(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】過熱水蒸気を利用した食品加熱調理装置
(51)【国際特許分類】
F24C 1/00 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
F24C1/00 310B
F24C1/00 340B
F24C1/00 320Z
(21)【出願番号】P 2020033367
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399075500
【氏名又は名称】株式会社吉野家ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】春木 茂
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-304067(JP,A)
【文献】実開昭60-063121(JP,U)
【文献】特開2008-023175(JP,A)
【文献】特開2018-201692(JP,A)
【文献】特開2002-206868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0256287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱水蒸気を利用した
容器に収容された食品の食品加熱調理装置であって、
過熱水蒸気を発生する過熱水蒸気発生部と、
前記過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気を噴出する噴出口を有する前記食品に当接可能な面を備えた凹形状部と、
加熱対象の前記容器に収容された食品に挿入可能に前記凹形状部の下方に設けられ、前記過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気を噴出する噴出口を有する突起部と、
前記食品が収容された容器を検知する検知部と
前記検知部の検出結果に基づいて、前記過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気の噴出を制御する制御部を有し、
前記検知部は、前記突起部及び前記凹形状部の近傍に上下動自在に設けられ、下端部が前記容器と当接する板状部材を有し、前記板状部材の位置に応じて前記容器を検知する
ことを特徴とする食品加熱調理装置。
【請求項2】
前記凹形状部は、中央部に前記突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の食品加熱調理装置。
【請求項3】
前記突起部は先端と側面の両方又は一方に噴出口を有することを特徴とする請求項1または2に記載の食品加熱調理装置。
【請求項4】
前記過熱水蒸気発生部は、中空部を有する金属体本体部と、
前記金属体本体部を加熱する加熱部と、
前記金属体本体部に設けられ、水、水蒸気又は過熱水蒸気が流通可能な螺旋状流路とを有し、
前記金属体本体部は、前記螺旋状流路の内側に前記中空部が形成され、前記螺旋状流路の出口と前記中空部が連通し、
前記中空部は、前記突起部に設けられた噴出口と前記凹形状部の噴出口に連通している ことを特徴とする請求項1から
3の何れかに記載の食品加熱調理装置。
【請求項5】
前記金属体本体部は着脱自在な金属製のノズル部を有し、前記ノズル部は前記突起部および前記凹形状部を有し、
前記金属体本体部の金属面に前記ノズル部の金属面が接触
するように構成されていることを特徴とする請求項
4に記載の食品加熱調理装置。
【請求項6】
操作ボタンを有し、
前記制御部は、前記検知部により前記食品又は前記容器が検知され、且つ、前記操作ボタンがオン状態の場合に、過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気の噴出を開始する制御を行うことを特徴とする請求項
1から5の何れかに記載の食品加熱調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱水蒸気を利用した食品加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の加熱調理を行う過熱水蒸気調理器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の過熱水蒸気調理器は、食品を収容する調理室を備え、その調理室の外部に過熱水蒸気生成部を有し、調理室内に過熱水蒸気を供給することで、調理室内の食品を加熱する技術であり、複雑な構造であり、食品を加熱するのに比較的時間が掛かる。
このため、調理室がなく、簡単な構造で、短時間に食品をむらなく加熱することができる、食品加熱調理装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る、過熱水蒸気を利用した食品加熱調理装置は、少なくとも以下の構成を具備する。
過熱水蒸気を利用した容器に収容された食品の食品加熱調理装置であって、
過熱水蒸気を発生する過熱水蒸気発生部と、
前記過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気を噴出する噴出口を有する前記食品に当接可能な面を備えた凹形状部と、
加熱対象の前記容器に収容された食品に挿入可能に前記凹形状部の下方に設けられ、前記過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気を噴出する噴出口を有する突起部と、
前記食品が収容された容器を検知する検知部と
前記検知部の検出結果に基づいて、前記過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気の噴出を制御する制御部を有し、
前記検知部は、前記突起部及び前記凹形状部の近傍に上下動自在に設けられ、下端部が前記容器と当接する板状部材を有し、前記板状部材の位置に応じて前記容器を検知することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置の一例を示す概念図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置の一例を示す概念図であり、詳細には(a)は正面概念図、(b)は側面概念図である。
【
図4】食品加熱調理装置の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図5】食品加熱調理装置の過熱水蒸気発生部の一例を示す図であり、詳細には(a)は過熱水蒸気発生部の金属体本体部の一例を示す断面図であり、(b)はノズル部が取り外された状態の一例を示す図であり、(c)は金属体本体部の中空部内の過熱水蒸気の旋回流の一例を示す平面概念図である。
【
図6】過熱水蒸気発生部の金属体本体部と加熱部と螺旋状流路としての過熱パイプの一例を示す図であり詳細には(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図7】螺旋状流路としての過熱パイプの一例を示す図であり詳細には(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図8】加熱部としてのヒーターの一例を示す図であり詳細には(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図9】ノズル部の一例を示す図であり詳細には(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【
図10】食品加熱調理装置の動作の一例を説明するための図であり詳細には(a)は丼等の容器がセット位置に配置された状態一例を示す正面概念図、(b)は(a)の側面概念図、(c)は米飯などの食品が丼等の容器に収容された状態の一例を示す正面概念図、(d)は側面概念図である。
【
図11】食品加熱調理装置の過熱水蒸気を噴出する動作の一例を説明するための図であり詳細には(a)は丼等の容器が作動位置に移動した状態一例を示す正面概念図、(b)は(a)の側面概念図、(c)は米飯などの食品が丼等の容器に収容された状態の一例を示す正面概念図、(d)は側面概念図である。
【
図12】食品加熱調理装置の動作の一例を説明するための図であり詳細には(a)は容器(丼等)に収容された食品としての米飯に突起部が突き刺さり、凹形状部の内面に当接し、過熱水蒸気が噴出口から噴出し、食品を加熱している状態の一例を示す概念図であり、(b)は、加熱後に突起部及び凹形状部から米飯を離間させた状態(非噴出状態)の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態に係る過熱水蒸気を用いた食品加熱調理装置は、過熱水蒸気を発生する過熱水蒸気発生部と、加熱対象の食品に挿入可能に設けられ、過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気を噴出する突起部と、食品に当接可能な面を備えた凹形状部とを有し、凹形状部は食品に当接可能な面に過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気を噴出する噴出口を1つ又は複数有する。この凹形状部は、中央部に突起部を有してもよい。
また、食品加熱調理装置は、凹形状部に対して、容器に収容された食品に当接または近接したことを検知する、又は食品を収容する容器に当接または近接したことを検知する検知部と、検知部の検出結果に基づいて、過熱水蒸気発生部からの過熱水蒸気の噴出を制御する制御部とを有する。
すなわち、調理室がなく、簡単な構造で、短時間に食品をむらなく加熱することができる、食品加熱調理装置を提供することができる。
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態は図示の内容を含むが、これのみに限定されるものではない。尚、以後の各図の説明で、既に説明した部位と共通する部分は同一符号を付して重複説明を一部省略する。
【0009】
本実施形態では、加熱対象の食品として米飯を加熱する食品加熱調理装置100を説明する。なお、加熱対象の食品としては、米飯に限られるものではなく、過熱水蒸気による加熱で調理可能な食品であればよく、例えばパスタ、天ぷら、肉、中華まん等であってもよい。また、加熱対象の食品は、過熱水蒸気により加熱しやすいものであることが好ましい。例えば食品内部に隙間が形成されているものが好ましい。
【0010】
本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置100は、例えば
図1に示すように、小型で卓上型であり、食品加熱調理装置100の本体部100Bが調理台500上に配置可能である。
例えば、米飯保存装置(いわゆるシャリホッパー等)に米飯が保存されており、調理者1(操作者等)の操作により、米飯保存装置から丼や椀などの容器180に米飯が適量収容される。
調理者1は、食品fとしての米飯を収容した丼(容器180)を、食品加熱調理装置100の調理位置(過熱水蒸気が噴出する噴出口の下方)に移動させる。
食品加熱調理装置100は、調理位置(容器180の配置位置)の上方位置に過熱水蒸気出力部16が設けられており、過熱水蒸気出力部16の噴出口から噴出する過熱水蒸気により、丼などの容器180に収容されている米飯などの食品を加熱する。
丼などの容器180内の米飯は、過熱水蒸気により加熱され、炊きたてのような状態となる。
【0011】
図2は食品加熱調理装置100の一例を示す概念図である。詳細には
図2(a)は食品加熱調理装置100の正面概念図、
図2(b)は側面概念図である。
【0012】
食品加熱調理装置100の本体部100Bには、過熱水蒸気出力部16が設けられている。詳細には、本体部100Bの正面中央部に過熱水蒸気出力部16が設けられている。また、食品加熱調理装置100の本体部100Bには、過熱水蒸気出力部16の下方に、食品fを収容した丼などの容器180が配置される空間100Sが設けられており、調理者等により容器180が配置可能に構成されている。
図2に示す例では、食品加熱調理装置100に設けられた空間100Sは、丼などの容器180を上下方向に所定距離だけ移動可能な大きさに規定されている。
【0013】
過熱水蒸気出力部16は、食品fに当接可能な下面を備え、その下面の外周が下方に突出(延出)した凹形状部160と、突起部161を有する。
詳細には、凹形状部160は、下面が上方に向かって窪んだ形状に形成されており、食品fが当接可能に構成されている。凹形状部160は、例えば、丼などの容器180に収容された米飯が下面に当接、押圧されることで、米飯を凸形状に成形することができる。
また、凹形状部160には、過熱水蒸気を噴出可能な噴出口160hが設けられており、本実施形態では、複数の噴出口160hが、規定の半径の円上に所定の間隔で設けられている。
【0014】
突起部161は、凹形状部160の中央部に設けられ、下方に向けて突出した形状に形成されている。突起部161は、加熱対象の食品に挿入可能に設けられ、過熱水蒸気発生部110からの過熱水蒸気を噴出口160hから噴出する。突起部161は1つ又は複数の噴出口160hを有する。本実施形態では、突起部161の下端の先端に噴出口160hが形成されている。また、本実施形態では、突起部161は側面に1つ又は複数の噴出口160hが設けられており、側面から放射状に、沸騰・膨張により加圧された過熱水蒸気を噴出可能に構成されている。
【0015】
また、本実施形態では、食品加熱調理装置100の本体部100Bの前面に表示部140や操作部130が設けられている。
表示部140は、例えば、電源オン時に点灯する電源ランプ、予熱時に点灯する予熱ランプ、装置異常時に点灯する異常表示ランプ等を有する。
操作部130は、操作ボタンBT、例えば、並盛ボタン、大盛りボタン、小盛りボタンなどの操作ボタンが設けられており、詳細には、加熱対象の食品の量に対応したボタンが設けられ、それぞれ食品の量に応じた過熱水蒸気の噴出時間が設定されている。
具体的には、例えば、加熱対象の食品の量が基準量(並盛)のときに並盛ボタンが操作され、過熱水蒸気の噴出時間が規定時間に設定される。
食品の量が基準量より多いときに(大盛り)、大盛りボタンが操作され、過熱水蒸気の噴出時間が規定時間より長く設定される。
食品の量が基準量より少ないときに(小盛り)、小盛りボタンが操作され、過熱水蒸気の噴出時間が規定時間より短く設定される。
【0016】
本実施形態では、食品加熱調理装置100の検知部120は、丼などの容器180の位置を検知する検知部材120Bを有する(
図3を参照)。この検知部材120Bは、本体部100Bに上下動自在に設けられている。
詳細には、検知部材120Bは、容器180よりも大きい幅の水平部材120Baと、水平部材120Baから上方に延出した板状部材120Bgと、水平部材120Baの略中央部の下端から前方に向けて突出した所定幅の突起部120Bcとを有する。
この検知部材120Bの水平部材120Ba及び突起部120Bcはその下端部に、丼などの容器180の上端部が当接可能に形成されている。
本実施形態では、板状部材120Bgは、1つ又は複数の縦長孔120Bhが設けられており、食品加熱調理装置100の本体部100Bに設けられた突起部Taに遊嵌するように構成されている。この縦長孔120Bhは検知部材120Bが上下動する際のガイドとして機能する。
【0017】
本実施形態では、食品加熱調理装置100の突起部161は、凹形状部160の下端よりも下方の位置まで延出した形状に形成されている。
検知部材120Bは、非噴出状態である待機状態では、その下端が突起部161の下端と同じ又は僅かに下方の高さとなるように配置されている。
【0018】
また、
図2に示すように、食品加熱調理装置100の本体部100Bに、過熱水蒸気出力部16が設けられており、過熱水蒸気出力部16は過熱水蒸気発生部110を有する。過熱水蒸気発生部110は、ノズル部110Nが着脱自在に設けられた金属体本体部110Bを有する。
【0019】
また、食品加熱調理装置100の本体部100Bには、電磁弁111、電磁ポンプ112、逆止弁113等がパイプPを介して接続されており、逆止弁113はパイプPを介して過熱水蒸気発生部110に接続されている。
【0020】
電磁弁111には、水道やタンク(給水圧0~1MPa等)から給水口やコック(不図示)などを介して水が供給される。電磁弁111は、制御部150の制御により、水の順方向の流入を制御する。
【0021】
電磁ポンプ112は、制御部150により制御される。電磁ポンプ112は例えば最大圧力1MPa程度に規定されている。
【0022】
逆止弁113は、例えば制御部150により制御され、例えば沸騰膨張時、圧力上昇から電磁弁等を保護するものである。
【0023】
つまり、本実施形態では、水道やタンクからの水がパイプPに設けられたコック(不図示)、電磁弁111、電磁ポンプ112、逆止弁113を介して、ノズル部110Nが着脱自在に設けられた金属体本体部110Bに供給される。
【0024】
図4に示すように、食品加熱調理装置100は、過熱水蒸気発生部110、検知部120、操作部130、表示部140、制御部150(CPU等)、及び記憶部155等を有する。
【0025】
過熱水蒸気発生部110は、制御部150の制御により、水をヒーター等の加熱部110Hにより加熱して過熱水蒸気を発生し、突起部161の噴出口161hや凹形状部160の噴出口160hへ出力する。過熱水蒸気発生部110は、例えば200℃~300℃の過熱水蒸気を発生することができる。
【0026】
検知部120は、凹形状部160に対して、容器180に収容された食品fや容器180を検知し、検知結果を示す信号を制御部150へ出力する。検知部120は、例えば、接触式スイッチ、圧力センサー、近接センサー、接触センサー、光センサー、赤外線センサー、温度センサーなどの何れか1つ又は2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0027】
操作部130は、例えば、調理者(操作者等)により操作され、加熱対象物の量を設定したり、過熱水蒸気の噴出量を設定したり、過熱水蒸気の噴出時間等の各種設定を行うことができ、設定操作に応じた信号を制御部150に出力する。操作部130としては、例えば各種スイッチ、操作ボタンBT、タッチパネル式入力装置等を採用することができる。
【0028】
表示部140は、制御部150により制御され、本発明に係る機能に関する表示、例えば、各種設定ボタン、設定状態を示す表示等を行う。表示部140としては、例えば液晶表示装置、LEDなどの発光部、タッチパネル式表示装置などを採用することができる。本実施形態では、上述したように、表示部140は、電源ランプ、予熱ランプ、異常表示ランプ等を有する。
【0029】
記憶部155は、RAMやROM等の記憶装置であり、制御プログラムや制御パラメータ、設定情報などを記憶している。
制御部150は、食品加熱調理装置の各構成要素を統括的に制御する。制御部150は、例えば、制御プログラムを実行することにより、本発明に係る機能を実現する。
詳細には、制御部150は、検知部120の検出結果に基づいて、過熱水蒸気発生部110からの過熱水蒸気の噴出を制御する。
具体的には、例えば、制御部150は、検知部120により食品fを収容する容器180や食品を検知した場合に、過熱水蒸気発生部110からの過熱水蒸気を突起部161の噴出口161hや凹形状部160の噴出口160hから噴出するように制御を行う。
また、制御部は、検知部120の検出結果と、操作ボタンBTのオンオフ状態に応じて、過熱水蒸気の噴出を制御してもよい。
また、制御部150は、所定時間(例えば2~10秒)経過した場合、過熱水蒸気発生部110からの過熱水蒸気の出力を停止して、噴出口からの過熱水蒸気の噴出を停止する制御を行う。
また、制御部150は、検知部120により、凹形状部160に対して、容器180に収容された食品fが所定距離だけ離れた場合、または、検知部120により、食品fを収容する容器180が検知部120(又は本体部100B)から所定距離だけ離れた場合に、過熱水蒸気発生部110からの過熱水蒸気の出力を停止して、噴出口からの過熱水蒸気の噴出を停止するように制御を行ってもよい。
【0030】
また、具体的には、制御部150は、過熱水蒸気の噴出時に、電磁弁111を開状態、電磁ポンプ112を稼働状態となるように制御を行う。制御部150は、過熱水蒸気の停止時に、電磁弁111を閉状態、電磁ポンプ112を非稼働状態となるように制御を行う。
【0031】
図5は食品加熱調理装置の過熱水蒸気発生部110の一例を示す図である。詳細には
図5(a)は過熱水蒸気発生部110の金属体本体部110Bの一例を示す断面図であり、
図5(b)はノズル部110Nが取り外された状態の一例を示す図であり、
図5(c)は金属体本体部110Bの中空部110s内の過熱水蒸気の旋回流の一例を示す平面概念図である。
【0032】
図6は過熱水蒸気発生部の金属体本体部110Bと加熱部110Hと螺旋状流路としての過熱パイプ110Pの一例を示す図であり、詳細には
図6(a)は平面図、
図6(b)は断面図である。
図7は過熱パイプ110Pの一例を示す図であり、詳細には
図7(a)は平面図、
図7(b)は側面図である。
図8は加熱部110Hとしてのヒーターの一例を示す図であり、詳細には
図8(a)は平面図、
図8(b)は側面図である。
図9はノズル部110Nの一例を示す図であり詳細には
図9(a)は平面図、
図9(b)は側面図、
図9(c)は底面図である。
【0033】
図5,6に示すように、過熱水蒸気発生部110は、中空部110sを有する金属体本体部110Bと、金属体本体部110Bを加熱する加熱部110Hと、金属体本体部110Bに設けられ、水、水蒸気又は過熱水蒸気が流通可能な螺旋状流路(過熱パイプ110P)とを有する。
金属体本体部110Bは、螺旋状流路(過熱パイプ110P)の内側(螺旋状部の内側)に中空部110sが形成され、螺旋状流路(過熱パイプ110P)の出口110Pbと中空部110sが連通している。中空部110sは、突起部161に設けられた噴出口161hと凹形状部160の噴出口160hに連通するように構成されている。
【0034】
詳細には、
図5(b)に示すように、金属体本体部110Bは着脱自在な金属製のノズル部110Nを有し、ノズル部110Nは突起部161および凹形状部160を有する。この金属体本体部110Bの金属面(当接面110Ba)にノズル部110Nの金属面(当接面110Na)が接触可能に構成されている。
また、本実施形態では、金属体本体部110Bの金属面(当接面110Ba)とノズル部110Nの金属面(当接面110Na)よりも外周側に、リング状の耐熱性のパッキン110rを設けることにより、過熱水蒸気の漏れをさらに低減する構造となっている。
また、ノズル部110Nの外面接触面はフッ素樹脂加工などにより、耐熱性や非粘着性を有する。
【0035】
詳細には、金属体本体部110Bは中空部110sを有し、中空部110sは略円筒状に形成された円筒状中空部110Bsを有する。ノズル部110Nが取り外された状態では、金属体本体部110Bの中空部110sは、下方に開口部を有しており、本実施形態では下方ほど拡開した形状に形成されている。
ノズル部110Nの上部には、上方に向かって開口した中空部110Nsが形成されており、この中空部110Nsは、円筒状中空部110Bsの直径よりも大きくなるように規定されている。
【0036】
本実施形態では、金属体本体部110Bは、アルミニウム等の金属により構成されている。
詳細には、金属体本体部110Bは、例えば、型に、過熱パイプとヒーターを配置した状態で、アルミニウム等の金属を流し込む鋳造により形成される。
具体的には、小径の螺旋状流路として
図7に示すようなステンレスやチタン等の過熱パイプ110Pと、加熱部110Hとして
図8に示すような大径の一巻きの螺旋状の鉄製のシーズヒーターを
図6に示すように配置された状態で、型に高温の液体状の金属を流し込み、冷却することで形成される(鋳造製造)。
【0037】
図9に示すように、ノズル部110Nは、凹形状部160を有し、過熱水蒸気を噴出可能な複数の噴出口160hが、規定の半径の円上に所定の間隔で設けられている。また、ノズル部110Nは、下方に向けて突出した突起部161が設けられており先端に噴出口161hが設けられ、側面に複数の噴出口161hが設けられている。
【0038】
過熱水蒸気発生部110の動作の一例を説明する。
過熱水蒸気発生部110は、加熱部110Hにより金属体本体部110Bが所定温度(例えば100°以上350°未満)に加熱された状態で、螺旋状流路(過熱パイプ110P)の流入口110Paから水が流入すると、金属体本体部110Bの蓄熱により、螺旋状流路(過熱パイプ110P)内で水が沸騰し、水蒸気さらには過熱水蒸気になる。螺旋状流路(過熱パイプ110P)を流れる水及び水蒸気、過熱水蒸気は膨張により速度上昇し、それらが遠心力によってパイプ内外周に沿って接触しながら移動し、効率的な熱交換を行う。螺旋状流路(過熱パイプ110P)の出口110Pbから放出された水蒸気及び過熱水蒸気等は金属体本体部110Bの略筒状の中空部110s内を遠心力により旋回流となって流れ(
図5(a),
図5(c)を参照)、中空部110sの内面とさらに熱交換が促進され、温度上昇する。そして、中空部110sの下方の突起部161に設けられた噴出口161hと凹形状部160の噴出口160hから、沸騰・膨張により加圧された過熱水蒸気が噴出する。
【0039】
図10は食品加熱調理装置100の動作の一例を説明するための図である。詳細には
図10(a)は丼等の容器180がセット位置に配置された状態一例を示す正面概念図、
図10(b)は
図10(a)の側面概念図、
図10(c)は米飯などの食品fが容器180に収容された状態の一例を示す正面概念図、
図10(d)は側面概念図である。
【0040】
図11(a)は容器180が作動位置に移動した状態一例を示す正面概念図、
図11(b)は
図11(a)の側面概念図、
図11(c)は米飯などの食品fが容器180に収容された状態の一例を示す正面概念図、
図11(d)は側面概念図である。
図12(a)は容器180に収容された食品としての米飯に突起部161が突き刺さり、凹形状部の内面に当接し、過熱水蒸気が噴出口から噴出し、食品を加熱している状態の一例を示す概念図であり、
図12(b)は、加熱後に突起部及び凹形状部から米飯を離間させた状態(非噴出状態)の一例を示す概念図である。
【0041】
次に、食品加熱調理装置100の動作の一例を説明する。
例えば、米飯保存装置(いわゆるシャリホッパー等)に米飯が保存されており、調理者1(操作者等)の操作により、米飯保存装置から丼や椀などの容器180に米飯が収容される。
図1に示すように、食品加熱調理装置100の本体部100Bが調理台500上に配置されている。
調理者1は、米飯を収容した容器180を、食品加熱調理装置100の調理位置(過熱水蒸気が噴出する噴出口の下方)に移動させる(
図10等参照)。
【0042】
食品加熱調理装置100は、調理位置(容器180の配置位置)の上方位置に突起部161と凹形状部160が設けられている。
例えば調理者(操作者等)により、米飯などの食品fを収容した丼等の容器180を上方に持ち上げると、検知部材120Bが上方に移動する。検知部材120Bの下端の上限位置は、例えば、容器180に収容された米飯などの食品fが凹形状部160の断面凹形状の下面等や下端に当接する位置となるように規定されている(
図11、
図12を参照)。
本実施形態では、検知部材120Bの下端の上限位置は、検知部材120Bの下端よりも所定長さだけ高い位置となるように規定されている。
検知部120により板状部材120Bgが上方位置に位置することを検知し、操作ボタンBTがオン状態となった場合、制御部150は、突起部161の噴出口161hと、凹形状部160の噴出口160hから過熱水蒸気を噴出するように制御を行い、米飯の内側と外側から過熱水蒸気により、米飯をむらなく加熱する(
図12(a)参照)。
【0043】
また、突起部161の噴出口161hと凹形状部160の噴出口160hから噴出した過熱水蒸気は、丼などの容器180内に充満した状態となり、米飯をむらなく加熱することができる。
【0044】
詳細には、過熱水蒸気が米飯(加熱対象の食品)にふれると、凝縮すると同時に水分と潜熱を米飯に供給するので、米飯を急速に加熱することができる。
また、米飯を加熱したことにより温度が低下した過熱水蒸気は、容器180の上部の開口部から容器外へ移動するとともに、突起部161と凹形状部160に設けられた噴出口から新たな高温の過熱水蒸気が連続して、容器180内の米飯に噴出する構造となるので、容器180に収容された米飯を短時間にむらなく加熱することができる。
【0045】
食品加熱調理装置100の制御部150は、食品fを所定時間(例えば2~10秒)加熱した後、過熱水蒸気の噴出を停止する制御を行う。
そして、
図12(b)に示すように、調理者1(操作者等)により容器180を下方に下げることにより、食品加熱調理装置100の突起部161と凹形状部160から所定距離以上離間させる。容器180内の米飯は炊きたてのような状態となる。
なお、食品加熱調理装置100の制御部150は、容器180や食品が食品加熱調理装置100から所定距離以上離間したことを検知部120により検知した場合に、過熱水蒸気の噴出を停止するように制御する。
詳細には、例えば、検知部120により、検知部材120Bが上限位置よりも低い位置であると検知した場合、又は検知部材120Bが下限位置に位置すると検知した場合に、制御部150は、過熱水蒸気の噴出を停止するように制御を行う。
【0046】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置100は、過熱水蒸気を利用した食品加熱調理を行う。この食品加熱調理装置100は、過熱水蒸気を発生する過熱水蒸気発生部110と、加熱対象の食品(米飯等)に挿入可能に設けられ、過熱水蒸気発生部110からの過熱水蒸気を噴出する噴出口161hを備えた突起部161と、食品fに当接可能な面(下面等)を備えた凹形状部160とを有する。凹形状部160は食品fに当接可能な面(下面等)に、過熱水蒸気発生部110からの過熱水蒸気を噴出する噴出口160hを有する。上記実施形態では、凹形状部160は、中央部に下方向に突出した突起部161を有する。
加熱対象の食品f(米飯等)に挿入された突起部161の噴出口161hと、凹形状部160の当接面(下面)に設けられた噴出口160hから、過熱水蒸気を噴出し、食品fの内側と外側から同時に加熱することで、簡単な構造で、短時間に食品fをむらなく加熱することができる、食品加熱調理装置100を提供することができる。この食品加熱調理装置100は、調理室がなく、簡単な構造となっている。
【0047】
また、食品加熱調理装置100に用いられる容器180は、上部に開口部180uを有する断面凹形状の容器であり、米飯等の食品を収容するように構成されている。食品加熱調理装置100の突起部161は、この容器180の開口部180uの上方から、容器180に収容された食品fに挿入可能に構成されている。
すなわち、簡単な構造で、容器180に収容された食品fを容易に加熱する食品加熱調理装置100を提供することができる。
【0048】
また、本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置100の突起部161は先端と側面の両方又は一方に噴出口(161h等)を有する。例えば、突起部161の先端の噴出口161hと側面の噴出口161hから、沸騰・膨張により加圧された過熱水蒸気を噴出し、詳細には側面に設けられた複数の噴出口161hから過熱水蒸気を放射状に噴出することで、加熱効率を上げることができる。また、食品に突起部161を挿入したときに側面の噴出口160hが塞がらない。
【0049】
また、本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置100は、容器180に収容された食品f、又は容器180を検知する検知部120と、検知部120の検出結果に基づいて、過熱水蒸気発生部110からの過熱水蒸気の噴出を制御する制御部150とを有する
詳細には、例えば、検知部120は、凹形状部160に対して、容器180に収容された食品fに当接または近接したことを検知する、又は食品fを収容する容器180に当接または近接したことを検知してもよい。
例えば、丼などの容器180に収容された食品fを食品加熱調理装置100に近づけ検知部120により検知された場合に、噴出口から過熱水蒸気が噴出し、食品を所定時間加熱してもよい。
【0050】
また、本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置100は、操作ボタンBTを有する。制御部150は、検知部120により食品f又は容器180が検知され、且つ、操作ボタンBTがオン状態の場合に、過熱水蒸気発生部110からの過熱水蒸気の噴出を開始する制御を行う。
すなわち、検知部120による食品f又は容器180の検知と、操作ボタンBTのオン状態の2つの条件を満たした場合に過熱水蒸気が噴出し、それ以外では噴出しないので、例えば食品f又は容器180が非検出状態で操作ボタンBTがオン状態での過熱水蒸気の噴出を防止することができ、また操作ボタンBTがオフ状態での、不意な過熱水蒸気の噴出を防止することができ、安全性が高い食品加熱調理装置100を提供することができる。
【0051】
また、本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置100の突起部161が下方に向けて突出形成されている。また、検知部120は、突起部161及び凹形状部160の近傍に上下動自在に設けられ、下端部が容器180に当接可能な板状部材120Bgを有し、板状部材120Bgの位置に応じて容器180を検知する。
詳細には、板状部材120Bgの下端部に当接する容器180の位置は規定され、例えば板状部材120Bgの下端部に設けた水平部材120Baの略中央部から前方に向けて突出した所定幅の突起部120Bcに、容器180上端の手前側の縁を当接することで、突起部161の下方に、丼などの容器180の中心が位置するように、又はズレを小さく位置決めすることができ、その板状部材120Bgに容器180が当接した状態で、上下動可能な板状部材120Bgとともに容器180を上方に移動することで、容器内の食品fの中央又は略中央に突起部161を垂直に確実に挿入することができ、板状部材120Bgが上方位置であることを検知することで、突起部161が食品に挿入された状態で待機位置(過熱水蒸気を噴射可能な待機位置)に位置していることを簡単な構成で検知することができる。
【0052】
また、本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置100の過熱水蒸気発生部110は、中空部110sを有する金属体本体部110Bと、金属体本体部110Bを加熱する加熱部110Hと、金属体本体部110Bに設けられ、水、水蒸気又は過熱水蒸気が流通可能な螺旋状流路(過熱パイプ110P)とを有する。金属体本体部110Bは、螺旋状流路(過熱パイプ110P)の内側(螺旋状部の内側)に中空部110sが形成され、螺旋状流路(過熱パイプ110P)の出口110Pbと中空部110sが連通している。中空部110sは、突起部161に設けられた噴出口161hと凹形状部160の噴出口160hに連通するように構成されている。
すなわち、簡単な構造で、沸騰・膨張により加圧された過熱水蒸気を生成する食品加熱調理装置100を提供することができる。
【0053】
また、本発明の実施形態に係る食品加熱調理装置100の金属体本体部110Bは着脱自在な金属製のノズル部110Nを有し、ノズル部110Nは突起部161および凹形状部160を有する。この金属体本体部110Bの金属面(当接面110Ba)にノズル部110Nの金属面(当接面110Na)が接触可能に構成されている。
すなわち、ノズル部110Nを取り外し、ノズル部110Nを容易に清掃することができる。
また、金属体本体部110Bにノズル部110Nが装着されている場合、金属面(当接面110Ba)及び金属面(当接面110Na)が接触した状態であり、加熱時、高温の金属体本体部110Bから金属面(当接面110Ba)及び金属面(当接面110Na)を介してノズル部110Nへ熱伝導することで、ノズル部110Nが高温となり、ノズル部110Nの突起部161や凹形状部160でも過熱水蒸気状態が維持される。つまり、簡単な構造で、ノズル部110Nの突起部161の噴出口161hや凹形状部160の噴出口160hから過熱水蒸気を噴出可能な食品加熱調理装置100を提供することができる。
【0054】
また、上述した実施形態では、容器180は、椀、丼、皿などの食品を収容可能な容器である。すなわち、椀、丼、皿などの容器180に盛られた食品を加熱し、椀、丼や皿などの容器180ごと、加熱された食品を短時間に提供することができる。つまり、調理者は、加熱対象の食品や加熱後の食品を、食品加熱調理装置100で加熱調理に用いる容器180(椀、丼、皿など)以外の器に移し替えることを要しない。
【0055】
また、加熱調理後、容器180として丼に収容された炊きたてに近い状態の米飯の上に、調理済み具材を盛り付けることにより、丼物を短時間に提供することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、上述の各図で示した実施形態は、その目的、構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
16…過熱水蒸気出力部
100…食品加熱調理装置
110…過熱水蒸気発生部
120…検知部(対象物検知部)
130…操作部
140…表示部
150…制御部
160…凹形状部
160h…噴出口
161…突起部
161h…噴出口
180…容器(丼、椀、皿等)