(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】可搬式接地コンデンサボックス及び漏電検出方法
(51)【国際特許分類】
H02H 3/00 20060101AFI20231102BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20231102BHJP
G01R 31/08 20200101ALI20231102BHJP
【FI】
H02H3/00 Q
G01R31/50
G01R31/08
(21)【出願番号】P 2020010850
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100100516
【氏名又は名称】三谷 惠
(72)【発明者】
【氏名】淡中 慎介
(72)【発明者】
【氏名】武藤 信行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 実
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-218237(JP,A)
【文献】特開平11-014689(JP,A)
【文献】実開昭58-180478(JP,U)
【文献】特開平07-235446(JP,A)
【文献】実公平04-28065(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/00
G01R 31/50
G01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物構内の変圧器の二次側に形成された非接地の需要家低圧系統の電力線と接地極との間に接続され前記需要家低圧系統の漏電箇所に漏電電流を流すための静電容量が異なる複数個のコンデンサと、
前記漏電電流が所定値を超えたときに前記漏電電流を遮断するための漏電遮断器と、
前記漏電遮断器に直列に接続され前記需要家低圧系統のリアクタンス分と前記コンデンサのキャパシタンス分との共振電流及び前記漏電電流を遮断するためのヒューズと、
需要家低圧系統が3相3線式のときは前記3相3線式の3本の電力線に対して前記静電容量が異なる複数個のコンデンサを切り替えてそれぞれコンデンサを接続し、需要家低圧系統が単相2線式または単相3線式のときは前記単相2線式または前記単相3線式の2本の電力線に対して前記静電容量が異なる複数個のコンデンサを切り替えてそれぞれコンデンサを接続するためのロータリスイッチと、
を備えたことを特徴とする可搬式接地コンデンサボックス。
【請求項2】
前記ロータリスイッチは、前記コンデンサの前記電力線への接続を一括して行う1個のロータリスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の可搬式接地コンデンサボックス。
【請求項3】
前記ロータリスイッチは、需要家低圧系統が3相3線式のときは前記コンデンサの前記電力線への接続を前記電力線ごとに行う3個のロータリスイッチであり、需要家低圧系統が単相2線式または単相3線式のときは前記コンデンサの前記電力線への接続を前記電力線ごとに行う2個のロータリスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の可搬式接地コンデンサボックス。
【請求項4】
前記3個のロータリスイッチまたは前記2個のロータリスイッチは、前記3個のロータリスイッチまたは前記2個のロータリスイッチのうち1個のロータリスイッチと連動し、前記1個のロータリスイッチの操作により前記コンデンサの前記電力線への接続を一括して行うことを特徴とする請求項3に記載の可搬式接地コンデンサボックス。
【請求項5】
建物構内の変圧器の二次側に形成された非接地の需要家低圧系統の予備ブレーカに請求項1ないし請求項4のいずれかの可搬式接地コンデンサボックスを接続して前記予備ブレーカをオンし、
前記需要家低圧系統への前記可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所にクランプ式電流計を取り付け、
前記可搬式接地コンデンサボックスの複数個のコンデンサのうち静電容量が小さいコンデンサから順に切り替えて漏電電流を調整し、
前記可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所の電流を前記クランプ式電流計で測定し、
前記需要家低圧系統の負荷の接続箇所にクランプ式電流計を取り付け前記負荷の接続箇所の電流を測定し、
前記可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所の測定電流及び前記負荷の接続箇所の測定電流に基づいて漏電している箇所を特定することを特徴とする漏電検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物構内の変圧器の二次側に形成された非接地の需要家低圧系統に接続して漏電検出のために用いられる可搬式接地コンデンサボックス及び漏電検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器の二次側を非接地とした需要家低圧系統では、1相で絶縁抵抗が低下しても閉回路が形成されないので、1相の対地絶縁破壊(地絡)時にも電源の供給を確保できる。この非接地配電方式によって、1相で絶縁劣化しても変圧器の二次側電路全体の停電は防ぐことができるが、さらに、他の箇所で絶縁劣化した場合は停電を防ぐことができないので、絶縁監視装置を設置して電路の絶縁劣化を監視するようにしている。
【0003】
非接地電路の絶縁監視方式として、母線に絶縁監視装置を設置して各フィーダのいずれかが絶縁劣化をおこし絶縁監視装置が働いた場合にどのフィーダが絶縁低下したのかの発見するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。これは、絶縁監視装置MRが動作したとき、母線Buと接地E間のスイッチSWを閉じてコンデンサGCを投入して零相電流を増加させ、絶縁判定手段10内の漏電リレーを確実に動作させ、これにより故障フィーダを検出するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものでは、各フィーダの絶縁劣化を監視できるが、絶縁劣化したフィーダを特定するには、接地電流保障手段1(スイッチSWと接地保障用のコンデンサGC)やフィーダの絶縁判定手段10~40を変圧器の二次側電路に常設しておかなければならない。また、接地電流保障用のコンデンサGCは1個であるので、接地保障用のコンデンサGCの容量は、フィーダの絶縁抵抗値に応じて変化する漏電リレーの動作感度に合わせて算出して設置しなければならない。
【0006】
本発明の目的は、建物構内の変圧器の二次側に形成された非接地の需要家低圧系統の絶縁監視装置が動作したとき、需要家低圧系統に接続して漏電箇所検出のために用いられる可搬式接地コンデンサボックス及び漏電検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る可搬式接地コンデンサボックスは、建物構内の変圧器の二次側に形成された非接地の需要家低圧系統の電力線と接地極との間に接続され前記需要家低圧系統の漏電箇所に漏電電流を流すための静電容量が異なる複数個のコンデンサと、前記漏電電流が所定値を超えたときに前記漏電電流を遮断するための漏電遮断器と、前記漏電遮断器に直列に接続され前記需要家低圧系統のリアクタンス分と前記コンデンサのキャパシタンス分との共振電流及び前記漏電電流を遮断するためのヒューズと、需要家低圧系統が3相3線式のときは前記3相3線式の3本の電力線に対して前記静電容量が異なる複数個のコンデンサを切り替えてそれぞれコンデンサを接続し、需要家低圧系統が単相2線式または単相3線式のときは前記単相2線式または前記単相3線式の2本の電力線に対して前記静電容量が異なる複数個のコンデンサを切り替えてそれぞれコンデンサを接続するためのロータリスイッチとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明に係る可搬式接地コンデンサボックスは、請求項1の発明において、前記ロータリスイッチは、前記コンデンサの前記電力線への接続を一括して行う1個のロータリスイッチであることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明に係る可搬式接地コンデンサボックスは、請求項1の発明において、前記ロータリスイッチは、需要家低圧系統が3相3線式のときは前記コンデンサの前記電力線への接続を前記電力線ごとに行う3個のロータリスイッチであり、需要家低圧系統が単相2線式または単相3線式のときは前記コンデンサの前記電力線への接続を前記電力線ごとに行う2個のロータリスイッチであることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明に係る可搬式接地コンデンサボックスは、請求項3の発明において、前記3個のロータリスイッチまたは前記2個のロータリスイッチは、前記3個のロータリスイッチまたは前記2個のロータリスイッチのうち1個のロータリスイッチと連動し、前記1個のロータリスイッチの操作により前記コンデンサの前記電力線への接続を一括して行うことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明に係る漏電検出方法は、建物構内の変圧器の二次側に形成された非接地
の需要家低圧系統の予備ブレーカに請求項1ないし請求項4のいずれかの可搬式接地コンデンサボックスを接続して前記予備ブレーカをオンし、前記需要家低圧系統への前記可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所にクランプ式電流計を取り付け、前記可搬式接地コンデンサボックスの複数個のコンデンサのうち静電容量が小さいコンデンサから順に切り替えて漏電電流を調整し、前記可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所の電流を前記クランプ式電流計で測定し、前記需要家低圧系統の負荷の接続箇所にクランプ式電流計を取り付け前記負荷の接続箇所の電流を測定し、前記可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所の測定電流及び前記負荷の接続箇所の測定電流に基づいて漏電している箇所を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、建物構内の変圧器の二次側に形成された非接地の需要家低圧系統に接続することによって絶縁性能の確認ができる。また、需要家低圧系統にコンデンサを常設する必要がなく、また、静電容量が異なる複数個のコンデンサを切り替えて電力線にコンデンサを接続するので、漏電箇所に流れる漏電電流を調整できる。従って、漏電電流を漏電リレーの動作感度に合わせることができる。また、漏電電流が所定値を超えたときに漏電電流を遮断するための漏電遮断器と、需要家低圧系統のリアクタンス分とコンデンサのキャパシタンス分との共振電流及び漏電電流を遮断するためのヒューズとを有しているので、漏電電流だけでなく共振電流も遮断できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、1個のロータリスイッチで、コンデンサの電力線への接続を一括して行うので、コンデンサの電力線への接続を電力線ごとに行う必要がなく操作が簡素化される。
【0014】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、需要家低圧系統が3相3線式のときは3個のロータリスイッチでコンデンサの電力線への接続を電力線ごとに行い、需要家低圧系統が単相2線式または単相3線式のときは2個のロータリスイッチでコンデンサの電力線への接続を電力線ごとに行うので、各電力線ごとにコンデンサの切り替えを行うことができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、3個のロータリスイッチまたは2個のロータリスイッチは、3個のロータリスイッチまたは2個のロータリスイッチのうち1個のロータリスイッチと連動し、1個のロータリスイッチの操作によりコンデンサの前記電力線への接続を一括して行うので、コンデンサの電力線への接続を電力線ごとに行う必要がなく操作が簡素化される。
【0016】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれかの可搬式接地コンデンサボックスを接続して、可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所の測定電流及び負荷の接続箇所の測定電流に基づいて漏電している箇所を特定するので、漏電している負荷の判別ができる。また、複数個のコンデンサのうち静電容量が小さいコンデンサから順に切り替えて漏電電流を調整するので、漏電電流を漏電リレーの動作感度に合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスを3相3線式の需要家低圧系統に接続した一例を示す回路図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図。
【
図5】本発明の第4実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスを2相2線式の需要家低圧系統に接続した一例を示す回路図。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスを2相3線式の需要家低圧系統に接続した一例を示す回路図。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図。
【
図8】本発明の第5実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図。
【
図9】本発明の第6実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図。
【
図10】本発明の第7実施形態に係る漏電検出方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスを3相3線式の需要家低圧系統に接続した一例を示す回路図である。3相3線式の需要家低圧系統1は建物構内の変圧器2の二次側に形成される。この需要家低圧系統1は非接地であり、変圧器2の二次側から母線としてRST相の3本の電力線3R1、3S1、3T1が引き出されている。そして、分岐母線である電力線3R2、3S2、3T2を介して分岐され、それぞれ負荷4a、4b、4cの電力線3Ra、3Sa、3Ta(3Rb、3Sb、3Tb、3Rc、3Sc、3Tc)を介して負荷4a、4b、4cに電力が供給される。
【0019】
変圧器2の二次側の母線の電力線3R1、3S1、3T1には、絶縁監視装置5が設けられている。絶縁監視装置5は母線の電力線3R1、3S1、3T1と接地極8aとの間に接続され、需要家低圧系統1の漏電を検出するものである。絶縁監視装置5は需要家低圧系統1の絶縁不良箇所からの漏電電流を検出するので、需要家低圧系統1のいずれかの箇所において漏電が発生していることを検出できる。
【0020】
本発明の第1実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックス6は、予備ブレーカ7を介して母線の電力線3R1、3S1、3T1と接地極8bとの間に接続される。予備ブレーカ7は、変圧器2の二次側の分電盤に設けられている不使用のブレーカである。
【0021】
可搬式接地コンデンサボックス6は、漏電電流を遮断するための漏電遮断器(ELCB)9と、需要家低圧系統1のRST相の共振電流及び漏電電流を遮断するためのヒューズ10R、10S、10Tと、需要家低圧系統1のRST相の漏電箇所に漏電電流を流すためのコンデンサ11R、11S、11Tと、コンデンサ11R、11S、11Tの静電容量の切り替えを行うためのコンデンサ容量切替用のロータリスイッチ12R、12S、12Tと、母線の電力線3R1、3S1、3T1の電圧を測定するための電圧計13と、電圧計13を母線のRST相の電力線3R1、3S1、3T1への接続切り替えを行うための電圧計切替用ロータリスイッチ14とを備えている。このように、3相3線式の3本の電力線3R1、3S1、3T1に対して、それぞれコンデンサ11R、11S、11Tを接続する。
【0022】
通常は、3本の電力線3R1、3S1、3T1に接続するそれぞれコンデンサ11R、11S、11Tは同じ静電容量であるが、各相ごとに行う3個のロータリスイッチ12R、12S、12Tを設けている。これにより、コンデンサ11R、11S、11Tの電力線への接続を電力線ごとに行えるので、必要に応じて各相ごとに異なる静電容量とすることができる。
【0023】
いま、負荷4cで漏電Fが発生しているとする。絶縁監視装置5は需要家低圧系統1に漏電が発生しているので漏電の発報をする。保守員は絶縁監視装置5による漏電の発報があると、変圧器2の二次側の母線の電力線3R1、3S1、3T1にクランプ式電流計15を取り付ける。例えば、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1にクランプ式電流計15を取り付けて、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1の電流を測定する。次に、負荷4a、4b、4cの接続箇所Xa、Xb、Xcに順次クランプ式電流計15を取り付けて負荷4a、4b、4cに流れる電流を測定する。
【0024】
負荷4cで漏電が発生していることから、漏電が発生している負荷4cの接続箇所Xcで漏電電流に相当する電流が測定されるとともに、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1で漏電電流に相当する電流がクランプ式電流計15により測定される。負荷4a、4bでは漏電が発生していないことから、負荷4a、4bの接続箇所Xa、Xbでは電流は零であり測定されない。これにより、負荷4cに漏電が発生していることが分かる。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図である。可搬式接地コンデンサボックスは、R相端子16R、S相端子16S、T相端子16T、ED端子16EDを有し、R相端子16R、S相端子16S、T相端子16Tは、変圧器2の二次側の母線の電力線3R1、3S1、3T1に接続され、ED端子16EDは接地極8bに接続される。これにより、可搬式接地コンデンサボックス6は、
図1に示すように、需要家低圧系統1の電力線3R1、3S1、3T1と接地極8bとの間に接続されることになる。
【0026】
R相端子16R、S相端子16S、T相端子16Tには、漏電遮断器9とヒューズ10R、10S、10Tとが直列に接続され、ロータリスイッチ12R、12S、12Tを介してコンデンサ11に接続される。
【0027】
母線の電力線3R1、3S1、3T1の電圧を測定するための電圧計13は、電圧計切替用ロータリスイッチ14により切り替えられ、母線のRST相の電力線3R1、3S1、3T1に接続される。電圧計切替用ロータリスイッチ14の切替位置V0は電圧計13を電力線3R1、3S1、3T1に接続しない位置である。切替位置VRは電力線3R1に、切替位置VSは電力線3S1に、切替位置VTは電力線3T1に接続する切替位置である。
【0028】
コンデンサ11は、後述するように、複数個のコンデンサで構成され、需要家低圧系統1の漏電箇所に漏電電流を流すための静電容量が異なる複数個のコンデンサ群11a~11iを有している。静電容量が異なる複数個のコンデンサ群11a~11iはロータリスイッチ12R、12S、12Tで切り替えられる。漏電遮断器9は、漏電電流が所定値を超えたときに漏電電流を遮断するものであり、漏電遮断器に直列に接続されたヒューズ10R、10S、10Tは、需要家低圧系統1のリアクタンス分とコンデンサ11のキャパシタンス分との共振電流や漏電電流を遮断するものである。
【0029】
次に、コンデンサ11は、複数個のコンデンサ11a~11i群で構成されている。コンデンサ群11aは、RST相の各相に対応して静電容量が0.01μFの3個のコンデンサで構成され、以下、コンデンサ群11b~11gは、RST相の各相に対応して静電容量が0.047μF、0.1μF、0.22μF、0.47μF、1μF、2.2μFの3個のコンデンサで構成されている。また、コンデンサ群11hはRST相の各相に対応して静電容量が4.4μFとなるように、2.2μFの2個のコンデンサを並列接続した3組のコンデンサ(2.2μFの6個のコンデンサ)で構成されている。コンデンサ群11iはRST相の各相に対応して静電容量が8.8μFとなるように、2.2μFの4個のコンデンサを並列接続した3組のコンデンサ(2.2μFの12個のコンデンサ)で構成されている。このように、コンデンサ11は、静電容量が異なる複数個のコンデンサで構成されている。
【0030】
ロータリスイッチ12R、12S、12Tの切替位置R0、S0、T0は、コンデンサ11に接続しない位置である。ロータリスイッチ12R、12S、12Tの切替位置R1、S1、T1は、コンデンサ群11aの接続端子R1、S1、T1に接続する位置であり、以下同様に、ロータリスイッチ12R、12S、12Tの切替位置R2、S2、T3~R9、S9、T9は、コンデンサ群11bの接続端子R2、S2、T2~コンデンサ群11iの接続端子R9、S9、T9に接続する位置である。
【0031】
絶縁監視装置5による漏電の発報があると、絶縁監視装置5の電源をオフにして、可搬式接地コンデンサボックス6を母線の電力線3R1、3S1、3T1に接続する。絶縁監視装置5の電源をオフにするのは絶縁監視装置5での検出用の漏電電流が流れないようにするためである。そして、電圧計13で電力線3R1、3S1、3T1の電圧を測定し電力線3R1、3S1、3T1に電力が通電されていることを確認する。その後に、前述したように、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1にクランプ式電流計15を取り付けて可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1の電流を測定する。その際に、ロータリスイッチ12R、12S、12Tにより、静電容量が小さいコンデンサ11から順番に需要家低圧系統1の電力線3R1、3S1、3T1への接続を切り替えて接続する。これにより、漏電箇所に流れる漏電電流を調整し、過大な漏電電流が流れることを防止する。そして、可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所の電流をクランプ式電流計で測定し、負荷4a、4b、4cの接続箇所Xa、Xb、Xcに順次クランプ式電流計15を取り付けて負荷4a、4b、4cに流れる電流を測定する。そして、可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所X1の測定電流及び負荷4a、4b、4cの接続箇所Xa、Xb、Xcの測定電流に基づいて漏電している負荷を判断する。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスについて説明する。
図3は本発明の第2実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図である。この第2実施形態は、
図2に示した第1実施形態に対し、3個のロータリスイッチ12R、12S、12Tを個別に操作することに代えて、1個のロータリスイッチに連動して、他の2個のロータリスイッチが動くようにしたものである。
図2と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0033】
図3において、3個のロータリスイッチ12R、12S、12Tは連結部17で連結されており、3個のロータリスイッチ12R、12S、12Tのうち1個のロータリスイッチを操作すると、他の2個のロータリスイッチが連動してコンデンサ11の電力線への接続を一括して行う。これにより、コンデンサ11の電力線への接続を電力線ごとに行う必要がなく操作が簡素化される。
【0034】
次に、本発明の第3実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスについて説明する。
図4は本発明の第3実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図である。この第3実施形態は、
図2に示した第1実施形態に対し、3個のロータリスイッチ12R、12S、12Tに代えて1個のロータリスイッチ12Aとしたものであり、この1個のロータリスイッチ12Aにより、コンデンサ11の電力線3R1、3S1、3T1への接続を一括して行うものである。
図2と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0035】
図4に示すように、3個のロータリスイッチ12R、12S、12Tに代えて、1個のロータリスイッチ12Aが設けられている。ロータリスイッチ12Aの切替位置R0、S0、T0は、コンデンサ11に接続しない位置である。ロータリスイッチ12Aの切替位置R1、S1、T1は、コンデンサ群11aの接続端子R1、S1、T1に接続する位置であり、以下同様に、ロータリスイッチ12Aの切替位置R2、S2、T3~R9、S9、T9は、コンデンサ群11bの接続端子R2、S2、T2~コンデンサ群11iの接続端子R9、S9、T9に接続する位置である。このように、1個のロータリスイッチ12Aにより、コンデンサ11の電力線3R1、3S1、3T1への接続を一括して行うので、第2実施形態の場合と同様にコンデンサ11の切替操作が簡便になる。
【0036】
第2実施形態に比較し1個のロータリスイッチ12Aで済むが、ロータリスイッチ12Aとコンデンサ11との接続配線が必要となる。すなわち、第2実施形態の場合は第1実施形態に対し3個のロータリスイッチ12R、12S、12Tを連結部17で連結するだけでよいが、第3実施形態の場合は、ロータリスイッチ12Aとコンデンサ11との接続配線が必要となる。
【0037】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図5は本発明の第4実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスを2相2線式の需要家低圧系統に接続した一例を示す回路図である。2相2線式の需要家低圧系統1は建物構内の変圧器2の二次側に形成される。
この需要家低圧系統1は非接地であり、変圧器2の二次側から母線として2相の2本の電力線が引き出され、
図5では、2相をRT相として示している。すなわち、変圧器2の二次側から母線としてRT相の2本の電力線3R1、3T1が引き出され、分岐母線である電力線3R2、3T2を介して分岐され、それぞれ負荷4a、4b、4cの電力線3Ra、3Ta(3Rb、3Tb、3Rc、3Tc)を介して負荷4a、4b、4cに電力が供給される。
【0038】
変圧器2の二次側の母線の電力線3R1、3T1には、絶縁監視装置5が設けられている。絶縁監視装置5は母線の電力線3R1、3T1と接地極8aとの間に接続され、需要家低圧系統1のいずれかの箇所において漏電が発生していることを検出する。
【0039】
本発明の第4実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックス6は、予備ブレーカ7を介して母線の電力線3R1、3T1と接地極8bとの間に接続される。可搬式接地コンデンサボックス6は、漏電電流を遮断するための漏電遮断器9と、需要家低圧系統1のRT相の共振電流及び漏電電流を遮断するためのヒューズ10R、10Tと、需要家低圧系統1のRT相の漏電箇所に漏電電流を流すためのコンデンサ11R、11Tと、コンデンサ11R、11Tの静電容量の切り替えを行うためのコンデンサ容量切替用のロータリスイッチ12R、12Tと、母線の電力線3R1、3T1の電圧を測定するための電圧計13と、電圧計13を母線のRT相の電力線3R1、3T1への接続切り替えを行うための電圧計切替用ロータリスイッチ14とを備えている。このように、2相2線式の2本の電力線3R1、3T1に対して、それぞれコンデンサ11R、11Tを接続する。
【0040】
いま、負荷4cで漏電Fが発生しているとする。絶縁監視装置5は需要家低圧系統1に漏電が発生しているので漏電の発報をする。保守員は絶縁監視装置5による漏電の発報があると、可搬式接地コンデンサボックス6を母線の電力線3R1、3T1に接続する。そして、電圧計13で電力線3R1、3T1の電圧を測定し電力線3R1、3T1に電力が通電されていることを確認する。その後に、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1にクランプ式電流計15を取り付けて可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1の電流を測定する。次に、負荷4a、4b、4cの接続箇所Xa、Xb、Xcに順次クランプ式電流計15を取り付けて負荷4a、4b、4cに流れる電流を測定する。
【0041】
負荷4cで漏電が発生していることから、漏電が発生している負荷4cの接続箇所Xcで漏電電流に相当する電流が測定されるとともに、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1で漏電電流に相当する電流がクランプ式電流計15により測定される。負荷4a、4bでは漏電が発生していないことから、負荷4a、4bの接続箇所Xa、Xbでは電流は零であり測定されない。これにより、負荷4cに漏電が発生していることが分かる。
【0042】
以上の説明は、2相2線式の需要家低圧系統1に接続した場合について説明したが、
図6に示すように、2相3線式の需要家低圧系統1に接続して、漏電した負荷を検出することもできる。
図6において、2相3線式の需要家低圧系統1においては、RT相の2本の電力線3R1、3T1に加えて中性線3N1が変圧器2から引き出され、分岐母線である電力線3R2、3T2及び中性線3N2を介して分岐される。
【0043】
そして、電力線3R2、3T2から分岐した2本の電力線3Ra、3Ta(3Rb、3Tb、3Rc、3Tc)の間に接続された負荷4a1、4b1、4c1に電力が供給される。また、電力線3R2、3T2及び中性線3N2から分岐した電力線3Ra(3Ta)中性線3Naとの間に接続された負荷4a2、4a3、電力線3Rb(3Tb)と中性線3Nbとの間に接続された負荷4b2、4b3、電力線3Rc(3Tc)と中性線3Ncとの間に接続された負荷4c2、4c3に電力も供給される。
【0044】
いま、負荷4c1で漏電Fが発生しているとする。絶縁監視装置5は需要家低圧系統1に漏電が発生しているので漏電の発報をする。保守員は絶縁監視装置5による漏電の発報があると、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1にクランプ式電流計15を取り付けて可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1の電流を測定する。
【0045】
次に、負荷4a1、4b1、4c1の接続箇所Xa、Xb、Xcに順次クランプ式電流計15を取り付けて負荷4a1、4b1、4c1に流れる電流を測定する。負荷4cで漏電が発生していることから、漏電が発生している負荷4cの接続箇所Xcで漏電電流に相当する電流が測定されるとともに、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1で漏電電流に相当する電流がクランプ式電流計15により測定される。負荷4a1、4b1では漏電が発生していないことから、負荷4a1、4b1の接続箇所Xa、Xbでは電流は零であり測定されない。これにより、負荷4c1に漏電が発生していることが分かる。この電流測定で漏電電流が検出できないときは、負荷4a2、4a3、4b2、4b3、4c2、4c3の接続箇所で順次電流を測定することになる。
【0046】
図7は、本発明の第4実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図である。2相2線式や2相3線式の需要家低圧系統1の場合は、変圧器2の二次側から母線として2相の2本の電力線が引き出されている。そこで、
図7ではその2相をRT相として示している。すなわち、第4実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスは、R相端子16R、T相端子16T、ED端子16EDを有し、R相端子16R、T相端子16Tは、変圧器2の二次側の母線の電力線3R1、3T1に接続され、ED端子16EDは接地極8bに接続される。これにより、可搬式接地コンデンサボックス6は、
図5、
図6に示すように、需要家低圧系統1の電力線3R1、3T1と接地極8bとの間に接続されることになる。
【0047】
R相端子16R、T相端子16Tには、漏電遮断器9とヒューズ10R、10Tとが直列に接続され、ロータリスイッチ12R、12Tを介してコンデンサ11に接続される。コンデンサ11は、前述したように、複数個のコンデンサで構成され、需要家低圧系統1の漏電箇所に漏電電流を流すための静電容量が異なる複数個のコンデンサ群11a~11iを有している。静電容量が異なる複数個のコンデンサ群11a~11iはロータリスイッチ12R、12Tで切り替えられる。漏電遮断器9は、漏電電流が所定値を超えたときに漏電電流を遮断するものであり、漏電遮断器に直列に接続されたヒューズ10R、10Tは。需要家低圧系統1のリアクタンス分とコンデンサ11のキャパシタンス分との共振電流や漏電電流を遮断するものである。
【0048】
電圧計13は、電圧計切替用ロータリスイッチ14により切り替えられ、母線のRT相の電力線3R1、3T1へ接続される。電圧計切替用ロータリスイッチ14の切替位置V0は電圧計13を電力線3R1、3T1に接続しない位置である。切替位置VRは電力線3R1に、切替位置VTは電力線3T1に接続する切替位置である。
【0049】
次に、コンデンサ11は、複数個のコンデンサ11a~11i群で構成されている。コンデンサ群11aは、RT相の各相に対応して静電容量が0.01μFの2個のコンデンサで構成され、以下、コンデンサ群11b~11gは、RT相の各相に対応して静電容量が0.047μF、0.1μF、0.22μF、0.47μF、1μF、2.2μFの2個のコンデンサで構成されている。また、コンデンサ群11hはRT相の各相に対応して静電容量が4.4μFとなるように、2.2μFの2個のコンデンサを並列接続した2組のコンデンサ(2.2μFの4個のコンデンサ)で構成されている。コンデンサ群11iはRT相の各相に対応して静電容量が8.8μFとなるように、2.2μFの4個のコンデンサを並列接続した2組のコンデンサ(2.2μFの8個のコンデンサ)で構成されている。このように、コンデンサ11は、静電容量が異なる複数個のコンデンサで構成されている。
【0050】
ロータリスイッチ12R、12Tの切替位置R0、T0は、コンデンサ11に接続しない位置である。ロータリスイッチ12R、12Tの切替位置R1、T1は、コンデンサ群11aの接続端子R1、T1に接続する位置であり、以下同様に、ロータリスイッチ12R、12Tの切替位置R2、T2~R9、T9は、コンデンサ群11bの接続端子R2、T2~コンデンサ群11iの接続端子R9、T9に接続する位置である。
【0051】
絶縁監視装置5による漏電の発報があると、可搬式接地コンデンサボックス6を母線の電力線3R1、3T1に接続する。そして、電圧計13で電力線3R1、3T1の電圧を測定し電力線3R1、3T1に電力が通電されていることを確認する。その後に、前述したように、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1にクランプ式電流計15を取り付けて可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1の電流を測定する。その際に、ロータリスイッチ12R、12Tにより、静電容量が小さいコンデンサ11から順番に需要家低圧系統1の電力線3R1、3T1への接続を切り替えて接続する。これにより、漏電箇所に流れる漏電電流を調整し、過大な漏電電流が流れることを防止する。
【0052】
そして、可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所X1の電流をクランプ式電流計15で測定し、2相2線式の場合には、負荷4a、4b、4cの接続箇所Xa、Xb、Xcに順次クランプ式電流計15を取り付けて負荷4a、4b、4cに流れる電流を測定し、可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所の測定電流及び負荷の接続箇所の測定電流に基づいて漏電している負荷を判断する。
【0053】
2相3線式の場合には、負荷4a1、4b1、4c1の接続箇所Xa、Xb、Xcに順次クランプ式電流計15を取り付けて負荷4a1、4b1、4c1に流れる電流を測定することに加え、負荷4a2、4a3、4b2、4b3、4c2、4c3の接続箇所に順次クランプ式電流計15を取り付けてこれらの負荷に流れる電流を測定し、可搬式接地コンデンサボックスの接続箇所X1の測定電流と比較して漏電している負荷を判断する
次に、本発明の第5実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスについて説明する。
図8は本発明の第5実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図である。この第5実施形態は、
図7に示した第4実施形態に対し、2個のロータリスイッチ12R、12Tを個別に操作することに代えて、1個のロータリスイッチに連動して、他の1個のロータリスイッチが動くようにしたものである。
図7と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0054】
図8において、3個のロータリスイッチ12R、12Tは連結部17で連結されており、3個のロータリスイッチ12R、12Tのうち1個のロータリスイッチを操作すると、他の1個のロータリスイッチが連動してコンデンサ11の電力線への接続を一括して行う。これにより、コンデンサ11の電力線への接続を電力線ごとに行う必要がなく操作が簡素化される。
【0055】
次に、本発明の第6実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスについて説明する。
図9は本発明の第6実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスの構成図である。この第6実施形態は、
図7に示した第4実施形態に対し、2個のロータリスイッチ12R、12Tに代えて1個のロータリスイッチ12Bとしたものであり、この1個のロータリスイッチ12Bにより、コンデンサ11の電力線3R1、3T1への接続を一括して行うものである。
図7と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0056】
図9に示すように、2個のロータリスイッチ12R、12Tに代えて、1個のロータリスイッチ12Bが設けられている。ロータリスイッチ12Bの切替位置R0、T0は、コンデンサ11に接続しない位置である。ロータリスイッチ12Bの切替位置R1、T1は、コンデンサ群11aの接続端子R1、T1に接続する位置であり、以下同様に、ロータリスイッチ12Bの切替位置R2、T2~R9、T9は、コンデンサ群11bの接続端子R2、T2~コンデンサ群11iの接続端子R9、T9に接続する位置である。このように、1個のロータリスイッチ12Bにより、コンデンサ11の電力線3R1、3T1への接続を一括して行うので、第5実施形態の場合と同様にコンデンサ11の切替操作が簡便になる。
【0057】
第5実施形態に比較し1個のロータリスイッチ12Bで済むが、ロータリスイッチ12Bとコンデンサ11との接続配線が必要となる。すなわち、第5実施形態の場合は第1実施形態に対し2個のロータリスイッチ12R、12Tを連結部17で連結するだけでよいが、第6実施形態の場合は、ロータリスイッチ12Bとコンデンサ11との接続配線が必要となる。
【0058】
次に、本発明の第7実施形態に係る漏電検出方法について説明する。本発明の第7実施形態に係る漏電検出方法は本発明の第1実施形態乃至第6実施形態に係る可搬式接地コンデンサボックスを用いて建物構内の変圧器の二次側に形成された非接地の需要家低圧系統1の漏電箇所を特定する漏電検出方法である。
【0059】
図10は本発明の第7実施形態に係る漏電検出方法のフローチャートである。まず、漏電監視装置5が漏電を検出したか否かを判断する(S1)。漏電監視装置5は非接地の需要家低圧系統1に漏電が発生していることを検出するものであるので、漏電監視装置5の漏電の発報があると非接地の需要家低圧系統1に漏電が発生していることになる。絶縁監視装置5による漏電の発報があると、絶縁監視装置5の電源をオフにする。これは、絶縁監視装置5での検出用の漏電電流が需要家低圧系統1に流れないようにするためである。
【0060】
次に、需要家低圧系統1の予備ブレーカ7に可搬式接地コンデンサボックス6を接続する(S2)。可搬式接地コンデンサボックス6は、変圧器2の二次側の分電盤に設けられている不使用のブレーカである予備ブレーカ7に接続する。
【0061】
そして、予備ブレーカ7をオンにし需要家低圧系統1に電力が供給されていることを確認する(S3)。変圧器2の二次側回路が正常であれば需要家低圧系統1に電力が供給されており、電力線3R1、3S1、3T1の電圧は正常である。また、予備ブレーカ7をオンにすることにより電力線3R1、3S1、3T1から可搬式接地コンデンサボックス6に電力を供給する。
【0062】
可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所にクランプ式電流計15を取り付ける(S4)。母線の電力線3R1、3S1、3T1に流れる漏電電流を測定するためである。
【0063】
そして、可搬式接地コンデンサボックス6の複数個のコンデンサ11のうち静電容量が小さいコンデンサ11から順に切り替えて漏電電流を調整する(S5)。すなわち、可搬式接地コンデンサボックス6の複数個のコンデンサ11のうち静電容量が小さいコンデンサ11から順番にロータリスイッチ12で非接地の需要家低圧系統1の電力線3R1、3S1、3T1への接続を切り替えて、コンデンサ11を接続する。これにより、漏電電流を調整できるので、漏電リレーの動作感度に合わせることができ、過大な漏電電流が流れることを防止できる。
【0064】
可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所の電流をクランプ式電流計15で測定する(S6)。これにより、変圧器2の二次側の母線の電力線3R1、3S1、3T1に流れる漏電電流を測定する。そして、この測定値を記録しておく。
【0065】
次に、需要家低圧系統1の負荷4の接続箇所にクランプ式電流計を取り付ける(S7)。
各々負荷4に流れる漏電電流を測定するためである。
【0066】
そして、クランプ式電流計15で負荷4の接続箇所の電流を測定する(S8)。これにより、負荷4に流れる漏電電流を測定し、この測定値を記録しておく。
【0067】
次に、測定した可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所の測定電流及び負荷4の接続箇所の測定電流に基づいて漏電している箇所を特定する(S9)。可搬式接地コンデンサボックス6の接続箇所の測定電流と負荷4の接続箇所の測定電流と比較し、双方の測定電流の値が同じであれば、当該負荷4に漏電が発生していると判断できる。
【0068】
このように、本発明によれば、非接地の需要家低圧系統1で可搬式で使用可能な漏電箇所の探索用の可変式接地コンデンサボックス6を用意したので、漏電電流を流すコンデンサを常設とする必要がなく、既存の交流の非接地の需要家低圧系統1に簡便に適用できる。また、漏電電流の調整も容易に行える。
【符号の説明】
【0069】
1…需要家低圧系統、2…変圧器、3…電力線、4…負荷、5…絶縁監視装置、6…可搬式接地コンデンサボックス、7…予備ブレーカ、8…接地極、9…漏電遮断器、10…ヒューズ、11…コンデンサ、12…ロータリスイッチ、13…電圧計、14…電圧計切替用ロータリスイッチ、15…クランプ式電流計、16…端子、17…連結部