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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】複合膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20231102BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B01D69/12
B01D69/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020000819
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021109117
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若元 佑太
(72)【発明者】
【氏名】倉持 政宏
(72)【発明者】
【氏名】多羅尾 隆
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207514(JP,A)
【文献】特表2017-529994(JP,A)
【文献】国際公開第2004/011535(WO,A1)
【文献】特開2017-50163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
D04H 1/00-18/04
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00- 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合膜構成樹脂中に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している、複合膜であって、
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維と前記複合膜構成樹脂は共に、同一の溶媒に溶解するものであり、
複合膜に含まれる溶媒が20質量%以下である、
複合膜。
【請求項2】
複合膜構成樹脂中に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している、複合膜の製造方法であって、
(1)前記複合膜構成樹脂と前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体とを用意する工程、
(2)前記複合膜構成樹脂ならびに前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を、共に溶解可能な溶媒を用意する工程、
(3)前記溶媒に前記複合膜構成樹脂が溶解した溶液を調製する工程、
(4)前記溶液を前記繊維集合体へ付与する工程、ただし、前記溶液の温度は、前記溶液に前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶解する下限温度未満である、
(5)前記溶媒が揮発可能な温度以上前記下限温度未満の温度で加熱処理を施し、前記溶液が付与された前記繊維集合体から前記溶媒を揮発させる工程、
を備える、複合膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な産業用途に複合膜が活用されており、その開発が活発化している。例えば、複合膜は燃料電池の電解質膜として利用されており、薄型化した燃料電池や内部抵抗の低い燃料電池を提供できることから、厚さの薄い電解質膜(複合膜)が求められている。しかし、このような要望に応える厚さの薄い複合膜は、取り扱い時や燃料電池の製造過程中における形状安定性や、燃料電池の使用中における寸法安定性に劣る。そのため、複合膜構成樹脂を繊維集合体で補強してなる複合膜が検討されている。
【0003】
このような要望を満たすため、例えば、特表2019-517111号公報(特許文献1)や特開2017-050163号公報(特許文献2)あるいは特開2013-062240号公報(特許文献3)などにも開示されているように、複合膜構成樹脂中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している複合膜が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-517111号公報(特許請求の範囲、0008など)
【文献】特開2017-050163号公報(特許請求の範囲、0017など)
【文献】特開2013-062240号公報(特許請求の範囲、0044-0047など)
【0005】
本願出願人は、複合膜構成樹脂中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体(以降、繊維集合体と省略し記載することがある)が存在している複合膜について検討を行った。そして、その製造方法として、複合膜構成樹脂を溶媒に溶解させて調製した溶液を繊維集合体へ付与した後、加熱処理を施し、溶液が付与された繊維集合体から溶媒を揮発させて、溶媒の含有量を減少させた複合膜を製造することを検討した。
特に、イオン通過性能に優れるなど様々な産業用途に使用可能な複合膜を実現できるよう、複合膜構成樹脂の質量が繊維集合体の質量よりも多い複合膜を調製することがあるが、当該複合膜を調製するためには、繊維集合体へ多量の溶液を付与する必要があった。このとき、繊維集合体は20質量%よりも多くの溶媒を含むことがあり、上述した製造方法を採用した場合、次の問題が顕著に発生するものであった。
【0006】
繊維集合体による複合膜構成樹脂の補強が効果的に発揮された複合膜を提供できるように、そして、溶液が繊維集合体の空隙中に浸透し易く複合膜に複合膜構成樹脂が存在していない欠陥部位が発生するのを防止できるように、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維と複合膜構成樹脂は共に同一の溶媒に溶解するような、近い物性を有しており親和性が高い組み合わせとするのが望ましいものであった。しかし、当該組み合わせをなす、複合膜構成樹脂中に繊維集合体が存在している複合膜を実現することができないことがあった。
つまり、前記溶液を繊維集合体へ付与すると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶液に溶解して繊維形状を維持して存在できないという問題が発生することがあった。また、仮に付与時にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶液に溶解しなかったとしても、溶液が付与された繊維集合体から溶媒を除去するため、加熱処理を施すことで溶媒を揮発させた時に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶液に溶解して繊維形状を維持して存在できないという問題が発生した。
【0007】
その結果、複合膜構成樹脂中に繊維集合体が存在している複合膜、特には、溶媒の含有量を減少させた当該複合膜を実現できないものであった。このような、溶媒の含有量が多い複合膜は、多量に含有されている溶媒が他の部材と反応するあるいは他の部材を溶解させるなどして、意図しない問題を発生させる恐れがあった。
そのため、様々な産業用途に活用し得る複合膜を提供することが困難なものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題を解決して、複合膜構成樹脂中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している複合膜、特には、溶媒の含有量が少ない当該複合膜の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の発明は、「複合膜構成樹脂中に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している、複合膜であって、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維と前記複合膜構成樹脂は共に、同一の溶媒に溶解するものであり、複合膜に含まれる溶媒が20質量%以下である、複合膜。」である。
【0010】
第二の発明は、「複合膜構成樹脂中に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している、複合膜の製造方法であって、
(1)前記複合膜構成樹脂と前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体とを用意する工程、
(2)前記複合膜構成樹脂ならびに前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を、共に溶解可能な溶媒を用意する工程、
(3)前記溶媒に前記複合膜構成樹脂が溶解した溶液を調製する工程、
(4)前記溶液を前記繊維集合体へ付与する工程、ただし、前記溶液の温度は、前記溶液に前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶解する下限温度未満である、
(5)前記溶媒が揮発可能な温度以上前記下限温度未満の温度で加熱処理を施し、前記溶液が付与された前記繊維集合体から前記溶媒を揮発させる工程、
を備える、複合膜の製造方法。」である。
【発明の効果】
【0011】
本願出願人が検討を続けた結果、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維と複合膜構成樹脂の組み合わせが同一の溶媒へ共に溶解する組み合わせであっても、複合膜に含まれる溶媒を20質量%以下にして、複合膜構成樹脂中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している複合膜を提供するに至った。
【0012】
本発明にかかる複合膜は次の製造方法によって提供が可能である。
複合膜構成樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体、前記複合膜構成樹脂ならびに前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を共に溶解可能な溶媒を用意する。そして、前記溶媒に前記複合膜構成樹脂が溶解した溶液を調製する。その後、前記溶液を前記繊維集合体へ付与した後、加熱処理を施し、前記溶液が付与された前記繊維集合体から前記溶媒を揮発させて複合膜を製造する方法において、本発明は以下の特徴を有している。
本発明にかかる複合膜の製造方法では、溶液を繊維集合体へ付与する工程において、溶液の温度を、溶液にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶解する下限温度未満に調整することを第一の特徴とする。本第一の特徴によって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶液に溶解するという問題の発生を防止して、溶液を繊維集合体へ付与できる。
更に、本発明にかかる複合膜の製造方法では、溶液が付与された繊維集合体から溶液を構成する溶媒を揮発させる加熱処理の工程において、溶媒が揮発可能な温度以上前記下限温度未満の温度で加熱処理を施すことを第二の特徴とする。本第二の特徴によって、加熱処理中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶液に溶解するという問題の発生を防止できる。
そして、溶媒が揮発可能な温度以上に加熱処理を施しているため、溶液が付与された繊維集合体から溶媒を揮発させ除去できるため、含まれる溶媒を20質量%以下にして、上述した複合膜を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。
なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、大気圧下のもと測定を行った。また、25℃温度条件下で測定を行った。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、少数第一位までが求める値である場合、測定によって少数第二位まで値を求め、得られた少数第二位の値を四捨五入することで少数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。
【0014】
複合膜構成樹脂は、複合膜にイオン通過性能を付与する役割を担うことができる。複合膜構成樹脂として、求められる諸特性、ならびに、本発明の構成を満たすよう用途に合わせ周知の有機樹脂を採用できる。特に、燃料電池の電解質膜をなす複合膜を調製する場合には、燃料電池の電解質膜の膜構成樹脂として使用可能であることが知られている、パーフルオロカーボンスルホン酸系樹脂、スルホン化芳香族炭化水素系樹脂、アルキルスルホン化芳香族炭化水素系樹脂、無機-有機複合系樹脂、スルホン化ポリエーテルスルホン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、などを採用できる。特に、機械強度やガスバリア性などに富む複合膜を提供できることから、本発明で使用するイオン性基含有高分子電解質は炭化水素系ポリマーであることが好ましい。また、複合膜構成樹脂の種類は一種類、あるいは、複数種類が混合してなる混合樹脂であってもよい。
【0015】
また、機械的強度の向上およびイオン性基の熱安定性向上、耐水性向上、耐溶剤性向上、耐ラジカル性向上、塗工性の向上、保存安定性向上などの目的のために、架橋剤や通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤、離型剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、無機微粒子などの添加剤を、複合膜は含んでいてもよい。
【0016】
複合膜の質量に占める複合膜構成樹脂の質量の割合は、求められる諸特性、ならびに、本発明の構成を満たすよう適宜調整するが、イオン通過性能に優れる複合膜であるよう、複合膜に含まれている繊維集合体の質量よりも多いのが好ましく、50質量%より多いのが好ましく、60質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのが好ましい。上限値は適宜調整できるが、前記割合が高過ぎると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体による複合膜構成樹脂の補強機能が十分に行われない恐れがあることから、98質量%以下であるのが現実的である。
【0017】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体は、支持体として複合膜構成樹脂を補強する役割を担う。また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂自体も電解液の含浸時に高い膨潤性を示し、イオン通過性能を有することから、複合膜構成樹脂を補強するポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体は、複合膜のイオン通過性能を向上して通イオン抵抗の低減化にも寄与できる。
【0018】
本発明でいうポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維とは、構造中に-(CHCF-構造を備えるポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有した繊維を指す。なお、当該構造が連続して構成されている樹脂(ホモポリマー)であっても、他の構造と共重合してなる樹脂であってもよい。以降、ポリフッ化ビニリデン系樹脂をPVDF、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維をPVDF繊維と称することがある。
【0019】
PVDFの分子量は複合膜に求められる諸物性に合わせ適宜選択できる。分子量が38万よりも高いPVDFを採用することによって、より寸法変化が小さい複合膜を提供できる。分子量が57万以上のPVDFを採用することができ、分子量が75万以上のPVDFを採用できる。なお、分子量が38万よりも高いPVDFを含んだPVDF繊維である場合、分子量が38万よりも高いPVDFと分子量が38万以下のPVDFを含んでいてもよい。しかし、上述した効果が発揮され易いように、PVDF繊維を構成するPVDFは、分子量が38万よりも高いPVDFのみであるのが好ましい。
【0020】
本発明でいう分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーに基づき測定した値である。なお、カタログや論文などに採用するPVDFの分子量が記載されている場合には、その分子量を当該PVDFの分子量とできる。
【0021】
当該PVDFとして、例えばPVDF-HFP(HFP構造との共重合体樹脂)、PVDF-CTFE(CTFE構造との共重合体樹脂)、PVDFのホモポリマーなどを採用できる。また、PVDF繊維を構成する、PVDFの種類は一種類あるいは複数種類であってもよい。
【0022】
PVDF繊維中に含まれるPVDFの割合は適宜調整できるが、複合膜構成樹脂を効果的に補強できる繊維集合体を提供できるよう、PVDF繊維を構成する樹脂はPVDFのみであるのが好ましい。
【0023】
PVDF繊維の平均繊維径は、細いほど前述した効果が発揮され易くなることから、平均繊維径が4μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのより好ましく、1μm以下であるのがより好ましく、500nm以下であるのがより好ましい。なお、下限値も適宜調整できるが、0.1μm以上であるのが現実的である。なお、本発明でいう「繊維径」は、繊維を撮影した電子顕微鏡写真をもとに測定した、繊維の長さ方向に対して直交する方向における長さをいい、測定対象となる50本の繊維における各繊維径の平均値を「平均繊維径」という。
【0024】
また、PVDF繊維の繊維長も本発明の効果が発揮されるよう適宜調整するが、0.1mm以上であることができ、0.5mm以上であることができ、1mm以上であることができる。繊維長が長いPVDF繊維を含んだ繊維集合体を備えることで、繊維集合体により効果的に補強された複合膜を提供し易い。そのため、PVDF繊維は連続長を有するのが好ましく、構成繊維が連続長を有するPVDF繊維のみである繊維集合体がより好ましい。このような繊維集合体は、直接紡糸法を用いることで調製可能である。なお、「繊維長」は、繊維を撮影した電子顕微鏡写真をもとに測定した、測定対象となる50本の繊維における各長さ方向の長さの平均値を「繊維長」という。また、当該測定において、測定対象となる繊維の繊維長が長過ぎるため、繊維における長さ方向の長さを測定することが困難である場合、当該繊維は連続長を有すると判断できる。
【0025】
本発明でいう繊維集合体とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の布帛である。本発明の複合膜は、繊維集合体(特に、不織布)を含んでいるため柔軟であり、形状安定性や寸法安定性に優れる。
【0026】
繊維集合体に含まれるPVDF繊維の割合は適宜調整できるが、繊維集合体により効果的に補強された複合膜を提供できるよう、複合膜用支持体の構成繊維はPVDF繊維のみであるのが好ましい。
【0027】
繊維集合体は構成繊維として、前述したPVDF繊維以外にも、他の有機樹脂を含有した他の繊維を含んでいても良い。有機樹脂として例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、他のフッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機樹脂を採用できる。
【0028】
なお、PVDFならびにこれらの有機樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0029】
繊維集合体の構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0030】
構成繊維は、一種類の有機樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の有機樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の有機樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0031】
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0032】
繊維集合体が、低融点成分のみからなる熱融着性繊維、あるいは、高融点成分と低融点成分を備えた一部融着型の熱融着性繊維を含み構成されている場合には、低融点成分によって繊維同士を熱融着して繊維集合体に強度を付与でき好ましい。
【0033】
また、繊維集合体は機能材(例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、イットリア安定化ジルコニア粒子、アルミナ粒子、金属有機構造体(MOF)、各種ポリマー粒子)を含んでいても良い。繊維集合体の構成繊維中に含有されていても、構成繊維同士の間(繊維集合体の空隙中)に存在する態様であっても良い。
【0034】
他の繊維の平均繊維径は、細いほど前述した効果が発揮され易くなることから、20μm以下であるのが好ましく、17μm以下であるのがより好ましく、15μm以下であるのが更に好ましく、13μm以下であるのが更に好ましい。上限は特に限定するものではないが、0.1μm以上であるのが適当である。他の繊維の繊維長も、本発明の効果が発揮されるよう適宜調整するが、0.1mm以上であることができ、0.5mm以上であることができ、1mm以上であることができる。ステープルファイバーであっても、連続長を有する繊維であってもよい。
【0035】
PVDF繊維と他の繊維を備えた繊維集合体において、PVDF繊維の質量と他の繊維の質量の比率は適宜調整するが、前述した効果が発揮され易いよう、100質量%:0質量%~20質量%:80質量%、95質量%:5質量%~30質量%:70質量%、85質量%:15質量%~40質量%:60質量%であることができる。
【0036】
繊維集合体が繊維ウェブや不織布である場合、例えば、繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。特に、厚さが薄く構成繊維が均一に分散し均一な孔径を有する繊維集合体を調製可能であることから、直接紡糸法により調製された繊維集合体であるのが好ましい。
【0037】
調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製してもよい。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは熱融着性繊維によって、構成繊維同士を接着一体化あるいは熱融着させる方法などを挙げることができる。
【0038】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射する方法などを用いることができる。
【0039】
使用可能なバインダの種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂などを使用できる。
【0040】
繊維集合体が織物や編物である場合、前述のようにして調製した繊維を織るあるいは編むことで、織物や編物を調製できる。
【0041】
なお、繊維ウェブ以外にも不織布あるいは織物や編物など繊維集合体を、前述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供しても良い。
【0042】
繊維集合体の、例えば、目付、厚さ、空隙率、強度、伸度などの諸物性は、本発明の効果が発揮される複合膜用支持体を提供できるように、適宜調整する。
【0043】
目付は、0.1~50g/mであることができ、0.3~45g/mであることができ、0.5~40g/mであることができる。この「目付」はJIS P 8124(紙及び板紙―坪量測定法)に規定されている方法に基づいて得られる坪量をいう。
【0044】
厚さの薄い複合膜を提供できるよう、繊維集合体の厚さは300μm以下であるのが好ましく、200μm以下であるのがより好ましく、100μm以下であるのが更に好ましい。一方、厚さが薄過ぎる繊維集合体であると強度に劣る恐れがあるため、繊維集合体の厚さは0.5μm以上であるのが好ましく、1μm以上であるのがより好ましく、2μm以上であるのが更に好ましい。この「厚さ」は、JIS B7502に規定されている外側マイクロメータ―(測定可能厚さ:0~25mm)を用いて測定した値をいう。
【0045】
繊維集合体の空隙が多い程、柔軟性に富み取扱い性に優れる複合膜を実現できることから、繊維集合体の空隙率は40%以上が好ましく、50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのがより好ましい。一方、空隙が多過ぎると強度に劣る恐れがあるため、空隙率は99%以下であるのが好ましく、95%以下であるのがより好ましく、90%以下であるのが更に好ましい。この「空隙率」は次の式により得られる値をいう。
P=[1-M/(T×d)]×100
ここで、Mは繊維集合体の目付(単位:g/m)、Tは繊維集合体の厚さ(単位:μm)、dは繊維集合体を構成する各種有機樹脂の平均密度(単位:g/cm)を、それぞれ意味する。
【0046】
繊維集合体は表面を平滑とするためカレンダー処理など加圧処理する工程へ供したものであってもよい。また、プラズマ処理やスルホン化処理あるいはフッ素化処理などの表面改質処理、帯電処理を施した繊維集合体であってもよい。
【0047】
繊維集合体は単体で複合膜構成樹脂と複合化してもよいが、他の繊維集合体、多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層してなる積層体として、複合膜構成樹脂と複合化してもよい。また、用途や使用態様に合わせて成形処理や形状を打ち抜くなど加工する工程などの各種二次工程を経た繊維集合体であってもよい。
【0048】
本発明にかかる複合膜を構成するPVDF繊維と複合膜構成樹脂は、共に同一の溶媒に溶解するものである。共に同一の溶媒に溶解するPVDF繊維と複合膜構成樹脂は、近い物性を有しており親和性が高い。そのため、PVDF繊維表面と複合膜構成樹脂の間に層間剥離が生じ難く、また、溶液が繊維集合体の空隙中に浸透し易いため複合膜に複合膜構成樹脂が存在していない欠陥部位が発生するのを防止できるなど、当該PVDF繊維を含んだ繊維集合体による複合膜構成樹脂の補強が効果的に発揮された複合膜を提供できる。
【0049】
溶媒が、PVDF繊維と複合膜構成樹脂を共に溶解する溶媒(同一の溶媒)であるか否かは、以下の測定によって判断できる。
【0050】
(PVDF繊維と複合膜構成樹脂を共に溶解する溶媒(同一の溶媒)であるか否かの判断方法)
(1)複合膜を構成するPVDF繊維を用意し、その質量(Mb1)を計量する。
(2)測定対象となる溶媒を、PVDF繊維の質量(Mb1)の100倍質量(100Mb1)用意する。
(3)25℃~130℃までの温度に調整した前記溶媒(質量:100Mb1)中に、前記PVDF繊維(質量:Mb1)を浸漬する。なお、前記PVDF繊維を構成する有機樹脂(PVDFなど)の分解温度は130℃よりも高い温度である。
(4)上述した工程(3)において、25℃~130℃までの温度範囲内いずれかの温度の前記溶媒に前記PVDF繊維が完全に溶解した場合、前記PVDF繊維は当該溶媒に溶解すると判断する。
(5)複合膜を構成する複合膜構成樹脂をペレット状あるいはフィルム状の態様で用意し、その質量(Mb2)を計量する。
(6)測定対象となる溶媒を、前記複合膜構成樹脂の質量(Mb2)の100倍質量(100Mb2)用意する。
(7)25℃~130℃までの温度に調整した前記溶媒(質量:100Mb2)中に、前記複合膜構成樹脂(質量:Mb2)を浸漬する。なお、前記複合膜構成樹脂の分解温度は130℃よりも高い温度である。
(8)上述した工程(7)において、25℃~130℃までの温度範囲内いずれかの温度の前記溶媒に前記複合膜構成樹脂が完全に溶解した場合、前記複合膜構成樹脂は当該溶媒に溶解すると判断する。
(9)上述した両測定の結果、測定対象となる溶媒がPVDF繊維および複合膜構成樹脂を共に溶解した場合、測定対象の溶媒はPVDF繊維と複合膜構成樹脂を共に溶解する溶媒(同一の溶媒)であると判断する。
【0051】
溶媒の種類は、PVDF繊維の組成(PVDFの種類)および複合膜構成樹脂の組成や種類、その組み合わせによって変更され得るものである。一例として、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。なお、溶媒は一種類であっても、複数種類混合してなる混合溶媒であってもよい。なお、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のみで構成されたPVDF繊維であり、スルホン化ポリエーテルスルホンのみで構成された複合膜構成樹脂である場合、本発明の構成を満足する溶媒はN-メチル-2-ピロリドンであることができる。
【0052】
本発明にかかる複合膜は、含まれる溶媒が20質量%以下であることを特徴とする。従来技術の限りでは、PVDF繊維が溶液に溶解して繊維形状を維持して存在できないという問題が発生するため、含有する溶媒をこれほど低減化した、複合膜構成樹脂中にPVDF繊維を含んだ繊維集合体が存在している複合膜を実現できないものであった。
【0053】
そして、含まれる溶媒が低減化した複合膜は、様々な産業用途へ使用している際に、溶媒が揮発する、PVDF繊維を溶解して繊維形状を維持して存在できなくする、他の部材と反応するあるいは他の部材を溶解させるなどの、意図しない問題が発生するのを防止できる複合膜である。そのため、様々な産業用途に活用し得る複合膜である。
【0054】
当該含有率は低いほど好ましく、20質量%未満の複合膜であるのが好ましく、10質量%以下の複合膜であるのが好ましく、5質量%以下の複合膜であるのが好ましく、3質量%以下の複合膜であるのが好ましく、2質量%以下の複合膜であるのが好ましく、1質量%以下の複合膜であるのが好ましく、理想的には溶媒の含有量が0質量%の複合膜であるのが最も好ましい。
【0055】
なお、測定対象となる複合膜に含まれる溶媒の含有率は、以下の方法で判断できる。
【0056】
(複合膜に含まれる溶媒の含有率の測定方法)
(1)測定対象となる複合膜を用意し、その質量(Mb3)を計量する。
(2)事前加熱した後の複合膜を150℃雰囲気下に3時間曝し、加熱する。
(3)加熱した後の複合膜の、質量(Ma1)を計量する。
(4)次の式に基づいて、質量減少率(Mr、単位:質量%)を算出する。
Mr=100×(Mb3-Ma1)/Mb3
(5)上述した工程(4)において算出された質量減少率(Mr)を、複合膜に含まれる溶媒の含有率(単位:質量%)とする。なお、上述した工程(2)において複合膜中のPVDF繊維が繊維形状を維持して存在できなかった場合、本測定へ供した複合膜に含まれる溶媒の含有率(単位:質量%)は、20質量%よりも多いと判断する。
【0057】
なお、複合膜中にPVDF繊維が繊維形状を維持して存在しているか否かは、以下の方法で判断できる。
・PVDF繊維を含み製造されたものである複合膜においては、当該複合膜の主面ならびに断面を撮影した電子顕微鏡写真をもとに判断できる。つまり、当該写真に当該PVDF繊維が認められた場合には、当該複合膜中のPVDF繊維が繊維形状を維持して存在していると判断できる。そして、電子顕微鏡写真に当該PVDF繊維が認められなかった場合には、当該複合膜中のPVDF繊維が繊維形状を維持して存在していないと判断できる。
・PVDF繊維を含み製造されたものであるか否か不明である複合膜においては、次の方法で判断できる。当該複合膜の主面ならびに断面を撮影した電子顕微鏡写真に繊維形状を有するものが認められなかった場合には、当該複合膜中のPVDF繊維が繊維形状を維持して存在していないと判断できる。そして、当該写真に繊維形状を有するものが認められた場合には、溶媒で複合膜構成樹脂を除去するなどして当該複合膜から繊維形状を有するもののみを抽出もしくは取り出し、NMR、FT-IR、EDXなどの分析装置を用いて当該繊維形状を有するものがPVDFを含有するものであるか否か判断する。そして、当該繊維形状を有するものがPVDFを含有するものであった場合、当該複合膜中のPVDF繊維が繊維形状を維持して存在していると判断できる。
【0058】
複合膜の、例えば、目付や厚さなどの諸物性は、求められる用途に合わせ適宜調整する。目付は、0.1~100g/mであることができ、0.5~80g/mであることができ、1~40g/mであることができる。厚さは300μm以下であることができ、200μm以下であることができ、100μm以下であることができる。
【0059】
次いで、本発明にかかる複合膜の製造方法について、例示し説明する。なお、工程(1)や工程(2)など、既に説明した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。
【0060】
本発明にかかる複合膜の製造方法は適宜選択できるが、一例として、
(1)前記複合膜構成樹脂と前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体とを用意する工程、
(2)前記複合膜構成樹脂ならびに前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を、共に溶解可能な溶媒を用意する工程、
(3)前記溶媒に前記複合膜構成樹脂が溶解した溶液を調製する工程、
(4)前記溶液を前記繊維集合体へ付与する工程、ただし、前記溶液の温度は、前記溶液に前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶解する下限温度未満である、
(5)前記溶媒が揮発可能な温度以上前記下限温度未満の温度で加熱処理を施し、前記溶液が付与された前記繊維集合体から前記溶媒を揮発させる工程、
を備える、複合膜の製造方法を用いることができる。
【0061】
工程(3)について、例を挙げ説明する。
複合膜構成樹脂を溶媒に溶解させて溶液を調製するが、溶液の質量に占める複合膜構成樹脂の固形分濃度は適宜調整できる。しかし、後述する工程(4)および/または工程(5)において、繊維集合体に影響を与え難いよう、溶液の質量に占める溶媒の濃度は少ないのが好ましい。この観点から、溶液の質量に占める複合膜構成樹脂の固形分濃度は、複合膜構成樹脂が溶媒に飽和して溶解した時の濃度(飽和溶解質量%と称することがある、単位:質量%)~飽和溶解質量%よりも30質量%低い濃度までの範囲であるのが好ましく、飽和溶解質量%~飽和溶解質量%よりも20質量%低い濃度までの範囲であるのがより好ましい。
【0062】
工程(4)について、例を挙げ説明する。
繊維集合体へ付与する溶液の温度は、前記溶液に前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶解する下限温度よりも低い温度とする。本発明でいう、「前記溶液に前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶解する下限温度」とは、以下の方法で判断された温度である。
【0063】
(下限温度の測定方法)
(1)複合膜を構成するPVDF繊維(あるいはPVDF繊維を含んだ繊維集合体)を用意する。そして、フィルムの主面上にPVDF繊維(あるいはPVDF繊維を含んだ繊維集合体)を積層する。
(2)複合膜の製造に使用する溶液を用意する。そして、表面が平滑なガラス板の主面上に積層されたPVDF繊維(あるいはPVDF繊維を含んだ繊維集合体)に、キャスト厚さがPVDF繊維(あるいはPVDF繊維を含んだ繊維集合体)の厚さの10倍となるように、ダイコーターを用いて当該溶液を付与する。
(3)当該溶液を付与されたPVDF繊維(あるいはPVDF繊維を含んだ繊維集合体)を、前記ガラス板ごと、加熱温度が25℃~130℃の範囲の温度となるように調整したオーブンへ供し30分間加熱する。
(4)上述した工程(3)を経た当該溶液を付与されたPVDF繊維(あるいはPVDF繊維を含んだ繊維集合体)、あるいは、上述した工程(3)を経て調製された複合膜を確認する。そして、上述した工程(3)を経た後に前記PVDF繊維が繊維形状を維持して存在していなかった、その温度のうち最も低い温度を、「前記溶液に前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶解する下限温度」と判断する。なお、25℃~130℃の加熱温度いずれにおいてもPVDF繊維が溶解した場合、当該溶液は本発明にかかる構成を満足できない溶液であると判断する。
【0064】
繊維集合体へ付与する際の溶液は、PVDF繊維と複合膜構成樹脂ならびに溶媒の組み合わせにより適宜調整するが、繊維集合体に影響を与え難いように室温の溶液を用いるなど、温度の低い溶液を採用するのが好ましい。この観点から、溶液の温度は、90℃未満であるのが好ましく、80℃以下であるのが好ましく、70℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのが好ましく、40℃以下であるのが好ましく、30℃以下であるのが好ましく、25℃以下であるのが好ましく、20℃以下であるのが好ましい。
【0065】
溶液の粘度は求める複合膜を調製できるよう、適宜選択する。溶液の粘度は0.05~8Pa・sであることができ、0.1~6Pa・sであることができ、0.2~5Pa・sであることができる。なお、この「粘度」は粘度測定装置を用い、温度25℃で測定したシェアレート100s-1時の値をいう。
【0066】
溶液を繊維集合体へ付与する方法は適宜選択できるが、繊維集合体の一方の主面から、あるいは、両主面から、ドクターブレードやグラビアロールあるいはダイコーターを用いる方法など周知の方法を採用できる。あるいは、溶液中に繊維集合体を浸漬することで付与しても良い。また、繊維集合体へ付与する溶液の量は、溶液の温度や粘度ならびに付与方法、溶液中に含まれる複合膜構成樹脂の濃度、繊維集合体の厚さや空隙率など諸構成によって、求める複合膜を調製できるよう適宜調整する。特に、イオン通過性能に優れる複合膜を製造できるよう、繊維集合体の全ての空隙中に溶液が満たされた状態となるように、溶液を繊維集合体へ付与するのが好ましい。
【0067】
工程(5)について、例を挙げ説明する。
前記溶媒が揮発可能な温度以上前記下限温度未満の温度で加熱処理を施し、繊維集合体の空隙中に含まれている溶媒を揮発させる。ここでいう「溶媒が揮発可能な温度」とは、以下の方法で判断された温度である。
【0068】
(溶媒が揮発可能な温度の測定方法)
(1)PVDF繊維を含んだ繊維集合体を用意し、その質量(Mb4)を計量する。そして、表面が平滑なガラス板の主面上にPVDF繊維を含んだ繊維集合体を積層する。
(2)複合膜の製造に使用する溶液を用意する。そして、当該ガラス板の主面上に積層されたPVDF繊維を含んだ繊維集合体へ、キャスト厚さがPVDF繊維を含んだ繊維集合体の厚さの10倍となるように、ダイコーターを用いて当該溶液を付与する。
(3)当該溶液を付与されたPVDF繊維(あるいはPVDF繊維を含んだ繊維集合体)を、当該ガラス板ごと、加熱温度が25℃~130℃の範囲の温度となるように調整したオーブンへ供し30分間加熱する。なお、PVDFおよび溶液中に含まれている複合膜構成樹脂の融点あるいは分解温度は130℃よりも高い温度である。
(4)加熱した後の溶液が付与されたPVDF繊維を含んだ繊維集合体の、質量(Ma2)を計量する。
(5)次の式に基づいて、質量減少率(Mr、単位:%)を算出する。
Mr=100×(Mb4-Ma2)/Mb4
(6)上述した工程(5)において算出された質量減少率(Mr)が20質量%以上であった加熱温度のうち、最も低い温度を溶液に含まれている「溶媒が揮発可能な温度」と判断する。なお、揮発した溶媒を捕集し、ガスクロマトグラフィー質量分析装置などの各種測定装置を用いることで、溶液に含まれていた溶媒の種類を判断できる。
【0069】
加熱温度は、PVDF繊維と前記複合膜構成樹脂ならびに溶媒の組み合わせにより適宜調整するが、加熱処理中に繊維集合体に影響を与え難いよう低いのが好ましい。この観点から、加熱処理温度は90℃未満であるのが好ましく、80℃以下であるのが好ましく、70℃以下であるのが好ましい。一方、加熱処理温度の下限は溶媒を揮発させることができる温度であるよう、適宜調整するが、30℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのが好ましく、50℃以上であるのが好ましい。また、加熱時間も適宜調整可能である。
【0070】
使用する加熱装置の種類は適宜選択でき、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する装置、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機、赤外線を照射し加熱できる装置などを用いた方法を採用できる。なお、加熱装置による加熱温度は適宜選択するが、溶媒を揮発可能であると共に、繊維集合体や複合膜構成樹脂などの構成成分が意図せず分解や変性しない温度であるように適宜調整する。なお、繊維集合体の構成繊維中に接着成分や架橋可能な樹脂が存在する場合は、加熱処理へ供することで接着成分による繊維接着を行っても、当該架橋可能な樹脂を架橋させても良い。
【0071】
なお、加熱処理時の気圧環境は適宜調整でき、大気圧(1気圧)下で加熱処理を施すことができる。1気圧未満の雰囲気下で加熱処理を施しても、1気圧よりも高い雰囲気下で加熱処理を施してもよいが、当該気圧雰囲気下の場合には、加熱処理中に繊維集合体が溶液に溶解しないよう、加熱処理温度を調整する。
【0072】
本工程により繊維集合体の空隙に存在する溶液中から溶媒を揮発させ、複合膜構成樹脂中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している複合膜を製造できる。
従来技術にかかる複合膜の製造方法では、PVDF繊維と複合膜構成樹脂が共に同一の溶媒に溶解するため、繊維集合体へ多量の溶液を付与するという製造方法を採用すると、
・溶液の付与時にPVDF繊維が溶液に溶解して繊維形状を維持して存在できないという問題、ならびに、
・溶液が付与された繊維集合体から溶媒を除去するため、加熱処理を施すことで溶媒を揮発させた時に、PVDF繊維が溶液に溶解して繊維形状を維持して存在できないという問題、
が発生するものであった。
【0073】
本発明にかかる製造方法では、溶液の付与時にPVDF繊維が溶液に溶解して繊維形状を維持して存在できないという問題の発生を防止するため、繊維集合体へ付与する溶液の温度を、溶液にPVDF繊維が溶解する下限温度よりも低い温度に調整したことを特徴としている。また、加熱処理により溶液が付与された繊維集合体から溶媒を除去する際に、PVDF繊維が溶液に溶解して繊維形状を維持して存在できないという問題の発生を防止するため、溶媒が揮発可能な温度以上下限温度未満の温度で加熱処理を施すことを特徴としている。
【0074】
そのため、本発明にかかる複合膜の製造方法によって、複合膜構成樹脂中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している複合膜、特には、溶媒の含有量が少ない当該複合膜を提供できる。
【0075】
特に、上述した通り、イオン通過性能に優れるなど様々な産業用途に使用可能な複合膜を実現できるよう、複合膜の質量に占める複合膜構成樹脂の質量の割合は繊維集合体の質量よりも多いのが好ましい。このような多量の複合膜構成樹脂を含んだ複合膜を実現するためには、繊維集合体へ多量の溶液を付与する必要がある。しかし、従来技術にかかる複合膜の製造方法では、上述した問題がより顕著に発生して、複合膜構成樹脂中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している複合膜、特には、溶媒の含有量が少ない当該複合膜を提供できないものであった。
【0076】
一方、本発明にかかる複合膜の製造方法は上述した特徴を有することから、溶媒を20質量%よりも多量に含有するような多量の溶液を付与された繊維集合体からであっても、複合膜構成樹脂中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している複合膜、特には、溶媒の含有量が少ない当該複合膜を提供できる。
【0077】
なお、工程(5)を経た後の複合膜中に溶媒が残留していたとしても、工程(5)の加熱処理によって複合膜中に存在する溶媒は工程(4)の後(溶液が付与された繊維集合体)の状態よりも少量となっている。そのため、複合膜に含まれる溶媒をより低減化するため、工程(5)を経た後の複合膜を、「前記溶液に前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維が溶解する下限温度」以上の温度に加熱する二次加熱処理へ供しても、残留している溶媒に繊維集合体が溶解し難いものであり、PVDF繊維が溶液に溶解して繊維形状を維持して存在できないという問題が発生し難く、複合膜中で繊維集合体の繊維形状が維持され得る。
【0078】
この二次加熱処理における加熱温度は適宜調整可能であるが、複合膜、繊維集合体や複合膜構成樹脂などの構成成分が意図せず分解や変性しない温度であるように適宜調整する。具体的には、80℃よりも高い温度であることができ、90℃以上であることができ、100℃以上であることができ、130℃以上であることができる。
【0079】
以上の製造方法によって、本発明にかかる構成を満足する複合膜を製造できる。調製した複合膜はそのまま使用してもよいが、表面を平滑化あるいは厚さなどを調整するためカレンダーなどの加圧装置へ供する、親水化処理へ供する、使用態様に合わせて形状を打ち抜くなど、各種の加工工程へ供してから複合膜用支持体として使用してもよい。
また、別の多孔体、フィルム、発泡体、電極材料、ガスや液体の拡散体などの他の構成部材を積層し使用してもよい。
【実施例
【0080】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
(繊維集合体の調製方法)
分子量が75万のPVDFをジメチルホルムアミド(沸点:153℃)に溶解させ、紡糸液(固形分濃度:14質量%、粘度:3Pa・s)を調製した。
紡糸液を以下の紡糸条件へ供することで静電紡糸し、繊維ウェブを調製した。
・金属製ノズル(紡糸液吐出部分)における、紡糸液吐出部分の形状:内径0.44mmの円形状
・金属製ノズルの先端と、繊維捕集体(金属板)との距離:10cm
・紡糸液へ印加した電圧:15kV
・金属製ノズルから吐出された紡糸液:1g/時間
・静電紡糸環境の雰囲気:温度25℃、湿度35%RH
そして、調製した繊維ウェブを、表面温度を160℃に調整した加熱ロールと接触させ、繊維ウェブから溶媒を除去してPVDF繊維のみで構成された不織布(目付:3g/m、厚さ:11μm、空隙率:85%、平均繊維径:450nm、以降、PVDF不織布と称することがある)を調製した。
【0082】
(溶液の調製方法)
複合膜構成樹脂として、スルホン化ポリエーテルスルホン樹脂(以降、SPESと称することがある)を用意した。また、PVDF繊維とSPESを共に溶解する同一の溶媒として、N-メチル-2-ピロリドン(沸点:202℃、以降、NMPと称することがある)を用意した。
なお、PVDF繊維は40℃以上のNMPに溶解するものであった。また、SPESは25℃以上のNMPに溶解するものであった。
SPESをNMPに溶解させて溶液を調製した。なお、溶解させるSPESの固形分濃度を20質量%、30質量%、40質量%に調整した各溶液を調製した。
なお、PVDF繊維は、80℃以下の各溶液のいずれにも溶解しないものであった。つまり、調製した各溶液における「PVDF繊維が溶解する下限温度」は、いずれも、80℃よりも高い温度であった。そして、130℃の各溶液のいずれにもPVDF繊維は溶解した。
また、調製した各溶液における「溶媒が揮発可能な温度」は40℃であった。そのため、40℃以上の温度(例えば、80℃)で加熱処理を施すことにより、溶液が付与された繊維集合体からNMPを揮発させ除去できるものであった。
【0083】
(実施例1)
SPESの固形分濃度が20質量%のNMP溶液(25℃)を、ダイコーターを用いてPVDF不織布へ付与した。
加熱温度を80℃に調整したオーブンへ30分間供することで、当該溶液が付与されたPVDF不織布からNMPを揮発させ、複合膜(目付:23g/m、厚さ:12μm、複合膜に含まれるPVDF繊維を含んだ繊維集合体の目付:3g/m、複合膜に含まれるNMP:16質量%)を調製した。
このようにして調製した複合膜は、SPES中にPVDF不織布が繊維形状を維持し、存在してなるものであった。
【0084】
(実施例2)
SPESの固形分濃度が30質量%のNMP溶液(25℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合膜(目付:33g/m、厚さ:18μm、複合膜に含まれるPVDF繊維を含んだ繊維集合体の目付:3g/m、複合膜に含まれるNMP:14質量%)を調製した。
このようにして調製した複合膜は、SPES中にPVDF不織布が繊維形状を維持し、存在してなるものであった。
【0085】
(実施例3)
SPESの固形分濃度が40質量%のNMP溶液(25℃)を用いたこと、また、ダイコーターによるNMP溶液を塗布する際のスリット厚さを調整したこと以外は、実施例1と同様にして、複合膜(目付:40g/m、厚さ:22μm、複合膜に含まれるPVDF繊維を含んだ繊維集合体の目付:3g/m、複合膜に含まれるNMP:12質量%)を調製した。
このようにして調製した複合膜は、SPES中にPVDF不織布が繊維形状を維持し、存在してなるものであった。
【0086】
(比較例1)
オーブンによる加熱温度を130℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合膜(目付:目付:19g/m、厚さ:13μm、複合膜に含まれるNMP:4質量%)を調製した。
このようにして調製した複合膜では、SPES中にPVDF不織布が存在していないものであった。
【0087】
(比較例2)
オーブンによる加熱温度を130℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして複合膜(目付:28g/m、厚さ:19μm、複合膜に含まれるNMP:3質量%)を調製した。
このようにして調製した複合膜では、SPES中にPVDF不織布が存在していないものであった。
【0088】
(比較例3)
オーブンによる加熱温度を130℃に変更したこと以外は、実施例3と同様にして複合膜(目付:35g/m、厚さ:22μm、複合膜に含まれるNMP:3質量%)を調製した。
このようにして調製した複合膜では、SPES中にPVDF不織布が存在していないものであった。
【0089】
(実施例4)
ダイコーターによるNMP溶液を塗布する際のスリット厚さを調整したこと以外は、実施例2と同様にして、複合膜(目付:48g/m、厚さ:31μm、複合膜に含まれるPVDF繊維を含んだ繊維集合体の目付:3g/m、複合膜に含まれるNMP:20質量%)を調製した。
このようにして調製した複合膜は、SPES中にPVDF不織布が繊維形状を維持し、存在してなるものであった。
【0090】
(実施例5)
実施例1で調製した複合膜を、加熱温度を130℃に調整したオーブンへ1時間供することでNMPを更に揮発させ、複合膜(目付:19g/m、厚さ:12μm、複合膜に含まれるPVDF繊維を含んだ繊維集合体の目付:3g/m2、複合膜に含まれるNMP:1質量%以下)を調製した。
このようにして調製した複合膜は、SPES中にPVDF不織布が繊維形状を維持し、存在してなるものであった。
【0091】
(実施例6)
実施例2で調製した複合膜を、加熱温度を130℃に調整したオーブンへ1時間供することでNMPを更に揮発させ、複合膜(目付:28g/m、厚さ:18μm、複合膜に含まれるPVDF繊維を含んだ繊維集合体の目付:3g/m、複合膜に含まれるNMP:1質量%以下)を調製した。
このようにして調製した複合膜は、SPES中にPVDF不織布が繊維形状を維持し、存在してなるものであった。
【0092】
(実施例7)
実施例3で調製した複合膜を、加熱温度を130℃に調整したオーブンへ1時間供することでNMPを更に揮発させ、複合膜(目付:35g/m、厚さ:22μm、複合膜に含まれるPVDF繊維を含んだ繊維集合体の目付:3g/m、複合膜に含まれるNMP:1質量%以下)を調製した。
このようにして調製した複合膜は、SPES中にPVDF不織布が繊維形状を維持し、存在してなるものであった。
【0093】
(実施例8)
実施例4で調製した複合膜を、加熱温度を130℃に調整したオーブンへ1時間供することでNMPを更に揮発させ、複合膜(目付:48g/m、厚さ:31μm、複合膜に含まれるPVDF繊維を含んだ繊維集合体の目付:3g/m、複合膜に含まれるNMP:2質量%)を調製した。
このようにして調製した複合膜は、SPES中にPVDF不織布が繊維形状を維持し、存在してなるものであった。
【0094】
以上から、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維と複合膜構成樹脂の組み合わせが同一の溶媒へ共に溶解する組み合わせであっても、複合膜に含まれる溶媒を20質量%以下にして、複合膜構成樹脂中にポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維を含んだ繊維集合体が存在している複合膜を提供できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、複合膜として好適に使用できる。なお、本発明に係る複合膜はその用途以外にも、様々な産業用途(例えば、水処理膜などの液体分離膜や気体分離膜、水など液体の電気分解を行う際に用いる分離膜、医療用材料、イオン交換膜や透析膜、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解の電解質膜などといった様々な産業用途に使用可能な複合膜として、あるいは、キャパシタや一次/二次電池などの電気化学素子用セパレータなど)に使用できる。