(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】遮蔽部材
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20231102BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B60R5/04 T
B60N3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019209833
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】浅井 寛晃
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 敦子
(72)【発明者】
【氏名】冨士松 潤
(72)【発明者】
【氏名】青木 祐人
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0227373(US,A1)
【文献】特開平10-016551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0248217(US,A1)
【文献】特表2018-532648(JP,A)
【文献】実開平01-073051(JP,U)
【文献】登録実用新案第3119222(JP,U)
【文献】実開平05-077478(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分と第2の部分とを含む略矩形状であって可撓性を有するシート部材と、前記第1の部分の少なくとも一部を取り囲む第1のワイヤーと、前記第2の部分の少なくとも一部を取り囲む第2のワイヤーとを有し、
前記第1のワイヤーおよび前記第1の部分と、前記第2のワイヤーおよび前記第2の部分とが互いに重なり合うように、前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとの間の部分を中心として2つ折り可能であ
り、
前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとの間の部分には、前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとを互いに回動可能に保持するように前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとにそれぞれ連結されているヒンジ機構が設けられており、
前記ヒンジ機構は、前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとの、互いに対向しつつ互いに平行に並んで延びる部分同士を連結していることを特徴とする遮蔽部材。
【請求項2】
前記シート部材は、前記第1のワイヤーによって区画されている部分と、前記第2のワイヤーによって区画されている部分と、前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとの間の部分とを一括して覆うように、前記第1の部分と前記第2の部分とにわたって連続的に設けられている、請求項1に記載の遮蔽部材。
【請求項3】
前記ヒンジ機構は、前記第1のワイヤーの一部が嵌合する第1の凹部と、前記第2のワイヤーの一部が嵌合する第2の凹部と、前記第1の凹部および前記第2の凹部の開口部が広がる方向への変形を規制する規制部と、を有する、請求項
1または2に記載の遮蔽部材。
【請求項4】
前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーにはそれぞれ、前記シート部材を係止するクランク形状部が設けられている、請求項1から
3のいずれか1項に記載の遮蔽部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮蔽部材に関する。
【背景技術】
【0002】
後部に荷室が設けられている車両において、荷室の内部が車外から視認されることを防ぐために、荷室の上方にトノカバーと呼ばれるシート状の遮蔽部材が取り付けられることがある。トノカバーは、荷室に荷物が収容されている状態では荷室の上方を覆い、荷室に対する荷物の出し入れの際には、例えば、トノカバーが紐でバックドアと連結されていると、バックドアの開閉に連動してトノカバーの後方を上下させることができるため、ユーザーのアクセス性が高められ、荷物の出し入れを容易に行うことができる。ただし、荷室に背の高い荷物を載置する際には、荷室の上方を開放するためにトノカバーを取り外す必要がある。また、荷室に荷物を載置しない場合には、トノカバーで荷室を覆う必要が無いため、トノカバーを取り外しても構わない。このように、荷室に背の高い荷物を載置する場合や、荷室に荷物を載置しない場合や、例えば乗員が横になるために座席シートを前方に倒して荷室面とフルフラット化する場合には、トノカバーを取り外すことが求められる。従って、トノカバーは荷室の上方に取り付け可能かつ取り外し可能であることが好ましい。通常、荷室から取り外されたトノカバーは、邪魔にならないように折り畳まれて保管される。
【0003】
特許文献1に記載されている折り畳み可能な自動車用日除けは、2枚のシートにそれぞれ設けられたヒンジ片を1本のヒンジピンが貫通して構成された蝶番構造を有している。特許文献2に記載されているトノカバーは、ボードの一部に切れ目が設けられ、その切れ目の部分で折り曲げ可能な構成である。特許文献3,4に記載されたトノカバーは3つ折り以上に小さく折り畳める構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-211958号公報
【文献】特許5456570号公報
【文献】特許6193560号公報
【文献】国際公開WO2018/186266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自動車用日除けは、2枚のシートのヒンジ片とヒンジピンとからなる蝶番構造がシートの厚さ方向に突出する。従って、蝶番構造のためのスペースを必要とするとともに、折り畳んだ状態において露出する蝶番構造が意匠性を損なう。
【0006】
特許文献2に記載のトノカバーは、ボードに切れ目が設けられて連結部のみで繋がっている状態であるため、長期の使用において折り畳みおよび拡開の動作が繰り返し行われると、連結部が破損するおそれがある。すなわち、このトノカバーは耐久性に問題がある。
【0007】
特許文献3,4に記載されているトノカバーは小さく折り畳むことができるが、折り畳み方が複雑で判りにくく、折り畳みが難しいという問題がある。また、折り畳んだ状態における見映えが必ずしも良くない場合がある。
【0008】
このように、特許文献1~4に記載されているいずれの構成においても、折り畳みの容易さと、耐久性と、意匠性、すなわち見映えの良さとを全て満足させることはできていない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、容易に折り畳むことができ、耐久性と意匠性とを兼ね備えることができる遮蔽部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の遮蔽部材は、第1の部分と第2の部分とを含む略矩形状であって可撓性を有するシート部材と、第1の部分の少なくとも一部を取り囲む第1のワイヤーと、第2の部分の少なくとも一部を取り囲む第2のワイヤーとを有し、第1のワイヤーおよび第1の部分と、第2のワイヤーおよび第2の部分とが互いに重なり合うように、第1のワイヤーと第2のワイヤーとの間の部分を中心として2つ折り可能であり、前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとの間の部分には、前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとを互いに回動可能に保持するように前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとにそれぞれ連結されているヒンジ機構が設けられており、前記ヒンジ機構は、前記第1のワイヤーと前記第2のワイヤーとの、互いに対向しつつ互いに平行に並んで延びる部分同士を連結していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遮蔽部材は、容易に折り畳むことができ、耐久性と意匠性とを兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は本発明の遮蔽部材の一例であるトノカバーの開いた状態の斜視図、(b)はその閉じた状態の斜視図である。
【
図2】
図1に示すトノカバーの第1および第2のワイヤーとシート部材とヒンジ機構との位置関係を模式的に示す概略図である。
【
図4】
図1に示すトノカバーのヒンジ機構を、上カバーを取り除いて示す拡大斜視図である。
【
図5】(a)は
図1に示すトノカバーのヒンジ機構の断面図、(b)はその正面図である。
【
図6】比較例のトノカバーの要部の拡大平面図である。
【
図7】
図1に示すトノカバーの要部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に本発明の遮蔽部材の一実施形態であるトノカバー1を示している。このトノカバー1は、
図1(a)に示すように開いた状態で、図示しない車両の荷室を覆うことができる。トノカバー1は、荷室の上方から取り外して、
図1(b)に示すように2つ折りにすることができる。それにより、荷室を外部に開放した状態で、トノカバー1を折り畳んで保管しておくことができる。トノカバー1は、合成樹脂からなるシート部材2と、金属製の第1および第2のワイヤー3,4とを有している。シート部材2は、可撓性を有し外形が略矩形状の薄いシートである。シート部材2は、第1の部分2aと、第2の部分2bと、それらの間の部分2cとを有する。第1のワイヤー3と第2のワイヤー4は実質的に同じ形状であり、略矩形の外形を有する閉じたループ状である。第1のワイヤー3は、シート部材2の第1の部分2aを取り囲み、第2のワイヤー4は第2の部分2bを取り囲んでいる。シート部材2の第1のワイヤー3と第2のワイヤー4との間の部分2cが、第1の部分2aと第2の部分2bとを繋いでいる。シート部材2は、第1の部分2aと第2の部分2bとにわたって連続的に設けられている。なお、図示されている実施形態では、第1のワイヤー3は第1の部分2aの全体を取り囲み、第2のワイヤー4は第2の部分2bの全体を取り囲んでいるが、このような構成に限定されない。第1のワイヤー3は第1の部分2aの少なくとも一部を取り囲んでいればよい。すなわち、第1のワイヤー3が閉じたループ状ではなく、一部が分断されて連続していない形状であって、第1の部分2aの一部が第1のワイヤー3に囲まれていない構成であってもよい。同様に、第2のワイヤー4は第2の部分2bの少なくとも一部を取り囲んでいればよく、第2のワイヤー4が閉じたループ状ではなく、一部が分断されて連続していない形状であって、第2の部分2bの一部が第2のワイヤー4に囲まれていない構成であってもよい。
【0014】
このような構成は、
図2に模式的に示す通り、第1のワイヤー3と第2のワイヤー4とが線対称な位置関係で平面的に並べて配置された状態で、第1のワイヤー3と第2のワイヤー4とを覆うように、シート部材2が配置されることで形成されている。言い換えると、連続するシート部材2が、第1のワイヤー3によって区画された部分と、第2のワイヤー4によって区画された部分と、第1のワイヤー3と第2のワイヤー4との間の部分とを一括して覆っている。
【0015】
第1のワイヤー3と第2のワイヤー4とは、
図2に模式的に示すヒンジ機構5によって接続されている。本実施形態では、2つのシート部材2が、第1および第2のワイヤー3,4を間に挟んで、互いに対向するように配置されている。従って、このトノカバー1の両面のどちらから見ても、シート部材2が視認され、第1および第2のワイヤー3,4は隠れている。シート部材2によって意匠性を付与することができ、第1および第2のワイヤー3,4等の部材がその意匠性を損なうことはない。ヒンジ機構5は、第1のワイヤー3と第2のワイヤー4との互いに対向する辺の両端部のみに配置されており、トノカバー1全体から見ると、ごく小さな部分に設けられているだけである。従って、本実施形態のヒンジ機構5がトノカバー1の意匠性に影響を及ぼすことはほとんどない。
【0016】
トノカバー1を折り畳む際には、
図1(b)に示すように、第1のワイヤー3と第2のワイヤー4との間の部分2cを中心として、シート部材2を2つに折り畳む。第1のワイヤー3および第2のワイヤー4は屈曲させられることはなく、シート部材2の、第1および第2のワイヤー3,4に固定されていない、それらの間の部分2cが曲げられることで、トノカバー1が折り畳まれる。硬い第1および第2のワイヤー3,4は屈曲させず、可撓性を有する薄いシート部材2のみを曲げるため、折り畳むべき位置が使用者にとって直感的に判りやすく、円滑かつ容易にトノカバー1の折り畳みが行われる。薄いシート部材2は剛性が低く柔軟であるため、折り畳みおよび拡開を繰り返しても破損しにくく、耐久性が良い。ヒンジ機構5は、第1および第2のワイヤー3,4にそれぞれ連結され、第1および第2のワイヤー3,4を互いに間隔をおいて保持するとともに、第1のワイヤー3と第2のワイヤー4との間の部分2cの曲げを阻害しないものであれば、どのような構成であってもよい。
【0017】
以上説明した本発明の遮蔽部材の一例であるトノカバーのより詳細な実施例について、以下に説明する。本実施例のトノカバー1は、
図3に示すように、2枚重ねのシート部材2の上に、金属製の第1および第2のワイヤー3,4と、第1および第2のワイヤー3,4の一部を覆う合成樹脂からなり可撓性を有する縁取り部分6,7とが配置されている。シート部材2はいわゆるジャージ編みの生地からなる。縁取り部分6,7は合成皮革(例えばソフトレザーCマット)からなる。縁取り部分6,7は、第1のワイヤー3と第2のワイヤー4との互いに対向する辺に接する位置には設けられておらず、それ以外の部分では第1および第2のワイヤー3,4を覆っている。
【0018】
第1および第2のワイヤー3,4は、黄銅線や硬鋼線やピアノ線など、鉄や黄銅を主成分とし、溶接が可能な断面円形のワイヤーであり、製品自重による撓みを抑えるために0.98×10
5~2.06×10
5(N/mm
2)の弾性率を有することが望ましい。本実施例のワイヤーの弾性率は1.0×10
5(N/mm
2)である。本発明の第1および第2のワイヤー3,4は、捻じって畳む必要がないため、縦方向と横方向の断面2次モーメントに差をつける必要がなく、いずれの方向の外力に対しても同等の強度および剛性を有する円形状に形成されている。このように、第1および第2のワイヤー3,4は円形の断面形状を有しているため、後述する第1および第2の凹部9a,9bに回動可能に嵌合して、ヒンジ機構5のシャフトとして利用できる。そして、特許文献3,4に記載されているような従来のワイヤーよりも小さな断面2次モーメントおよび断面係数であっても、製品の強度や剛性感を維持できると考えられる。ワイヤーの直径は、3.0~4.0mmであることが好ましい。ワイヤーの直径が3.0mmよりも小さいと剛性感に乏しく、4.0mmよりも大きいと質量が大きくなりすぎるからである。そして、このワイヤーの断面2次モーメントは3.98~12.57mm
4で、断面係数は2.65~6.28mm
3である。具体的に本実施例で用いられるワイヤーの直径は3.5mm、断面2次モーメントは7.4mm
4、断面係数は4.2mm
3である。そして、モーターや油圧の力で押し出されたワイヤーを治具によって希望の形に曲げた後に、その両端部を溶接して繋ぎ合わせることによってループ状の第1および第2のワイヤー3,4が形成されている。
第1のワイヤー3と第2のワイヤー4の、縁取り部分6,7に接していない、互いに対向する辺の両端部の位置に、2段階に屈曲しているクランク形状部3a,4aが形成されている。シート部材2の、クランク形状部3a,4aに対向する位置には、クランク形状部3a,4aに概ね沿う形状の切り欠き部2dが形成されている。クランク形状部3a,4aおよび切り欠き部2dは、
図2では簡略化のために省略している。シート部材2の外側(
図3の下側)には、クランク形状部3a,4aおよび切り欠き部2dに対向する位置に、ヒンジ機構5の一部を構成する合成樹脂製の下カバー8が配置されている。下カバー8は、例えばPA66+GF(ポリアミド66にガラス繊維を含ませた材料)の射出成形品である。第1の部分2a側に配置された下カバー8と、第2の部分2b側に配置された下カバー8とにまたがるように、合成樹脂製のクランプ9が取り付けられている。
図4,5(a)に示すように、縁取り部分6に覆われずに露出した第1のワイヤー3の一部が、下カバー8に取り付けられたクランプ9の第1の凹部9aに回動可能に嵌め込まれている。同様に、縁取り部分7に覆われずに露出した第2のワイヤー4の一部が、クランプ9の第2の凹部9bに回動可能に嵌め込まれている。クランプ9は2つの下カバー8にまたがって位置し、第1のワイヤー3および第1の部分2aと、第2のワイヤー4および第2の部分2bとの間の間隔を維持する。そして、下カバー8と、ヒンジ機構5の一部を構成する合成樹脂製の(例えばPA66+GFの射出成形品である)上カバー10とが、第1および第2のワイヤー3,4の一部とクランプ9とを挟んで重なり合った状態になっている。
【0019】
具体的には、
図3の上下を入れ替えた状態で、上カバー10に第1および第2のワイヤー3,4が置かれる。そして、上カバー10に置かれた第1および第2のワイヤー3,4が、クランプ9の第1および第2の凹部9a,9bに嵌合させられる。それから、下カバー8が、クランプ9を挟んで上カバー10に重ね合わせられる。上カバー10と下カバー8とは実質的に同じ外形を有しており、ねじ11によって互いに固定される。上カバー10と下カバー8とが、第1および第2のワイヤー3,4の一部とクランプ9とを収容した状態で互いに固定される。こうしてヒンジ機構5が構成されている。そして、
図3では省略しているが、縁取り部分6,7と第1および第2のワイヤー3,4とが載置されたシート部材2に対し、縁取り部分6,7と第1および第2のワイヤー3,4とヒンジ機構5とを間に挟んで、もう1つのシート部材2が重ね合わせられる。
【0020】
このような構成であるため、クランプ9によって互いに連結されている一方の下カバー8および第1のワイヤー3と、他方の下カバー8および第2のワイヤー4とが、互いに相対的に回動可能である。相対的な回動により、第1のワイヤー3および第1の部分2aと、第2のワイヤー4および第2の部分2bとが互いに開いて、水平に連続して延びるように繋がった状態(
図1(a)参照)と、第1のワイヤー3および第1の部分2aと、第2のワイヤー4および第2の部分2bとが互いに重なり合って閉じた状態(
図1(b)参照)との間で開閉可能である。第1のワイヤー3および第1の部分2aと、第2のワイヤー4および第2の部分2bとが互いに開いた状態であっても、互いに閉じた状態であっても、クランプ9によって、第1のワイヤー3および第1の部分2aと第2のワイヤー4および第2の部分2bとは分離することなく連結されたままである。なお、
図4,5(a)に示すように、クランプ9の第1および第2の凹部9a,9bに嵌合した第1のワイヤー3および第2のワイヤー4が、第1および第2の凹部9a,9bから脱落しないように、第1および第2の凹部9a,9bの開口部9cは、少なくとも部分的に第1および第2のワイヤー3,4の直径よりも狭くなっている。さらに、この第1および第2の凹部9a,9bの開口部9cが広がるように弾性変形して第1のワイヤー3および第2のワイヤー4が脱落することを防ぐために、下カバー8には、第1および第2の凹部9a,9bの開口部9cの変形を抑える規制部8aが設けられている。
【0021】
シート部材2の第1の部分2aと第2の部分2bの外側端部、すなわち、第1の部分2aと第2の部分2bとが対向する部分と反対側の端部に、それぞれ把手部12が取り付けられている。具体的には、合成樹脂、例えばポリアセタール(POM)の射出成形品である上部分12aと下部分12bとが、シート部材2とピン13とを挟んだ状態で重ね合わせられ、ねじ11によって互いに固定されている。こうして構成された把手部12は、使用者がトノカバー1を荷室に取り付けたり、取り外したり、折り畳んだりする時の持ち手になり、作業が容易になる。シート部材2の第1の部分2aと第2の部分2bの外側端部には、樹脂繊維からなる吊り下げ紐14(例えば6ナイロン(登録商標)の加工糸からなる8打ち紐)が取り付けられている。吊り下げ紐14はトノカバー1の一部に縫い付けられるとともに、トノカバー1が設置される車両の内装の一部に取り付けられる。そして、図示しないが車両のバックドアを閉めた際にトノカバー1が水平に保持され、バックドアを開けた際にユーザーが荷室の内部にアクセスし易いようにトノカバー1の十分な開度を確保できるように、吊り下げ紐14の長さおよび取付位置が設定されている。さらに、吊り下げ紐14は、運転者の後方視界の妨げにならないように、トノカバー1の右端または左端に取り付けられることが好ましい。
【0022】
本実施例の第1および第2のワイヤー3,4は、クランク形状部3a,4aを有している。第1および第2のワイヤー3,4は、大部分がシート部材2に挟まれている。しかし、第1のワイヤー3と第2のワイヤー4とが対向する辺の両端部には、ヒンジ機構5の第1および第2の凹部9a,9bに嵌め込むために第1および第2のワイヤー3,4自体がシート部材2に覆われずに露出している部分がある。
図6に示す比較例のトノカバー1では、クランク形状部を持たない第1および第2のワイヤー3,4の、シート部材2に覆われずに露出している部分の近傍で、矢印で示す方向にシート部材2が動いてしまい、皺が生じることがある。それに対し、本実施例では、
図7に示すように第1および第2のワイヤー3,4の、ヒンジ機構5の第1および第2の凹部9a,9bに嵌め込まれる部分に近接して、クランク形状部3a,4aが設けられている。このクランク形状部3a,4aの屈曲部の一部を利用して、上下に位置するシート部材2を互いに固定して(縫い合わせて)、この縫合部分2eがクランク形状部3a,4aに引っ掛かった状態にする。仮に、シート部材2が
図6の矢印方向に移動しようとしても、クランク形状部3a,4aに係止された縫合部分2eが矢印方向へのシート部材の移動を阻止する。その結果、シート部材2における皺の発生を抑えることができる。このように縫合部分2eを形成してクランク形状部3a,4aに引っかけた後で、ヒンジ機構5が取り付けられる。
【0023】
図6に示す比較例では、第1および第2のワイヤー3,4の露出部分に、シート部材2を係止する部分を設けることが難しい。しかし、
図7に示す実施例では、第1および第2のワイヤー3,4に屈曲部を含むクランク形状部3a,4aが設けられているため、クランク形状部3a,4aにシート部材2の縫合部分2eを容易に引っかけることができる。それにより、矢印方向においても矢印に直交する方向においても、シート部材2の移動を抑制することができる。
【0024】
このように、本発明のトノカバー1は容易に2つ折りすることができる。しかも、このトノカバー1は、耐久性と意匠性にも優れている。特に、第1および第2のワイヤー3,4にクランク形状部3a,4aが設けられていると、シート部材2に皺が生じることが抑えられる。
【符号の説明】
【0025】
1 トノカバー(遮蔽部材)
2 シート部材
2a 第1の部分
2b 第2の部分
2c 第1のワイヤーと第2のワイヤーとの間の部分
2d 切り欠き部
2e 縫合部分
3 第1のワイヤー
3a,4a クランク形状部
4 第2のワイヤー
5 ヒンジ機構
6,7 縁取り部分
8 下カバー
8a 規制部
9 クランプ
9a 第1の凹部
9b 第2の凹部
9c 開口部
10 上カバー
11 ねじ
12 把手部
12a 上部分
12b 下部分
13 ピン