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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】スラスト荷重低減装置及びエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20231102BHJP
   F02B 39/16 20060101ALI20231102BHJP
   F02D 9/04 20060101ALI20231102BHJP
   F02D 9/06 20060101ALI20231102BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20231102BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20231102BHJP
   F02M 26/05 20160101ALI20231102BHJP
【FI】
F02B37/18 A
F02B37/18 Z
F02B39/16 Z
F02D9/04 G
F02D9/06 A
F02D9/06 H
F02D21/08 311B
F02D23/00 F
F02D23/00 J
F02M26/05
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019223565
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021092191
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木場 理佐子
(72)【発明者】
【氏名】二江 貴也
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正義
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 敬信
(72)【発明者】
【氏名】井上 憲幸
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-535532(JP,A)
【文献】実開昭57-112032(JP,U)
【文献】特開2007-40175(JP,A)
【文献】特開2019-152140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/06
F02D 23/00
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガスで駆動されるターボチャージャの回転軸に作用するスラスト荷重を低減するスラスト荷重低減装置であって、
前記エンジンの排気通路に設けられるエキゾーストブレーキバルブを備え、
前記エキゾーストブレーキバルブが前記排気通路を流れる前記排気ガスの流れを規制したときに発生する前記ターボチャージャのタービン側からコンプレッサ側に向かう方向の前記スラスト荷重を抑制するように前記排気ガスの流れを制御するように構成され
前記エキゾーストブレーキバルブは、前記ターボチャージャのタービンの下流側に設けられ、
前記排気通路を流れる前記排気ガスの流れを規制したときに発生する前記ターボチャージャのタービン側からコンプレッサ側に向かう方向の前記スラスト荷重を抑制するように前記排気ガスの流れを制御するように構成された排気ガス制御装置を備え、
前記排気ガス制御装置は、
前記タービンの出口と前記エキゾーストブレーキバルブとの間の前記排気通路と、前記タービンにおけるタービンインペラの背面が面する空間とを接続する接続通路と、
前記接続通路を開閉するための開閉バルブと、
前記開閉バルブの開閉を制御するための開閉バルブ制御装置と、
を含み、
前記開閉バルブ制御装置は、前記エキゾーストブレーキバルブが前記排気通路を流れる前記排気ガスの流れを規制したときに前記接続通路を開くように前記開閉バルブの開閉を制御する
スラスト荷重低減装置。
【請求項2】
エンジンの排気ガスで駆動されるターボチャージャの回転軸に作用するスラスト荷重を低減するスラスト荷重低減装置であって、
前記エンジンの排気通路に設けられるエキゾーストブレーキバルブを備え、
前記エキゾーストブレーキバルブが前記排気通路を流れる前記排気ガスの流れを規制したときに発生する前記ターボチャージャのタービン側からコンプレッサ側に向かう方向の前記スラスト荷重を抑制するように前記排気ガスの流れを制御するように構成され、
前記エキゾーストブレーキバルブは、前記ターボチャージャのタービンの下流側に設けられ、
前記排気通路を流れる前記排気ガスの流れを規制したときに発生する前記ターボチャージャのタービン側からコンプレッサ側に向かう方向の前記スラスト荷重を抑制するように前記排気ガスの流れを制御するように構成された排気ガス制御装置を備え、
前記排気ガス制御装置は、
前記タービンの出口と前記エキゾーストブレーキバルブとの間の前記排気通路と、前記エンジンの吸気通路とを接続する接続通路と、
前記接続通路を開閉するための開閉バルブと、
前記開閉バルブの開閉を制御するための開閉バルブ制御装置と、
を含み、
前記開閉バルブ制御装置は、前記エキゾーストブレーキバルブが前記排気通路を流れる前記排気ガスの流れを規制したときに前記接続通路を開くように前記開閉バルブの開閉を制御す
ラスト荷重低減装置。
【請求項3】
前記排気ガス制御装置は、前記タービンをバイパスするバイパス通路を開閉するためのウェイストゲートバルブと、前記ウェイストゲートバルブの開閉を制御するためのウェイストゲートバルブ制御装置とを含み、
前記ウェイストゲートバルブ制御装置は、前記エキゾーストブレーキバルブが前記排気通路を流れる前記排気ガスの流れを規制したときに前記バイパス通路を開くように前記ウェイストゲートバルブの開閉を制御する
請求項1又は2に記載のスラスト荷重低減装置。
【請求項4】
前記排気ガス制御装置は、前記排気通路を流れる前記排気ガスの一部を前記エンジンの吸気通路に再循環させるためのEGR通路に設けられたEGRバルブと、前記EGRバルブの開度を制御するEGRバルブ制御部とを含み、
前記EGRバルブ制御部は、前記エキゾーストブレーキバルブが前記排気通路を流れる前記排気ガスの流れを規制したときに前記EGRバルブの前記開度をさらに大きくするように前記EGRバルブの前記開度を制御する
請求項1乃至の何れか一項に記載のスラスト荷重低減装置。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか一項に記載のスラスト荷重低減装置と、
前記ターボチャージャと、
を備える
エンジン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラスト荷重低減装置及びエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気通路において排気ガスの流れを規制することによりエンジンブレーキ作用を高める排気ブレーキが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-91930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気ブレーキでは、排気通路に設けられたエキゾーストブレーキバルブが排気ガスの流れを規制する。エキゾーストブレーキバルブが排気ガスの流れを規制すると、エキゾーストブレーキバルブよりも上流側の排気通路内の圧力が上昇する。ターボチャージャが装着されているエンジンでは、タービンがエキゾーストブレーキバルブよりも上流側の排気通路に配置されているため、エキゾーストブレーキバルブが排気ガスの流れを規制するとタービンの入口及び出口の圧力が上昇する。タービンの入口及び出口の圧力が上昇すると、ターボチャージャの回転軸に作用するスラスト荷重のうちタービン側からコンプレッサ側に向かう方向のスラスト荷重が増加する。
【0005】
上述したスラスト荷重の増加に対応すべく、スラスト荷重の負荷能力を向上させるためにスラスト軸受の大きさを大きくすることが考えられる。しかし、スラスト軸受の大きさを大きくすると、スラスト軸受における機械損失が増加して、ターボチャージャの効率が低下するおそれがある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、ターボチャージャの回転軸に作用するスラスト荷重が排気ブレーキの作動時に増加するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るスラスト荷重低減装置は、
エンジンの排気ガスで駆動されるターボチャージャの回転軸に作用するスラスト荷重を低減するスラスト荷重低減装置であって、
前記エンジンの排気通路に設けられるエキゾーストブレーキバルブを備え、
前記エキゾーストブレーキバルブが前記排気通路を流れる前記排気ガスの流れを規制したときに発生する前記ターボチャージャのタービン側からコンプレッサ側に向かう方向の前記スラスト荷重を抑制するように前記排気ガスの流れを制御するように構成される。
【0008】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジンは、
上記(1)の構成のスラスト荷重低減装置と、
前記ターボチャージャと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ターボチャージャの回転軸に作用するスラスト荷重が排気ブレーキの作動時に増加するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】幾つかの実施形態に係るエンジンの全体構成を概略的に示す図である。
図2】幾つかの実施形態に係るエンジンの全体構成を概略的に示す図である。
図3】幾つかの実施形態に係るエンジンの全体構成を概略的に示す図である。
図4】幾つかの実施形態に係るエンジンが備えるターボチャージャの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
(エンジン1の全体構成)
図1図2、及び図3は、幾つかの実施形態に係るエンジンの全体構成を概略的に示す図である。図4は、幾つかの実施形態に係るエンジンが備えるターボチャージャの模式的な断面図である。
【0013】
図1図3に示すように、幾つかの実施形態に係るエンジン1は、例えば車両などに搭載されたディーゼルエンジンである。なお、幾つかの実施形態に係るエンジン1は、ガソリンエンジンであってもよい。
図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1は、エンジン本体11と、ターボチャージャ20と、エンジン1の各部を制御するための制御装置(ECU)15とを備えている。
【0014】
図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1は、スラスト荷重低減装置100を備えている。スラスト荷重低減装置100については、幾つかの実施形態に係るエンジン1の各部の構成を説明した後で説明する。
【0015】
図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1では、不図示のエアクリーナを介して吸気通路30に導入された空気(吸気)IAは、ターボチャージャ20のコンプレッサ22に流入する。ターボチャージャ20は、吸気通路30に配置されたコンプレッサ22と、排気通路40に配置されたタービン24と、コンプレッサ22におけるコンプレッサインペラ22aとタービン24におけるタービンインペラ24aとを連結するロータ(回転軸)23とを有する。幾つかの実施形態に係るターボチャージャ20の構造については、後で説明する。
【0016】
エンジン本体11から排出される排気ガスEGの排気エネルギーによってタービンインペラ24aが回転駆動し、これに伴ってコンプレッサインペラ22aが回転駆動することで、コンプレッサ22に流入した吸気IAが圧縮される。
【0017】
コンプレッサ22で圧縮された吸気IAは、インタークーラ34で冷却されて、エンジン本体11に供給された後、吸気通路30のインテークマニホールド32を介して、エンジン本体11の不図示の燃焼室に供給される。また、エンジン本体11には、燃焼室に燃料を噴射するための不図示の燃料噴射装置が備えられている。そして、燃料噴射装置から燃焼室に供給された燃料が圧縮熱によって自着火(又は不図示の点火装置によって着火)することで、燃焼室内で燃焼・膨張する。そして、燃焼室内で生成された排気ガスEGが、排気通路40のエキゾーストマニホールド42へと排出される。
【0018】
排気通路40に排出された排気ガスEGは、上述したターボチャージャ20のタービン24に流入し、タービンインペラ24aを回転駆動させる。また、排気通路40には、タービン24を迂回するバイパス通路44が接続している。そして、バイパス通路44には、バイパス通路44を流れる排気ガスEGの流量を制御するためのウェイストゲートバルブ46が設けられている。幾つかの実施形態では、ウェイストゲートバルブ46の開閉は、ECU15によって制御される。
【0019】
図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1では、排気通路40にはエキゾーストブレーキバルブ52が設けられている。エキゾーストブレーキバルブ52は、排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制することができるように構成されている。エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制すると、排気ブレーキが作動する。エキゾーストブレーキバルブ52の開度は、ECU15によって制御される。
【0020】
図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1では、排気通路40を流れる排気ガスEGの一部を吸気通路30に還流可能に構成されている。具体的には、図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1では、タービン24の上流側(エンジン本体11側)において排気通路40から分岐するようにEGR通路60の一端側が接続されており、EGR通路60の他端が吸気通路30に接続されている。
EGR通路60には、排気通路40側から順にEGRクーラ62、EGRバルブ64が設けられている。EGRバルブ64の開度は、ECU15によって制御される。
【0021】
(ターボチャージャ20)
幾つかの実施形態に係るターボチャージャ20は、エンジン1の排気ガスEGで駆動されて吸気IAを圧縮するための装置である。図4に示すように、幾つかの実施形態に係るターボチャージャ20は、回転軸23の一端側に設けられたタービンインペラ24aを収容するタービンハウジング204、回転軸23の他端側に設けられたコンプレッサインペラ22aを収容するコンプレッサハウジング202、及び回転軸23を回転可能に支持するラジアル軸受25と、回転軸23のスラスト力を支持するスラスト軸受27とを収容する軸受ハウジング206、の3つのハウジングを有する。
【0022】
このように構成されるエンジン1では、排気ブレーキを作動させるためにエキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制すると、エキゾーストブレーキバルブ52よりも上流側の排気通路40内の圧力が上昇する。
ターボチャージャ20が装着されている一般的なエンジンでは、ターボチャージャ20のタービン24がエキゾーストブレーキバルブ52よりも上流側の排気通路40に配置されているため、エキゾーストブレーキバルブ52が排気ガスEGの流れを規制するとタービン24の入口(タービン入口)241及び出口(タービン出口)242の圧力が上昇する。タービン入口241及びタービン出口242の圧力が上昇すると、ターボチャージャ20の回転軸23に作用するスラスト荷重のうちタービン24側からコンプレッサ22側に向かう方向のスラスト荷重が増加する。
説明の便宜上、ターボチャージャ20の回転軸23に作用するスラスト荷重のうちタービン24側からコンプレッサ22側に向かう方向のスラスト荷重を第1スラスト荷重SL1と呼び、コンプレッサ22側からタービン24側に向かう方向のスラスト荷重を第2スラスト荷重SL2と呼ぶ。
【0023】
上述した第1スラスト荷重SL1の増加に対応すべく、スラスト荷重の負荷能力を向上させるためにスラスト軸受27の大きさを大きくすることが考えられる。しかし、スラスト軸受27の大きさを大きくすると、スラスト軸受27における機械損失が増加して、ターボチャージャ20の効率が低下するおそれがある。
【0024】
(スラスト荷重低減装置100による第1スラスト荷重SL1の抑制について)
そこで、図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1では、ターボチャージャ20の回転軸23に作用するスラスト荷重を低減するためのスラスト荷重低減装置100を設けている。図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1では、スラスト荷重低減装置100は、エンジン1の排気通路40に設けられるエキゾーストブレーキバルブ52を備える。図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1では、スラスト荷重低減装置100は、後述するように、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときに発生する第1スラスト荷重SL1を抑制するように排気ガスEGの流れを制御するように構成されている。
【0025】
図1図3に示す幾つかの実施形態に係るスラスト荷重低減装置100によれば、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できるので、回転軸23に作用するスラスト荷重が排気ブレーキの作動時に増加するのを抑制できる。これにより、スラスト軸受27の負荷能力の増加を抑制でき、機械損失の増加を抑制できるので、ターボチャージャ20の効率低下を抑制できる。
【0026】
幾つかの実施形態に係るスラスト荷重低減装置100の詳細について説明する。
図1及び図2に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1では、エキゾーストブレーキバルブ52は、ターボチャージャ20のタービン24の下流側に設けられている。図1及び図2に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1では、スラスト荷重低減装置100は、排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときに発生する第1スラスト荷重SL1を抑制するように排気ガスEGの流れを制御するように構成された、後述する排気ガス制御装置150をさらに備える。
【0027】
図1及び図2に示す幾つかの実施形態に係るスラスト荷重低減装置100によれば、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を排気ガス制御装置150によって抑制できるので、スラスト軸受27の負荷能力の増加を抑制でき、機械損失の増加を抑制できる。これにより、ターボチャージャ20の効率低下を抑制できる。
【0028】
幾つかの実施形態に係る排気ガス制御装置150の詳細について説明する。
図1に示す実施形態に係るエンジン1では、排気ガス制御装置150は、ウェイストゲートバルブ46と、ウェイストゲートバルブ46の開閉を制御するためのウェイストゲートバルブ制御装置、すなわちECU15とを含む。図1に示す実施形態に係るエンジン1では、ECU15は、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときに、すなわち、排気ブレーキが作動したときに、バイパス通路44を開くようにウェイストゲートバルブ46の開閉を制御する。
【0029】
ターボチャージャの回転軸に作用するスラスト荷重のうちタービン側からコンプレッサ側に向かう方向の第1スラスト荷重SL1は、タービン入口241の圧力(入口圧力PT1)とタービン出口242の圧力(出口圧力PT2)とに比例する。そのため、第1スラスト荷重SL1を抑制するためには、入口圧力PT1又は出口圧力PT2の少なくとも何れか一方の大きさを抑制するとよい。
エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制すると、入口圧力PT1及び出口圧力PT2が上昇する。そのため、第1スラスト荷重SL1を抑制するためには、タービン24に流れる排気ガスEGの流量を減らし、タービン24に作用する圧力を低下させるとよい。
【0030】
図1に示す実施形態に係る排気ガス制御装置150によれば、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにウェイストゲートバルブ46がバイパス通路44を開くので、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにタービン24に流入する排気ガスEGの流量を減らすことができる。これにより、タービン24に作用する圧力を低下させることができるので、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できる。
また、既設のウェイストゲートバルブ46の開閉の制御に変更を加えることで排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できるので、コスト増を抑制できる。
さらに、既存のエンジン1であってもウェイストゲートバルブ46の開閉の制御に変更を加えることで排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できるので、既存のエンジン1におけるターボチャージャ20の耐久性を向上できる。
【0031】
また、図1に示す実施形態に係るエンジン1では、排気ガス制御装置150は、EGRバルブ64と、EGRバルブ64の開度を制御するEGRバルブ制御部、すなわちECU15とを含んでいてもよい。図1に示す実施形態に係るエンジン1では、ECU15は、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときに、すなわち、排気ブレーキが作動したときに、EGRバルブ64の開度をさらに大きくするようにEGRバルブ64の開度を制御してもよい。具体的には、図1に示す実施形態に係るエンジン1では、ECU15は、排気ブレーキが作動したときに、排気ブレーキが作動する直前のEGRバルブ64の開度よりもEGRバルブ64の開度を大きくするようにEGRバルブ64の開度を制御してもよい。
【0032】
図1に示す実施形態に係る排気ガス制御装置150によれば、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにEGRバルブ64の開度がさらに大きくなるので、タービン24に流入する排気ガスEGの流量を減らすことができる。また、図1に示す実施形態に係る排気ガス制御装置150によれば、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにEGRバルブ64の開度がさらに大きくなるので、EGR通路60を介した吸気通路30への排気ガスEGの再循環量が増加する。そのため、低酸素燃焼による燃焼温度の低下により排気ガスEGの温度が低下する。これらにより、入口圧力PT1及び出口圧力PT2を低下させることができ、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できる。
また、既設のEGRバルブ64の開度の制御に変更を加えることで排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できるので、コスト増を抑制できる。
さらに、既存のエンジン1であってもEGRバルブ64の開度の制御に変更を加えることで排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できるので、既存のエンジン1におけるターボチャージャ20の耐久性を向上できる。
【0033】
排気ガス制御装置150の他の実施形態について説明する。
図2に示す実施形態に係るエンジン1では、排気ガス制御装置150は、接続通路70、70Aと、接続通路70、70Aを開閉するための開閉バルブ72と、開閉バルブ72の開閉を制御するための開閉バルブ制御装置、すなわちECU15とを含む。接続通路70、70Aは、タービン24の出口(タービン出口242)とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40と、エンジン1の吸気通路30、又は、タービン出口242よりも上流側の排気通路40とを接続する。図2に示す実施形態に係るエンジン1では、ECU15は、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときに接続通路70、70Aを開くように開閉バルブ72の開閉を制御する。
【0034】
図2に示す実施形態に係るエンジン1では、接続通路70、70Aの上流端70aは、タービン出口242とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40に接続されている。
図2において実線で示したように、接続通路70の下流端70bは、タービン出口242よりも上流側の排気通路40に接続されている。なお、図2では、接続通路70の下流端70bは、タービン出口242とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40のうち、タービンインペラ24aの背面と対向する部位に接続されているが、タービン出口242とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40に接続されているのであれば、他の位置において接続されていてもよい。
また、図2において破線で示したように、接続通路70Aの下流端70bは、タービン出口242よりも上流側の排気通路40ではなく、吸気通路30に接続されていてもよい。なお、図2において破線で示す接続通路70Aの下流端70bは、コンプレッサ22の上流側の吸気通路30に接続されていてもよく、コンプレッサ22の下流側の吸気通路30に接続されていてもよい。
【0035】
図2に示す排気ガス制御装置150によれば、タービン出口242とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40内の排気ガスEGを接続通路70、70Aを介して吸気通路30、又は、タービン出口242よりも上流側の排気通路40に供給することで、コンプレッサ側からタービン側に向かう方向のスラスト荷重である第2スラスト荷重SL2を発生させることができる。この第2スラスト荷重SL2によって、第1スラスト荷重SL1を抑制できる。
【0036】
図2に示す実施形態に係るエンジン1では、上述したように、接続通路70の下流端70bは、タービン出口242とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40のうち、タービンインペラ24aの背面と対向する部位に接続されていてもよい。すなわち、図2に示す実施形態に係るエンジン1では、接続通路70は、タービン出口242とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40と、タービン24におけるタービンインペラ24aの背面が面する空間24bと、を接続してもよい。
これにより、第2スラスト荷重SL2を効率的に発生させることができるので、第1スラスト荷重SL1を効率的に抑制できる。
【0037】
図3に示す実施形態に係るエンジン1では、エキゾーストブレーキバルブ52は、ターボチャージャ20のタービン24の上流側に設けられる。すなわち、図3に示す実施形態に係るエンジン1では、エキゾーストブレーキバルブ52は、排気通路40におけるエンジン本体11とタービン入口241との間に配置されている。
図3に示す実施形態に係るエンジン1では、エキゾーストブレーキバルブ52がタービン24の上流側に設けられているので、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制しても、タービン24の入口圧力PT1及び出口圧力PT2の上昇が抑制される。これにより、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できる。
すなわち、図3に示す実施形態に係るエンジン1では、排気ガス制御装置150は、エキゾーストブレーキバルブ52及びエキゾーストブレーキバルブ52の開度を制御するECU15を含む。
【0038】
図1図3に示す幾つかの実施形態に係るエンジン1は、図1図3に示す幾つかの実施形態に係るスラスト荷重低減装置100を備えるので、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できる。これにより、スラスト軸受27の負荷能力の増加を抑制でき、機械損失の増加を抑制できる。したがって、ターボチャージャ20の効率低下を抑制でき、エンジン1の熱効率の低下を抑制できる。
【0039】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0040】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るスラスト荷重低減装置100は、エンジン1の排気ガスEGで駆動されるターボチャージャ20の回転軸23に作用するスラスト荷重を低減するスラスト荷重低減装置である。本開示の少なくとも一実施形態に係るスラスト荷重低減装置100は、エンジン1の排気通路40に設けられるエキゾーストブレーキバルブ52を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係るスラスト荷重低減装置100は、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときに発生するターボチャージャ20のタービン24側からコンプレッサ22側に向かう方向のスラスト荷重(第1スラスト荷重SL1)を抑制するように排気ガスEGの流れを制御するように構成される。
【0041】
上述したように、エキゾーストブレーキバルブ52が排気ガスEGの流れを規制すると、一般的には、ターボチャージャ20の回転軸23に作用するスラスト荷重のうち上述した第1スラスト荷重SL1が増加する。この第1スラスト荷重SL1の増加に対応すべく、スラスト軸受27の大きさを大きくすると、スラスト軸受27における機械損失が増加して、ターボチャージャ20の効率が低下するおそれがある。
本開示の少なくとも一実施形態に係るスラスト荷重低減装置100によれば、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できるので、回転軸23に作用するスラスト荷重が排気ブレーキの作動時に増加するのを抑制できる。これにより、スラスト軸受27の負荷能力の増加を抑制でき、機械損失の増加を抑制できるので、ターボチャージャ20の効率低下を抑制できる。
【0042】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、エキゾーストブレーキバルブ52は、ターボチャージャ20のタービン24の下流側に設けられている。幾つかの実施形態では、スラスト荷重低減装置100は、排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときに発生する第1スラスト荷重SL1を抑制するように排気ガスEGの流れを制御するように構成された排気ガス制御装置150をさらに備える。
【0043】
上記(2)の構成によれば、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を排気ガス制御装置150によって抑制できるので、スラスト軸受27の負荷能力の増加を抑制でき、機械損失の増加を抑制できる。これにより、ターボチャージャ20の効率低下を抑制できる。
【0044】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、排気ガス制御装置150は、タービン24をバイパスするバイパス通路44を開閉するためのウェイストゲートバルブ46と、ウェイストゲートバルブ46の開閉を制御するためのウェイストゲートバルブ制御装置、すなわちECU15とを含む。ECU15は、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにバイパス通路44を開くようにウェイストゲートバルブ46の開閉を制御する。
【0045】
上述したように、ターボチャージャ20の回転軸23に作用するスラスト荷重のうち第1スラスト荷重SL1は、タービン入口241の圧力(入口圧力PT1)とタービン出口242の圧力(出口圧力PT2)とに比例する。そのため、第1スラスト荷重SL1を抑制するためには、入口圧力PT1又は出口圧力PT2の少なくとも何れか一方の大きさを抑制するとよい。
上述したように、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制すると、タービンの入口圧力PT1及び出口圧力PT2が上昇する。そのため、第1スラスト荷重SL1を抑制するためには、タービン24に流れる排気ガスEGの流量を減らし、タービン24に作用する圧力を低下させるとよい。
上記(3)の構成によれば、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにウェイストゲートバルブ46がバイパス通路44を開くので、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにタービン24に流入する排気ガスEGの流量を減らすことができる。これにより、タービン24に作用する圧力を低下させることができるので、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できる。
また、既設のウェイストゲートバルブ46の開閉の制御に変更を加えることで排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できるので、コスト増を抑制できる。
【0046】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、排気ガス制御装置150は、排気通路40を流れる排気ガスEGの一部をエンジン1の吸気通路30に再循環させるためのEGR通路60に設けられたEGRバルブ64と、EGRバルブ64の開度を制御するEGRバルブ制御部、すなわちECU15とを含む。ECU15は、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにEGRバルブ64の開度をさらに大きくするようにEGRバルブ64の開度を制御する。
【0047】
上記(4)の構成によれば、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにEGRバルブ64の開度がさらに大きくなるので、タービン24に流入する排気ガスEGの流量を減らすことができる。また、上記(4)の構成によれば、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときにEGRバルブ64の開度がさらに大きくなるので、EGR通路60を介した吸気通路30への排気ガスEGの再循環量が増加する。そのため、低酸素燃焼による燃焼温度の低下により排気ガスEGの温度が低下する。これらにより、入口圧力PT1及び出口圧力PT2を低下させることができ、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できる。
また、既設のEGRバルブ64の開度の制御に変更を加えることで排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できるので、コスト増を抑制できる。
【0048】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れかの構成において、排気ガス制御装置150は、接続通路70、70Aと、接続通路70、70Aを開閉するための開閉バルブ72と、開閉バルブ72の開閉を制御するための開閉バルブ制御装置、すなわちECU15とを含む。接続通路70、70Aは、タービン24の出口(タービン出口242)とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40と、エンジン1の吸気通路30、又は、タービン出口242よりも上流側の排気通路40とを接続する。ECU15は、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制したときに接続通路70、70Aを開くように開閉バルブ72の開閉を制御する。
【0049】
上記(5)の構成によれば、タービン出口242とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40内の排気ガスEGを接続通路70、70Aを介して吸気通路30、又は、タービン出口242よりも上流側の排気通路40に供給することで、コンプレッサ側からタービン側に向かう方向のスラスト荷重である第2スラスト荷重SL2を発生させることができる。この第2スラスト荷重SL2によって、第1スラスト荷重SL1を抑制できる。
【0050】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、接続通路70は、タービン出口242とエキゾーストブレーキバルブ52との間の排気通路40と、タービン24におけるタービンインペラ24aの背面が面する空間24bと、を接続する。
【0051】
上記(6)の構成によれば、第2スラスト荷重SL2を効率的に発生させることができるので、第1スラスト荷重SL1を効率的に抑制できる。
【0052】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、エキゾーストブレーキバルブ52は、ターボチャージャ20のタービン24の上流側に設けられる。
【0053】
上記(7)の構成によれば、エキゾーストブレーキバルブ52がタービン24の上流側に設けられているので、エキゾーストブレーキバルブ52が排気通路40を流れる排気ガスEGの流れを規制しても、入口圧力PT1及び出口圧力PT2の上昇が抑制される。これにより、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できる。
【0054】
(8)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン1は、上記(1)乃至(7)の何れかの構成のスラスト荷重低減装置100と、ターボチャージャ20と、を備える。
【0055】
上記(8)の構成によれば、上記(1)乃至(7)の何れかの構成のスラスト荷重低減装置100を備えるので、排気ブレーキが作動したときの第1スラスト荷重SL1の増加を抑制できる。これにより、スラスト軸受の負荷能力の増加を抑制でき、機械損失の増加を抑制できる。したがって、ターボチャージャ20の効率低下を抑制でき、エンジン1の熱効率の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン
11 エンジン本体
15 制御装置(ECU)
20 ターボチャージャ
22 コンプレッサ
23 ロータ(回転軸)
24 タービン
24a タービンインペラ
24b 空間
27 スラスト軸受
30 吸気通路
40 排気通路
44 バイパス通路
46 ウェイストゲートバルブ
52 エキゾーストブレーキバルブ
60 EGR通路
64 EGRバルブ
70、70A 接続通路
72 開閉バルブ
100 スラスト荷重低減装置
150 排気ガス制御装置
241 入口(タービン入口)
242 出口(タービン出口)
図1
図2
図3
図4