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特許7377711コーティングされたフィルムおよびそれから形成される物品
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  • 特許-コーティングされたフィルムおよびそれから形成される物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】コーティングされたフィルムおよびそれから形成される物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20231102BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231102BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231102BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20231102BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B27/40
B32B27/32 Z
B65D65/42 C BRH
B65D65/40 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019515962
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017053637
(87)【国際公開番号】W WO2018064123
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】62/401,356
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】515129386
【氏名又は名称】ダウ キミカ メキシカーナ エセ・アー・デ・セ・ウベ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ユアン・カルロス・カサルビアス
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア・ヘルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ゼア・ドミンゲス・トリニダッド
(72)【発明者】
【氏名】ジエ・ウー
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126072(JP,A)
【文献】実開昭60-081830(JP,U)
【文献】実開昭59-166934(JP,U)
【文献】特開2005-096777(JP,A)
【文献】特開2008-030765(JP,A)
【文献】特開2002-068197(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第00969820(CA,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0062919(US,A1)
【文献】特開2007-030341(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0115457(US,A1)
【文献】特開平10-060141(JP,A)
【文献】特開2009-061714(JP,A)
【文献】特開2012-045929(JP,A)
【文献】特表2018-522757(JP,A)
【文献】特開2016-026923(JP,A)
【文献】特開2007-320147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされたフィルムであって、
(a)対向する前表面を有する多層ポリマーフィルムであって、第1の前表面が、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nm、かつ、350nm以下の二乗平均平方根表面粗さを有し、かつ第2の前表面が、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに80nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有する、多層ポリマーフィルムと、
(b)ポリウレタンを含む、前記第1の前表面の少なくとも一部の上のコーティングと、を含み、
前記フィルムが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリアミドのうちの少なくとも1つを含み、前記コーティングされたフィルムが、ASTM D1746/15に従って測定したときに、前記第1の前表面の前記コーティングされた部分において少なくとも2%のZebedee透明度を有する、コーティングされたフィルム。
【請求項2】
コーティングされたフィルムであって、
(a)対向する前表面を有する多層ポリエチレンフィルムであって、第1の前表面が、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nm、かつ、350nm以下の二乗平均平方根表面粗さを有する、多層ポリマーフィルムと、
(b)ポリウレタンを含む、前記第1の前表面の少なくとも一部の上のコーティングと、を含み、
前記コーティングされたフィルムが、ASTM D1003に従って測定したときに、前記第1の前表面の前記コーティングされた部分において20%未満の全ヘイズを有する、コーティングされたフィルム。
【請求項3】
第2の前表面が、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに、40nm以下の二乗平均平方根表面粗さを有する、請求項1または請求項2に記載のコーティングされたフィルム。
【請求項4】
前記第1の前表面を形成する前記フィルムの層が、1.0g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する高密度ポリエチレンを含む、請求項1~3のいずれかに記載のコーティングされたフィルム。
【請求項5】
前記ポリウレタンが、(a)ヒドロキシル末端ポリオールまたはウレタン、および(b)イソシアネート官能性プレポリマーから形成される、請求項1~4のいずれかに記載のコーティングされたフィルム。
【請求項6】
前記イソシアネート官能性プレポリマーが、芳香族イソシアネートまたは脂肪族イソシアネートを含む、請求項5に記載のコーティングされたフィルム。
【請求項7】
前記ヒドロキシル末端ウレタンが、ヒドロキシル末端ポリエーテル系ウレタン、ヒドロキシル末端ポリエステル系ウレタン、およびヒドロキシル末端ポリエステル-ポリエーテル系ウレタンのうちの少なくとも1つを含む、請求項5または6に記載のコーティングされたフィルム。
【請求項8】
前記フィルムの前記第1の前表面上のコーティングの量が、0.1~7.0g/mである、請求項1~7のいずれかに記載のコーティングされたフィルム。
【請求項9】
前記コーティングが、前記第1の前表面の前表面積に基づいて前記第1の前表面の50%未満の上にあり、前記コーティングされたフィルムが、ASTM D2457に従って測定したときに、前記コーティングが存在しない前記第1の前表面の領域において28光沢単位未満の光沢を示す、請求項1~8のいずれかに記載のコーティングされたフィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のコーティングされたフィルムから形成される、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装などの物品において使用することができるコーティングされたフィルムに関する。そのようなコーティングされたフィルムは、透明窓が所望される包装において特に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
何年もの間、食品、液体、パーソナルケア、および他の製品を保護するために作られた多くの種類の可撓性包装が、典型的にはポリエステル、ポリプロピレン、およびポリエチレンなどのいくつかの材料を組み合わせたフィルム構造で製造されてきた。そのような層から積層体を作製するために接着剤がしばしば使用される。
【0003】
多くの可撓性包装は、包装によって収容される製品を呈示し、かつ/または潜在的な消費者の注意を引くために、1つ以上の透明窓を含む。ポリエチレンなどの一般的な包装材料の透明度は、結晶度などの特性に依存する。一般的に、透明度の改善は、剛性の低下を招き、それがダウンゲージの機会を低減し得る。
【0004】
したがって、他の利点も提供しながら、所望の場所で改善された透明性を提供する包装に使用するための新しいフィルムおよび関連材料を有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ポリマー系フィルムと、透明性などの望ましい特性を有利に提供するポリウレタンコーティングとを有利に組み合わせたコーティングされたフィルムを提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、改善された透明性を有するポリエチレン系可撓性包装を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、1つ以上の透明窓を組み込んだポリエチレン系可撓性包装を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、適合性材料の使用に起因して、容易にリサイクル可能であるフィルムおよび包装を提供する。
【0006】
一実施形態において、本発明は、(a)対向する前表面を有する多層ポリマーフィルムであって、第1の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有し、かつ第2の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに80nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有する、多層ポリマーフィルムと、(b)ポリウレタンを含む、第1の前表面の少なくとも一部の上のコーティングと、を含むコーティングされたフィルムを提供し、ここで、フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリアミドのうちの少なくとも1つを含み、かつコーティングされたフィルムは、ASTM D1746/15に従って測定したときに、第1の前表面のコーティングされた部分において少なくとも2%のZebedee透明度を有する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、(a)対向する前表面を有する多層ポリエチレンフィルムであって、第1の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有する、多層ポリエチレンフィルムと、(b)ポリウレタンを含む、第1の前表面の少なくとも一部の上のコーティングと、を含むコーティングされたフィルムを提供し、ここで、コーティングされたフィルムは、ASTM D1003に従って測定したときに、第1の前表面のコーティングされた部分において20%未満の全ヘイズを有する。
【0008】
本発明の実施形態は、本明細書において開示されるコーティングされたフィルムから形成される物品(例えば、可撓性包装、パウチ、立式パウチ、袋など)も提供する。
【0009】
これらおよび他の実施形態は、発明を実施するための形態でより詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】フィルムへのコーティングの適用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
矛盾する記述があるか、文脈から示唆されるか、または当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部分およびパーセントは、重量に基づくものであり、全ての温度は、℃であり、全ての試験方法は、本開示の出願日現在のものである。
【0012】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0013】
「~を含む(comprising)」という用語、およびその派生語は、同じものが本明細書に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を除外することを意図するものではない。いかなる疑いも避けるために、「~を含む(comprising)」という用語を使用して特許請求される全ての組成物は、矛盾する記述がない限り、ポリマー性かまたは別様かにかかわらず、いずれの追加の添加剤、補助剤、または化合物を含み得る。対照的に、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除いて、あらゆる後続の記載の範囲から、任意の他の成分、ステップ、または手順を除外する。「~からなる(consisting of)」という用語は、具体的に規定または列挙されていない任意の成分、ステップ、または手順を除外する。
【0014】
「ポリマー」は、同じ種類かまたは異なる種類にかかわらず、モノマーを重合させることによって調製されたポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという一般的な用語は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)、および本明細書において以下に定義されるインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)が、ポリマー中および/またはポリマー内に組み込まれ得る。ポリマーは、単一ポリマー、ポリマーブレンド、またはポリマー混合物であり得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。したがって、インターポリマーという一般的な用語は、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「オレフィン系ポリマー」または「ポリオレフィン」という用語は、重合形態で、(ポリマーの重量に基づいて)過半量のオレフィンモノマー、例えば、エチレンまたはプロピレンを含み、任意に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0017】
「ポリプロピレン」は、50重量%を超えるプロピレンモノマーから誘導された単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーから誘導された単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のポリプロピレンの一般的な形態としては、ホモポリマーポリプロピレン(hPP)、ランダムコポリマーポリプロピレン(rcPP)、耐衝撃性コポリマーポリプロピレン(hPP+少なくとも1つのエラストマー性耐衝撃性改良剤)(ICPP)または高耐衝撃性ポリプロピレン(HIPP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)、イソタクチックポリプロピレン(iPP)、シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で、(インターポリマーの重量に基づいて)過半量のエチレンモノマー、およびα-オレフィンを含むインターポリマーを指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、重合形態で、2種類のみのモノマーとして、(コポリマーの重量に基づいて)過半量のエチレンモノマー、およびα-オレフィンを含むコポリマーを指す。
【0020】
「接着接触」という用語および同様の用語は、1つの層の1つの前表面および別の層の1つの前表面が接触してお互いに結合することで、一方の層が、他方の層から両方の層の層間表面(すなわち、接触している前表面)を損傷することなく、除去することができないことを意味する。
【0021】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」などの用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当該技術分野で既知の任意の他の方法から決定される、1つ以上のドメイン構成を含んでも、含んでいなくてもよい。ブレンドは、積層ではないが、積層の1つ以上の層はブレンドを含有し得る。
【0022】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、50重量%を超えるエチレンモノマーから誘導された単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーから誘導された単位を意味する)を含む。当該技術分野で既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリエチレン材料は、当該技術分野において一般に知られているが、以下の説明は、これらの異なるポリエチレン樹脂のうちのいくつかの違いを理解するのに役立つ場合がある。
【0023】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、または「高分岐ポリエチレン」とも称され得、ポリマーが、過酸化物(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、US4,599,392を参照されたい)などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、オートクレーブまたは管状反応器中で、部分的または完全に、ホモ重合または共重合されることを意味するように定義される。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.935g/cmの範囲の密度を有する。
【0024】
「LLDPE」という用語は、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒系、ならびにビス-メタロセン触媒(時折「m-LLDPE」と称される)および束縛構造触媒を含むが、これらに限定されない単一部位触媒を使用して作製された両樹脂を含み、線状、実質的に線状、または不均質なポリエチレンコポリマーまたはホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEほど長くない鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、および米国特許第5,733,155号でさらに定義される実質的に線状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号などの均質分岐線状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されたものなどの不均質分岐エチレンポリマー、ならびに/またはそれらのブレンド(US3,914,342もしくはUS5,854,045に開示されるものなど)を含む。LLDPEは、当該技術分野で既知の任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせを介して作製され得る。
【0025】
「MDPE」という用語は、0.926~0.935g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロムもしくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、またはビスメタロセン触媒および束縛構造触媒を含むが、これらに限定されない単一部位触媒を使用して作製され、典型的には、2.5を超える分子量分布(「MWD」)を有する。
【0026】
「HDPE」という用語は、一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、またはビスメタロセン触媒および束縛構造触媒を含むが、これらに限定されない単一部位触媒を用いて調製される、約0.935g/cmを超える密度を有するポリエチレンを指す。
【0027】
「ULDPE」という用語は、一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、またはビスメタロセン触媒および束縛構造触媒を含むが、これらに限定されない単一部位触媒を用いて調製される、0.880~0.912g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。
【0028】
一実施形態において、本発明は、(a)対向する前表面を有する多層ポリマーフィルムであって、第1の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有し、かつ第2の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに80nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有する、多層ポリマーフィルムと、(b)ポリウレタンを含む、第1の前表面の少なくとも一部の上のコーティングと、を含むコーティングされたフィルムに関し、ここで、フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリアミドのうちの少なくとも1つを含み、かつコーティングされたフィルムは、ASTM D1746/15に従って測定したときに、第1の前表面のコーティングされた部分において少なくとも2%のZebedee透明度を有する。いくつかの実施形態において、コーティングされたフィルムの第2の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに40nm以下の二乗平均平方根表面粗さを有する。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、(a)対向する前表面を有する多層ポリエチレンフィルムであって、第1の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有する、多層ポリエチレンフィルムと、(b)ポリウレタンを含む、第1の前表面の少なくとも一部の上のコーティングと、を含むコーティングされたフィルムに関し、ここで、コーティングされたフィルムは、ASTM D1003に従って測定したときに、第1の前表面のコーティングされた部分において20%未満の全ヘイズを有する。いくつかの実施形態において、コーティングされたフィルムの第2の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに40nm以下の二乗平均平方根表面粗さを有する。
【0030】
二乗平均平方根粗さの測定に関する情報は、その用語が本明細書で使用されているように、以下の試験方法の節で提供される。
【0031】
いくつかの実施形態において、第1の前表面を形成するフィルムの層は、1.0g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する高密度ポリエチレンを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、ポリウレタンは、(a)ヒドロキシル末端ポリオールまたはウレタン、および(b)イソシアネート官能性プレポリマーから形成される。いくつかのそのような実施形態において、イソシアネート官能性プレポリマーは、芳香族イソシアネートを含む。いくつかのそのような実施形態において、イソシアネート官能性プレポリマーは、脂肪族イソシアネートを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル末端ウレタンは、ヒドロキシル末端ポリエーテル系ウレタン、ヒドロキシル末端ポリエステル系ウレタン、およびヒドロキシル末端ポリエステル-ポリエーテル系ウレタンのうちの少なくとも1つを含む。本発明の様々な実施形態において、コーティング中に使用され得るポリウレタンに関する追加の詳細が、本明細書において提供される。
【0033】
コーティングされたフィルムに使用される多層フィルムは、いくつかの実施形態において非着色である。
【0034】
いくつかの実施形態において、フィルムの第1の前表面上のコーティングの量は、0.1~7.0g/mである。
【0035】
いくつかの実施形態において、コーティングは、第1の前表面の表面積に基づいて第1の前表面の50%未満の上にあり、コーティングされたフィルムは、ASTM D2457に従って測定したときに、コーティングが存在しない第1の前表面の領域において28光沢単位未満の光沢を示す。
【0036】
本発明の実施形態は、本明細書において記載されるコーティングされたフィルムのいずれかから形成された物品も提供する。そのようないくつかの実施形態において、コーティングされたフィルムは、20~250ミクロンの厚さを有する。そのような物品の例としては、可撓性包装、パウチ、立式パウチ、袋、既成包装、または既成パウチが挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、形成、充填、およびシーリングプロセスにおいて使用され、包装、パウチ、または他の物品を作製することができる。
【0037】
多層ポリマーフィルム
コーティングされたフィルムは、対向する前表面を有する多層ポリマーフィルムを備える。第1の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有する。第2の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに80nm未満の二乗平均平方根表面を有する。
【0038】
多層フィルムの第1の層は、第1の前表面の表面粗さを提供し、第2の層は、多層フィルムを提供して、第2の前表面の表面粗さを提供する。
【0039】
第1の前表面の表面粗さは、いくつかの実施形態による、ある特定のコーティングでコーティングされたときにフィルムの少なくとも一部に透明性を提供することを容易にする。第1の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有する。いくつかの実施形態において、第1の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに、最大350nmの二乗平均平方根表面粗さを有する。様々なポリマーを使用して、少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有する第1の前表面を提供する第1の層を形成することができる。例えば、様々な実施形態において、第1の層は、そのような層が特定の表面粗さを有する限り、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリアミドから形成することができる。第1の層がポリプロピレンから形成されるいくつかの実施形態において、フィルムは、二軸配向艶消しポリプロピレンフィルムであり得る。第1の層がポリエチレンテレフタレートから形成されるいくつかの実施形態において、フィルムは、艶消しポリエチレンテレフタレートフィルムであり得る。
【0040】
ポリエチレンから形成された第1の層は、本発明のいくつかの実施形態において使用される多層フィルムに特に適している。いくつかの実施形態において、第1の層は、1.0g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する高密度ポリエチレンを含む。高密度ポリエチレンは、従来の高密度ポリエチレン(HDPE)、高密度および高分子量ポリエチレン(HDPE-HMW)、または高密度および超高分子量ポリエチレン(HDPE-UHMW)であり得る。
【0041】
高密度ポリエチレンは、少なくとも0.935g/cmの密度を有し得る。さらに、様々な実施形態において、高密度ポリエチレンは、0.935g/cm~0.975g/cm、または0.935g/cm~0.965g/cm、または0.935g/cm~0.960g/cm、または0.935g/cm~0.955g/cmの密度を含み得る。
【0042】
上述のように、高密度ポリエチレンはまた、190℃および2.16kg荷重でASTM D1238に従って測定したときに1.0g/10分以下のメルトインデックス(I)を有し得る。いくつかの実施形態において、高密度ポリエチレンは、0.5g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する。いくつかの実施形態において、高密度ポリエチレンは、0.1g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する。さらなる実施形態において、高密度ポリエチレンは、0.001g/10分~1.0g/10分、または0.001g/10分~0.5g/10分、または0.001g/10分~0.1g/10分、または0.01g/10分~0.5g/10分、または0.01g/10分~0.1g/10分のI値を有し得る。UHMW-HDPEが使用される場合などのいくつかの実施形態において、メルトインデックス(I)は、0.08g/10分以下の低い値であり得る。
【0043】
例えば、高分子量高密度ポリエチレン(HMW-HDPE)であるDOW(商標)DGDC-2100 NT7、UNIVAL(商標)DMDA-6200 NT7、UNIVAL(商標)DMDA-6400 NT7、CONTINUUM(商標)DGDA-2490 NT、CONTINUUM(商標)DGDD-2480 NT、DOWLEX(商標)2050B、中密度ポリエチレンとも称されるが、0.939g/cmの密度を有するDOW(商標)MDPE NG6995、0.962g/cmの密度を有する強化ポリエチレンであるELITE(商標)5960GおよびELITE(商標)5960G1を含む、多数の市販の高密度ポリエチレンを第1の層に使用することができる。これらの樹脂の各々は、The Dow Chemical Companyから市販されている。第1の層に使用され得る市販の高分子量高密度ポリエチレンの別の例は、BraskemのBF4810高密度ポリエチレンである。
【0044】
いくつかの実施形態において、高密度ポリエチレンは、第1の層中の唯一のポリエチレンである。他の実施形態において、1つ以上の追加のポリエチレンは、第1の層にポリエチレンのブレンドを提供するために含まれ得る。第1の層がポリエチレンのブレンドを含む実施形態において、第1の層は、50重量%を超える高密度ポリエチレン、または55重量%を超える高密度ポリエチレン、または60重量%を超える高密度ポリエチレン、または65重量%を超える高密度ポリエチレンを含み得る。いくつかの実施形態において、第1の層は、約51重量%~約90重量%の高密度ポリエチレン、または約55重量%~約80重量%の高密度ポリエチレン、または約65重量%~約75重量%の高密度ポリエチレンを含み得る。
【0045】
参照を容易にするために、ポリエチレンのブレンドが第1の層に使用されるとき、高密度ポリエチレンは、「第1のポリエチレン」と称され、追加のポリエチレンは、「第2のポリエチレン」、「第3のポリエチレン」などと称される。様々なポリエチレンは、1.0g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する高密度ポリエチレンと組み合わされて、少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有する第1の層(および、多層フィルム)の前表面を提供し得る。
【0046】
第2のポリエチレンは、例えば、第2の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、および超低密度ポリエチレン(ULDPE)、またはそれらの混合物を含む1つ以上の他のポリエチレンを含み得る。例示的な一実施形態において、第2のポリエチレンは、LLDPEを含む。
【0047】
第2のポリエチレンは、190℃および2.16kg荷重でASTM D1238に従って測定したときに20g/10分以下のメルトインデックス(I)を有し得る。さらなる実施形態において、第2のポリエチレンは、0.5g/10分~20g/10分、または0.75g/10分~10g/10分、または0.75g/10分~5g/10分、または0.75g/10分~2g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、第2のポリエチレンは、0.5~1.5g/10分のメルトインデックスを有する線状低密度ポリエチレンである。そのような線状低密度ポリエチレンの例としては、DOWLEX(商標)2645GおよびDOWLEX(商標)2045.01Gが挙げられ、これらの各々は、The Dow Chemical Companyから市販されている。
【0049】
さらに、様々な量の第2のポリエチレンが、第1の層中のポリエチレンブレンド内で企図される。限定されることなく例として、第1の層中のポリエチレンブレンドは、50重量%未満の第2のポリエチレン、または45重量%未満の第2のポリエチレン、または40重量%未満の第2のポリエチレン、または35重量%未満の第2のポリエチレンを含み得る。さらに、第1の層中のポリエチレンブレンドは、10重量%~49重量%の第2ポリエチレン、または20重量%~40重量%の第2ポリエチレン、または25重量%~約重量%の第2ポリエチレンを含み得る。
【0050】
多層フィルムの第1の層において、第1の層は、少なくとも約80重量%のポリエチレン、または少なくとも約90重量%のポリエチレンを含み得る。言い換えれば、高密度ポリエチレン、第2のポリエチレン、および任意の追加のポリエチレンの総重量パーセントは、第1の層の少なくとも約80重量%、または第1の層の少なくとも約90重量%、または第1の層の少なくとも95重量%、または第1の層の少なくとも99重量%で存在し得る。
【0051】
ここで多層フィルムの第2の前表面を見ると、多層フィルムの第2の層が第2の前表面を提供する。いくつかの実施形態において、第2の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに80nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有する。いくつかの実施形態において、第2の前表面は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに40nm以下の二乗平均平方根表面粗さを有する。
【0052】
第2の前表面が80nm未満、または40nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有するとき、第1の前表面をある特定のコーティングでコーティングするときに透明性および関連する光学特性の改善が達成されると考えられる。
【0053】
様々なポリマーを使用して、80nm未満または40nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有する第2の前表面を提供する第2の層を形成することができる。第1の層がポリエチレンから形成される場合、第2の層もポリエチレンから形成されることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態において、第2の層はシーラント層である。当業者に既知の任意の数のポリエチレンを選択して、第2の前表面の所望の表面粗さを提供することができる。いくつかの実施形態において、低密度ポリエチレン(例えば、0.922g/cmの密度および2g/10分のIを有するLDPE、または0.924g/cmの密度および2g/10分のIを有するLDPE)のみを含む第2の層は、目標二乗平均平方根表面粗さを提供し得る。いくつかの実施形態において、線状低密度ポリエチレン(例えば、0.920g/cmの密度および1g/10分のIを有するLLDPE)のみを含む第2の層は、目標二乗平均平方根表面粗さを提供し得る。いくつかの実施形態において、第2の層中の線状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンドは、目標二乗平均平方根表面粗さを提供し得る。例えば、いくつかの実施形態において、第2の層は、0.920g/cmの密度および1g/10分のIを有する80%の線状低密度ポリエチレンと、0.922g/cmの密度および2g/10分のIを有する20%の低密度ポリエチレンとのブレンドを含み得る。いくつかの実施形態において、第2の層中のポリオレフィンプラストマー(例えば、0.909g/cmの密度および1g/10分のIを有するポリオレフィンプラストマー)は、目標二乗平均平方根表面粗さを提供し得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムに使用され得る多層フィルムは、3つ以上の層を備え得る。いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムに使用され得る多層フィルムは、最大7つの層を備え得る。フィルム中の層の数は、例えば、多層フィルムの所望の厚さ、多層フィルムの所望の特性、多層フィルムの目的とする用途、および他の要因を含む多くの要因に依存し得る。
【0055】
同様に、多層フィルムを利用する物品または用途に基づいて様々な層構造が企図される。例えば、多層フィルムは、複数の層を含み得、ここで、他の層は、上述のような第2の層と同じ組成を有する。この実施形態において、複数のポリエチレン層は同じであり得るか、またはそれぞれの層間の組成および重量比が異なり得ると企図される。
【0056】
他の実施形態において、多層フィルムは、ハイブリッド構造を有し得、ここで、コア層または内側層(すなわち、非外側層)のうちの1つ以上は、上述の第1の層または第2の層と同じ組成を有さない。例えば、1つ以上の内側層またはコア層は、ポリオレフィン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸、エチレン無水マレイン酸、またはそれらの組み合わせを含み得る。例示的な実施形態において、多層フィルムは、1つ以上のポリオレフィンを含む1つの内側層、および第2のポリオレフィン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸、エチレン無水マレイン酸、またはそれらの組み合わせを含む第2の内側層を含み得る。用途に応じて、接着剤、結合層、バリア層、印刷物などの他の構成要素が内層(例えば、コア層または内側層)に関して企図されるか、他の構成要素が使用され得る。
【0057】
さらに、本発明の単層フィルムまたは多層フィルムは、他の基材にも積層または接着されて、可撓性包装に必要な異なる特徴を提供し得る。限定されることなく例として、本発明の単層フィルムまたは多層フィルムは、シーリングのために別のポリエチレンフィルムに積層され得る。さらに、本発明の単層フィルムまたは多層フィルムは、ポリアミドまたはエチレンビニルアルコール(EVOH)と共押出しされて、バリアフィルムを生成し得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、フィルムの少なくとも一部は、印刷されていなくてもよい。いくつかの実施形態において、多層フィルム全体は、印刷されていなくてもよい。そのような実施形態において、フィルムの印刷されていない部分は、コーティングでコーティングされたときに透明性を提供し得る。どの印刷部分も、色または他の包装情報に使用され得る。いくつかの実施形態において、印刷部分の中に非印刷部分を含めることによって、例えば、包装内に透明窓を提供し得る。
【0059】
前述の層のいずれも、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、スリップ剤、粘着防止剤、顔料または着色剤、加工助剤、架橋触媒、難燃剤、充填剤、および発泡剤などの当業者に既知の1つ以上の添加剤をさらに含み得ることを理解されたい。
【0060】
多層フィルムは、例えば、所望の用途または当業者に既知の他の要因に応じて様々な厚さを有し得る。一実施形態において、多層フィルムは、15~300ミクロンの厚さを有する。
【0061】
本明細書に記載される多層フィルムは、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技法を使用して、吹込フィルムまたはキャストフィルムとして共押出しされ得る。特に、本明細書に開示される異なるフィルム層の組成物に基づいて、吹込フィルム製造ラインおよびキャストフィルム製造ラインは、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技法を使用して、単一の押出しステップで本発明の多層フィルムを共押出しするように構成され得る。本発明の実施形態において使用されるフィルムは、一般に、当該技術分野で既知である吹込フィルム法またはキャストフィルム法で形成されることが好ましいが、積層などの他の方法も使用され得る。
【0062】
ポリウレタンコーティング
本発明は、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有する多層フィルムの前表面(上記で考察される第1の層の外側前表面)上にポリウレタン系コーティングを提供する。
【0063】
「ポリウレタン系コーティング」という用語は、硬化時に、コーティングが主にポリウレタンを含むが、いくつかの実施形態において、コーティングが未反応反応物(例えば、ポリオール、イソシアネートなど)、ならびに他の添加剤も含み得ることを示すために使用される。
【0064】
いくつかの実施形態において、ポリウレタンは、(a)ヒドロキシル末端ポリオールまたはウレタン、および(b)イソシアネート官能性プレポリマーから形成される。いくつかの実施形態において、イソシアネート官能性プレポリマーは、芳香族イソシアネートを含む。本発明のいくつかの実施形態において使用され得る芳香族イソシアネートの例としては、トルエンジイソシアネート(TDI)のいずれかもしくは全ての異性体および/またはメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)のいずれかもしくは全ての異性体が挙げられる。いくつかの実施形態において、イソシアネート官能性プレポリマーは、脂肪族イソシアネートを含む。本発明のいくつかの実施形態において使用され得る脂肪族イソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のいずれかもしくは全ての異性体、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のいずれかもしくは全ての異性体、キシリレンジイソシアネート(XDI)のいずれかもしくは全ての異性体、水素化キシリレンジイソシアネート(H6XDI)のいずれかもしくは全ての異性体、およびメタ-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)のいずれかもしくは全ての異性体が挙げられる。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル末端ウレタンは、ヒドロキシル末端ポリエーテル系ウレタン、ヒドロキシル末端ポリエステル系ウレタン、およびヒドロキシル末端ポリエステル-ポリエーテル系ウレタンのうちの少なくとも1つを含む。
【0065】
ポリウレタンは、2つの別々の成分を所定の混合比で一緒に混合し、次いで2つの成分間の反応で硬化することによって形成され得る。いくつかの実施形態において、2つの反応成分は、測定および混合を容易にするために、1:1の混合比(ヒドロキシル末端ポリオールまたはウレタン対イソシアネート官能性プレポリマーの比)を提供するように調製され得る。いくつかの実施形態において、そのような混合比は、1:0.2~1:2の範囲にあり得る。いくつかの実施形態において、そのような混合比では、イソシアネートインデックスは、~1:1から~3:3の範囲内である。いくつかの実施形態において、ポリウレタンは、周囲の水分または湿気と反応して、その硬化を完了させる一成分型イソシアネート末端プレポリマーであり得る。
【0066】
ポリウレタン成分は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、または両方の組み合わせから構成され得る。いくつかの実施形態において、そのようなポリオールは、線状または分岐状であり得る。いくつかの実施形態において、芳香族成分を有するポリエステルを使用して、目的の用途のための耐薬品性または耐熱性などの代替性能特性を付与することができる。いくつかの実施形態において、コーティングは、100~4700ダルトンの分子量を有するポリオールから、かつトリイソプロパノールアミンおよびトリメチロールプロパンなどの分岐を付与する多官能性試薬を使用して形成される。そのような選択された材料は、一緒に反応し、ある特定の非反応性添加剤と組み合わされるとき、本発明のいくつかの実施態様に従ってコーティングされたフィルムに望ましい耐熱性、粘着防止特性、目標摩擦係数、および目標光沢レベルを有利に提供し得る。
【0067】
コーティングは、例えば、グラビアコーティングおよびフレキソ印刷コーティングを含むがこれらに限定されない、典型的には、コーティングをフィルムに適用する様々な技法を使用してフィルムの外側表面に適用され得る。他の薄いコーティング技法もまた使用され得る。溶媒系および/または水系コーティング、ならびに接着剤を適用するための設備を有する当業者は、フィルムにポリウレタンコーティングを適用するために、それらのプロセスを容易に適合させて、本発明のコーティングされたフィルムを得ることができる。十分な動的粘度を達成するために、適用時の目標固形分は、特定のコーティングに依存するが、いくつかの実施形態において、15%~80%の範囲内であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、フィルムに適用されるコーティングの量は、1平方メートルあたり少なくとも1グラムであり得る。本明細書で使用される場合、コーティングの量は、コーティング前と、コーティングの適用後および乾燥後とのフィルムの重量の差を測定することによって決定される。いくつかの実施形態において、フィルムに適用されるコーティングの量は、1平方メートルあたり最大7グラムである。いくつかの実施形態において、フィルムに適用されるコーティングの量は、1平方メートルあたり1~7グラムである。1平方メートルあたり0.1~7.0グラムの全ての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示されるが、例えば、コーティングの量は、1平方メートルあたりの下限値0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、または6.0グラム~1平方メートルあたりの上限値0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、または7.0グラムであり得る。例えば、いくつかの実施形態において、コーティングの量は、1平方メートルあたり3~5グラムであり得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、コーティングは、フィルムの外側表面の一部にのみ適用され得る。これは、光学パターンの様々な組み合わせを有利に提供する。コーティングされたフィルムの異なる領域において異なる光学的パターンまたは特性を提供する能力は、コーティングされたフィルムが包装または他の物品に形成されるときに創造的包装の機会を提供する。例えば、包装の文脈では、消費者または潜在的な購入者が包装の内容物を見ることを可能にするために透明窓を提供することが望ましい場合がある。そのような実施形態において、コーティングは、窓に対応することになるフィルムの部分にのみ適用され得る。
【0070】
様々な実施形態において、コーティングされたフィルムは、不透明である領域(コーティングされていない領域)および高い透明性を有する1つ以上の領域(コーティングされている領域)を有し得る。別の例として、コーティングされたフィルムは、艶消し(非常に低い光沢)仕上げを有する領域(コーティングされていない領域)および高い光沢を有する1つ以上の領域(コーティングされている領域)を有し得る。
【0071】
そのような実施形態において、ポリウレタンコーティングは、当業者に既知の技法を使用して、第1の前表面のある特定の領域(複数可)にのみ適用され得る。例えば、多層フィルムの第1の前表面上の艶消し仕上げは、その表面の高い二乗平均平方根表面粗さを提供する樹脂または樹脂のブレンドの使用に起因して、押出成形時に得ることができる。次いで、多層フィルムを反転印刷し、任意に積層され得る。次いで、ポリウレタンコーティングを第1の前表面に位置合わせして適用して、所望される場合、透明窓を提供し得る。
【0072】
本発明のコーティングされたフィルムの様々な実施形態は、1つ以上の望ましい特性を有し得る。いくつかの実施形態において、コーティングされたフィルムは、ポリウレタンコーティングが多層フィルムに適用されている領域で透明性を改善させることができる。そのような透明性は、Zebedee透明度および/または全ヘイズ値によって示され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、ASTM D1746/15に従って測定したときに、第1の前表面のコーティングされた部分において少なくとも2%のZebedee透明度を有する。いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、ASTM D1746/15に従って測定したときに、第1の前表面のコーティングされた部分において少なくとも4%のZebedee透明度を有する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、ASTM D1746に従って測定したときに、第1の前表面のコーティングされた部分において少なくとも65の透明度を有する。いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、ASTM D1746に従って測定したときに、第1の前表面のコーティングされた部分において少なくとも85の透明度を有する。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、ASTM D1003に従って測定したときに第1の前表面のコーティングされた部分において20%未満の全ヘイズを有する。いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、ASTM D1003に従って測定したときに第1の前表面のコーティングされた部分において15%未満の全ヘイズを有する。いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、ASTM D1003に従って測定したときに第1の前表面のコーティングされた部分において10%未満の全ヘイズを有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、ASTM D1746/15に従って測定したときに、第1の前表面のコーティングされた部分において少なくとも2%のZebedee透明度およびASTM D1003に従って測定したときに第1の前表面のコーティングされた部分において20%未満の全ヘイズを有する。
【0077】
コーティングが多層フィルムの第1の前表面の表面積に基づいて第1の前表面の50%未満の上にあるいくつかの実施形態において、コーティングされたフィルムは、ASTM D2457に従って45°で測定したときに、コーティングが存在しない第1の前表面の領域において28光沢単位未満の光沢を示す。コーティングが多層フィルムの第1の前表面の表面積に基づいて第1の前表面の50%未満の上にあるいくつかの実施形態において、コーティングされたフィルムは、ASTM D2457に従って45°で測定したときに、コーティングが存在しない第1の前表面の領域において18光沢単位未満の光沢を示す。コーティングが多層フィルムの第1の前表面の表面積に基づいて第1の前表面の50%未満の上にあるいくつかの実施形態において、コーティングされたフィルムは、ASTM D2457に従って45°で測定したときに、コーティングが存在しない第1の前表面の領域において13光沢単位未満の光沢を示す。
【0078】
多層フィルムがポリエチレンフィルムであるいくつかの実施形態において、コーティングされたフィルムは、現在の可撓性ポリエチレン系において有利にリサイクル可能であり得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明のコーティングされたフィルムは、幅広い耐熱性範囲を有する。本発明のいくつかの実施形態によれば、コーティングされたフィルムは、80℃~200℃の温度範囲にわたって耐熱性である。本明細書で使用される場合、耐熱性の範囲の下限温度は、コーティングされたフィルムが、ASTM 1921-98に従って測定したときに、少なくとも1lb/inのヒートシール強度を示す温度である。本明細書で使用される場合、耐熱性の範囲の上限温度は、コーティングされたフィルムの変形に起因して、ヒートシール強度がASTM 1921-98に従って測定され得ないような、コーティングされたフィルムが焼けを示す温度である。
【0080】
本発明の実施形態はまた、本明細書において開示されるコーティングされたフィルムのいずれかから形成される物品に関する。いくつかの実施形態において、物品は、可撓性包装である。いくつかの実施形態において、可撓性包装は、本発明による第1のコーティングされたフィルムと、本発明による第2のコーティングされたフィルムとを備える。いくつかの実施形態において、可撓性包装は、本発明による第1のコーティングされたフィルムと、本発明による第2のコーティングされたフィルムと、本発明による第3以上のコーティングされたフィルムとを備える。いくつかの実施形態において、本発明による第1のコーティングされたフィルムは、シール可能側を使用して、フィルムまたはシートまたは成形容器の非熱シール可能側に本発明のコーティングを有していても、有していなくてもよいフィルムまたはシートまたは任意の好適な構造の成形容器にかかわらず、別の熱シール可能表面に熱シーリングされる。あるいは、可撓性包装は、折り畳まれる本発明の単一のコーティングされたフィルムから形成され得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、可撓性包装は、以下の本明細書の開示に基づいて当業者に既知の技法を使用して形成される、パウチ、ピローパウチ、袋、サッシェ、流動ラップ、高重量用輸送袋、または立式パウチのうちの1つ以上の形態である。
【0082】
可撓性包装を形成するために使用されるコーティングされたフィルムの厚さは、例えば、可撓性包装の寸法、可撓性包装の容量、可撓性包装の内容物、可撓性包装の所望の特性、および他の要素を含むいくつかの要素に応じて、選択され得る。いくつかのそのような実施形態において、本発明の可撓性包装において使用されるコーティングされたフィルムは、15~400ミクロンの厚さを有する。15~300ミクロンの全ての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、コーティングされたフィルムの厚さは、下限値20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、または190ミクロン~上限値30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、250、280、または300ミクロンであり得る。
【0083】
本発明の可撓性包装によって収容するのに好適な内容物の非限定的な例としては、食料品(飲料、スープ、チーズ、穀類)、液体、シャンプー、油、ワックス、緩和剤、ローション剤、保湿剤、薬剤、ペースト、界面活性剤、ゲル、接着剤、懸濁液、溶液、酵素、石鹸、化粧品、塗布薬、流動性微粒子、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0084】
試験方法
本明細書中で別様に示されない限り、以下の分析方法が、本発明の記載態様において使用される。
【0085】
メルトインデックス:メルトインデックスI(または、I2)およびI10(または、I10)は、190℃でASTM D-1238に従って、それぞれ、2.16kgおよび10kg荷重で測定される。それらの値は、g/10分で報告される。「メルトフローレート」は、ポリプロピレン系樹脂および他の樹脂に関して使用され、ASTM D1238(230℃、2.16kg)に従って判定される。
【0086】
密度:密度測定のための試料は、ASTM D4703に従って調製される。試料加圧の1時間以内に、ASTM D792、方法Bに従って測定される。
【0087】
光沢は、ASTM D2457に従って判定される。
【0088】
透明度は、ASTM D1746に従って判定される。
【0089】
Zebedee透明度は、ASTM D1746/15に従って判定される。
【0090】
ヘイズおよび内部ヘイズは、D1003に従って測定される。
【0091】
表面粗さ
本明細書に開示される様々なフィルム表面の表面粗さは、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときの二乗平均平方根表面粗さに基づいて特徴付けられる。本明細書で使用される場合、表面の二乗平均平方根表面粗さは、以下のように原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定される。
【0092】
機器のパラメータは次の通りである。
1)Nanoscope v8.15操作ソフトウェアを操作するNanoscope Vコントローラを使用するBruker Dimension ICON原子間力顕微鏡(AFM)をタッピングモードで操作する。トラッキング品質の定性的指標として位相検出チャンネルはオンである。
【0093】
2)面積サイズ、取得時間、および特徴分解能の合理的な組み合わせとして粗さデータを生成するために90μmの走査サイズを選択する。
【0094】
3)スキャンレートを0.250Hzに設定する。
【0095】
4)画像は、512×512ピクセルからなる。
【0096】
5)噛み合い設定(タッピング率)を0.90に設定する。
【0097】
6)目標振幅を1000mVに設定し、自動的に噛み合わせる。
【0098】
7)Micro Masch NSC16(Al裏面コーティングなし)プローブを全てのスキャンに使用する。カンチレバーは、約190kHzの典型的な共振周波数および約40N/mの典型的なばね定数を有する。
【0099】
画像分析パラメータは以下の通りである。
1)90μmのトポグラフィ画像からの粗データを計算するために、画像計測SPIP v6を使用する。
【0100】
2)非平面/傾斜面の影響を除去するために、全ての画像は、3次グローバル平面当てはめおよび3の線方向当てはめの平坦化ルーチンを受ける。
【0101】
3)過度のうねりを除去するために、全ての画像を相対的1/5に設定したLフィルタでフィルタリングする。これは、ISO25178-2規格に従ってISO16610ガウスLフィルタである。
【0102】
4)必要に応じて画像から異物表面のゴミを排除するために、特徴排除ボックスを使用する。
【0103】
5)二乗平均平方根粗さ値を試料間の一次粗さ値コンパレーターとして使用する。これは、ISO25178-2を参照する3D振幅パラメータ(シンボルSq)である。
【0104】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例において詳述する。
【実施例
【0105】
実施例1
ポリウレタンコーティングのための反応体組成物の調製
以下の実施例は、本発明の実施形態によるポリウレタンコーティングでコーティングされた多層フィルムを含む。これらの実施例において使用されるポリウレタンコーティングは、以下の通りに2つの反応体組成物から調製される。
【0106】
反応体組成物Aは、ヒドロキシル末端ウレタンを含み、以下の成分から調製される。
【0107】
【表1】
【0108】
反応体組成物Aを調製するために、TIPAを溶融する。ポリエーテルジオール(425の公称分子量)を反応器内に真空装填する。溶融したTIPAを反応器内に真空装填し、続いてポリエーテルポリオール(VORANOL220-110N)を装填する。真空ラインを酢酸エチルですすぎ、反応器の内容物を75RPMで撹拌する。酢酸エチルを反応器内に真空装填する。冷却ジャケットを介して、反応器の内容物を冷却する。冷却後、TDIを反応器に装填し、真空ラインを酢酸エチルですすぐ。反応の発熱性のために、反応器の内容物を75℃の温度に冷却する。4時間撹拌しながら反応器内の温度を75℃に保つ。次いで、反応器の内容物を60℃に冷却し、粘度を測定する。粘度が<2500cPである場合、反応器の内容物を40℃に冷却し、0.393重量パーセント(元のTDI仕込み量に基づいて)のTDIを添加し、混合タンク内容物を75℃に加熱し、1時間75℃に保つ。粘度が>2500cPである場合、消泡剤と残りの酢酸エチルとの混合物を反応器に真空装填する。次いで、内容物を30分間撹拌する。次いで、反応器を50℃に冷却し、反応体組成物Aを使用するために包装する。
【0109】
反応体組成物Bは、イソシアネート官能性プレポリマーを含み、以下の成分から調製される。
【0110】
【表2】
【0111】
反応体組成物Bを調製するために、添加剤および潤滑剤を予備混合し、50℃に保つ。トリメチロールプロパン、続いて酢酸エチルを反応器に装填する。TDI、続いてすすぎ液として残りの酢酸エチルを反応器に真空装填する。バッチを70℃で3時間保つ。次いで、バッチを55℃に冷却する。バッチの粘度を測定する。粘度が<380cPである場合、トリメチロールプロパンを添加することによって、バッチの粘度を>380cPに調整する。粘度が>380cPである場合、または追加のトリメチロールプロパンを添加した後、反応器を55℃に冷却する。予備混合した添加剤/潤滑剤を反応器に真空装填する。次いで、シクロヘキサンを反応器に添加し、内容物を45℃に保ち、内容物が透明になるまで45分間撹拌する(例えば、添加剤は溶解されていなければならない)。次いで、塩化ベンゾイルを反応器に真空装填し、内容物を15分間撹拌する。次いで、反応体組成物Bを使用するために包装する。
【0112】
前述の考察は、コーティング供給業者によって提供され得、本発明のいくつかの実施形態のためのポリウレタンコーティングを形成するために使用され得る2つの成分(反応体組成物Aおよび反応体組成物B)の合成を記載する。後で考察されるように、反応体組成物Aおよび反応体組成物Bをフィルムに適用し、(例えば、フィルムコンバーターによって)反応させて、フィルム上にポリウレタンコーティングを形成することができる。一般に、一部の反応体組成物Aを一部の反応体組成物Bと混合する。これらの組成物を確実に均質にするために一緒に混合し、目標コーティング重量で目標フィルム上に適用する。これらの試料で十分な動的粘度を達成するために、適用時の目標固形分は、約30%であるべきである。可能性のあるコーティング技法のうちの1つによれば、平滑化バーを用いてまたは用いずに、コーティングを直接または反転グラビアのいずれかでロール適用する。次いで、溶媒を強制乾燥オーブンまたは空気乾燥加熱オーブンによって除去する。反応体組成物Aと反応体組成物Bとのウレタン反応は、溶媒除去時に始まる。1:1の混合比において、理論上のイソシアネートインデックスは、約1.4:1である。実施例3~5の目的のために、反応体組成物Aおよび反応体組成物Bから形成されたポリウレタンコーティングは、「ポリウレタンコーティング」と称されるものとする。
【0113】
以下の実施例3~5に関して、100グラムのコーティング混合物を以下のように調製する。27グラムの反応体組成物Aを、27グラムの反応体組成物Bおよび希釈溶媒として46グラムの酢酸エチルと混合する。混合物を2分間撹拌して、混合物を均質化する。実施例3~4の図1に示すように、マイヤーバー5を使用して、コーティング混合物をポリエチレンフィルムに上から下に適用し、実施例5ではポリエチレンフィルムに自動的に適用する。次いで、コーティングを空気加熱して、溶媒を除去する。
【0114】
実施例2
ポリウレタンコーティングのための追加の反応体組成物の調製
反応体組成物Cは、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)プレポリマーを含み、以下の成分から調製される。
【0115】
【表3】
【0116】
反応体組成物Cを調製するために、添加剤および潤滑剤を予備混合し、50℃に保つ。トリメチロールプロパン、続いて酢酸エチルを反応器に装填する。MDI、続いてすすぎ液として残りの酢酸エチルを反応器に真空装填する。バッチを70℃で3時間保つ。次いで、バッチを55℃に冷却する。バッチの粘度を測定する。粘度が<380cPである場合、トリメチロールプロパンを添加することによって、バッチの粘度を>380cPに調整する。粘度が>380cPである場合、または追加のトリメチロールプロパンを添加した後、反応器を55℃に冷却する。予備混合添加剤/潤滑剤を反応器に真空装填する。次いで、シクロヘキサンを反応器に添加し、内容物を45℃に保ち、内容物が透明になるまで45分間撹拌する(例えば、添加剤は溶解されていなければならない)。次いで、塩化ベンゾイルを反応器に真空装填し、内容物を15分間撹拌する。次いで、反応体組成物Bを使用するために包装する。
【0117】
反応体組成物A(実施例1から)および反応体組成物Cをフィルムに適用し、(例えばフィルムコンバーターによって)反応させて、フィルム上にポリウレタンコーティングを形成することができる。一般に、一部の反応体組成物Aを一部の反応体組成物Cと混合する。これらの組成物を確実に均質にするために一緒に混合し、目標コーティング重量で目標フィルム上に適用する。十分な動的粘度を達成するために、適用時の目標固形分は、約30%であるべきである。可能性のあるコーティング技法のうちの1つによれば、平滑化バーを用いてまたは用いずに、コーティングを直接または反転グラビアのいずれかでロール適用する。次いで、溶媒を強制乾燥オーブンまたは空気乾燥加熱オーブンによって除去する。反応体組成物Aと反応体組成物Cとのウレタン反応は、溶媒除去時に開始する。1:1の混合比において、理論上のイソシアネートインデックスは、約1.4:1である。これらの実施例の目的のために、反応体組成物Aおよび反応体組成物Cから形成されたポリウレタンコーティングは、PUコーティング2と称されるものとする。
【0118】
反応体組成物Dは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)プレポリマーを含み、以下の成分から調製される。
【0119】
【表4】
【0120】
反応体組成物Dを調製するために、添加剤および潤滑剤を予備混合し、50℃に保つ。トリメチロールプロパン、続いて酢酸エチルを反応器に装填する。IPDI、続いてすすぎ液として残りの酢酸エチルを反応器に真空装填する。バッチを70℃で4時間保つ。次いで、バッチを55℃に冷却する。バッチの粘度を測定する。粘度が<380cPである場合、トリメチロールプロパンを添加することによって、バッチの粘度を>380cPに調整する。粘度が>380cPである場合、または追加のトリメチロールプロパンを添加した後、反応器を55℃に冷却する。予備混合添加剤/潤滑剤を反応器に真空装填する。次いで、シクロヘキサンを反応器に添加し、内容物を45℃に保ち、内容物が透明になるまで45分間撹拌する(例えば、添加剤は溶解されていなければならない)。次いで、塩化ベンゾイルを反応器に真空装填し、内容物を15分間撹拌する。次いで、反応体組成物Bを使用するために包装する。
【0121】
反応体組成物A(実施例1から)および反応体組成物Dをフィルムに適用し、(例えば、フィルムコンバーターによって)反応させて、フィルム上にポリウレタンコーティングを形成することができる。一般に、一部の反応体組成物Aを一部の反応体組成物Dと混合する。これらの組成物を確実に均質にするために一緒に混合し、目標コーティング重量で目標フィルム上に適用する。十分な動的粘度を達成するために、適用時の目標固形分は、約30%であるべきである。可能性のあるコーティング技法のうちの1つによれば、平滑化バーを用いてまたは用いずに、コーティングを直接または反転グラビアのいずれかでロール適用する。次いで、溶媒を強制乾燥オーブンまたは空気乾燥加熱オーブンによって除去する。反応体組成物Aと反応体組成物Dとのウレタン反応は、溶媒除去時に開始する。1:1の混合比において、理論上のイソシアネートインデックスは、約1.4:1である。これらの実施例の目的のために、反応体組成物Aおよび反応体組成物Dから形成されたポリウレタンコーティングは、PUコーティング3と称されるものとする。
【0122】
実施例3
評価用に3層フィルムを調製する。このフィルムは、以下の組成を有するA/B/C配置の共押出ポリエチレンフィルムである。
【0123】
【表5】
【0124】
HDPEは、DOW(商標)HDPE DGDC-2100 NT7である。LLDPE1は、DOWLEX(商標)2685Gである。LLDPE2は、DOWLEX(商標)2045.01Gである。LDPEは、DOW(商標)LDPE503Aである。樹脂の各々は、The Dow Chemical Companyから市販されている。フィルムは、55ミクロンの公称全厚を有する。
【0125】
共押出しされた3層フィルムは、(上記の表で示されるような)層A/A/B/B/B/C/Cとして表される7層のうちの2層内に同じポリマー供給を使用して実行されたAlpineの7層吹込みフィルム上に生成し、「A」層(下)は、気泡の内側にある。5層構造は、「B」層と「C」層、および「D」層と「e」層とを組み合わせることによって達成される。個々の供給ラインは、全て50mmの30:1のL/D溝付き供給押出機であり、ここで、各押出機は、4成分ブレンダーから供給された。7つの押出機を組み合わせて、75mmの7層フラットダイ(16/16/26/26/16)への23kg/時の供給量を生み出す。ブローアップ比は、2.5:1である。標準のフロストラインの高さは、30cmである。フィルム厚は、オートプロファイルエアリングシステムおよびIBCを使用して維持される。
【0126】
比較フィルムAは、上述のコーティングされていないフィルムである。フィルム試料の最上層(層A)に上述のポリウレタンコーティングを適用することによって、本発明のフィルム1を調製する。本発明のフィルム1の場合、適用されるポリウレタンコーティングの量は、1平方メートルあたり0.2グラムである。
【0127】
本発明のフィルム1を最初に目視検査によって比較フィルムAと比較する。本発明のフィルム1のヘイズは、本発明のフィルム1の後ろの物体が比較フィルムAの後ろに配置されたときよりも色の強度およびコントラストをよりよく維持するように改善される。さらに、本発明のフィルム1は、比較フィルムAと比較してより細かい部分が、フィルムのおよそ10cm後ろに配置された白黒画像から観察されるように改善された透明度を示した。
【0128】
本発明のフィルム1および比較フィルムAもレーザー走査型顕微鏡(LSM)の下で分析する。画像は、コーティングされていないフィルム(比較フィルムA)の第1の前表面(層A)が、多くの山と谷を有する粗い表面を有することを示す。本発明のフィルム1において、ポリウレタンコーティングの適用は、表面を滑らかにする。レーザー走査型顕微鏡から得られたデータによれば、粗さは、1231nm~188.76nmに低減する。
【0129】
本発明のフィルム1および比較フィルムAも原子間力顕微鏡(AFM)の下で分析する。AFMの結果はまた、本発明のフィルム1の層A上のポリウレタンコーティングが非常に滑らかなトポグラフィを生み出すことを示す。特に、表面層の二乗平均平方根表面粗さがAFMを使用して測定されるとき、二乗平均平方根表面粗さは、155.7nm(比較フィルムAの層Aの前表面の場合)から13.2nm(本発明のフィルムAの対応するコーティングされている表面の場合)に減少する。
【0130】
本発明のフィルム2および3もまた、ポリウレタンコーティングを、本発明のフィルム2に1平方メートルあたり0.5gで、本発明のフィルム3に1平方メートルあたり1.0gで適用することを除いて、本発明のフィルム1と同じ方法で調製する。次いで、LSMおよびAFMを使用して、本発明のフィルム2および3のコーティングされた層の表面粗さを測定する。結果は、以下の通りである。
【0131】
【表6】
【0132】
したがって、少量のポリウレタンコーティング(0.2gsm)でさえも、フィルムの表面の粗さを著しく低減し得る。
【0133】
フィルムの全ヘイズ、内部ヘイズ、45°での光沢度、およびZebedee透明度も測定する。結果は、以下の通りである。
【0134】
【表7】
【0135】
ポリウレタンコーティングをフィルムの層Aの表面に適用したとき、全ヘイズは、49%から12%に変化した。コーティング重量をさらに増やしても全ヘイズは改善されなかった。
【0136】
内部ヘイズデータは、0.2gsmのポリウレタンコーティングを適用したときに、ポリウレタンコーティングの適用により、表面ヘイズ(全ヘイズと内部ヘイズとの差)が比較フィルムAの41%から本発明のフィルム1の4%に低減することを示す。これは、表面ヘイズにおいて10倍の低減である。
【0137】
光沢試験の結果は、光沢(45°)も比較フィルムAの12単位から本発明のフィルムの平均78単位に改善されることを示す。
【0138】
Zebedee透明度試験から得られた結果はまた、比較フィルムAの0.44単位から本発明のフィルムの平均5.4単位への劇的な改善も示す。
【0139】
実施例4
比較フィルムBを上記の比較フィルムAと同じ方法で調製する。比較フィルムBの最上層(層A)に比較コーティングを適用することによって、比較フィルムCを調製する。比較コーティングは、低分子量を有し、それが蒸発によって硬化するようにアルコールで希釈されているポリウレタン系の非反応性ポリマーである。比較フィルムBの最上層に上述のポリウレタンコーティングを適用することによって、本発明のフィルム4を調製する。比較フィルムCおよび本発明のフィルム4の場合、適用されるコーティングの量は、1平方メートルあたり0.2グラムである。
【0140】
フィルムの全ヘイズ、内部ヘイズ、45°での光沢、および透明度を測定する。結果は、以下の通りである。
【0141】
【表8】
【0142】
本発明のフィルム4は、コーティングされていないフィルム(比較フィルムB)および比較コーティングでコーティングされたフィルム(比較フィルムC)よりも向上した透明度およびより低いヘイズを示す。本発明のフィルム4はより良好な色の複製およびより高い輪郭の画定を提供するため、フィルムの視覚的比較において同様の観察がなされる。
【0143】
実施例5
評価用に5層フィルムを調製する。このフィルムは、以下の組成を有するA/B/C/D/E配置の共押出ポリエチレンフィルムである。
【0144】
【表9】
【0145】
HDPE2は、高密度ポリエチレンである。LLDPE2は、DOWLEX(商標)2045.01Gである。シーラントは、SEALUTION(商標)140である。DOWLEX(商標)2045.01GおよびSEALUTION(商標)140は、The Dow Chemical Companyから市販されている。フィルムは、34ミクロンの公称全厚を有する。
【0146】
共押出しされた5層フィルムは、(上記の表で示されるような)層A/B/C/D/E/F/Gとして表される7層のうちの2層内に同じポリマー供給を使用して実行されたAlpineの7層吹込みフィルム上に生成し、「A」層(下)は、気泡の内側にある。5層構造は、「B」層と「C」層、および「D」層と「E」層とを組み合わせることによって達成される(A/B/B/C/C/D/E)。個々の供給ラインは、全て50mmの30:1のL/D溝付き供給押出機であり、ここで、各押出機は、4成分ブレンダーから供給された。7つの押出機を組み合わせて、75mmの7層フラットダイ(16/16/26/26/16)への23kg/時の供給量を生み出す。ブローアップ比は、2.5:1である。標準のフロストラインの高さは、30cmである。フィルム厚は、オートプロファイルエアリングシステムおよびIBCを使用して維持される。
【0147】
比較フィルムDは、上述のコーティングされていないフィルムである。フレキソ印刷機(Windmoller&Hoelscher MIRAFLEX 10カラーステーション)を使用して上述のポリウレタンコーティングをフィルム試料の最上層(層A)に自動的に適用することによって、本発明のフィルム5を調製する。本発明のフィルム5の場合、適用されるポリウレタンコーティングの量は、1平方メートルあたり1.7グラムである。
【0148】
二乗平均平方根表面粗さ(AFMを使用して測定)、全ヘイズ、および60°での光沢を測定する。結果は、以下の通りである。
【0149】
【表10】
【0150】
本発明のフィルム5は、コーティングされていないフィルム(比較フィルムD)と比較して、全ヘイズの著しい低減および総光沢の改善を示す。本発明のフィルム5はより良好な色の複製およびより高い輪郭の画定を提供するので、フィルムの視覚的比較において同様の観察がなされる。
本願は以下の態様にも関する。
(1) コーティングされたフィルムであって、
(a)対向する前表面を有する多層ポリマーフィルムであって、第1の前表面が、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有し、かつ第2の前表面が、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに80nm未満の二乗平均平方根表面粗さを有する、多層ポリマーフィルムと、
(b)ポリウレタンを含む、前記第1の前表面の少なくとも一部の上のコーティングと、を含み、
前記フィルムが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリアミドのうちの少なくとも1つを含み、前記コーティングされたフィルムが、ASTM D1746/15に従って測定したときに、前記第1の前表面の前記コーティングされた部分において少なくとも2%のZebedee透明度を有する、コーティングされたフィルム。
(2) コーティングされたフィルムであって、
(a)対向する前表面を有する多層ポリエチレンフィルムであって、第1の前表面が、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに少なくとも80nmの二乗平均平方根表面粗さを有する、多層ポリマーフィルムと、
(b)ポリウレタンを含む、前記第1の前表面の少なくとも一部の上のコーティングと、を含み、
前記コーティングされたフィルムが、ASTM D1003に従って測定したときに、前記第1の前表面の前記コーティングされた部分において20%未満の全ヘイズを有する、コーティングされたフィルム。
(3) 第2の前表面が、原子間力顕微鏡を用いた画像分析を使用して測定したときに、40nm以下の二乗平均平方根表面粗さを有する、上記(1)または上記(2)に記載のコーティングされたフィルム。
(4) 前記第1の前表面を形成する前記フィルムの層が、1.0g/10分以下のメルトインデックス(I )を有する高密度ポリエチレンを含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載のコーティングされたフィルム。
(5) 前記ポリウレタンが、(a)ヒドロキシル末端ポリオールまたはウレタン、および(b)イソシアネート官能性プレポリマーから形成される、上記(1)~(4)のいずれかに記載のコーティングされたフィルム。
(6) 前記イソシアネート官能性プレポリマーが、芳香族イソシアネートを含む、上記(5)に記載のコーティングされたフィルム。
(7) 前記イソシアネート官能性プレポリマーが、脂肪族イソシアネートを含む、上記(5)に記載のコーティングされたフィルム。
(8) 前記ヒドロキシル末端ウレタンが、ヒドロキシル末端ポリエーテル系ウレタン、ヒドロキシル末端ポリエステル系ウレタン、およびヒドロキシル末端ポリエステル-ポリエーテル系ウレタンのうちの少なくとも1つを含む、上記(5)~(7)のいずれか1項に記載のコーティングされたフィルム。
(9) 前記多層フィルムが、非着色である、上記(1)~(8)のいずれかに記載のコーティングされたフィルム。
(10) 前記フィルムの前記第1の前表面上のコーティングの量が、0.1~7.0g/m である、上記(1)~(9)のいずれかに記載のコーティングされたフィルム。
(11) 前記コーティングが、前記第1の前表面の前表面積に基づいて前記第1の前表面の50%未満の上にあり、前記コーティングされたフィルムが、ASTM D2457に従って測定したときに、前記コーティングが存在しない前記第1の前表面の領域において28光沢単位未満の光沢を示す、上記(1)~(10)のいずれかに記載のコーティングされたフィルム。
(12) 上記(1)~(11)のいずれかに記載のコーティングされたフィルムから形成される、物品。
(13) 前記物品が、包装を含む、上記(12)に記載の物品。
図1