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特許7377714架橋デキストランおよび架橋デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー
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  • 特許-架橋デキストランおよび架橋デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】架橋デキストランおよび架橋デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/02 20060101AFI20231102BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20231102BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20231102BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20231102BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231102BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20231102BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20231102BHJP
   A61L 27/54 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
C08B37/02
A61L15/28 100
A61P17/02
A61L27/20
A61L27/50
A61L31/04 120
A61K47/36
A61F13/15 320
A61F13/53 300
A61L27/54
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019544030
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018017907
(87)【国際公開番号】W WO2018152074
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】62/459,800
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/489,500
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520346620
【氏名又は名称】ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・ユーエスエー・フォー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ウェイミン・チウ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ジェイ・アデルマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディン・エム・ディレンゾ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529096(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079595(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03040348(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0232785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/02
A61L 15/28
A61P 17/02
A61L 27/20
A61L 27/50
A61L 31/04
A61K 47/36
A61F 13/15
A61F 13/53
A61L 27/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋グラフトコポリマーを含む組成物であって、前記架橋グラフトコポリマーのグラフトコポリマー部分が、
(i)デキストランを含む主鎖と、
(ii)少なくとも50%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカン側鎖とを含み、
前記架橋グラフトコポリマーの1つまたは複数の架橋が共有結合である組成物。
【請求項2】
前記架橋グラフトコポリマーの1つまたは複数の架橋がリンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記架橋グラフトコポリマーの1つまたは複数の架橋がホスホジエステル結合を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋グラフトコポリマーの前記グラフトコポリマー部分が、少なくとも50重量%のデキストランを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記デキストランが、少なくとも100000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記デキストランが、少なくとも1000万ダルトンのMwを有する、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記デキストランが、少なくとも5000万ダルトンのMwを有する、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記デキストランが、少なくとも1億ダルトンのMwを有する、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記デキストランであって、少なくとも90%のα-1,6-グルコシド結合を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリα-1,3-グルカン側鎖が、少なくとも80%のα-1,3-グルコシド結合を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリα-1,3-グルカン側鎖が、少なくとも95%のα-1,3-グルコシド結合を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
1つまたは複数の個々のポリα-1,3-グルカン側鎖のMwが、少なくとも100000ダルトンである、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記架橋グラフトコポリマーが、架橋グラフトコポリマーの1g当たり少なくとも6gの水性流体の遠心分離保持容量を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記架橋グラフトコポリマーが、前記グラフトコポリマー部分を架橋剤および溶媒と接触させることによって製造され、任意選択的に、前記架橋剤が塩化ホスホリルを含み、および前記溶媒が水性溶媒である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品、医療用品、または工業製品である、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
架橋グラフトコポリマーの製造方法であって、前記方法が、
(a)少なくとも溶媒と、架橋剤と、グラフトコポリマーであって、
前記グラフトコポリマーが、
(i)デキストランを含む主鎖と、
(ii)少なくとも50%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカン側鎖とを含むグラフトコポリマーとを接触させ、
それによって架橋グラフトコポリマーが生成する工程と;
(b)任意選択的に、工程(a)において生成した前記架橋グラフトコポリマーを単離する工程と
を含む方法。
【請求項17】
前記溶媒が水性である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
架橋デキストランを含む組成物であって、前記デキストランが、
(i)1位および6位で連結した87~93重量%のグルコース;
(ii)1位および3位で連結した0.1~1.2重量%のグルコース;
(iii)1位および4位で連結した0.1~0.7重量%のグルコース;
(iv)1位、3位および6位で連結した7.7~8.6重量%のグルコース;ならびに(v)
(a)1位、2位および6位、または
(b)1位、4位および6位
で連結した0.4~1.7重量%のグルコース
を含み、
前記デキストランの重量平均分子量(Mw)が5000万~2億ダルトンである、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/459,800号明細書(2017年2月16日出願)および同第62/489,00号明細書(2017年4月25日出願)の利益を主張するものであり、これらは共に、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、多糖類の分野の開示である。例えば、本開示は、架橋されているデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの製造、および有利な水性液体吸収特性を有する組成物でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
超吸収性材料は一般に、典型的にはそれら自体の重量の数倍に等しい、大量の水性液体を吸収することができ、高圧下で水性液体を保持することができる。超吸収性材料が一般に適用される吸収性製品には、おむつ、トレーニングおむつ、大人用失禁製品および女性用ケア製品が含まれる。これらのおよび他の製品での超吸収性材料の使用は、それらの全体嵩を低下させながらそれらの吸収容量を増加させる。
【0004】
今日使用されるほとんどの超吸収性材料は、架橋合成ポリマーからなり、超吸収性ポリマー(SAP)と称される。これらには、例えば、アクリル酸またはアクリルアミドのポリマーおよびコポリマーが含まれる。超吸収性というそれらの利点にもかかわらず、ほとんどの商業SAPは、再生可能な資源から誘導できないおよび/または十分な生分解性に欠けるなどの、重大な欠点を有する。
【0005】
ある種の多糖組成物が、これらのバイオ由来構成要素の一般的な再生可能性および生分解性を潜在的にうまく利用して、超吸収用途に使用されている。例えば、特許文献1は、カルボキシメチルデンプンを含むゲル形成多糖誘導体を記載している。別の例として、水溶性の、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩を含有する高膨潤ゲル粒子が特許文献2に記載されている。
【0006】
これらの過去の進歩にもかかわらず、多糖ベースの組成物のさらなる開発が、向上した超吸収機能を獲得するために望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第3345358号明細書
【文献】米国特許第2639239号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、本開示は、架橋グラフトコポリマーを含む組成物であって、架橋グラフトコポリマーのグラフトコポリマー部分が、(i)デキストランを含む主鎖と、(ii)少なくとも約50%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカン側鎖とを含む組成物に関する。
【0009】
別の実施形態において、本開示は、架橋グラフトコポリマーの製造方法であって、この方法が、(a)少なくとも溶媒と、架橋剤と、グラフトコポリマー(ここで、グラフトコポリマーは、(i)デキストランを含む主鎖と、(ii)少なくとも約50%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカン側鎖とを含む)とを接触させ、それによって架橋グラフトコポリマーが生成する工程と;(b)任意選択的に、工程(a)において生成した架橋グラフトコポリマーを単離する工程とを含む方法に関する。
【0010】
別の実施形態において、本開示は、架橋デキストランを含む組成物であって、デキストランが、(i)1位および6位で連結した約87~93重量%のグルコース;(ii)1位および3位で連結した約0.1~1.2重量%のグルコース;(iii)1位および4位で連結した約0.1~0.7重量%のグルコース;(iv)1位、3位および6位で連結した約7.7~8.6重量%のグルコース;ならびに(v) (a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位で連結した約0.4~1.7重量%のグルコースを含み;デキストランの重量平均分子量(Mw)が約5000万~2億ダルトンである組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の架橋グラフトコポリマーを調製するために使用することができるデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの部分の例である。この特定の図において、ポリα-1,3-グルカン鎖(「グルカングラフト」)は、デキストラン主鎖にα-1,4-連結しているペンダントグルコースからグルコシルトランスフェラーゼ酵素(GTF)によって合成される。
図2】架橋グラフトコポリマーを調製するために使用することができるデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの例の図解である。デキストラン主鎖およびポリα-1,3-グルカン側鎖は、互いにほぼ一定の縮尺で示されている。例えば、主鎖は約1000DPwであり得、一方、各側鎖は約1000DPwであり得る。
図3】グラフは、2時間および24時間のグルコシルトランスフェラーゼ反応において生成したデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーのDPwへの出発デキストラン濃度(g/L)の影響を例証する。実施例2を参照されたい。
図4】10.6重量%のデキストランを含有するデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー試料の写真を示す。実施例6を参照されたい。
図5】0.9重量%のデキストランを含有するデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー試料の写真を示す。実施例6を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
全ての引用される特許および非特許文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0013】
特に開示しない限り、本明細書で用いられるような用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の言及される特徴を包含することを意図する。
【0014】
存在する場合、特に記載しない限り、全ての範囲は、包括的であり、結合可能である。例えば、「1~5」の範囲が列挙されている場合、列挙されている範囲は、範囲「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2および4~5」、「1~3および5」等を含むと解釈されるべきである。本明細書での可能な量/百分率のいかなるリストも、ある範囲を記載するために用いることができ、ここで、リスト中の任意の2つの量/百分率間である範囲を設定することができる。
【0015】
本明細書での用語「コポリマー」は、デキストランおよびポリα-1,3-グルカンなどの、少なくとも2種類の異なるα-グルカンを含むポリマーを意味する。
【0016】
本明細書での用語「グラフトコポリマー」、「分岐コポリマー」等は、一般に、「主鎖」(または「主な鎖」)と、主鎖から分岐する側鎖とを含むコポリマーを意味する。側鎖は、主鎖とは構造的に異なる。本明細書でのグラフトコポリマーの例は、デキストランを含む主鎖と、ポリα-1,3-グルカンの側鎖とを含む、デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーである。いくつかの態様において、デキストランの非還元性末端がグルコシルトランスフェラーゼ酵素によるポリα-1,3-グルカン合成をプライムすることができるので、デキストラン主鎖は、ポリα-1,3-グルカン延長部を有することができる。したがって、主鎖は、いくつかの場合にはデキストラン-ポリα-1,3-グルカン鎖状コポリマーであり得る。いくつかの態様における主鎖は、それ自体、以下に開示されるように分岐構造であり得;そのような主鎖へのポリα-1,3-グルカンの付加は、元来の分岐構造の分岐を増大させる。
【0017】
本明細書での用語「架橋グラフトコポリマー」および他の類似の用語は、架橋デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーなどのグラフトコポリマーを意味する。本明細書での用語「架橋」および他の類似の用語は、典型的には、ポリマーを結び付ける1つもしくは複数の結合(共有結合および/または非共有結合)を意味する。多重結合を有する架橋は、典型的には、架橋を形成するために使用された架橋剤の部分である1つもしくは複数の原子を含む。いくつかの態様における非共有結合は、イオン相互作用、疎水性相互作用、H結合相互作用、またはファンデルワールス相互作用によるものであり得る。
【0018】
本明細書での用語「架橋剤」、「クロスリンカー」等は、グルカンポリマー(例えば、ポリα-1,3-グルカン、デキストラン)の間に架橋を生み出すことができる原子または化合物を意味する。典型的な実施形態における架橋剤は、グラフトコポリマーのグルコースモノマーのヒドロキシル基と反応することができる基を有する。
【0019】
本明細書での用語「架橋反応」および類似の用語(例えば、「架橋性組成物」、「架橋性調製物」)は、典型的には、少なくとも溶媒、架橋剤、およびグラフトコポリマーを含む反応を意味する。いくつかの態様における架橋反応は、水などの水性溶媒を含むが、他の態様においては、溶媒は非水性である。
【0020】
用語「ポリα-1,3-グルカン側鎖」および「ポリα-1,3-グルカン分岐」(ならびに類似の用語)は、本明細書では同じ意味で用いることができる。デキストラン分岐がグルコシルトランスフェラーゼ酵素によるポリα-1,3-グルカン合成をプライムすることができる非還元性末端を有するので、ポリα-1,3-グルカン側鎖は、典型的には、デキストラン分岐(例えば、ペンダントグルコースまたは短鎖)の延長部である。
【0021】
本明細書で用いられるような「ポリα-1,3-グルカンホモポリマー」および類似の用語は、(i)グラフトコポリマーまたは(ii)デキストラン-ポリα-1,3-グルカン鎖状コポリマーの一部ではないポリα-1,3-グルカンを意味する。
【0022】
用語「α-グルカン」、「α-グルカンポリマー」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。α-グルカンは、α-グルコシド結合によって一緒に連結したグルコースモノマー単位を含むポリマーである。デキストランおよびポリα-1,3-グルカンは、α-グルカンの例である。
【0023】
用語「グリコシド結合(linkage)」、「グリコシド結合(bond)」等は、本明細書では同じ意味で用いられ、炭水化物分子を他の炭水化物分子に結合する共有結合を意味する。用語「グルコシド結合(linkage)」、「グルコシド結合(bond)」、「結合(linkage)」等は、本明細書では同じ意味で用いられ、2つのグルコース分子間のグリコシド結合を意味する。本明細書で用いられるような用語「α-1,6-グルコシド結合」は、隣接α-D-グルコース環に1位および6位炭素によってα-D-グルコース分子を相互に結合する共有結合を意味する。この定義は、同様に、用語「α-1,3-グルコシド結合」、「α-1,2-グルコシド結合」および「α-1,4-グルコシド結合」にも適用されるが、しかしそれぞれの炭素数を用いて適用される。本明細書では、「α-D-グルコース」は、「グルコース」または「モノマー」と言われる。本明細書に開示される全てのグルコシド結合は、特に記載しない限り、α-グルコシド結合である。
【0024】
用語「ポリα-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカンポリマー」、「α-1,3-グルカン」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。ポリα-1,3-グルカンは、特定の態様において、少なくとも約50%(例えば、95%以上)のα-1,3結合を含む。
【0025】
用語「デキストラン」、「デキストランポリマー」、「デキストラン分子」等は、本明細書では同じ意味で用いられ、実質的に(大部分は)α-1,6-連結したグルコースモノマーを持った、典型的にはα-1,3結合、α-1,2結合、および/またはα-1,4結合によって主鎖に連結した周期的な分岐を持った主鎖を一般に含むα-グルカンを意味する。
【0026】
デキストラン主鎖は、いくつかの態様において、デキストランポリマーのグルコースモノマー全ての約90~95%超を含む。いくつかの場合におけるデキストラン主鎖は、実質的に(または大部分は)α-1,6結合を含むことができ、それが少なくとも約98.0%のα-1,6結合を有することができることを意味する。デキストラン主鎖は、いくつかの態様において、少量のα-1,3結合を含むことができ、それが約2.0%未満のα-1,3結合を有することができることを意味する。
【0027】
デキストラン分岐は、典型的には短く、長さが1つの(ペンダント)から3つのグルコースモノマーまでであり、デキストランポリマーのグルコースモノマー全ての約10%未満を含む。そのような短い分岐は、α-1,2結合、α-1,3結合、および/またはα-1,4結合を含むことできる。いくつかの実施形態におけるデキストランはまた、大部分α-1,6結合を含む分岐を有することができ;そのような分岐の長さは、分岐がそれから生じる鎖の長さに似ていることができる。
【0028】
本明細書でのα-グルカンの結合プロファイルは、当技術分野で公知の任意の方法を用いて測定することができる。例えば、結合プロファイルは、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば、13C NMRまたはH NMR)を使用する方法を用いて測定することができる。用いることができるこれらのおよび他の方法は、参照により本明細書に援用される、Food Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui,Ed,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor & Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されている。
【0029】
本明細書での「分子量」は、数平均分子量(Mn)としてまたは重量平均分子量(Mw)として表すことができ、それらの単位はダルトンまたはg/モルである。あるいはまた、分子量は、DPw(重量平均重合度)またはDPn(数平均重合度)として表すことができる。より小さいα-グルカンポリマーの分子量は、典型的には、α-グルカン内に含まれるグルコースの数を単に意味する、「DP」(重合度)として提供することができる。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、またはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でなどの、これらの分子量の測定値を算出するための様々な手法が当技術分野で公知である。
【0030】
用語「グルコシルトランスフェラーゼ酵素」、「GTF酵素」、「GTF」、「グルカンスクラーゼ」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。本明細書でのグルコシルトランスフェラーゼの活性は、生成物α-グルカンおよびフルクトースを製造するための基質スクロースの反応を触媒する。グルコシルトランスフェラーゼ反応の副生成物には、グルコース、様々な可溶性グルコ-オリゴ糖(DP2~DP7)、およびロイクロースが含まれ得る。グルコシルトランスフェラーゼ酵素の野生型形態は、一般に、(N末端からC末端の方向に)、シグナルペプチド、可変ドメイン、触媒ドメイン、およびグルカン結合ドメインを含有する。本明細書でのグルコシルトランスフェラーゼは、CAZy(Carbohydrate-Active EnZymes:糖質関連酵素)データベース(Cantarel et al.,Nucleic Acids Res.37:D233-238,2009)によると、グリコシドヒドロラーゼファミリー70(GH70)の下に分類される。用語「デキストランスクラーゼ」は、任意選択的に、デキストランを生成するグルコシルトランスフェラーゼ酵素を特徴付けるために用いることができる。
【0031】
用語「酵素反応」、「グルコシルトランスフェラーゼ反応」、「グルカン合成反応」等は、本明細書では同じ意味で用いられ、典型的には、少なくとも水、スクロース、デキストランおよびグルコシルトランスフェラーゼ酵素を最初に含む反応を意味する。そのような反応はグラフトコポリマーを生成し、それは次に、本開示のように架橋することができる。
【0032】
本明細書で用されるような用語「吸収する」および類似の用語は、水性液体を吸い上げる(吸い込む)作用を意味する。本開示の組成物による吸収は、例えば、水保持値(WRV)および/または本明細書に開示されるような遠心分離保持容量(CRC)の観点から測定することができる。
【0033】
本明細書で用いられるような用語「水性液体」、「水性流体」等は、水または水溶液を意味することができる。本明細書での「水溶液」は、1種もしくは複数種の溶解塩を含むことができ、ここで、いくつかの実施形態において、最大全塩濃度は、約3.5重量%であり得る。本明細書での水性液体は、典型的には、液体中の唯一の溶媒として水を含むが、水性液体は、任意選択的に、水に混和する1種もしくは複数種の他の溶媒(例えば、極性有機溶媒)を含むことができる。したがって、水溶液は、少なくとも約10重量%の水を有する溶媒を含むことができる。
【0034】
用語「家庭用ケア製品」および類似の用語は、典型的には、家財の処理、清掃、手入れおよび/または調整に関連する製品、商品およびサービスを意味する。
【0035】
用語「パーソナルケア製品」および類似の用語は、典型的には、人のトリートメント、浄化、洗浄、ケア、および/またはコンディショニングに関連する製品、商品およびサービスを意味する。
【0036】
用語「医療用品」および類似の用語は、典型的には、診断、治療、および/または患者のケアに関連する製品、商品およびサービスを意味する。
【0037】
用語「工業製品」および類似の用語は、典型的には、工業セッティングに使用されるが、個々の消費者によるものではない、製品、商品およびサービスを意味する。
【0038】
用語「体積によるパーセント」、「体積パーセント」、「体積%」、「v/v%」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。溶液中の溶質の体積によるパーセントは、式:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%
を用いて求めることができる。
【0039】
用語「重量によるパーセント」、「重量パーセント(重量%)」、「重量-重量百分率(%w/w)」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。重量によるパーセントは、組成物、混合物、または溶液中に含まれるような質量基準での物質の百分率を意味する。
【0040】
ポリペプチドアミノ酸配列に関して本明細書で用いられるような用語「配列同一性」、「同一性」等は、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2017/0002336号明細書に定義されている通りであり、決定される。
【0041】
本明細書での架橋グラフトコポリマーまたは架橋デキストラン(およびそれの合成のための反応)は、それが合成/人造である、および/または天然由来ではない特性を有するので、任意選択的に、「単離される」と特徴付けることができる。
【0042】
特に開示しない限り、本明細書で用いられるような用語「増加した」は、増加した量または活性が比較される量または活性よりも少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、50%、100%、または200%多い量または活性を意味することができる。用語「増加した」、「向上した」、「増強された」、「より多い」、「改善された」等は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0043】
多糖ベースの組成物のさらなる開発が、向上した超吸収機能を獲得するために望まれる。したがって、このニーズに対処するために、例えば、その酵素的合成の後に、架橋されているデキストラン-α-1,3-グルカングラフトコポリマーが本明細書に開示される。そのような架橋グラフトコポリマーの様々な実施形態が、水性液体吸収特性を増強させる。
【0044】
本開示の特定の実施形態は、架橋グラフトコポリマーを含む組成物であって、架橋グラムのコバルトのグラフトコポリマー部分が、
(i)デキストランを含む主鎖と、
(ii)少なくとも約50%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカン側鎖と
を含む組成物に関する。
【0045】
典型的な実施形態において、架橋グラフトコポリマーの1つもしくは複数の架橋は共有結合である(すなわち、グラフトコポリマーは、互いに化学的に架橋されている)。しかし、1つもしくは複数の架橋は、いくつかの代わりの実施形態においては非共有結合であり得ると考えられる。本明細書での架橋は、少なくとも2つのグラフトコポリマー分子間(分子間架橋)であり得る。いくつかの実施形態における架橋はまた、同じグラフトコポリマー分子の別個のポリα-1,3-グルカン側鎖間、および/または同じグラフトコポリマー分子のデキストラン主鎖の異なるセクション間などの、分子内であり得る。
【0046】
本明細書での架橋は、典型的には、2つもしくはそれ以上の共有結合によって部分を結合する。そのような架橋は、例えば、少なくとも、グルコースモノマーの酸素原子(以前は架橋前のヒドロキシル基の)への共有結合、および別のグルコースモノマーの酸素原子(以前は架橋前のヒドロキシル基の)への共有結合を含むことができる。2つの共有結合によって部分を結合する架橋は、(i)グルコースモノマーの酸素原子、および(ii)別のグルコースモノマーの酸素原子に結合している原子(「架橋原子」)を有することができる。架橋原子は、任意選択的に、架橋を生み出すために使用された架橋剤に典型的には由来する他の原子(例えば、水素、酸素)への1つもしくは複数の他の結合を有することができる。例えば、塩化ホスホリル(オキシ塩化リンとしても知られる、POCl)またはトリメタリン酸ナトリウム(STMP)が架橋を生み出すために使用される場合、そのような架橋は、任意選択的に、単一架橋原子としてリン原子を有すると特徴付けることができ;連結されているグルコースモノマーの酸素へのその2つの共有結合は別として、リン原子はまた、二重結合によって酸素におよび単結合によって別の酸素に結合している。いくつかの実施形態におけるクロスリンカーは、2つもしくはそれ以上(例えば、3、4、5、6、7、8もしくはそれ以上)の架橋原子を有することができ;これらの実施形態における部分を効果的に連結する共有結合の数は、架橋原子の数とともにそれ相応に増加する。
【0047】
架橋グラフトコポリマーの1つもしくは複数の架橋は、本開示のいくつかの態様においてリンを含むことができる。そのような架橋の例は、ホスホジエステル結合である。本明細書でのホスホジエステル結合は、典型的には、グルコースモノマーのヒドロキシル基間で形成される。例えば、ホスホジエステル結合は、第1グラフトコポリマー内のグルコースモノマーのヒドロキシル基と、第2グラフトコポリマー内のグルコースモノマーのヒドロキシル基との間で形成することができる(そのような結合は、この例では分子間である)。ホスホジエステル結合を含む架橋を調製するために本明細書で使用することができる架橋剤は、例えば、POClであり得る。いくつかの態様において、リンを含む架橋を調製するために使用することができる架橋剤には、POCl、ポリホスフェート、またはSTMPが含まれ得る。
【0048】
上に記載されたように、本明細書での架橋は、例えば、架橋剤としてPOCl、ポリホスフェート、またはSTMPを使用して調製することができる。好適な架橋剤の他の例としては、ホウ素含有化合物(例えば、ホウ酸、ジボレート、テトラボレート十水和物などのテトラボレート、ペンタボレート、Polybor(登録商標)などのポリマー化合物、アルカリボレート)、多価金属(例えば、乳酸チタンアンモニウム、チタントリエタノールアミン、チタンアセチルアセトネート、またはチタンのポリヒドロキシ錯体などのチタン含有化合物;乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムトリエタノールアミン、乳酸ジルコニウムジイソプロピルアミン、またはジルコニウムのポリヒドロキシ錯体などのジルコニウム含有化合物)、グリオキサール、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、エピクロロヒドリン、ポリカルボン酸(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸)、ジクロロ酢酸、およびポリアミンが挙げられる。好適な架橋剤のさらに他の例は、全て参照により本明細書に援用される、米国特許第4462917号明細書、同第4464270号明細書、同第4477360号明細書および同第4799550号明細書、ならびに米国特許出願公開第2008/0112907号明細書に記載されている。特定の態様におけるクロスリンカーは、本明細書での水性溶媒に溶解することができる。その上いくつかの態様において、架橋剤は、ホウ素含有化合物(例えば、上に記載されたような)ではない。
【0049】
本明細書での特定の態様における架橋は、グルコースモノマー上へ誘導体化されていてもよいカルボキシル基を含む(例えば、カルボキシル基から調製する)ことができる。グラフトコポリマーは、特定の態様において、そのような架橋化学での利用のための追加のカルボキシル基を含むことができる。その上、いくつかの態様において、架橋グラフトコポリマーは、この化学に基づく架橋を含まない。
【0050】
架橋グラフトコポリマーは、いくつかの態様において、初期架橋後に表面架橋される(ポリマー表面で架橋される)ことができる。本明細書での表面架橋スキームの例としては、ポリヒドロキシル化合物(例えば、ポリビニルアルコール)を使用することおよび/またはカルボキシメチルセルロース(CMC)とクロスリンカー(例えば、エピクロロヒドリン、STMP、リン酸、アミノプロピルシロキサン)とを使用することが挙げられる。表面架橋は、任意選択的に、例えば、グルコースモノマー上へ誘導体化されていてもよいカルボキシル基および/または初期架橋中に導入されていてもよいカルボキシル基を含む(例えば、カルボキシル基から調製する)ことができる。本明細書での表面架橋は、全て参照により本明細書に援用される、米国特許第5462972号明細書、同第6821331号明細書、同第7871640号明細書、同第8361926号明細書、または同第8486855号明細書のいずれかに開示されるような試剤および/またはプロセスを組み入れることができる。その上、いくつかの態様において、架橋グラフトコポリマーは、表面架橋されない。
【0051】
架橋それ自体からの任意の効果は別として、架橋グラフトコポリマーは、典型的には、誘導体化されておらず(例えば、エーテル化、エステル化、酸化もされていない)、(架橋グラフトコポリマーを製造するために使用される)グラフトコポリマーも、典型的には、誘導体化されていない。
【0052】
本明細書での架橋グラフトコポリマーは、均一なまたは不均一なグラフトコポリマー構成要素を含むことができる。均一なグラフトコポリマー構成要素の架橋グラフトコポリマーは、例えば、特定の酵素反応で製造されたものなどの、グラフトコポリマーの1つの形態、ロット、または調製物を使用して調製することができる。不均一なグラフトコポリマー構成要素の架橋グラフトコポリマーは、典型的には、例えば、異なる酵素反応で製造されたものなどの、グラフトコポリマーの2つもしくはそれ以上の異なる形態、ロット、または調製物を使用して調製される。例えば、それぞれ、約60重量%のデキストランまたは90重量%のデキストランを含むグラフトコポリマーは、架橋されて不均一なグラフトコポリマー構成要素の架橋グラフトコポリマーを形成することができよう。
【0053】
いくつかの実施形態における架橋グラフトコポリマーは、デキストラン主鎖にグルコシド連結していないポリα-1,3グルカンホモポリマーをさらに含むことができる。そのような実施形態は、デキストラン/ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの酵素的合成中の遊離の、プライムされないポリα-1,3-グルカンの共生成によって生じることができる(それらの後者は、デキストランプライマーからのα-1,3-グルカン合成によって生じる)。そのような遊離のポリα-1,3グルカンホモポリマーは、これらの実施形態内で化学的に架橋する(例えば、グラフトコポリマーと架橋する)ことができ、例えば、ポリα-1,3グルカン側鎖について本明細書に開示されるような任意のMwのものであり得る。
【0054】
本開示の架橋グラフトコポリマーは、典型的には、水性条件下で不溶性である(水性不溶性である)。例えば、架橋グラフトコポリマーは、最大約50、60、70、80、90、100、110、または120℃までの温度で、水または別の水性組成物に不溶性であり得るかまたは完全には溶解できない。水溶液などの本明細書での水性組成物は、少なくとも約10重量%の水を有する溶媒を含むことができる。いくつかの実施形態において、溶媒は、例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100重量%(または10~100重量%の間のいずれかの整数値)の水である。いくつかの実施形態において、水溶液のpHは4~9である。
【0055】
いくつかの態様における架橋グラフトコポリマーの架橋度は、次式(百分率として表される):[(使用された架橋剤中の反応基の総数)/(グラフトコポリマー分子中の二糖単位の総数)]×100
を用いて求めることができる。いくつかの態様における架橋度は、例えば、約0.5%~70%、0.5%~50%、2.5%~70%、2.5%~50%、5%~70%、または5%~50%であると考えられる。架橋度は、例えば、使用される架橋剤のレベルを変えることによって、それ相応に変更することができる。
【0056】
本明細書での架橋グラフトコポリマーのグラフトコポリマー部分の主鎖を形成するデキストランは、例えば、約、または少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のα-1,6-グルコシド結合を含むことができる。そのようなパーセントのα-1,6結合プロファイルは、デキストラン(主鎖と分岐部分とを合わせた)の全ての結合の総計を考慮に入れる。本明細書での「デキストラン分岐」および類似の用語は、グラフトコポリマーを調製するためのその使用前に、デキストランポリマー中に存在するいかなる分岐をも包含することを意味する。いくつかの実施形態において、デキストランは、約、または少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のα-1,6-グルコシド結合を含む主鎖を含む。いくつかの実施形態において、デキストランは、完全に線状(100%のα-1,6-グルコシド結合)である。
【0057】
本明細書でのデキストランは、例えば、約、または少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%のα-1,4グルコシド結合、α-1,3グルコシド結合および/またはα-1,2グルコシド結合を含むことができる。典型的には、そのような結合は、分岐点を含む、デキストランの分岐部分に、全体的に、またはほぼ全体的に存在する。いくつかの実施形態において、デキストラン分岐は、1つ、2つ(例えば、α-1,4およびα-1,3;α-1,4およびα-1,2;α-1,3およびα-1,2)、またはこれらのタイプの結合の全3つを含んでもよい。本明細書でのデキストランにおけるα-1,4グルコシド結合、α-1,3グルコシド結合および/またはα-1,2グルコシド結合の総百分率は、典型的には、50%以下である。約、または少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のα-1,6-グルコシド結合を有する主鎖を含むデキストランでなどの、いくつかの態様において、そのようなデキストランは、約、または少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%のα-1,4グルコシド結合、α-1,3グルコシド結合および/またはα-1,2グルコシド結合を含む。
【0058】
本明細書でのデキストランの分岐点は、α-1,4グルコシド結合、α-1,3グルコシド結合、またはα-1,2グルコシド結合を含むことができる(例えば、分岐は、デキストラン主鎖にα-1,3-結合していてもよい)。いくつかの実施形態において、これらの分岐点の全3つが存在してもよいが、いくつかの実施形態においては、これらの分岐点のうち1つまたは2つ(例えば、α-1,4およびα-1,3;α-1,4およびα-1,2;α-1,3およびα-1,2)のタイプのみが存在する。分岐点は、例えば、デキストラン主鎖のグルコース単位の平均して5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、10~30、15~25、20~30、または20~40毎(または少なくとも約それら毎)に生じると考えられる。本明細書でのα-1,4グルコシド結合、α-1,3グルコシド結合、および/またはα-1,2グルコシド結合を含むデキストラン分子の分岐は、典型的には、長さが1つ~3つのグルコースモノマーであり、デキストランポリマーのグルコースモノマー全ての約5~10%未満を含む。1つのグルコース単位を含む分岐は、任意選択的に、ペンダントグルコース基と言うことができる。いくつかの実施形態において、デキストラン分子の分岐は、デキストラン分子のグルコースモノマー全てのうちの約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%、または約それら未満を含むことができる。特定の実施形態におけるデキストランは、このポリマーにおけるグルコシド結合のパーセントとして、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%の分岐点を有することができる。本明細書での分岐のグルコシド結合プロファイルは、任意選択的に、分岐を他の鎖に連結するグルコシド結合を含むことを特徴とすることができる。
【0059】
特定の実施形態におけるグラフトコポリマーの主鎖は、完全に本開示のデキストランからなることができる。しかし、いくつかの態様において、主鎖は、他の要素を含むことができる。例えば、グラフトコポリマー主鎖は、デキストラン主鎖の非還元性側鎖から生じるポリα-1,3-グルカンを含むことができ、主鎖(その非還元性末端で)により、グラフトコポリマーの合成中にポリα-1,3-グルカン合成をプライムするのに役立つ。
【0060】
本明細書でのデキストランの分子量(Mw[重量平均分子量])は、例えば、約、または少なくとも約1000、2000、5000、10000、25000、40000、50000、75000、100000、125000、150000、175000、200000、240000、250000、500000、750000、もしくは1000000ダルトン、または約それら未満であり得るか、或いは約100000~200000、125000~175000、130000~170000、135000~165000、140000~160000、もしくは145000~155000ダルトンの範囲にあり得る。いくつかの態様において、デキストランは、約、または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200百万ダルトン、または約それら未満のMw、或いは約10~80、20~70、30~60、40~50、50~200、60~200、70~200、80~200、90~200、100~200、110~200、120~200、50~180、60~180、70~180、80~180、90~180、100~180、110~180、120~180、50~160、60~160、70~160、80~160、90~160、100~160、110~160、120~160、50~140、60~140、70~140、80~140、90~140、100~140、110~140、120~140、50~120、60~120、70~120、80~120、90~120、90~110、100~120、110~120、50~110、60~110、70~110、80~110、90~110、100~110、50~100、60~100、70~100、80~100、90~100、もしくは95~105百万ダルトンの範囲にあるMwを有することができる。本明細書での少なくとも約5000万ダルトン(例えば、5000万~2億ダルトン)のMwのデキストランは、任意選択的に、「巨大デキストラン」または「非常に高い分子量のデキストラン」と言うことができる。いくつかの態様におけるデキストランのMwは、100000ダルトン以上であり、したがって、例えば、T10(Mw=10000)、T25(Mw=25000)、またはT40(Mw=40000)デキストランではない。本明細書でのいかなるデキストランのMwも、任意選択的に、重量平均重合度(DPw)として表すことができ、DPwは、162.14で割られたMwである。
【0061】
いくつかの態様における巨大デキストランは、(i)1位および6位でのみ連結した約87~93重量%のグルコース;(ii)1位および3位でのみ連結した約0.1~1.2重量%のグルコース;(iii)1位および4位でのみ連結した約0.1~0.7重量%のグルコース;(iv)1位、3位および6位でのみ連結した約7.7~8.6重量%のグルコース;ならびに(v)(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位でのみ連結した約0.4~1.7重量%のグルコースを含むことができる。特定の実施形態において、デキストランは、(i)1位および6位でのみ連結した約89.5~90.5重量%のグルコース;(ii)1位および3位でのみ連結した約0.4~0.9重量%のグルコース;(iii)1位および4位でのみ連結した約0.3~0.5重量%のグルコース;(iv)1位、3位および6位でのみ連結した約8.0~8.3重量%のグルコース;ならびに(v)(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位でのみ連結した約0.7~1.4重量%のグルコースを含むことができる。本明細書での巨大デキストランの好適な例は、下記の実施例5および6に記載される。
【0062】
いくつかの態様における巨大デキストランは、1位および6位でのみ連結した約87、87.5、88、88.5、89、89.5、90、90.5、91、91.5、92、92.5、または93重量%のグルコースを含むことができる。いくつかの例では、1位および6位でのみ連結した約87~92.5、87~92、87~91.5、87~91、87~90.5、87~90、87.5~92.5、87.5~92、87.5~91.5、87.5~91、87.5~90.5、87.5~90、88~92.5、88~92、88~91.5、88~91、88~90.5、88~90、88.5~92.5、88.5~92、88.5~91.5、88.5~91、88.5~90.5、88.5~90、89~92.5、89~92、89~91.5、89~91、89~90.5、89~90、89.5~92.5、89.5~92、89.5~91.5、89.5~91、または89.5~90.5重量%のグルコースが存在することができる。
【0063】
巨大デキストランは、1位および3位でのみ連結した約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、または1.2重量%のグルコースを含むことができる。いくつかの例では、1位および3位でのみ連結した約0.1~1.2、0.1~1.0、0.1~0.8、0.3~1.2、0.3~1.0、0.3~0.8、0.4~1.2、0.4~1.0、0.4~0.8、0.5~1.2、0.5~1.0、0.5~0.8、0.6~1.2、0.6~1.0、または0.6~0.8重量%のグルコースが存在することができる。
【0064】
いくつかの態様における巨大デキストランは、1位および4位でのみ連結した約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、または0.7重量%のグルコースを含むことができる。いくつかの例では、1位および4位でのみ連結した約0.1~0.7、0.1~0.6、0.1~0.5、0.1~0.4、0.2~0.7、0.2~0.6、0.2~0.5、0.2~0.4、0.3~0.7、0.3~0.6、0.3~0.5、または0.3~0.4重量%のグルコースが存在することができる。
【0065】
いくつかの態様における巨大デキストランは、1位、3位および6位でのみ連結した約7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、または8.6重量%のグルコースを含むことができる。いくつかの例では、1位、3位および6位でのみ連結した約7.7~8.6、7.7~8.5、7.7~8.4、7.7~8.3、7.7~8.2、7.8~8.6、7.8~8.5、7.8~8.4、7.8~8.3、7.8~8.2、7.9~8.6、7.9~8.5、7.9~8.4、7.9~8.3、7.9~8.2、8.0~8.6、8.0~8.5、8.0~8.4、8.0~8.3、8.0~8.2、8.1~8.6、8.1~8.5、8.1~8.1、8.1~8.3、または8.1~8.2重量%のグルコースが存在することができる。
【0066】
いくつかの態様における巨大デキストランは、(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位でのみ連結した約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、または1.7重量%のグルコースを含むことができる。いくつかの例では、(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位でのみ連結した約0.4~1.7、0.4~1.6、0.4~1.5、0.4~1.4、0.4~1.3、0.5~1.7、0.5~1.6、0.5~1.5、0.5~1.4、0.5~1.3、0.6~1.7、0.6~1.6、0.6~1.5、0.6~1.4、0.6~1.3、0.7~1.7、0.7~1.6、0.7~1.5、0.7~1.4、0.7~1.3、0.8~1.7、0.8~1.6、0.8~1.5、0.8~1.4、0.8~1.3重量%のグルコースが存在することができる。
【0067】
本明細書での「1位および6位で連結したグルコース(グルコースモノマー)」は、2つの隣接グルコースモノマーとのそれぞれのグルコシド結合に、グルコースモノマーの1位および6位炭素のみが関与しているデキストランのグルコースモノマーを意味する。この定義は、(i)「1位および3位で連結した」、ならびに(ii)「1位および4位で連結した」グルコースにも同様に適用され、各それぞれの結合に関与した異なる炭素位置を、それ相応に、考慮に入れている。本明細書での「1位、3位および6位で連結したグルコース(グルコースモノマー)」は、3つの隣接グルコースモノマーとのそれぞれのグルコシド結合に、グルコースモノマーの1位、3位および6位炭素が関与しているデキストランのグルコースモノマーを意味する。1位、3位および6位でのみ連結したグルコースは分岐点である。この定義は、(i)1位、2位および6位で、並びに(ii)1位、4位および6位で連結したグルコースにも同様に適用されるが、各それぞれの結合に関与した異なる炭素位置を、それ相応に、考慮に入れている。本明細書でのグルコースの位置(グルコースの炭素位)1、2、3、4および6は、当技術分野で公知の通りである(次の構造式に描かれている)。
【化1】
【0068】
巨大デキストランのグルコシド結合プロファイルは、本明細書に開示される以下の任意のプロトコルに従って製造されたデキストランを使用して測定することができる。好適な結合測定プロトコルの例は、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2016/0122445号明細書(例えば、その中の段落97または実施例9)に開示されるプロトコルと類似、または同じものであり得る。
【0069】
本明細書での巨大デキストランは、相互から反復して分岐する長鎖(大部分または全てα-1,6-結合を含有する)が存在する分岐構造であり得る(例えば、長鎖は、別の長鎖からの分岐であり得、その別の長鎖は、順繰りにそれ自体別の長鎖からの分岐であり得る、等)と考えられる。分岐構造はまた、長鎖からの短い分岐を含み得;これらの短鎖は、大部分は、例えば、α-1,3結合およびα-1,4結合を含むと考えられる。巨大デキストラン中の分岐点は、別の長鎖から分岐している長鎖からであろうと、長鎖から分岐している短鎖からであろうと、α-1,6-結合に含まれるグルコースからのα-1,3結合、α-1,4結合、またはα-1,2結合を含むように思われる。平均すると、いくつかの実施形態における巨大デキストランの全分岐点の約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、15~35%、15~30%、15~25%、15~20%、20~35%、20~30%、20~25%、25~35%、または25~30%が長鎖へ分岐する。他の分岐点は、大部分(>98%もしくは99%)または全て短鎖へ分岐する。
【0070】
巨大デキストラン分岐構造の長鎖は、いくつかの態様において長さが類似し得る。長さが類似であるとは、分岐構造中の長鎖全ての少なくとも70%、75%、80%、85%、または90%の個々の長さ(DP)が分岐構造の長鎖全ての平均長の±15%(または10%、5%)内にあることを意味する。いくつかの態様において、巨大デキストランの長鎖の平均(mean)長(平均(average)長)は、約10~50DP(すなわち、10~50グルコースモノマー)である。例えば、長鎖の平均個別長は、約10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、10~50、10~40、10~30、10~25、10~20、15~50、15~40、15~30、15~25、15~20、20~50、20~40、20~30、または20~25DPであり得る。
【0071】
巨大デキストランの特定の実施形態における長鎖は、実質的にα-1,6-グルコシド結合と、少量(2.0%未満)のα-1,3-グルコシド結合および/またはα-1,4-グルコシド結合とを含むことができる。例えば、巨大デキストラン長鎖は、約、または少なくとも約98%、98.25%、98.5%、98.75%、99%、99.25%、99.5%、99.75%、または99.9%のα-1,6-グルコシド結合を含むことができる。特定の実施形態におけるデキストラン長鎖は、α-1,4-グルコシド結合を含まない(すなわち、そのような長鎖は、大部分はα-1,6-結合と、少量のα-1,3-結合とを有する)。逆に、いくつかの実施形態におけるデキストラン長鎖は、α-1,3-グルコシド結合を含まない(すなわち、そのような長鎖は、大部分はα-1,6-結合と、少量のα-1,4-結合とを有する)。上記の実施形態のいずれかのデキストラン長鎖は、さらに、例えば、α-1,2-グルコシド結合を含まなくてもよい。さらにいくつかの態様において、デキストラン長鎖は、100%のα-1,6-グルコシド結合を含むことができる(別の鎖から分岐するためにそのような長鎖によって使用される結合を除いて)。
【0072】
いくつかの態様における巨大デキストラン分子の短鎖は、長さが1~3つのグルコースモノマーであり、デキストランポリマーのグルコースモノマー全ての約5~10%未満を含む。本明細書での短鎖の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または全ては、長さが1~3つのグルコースモノマーである。デキストラン分子の短鎖は、例えば、巨大デキストラン分子のグルコースモノマー全ての約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満を含むことができる。
【0073】
いくつかの態様における巨大デキストラン分子の短鎖は、α-1,2-グルコシド結合、α-1,3-グルコシド結合および/またはα-1,4-グルコシド結合を含むことができる。短鎖は、全てを一緒に(個別にではなく)考えた場合に、(i)これらの結合の全3つ、または(ii)例えば、α-1,3-グルコシド結合およびα-1,4-グルコシド結合を含んでよい。
【0074】
巨大デキストランを含むグラフトコポリマーに関して、本明細書での「主鎖」は巨大デキストランの長鎖であると考えられる。ポリα-1,3-グルカン側鎖は、至る所で本開示の方法で巨大デキストランの長鎖に連結することができる(例えば、短鎖[例えば、ペンダントグルコース]のまたは長鎖の非還元性末端からの延長部)。
【0075】
本明細書での巨大デキストランのMwは、約5000万~2億、またはこの範囲内に入るデキストランについて上に開示されたような任意のMwである。
【0076】
本明細書での巨大デキストランのz平均慣性半径は、約200~280nmであり得る。例えば、z平均Rgは、約200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、もしくは280nm(または200~280nmの任意の整数)であり得る。他の例として、z平均Rgは、約200~280、200~270、200~260、200~250、200~240、200~230、220~280、220~270、220~260、220~250、220~240、220~230、230~280、230~270、230~260、230~250、230~240、240~280、240~270、240~260、240~250、250~280、250~270、または250~260nmであり得る。
【0077】
本明細書での用語「慣性半径」(Rg)は、デキストランの平均半径を意味し、分子の重心からデキストラン分子の構成要素(原子)の二乗平均平方根として算出される。Rgは、例えば、オングストロームまたはナノメートル(nm)単位で提供することができる。本明細書でのデキストランの「z平均慣性半径」は、光散乱法(例えば、MALS)を用いて測定されるようなデキストランのRgを意味する。z平均Rgの測定方法は公知であり、それ相応に、本明細書で用いることができる。例えば、z平均Rgは、米国特許第7531073号明細書、米国特許出願公開第2010/0003515号明細書および同第2009/0046274号明細書、Wyatt(Anal.Chim.Acta 272:1-40)、ならびにMoriおよびBarth(Size Exclusion Chromatography,Springer-Verlag,Berlin,1999)に開示されるように測定することができ、それらの全ては、参照により本明細書に援用される。
【0078】
いくつかの態様における巨大デキストランのMwおよび/またはz平均Rgは、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2016/0122445号明細書(例えば、その中の段落105または実施例9)に開示されたプロトコルと類似のまたは同じプロトコルに従って測定することができる。
【0079】
本明細書での巨大デキストランは、例えば、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2016/0122445号明細書の開示に従って酵素的に合成することができる。例えば、この参考文献に記載されているように、そのようなデキストランは、GTF 0768、またはGTF 0768のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むGTFを含む好適な反応で製造することができる。
【0080】
本明細書での架橋グラフトコポリマーのグラフトコポリマー部分は、デキストラン主鎖を含み、その主鎖から、少なくとも約50%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカン側鎖が存在する。これらの側鎖は、典型的には、本明細書での本開示のデキストランを、ポリα-1,3-グルカンを合成できるグルコシルトランスフェラーゼと反応させることによって得ることができる。明確にする目的上、これらの側鎖は、デキストランの分岐と見なされるべきではない。
【0081】
特定の態様におけるポリα-1,3-グルカン側鎖は、約、または少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、69%、70%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のα-1,3グルコシド結合を含むことができる。側鎖は、いくつかの態様においては、デキストランのペンダントグルコースもしくは他の分岐(それらの両方とも、延長のために酵素に非還元性末端を与える)をプライマーとして使用して、グルコシルトランスフェラーゼ酵素で合成されると考えられる。側鎖が、デキストラン主鎖にそれ自体α-1,3-連結しているペンダントグルコースから合成される場合には、結果として生じた側鎖は、100%または非常に高い(例えば、98%以上の)百分率のα-1,3-グルコシド結合を有することができる。いくつかの実施形態において、デキストラン主鎖とペンダントグルコースもしくはより長い分岐との間のグルコシド結合は、側鎖の結合と見なされる。いくつかの実施形態において、デキストラン主鎖と分岐との間のグルコシド結合も、それから側鎖が合成される分岐内のグルコシド結合も、側鎖の結合プロファイルを決定する際に考慮される。いくつかの代わりの実施形態において、ポリα-1,3-グルカン側鎖は、約、または少なくとも約30%のα-1,3グルコシド結合を含むことができる。本明細書での任意のポリα-1,3-グルカン側鎖における結合の残りは、典型的には、α-1,6結合でであり得る。
【0082】
本明細書でのポリα-1,3-グルカン側鎖のMwは、例えば、約、または少なくとも約1620、1650、1700、2000、5000、10000、15000、16200、20000、25000、30000、40000、50000、60000、70000、75000、80000、90000、100000、110000、120000、125000、130000、140000、150000、160000、162000、または165000ダルトンであり得る。本明細書でのグラフトコポリマーの側鎖は、サイズが比較的均一であると考えられる。例えば、グラフトコポリマーの側鎖は、それぞれ、約150000~165000、155000~165000、または160000~165000ダルトンの範囲のMwを有することができる。グラフトコポリマーの側鎖の平均Mwはまた、必要に応じて、言及することができ;前述の側鎖のMwのいずれも、コポリマーの側鎖全ての平均Mwと見なすことができる。本明細書に開示される側鎖のMwのいずれも(またはいずれのグルカンのMwも)、任意選択的に、DPw(すなわち、Mw/162.14)の観点から特徴付けることができる。
【0083】
本明細書でのグラフトコポリマーのポリα-1,3-グルカン側鎖の数は、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30であり得るか、または少なくともそれらであり得る。いくつかの実施形態において、側鎖の数は、例えば、4、5、または6である。いくつかの態様におけるポリα-1,3-グルカン側鎖の前述の数は、少なくとも約100000、120000、140000、160000、162000、または165000ダルトンである側鎖の特徴である。さらに、なお一層の態様において、ポリα-1,3-グルカン側鎖の前述の数は、グラフトコポリマーを特徴付けることができ、そのグラフトコポリマーにおいて、デキストラン構成要素は、デキストラン主鎖の15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25のグルコース単位毎に平均して1つのペンダントグルコースおよび/または分岐(それから側鎖をプライムする/合成することができる)を有する。デキストラン構成要素のサイズ(例えば、100000~200000ダルトン)、デキストラン主鎖上の分岐/ペンダントグルコースの位置決め(例えば、20のグルコース単位毎に約1つ)、およびグラフトコポリマーのポリα-1,3-グルカン側鎖の数に基づいて、グラフトコポリマーは、ポリα-1,3-グルカン側鎖へと伸びないその元来のデキストラン分岐/ペンダントグルコースの大部分(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%)を有する(すなわち、分岐/ペンダントグルコースのほとんどは、それらを使用してグラフトコポリマーを合成する前にそれらがデキストラン中に存在した通りである)ことが、いくつかの場合には考えられる。さらに、いくつかの他の実施形態において、本明細書でのグラフトコポリマーは、最大約50、100、500、1000、5000、10000、15000、または20000までのポリα-1,3-グルカン側鎖を有することができることが可能と考えられる。
【0084】
本明細書での架橋グラフトコポリマーのグラフトコポリマー部分のMw(すなわち、元来のデキストラン分子とグラフトコポリマーのポリα-1,3-グルカン側鎖との合わせたMw)は、例えば、約、または少なくとも約750000、800000、900000、1000000、1100000、1200000、1300000、1400000、1500000、1600000、1700000、1800000、1900000、または2000000ダルトンであり得る。いくつかの実施形態における巨大デキストラン構成要素を含むグラフトコポリマーのMwは、巨大デキストラン構成要素それ自体について上で開示されたような重量に類似しているが、(2、3個のポリα-1,3-グルカン側鎖が存在する実施形態においては)約0.5、0.75、1、1.25、1.5、1.75または2百万ダルトンの追加ありと考えられる。本明細書でのグラフトコポリマーの多分散指数(Mw/Mn)(PDI)は、例えば、約、または少なくとも約5.0、4.75、4.5、4.25、4.0、3.75、3.5、3.25、3.0、2.75、2.5、2.25、もしくは2.0であり得るか、または約それら未満であり得る。
【0085】
特定の実施形態において、グラフトコポリマーは、約、または少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99、50~95、60~95、50~90、または60~90重量%の本明細書に開示されるような1種もしくは複数種のデキストラン化合物を含むことができる。
【0086】
本明細書での架橋グラフトコポリマーのグラフトコポリマー部分は、例えば、参照により本明細書に援用される、国際出願公開番号国際公開第2017/079595号パンフレット(PCT/US2016/060579号明細書)に開示されるような酵素反応を用いて製造することができる。そのような酵素反応は、典型的には、少なくとも:(i)水と、(ii)スクロースと、(iii)本明細書に開示されるような1種もしくは複数種のデキストラン化合物と、(iv)ポリα-1,3-グルカンを合成するグルコシルトランスフェラーゼ酵素とを含む。この反応におけるグルコシルトランスフェラーゼ酵素によるポリα-1,3-グルカン合成は、少なくとも一部分において、ポリα-1,3-グルカン合成のためのプライマーとしてのデキストランの使用を介してであり得る。デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの酵素的製造の後に、それは、化学的に架橋して本開示の架橋グラフトコポリマーを製造することができる。
【0087】
本明細書でのグラフトコポリマーを調製するための酵素反応におけるデキストランの初期濃度は、例えば、約、または少なくとも約0.5g/L、1.0g/L、1.5g/L、2g/L、2.5g/L、3g/L、4g/L、5g/L、7.5g/L、10g/L、15g/L、20g/L、または25g/Lであり得る。「デキストランの初期濃度」は、反応成分(例えば、少なくとも水、スクロース、デキストラン、グルコシルトランスフェラーゼ酵素)が全て加えられた直後のグルコシルトランスフェラーゼ反応におけるデキストラン濃度を意味する。反応に携わるためのデキストランは、例えば、商業的供給源からのものであり得るか、または酵素的に調製することができる。酵素的に(例えば、デキストランスクラーゼを使用して)生成したデキストランは、いくつかの態様において、(i)初期のデキストラン合成酵素反応からある方法で単離し(例えば、デキストランスクラーゼ反応から分離し)、次にα-1,3-グルカン側鎖合成のための酵素反応に携わることができるか、または(ii)初期のデキストラン合成酵素反応から分離されることなしにα-1,3-グルカン側鎖合成のための酵素反応に携わることができる(例えば、完了したおよび/または熱殺酵素された反応物がα-1,3-グルカン側鎖合成反応のために直接用いられる)。
【0088】
グラフトコポリマーを製造するための酵素反応は、典型的には、少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカンを合成することができるグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む。そのような酵素は、デキストランプライマー部位からポリα-1,3-側鎖(上に開示されたような)を合成して、本明細書でのデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーを形成することができる。特定の態様において、グルコシルトランスフェラーゼ酵素は、(i)約100%、または少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のα-1,3-グルコシド結合を含む、および/または(ii)少なくとも約16200ダルトンであるポリα-1,3-グルカンを合成することができる。
【0089】
ポリα-1,3-グルカン側鎖を製造するための特定の実施形態におけるグルコシルトランスフェラーゼ酵素は、参照により本明細書に援用される、例えば、米国特許出願公開第2014/0087431号明細書に開示されるようなアミノ酸配列を含む、またはアミノ酸配列からなることができる。そのような配列の例としては、米国特許出願公開第2014/0087431号明細書に開示されるような配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、26、28、30、34、もしくは59と100%同一であるか、または少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、もしくは99.5%同一であり、グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するものが挙げられる。配列番号2、4、8、10、14、20、26、28、30、もしくは34のグルコシルトランスフェラーゼ酵素は、いくつかの態様において、少なくとも約90%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカンを合成することができる。
【0090】
グラフトコポリマーを製造するための酵素反応の温度は、必要に応じて、制御することができる。特定の実施形態において、反応温度は、約5℃~約50℃、約20℃~約40℃、または約20℃~約30℃(例えば、約22~25℃)であり得る。特定の実施形態における酵素反応のpHは、約4.0~約8.0、または約5.0~約6.0であり得る。あるいはまた、pHは、例えば、約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、または8.0であり得る。pHは、ホスフェート、トリス、シトレート、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない、好適なバッファの添加または組み入れによって調整するまたは制御することができる。グルカン合成反応におけるバッファ濃度は、例えば、0mM~約100mM、または約10、20、もしくは50mMであり得る。
【0091】
グラフトコポリマーを製造するための酵素反応におけるスクロースの初期濃度は、例えば、約20~400、200~400、250~350、75~175、または50~150g/Lであり得る。いくつかの態様において、スクロースの初期濃度は、例えば、約、または少なくとも約40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、180、200、250、300、または400g/Lであり得る。「スクロースの初期濃度」は、反応成分(例えば、少なくとも水、スクロース、デキストラン、グルコシルトランスフェラーゼ酵素)が全て加えられた直後のグルコシルトランスフェラーゼ反応におけるスクロース濃度を意味する。
【0092】
1種もしくは複数種のグルコシルトランスフェラーゼ酵素が、グラフトコポリマーを製造するための酵素反応に使用されてもよい。本明細書での酵素反応は、例えば、1種、2種、またはそれ以上のグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含有してもよい。いくつかの態様においては、1種もしくは2種のみのグルコシルトランスフェラーゼ酵素が反応に含まれる。本明細書での反応組成物は、細胞を含まないことができるし、典型的には含まない(例えば、全細胞が存在しない)。反応組成物は、本明細書に開示される1つもしくは複数の反応条件を適用するのに好適な任意の容器(例えば、不活性容器/コンテナ)内に含有されることができる。いくつかの態様における不活性容器は、ステンレス鋼、プラスチック、もしくはガラスのものであり得(またはこれらの構成要素の2つもしくはそれ以上を含み)、特定の反応物を含有するのに好適なサイズのものであり得る。典型的には、反応時間は、約1、2、3、4、5、10、12、24、36、48、60、72、84、または96時間であり得る。
【0093】
その酵素的合成の後に、グラフトコポリマーは、架橋される前に、必要に応じて、単離することができる(例えば、濾過または遠心分離によって)。そのようにする際に、グラフトコポリマーは、水、フルクトース、残存スクロースおよび特定の副生成物(例えば、ロイクロース、可溶性オリゴ糖DP2~DP7、グルコース)を含み得る、反応溶液のほとんどから分離される。単離は、任意選択的に、グラフトコポリマー生成物を、1回、2回、またはそれ以上、水または他の水性液体で洗浄すること、および/または生成物を乾燥することをさらに含むことができる。そのような洗浄は、元来の反応試料のまたは生成物試料の体積の約、もしくは少なくとも約0.5倍、1倍、1.5倍、もしくは2倍の洗浄体積を用いることができる、ならびに/または、例えば、濾過および/もしくは遠心分離を伴う。
【0094】
本開示の架橋グラフトコポリマーは、例えば、本明細書でのグラフトコポリマーを少なくとも架橋剤および溶媒と接触させることによって製造することができる。このプロセス工程は、任意選択的に、使用される溶媒に応じて、水性条件下でまたは非水性条件下で、グラフトコポリマーを架橋剤と接触させることと特徴付けることができる。本明細書に開示される任意の架橋剤および/またはグラフトコポリマーをそれ相応に用いることができる。下におよび実施例に開示される任意のプロセスパラメータを、これらのプロダクトバイプロセス実施形態にも同様に適用することかできる。
【0095】
架橋グラフトコポリマーの製造方法/プロセスが本明細書にさらに開示される。この方法は、
(a)少なくとも溶媒と、架橋剤と、本開示のグラフトコポリマーとを接触させ、それによって架橋グラフトコポリマーが生成する工程と、
(b)任意選択的に、工程(a)において生成した架橋グラフトコポリマーを単離する工程と
を含むことができる。
【0096】
方法工程(a)は、任意選択的に、水性または非水性条件下で(溶媒に対応して)グラフトコポリマーを架橋剤と接触させることと特徴付けることができ、および/または、任意選択的に、架橋反応と特徴付けることができる。本明細書に開示される任意の架橋剤および/またはグラフトコポリマーをそれ相応にこの方法に用いることができる。上記のプロセスおよびプロダクトバイプロセス実施形態の接触工程において、そのような工程は架橋剤に架橋を作らせるのに好適な条件下で行われることが一般に望ましい。本開示から、架橋反応に携わる、グラフトコポリマーがそれ自体、典型的には、いかなる化学的架橋もなしに本明細書に開示されるように酵素的に製造されることは、本開示から明らかであるはずである。
【0097】
本明細書での架橋反応は、特定の態様において水性条件下で行うことができる。例えば、反応は、任意選択的に第1工程として、水性液体(例えば、水)中の少なくとも1つのグラフトコポリマー(例えば、本明細書に開示されるような任意のもの)の調製物(典型的にはスラリーまたは混合物)を提供する工程を含むことができる。そのような調製物中のグラフトコポリマーの重量%は、例えば、約、または少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、5~30、5~25、5~20、5~15、5~10、10~30、10~25、10~20、または10~15であり得る(そのような重量%は、必要に応じて、非水性反応にも同様に適用することができる)。この調製物は、任意選択的に、約、もしくは少なくとも約0.25、0.50、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、もしくは48時間、好ましくはかき混ぜながら、インキュベートすることができる、および/または約15、20、25、30、35、40、50、15~25、15~30、15~40、15~50、20~25、20~30、20~40、もしくは20~50℃の温度の室温においてであり得る。この調製物は、典型的には、先ずpH調整なしで製造されるが、任意選択的に、同時にpH調整しながら調製することができる(下記)。
【0098】
水性調製物のpHは、特定の態様において、それ相応に調整する(上昇させるまたは低下させる)ことができる。例えば、POClを架橋剤として使用するような場合などは、pHを約8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、8~12、9~12、10~12、8~11.5、9~11.5、もしくは10~11.5に上げるために塩基(例えば、水酸化ナトリウム[NaOH])を加えることができる。pH調整された調製物は、任意選択的に、少なくとも約10、15、20、25、30、45もしくは60分間、好ましくはかき混ぜながら、インキュベートすることができる、および/または上に列挙されたような温度においてであり得る。pHの調整は、一般に、架橋剤の添加前に行われるが、任意選択的に、添加と同時に行うことができる(下記)。いくつかの態様におけるpHの上昇は、グラフトコポリマーを部分的にまたは完全に溶解させることができる。
【0099】
架橋剤(例えば、水性条件において溶解することができる本明細書に開示されるような任意のもの)は、典型的にはpH調整後に、調製物に溶解する。結果として生じた調製物中の架橋剤の濃度は、例えば、約、または少なくとも約0.2、0.4、0.5、1、1.5、1.6、1.7、2、4、6、8、10、0.5~2、1~2、1.5~2、または1.5~1.7重量%であり得る(そのような重量%は、必要に応じて、非水性反応にも同様に適用することができる)。かき混ぜ(例えば、振盪または攪拌)は、典型的には、架橋剤を溶解させる間ずっと適用される。この調製物は、典型的には、少なくとも約0.25、0.50、1、2、3、4、もしくは5時間、好ましくはかき混ぜながら、インキュベートされる、および/または上に列挙されたような温度においてである。
【0100】
架橋反応は、pH調整される場合、完了時に任意選択的に中和する(例えば、pHが上昇した場合にはHClを使用して)、または反応の架橋グラフトコポリマー生成物を単離しながら中和することができる。中和は、典型的には、pHを約7.0(例えば、6.0~8.0、6.5~7.5、6.8~7.2)にする。
【0101】
架橋反応を行うための前述の条件/パラメータは、例えば、用いられているクロスリンカーのタイプ次第で、それ相応に調節することができる。
【0102】
本明細書での架橋反応において生成した架橋グラフトコポリマーは、任意選択的に、単離することができる。例えば、架橋生成物は、反応/ポスト反応液体から濾過もしくは遠心分離(または固形分からの液体の除去のために当技術分野で公知の任意の他の方法)によって分離することができる。単離は、任意選択的に、架橋生成物を1回、2回、もしくはそれ以上、水もしくは他の水性液体で洗浄すること、および/または生成物を乾燥させることをさらに含むことができる。いくつかの態様における洗浄は、洗浄された生成物中に塩(例えば、NaCl)を全く検出できないように行うことができる。いくつかの態様における乾燥は、真空乾燥、風乾、または凍結乾燥などの、当技術分野で公知の任意の方法を用いて行うことができる。乾燥は、任意選択的に、少なくとも約70、80、90、または70~90℃の温度で行うことができる。乾燥生成物は、破砕および/またはすり潰しによってなど、必要に応じて、微粒子形態にすることができる。
【0103】
本明細書での架橋反応の架橋グラフトコポリマー生成物のパーセント収率は、例えば、約、または少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%であり得る。架橋グラフトコポリマーのパーセント収率は、例えば、理論的生成物収量で実際の生成物収量を割り、100%を乗じることによって求めることができる。
【0104】
本明細書での組成物に含まれるような架橋グラフトコポリマーは、水性液体を吸収することができる。水性液体は、例えば水であり得る。特定の態様における水性液体は、塩溶液(生理食塩水)などの、水溶液であり得る。塩溶液は、任意選択的に、約、またはは少なくとも約0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.25、0.5、0.75、0.9、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.5、3.0、0.5~1.5、0.5~1.25、0.5~1.0、0.75~1.5、0.75~1.25、または0.75~1.0重量%の塩を含むことができる(そのような重量%値は、典型的には、1種もしくは複数種の塩の総濃度を意味する)。本明細書での水溶液に使用することができる塩の例としては、1種もしくは複数種のナトリウム塩(例えば、NaCl、NaSO)が挙げられる。塩の他の非限定的な例としては、(i)アルミニウム、アンモニウム、バリウム、カルシウム、クロム(IIもしくはIII)、銅(IもしくはII)、鉄(IIもしくはIII)、水素、鉛(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(IIもしくはIII)、水銀(IもしくはII)、カリウム、銀、ナトリウム ストロンチウム、スズ(IIもしくはIV)、または亜鉛カチオンと、(ii)酢酸塩、ホウ酸塩、臭素酸塩、臭化物、炭酸塩、塩素酸塩、塩化物、亜塩素酸塩、クロム酸塩、シアナミド、シアン化物、重クロム酸塩、リン酸二水素、フェリシアン化物、フェロシアン化物、フッ化物、炭酸水素、リン酸水素、硫酸水素、硫化水素、亜硫酸水素、水素化物、水酸化物、次亜塩素酸塩、ヨウ素酸塩、ヨウ化物、硝酸塩、窒化物、亜硝酸塩、シュウ酸塩、酸化物、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、過酸化物、リン酸塩、リン化物、亜リン酸塩、ケイ酸塩、スズ酸塩、亜スズ酸塩、硫酸塩、硫化物、亜硫酸塩、酒石酸塩、またはチオシアン酸塩アニオンとを有するものが挙げられる。したがって、例えば、上記の(i)からのカチオンと、上記の(ii)からのアニオンとを有する任意の塩が、本開示の水性液体中に存在することができる。
【0105】
本明細書での組成物に含まれるような架橋グラフトコポリマーによる水性液体の吸収は、例えば、架橋グラフトコポリマーの水保持値(WRV)を測定することによって評価することができる。本明細書でのWRVは、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2016/0175811号明細書(例えば、その中の実施例7)に開示される方法論によってなどの、当技術分野で公知の任意の手法によって測定することができる。簡潔に言えば、WRVは、次式:((湿潤架橋グラフトコポリマーの質量-乾燥架橋グラフトコポリマーの質量)/乾燥架橋グラフトコポリマーの質量)×100
を用いて算出することがでる。WRVは、例えば、本開示の任意の水性液体に関して測定することができる。このように、用語WRVは「水」という単語を含むが、WRVは、水溶液などの、本開示の任意のタイプの水性液体に関して測定できることが理解されるであろう。
【0106】
本明細書での組成物に含まれるような架橋グラフトコポリマーは、いつくかの実施形態において約、または少なくとも約400のWRVを有することができる。例えば、本明細書でのWRVは、約、または少なくとも約400、500、600、700、800、900、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、または3300であり得る。
【0107】
本明細書での組成物に含まれるような架橋グラフトコポリマーによる水性液体の吸収は、任意選択的に、例えば、下記の実施例8にまたは米国特許第8859758号明細書(参照により本明細書に援用される)に開示されるような遠心分離保持容量(CRC)を測定することによって評価することができる。本明細書でのCRC値は、架橋グラフトコポリマーのグラム当たりの水性流体のグラム(「g/g」)を単位として提供することができる。架橋グラフトコポリマーは、いくつかの実施形態において、約、または少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、28~33、28~32、20~25、21~24、または22~24g/gのCRCを有することができる。対応するWRVは、必要に応じて、CRC測定値に100を乗じることによって得ることができる。その上さらに、本明細書での吸収は、任意選択的に、両方とも参照により本明細書に援用される、米国特許第8859758号明細書またはEDANA(European Disposables and Non-woven Association)標準試験WSP 242.2.R3(12)に開示される方法論によってなどの、荷重吸収(AUL)を測定することによって評価することができる。AUL測定値は、架橋グラフトコポリマーのグラム当たりの水性流体のグラム(「g/g」)を単位として提供することができ、好適な圧力(例えば、約0.5~1.0、0.75~1.0、0.80~0.85、または0.82のpsi)下で測定することができる。
【0108】
架橋グラフトコポリマーの吸収性は、ほとんどのまたはあらゆる面で、架橋グラフトコポリマーを形成するために架橋される前にそれが存在したようなグラフトコポリマーの吸収性よりも大きいと考えられる。例えば、架橋グラフトコポリマーの吸収性は、架橋される前にそれが存在したようなグラフトコポリマーの吸収性よりも少なくとも約2、3、4、5、6、7、または8倍大きいものであり得る。
【0109】
本明細書での吸収は、任意選択的に、一定量の架橋グラフトコポリマー中へ浸み込み、コポリマーによって保持されることができる水性液体の最大量の観点から特徴付けることができる。架橋グラフトコポリマーの1g当たり少なくとも15、20または15~20g(グラム)の水性液体の吸収容量を持った架橋グラフトコポリマーは、いくつかの態様において超吸水性であると特徴付けることができる。
【0110】
本開示の架橋グラフトコポリマーを含む組成物は、例えば、パーソナルケア製品、家庭用製品、医療用品、もしくは工業製品の形態にあり得るか、またはそれら内に含まれることができる。これに関連して、特定の実施形態における組成物は、構成要素の架橋グラフトコポリマーによって示される吸収度に応じて、吸収材または超吸収材として使用することができる。本明細書でのパーソナルケア製品、家庭用製品、医療用品、または工業製品は、任意選択的に、少なくとも一部分において、水性液体吸収を取り扱うために設計される。
【0111】
本明細書でのパーソナルケア製品および/または使用の例としては、赤ちゃん用おむつ、トイレトレーニングおむつ/ライナー、失禁用品(例えば、パッド、大人用おむつ)、および女性用衛生用品(例えば、生理用ナプキン/パッド、タンポン、陰唇間製品、パンティーライナー)などの吸収性個人用衛生製品が挙げられる。したがって、いくつかの態様におけるパーソナルケア製品は、身体から排出されたまたは発せられた流体を吸収するおよび含有するために皮膚に接触してまたは皮膚近くに置くことができるパーソナルケア吸収性物品と特徴付けることができる。本明細書での架橋グラフトコポリマーの吸収性をうまく利用するためにそれ相応に適応させる(例えば、製品中の元々使用された吸収材を取り替えるまたは補完する)ことができるパーソナルケア製品の例は、国際公開第1999/037261号パンフレット;米国特許出願公開第2004/0167491号明細書、同第2009/0204091号明細書、同第2001/0014797号明細書、同第2013/0281949号明細書、同第2002/0087138号明細書、同第2010/0241098号明細書、同第2011/0137277号明細書および同第2007/0287971号明細書;ならびに米国特許第4623339号明細書、同第2627858号明細書、同第3585998号明細書、同第3964486号明細書、同第6579273号明細書、同第6183456号明細書、同第5820619号明細書、同第4846824号明細書、同第4397644号明細書、同第4079739号明細書、同第8987543号明細書、同第4781713号明細書、同第5462539号明細書、同第8912383号明細書、同第3749094号明細書、同第3322123号明細書、同第4762521号明細書および同第5342343号明細書に開示されており、それらの特許出願および特許公報の全ては、参照により本明細書に援用される。
【0112】
本明細書での工業製品および/または使用の例としては、ケーブルラッピング(例えば、電力ケーブルまたは通信ケーブル用のラッピング);食品パッド;土壌に水を保持するためのおよび/または植物根に放水するためのなどの農業および林業用途;消火装置;並びに酸性水溶液または塩基性水溶液のこぼれの浄化が挙げられる。本明細書での架橋グラフトコポリマーの吸収性をうまく利用するためにそれ相応に適応させることができる工業製品の例は、米国特許出願公開第2002/0147483号明細書、同第2006/0172048号明細書、同第20050008737号明細書、同第2008/0199577号明細書、同第2012/0328723号明細書および同第2004/0074271号明細書;ならびに米国特許第5906952号明細書、同第7567739号明細書、同第5176930号明細書、同第6695138号明細書、同第4865855号明細書、同第7459501号明細書、同第5456733号明細書、同第9089730号明細書、同第5849210号明細書、同第7670513号明細書、同第7670513号明細書、同第5683813号明細書、同第5342543号明細書、同第4840734号明細書および同第4894179号明細書に開示されており、それらの特許出願および特許公報の全ては、参照により本明細書に援用される。
【0113】
本明細書での医療用品および/または使用の例としては、包帯および外科パッドなどの創傷治癒帯;病院ベッド用シーツ;生理用ナプキン;制御された薬剤放出デバイス;細胞固定化島(cell immobilization islets);三次元細胞培養基質;再生医療用の生物活性スカフォード(bioactive scaffolds);胃バルキングデバイス(stomach bulking devices);ならびに規制医薬品の廃棄が挙げられる。本明細書での架橋グラフトコポリマーの吸収性をうまく利用するためにそれ相応に適応させることができる医療用品の例は、国際公開第1998/046159号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0256486号明細書、同第20030070232号明細書および同第20040128764号明細書;ならびに米国特許第6191341号明細書、同第7732657号明細書、同第4925453号明細書、同第9161860号明細書、同第3187747号明細書および同第5701617号明細書に開示されており、それらの特許出願および特許公報の全ては、参照により本明細書に援用される。
【0114】
本明細書でのいくつかの実施形態におけるパーソナルケア製品、家庭用製品、および/または医療用品は、尿、血液、血清、液状糞便物(例えば、下痢)、胆汁、胃酸/胃液、嘔吐物、羊水、母乳、脳脊髄液、滲出液、リンパ液、粘液(例えば、鼻漏、痰)、腹水、胸膜液、膿汁、カタル性分泌物、唾液、喀痰、滑液、汗、および/または涙などの体液を吸収することができる。
【0115】
本開示の組成物は、例えば、約、または少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99、99.5、または99.9重量%の本明細書での1種もしくは複数種の架橋グラフトコポリマーを含むことができる。特定の態様における乾燥組成物は、粉末、顆粒、マイクロカプセル、フレークの形態に、または粒状物質の他の任意の形態にあり得る。他の例としては、ペレット、棒、カーネル、ビーズ、タブレット、スティック、または他の凝集体などのより大きい組成物が挙げられる。本明細書での乾燥組成物は、典型的には、3、2、1、0.5、または0.1重量%未満のその中に含まれる水を有する。
【0116】
少なくとも、本明細書での架橋グラフトコポリマーを、水性液体を含む組成物と接触させることを含む吸収方法であって、組成物が液体を含む組成物から水性液体を吸収する方法がここで開示される。水性液体を含む組成物は、本明細書に開示されるような任意のものであり得る。例えば、そのような組成物は、尿、血液、血清、液状糞便物、胆汁、胃酸/胃液、嘔吐物、羊水、母乳、脳脊髄液、滲出液、リンパ液、粘液、腹水、胸膜液、膿汁、カタル性分泌物、唾液、喀痰、滑液、汗、涙、水、または生理食塩水であり得る。
【0117】
特定の代わりの実施形態において、組成物は、架橋されている巨大デキストラン(非常に高い分子量のデキストラン)を含むことができる。グラフトコポリマーの架橋について本明細書に開示される条件のほとんどまたは全ては、上に、下記の実施例に、および参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2016/0122445号明細書に開示されるような任意の巨大デキストラン(本明細書でのグラフトコポリマーに既に含まれていないもの)を架橋するために適用することができる。架橋巨大デキストランは、任意の水性液体吸収用途(例えば、超吸収材)または本明細書に開示される方法に使用することができるとまた考えられる。それ相応に、グラフトコポリマーの架橋に関する本開示の特徴のいずれかは、当業者によって好適と考えられる限りにおいて、巨大デキストランが架橋され、利用される実施形態を同様に特徴付けることができる。例えば、当業者によって好適と考えられる限りにおいて、本開示で用いられるような用語「グラフトコポリマー」は、任意選択的に、用語「巨大デキストラン」または「非常に高い分子量のデキストラン」で置き換えることができる。本明細書での架橋巨大デキストラン入りの組成物は、典型的には、架橋グラフトコポリマーを含むものとは無関係であるが、本明細書でのいくつかの実施形態は、両タイプの架橋材料(すなわち、架橋巨大デキストランおよび架橋グラフトコポリマー)を含む組成物に達する。
【0118】
本明細書に開示される組成物および方法の非限定的な例としては、下記が挙げられる:
1.架橋グラフトコポリマーを含む組成物であって、架橋グラフトコポリマーのグラフトコポリマー部分が、(i)デキストランを含む主鎖と、(ii)少なくとも約50%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカン側鎖とを含む組成物。
2.架橋グラフトコポリマーの1つもしくは複数の架橋が共有結合である、実施形態1に記載の組成物。
3.架橋グラフトコポリマーの1つもしくは複数の架橋がリンを含む、実施形態1または2に記載の組成物。
4.架橋グラフトコポリマーの1つもしくは複数の架橋がホスホジエステル結合を含む、実施形態3に記載の組成物。
5.架橋グラフトコポリマーのグラフトコポリマー部分が、少なくとも約50重量%のデキストランを含む、実施形態1、2、3、または4に記載の組成物。
6.デキストランが、少なくとも約100000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有する、実施形態1、2、3、4、または5に記載の組成物。
7.ポリα-1,3-グルカン側鎖が、少なくとも約95%のα-1,3-グルコシド結合を含む、実施形態1、2、3、4、5、または6に記載の組成物。
8.1つもしくは複数の個々のポリα-1,3-グルカン側鎖のMwが、少なくとも約100000ダルトンである、実施形態1、2、3、4、5、6、または7に記載の組成物。
9.デキストランが、(i)1位および6位で連結した約87~93重量%のグルコース;(ii)1位および3位で連結した約0.1~1.2重量%のグルコース;(iii)1位および4位で連結した約0.1~0.7重量%のグルコース;(iv)1位、3位および6位で連結した約7.7~8.6重量%のグルコース;ならびに(v)(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位で連結した約0.4~1.7重量%のグルコースを含み、デキストランのMwが約5000万~2億ダルトンである、実施形態1、2、3、4、5、6、7、または8に記載の組成物。
10.デキストランのMwが、少なくとも約1億ダルトンである、実施形態9に記載の組成物。
11.架橋グラフトコポリマーが、架橋グラフトコポリマーの1グラム(g)当たり少なくとも約6グラム(g)の水性流体の遠心分離保持容量(CRC)を有する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10に記載の組成物。
12.架橋グラフトコポリマーが、グラフトコポリマー部分を架橋剤および溶媒と接触させることによって製造され、任意選択的に、架橋剤が塩化ホスホリルを含み、および/または溶媒が水性溶媒である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11に記載の組成物。
13.組成物が、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品、医療用品、または工業製品である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12に記載の組成物。
14.架橋グラフトコポリマー(実施形態1~13のいずれか1つにおけるなどの)の製造方法であって、この方法が、(a)少なくとも溶媒と、架橋剤と、グラフトコポリマー(ここで、このグラフトコポリマーは、(i)デキストランを含む主鎖と、(ii)少なくとも約50%のα-1,3-グルコシド結合を含むポリα-1,3-グルカン側鎖とを含む)とを接触させ、それによって架橋グラフトコポリマーが生成する工程と;(b)任意選択的に、工程(a)において生成した架橋グラフトコポリマーを単離する工程とを含む方法。
15.溶媒が水性である、実施形態14に記載の方法。
16.架橋デキストランを含む組成物であって、デキストランが:(i)1位および6位で連結した約87~93重量%のグルコース;(ii)1位および3位で連結した約0.1~1.2重量%のグルコース;(iii)1位および4位で連結した約0.1~0.7重量%のグルコース;(iv)1位、3位および6位で連結した約7.7~8.6重量%のグルコース;ならびに(v)(a)1位、2位および6位、または(b)1位、4位および6位で連結した約0.4~1.7重量%のグルコースを含み;デキストランの重量平均分子量(Mw)が約5000万~2億ダルトンである組成物。
17.架橋デキストランの1つもしくは複数の架橋が共有結合である、実施形態16に記載の組成物。
18.架橋デキストランの1つもしくは複数の架橋がリンを含む、実施形態16または17に記載の組成物。
19.架橋デキストランの1つもしくは複数の架橋がホスホジエステルを含む、実施形態18に記載の組成物。
20.デキストランが少なくとも約1億ダルトンのMwを有する、実施形態16、17、18、または19に記載の組成物。
21.架橋デキストランが、架橋グラフトコポリマーの1g当たり少なくとも約6gの水性流体の遠心分離保持容量(CRC)を有する、実施形態16、17、18、19、または20に記載の組成物。
22.架橋デキストランが、デキストランを架橋剤および溶媒と接触させることによって製造され、任意選択的に架橋剤が塩化ホスホリルを含み、および/または溶媒が水性溶媒である、実施形態16、17、18、19、20、または21に記載の組成物。
23.組成物が、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品、医療用品、または工業製品である、実施形態16、17、18、19、20、21、または22に記載の組成物。
24.架橋デキストラン(実施形態16~23のいずれか1つにおけるなどの)の製造方法であって、この方法が、(a)少なくとも溶媒と、架橋剤と、実施形態16に記載のデキストランとを接触させ、それによって架橋デキストランが生成する工程と;(b)任意選択的に、工程(a)において生成した架橋デキストランを単離する工程とを含む方法。
25.溶媒が水性である、実施形態24に記載の方法。
【実施例
【0119】
本開示は、以下の実施例においてさらに例証される。これらの実施例は、本明細書での特定の好ましい態様を示しているが、単に例証の目的でのみ示されていると理解されるべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は、開示された実施形態の本質的な特徴を確認することができ、それらの趣旨および範囲を逸脱することなく、開示された実施形態を様々な使用および条件に適合させるために様々な変更および修正を行うことができる。
【0120】
実施例1
高分子量のデキストランプライマーからのポリα-1,3-グルカン合成
本実施例は、重量平均分子量が高い(平均150kDa)市販のデキストランをプライマーとして使用する、グルコシルトランスフェラーゼ酵素でのポリα-1,3-グルカンの合成を記載する。デキストラン主鎖とポリα-1,3-グルカン側鎖とを含むグラフトコポリマーを製造した。
【0121】
水と、スクロース(約100g/L)と、デキストランと、全てのまたはほとんど全てのα-1,3-グルコシド結合のポリα-1,3-グルカンを合成するストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)系のグルコシルトランスフェラーゼ酵素とを含む反応(AおよびB)で、2つの別個のポリα-1,3-グルカン重合を行った。そのような反応に使用することができるグルコシルトランスフェラーゼの例としては、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2014/0087431号明細書に開示されるもの(例えば、その中の配列番号4または8)が挙げられる。
【0122】
940g(グラム)のDI(脱イオン)水、100gのスクロース(OmniPur Calbiochem 8550;Lot VF20C;FW 342.30)、および1.36gのモノリン酸カリウム(MW 136.09;Sigma P5379)を混合することによって、反応物AおよびBのそれぞれを調製した。導電率計を用いてpHが5.6であると測定し、2、3滴の1NのHSOを使用して5.54まで下方へ調整した。HPLC時点ゼロ(デキストランの添加前)のために、1mLの試料を採取した。次に、5gおよび10gの150kDa(平均)デキストラン(Sigma D4876)を、それぞれ、反応物Aおよび反応物Bに加えた。500mLの各反応物を個々のフラスコにロードした。
【0123】
各反応物を約190RPMで混合して、加えたデキストランを溶解させた後に、時点ゼロ(デキストランの添加後)分析のために、1mLのHPLC試料を各反応物から採取した。25℃に設定された循環加熱器/冷却器中に各反応物を置き、150rpmで撹拌を開始した。反応物を温度(約24.4℃)まで到達させて、酵素添加の前に約45分間撹拌した。次に、50Uのグルコシルトランスフェラーゼ酵素をそれぞれの反応物に加えた。
【0124】
2時間およびそれぞれの反応の終わり(24時間)に、反応物AおよびBのそれぞれからの濾液試料(すなわち、不溶性生成物から分離された液体)(1mL)をHPLCのために採取した。試料を、10分間90℃で加熱急冷することによってHPLCのために不活性化した。試料を0.45μmのPTFEフィルターを通して濾過し、HPLC分析のために希釈した。
【0125】
反応物Bの2時間試料および24時間試料を除いて、全ての時点の濾液試料について、2つの同一の希釈を行った。試料A2時間、試料B2時間、および試料B24時間は全て、0.45μmのPTFEフィルターを通して濾過するのが非常に困難であった。試料を全て様々なHPLCカラムで重複してランさせた。
【0126】
全反応試料(50ml)を反応物AおよびBのそれぞれから2時間で採取し、プラスチック使い捨てフィルターを通してできるだけ乾燥状態に吸引濾過した。不溶性生成物を50mLの熱水で2回洗浄する前に、濾液を取り出し、別々に保存した。不溶性ポリマー試料をガラスバイアルに保存し、10℃で保管し、その後サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析して見かけのDP(重合度)、真のDP、見かけのIV(固有粘度)、および真のIVを測定した。各2時間試料からの過剰の不溶性ポリマーを60℃の真空オーブン中で窒素下に3日間乾燥させ、秤量してパーセント固形分を求めた。
【0127】
吸引で合成されたポリマーから濾液を引き抜くことは、予期したよりも時間がかかり、濾液中での不溶性ポリマーの連続生成に関連していると思われ、濾液は、スクロースおよびグルコシルトランスフェラーゼ酵素を依然として含有した。一旦、濾液を全て収集すると、1mLの試料を採取し、HPLCのために不活性化し(上記を参照されたい)、一方、残りを70~80℃の水浴中で15分間不活性化し、冷却させ、次に濾過して不溶性ポリマー生成物を除去した。
【0128】
次に濾液を、透析チューブ(14kDaの分子量カットオフ[MWCO])に入れ、流水中で2日間透析して単糖類(フルクトース、グルコース)およびオリゴマー(DP2~7)を除去した。透析中に多少の小さい固形分が形成されるので、内容物を先ず濾過し、次に回転蒸発させて(ロトバップさせて(rotovapped))液体濃縮物にし、その濃縮物を液体窒素中で凍結させた。次に、凍結濃縮物を2日~3日間凍結乾燥し、その後乾燥固形分を秤量して、SECによって分析した。
【0129】
24時間後に、反応物AおよびBのそれぞれ中に生じたポリマー生成物スラリーを吸引濾過した。各濾液を別々に保存し、HPLC試料を採取した。ポリマーを500mLの蒸留水(室温)で2回洗浄し、その後全ての水を吸引除去し、ウェットケーキを残した。ウェットケーキを秤量し、それの試料をSEC分析のために採取した。ウェットケーキ試料(約5~6g)をオーブン乾燥させ(60℃、3日間)、初期ウェットケーキ重量を基準として総不溶性ポリマー生成物収量を算出した。残存ポリマーウェットケーキを後の分析のために凍結させた。残存濾液を90℃の水浴中で15分間不活性化し、上記のように流水で2日間透析した。透析物を濾過し、約80mLまでロトバップし、凍結乾燥させ、秤量し、SECに供した。HPLC分析によれば、単糖およびオリゴマー(DP2~7)生成は、正常であり、重合Aと重合Bとの間で類似していた。室温で10分間、DMSO/2%のLiCl中で振盪することによって、SEC分析のためにウェットケーキ試料を溶解させた。
【0130】
反応物AおよびBの濾液および不溶性生成物の様々な態様を以下の表1~4に提供する。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
各反応に使用された出発デキストランのSEC分析は、それが分岐していることを示した。デキストランの約20のモノマー単位毎に出発デキストランから分岐するペンダントグルコースが存在すると推測された。各重合反応(24時間)は、高いDPw:反応A(10g/Lのデキストランローディング)については約6000および反応B(20g/Lのデキストランローディング)については約5000の水不溶性ポリマーを与えた(表4)。ポリα-1,3-グルカン鎖は、デキストラン分岐点から伸長し、グラフトコポリマーを形成する(図1および2を参照されたい)。
【0136】
デキストラナーゼ劣化分析は、ポリα-1,3-グルカン側鎖がそれぞれ、ほぼ1000のDPwを有することを示した。簡潔に言えば、緩衝反応(pH5.3~5.7、室温、章動(nutation))において、デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー生成物をデキストラナーゼと約4日間、個々に反応させることによって、デキストラナーゼアッセイを行った。
【0137】
したがって、出発デキストランが約1500の測定DPwを有し(表3)、そして各側鎖が約1000のDPwであったことを考慮すると、各デキストランに平均約4~5つのポリα-1,3-グルカン鎖が存在している可能性がある。この観察に基づいて、デキストランのペンダントグルコース単位のほんのわずかだけが、ポリα-1,3-グルカン側鎖合成をプライムするのに役立ったように思われる(すなわち、デキストランの20モノマー単位毎のペンダントグルコース基の存在を考慮すると、約75[20で割られたDPw1507]の側鎖を有することが可能であり得たのに対して、約4~5つの側鎖だけが存在したようである)。
【0138】
24時間反応の濾液試料中に回収されたデキストランの分子量は、出発デキストランの分子量と比較すると、低かった(表3)。1つの仮説は、反応においてグルコシルトランスフェラーゼ酵素によってデキストランが劣化した可能性があることであるが、これは、そうではないことが分かった(実施例3を参照されたい)。したがって、より高分子量のデキストランがポリα-1,3-グルカン側鎖合成をプライムするための基質として優先的に使用される状態で、デキストランが反応中に効果的に分画されたと思われた。このシナリオに従えば、不溶性グラフトコポリマーの合成をプライムするために使用されるより大きいデキストラン分子が可溶性プールから除去されて、反応濾液中により小さいデキストラン分子を後に残す。デキストランの分子量がグルコシルトランスフェラーゼ酵素による1,3-グルコシド結合を含むグルカン合成のデキストランプライミングに役割を果たさないと提案する他の研究(国際公開第15/119859号パンフレット)を考慮するととりわけ、この観察は、興味をそそるものである。
【0139】
こうして、デキストラン主鎖とポリα-1,3-グルカン側鎖とを含むグラフトコポリマーが製造された。これらのグラフトコポリマーのそれぞれは、例えば、下記の実施例8に開示される手順に従って任意選択的に架橋することができる。比較的少ない側鎖(4~5つ)が存在したことは、理論的に、合成された少なくとも10~15倍以上の側鎖が存在し得たことを考えると、潜在的に興味がある。同様に、このグラフトコポリマーを調製するための反応において、大部分はα-1,3-グルコシド結合を含むグルカンを合成するグルコシルトランスフェラーゼによって、高分子量のデキストランは、より低分子量のデキストランとは対照的に、基質として優先的に使用されると思われる。
【0140】
実施例2
グルコシルトランスフェラーゼ酵素反応のデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー生成物の分子量および多分散性の制御
本実施例は、例えば、グルコシルトランスフェラーゼ酵素反応に携わるデキストランの濃度を修正することによって、デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー生成物の分子量および多分散性を制御できることを、実施例1に加えて共に例証するものである。
【0141】
一般に、下記の場合を除いて、実施例1に記載された手順を適用してデキストラン-ポリα-1,3-グルカンコポリマーを合成し、分析した。
【0142】
簡潔に言えば、100g/Lのスクロースと、全てのまたはほとんど全てのα-1,3-グルコシド結合のポリα-1,3-グルカンを合成する100U/LのS.サリバリウス(S.salivarius)系のグルコシルトランスフェラーゼ酵素とを使って150rpmで撹拌しながら、約25℃で、2つの500mLのグルカン合成反応を行った。これらの反応をセットアップするために、100gのスクロース(OmniPur Calbiochem 8550)および1.36gのモノリン酸カリウム(Sigma P5379)を940gの水道水に溶解させ、NaOHでpH5.5に調整した。1mLの試料(t=0)をHPLC分析のために採取し、その後溶液を2つの500mL部分に分けた。反応物AおよびB用のフラスコに、それぞれ、500mLのスクロース溶液と、それぞれ、1.25gまたは2.5gの150kDa(平均)デキストラン(Sigma D4876)とを装入した。HPLC(t=0)試料を採取し、その後グルコシルトランスフェラーゼ酵素を加えた。
【0143】
酵素添加の2時間後に、反応物AおよびBのそれぞれから、50mLの試料(反応溶液および不溶性生成物)を採取し、吸引濾過した。濾液を保存し;各濾液の1mLをHPLC(t=2時間)のために取った。不溶性ポリマー生成物を50mLの熱水で2回洗浄し、SECによって分析した。濾液を80℃の水浴中で15分間不活性化し、再濾過し、流水中で18日間透析して(14kDaのMWCO)、単糖類(フルクトース、グルコース)およびオリゴマー(DP2~7)を除去した。
【0144】
酵素添加の24時間後に、反応物AおよびBのそれぞれ中に生じたポリマー生成物スラリーを循環浴中で65℃まで加熱し、1時間撹拌して酵素を不活性化した。次に、スラリーを吸引濾過し;各濾液を保存し、1mLの試料(t=24時間)をHPLC分析のために採取した。ポリマーを洗浄し、その後全ての水を吸引除去し、ウェットケーキを残した。ウェットケーキを秤量し、それの試料をSEC分析のために採取した。ウェットケーキ試料をオーブン乾燥させ(60℃、3日間)、初期ウェットケーキの重量を基準として総不溶性ポリマー生成物収量を算出した。残存ポリマーウェットケーキを後の分析のために凍結させた。濾液を上記のように流水中で17日間透析した。透析物を濾過し、約80mLまでロトバップし、凍結乾燥させ、秤量し、SECに供した。HPLC分析によれば、単糖およびオリゴマー(DP2~7)生成は、正常であり、重合Aと重合Bとの間で類似していた。
【0145】
本実施例の反応物AおよびBの濾液および不溶性生成物の様々な態様を以下の表5~7に提供する。
【0146】
【表5】
【0147】
【表6】
【0148】
【表7】
【0149】
本実施例における24時間後の各重合反応は、約7500の高いDPwの水不溶性ポリマーを生成した(表7)。不溶性ポリマー生成物の多分散性(Mw/Mn)は、とりわけ出発デキストランがより少ない反応物について、比較的高く(表7)、デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーに加えてポリα-1,3-グルカンホモポリマーが不溶性生成物中に存在することを示した。そのような結果は、デキストランが不足する系において予期されることであり;実際に、出発デキストラン量がより高い反応物(実施例1)は、多分散性が低い生成物をもたらした(表7)。したがって、本明細書で生成するデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの多分散性は、グルコシルトランスフェラーゼ反応に携わるデキストランの濃度の関数として制御できると思われる。
【0150】
図3は、出発デキストランのほとんどが消費された24時間反応物について、出発デキストラン濃度と形成されたデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー生成物のDPwとの関係を示す。ポリα-1,3-グルカンだけの単独重合は、低いデキストラン濃度でプライムするデキストランと競合するが、デキストラン鎖のそれぞれは、より高いデキストラン濃度でより少ないグルカングラフトを得る。最大グラフトコポリマー分子量は、100g/Lのスクロースおよび100U/Lのグルコシルトランスフェラーゼ酵素を有する反応において5g/Lのデキストランを使用する場合に生成するように思われる(図3、表7)。したがって、本明細書で生成するデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの分子量は、グルコシルトランスフェラーゼ反応に携わるデキストランの濃度の関数として制御することができると思われる。
【0151】
こうして、デキストラン主鎖とポリα-1,3-グルカン側鎖とを含むグラフトコポリマーが製造された。これらのグラフトコポリマーのそれぞれは、例えば、下記の実施例8に開示される手順に従って任意選択的に架橋することができる。同様に、デキストラン-ポリα-1,3-グルカンコポリマー生成物の分子量および多分散性は、グルコシルトランスフェラーゼ酵素反応に携わるデキストランの濃度を修正することによって制御することができる。
【0152】
実施例3
グルコシルトランスフェラーゼ酵素活性はデキストランを劣化させない
本実施例は、デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーを合成するために実施例1および2で使用されたグルコシルトランスフェラーゼが、デキストランを劣化させないことを例証する。それ故、上記の反応で観察された見かけのデキストラン分画効果(partitioning effect)は、グルコシルトランスフェラーゼ活性によるデキストラン劣化に起因するものではなかった。
実施例1に記載されたように、グルコシルトランスフェラーゼ酵素でのポリα-1,3-グルカン合成が、デキストランでプライムされる場合、回収された未反応のデキストランは、反応に初めに使用されたデキストランよりもかなり低い分子量を有する。デキストランが、グルコシルトランスフェラーゼ反応において効果的に分画されたかどうか-より大きいデキストラン鎖と優先的に反応して不溶性デキストラン-ポリα-1,3-グルカンコポリマーを形成し、より小さい未反応のデキストラン鎖を反応溶液中に残したかどうか-またはグルコシルトランスフェラーゼ酵素が、デキストランを劣化させることができたかどうかは不明であった。
【0153】
この実験の目的は、標準の反応条件下で、しかしスクロースなしで、実施例1および2に使用されたグルコシルトランスフェラーゼ酵素にデキストランを曝すと、デキストランの劣化をもたらすかどうかを調べることであった。2.5gの150kDa(平均)デキストラン(Sigma D4876)および0.68gのモノリン酸カリウム(Sigma P5379)を490gの水道水に溶解させてpH5.59の溶液を得た。この溶液を反応器中25℃で撹拌し、その後、50Uのグルコシルトランスフェラーゼ酵素を加えた。次に、溶液を150rpmで24時間撹拌し、次に熱水浴でロトバップさせて湿った固形物を残した。固形物を20mLの蒸留水中に取り上げ、結果として生じた濁った溶液を吸引濾過により浄化し;非常に少量(約0.1g)の淡褐色固体を除去した。濾液を凍結乾燥させて2.87gのデキストランを回収し、それをSECによって分析し、出発デキストランと比較した(表8)。
【0154】
【表8】
【0155】
表8における結果は、グルコシルトランスフェラーゼ酵素が、実施例1および2で用いられた反応条件下で(しかし、スクロースなしで)、デキストランを劣化させないことを示す。この結果は、デキストランへのポリα-1,3-グルカングラフト化の酵素プロセスが、上記のように分子量に基づいてデキストランを分画するように効果的に働くことを示す。
【0156】
実施例4
より低い分子量のデキストランからのポリα-1,3-グルカン合成
本実施例は、重量平均分子量が約40kDaの市販のデキストランプライマーを使用するグルコシルトランスフェラーゼ酵素でのポリα-1,3-グルカンの合成を記載する。
【0157】
この実験の目的は、実施例1および2で使用されたデキストランよりも低い分子量を有するデキストランを使用してデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーを合成することであった。この実験に使用されるデキストランは約35~45kDaの分子量を有し、その分子量は、実施例1および2で用いられたデキストランの分子量よりもほぼ4分の1未満である。
【0158】
1000mLのポリα-1,3-グルカンの重合反応を次の通り行った。スクロース(100g;OmniPur Calbiochem 8550)、デキストラン(10g、35~45kDa、DPw=220~280、Sigma D1662)およびモノリン酸カリウム(1.36g、Sigma P5379)を940gの水道水に溶解させてpH5.67を得た。次に、25℃/150rpmでの撹拌を開始し、その後上記の実施例で使用された100Uのグルコシルトランスフェラーゼを加え;25℃/150rpmでの撹拌を24時間続けた。1.5時間後に、50mLの不溶性生成物試料を吸引濾過し、洗浄し、吸引して湿ったウェットケーキ(8.7g)にし、SEC分析に供した。24時間で、不溶性生成物スラリーを吸引濾過し、500mLの熱水道水で3回洗浄した。全ての水を吸引除去し、ウェットケーキを秤量した(480g)。ウェットケーキ試料をSEC分析およびパーセント固形分測定(7.6重量%)のために採取し、固形分測定は、オーブン乾燥(60℃、3日間)によって行った。全不溶性デキストラン-ポリα-1,3-グルカン生成物収量は、初期ウェットケーキ重量およびパーセント固形分に基づいて算出した。1.5時間および12時間での各不溶性生成物の分子量プロファイルを求めた(表9)。
【0159】
【表9】
【0160】
測定したDPwに基づいて、2つまたは最大でも3つのポリα-1,3-グルカン側鎖が、デキストラン上で合成されたと思われる。この結果は、この実施例で使用されたデキストラン(40kDa)のほぼ4倍大きいデキストラン(150kDa平均、実施例1)が、その上で合成された約4~5つのポリα-1,3-グルカン側鎖を有した(実施例1を参照されたい)ので、興味深いように思われる。2~3つの側鎖が40kDaのデキストラン上で合成できるならば、約8~12つの側鎖(4~5つの代わりに)が、150kDaのデキストラン上で合成されるであろうと予期されてもよかった。
【0161】
本実施例で示されるように、約40kDaのデキストランを使用してポリα-1,3-グルカン側鎖合成をプライムすることができた。この結果は、同じような分子量のデキストランが、より大きいデキストラン分子の存在下でそのような側鎖合成をプライムしなかったことを示す、実施例1を考慮すると注目すべきである。実施例1で観察された分画効果(より大きいデキストランが不溶性生成物の合成をプライムするために優先的に使用され、一方、より小さいデキストランが溶液に残る)は、より小さい分子量のデキストランが、単独の場合に、ポリα-1,3-グルカン側鎖合成をプライムできることを示す本実施例の結果を考慮すると、したがってさらに興味をそそるものである。これらの洞察にもかかわらず、本実施例で製造されたグラフトコポリマーのそれぞれは、例えば、下記の実施例8に開示される手順に従って任意選択的に架橋することができる。
【0162】
実施例5
分子量が非常に高いデキストランプライマーからのポリα-1,3-グルカン重合
本実施例は、重量平均分子量が非常に高い(少なくとも5000万ダルトン)のデキストランを使用するグルコシルトランスフェラーゼ酵素でのポリα-1,3-グルカン合成を記載する。巨大デキストラン主鎖とポリα-1,3-グルカン側鎖とを含むグラフトコポリマーが製造された。
【0163】
分子量が非常に高いデキストラン
重量平均分子量が非常に高いデキストランを先ず、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2016/0122445号明細書(GTF 0768を用いた、その中の実施例9)に記載されているように、しかし(100g/Lのスクロースの代わりに)300g/Lのスクロースを使用して調製した。このデキストランの結合構造は、米国特許出願公開第2016/0122445号明細書(その中の実施例9)に開示される結合構造と一致していると考えられた;表10は、米国特許出願公開第2016/0122445号明細書(その中の実施例9)に開示されるようにDMSOまたはDMSO/5%のLiClに初めに溶解させた試料についての結合を列挙する。
【0164】
【表10】
【0165】
この情報およびいくつかの他の研究(データは示されていない)に基づき、この生成物は、相互に反復して分岐する(平均)長さが約20DPの長鎖(大部分または全てα-1,6-結合を含有する)が存在する(例えば、長鎖が別の長鎖からの分岐であり得、その別の長鎖が順繰りにそれ自体別の長鎖からの分岐であり得る、など)分岐構造であると考えられる。分岐構造はまた、長鎖からの短鎖を含むように思われ;これらの短鎖は、例えば、長さが1~3DPであり、大部分α-1,3結合およびα-1,4結合を含むと考えられる。デキストラン中の分岐点は、別の長鎖から分岐している長鎖からであろうと、または長鎖から分岐している短鎖からであろうと、α-1,6結合に含まれるグルコースからのα-1,3結合、α-1,4結合またはα-1,2結合を含むように思われる。デキストランの全分岐点のほぼ25%は、長鎖へ分岐していた。
【0166】
本実施例で調製されたデキストランの分子量および他のサイズ特性は、米国特許出願公開第2016/0122445号明細書(その中の実施例9)に開示される特性と一致していると考えられ、それらは、次の通りであった:1.022(±0.025)×10g/モル(すなわち、ほぼ1億ダルトン)(MALS分析から)の重量平均分子量(Mw)、243.33(±0.42)nm(MALS分析から)のz平均慣性半径、215nm(QELS分析からの)のz平均流体力学半径、および約0.259(流体力学的サイズの観点からの多分散性を示す、QELS分析からの)の粒度分布(PSD)の標準偏差。この実施例で製造された非常に高い分子量のデキストランは、架橋デキストランを調製するための実施例9で下に記載される手順に任意選択的に使用することができる。
【0167】
非常に高い分子量のデキストランを含むデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー
上で調製された非常に高い重量平均分子量のデキストランを以下の酵素反応に使用してデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーを調製した。
【0168】
100g/Lのスクロース、9.8g/Lのデキストランおよび上記の実施例に使用された100U/Lのグルコシルトランスフェラーゼを使用して、150rpmで撹拌しながら25℃で500mLのポリα-1,3-グルカン合成反応を行った。この反応をセットアップするために、デキストラン(4.9g)を乳鉢および乳棒ですり潰し、50℃で470gの水道水と16時間撹拌して濁った溶液を得た。次に、スクロース(50g、OmniPur Calbiochem 8550)およびモノリン酸カリウム(0.68g、Sigma P5379)を加え、撹拌しながら溶解させてpH5.75を得た。溶液を反応器中25℃で撹拌し、その後グルコシルトランスフェラーゼ酵素(50U)を加えた。約30分で、反応物は、サイズが約5mmの堅い、スポンジ状の粒子の懸濁液になった。
【0169】
2時間で、50mLの試料を反応物から取り出した(ポリマー粒子がピペットを閉塞するので、それほど多くの不溶性生成物は得られなかった)。この試料(懸濁液)を2、3時間放置し、その後それを吸引濾過し、洗浄し、吸引して湿ったウェットケーキ(1.3g)にし、SEC分析に供した。試料は、不活性化されず、酵素活性を弱めなかったので、試料を吸引濾過する前に追加のポリα-1,3-グルカンが生じたようであった。濾液を加熱して濾液中の酵素を不活性化した。反応を24時間続け、その後不溶性生成物スラリーを吸引濾過し;濾液(350mL)を保存し、HPLCによって分析した。
【0170】
100mL/分および10psigで、Millipore PELLICON 2 PLCTK再生セルロースの直交流膜(30kDaカットオフ;0.1m)を横切って循環させることによって、初期濾液を透析した。この透析は、単糖類およびオリゴマーを(透過液によって)除去し、未反応の可溶性デキストランを保持液中に残すのに役立った。脱イオン水を再循環供給原料に連続的に加えて、損失水を透過液に補い;最終的に、単糖類およびオリゴマーを洗い流すために3500mLの水を使用した。次に、保持液を凍結乾燥させて、0.1g未満の未反応のデキストランを回収した。酵素反応におけるほんの少量の可溶性デキストランというこれらの結果は、デキストランの大部分がポリα-1,3-グルカン合成をプライムするために使用され、こうしてデキストランを反応の不溶性生成物にすることを示す。
【0171】
グルコシルトランスフェラーゼ反応の不溶性生成物(デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー)を500mLの熱水道水で3回洗浄し;その生成物は、大部分5mmの粒子および少量の細粒からなった。全ての水を吸引除去し、湿った粒子を秤量し(82.8g;24時間試料);生成物試料をSECおよびパーセント固形分測定のために取った。ウェットケーキ試料(1.105g)をこのためにオーブン乾燥させた(60℃/2日)。単離されたデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーは、約25%のデキストランと75%のポリα-1,3-グルカンとを含んだ。
【0172】
デキストラナーゼの劣化分析(実施例1に記載されたように行った)は、合成されたコポリマーのポリα-1,3-グルカン側鎖がそれぞれ、ほぼ1000のDPwを有することを示した。この側鎖長の分子量推定値は、より低い分子量のデキストラン(実施例1~2)から合成された側鎖について観察されたものと同じものである。
【0173】
こうして、(i)巨大分岐デキストラン主鎖と(ii)ポリα-1,3-グルカン側鎖とを含むグラフトコポリマーが製造された。そのようなグラフトコポリマーは、例えば、下記の実施例8に記載される手順に従って任意選択的に架橋することができる。
【0174】
実施例6
非常に高い分子量のデキストランを含む追加のデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの調製
非常に高い分子量のデキストランを含む追加のデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーを本実施例で調製した。実施例5に記載された非常に高い分子量のデキストランを、これらの追加のグラフトコポリマーを合成するために使用した。
【0175】
8つのグルコシルトランスフェラーゼ(100U/L)反応をセットアップし、概して実施例5に記載されたように、しかし以下の修正ありで行った。反応は、らせん状リボン型撹拌機を用いて150rpmで撹拌される1Lの反応物中25℃で行った。表11は、各反応に携わるデキストランおよびスクロースの量を列挙する。反応のpHは、5.2~5.8であり、非調整のままであった。不溶性生成物試料を反応開始後24時間で採取し;これらの試料を濾過および洗浄によってワーク-アップした。結果として生じたウェットケーキを秤量し、それらの試料を乾燥させてパーセント固形分および収量を求めた。不溶性生成物試料をSECおよびNMRによって分析した。それぞれの反応の結果を表11にまとめる。
【0176】
【表11】
【0177】
総体的に、デキストラン含有量がより高い(例えば、2.4~10.6重量%)グラフトコポリマーは、デキストラン含有量がより低い(例えば、0.9~1.4重量%)それらの相当品と比べて、より大きい粒子として現れ、より容易に濾過された。図4および5は、それぞれ、10.6重量%のデキストランを含有するグラフトコポリマー試料(表11、行1、濾過し易い)と0.9重量%のデキストランを含有するグラフトコポリマー試料(表11、行8、濾過し難い)との写真を示す。
【0178】
もう3つのグルコシルトランスフェラーゼ(100U/L)反応をセットアップし、100g/Lのスクロースおよび2g/L、5g/L、または10g/Lでのデキストランを使用して、概して直上に記載されたように行った。これらの反応(24時間)は、それぞれ、95%、87.5%、または75%のα-1,3グルコシド結合を含むデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーを生成した。この生成物結合プロファイルは、同様の反応条件(初期のスクロースおよびデキストラン濃度)下で製造された、表11の行1および行3に列挙される生成物と一致する(各生成物中のデキストラン構成要素が主にα-1,6-グルコシド結合を表すことに注目されたい)。
【0179】
本実施例で製造されたグラフトコポリマーのそれぞれは、例えば、下記の実施例8に開示される手順に従って任意選択的に架橋することができる。
【0180】
実施例7
非常に高い分子量のデキストランを含む追加のデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの調製
非常に高い分子量のデキストランを含むさらに追加のデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーを本実施例で調製した。
【0181】
プロセス76、77および79として下に記載される、3つの別個の酵素手順に従ってデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの試料を調製した。これらのグラフトコポリマーのそれぞれ中の非常に高い分子量のデキストランの重量百分率は50%超であった。
【0182】
プロセス76
22リットルのかき混ぜられる丸底フラスコに、1978gのスクロース、4831gの脱イオン(DI)水、および5.18gの一塩基性リン酸カリウムを加えた。固形分が溶解した後、pHを6.5に調整した。回分温度が27℃に達したときに、GTF 0768(米国特許出願公開第2016/0122445号明細書)を含有する4.8mLの細胞溶解物を、非常に高い分子量のデキストランの重合を開始させるために加えた。11.8時間後に、反応物を60℃に加熱し、30分間保持してGTF酵素を不活性化した。この調製物に、9930gのDI水および11.8gの一塩基性リン酸カリウムを加えた。pHを5.5に調整し、温度を33℃で安定させた。次に、第2重合(非常に高い分子量のデキストランからのα-1,3-グルカン側鎖の合成のための)を、全てのまたはほとんど全てのα-1,3-グルコシド結合のポリα-1,3-グルカンを合成するS.サリバリウス(S.salivarius)系のグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む42mLの細胞溶解物を加えることによって開始させた。この酵素添加の直後に、56重量%の水性スクロース溶液の供給を、3.0mL/分の速度で開始させた。スクロース溶液を2時間19分間供給した。スクロース添加を停止した後、反応物を23.75時間、攪拌下に33℃に保持した。次に、反応物を60℃に加熱し、30分間保持して第2酵素を不活性化し、それによってデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー生成物の合成を完了した。最終スラリーの重量分析は、3.1%の生成物を測定した。2%の塩化リチウムを含有する重水素化DMSO中で行われたプロトンNMR分析は、グラフトコポリマー生成物が61重量%のデキストランを含有することを示した。
【0183】
プロセス77
22リットルのかき混ぜられる丸底フラスコに、2245gのスクロース、5721gのDI水、および6.05gの一塩基性リン酸カリウムを加えた。固形分が溶解した後、pHを6.5に調整した。回分温度が31℃に達したときに、GTF 0768(米国特許出願公開第2016/0122445号明細書)を含有する5.6mLの細胞溶解物を、非常に高い分子量のデキストランの重合を開始させるために加えた。72.9時間後に、反応物を60℃に加熱し、30分間保持してGTF酵素を不活性化した。この調製物に、9940gのDI水および11.8gの一塩基性リン酸カリウムを加えた。pHを5.5に調整し、温度を33℃で安定させた。第2重合(非常に高い分子量のデキストランからのα-1,3-グルカン側鎖合成のための)を、全てのまたはほとんど全てのα-1,3-グルコシド結合のポリα-1,3-グルカンを合成するS.サリバリウス(S.salivarius)系のグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む42mLの細胞溶解物を加えることによって開始させた。この酵素添加の直後に、56重量%の水性スクロース溶液の供給を、3.0mL/分の速度で開始させた。スクロース溶液を3時間28分間供給した。これは、431gのスクロースを加えたことと同等であった。次に、反応物を60℃に加熱し、15分間保持して第2酵素を不活性化し、それによってデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー生成物の合成を完了した。2%の塩化リチウムを含有する重水素化DMSO中で行われたプロトンNMR分析は、グラフトコポリマー生成物が82重量%のデキストランを含有することを示した。
【0184】
プロセス79
2リットルのかき混ぜられるおよび外套付き樹脂容器に、295gのスクロース、721gのDI水、および0.77gの一塩基性リン酸カリウムを加えた。固形分が溶解した後、pHを6.5に調整した。回分温度が27℃に達したときに、GTF 0768(米国特許出願公開第2016/0122445号明細書)を含有する0.72mLの細胞溶解物を、非常に高い分子量のデキストランの重合を開始させるために加えた。71.8時間後に、反応物を60℃に加熱し、15分間保持してGTF酵素を不活性化した。この調製物に、1516gのDI水および1.80gの一塩基性リン酸カリウムを加えた。pHを5.5に調整し、温度を33℃で安定させた。次に、第2重合(非常に高い分子量のデキストランからのα-1,3-グルカン側鎖合成のための)を、全てのまたはほとんど全てのα-1,3-グルコシド結合のポリα-1,3-グルカンを合成するS.サリバリウス(S.salivarius)系のグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む6mLの細胞溶解物を加えることによって開始させた。この酵素添加の直後に、56重量%の水性スクロース溶液の供給を、41.4mL/時間の速度で開始させた。合計62.5mLの水性スクロース溶液を加えた。これは、44.1gのスクロースを加えたことと同等であった。反応物を17.6時間33℃に保持し、次に60℃に加熱し、15分間保持して第2酵素を不活性化し、それによってデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマー生成物の合成を完了した。2%の塩化リチウムを含有する重水素化DMSO中で行われたプロトンNMR分析は、グラフトコポリマー生成物が90重量%のデキストランを含有することを示した。
【0185】
こうして、デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの追加の試料を、上記の手順に従って調製した。これらのグラフトコポリマーのそれぞれを、下記の実施例8において別々に使用して架橋グラフトコポリマーを調製した。
【0186】
実施例8
水性液体吸収用途向けの架橋グラフトコポリマーの調製
本実施例は、架橋グラフトコポリマーをもたらすためのデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーの架橋を記載する。これらの架橋グラフトコポリマーは、それらの非架橋相当品と比べて水性液体の向上した吸収を示した。
【0187】
架橋反応
個々の架橋反応は、実施例7のプロセス76(61重量%のデキストランのグラフトコポリマー)、プロセス77(82重量%のデキストランのグラフトコポリマー)、またはプロセス79(90重量%のデキストランのグラフトコポリマー)において生成したデキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーを使用して下記のプロトコルに従って行った。下記の考察を容易にするために、これらのグラフトコポリマーは、それらのそれぞれの合成プロセス番号(76、77、または79)に言及される。
1. 約5g(プロセス-76)または10g(プロセス-77もしくはプロセス-79)のグラフトコポリマーを、それぞれ、約45gまたは90gのDI水中で水和させ、約10重量%のグラフトコポリマーを含む混合物をもたらした。
2. NaOH溶液(50重量%)をこの混合物に加えた(5gのグラフトコポリマーに対しては12gのNaOH、10gのグラフトコポリマーに対しては24gのNaOH)。
3. 混合物を30分間振盪テーブル上で攪拌し、その時間中にグラフトコポリマーが溶解し、粘度が増加した。結果として生じた溶液の色は琥珀色であった。
4. フレッシュに蒸留した塩化ホスホリル(POCl)の2つのアリコートを、POClの最終濃度が1.6重量%であるように、激しく攪拌しながらこの溶液にゆっくり加え、それによって架橋反応を提供した。プロセス-76のグラフトコポリマーを含む架橋反応物は、POCl添加後中におよび添加後に攪拌を続けさせるためにDI水を加えることが必要であるような程度まで増粘した。
5. 反応物を1時間攪拌し、その時間中にそれはゲル化した。次に、それを濾過し、AgNOを使用してNaCIが検出できなくなるまで中性に近い状態まで(必要に応じてHCL調整ありで)洗浄した。
6. 架橋グラフトコポリマー生成物を、約60時間窒素フラッシュしながら80℃真空オーブン中で乾燥させた。各架橋反応について結果として生じた材料は脆く;各生成物を小さいコーヒーグラインダーですり潰し、貯蔵した。
【0188】
こうして、架橋デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーを製造した(以下、架橋プロセス-76グラフトコポリマー、プロセス-77グラフトコポリマー、またはプロセス-79グラフトコポリマーと言われる)。架橋されたプロセス-76グラフトコポリマー、プロセス-77グラフトコポリマー、またはプロセス-79グラフトコポリマーについての生成物収率は、それぞれ、95%、31%および38%であると測定された。
【0189】
遠心分離保持容量(CRC)評価
各架橋グラフトコポリマー、ならびにそのそれぞれの非架橋相当品を、次の通りCRC評価によって水性液体吸収能力について試験した。
【0190】
多糖(架橋または非架橋グラフトコポリマー)(200mg)を秤量した50mm×80mmティーバッグ中へ熱密封し、DI水または0.9重量%のNaCl溶液中に30分間浸した。NaCl溶液は、尿をシミュレートするために使用した。次に、ティーバッグをバスケット型遠心分離機に入れ、3分間1878rpmで回転させた。ティーバッグ、乾燥多糖、およびティーバッグによって保持される液体の重量をそれ相応に測定した。バスケットCRC(乾燥ポリマーの1g当たり保持された液体のg)を、次式:
[(遠心分離後のティーバッグおよびポリマーの重量)-(3×乾燥ティーバッグの重量*+乾燥ポリマーの重量)]/乾燥ポリマーの重量
を用いて算出した。
*ティーバッグは、結果を歪曲することができる追加の液体をピックアップするので、ティーバッグ重量の3倍の補正係数が実験的に決定され、上記の式にそれ相応に適用された。
【0191】
ある種の観察
- 架橋されたプロセス-76グラフトコポリマー、プロセス-77グラフトコポリマーおよびプロセス-79グラフトコポリマーのそれぞれは、非常にうまく水和した。
- 洗浄中に、架橋されたプロセス-76グラフトコポリマー、プロセス-77グラフトコポリマーおよびプロセス-79グラフトコポリマーのそれぞれは、かなりの量で膨潤した。これは、架橋が水吸収の改善とともに起こったことを示すよい兆候であった。
- CRC評価結果は、表12に下で報告する(データは、2つの繰り返しの平均を表す)。一般に、各架橋グラフトコポリマーは、そのそれぞれの非架橋相当品と比べてより高い水性液体吸収を示した。プロセス-76グラフトコポリマーのための架橋反応が十分な攪拌を可能にするためにPOCl添加中にかなりの量の追加のDI水を必要としたことが指摘される。このより高い希釈は、この架橋グラフトコポリマーが、架橋されたプロセス-77グラフトコポリマーおよびプロセス-79のグラフトコポリマーと比べてなぜより低い吸収プロファイルを示したかを説明するようである。
【0192】
【表12】
【0193】
このように、本明細書での架橋グラフトコポリマーは、それらの非架橋相当品と比べて向上した水性液体の吸収を示す。この活性を考慮すると、架橋デキストラン-ポリα-1,3-グルカングラフトコポリマーは、上に開示されたような様々な水性液体吸収用途での使用に好適であると考えられる。
【0194】
実施例9
水性液体吸収用途向けの架橋された非常に高い分子量のデキストランの調製
本実施例は、様々な架橋剤を使用する非常に高い分子量のデキストラン(「巨大デキストラン」)の架橋を記載する。
【0195】
本実施例での架橋研究全てに使用されるデキストラン試料は、例えば、実施例5および7で上に開示されたように、酵素GTF 0768(米国特許出願公開第2016/0122445号明細書)を使用して製造した。CRC測定は、実施例8で上に記載された手順に従って行った。荷重吸収(AUL)測定は、参照により本明細書に援用される、EDANA標準試験WSP 242.2.R3(12)に開示された手順に従って行った。
【0196】
塩化ホスホリル(POCl)での架橋
非常に高い分子量のデキストラン(2.5g)を、攪拌しながら少しずつ水(22.5g)に加えた。この溶液を均一になるまでゆっくり攪拌した。次に、水酸化ナトリウム溶液(6g、Fisher Scientific、50%)を加えた。結果として生じた調製物を30分間室温でゆっくり攪拌した。次に、POCl(0.4g、Aldrich、フレッシュ蒸留した、bp 106~107℃)を2つの部分で加えた。結果として生じた調製物を、約20分間ガラス棒で激しく攪拌した。結果として生じたゲルを一晩室温で置き、次に中性近いpHまで水で十分に洗浄し、凍結乾燥機で乾燥させて白色固体を得た。こうして、架橋された非常に高い分子量のデキストランを製造した。
【0197】
次に、吸収される液体として0.9%のNaCl溶液を使用して生成物のAULおよびCRC測定を行った。架橋された非常に高い分子量のデキストランは0.82のpsi(1平方インチ当たりのポンド)下で17.3g/gのAUL、および23.1g/gのCRCを有すると測定された。
【0198】
トリメタリン酸ナトリウム(STMP)での架橋
非常に高い分子量のデキストラン(5g)を、機械攪拌機を使ってフラスコ中で50mLの水に溶解させた。次に、水酸化ナトリウム(10%、1g)を、約159rpmで攪拌しながら加えた。次に、STMP溶液(10mLのDI水中の2.0gのSTMP)を攪拌調製物に加えた。1時間の攪拌後に、別の1.0gのNaOH(10%)溶液を滴加した。再び、別の1時間が経過した後、1.0gのNaOH(10%)溶液を滴加した。攪拌を51rpmに調整し、一晩続けた。結果として生じた材料を、中性pHまで大量の水で洗浄し、次に真空下で乾燥させて白色固体を得た。こうして、架橋された非常に高い分子量のデキストランを製造した。
【0199】
次に、吸収される液体として0.9%のNaCl溶液を使用して生成物のAULおよびCRC測定を行った。架橋された非常に高い分子量のデキストランは0.82のpsi下で13.3g/gのAUL、および12.2g/gのCRCを有すると測定された。
【0200】
クエン酸での架橋
非常に高い分子量のデキストラン(5.6g)を、攪拌しながら少しずつ水(48.5g)に加えた。均一な粘性のある溶液が形成されるまで調製物をゆっくり攪拌した。次に、クエン酸(1.0g)を加え、その後調製物を3日にわたって60℃の真空オーブン中で乾燥させた。水(5mL)を加え、結果として生じた調製物を6時間室温で攪拌して粘性のある調製物を得た。この調製物を凍結乾燥させて白色固体を得た。こうして、架橋された非常に高い分子量のデキストランを製造した。
【0201】
次に、吸収される液体として0.9%のNaCl溶液を使用して生成物のAULおよびCRC測定を行った。架橋された非常に高い分子量のデキストランは0.82のpsi下で7.1g/gのAUL、および9.5g/gのCRCを有すると測定された。
【0202】
ホウ酸での架橋
ホウ酸(0.16g)を水(5mL)に溶解させ、その後NaOH溶液(2%、約2.5mL)を加えてpHを約10に調整した。次に、追加の水を加えて全溶液体積を14mLにした。非常に高い分子量のデキストラン(0.97g)を、攪拌しながら少しずつこの溶液に加えた。調製物を、一晩室温で放置し、次に凍結乾燥によって乾燥させて固体を得た。こうして、架橋された非常に高い分子量のデキストランを製造した。
【0203】
次に、吸収される液体として0.9%のNaCl溶液を使用して生成物のAULおよびCRC測定を行った。架橋された非常に高い分子量のデキストランは0.82のpsi下で14.2g/gのAUL、および17.2g/gのCRCを有すると測定された。
【0204】
エピクロロヒドリン(ECH)での架橋
非常に高い分子量のデキストラン(2.5g)を、攪拌しながら少しずつ水(17.5g)に加えた。この溶液を、均一なゲルが形成されるまでゆっくり攪拌した。次に、水酸化ナトリウム(10%、10g)および水5gを加え、その後ECH(0.84g)を加えた。この調製物を室温で攪拌した。結果として生じたゲルを、中性近くのpHまで水で洗浄した。洗浄済みゲルを凍結乾燥によって乾燥させて固体を得た。こうして、架橋された非常に高い分子量のデキストランを製造した。
【0205】
次に、吸収される液体として0.9%のNaCl溶液を使用して生成物のAULおよびCRC測定を行った。架橋された非常に高い分子量のデキストランは0.82のpsi下で15.4g/gのAUL、および10.1g/gのCRCを有すると測定された。
【0206】
ジビニルスルホン(DVS)での架橋
非常に高い分子量のデキストラン(5.0g)を、50gの水および2.5gのNaOH溶液(2重量%)に加えた。この調製物を一晩攪拌し、その後4.5gの水中のDVS(0.225g)を攪拌しながら加えた。調製物の粘度は、DVSの添加後に非常に急速に増大した。調合物を3日にわたって室温で放置し、その後それを中性近いpHまで水で洗浄し、次に凍結乾燥によって乾燥させて固体を得た。こうして、架橋された非常に高い分子量のデキストランを製造した。
【0207】
次に、吸収される液体として0.9%のNaCl溶液を使用して生成物のAULおよびCRC測定を行った。非常に高い分子量の架橋デキストランは、0.82のpsi下で13g/gのAUL、および10.6g/gのCRCを有すると測定された。
【0208】
このように、異なる架橋剤を使用して非常に高い分子量のデキストランを架橋した。これらの架橋デキストラン材料のそれぞれが、水性液体の吸収を示し、それ故、上に開示されたような様々な水性液体吸収用途での使用に好適であると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5