対する平均±SDを表す。
【
図46-2】
図46(d)は、接着性単層又はスフェロイド培養条件での、MIA PaCa-2及びNCI-H1373の細胞生存率におよぼすAMG510による72時間処理の影響を示す(n=2)。データは、示されている独立した反復数に対する平均±SDを表す。
図46(e)は、細胞培養におけるアミノ酸を用いた安定同位体標識法(Stable Isotope Labeling by/with Amino acids in Cell culture)(SILAC)による、MIA PaCa-2及びNCI-H358細胞中におけるKRASの半減期の決定を示す。データは、示されている独立した反復数に対する平均±SDを表す。
【
図47-1】
図47(a)~(c)は、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスを、単回用量のビヒクルで経口により、又は示されている用量のAMG510で経口により処置し、2時間後に採取したことを示す。p-ERKのレベルは、MSD免疫アッセイにより測定した。血漿及び腫瘍試料を採取し、AMG510濃度について分析した(それぞれ、赤三角、白抜き黒丸)。データは、ビヒクルに対する対照のパーセント(POC)として示す。
****P<0.0001、
*P<0.05(ビヒクルに対するダネット法による比較)。
図47(d)は、AMG510による処置が、p-ERK阻害と逆相関するKRASG12Cの共有結合修飾をもたらすことを示す。
図47(e)は、SW480-1AC異種移植モデルの腫瘍増殖におよぼすAMG510の影響を示す。腫瘍が約200mm
3に達したときに治療を開始した。
****P<0.0001(RM二元配置ANOVAによる)。
図47(f)は、KRAS
G12CSCLC PDXモデルの腫瘍増殖におよぼすAMG510治療の影響を示す。腫瘍が約200mm
3に達したときに治療を開始した。
****P<0.0001(RM二元配置ANOVAによる)。
図47(g)は、MIA PaCa-2 T2、NCI-H358異種移植片からのAMG510の血漿レベルを示す。
図47(h)は、CT-26 KRAS
p.G12C異種移植片からのAMG510の血漿レベルを示す。
図47(i)は、14日目から32日目までのBALB/cヌードマウス中の、AMG510による治療マウス(200mg/kg)の、個々のCT-26 KRAS p.G12C腫瘍プロットを示す。
【
図47-2】
図47(j)は、AMG510で治療された2人のKRAS p.G12C肺がん患者のCTスキャンを示す。先に
図43dに記載した患者の、さらなる代表的な治療前(「ベースライン」)及び治療後(R
x)スキャンは、(左側の上から下へ)肺左上葉、肺左下葉、リンパ節、肺左上葉、肺左上葉である。右側の上から下へ、肺左下葉、肺左下葉、胸膜、及び副腎である。
【
図47-3】
図47(k)は、NCI-H358腫瘍異種移植片に対する、単剤の、又はカルボプラチンと併用したAMG510を示す。
****P<0.001(ビヒクル対照に対するダネット法による比較)、
#P<0.001(対応のあるt検定回帰)。
【
図48-1】
図48は、示されている細胞株において標的化薬剤と併用投与されたAMG510の増殖阻害マトリックス及びLoewe相加過剰を示し、より暗い色は、より大きな細胞殺滅(増殖阻害)及びより強い相乗的相互作用(Loewe過剰)を意味する。阻害剤の試験された最大濃度及び各組合せのマトリックスによってカバーされた用量範囲が記されている。個々の異種組合せ(A×B)を、それらのそれぞれの相乗スコアをそれらの成分の自己交差(A×A又はB×B)の相乗スコアと比較することによって評価した。異種組合せは、それらの相乗作用スコアが、いずれかの成分の自己交差相乗スコアの3倍を超えた場合にのみ相乗作用があるとみなした。
【
図48-2】
図48は、示されている細胞株において標的化薬剤と併用投与されたAMG510の増殖阻害マトリックス及びLoewe相加過剰を示し、より暗い色は、より大きな細胞殺滅(増殖阻害)及びより強い相乗的相互作用(Loewe過剰)を意味する。阻害剤の試験された最大濃度及び各組合せのマトリックスによってカバーされた用量範囲が記されている。個々の異種組合せ(A×B)を、それらのそれぞれの相乗スコアをそれらの成分の自己交差(A×A又はB×B)の相乗スコアと比較することによって評価した。異種組合せは、それらの相乗作用スコアが、いずれかの成分の自己交差相乗スコアの3倍を超えた場合にのみ相乗作用があるとみなした。
【
図48-3】
図48は、示されている細胞株において標的化薬剤と併用投与されたAMG510の増殖阻害マトリックス及びLoewe相加過剰を示し、より暗い色は、より大きな細胞殺滅(増殖阻害)及びより強い相乗的相互作用(Loewe過剰)を意味する。阻害剤の試験された最大濃度及び各組合せのマトリックスによってカバーされた用量範囲が記されている。個々の異種組合せ(A×B)を、それらのそれぞれの相乗スコアをそれらの成分の自己交差(A×A又はB×B)の相乗スコアと比較することによって評価した。異種組合せは、それらの相乗作用スコアが、いずれかの成分の自己交差相乗スコアの3倍を超えた場合にのみ相乗作用があるとみなした。
【
図48-4】
図48は、示されている細胞株において標的化薬剤と併用投与されたAMG510の増殖阻害マトリックス及びLoewe相加過剰を示し、より暗い色は、より大きな細胞殺滅(増殖阻害)及びより強い相乗的相互作用(Loewe過剰)を意味する。阻害剤の試験された最大濃度及び各組合せのマトリックスによってカバーされた用量範囲が記されている。個々の異種組合せ(A×B)を、それらのそれぞれの相乗スコアをそれらの成分の自己交差(A×A又はB×B)の相乗スコアと比較することによって評価した。異種組合せは、それらの相乗作用スコアが、いずれかの成分の自己交差相乗スコアの3倍を超えた場合にのみ相乗作用があるとみなした。
【
図48-5】
図48は、示されている細胞株において標的化薬剤と併用投与されたAMG510の増殖阻害マトリックス及びLoewe相加過剰を示し、より暗い色は、より大きな細胞殺滅(増殖阻害)及びより強い相乗的相互作用(Loewe過剰)を意味する。阻害剤の試験された最大濃度及び各組合せのマトリックスによってカバーされた用量範囲が記されている。個々の異種組合せ(A×B)を、それらのそれぞれの相乗スコアをそれらの成分の自己交差(A×A又はB×B)の相乗スコアと比較することによって評価した。異種組合せは、それらの相乗作用スコアが、いずれかの成分の自己交差相乗スコアの3倍を超えた場合にのみ相乗作用があるとみなした。
【
図48-6】
図48は、示されている細胞株において標的化薬剤と併用投与されたAMG510の増殖阻害マトリックス及びLoewe相加過剰を示し、より暗い色は、より大きな細胞殺滅(増殖阻害)及びより強い相乗的相互作用(Loewe過剰)を意味する。阻害剤の試験された最大濃度及び各組合せのマトリックスによってカバーされた用量範囲が記されている。個々の異種組合せ(A×B)を、それらのそれぞれの相乗スコアをそれらの成分の自己交差(A×A又はB×B)の相乗スコアと比較することによって評価した。異種組合せは、それらの相乗作用スコアが、いずれかの成分の自己交差相乗スコアの3倍を超えた場合にのみ相乗作用があるとみなした。
【
図49】
図49(a)は、CT-26 KRAS p.G12C及び親CT-26細胞株におけるAMG510及びMEK阻害剤トラメチニブの細胞活性を、2時間処理後におけるERK1/2リン酸化の阻害の測定によって示す(n≧2)。
図49(b)は、CT-26 KRAS p.G12C及び親CT-26細胞株におけるAMG510及びMEK阻害剤トラメチニブの細胞活性を、スフェロイド培養で72時間処理した後の細胞生存率に対する作用によって測定した(n=2)。
【
図50-1】
図50(a)は、ビヒクル、AMG510、抗PD-1、抗PD-1と併用したAMG510、又はMEKiのいずれかで4日間にわたって治療し、フローサイトメトリーによって免疫表現型を決定したマウスのCT-26 KRAS p.G12C腫瘍を示す(n=8/群)。
*P<0.05(ビヒクル対照に対するテューキー法による);NSは有意でない;
***P<0.001(ビヒクルに対するダネット法による比較);
****P<0.0001(ビヒクル対照に対するダネット法による比較)。
図50(b)は、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスが、単回用量のビヒクル経口(黒色棒)又は示されている用量のMEKi経口(青色棒)で処置され、2時間後に採取されたことを示す。p-ERKのレベルは、MSD免疫アッセイにより測定した。血漿及び腫瘍試料を収集し、MEKi濃度を分析した(それぞれ、赤三角、白抜き黒丸)。データは、ビヒクルに対する対照のパーセント(POC)として示す。
*P<0.05(ビヒクル対照に対するテューキー法による);NSは有意でない;
***P<0.001(ビヒクルに対するダネット法による比較);
****P<0.0001(ビヒクル対照に対するダネット法による比較)。
図50(c)は、経時的な腫瘍増殖に対するMEKi治療の影響が、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスで測定されたことを示す。データは、平均腫瘍体積±SEM(n=10/群)を表す。
*P<0.05(ビヒクル対照に対するテューキー法による);NSは有意でない;
***P<0.001(ビヒクルに対するダネット法による比較);
****P<0.0001(ビヒクル対照に対するダネット法による比較)。
【
図50-2】
図50(d)は、ビヒクル、AMG510、抗PD-1、AMG510+抗PD-1、又はMEKiのいずれかで4日間にわたって治療された、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスの腫瘍体積を示す。データは、平均腫瘍体積±SEM(n=8/群)を表す。
図50(e)は、2日間の治療後にCT-26 KRAS p.G12C腫瘍から、RNAが単離されたことを示す。遺伝子発現及びスコアを、NanoStringの技術によって計算した(n=5/群)。
*P<0.05(ビヒクル対照に対するテューキー法による);NSは有意でない;
***P<0.001(ビヒクルに対するダネット法による比較);
****P<0.0001(ビヒクル対照に対するダネット法による比較)。
【
図50-3】
図50(f)は、IFNγの存在下又は非存在下、AMG510による24時間治療後の、CT-26 KRAS p.G12C細胞上におけるMHCクラスI抗原(H-2D
d及びH-2L
d)の、フローサイトメトリーによって測定した細胞表面発現を示す。
図50(g)は、CT-26又はCT-26 KRAS p.G12C腫瘍のいずれかを有するBalb/cマウスの増殖曲線を示す。
図50(h)は、親CT-26又はCT-26 KRAS p.G12C細胞をAMG510又はMEKiで24時間処理した後の、CXCL10又はCXCL11転写物及び分泌IP-10タンパク質の定量を示す。
【
図50-4】
図50(i)は、IFNγの存在下又は非存在下でのAMG510による、48時間処置後のSW-1573及び48時間処置後のMIA PaCA-2と共に、24時間処置後のCT-26 KRAS p.G12C細胞上における、MHCクラスI抗原(HLA、H-2D
d及びH-2K
d)の細胞表面発現をフローサイトメトリーの測定により示す。
【発明を実施するための形態】
【0263】
本発明は、特にがん治療のためのKRASG12C阻害剤及び1種以上の薬学的に活性な追加の薬剤を含む併用療法を提供する。本発明はまた、がん治療のための、KRASG12C阻害剤及び1種以上の薬学的に活性な追加の薬剤を含む、医薬組成物に関する。本明細書で開示される化合物は、すべて薬学的に許容される同位体標識化合物を含む(ここで、本明細書中に開示される化合物の1つ以上の原子は、同じ原子番号を有するが、天然に通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置換されている)。開示された化合物に組み込むことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、及びヨウ素の同位体、例えば、それぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、及び125Iが含まれる。これらの放射性標識化合物は、例えば、作用部位若しくは作用様式、又は薬理学的に重要な作用部位への結合親和性を特徴づけるすることによって、化合物の有効性を決定又は測定するのを助けるのに有用であり得る。本開示の、ある種の同位体標識化合物、例えば放射性同位体を組み込んだものは、薬剤及び/又は基質の組織分布の研究に有用である。放射性同位体のトリチウム、すなわち3H及び炭素-14、すなわち14Cは、組み込みが簡単であり、検出手段が容易であることを考慮すると、この目的のために特に有用である。
【0264】
重水素、すなわち2Hなどの重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性の結果としてもたらされる特定の治療上の利点、例えばインビボ半減期の増大又は投薬必要量の減少をもたらし得、したがってある種の状況では好ましい。
【0265】
11C、18F、15O及び13Nのような陽電子放出同位体による置換は、基質受容体占有率を調べるための陽電子放出トポグラフィー(PET)研究に有用であり得る。構造(I)の同位体標識化合物は、一般に、当業者に周知の従来手法によって、又は以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、下記の調製及び実施例に記載されるものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0266】
本明細書で開示される同位体標識化合物は、一般に、当業者に周知の従来手法により、又は以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、添付の実施例及びスキームに記載したものと類似の方法により調製することができる。
【0267】
本明細書で開示される化合物のいくつかは、光学異性体及び配座異性体(又はコンフォーマー)を含む、立体異性体(すなわち、原子の空間配置のみが異なる異性体)として存在し得る。本明細書で開示される化合物は、純粋な個々の立体異性体調製物及びそれぞれに富んだ調製物の両方、並びにこのような立体異性体のラセミ混合物の両方、並びに当業者に周知の方法に従って分離され得る個々のジアステレオマー及びエナンチオマーとして、すべての立体異性体を含む。さらに、本明細書で開示される化合物は、化合物の全ての互変異性型を含む。
【0268】
本明細書で開示される化合物のいくつかは、分子の他の部分との立体相互作用の結果として、分子中の単結合周りの回転が妨げられるか、又は非常に遅くされるときに生じる、立体配座立体異性体であるアトロプ異性体として存在し得る。本明細書で開示される化合物は、純粋な個々のアトロプ異性体調製物及びそれぞれに富んだ調製物の両者として、又はそれぞれの非特定的混合物として、すべてのアトロプ異性体を含む。単結合の周りの回転障壁が十分に高く、立体配座間の相互変換が十分に遅い場合には、異性体種の分離及び単離が可能であり得る。異性体種の分離及び単離は、周知であり且つ受け入れられている記号「M」又は「P」によって適切に示される。
【0269】
別の実施形態では、これらの化合物は、本出願の化合物を生成させるプロセスで中間体として使用することができる。
【0270】
別の実施形態では、これらの化合物は、薬学的に許容される塩の形態とすることができ、薬学的に許容される賦形剤を有する医薬製剤の形態とすることができる。
【0271】
また、本明細書に提供されるのは、本明細書で開示される化合物と、例えば、希釈剤又は担体などの薬学的に許容される賦形剤とをともに含む医薬組成物である。本発明での使用に適した化合物及び医薬組成物は、化合物がその意図された目的を達成するのに有効な量で投与することができるものを含む。化合物の投与は、以下でより詳細に記載される。
【0272】
別の実施形態では、これらの化合物は、本出願の化合物を生成させるプロセスで中間体として使用することができる。
【0273】
別の実施形態では、これらの化合物は、薬学的に許容される塩の形態とすることができ、薬学的に許容される賦形剤を有する医薬剤形とすることができる。
【0274】
また、本明細書に提供されるのは、本明細書で開示される化合物と、例えば、希釈剤又は担体などの薬学的に許容される賦形剤とをともに含む医薬組成物である。本発明での使用に適した化合物及び医薬組成物は、化合物がその意図された目的を達成するのに有効な量で投与することができるものを含む。化合物の投与は、以下でより詳細に記載される。
【0275】
当業者は、投与経路及び所望の用量に応じて、適切な医薬剤形を決定することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,1435-712(18th ed.,Mack Publishing Co,Easton,Pennsylvania,1990)を参照されたい。剤形は、投与された薬剤の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、及びインビボ消失速度に影響を及ぼし得る。投与経路に依存して、適切な用量は、体重、体表面積又は器官サイズに従って計算され得る。適切な治療用量を決定するのに必要な計算のさらなる改良は、特に本明細書で開示される用量情報及び分析、並びに動物又はヒトの臨床試験を通して得られる薬物動態学的データに照らして、過度の実験なしに当業者によってルーチンとしてなされる。
【0276】
「薬学的に許容される」又は「薬理学的に許容される」という語句は、動物又はヒトに投与される場合に、有害な、アレルギー性の、又は他の不都合な反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。本明細書では、「薬学的に許容される」は、任意の、且つ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質用のそのような賦形剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が治療組成物と不適合でなければ、治療組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性成分もまた、組成物に組み込むことができる。例示的な実施形態では、製剤は、固形コーンシロップ、高オレインベニバナ油、ココナッツ油、大豆油、L-ロイシン、リン酸三カルシウム、L-チロシン、L-プロリン、酢酸L-リジン、DATEM(乳化剤)、L-グルタミン、L-バリン、リン酸二カリウム、L-イソロイシン、L-アルギニン、L-アラニン、グリシン、L-アスパラギン一水和物、L-セリン、クエン酸カリウム、L-トレオニン、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、L-ヒスチジン、L-メチオニン、アスコルビン酸、炭酸カルシウム、L-グルタミン酸、L-シスチン二塩酸塩、L-トリプトファン、L-アスパラギン酸、塩化コリン、タウリン、m-イノシトール、硫酸第一鉄、パルミチン酸アスコルビル、硫酸亜鉛、L-カルニチン、アルファ-トコフェリルアセテート、塩化ナトリウム、ナイアシンアミド、トコフェロール混合物、パントテン酸カルシウム、硫酸銅、塩化チアミン塩酸塩、ビタミンAパルミテート、硫酸マンガン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、β-カロテン、ヨウ化カリウム、フィロキノンビオチン、セレン酸ナトリウム、塩化クロム、モリブデン酸ナトリウム、ビタミンD3及びシアノコバラミンを含み得る。
【0277】
化合物は、薬学的に許容される塩として医薬組成物中に存在することができる。本明細書では、「薬学的に許容される塩」は、例えば、塩基付加塩及び酸付加塩を含む。
【0278】
薬学的に許容される塩基付加塩は、アルカリ及びアルカリ土類金属又は有機アミンなどの金属又はアミンを用いて生成し得る。化合物の薬学的に許容される塩は、また、薬学的に許容されるカチオンを用いて調製し得る。適切な薬学的に許容されるカチオンは当業者に周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム及び第四級アンモニウムカチオンを含む。炭酸塩又は炭酸水素塩も可能である。カチオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウム、カルシウム、又は第二鉄などである。適切なアミンの例としては、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、塩化プロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、及びプロカインが挙げられる。
【0279】
薬学的に許容される酸付加塩には、無機又は有機酸塩が含まれる。適切な酸塩の例には、塩酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、リン酸塩が含まれる。薬学的に許容される、他の適切な塩は当業者に周知であり、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、若しくはマンデル酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸又はリン酸;有機カルボン酸、スルホン酸、スルホ酸若しくはホスホ酸又はN-置換スルファミン酸、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸又はイソニコチン酸を有するもの;及び、天然のタンパク質の合成に関与する20種のアルファアミノ酸、例えば、グルタミン酸又はアスパラギン酸などのアミノ酸を有するもの、そしてまた、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン1,2-ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン2-スルホン酸、ナフタレン1,5-ジスルホン酸、2-又は3-ホスホグリセリン酸、グルコース6-リン酸、N-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成を伴う)を有するもの、又はアスコルビン酸などの他の酸性有機化合物を有するものを含む。
【0280】
本明細書で開示される化合物を含有する医薬組成物は、従来法で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉末化、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。適切な剤形は、選択する投与経路に依存する。
【0281】
経口投与用では、適切な組成物は、本明細書で開示される化合物を、当技術分野で周知の担体などの薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることによって、容易に剤形化することができる。そうした賦形剤及び担体は、治療される患者による経口摂取のために、本発明の化合物を、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして剤形化することを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、本明細書で開示される化合物に固体賦形剤を加え、得られた混合物を任意選択により粉砕し、必要に応じて適切な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理し、錠剤又は糖衣錠のコアを得ることで得られる。適切な賦形剤には、例えば、フィラー及びセルロース調製物が含まれる。必要に応じて、崩壊剤を添加することができる。薬学的に許容される成分は、種々のタイプの製剤が周知であり、例えば、バインダー(例えば、天然又は合成ポリマー)、潤滑剤、界面活性剤、甘味料及び香味料、コーティング材料、保存料、染料、増粘剤、アジュバント、抗菌剤、抗酸化剤及び種々の製剤タイプのための担体であり得る。
【0282】
本明細書で開示される化合物の治療有効量が経口投与される場合、組成物は、通常、固体(例えば、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、又はトローチ)又は液体製剤(例えば、水性懸濁液、溶液、エリキシル、又はシロップ)の形態である。
【0283】
錠剤形態で投与される場合、組成物は、ゼラチン又はアジュバントなどの機能性固体及び/又は固体担体をさらに含有することができる。錠剤、カプセル、及び粉末は、約1~約95%の化合物、好ましくは約15~約90%の化合物を含有することができる。
【0284】
液体又は懸濁液の形態で投与する場合、水、石油、又は動物若しくは植物起源の油などの、機能性液体及び/又は液体担体を加えることができる。組成物の液体形態は、生理食塩水、糖アルコール溶液、デキストロース又は他の糖溶液、又はグリコールをさらに含有することができる。液体又は懸濁液の形態で投与する場合、組成物は、約0.5~約90重量%の本明細書で開示される化合物、好ましくは約1~約50%の本明細書で開示される化合物を含有することができる。考えられる一実施形態では、液体担体は非水性又は実質的に非水性である。液体形態での投与では、組成物は、投与の直前に溶解又は懸濁させるために、迅速に溶解する固体製剤として供給し得る。
【0285】
本明細書で開示される化合物の治療有効量が、静脈内、皮膚、又は皮下注射によって投与される場合、組成物は発熱物質を含まない、非経口的に許容される水溶液の形態である。pH、等張性、安定性などを十分に考慮して、そのような非経口的に許容される溶液を調製することは、当業者の範囲内である。静脈内、皮膚、又は皮下注射用として好ましい組成物は、通常、本明細書で開示される化合物に加えて、等張性ビヒクルを含有する。そのような組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合された水中の、遊離塩基又は薬理学的に許容される塩の溶液として投与するように調製され得る。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物、並びに油中で調製することができる。貯蔵及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために、任意選択的に保存料を含有することができる。
【0286】
注射用組成物は、無菌注射溶液、懸濁液、又は分散液の即時調製のための無菌水溶液、懸濁液、又は分散液、及び無菌粉末を含むことができる。全ての実施形態で、この形態は、無菌でなければならず、そして注射針通過性が容易な程度に流動性がなければならない。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、任意選的に保存料を含めることによって、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に抵抗しなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、並びに植物油を含有する溶媒又は分散媒体とすることができる。考えられる一実施形態では、担体は非水性又は実質的に非水性である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散体の実施形態では化合物の必要とされる粒径の維持及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの実施形態で、等張化剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中で使用することによりもたらすことができる。
【0287】
無菌注射溶液は、必要な量の活性な化合物を、必要であれば上で列挙した種々の他の成分と共に適当な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散体は、上で列挙した基剤となる分散媒体及び必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに、滅菌された種々の活性成分を組み込むことによって調製される。無菌注射溶液を調製するための無菌粉末の実施形態では、好ましい調製方法は、活性成分及び任意の追加の所望成分の粉末を、予め滅菌濾過されたそれらの溶液から得られる、真空乾燥及びフリーズドライの手法である。
【0288】
放出が遅い、すなわち徐放性の製剤もまた、消化管内で体液と接触して活性化合物の制御放出を達成し、活性化合物の実質的に一定且つ有効な血漿中濃度を提供するために調製され得る。例えば、放出は、溶解、拡散、及びイオン交換のうちの1つ以上によって制御することができる。さらに、徐放アプローチは、GI管内の可飽和又は制限経路を介して吸収を増強し得る。例えば、化合物はこの目的のために、生分解性ポリマー、水溶性ポリマー、又は両混合物のマトリックス、及び任意選択選択的に適切な界面活性剤の中に埋め込まれ得る。埋め込みは、この文脈では、微粒子をポリマーマトリックス中へ組み込むことを意味する。制御放出製剤はまた、周知の分散又は乳化コーティング技術による、分散微粒子又は乳化微小液滴のカプセル化によっても得られる。
【0289】
吸入による投与では、本発明の化合物は、適切な噴射剤を使用して、加圧容器又はネブライザーからエアロゾルスプレーの提供形態で便利に送達される。加圧エアロゾルの実施形態では、用量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。吸入器又は注入器で使用するための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物と、ラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有させて製剤化することができる。
【0290】
本明細書で開示される化合物は、注射(例えば、ボーラス注射又は連続注入)による非経口投与のために製剤化することができる。注射製剤は、保存料を添加した単位用量形態(例えば、アンプル又は多数回投与容器)で提供することができる。組成物は、懸濁液、溶液、又は油性又は水性ビヒクル中のエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有することができる。
【0291】
非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態化合物の水溶液を含む。さらに、化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、脂肪油又は合成脂肪酸エステルが含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有することができる。任意選択的に、懸濁液もまた、化合物の溶解度を増加させ、高度に濃縮された溶液の調製を可能にする、適切な安定剤又は薬剤を含有することができる。或いは、本組成物は、使用前に適切なビヒクル(例えば、無菌の発熱物質を含まない水)で構成するために、粉末形態とすることができる。
【0292】
本明細書で開示される化合物はまた、坐薬又は保持浣腸剤(例えば、従来の座薬基剤を含む)などの直腸組成物に製剤化させることもできる。先に記載した製剤に加えて、化合物はデポ製剤として製剤化することもできる。そのような長期作用性製剤は埋め込み(例えば、皮下又は筋肉内)によって、又は筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)、又はイオン交換樹脂とともに、或いは難溶性誘導体として、例えば、難溶性の塩として製剤化することができる。
【0293】
特に、本明細書で開示される化合物は、デンプン又はラクトースなどの賦形剤を含有する錠剤の形態で、又はカプセル若しくはオビュールの形態で、単独で、又は賦形剤との混合物で、又は香味剤又は着色剤を含有するエリキシル剤又は懸濁液の形態で、経口、口腔内、又は舌下に投与することができる。そのような液体調製物は、懸濁剤などの薬学的に許容される添加剤とともに調製することができる。化合物はまた、非経口的に、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、又は冠動脈内に注射することができる。非経口投与では、溶液を血液と等張にするために、化合物は他の物質、例えば、塩、又はマンニトールなどの糖アルコール、又はグルコースを含むことができる無菌水溶液の形態で最もよく使用される。
【0294】
獣医学的使用では、本明細書で開示される化合物は、通常の獣医学的実践に従って、適切に許容される製剤として投与される。獣医は、特定の動物に最も適切な投与計画及び投与経路を容易に決定することができる。
【0295】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される化合物を単独で使用するか、又は別の薬剤若しくはこのような疾患の治療のために伝統的に使用されるインターベンションと組み合わせて使用する、KRAS関連障害の治療に必要なすべての成分はキットにパッケージ化され得る。具体的には、本発明は、本明細書で開示される化合物、並びに前記薬剤を送達可能な形態に調製するための緩衝剤及び他の成分、並びに/又はそのような薬剤を送達するためのデバイス、及び/又は本明細書で開示される化合物との併用療法で使用される任意の薬剤、及び/又は薬剤とともにパッケージされた疾患治療の説明書を含むパッケージ化された薬剤セットを含む、疾患用インターベンションで使用するキットを提供する。説明書は、印刷された紙、又はコンピュータ可読磁気若しくは光学媒体などの任意の有形媒体に固定されていてよく、或いは、説明書はインターネットによりアクセス可能なワールドワイドウェブページなどのリモートコンピュータのデータソースを参照するものでもよい。
【0296】
「治療有効量」とは、治療される対象の現在の症状を治療するか、又は進行を抑えるか、或いは軽減するのに有効な量を意味する。有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、「治療有効量」は、所望の効果の達成をもたらす化合物の量を指す。例えば、好ましい一実施形態では、本明細書で開示される化合物の治療有効量は、対照と比較して、KRAS活性を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%減少させる。
【0297】
投与される化合物の量は、治療される対象、対象の年齢、健康状態、性別及び体重、併用治療の種類(もしあれば)、苦痛の重症度、所望する効果の性質、治療の方法及び頻度、並びに処方医師の判断に依存し得る。投与の頻度もまた、動脈酸素圧に対する薬力学的効果に依存し得る。しかしながら、最も好ましい用量は、当業者によって理解され、決定されるように、過度の実験なしに、個々の被験者に合わせて決定することができる。これは、通常、標準用量の調節(例えば、患者体重が軽い場合の用量の減少)を含む。
【0298】
個々の必要性は変化するが、化合物の有効量の最適範囲の決定は、当業者の範囲内である。本明細書で同定される状態及び障害の治癒的又は予防的治療におけるヒトへの投与では、例えば、本発明の化合物の典型的な用量は、約0.05mg/kg/日~約50mg/kg/日、例えば、少なくとも0.05mg/kg、少なくとも0.08mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.2mg/kg、少なくとも0.3mg/kg、少なくとも0.4mg/kg、又は少なくとも0.5mg/kg、そして好ましくは50mg/kg以下、40mg/kg以下、30mg/kg以下、20mg/kg以下、又は10mg/kg以下とすることができ、これは、例えば、約2.5mg/日(0.5mg/kg×5kg)~約5000mg/日(50mg/kg×100kg)であり得る。例えば、化合物の用量は、約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日、約0.05mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.05mg/kg/日~約5mg/kg/日、約0.05mg/kg/日~約3mg/kg/日、約0.07mg/kg/日~約3mg/kg/日、約0.09mg/kg/日~約3mg/kg/日、約0.05mg/kg/日~約0.1mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約1mg/kg/日、約1mg/kg/日~約10mg/kg/日、約1mg/kg/日~約5mg/kg/日、約1mg/kg/日~約3mg/kg/日、約1mg/日~約1000mg/日、約20mg/日~約750mg/日、約3mg/日~約500mg/日、約5mg/日~約250mg/日、約10mg/日~約100mg/日、約3mg/日~約10mg/日、又は約100mg/日~約250mg/日とすることができる。そのような用量は、単回用量で投与され得るか、又は複数回用量に分割され得る。
【0299】
<KRASG12C阻害剤の使用方法>
本開示は、細胞と、本明細書で開示される1種以上の化合物の有効量とを接触させることを含む、RAS媒介細胞シグナル伝達を阻害する方法を提供する。RAS媒介シグナル伝達の阻害は、当技術分野で周知の広範な種々の方法によって評価及び実証することができる。非限定的な例としては、(a)RASのGTPアーゼ活性の減少;(b)GTP結合親和性の減少又はGDP結合親和性の増加;(c)GTPのK offの増加又はGDPのK offの減少;(d)pMEK、pERK、又はpAKTレベルの減少などの、RAS経路の下流のシグナル伝達分子のレベルの減少;及び/又は(e)Rafを含むがこれに限定されない下流のシグナル伝達分子へのRAS複合体の結合の減少を示すことが挙げられる。上記の1つ以上を決定するために、キット及び市販のアッセイを利用することができる。
【0300】
本開示はまた、G12C KRAS、HRAS又はNRAS変異に関連する状態(例えば、がん)を含むが、これらに限定されない疾患状態を治療するために、本開示の化合物又は医薬組成物を使用する方法を提供する。
【0301】
いくつかの実施形態では、がんの治療のための方法が提供され、その方法は、本明細書で開示される化合物を含む前述の医薬組成物のいずれかの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、がんはKRAS、HRAS又はNRASのG12C変異によって媒介される。種々の実施形態では、がんは膵臓がん、結腸直腸がん又は肺がんである。いくつかの実施形態では、がんは胆嚢がん、甲状腺がん、及び胆管がんである。
【0302】
いくつかの実施形態では、本開示は治療を必要とする対象の障害を治療する方法であって、対象がKRAS、HRAS又はNRASのG12C変異を有するかどうかを決定し、そして対象がKRAS、HRAS又はNRASのG12C変異を有すると決定されれば、本明細書で開示される少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩の治療有効量を、対象に投与することを含む方法を提供する。
【0303】
開示された化合物は足場非依存性細胞増殖を阻害し、したがって腫瘍の転移を阻害する可能性を有する。したがって、別の実施形態では、本開示は腫瘍転移を阻害するための方法を提供し、その方法は本明細書で開示される化合物の有効量を投与することを含む。
【0304】
KRAS、HRAS又はNRASのG12C変異はまた、血液学的悪性腫瘍(例えば、血液、骨髄及び/又はリンパ節に影響を及ぼすがん)で同定されている。したがって、特定の実施形態は、血液学的悪性腫瘍の治療を必要とする患者への、開示された化合物(例えば、医薬組成物の形態で)の投与に関する。このような悪性腫瘍には白血病及びリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。例えば、本開示の化合物は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性単球性白血病(AMoL)及び/又は他の白血病などの疾患の治療に使用することができる。別の実施形態では、化合物はリンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫のすべてのサブタイプの治療に有用である。様々な実施形態では、化合物は、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症などの形質細胞悪性腫瘍の治療に有用である。
【0305】
腫瘍又はがんがG12C KRAS、HRAS又はNRAS変異を含むかどうかの決定は、KRAS、HRAS又はNRASタンパク質をコードするヌクレオチド配列を評価することによって、KRAS、HRAS又はNRASタンパク質のアミノ酸配列を評価することによって、又は推定KRAS、HRAS又はNRAS変異体タンパク質の特性を評価することによって行うことができる。野生型ヒトKRAS、HRAS又はNRASの配列は当該技術分野で周知である(例えば、アクセッション番号NP203524)。
【0306】
KRAS、HRAS又はNRASヌクレオチド配列の変異を検出する方法は、当業者に周知である。これらの方法には、ポリメラーゼ連鎖反応-制限酵素断片長多型(PCR-RFLP)アッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応-一本鎖立体配座多型(PCR-SSCP)アッセイ、リアルタイムPCRアッセイ、PCRシーケンシング、変異対立遺伝子特異的PCR増幅(MASA)アッセイ、直接配列決定、プライマー伸長反応、電気泳動、オリゴヌクレオチド連結アッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイ、TaqManアッセイ、SNPジェノタイピングアッセイ、高分解能融解アッセイ及びマイクロアレイ分析が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、試料は、リアルタイムPCRによって、G12C KRAS、HRAS又はNRASの変異が評価される。リアルタイムPCRでは、KRAS、HRAS又はNRASのG12C変異に特異的な蛍光プローブが使用される。変異が存在すると、プローブは結合し、蛍光が検出される。いくつかの実施形態では、KRAS、HRAS又はNRASのG12C変異は、KRAS、HRAS又はNRAS遺伝子中の特定の領域(例えば、エクソン2及び/又はエクソン3)の直接シーケンシング法を用いて同定される。この手法は、配列決定された領域の全ての可能な変異を同定する。
【0307】
KRAS、HRAS又はNRASタンパク質の変異を検出する方法は、当業者に周知である。これらの方法は、変異体タンパク質に特異的な結合剤(例えば、抗体)、タンパク質の電気泳動及びウェスタンブロット、並びにペプチドの直接シーケンシングを使用する、KRAS、HRAS又はNRAS変異体の検出を含むが、これらに限定されない。
【0308】
腫瘍又はがんがG12C KRAS、HRAS又はNRAS変異を含むかどうかを決定する方法には、様々な試料を使用することができる。いくつかの実施形態では、試料は腫瘍又はがんを有する対象から採取される。いくつかの実施形態では、試料は新鮮な腫瘍/がん試料である。いくつかの実施形態では、試料は冷凍された腫瘍/がん試料である。いくつかの実施形態では、試料はホルマリン固定パラフィン包埋試料である。いくつかの実施形態では、試料は循環腫瘍細胞(CTC)試料である。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物へと処理される。いくつかの実施形態では、試料は、DNA又はRNAへと処理される。
【0309】
本開示はまた、哺乳動物の過剰増殖性障害の治療方法であって、本明細書で開示される化合物、又はその薬学的に許容される塩の治療有効量を、前記哺乳動物に投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態では、前記方法は、急性骨髄性白血病、青年期のがん、小児副腎皮質がん、AIDS関連がん(例えば、リンパ腫とカポジ肉腫)、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、非定型奇形、胚芽腫、胚細胞腫瘍、原発性リンパ腫、子宮頸がん、小児がん、脊索腫、心臓腫瘍、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、肝外非浸潤性乳管がん(DCIS)、胚芽腫、CNSがん、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼がん、骨の線維性組織球腫、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、有毛細胞白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、腎臓がん、喉頭がん、口唇及び口腔がん、肝臓がん、上皮内小葉がん(LCIS)、肺がん、リンパ腫、再発した原発不明の転移性頸部扁平上皮がん、正中線がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、多発性骨髄腫、メルケル細胞がん、悪性中皮腫、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、口腔がん、口唇及び口腔がん、中咽頭がん、卵巣がん、膵臓がん、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん、胃(胃の)がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、T細胞リンパ腫、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、腎盂及び尿管の移行上皮がん、絨毛性腫瘍、小児の異常がん、尿道がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、又はウイルス誘発がんなどのがんに罹患した対象の治療に関する。いくつかの実施形態では、前記方法は、皮膚の良性過形成(例えば、乾癬)、再狭窄、又は前立腺(例えば、良性前立腺肥大(BPH))などの非がん性過剰増殖性障害の治療に関する。
【0310】
いくつかの実施形態では、治療の方法は肺がんの治療に関し、この方法は上記化合物(又はそれを含む医薬組成物)のいずれかの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施形態では、肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)、例えば、腺がん、扁平上皮肺がん又は大細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、肺がんは小細胞肺がんである。開示された化合物で治療可能な他の肺がんには、腺がん、カルチノイド腫瘍、及び未分化がん腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0311】
本開示はさらに、G12C変異体KRAS、HRAS又はNRASタンパク質活性を調節する方法であって、このタンパク質を本開示の化合物の有効量と接触させる方法を提供する。調節は、タンパク質の活性を阻害又は活性化することであり得る。いくつかの実施形態では、本開示は、G12C変異体KRAS、HRAS又はNRASタンパク質を、本開示の化合物の有効量と溶液中で接触させることにより、タンパク質活性を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、G12C変異体KRAS、HRAS、又はNRASタンパク質の活性を阻害する方法であって、目的のタンパク質を発現する細胞、組織、又は器官を接触させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の化合物の有効量を対象に投与することによって、げっ歯類及び哺乳動物(例えば、ヒト)を含む(これらに限定されない)対象内のタンパク質の活性を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、調節のパーセンテージは25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%を超える。いくつかの実施形態では、阻害のパーセンテージは25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%を超える。
【0312】
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞中のKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を、前記細胞と、前記細胞中のKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を阻害するのに十分な量の本開示の化合物とを接触させることによって阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、組織内のKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を、前記組織と、前記組織中におけるKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を阻害するのに十分な量の本開示の化合物とを接触させることによって阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、生物内部のKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を、前記生物と、前記生物内部におけるKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を阻害するのに十分な量の本開示の化合物とを接触させることによって阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、動物内部のKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を、前記動物と、前記動物内部におけるKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を阻害するのに十分な量の本開示の化合物とを接触させることによって阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、哺乳動物内部のKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を、前記哺乳動物と、前記哺乳動物内部におけるKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を阻害するのに十分な量の本開示の化合物とを接触させることによって阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ヒト内部でのKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を、前記ヒトと、前記ヒト内部におけるKRAS、HRAS又はNRASのG12C活性を阻害するのに十分な量の本開示の化合物と接触させることによって阻害する方法を提供する。本開示は、KRAS、HRAS又はNRASのG12C活性により媒介された疾患の治療方法であって、そのような治療を必要とする対象を治療する方法を提供する。
【0313】
<併用療法>
本開示はまた、他の経路を調節する、若しくは同じ経路の他の成分を調節することが知られている薬剤、又は重複する標的酵素のセットも、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用される併用治療の方法を提供する。1つの態様では、このような治療は、相乗的又は相加的な治療効果を提供するために、本開示の1つ以上の化合物と、化学療法薬、治療抗体、及び放射線治療との併用を含むが、これらに限定されない。
【0314】
現在、多くの化学療法薬が当技術分野で周知であり、本開示の化合物と併用することができる。本開示の化合物又は医薬組成物は、少なくとも1種以上の化学療法薬と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、化学療法薬は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、インターカレート抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答調節物質、抗ホルモン、血管新生阻害剤、及び抗アンドロゲンからなる群から選択される。非限定的な例は、化学療法薬、細胞毒性剤、及びGleevec(登録商標)(イマチニブメシレート)、Kyprolis(登録商標)(カルフィルゾミブ)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、Casodex(ビカルタミド)、Iressa(登録商標)(ゲフィチニブ)、Venclexta(商標)(ベネトクラクス)及びAdriamycin(商標)(ドキソルビシン)などの非ペプチド小分子、並びに化学療法薬のホストである。化学療法薬の非限定的な例には、チオテパ及びシクロホスファミド(Cytoxan(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチルオロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロシクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソ尿素;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(アンスラマイシン)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、Casodex(商標)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトロフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナル;フロリン酸などの葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル;レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が含まれる。
【0315】
適切な化学療法細胞コンディショナーとして、例えば、タモキシフェン(Nolvadex(商標))、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston))を含む抗エストロゲン;フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;カンプトテシン-11(CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)などの、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害する抗ホルモン剤も含まれる。
【0316】
所望であれば、本開示の化合物又は医薬組成物は、Herceptin(登録商標)、Avastin(登録商標)、Erbitux(登録商標)、Rituxan(登録商標)、Taxol(登録商標)、Arimidex(登録商標)、Taxotere(登録商標)、ABVD、AVICINE、アバゴボマブ、アクリジンカルボキサミド、アデカツムマブ、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、アルファラジン、アルボシジブ、3-アミノピリジン-2-カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン、アモナフィド、アントラセンジオン、抗-CD22免疫毒素、抗腫瘍薬、抗腫瘍形成性ハーブ、アパジコン、アチプリモド、アザチオプリン、ベンダムスチン、BIBW2992、ビリコダール、ブロスタリシン、ブリオスタチン、ブチオニンスルホキシミン、CBV(化学療法)、カリクリン、細胞周期非特異的抗腫瘍剤、ジクロロ酢酸、ジスコデルモリド、エルサミトルシン、エノシタビン、エポチロン、エリブリン、エベロリムス、エクサテカン、エクシスリンド、フェルギノール、フォロデシン、ホスフェストロール、ICE化学療法レジメン、IT-101、イメキソン、イミキモド、インドロカルバゾール、イロフルベン、ラニキダール、ラロタキセル、ルルトテカン、マホスファミド、ミトゾロミド、ナホキシジン、ネダプラチン、オラパリブ、オルタキセル、PAC-1、ポーポー、ピキサントロン、プロテアソーム阻害剤、レベカマイシン、レシキモド、ルビテカン、SN-38、サリノスポラミドA、サパシタビン、スタンフォードV、スワインソニン、タラポルフィン、タリキダール、テガフール-ウラシル、テモダール、テセタキセル、四硝酸トリプラチン、トリス(2-クロロエチル)アミン、トロキサシタビン、ウラムスチン、バジメザン、ビンフルニン、ZD6126、又はゾスキダルなどの一般に処方されている抗がん剤と併用することができる。
【0317】
本開示はさらに、哺乳動物の異常な細胞増殖を阻害するために、又は過剰増殖障害を治療するために、本明細書で提供される化合物又は医薬組成物と放射線療法とを併用する方法に関する。放射線療法を施すための手法は、当技術分野で周知であり、それらの手法は、本明細書に記載の併用療法で使用することができる。この併用療法における本開示の化合物の投与は、本明細書に記載のようにして決定することができる。
【0318】
放射線療法は、外部ビーム療法、内部放射線療法、組織内照射、定位放射線手術、全身放射線療法、放射線療法、及び永続的又は一時的な組織内小線源療法を含む、いくつかの方法のうちの1つ、又はこれらの方法の組合せによって施すことができるが、これらに限定されない。本明細書では、「小線源療法」という用語は、腫瘍又は他の増殖性組織疾患部位の、又はその付近の身体に挿入された、空間的に限られた放射性物質によって送達される放射線療法を指す。この用語は放射性同位体(例えば、At-211、I-131、I-125、Y-90、Re-186、Re-188、Sm-153、Bi-212、P-32、及びLu放射性同位体)への曝露を含むことが意図されるが、これらに限定されない。本開示の細胞コンディショナーとして使用する適切な放射線源には、固体及び液体の両方が含まれる。非限定的な例として、放射線源は、固体源としてのI-125、I-131、Yb-169、Ir-192、固体源としてのI-125、又は光子、ベータ粒子、ガンマ線、又は他の治療用光線を放出する他の放射性核種などの放射性核種とすることができる。放射性物質はまた、放射性核種の任意の溶液、例えば、I-125又はI-131の溶液から生成する流体とすることができ、又は放射性流体は、Au-198、Y-90などの固体放射性核種の微小粒子を含む適切な流体のスラリーを使用して生成することができる。さらに、放射性核種は、ゲル又は放射性微小球の形態で具体化することができる。
【0319】
本開示の化合物又は医薬組成物は、化学療法薬、抗血管新生薬、シグナル伝達阻害剤、抗増殖薬、解糖阻害剤、又はオートファジー阻害剤から選択される1種以上の、ある量の物質の量と併用することができる。
【0320】
MMP-2(マトリックス-メタロプロテイナーゼ2)阻害剤、MMP-9(マトリックス-メタロプロテイナーゼ9)阻害剤、及びCOX-11(シクロオキシゲナーゼ11)阻害剤などの抗血管新生薬は、本開示の化合物及び本明細書に記載の医薬組成物と併用することができる。抗血管新生薬には、例えば、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、ソラフェニブ、スニチニブ、及びベバシズマブが含まれる。有用なCOX-II阻害剤の例には、アレコキシブ、バルデコキシブ、及びロフェコキシブが含まれる。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤の例は、国際公開第96/33172号パンフレット、国際公開第96/27583号パンフレット、欧州特許出願公開第0818442号明細書、欧州特許出願公開第1004578号明細書、国際公開第98/07697号パンフレット、国際公開第98/03516号パンフレット、国際公開第98/34918号パンフレット、国際公開第98/34915号パンフレット、国際公開第98/33768号パンフレット、国際公開第98/30566号パンフレット、欧州特許出願公開第0606046号明細書、欧州特許出願公開第0931788号明細書、国際公開第90/05719号パンフレット、国際公開第99/52910号パンフレット、国際公開第99/52889号パンフレット、国際公開第99/29667号パンフレット、国際公開第1999/007675号パンフレット、欧州特許出願公開第1786785号明細書、欧州特許出願公開第1181017号明細書、米国特許出願公開第2009/0012085号明細書、米国特許第5863949号明細書、米国特許第5861510号明細書、及び欧州特許出願公開第0780386号明細書に記載されており、これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。好ましいMMP-2及びMMP-9阻害剤は、MMP-1を阻害する活性をほとんど又は全く有さないものである。より好ましくは、他のマトリックスメタロプロテイナーゼ(すなわち、MAP-1、MMP-3、MMP-4、MMP-5、MMP-6、MMP7、MMP8、MMP-10、MMP-11、MMP-12、及びMMP-13)と比較してMMP-2及び/又はAMP-9を選択的に阻害するものである。本開示で有用なMMP阻害剤のいくつかの特定の例は、AG-3340、RO32-3555、及びRS13-0830である。
【0321】
また、本化合物は、エースマンナン、アクラルビシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミホスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレライド、アナストロゾール、ANCER、アンセスチム、ARGLABIN、三酸化ヒ素、BAM002(Novelos)、ベキサロテン、ビカルタミド、ブロクスウリジン、カペシタビン、セルモロイキン、セトロレリクス、クラドリビン、クロトリマゾール、シタラビンオクホスファート、DA3030(Dong-A)、ダシリツマブ、デニロイキンジフチトクス、デスロレリン、デクスラゾキサン、ジラゼプ、ドセタキセル、ドコサノール、ドキセルカルシフェロール、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ブロモクリプチン、カルムスチン、シタラビン、フルオロウラシル、HITジクロフェナク、インターフェロンアルファ、ダウノルビシン、ドキソルビシン、トレチノイン、エデルフォシン、エドレコロマブ、エフロールニチン、エミテフール、エピルビシン、エポエチンベータ、リン酸エトポシド、エキセメスタン、エクシスリンド、ファドロゾール、フィルグラスチム、フィナステリド、リン酸フルダラビン、フォルメスタン、フォテムスチン、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ギメラシル/オテラシル/テガフール配合剤、グリコピン(glycopine)、ゴセレリン、ヘプタプラチン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎児性アルファ-フェトプロテイン、イバンドロン酸、イダルビシン、(イミキモド、インターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ、天然型、インターフェロンアルファ-2、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-N1、インターフェロンアルファ-n3、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンアルファ、天然型、インターフェロンベータ、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、インターフェロンガンマ、天然型インターフェロンガンマ-1a、インターフェロンガンマ-1b、インターロイキン-1ベータ、イオベングアン、イリノテカン、イルソグラジン、ランレオチド、LC9018(Yakult)、レフルノミド、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レトロゾール、白血球アルファインターフェロン、リュープロレリン、レバミソール+フルオロウラシル、リアロゾール、ロバプラチン、ロニダミン、ロバスタチン、マソプロコル、メラルソプロール、メトクロプラミド、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトキサントロン、モルグラモスチム、ナファレリン、ナロキソン+ペンタゾシン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ニルタミド、ノスカピン、新規赤血球産生刺激タンパク質製剤、NSC631570オクトレオチド、オプレルベキン、オサテロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペグアスパラガーゼ、ペグインターフェロンアルファ-2b、ポリ硫酸ペントサンナトリウム、ペントスタチン、ピシバニル、ピラルビシン、ウサギの抗胸腺細胞ポリクローナル抗体、ポリエチレングリコールインターフェロンアルファ-2a、ポルフィマーナトリウム、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラスブリエンボディメント(rasburiembodiment)、エチドロン酸レニウムRe186、RIIレチンアミド、リツキシマブ、ロムルチド、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、サルグラモスチム、シゾフィラン、ソブゾキサン、ソネルミン、塩化ストロンチウム89、スラミン、タソネルミン、タザロテン、テガフール、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、サリドマイド、チマルファシン、チロトロピンアルファ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ-ヨウ素131、トラスツズマブ、トレオサルファン、トレチノイン、トリロスタン、トリメトレキセート、トリプトレリン、腫瘍壊死因子アルファ、天然型、ウベニメクス、膀胱がんワクチン、丸山ワクチン、メラノーマ溶解液ワクチン、バルルビシン、ベルテポルフィン、ビノレルビン、VIRULIZIN、ジノスタチンスチマラマー、又はゾレドロン酸;アバレリクス;AE941(Aeterna)、アンバムスチン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、bcl-2(Genta)、APC8015(Dendreon)、セツキシマブ、デシタビン、デクスアミノグルテチミド、ジアジクオン、EL532(Elan)、EM800(Endorecherche)、エニルウラシル、エタニダゾール、フェンレチニド、フィルグラスチムSD01(Amgen)、フルベストラント、ガロシタビン、ガストリン17免疫抗原、HLA-B7遺伝子治療薬(Vical)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒスタミン二塩酸塩、イブリツモマブチウキセタン、イロマスタット、IM862(Cytran)、インターロイキン2、イプロキシフェン、LDI200(Milkhaus)、レリジスチム、リンツズマブ、CA125MAb(Biomira)、cancer MAb(Japan Pharmaceutical Development)、HER-2及びFcMAb(Medarex)、イディオタイプ105AD7 MAb(CRC Technology)、イディオタイプCEA MAb(Trilex)、LYM-1-iodine 131 MAb(Techniclone)、多型性上皮ムチン-イットリウム90 MAb(Antisoma)、マリマスタット、メノガリル、ミツモマブ、モテキサフィンガドリニウム、MX6(Galderma)、ネララビン、ノラトレキセド、P30タンパク質、ペグビソマント、ペメトレキセド、ポルフィロマイシン、プリノマスタット、RL0903(Shire)、ルビテカン、サトラプラチン、フェニル酢酸ナトリウム、スパルホス酸、SRL172(SRPharma)、SU5416(SUGEN)、TA077(Tanabe)、テトラチオモリブデート、タリブラスチン、トロンボポエチン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、がんワクチン(Biomira)、メラノーマワクチン(New York University)、メラノーマワクチン(Sloan Kettering Institute)、メラノーマ腫瘍縮退性ワクチン(New York Medical College)、ウイルス性メラノーマ細胞溶解物ワクチン(Royal Newcastle Hospital)、又はバルスポダールなどの、他の抗腫瘍薬との併用療法で使用してもよい。
【0322】
本発明の化合物は、VEGFR阻害剤と共にさらに使用し得る。併用療法では、以下の特許及び特許出願に記載されている他の化合物を使用することができる: 米国特許第6,258,812号明細書、米国特許出願公開第2003/0105091号明細書、国際公開第01/37820号パンフレット、米国特許第6,235,764号明細書、国際公開第01/32651号パンフレット、米国特許第6,630,500号明細書、米国特許第6,515,004号明細書、米国特許第6,713,485号明細書、米国特許第5,521,184号明細書、米国特許第5,770,599号明細書、米国特許第5,747,498号明細書、国際公開第02/68406号パンフレット、国際公開第02/66470号パンフレット、国際公開第02/55501号パンフレット、国際公開第04/05279号パンフレット、国際公開第04/07481号パンフレット、国際公開第04/07458号パンフレット、国際公開第04/09784号パンフレット、国際公開第02/59110号パンフレット、国際公開第99/45009号パンフレット、国際公開第00/59509号パンフレット、国際公開第99/61422号パンフレット、米国特許第5,990,141号明細書、国際公開第00/12089号パンフレット、及び国際公開第00/02871号パンフレット。
【0323】
いくつかの実施形態では、併用薬は少なくとも1種の抗血管新生薬と組み合わせた本発明の組成物を含む。薬剤はインビトロで合成により調製された化学組成物、抗体、抗原結合領域、放射性核種、並びにこれらの組み合わせ及び結合体を含むが、これらに限定されない。薬剤はアゴニスト、アンタゴニスト、アロステリック調節剤、毒素であり得、又はより一般的には、それは、その標的を阻害又は刺激し(例えば、受容体又は酵素の活性化又は抑止)、それによって細胞死を促進又は細胞増殖を阻むように作用し得る。
【0324】
集合的に、抗体は免疫グロブリンとして知られる血漿タンパク質のファミリーを形成し、免疫グロブリンドメインを含む。(Janeway et al.,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,4th ed.,Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,1999。本明細書では、「抗体」という用語は、重鎖及び軽鎖を含み、且つ可変領域及び定常領域を含む、従来の免疫グロブリン形式を有するタンパク質を指す。例えば、抗体は、ポリペプチド鎖の、2つの同一対の「Y形」構造であるIgGであり、各対は、1つの「軽」鎖(典型的には約25kDaの分子量を有する)及び1つの「重」鎖(典型的には約50~70kDaの分子量を有する)を有し得る。抗体は、可変領域及び定常領域を有する。IgG形式では、可変領域のアミノ酸は一般に約100~110以上であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、主に抗原認識に関与し、異なる抗原に結合する他の抗体の中では相当に変化する。定常領域は、抗体が免疫系の細胞及び分子を動員することを可能にする。可変領域は、軽鎖及び重鎖それぞれのN末端領域から、定常領域は重鎖及び軽鎖のそれぞれのC末端部分から作製される。(Janeway et al.,「Structure of the Antibody Molecule and the Immunoglobulin Genes」,Immunobiology: The Immune System in Health and Disease,4th ed.Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,(1999))。
【0325】
抗体CDRの一般的な構造及び特性は、当技術分野で記述されてきた。簡潔には、CDRは、抗体足場で重鎖及び軽鎖可変領域のフレームワーク内に埋め込まれ、抗原との結合及び抗原の認識に大きく関与する領域を構成する。可変領域は、通常、フレームワーク領域内(指定されたフレームワーク領域1-4、FR1、FR2、FR3及びFR4、Kabat et al.,1991による;Chothia and Lesk,1987、前掲も参照されたい)に少なくとも3つの重鎖又は軽鎖CDRを含む(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883も参照されたい)。
【0326】
抗体は、当技術分野で周知の任意の定常領域を含むことができる。ヒト軽鎖は、カッパ及びラムダ軽鎖に分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ又はイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプを、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして定義する。IgGは、いくつかのサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を有するが、これらに限定されない。IgMは、IgM1及びIgM2を含むサブクラスを有するが、これらに限定されない。本開示の実施形態は、抗体のそのようなクラス又はアイソタイプの全てを含む。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型又はラムダ型軽鎖定常領域、例えば、ヒトカッパ型又はラムダ型軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域は、例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、又はミュー型重鎖定常領域、例えば、ヒトアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、又はミュー型重鎖定常領域であり得る。したがって、例示的な実施形態では、抗体はIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つを含む、アイソタイプIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMの抗体である。
【0327】
抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、哺乳動物、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒトなどによって産生される天然抗体に実質的に類似する配列を含む。この点で、抗体は、哺乳動物抗体、例えば、マウス抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ハムスター抗体、ヒト抗体などと考えることができる。特定の態様では、抗体はヒト抗体である。特定の態様では、抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。「キメラ抗体」という用語は、2つ以上の異なる抗体由来のドメインを含む抗体を指す。キメラ抗体は、例えば、1つの種由来の定常ドメインを含み得、そして第2の種由来の可変ドメインを含むことができるが、より一般的には、少なくとも2つの種由来のアミノ酸配列のストレッチを含むことができる。キメラ抗体はまた、同じ種内の2つ以上の異なる抗体のドメインを含むことができる。「ヒト化」という用語は、抗体に関して使用される場合、元の供給源抗体よりも真のヒト抗体により類似した構造及び免疫機能を有するように操作された、非ヒト供給源由来の少なくともCDR領域を有する抗体を指す。例えば、ヒト化は、マウス抗体などの非ヒト抗体からヒト抗体へのCDRの移植を含むことができる。ヒト化はまた、非ヒト配列をヒト配列により類似させるために、選択アミノ酸置換を含むことができる。
【0328】
抗体は、例えば、パパイン及びペプシンなどの酵素によって、フラグメントに切断することができる。パパインは抗体を切断し、2つのFabフラグメント及び単一のFcフラグメントを産生する。ペプシンは、抗体を切断し、F(ab’)2フラグメント及びpFc’フラグメントを産生する。本明細書では、「抗原結合抗体フラグメント」という用語は、抗体の、抗原に結合することができる抗体分子の部分を指し、「抗原結合性フラグメント」又は「抗原結合性部分」としても知られている。例示的な例では、抗原結合抗体フラグメントは、Fabフラグメント又はF(ab’)2フラグメントである。
【0329】
抗体の構造は、広い範囲の代替的フォーマットを作り出すために利用されてきており、その代替的フォーマットは、少なくとも約12~150kDaの分子量範囲にわたり、単量体(n=1)から二量体(n=2)まで、三量体(n=3)まで、四量体(n=4)まで、及び潜在的により高い結合価(n)範囲を有し、このような代替的フォーマットは、本明細書では「抗体タンパク質生成物」と呼ばれる。抗体タンパク質生成物には、完全な抗体構造に基づくもの、及び完全な抗原結合能を保持する抗体フラグメントを模倣するもの、例えば、scFv、Fab及びVHH/VH(以下に考察する)が含まれる。完全な抗原結合部位を保持する最小の抗原結合抗体フラグメントは、専ら可変(V)領域からなるFvフラグメントである。可溶性の柔軟なアミノ酸ペプチドリンカーは、分子を安定化させるために、V領域をscFv(一本鎖フラグメント可変)フラグメントに結合されるか、又は定常(C)ドメインは、V領域に付加されてFabフラグメント[フラグメント、抗原結合]が生成される。scFvフラグメント及びFabフラグメントの両者は、宿主細胞、例えば、原核生物宿主細胞中で容易に産生することができる。別の抗体タンパク質生成物には、ジスルフィド結合安定化scFv(ds-scFv)、一本鎖Fab(scFab)、並びにオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる異なるフォーマットを含む、ダイア、トリア及びテトラボディ、又はミニボディ(ミニAb)のような二量体及び多量体抗体フォーマットが含まれる。最小のフラグメントは、ラクダ類重鎖Ab及び単一ドメインAb(sdAb)のVHH/VHである。新規な抗体形式を作製するために最も頻繁に使用される構築ブロックは、約15アミノ酸残基のペプチドリンカーによって連結された重鎖及び軽鎖(VH及びVLドメイン)由来のVドメインを含む、一本鎖可変(V)-ドメイン抗体フラグメント(scFv)である。ペプチボディ又はペプチド-Fc融合体は、さらに別の抗体タンパク質生成物である。ペプチボディの構造は、Fcドメイン上に移植された生物学的に活性なペプチドからなる。ペプチボディは、当該技術分野において十分に記述されている。例えば、Shimamoto et al.,mAbs 4(5):586-591(2012)を参照されたい。
【0330】
他の抗体タンパク質生成物には、一本鎖抗体(SCA);ダイアボディ;トリアボディ;テトラボディ;二重特異性又は三重特異性抗体などが含まれる。二重特異性抗体は、以下の5つの主要なクラスに分けることができる: BsIgG、付加IgG、BsAbフラグメント、二重特異性融合タンパク質及びBsAb複合体。例えば、Spiess et al.,Molecular Immunology 67(2)Part A:97-106(2015)を参照されたい。
【0331】
例示的な抗血管新生薬には、ERBITUX(商標)(IMC-C225)、KDR(キナーゼドメイン受容体)阻害剤(例えば、キナーゼドメイン受容体に特異的に結合する抗体及び抗原結合領域)、AVASTIN(商標)又はVEGF-TRAP(商標)などの抗VEGF薬(例えば、VEGF若しくは可溶性VEGF受容体又はそのリガンド結合領域に特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)、及び抗VEGF受容体薬(例えば、それに特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)、Vectibix(パニツムマブ)、IRESSA(商標)(ゲフィチニブ)、TARCEVA(商標)(エルロチニブ)、抗Ang1及び抗Ang2薬(例えば、それ又はそれらの受容体、例えばTie2/Tekに特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)並びに抗Tie2キナーゼ阻害剤(例えば、それに特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)などのEGFR阻害剤(例えば、それに特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)が含まれる。本発明の医薬組成物はまた、特異的に結合し、増殖因子の活性を阻害する、肝細胞増殖因子(HGF、散乱因子としても知られる)のアンタゴニストなどの1種以上の薬剤(例えば、抗体、抗原結合領域、又は可溶性受容体)、及びその受容体「c-met」に特異的に結合する抗体又は抗原結合領域を含むことができる。
【0332】
他の抗血管新生薬には、Campath、IL-8、B-FGF、Tekアンタゴニスト(Cerettiら、米国特許出願公開第2003/0162712号明細書;米国特許第6,413,932号明細書)、抗TWEAK剤(例えば、特異的に結合する抗体若しくは抗原結合領域;又は可溶性TWEAK受容体アンタゴニスト;Wiley、米国特許第6,727,225号明細書を参照されたい)、インテグリンのそのリガンドへの結合に拮抗するADAMジスインテグリンドメイン(Fanslowら、米国特許出願公開第2002/0042368号明細書)、特異的に結合する抗eph受容体抗体及び/若しくは抗ephrin抗体又は抗原結合領域(米国特許第5,981,245号明細書;同第5,728,813号明細書;同第5,969,110号明細書;同第6,596,852号明細書;同第6,232,447号明細書;同第6,057,124号明細書及びその特許ファミリーのメンバー)、及び抗PDGF-BBアンタゴニスト(例えば、特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)並びにPDGF-BBリガンドに特異的に結合する抗体又は抗原結合領域、及びPDGFRキナーゼ阻害剤(例えば、抗体)それに特異的に結合する抗体又は抗原結合領域)が含まれる。
【0333】
さらなる抗血管新生/抗腫瘍剤には、以下のものが含まれる:SD-7784(Pfizer、USA);シレンジタイド.(Merck KGaA、Germany、欧州特許第770622号明細書);ペガプタニブ八ナトリウム、(Gilead Sciences、USA);アルファスタチン、(BioActa、UK);M-PGA、(Celgene、USA、米国特許第5712291号明細書);イロマスタット、(Arriva、USA、米国特許第5892112号明細書);エマキサニブ、(Pfizer、USA、米国特許第5792783号明細書);バタラニブ、(Novartis、Switzerland);2-メトキシエストラジオール、(EntreMed、USA);TLC ELL-12、(Elan、Ireland);酢酸アネコルタブ、(Alcon、USA);アルファ-D148Mab、(Amgen、USA);CEP-7055、(Cephalon、USA);anti-Vn Mab、(Crucell、Netherlands)DAC:抗血管新生薬、(ConjuChem、Canada);アンギオシジン、(InKine Pharmaceutical、USA);KM-2550、(Kyowa Hakko、Japan);SU-0879、(Pfizer、USA);CGP-79787、(Novartis、Switzerland、欧州特許第970070号明細書);ARGENT technology、(Ariad、USA);YIGSR-Stealth、(Johnson&Johnson、USA);フィブリノーゲン-Eフラグメント、(BioActa、UK);血管新生阻害剤、(Trigen、UK);TBC-1635、(Encysive Pharmaceuticals、USA);SC-236、(Pfizer、USA);ABT-567、(Abbott、USA);メタスタチン、(EntreMed、USA);血管新生阻害剤、(Tripep、Sweden);マスピン、(そーせいグループ株式会社、日本国);2-メトキシエストラジオール、(Oncology Sciences Corporation、USA);ER-68203-00、(IVAX、USA);ベネフィン、(Lane Labs、USA);Tz-93、(株式会社ツムラ、日本国);TAN-1120、(武田薬品工業株式会社、日本国);FR-111142、(藤沢薬品工業株式会社)、日本国、特開平02-233610号公報);血小板第4因子、(RepliGen、USA、欧州特許第407122号明細書);血管内皮増殖因子アンタゴニスト、(Borean、Denmark);ベバシズマブ(pINN)、(Genentech、USA);血管新生阻害剤、(SUGEN、USA);XL 784、(Exelixis、USA);XL 647、(Exelixis、USA);MAb、アルファ5ベータ3インテグリン、第2世代、(Applied Molecular Evolution、USA及びMedImmune、USA);遺伝子療法、網膜症、(Oxford BioMedica、UK);エンザスタウリン塩酸塩(USAN)、(Lilly、USA);CEP 7055、(Cephalon、USA及びSanofi-Synthelabo、France);BC 1、(Genoa Institute of Cancer Research、Italy);血管新生阻害剤、(Alchemia、Australia);VEGFアンタゴニスト、(Regeneron、USA);rBPI 21及びBPI-誘導抗血管新生薬、(XOMA、USA);PI 88、(Progen、Australia);シレンジタイド(pINN)、(Merck KGaA、German;Munich Technical University、Germany、Scripps Clinic及びResearch Foundation、USA);セツキシマブ(INN)、(Aventis、France);AVE 8062、(味の素株式会社、日本国);AS 1404、(Cancer Research Laboratory、New Zealand);SG 292、(Telios、USA);エンドスタチン、(Boston Childrens Hospital、USA);ATN 161、(Attenuon、USA);ANGIOSTATIN、(Boston Childrens Hospital、USA);2-メトキシエストラジオール、(Boston Childrens Hospital、USA);ZD 6474、(AstraZeneca、UK);ZD 6126、(Angiogene Pharmaceuticals、UK);PPI 2458、(Praecis、USA);AZD 9935、(AstraZeneca、UK);AZD 2171、(AstraZeneca、UK);vatalanib(pINN)、(Novartis、Switzerland及びSchering AG、Germany);組織因子経路阻害剤、(EntreMed、USA);ペガプタニブ(Pinn)、(Gilead Sciences、USA);キサントリゾール、(Yonsei University、South Korea);ワクチン、遺伝子ベース、VEGF-2、(Scripps Clinic and Research Foundation、USA);SPV5.2、(Supratek、Canada);SDX 103、(University of California at San Diego、USA);PX 478、(ProlX、USA);METASTATIN、(EntreMed、USA);トロポニンI、(Harvard University、USA);SU 6668、(SUGEN、USA);OXI 4503、(OXiGENE、USA);o-グアニジン、(Dimensional Pharmaceuticals、USA);モツポラミンC、(British Columbia University、Canada);CDP 791、(Celltech Group、UK);アチプリモド(pINN)、(GlaxoSmithKline、UK);E 7820、エーザイ株式会社、日本国);CYC 381、(Harvard University、USA);AE 941、(Aeterna、Canada);ワクチン、血管新生薬、(EntreMed、USA);ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子阻害剤、(Dendreon、USA);オグルファニド(pINN)、(Melmotte、USA);HIF-1アルファ阻害剤、(Xenova、UK);CEP 5214、(Cephalon、USA);BAY RES 2622、(Bayer、Germany);アンジオシジン、(InKine、USA);A6、(Angstrom、USA);KR31372、(Korea Research Institute of Chemical Technology、South Korea);GW 2286、(GlaxoSmithKline、UK);EHT 0101、(ExonHit、France);CP 868596、(Pfizer、USA);CP 564959、(OSI、USA);CP 547632、(Pfizer、USA);786034、(GlaxoSmithKline、UK);KRN 633、(麒麟麦酒株式会社、日本国);薬物送達システム、眼内薬、2-メトキシエストラジオール、(EntreMed、USA);アンジネクス、(Maastricht University、Netherlands、and Minnesota University、USA);ABT 510、(Abbott、USA);AAL 993、(Novartis、Switzerland);VEGI、(ProteomTech、USA);腫瘍壊死因子-アルファ阻害剤、(National Institute on Aging、USA);SU 11248、(Pfizer、USA and SUGEN USA);ABT 518、(Abbott、USA);YH16、(Yantai Rongchang、China);S-3APG、(Boston Childrens Hospital、USA及びEntreMed、USA);MAb、KDR、(ImClone Systems、USA);MAb、アルファ5ベータ1、(Protein Design、USA);KDR キナーゼ阻害剤、(Celltech Group、UK、及びJohnson&Johnson、USA);GFB 116、(South Florida University、USA 及びYale University、USA);CS 706、(三共株式会社、日本国);コンブレタスタチンA4プロドラッグ、(Arizona State University、USA);コンドロイチナーゼAC、(IBEX、Canada);BAY RES 2690、(Bayer、Germany);AGM 1470、(Harvard University、USA、武田薬品工業株式会社、日本国、及びTAP、USA);AG 13925、(Agouron、USA);テトラチオモリブデート、(University of Michigan、USA);GCS 100、(Wayne State University、USA)CV 247、(Ivy Medical、UK);CKD 732、(Chong Kun Dang、South Korea);MAb、血管内皮増殖因子、(Xenova、UK);イルソグランジン(INN)、(日本新薬株式会社、日本国);RG 13577、(Aventis、France);WX 360、(Wilex、Germany);スクアラミン(pINN)、(Genaera、USA);RPI 4610、(Sirna、USA);がん治療、(Marinova、Australia);ヘパラナーゼ阻害剤、(InSight、Israel);KL 3106、(Kolon、South Korea);ホノキオール、(Emory University、USA);ZK CDK、(Schering AG、Germany);ZK Angio、(Schering AG、Germany);ZK 229561、(Novartis、Switzerland、及び Schering AG、Germany);XMP 300、(XOMA、USA);VGA 1102、(大正製薬株式会社、日本国);VEGF受容体調節因子、(Pharmacopeia、USA);VE-カドヘリン-2アンタゴニスト、(ImClone Systems、USA);バソスタチン、(National Institutes of Health、USA);ワクチン、Flk-1、(ImClone Systems、USA);TZ 93、(株式会社ツムラ、日本国);ツムスタチン、(Beth Israel Hospital、USA);切断型可溶性FLT 1(血管内皮増殖因子受容体1)、(Merck&Co、USA);Tie-2リガンド、(Regeneron、USA);及びトロンボスポンジン1阻害剤、(Allegheny Health、Education and Research Foundation、USA)。
【0334】
オートファジー阻害剤にはクロロキン、3-メチルアデニン、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil(商標))、バフィロマイシンA1、5-アミノ-4イミダゾールカルボキサミドリボシド(AICAR)、オカダ酸、2A型又は1型のタンパク質ホスファターゼを阻害するオートファジー抑制藻類毒素、cAMPの類似体、及びアデノシン、LY204002、N6-メルカプトプリンリボシド、及びビンブラスチンなどのcAMPレベルを上昇させる薬剤が含まれるが、これらに限定されない。さらに、ATG5(オートファジーに関与する)(これに限定されない)を含むタンパク質の発現を阻害するアンチセンス又はsiRNAもまた使用し得る。
【0335】
がんの治療に使用でき、且つ本発明の1種以上の化合物と併用できるさらなる薬学的に活性な化合物/薬剤には、エポエチンアルファ、ダルベポエチンアルファ、パニツムマブ、ペグフィルグラスチム、パリフェルミン、フィルグラスチム、デノスマブ、アンセスチム、AMG102、AMG176、AMG386、AMG479、AMG655、AMG745、AMG951、AMG706、又はその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0336】
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は化学療法薬と一緒に投与される。適切な化学療法薬には、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン(例えば、エトポシド及びテニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、及びイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)マイトマイシン、酵素(例えば、L-アスパラギンを全身的に代謝し、それら自体のアスパラギンを合成する能力を有さない細胞を奪うL-アスパラギナーゼ)、抗血小板薬、ナイトロジェンマスタードなどの抗増殖性/抗有糸分裂性アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン並びにクロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、CDK阻害剤(例えば、セリシクリブ、UCN-01、P1446A-05、PD-0332991、ジナシクリブ、P27-00、AT-7519、RGB286638、及びSCH727965)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU)及び類似体、並びにストレプトゾシン)、トラゼン-ダカルバジニン(DTIC)、葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)などの抗増殖性/抗有糸分裂性代謝拮抗剤、ピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル、フロキシウリジン及びシタラビン)プリン類似体及び関連阻害剤(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、2-クロロデオキシアデノシン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)及び白金配位錯体(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例えば、トリコスタチン、酪酸ナトリウム、アピシダン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、ボリノスタット、LBH589、ロミデプシン、ACY-1215、及びパノビノスタット)、mTor阻害剤(例えば、テムシロリムス、エベロリムス、リダフォロリムス、及びシロリムス)、KSP(Eg5)阻害剤(例えば、Array520)、DNA結合剤(例えば、Zalypsis)、PI3Kデルタ阻害剤(例えば、GS-1101及びTGR-1202)、PI3Kデルタ及びガンマ阻害剤(例えば、CAL-130)、マルチキナーゼ阻害剤(例えば、TG02及びソラフェニブ)、ホルモン(例えば、エストロゲン)及びロイチン化ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(例えば、ゴセレリン、ロイプロリド及びトリプトレリン)などのホルモンアゴニスト、BAFF中和抗体(例えば、LY2127399)、IKK阻害剤、p38MAPK阻害剤、抗IL-6(例えば、CNTO328)、テロメラーゼ阻害剤(例えば、GRN163L)、オーロラキナーゼ阻害剤(例えば、MLN8237)、細胞表面モノクローナル抗体(例えば、抗CD38(HUMAX-CD38)、抗CS1(例えば、エロツズマブ)、HSP90阻害剤(例えば、17AAG及びKOS953)、P13K/Akt阻害剤(例えば、ペリフォシン)、Akt阻害剤(例えば、GSK-2141795)、PKC阻害剤(例えば、エンザスタウリン)、FTI(例えば、Zarnestra(商標))、抗CD138(例えば、BT062)、Torc1/2特異的キナーゼ阻害剤(例えば、INK128)、キナーゼ阻害剤(例えば、GS-1101)、ER/UPR標的化剤(例えば、MKC-3946)、cFMS阻害剤(例えば、ARRY-382)、JAK1/2阻害剤(例えば、CYT387)、PARP阻害剤(例えば、オラパリブ及びベリパリブ(ABT-888))、BCL-2アンタゴニストなどの天然生成物が含まれる。他の化学療法薬としては、メクロレタミン、カンプトテシン、イホスファミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、ゲムシタビン、ナベルビン、ソラフェニブ、又は上記の任意の類似体若しくは誘導変異体が含まれ得る。
【0337】
本発明の化合物はまた、放射線療法、ホルモン療法、手術及び免疫療法と組み合わせて使用し得、これらの療法は、当業者に周知である。
【0338】
特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、ステロイドと一緒に投与される。適切なステロイドには21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニソン、クロベタゾール、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラソン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロンアセタート、フルプレドニデンアセテート、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、フルチカゾンプロピオネート、ホルモコルタール、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンフロエート、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノアセテート、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チクソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、及び/又はそれらの塩及び誘導体が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明の化合物はまた、薬学的に活性な、悪心を治療するさらなる薬剤と併用することができる。悪心を治療するために使用できる薬剤の例には、ドロナビノール;グラニセトロン;メトクロプラミド;オンダンセトロン;及びプロクロルペラジン;又はその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0339】
本発明のKRASG12C阻害剤は、国際公開第2011/031842号パンフレットに見出されるものなどの、オーロラキナーゼ阻害剤と併用することができる。具体的な化合物は、AMG900(国際公開第2011/031842号パンフレットの実施例1、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる)である。
【0340】
本発明のKRASG12C阻害剤は、MAPキナーゼ経路阻害剤と併用することができる。阻害され得るMAPキナーゼ経路中のタンパク質、及びKRASG12C阻害剤と併用されるそのようなタンパク質の阻害剤の例としては、BRAF阻害剤、Pan-RAF阻害剤、及びMEK阻害剤が挙げられる。3つの主要なRAFアイソフォームがある:ARAF、BRAF、及びCRAF。pan-RAF阻害剤は、1つより多くのRAFアイソフォームに対して阻害活性を示す。対照的に、BRAF阻害剤は、他のRAFタンパク質よりもBRAFに対してより大きな阻害剤活性(又は選択性)を示す。
【0341】
本発明の化合物はまた、RAS-RAF-ERK又はPI3K-AKT-TORシグナル伝達経路を攪乱又は阻害する、薬学的に活性なさらなる化合物と併用し得る。他のそのような併用では、薬学的に活性なさらなる化合物は、PD-1及びPD-L1アンタゴニストである。本開示の化合物又は医薬組成物はまた、EGFR阻害剤、MEK阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、TOR阻害剤、Mcl-1阻害剤、BCL-2阻害剤、SHP2阻害剤、プロテアソーム阻害剤及び免疫療法剤(例えば、モノクローナル抗体、免疫調節薬イミド(IMiD)、抗PD-1(又は代わりにPD-1阻害剤)、抗PDL-1、抗CTLA4、抗LAG1及び抗OX40剤、GITRアゴニスト、CAR-T細胞及びBiTEを含む)から選択される1つ以上の物質のある量と併用することができる。
【0342】
EGFR阻害剤には、小分子アンタゴニスト、抗体阻害剤、又は特異的アンチセンスヌクレオチド若しくはsiRNAが含まれるが、これらに限定されない。本発明の併用で使用することができるEGFR阻害剤には、アファチニブ(商品名:Gilotrif(登録商標)、Boehringer Ingelheimから市販されている)、エルロチニブ(商品名:Tarceva(登録商標)、Genetech/Astellasから市販されている)、及びラパチニブ(商品名:Tykerb(登録商標)、Novartisから市販されている)が含まれるが、これらに限定されない。KRASG12C阻害剤はまた、本発明でEGFR抗体と併用することができる。本発明の併用で使用することができるEGFR抗体には、セツキシマブ(商品名:Erbitux(登録商標)(Lilly製)が含まれるが、これに限定されない。EGFRの有用な抗体阻害剤には、パニツムマブ(Vectibix)、ザルツムマブ、ニモツズマブ、及びマツズマブが含まれる。
【0343】
小分子EGFR阻害剤の非限定的な例としては、以下の特許公報に記載されている任意のEGFR阻害剤、並びに前記EGFR阻害剤の薬学的に許容される塩及び溶媒和物のすべてが挙げられる:1992年12月30日に公開された欧州特許出願公開第520722号明細書;1993年10月20日に公開された欧州特許出願公開第566226号明細書;1996年10月31日に公開された国際公開第96/33980号パンフレット;1998年5月5日に発行された米国特許第5,747,498号明細書;1996年10月3日に公開された国際公開第96/30347号パンフレット;1997年8月6日に公開された欧州特許出願公開第787772号明細書;1997年8月21日に公開された国際公開第97/30034号パンフレット;1997年8月21日に公開された国際公開第97/30044号パンフレット;1997年10月23日に公開された国際公開第97/38994号パンフレット;1997年12月31日に公開された国際公開第97/49688号パンフレット;1998年4月22日に公開された欧州特許出願公開第837063号明細書;1998年1月22日に公開された国際公開第98/02434号パンフレット;1997年10月23日に公開された国際公開第97/38983号パンフレット;1995年7月27日に公開された国際公開第95/19774号パンフレット;1995年7月27日に公開された国際公開第95/19970号パンフレット;1997年4月17日に公開された国際公開第97/13771号パンフレット;1998年1月22日に公開された国際公開第98/02437号パンフレット;1998年1月22日に公開された国際公開第98/02438号パンフレット;1997年9月12日に公開された国際公開第97/32881号パンフレット;1998年1月29日に公開された独国特許出願公開第19629652号明細書;1998年8月6日に公開された国際公開第98/33798号パンフレット;1997年9月12日に公開された国際公開第97/32880号パンフレット;1997年9月12日に公開された国際公開第97/32880号パンフレット;1995年11月15日に公開された欧州特許出願公開第682027号明細書;1997年1月23日に公開された国際公開第97/02266号パンフレット;1997年7月31日に公開された国際公開第97/27199号パンフレット;1998年2月26日に公開された国際公開第98/07726号パンフレット;1997年9月25日に公開された国際公開第97/34895号パンフレット;1996年10月10日に公開された国際公開第96/31510号パンフレット;1998年4月9日に公開された国際公開第98/14449号パンフレット;1998年4月9日に公開された国際公開第98/14450号パンフレット;1998年4月9日に公開された国際公開第98/14451号パンフレット;1995年4月13日に公開された国際公開第95/09847号パンフレット;1997年5月29日に公開された国際公開第97/19065号パンフレット;1998年4月30日に公開された国際公開第98/17662号パンフレット;1998年8月4日に発行された米国特許第5,789,427号明細書;1997年7月22日に発行された米国特許第5,650,415号明細書;1997年8月12日に発行された米国特許第5,656,643号明細書;1999年7月15日に公開された国際公開第99/35146号パンフレット;1999年7月15日に公開された国際公開第99/35132号パンフレット;1999年2月18日に公開された国際公開第99/07701号パンフレット;及び1992年11月26に公開された国際公開第92/20642号パンフレット。小分子EGFR阻害剤のさらなる非限定的な例には、Traxler,P.,1998,Exp.Opin.Ther.Patents8(12):1599-1625に記載されているEGFR阻害剤の全てが含まれる。
【0344】
抗体ベースのEGFR阻害剤には、その天然リガンドによるEGFR活性化を部分的又は完全に阻止することができる、全ての抗EGFR抗体又は抗体断片が含まれる。抗体ベースのEGFR阻害剤の非限定的な例としては、Modjtahedi,H.,et al.,1993,Br.J.Cancer 67:247-253;Teramoto,T.,et al.,1996,Cancer 77:639-645;Goldstein et al.,1995,Clin.Cancer Res.1:1311-1318;Huang,S.M.,et al.,1999,Cancer Res.15:59(8):1935-40;and Yang,X.,et al.,1999,Cancer Res.59:1236-1243に記載されているものが挙げられる。従って、EGFR阻害剤は、モノクローナル抗体Mab E7.6.3(Yang,1999、前掲)、又はMab C225(ATCCアクセッション番号HB-8508)、又はその結合特異性を有する抗体若しくは抗体フラグメントであり得る。
【0345】
本発明のKRASG12C阻害剤は、国際公開第2002/006213号パンフレットに見出されるものなどの、MEK阻害剤と併用することができる。具体的な化合物は、N-((((2R)-2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ)-3,4-ジフルオロ-2-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミドであり、AMG1009089又は1009089としても知られている(実施例39)。
【0346】
本発明のKRASG12C阻害剤は、国際公開第2008/153,947号パンフレットに見出されるものなどの、BRAF阻害剤と併用することができる。具体的な化合物は、AMG2112819(2112819としても知られている)である(実施例56)。本発明の併用で使用することができる、別の具体的なBRAF阻害剤はダブラフェニブである。本発明の併用で使用することができる別のBRAF阻害剤は、ベムラフェニブである。
【0347】
本発明の併用で、Pan-RAF阻害剤もKRASG12C阻害剤と共に使用することができる。具体的なPan-Raf阻害剤には、RAF265及びMLN-2480が含まれる。
【0348】
本発明のKRASG12C阻害剤は、MEK阻害剤と併用することができる。本発明の併用で使用することができる具体的なMEK阻害剤には、PD-325901、トラメチニブ、ピマセルチブ、MEK162[ビニメチニブとしても知られている]、TAK-733、GDC-0973及びAZD8330が含まれる。本発明の併用で、KRASG12C阻害剤と一緒に使用することができる具体的なMEK阻害剤は、トラメチニブ(商品名:Mekinist(登録商標)、Novartis Pharmaceuticals Corp.から市販されている)。別の具体的なMEK阻害剤は、N-(((2R)-2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ)-3,4-ジフルオロ-2-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミドであり、AMG1009089、1009089又はPD-325901としても知られている。本発明の併用で使用することができる、別の具体的なMEK阻害剤には、コビメチニブが含まれる。
【0349】
MEK阻害剤には、CI-1040、AZD6244、PD318088、PD98059、PD334581、RDEA119、ARRY-142886、及びARRY-438162が含まれるが、これらに限定されない。
【0350】
別の態様では、本発明は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)経路における、タンパク質阻害剤である薬剤の1種以上と併用する、本発明の化合物の使用に関する。PI3K経路におけるタンパク質の例には、PI3K、mTOR及びPKB(Akt又はAKTとしても知られる)が含まれる。PI3Kタンパク質は、αβ、δ又はγを含むいくつかのアイソフォームで存在する。本発明において使用され得るPI3K阻害剤は、1種以上のアイソフォームに対して選択的であり得ることが意図される。選択的とは、化合物が1つ以上のアイソフォームを、他のアイソフォームよりも阻害することを意味する。選択性は当業者に周知の概念であり、よく知られているインビトロ又は細胞ベースの活性アッセイを用いて測定することができる。好ましい選択性には、1種以上のアイソフォームについて、他のアイソフォームよりも2倍より大きい、好ましくは10倍、又はより好ましくは100倍大きい選択性が含まれる。1つの態様にでは、本発明の化合物と併用することができるPI3K阻害剤は、PI3Kα選択的阻害剤である。別の態様では、化合物はPI3Kδ選択的阻害剤である。さらに別の態様では、化合物はPI3Kβ選択的阻害剤である。
【0351】
本発明の1種以上の化合物と併用することができるPI3K阻害剤の例は、以下に開示されているものを含む:国際公開第2010/151791号パンフレット;国際公開第2010/151737号パンフレット;国際公開第2010/151735号パンフレット;国際公開第2010151740号パンフレット;国際公開第2008/118455号パンフレット;国際公開第2008/118454号パンフレット;国際公開第2008/118468号パンフレット;米国特許出願公開第20100331293号明細書;米国特許出願公開第20100331306号明細書;米国特許出願公開第20090023761号明細書;米国特許出願公開第20090030002号明細書;米国特許出願公開第20090137581号明細書;米国特許出願公開第2009/0054405号明細書;米国特許出願公開第2009/0163489号明細書;米国特許出願公開第2010/0273764号明細書;米国特許出願公開第2011/0092504号明細書;又は国際公開第2010/108074号パンフレット。PI3K阻害剤には、国際公開第06/044453号パンフレットに記載があるウォルトマンニン、17-ヒドロキシウォルトマンニン類似体、4-[2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-[[4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル]メチル]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン(GDC 0941としても知られ、国際公開第09/036,082号パンフレット及び国際公開第09/055,730号パンフレットに記載がある)、2-メチル-2-[4-[3-メチル-2-オキソ-8-(キノリン-3-イル)-2,3-ジヒドロイミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]フェニル]プロピオニトリル(BEZ235又はNVP-BEZ235としても知られ、国際公開第06/122806号パンフレットに記載がある)、(S)-1-(4-((2-(2-アミノピリミジン-5-イル)-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)-2-ヒドロキシプロパン-1-オン(国際公開第2008/070740号パンフレットに記載がある)、LY294002(2-(4-モルホリニル)-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-4-オン、Axon Medchemから入手可能)、PI103塩酸塩(3-[4-(4-モルホリニルピリド-[3’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル]フェノールヒドロクロリド、Axon Medchemから入手可能)、PIK 75(N’-[(1E)-(6-ブロモイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)メチレン]-N,2-ジメチル-5-ニトロベンゼンスルホノ-ヒドラジドハイドロクロリド、Axon Medchemから入手可能)、PIK90(N-(7,8-ジメトキシ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[1,2-c]キナゾリン-5-イル)-ニコチンアミド、Axon Medchemから入手可能)、GDC-0941ビスメシレート(2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-(4-メタンスルホニル-ピペラジン-1-イルメチル)-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジンビスメシレート、Axon Medchemから入手可能)、AS-252424(5-[1-[5-(4-フルオロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-フラン-2-イル]-メト-(Z)-イリデン]-チアゾリジン-2,4-ジオン、Axon Medchemから入手可能)、並びにTGX-221(7-メチル-2-(4-モルホリニル)-9-[1-(フェニルアミノ)エチル]-4H-ピリド-[1,2-a]ピリミジン-4-オン、Axon Medchemから入手可能)、XL-765及びXL-147が含まれるが、これらに限定されない。他のPI3K阻害剤には、デメトキシビリジン、ペリフォシン、CAL101、PX-866、BEZ235、SF1126、INK1117、IPI-145、BKM120、XL147、XL765、Palomid529、GSK1059615、ZSTK474、PWT33597、IC87114、TG100-115、CAL263、PI-103、GNE-477、CUDC-907及びAEZS-136が含まれる。
【0352】
本発明の化合物と併用するのに好ましいPI3K阻害剤には、以下のものが含まれる:
ブパルリシブとしても知られている、Novartis Pharmaceuticalsの治験用小分子である:
【0353】
【0354】
【0355】
以下の式IIaの化合物、又はその薬学的に許容される塩も好ましい:
【0356】
【化27】
式中、X
1はフッ素又は水素であり、Y
1は水素又はメチルであり、Z
1は水素又はメチルである。本発明の併用で使用することができる、具体的なPI3K阻害剤は、AMG511(AMG2539965又は2539965としても知られている)であり、これは、国際公開第2010/126895号パンフレットの実施例148である。
【0357】
本発明の併用で、KRASG12C阻害剤と併用することができる、他のPI3K阻害剤には、BKM120及びGDC-0941などのPan-PI3K阻害剤;BYL719などのPI3Kα選択的阻害剤;及びGSK-2636771などのPI3Kβ選択的阻害剤が含まれる。
【0358】
PI3K及びmTORの両方を阻害する(二重阻害剤)化合物が知られている。さらに別の態様では、本発明は、KRASG12C阻害剤と併用するためのPI3K及びmTOR二重阻害剤の使用を提供する。具体的な二重阻害剤の例は、GDC-0980である。
【0359】
KRASG12C阻害剤はまた、本発明でSHP2阻害剤と併用することができる。本発明の併用で使用することができるSHP2阻害剤には、SHP099、及びCA、Redwood CityのRevolutions Medicines社のRMC-4550又はRMC-4630が含まれるが、これらに限定されない。
【0360】
mTORは、PI3K経路のタンパク質である。本発明の別の態様では、KRASG12C阻害剤とmTOR阻害剤を併用する。本発明の化合物と併用することができるmTOR阻害剤には、以下の文献に開示されているものが含まれる:国際公開第2010/132598号パンフレット及び国際公開第2010/096314号パンフレット。本発明の併用で、KRASG12C阻害剤と併用することができるmTOR阻害剤には、AZD2014及びMLN0128が含まれる。
【0361】
TOR阻害剤には、AP-23573、CCI-779、エベロリムス、RAD-001、ラパマイシン、テムシロリムス、ATP競合TORC1/TORC2阻害剤(PI-103、PP242、PP30及びTorin1を含む)が含まれるが、これらに限定されない。他のTOR阻害剤には、FKBP12エンハンサー;ラパマイシン及びその誘導体(以下を含む:CCI-779(テムシロリムス)、RAD001(エベロリムス);国際公開第9409010)及びAP23573;例えば、国際公開第98/02441号パンフレット及び国際公開第01/14387号パンフレットに開示されているラパログ、例えば、AP23573、AP23464、又はAP23841;40-(2-ヒドロキシエチル)ラパマイシン、40-[3-ヒドロキシ(ヒドロキシメチル)メチルプロパノエート]-ラパマイシン(CC1779とも呼ばれる)、40-エピ-(テトラゾリル)-ラパマイシン(ABT578とも呼ばれる)、32-デオキソラパマイシン、16-ペンチニルオキシ-32(S)-ジヒドロラパマイシン、及び国際公開第05005434号パンフレットに開示されている他の誘導体);米国特許第5,258,389号明細書、国際公開第94/090101号パンフレット、国際公開第92/05179号パンフレット、米国特許第5,118,677号明細書、米国特許第5,118,678号明細書、米国特許第5,100,883号明細書、米国特許第5,151,413号明細書、米国特許第5,120,842号明細書、国際公開第93/111130号パンフレット、国際公開第94/02136号パンフレット、国際公開第94/02485号パンフレット、国際公開第95/14023号パンフレット、国際公開第94/02136号パンフレット、国際公開第95/16691号パンフレット、国際公開第96/41807号パンフレット、国際公開第96/41807号パンフレット及び米国特許第5,256,790号明細書に開示されている誘導体;リン含有ラパマイシン誘導体(例えば、国際公開第05016252号パンフレット);4H-1-ベンゾピラン-4-オン誘導体(例えば米国仮特許出願第60/528,340号明細書)が含まれる。
【0362】
PKB(AKT)もまた、PI3K経路のタンパク質である。本発明の別の態様では、AKT阻害剤をKRASG12C阻害剤と併用する。本発明の化合物と併用することができるAKT阻害剤には、以下の文献に開示されているものが含まれる:米国特許第7,354,944号明細書、米国特許第7,700,636号明細書、米国特許第7,919,514号明細書、米国特許第7,514,566号明細書、米国特許出願公開第2009/0270445A1号明細書、米国特許第7,919,504号明細書、米国特許第7,897,619号明細書、又は国際公開第2010/083246A1号パンフレット。本発明の併用でKRASG12C阻害剤と併用することができる、具体的なAKT阻害剤には、MK-2206、GDC-0068及びAZD5363が含まれる。
【0363】
AKT阻害剤には、Akt-1-1(Akt1を阻害する)(Barnett et al.(2005)Biochem.J.,385(Pt.2),399-408);Akt-1-1,2(Ak1及び2を阻害する)(Barnett et al.(2005)Biochem.J.385(Pt.2),399-408);API-59CJ-Ome(e.g.,Jin et al.(2004)Br.J.Cancer91,1808-12);1-H-イミダゾ[4,5-c]ピリジニル化合物(例えば、国際公開第05011700号パンフレット);インドール-3-カルビノール及びその誘導体(例えば、米国特許第6,656,963号明細書;Sarkar and Li(2004)J Nutr.134(12 Suppl),3493S-3498S);ペリフォシン(例えば、Aktの膜局在化を妨げる;Dasmahapatra et al.(2004)Clin.Cancer Res.10(15),5242-52,2004);ホスファチジルイノシトールエーテル脂質類似体(例えば、Gills and Dennis(2004)Expert.Opin.Investig.Drugs13,787-97);及びトリシリビン(TCN若しくはAPI-2又はNCI識別番号:NSC154020;Yang et al.(2004)Cancer Res.64:4394-9が含まれるが、これに限定されない。
【0364】
MCl-1阻害剤には、AMG-176、MIK665、及びS63845が含まれるが、これらに限定されない。骨髄性細胞白血病-1(MCL-1)タンパク質は、B細胞リンパ腫-2(BCL-2)タンパク質ファミリーの重要な抗アポトーシスメンバーの1つである。MCL-1の過剰発現は、伝統的な化学療法だけでなく、ABT-263などのBCL-2阻害剤を含む標的治療に対する、腫瘍の進行並びに耐性に密接に関連してきた。
【0365】
プロテアソーム阻害剤には、Kyprolis(登録商標)(カルフィルゾミブ)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、及びオプロゾミブが含まれるが、これらに限定されない。
【0366】
免疫療法には、抗PD-1薬、抗PDL-1薬、抗CTLA-4薬、抗LAG1薬、及び抗OX40薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0367】
モノクローナル抗体には、Darzalex(登録商標)(ダラツムマブ)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、Lucentis(登録商標)(ラニビズマブ)、及びEylea(登録商標)(アフリベルセプト)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0368】
免疫調節剤(IMiD)は、イミド基を含有する免疫調節薬(免疫応答を調節する薬剤)の一クラスである。IMiDクラスには、サリドミド及びその類似体(レナリドミド、ポマリドミド、及びアプレミラスト)が含まれる。
【0369】
抗体を含むがこれに限定されない抗PD-1阻害剤には、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))及びニボルマブ(Opdivo(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。例示的な抗PD-1抗体及びそれらの使用方法は、Goldberg et al.,Blood 110(1):186-192(2007)、Thompson et al.,Clin.Cancer Res.13(6):1757-1761(2007)及びKorman et al.,国際出願第PCT/JP2006/309606号明細書(国際公開第2006/121168 A1号パンフレット)に記載されており、これらのそれぞれは、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。含まれるもの:Yervoy(商標)(イピリムマブ)又はトレメリムマブ(CTLA-4に)、ガリキシマブ(B7.1に)、BMS-936558(PD-1に)、MK-3475(PD-1に)、AMP224(B7DCに)、BMS-936559(B7-H1に)、MPDL3280A(B7-H1に)、MEDI-570(ICOSに)、AMG557(B7H2に)、MGA271(B7H3に)、IMP321(LAG-3に)、BMS-663513(CD137に)、PF-05082566(CD137に)、CDX-1127(CD27に)、anti-OX40(Providence Health Services)、huMAbOX40L(OX40Lに)、アタシセプト(TACIに)、CP-870893(CD40に)、ルカツムマブ(CD40に)、ダセツズマブ(CD40に)、ムロモナブ-CD3(CD3に)、イピリムマブ(CTLA-4に)。免疫療法はまた、遺伝子操作されたT細胞(例えば、CAR-T細胞)及び二重特異性抗体(例えば、BiTE)を含む。
【0370】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、AMG404などの抗PD-1抗体と併用される。特定の実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合抗体フラグメント)は、配列番号1~6(順に、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3を表す)の1、2、3、4、5、又は6個全てのCDRアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合抗体フラグメント)は、配列番号1~6のCDRアミノ酸配列の6個全てを含む。他の実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合抗体フラグメント)は(a)配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列、或いは、1つ若しくは2つのアミノ酸のみが異なるか、又は、少なくとも、若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、或いは(b)配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列、或いは、1つ若しくは2つのアミノ酸のみが異なるか、又は、少なくとも、若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列を含む。例示的な実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合抗体フラグメント)は、配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。他の実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合抗体フラグメント)は(a)配列番号9の重鎖アミノ酸配列、或いは、1つ若しくは2つのアミノ酸のみが異なるか、又は、少なくとも、若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列、或いは(b)配列番号10の軽鎖アミノ酸配列、或いは、1つ若しくは2つのアミノ酸のみが異なるか、又は、少なくとも、若しくは約70%の配列同一性を有するその変異体配列を含む。例示的な実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合抗体フラグメント)は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列、及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0371】
本開示は、抗PD-1抗体(又はその抗原結合部分)をコードする核酸配列をさらに提供する。例示的な態様では、抗体は、配列番号11~16(順に、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3を表す)の核酸によってコードされる1、2、3、4、5、又は6個全てのCDRを含む。別の例示的な態様では、抗体は、配列番号11~16の核酸によってコードされる6つのCDR全てを含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合部分)は、(a)配列番号17によってコードされた重鎖可変領域、或いは、1、2、3、4、5若しくは6つの核酸のみが異なるか、又は、少なくとも、若しくは約70%、85%、90%若しくは95%の配列同一性を有するその変異体配列、或いは(b)配列番号18によってコードされた軽鎖可変領域、或いは、1、2、3、4、5若しくは6つの核酸のみが異なるか、又は、少なくとも、若しくは約70%、85%、90%、若しくは95%の配列同一性を有するその変異体配列を含む。例示的な実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合部分)は、配列番号17によってコードされた重鎖可変領域、及び配列番号18によってコードされた軽鎖可変領域を含む。別の実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合部分)は、(a)配列番号19によってコードされた重鎖、或いは、1、2、3、4、5若しくは6つの核酸のみが異なるか、又は、少なくとも、若しくは約70%、85%、90%若しくは95%の配列同一性を有するその変異体配列、或いは(b)配列番号20によってコードされた軽鎖、或いは、1、2、3、4、5若しくは6つの核酸のみが異なるか、又は、少なくとも、若しくは約70%、85%、90%、若しくは95%の配列同一性を有するその変異体配列を含む。例示的な実施形態では、抗PD-1抗体(又はその抗原結合部分)は、配列番号19によってコードされた重鎖、及び配列番号20によってコードされた軽鎖を含む。CRISPR技術を用いて、マウスT-26結腸直腸株(ATCC)からCT-26 KRAS p.G12C細胞を作製し、KRAS p.G12Dの両方の対立遺伝子を、配列番号21によりコードされた、p.G12C(ThermoFisher Scientific)で置換した。
【0372】
【0373】
GITRアゴニストには、米国特許第6,111,090box.c号明細書、欧州特許第090505B1号明細書、米国特許第8,586,023号明細書、国際公開第2010/003118号パンフレット及び同第2011/090754号パンフレットに記載があるGITR融合タンパク質、又は、例えば、米国特許第7,025,962号明細書、欧州特許第1947183B1号明細書、米国特許第7,812,135号明細書、米国特許第8,388,967号明細書、米国特許第8,591,886号明細書、欧州特許第1866339号明細書、国際公開第2011/028683号パンフレット、国際公開第2013/039954号パンフレット、国際公開第2005/007190号パンフレット、国際公開第2007/133822号パンフレット、国際公開第2005/055808号パンフレット、国際公開第99/40196号パンフレット、国際公開第2001/03720号パンフレット、国際公開第99/20758号パンフレット、国際公開第2006/083289号パンフレット、国際公開第2005/115451号パンフレット、米国特許第7,618,632号明細書、及び国際公開第2011/051726号パンフレットに記載がある抗GITR抗体などの、GITR融合タンパク質及び抗GITR抗体(例えば、二価抗GITR抗体)が含まれるが、これらに限定されない。
【0374】
本発明で、KRASG12C阻害剤はまた、CDK4及び/又は6阻害剤と併用することができる。本発明の併用で使用することができる、CDK4及び/又は6阻害剤は、以下の文献で開示されたものを含むが、これらに限定されない:国際公開第2009/085185、又は米国特許出願公開第2011/0097305号明細書。
【0375】
本発明の併用で、KRASG12C阻害剤と併用することができる他の化合物には、内因性アポトーシス経路の、一部のタンパク質を阻害する化合物が含まれる。そのような化合物の例には、ナビトクラクスなどのBcl2/BclxL阻害剤及びABT-199などのBcl2阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0376】
本発明の併用で、KRASG12C阻害剤と併用することができる他の化合物には、限定されないが、ダサチニブなどのBCR-ABL阻害剤、及びパノビノスタットなどのHDAC阻害剤が含まれる。
【0377】
本発明の併用で、KRASG12C阻害剤と併用することができる他の化合物には、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンなどの白金;トポイソメラーゼII阻害剤、典型的には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン塩酸塩、ミオセット及びエトポシドなどのアントラサイクリンクラスのもの;イリノテカン(CPT-11)などのトポイソメラーゼI阻害剤;テモゾロミドなどのDNAアルキル化剤;並びにシタラビン及びデシタビンなどのヌクレオシド類似体が含まれる。
【0378】
本発明の併用で、KRASG12C阻害剤と併用することができる他の化合物には、チロシンキナーゼ阻害剤を含む受容体及び非受容体キナーゼ阻害剤が含まれる。そのような化合物の例には、イマチニブ、ダサチニブ、ポナチニブ、ボスチニブ、ニロチニブ、キザルチニブ、ミドスタウリン、エルロチニブ及びラパチニブが含まれる。
【0379】
本明細書に記載の化合物は、治療される状態に依存して、本明細書で開示した薬剤又は他の適切な薬剤と併用することができる。従って、いくつかの実施形態では、本開示の1種以上の化合物は、上記の他の薬剤と同時投与されよう。併用療法で使用される場合、本明細書に記載の化合物は、第2の薬剤と同時に又は別々に投与される。この併用投与は、同じ投薬形態の2つの薬剤の同時投与、別々の投薬形態の同時投与、及び別々の投与を含むことができる。すなわち、本明細書に記載の化合物及び上記の薬剤のいずれもは、同じ投薬形態で一緒に剤形化し、同時に投与することができる。或いは本開示の化合物及び上記の薬剤のいずれもは、同時に投与することができ、ここで、両薬剤は別々の剤形中に存在する。別の代替法では、本開示の化合物は、上記薬剤のいずれかの直前に投与するか、又はその逆とすることができる。別々に投与するプロトコルのいくつかの実施形態では、本開示の化合物及び上記の薬剤のいずれかを、数分間離して、又は数時間離して、又は数日間離して投与する。
【0380】
本発明の1つの態様は、別々に投与され得る薬学的に活性な化合物の組み合わせによる、疾患/状態の治療を意図しているので、本発明はさらに、別々の薬学的組成物をキット形態に組み合わせることに関する。キットは、2つの別々の医薬組成物:本発明の化合物、及び第2の医薬化合物を含む。キットは、分割されたボトル又は分割された箔パケットなどの、別々の組成物を収容する容器を含む。容器のさらなる例には、注射器、箱、及びバッグが含まれる。いくつかの実施形態では、キットは別々の成分の使用に関する説明書を含む。キット形態は、好ましくは別々の成分が異なる投薬形態(例えば、経口及び非経口)で投与される場合、異なる投薬間隔で投与される場合、又は、処方する医療専門家が組み合わせの個々の成分の用量設定を望む場合に特に有利である。
【0381】
<AMG510の合成>
【0382】
本発明のKRASG12C阻害剤には、国際公開第2018/119183号パンフレットに開示されているものが含まれる。
【0383】
【化28】
の構造を有するAMG510の合成は、2018年5月21日に出願された米国特許出願第15/984,855号明細書に記載があり、これは、2017年5月22日に出願された米国仮特許出願第62/509,629号明細書の優先権及び利益を主張するものであり、以下のとおりである。
【0384】
6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(4-メチル-2-(2-プロパニル)-3-ピリジニル)-4-((2S)-2-メチル-4-(2-プロペノイル)-1-ピペラジニル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オンを、最終生成物を分離してM-アトロプ異性体を単離する以下のプロセスを用いて調製した。
【0385】
【0386】
<工程1:2,6-ジクロロ-5-フルオロニコチンアミド(中間体S)>ジクロロメタン(48mL)中の2,6-ジクロロ-5-フルオロ-ニコチン酸(4.0g、19.1mmol、AstaTech Inc、Bristol、PA)の混合物に、塩化オキサリル(DCM中の2M溶液、11.9mL、23.8mmol)、続いて触媒量のDMF(0.05mL)を加えた。反応物を室温で終夜撹拌し、その後、濃縮した。残渣を1,4-ジオキサン(48mL)に溶解し、0℃に冷却した。水酸化アンモニウム溶液(28.0~30%NH3ベース、3.6mL、28.6mmol)を、注射器からゆっくりと加えた。得られた混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで濃縮した。EtOAc/ヘプタンの1:1混合物で残渣を希釈し、5分間撹拌し、その後、濾過した。濾過した固体は廃棄し、残りの母液を半分の体積まで部分的に濃縮し、濾過した。濾過した固体をヘプタンで洗浄し、減圧オーブン(45℃)中で終夜乾燥させて、2,6-ジクロロ-5-フルオロニコチンアミドを得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ ppm 8.23(d,J=7.9Hz,1H)8.09(br s,1H)7.93(br s,1H).m/z(ESI,+ve イオン):210.9(M+H).
【0387】
<工程2:2,6-ジクロロ-5-フルオロ-N-((2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)ニコチンアミド>THF(20mL)中の2,6-ジクロロ-5-フルオロニコチンアミド(中間体S、5.0g、23.9mmol)の氷冷スラリーに、塩化オキサリル(DCM中の2M溶液、14.4mL、28.8mmol)を注射器によりゆっくりと加えた。得られた混合物を75℃で1時間加熱し、その後、加熱を停止し、反応物を半分の体積にまで濃縮した。0℃に冷却した後、THF(20mL)を加え、その後、2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-アミン(中間体R、3.59g、23.92mmol)のTHF(10mL)溶液を、カニューレにより滴下した。得られた混合物を0℃で1時間撹拌し、その後、塩水と塩化アンモニウム飽和水溶液の1:1混合物で反応を停止させた。混合物をEtOAc(3×)で抽出し、一緒にした有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮して、2,6-ジクロロ-5-フルオロ-N-((2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)ニコチンアミドを得た。この物質は、さらに精製することなく次の工程で使用した。m/z(ESI、+ve イオン):385.1(M+H)+.
【0388】
<工程3:7-クロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン>2,6-ジクロロ-5-フルオロ-N-((2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)ニコチンアミド(9.2g、24.0mmol)の氷冷THF(40mL)溶液に、KHMDS(1MのTHF溶液、50.2mL、50.2mmol)を注射器からゆっくりと加えた。氷浴を除去し、得られた混合物を室温で40分間撹拌した。反応物を塩化アンモニウム飽和水溶液で停止させ、EtOAcで抽出した(3×)。一緒にした有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:0~50%の3:1のEtOAc-EtOH/ヘプタン)により精製して、7-クロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンを得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ ppm 12.27(br s,1H),8.48-8.55(m,2H),7.29(d,J=4.8Hz,1H),2.87(五重項,J=6.6Hz,1H),1.99-2.06(m,3H),1.09(d,J=6.6Hz,3H),1.01(d,J=6.6Hz,3H).19F NMR(376MHz,DMSO-d6)δ:-126.90(s,1 F).m/z(ESI,+ve イオン):349.1(M+H)+.
【0389】
<工程4:4,7-ジクロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン>7-クロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(4.7g、13.5mmol)及びDIPEA(3.5mL、20.2mmol)のアセトニトリル(20mL)溶液に、オキシ塩化リン(1.63mL、17.5mmol)をシリンジから滴下した。得られた混合物を80℃で1時間加熱し、その後、室温に冷却し、濃縮して、4,7-ジクロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オンを得た。この物質は、さらに精製することなく次の工程で使用した。m/z(ESI、+ve イオン):367.1(M+H)+.
【0390】
<工程5:(S)-tert-ブチル4-(7-クロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレート>4,7-ジクロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン(13.5mmol)の氷冷アセトニトリル(20mL)溶液に、DIPEA(7.1mL、40.3mmol)、続いて(S)-4-N-Boc-2-メチルピペラジン(3.23g、16.1mmol、Combi-Blocks、Inc.、San Diego、CA、USA)を加えた。得られた混合物を室温にまで温め、1時間撹拌し、その後、炭酸水素ナトリウム冷飽和水溶液(200mL)及びEtOAc(300mL)で希釈した。混合物をさらに5分間撹拌し、層を分離し、水層をさらなるEtOAc(1×)で抽出した。一緒にした有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:0~50%のEtOAc/ヘプタン)により精製し、(S)-tert-ブチル4-(7-クロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレートを得た。m/z(ESI、+ve イオン):531.2(M+H)+.
【0391】
<工程6:(3S)-tert-ブチル4-(6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレート>1,4-ジオキサン(80mL)中の(S)-tert-ブチル4-(7-クロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレート(4.3g、8.1mmol)、トリフルオロ(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)ホウ酸カリウム(中間体Q、2.9g、10.5mmol)、酢酸カリウム(3.2g、32.4mmol)及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ジクロロメタンとの錯体(661mg、0.81mmol)の混合物を窒素で1分間脱気した。脱酸素水(14mL)を加え、得られた混合物を90℃で1時間加熱した。反応物を室温にまで冷却し、炭酸水素ナトリウム半飽和水溶液で反応を停止させ、EtOAc(2×)及びDCM(1×)で抽出した。一緒にした有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:0~60%の3:1のEtOAc-EtOH/ヘプタン)により精製し、(3S)-tert-ブチル4-(6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレートを得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ ppm 10.19(br s,1H),8.38(d,J=5.0Hz,1H),8.26(dd,J=12.5,9.2Hz,1H),7.23-7.28(m,1H),7.18(d,J=5.0Hz,1H),6.72(d,J=8.0Hz,1H),6.68(t,J=8.9Hz,1H),4.77-4.98(m,1H),4.24(br t,J=14.2Hz,1H),3.93-4.08(m,1H),3.84(br d,J=12.9Hz,1H),3.52-3.75(m,1H),3.07-3.28(m,1H),2.62-2.74(m,1H),1.86-1.93(m,3H),1.43-1.48(m,9H),1.35(dd,J=10.8,6.8Hz,3H),1.26-1.32(m,1H),1.07(dd,J=6.6,1.7Hz,3H),0.93(dd,J=6.6,2.1Hz,3H).19F NMR(376MHz,DMSO-d6)δ:-115.65(s,1 F),-128.62(s,1 F).m/z(ESI,+ve イオン):607.3(M+H).
【0392】
<工程7:6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(4-メチル-2-(2-プロパニル)-3-ピリジニル)-4-((2S)-2-メチル-4-(2-プロペノイル)-1-ピペラジニル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン>トリフルオロ酢酸(25mL、324mmol)を、(3S)-tert-ブチル4-(6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレート(6.3g、10.4mmol)のDCM(30mL)溶液に加えた。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、その後、濃縮した。残渣をDCM(30mL)に溶解し、0℃に冷却し、DIPEA(7.3mL、41.7mmol)及び塩化アクリロイル(0.849mL、10.4mmol)のDCM(3mL;シリンジから滴下)溶液で順次処理した。反応物を0℃で10分間撹拌し、その後、炭酸水素ナトリウム半飽和水溶液で反応を停止させ、DCMで抽出した(2×)。一緒にした有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。残渣のクロマトグラフィー精製(シリカゲル;溶離剤:0~100%のEtOAc-EtOH(3:1)/ヘプタン)、続く超臨界流体クロマトグラフィー(Chiralpak IC、30×250mm、5μm、55%MeOH/CO2、120mL/分、102bar;最初に溶出するピークを回収)を使用したキラル分離により、AMG510(2.25g、収率43%)を得た。6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(4-メチル-2-(2-プロパニル)-3-ピリジニル)-4-((2S)-2-メチル-4-(2-プロペノイル)-1-ピペラジニル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ ppm 10.20(s,1H),8.39(d,J=4.8Hz,1H),8.24-8.34(m,1H),7.23-7.32(m,1H),7.19(d,J=5.0Hz,1H),6.87(td,J=16.3,11.0Hz,1H),6.74(d,J=8.6Hz,1H),6.69(t,J=8.6Hz,1H),6.21(br d,J=16.2Hz,1H),5.74-5.80(m,1H),4.91(br s,1H),4.23-4.45(m,2H),3.97-4.21(m,1H),3.44-3.79(m,2H),3.11-3.31(m,1H),2.67-2.77(m,1H),1.91(s,3H),1.35(d,J=6.8Hz,3H),1.08(d,J=6.6Hz,3H),0.94(d,J=6.8Hz,3H).19F NMR(376MHz,DMSO-d6)δ ppm -115.64(s,1 F), -128.63(s,1 F).m/z(ESI,+ve イオン):561.2(M+H)+.
【0393】
本明細書では、AMG510は、
【0394】
【化30】
の式を有する、6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(4-メチル-2-(2-プロパニル)-3-ピリジニル)-4-((2S)-2-メチル-4-(2-プロペノイル)-1-ピペラジニル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オンのMアトロプ異性体、又は薬学的に許容されるその塩である。
【0395】
<中間体の合成>
【0396】
【化31】
<2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-アミン(R)>[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ジクロロメタンとの錯体(79mg、0.10mmol)を、3-アミノ-2-ブロモ-4-ピコリン(3;360mg、1.9mmol,Combi-Blocks,San Diego,CA)のTHF(4mL)中スラリーに加え、得られた混合物にアルゴンを2分間注入した。2-プロピル亜鉛ブロミド(THF溶液中0.5M、5.40mL、2.7mmol)を加え、得られた溶液を60℃で17時間加熱し、その後、室温にまで冷却した。水(10mL)及び1NのNaOH水溶液(20mL)を加え、得られた混合物をEtOAcで抽出した(2×)。一緒にした有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空濃縮した。残渣のクロマトグラフィー精製(シリカゲル;溶離剤:0~15%MeOH/DCM)により、R(284mg、収率98%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d
6):δ 7.66 p.p.m.(d,J=4.6Hz,1H),6.78(d,J=4.8Hz,1H),4.72(br s,2H),3.14-3.25(m,1H),2.08(s,3H),1.14(d,J = 6.8Hz,6H);m/z(ESI,+ve イオン):151.1(M+H)
+.
【化32】
【0397】
<(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)トリフルオロホウ酸カリウム(Q)>フッ化カリウム(44.7g、770mmol)の水(75mL)溶液を、(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)ボロン酸(9;30g、192mmol、Combi-Blocks、San Diego、CA)のアセトニトリル(750mL)中懸濁液に加えた。2分間撹拌した後、THF(375mL)中のL-(+)-酒石酸(72.2g、481mmol)の溶液を10分間かけて加えた。得られた混合物を1時間、機械的に撹拌した。懸濁した固体を濾過により除去し、少量のTHFで洗浄した。その後、固体が沈殿し始めるまで、一緒にした濾液を真空中で部分的に濃縮した。濾液を-20℃に冷却し、16時間撹拌し、その後、周囲温度にまでゆっくりと温めた。2-プロパノール(20mL)を加え、沈殿した固体を濾過により回収し、2-プロパノールで洗浄して、27.5gの固体を得た。濾液を再び部分的に濃縮し(沈殿が観察されるまで)、-20℃に冷却し、20分間撹拌した。さらに2-プロパノールを加え、沈殿した固体を濾過により回収し、2-プロパノールで洗浄した。2バッチの固体を一緒にして、Q(34.6g、収率82%)を得た。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ 8.07 p.p.m.(q,J=14.7Hz,1H),6.93(q,J=7.5Hz,1H),6.30-6.38(m,2H).
【0398】
<AMG510プロピオンアミドの合成>
【0399】
【化33】
<(M)-6及び(M)-11>ラセミ体6を超臨界流体クロマトグラフィー(Chiralpak AD、21×250mm、5μm、40%MeOH/CO
2、80mL/分、110bar;第2の溶出ピークを回収)により分離して(M)-6を得、これをラセミ体基質について報告された手順を用いて(M)-11に変換した。
【0400】
(M)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(4-メチル-2-(2-プロパニル)-3-ピリジニル)-4-((2S)-2-メチル-4-プロパノイル-1-ピペラジニル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン(AMG510プロピオンアミド):トリフルオロ酢酸(4.0ml、51.9mmol)を(M)-11(0.196g、0.323mmol)のDCM(5ml)溶液に添加し、得られた混合物を室温で20分間撹拌した。その後、混合物を真空中で濃縮し、残渣をDCM(10mL)に取り、0℃に冷却し、DIPEA(0.169mL、0.969mmol)及び塩化プロピオニル(0.016mL、0.194mmol)で順次処理した。得られた混合物を0℃で10分間撹拌し、その後、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で希釈し、DCMで抽出した(2×)。一緒にした抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空濃縮した。残渣のクロマトグラフィー精製(シリカゲル;溶離剤:0~70%のEtOAc-EtOH(3:1)/ヘプタン)により、AMG510プロピオンアミド(0.180g、収率99%)を得た。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ 10.20 p.p.m(s,1H),8.40(d,J=5.0Hz,1H),8.27(br dd,J=15.1,9.3Hz,1H),7.27(m,1H),7.21(br d,J=4.8Hz,1H),6.73(d,J=8.3Hz,1H),6.69(t,J=8.9Hz,1H),4.87(br s,1H),4.31(m,1.5H),4.21(br d,J=13.5Hz,0.5H),3.94(br d,J=12.2Hz,0.5H),3.82(br d,J=13.3Hz,0.5H),3.62-3.76(m,1H),3.52-3.62(m,0.5H),3.43-3.51(m,0.5H),3.18(br dd,J=13.3,3.3Hz,0.5H),3.06(br t,J=10.7Hz,0.5H),2.73(br dd,J=10.5,6.1Hz,1H),2.33-2.48(m,2H),1.91(s,3H),1.29-1.42(m,3H),0.98-1.12(m,6H),0.94(d,J=6.6Hz,3H);m/z(ESI,+ve イオン):563.2(M+H)+.
【0401】
AMG510は別の方法で合成され、関連する中間体は、2018年11月16日出願の米国仮特許出願第62/768,802号に記載された。別の方法は、以下の工程を含み、工程4及び5のrac-ジオンの分離が、アトロプ異性体の分離の成功を促進する:
【0402】
【0403】
<プロセスの説明>
【0404】
<工程1>:
【0405】
【0406】
【0407】
ジクロロメタン(167kg)及びDMF(592g)中の2,6-ジクロロ-5-フルオロ-3-ピリジンカルボン酸(化合物1)(25kg;119.1mol)の溶液に、内部温度を15~20℃の間に維持しながら、塩化オキサリル(18.9kg;148.9mol)を加えた。追加のジクロロメタン(33kg)を濯ぎとして加え、反応混合物を2時間撹拌した。反応混合物を冷却し、その後、内部温度を0±10℃に維持しながら、水酸化アンモニウム(40.2L;595.5mol)により反応を停止させた。得られたスラリーを90分間撹拌し、その後、濾過により生成物を回収した。濾過した固体をDI水で洗浄(3×87L)し、乾燥させて、2,6-ジクロロ-5-フルオロニコチンアミド(化合物2)を得た。
【0408】
<工程2>:
【0409】
【0410】
【0411】
反応器A内で、2,6-ジクロロ-5-フルオロニコチンアミド(化合物2)(16.27kg;77.8mol)のジクロロメタン(359.5kg)溶液に、温度≦25℃を75分間維持しながら、塩化オキサリル(11.9kg;93.8mol)を加えた。その後、得られた溶液を40℃±3℃に加熱し、3時間エージングした。真空を使用して、溶液を蒸留し、溶液が撹拌機の下になるまでジクロロメタンを除去した。その後、ジクロロメタン(300kg)を加え、混合物を0±5℃に冷却した。清浄な乾燥した反応器(反応器B)に、2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-アミン(ANILINE)(12.9kg;85.9mol)、続いてジクロロメタン(102.6kg)を加えた。内部温度を20~25℃の間に維持しながら、KF分析で溶液が乾燥(限界≦0.05%)するまでさらなるジクロロメタンで置き換えながら、真空蒸留によりANILINE溶液を共沸乾燥した。ジクロロメタンにより、溶液の体積を約23L体積に調節した。その後、乾燥したANILINE溶液を反応器Aに加えた(その間、0±5℃の内部温度を維持した)。その後、混合物を23℃に加熱し、1時間エージングした。溶液を清浄な反応器中へ仕上げ濾過し、DCM中の溶液として2,6-ジクロロ-5-フルオロ-N-((2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)ニコチンアミド(化合物3)を得、次の工程で直接使用した。
【0412】
<工程3>:
【0413】
【0414】
【0415】
2,6-ジクロロ-5-フルオロ-N-{[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]カルバモイル}ピリジン-3-カルボキサミド(尿酸(化合物3))(15kg含有;38.9mol)のジクロロメタン溶液を、20~25℃の内部温度を維持しながら、真空蒸留を用いて2-MeTHFに溶媒交換した。反応器容積を40Lに調節し、その後、追加の2-MeTHF(105.4kg)を加えた。5~10℃を維持しながら、ナトリウムt-ブトキシド(9.4kg;97.8mol)を添加した。内容物を23℃に温め、3時間撹拌した。その後、内容物を0~5℃に冷却し、DI水60Lの溶液として塩化アンモニウム(23.0kg;430mol)を加えた。混合物を20℃に温め、DI水(15L)を加え、さらに30分間エージングした。撹拌を停止し、層を分離した。水層を除去し、有機層にDI水(81.7L)を加えた。濃HCl(1.5kg)と水(9L)の混合物を調製し、その後、pHが4~5の間と測定されるまで反応器にゆっくりと加えた。層を分離し、2-MeTHF(42.2kg)を用いて水層を逆抽出した。2つの有機層を一緒にし、10%クエン酸溶液(75kg)、続いて水(81.7L)と飽和NaCl(19.8kg)の混合物で洗浄した。その後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(75kg)で洗浄し、必要であれば洗浄を繰り返し、水性物の目標pH≧7.0を達成した。有機層を塩水(54.7kg)で再び洗浄し、次いで硫酸マグネシウム(5kg)上で乾燥させた。混合物を濾過して硫酸マグネシウムを除去し、濾過層を2-MeTHF(49.2kg)で濯いだ。一緒にした濾液及び洗浄液を、40Lの体積にまで真空蒸留した。濃縮溶液を55℃に加熱し、ヘプタン(10~12kg)を曇り点までゆっくりと加えた。2時間かけて溶液を23℃に冷却し、その後2時間かけて、ヘプタン(27.3kg)を加えた。生成物スラリーを20~25℃で3時間エージングし、その後濾過し、2-MeTHF(2.8kg)とヘプタン(9kg)の混合物で洗浄した。生成物を窒素及び真空を用いて乾燥させ、7-クロロ-6-フルオロ-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(rac-DIONE(化合物4))の固体を得た。
【0416】
<工程4>:
【0417】
【0418】
【0419】
窒素雰囲気下、(+)-2,3-ジベンゾイル-D-酒石酸(2.0当量)とともに、化合物4(1.0当量)の2-メチルテラヒドロフラン(7.0L/kg)中撹拌懸濁液を容器に加えた。2-MeTHFはキラルであるが、ラセミ混合物として使用される。2-MeTHFの異なる鏡像異性体は、共結晶中にランダムに組み込まれる。得られた懸濁液を75℃に温め、完全な溶解が観察されるまで(≦30分)、75℃でエージングした。得られた溶液を75℃で第2の容器中に仕上げ濾過した。仕上げ濾過した溶液に、内部温度を65℃より高く維持する速度でn-ヘプタン(2.0L/kg)を加えた。その後、溶液を60℃に冷却し、種結晶(0.01kg/kg)を加え、30分間熟成させた。得られた懸濁液を4時間かけて20℃に冷却し、その後、HPLCによるキラル純度分析のためにサンプリングした。懸濁液にn-ヘプタン(3.0L/kg)を加え、その後、窒素雰囲気下、20℃で4時間エージングした。懸濁液を濾過し、単離した固体を(2:1)n-ヘプタン:2-メチルテトラヒドロフラン(3.0L/kg)で2回洗浄した。この物質を窒素及び真空下で乾燥させて、M-ジオン:DBTA:Me-THF複合体(化合物4a)を得た。
【0420】
<工程5>:
【0421】
【0422】
【0423】
容器Aに向けて、リン酸水素二ナトリウム(21.1kg、2.0当量)のDI水(296.8L、6.3L/kg)中懸濁液を、溶解が観察されるまで(≧30分)撹拌した。容器Bに向けて、M-ジオン:DBTA:Me-THF複合体(組成物4a)[46.9kg(M-ジオンについて補正して25.9kg、1.0当量)]のメチルtert-ブチルエーテル(517.8L、11.0L/kg)中懸濁液を15~30分間撹拌した。容器Aから得られた溶液を容器Bに加え、その後、混合物を3時間超撹拌した。撹拌を停止させ、分離のために二相混合物を30分超放置した。下部の水相を除去し、その後、メチルtert-ブチルエーテル(77.7L、1.7L/kg)で逆抽出した。有機相を容器B中で一緒にし、硫酸マグネシウム(24.8kg、0.529kg/kg)で乾燥させた。容器Bから得られた懸濁液を3時間超撹拌し、その後、容器Cに濾過した。容器Bに、メチルtert-ブチルエーテル(46.9L、1.0L/kg)リンス液を加え、その後、容器Cに濾過した。容器Cの内容物を10℃に冷却し、その後、真空下で35℃までゆっくりと加温しながら蒸留した。320~350kg(6.8~7.5kg/kg)のメチルtert-ブチルエーテルが回収されるまで蒸留を続けた。容器Cの内容物を20℃に冷却した後、n-ヘプタン(278.7L、5.9L/kg)を1時間かけて加え、その後、35℃にまでゆっくりと加温しながら真空蒸留した。190~200kg(4.1~4.3kg/kg)のメチルtert-ブチルエーテル及びn-ヘプタン混合物が回収されるまで蒸留を続けた。容器Cの内容物を20℃に冷却した後、2回目のn-ヘプタン(278.7L、5.9L/kg)を1時間かけて加え、その後、35℃にまでゆっくりと加温しながら真空蒸留した。190~200kg(4.1~4.3kg/kg)のメチルtert-ブチルエーテル及びn-ヘプタン混合物が回収されるまで蒸留を続けた。容器Cの内容物を20℃に冷却した後、3回目のn-ヘプタン(195.9L、4.2L/kg)を1時間かけて加え、その後、GCによる溶媒組成分析用にサンプリングした。容器Cの懸濁液を1時間超撹拌し続けた。懸濁液を濾過し、その後、容器Cからのn-ヘプタン(68.6L、1.5L/kg)リンス液で洗浄した。単離された固体を50℃で乾燥させ、試料を貯蔵適合性のために提出した。7-クロロ-6-フルオロ-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(M-DIONE)の化合物5Mを得た。
【0424】
上で強調した第1世代のプロセスでは、200+kgのrac-ジオン出発物質(化合物5)では規模の対応ができた。このプロセスでは、結晶化に熱力学的に安定なrac-ジオン結晶形態(これは低い溶解度を示す)の種を加えることは、バッチの失敗を引き起こすであろう。我々のその後の研究に基づき、我々はヘプタン添加スケジュールを調節することによる、DBTA当量の増加、及び種の添加温度の低下が、プロセスの頑健性を改善することを見出した。改良された方法は熱力学的に安定なrac-ジオン結晶形態の存在に対して抵抗性があり、アトロプ異性体分離の成功を促進する。その後のバッチは、大規模製造のために、改善されたプロセスを組み込むであろう。
【0425】
<工程6>:
【0426】
【0427】
【0428】
7-クロロ-6-フルオロ-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(M-DIONE)(3.7kg;9.8mol)を10.5kgのトルエンと反応器(A)中で一緒にし、設定点を45℃に維持しながら、油状になるまで蒸留して水を除去した。トルエン(21kg)を残渣に加え、混合物を40~45℃で30分間撹拌した。内容物を22℃に冷却し、その後、塩化ホスホリル(1.8kg;11.7mol)を加えた。混合物を0~5℃に冷却した後、温度を5℃未満に維持しながら、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.5kg;19.34mol)を加えた。溶液を22℃で3時間エージングした。別の反応器(B)中で、(s)-1-boc-3-メチルピペラジン(2.21kg;10.8mol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.26kg;9.75mol)をトルエン(6kg)中で一緒にし、<25℃を維持しながら反応器(A)に加えた。反応混合物を22℃で15分間エージングし、その後、温度<25℃を維持しながら、水(12.9L)中の炭酸水素ナトリウム(973g)でクエンチした。混合物を30分間撹拌し、その後、1時間撹拌し続けながらDCM(36.8kg)を加えた。層を分離することが可能となり、下部の有機層を反応器(C)に排出した。反応器(A)中の水層をDCM(18.4kg)を用いて逆抽出し、一緒にした有機層を塩水溶液(6.0kgのNaCl;16.5kgのDI水)で洗浄した。内部温度を45~55℃の間に維持ながら、有機層を大気圧下で蒸留した。蒸留中にDCMを交換して、溶液を共沸乾燥させる。蒸留後、DCMを用いて溶液体積を19Lに調節した。溶液を30℃に冷却し、仕上げ濾過した。濾液に酢酸エチル(8.5kg)を加え、その後、11~13kgが受器に回収されるまで大気圧で蒸留した。溶液に30gの真正生成物の種を加え、25~30℃で1時間エージングし、その後、大気圧下、45~55℃の内部温度で、8.2kgの留出物が回収されるまでさらに蒸留した。スラリーを22℃に冷却し、一晩エージングさせた後、さらに0~5℃に冷却した。生成物を濾過により回収し、酢酸エチル(各4.2kg)を用いて2回洗浄した。ケーキを窒素及び真空下で乾燥させて、tert-ブチル(3S)-4-{7-クロロ-6-フルオロ-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレート(化合物6、PIPAZOLINE)を得た。
【0429】
<工程7>:
【0430】
【0431】
【0432】
反応器に、脱気したジオキサン(74.2kg)、tert-ブチル(3S)-4-{7-クロロ-6-フルオロ-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレート(化合物6、ピパゾリン)(24.0kg、45.2mol)、酢酸カリウム(22.2kg、45.2mol)、及び(dppf)PdCl2(0.74kg、1.01mol)を加えた。反応器は窒素ガスで不活性化された。酸素含有量が<500mg/Lになるまで、溶液に窒素ガスを注入した。反応物を87.5℃に加熱した。酸素含有率<500mg/Lの、トリフルオロ(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)ホウ酸カリウム(12.6kg、54.3mol)の脱気ジオキサン(49.4kg)及び脱気水(14.4kg)中溶液を、82.5℃±7.5℃の内部温度を維持しながら反応物に移した。反応物を87.5℃±1.5℃に調節し、75分間±15分間撹拌した。1.0MのEDTA溶液(47.3kg)、続いて水(40.1kg)を、85℃±5℃の内部温度を維持しながら反応器に加えた。反応物を>2時間かけて20℃±3℃に冷却し、>16時間撹拌した。反応物を濾過し、粗固体を水(3×120kg)で濯いだ。固体をヘプタン(28.8kg)と2-プロパノール(33.1kg)の混合物で濯ぎ、その後、<50℃で>10時間乾燥させた。清浄な反応器に粗固体及びジクロロメタン(240kg)を加えた。内容物を20℃±5℃で>30分間撹拌した。反応器に、Si-チオール(144kg)及びジクロロメタン(14.9kg)を加えた。反応物を20℃±5℃で18時間撹拌した。反応物を濾過し、ジクロロメタン(84kg)で濯いだ。溶液を蒸留し、溶媒を2-プロパノールに交換した。反応物を60℃±3℃に加熱し、反応温度を60℃±3℃に維持しながらヘプタン(108kg)を加えた。反応物を45分間撹拌し、その後冷却し、20℃±5℃で2.5時間撹拌した。反応物を濾過し、50%v/vのヘプタン/2-プロパノール(61.9kg)で濯いだ。単離した固体を<50℃で12時間乾燥させ、tert-ブチル(3S)-4-{6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレート(化合物7、ビアリール)を得た。
【0433】
<工程8>:
【0434】
【0435】
【0436】
反応器にtert-ブチル(3S)-4-{6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル}-3-メチルピペラジン-1-カルボキシレート(化合物7、ビアリール)(2.75kg、5.27mol)、DCM(13.7L)及びTFA(5.67kg、49.7mol)を加えた。反応物を20±5℃で8~16時間撹拌した。第2の反応器に、炭酸カリウム(11.24kg)、水(54.8L)、及びメタノール(13.7L)を加えて、均質な溶液を生成させた。反応混合物を炭酸カリウム溶液に2時間かけて加えた。混合物を20±5℃でさらに12時間撹拌した。得られたスラリーを濾過し、水(2×27.5L)で濯いだ。湿潤ケーキを24時間乾燥させて、6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-4-[(2S)-2-メチルピペラジン-1-イル]-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン(化合物8、DESBOC)を得た。
【0437】
<工程9>:
【0438】
【0439】
【0440】
6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-4-[(2S)-2-メチルピペラジン-1-イル]-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン(化合物8、DESBOC)(156.25g)にN-メチルピロリジノン(625mL)を加え、周囲温度で撹拌した。<30℃の内部温度を維持しながら、得られた溶液に塩化アクリロイル(36.29g;401.0mmol)を加えた。内容物を25℃で2時間撹拌した。別の反応器に、リン酸二ナトリウム(175.1g;1234mmol)のDI水(3.1L)溶液を調製した。その後、リン酸二ナトリウム溶液を含有する反応器に、25℃で、>2時間かけて粗生成物溶液を移した。添加の途中でスラリーを45℃に加熱し、完全に加えた後、同じ温度で2時間エージングした。混合物を25℃に冷却し、4時間エージングした後、真空濾過により固体を回収した。固体を水で2回洗浄し(各1.5L)、生成物を窒素及び真空下で乾燥させて、生成物6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オンを得た(粗化合物9)4。このリードロットの結果:単離質量154.06g、93重量%、補正収率82.9%、NMP18,000ppm
【0441】
<工程10>:
【0442】
【0443】
【0444】
6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン(粗化合物9)(142.33g;253.9mmol)にエタノール(996mL)及び水(270mL)を加えた。酢酸(21.8ml;380.8mmol)を加え、混合物を75℃に加熱して溶液を生成し、これを清浄な反応器中に仕上げ濾過した。溶液を45℃に冷却し、その後、内部温度を>40℃に維持しながら、水(1067mL)を加えた。溶液に真正化合物9の種を加え、得られた混合物を30分間エージングした。その後、水(1138mL)を2時間かけて加えた。混合物を25℃に冷却し、8時間エージングし、その後、固体を真空濾過によって回収し、エタノール(355.8mL)及び水(711.6mL)の混合物を使用して洗浄した。真空及び窒素を使用して固体を乾燥させ、6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロプ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オン(化合物9)を得た。
【0445】
<工程A1:反応スキーム及び仕込み表>
【0446】
【0447】
【0448】
反応器AにTHF(6体積)及びジイソプロピルアミン(1.4当量)を加えた。得られた溶液を-70℃に冷却し、n-BuLi(ヘキサン中2.5M、1.5当量)をゆっくりと加えた。添加完了後、3-フルオロアニソール(1.0当量)のTHF(6体積)溶液をゆっくりと加え、-70℃で5分間保持した。B(EtO)3(2.0当量)をゆっくり加え、-70℃で10分間保持した。反応混合物は、2NのHClで反応を停止させた。停止した反応混合物をMTBE(3×4体積)で抽出した。一緒にした有機相を1.5~3の総体積に濃縮した。ヘプタン(7~9体積)を滴下し、混合物を0~10℃に冷却し、3時間撹拌した。混合物を濾過し、ヘプタン(1.5体積)で濯いだ。固体を窒素下、<30℃で乾燥させ、(2-フルオロ-6-メトキシフェニル)ボロン酸を得た。
【0449】
<工程A2:反応スキーム及び仕込み表>
【0450】
【0451】
【0452】
反応器Aに、ジクロロメタン(4体積)及び2-フルオロ-6-メトキシ-4-メチルフェニルボロン酸(1当量)を加えた。反応混合物を-30℃に冷却し、1.5BBr3(1.5当量)を滴下した。添加が完了したならば、混合物を25℃に加温し、2時間撹拌した。反応混合物を氷冷(0~5℃)水(10体積)に入れて反応を停止させた。MTBE(10体積)を加え、混合物を25℃に温め、1~2時間、又はすべての固体が溶解するまで撹拌した。水相を分離し、MTBE(3体積)で抽出した。一緒にした有機抽出物を水(3体積)で洗浄し、その後、全体が1容量になるまで濃縮した。ヘプタン(10体積)を混合物に加え、2時間撹拌した。得られた生成物を濾過により単離し、<30℃で乾燥させて(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)ボロン酸を得た。
【0453】
<工程A3:反応スキーム及び仕込み表>
【0454】
【0455】
【0456】
<工程A3>
【0457】
反応器(反応器A)中で、フッ化カリウム(21.0kg;20.87mol)に水(28L)を加え、内容物を30分間撹拌した。別の反応器(反応器B)に、(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)ボロン酸(14.00kg、89.79mol)、続いてアセトニトリル(206.1kg)及びクエン酸(30.94kg;147.26mol)を25℃で加えた。反応器Aの内容物を25℃で反応器Bに加え、その温度で10時間撹拌した。反応混合物を、セライト床(7.0kg)を通して濾過し、アセトニトリル(42kg)で濯いだ。濾液にイソプロパノール(56kg)を加え、その後、真空下、<35℃の温度で蒸留し、反応器への蒸留体積をイソプロパノールで置き換え、必要に応じて繰り返して、アセトニトリルからイソプロパノールへの溶媒交換を完了させた。スラリーを15℃に冷却し、1時間エージング後、濾過し、28kgのイソプロパノールで洗浄した。ケーキを真空及び窒素を用いて乾燥させ、包装して化合物A3を得た。
【0458】
<M-ジオン化合物5の分離>
【0459】
<M-ジオン中間体のクロマトグラフィーによる分離>
【0460】
化合物4からM-ジオンを単離するために、多数のキラルクロマトグラフィー技術及び方法が使用された。その技術及び固定相は当技術分野で周知であり、表1に概説されている。
【0461】
【0462】
【0463】
SFC、HPLC、及びSMB技術は当技術分野で周知であり、Chiralpak(登録商標)固定相は、Fisher Scientific及び株式会社ダイセルなどの商業的供給源から市販されている。
【0464】
しかしながら、M-ジオン(化合物5)を単離するためのより効率的な方法を開発することが望ましい。
【0465】
<古典的分離>
【0466】
本発明は、M/P-ジオンラセミ体(化合物4)のための実行可能な古典的分離法の開発に関する。
【0467】
合計100回の共結晶スクリーニング実験を行い、3つの可能性があるジオンの共結晶を同定した。残留固体中のM/P-ジオンの最大面積比及び上清中の最小面積比に基づき、分離のためのキラル試薬として(+)-2、3-ジベンゾイル-D-酒石酸(DBTA)を選択した。
【0468】
100回の共結晶スクリーニング実験及び20回以上の溶媒スクリーニングからの結果によれば、2-MeTHF/n-ヘプタンが、他の溶媒系よりも良好な分離結果を提供することが見出された。異なる比率の2-MeTHF及びn-ヘプタン中の、M-ジオン共結晶とP-ジオン共結晶の溶解度の結果に基づき、分離のための最適溶媒組成として2-MeTHF/n-ヘプタン(1.4:1、v/v)を選択した。
【0469】
キラル分解の結晶化過程で、ジオンラセミ体又はM/P-ジオンへの可能な形態変換を見出すために、2-MeTHF/n-ヘプタン(1.4:1、体積/体積)中で、M-ジオン共結晶、P-ジオン共結晶、M+P-ジオン共結晶混合物(1:1、重量/重量)、ジオンラセミ体及びDBTAの溶解度を異なる温度で決定した。異なる温度で7日間、M-ジオン共結晶及びP-ジオン共結晶について形態変化は観察されなかった。しかしながら、M+P-ジオン共結晶混合物(1:1、重量/重量)の混合物を異なる温度で7日間撹拌した後では、ジオンラセミ体C型が得られた。ジオンラセミ体D型(20及び30℃)又はジオンラセミ体C型(40、50、60及び65℃)が、対応する温度で7日間、ジオンラセミ体を攪拌した後に観察された。全ての温度で、DBTAの溶解度は、約100mg/mLであることが観察された。
【0470】
分離プロセスをさらに最適化するために、M/P-ジオン共結晶の3成分状態図を平衡溶解度の結果に基づいて描いたが、共晶点は得られなかった。おそらく、M-ジオン共結晶とP-ジオン共結晶の両方が存在する場合にラセミ体C型が結晶化できるためであろう。M/P-Dioneの別の3成分状態図を平衡溶解度の結果に基づいて描いたが、共晶点は得られなかった。おそらく、M-ジオン及びP-ジオンの両方が存在する場合にジオンラセミ体C型又はD型が結晶化できるためであろう。
【0471】
要約すると、ジオンラセミ体の分離用として、キラル試薬(DBTA)及び溶媒系(2-MeTHF/n-ヘプタン(1.4:1、体積/体積))を同定した。本分離試薬及び溶媒系を使用する小規模結晶化プロセスは、M-ジオンについて収率39%及びee純度99%を達成できた。さらに、スクリーニング実験中にジオンラセミ体の多型を観察し、調査した。
【0472】
本発明の化合物はまた、悪心を治療する薬学的に活性な薬剤と併用することができる。悪心を治療するのに使用できる薬剤の例には、ドロナビノール;グラニセトロン;メトクロプラミド;オンダンセトロン;及びプロクロルペラジン;又はその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0473】
本発明の化合物はまた、放射線療法、ホルモン療法、手術及び免疫療法と併用し得、これらの療法は、当業者に周知である。
【0474】
本発明の1つの態様は、別々に投与され得る薬学的に活性な化合物の組み合わせによる、疾患/状態の治療を意図しているので、本発明はさらに、別々の薬学的組成物をキット形態に組み合わせることに関する。このキットは、2つの別々の医薬組成物:本発明の化合物、及び第2の医薬化合物を含む。キットは、分割されたボトル又は分割された箔パケットなどの、別々の組成物を収容する容器を含む。容器のさらなる例には、注射器、箱、及びバッグが含まれる。通常、キットは別々の成分の使用に関する説明書を含む。キット形態は、好ましくは別々の成分が異なる投薬形態(例えば、経口及び非経口)で投与される場合、異なる投薬間隔で投与される場合、又は、処方医又は獣医が組み合わせの個々の成分の用量設定を望む場合に特に有利である。
【0475】
そうしたキットの例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは包装産業では周知であり、医薬単位剤形(錠剤、カプセルなど)の包装に広く使用されている。ブリスターパックは、一般に、好ましくは透明なプラスチック材料の箔で覆われた比較的硬い材料のシートからなる。包装工程中に、プラスチック箔に窪みが形成される。窪みは、包装される錠剤又はカプセルのサイズ及び形状を有する。次に、錠剤又はカプセルを窪みに配置し、比較的硬い材料のシートにより、窪みが形成された方向とは反対側の箔の面でプラスチック箔をシールする。その結果、錠剤又はカプセルは、プラスチック箔とシートとの間の窪み内に密封される。好ましくは、シートの強度は、窪みに手動で圧力を加え、それによってシートの窪みの位置に開口部が形成され、錠剤又はカプセルをブリスターパックから取り出すことができるようなものである。その後、錠剤又はカプセルは前記開口部から取り出すことができる。
【0476】
キット上に、例えば、錠剤又はカプセルの隣に、数字の形態で記憶を補助するものを提供することが望ましい(数字は、そのように指定された錠剤又はカプセルを摂取すべきレジメンの日数に対応している)。そのような記憶補助の別の例は、例えば、次のように「第1週、月曜日、火曜日、・・・など・・・第2週、月曜日、火曜日、・・・」などと、カード上に印刷されたカレンダーである。他の記憶補助のバリエーションは容易に明らかになるであろう。「1日用量」は、単一の錠剤若しくはカプセル、又は決められた日に服用すべき複数の丸剤又はカプセルであり得る。また、本発明の化合物の1日用量は、1つの錠剤又はカプセルからなることができ、一方、第2の化合物の1日用量は複数の錠剤又はカプセルからなることができ、逆もまた同様である。記憶補助はこれを反映し、活性剤の正しい投与を補助すべきである。
【0477】
本発明の別の特定の実施形態では、1日用量を、それらの意図された使用の順序で一度に1つずつ分配するように設計されたディスペンサーが提供される。好ましくは、レジメンの遵守をさらに容易にするために、ディスペンサーは記憶補助物を備える。そのような記憶補助の例は、分配された1日の用量の数を示す機械的なカウンタである。そのような記憶補助装置の別の例は、例えば、最後に1日用量を服用した日付を読み取り、且つ/又は次の用量を服用すべき時を思い出させる、液晶読み出し又は可聴リマインダー信号と結合された、バッテリー駆動マイクロチップメモリである。
【0478】
本発明の化合物及び他の薬学的に活性な化合物は、必要に応じて、経口、直腸、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)、槽内、腟内、腹腔内、膀胱内、局所投与(例えば、粉末、軟膏又は点滴)、又は口腔又は鼻腔スプレーのいずれかで患者に投与することができる。薬学的に活性な薬剤を投与するために当業者によって使用される全ての方法が考えられている。
【0479】
非経口注射に適した組成物は、生理学的に許容される無菌の水性若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液、又はエマルジョン、及び無菌の注射可能な溶液又は分散液に再構成するための無菌の粉末を含み得る。適切な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒、又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、これらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)、及び注射可能な有機エステル(オレイン酸エチルなど)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散体の場合には必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0480】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントを含有してもよい。微生物汚染は各種の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを加えることによって防止できる。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むのも望ましいかもしれない。注射用医薬組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0481】
経口投与のための固体剤形には、カプセル、錠剤、粉末、及び顆粒が含まれる。そのような固体剤形では、活性化合物は、少なくとも1種の不活性な慣用賦形剤(又は担体)(例えば、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウム)、又は(a)フィラー又は増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、及びケイ酸);(b)バインダー(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシア);(c)保湿剤(例えば、グリセロール);(d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム);(e)溶解遅延剤(例えば、パラフィン);(f)吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物);(g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール);(h)吸着剤(例えば、カオリン及びベントナイト);並びに(i)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、又はそれらの混合物と混合される。カプセル及び錠剤の場合、剤形はまた緩衝剤を含み得る。
【0482】
類似型の固体組成物はまた、ラクトース又は乳糖などの賦形剤、並びに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟質及び硬質の充填ゼラチンカプセル中でフィラーとしても使用され得る。
【0483】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒などの固体剤形は、腸溶性コーティングなどのコーティング及びシェル、並びに当技術分野で周知の他のものを用いて調製することができる。それらはまた、乳白剤を含有してもよく、また、遅延様式で腸管の特定の部分で活性化合物を放出するような組成物であり得る。使用することができる埋め込み組成物の例は、ポリマー物質及びワックスである。活性化合物はまた、適切であれば、上記の賦形剤の1つ以上を含む、マイクロカプセル化形態であり得る。
【0484】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルを含む。活性化合物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般的に使われる不活性の希釈剤、例えば、水若しくは他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブオイル、ひまし油、及びごま油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル)、又はこれらの物質の混合物などを含有し得る。
【0485】
そのような不活性希釈剤に加えて、組成物はまた、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、香味料、及び香料などのアジュバントも含むことができる。活性化合物に加えて、懸濁液は、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、及びトラガカント、又はこれらの物質の混合物などを含み得る。
【0486】
直腸投与用の組成物は、本発明の化合物を、ココアバター、ポリエチレングリコール又は座薬ワックスなどの適切な非刺激性賦形剤又は担体と混合することによって調製することができる好ましい座薬であり、これは通常の室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸又は膣腔内で融解し、活性成分を放出する。
【0487】
本発明の化合物の局所投与用の剤形には、軟膏、粉末、スプレー及び吸入剤が含まれる。活性化合物は、無菌条件下で、生理学的に許容される担体、及び必要な任意の保存料、緩衝剤、又は噴射剤と混合される。点眼用製剤、眼軟膏、粉末、及び溶液もまた、本発明の範囲内であると考えられる。
【0488】
本発明の化合物は、1日当たり約0.1~約3,000mgの範囲の用量レベルで患者に投与することができる。約70kgの体重を有する正常な成人では、通常、1キログラムの体重当たり約0.01~約100mgの範囲の用量で十分である。使用することができる具体的な用量及び用量範囲は、患者の要件、治療される状態又は疾患の重症度、及び投与される化合物の薬理学的活性を含む、多くの因子に依存する。本発明の化合物の具体的用量は、化合物が承認されている場合には、FDA承認用量である。
【0489】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩、エステル、アミド又はプロドラッグとして投与することができる。「塩」という用語は、本発明の化合物の無機塩及び有機塩を指す。これらの塩は、化合物の最終的な単離及び精製中にインサイチュで、又は遊離塩基形態若しくは酸形態の精製された化合物を適切な有機酸若しくは無機酸と別に反応させ、こうして生成した塩を単離することによって調製することができる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリルスルホン酸塩などが含まれる。塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属に基づくカチオン、並びに、以下に限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含む、非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンを含み得る。例えば、S.M.Berge,et al.,“Pharmaceutical Salts,”J Pharm Sci,66:1-19(1977)を参照されたい。
【0490】
本発明の化合物の薬学的に許容されるエステルの例には、C1~C8アルキルエステルが含まれる。許容されるエステルには、C5~C7シクロアルキルエステル、及びベンジルなどのアリールアルキルエステルも含まれる。C1~C4アルキルエステルが一般に使用される。本発明の化合物のエステルは、当技術分野で周知の方法に従って調製し得る。
【0491】
本発明の化合物の薬学的に許容されるアミドの例には、アンモニア、第一級C1~C8アルキルアミン、及び第二級C1~C8ジアルキルアミンから誘導されるアミドが含まれる。第二級アミンの場合、アミンはまた、少なくとも1個の窒素原子を含有する、5員又は6員のヘテロシクロアルキル基の形態であってもよい。アンモニア、C1~C3第一級アルキルアミン及びC1~C2ジアルキル第二級アミンから誘導されるアミドが一般に使用される。本発明の化合物のアミドは、当業者に周知の方法に従って調製し得る。
【0492】
「プロドラッグ」という用語は、インビボで変換されて本発明の化合物を生じる化合物を意味する。変換は、血液中での加水分解によるなど、様々なメカニズムによって起こり得る。プロドラッグの使用は、T.Higuchi and W.Stella,”Prodrugs as Novel Delivery Systems,”Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series及びBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987で議論されている。
【0493】
例示すると、本発明の化合物はカルボン酸官能基を含有するので、プロドラッグは、酸基の水素原子を(C1~C8アルキル、(C2~C12))アルカノイルオキシメチル、炭素数4~9の1-(アルカノイルオキシ)エチル、炭素数5~10の1-メチル-1-(アルカノイルオキシ)エチル、炭素数3~6のアルコキシカルボニルオキシメチル、炭素数4~7の1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、炭素数5~8の1-メチル-1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、炭素数3~9のN-(アルコキシカルボニル)アミノメチル、炭素数4~10の1-(N-(アルコキシカルボニル)アミノメチル、3-フタリジル、4-クロトノラクトニル、ガンマ-ブチロラクトン-4-イル、ジ-N,N-(C1~C2)アルキルアミノ(C2~C3)アルキル(β-ジメチルアミノエチルなど)、カルバモイル-(C1~C2)アルキル、N,N-ジ(C1~C2)アルキルカルバモイル-(C1~C2)アルキル及びピペリジノ-、ピロリジノ-又はモルホリノ-(C2~C3)アルキルなどの基で置換することによって形成されるエステルを含むことができる。
【0494】
本発明の化合物は、不斉中心又はキラル中心を有し得、したがって、異なる立体異性体形態で存在し得る。ラセミ混合物を含む、化合物のすべての立体異性体形態及びそれらの混合物は、本発明の一部を形成することが意図される。さらに、本発明は、全ての幾何異性体及び位置異性体が意図される。例えば、化合物が二重結合を含有する場合、シス型及びトランス型の両方(それぞれ、Z及びEで示される)、並びに混合物が意図される。
【0495】
ジアステレオマー混合物などの立体異性体の混合物は、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶化のような周知の方法によって、それらの物理化学的差異に基づいて、それらの個々の立体化学成分に分離することができる。鏡像異性体はまた、適切な光学活性化合物(例えば、アルコール)との反応によって鏡像異性体混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、そして個々のジアステレオマーを対応する純粋な鏡像異性体に変換(例えば、加水分解)することによって分離することができる。また、いくつかの化合物はアトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)であり得る。
【0496】
本発明の化合物は、非溶媒和形態で、また水(水和物)、エタノールなどのような薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在し得る。本発明は、溶媒和形態及び非溶媒和形態の両方を意図し、包含する。
【0497】
また、本発明の化合物は、異なる互変異性体形態で存在することも可能である。本発明の化合物の全ての互変異性体が意図される。例えば、テトラゾール部分の互変異性体形態の全てが、本発明に含まれる。また、例えば、化合物の全てのケト-エノール又はイミン-エナミン形態が本発明に含まれる。
【0498】
当業者は、本明細書に含まれる化合物名及び構造が、化合物の特定の互変異性体に基づき得ることを認識するであろう。特定の互変異性体のみの名前又は構造を使用し得るけれど、特に断らない限り、すべての互変異性体が本発明に包含されることが意図される。
【0499】
本発明は、合成化学者に周知のような実験室的手法を用いてインビトロで合成されるか、又は代謝、醗酵、消化などによるインビボ手法を用いて合成される化合物を包含することも意図される。本発明の化合物は、インビボ及びインビトロ手法の組み合わせにより合成することも意図される。
【0500】
本発明はまた、同位体標識化合物も含むが、これは1つ以上の原子が、通常、天然に見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置換されるということがなければ、本明細書に列挙したものと同一であるようなものである。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、及び塩素の同位体、例えば、2H、3H、13C、14C、15N、16O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、及び36Clが含まれる。一態様では、本発明は、1つ以上の水素原子が重水素(2H)原子で置換されている化合物に関する。
【0501】
前述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物は、本発明の範囲内である。本発明の特定の同位体標識化合物、例えば、3H及び14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものは、薬物及び/又は基質組織分布アッセイに有用である。トリチウム化同位体、すなわち3H同位体、及び炭素-14同位体、すなわち14C同位体は、それらの調製及び検出の容易さのために特に好ましい。重水素、すなわち2Hなどの比較的重い同位体による置換は、より高い代謝安定性の結果としてもたらされる治療上の特定の利点、例えばインビボ半減期の増大又は投薬必要量の減少をもたらすことができ、したがって好ましい場合があり得る。本発明の同位体標識化合物は、一般に、容易に入手可能な同位体標識試薬で非同位体標識試薬を置き換えることによって調製することができる。
【0502】
本発明の化合物は、結晶状態及びアモルファス状態を含む様々な固体状態で存在することができる。本発明の化合物の異なる結晶状態(多形とも呼ばれる)及びアモルファス状態は、本発明の一部として意図される。
【0503】
本発明の化合物の合成では、特定の離脱基の使用が望ましいことがあり得る。「離脱基」(「LG」)という用語は、一般に、求核試薬によって置換可能な基を指す。そのような離脱基は、当技術分野において周知である。離脱基の例には、ハロゲン化物(例えば、I、Br、F、Cl)、スルホン酸塩(例えば、メシル酸塩、トシル酸塩)、スルフィド(例えば、SCH3)、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾールなどが含まれるが、これらに限定されない。求核試薬の例には、アミン、チオール、アルコール、グリニャール試薬、アニオン種(例えば、アルコキシド、アミド、カルバニオン)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0504】
本明細書に列挙される全ての特許、特許出願、及び他の文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0505】
以下に示す実施例では、本発明の具体的な実施形態を説明する。これらの実施例は代表的なものであることを意味し、いかなる方法においても特許請求の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0506】
AMG510は、強力な生化学的活性及び細胞活性、並びに頑健なインビボ効力を有するKRASG12Cの、経口的な生物学的利用が可能な共有結合阻害剤として開発された。AMG510で処理したNCI-H358細胞のシステインプロテオーム分析は、KRASのG12C含有ペプチドのみが共有結合的に修飾されたことを示した。AMG510は、組換え変異体KRASG12C/C118Aの、SOSで触媒されたヌクレオチド交換を阻害したが、12位において野生型であるKRASC118Aに対する影響は最小であった。細胞アッセイでは、AMG510は、KRASG12Cを共有結合的に修飾し、試験した全てのKRAS p.G12C-変異体細胞株で、ERK1/2のリン酸化によって測定される、KRASG12Cシグナル伝達を阻害したが、他の様々なKRAS変異を有する細胞株のERK1/2リン酸化を阻害しなかった。AMG510はまた、KRASp.G12C変異体細胞株の生存率を選択的に損なったが、他のKRAS変異を有する細胞株には影響しなかった。インビボ薬力学アッセイは、ヒト膵臓(MIA PaCa-2 T2)及びNSCLC(NCI-H358)腫瘍異種移植片のERK1/2(p-ERK)のリン酸化によって測定される、KRASG12Cシグナル伝達の用量依存的及び時間依存的阻害を示した。AMG510によるKRASG12Cの共有結合修飾を質量分析によって測定し、腫瘍のp-ERK阻害と相関させた。腫瘍を有するマウスの経時研究では、AMG510の血漿曝露は投与後0.5時間でピークに達し、その後、腫瘍のp-ERKの阻害が接近して続くことが示された。AMG510はMIA PaCa-2 T2及びNCI-H358異種移植片の増殖を有意に阻害し、高用量では腫瘍退縮をもたらした。共有結合KRASG12C阻害剤によるKRAS p.G12C株の処理は、HLAの発現を増加させた。AMG510と他の細胞シグナル伝達経路の阻害剤との併用処理は、細胞生存率に対して相乗効果があるという証拠を示した。AMG510と標準治療用カルボプラチンとの併用処理は、それぞれの単剤と比較して、NCI-H358腫瘍増殖阻害が増強されたことを示した。同様に、MEK阻害剤と併用したAMG510は、それぞれの単剤と比較して、抗腫瘍効力の増強をもたらした。
【0507】
インビボでの免疫サーベイランスに対するKRASG12C阻害の影響を試験するために、チェックポイント阻害剤療法と併用してAMG510を試験するのに適し、したがってインビトロでキャラクタライズされる新規の同系腫瘍細胞株を作製した。KRAS-G12C変異体がんの新しく開発されたモデルにおいて、AMG510による治療は、腫瘍増殖を有意に阻害し、退縮を引き起こした。驚くべきことに、AMG510と免疫チェックポイント阻害剤との併用は、全生存期間の著しい改善をもたらし、永続的な治癒に繋がった。マウスKRAS p.G12C腫瘍の免疫表現型検査は、治療後のT細胞浸潤の有意な増加があることを明らかにし、AMG510が、免疫チェックポイント阻害に対してより感受性の高い腫瘍微小環境を誘導し得ることを示唆した。
【0508】
<新規な同系CT-26 KRAS p.G12C腫瘍モデル>
【0509】
マウスCT26(結腸腫瘍#26)細胞は、1975年にBALB/cマウスをN-ニトロソ-N-メチルウレタン(NMU)に曝露することにより開発され、容易に移植され、容易に転移する急速増殖のグレードIVがん腫をもたらした。500を超える公表された研究で使用され、CT26結腸がん腫は、薬物開発において最も一般的に使用される細胞株の1つである。特定のシグナル伝達経路を標的とする多数の細胞毒薬物並びに治療薬が、これらの細胞を用いて研究されてきた。さらに、BALB/cマウスのCT26モデルは、同系インビボ試験システムを提供するので、免疫療法コンセプトの開発及び試験のために頻繁に使用される。BMC Genomics.2014 Mar 13;15:190.doi:10.1186/1471-2164-15-190.Immunomic,genomic and transcriptomic characterization of CT26 colorectal carcinoma.
【0510】
同系CT-26 KRAS p.G12C腫瘍モデルは、表A及び
図3、4、5、6、18、24、31、34、38及び39に概説されるように、細胞株と免疫療法の組み合わせ研究を可能にするために開発された。CT-26同系腫瘍細胞株は、親株に存在するKRAS-G12D変異を有することに基づいて選択された。KRAS-G12D変異の存在は、細胞株の増殖及び生存が構成的KRASシグナル伝達(G12D)によって駆動され、KRAS阻害に潜在的に感受性があることを示唆した。CT-26 KRAS p.G12C細胞は、CT-26マウス結腸直腸腫瘍細胞株から作製した。CRISPR技術は、Liangらにより、先行技術に記載されており、(Journal of Biotechnology 241(2017)136-146)当該技術を利用し、KRAS p.G12Dの両方の対立遺伝子を、配列 CTTGTGATGGTTGGAGCTGA(配列番号21)を使用してKRAS p.G12Cで置換した。クローン10は、次世代シーケンシング(NGS)により、KRAS p.G12C対立遺伝子に対してホモ接合であると決定され、CT-26 KRAS G12C-H10と同定される。この新しい単離された同系腫瘍細胞株CT-26 KRAS p.G12C(これは、AMG510によりKRASシグナル伝達が阻害される)は、すべての CT-26 G12Cのインビボ研究(
図3、4、5、及び6を参照されたい)及びインビトロ研究(
図18、24、31、34、38、及び39を参照されたい)に使用した。
【0511】
本発明は、2つのKRASG12C対立遺伝子を含む新規な単離細胞株を包含し、且つ、2つのKRASG12C対立遺伝子を含む細胞株を作製する方法であって、
a)2つのKRASG12C対立遺伝子が生成されるよう、2つのKRAS対立遺伝子の両ヌクレオチドの置換を誘発するCRISPR構築物とともに、2つのKRASG12D対立遺伝子を含む細胞株をインキュベートする工程;及び
b)2つのKRASG12C対立遺伝子を含む細胞株の単離工程、
を含む方法を包含する。
【0512】
ハイスループットシーケンシングとしても知られる次世代シーケンシング(NGS)とは、
・Illumina(Solexa)シーケンシング
・Roche 454シーケンシング
・Ion torrent:Proton/PGMシーケンシング
・SOLiD(商標)シーケンシング
を含む多くの異なる現代のシーケンシング技術を記述するために使用される、包括的な用語である。
【0513】
本発明では、Thermo-Fisher Scientificから市販されているIon Torrent(商標)Personal Genome Machine(商標)プラットフォームを使用した。これらの最近の技術は、科学者が、以前使用されたSangerシーケンシングよりもはるかに迅速且つ安価に、DNA及びRNAをシーケンシングすることを可能にする。
【0514】
<インビトロ細胞ベースの併用試験>
【0515】
細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSMZ)、及びJCRB細胞バンク(JCRB)から購入した。各株をその推奨増殖培地中で培養した。
【0516】
化合物の二元の組み合わせについては、初期密度をウェル当たり500~2500細胞の範囲とし、96ウェル又は384ウェルの細胞培養プレートのいずれかに細胞を播種した。16~24時間後、マトリックス化フォーマットで化合物を培養プレートに加え、1つの薬剤をx軸に沿って滴定し、第2の薬剤をy軸に沿って滴定した。任意の所与の細胞株について試験された全ての組み合わせで、各化合物の出発高濃度及び希釈因子は、最大曲線、最小曲線、及び組み合わせスクリーニングフォーマットで選択された用量範囲での勾配を十分に定義できるよう選択された。CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability(Promega)アッセイキットを使用して、生存細胞の数を決定した。
【0517】
発光は、各細胞株について、化合物添加前の時刻ゼロ(V0)、及び化合物処理72時間後に、EnVision(登録商標)Multilabel Reader(Perkin Elmer)により測定した。増殖阻害(GI)を、200ポイントスケールで、次の式に従って計算した(ここで、V72は72時間でのDMSO対照のルミネセンスであり、T72は、化合物で処理した試料のルミネセンスであった):T72>V0の場合、GI=100×(1-((T72-V0)/(V72-V0)));T72<V0の場合、GI=100×(1-((T72-V0)/V0))。GI値が0、100、及び200のであることは、それぞれ、細胞増殖の不阻害(すなわち、DMSO対照)、細胞うっ滞、及び完全細胞殺滅を表した。4パラメータロジスティックモデルを用いると、シグモイド型の用量応答曲線がプロットされた。データは、Loewe相加性モデルに基づき相乗作用スコアを生成する、Chalice(商標)Analyzerソフトウェア(Zalicus)を使用して相乗的相互作用について分析した。
【0518】
マトリックスの各ウェルについて増殖阻害を前述のように計算し、データは、Loewe相加性モデル(Lehar,J.,et al.(2009).“Synergistic drug combinations tend to improve therapeutically relevant selectivity.”Nat Biotech27(7):659-666)及びRickles,et al(2012)“Adenosine A2A and Beta-2 Adrenergic Receptor Agonists:Novel Selective and Synergistic Multiple Myeloma Targets Discovered through Systematic Combination Screening”Mol Cancer Therapeutics 11(7):1432)に基づき相乗作用スコアを生成する、Chalice(商標)Analyzerソフトウェア(Zalicus;Cambridge、MA)を使用して相乗的相互作用について分析した。
【0519】
Loewe ADD(相加性)モデル(
図7~37に示す)は、組合せの効果を定量化する。組み合わせは、最初、ADD Volume=ΣC
X,C
Y(I
data-I
Loewe)として定義されるAdditivity Excess Volumeによってランク付した(ここで、I
Loewe(C
X,C
Y)は(C
X/EC
X)+(C
Y/EC
Y)=1を満たす阻害であり、EC
X,Yは単剤曲線に対するI
Loeweでの有効濃度である)。「相乗作用スコア」も使用し、ここで、相乗作用スコアS=log f
X log f
Y ΣI
data(I
data-I
Loewe)は、全ての非単剤濃度対についての和であり、log f
X,Yは、各単剤で使用した希釈因子の自然対数である。これにより、相加応答表面の測定値とLoewe値との間の体積が効果的に計算され、高阻害に向けて重み付けが行われ、変化する希釈因子が補正される。I
data値及び標準誤差伝播について測定された誤差に基づき、各相乗作用スコアに対して不確実性σ
Sを計算した。
【0520】
示された実施例では、増殖阻害(%)マトリックスは、上記の式を使用して発光データから計算されるコンセンサス増殖阻害値を含み、ADDモデルの増殖阻害(%)マトリックスは、モデル化された単剤増殖阻害曲線から誘導されたLoewe相加性モデルに基づく予測増殖阻害値を含み;ADD過剰増殖阻害(%)マトリックスは相加性モデルを超える増殖阻害値を含む。相加性モデルは、「帰無仮説」として機能し、2つの薬剤間の相乗的相互作用はないと仮定される。増殖阻害用量応答マトリックスからADDモデルを減じた(=ADD過剰増殖阻害)後に観察される活性は相乗作用の指標である。
【0521】
下記表Aは、特定のがん型のための、KRAS
G12C阻害剤と1つ以上のさらなる薬学的に活性な薬剤との特定のインビトロ併用を示す。得られたデータで、
図7~39に要約されたデータは、併用療法の個々のメンバーが単独で使用される場合に予想される活性よりも、表Aに示された併用が、増強された抗がん活性を示すことを示す。観察される療養の相乗作用の大きさは、治療されるがんの種類及び使用される薬剤に依存して変化し得ることに留意される。
【0522】
【0523】
<インビボ腫瘍異種移植片併用試験>
【0524】
インビボ腫瘍異種移植片試験は、これらの一般的な手順に従って行った:
腫瘍細胞を培養し、採取し、雌の無胸腺ヌードマウスの右の脇腹に皮下移植した。腫瘍が約200mm3に達したとき、マウスを治療群(n=10/群)に無作為化し、治療を開始した(グラフに示す日に)。腫瘍の大きさ及び体重は、週に2~3回測定した。腫瘍体積は、デジタルキャリパーによって測定し、L×W×Hとして計算し、mm3で表した。増殖曲線間で観察された差異の統計的有意性は、対数変換された腫瘍体積データの反復測定共分散分析(RMANOVA)によって評価し、ダネット調整多重比較を使用して、対照群を処置群と比較した。併用試験のために、RMANOVAを、各単剤治療群と1対1で比較した併用群で実施した。
【0525】
BD Matrigel(商標)Basement Membrane Matrixは、Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫(BD Biosciences、San Jose、CA)から抽出された可溶化基底膜調製物である。
【0526】
全ての試験は、盲検様式で測定した。
【0527】
図3、4、5及び6において、抗マウスPD-1(クローン29F.1A12)抗体は、Bio X Cell、West Lebanon、New Hampshireから市販されている。
【0528】
図1、2、3、4、5、及び6は、KRAS
G12C阻害剤と、特定のがんの種類用の、1つ以上のさらなる薬学的に活性な薬剤との特定のインビボ併用を例示する。得られたデータで、図に要約されたデータは、併用療法の個々のメンバーが単独で使用される場合に予想される活性よりも、図に示された併用が、増強された抗がん活性を示すことを示す。観察される療養の相乗作用の大きさは、治療されるがんの種類及び使用される薬剤に依存して変化し得ることに留意される。
【0529】
図4では、CT26-KRASG12C同系腫瘍モデルのAMG510及び抗PD1抗体(クローン29F.1A12)による併用治療は、いずれかの単剤治療と比較して、有意に改善された生存性をもたらし、永続性の治癒に繋がった。AMG510単剤療法、又は抗PD1単剤療法は、対照群と比較して腫瘍増殖の遅延をもたらした。各単剤療法治療は、1/10の完全寛解をもたらした。AMG510+抗PD1の併用治療は、9/10の完全寛解をもたらした。これらは永続的治癒とみなされ、これらの9匹のマウスは治療を停止した後(43日目)、試験を終了した57日目まで、腫瘍フリーの状態であった。
【0530】
<AMG510の結合性及び効力の増強>
【0531】
ARS-1620はKRAS
G12Cの直接阻害のアプローチを検証したが、臨床試験に適した改善された阻害剤の同定は困難であることが実証されている。発明者らは、重要な課題は、ARS-1620が占めるアロステリックポケットの体積が小さいことによる、最適以下の効力にあると考えており、これは追加のタンパク質-リガンド相互作用に対して限られた手段を提供する。これは、ARS-1620とヒスチジン95(H95)との間の水素結合が顕著に特徴的な(破線)、KRAS
G12C/ARS-1620共有結合複合体(
図40(a))のX線結晶構造によって示された。発明者らのブレークスルーは、H95の代替配向によって作られた表面溝が置換芳香族環に占有され、これがKRAS
G12Cとの相互作用の増強を可能にするという発見であった。AMG510は、改善された効力と好ましい開発特性の収束が見られたことから、H95の溝への結合分子最適化キャンペーンからトップ候補として出現した。共有結合性AMG510-KRAS
G12C複合体のX線共結晶構造(
図40(b))は、KRASのP2ポケットでのAMG510の結合を強調する。イソプロピル-メチルピリジン置換基は、Y96、H95、及びQ99の間の溝を占め、ヘリックス2(H95、Y96)の主鎖からフレキシブルスイッチIIループ(E62、E63)の主鎖まで延伸する、25個のリガンド-タンパク質ファンデルワールス接触の連続ネットワークに参加する。
【0532】
増強された相互作用がAMG510の効力に及ぼす影響を評価するために、発明者らは、非C12システインとの反応性を回避するために、残基118位置にシステインからアラニンへの追加の置換を有する、組換えGDP結合KRAS
C118A又はKRAS
G12C/C118Aを用いた2つのアッセイを使用した。酵素ヌクレオチド交換アッセイは、KRASの両バージョンへのc-RAFのRAS結合ドメイン(RBD)の結合を促進させるために、SOS1で触媒されたGDP/GTP交換を利用した。40分間の反応で、AMG510は、ARS-1620より約10倍大きい効力(平均IC
50=0.09μM)を示した(
図40(c))。AMG510はKRAS
C118Aをあまり阻害せず(
図40(c))、AMG510の非反応性類似体はこれらのアッセイで最小の活性を有した(
図46(a))。擬一次条件下でのAMG510とGDP-KRAS
G12C/C118Aとの間の反応速度を質量分析(MS)により測定した。濃度-速度データの非線形フィッティング(
図40(d))から、反応の最大速度k
inact=0.85±0.08s
-1及び最大値の半分の速度におけるAMG510の濃度K
I=8.6E-05±1.4E-05Mが得られ、k
inact/K
I比は9.8E+03±1.8E+03M
-1s
-1となった。AMG510とKRAS
G12C/C118Aとの間の反応速度は、ARS-1620と比較して有意に改善された。臨床でのシステイン標的キナーゼ阻害剤と比較して、AMG510は、有意に、より大きいk
inactにより特徴付けられ、これはARS-1620について以前に記述されているKRAS誘導触媒機構と一致する。AMG510と5mMグルタチオンとの非特異的反応性は比較的遅く(AMG510t
1/2=196分)、臨床的共有結合性アクリルアミドの範囲内であった。
【0533】
<腫瘍細胞のシグナル伝達及び増殖の阻害>
【0534】
ERK1/2(p-ERK)の基底リン酸化を測定することによって、またMSにより、AMG510によるKRAS
G12Cとの共有結合(すなわち占有)を検出して、AMG510の細胞活性を評価した。2つのKRAS p.G12C細胞株で、AMG510は、2時間処理後にp-ERK(IC
50は、それぞれ約0.02及び0.03μM)をほぼ検出不可能なレベルにまで強力に阻害し、ARS-1620より20倍強力であった(
図40(e))。この阻害は、AMG510によるKRAS
G12Cの占有を入念に追跡し、両アッセイで約0.2μMのときほぼ最大レベルが達成された(
図40(f))。AMG510はまた、両株において細胞生存率を強力に害した(IC
50は、約0.006μM及び0.009μM、ARS-1620より約40倍強力)(
図40(g))。
【0535】
AMG510によるKRAS
G12Cの占有を反映する、p-ERKの阻害の時間依存性及び濃度依存性を用いて、2つのKRAS p.G12C細胞株におけるAMG510の細胞反応速度を決定した。p-ERK阻害の速度はAMG510の濃度と共に増加し、3μMを超える濃度で飽和が起こった。AMG510及びARS-1620についての濃度-速度曲線のフィッティング(
図40(h)及び
図46(b))から、AMG510によるKRAS
G12Cの阻害に対する細胞反応速度効率は、ARS-1620よりも約23倍大きいことが示された。AMG510によるERKリン酸化の最大阻害速度(8.9E-04s
-1)は、最近の反応速度モデルで提案された律速のGTP-KRAS
G12C加水分解速度(EGFR阻害からの推定速度=4.2E-04s
-1;t
1/2=27.4分)より約2倍大きい。KRAS
G12CによるGTP加水分解速度の別の推定を得るために、SHP2阻害剤を使用して、KRASへの全ての上流シグナル伝達を排除した。この実験から、細胞GTP加水分解速度として9.4E-04s
-1(t
1/2=12.2分;
図46(c))が得られ、AMG510で観察された速度と一致した。
【0536】
KRAS
G12C阻害によるシグナル伝達の影響をより広範に評価するために、複数回用量のAMG510で2つの細胞株を4時間及び24時間処理し、ウェスタンブロットを行って複数のシグナル伝達ノードを評価した(
図41(a))。KRAS
G12CによるAMG510の共有結合付加物の形成は、比較的遅く移動するKRASバンドの移動度のシフトによって検出された(上の矢印)。このシフトした種は時間及び用量の増加と共に蓄積し、両細胞株におけるMAPK経路の下流での阻害(すなわち、p-MEK1/2及びp-ERK1/2)と一致した(
図41(a)、(b))。AMG510によるKRAS阻害はまた、活性EGFR(p-EGFR Y1068)の蓄積に繋がった。AKTリン酸化(p-AKT)の阻害は1つの株で明らかであったが、リボソームタンパク質S6のリン酸化(p-S6)の減少が両株で24時間の場合に観察された。カスパーゼ-3の切断も24時間で観察され、アポトーシス誘導が示唆された。より広範囲の経過時間では、0.1μMでのAMG510処理(
図41(b))はMAPK及びEGFRに対して迅速な(<2時間)及び持続的な(>24時間)効果を誘発したが、p-S6及びカスパーゼ切断は、両株で処理の8~16時間後に出現した。
【0537】
活性及び選択性を評価するために、ヘテロ接合性か若しくはホモ接合性の、いずれかのKRAS p.G12C又はp.G12C以外のKRAS変異体を宿す22の細胞株、及び野生型(WT)KRAS株で、AMG510のプロファイリングを行った。AMG510による2時間の処理は、全てのKRAS p.G12C細胞株で基底p-ERKを阻害し、IC
50値は0.010μM~0.123μMの範囲であった(
図41(c)及び補足表1)。AMG510は、いずれの非KRAS p.G12C株でもp-ERKを阻害しなかった(IC
50>10μM;
図41(c)及び補足表1)。
【0538】
細胞生存率アッセイにおいて、AMG510は、SW1573を除く全てのホモ接合性及びヘテロ接合性KRAS p.G12C細胞株の増殖を害し、IC
50値は0.004μM~0.032μMの範囲であった(
図41(d)及び補足表1)。すべてのKRAS p.G12C株は、p-ERKに対して同様の最大阻害を示したが、細胞生存率に対する最大効果は変化した。p.G12C以外のKRAS変異を有する細胞株又はKRAS以外の遺伝子に変異を有する細胞株は、AMG510に対して感受性を有しなかった(IC
50>7.5μM;
図41(d)及び補足表1)。KRAS p.G12Cのサブセット細胞株を選択して、スフェロイド生成を誘導するには低付着の条件下で、生存率を評価した。他のKRAS
G12C阻害剤で報告されているように、これらの条件は、全ての試験した株のAMG510に対する感受性を増強し、20倍までの効力の増加及び2.5倍の最大阻害の増加をもたらした(
図41(e)、
図46(d)、及び補足表1)。SW1573は、おそらく共に生じたドライバー変異、PIK3CA p.K111Eによって、最小限の感受性に留まった。
【0539】
AMG510とKRAS
G12Cとの共有結合相互作用の選択性をさらに決定し、細胞中の他の潜在的な「オフターゲット」システイン含有タンパク質を同定するために、MSによるシステイン-プロテオームのプロファイリングを記述のように行った。細胞をDMSO又は1μMのAMG510(>30倍p-ERK IC
50)で4時間処理した後、システインプロテオームを富化し、ペプチドを同定した。6451個のユニークなシステイン含有ペプチドのうち、KRAS
G12C由来のCys12ペプチドが、共有結合標的関与についての基準を満たす唯一の同定されたペプチドであった(
図41(f))。
【0540】
<AMG510は、インビボでKRASシグナル伝達を阻害する>
【0541】
KRAS
G12Cシグナル伝達に対するAMG510の経口治療の効果を、p-ERKを測定する薬力学(PD)アッセイで評価した。KRAS p.G12Cを有するヒト腫瘍で、AMG510は、治療の2時間後、用量依存的にp-ERKを阻害した(
図42(a)、(b))。AMG510処理(100mg/kg)後のp-ERKの阻害は、対照と比較して69%(MIA PaCa-2 T2)~83%(NCI-H358)の範囲で減少した。p-ERKレベルに対するAMG510の同様の効果は、CRISPR技術を用いて作製された、同系CT-26 KRAS p.G12C株を用いたマウス腫瘍モデル(
図47(a))で観察された。経時的PDアッセイは、単回投薬(10mg/kg)の0.5時間後に、AMG510の血漿及び腫瘍への曝露がピークに達することを示し、処理後2~4時間でp-ERKの最大阻害をもたらし、48時間、持続し且つ有意な阻害をもたらした(
図42(c)、(d))。これは、KRAS
G12Cタンパク質の比較的長い20~24時間の半減期と一致する(
図46(e))。
【0542】
さらに、並行実験で、AMG510によるKRAS
G12Cの占有率をMSによって測定したところ、最高用量(100mg/kg)では占有率は100%に近づき、p-ERKの最大の抑制と相関があった(
図42(e)及び(f))。経時試験から、AMG510による部分占有は0.5時間後に検出可能であり、2時間後に約100%の占有が観察されることが示された(
図42(g))。
【0543】
<インビボでの変異体選択的腫瘍阻害>
【0544】
マウス内で、ヒトKRAS p.G12C及びKRAS p.G12V(SW480-1AC)腫瘍異種移植片の増殖を阻害する能力について、AMG510を評価した。AMG510はすべての用量レベルでMIA PaCa-2 T2及びNCI-H358腫瘍の増殖を有意に阻害し、より高い用量で腫瘍退縮が観察された(
図43(a)、(b))。対照的に、AMG510の処理はKRAS p.G12V腫瘍の増殖に影響を及ぼさなかった(
図47(b))。AMG510の血漿レベルは、全てのモデルで一貫していた(データは示さず)。免疫コンピテントマウスで増殖させたマウスCT-26 KRAS p.G12C腫瘍モデルでは、AMG510は腫瘍増殖阻害をもたらし、最高用量では退縮をもたらした(
図43(c))。10匹のマウスのうち2匹(100mg/kg群)は、試験が29日目に終了したときに検出可能な腫瘍を有さなかった。AMG510はまた、ヒトKRAS p.G12C変異体患者由来異種移植片(PDX)のマウスでの増殖を有意に阻害した(
図43(d)及び
図47(c))。
【0545】
<臨床活性の証拠>
【0546】
AMG510の増強された効力、頑強な有効性、及び好ましい医薬プロフィールは、臨床試験に入る最初のKRAS
G12C阻害剤としての選択を促した(臨床試験.gov NCT03600883)。特に、患者の最初の2つのコホートで、AMG510の治療は、KRAS p.G12CNSCLCを有する2人の患者で客観的部分応答(RECIST1.1による)をもたらした(
図43(e)及び
図47(d))。両患者は、病気の進行が文書化されており、それまでに、カルボプラチン、ペメトレキセド、及びニボルマブを含む複数の全身治療を受けるまでに進行していた。第1の患者は、AMG510治療の6週間後に34%の腫瘍縮小を示した。第2の応答者は、AMG510治療のほんの2週間後に67%の腫瘍減少を示した。これらの患者は、それぞれ、6ヶ月及び2ヶ月後も(この米国仮特許出願日時点)、AMG510の治療を継続している。有害事象は報告されなかった。これらの患者は変異体特異的KRAS阻害剤に応答した最初の患者となり、KRAS p.G12C変異腫瘍を有するがん患者のマイルストーンを表す。
【0547】
<併用時の効力の増強>
【0548】
肺腺がんにおけるKRAS p.G12Cの高い有病率を考慮し、AMG510と、肺がんの標準的な化学療法薬であるカルボプラチンとの併用治療を、NCI-H358モデルで検討した。単剤(AMG510又はカルボプラチン)のいずれかによる治療は、有意な腫瘍増殖阻害をもたらした(
図44(a))。しかしながら、種々の用量での併用治療は、有意に改善された抗腫瘍効力をもたらした(
図44(a)及び
図47(e))。我々の知る限りでは、これは変異体選択的KRAS阻害剤と化学療法薬との併用による増強された効力の最初の実証であり、臨床でのこのアプローチの根拠を与える。
【0549】
BRAFとMEK阻害剤を併用する、臨床的に検証された戦略は、MAPK(及びAKT)シグナル伝達経路におけるAMG510と他の阻害剤との併用が、腫瘍細胞の殺滅を増強し、耐性
26を克服し得ることを示唆する。したがって、AMG510と、HERキナーゼ、EGFR、SHP2、PI3K、AKT及びMEK阻害剤のマトリックスを用いて、いくつかのKRAS p.G12C細胞株のインビトロ併用実験を行った(
図48)。AMG510によるp-EGFRの誘導によって示唆されるように(
図41(a))、AMG510と複数の薬剤との併用は、NCI-H358での相乗的な腫瘍細胞殺滅をもたらした(
図44(b)及び
図48)。相乗作用は他の株ではより限定的であったが、MEKiとの併用は複数の設定で相乗作用を有し、スフェロイド増殖条件下で増強された(
図44(b))。有意に増強された抗腫瘍活性はまた、いずれかの単剤単独と比較したとき、MEKiと併用したAMG510の最小有効用量を用いたインビボで観察された(
図44(c))。これらのデータを合わせると、AMG510と、MAPK経路中の他のノードを標的とする薬剤とを併用し、効力を制限し得るか、又は耐性を誘導し得る残留シグナル伝達若しくはバイパスシグナル伝達を消滅させる、興味深い臨床アプローチが示唆される。
【0550】
<炎症誘発性腫瘍微小環境>
【0551】
免疫チェックポイント、プログラム細胞死1/プログラム死リガンド1(PD-1/PD-L1)軸の遮断は、臨床的に検証されており、特定のがん患者に対して承認される。抗PD-1療法と併用したAMG510の活性を、免疫コンピテント設定で、CT-26 KRAS p.G12Cモデルにより評価した。この株はKRAS p.G12C対立遺伝子(
図49(a)、(b))に依存し、AMG510に感受性を有した(
図43(c)及び
図47(a))。以前に示したように(
図43(c))、AMG510は、単剤で腫瘍退縮をもたらした(
図45(a))。しかしながら、時の経過と共に、10個の腫瘍のうち1個のみが完全に退縮したままであった(
図45(a))。抗PD-1単剤療法は、腫瘍増殖を遅延させ、10個の腫瘍のうち1個のみが完全な退縮を示した。驚くべきことに、併用治療は、10匹のうち9匹の完全な応答をもたらした(
図45(a))。治療は43日後に停止し、さらに112日間マウスのモニターを継続した。併用治療からの全ての完全な応答体は、検出可能な腫瘍がない状態を続け、AMG510と抗PD-1抗体との併用は、永続性のある治癒をもたらしたことを示した。代用生存エンドポイント(腫瘍体積>800mm
3)を用いると、併用治療は、単剤療法と比較して生存の顕著な増加をもたらした(
図45(b))。
【0552】
腫瘍中の免疫細胞組成に対する治療の効果を理解するために、治療後にCT-26 KRAS p.G12C腫瘍の免疫表現型を決定した。治療の4日後、AMG510は、顕著に増加したT細胞、主にCD8+T細胞の浸潤をもたらした(
図45(c)及び
図50(a))。CD8+T細胞浸潤の増加は、また、抗PD-1単剤療法後には起こらないので、AMG510によって主に駆動される併用群で観察された。追加の比較として示せば、RASの下流でMAPKシグナル伝達を遮断し(
図50(b))、AMG510と同様のCT-26 KRAS p.G12C腫瘍増殖阻害(
図50(c)、(d))をもたらしたMEK阻害剤(MEKi)は、浸潤CD8+T細胞の数に影響を及ぼさなかった(
図45(c))。AMG510治療はまた、マクロファージ及び樹状細胞の浸潤の増加をもたらし、これはMEKiでは観察されないことであった(
図45(c))。CD8+T細胞上でのPD-1発現は、AMG510及びMEKiの両方によって中程度に増加した(
図44(a))。全腫瘍RNAを治療後に精製し、免疫遺伝子パネルの転写プロファイルを評価した。わずか2日間の治療後、AMG510によるKRAS
G12Cの阻害は、インターフェロンシグナル伝達、抗原プロセシング、細胞傷害性及びNK細胞活性の増加、並びにMEK阻害によって誘導される効果と比較して有意に高い先天性免疫刺激マーカーを特徴とする炎症誘発性微小環境を誘導した(
図45(d)及び
図44(e))。AMG510はまた、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍細胞上にMHC-Iタンパク質の発現を誘導した(
図45(e)及び
図50(f))。これらのデータは、腫瘍細胞に対するAMG510の治療効果は、T細胞プライミング及び抗原認識の増加をもたらし得ることを示唆した。これを試験するために、併用治療からの治癒マウス(
図45(a))を、CT-26 KRAS p.G12C及び親CT-26(KRAS p.G12D)、又はCT-26 KRAS p.G12Cの両側腫瘍並びに無関係なマウス乳房腫瘍モデル4T1で再検証した。 4T1腫瘍(4/4)はすべて増殖したが、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍のいずれも(0/8)増殖しなかった(
図45(f))。特に、CT-26親腫瘍を受けた全てのマウスは、40日後には腫瘍が消失した(
図45(f))。ナイーブマウスの別の対照群では、15匹中15匹(100%生着率)で、親CT-26及びCT-26 KRAS p.G12C腫瘍が増殖した(
図50(g))。治癒したマウスから採取した脾臓細胞を、CT-26、CT-26 KRAS p.G12C又は4T1腫瘍細胞で刺激し、分泌されたIFN-γのレベルを、腫瘍特異的T細胞プライミング及び活性のマーカーとして測定した。CT-26 KRAS p.G12C細胞及び親CT-26細胞は、約3倍のIFN-γの増加を引き起こしたが、これは4T1細胞では誘導されなかった(
図45(g))。
【0553】
<考察>
【0554】
KRASG12CのH95溝との新規な相互作用の発見は、臨床活性の証拠が患者から得られた画期的な経口KRASG12C阻害剤である、AMG510の著しく増大した効力及びその同定を可能にするものである。AMG510は、KRAS p.G12C腫瘍を選択的に標的とし、細胞傷害性の標的化薬剤との併用により、腫瘍細胞を相乗的に殺滅する。AMG510誘発腫瘍細胞死は、免疫チェックポイント阻害に精巧に応答する炎症性腫瘍微小環境をもたらした。抗PD-1とMEKiの併用治療はいくつかの報告で説得力のある前臨床効力を示しており、これはT細胞浸潤の増加と関連していた。本研究では、選択的KRASG12C阻害後の免疫細胞浸潤は、MEKiによって誘導されたものよりも有意に頑強であった。T細胞増殖及びプライミングを妨害する、非腫瘍選択的MEKiの報告された効果とは対照的に、AMG510によるKRASG12Cの選択的阻害は、T細胞プライミングの増加をもたらした。これらのデータは増強された抗原認識とT細胞記憶のモデルを支持し、それによって、AMG510に誘導された腫瘍細胞死は、抗PD-1治療との併用で、非p.G12C腫瘍が認識され、根絶されるような適応免疫応答を生じる。腫瘍内KRASの変異状態は、同じ腫瘍内並びに原発部位と転移部位との間の両方で不均一であり得るという十分な証拠がある。総合すると、発明者らのデータは、KRASG12Cの発現が不均一である設定においてでも、AMG510は有効な抗腫瘍剤であり得ることを示唆する。
【0555】
<方法>
【0556】
<リコンビナントタンパク質>
リコンビナントHis標識ヒトKRASG12C/C118A(1-169)、GST-ヒトc-RAF(1-149)、及びHis標識ヒトKRASC118A(1-169)を大腸菌(Escherichia coli)内で発現させ、アフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。リコンビナントHis標識ヒトSOS1(564-1049、昆虫コドン最適化)をトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)内で発現させ、アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した;His標識を除去した後、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。Ostremら15の研究に基づき、共結晶化研究のためにシステインライト変異体構築物を使用した。リコンビナントHis標識ヒトKRASG12C/C51S/C80L/C118S(1-169)を大腸菌(E.coli)内で発現させ、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製し、結晶化のためにHis標識を除去した。
【0557】
<化合物及び抗体>
ARS-1620、PD-0325901、トラメチニブ、アファチニブ、エルロチニブ、RMC-4550及びAZD5363は市販品を入手した。AMG511は自社で合成した。AMG510及びその非反応性プロピオンアミドの合成は、本明細書に記載されている。インビトロ実験に使用するAMG510及び他の全ての阻害剤のストックは、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)の10mM溶液として調製した。インビボ研究用に、AMG510及びMEKi(PD-0325901)は、2%HPMC、1%Tween 80中に処方し、10mL/kgで毎日経口強制投与した。10mg/mLのカルボプラチンストック溶液を、1%PBS中で5mg/mL又は3mg/mLにさらに希釈し、週に1回腹腔内注射(IP)によって投与した。ラット抗マウスPD1クローン29F.1A12をキメラ化して、マウスIgG1バックボーンを含有させた。さらに、エフェクター機能を低下させるために、Fc受容体サイレンシング変異N297GをIgG重鎖領域に導入した。抗PD-1抗体、29F.1A12を1×PBS中で500μg/mLの濃度に希釈し、3日に1回、I.P.により合計3回の注射で投与した。ウェスタンブロッティングで使用した全ての抗体は、抗RAS(Abcam)、抗ホスホ-ERK1/2(ThermoFisher Scientific)、及び抗ベータ-アクチン-HRP(Sigma)を除いて、Cell Signalingから購入した。
【0558】
<細胞株>
National Cancer Instituteから入手したKM12及びNCI-H3122を除いて、すべての細胞株はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。短いタンデム反復(STR)プロファイリングによって細胞株を認証した。インビボの増殖反応速度を改善するために、MIA PaCa-2 T2及びSW480-1AC細胞を、それぞれMIA PaCa-2及びSW480細胞をマウスに継代することによって作製した。CT-26 KRAS p.G12C細胞を、CRISPR技術を用いてマウスCT-26結腸直腸株から作製し、KRAS p.G12Dの両対立遺伝子をp.G12C(ThermoFisher Scientific)で置換した。クローンH10は、KRAS p.G12C対立遺伝子についてホモ接合と決定され、CT-26 KRASp.G12C-H10と同定され、CT-26 KRASp.G12Cと呼ばれる。全ての細胞株を、10%ウシ胎児血清及び1×ペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミンで補強したRPMI1640培地により、37℃、5%CO2で、加湿インキュベーター中で培養した。
【0559】
<X線結晶学>
20mMのHEPES(pH7.5、150mM NaCl)中の精製無標識KRASG12C/C51S/C80L/C118S(「KRAS」)を40mg/mLに濃縮し、DMSOに溶解した2倍モル過剰の固体AMG510化合物に加えた。タンパク質-複合体試料を、RTで16時間、オービタルシェーカーに載せ、続いてスピン濾過した。共結晶化は、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて行った。「KRAS」-AMG510タンパク質-複合体試料及び結晶化緩衝液(1mM MgCl2、0.1M MES pH6.5、30%重量/体積のポリエチレングリコール4000)を混合した。20℃、1日で、扁平な棒状結晶が現れた。
【0560】
結晶は液体窒素中で凍結する前に、凍結保護剤として結晶化緩衝液中で平衡化した。Advanced Light Source Beamline 5.0.1において、波長0.97741Å、温度100Kで、Pilatus6Mシリコンピクセル検出器によりデータセットを収集した。データを統合し、HKL2000を用いてスケーリングした。結晶は、直方晶系空間群P212121に属し、a=40.9Å、b=58.4Å、c=65.9Å、α=90°、β=90°、γ=90°の単位格子寸法を有する(補足表2を参照されたい)。MolRepを用い、アポKRAS構造を探索モデルとして分子置換により構造を解いた。非対称単位には1つのタンパク質分子が存在する。Refmac5を用いて構造を精密化し、グラフィックスプログラムCootを用いてモデル構築を行った。PRODRGを用いてリガンドを作成した。GDP及びAMG510に結合したKRASG12C/C51S/C80L/C118Sの構造は、R因子18.1%及びRfree21.5%で1.65Åに精密化された。ラマチャンドランの統計は98.2%が好ましい領域、1.8%が許容領域にあり、許容されない領域にはなかった。アミノ酸残基105~107は、結晶構造中では未解決であった。原子座標及び構造因子は、蛋白質構造データバンク(PDB IDコード:まだ割り当てられていない)に寄託されるであろう。
【0561】
<カップリングされたヌクレオチド交換アッセイ>
KRASG12C/C118A又はKRASC118AのSOS1で触媒されたヌクレオチド交換活性の阻害を、Alpha(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)技術を用いて測定した。反応緩衝液(25mMのHEPES、pH7.4;10mMのMgCl2;0.01%Triton X-100)中、室温(RT)で5分間、2倍連続希釈AMG510又はDMSOと共に、20nMのGDP結合ヒトKRASG12C/C118A又はKRASC118Aタンパク質をインキュベートした。その後の全ての工程で、1mMの最終濃度でDTTを反応緩衝液に加えた。次に、DTT反応緩衝液中に、1.25mM又は500nMの最終濃度でGTP及びSOS-1をそれぞれ加え、RTで30分間インキュベートした。最後に、c-RAF RBD(最終50nM)、αグルタチオンドナービーズ(PerkinElmer;最終20μg/mL)、及びAlphaLISA(登録商標)ニッケルキレートアクセプタービーズ(PerkinElmer;最終20μg/mL)(すべてDTT反応緩衝液で希釈した)を加えた。反応混合物をRTで5分間インキュベートし、その後、AlphaScreenプロトコルを使用して、EnVision(登録商標)Multilabel Readerでプレートを読み取った。680nmで180ms間励起した後、570nmで発光シグナルを測定した。シグナル強度はc-RAF RBDと、GTP結合KRASG12c/C118A又はKRASC118Aとの会合に対応し、DMSO対照に対して正規化した。
【0562】
<ERK1/2リン酸化アッセイ>
細胞アッセイ用に、ウェル当たり2.5E+04個の細胞を96ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2で終夜インキュベートした。翌日、3倍連続希釈化合物又はDMSOを細胞に加え、5%CO2、37℃でプレートを2時間インキュベートした。処理後、細胞を氷冷PBSで洗浄し、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を含有するRIPA溶解緩衝液(50mMのTris-HCl、pH7.5;1%Igepal;0.5%デオキシコール酸ナトリウム;150mMのNaCl;0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)中で溶解した。ホスホ-ERK1/2全細胞溶解キット(Meso Scale Discovery)を製造者のプロトコルに従って使用した処理細胞溶解物中で、基底ERK1/2リン酸化レベルを測定した。シグナル強度は、ホスホ-ERK1/2レベルに対応し、DMSO対照に対して正規化した。
【0563】
インビボ薬力学アッセイからの腫瘍細胞溶解物については、製造業者のプロトコルに従って、ホスホ-ERK1/2及び全ERK1/2全細胞溶解物キット(Meso Scale Discovery)を使用し、1試料当たり50μgの総タンパク質を分析した。所与の試料について、ホスホ-ERK1/2シグナルを全ERK1/2シグナルに対して正規化し、ERKリン酸化の%阻害をビヒクル群に対して計算した。
【0564】
<細胞生存率アッセイ>
接着生存アッセイ用に、ウェル当たり0.5~1.0E+03個の細胞を384ウェルプレート(又は96ウェルプレートにウェル当たり2.5~4.0E+04個の細胞)に播き、37℃、5%CO2で終夜インキュベートした。翌日、連続希釈化合物又はDMSOを細胞に加え、5%CO2、37℃でプレートを72時間インキュベートした。細胞生存率は、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayキット(Promega)を製造者のプロトコルに従って使用して測定した。処理した試料の発光シグナルをDMSO対照に対して正規化した。
【0565】
スフェロイド生存率アッセイ用に、ウェル当たり2.5~4.0E+04個の細胞を96ウェルのスフェロイドマイクロプレート(Corning)に播き、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。CellTiter-Glo(登録商標)3D Cell Viability Assayキット(Promega)を製造者のプロトコルに従って使用し、生存率を測定したことを除いて、上記と同じ手順に従った。
【0566】
<相乗的併用試験>
AMG510と他の阻害剤との相乗的相互作用をインビトロで評価するための併用実験を、以前に記載されているように実施した(Saiki,A.Y.et al.MDM2 antagonists synergize broadly and robustly with compounds targeting fundamental oncogenic signaling pathways.Oncotarget 5,2030-2043,doi:10.18632/oncotarget.1918(2014)).
【0567】
<速度論的解析>
共有結合阻害剤-KRASG12Cの付加物の形成を、先に記載したようにMSを用いて測定した44。Prism(GraphPad Software)を使用して、種々のインキュベーション時間における、種々の阻害剤濃度についての相対%結合値を指数方程式でフィッティングし、試験した各濃度についてのkobs値を生成した。次いで、得られたkobs値を阻害剤濃度に対して再プロットして、kinact及びKi値を生成した。
【0568】
細胞内における共有結合阻害剤-KRASG12C付加物形成の速度論値を決定するために、種々のインキュベーション時間で種々の阻害剤濃度で処理した後に、正確に上記のようにして、基底ERK1/2リン酸化レベルを測定し、%活性値を速度論的計算のために使用した。
【0569】
<システインプロテオーム解析>
ヒト非小細胞肺がんNCI-H358細胞を2.0E+06細胞/10cmプレートで播種し、37℃、5%CO2で終夜インキュベートした。翌日、細胞を1μMのAMG 510又はDMSO(n=5)で処理し、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。処理後、プロテアーゼ阻害剤を含有する氷冷PBSで細胞を洗浄し、次いでプレートから取り出した。IQ Proteomics、LLCにおいて、Patricelliらによって記載された彼らのプロトコルに従って、質量分析(MS)によりスナップ凍結細胞ペレットを処理した。簡単に述べると、細胞ペレットを溶解し、100μMのデスチオビオチンヨードアセトアミドで処理して、溶媒に暴露されている残りの未反応のシステインを標識した。トリプシン消化後、各試料から生成されたペプチド混合物を、(商標)T-10plex(Tandem Mass Tag)同重核標識試薬(ThermoFisher Scientific)で標識した。標識後、試料を混合し、その後、高容量ストレプトアビジンアガロースを用いてデスチオビオチニル化ペプチドを濃縮した。濃縮されたペプチドを、Orbitrap Lumos質量分析計(ThermoFisher Scientific)で3時間グラジエント及び同期式前駆体選択(SPS)に基づくMS3法を使用して、ナノLC-MSによって分析した。SEQUESTを利用するHarvard Medical SchoolのGygi Labで開発された、カスタム情報パイプラインでデータベース検索を行うことにより、デスチオビオチニル化されたペプチドが同定された。変異体KRASG12Cタンパク質配列及び一般的な汚染物質を添付した、Human Uniprot(2018)タンパク質配列データベースで、すべてのスペクトルを検索した。ペプチド及びタンパク質を1%の偽発見率(FDR)にまで濾過し、最小シグナルノイズ比が200で、且つ単離純度が50%を超える基準を満たすペプチドのみを定量分析に使用した。統計分析のための全てのデータ処理は、システイン含有ペプチドの正規化ピークの存在量を用いてMicrosoft Excelにより行った。DMSO対照群とAMG510処理試料群との間に、log2-倍の変化が計算された。各ペプチドについて、等しい分散を仮定した両側t検定を行って、処理試料群とDMSO対照試料群との間の差の統計的有意性を評価した。各デスチオビオチニル化システイン含有ペプチドについて、負のlog10p-値を示すvolcano plotをlog2倍変化に対してプロットした。log2倍が2を超える存在量の減少及びp-値が0.0001未満を示すペプチドを、AMG510の共有結合標的として指定した(n=5のバイオロジカルレプリケート)。
【0570】
<動物試験>
すべての動物実験の手順は、Ammgen Animal Care and Use Committeeのガイドライン、及び実験動物ケア評価認証協会( Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)の標準に従って行った。全ての研究は、4~7週齢の雌無胸腺ヌード又は雌Balb/cマウス(Charles River Laboratories)を使用した。無胸腺ヌードマウスは、滅菌ハウジング中でフィルターキャップ付きケージ1個当たり5匹を飼い、Balb/cマウスは、12時間の明/暗周期で、環境制御された(温度23±2℃、相対湿度50±20%)部屋の非滅菌ハウジング中で、フィルターキャップ付きケージ1個当たり5匹を飼った。マウスには市販のげっ歯類の飼料を与えた。
【0571】
<遺伝子発現解析>
RNeasy Miniキット(QIAGEN)により、ビヒクル経口、AMG510経口(100mg/kg QD)又はMEKi経口(PD-0325901、10mg/kg QD)で2日間治療(n=5/群)した、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍からの全RNAを精製した。RNAは、DropSense 96(PerkinElmer Inc.)によって定量した。750個の標的遺伝子、20個のハウスキーピング遺伝子、8個の内部陰性対照、及び6個の内部陽性対照を含むマウス汎がん免疫プロファイリングパネルを用いて、300ngのRNAをnCounter(商標)(NanoString Technologies)により解析した。生データは、品質を整え、正規化し、nSolverソフトウェア(NanoString Technologies)により分析した。生データはlog2変換し、統計解析を行った。経路スコア(インターフェロンスコア、抗原処理スコア、MHCスコア、TLRスコア及びT細胞機能スコア)及び細胞プロファイリングスコア(NK細胞スコア、細胞毒性細胞スコア及びCD45スコア)を、nSolver Advanced Analysis(NanoString Technologies)によって生成した。
【0572】
各スコアに含まれる遺伝子の詳細なリスト、並びに経路及び細胞プロファイリングスコアを計算するために使用したp値については、補足表3A、表3B、表3C、表3D及び表3Eを参照されたい。
【0573】
<腫瘍の薬力学的アッセイ>
ERK1/2リン酸化に対するAMG510の影響を、MIA PaCa-2 T2、NCI-H358、及びCT-26 KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスで評価した。MIA PaCa-2 T2又はNCI-H358腫瘍細胞(5.0E+06細胞)を、細胞対Matrigel(BD Bioscience、San Jose、CA)の2:1の比で雌無胸腺ヌードマウスの脇腹に皮下注射した。平均腫瘍サイズが約300~600mm3(n=3/群)に達したとき、マウスにビヒクル又はAMG510(0.3、1、3、10、30及び100mg/kg)のいずれかを単回経口投与し、2時間後に採取した。経時研究のために、単回経口用量(10mg/kg)のAMG510を使用した。雌Balb/cマウスは、CT-26 KRAS p.G12C腫瘍細胞(3.0E+05個の細胞)と共に皮下注射した。腫瘍体積が平均486mm3になった時点で、マウスを群(n=3/群)に無作為化し、ビヒクル又はAMG510(3、10、30、若しくは100mg/kg)、又はMEKi(PD-0325901、10mg/kg)のいずれかを単回経口投与し、2時間後に採取した。すべての試験で、血漿及び腫瘍を分析し、試験項目濃度を決定した。腫瘍試料は、また、示された時間に収集し、液体窒素中で急速冷凍し、生体分析のために処理するか、又はcryoPREP(登録商標)Dry Impactor(Covaris)を使用して粉砕した。粉砕した試料を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を含有するRIPA溶解緩衝液に再懸濁し、均質化した。その後、透明にした溶解物を、上記のようにしてERK1/2リン酸化レベルを分析し、またMSによりKRASG12Cの共有結合の改変を分析した。
【0574】
<異種移植及び同系試験>
MIA PaCa-2 T2、NCI-H358、又はSW480-1AC細胞(5.0E+06個の細胞、Matrigelと2:1の比で)を、雌の無胸腺ヌードマウス(n=10/群)の脇腹に皮下注射した。治療は、腫瘍が定着し、MIA PaCa-2 T2及びNCI-H358試験では約170mm3、SW480-1ACモデルでは約200mm3の時に開始した。用量応答試験では、マウスは、ビヒクル経口(QD)又はAMG510経口(3、10、30及び100mg/kg QD)のいずれかを受けた。AMG510及びカルボプラチンとのNCI-H358併用試験では、マウスを8群(n=10/群)に無作為化し、ビヒクル経口(QD)+PBS腹腔内(1×/週)、AMG510経口(10又は30mg/kg QD)+PBS腹腔内(1×/週)、ビヒクル経口(QD)+カルボプラチン(50又は100mg/kg)腹腔内(1×/週)、AMG510経口(10又は30mg/kg QD)+カルボプラチン(50又は100mg/kg)腹腔内(1×/週)のいずれかで投与した。AMG510とMEKiの併用試験では、マウスを4群n=10/群に無作為化し、ビヒクル経口(QD);AMG510経口(10mg/kg QD);MEKi経口(1mg/kg QD);AMG510経口(10mg/kg QD)+MEKi経口(1mg/kg QD)のいずれかで与えた。同系試験では、CT-26 KRAS p.G12C細胞(3.0E+05細胞)を、雌のBalb/cマウスの脇腹に皮下注射した。治療は、腫瘍が定着し、用量応答試験では約170mm3、併用試験では約130mm3の時にn=10/群で開始したが、MEKi用量応答試験ではn=8/群であった。用量応答試験では、マウスは、ビヒクル経口(QD)、AMG510経口(3、10、30及び100mg/kg QD)又はMEKi(PD-0325901)経口(1、3又は10mg/kg QD)のいずれかを受けた。併用試験では、マウスをn=10/群の4群に無作為化し、ビヒクル経口(QD)+PBS腹腔内(Q3D×3);AMG510経口(100mg/kg QD)+PBS腹腔内(Q3D×3);ビヒクル経口(QD)+抗PD-1抗体(29F.1A12;100μg/用量、Q3D×3)腹腔内;AMG510経口(100mg/kg QD)+抗PD-1抗体(29F.1A12;100μg/用量、Q3D×3)腹腔内のいずれかで15日目から43日目まで投与した。併用治療試験は盲検様式で実施した。Pro-Max電子デジタルキャリパー(Japan Micrometer Mfg.Co.LTD) を用いて、毎週2回腫瘍の大きさを評価し、長さ×幅×高さの式を用いて腫瘍体積を計算し、mm3として表した。KRAS p.G12C肺PDXモデルでは、約70mgの大きさの腫瘍塊をマウスの皮下に移植した。腫瘍体積が約160~200mm3になったとき、マウスを無作為化し、無作為化の翌日に、ビヒクル経口(QD)又はAMG510経口(100mg/kg QD)のいずれかを与えた。幅2×長さ×0.52の式を使用して、毎週2回腫瘍の大きさを収集し、mm3として表した。データは、平均±SEMとして表される。
【0575】
<AMG510-KRASG12C複合体の検出>
抗ヒトRAS(抗RAS)抗体をAbcamから購入し、販売会社により記載されたプロトコルを用いて、EZ-Link NHS-PEG4-ビオチン(ThermoFisher Scientific)でビオチン化した。残留ビオチンを除去し、得られたビオチン-抗RASを、Dynabeads(登録商標)MyOne(商標)Streptavidin C1ビーズ(ThermoFisher Scientific)に、1:1の比で、RTで1時間、振盪しながら加えた。以前に記載した、インビトロで処理した細胞又はインビボで治療した腫瘍細胞の溶解物を、ビオチン化抗RASビーズと共に、振盪しながらRTで3時間インキュベートした。磁石を用いて、ビーズをPBST(3×)、続いてPBS(1×)、次いで水(1×)で洗浄した。試料を、2%ギ酸水溶液/10%アセトニトリル水溶液を用いてビーズから溶出させ、続いてRTで10分間振盪しながらインキュベートした。上清を96ウェルプレートに移し、乾燥させた。試料を変性緩衝液(10mMのTCEP、8M尿素)に再懸濁し、65℃で15分間振盪しながらインキュベートした。ヨードアセトアミド(40mM)を加え、37℃で30分間インキュベートし、光から保護した。50mMのNH4HCO3及びトリプシン(0.01μg/μL)を加え、試料を37℃で終夜、約16~20時間消化させ、最後にギ酸で反応を停止させ、1%(体積:体積)の最終濃度を得た。その後Acquity UPLC(Waters)に連結した6500QTRAP(AB SCIEX)を使用した陽イオンエレクトロスプレーモードでの、多重反応モニタリング(MRM)により、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)によって試料を分析した。試料を、Acquity UPLC BEH C8 1.7μm、2.1×100mmカラム(Waters)に注入した。移動相は、移動相A(水+0.1%ギ酸)及び移動相B(アセトニトリル+0.1%ギ酸)からなった。LCグラジエントは、5分で5~50%B、0.5分で50~95%B、1分で95%Bであった。以下のペプチドKRASG12CLVVVGAC(CAM)GVGK(529.8→846.3)及びAMG510改変-KRASG12CAMG510-LVVVGAC(CAM)GVGK(521.4→675.2)をモニターした。占有率は、未改変及び改変-KRASG12Cペプチドの合計に対して正規化した、AMG510改変-KRASG12Cペプチドのパーセンテージとして計算した。
【0576】
<フローサイトメトリー>
MHCクラスIの抗原発現に対するAMG510の影響をインビトロで分析するために、CT-26 KRAS p.G12C細胞(5.0E+04細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、IFNγの非存在下、又は最終濃度が25又は250pg/mLのIFNγの存在下、AMG510の3倍連続希釈で処理した。プレートを37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。細胞をウェルから非酵素的に剥がし、染色緩衝液(PBS/0.5%BSA)で洗浄し、その後、PE共役H-2Dd、H-2Kd、又はH-2Ld抗体(BioLegend)と共に氷上で30分間インキュベートした。洗浄後、SYTOX Blue Dead Cell Stain(Life Technologies)を含有する染色緩衝液に細胞を再懸濁し、その後フローサイトメトリーによって分析した。BD FACSDivaソフトウェアを使用して、BD LSRFortessaフローサイトメーターで収集及び分析を行った。
【0577】
インビボ試験では、CT-26 KRAS p.G12C細胞を、約6週齢のBalb/c雌マウスに移植した。移植後22日目に、マウスを、ビヒクル経口(QD)+PBS腹腔内(Q3D×2);AMG510経口(100mg/kg QD)+PBS腹腔内(Q3D×2);ビヒクル経口(QD)+抗PD-1抗体(29F.1A12;100μg/用量、Q3D×2)腹腔内;AMG510経口(100mg/kg QD)+抗PD-1抗体(29F.1A12;100μg/用量、Q3D×2)腹腔内;又はMEKi経口(10mg/kg、QD)+PBS腹腔内(Q3D×2)のいずれかで投与を受ける、n=8/群の5群からなる4日間投与コホートにランダム化した。投与の4日後、腫瘍を採取し、周囲の筋膜から切開し、秤量し、機械的に細かく刻み、Liberase TL(0.2mg/ml、Roche)及びDNase I(20μg/ml、Ambion)に入れた。その後、腫瘍溶液を、穏やかなMACS Dissociator(Miltenyi Biotech)を使用して機械的に均質化し、MACSmix Tube Rotator(Miltenyi Biotech)上、37℃で15分間インキュベートした。次に、0.02%EDTA(Sigma)及び熱不活性化FBS(ThermoFisher Scientific)で細胞を処理し、70μmフィルターに通して凝集物を除去した。その後、細胞を遠心分離し、上清を廃棄し、次いで、細胞ペレットをLIVE/DEAD Fixable Blue Dead Cell Stain(ThermoFisher Scientific)中に30分間再懸濁させた。その後、細胞内染色のための細胞の固定化及び透過化(Intracellular Fixation&Permeabilization Buffer Set、eBiosciences)を行う前に、示されている抗体(補足表4)で細胞表面を染色した。CountBright(商標)Absolute Counting Beads(ThermoFisher Scientific)を各試料ウェルに加えて、LSR IIフローサイトメーター(BD Biosciences)での分析前に細胞の計数を可能にした。全ての分析は、FlowJoソフトウェアv10(FlowJo)を用いて行った。記録されたビーズに対して細胞数を正規化し、分析された腫瘍アリコートの体積で割り、腫瘍の質量で割ることによって、絶対細胞数を決定した。
【0578】
<酵素免疫スポット(ELISpot)アッセイ>
IFN-γ ELISpotアッセイ(Cellular Technology Ltd.)を用いて、抗原特異的T細胞応答を評価した。脾臓細胞を採取し(n=4~5/群)、全細胞ELISpotアッセイに使用した。簡単に述べると、2.5E+05個の脾臓細胞を2.5E+04個のCT-26、CT-26 KRAS p.G12C又は4T1腫瘍細胞と混合し、37℃で20時間インキュベートした。CTLS6フルオロスポットアナライザー(Cellular Technology Ltd.)を用いてスポットを数えた。
【0579】
<統計解析>
一元配置ANOVA、続いてDunnettの事後検定により薬力学的実験を分析した。効力試験のために、反復測定分散分析(RMANOVA)を行い、続いてGraphPad Prism7.04を用いてDunnettの事後検定を行った。回帰分析は、対応のあるt検定によって行った。生存の統計分析は、GraphPad Prism7.04を使用して、Kaplan-Meier推定量により決定し、Mantel-Coxログ-ランクにより曲線を比較した。フローサイトメトリーデータは、二元配置ANOVA多重比較、続いてテューキーの事後検定によって分析した。NanoStringデータは、一元配置ANOVA多重比較、続いてテューキーの事後検定によって分析した。ELISpotデータ比較は、GraphPad Prismを用いて対応のないt検定によって行った。
【0580】
<AMG510のLC-MS/MS生体分析法>
TissueLyzer(Qiagen)中で、組織に水(4:1 mL:g)を加え、タングステンカーバイドビーズを使用して、腫瘍組織の粉砕物を調製した。20μLの試料(血漿又は腫瘍組織粉砕物)に、IS(200ng/mLトルブタミド)を含有する100μLのアセトニトリルを加え、試料を10分間ボルテックスし、3500gで10分間遠心分離し、90μLの上清を収集した。回収した上清に水(0.1%ギ酸を含む)100μLを加え、得られた溶液5μLをLC-MS/MSシステムに注入した。クロマトグラフィー分離は、50℃に維持されたPhenomenex Kinetex C18 50×2.1mm、2.7μmを使用し、H2O中0.1%ギ酸(移動相A)及びアセトニトリル中0.1%ギ酸(移動相B)を使用して実施した。クロマトグラフィー勾配は、0分~0.1分は10%移動相Bの無勾配、0.1~0.85分は移動相Bの95%への直線的増加、0.85~1.10分は95%移動相Bの無勾配を保持、1.10~1.11分は移動相Bの10%への直線的減少、1.11~1.40分は10%移動相Bの無勾配保持とした。通常、API4000質量分析計を分析に使用し、561.179>134.100(AMG510)及び271.100>134.100(トルブタミド)のMS/MS転移に続いてポジティブモードESIで実施した。Analyst(登録商標)(Sciex)を用いてピーク面積を積分した。ピーク面積積分後、データをWatson LIMS(商標)(ThermoFisher Scientific)にエクスポートし、ピーク面積比(AMG510のピーク面積/ISのピーク面積)対血漿較正標準の公称濃度に対して加重(1/x2)線形回帰を行って濃度を決定した。血漿中のAMG510の較正範囲は、1.0~10,000ng/mL(LLOQ 1.0ng/mL)であった。腫瘍組織粉砕物中のAMG510の較正範囲は、5.0~50,000ng/mL(LLOQ 5.0ng/mL)であった。
【0581】
<細胞培養物のアミノ酸による安定同位体標識(SILAC)>
軽質培地(LM)は、1Lの最終容量に以下の成分を添加することによって調製した:100mLの透析したFBS、10.4gの粉末RPMI-1640培地、2gの炭酸水素ナトリウム、200mgのL-アルギニン、48mgのL-リジン、100mgのL-ロイシン、及び1×Pen-Strep(これは0.22μmフィルターシステムで濾過された)。LMと同様に重質培地(HM)を調製したが、100mg[13C6]-L-ロイシン(Cambridge Isotope Laboratories)を非同位体濃縮L-ロイシンの代わりに使用した。MIA PaCa-2及びNCI-H358細胞を、LMを有するT75フラスコに播種した(3E+05個の細胞);LMは毎日交換した。48時間後、細胞を1×PBSで洗浄し、培地をHMに切り替えた;HMは4日間毎日交換した。6日目に、細胞を1×PBSで洗浄し、培地をLMに切り替えた;LMは毎日交換した。6日目に開始して、MIA PaCa-2試料を、0、1、3、6、9、12、15、18、21、24、30、36、48、及び72時間で収集した。6日目に開始して、NCI-H358試料を、0、3、6、9、12、24、36、48、72、及び96時間で収集した。3重に調製した別々のT75フラスコを各時点で回収し、溶解物へと処理した。
【0582】
<SILAC試料の収集及び溶解物タンパク質の調製>
T75フラスコを1×PBSで洗浄し、トリプシンで処理し、2分間インキュベートした後、10%の透析済FBSを含有する氷冷PBSを加えた。細胞を十分に混合し、収集し、その後Vi-CELL XRを使用して細胞を計数した。残留細胞を遠心分離し、氷冷PBS(Mg+2含まず、Ca+2含まず)で洗浄した。細胞を再び遠心分離し、PBSを除去し、ホスファターゼ(PhosSTOP、Roche)及びプロテアーゼ(cOmplete EDTA-free、Roche)阻害剤を含有する少量の氷冷RIPA中で細胞を溶解した。得られた溶解物をボルテックスし、氷上に10分間置き、遠心分離して不溶性破片を除去し、その後、さらなる処理まで-80℃で保存した。
【0583】
<SILAC KRAS
G12C標的の半減期決定>
抗ヒトRAS(抗RAS)抗体をAbcamから購入し、販売会社により記載されたプロトコルを用いて、EZ-Link NHS-PEG4-ビオチン(ThermoFisher Scientific)でビオチン化した。残留ビオチンを除去し、得られたビオチン-抗RASを、Dynabeads(登録商標)MyOne(商標)Streptavidin C1ビーズ(ThermoFisher Scientific)にRTで1.5時間振盪しながら加えた。細胞溶解物(上記)を、ビオチン化抗RASビーズと共に、振盪しながら室温で2時間インキュベートした。磁石を用いて、ビーズをPBST(3×)、続いてPBS(1×)で洗浄した。3%ギ酸水溶液/30%ACN水溶液を用いて試料をビーズから溶出し、続いて振盪しながら室温で10分間インキュベートした。上清を96ウェルプレートに移し、乾燥させた。試料を変性緩衝液(10mM TCEP、8M尿素)に再懸濁させ、水浴を用いて37℃で1時間インキュベートした。ヨードアセトアミド(40mM)を加え、25℃で1時間インキュベートし、光から保護した。50mMのNH
4HCO
3及びトリプシン(0.1μg/μL)を加え、試料を37℃で24時間消化させ、その後ギ酸で反応を停止させ、1%(体積:体積)の最終濃度を得た。質量分析による分析の前に、試料を約80μLに濃縮した。Acquity UPLC(Waters)に連結した6500QTRAP(AB SCIEX)を使用した陽イオンエレクトロスプレーモードでの、多重反応モニタリング(MRM)により、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)によって試料を分析した。試料を、Acquity UPLC BEH C8 1.7μm、2.1×100mmカラム(Waters)に注入した。移動相は、移動相A(水+0.1%ギ酸)及び移動相B(アセトニトリル+0.1%ギ酸)からなった。LC勾配は、5分で5~50%B、0.5分で50~95%B、1分で95%Bであった。KRAS
G12Cについての以下のペプチド(LVVVGAC(CAM)GVGK(529.8→846.3)&13C-LVVVGAC(CAM)GVGK(532.8→846.3))及び RAS WT(LVVVGAGGVGK(478.3→743.2)&13C-LVVVGAGGVGK(481.3→743.2))を使用して、重い標識から軽い標識への移行をモニターした。相対的同位体存在量(RIA)は、以下の式を用いて決定した:
【数1】
【0584】
<KRAS
G12C半減期のSILAC決定>
タンパク質半減期の決定に対する細胞増殖の影響を説明するために、各時点に関連する細胞数及びRIAデータを一連の式に同時に当てはめて、MIA PaCa-2及びNCI-H358細胞中のKRAS
G12Cの半減期を決定した。以下の式を使用した:
重いペプチドの一次方程式:
【数2】
軽いペプチドの一次方程式:
【数3】
細胞増殖の一次方程式:
【数4】
追加の式:
【数5】
【0585】
時間0はHMがLMに交換された時間として定義され、Hvは重いペプチドの濃度、ltは軽いペプチドの濃度、cellnewは新しい細胞の数、kdecは分解の一次速度定数、ksynは合成のゼロ次速度定数、kdilは一次の細胞増殖定数、cell(0)は時間0における細胞の数、Hv(0)は時間0における重いペプチドの濃度、lt(0)は時間0における軽いペプチドの濃度である。モデリングには段階的アプローチが使用され、第1の工程では、kdilはセル数から推定され、第2の工程では、kdecは上記の式を使用して推定される。
【0586】
LMへの交換後の細胞数を定量化し、以下の式を適用することによって、kdilを推定した:A=A0exp(-kdilt)、ここでA及びA0は、それぞれ時間t及び0での細胞数を表す。
【0587】
【0588】
【0589】
【0590】
【0591】
【0592】
【0593】
【0594】
【0595】
本発明は、好ましい実施形態に関連して記載される。しかし、本発明は、開示された実施形態には限定されないことを理解すべきである。本発明の実施形態が本明細書に記載されれば、当業者によって様々な修正が行われ得ることは理解される。そのような修正は、以下の特許請求の範囲に包含される。
【配列表】