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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20231102BHJP
   H01L 31/05 20140101ALI20231102BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H01L31/04 570
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019223991
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021093469
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】口山 崇
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-295087(JP,A)
【文献】特開2001-077387(JP,A)
【文献】特開2008-235603(JP,A)
【文献】国際公開第2013/030993(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0007918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルを接続する配線部材と、
前記複数の太陽電池セルの主面を保護する保護部材と、
前記保護部材と前記複数の太陽電池セルとの間に設けられ、前記複数の太陽電池セルおよび前記配線部材を封止する封止材と、
を備え、
前記封止材は、損失正接が異なり、前記複数の太陽電池セルの前記主面に沿う方向に交互に設けられた第1封止材と第2封止材とを有し、
前記第1封止材および前記第2封止材のうちの前記第2封止材のみが、前記配線部材に接して前記配線部材を被覆しており、
前記第1封止材の損失正接は、前記第2封止材の損失正接よりも小さい、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第1封止材および前記第2封止材の各々は、共重合系ポリオレフィン、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー、およびアイオノマーのうちのいずれか1つを材料として含み、
前記第1封止材と前記第2封止材とは、異なる材料を含む、
請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールでは、複数の太陽電池セルが、2次元状に配置され、インターコネクタ等の配線部材によって電気的に直列または並列に接続される。このような太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルの両主面を保護する一対の保護部材と、一対の保護部材の間において複数の太陽電池セルおよび配線部材を封止する封止材とを備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/014965号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような太陽電池モジュールでは、外部からの応力に対する耐性を得るために、封止材の材料として比較的に柔らかい材料が用いられる。しかし、外部からの応力により、封止材が過度にずれると、封止材によって封止された配線部材が太陽電池セルから剥離したり、ずれたりしてしまうことがある。
【0005】
本発明は、配線部材の剥離またはずれを抑制する太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルを接続する配線部材と、前記複数の太陽電池セルの主面を保護する保護部材と、前記保護部材と前記複数の太陽電池セルとの間に設けられ、前記複数の太陽電池セルおよび前記配線部材を封止する封止材とを備える。前記封止材は、損失正接が異なり、前記複数の太陽電池セルの前記主面に沿う方向に交互に設けられた第1封止材と第2封止材を有する。前記第1封止材の損失正接は、前記第2封止材の損失正接よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、太陽電池モジュールにおいて、配線部材の剥離またはずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る太陽電池モジュールを裏面側からみた図である。
図2図1に示す第1実施形態に係る太陽電池モジュールのII-II線断面図である。
図3】第2実施形態に係る太陽電池モジュールを裏面側からみた図である。
図4図3に示す第2実施形態に係る太陽電池モジュールのIV-IV線断面図である。
図5】第3実施形態に係る太陽電池モジュールを裏面側からみた図である。
図6図5に示す第3実施形態に係る太陽電池モジュールのVI-VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールを裏面側からみた図であり、図2は、図1に示す第1実施形態に係る太陽電池モジュールのII-II線断面図である。図1では、後述する裏側保護部材4が省略されている。また、図1および図2、並びに後述する図面には、XY直交座標系が示されている。XY平面は太陽電池モジュールの受光面および裏面に沿う面である。
【0011】
図1および図2に示すように、太陽電池モジュール100は、複数の太陽電池セル1と、受光側保護部材3と、裏側保護部材4と、受光側封止材5と、裏側封止材6と、配線部材8とを備える。
【0012】
太陽電池セル1は、裏面電極型(裏面接合型、バックコンタクト型とも称される)の太陽電池セルである。複数の太陽電池セル1は、X方向およびY方向に2次元状に配列されている。隣り合う太陽電池セル1は、配線部材8を介して接続されている。
【0013】
配線部材8としては、タブ等の公知のインターコネクタが用いられる。例えば、配線部材8としては、低融点金属またははんだを被覆した銅芯材からなるリボン線、低融点金属粒子または金属微粒子を内包した熱硬化性樹脂フィルムで形成された導電性フィルム、或いは複数本の導電性の素線を編んだ編物または織った織物により形成された部材(例えば、特開2016-219799号公報または特開2014-3161号公報参照)等が挙げられる。
【0014】
配線部材8と太陽電池セル1の電極部とは、導電性接着部材を介して接続される。導電性接着部材としては、低融点金属粒子または金属微粒子を内包した熱硬化性樹脂フィルムで形成された導電性フィルム、低融点金属微粒子若しくは金属微粒子とバインダーとで形成された導電性接着剤、または、はんだ粒子を含有するはんだペースト等が用いられる。
【0015】
太陽電池セル1および配線部材8は、受光側保護部材3と裏側保護部材4とによって挟み込まれている。受光側保護部材3と裏側保護部材4との間には、液体状または固体状の封止材(受光側封止材5および裏側封止材6)が充填されており、これにより、太陽電池セル1は封止される。
【0016】
受光側保護部材3は、受光側封止材5を介して、太陽電池セル1の受光面を覆って、その太陽電池セル1を保護する。受光側保護部材3の形状としては、特に限定されるものではないが、面状の受光面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0017】
受光側保護部材3の材料としては、特に限定されるものではないが、光を透過する特性(透光性)を有しつつも紫外光に耐性の有る材料が好ましく、例えば、ガラス、または、アクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂が挙げられる。また、受光側保護部材3の表面は、凹凸状に加工されていても構わないし、反射防止コーティング層で被覆されていても構わない。これらのようになっていると、受光側保護部材3は、受けた光を反射させ難くして、より多くの光を太陽電池セル1に導けるためである。
【0018】
裏側保護部材4は、裏側封止材6を介して、太陽電池セル1の裏面を覆って、その太陽電池ストリング2を保護する。裏側保護部材4の形状としては、特に限定されるものではないが、受光側保護部材3同様に、面状の裏面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0019】
裏側保護部材4の材料としては、特に限定されるものではないが、水等の浸入を防止する(遮水性の高い)材料が好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、若しくは含シリコーン樹脂等の樹脂フィルム、またはガラス、ポリカーボネート、アクリル等の透光性を有する板状の樹脂部材と、アルミニウム箔等の金属箔との積層体が挙げられる。
【0020】
受光側封止材5および裏側封止材6は、太陽電池セル1および配線部材8を封止して保護する。受光側封止材5は、太陽電池セル1の受光側の面と受光側保護部材3との間に介在する。裏側封止材6は、太陽電池セル1の裏側の面と裏側保護部材4との間に介在する。受光側封止材5および裏側封止材6の形状としては、特に限定されるものではなく、例えばシート状が挙げられる。シート状であれば、面状の太陽電池セル1の表面および裏面を被覆しやすいためである。
【0021】
受光側封止材5および裏側封止材6の材料としては、特に限定されるものではないが、光を透過する特性(透光性)を有すると好ましい。また、受光側封止材5および裏側封止材6の材料は、太陽電池セル1と受光側保護部材3と裏側保護部材4とを接着させる接着性を有すると好ましい。このような材料としては、例えば、共重合系ポリオレフィン、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー、またはアイオノマー等の透光性樹脂が挙げられる。
【0022】
ここで、一般に、太陽電池モジュールでは、外部からの応力(例えば、熱衝撃、または車両等に搭載される場合には振動)に対する耐性を得るために、封止材の材料として比較的に柔らかい材料が用いられる。しかし、外部からの応力により、封止材が過度にずれると、封止材によって封止された配線部材が太陽電池セルから剥離したり、ずれたりしてしまうことがある。
【0023】
特に、ヘテロ接合型の太陽電池セルでは、プロセス温度に制限があり(例えば200度以下)、配線部材を高温で強固に接着することができないため、外部からの応力による配線部材の剥離またはずれが生じ易いことが予想される。
【0024】
この点に関し、本願発明者は、封止材の硬さを部分的に異ならせることを考案する。
【0025】
具体的には、裏側封止材6は、第1封止材6aと第2封止材6bとを有する。第1封止材6aは、配線部材8に接して配線部材8を被覆しており、第2封止材6bは、第1封止材6aの間に配置される。これにより、第1封止材6aと第2封止材6bとは、太陽電池セル1の主面に沿うY方向に交互に設けられている。
【0026】
第1封止材6aの損失正接(tanδ)と第2封止材6bの損失正接(tanδ)とは異なる。具体的には、第1封止材6aの損失正接は、第2封止材6bの損失正接よりも小さい。ここで、損失正接(tanδ)が大きいほど、すなわち粘弾性(動的粘弾性)が大きいほど、その材料は柔らかい。これにより、第2封止材6bは比較的に柔らかいのに対して、第1封止材6aは比較的に硬い。
【0027】
上述したように、第1封止材6aおよび第2封止材6bは、共重合系ポリオレフィン、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー、またはアイオノマーのうちの異なるいずれか1つを材料として含む。これらの材料の損失正接(tanδ)の大きさは以下のとおりである。
共重合系ポリオレフィン<ポリオレフィン<熱可塑性エラストマー<アイオノマー
【0028】
以上説明したように、第1実施形態の太陽電池モジュール100によれば、配線部材8に接する第1封止材6aは、損失正接が比較的に小さい、すなわち比較的に硬い。これにより、外部からの応力による封止材6自身の過度のずれを抑制することができ、封止材6のずれに起因する配線部材8の剥離またはずれ(短絡)を抑制することができる。
【0029】
また、配線部材8に接しない第2封止材6bは損失正接が比較的に大きい、すなわち比較的に柔らかい。これにより、外部からの応力を吸収でき、外部からの応力に対する耐性を得ることができる。
【0030】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールを裏面側からみた図であり、図4は、図3に示す第2実施形態に係る太陽電池モジュールのIV-IV線断面図である。第2実施形態では、第1封止材6aと第2封止材6bとの配置関係が第1実施形態と逆である。すなわち、損失正接(tanδ)が比較的に大きい(すなわち比較的に柔らかい)第2封止材6bが、配線部材8と接して配線部材8を被覆しており、損失正接(tanδ)が比較的に小さい(すなわち比較的に硬い)第1封止材6aが、第2封止材6bの間に配置される。
【0031】
この第2実施形態の太陽電池モジュール100によれば、配線部材8に接する第2封止材6bに隣接する第1封止材6aが、損失正接が比較的に小さい、すなわち比較的に硬いので、隣接する第1封止材6aにより配線部材8に接する第2封止材6bが支持されている。これにより、外部からの応力による封止材6自身の過度のずれを抑制することができ、封止材6のずれに起因する配線部材8の剥離またはずれ(短絡)を抑制することができる。
【0032】
また、第2封止材6bは損失正接が比較的に大きい、すなわち比較的に柔らかい。これにより、外部からの応力を吸収でき、外部からの応力に対する耐性を得ることができる。
【0033】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る太陽電池モジュールを裏面側からみた図であり、図6は、図5に示す第3実施形態に係る太陽電池モジュールのVI-VI線断面図である。第3実施形態では、第1封止材6aと第2封止材6bとの両方が、配線部材8に接して配線部材8を被覆している。
【0034】
この第3実施形態の太陽電池モジュール100でも、上述した第1実施形態の太陽電池モジュール100および/または第2実施形態の太陽電池モジュール100と同様の利点を得ることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、裏面電極型の太陽電池セル1と、太陽電池セル1の裏面側に設けられた配線部材8とを備える太陽電池モジュール100において、裏側封止材6を第1封止材6aと第2封止材6bとで構成する形態を例示した。しかし、本発明の特徴はこれに限定されず、両面電極型の太陽電池セルと、太陽電池セルの受光面側および裏面側に設けられた配線部材とを備える太陽電池モジュールにも適用可能である。この場合、裏側封止材のみならず受光側封止材も第1封止材と第2封止材とで構成する形態とすればよい。
【0036】
また、本発明の特徴は、複数の太陽電池セルをシングリング方式を用いて接続する太陽電池モジュールにも適用可能である。シングリング方式とは、太陽電池セルの端部の一部が重なり合うことにより、太陽電池セルが直列に接続される方式である。具体的には、隣り合う太陽電池セルのうちの一方の太陽電池セルにおける一方端部が、他方の太陽電池セルの他方端部の下に重なる。
【0037】
このように、瓦を屋根に葺いたように、複数の太陽電池セルが一様にある方向にそろって傾く堆積構造となることから、このようにして太陽電池セルを電気的に接続する方式を、シングリング方式と称する。また、ひも状につながった複数の太陽電池セルを、太陽電池ストリングと称する。
【0038】
複数の太陽電池セルをシングリング方式を用いて接続する形態でも、配線部材が用いられることがある。この場合、裏側封止材および/または受光側封止材を第1封止材と第2封止材とで構成する形態とすればよい。
【符号の説明】
【0039】
1 太陽電池セル
3 受光側保護部材
4 裏側保護部材
5 受光側封止材
6 裏側封止材
6a 第1封止材
6b 第2封止材
8 配線部材
100 太陽電池モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6