(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】操作つまみ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/06 20060101AFI20231102BHJP
H01H 25/00 20060101ALI20231102BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20231102BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231102BHJP
G06F 3/0362 20130101ALI20231102BHJP
【FI】
H01H25/06 E
H01H25/00 S
H01H25/00 N
G06F3/041
G06F3/044 Z
G06F3/0362 461
(21)【出願番号】P 2020059307
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健二
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/174092(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/098055(WO,A1)
【文献】特開2016-103389(JP,A)
【文献】特開2008-016298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 25/06
H01H 25/00
G06F 3/041
G06F 3/044
G06F 3/0362
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状で、表示パネルに対して軸線が交差するように配置されるホルダと、
前記軸線周りの回転が許容されるように前記ホルダ内に配置された環状のロータと、
前記ロータに対して、前記軸線に沿った方向の相対移動が許容され、前記軸線を中心とする周方向の相対移動が規制されたノブと、
前記軸線に沿った方向への前記ノブの移動に連動して前記軸線に沿って移動可能で、導電性を有する第1伝達部材と、
前記ロータと一体に回転可能で、導電性を有する第2伝達部材と
を備え、
前記ノブは、
前記ホルダの外周を取り囲む筒状で、遮光性を有する外壁部と、
前記外壁部の前記表示パネルとは反対側の端に連なる外側部と、前記外側部よりも前記軸線側に位置する内側部とを有する環状で、遮光性を有する端壁部と、
前記端壁部の前記内側部に連なり、前記ロータの内部空間を覆い、前記表示パネル側の光を逆側へ透過可能な窓部と
を備える、操作つまみ装置。
【請求項2】
前記外壁部及び前記端壁部は不透明であり、前記窓部は無色透明又は有色透明である、請求項1に記載の操作つまみ装置。
【請求項3】
前記窓部は、所定曲率で隆起した曲面を有する、請求項2に記載の操作つまみ装置。
【請求項4】
前記ノブは、前記外壁部、前記端壁部及び前記窓部を一体成形した樹脂成形品である、請求項1から3のいずれか1項に記載の操作つまみ装置。
【請求項5】
前記窓部は、前記端壁部に対して面一に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の操作つまみ装置。
【請求項6】
前記窓部と前記端壁部の間には前記表示パネル側へ窪む凹溝が設けられている、請求項5に記載の操作つまみ装置。
【請求項7】
前記ノブは、前記端壁部の前記内側部に連なり、前記外壁部に対して間隔をあけて位置する筒状で、遮光性を有する内壁部を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の操作つまみ装置。
【請求項8】
前記ノブは、前記端壁部の前記内側部に連なり、前記外壁部に対して間隔をあけて位置する筒状で、遮光性を有する内壁部を備え、
前記窓部は、前記内壁部を介して前記端壁部の前記内側部に連なるように、前記内壁部の内側に設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の操作つまみ装置。
【請求項9】
前記窓部は、前記内壁部における前記表示パネル側の端に設けられている、請求項8に記載の操作つまみ装置。
【請求項10】
前記第1伝達部材及び前記第2伝達部材は、前記外壁部と前記内壁部の間に配置されている、請求項7から9のいずれか1項に記載の操作つまみ装置。
【請求項11】
前記第1伝達部材は、前記軸線を中心とする円弧状であり、
前記第2伝達部材は、前記第1伝達部材に対して同心円上に位置するように、前記第1伝達部材の両端間に配置されている、請求項10に記載の操作つまみ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作つまみ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置又はセンターディスプレイ等の車載製品には、静電容量方式のタッチ検出機能を備えた表示パネルが搭載されている。車載製品を操作する場合、凹凸がない表示パネルの定められた操作領域に指を当てる必要があるため、ユーザは操作領域の位置を目で確認する必要がある。
【0003】
特許文献1には、表示パネルの表面に配置する操作つまみ装置が開示されている。操作つまみ装置は、表示パネルに固着されるホルダ、プッシュ式のボタン、及び回転式のノブを備える。ボタン内の伝達部材の接近によって表示パネルの静電容量が変化することで、表示パネルはボタンのプッシュ操作を検出できる。ノブ内の伝達部材によって静電容量が変化する位置が移動することで、表示パネルはノブの回転操作を検出できる。操作つまみ装置が表示パネルから突出しているため、ユーザは表示パネルを見ることなく車載製品を操作できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
伝達部材に液体が付着すると、伝達部材の導電性が低下するため、表示パネルの検出性能に影響を及ぼす虞がある。
特許文献1では、プッシュ式のボタンと回転式のノブとの間の隙間から水を含む液体が浸入する虞があるため、防水性について改善の余地がある。
【0006】
本発明は、外部から内部への液体の浸入を防止できる操作つまみ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、筒状で、表示パネルに対して軸線が交差するように配置されるホルダと、前記軸線周りの回転が許容されるように前記ホルダ内に配置された環状のロータと、前記ロータに対して、前記軸線に沿った方向の相対移動が許容され、前記軸線を中心とする周方向の相対移動が規制されたノブと、前記軸線に沿った方向への前記ノブの移動に連動して前記軸線に沿って移動可能で、導電性を有する第1伝達部材と、前記ロータと一体に回転可能で、導電性を有する第2伝達部材とを備え、前記ノブは、前記ホルダの外周を取り囲む筒状で、遮光性を有する外壁部と、前記外壁部の前記表示パネルとは反対側の端に連なる外側部と、前記外側部よりも前記軸線側に位置する内側部とを有する環状で、遮光性を有する端壁部と、前記端壁部の前記内側部に連なり、前記ロータの内部空間を覆い、前記表示パネル側の光を逆側へ透過可能な窓部とを備える、操作つまみ装置を提供する。
【0008】
本態様では、1個のノブのプッシュ操作及び回転操作を表示パネルに伝達できる。詳しくは、ノブをプッシュ操作すると、ロータの第1端側に配置された第1伝達部材が表示パネルに向けて一体に移動する。表示パネルは、導電性を有する第1伝達部材の接近によって静電容量が変化することで、ノブのプッシュ操作を検出できる。ノブを回転操作すると、ロータと第2伝達部材とが一体に回転する。表示パネルは、導電性を有する第2伝達部材の回転によって静電容量が変化する位置が移動することで、ノブの回転操作を検出できる。
【0009】
ノブは、ホルダを取り囲む外壁部と外壁部に連なる端壁部とを備え、端壁部の内側部は、内側部に連なる窓部によって塞がれている。よって、ノブの外部から内部への液体の浸入を防止できる。その結果、内部に侵入した液体によって伝達部材の導電性が低下し、表示パネルの検出性に影響を及ぼすことを防止できる。また、外壁部と端壁部は遮光性を有し、窓部は表示パネル側の光を逆側へ透過可能であるため、操作つまみ装置の機能性を向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の操作つまみ装置では、ノブの外部から内部への液体の浸入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る操作つまみ装置を表示パネルに配置した斜視図。
【
図2B】プッシュ操作した操作つまみ装置の断面図。
【
図4】
図3のロータ、第1伝達部材、第2伝達部材、及びノブの分解斜視図。
【
図6】ロータ、付勢部材、及びスタビライザの分解斜視図。
【
図7】ロータ、第1伝達部材、及び第2伝達部材を表示パネル側から見た分解斜視図。
【
図8】ノブに対するスタビライザの配置を示す側面図。
【
図10A】
図7の第1伝達部材、第2伝達部材、及び保持部材の前方分解斜視図。
【
図10B】
図7の第1伝達部材、第2伝達部材、及び保持部材を後方分解斜視図。
【
図11】第2実施形態に係る操作つまみ装置の断面図。
【
図12】第3実施形態に係る操作つまみ装置の断面図。
【
図13】第4実施形態に係る操作つまみ装置の断面図。
【
図14】第5実施形態に係る操作つまみ装置を構成するノブの一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、表示パネル1に配置した本発明の第1実施形態に係る操作つまみ装置10を示す。表示パネル1は、静電容量の変化によってユーザの操作を検出するタッチ検出機能を備え、ナビゲーション装置又はセンターディスプレイ等の車載製品に搭載され、表示面が上下方向に延びるように配置されている。
【0014】
図1に示すように、操作つまみ装置10は、表示パネル1の定められた操作領域に配置され、表示パネル1から車内側へ突出している。操作つまみ装置10は、全体として厚みを有する円板状であり、上下方向に延びるように配置される表示パネル1に対して、軸線Aが直交方向に延びるように配置されている。操作つまみ装置10は、1個のノブ(操作部材)30を備え、ノブ30のプッシュ操作及び回転操作を表示パネル1に伝達する。
【0015】
図2A及び
図3に示すように、操作つまみ装置10は、ホルダ20、ロータ(基板)25、ノブ30、付勢部材33、伝達部材35、及びフィルム50を備える。接着層52aを備えるフィルム(接着部材)50によって、操作つまみ装置10は表示パネル1の表面に固着されている。本実施形態の伝達部材35は、ノブ30のプッシュ操作を伝達する第1伝達部材36と、ノブ30の回転操作を伝達する第2伝達部材37とを備える。
【0016】
ホルダ20は、表示パネル1に隣接するようにフィルム50に固着されている。ロータ25は、軸線A周りの回転が許容されるようにホルダ20に配置されている。ノブ30は、軸線Aに沿った方向の直動が許容されるようにロータ25に取り付けられ、軸線Aを中心としてロータ25を一体に回転させる。付勢部材33は、ロータ25とノブ30の間に配置され、ノブ30を表示パネル1から離れる向きへ付勢する。第1伝達部材36は、ノブ30に取り付けられ、ノブ30の直動に連動して軸線Aに沿って移動する。第2伝達部材37は、ロータ25に取り付けられ、ロータ25と一体に回転する。
【0017】
図2Bに示すように、ノブ30を表示パネル1に向けてプッシュ操作すると、第1伝達部材36がフィルム50に向けて一体に直動する。表示パネル1は、導電性を有する第1伝達部材36の接近によって静電容量が変化することで、ノブ30のプッシュ操作を検出できる。ノブ30から手を離すと、ノブ30と第1伝達部材36は、付勢部材33によって表示パネル1から離れる向きへ移動(離間)する。表示パネル1は、第1伝達部材36による静電容量の変化が無くなることで、プッシュ操作の解除を検出できる。ノブ30のプッシュ操作では、第2伝達部材37は表示パネル1に接近した状態を維持し、表示パネル1において第2伝達部材37によって静電容量が変化する領域は変化(移動)しない。
【0018】
図2Aの状態でノブ30を回転操作すると、ロータ25と第2伝達部材37がノブ30と同じ向きへ一体に回転する。表示パネル1は、導電性を有する第2伝達部材37の回転によって静電容量が変化する位置が移動(回転)することで、ノブ30の回転操作を検出できる。回転操作が止められると、ロータ25と第2伝達部材37の回転も停止する。表示パネル1は、静電容量が変化する位置が止まることで、回転操作の停止を検出できる。表示パネル1は、静電容量の変化停止位置を検出することで、ユーザが希望する機能の実行、停止、或いは調整量を検出できる。ノブ30の回転操作では、第1伝達部材36は一体に回転するが、表示パネル1から離れた状態を維持するため、第1伝達部材36によって表示パネル1の静電容量は変化しない。
【0019】
このような操作つまみ装置10において、本実施形態では、ノブ30の外部から内部への液体(例えば水を含む飲料)の流入を防止することで、伝達部材36,37の導電性低下を防ぎ、表示パネル1への操作の伝達性向上、つまり表示パネル1がノブ30の操作を確実に検出できるようにする。
【0020】
次に、操作つまみ装置10の構成部品について具体的に説明する。なお、以下の説明では、表示パネル1に最も近いフィルム50側を車外側といい、表示パネル1から最も離れたノブ30の端壁部30b側を車内側ということがある。
【0021】
図3に示すように、ホルダ20は、フィルム50の外周部に固着され、表示パネル1に対して操作つまみ装置10を構成する他の部品を内部に保持する円筒体である。ホルダ20の内側において、後述する内壁部30dの外側部分が他の構成部品を配置する配置領域21Aを構成し、内壁部30dの内側部分が表示パネル1の一部を視認可能とする開口部(内部空間)21Bを構成する。ホルダ20は、絶縁性を有する(つまり導電性がない)樹脂(例えばABS)からなり、円筒状の本体20aの軸線Aが表示パネル1に対して直交方向に延びるように、表示パネル1に配置される。
【0022】
図2Aを併せて参照すると、本体20aの内面20g側には、ロータ25を保持するための保持部20b,20cが設けられている。第1保持部20bは本体20aにおいて車外側に設けられ、第2保持部20cは本体20aにおいて車内側の端部近傍に設けられている。第1保持部20bは、円環状をなすように本体20aから径方向内向きに突出し、ロータ25の外周部を回転可能に保持するするとともに、軸線Aに沿った車外側へのロータ25の移動を規制する。第2保持部20cは、本体20aの内周面の一部からなり、ロータ25の後述する摺接部25cを回転可能に保持するとともに、ロータ25の径方向の移動を規制する。
【0023】
第1保持部20bと第2保持部20cの間に位置するように、ホルダ20の内周部には、径方向内向きに突出する三角柱状の突起20dが周方向へ複数並設されている。周方向に隣り合う突起20d間は、後述する係合部材28を係合する係合溝20eを構成する。突起20dの車内側の端は、ホルダ20の車内側の端よりも車外側に位置し、これらによって段部20fが形成されている。
【0024】
図3及び
図4に示すように、ロータ25は、開口部21Bに連通する開口部(内部空間)26を備える。ロータ25は、軸線Aを中心としてホルダ20の内部に配置(内嵌め)される円環状の板体であり、絶縁性を有する樹脂(例えばPBT)からなる。
図2Aを併せて参照すると、ロータ25は、車外側に配置されてフィルム50(表示パネル1)と対向する第1面25aと、車内側に配置されてフィルム50とは反対側に位置する第2面25bとを備える。ロータ25がホルダ20に配置されることで、第1面25aが第1保持部20bに当接し、第2面25bがホルダ20の車内側端部と面一に位置する。ロータ25の外周部には、第1保持部20bにおける車外側の面に係止する係止片25pが設けられている。第1保持部20bへの係止片25pの係止によって、車内側へのロータ25の移動が規制される。
【0025】
ロータ25の外径は、第1保持部20bの内径よりも大きく、複数の突起20dの先端を結ぶ仮想円(図示せず)の直径よりも小さい。ロータ25の第2面25b側の端部には、径方向外向きに突出し、ホルダ20の段部20fに配置されるとともに、第2保持部20cに摺接する摺接部25cが設けられている。摺接部25cは、周方向に間隔をあけて突出する複数の円弧状の突部からなり、これらの外端を結ぶ仮想円(図示せず)の直径は、複数の突起20dの先端を結ぶ仮想円の直径よりも大きく、第2保持部20cの内径よりも小さい。これによりロータ25は、ホルダ20の内側で軸線Aを中心として回転できる。
【0026】
図3に示すように、ロータ25の外周には、径方向内向きに窪む断面円形状の空間からなる取付穴25dが設けられている。取付穴25d内には、スプリング27と球状の係合部材28とが配置されている。係合部材28の直径は、取付穴25dの直径よりも小さく、係合溝20eの径方向の溝深さよりも大きい。ホルダ20に対してロータ25が回転されると、突起20dの傾斜面によって係合部材28が取付穴25d内へ移動し、スプリング27を収縮させる。スプリング27によって外向きに付勢された係合部材28が係合溝20eに係合することで、ロータ25がホルダ20に対して所定の回転角度位置に保持される。
【0027】
図2Aを参照すると、ロータ25には、軸線Aに沿ってノブ30の移動を許容するための挿通孔25eが設けられている。
図6を参照すると、ロータ25の第2面25b側には、付勢部材33を配置する配置部25f、及び後述するスタビライザ55を配置するための凹部25lが設けられている。
図7を参照すると、ロータ25の第1面25a側には、保持部材42を支持するガイドリブ25h、及び保持部材42(第2伝達部材37)を取り付ける取付部25iが設けられている。これらについては後で詳述する。
【0028】
図3及び
図4に示すように、ノブ30は、操作つまみ装置10を構成するノブ30以外の部品全てを覆うカバーである。ノブ30は、一端を開口して他端を閉鎖した筒状体であり、ホルダ20及びロータ25に対して軸線Aに沿った方向の相対移動が許容され、ロータ25に対して軸線Aを中心とする周方向の相対移動が規制されるように、ロータ25の第2面25b側に配置されている。
【0029】
図2A、
図3及び
図4に示すように、ノブ30は、ホルダ20の外周を取り囲む外壁部30aと、外壁部30aに連なる端壁部30bと、端壁部30bに連なる窓部30cとを備える。また、本実施形態のノブ30は、端壁部30b及び窓部30cに連なる内壁部30dを備える。
【0030】
ノブ30は、絶縁性を有する透明な樹脂(例えばポリカーボネート)によって、外壁部30a、端壁部30b、窓部30c、及び内壁部30dを一体成形した樹脂成形品である。本実施形態では、無色透明の樹脂によって成形されているが、有色透明の樹脂によって成形されてもよい。
【0031】
外壁部30a、端壁部30b及び内壁部30dは、車内側から見て不透明である。言い換えると、窓部30cを除く外壁部30a、端壁部30b及び内壁部30dは、遮光性を有し、光の透過が不可能である。本実施形態では、外壁部30a及び端壁部30bにおいて車内側に位置する表面、並びに内壁部30dにおいて径方向内側に位置する内周面に、不透明な遮光層31を形成することで、乗員が視認できない程度の遮光性が付与されている。
【0032】
窓部30cは、車内側から見て無色透明である。言い換えると、窓部30cは、透光性を有し、表示パネル1の光を車内側へ透過可能である。本実施形態では、窓部30cに遮光層31を設けることなく、窓部30cをノブ30の成形材料である透明樹脂によって構成することで、透光性が付与されている。
【0033】
透光性を有する窓部30cは、車外側から車内側への光の透過、並びに車内側から車外側への光の透過が可能である。但し、窓部30c(ノブ30)は有色透明であってもよい。また、窓部30cは、車外(表示パネル1)側から車内側への光の透過を許容し、車内側から車外側への光の透過を阻止する構成としてもよい。この構成は、フィルム状のハーフミラー層(図示せず)を窓部30cに設けることで得ることができる。
【0034】
このように構成したノブ30は、表示パネル1側の光、より具体的には表示パネル1の表示の一部を、窓部30cを通して視認できるため、操作つまみ装置10の機能性を向上できる。以下、外壁部30a、端壁部30b、窓部30c、及び内壁部30dの形状をより具体的に説明する。
【0035】
外壁部30aは、操作つまみ装置10において最も径方向外側に位置し、車外側から車内側に向けて次第に縮径した円錐筒状である。外壁部30aにおいて車内側の表面には、回転操作時の滑止を図るための滑止部30eが設けられている。滑止部30eは多数の凹凸を備える。この滑止部30eの表面にも遮光層31は設けられている。
【0036】
端壁部30bは、外壁部30a及び内壁部30dにおいて、車内側の端(表示パネル1とは反対側の端)を塞ぐ円環状の部分である。端壁部30bの外側部30b1は、外壁部30aに連なっている。端壁部30bにおいて軸線A側に位置する内側部30b2は、内壁部30d及び窓部30cに連なっている。
【0037】
窓部30cは、端壁部30bに対して面一に設けられ、ロータ25の開口部26を覆っている。窓部30cの外側部は、端壁部30bの内側部30b2に連なるとともに、内壁部30dにおいて車内側の端に連なっている。軸線Aに沿った方向の寸法である窓部30cの厚みは、端壁部30bの厚みと同一である。
【0038】
内壁部30dは、端壁部30bの内側部30b2及び窓部30cの外側部に連なるように設けられ、外壁部30aに対して径方向内側に間隔をあけて位置する。より具体的には、内壁部30dは、円環状のロータ25の開口部26内に配置され、車外側から車内側へ向けて次第に拡径した円錐筒状である。
【0039】
端壁部30bと窓部30cの間には、表示パネル1側へ窪む凹溝30fが設けられている。車内側から見て凹溝30fは、円環状に形成されているが、断続的に設けられた不連続な形状であってもよい。凹溝30fは、遮光層31を設ける際、窓部30cと端壁部30bの境界線として用いることができる。
【0040】
具体的には、
図5に示すように、凹溝30fは、窓部30cを覆うマスキングカバー32Aの取付部として用いることができる。凹溝30fにマスキングカバー32Aの一端開口を嵌め込むことで、ノブ30の車内側の表面において、窓部30cのみを覆い隠すことができる。この状態で、スプレー方式によってノブ30の表面に塗料を吹き付けることによって、外壁部30a及び端壁部30bに遮光層31を形成できる。
【0041】
引き続いて
図5を参照すると、内壁部30dの内周面に遮光層31を設ける際には、窓部30cにおいて表示パネル1と対向する面に、窓部30cを覆うマスキングシート32Bを敷設する。これにより、窓部30cの車外側の表面を覆い隠すことができる。この状態で、内壁部30d内に塗料を吹き付けることによって、内壁部30dの内周面に遮光層31を形成できる。
【0042】
以上のように、ノブ30aは、外壁部30a及び内壁部30dにおいて、車外側の端は開放された開放部30gであり、車内側の端は端壁部30bによって塞がれた構成である。外壁部30a、端壁部30b、及び内壁部30dはこの順で連なり、内壁部30dによって画定された内部空間(内側部30b2)は窓部30cによって塞がれている。
【0043】
軸線Aが延びる方向から見た外壁部30aと内壁部30dの断面形状は、軸線Aを中心とする同心円状である。軸線Aに対して直交する方向から見た外壁部30aと内壁部30dは、端壁部30bから開放部30gに向かうに従って、互いに離反するように傾斜している。開放部30g側に位置する外壁部30aの外端の直径はホルダ20の外径よりも大きく、外壁部30aの外端はロータ25よりも車外側に突出している。開放部30g側に位置する内壁部30dの外端の直径はロータ25の内径よりも小さく、内壁部30dの外端はロータ25よりも車外側に突出している。このように構成された外壁部30aと内壁部30dの間には、ノブ30a以外の全ての部品が収容されている。
【0044】
図2A及び
図4を参照すると、端壁部30bには、ロータ25を貫通して開放部30g側(車外側)へ突出する円筒状のボス(連結部)30hが設けられている。ボス30hは、端壁部30bに対して周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では3個)設けられている。端壁部30b側の端から開放部30g側の端にかけたボス30hの全長は、第2面25bから第1面25aまでのロータ25の厚みよりも長く、内壁部30dの全長よりも短い。
【0045】
図2A及び
図7に示すように、ロータ25には、複数のボス30hにそれぞれ対応する挿通孔25eが設けられている。
図6を参照すると、挿通孔25eの車内側は、スタビライザ55を配置する凹部25lと空間的に連通している。挿通孔25eは、ボス30hの外径よりも大きく、ボス30hが挿通され、軸線Aに沿った方向のボス30hの移動を許容する。これにより、軸線Aに沿った方向において、ロータ25に対するノブ30の相対的な移動が許容される。
【0046】
図4及び
図8を参照すると、ノブ30には、ロータ25に対する軸線Aに沿った方向への移動ガイド、及びロータ25に対する軸線Aを中心とした周方向への移動規制の機能を兼ね備える規制部30iが更に設けられている。規制部30iは、90度間隔をあけてそれぞれ一対設けられている。一対の規制部30iはそれぞれ、互いに対向する向きに突出する概ね三角柱状のリブからなり、これらの間に
図6に示す配置部25fを有するブロック25oが挟み込まれる。
【0047】
図2A及び
図2Bに示すように、付勢部材33は、ロータ25とノブ30の間に配置され、軸線Aに沿ってロータ25から離れる向きへノブ30を付勢する。付勢部材33は、弾性を有するゴム(例えばシリコーンゴム)製であり、概ね円錐筒状に形成されている。但し、付勢部材33は、コイルスプリング又は板バネであってもよいし、ロータ25に設けた切起構造の樹脂バネであってもよい。
【0048】
具体的には、
図4及び
図6に示すように、付勢部材33は、ロータ25の第2面25b側に周方向へ等間隔で複数(本実施形態では4個)配置されている。個々の付勢部材33は、円環状の基部33aと、基部33aから円錐筒状に突出する突出部33bと、突出部33bの先端に設けられた円柱状の頭部33cとを備える。
【0049】
ロータ25の第2面25bには、付勢部材33を配置する配置部25fが設けられている。配置部25fは、基部33aを配置可能な断面円形状の窪みからなり、挿通孔25eとは異なる角度位置に設けられている。軸線Aが延びる方向における配置部25fの深さは、付勢部材33の全高よりも浅く、付勢部材33の頭部33cは第2面25bからノブ30側へ突出している。配置部25fの底には、第1面25aにかけて貫通する貫通孔25gが設けられている。貫通孔25gは、
図2A及び
図2Bに示す付勢部材33の弾性変形に伴う空気の流動を許容する。ノブ30の端壁部30bの内面には、円形状の窪みからなり、付勢部材33の頭部33cを保持する保持部30jが設けられている。
【0050】
図4及び
図7に示すように、伝達部材35を構成する第1伝達部材36と第2伝達部材37は、可撓性及び導電性を有する接続部38によって導通可能に接続されている。これらは、配置領域21Aにおいて、ノブ30の外壁部30aと内壁部30dの間、かつロータ25とフィルム50との間に配置されている。
【0051】
第1伝達部材36はノブ30に取り付けられ、第2伝達部材37はロータ25に取り付けられている。ノブ30のプッシュ操作によって、第1伝達部材36はノブ30の移動に連動して軸線Aに沿って移動するが、第2伝達部材37は移動しない。ノブ30の回転操作によって、第1伝達部材36は一体に回転し、第2伝達部材37はロータ25を介して一体に回転する。つまり、第2伝達部材37に対して第1伝達部材36は、軸線Aに沿って相対移動するが、軸線Aを中心とした周方向には相対移動しない。
【0052】
第1伝達部材36は、導電性を有するゴムからなり、軸線Aを中心とする円弧状(C字状)の板体である。但し、第1伝達部材36は、導電性を有する材料であれば、金属(例えば真鍮)製又は樹脂製であってもよい。第1伝達部材36の第1端36aから第2端36bまでの周方向の角度は、概ね270度である。第1伝達部材36の径方向の幅は、後述する取付部材40の径方向の幅よりも狭い。第1伝達部材36の厚みは、静電容量を大きくするために可能な限り大きくすることが好ましい。本実施形態では生産性を考慮して、幅を5mm、厚みを1mmとしている。
【0053】
第1伝達部材36は、絶縁性を有する樹脂(例えばナイロン)からなる取付部材40を介してノブ30に取り付けられている。第1伝達部材36の内周部には、径方向内向きに突出し、取付部材40の定位置に配置するための位置決め突起36cが設けられている。取付部材40については後で詳述する。
【0054】
図7及び
図9に示すように、第2伝達部材37は、第1伝達部材36とは別体に形成され、接続部38を介して第1伝達部材36に一体化されている。第2伝達部材37は、導電性を有する金属(例えば真鍮)からなる概ね扇型状の板体である。但し、第2伝達部材37は、導電性を有する材料であればゴム製又は樹脂製であってもよい。
【0055】
第2伝達部材37は、第1伝達部材36に対して同心円上に位置するように両端36a,36b間に配置され、保持部材42を介して接続部38に接続されている。保持部材42に配置するために、第2伝達部材37には、矩形状をなすように切り欠いた切欠部37aと、ネジ44を貫通させる貫通部37bとが設けられている。なお、保持部材42については後で詳述する。
【0056】
引き続いて
図7及び
図9を参照すると、接続部38は、第1伝達部材36に一体に設けられ、第1端36a及び第2端36bから突出している。接続部38及び第2伝達部材37を重ね合わせた状態で保持部材42に配置することで、第1伝達部材36と第2伝達部材37が導通可能に接続される。但し、接続部38は、導電性ゴムによって構成した第2伝達部材37に一体に設けられてもよいし、電気的な導通が可能な材料によって第1伝達部材36及び第2伝達部材37とは別体で設けられてもよい。
【0057】
接続部38は、第1伝達部材36に対して同心円上に延びる曲率の円弧状に形成されている。径方向における接続部38の幅は、径方向における第1伝達部材36の幅よりも狭い。これにより、第1伝達部材36の弾性的な変形は抑制する一方、第1伝達部材36に連なる接続部38の弾性的な変形を許容している。本実施形態では、軸線Aに沿った方向における接続部38の厚みは、第1伝達部材36の厚みと同一にしているが、接続部38の弾性的な変形を促進するために、第1伝達部材36の厚みよりも薄くしてもよい。
【0058】
一対の接続部38の先端にはそれぞれ、第2伝達部材37に導通可能に接続するための接続端38aが設けられている。接続端38aは、軸線Aが延びる方向から見て円形状であり、その直径は接続部38の幅よりも大きい。接続端38aの中心には、厚さ方向に貫通した貫通孔38bが設けられている。
【0059】
第1伝達部材36の端36a,36bから接続端38aまでの長さは、ノブ30の非操作状態で、第1伝達部材36と第2伝達部材37の間に余剰(ゆとり)部分を確保できる寸法設定である。この余剰部分によって接続部38は、第2伝達部材37に対する第1伝達部材36の相対移動を許容する。
【0060】
図2A及び
図7に示すように、取付部材40は、第1伝達部材36を覆い隠すことが可能な大きさのC字状の板体である。取付部材40の径方向の幅は、ロータ25の径方向の幅よりも狭い。
【0061】
取付部材40のうちの表示パネル1と対向する面には、第1伝達部材36を配置する凹溝40aが設けられている。凹溝40aは、外側壁40b、内側壁40c、一対の端壁40dによって画定されている。外側壁40bは、第1伝達部材36よりも僅かに大きいC字状であり、第1伝達部材36の位置決め突起36cと対応する部分には位置決め溝40eが設けられている。内側壁40cは連続した無端状のリングである。一対の端壁40dにはそれぞれ、接続部38を挿通する挿通溝40fが設けられている。
【0062】
凹溝40aの深さは、軸線Aが延びる方向の第1伝達部材36の厚みよりも浅く、壁40b~40dの先端から第1伝達部材36が突出する。凹溝40aに第1伝達部材36を取り付ける取付手段には、両面テープ及び接着剤等の接着部材による方式、圧入及び固定片等の機械的構造による方式を用いることができる。
【0063】
図2A及び
図4に示すように、取付部材40には、ネジ(連結部材)41を貫通させる貫通部40gが設けられている。取付部材40には、ロータ25に向けて突出し、貫通孔25nを貫通した規制部30i間に配置されて、ノブ30に対する取付部材40の周方向の相対移動(回転を含む)を規制する位置決め凸部40hが設けられている。取付部材40の外周面には、径方向外向きに突出し、ノブ30の非操作状態で第1保持部20bに当接する当接部40iが設けられている。第1保持部20bへの当接部40iの当接によって、それ以上の車内側へのノブ30の移動、及び第1伝達部材36を含む取付部材40の移動が規制される。
【0064】
図2Aに示すように、貫通部40gを貫通させたネジ41をボス30hに締め付けることで、取付部材40を介して第1伝達部材36がノブ30に連結され、ロータ25に対するこれらの取付状態が維持される。ノブ30の非操作状態で第1伝達部材36は、付勢部材33の付勢によって当接部40iが第1保持部20bに当接することで、ロータ25の第1面25aに近接した位置に後退している。
図2Bに示すように、ノブ30のプッシュ操作によって第1伝達部材36は、軸線Aに沿ってフィルム50に接触する位置まで進出する。
【0065】
図7及び
図9を参照すると、保持部材42は、第2伝達部材37の形状に対応する扇型状の板体である。保持部材42は、ロータ25の第1面25aに配置され、スプリング43によって車外側へ付勢されることで、表示パネル1に第2伝達部材37が常に隣接した状態をなす。
【0066】
図10A及び
図10Bを併せて参照すると、保持部材42の車外側の面には、一対の接続部38の先端をそれぞれ配置する一対の窪み42aが設けられている。窪み42aは、接続端38aを配置する円形状部分と、円形状部分から保持部材42の両側面にかけて延びる矩形状部分とを備える。窪み42aの深さは、接続部38の厚みよりも浅く、保持部材42から接続部38が突出するように構成されている。窪み42aの円形状部分には、貫通孔38bを貫通する円柱状の突出部42bが設けられている。突出部42bの突出寸法は窪み42aの深さよりも小さい。
【0067】
保持部材42の車外側には更に、切欠部37aに位置する位置決め凸部42cがそれぞれ設けられている。位置決め凸部42cの突出寸法は第2伝達部材37の厚みよりも小さく、第2伝達部材37は保持部材42から突出している。保持部材42の中央には、第2伝達部材37をネジ止めするためのネジ孔42dが設けられている。
【0068】
窪み42aに接続端38aを配置した後、その車外側に第2伝達部材37を配置し、貫通部37bを貫通させたネジ44をネジ孔42dに締め付ける。これにより、第2伝達部材37と保持部材42の間に接続部38が圧接状態で挟み込まれることで、接続部38(第1伝達部材36)と第2伝達部材37の導通が確保される。
【0069】
保持部材42の車内側には、スプリング43の一端を配置する円筒状の凸部42eが設けられている。凸部42eは、ネジ孔42dの軸線と同軸に設けられている。保持部材42の周方向の両端には、ロータ25に向けて突出する一対の係止片42fが設けられている。係止片42fは、ロータ25に係止して、ロータ25からの離脱を防ぐための爪部42gを備える。
【0070】
図7を参照すると、ロータ25の第1面25aには、保持部材42の周方向の両端をそれぞれ規制するガイドリブ25hが設けられている。一対のガイドリブ25hはそれぞれ、周方向に延びるように設けられている。一対のガイドリブ25hの間には、保持部材42を取り付ける取付部25iが設けられている。
【0071】
取付部25iは、複数の配置部25fのうちの1つの車外側に隣接して設けられている。
図9を参照すると、取付部25iは、係止片42fが貫通される一対の貫通孔25jと、スプリング43を配置する凹部25kとを備える。貫通孔25jの車内側は、スタビライザ55を配置する凹部25lと空間的に連通している。凹部25kは、車外側から車内側へ窪むように、一対の貫通孔25j間に設けられている。第2面25b側に位置する貫通孔25jの縁と爪部42gとの間には、ロータ25に対する保持部材42の軸線Aに沿った方向の移動を許容する隙間が確保されている。
【0072】
図3を参照すると、フィルム50は、表示パネル1の一部を露出させる開口部51を備え、軸線Aを中心とする円環状の部材である。フィルム50は、絶縁性、耐水性、及び耐熱性に優れた樹脂(例えばPET)からなる。フィルム50は、射出成形によって製造可能な樹脂成形品の壁の最小厚みよりも薄い厚みである。具体的には、フィルム50の厚みは、0.05mm以上0.2mm以下であることが好ましく、本実施形態では0.1mmである。フィルム50は、ホルダ20の車外側端面に固着され、第1伝達部材36及び第2伝達部材37の表示パネル1側を覆う。
【0073】
フィルム50の外径はホルダ20の最大部分の外径と同一であり、フィルム50の内径は内壁部30dの最小部分の内径と概ね同一である。
図2Aを併せて参照すると、フィルム50において、表示パネル1と対向する車外側の面には接着層52aが設けられている。フィルム50の車内側の面には、外周部にホルダ20を固着する接着層52bが設けられている。
【0074】
図4及び
図6に示すように、操作つまみ装置10は、プッシュ操作時にロータ25に対するノブ30の傾きを抑制するスタビライザ55を備える。スタビライザ55は、ロータ25とノブ30の端壁部30bとの間に複数配置されている。本実施形態では、4本のスタビライザ55が軸線Aを中心として周方向へ90度間隔で配置されている。
【0075】
個々のスタビライザ55は、本体55a、一対の基部55b、及び一対の腕部55cを備え、線材によって形成されている。
【0076】
図8に示すように、本体55aは、内壁部30dの径方向外側に隣接して配置されている。ロータ25及びノブ30の径方向に対向するスタビライザ55の本体55aは平行に延び、隣り合うスタビライザ55の本体55aは直交方向に延びている。
【0077】
本体55aは、端壁部30bに突設された保持部30kに回転可能に保持されている。個々の保持部30kは、本体55aの長手方向の両端近傍に位置する第1部分と第2部分をそれぞれ備えており、これらは基部(線材)55aの両側にそれぞれ位置し、本体55aを保持する一対の爪部を備える。
【0078】
基部55bは、腕部55cを介して本体55aに連続し、本体55aに対して平行に延びている。軸線Aが延びる方向から見て、隣り合うスタビライザ55の本体55aと基部55bとは、直交方向に交差している。つまり、第1のスタビライザ55の本体55aと、第1のスタビライザ55と隣り合う第2のスタビライザ55の基部55bとが交差している。
【0079】
図4及び
図6に示すように、基部55bは、ロータ25の第2面25bに形成された凹部25lに配置され、ロータ25の外周部に形成された保持溝25mに保持されている。
【0080】
凹部25lは、挿通孔25e及び配置部25fとは異なる角度位置の4カ所に設けられている。凹部25lは、車内側から車外側へ窪んでおり、基部55bの移動を許容する底面を備える。凹部25lの形成領域、挿通孔25eの形成領域、及び貫通孔25jの形成領域は、空間的に連通している。
【0081】
保持溝25mは、凹部25lと空間的に連通し、凹部25lからロータ25の外周面にかけて貫通した長穴からなる。保持溝25mは、1カ所の凹部25lに2個、合計で8個設けられている。1カ所の凹部25lに形成される一対の保持溝25mは直交方向に延びており、それぞれ異なるスタビライザ55の基部55bが配置される。基部55bの先端を保持溝25m内に配置することで、第2面25bに沿った基部55bの移動が許容されている。
【0082】
図6及び
図8に示すように、腕部55cは、本体55aの外端及び基部55bの内端に連続している。腕部55cは、本体55a及び基部55bに対して直交方向に延びている。前述のように、本体55aがノブ30に保持され、基部55bがロータ25に保持されているため、腕部55cは、凹部25lの底面に対して傾斜している。この傾斜によって、隣り合うスタビライザ55の腕部55cは、干渉することなく三次元的に配置されている。
【0083】
なお、本体55aを保持する保持部をロータ25に設け、基部55bを保持する保持溝をノブ30に設けてもよい。
【0084】
次に、操作つまみ装置10の動作について説明する。
【0085】
図2Aに示すように、ノブ30の非操作状態では、付勢部材33の付勢によってノブ30がロータ25から離反した位置に保持されている。これにより、ボス30hに連結された第1伝達部材36がフィルム50から離れて位置する。また、第2伝達部材37は、スプリング43の付勢によってフィルム50に当接した位置に保持されている。
【0086】
この非操作状態では、表示パネル1において、第1伝達部材36と対向する部分の静電容量は変化せず、第2伝達部材37と対向する部分の静電容量だけが変化する。但し、第2伝達部材37によって静電容量が変化する位置は、所定位置に維持されている。よって、表示パネル1は、ノブ30が操作されていないことを検出できる。
【0087】
ノブ30をプッシュ操作すると、付勢部材33の付勢力に抗してロータ25にノブ30が接近する。この際、ノブ30の直動によってスタビライザ55の本体55aが押圧され、基部55bが凹部25lの底面及び保持溝25mに沿って移動する。これにより、ロータ25に対してノブ30の傾きが抑制される。また、ノブ30の直動によってボス30hを介して第1伝達部材36がフィルム50に接近又は接触する。
【0088】
プッシュ操作によって表示パネル1の静電容量は、第2伝達部材37の対向部分に加え、第1伝達部材36と対向する部分も変化する。よって、表示パネル1の静電容量が変化する領域は、非操作状態と比較して広範囲になる。この静電容量の変化領域の増大によって、表示パネル1はノブ30のプッシュ操作を検出できる。
【0089】
プッシュ操作が止められると、付勢部材33の付勢力によって、ロータ25に対してノブ30と第1伝達部材36が車内側へ移動する。これにより、表示パネル1において、第1伝達部材36と対向する部分の静電容量の変化が無くなるため、静電容量が変化する領域はプッシュ操作状態と比較して局所的になる。この静電容量の変化領域の減少によって、表示パネル1はノブ30のプッシュ操作の解除を検出できる。
【0090】
ノブ30を回転操作すると、ロータ25を介して第2伝達部材37が一緒に回転する。この際、付勢部材33によってノブ30は、ロータ25から離れた状態に保持されているため、第1伝達部材36もフィルム50から離れた状態に維持される。
【0091】
回転操作によって表示パネル1では、第1伝達部材36と対向する部分の静電容量は変化せず、第2伝達部材37と対向する部分の静電容量だけが変化するが、変化する位置が軸線Aを中心として回転する。よって、表示パネル1は、ノブ30が回転する向き(時計回りか反時計回りか)を含めて、ノブ30の回転操作を検出できる。
【0092】
回転操作が止められると、ロータ25及び第2伝達部材37の回転も停止する。これにより、表示パネル1では、静電容量が変化する位置の移動が停止する。よって、表示パネル1は、ノブ30の回転操作の停止を検出できる。
【0093】
以上のように構成した操作つまみ装置10は、以下の特徴を有する。
【0094】
1個のノブ30のプッシュ操作及び回転操作を、第1伝達部材36及び第2伝達部材37を介して表示パネル11に伝達できる。よって、操作つまみ装置10を構成する部品点数を削減できるため、操作つまみ装置10の組立性を向上できる。
【0095】
ノブ30は、ホルダ20を取り囲む外壁部30aと、外壁部30aに連なる端壁部30bとを備え、端壁部30bの内側部30b2は窓部30cによって塞がれている。よって、ノブ30の外部から内部への液体の浸入を防止できる。また、ホルダ20によって、ノブ30と表示パネル1の隙間からの液体の浸入を阻止できる。その結果、内部に侵入した液体によって伝達部材の導電性が低下し、表示パネル1の検出性に影響を及ぼすことを防止できる。
【0096】
外壁部30aと端壁部30bは遮光性を有し、窓部30cは表示パネル1側の光を逆側へ透過可能であるため、操作つまみ装置10の機能性を向上できる。
【0097】
具体的には、外壁部30a及び端壁部30bは不透明であり、窓部30cは無色透明又は有色透明である。よって、窓部30cを通して表示パネル1の一部を視認できるため、表示パネル1の表示領域を確保できる。
【0098】
ノブ30は、外壁部30a、端壁部30b及び窓部30cを一体成形した樹脂成形品である。よって、ノブ30を構成する部品点数を削減できるため、操作つまみ装置10の組立性を向上できる。
【0099】
窓部30cは、端壁部30bに対して面一に設けられている。よって、ノブ30が筒状である場合と比較して操作可能な面積を増大できる。また、端壁部30bと窓部30cには、軸線Aに沿った方向に段差が無いため、操作時に指が引っかかることがない。そのため、ノブ30のプッシュ操作性を向上できる。
【0100】
窓部30cと端壁部30bの間には表示パネル1側へ窪む凹溝30fが設けられている。凹溝30fは、透光性を有するノブ30の成形後、塗装によって外壁部30a及び端壁部30bに遮光性を付与する際、境界線として用いることができる。具体的には、窓部30cを覆うマスキングカバー32Aの取付部として凹溝30fを用いることで、外壁部30a及び端壁部30bの塗装作業性を向上できる。
【0101】
ノブ30は、端壁部30bの内側部30b2に連なり、外壁部30aに対して間隔をあけて位置する筒状で、遮光性を有する内壁部30dを備える。この場合、内壁部30dの径方向外側、つまり内壁部30dと外壁部30aの間の配置領域21Aを、内壁部30dによって隠すことができるため、操作つまみ装置10の外観を向上できる。
【0102】
具体的には、第1伝達部材36及び第2伝達部材37は、外壁部30aと内壁部30dの間に配置されており、これらを内壁部30dによって隠すことができるため、操作つまみ装置10の外観を向上できる。また、ノブ30の内壁部30dと外壁部30aの間に集約して第1伝達部材36と第2伝達部材37が配置されているため、操作つまみ装置10を小型化できる。
【0103】
第1伝達部材36は、軸線Aを中心とする円弧状であり、第2伝達部材37は、第1伝達部材36に対して同心円上に位置するように、第1伝達部材36の両端36a,36b間に配置されている。この場合、第1伝達部材36と第2伝達部材37が径方向に間隔をあけて位置する場合と比較して、外壁部30aと内壁部30dの間隔を狭くすることができる。よって、窓部30cの面積を拡張できるため、表示パネル1の表示領域を確保できる。
【0104】
伝達部材36,37とノブ30の内壁部30dの間には、何も介在する部材がない。よって、内壁部30dと外壁部30aの間に広い配置領域21Aを確保できる。又は、配置領域21Aを狭くすることができるため、操作つまみ装置10全体を小型化できる。
【0105】
(第2実施形態)
図11は第2実施形態の操作つまみ装置10を示す。第2実施形態の操作つまみ装置10のノブ30は、内壁部30dを介して端壁部30bの内側部30b2に連なるように窓部30cを設けた点で、第1実施形態のノブ30と相違する。
【0106】
具体的には、窓部30cは、軸線Aが延びる方向における内壁部30dの中間部分(中央)に設けられ、端壁部30bに対して軸線Aが延びる方向に間隔をあけて位置している。端壁部30bの内側部30b2には内壁部30dが連なっており、内側部30b2内である開口部分は内壁部30dによって塞がれている。内壁部30dの内周面において、窓部30cの車内側及び車外側の両方に遮光層31が設けられている。
【0107】
このようにした第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。しかも、第1実施形態と比較して窓部30cが表示パネル1に近づくため、窓部30cを通して見える表示パネル1の表示の視認性を向上できる。
【0108】
(第3実施形態)
図12は第3実施形態の操作つまみ装置10を示す。第3実施形態の操作つまみ装置10のノブ30は、内壁部30dにおいて表示パネル1側の端に窓部30cを設けた点で、第2実施形態と相違する。
【0109】
このようにした第3実施形態では、第2実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。しかも、第2実施形態と比較して窓部30cが表示パネル1の近傍に位置するため、窓部30cを通して見える表示パネル1の表示の視認性を大幅に向上できる。
【0110】
(第4実施形態)
図13は第4実施形態の操作つまみ装置に用いられるノブ30の一部を示す。第4実施形態のノブ30は、窓部30cに所定曲率で隆起した曲面30c1,30c2を設けた点で、それぞれの実施形態のノブ30と相違する。
【0111】
一方の曲面30c1は車内側へ隆起し、他方の曲面30c2は車外側に隆起している。但し、表示パネルの表示、及び表示パネルと窓部30cの距離等の諸条件に応じて、一方の曲面30c1のみを設けてもよいし、他方の曲面30c2のみを設けてもよい。また、第2実施形態及び第3実施形態の窓部30cに曲面30c1及び/又は30c2を設けてもよい。
【0112】
このようにした第4実施形態では、前記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。しかも、曲面30c1及び/又は30c2を有する窓部30cは、両凸レンズ又は平凸レンジ凸レンズとして機能するため、窓部30cを通して表示パネル1の一部を拡大表示できる。よって、表示パネル1の表示の視認性を向上できる。
【0113】
(第5実施形態)
図14は第5実施形態の操作つまみ装置10を示す。第5実施形態の操作つまみ装置10のノブ30は、内壁部30dを備えていない点で、第1実施形態のノブ30と相違する。このようにした第5実施形態では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0114】
なお、本発明の操作つまみ装置10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0115】
ノブ30は、遮光性を有する不透明な樹脂によって外壁部30a、端壁部30b及び内壁部30dが形成され、透光性を有する透明な樹脂によって窓部30cが成形されるように、二色成形等によって製造してもよい。また、
図15に示すように、ノブ30は、透光性を有する透明な樹脂又はガラスによって窓部30c’を別部品として成形し、遮光性を有する不透明な樹脂によって外壁部30a、端壁部30b及び内壁部30dを一体成形し、これらを嵌合によって一体化してもよい。
【0116】
窓部30cにおいて、透光性を有する部分は一部のみであってもよい。つまり、窓部30cの一部が透光性を有し、窓部30cの残りの部分は遮光性を有していてもよい。また、窓部30cは、軸線Aに対して直交する方向に延びる構成に限られず、軸線Aに対して傾斜していてもよい。
【0117】
操作つまみ装置10の外形は多角形状であってもよい。つまり、ノブ30の外壁部30aは多角筒状であってもよい。また、ノブ30の内壁部30dも多角筒状であってもよい。また、ノブ30の端壁部30b及び窓部30cは多角形状であってもよい。
【0118】
本発明の操作つまみ装置10は、タッチ検出機能を備える表示パネル1を搭載した製品であれば、車載製品以外にも用いることができる。
【符号の説明】
【0119】
1 表示パネル
10 操作つまみ装置
20 ホルダ
20a 本体
20b 第1保持部
20c 第2保持部
20d 突起
20e 係合溝
20f 段部
20g 内面
20h 外面
21A 配置領域
21B 開口部
25 ロータ(操作部材)
25a 第1面
25b 第2面
25c 摺接部
25d 取付穴
25e 挿通孔
25f 配置部
25g 貫通孔
25h ガイドリブ
25i 取付部
25j 貫通孔
25k 凹部
25l 凹部
25m 保持溝
25n 貫通孔
25o ブロック
25p 係止片
26 開口部(内部空間)
27 スプリング
28 係合部材
30 ノブ(操作部材)
30a 外壁部
30b 端壁部
30b1 外側部
30b2 内側部
30c 窓部
30c1,30c2 曲面
30d 内壁部
30e 滑止部
30f 凹溝
30g 開放部
30h ボス
30i 規制部
30j 保持部
30k 保持部
31 遮光層
32A マスキングカバー
32B マスキングシート
33 付勢部材
33a 基部
33b 突出部
33c 頭部
35 伝達部材
36 第1伝達部材
36a 第1端
36b 第2端
36c 位置決め突起
37 第2伝達部材
37a 切欠部
37b 貫通部
38 接続部
38a 接続端
38b 貫通孔
40 取付部材
40a 凹溝
40b 外側壁
40c 内側壁
40d 端壁
40e 位置決め溝
40f 挿通溝
40g 貫通部
40h 位置決め凸部
40i 当接部
41 ネジ
42 保持部材
42a 窪み
42b 突出部
42c 位置決め凸部
42d ネジ孔
42e 凸部
42f 係止片
42g 爪部
43 スプリング
44 ネジ
50 フィルム
52a,52b 接着層
51 開口部
55 スタビライザ
55a 基部
55b スライド部
55c 腕部
A 軸線