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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】建物外壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/90 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
E04B2/90
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020049609
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147897
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 優里佳
(72)【発明者】
【氏名】大元 康司
(72)【発明者】
【氏名】大島 慎介
(72)【発明者】
【氏名】岡野 充
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-187434(JP,A)
【文献】特開2000-008536(JP,A)
【文献】実開平02-077211(JP,U)
【文献】特開昭63-075241(JP,A)
【文献】特開2007-100435(JP,A)
【文献】「(仮称) 天神ビジネスセンター」新築工事着工のお知らせ,福岡地所株式会社,2019年01月29日,https://fukuokajisho.com/img/newsupload/doc1_e3a08cae97b679874fb137dcdcdbdba475d9ce40b9.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/88-2/96
E04B 9/00-9/36
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階の壁ユニットと、軒天ユニットと、上階の壁ユニットとを備える建物外壁構造であって、
前記壁ユニットは、上枠、下枠、左右の縦枠を備え、
前記軒天ユニットは、前記下階の壁ユニットの前記上枠に対向して配置される軒天入隅枠と、前記上階の壁ユニットの前記下枠に対向して配置される軒天出隅枠とを備え、
前記上枠の上面は、屋外端部から屋内端部に向かって斜め上方に向かう傾斜上面とされ、
前記下枠の下面は、屋外端部から屋内端部に向かって斜め上方に向かう傾斜下面とされ、
前記軒天入隅枠の側面は、下端屋内端部から上端屋内端部に向かって斜め上方に向かう傾斜入隅面とされ、
前記軒天出隅枠の側面は、下端屋外端部から上端屋外端部に向かって斜め上方に向かう傾斜出隅面とされている
ことを特徴とする建物外壁構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建物外壁構造において、
前記壁ユニットおよび前記軒天ユニットの外周には、レインバリアおよびウィンドバリアがそれぞれ設けられ、
前記壁ユニットは、
前記上枠または前記下枠が、他の壁ユニットの前記上枠または前記下枠に対向配置されるフラット取合部を含む第1壁ユニットと、
前記上枠および前記下枠が、前記軒天ユニットの前記軒天入隅枠または前記軒天出隅枠に対向配置される直角取合部を含む第2壁ユニットと、を備え、
前記第1壁ユニットの少なくとも前記フラット取合部に配置される枠に設けられるウィンドバリアは、前記第2壁ユニットに設けられるウィンドバリアよりも幅広である
ことを特徴とする建物外壁構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建物外壁構造において、
前記軒天ユニットは、
同一断面形状の形材で構成された2本の軒天入隅枠と、同一断面形状の形材で構成された2本の軒天出隅枠とを備え、
2本の軒天入隅枠の一方の端部同士を連結し、2本の軒天出隅枠の一方の端部同士を連結し、2本の軒天入隅枠の他方の端部を2本の軒天出隅枠の他方の端部にそれぞれ連結して四周枠組みされている
ことを特徴とする建物外壁構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の建物外壁構造において、
前記軒天ユニットは、
同一断面形状の形材で構成された3本の軒天入隅枠と、1本の軒天出隅枠とを備え、
3本の軒天入隅枠と、1本の軒天出隅枠との端部同士を連結して四周枠組みされている
ことを特徴とする建物外壁構造。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の建物外壁構造において、
前記軒天ユニットは、
同一断面形状の形材で構成された3本の軒天出隅枠と、1本の軒天入隅枠とを備え、
3本の軒天出隅枠と、1本の軒天入隅枠との端部同士を連結して四周枠組みされている
ことを特徴とする建物外壁構造。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の建物外壁構造において、
前記軒天入隅枠および前記軒天出隅枠は、長手方向に連続するビスホールを有し、
前記ビスホールには前記長手方向に沿ったフラットな面が形成され、
前記軒天ユニットを構成する軒天入隅枠および軒天出隅枠の4本の枠は、短辺側または長辺側の一方の枠の端面を、他方の枠の側面にシーラーを挟んで当接させ、他方の枠から一方の枠のビスホールにネジをねじ込んで接合している
ことを特徴とする建物外壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの外壁において、1階の外壁に比べて2階以上のカーテンウォールで構成された外壁が室外側に突出し、1階の外壁の上端部と2階の外壁の下端部との間に軒天ボードを設けた構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、ビルのデザインの多様化に伴い、上階の外壁が室外側に突出する外壁を有するビルを、上階だけでなく、下階や軒天部分も含めてユニット化することが求められている。例えば、ビルの外壁において、軒天部分にもガラスを組み込んだユニットを設けることで、デザイン性を向上させたビルを設計することが求められた。
この場合、一般的なユニットを用い、上下の外壁ユニットと、軒天ユニットとを、連結用の捨枠を介して連結することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-67888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、捨枠を用いると、捨枠と外壁ユニットとの間にレインバリアおよびウィンドバリアを設け、さらに、捨枠と軒天ユニットとの間にもレインバリアおよびウィンドバリアを設ける必要があるため、バリア箇所が増加し、捨枠がある分、見付けが大きくなるという課題がある。
本発明の目的は、外壁ユニットおよび軒天ユニットを用いて外壁を構成でき、バリア箇所も少なくでき、見付けも小さくできる建物外壁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建物外壁構造は、下階の壁ユニットと、軒天ユニットと、上階の壁ユニットとを備える建物外壁構造であって、前記壁ユニットは、上枠、下枠、左右の縦枠を備え、前記軒天ユニットは、前記下階の壁ユニットの前記上枠に対向して配置される軒天入隅枠と、前記上階の壁ユニットの前記下枠に対向して配置される軒天出隅枠とを備え、前記上枠の上面は、屋外端部から屋内端部に向かって斜め上方に向かう傾斜上面とされ、前記下枠の下面は、屋外端部から屋内端部に向かって斜め上方に向かう傾斜下面とされ、前記軒天入隅枠の側面は、下端屋内端部から上端屋内端部に向かって斜め上方に向かう傾斜入隅面とされ、前記軒天出隅枠の側面は、下端屋外端部から上端屋外端部に向かって斜め上方に向かう傾斜出隅面とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の建物外壁構造によれば、外壁ユニットおよび軒天ユニットを用いて外壁を構成でき、バリア箇所も少なくでき、見付けも小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の建物外壁構造を示す斜視図である。
図2】前記建物外壁構造の拡大斜視図である。
図3】前記建物外壁構造に用いられる壁ユニットおよび軒天ユニットの概略構成図であり、(A)は壁ユニットを上下に配置したフラット取合部を示す図であり、(B)は上下の壁ユニットおよび軒天ユニットを配置した直角取合部を示す図である。
図4図2における上階の4つの壁ユニットの横断面図である。
図5】上下の壁ユニットおよび軒天ユニットを軒天ユニットの短辺方向に沿って切断した縦断面図である。
図6】上下の壁ユニットおよび軒天ユニットを軒天ユニットの長辺方向に沿って切断した縦断面図である。
図7】上下の壁ユニットのフラット取合部の縦断面図である。
図8】長辺側の出隅枠と短辺側の入隅枠との接合部を示す分解斜視図である。
図9】長辺側の出隅枠と短辺側の入隅枠との接合部を示す斜視図である。
図10】長辺側の入隅枠と短辺側の入隅枠との接合部を示す斜視図である。
図11】短辺側の出隅枠と長辺側の出隅枠との接合部を示す斜視図である。
図12】短辺側の出隅枠と長辺側の入隅枠との接合部を示す斜視図である。
図13】軒天ユニットの変形例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の建物外壁構造が採用された建物1の外観の一部を示す斜視図であり、図2は、その拡大斜視図である。
建物1は、一般的なカーテンウォールユニット2の他に、壁ユニット10と、軒天ユニット30とを備えている。
壁ユニット10および軒天ユニット30は、図2に示すように、下階よりも上階が屋外側に突出したオーバーハングとなる外壁を構成するために用いられている。
【0010】
壁ユニット10は、上枠11、下枠12および左右の縦枠13、14と、これらの枠で保持される面材15とを備えて構成されている。なお、本実施形態では、壁ユニット10を屋外側から見た際に、左側に位置する縦枠を縦枠13とし、右側に位置する縦枠を縦枠14としている。
軒天ユニット30は、四方枠を構成する4つの枠31~34と、これらの枠内に配置される扉36とを備えて構成されている。なお、図2に示す軒天ユニット30では、4つの枠31~34は、下階の壁ユニット10の上枠11に沿って配置される短辺側の軒天入隅枠31および長辺側の軒天入隅枠32と、上階の壁ユニット10の下枠12に沿って配置される短辺側の軒天出隅枠33および長辺側の軒天出隅枠34とで構成されている。
【0011】
壁ユニット10の上枠11および下枠12と、軒天ユニット30の軒天入隅枠31、32および軒天出隅枠33、34は、図3に示すように、45°に傾斜された斜め枠で構成されている。
壁ユニット10において、上枠11の上面は、屋外端部から屋内端部に向かって45°の角度で斜め上方に向かう傾斜上面110とされ、下枠12の下面は、屋外端部から屋内端部に向かって45°の角度で斜め上方に向かう傾斜下面120とされている。
軒天ユニット30において、軒天入隅枠31、32の側面は、下端屋内端部から上端屋内端部に向かって45°の角度で斜め上方に向かう傾斜入隅面310とされ、軒天出隅枠33、34の側面は、下端屋外端部から上端屋外端部に向かって45°の角度で斜め上方に向かう傾斜出隅面330とされている。
【0012】
そして、図3(A)に示すように、上下に壁ユニット10を配置し、フラット取合部を構成する場合は、上階の壁ユニット10の下枠12と、下階の壁ユニット10の上枠11とを対向配置し、上枠11、下枠12にレインバリア51と、ウィンドバリア52との二重のシール材を取付けて止水ラインを構成している。
また、図3(B)に示すように、上階の壁ユニット10を下階の壁ユニット10よりも屋外側に配置し、これらの間に軒天ユニット30を配置してオーバーハングさせて出隅および入隅の直角取合部を構成する場合は、上階の壁ユニット10の下枠12と、軒天ユニット30の軒天出隅枠33、34とを対向配置し、下階の壁ユニット10の上枠11と、軒天ユニット30の軒天入隅枠31、32とを対向配置し、上枠11、下枠12および軒天入隅枠31、32、軒天出隅枠33、34にレインバリア51と、ウィンドバリア52との二重のシール材を取付けて止水ラインを構成している。
【0013】
このため、各ユニット10、30間に捨枠を配置した場合に比べると、各取合部におけるバリア箇所が半分となる。例えば、フラット取合部において捨枠を設けた場合、上階の壁ユニット10の下枠12および捨枠間と、下階の壁ユニット10の上枠11および捨枠間の2箇所で、それぞれレインバリアおよびウィンドバリアを配置する必要がある。したがって、図3(A)に示すように、上下の壁ユニット10間の1箇所のみに、レインバリア51およびウィンドバリア52を設ければよい本実施形態は、捨枠を設けた場合に比べてバリア箇所を半分にできる。
【0014】
[壁ユニットおよび軒天ユニットの構成]
以下、壁ユニット10および軒天ユニット30の詳細について、図2および図4~7を参照して説明する。
図2に示すように、上階には、出隅コーナーを構成する壁ユニット10Aおよび壁ユニット10Bと、入隅コーナーを構成する壁ユニット10Cおよび壁ユニット10Dとが配置されている。また、下階には、入隅コーナーを構成する壁ユニット10Eおよび壁ユニット10Fと、出隅コーナーを構成する壁ユニット10Gおよび壁ユニット10Hとが配置されている。
上階の壁ユニット10B、10Cは、下階の壁ユニット10F、10Gよりも屋外側に突出して配置され、このオーバーハング部分には軒天ユニット30が配置されている。
これらの壁ユニット10A~10Hにおいて、壁ユニット10A、10D、10E、10Hは、上枠11または下枠12が、他の壁ユニット10A、10D、10E、10Hの上枠11または下枠12に対向配置されるフラット取合部を含むため、第1壁ユニットである。また、壁ユニット10B、10C、10F、10Gは、上枠11および下枠12が、軒天ユニット30の軒天入隅枠31、32または軒天出隅枠33、34に対向配置される直角取合部を含むため、第2壁ユニットである。
なお、各壁ユニット10Aから壁ユニット10Hでは、縦枠13を縦枠13Aから縦枠13Hと表現し、縦枠14を縦枠14Aから縦枠14Hと表現する。
【0015】
図4図2の上階の4つの壁ユニット10A~10Dの横断面図であり、図5は壁ユニット10Bの下枠12、軒天ユニット30、壁ユニット10Fの上枠11部分を、軒天ユニット30の短辺方向に沿って切断した縦断面図である。図6は、壁ユニット10Aの下枠12、軒天ユニット30、壁ユニット10Hの上枠11部分を、軒天ユニット30の長辺方向に沿って切断した縦断面図である。図7は、壁ユニット10Aの下枠12および壁ユニット10Eの上枠11部分の縦断面図である。
【0016】
図4に示すように、出隅コーナーに配置される壁ユニット10Aの縦枠13Aと、壁ユニット10Bの縦枠14Bとは、90°の出隅コーナーを区画するため、45°の斜め枠で構成されている。縦枠13A、14Bは、左右対称の同一断面形状のアルミ押出形材で構成され、支柱などの構造材90に上下2箇所で、ファスナー91、ブラケット92を介して連結されている。
縦枠13A、14Bは、押縁16と共に面材15である複層ガラスを保持する保持部131、141と、レインバリア51を保持する保持溝部132、142と、ウィンドバリア52を保持する保持溝部133、143とを備える。
【0017】
壁ユニット10Bの縦枠13Bと、壁ユニット10Cの縦枠14Cとは、各壁ユニット10B、10Cが左右方向に直線状に並ぶフラットな連結部に配置されるため、見込み方向が壁ユニット10B、10Cの左右方向に対して直交方向となるように配置された垂直枠で構成されている。
これらの縦枠13B、14Cも、押縁16とともに面材15を保持する保持部131、141と、レインバリア51を保持する保持溝部132、142と、ウィンドバリア52を保持する保持溝部133、142とを備える。
【0018】
壁ユニット10Cの縦枠13Cと、壁ユニット10Dの縦枠14Dとは、90°の入隅コーナーを区画するため、45°の斜め枠で構成されている。縦枠13C、14Dは、左右対称の同一断面形状のアルミ押出形材で構成され、支柱などの構造材に、ファスナー91、ブラケット92を介して連結されている。
縦枠13C、14Dは入隅用である点で、出隅用の縦枠13A、14Bと断面形状が異なり、押縁16と共に面材15である複層ガラスを保持する保持部131、141と、レインバリア51を保持する保持溝部132、142と、ウィンドバリア52を保持する保持溝部133、143とを備える。
【0019】
各壁ユニット10は、縦枠13、14間に、上枠11、下枠12を配置してネジで固定されている。すなわち、上枠11、下枠12の長手方向の端面を、縦枠13、14に合わせて切断し、シーラーを挟んで縦枠13、14の側面に当接させている。例えば、斜め枠である縦枠13A、14B、13C、14Dに当接される上枠11、下枠12の端面は、斜め枠に合わせて45°の角度で切断されている。そして、縦枠13、14から上枠11、下枠12に形成されているビスホールにネジ95をねじ込むことで固定している。
なお、壁ユニット10E~10Hにおいても、壁ユニット10A~10Dと同様に構成されている。
【0020】
図5、6に示すように、壁ユニット10の上枠11および下枠12は、屋外側から屋内側に向かって45°の角度で斜め上方に向かう斜め枠とされている。
上枠11、下枠12は、縦枠13、14にネジ固定されており、縦枠13、14は梁などの構造材90に、ファスナー91、ブラケット92を介して連結されている。
上枠11は、押縁16と共に面材15である複層ガラスを保持する保持部111と、レインバリア51を保持する保持溝部112と、ウィンドバリア52を保持する保持溝部113とを備える。
下枠12は、押縁16と共に面材15である複層ガラスを保持する保持部121と、レインバリア51を保持する保持溝部122と、ウィンドバリア52を保持する保持溝部123とを備える。
【0021】
軒天ユニット30は、前述したように、短辺側の軒天入隅枠31と、長辺側の軒天入隅枠32と、短辺側の軒天出隅枠33と、長辺側の軒天出隅枠34とを備える。なお、軒天ユニット30は、梁などの構造材90に直接連結されず、構造材90に連結されている壁ユニット10に連結材93を介して連結されている。
図6に示すように、軒天入隅枠31は45°の斜め枠で構成され、下側の壁ユニット10Hの上枠11と共に入隅コーナーに配置されている。軒天入隅枠31は、アルミ押出形材で構成され、レインバリア51を保持する保持溝部312と、ウィンドバリア52を保持する保持溝部313とを備える。
図5に示すように、軒天入隅枠32は45°の斜め枠で構成され、下側の壁ユニット10Fの上枠11と共に入隅コーナーに配置されている。軒天入隅枠32は、軒天入隅枠31と同一断面のアルミ押出形材で構成され、レインバリア51を保持する保持溝部322と、ウィンドバリア52を保持する保持溝部323とを備える。
【0022】
図6に示すように、軒天出隅枠33は45°の斜め枠で構成され、上側の壁ユニット10Aの下枠12と共に出隅コーナーに配置されている。軒天出隅枠33は、アルミ押出形材で構成され、レインバリア51を保持する保持溝部332と、ウィンドバリア52を保持する保持溝部333とを備える。
図5に示すように、軒天出隅枠34は45°の斜め枠で構成され、上側の壁ユニット10Bの下枠12と共に出隅コーナーに配置されている。軒天出隅枠34は、軒天出隅枠33と同一断面のアルミ押出形材で構成され、レインバリア51を保持する保持溝部342と、ウィンドバリア52を保持する保持溝部343とを備える。
【0023】
軒天ユニット30には、図5、6に示すように、開閉可能な扉36が設けられている。扉36は、四方に組まれた保持枠361と、保持枠361に保持された熱線反射ガラス362およびアクリル板363と、軒天入隅枠32および保持枠361に固定された丁番364と、軒天入隅枠31および軒天出隅枠33と保持枠361との間に連結された一対のダンパー365と、軒天出隅枠34と係合する状態および非係合の状態に切り替えて扉36を閉鎖状態と開閉可能な状態とに切り替える締め金具366とを備えている。
扉36の上方には、各枠31~34に連結された照明ボックス37が配置され、照明ボックス37内には図示略の照明器具が配置されている。この照明器具を点灯させると、扉36内のアクリル板363および熱線反射ガラス362を介して光が照射され、軒天ユニット30部分を点灯させることができる。また、扉36を開くことで、照明器具の点検や交換作業を行うことができる。
【0024】
図7に示すように、垂直方向にフラットな取り合いとなる壁ユニット10A、壁ユニット10Eの連結部分は、下枠12および上枠11が斜め45°の目地を介して対向配置される。この際、保持溝部113、123には、幅広のウィンドバリア52Aが保持される。すなわち、軒天ユニット30等に用いられている通常幅のウィンドバリア52を、フラットな取り合いとなる壁ユニット10A、10Eに用いるとウィンドバリア52の密着面積が小さくなり、気密性能の確保が難しくなる。
このため、本実施形態では、上枠11または下枠12が、少なくとも他の壁ユニット10の上枠11または下枠12に対向配置されるフラット取合部を含む第1壁ユニットである壁ユニット10A、10D、10E、10Hにおいて、前記フラット取合部に配置される上枠11や下枠12には、幅広のウィンドバリア52Aを取り付けている。また、壁ユニット10A、10D、10E、10Hにおいて、フラット取合部以外に配置される上枠11、下枠12、縦枠13、14には、幅広のウィンドバリア52Aを取り付けてもよいが、通常は、ウィンドバリア52Aよりも幅の狭い通常幅のウィンドバリア52を取り付ければよい。壁ユニット10A、10D、10E、10Hにおいて、フラット取合部に幅広のウィンドバリア52Aを取り付け、フラット取合部以外に通常幅のウィンドバリア52を取り付ける場合、ウィンドバリア52Aの端部と、ウィンドバリア52の端部とは、シリコーンスポンジ等で構成されたコーナーピース(図示略)を介して連結されている。
一方、上枠11や下枠12が、軒天ユニット30の軒天入隅枠31、32または軒天出隅枠33、34に対向配置される直角取合部を含む第2壁ユニットである壁ユニット10B、10C、10F、10Gには、ウィンドバリア52Aよりも幅の狭い通常幅のウィンドバリア52を四周連続して取り付けている。
【0025】
次に、軒天ユニット30の軒天入隅枠31、32および軒天出隅枠33、34の連結構造について、図8から図12を参照して説明する。
軒天ユニット30は、図8に例示するように、短辺側の軒天入隅枠31、軒天出隅枠33の端面を、長辺側の軒天入隅枠32、軒天出隅枠34の側面に突き合わせ、軒天入隅枠32、軒天出隅枠34から軒天入隅枠31、軒天出隅枠33のビスホール38にネジ39を螺合して固定している。この際、軒天入隅枠31、32は同一断面形状であり、軒天出隅枠33、34は同一断面形状であるため、軒天入隅枠32、軒天出隅枠34のビスホール38の位置からネジ39を螺合することになる。このため、各ビスホール38の開口溝部分は、ネジ39の頭部が隙間無く当接できるように、フラットな面とされている。
また、各枠31~34は、45°の傾斜された斜め枠であるため、図8に示すように、各枠31~34の長手方向の端面は45°の角度で切断され、さらに、軒天入隅枠32、軒天出隅枠34の側面に軒天入隅枠31、軒天出隅枠33の端面が密着する形状に加工されている。
さらに、各枠31~34は、軒天入隅枠31、軒天出隅枠33の端面と、軒天入隅枠32、軒天出隅枠34の側面との間に、シーラーを介在させた状態でネジ39を螺合することで接合されている。
【0026】
図9は、図8に示す長辺側の軒天出隅枠34と、短辺側の軒天入隅枠31との接合部を示す斜視図である。
同様に、図10は、長辺側の軒天入隅枠32と、短辺側の軒天入隅枠31との同一断面形材同士の接合部を示す斜視図である。図11は、短辺側の軒天出隅枠33と、長辺側の軒天出隅枠34との同一形材同士の接合部を示す斜視図である。図12は、短辺側の軒天出隅枠33と、長辺側の軒天入隅枠32との接合部を示す斜視図である。
これらの各接合部においても、短辺側の軒天入隅枠31、軒天出隅枠33の端面と、長辺側の軒天入隅枠32、軒天出隅枠34の側面とを、シーラーを挟んで当接させて、軒天入隅枠32、軒天出隅枠34から軒天入隅枠31、軒天出隅枠33のビスホール38にネジ39を螺合して接合している。
【0027】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、上枠11、下枠12が斜め枠とされた壁ユニット10と、各枠31~34が斜め枠とされた軒天ユニット30とを備えるため、上下に壁ユニット10を配置することで垂直方向にフラットな外壁部分を構成でき、上下の壁ユニット10と軒天ユニット30とを組み合わせることで入隅および出隅を有するオーバーハング部分を構成できる。この際、各枠11、12、31~34が斜め枠とされているので、各枠を直接対向させて配置でき、別途、捨枠を設ける必要が無いため、バリア箇所を少なくでき、見付けも小さくでき、シンプルな構成でフラット取合部および直角取合部を有する外壁を実現できる。このため、図1に示すような、建物1の角部が凹凸形状となっているデザイン性に優れた建物1を実現できる。
【0028】
また、各枠11、12、31~34を斜め枠として対向配置できるため、各ユニット10、30の周囲に配置した環状ガスケットであるレインバリア51、ウィンドバリア52によって目地部分のシール性能を確保できる。このため、外部から足場を組んで湿式シール処理を施す必要が無いため、施工性やメンテナンス性に優れた乾式のカーテンウォールを実現できる。
【0029】
さらに、第1壁ユニットである壁ユニット10A、10D、10E、10Hには、フラット取合部に配置される上枠11や下枠12に幅広のウィンドバリア52Aを取り付けているので、フラット取合部において下枠12および上枠11間でウィンドバリア52Aを確実に密着できる。このため、レインバリア51およびウィンドバリア52、52A間に外気圧と等圧の等圧空間を有する等圧カーテンウォールを実現できる。
【0030】
軒天ユニット30は、隣り合う軒天入隅枠31と軒天入隅枠32とを同一断面形状の形材で構成し、隣り合う軒天出隅枠33と軒天出隅枠34とを同一断面形状の形材で構成したので、2種類の形材で軒天ユニット30を構成できる。このため、形材費用をコストダウンできるとともに、壁ユニット10との形材取り合い種類を、壁ユニット10の上枠11および軒天入隅枠31、32と、壁ユニット10の下枠12および軒天出隅枠33、34との2種類に統一できる。
【0031】
また、各枠31~34のビスホール38の開口面をフラット面とすることで、ビスホール38の開口面からネジ39をねじ込んだ際に、ネジ39の頭部をビスホール38の開口フラット面に当接でき、ネジ39を確実にかつ安定して締め込むことができる。
さらに、各枠31~34は、端部を45°の角度で切断し、かつ、一方の枠32、34の側面に、他方の枠31、33の端面をシーラーを介して当接させてネジ39で固定しているので、シンプルな構成で軒天ユニット30を組み立てることができ、コストを低減できる。
【0032】
さらに、幅広なウィンドバリア52Aは、第1壁ユニットのみに設置し、第2壁ユニットや軒天ユニット30には通常幅のウィンドバリア52を設置しているので、高コストのウィンドバリア52Aの使用量を少なくできる。
【0033】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、軒天ユニット30は、2つの軒天入隅枠31、32と、2つの軒天出隅枠33、34とを備えるものに限定されない。例えば、図13(A)に示すように、3つの軒天入隅枠31、32と、1つの軒天出隅枠34とを備えた軒天ユニット30Aでもよい。また、図13(B)に示すように、3つの軒天出隅枠33、34と、1つの軒天入隅枠32とを備えた軒天ユニット30Bでもよい。
これらの軒天ユニット30A、30Bを用いれば、建物の外壁に様々な凹凸形状を構成でき、建物の外装デザインの自由度を向上できる。
【0034】
前記実施形態では、垂直方向に配置される壁ユニット10A、10D、10E、10Hにそれぞれ幅広のウィンドバリア52Aを取り付けていたが、上下に配置される2つの壁ユニットの一方のみに幅広のウィンドバリア52Aを取付け、他方には通常のウィンドバリア52を取り付けてもよい。一方の壁ユニット10に幅広のウィンドバリア52Aが設けられていれば、他方の壁ユニット10に通常幅のウィンドバリア52を設けていても、ウィンドバリア52、52Aを密着させてシール性能を確保できるためである。
【0035】
壁ユニット10の上枠11、下枠12や、軒天ユニット30の軒天入隅枠31、32、軒天出隅枠33、34は、前記実施形態の構成に限定されない。すなわち、傾斜上面110、傾斜下面120、傾斜入隅面310、傾斜出隅面330を備えて、捨枠を介さずに直角取合部を構成できればよい。
【0036】
[発明のまとめ]
本発明の建物外壁構造は、下階の壁ユニットと、軒天ユニットと、上階の壁ユニットとを備える建物外壁構造であって、前記壁ユニットは、上枠、下枠、左右の縦枠を備え、前記軒天ユニットは、前記下階の壁ユニットの前記上枠に対向して配置される軒天入隅枠と、前記上階の壁ユニットの前記下枠に対向して配置される軒天出隅枠とを備え、前記上枠の上面は、屋外端部から屋内端部に向かって斜め上方に向かう傾斜上面とされ、前記下枠の下面は、屋外端部から屋内端部に向かって斜め上方に向かう傾斜下面とされ、前記軒天入隅枠の側面は、下端屋内端部から上端屋内端部に向かって斜め上方に向かう傾斜入隅面とされ、前記軒天出隅枠の側面は、下端屋外端部から上端屋外端部に向かって斜め上方に向かう傾斜出隅面とされていることを特徴とする。
本発明によれば、上面が傾斜上面とされた上枠と、下面が傾斜下面とされた下枠を有する壁ユニットと、斜め枠とされて傾斜入隅面および傾斜出隅面を有する軒天入隅枠および軒天出隅枠を有する軒天ユニットとを備えるため、上下に壁ユニットを配置することで垂直方向にフラットな外壁部分を構成でき、上下の壁ユニットと軒天ユニットとを組み合わせることで入隅および出隅を有するオーバーハング部分を構成できる。この際、各枠の対向面が傾斜面とされているので、各枠を直接対向させて配置でき、別途、捨枠を設ける必要が無いため、バリア箇所を少なくでき、見付けも小さくでき、シンプルな構成でフラット取合部および直角取合部を有する外壁を実現できる。
【0037】
本発明の建物外壁構造において、前記壁ユニットおよび前記軒天ユニットの外周には、レインバリアおよびウィンドバリアがそれぞれ設けられ、前記壁ユニットは、前記上枠または前記下枠が、他の壁ユニットの前記上枠または前記下枠に対向配置されるフラット取合部を含む第1壁ユニットと、前記上枠および前記下枠が、前記軒天ユニットの前記軒天入隅枠または前記軒天出隅枠に対向配置される直角取合部を含む第2壁ユニットと、を備え、前記第1壁ユニットの少なくとも前記フラット取合部に配置される枠に設けられるウィンドバリアは、前記第2壁ユニットに設けられるウィンドバリアよりも幅広であることが好ましい。
本発明によれば、壁ユニットおよび軒天ユニットの周囲に配置した環状ガスケットであるレインバリアおよびウィンドバリアによって目地部分のシール性能を確保できる。このため、外部から足場を組んで湿式シール処理を施す必要が無いため、施工性やメンテナンス性に優れた乾式のカーテンウォールを実現できる。
さらに、第1壁ユニットの少なくともフラット取合部に配置される枠には、幅広のウィンドバリアを取り付けているので、フラット取合部において下枠および上枠間でウィンドバリアを確実に密着できる。このため、レインバリアおよびウィンドバリア間に外気圧と等圧の等圧空間を有する等圧カーテンウォールを実現できる。
【0038】
本発明の建物外壁構造において、前記軒天ユニットは、同一断面形状の形材で構成された2本の軒天入隅枠と、同一断面形状の形材で構成された2本の軒天出隅枠とを備え、2本の軒天入隅枠の一方の端部同士を連結し、2本の軒天出隅枠の一方の端部同士を連結し、2本の軒天入隅枠の他方の端部を2本の軒天出隅枠の他方の端部にそれぞれ連結して四周枠組みされていることが好ましい。
本発明によれば、軒天ユニットは、隣り合う軒天入隅枠と軒天入隅枠とを同一断面形状の形材で構成し、隣り合う軒天出隅枠と軒天出隅枠とを同一断面形状の形材で構成したので、2種類の形材で軒天ユニットを構成できる。このため、形材費用をコストダウンできるとともに、壁ユニットとの形材取り合い種類を、壁ユニットの上枠および軒天入隅枠と、壁ユニットの下枠および軒天出隅枠との2種類に統一できる。
【0039】
本発明の建物外壁構造において、前記軒天ユニットは、同一断面形状の形材で構成された3本の軒天入隅枠と、1本の軒天出隅枠とを備え、3本の軒天入隅枠と、1本の軒天出隅枠との端部同士を連結して四周枠組みされていることが好ましい。
本発明によれば、軒天ユニットは、軒天入隅枠を同一断面形状の形材で構成したので、軒天入隅枠および軒天出隅枠の2種類の形材で軒天ユニットを構成できる。このため、形材費用をコストダウンできるとともに、壁ユニットとの形材取り合い種類を、壁ユニットの上枠および軒天入隅枠と、壁ユニットの下枠および軒天出隅枠との2種類に統一できる。
【0040】
本発明の建物外壁構造において、前記軒天ユニットは、同一断面形状の形材で構成された3本の軒天出隅枠と、1本の軒天入隅枠とを備え、3本の軒天出隅枠と、1本の軒天入隅枠との端部同士を連結して四周枠組みされていることが好ましい。
本発明によれば、軒天ユニットは、軒天出隅枠を同一断面形状の形材で構成したので、軒天入隅枠および軒天出隅枠の2種類の形材で軒天ユニットを構成できる。このため、形材費用をコストダウンできるとともに、壁ユニットとの形材取り合い種類を、壁ユニットの上枠および軒天入隅枠と、壁ユニットの下枠および軒天出隅枠との2種類に統一できる。
【0041】
本発明の建物外壁構造において、前記軒天入隅枠および前記軒天出隅枠は、長手方向に連続するビスホールを有し、前記ビスホールには前記長手方向に沿ったフラットな面が形成され、前記軒天ユニットを構成する軒天入隅枠および軒天出隅枠の4本の枠は、短辺側または長辺側の一方の枠の端面を、他方の枠の側面にシーラーを挟んで当接させ、他方の枠から一方の枠のビスホールにネジをねじ込んで接合していることが好ましい。
本発明によれば、各枠のビスホールにフラット面を形成したので、他方の枠のビスホールからネジをねじ込んだ際に、ネジの頭部をビスホールのフラット面に当接でき、ネジを確実にかつ安定して締め込むことができる。
また、各枠は、一方の枠の側面に、他方の枠の端面をシーラーを介して当接させてネジで固定しているので、シンプルな構成で軒天ユニットを組み立てることができ、コストを低減できる。
【符号の説明】
【0042】
1…建物、2…カーテンウォールユニット、10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H…壁ユニット、11…上枠、12…下枠、13、13A、13B、13C、13H、14、14A、14B、14C、14D、14H…縦枠、15…面材、16…押縁、30、30A、30B…軒天ユニット、31、32…軒天入隅枠、33、34…軒天出隅枠、36…扉、37…照明ボックス、38…ビスホール、39…ネジ、51…レインバリア、52、52A…ウィンドバリア、90…構造材、91…ファスナー、92…ブラケット、93…連結材、95…ネジ、110…傾斜上面、111…保持部、112、113…保持溝部、120…傾斜下面、121…保持部、122、123…保持溝部、131…保持部、132、133…保持溝部、141…保持部、142、143…保持溝部、310…傾斜入隅面、312…保持溝部、313、322、323…保持溝部、330…傾斜出隅面、332、333、342、343…保持溝部、361…保持枠、362…熱線反射ガラス、363…アクリル板、364…丁番、365…ダンパー、366…締め金具。
図1
図2
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図4
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図13