(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】車両の着座装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/70 20060101AFI20231102BHJP
A47C 7/18 20060101ALI20231102BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20231102BHJP
A47C 27/15 20060101ALI20231102BHJP
A47C 27/20 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B60N2/70
A47C7/18
A47C27/14 Z
A47C27/15 Z
A47C27/20
(21)【出願番号】P 2019239813
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070629(JP,A)
【文献】実開昭56-155647(JP,U)
【文献】特開2016-106831(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043807(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0193738(US,A1)
【文献】特開2006-255403(JP,A)
【文献】特開2017-113491(JP,A)
【文献】米国特許第09161630(US,B2)
【文献】中国特許出願公開第111741868(CN,A)
【文献】国際公開第2002/057110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
A47C 7/18
A47C 27/15
B60N 2/70
A47C 7/18
A47C 27/14
A47C 27/15
A47C 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乗車した乗員が座面クッションに着座する着座装置であって
、
前記
座面クッションの内部
の少なくとも一部において荷重方向に沿って立設された後傾部材を有し、
前記後傾部材は、前記
座面クッションが荷重により変形すると、荷重が作用する前の位置から後傾する、
車両の着座装置。
【請求項2】
前記後傾部材は、前記
座面クッションに荷重が作用していない状態において、後傾して設けられる、
請求項1記載の車両の着座装置。
【請求項3】
前記後傾部材は、前記座面クッショ
ンにおいて、複数が前記車両の前後方向に沿って並べて設けられる、
請求項1または2記載の車両の着座装置。
【請求項4】
複数の前記後傾部材は、前記座面クッションについての着座位置より前側の範囲に並べて設けられる、
請求項3記載の車両の着座装置。
【請求項5】
複数の前記後傾部材は、前記座面クッションについての着座位置から前記着座位置の前側にかけての範囲に並べて設けられる、
請求項3記載の車両の着座装置。
【請求項6】
前記後傾部材は、前記車両の車幅方向の幅が前記車両の前後方向の厚さより大きい形状に形成される、
請求項1から5のいずれか一項記載の車両の着座装置。
【請求項7】
前記
座面クッションの内部において荷重方向に沿って設けられる前記後傾部材は、前向きに湾曲または屈曲している、
請求項1から6のいずれか一項記載の車両の着座装置。
【請求項8】
前記
座面クッションの内部において荷重方向に沿って設けられる前記後傾部材は、後向きに湾曲または屈曲している、
請求項1から6のいずれか一項記載の車両の着座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の着座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、着座装置を用いる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の着座装置は、座面クッションについて、正しい着座位置がある。この着座位置に着座することにより、乗員は、長時間の着座においても疲れ難くなる。
しかしながら、車両に乗車した乗員は、座面クッションについての正しい着座位置に着座するとは限らず、たとえば正しい着座位置より腰が前へ出るように傾いた姿勢で着座することがある。この場合、腰への負担が大きくなり、乗員は、疲れ易くなる。
また、正しい着座位置より腰が前へ出るように傾いて着座してしまうと、乗員の腰は、着座中にさらに前へ出るようになってしまい易くなる。
【0005】
このように車両の着座装置は、改善することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の着座装置は、車両に乗車した乗員が座面クッションに着座する着座装置であって、前記座面クッションの内部の少なくとも一部において荷重方向に沿って立設された後傾部材を有し、前記後傾部材は、前記座面クッションが荷重により変形すると、荷重が作用する前の位置から後傾する。
【0007】
好適には、前記後傾部材は、前記座面クッションに荷重が作用していない状態において、後傾して設けられる、とよい。
【0008】
好適には、前記後傾部材は、前記座面クッションにおいて、複数が前記車両の前後方向に沿って並べて設けられる、とよい。
【0009】
好適には、複数の前記後傾部材は、前記座面クッションについての着座位置より前側の範囲に並べて設けられる、とよい。
【0010】
好適には、複数の前記後傾部材は、前記座面クッションについての着座位置から前記着座位置の前側にかけての範囲に並べて設けられる、とよい。
【0011】
好適には、前記後傾部材は、前記車両の車幅方向の幅が前記車両の前後方向の厚さより大きい形状に形成される、とよい。
【0012】
好適には、前記座面クッションの内部において荷重方向に沿って設けられる前記後傾部材は、前向きに湾曲または屈曲している、とよい。
【0013】
好適には、前記座面クッションの内部において荷重方向に沿って設けられる前記後傾部材は、後向きに湾曲または屈曲している、とよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の着座装置では、車両に乗車した乗員が着座する座面クッションの少なくとも一部には、荷重が継続的に作用することにより変形が進む遅変形部が設けられる。また、遅変形部の内部には、荷重方向に沿って後傾部材が設けられる。そして、後傾部材は、遅変形部が荷重により変形すると、荷重が作用する前の位置から後傾する。したがって、座面クッションに着座した乗員の臀部は、荷重により変形した遅変形部の内部において後傾する後傾部材により、前側から後向きに支えられる。乗員が座面クッションの正しい着座位置にではなくて、腰を前へ傾けて着座していたとしても、座面クッションに着座した乗員の臀部は、着座中にさらに前へずれ難くなる。また、座面クッションに着座した乗員の臀部は、場合によっては着座中に後傾する後傾部材により後へ押されて、座面クッションの正しい着座位置へ向けて戻り易くなる。乗員は、長時間の着座においても疲れ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る着座装置が適用される自動車の説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動車の着座装置への乗員の着座状態の説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る着座装置の座面クッションの構造の模式的な説明図である。
【
図4】
図4は、
図3の座面クッションへの乗員の着座状態の説明図である。
【
図5】
図5は、
図3の変形例に係る座面クッションの構造の模式的な説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の第二実施形態に係る着座装置の座面クッションの構造の模式的な説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の第三実施形態に係る着座装置の座面クッションの構造の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0020】
[第一実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る着座装置10が適用される自動車1の説明図である。
図1(A)は、上面図である。
図1(B)は、左側面図である。
【0021】
自動車1は、車両の一例である。自動車1は、内燃機関を走行の動力源としているものでも、バッテリの蓄電電力を走行の動力源としているものでも、それらを組み合わせたものでもよい。
図1の自動車1は、車体2の前後方向の中央部分に乗員室3が設けられる。乗員室3には、自動車1に乗り込んだ乗員が着座するシート4が設けられる。
図1には、前後に並ぶシート4のうちで、前側の独立シートが図示されている。シート4は、乗員の臀部が乗る座面クッション5、座面クッション5の後縁から立設される背面クッション6、を有する。
シート4に着座した乗員の前には、ダッシュボードから後向きにハンドル7が突出して設けられる。乗員は、シート4に着座したまま、ハンドル7、不図示のフットペダル、シフトレバーを操作して、自動車1の走行などを操作する。
【0022】
図2は、
図1の自動車1の着座装置10への乗員の着座状態の説明図である。
【0023】
図2(A)は、乗員が、腰を背面クッション6に沿って立ててシート4に着座している状態である。この場合、乗員の臀部は、座面クッション5の後部の正しい着座位置に乗る。
このように正しい着座位置に着座することにより、乗員は、長時間の着座においても疲れ難くなる。
【0024】
図2(B)は、乗員が、腰を背面クッション6から前へ出るように離してシート4に着座している状態である。この場合、乗員の臀部は、座面クッション5の後部から前へ離れ、傾いている。
これに対し、たとえば
図2(B)のように座面クッション5についての正しい着座位置に着座していない場合、腰への負担が大きくなる。乗員は、疲れ易くなる。
また、
図2(B)のように正しい着座位置より腰が前へ出るように傾いて着座してしまうと、乗員の腰は、着座中にさらに前へ出るようになってしまい易くなる。たとえば走行中に停止する場合、乗員の腰は、さらに前へ出ることがある。
このように自動車1の着座装置10は、改善することが望まれる。
【0025】
図3は、本発明の第一実施形態に係る着座装置10の座面クッション5の構造の模式的な説明図である。
図3(A)は、座面クッション5の上面図である。
図3(B)は、座面クッション5の側面図である。
図3の座面クッション5は、自動車1に乗車した乗員が着座する座面全体を形成するクッション本体11、遅変形フォーム12、複数の後傾弾性板13、を有する。
【0026】
クッション本体11は、着座装置10の座面全体を形成する。クッション本体11の周囲や下部には、通常の着座装置10と同様に、たとえば金属製のスプリングや枠材が設けられてよい。クッション本体11は、通常の着座装置10で用いられるウレタン材などで形成されてよく、たとえば荷重が瞬時的に作用する場合でも容易に圧縮変形するように、撓み易い柔らかい特性の素材を用いてよい。
【0027】
遅変形フォーム12は、クッション本体11の後部に形成される上面凹部に収容される。
図3の上面凹部は、クッション本体11についての後部から中央部にかけての一部において、略矩形に形成される。遅変形フォーム12は、略矩形の上面凹部と同サイズの矩形に形成されてよい。遅変形フォーム12と、クッション本体11とは、接着剤などにより互いに貼着してよい。これにより、遅変形フォーム12は、
図2(A)の正しい着座位置での乗員の臀部が乗る後部からその後部の前側にかけての範囲に設けられる。
【0028】
遅変形フォーム12は、座面クッション5の他の部分であるクッション本体11と比べて圧縮変形が進みにくい低反発素材を用いて形成してよい。低反発素材を用いることにより、遅変形フォーム12は、瞬時的な荷重により圧縮変形し難くなる。遅変形フォーム12は、ある程度の時間において継続的に荷重が作用することにより、圧縮変形が進むようになる。遅変形フォーム12は、クッション本体11と比べて遅れて圧縮変形が進む、硬い特性となる。これにより、座面クッション5に着座した乗員の荷重は、クッション本体11より遅変形フォーム12に対して効率的に作用するようになる。
【0029】
後傾弾性板13は、板状の弾性板である。板状の後傾弾性板13は、遅変形フォーム12の内部に、上下方向に延在するように立てて配列される。
図3では、荷重が作用していない状態において、後傾弾性板13は、上下方向と比べて若干後傾して設けられる。これにより、後傾弾性板13は、遅変形フォーム12の内部において、荷重方向に相当する上下方向に沿って設けられる。
【0030】
複数の板状の後傾弾性板13は、また、自動車1の車幅方向および前後方向に沿って並べて設けられる。
図3では、複数の後傾弾性板13は、車幅方向へ3つずつ並べられ、前後方向に4列で並べられている。これにより、後傾弾性板13は、座面クッション5についての遅変形フォーム12が設けられる範囲において、複数が自動車1の前後方向に沿って互いに独立して可倒するように互いに離間して並べて設けられる。また、板状の後傾弾性板13は、自動車1の車幅方向の幅が、自動車1の前後方向の厚さより大きい形状に形成される、
【0031】
後傾弾性板13には、板を曲げるように圧縮する力が作用した場合に比較的容易に湾曲するように変形できる素材を用いてよい。これにより、後傾弾性板13が、着座した乗員に対して、遅変形フォーム12と比べて強く当たり難くなる。着座した乗員が後傾弾性板13による違和感を得にくくなる。
【0032】
図4は、
図3の座面クッション5への乗員の着座状態の説明図である。
複数の後傾弾性板13は、座面クッション5についての正しい着座位置である後部から、正しい着座位置の前側である中央部にかけての範囲に並べて設けられる。
【0033】
図4(A)は、座面クッション5の正しい着座位置に乗員が着座した状態である。正しい着座位置に着座した乗員の臀部の荷重は、遅変形フォーム12に集中して継続的に作用する。集中による強い荷重が継続的に作用すると、遅変形フォーム12は、
図4(A)に示すように大きく圧縮変形する。圧縮変形する遅変形フォーム12の内部において、その変形にしたがって、後傾弾性板13が大きく後傾する。各後傾弾性板13は、それぞれに作用する荷重に応じて、荷重が作用する前の位置から後傾する。大きく後傾した後傾弾性板13は、正しい着座位置に着座した乗員の臀部の下側において、略平らな面のようになる。これにより、後傾している後傾弾性板13は、正しい着座位置に着座した乗員の臀部がさらに下へ沈み込まないように機能し得る。また、後傾弾性板13が大きく後傾することにより、正しい着座位置に乗員が着座する場合、乗員の腰部は、座面クッション5と背面クッション6との接続部分に形成される隅へ向けて、後ろへ少し引き込まれるようになる。正しく着座する乗員の腰部は、背中が背面クッション6に当たっていることにより、その正しい着座位置において少しだけ起き上がる。これにより、乗員の腰部は、正しい着座位置から前へ移動し難くなる。
【0034】
図4(B)は、座面クッション5の正しい着座位置の前にずれて乗員が着座した状態である。正しい着座位置の前にずれて着座する乗員の臀部の荷重は、遅変形フォーム12に分散して継続的に作用する。加重作用面は、
図4(A)の場合と比べて大きくなる。分散した荷重が継続的に作用すると、遅変形フォーム12は、
図4(B)に示すように圧縮変形する。この場合の遅変形フォーム12の圧縮変形量は、
図4(A)の場合と比べて小さくなる。各後傾弾性板13は、それぞれに作用する荷重に応じて、荷重が作用する前の位置から後傾する。後傾弾性板13は、圧縮変形する遅変形フォーム12の内部においてその変形にしたがって後傾するものの、
図4(A)の場合のように大きく後傾しない。斜めの姿勢を維持する。後傾弾性板13は、正しい着座位置の前へずれて着座している乗員の臀部に対して、前から抑えるように当たる。これにより、正しい着座位置より前へずれて着座した乗員の臀部は、後傾している後傾弾性板13により、前から支えられる。正しい着座位置より前へずれて着座する乗員の臀部は、着座中にたとえば減速時において前へずれないように前から支えられる。
【0035】
以上のように、本実施形態の着座装置10では、自動車1に乗車した乗員が着座する座面クッション5の少なくとも一部には、荷重が継続的に作用することにより圧縮変形が進む遅変形フォーム12が設けられ、遅変形フォーム12の内部には、荷重方向に沿って後傾弾性板13が設けられる。そして、後傾弾性板13は、遅変形フォーム12が荷重により変形すると、荷重が作用する前の位置から後傾する。また、遅変形フォーム12は、座面クッション5の他の部分に使用されるものより変形し難い低反発素材を用いて形成されている。したがって、座面クッション5に着座した乗員の臀部は、荷重により変形した遅変形フォーム12の内部において後傾している後傾弾性板13により、前側から後向きに支えられる。
乗員が座面クッション5の正しい着座位置にではなくて、腰を前へ傾けて着座していたとしても、座面クッション5に着座した乗員の臀部は、着座中にさらに前へずれ難くなる。特に、着座した際に腰が前へ傾いている場合には、荷重が広い範囲に分散し易くなり、遅変形フォーム12の圧縮変形が小さくなる。この結果として、複数の後傾弾性板13は、正しい着座位置に着座している場合より後傾量が減り、着座中にさらに前へずれ難くなる。
また、座面クッション5に着座した乗員の臀部は、場合によっては着座中に後傾している後傾弾性板13により後へ押されて、座面クッション5の正しい着座位置へ向けて戻り易くなる。
【0036】
特に、後傾弾性板13が、座面クッション5についての遅変形フォーム12が設けられる範囲において複数で設けられ、複数の後傾弾性板13が自動車1の前後方向に沿って互いに独立して可倒するように互いに離間して並べて設けられることにより、座面クッション5に着座した乗員の臀部は、着座中に後傾している後傾弾性板13を後へ押し返して、座面クッション5の正しい着座位置へ戻すように機能し得る。複数の後傾弾性板13が、座面クッション5についての正しい着座位置から着座位置の前側にかけての範囲に並べて設けられることにより、座面クッション5の正しい着座位置へ戻るようになり得る。着座した際には腰が前へ傾いていたとしても、着座中に正しい着座位置へ戻ることにより、乗員は、長時間の着座においても疲れ難くなる。
【0037】
本実施形態では、後傾弾性板13は、自動車1の車幅方向の幅が自動車1の前後方向の厚さより大きい形状に形成される。これにより、後傾弾性板13は、自動車1の車幅方向へ向けて傾きにくくなり、が自動車1の前後方向にそって傾くようになる。後傾弾性板13に対してその立設方向に沿って荷重が作用していなくとも、後傾弾性板13は、斜めに倒れにくくなって、後方へ向かって傾き易くなる。これにより、後傾弾性板13は、着座した腰に対して着座中に後向きに支えるように機能し易くなる。
【0038】
なお、上述した実施形態では、複数の後傾弾性板13は、遅変形フォーム12とともに、座面クッション5についての正しい着座位置から着座位置の中央部にかけての範囲に並べて設けられている。
この他にもたとえば、複数の後傾弾性板13は、遅変形フォーム12とともに、座面クッション5についての後部に部分的に設けられてもよい。
また、複数の後傾弾性板13は、遅変形フォーム12とともに、たとえば座面クッション5についての後部から前部にかけて略全面的に設けられてよい。
【0039】
図5は、
図3の変形例に係る座面クッション5の構造の模式的な説明図である。
図5において、複数の後傾弾性板13は、遅変形フォーム12とともに、座面クッション5の前部から後部にかけて略全面的に設けられてよい。この場合でも、後傾している後傾弾性板13は、正しい着座位置より前へずれて着座した乗員の臀部を前から支えるように機能し得る。正しい着座位置より前へずれて着座する乗員の臀部は、着座中にたとえば減速時において前へずれないように前から支えられる。
【0040】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の着座装置10について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を使用して図示および説明を省略する。以下の説明では、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0041】
図6は、本発明の第二実施形態に係る着座装置10の座面クッション5の構造の模式的な説明図である。
図6(A)は、着座前の状態である。
図6(B)は、着座した後の状態である。
図6の座面クッション5は、クッション本体11、第一遅変形フォーム21、第二遅変形フォーム22、複数の後傾弾性板13、を有する。
【0042】
第一遅変形フォーム21および第二遅変形フォーム22は、クッション本体11の後部に形成される上面凹部に収容される。第一遅変形フォーム21は、第二遅変形フォーム22の上に重ねて設けられる。第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22とは、荷重方向において重なる。
【0043】
第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22とは、荷重に対して互いに異なる変形特性を有する。ここで、第一遅変形フォーム21は、たとえば第二遅変形フォーム22と比べて圧縮変形し易い特性の低反発素材を用いて形成する。なお、第一遅変形フォーム21は、たとえば第二遅変形フォーム22と比べて圧縮変形し難い特性の低反発素材を用いて形成してもよい。
【0044】
そして、本実施形態において、遅変形フォーム12の内部において荷重方向に沿って後傾して設けられる後傾弾性板13は、
図6(A)に示すように、先端部31と基端部32とを有する。先端部31と基端部32とは、第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22との重なりの境界部分において、前向きに屈曲している。ここで、後傾弾性板13は、前向きであれば、境界部分とは異なる高さ位置において屈曲しても、全体的に湾曲していてもよい。
【0045】
このような座面クッション5では、
図6(B)に示すように、乗員が着座すると、第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22とが圧縮変形する。これらの圧縮変形にしたがって、後傾して設けられる後傾弾性板13は、さらに後傾する。
【0046】
以上のように、本実施形態では、遅変形フォーム12は、荷重方向において重なる第一遅変形フォーム21および第二遅変形フォーム22、を有する。第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22とは、荷重に対して互いに異なる変形特性を有する。ここでは、第一遅変形フォーム21は荷重が作用すると圧縮変形し易く、第二遅変形フォーム22は荷重が作用してもゆっくりと圧縮変形する。そして、遅変形フォーム12が荷重により圧縮変形した状態においては、前向きに屈曲している後傾弾性板13は、その先端部31により着座している臀部を荷重方向に沿ってまっすぐに下から支えるように機能し得る。着座装置10は、着座している臀部を、変形した遅変形フォーム12と後傾弾性板13とにより相乗的に支えることができる。特に、第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22との重なり構造にしたがってそれらの境界部分において湾曲または屈曲することにより、前向きに屈曲している後傾弾性板13は、その湾曲や屈曲による形状を維持しながら後傾し易くなる。
【0047】
また、上述した実施形態と異なり、後傾弾性板13は、全体として前向きに屈曲している。このため、着座の加重により後傾弾性板13は、全体として大きく後傾するが、腰部を座面に沿って後方へ引き込もうとする作用は小さくなる。ただし、小さい作用であるとしても、正しく着座する乗員の腰部は、背中が背面クッション6に当たっていることにより、その正しい着座位置において少しだけ起き上がる。これにより、乗員の腰部は、正しい着座位置から前へ移動し難くなる。
【0048】
なお、本実施形態において後傾弾性板13は、上述した実施形態と同様に略直線状の棒形状の後傾弾性部材として設けられてもよい。この場合、第一遅変形フォーム21の圧縮変形により棒形状の後傾弾性部材が後倒し易くなり、着座した直後から着座している腰を後向きに支える機能を発揮できる。しかも、着座時間が長くなると、第二遅変形フォーム22の圧縮変形により棒形状の後傾弾性部材は上端部分だけでなく全体的に大きく後傾するようになり、着座中に着座している腰を後向きに強く支えることができる。着座直後の矯正機能と、着座中に修正機能との双方を両立させることができる。
【0049】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る自動車1の着座装置10について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を使用して図示および説明を省略する。以下の説明では、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0050】
図7は、本発明の第三実施形態に係る着座装置10の座面クッション5の構造の模式的な説明図である。
図7(A)は、着座前の状態である。
図7(B)は、着座した後の状態である。
図7の座面クッション5は、クッション本体11、第一遅変形フォーム21、第二遅変形フォーム22、複数の後傾弾性板13、を有する。
【0051】
第一遅変形フォーム21および第二遅変形フォーム22は、クッション本体11の後部に形成される上面凹部に収容される。第一遅変形フォーム21は、第二遅変形フォーム22の上に重ねて設けられる。第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22とは、荷重方向において重なる。
【0052】
第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22とは、荷重に対して互いに異なる変形特性を有する。ここで、第一遅変形フォーム21は、たとえば第二遅変形フォーム22と比べて圧縮変形し易い特性の低反発素材を用いて形成する。なお、第一遅変形フォーム21は、たとえば第二遅変形フォーム22と比べて圧縮変形し難い特性の低反発素材を用いて形成してもよい。
【0053】
そして、本実施形態において、遅変形フォーム12の内部において荷重方向に沿って後傾して設けられる後傾弾性板13は、
図7(A)に示すように、先端部31と基端部32とを有する。先端部31と基端部32とは、第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22との重なりの境界部分において、後向きに屈曲している。ここで、後傾弾性板13は、後向きであれば、境界部分とは異なる高さ位置において屈曲しても、全体的に湾曲していてもよい。
【0054】
このような座面クッション5では、
図7(B)に示すように、乗員が着座すると、第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22とが圧縮変形する。これらの圧縮変形にしたがって、後傾して設けられる後傾弾性板13は、さらに後傾する。
【0055】
以上のように、本実施形態では、遅変形フォーム12は、荷重方向において重なる第一遅変形フォーム21および第二遅変形フォーム22、を有する。第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22とは、荷重に対して互いに異なる変形特性を有する。ここでは、第一遅変形フォーム21は荷重が作用すると圧縮変形し易く、第二遅変形フォーム22は荷重が作用してもゆっくりと圧縮変形する。そして、遅変形フォーム12が荷重により圧縮変形した状態においては、後向きに屈曲している後傾弾性板13の先端部31は、荷重が小さい場合でも、略平らとなる。複数の後傾弾性板13は、広い面積において荷重を安定的に受けることができる。その結果、座面は、それ以上に下がり難くなる。着座装置10は、着座している臀部を、変形した遅変形フォーム12と後傾弾性板13とにより相乗的に支えることができる。特に、第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22との重なり構造にしたがってそれらの境界部分において湾曲または屈曲することにより、後向きに屈曲している後傾弾性板13は、その湾曲や屈曲による形状を維持しながら後傾し易くなる。
また、後向きに湾曲または屈曲している後傾弾性板13は、遅変形フォーム12が荷重により大きく圧縮変形していなくとも、着座している乗員を前から後向きに支えるように機能し得る。着座装置10は、着座中に臀部が前へずれることを効果的に抑制できる。
また、荷重が作用している後傾弾性板13では、先端が座面クッション5の座面と平行になり易いため、広い面積で荷重を安定的に受けることができる。
特に、第一遅変形フォーム21と第二遅変形フォーム22との重なり構造にしたがって、それらの境界部分において後傾弾性板13が湾曲または屈曲することにより、後傾弾性板13の湾曲や屈曲に基づく変形が遅変形フォーム12により阻害され難くできる。
【0056】
また、上述した実施形態と異なり、後傾弾性板13は、全体として後向きに屈曲している。このため、着座の加重により後傾弾性板13は、全体として大きく後傾しつつ、さらに腰部を座面に沿って後方へ引き込もうとする作用は大きくなる。正しく着座する乗員の腰部は、背中が背面クッション6に当たっていることにより、その正しい着座位置においてより強く起き上がる。これにより、乗員の腰部は、正しい着座位置から前へ移動し難くなる。
【0057】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0058】
上述した実施形態では、後傾弾性板13は、1回で屈曲または湾曲している。
この他にもたとえば、後傾弾性板13は、2回以上で屈曲または湾曲してもよい。
また、後傾弾性板13は、板状ではなく、棒状であってもよい。棒状の後傾弾性部材であっても、その断面形状を円以外としたり、その一部に脆弱部や補強部を設けたりすることにより、軸方向に沿って荷重が作用した場合に特定の方向へ変形し易くすることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…自動車(車両)、2…車体、3…乗員室、4…シート、5…座面クッション、6…背面クッション、7…ハンドル、10…着座装置、11…クッション本体、12…遅変形フォーム、13…後傾弾性板(後傾弾性部材)、21…第一遅変形フォーム、22…第二遅変形フォーム、31…先端部、32…基端部