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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/28 20060101AFI20231102BHJP
   F27B 9/04 20060101ALI20231102BHJP
   F27B 9/30 20060101ALI20231102BHJP
   F26B 13/08 20060101ALI20231102BHJP
   B29C 35/06 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F27B9/28
F27B9/04
F27B9/30
F26B13/08
B29C35/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020136396
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032534
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】小牧 毅史
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-019595(JP,U)
【文献】国際公開第2014/163175(WO,A1)
【文献】特開2012-202600(JP,A)
【文献】実開昭52-128709(JP,U)
【文献】特開2008-114584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0157468(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1756636(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00- 9/40
F26B 1/00-25/22
B29C 35/00-35/18
B29C 71/02
C08J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入口と、搬出口と、前記搬入口と前記搬出口との間に配置された処理室と、を備える炉体と、
前記搬入口から前記搬出口まで架け渡される被処理物を、前記搬入口から前記処理室を通って前記搬出口に搬送する搬送装置と、
前記処理室内に配置されており、前記搬送装置によって搬送される前記被処理物を案内する複数の案内ローラと、
前記処理室内に配置されており、前記搬送装置によって搬送される前記被処理物を加熱する加熱装置と、
前記処理室内に気体を供給する給気装置と、
前記処理室内の前記気体を排気する排気装置と、
を備えており、
前記被処理物は、前記搬入口から前記搬出口まで架け渡されるフィルム体であり、
前記炉体は、前記フィルム体の表面側に位置する第1の壁と、前記フィルム体の裏面側に位置し、前記第1の壁と対向する第2の壁と、を備えており、
前記排気装置は、
前記第1の壁に設けられ、前記処理室内の前記気体を排気する複数の第1の排気口と、
前記第2の壁に設けられ、前記処理室内の前記気体を排気する複数の第2の排気口と、を備えており、
前記複数の第1の排気口のそれぞれには第1排気流路が接続されており、前記第1排気流路のそれぞれには流量調整弁が設けられており、
前記複数の第2の排気口のそれぞれには第2排気流路が接続されており、前記第2排気流路のそれぞれには流量調整弁が設けられており、
前記複数の案内ローラは、
前記処理室の中心から見て前記第1の壁側となる位置において、前記搬入口と前記搬出口とを結ぶ第1方向に間隔を空けて配置される複数の第1の案内ローラと、
前記処理室の中心から見て前記第2の壁側となる位置において、前記第1方向に間隔を空けて配置される複数の第2の案内ローラと、
を備えており、
前記被処理物は、前記第1の案内ローラと前記第2の案内ローラとに交互に架け渡されており、
前記複数の第1の排気口の前記第1方向の複数の位置は、最も搬入口側の前記第1の案内ローラと前記搬入口との間となる第1搬入口側位置と、隣接する前記第1の案内ローラの間となる第1隣接位置と、最も搬出口側の前記第1の案内ローラと前記搬出口との間となる第1搬出口側位置と、有しており、
前記複数の第2の排気口の前記第1方向の複数の位置は、最も搬入口側の前記第2の案内ローラと前記搬入口との間となる第2搬入口側位置と、隣接する前記第2の案内ローラの間となる第2隣接位置と、最も搬出口側の前記第2の案内ローラと前記搬出口との間となる第2搬出口側位置と、を有しており、
前記第1隣接位置に配置される前記第1の排気口から排気される排気流量及び前記第2隣接位置に配置される前記第2の排気口から排気される排気流量が、前記第1搬入口側位置に配置される前記第1の排気口、前記第1搬出口側位置に配置される前記第1の排気口、前記第2搬入口側位置に配置される前記第2の排気口及び前記第2搬出口側位置に配置される前記第2の排気口から排気される排気流量より大きくなるように、前記流量調整弁が調整されている、熱処理炉。
【請求項2】
前記被処理物は、前記複数の案内ローラによって規定される搬送経路を通って前記搬入口から前記搬出口まで搬送され、
前記給気装置は、前記処理室内であって、前記搬送経路に沿って配置されており、前記被処理物に向かって気体を噴出する複数の給気管を備えており、
前記フィルム体の表面に直交し、前記搬入口と前記搬出口を通過する断面で見たときに、前記複数の給気管は、
前記被処理物と前記第1の壁とで挟まれた空間内に配置される第1の給気管と、
前記被処理物と前記第2の壁とで挟まれた空間内に配置される第2の給気管と、を備えている、請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記被処理物は、前記複数の案内ローラによって規定される搬送経路を通って前記搬入口から前記搬出口まで搬送され、
前記加熱装置は、前記搬送経路に沿って配置され、赤外領域の電磁波を放射して前記被処理物を加熱する複数のヒータを備えている、請求項1又は2に記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記フィルム体は、フィルムと、前記フィルムの表面及び裏面の少なくとも一方に塗布されたペーストと、を備えており、
前記加熱装置は、前記ペーストに含まれる水分を除去する、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記搬送装置は、
前記炉体の外側であって前記搬入口の近傍に配置され、前記被処理物が巻回された搬入口ローラと、
前記炉体の外側であって前記搬出口の近傍に配置され、前記処理室内を搬送された前記被処理物を巻き取る搬出口ローラと、をさらに備えており、
前記搬入口ローラ及び前記搬出口ローラが回転することで、前記搬入口ローラに券回された前記被処理物は、前記搬入口ローラから送り出されて前記処理室内を搬送される、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項6】
前記処理室内の雰囲気は、露点が0℃以下となる不活性ガス雰囲気である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物に熱処理を実施する熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される熱処理炉では、被処理物であるフィルム体は搬入口から処理室を通って搬出口まで架け渡される。フィルム体は、搬入口から処理室内に搬入され、処理室内を搬送されて、搬出口から搬出される。フィルム体は、処理室内に配置された加熱装置により加熱され、フィルム体に含まれる水分(水及び/又は溶剤)は、処理室内を搬送されている間に除去される。フィルム体から効率的に水分を除去するためには、フィルム体から除去された水分を速やかに炉外に排気する必要がある。このため、特許文献1の熱処理炉では、給気装置により処理室内に気体を供給し、処理室内の気体を排気装置によって排気している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2014/163175号
【発明の概要】
【0004】
上記の熱処理炉では、被処理物であるフィルム体が処理室内を複数の案内ローラによって規定される複雑な搬送経路を通って、搬入口から搬出口まで架け渡されている。このため、処理室内の気体の流れが架け渡されたフィルム体によって影響を受け、処理室内の気体の排気が阻害されることでフィルム体からの水分除去効率を低下させるという問題があった。本明細書は、処理室内の気体の排気を改善することで、複数の案内ローラによって規定される搬送経路を搬送されるフィルム体からの水分除去効率を向上することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する熱処理炉は、炉体と、搬送装置と、複数の案内ローラと、加熱装置と、給気装置と、排気装置を備えている。炉体は、搬入口と、搬出口と、搬入口と搬出口との間に配置された処理室と、を備えている。搬送装置は、搬入口から搬出口まで架け渡される被処理物を、搬入口から処理室を通って搬出口に搬送する。複数の案内ローラは、処理室内に配置されており、搬送装置によって搬送される被処理物を案内する。加熱装置は、処理室内に配置されており、搬送装置によって搬送される被処理物を加熱する。給気装置は、処理室内に気体を供給する。排気装置は、処理室内の気体を排気する。被処理物は、搬入口から搬出口まで架け渡されるフィルム体である。炉体は、フィルム体の表面側に位置する第1の壁と、フィルム体の裏面側に位置し、第1の壁と対向する第2の壁と、を備えている。排気装置は、第1の壁に設けられ、処理室内の気体を排気する1又は複数の第1の排気口と、第2の壁に設けられ、処理室内の気体を排気する1又は複数の第2の排気口を備えている。
【0006】
上記の熱処理炉では、フィルム体(被処理物)が処理室内を搬入口から搬出口まで架け渡されていても、フィルム体の表面側の気体は第1の壁に設けられた第1の排気口から排気し易く、また、フィルム体の裏面側の気体は第2の壁に設けられた第2の排気口から排気し易くなる。このため、給気装置から処理室内に供給された気体を、第1の排気口及び第2の排気口から円滑に排気することができ、フィルム体からの水分除去効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1に係る熱処理炉の縦断面図。
図2図1のII-II線断面図。
図3】実施例1に係るヒータの断面図。
図4】実施例1に係る給気管の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示する熱処理炉では、複数の第1の排気口のそれぞれには第1排気流路が接続されており、第1排気流路のそれぞれには流量調整弁が設けられていてもよい。複数の第2の排気口のそれぞれには第2排気流路が接続されており、第2排気流路のそれぞれには流量調整弁が設けられていてもよい。このような構成によると、複数の第1の排気口のそれぞれの排気流量と、複数の第2の排気口のそれぞれの排気流量を調整することができ、処理室からの気体の排気状態を調整することができる。
【0009】
本明細書に開示する熱処理炉では、複数の案内ローラは、処理室の中心から見て第1の壁側となる位置において、搬入口と搬出口とを結ぶ第1方向に間隔を空けて配置される1又は複数の第1の案内ローラと、処理室の中心から見て第2の壁側となる位置において、第1方向に間隔を空けて配置される1又は複数の第2の案内ローラを備えていてもよい。被処理物は、第1の案内ローラと第2案内ローラとに交互に架け渡されていてもよい。第1の排気口の第1方向の位置は、隣接する第1の案内ローラの間の位置であってもよい。第2の排気口の第1方向の位置は、隣接する第2の案内ローラの間の位置であってもよい。このような構成によると、第1の壁側に第1方向に間隔を空けて配置される第1の案内ローラの間の位置に第1の排気口が設けられ、第2の壁側に第1方向に間隔を空けて配置される第2の案内ローラの間の位置に第2の排気口が設けられる。このため、フィルム体と第1の壁とで挟まれた空間の空気を第1の排気口から排気し易くでき、フィルム体と第2の壁とで挟まれた空間の空気を第2の排気口から排気し易くできる。
【0010】
本明細書に開示する熱処理炉では、被処理物は、複数の案内ローラによって規定される搬送経路を通って搬入口から搬出口まで搬送されてもよい。給気装置は、処理室内であって、搬送経路に沿って配置されており、被処理物に向かって気体を噴出する複数の給気管を備えていてもよい。フィルム体の表面に直交し、搬入口と搬出口を通過する断面で見たときに、複数の給気管は、被処理物と第1の壁とで挟まれた空間内に配置される第1の給気管と、被処理物と第2の壁とで挟まれた空間内に配置される第2の給気管と、を備えていてもよい。このような構成によると、被処理物であるフィルム体の表面側と裏面側のそれぞれに気体が供給され、その供給された気体を第1の排気口及び第2の排気口から排気することができる。
【0011】
本明細書に開示する熱処理炉では、被処理物は、複数の案内ローラによって規定される搬送経路を通って搬入口から搬出口まで搬送されてもよい。加熱装置は、搬送経路に沿って配置され、赤外領域の電磁波を放射して被処理物を加熱する複数のヒータを備えていてもよい。このような構成によると、被処理物が搬送経路に沿って配置された複数のヒータで加熱されるため、被処理物の熱処理効率を向上することができる。
【0012】
本明細書に開示する熱処理炉では、フィルム体は、フィルムと、フィルムの表面及び裏面の少なくとも一方に塗布されたペーストと、を備えていてもよい。そして、加熱装置は、ペーストに含まれる水分を除去してもよい。処理室に対する気体の給排気が効果的に行われることで、ペーストからの水分除去を効果的に行うことができる。
【0013】
本明細書に開示する熱処理炉では、搬送装置は、炉体の外側であって搬入口の近傍に配置され、被処理物が巻回された搬入口ローラと、炉体の外側であって搬出口の近傍に配置され、処理室内を搬送された被処理物を巻き取る搬出口ローラと、をさらに備えていてもよい。搬入口ローラ及び搬出口ローラが回転することで、搬入口ローラに券回された被処理物は、搬入口ローラから送り出されて処理室内を搬送されてもよい。このような構成によると、搬入口ローラに券回された被処理物に連続して熱処理を実施することができる。
【0014】
本明細書に開示する熱処理炉では、処理室内の雰囲気は、露点が0℃以下となる不活性ガス雰囲気であってもよい。このような構成によると、雰囲気ガスに含まれる水分の凝結を抑制することができる。
【実施例
【0015】
以下、実施例1に係る熱処理炉10について説明する。本実施例の熱処理炉10は、ワークW(被処理物の一例)に含まれる水分を除去する乾燥炉(脱水装置)である。ワークWは、長手方向に連続して伸びるシート体(フィルム体の一例)であり、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL、電池などに用いられるフィルムが該当する。このようなフィルム(フィルム体)は、フィルム自体に水分が含まれる場合や、あるいは、フィルムに被覆層が被覆されている場合は当該被覆層に水分が含まれていることがある。このため、まずはフィルムに含まれる水分が除去され、その後、水分が除去されたフィルムを所望の大きさに切断して、最終製品が製造される。本実施例の熱処理炉10は、このようなシート体から水分を除去するために用いることができる。
【0016】
以下、図面を参照して、熱処理炉10の構成を説明する。図1,2に示すように、熱処理炉10は、直方体形状の炉体12と、炉体12へのワークWの搬入と搬出を行う搬送装置20と、ワークWを加熱する加熱装置(26,28)と、ワークWの表面に冷却ガスを供給する給気装置(38等)を備えている。
【0017】
炉体12は、下壁13と、下壁13に対向する上壁14と、下壁13に一端が接続されると共に上壁14に他端が接続される側壁17,18(図2参照)と、これらの壁13,14,17,18によって取囲まれる処理室(19a,19b)の端部を閉じる搬入側壁15及び搬出側壁16を備える。
下壁13は、平面視すると矩形状の板材であり、処理室(19a,19b)の下方に配置されている。図1に示すように、下壁13には、x方向に略一定の間隔を空けて複数の排気口56a~56fが設けられている。複数の排気口56a~56fのそれぞれは、排気ファン60に接続されている。排気ファン60が運転すると、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスが処理室(19a,19b)外に排気されるようになっている。
上壁14は、下壁13と同一形状の板材であり、処理室(19a,19b)の上方に配置されている。上壁14にも、下壁13と同様に、x方向に略一定の間隔を空けて複数の排気口50a~50gが設けられている。複数の排気口50a~50gのそれぞれは、排気ファン54に接続されている。排気ファン54が運転すると、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスが処理室(19a,19b)外に排気されるようになっている。なお、排気口50a~50g、56a~56f及び排気ファン54、60から構成される排気装置については、後でさらに詳述する。
搬入側壁15には搬入口15aが設けられており、搬出側壁16には搬出口16bが形成されている。搬入口15aと搬出口16bの高さ方向の位置は同一の位置となっており、搬入口15aと搬出口16bは互いに対向している。図1から明らかなように、処理室(19a,19b)は、搬入口15aと搬出口16bとの間に配置されている。
なお、炉体12を構成する各壁13,14,15,16,17,18の内面(すなわち、処理室(19a,19b)側の面)には、鏡面加工が施されている。その結果、これらの面の赤外領域の電磁波(詳細には、後述するヒータ26,28が放射する電磁波)の反射率は50%以上となっている。これによって、ヒータ26,28が放射する電磁波をワークWへ効率的に照射できるようになっている。
【0018】
搬送装置20は、炉体12の外側であって搬入口15aの近傍に配置される搬入口ローラ21と、炉体12の外側であって搬出口16aの近傍に配置される搬出口ローラ25と、処理室(19a,19b)内に配置される複数の案内ローラ(22a,22b,22c,24)を備えている。
搬入口ローラ21にはワークWが巻回されている。搬入口ローラ21に券回されたワークWは、搬入口15aから処理室(19a,19b)を通って搬出口16aまで架け渡されている。具体的には、ワークWは、搬入口ローラ21から搬入口15aを通って案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡され、さらに案内ローラ(22a,22b,22c,24)から搬出口16aを介して搬出口ローラ25に架け渡されている。
搬出口ローラ25は、処理室(19a,19b)から搬出されるワークWを巻き取るローラである。搬出口ローラ25には図示しない駆動装置が接続されており、駆動装置により搬出口ローラ25が回転駆動される。搬出口ローラ25が回転すると、搬入口ローラ21に券回されたワークWが処理室(19a,19b)に送り出される。搬入口ローラ21から送り出されたワークWは、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に案内されて処理室(19a,19b)内の所定の搬送経路を移動し、搬出口16aから処理室(19a,19b)外に送り出されて搬出口ローラ25に巻き取られる。すなわち、案内ローラ(22a,22b,22c,24)は、処理室(19a,19b)内のワークWの搬送経路を規定している。
【0019】
案内ローラ(22a,22b,22c,24)は、上壁14の近傍に配置される複数の上部案内ローラ(22a,22b,22c)と、下壁13の近傍に配置される複数の下部案内ローラ24を備えている。なお、本実施例において、案内ローラ(22a,22b,22c,24)には、ワークWと接触する接触式ローラを用いたが、ワークWを非接触で案内する非接触式ローラを用いることもできる。
上部案内ローラ(22a,22b,22c)(請求項でいう第1の案内ローラの一例)は、x方向に一定の間隔を空けて配置されている。具体的には、上部案内ローラ22aは搬入口15aに隣接して配置され、上部案内ローラ22cは搬出口16aに隣接して配置されている。複数の案内ローラ22bは、上部案内ローラ22aと上部案内ローラ22cの間に等間隔で配置されている。上部案内ローラ(22a,22b,22c)のそれぞれの高さ方向の位置は同一となっている。
複数の下部案内ローラ24(請求項でいう第2の案内ローラの一例)のそれぞれは、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と同様、x方向に一定の間隔を空けて配置されている。隣接する下部案内ローラ24のx方向の間隔は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)のx方向の間隔と同一となっている。複数の下部案内ローラ24のx方向の位置は、隣接する上部案内(22a,22b,22c)の中央位置となっている。複数の下部案内ローラ24の高さ方向の位置は同一となっている。
【0020】
上述したように上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24が配置されているため、搬入口15aからx方向に搬送されるワークWは、上部案内ローラ22aによって下方に向かって搬送され、次いで、下部案内ローラ24によって上方に向かって搬送され、以下、上部案内ローラ22bと下部案内ローラ24によって上下方向に繰り返し搬送される。そして、最も搬出口16a側に配置された下部案内ローラ24から上方に向かって搬送されるワークWは、上部案内ローラ22cによって搬出口16aに向かって搬送される。このように、処理室(19a,19b)内を上下方向に繰り返し搬送することで、処理室(19a,19b)内のスペースを有効に活用でき、ワークWを乾燥させるための処理時間を確保している。なお、図1から明らかなように、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWによって、処理室(19a,19b)は、上壁14側に設けられる上部処理室19aと、下壁13側に設けられる下部処理室19bとに区分されている。なお、図2から明らかなように、ワークWがない位置(すなわち、ワークWのY方向の両端の外側の位置)では、上部処理室19aと下部処理室19bは接続されている。
【0021】
加熱装置は、処理室(19a、19b)内に配置され、搬送装置20によって搬送されるワークWを加熱する。加熱装置は、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の近傍に配置された第1ヒータ(26a,26b)と、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24の間の高さに配置された第2ヒータ28を備えている。図2に示すように、第1ヒータ(26a,26b)と第2ヒータ28は、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の軸線方向に伸びており、ワークWの幅方向(y方向)の全体を加熱可能となっている。
【0022】
図1に示すように、第1ヒータ(26a,26b)は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)の上方に配置される複数の第1上部ヒータ26aと、下部案内ローラ24の下方に配置される複数の第1下部ヒータ26bを備えている。第1上部ヒータ26aのそれぞれは、対応する上部案内ローラ(22a,22b,22c)と対向して配置されており、第1下部ヒータ26bのそれぞれは対応する下部案内ローラ24と対向して配置されている。このため、第1上部ヒータ26aと上部案内ローラ(22a,22b,22c)の間にワークWが位置し、ワークWは第1上部ヒータ26aによって直接加熱される。同様に、第1下部ヒータ26bと下部案内ローラ24の間にワークWが位置し、ワークWは第1下部ヒータ26bによって直接加熱される。
【0023】
第2ヒータ28は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)のそれぞれの下方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。また、第2ヒータ28は、下部案内ローラ24のそれぞれの上方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。このため、x方向に間隔を空けて11個の第2ヒータ28が並ぶと共に、y方向に間隔を空けて2個の第2ヒータ28が並んで配置されている。図から明らかなように、第2ヒータ28は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24に架け渡されたワークWと対向する位置(すなわち、ワークWの搬送方向に隣接する案内ローラ間の中間位置の近傍)に配置されている。第2ヒータ28が案内ローラ(22a,22b,22c,24)の軸線方向に伸びているため、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24に架け渡されたワークWの幅方向の全体が第2ヒータ28によって加熱される。
【0024】
第1ヒータ(26a,26b)は、赤外領域の電磁波を放射する公知の波長制御可能なヒータであり、第1ヒータ(26a,26b)と第2ヒータ28は同一構造を有している。このため、ここでは第2ヒータ28の構造について簡単に説明する。
図3に示すように、第2ヒータ28は、フィラメント30と、フィラメント30を収容する内管32と、内管32を収容する外管34を備えている。フィラメント30は、例えば、タングステン製の発熱体であり、図示しない外部電源から電力が供給されるようになっている。フィラメント30に電力が供給されて所定温度(例えば、1200~1700℃)となると、フィラメント30から赤外線を含む電磁波が放射される。内管32は、フィラメント30から放射される電磁波のうち特定の波長領域(本実施例では、赤外領域)の電磁波のみを透過する赤外線透過材料によって形成されている。内管32を形成する赤外線透過材料を適宜選択することで、フィラメント30から内管32の外部に放射される電磁波の波長を所望の波長に調整することができる。外管34も、内管32と同一の赤外線透過材料によって形成されている。したがって、内管32を透過した電磁波は、外管34を透過して外部に放射される。内管32と外管34の間の空間36は、冷媒(例えば、空気)が流れる冷媒流路となっている。空間36(すなわち、冷媒流路)に冷媒が供給されることで、外管34の温度が高温となり過ぎることが防止されている。これによって、ワークWの過熱が防止される。なお、赤外領域の電磁波を放射する波長制御可能なヒータについては、例えば、特許4790092号に詳細に開示されている。
【0025】
給気装置は、処理室(19a,19b)内をy方向に伸びる複数の給気管38と、処理室(19a,19b)外に配置されて複数の給気管38に冷却ガスを供給する給気ファン(図示省略)を備えている。図4に示すように、給気管38には、周方向の2か所に噴出孔39a,39bが形成されている。このため、給気ファンから給気管38に供給された冷却ガスは、噴出孔39a,39bから処理室(19a,19b)内に噴射される。本実施例では、噴出孔39a,39bから噴射される冷却ガスの噴出方向がワークWの表面に対して直交するように、給気管38を設置する向きが調整されている。図4に示すように、噴出孔39a,39bは、給気管38の軸線を挟んで対向する位置に配置されている。このため、給気管38の搬入口15a側と搬出口16a側のそれぞれにワークWが位置する場合、当該給気管38の噴出孔39aから噴射される冷却ガスは一方のワークWに噴射され、当該給気管38の噴出孔39bから噴射される冷却ガスは他方のワークWに噴射される。また、図2に示すように、給気管38の噴出孔39a,39bは、y方向に間隔を空けて複数形成されている。このため、噴出孔39a,39bから噴射される冷却ガスは、ワークWの幅方向(y方向)の全体に噴射されることになる。
【0026】
図1に示すように、給気管38は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)のそれぞれの下方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。また、給気管38は、下部案内ローラ24のそれぞれの上方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。図1から明らかなように、給気管38は、第1ヒータ(26a,26b)及び第2ヒータ28が配置される位置とは異なる位置に配置されている。具体的には、第2ヒータ28と給気管38はz方向(搬送方向)に等しい間隔を空けて交互に配置されている。また、上述したように、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWによって、処理室(19a,19b)は上部処理室19aと下部処理室19bとに区分されているが、上部処理室19aと下部処理室19bのそれぞれに給気管38が配置されている。
【0027】
給気管38に供給される冷却ガスとしては、例えば、不活性ガス、窒素、Arガス等を用いることができる。処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスは、給気管38から処理室(19a,19b)内に噴射されるガスによって調整される。本実施例では、ワークWに含まれる水分を除去するため、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスは、露点が0℃以下となるガスに調整されている。なお、冷却ガスとしては、露点が0℃以下となる大気としてもよい。
【0028】
ここで、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスを排気する排気装置について詳しく説明する。排気装置は、排気口50a~50g、56a~56fと、流量調整弁52a~52g、58a~58fと、排気ファン54、60と、を備えている。
【0029】
排気口50a~50gは、上壁14に設けられており、x方向に間隔を空けて配置されている。具体的には、排気口50aは、搬入口15aと第1ヒータ26aの間に配置されている。排気口50bは、上部案内ローラ22aと、これに隣接する上部案内ローラ22b(詳しくは、最も搬入口15a側の上部案内ローラ22b)の間に配置されている。排気口50c~50eは、隣接して配置される上部案内ローラ22b、22bの間に配置されている。排気口50fは、最も搬出口16a側の上部案内ローラ22cと、これに隣接する上部案内ローラ22bの間に配置されている。排気口50gは、上部案内ローラ22cと搬出口16aの間に配置されている。図1から明らかなように、排気口50b~50fのそれぞれは、搬入口15a側から2列目、4列目、6列目、8列目、10列目に配置された対応する給気管38及び第2ヒータ38と対向している。また、排気口50b~50fのそれぞれは、下部案内ローラ24と対向しており、排気口50b~50fとワークWの間には下部案内ローラ24が位置している。排気口50b~50fの下方には、隣接する上部案内ローラ(22a、22b、22c)と、それらのx方向の中間に位置する下部案内ローラ24と、これらに架け渡されたワークWによって区画される空間(上部処理室19aの一部)が位置している。なお、本実施例では、排気口50a~50gは、上壁14のy方向の中間の位置に1つ配設されているが、y方向の複数個所に配設されてもよい。
【0030】
排気口56a~56fは、下壁13に設けられており、x方向に間隔を空けて配置されている。具体的には、排気口56aは、搬入口15aと最も搬入口15a側に配置された下部案内ローラ24の間に配置されている。排気口56b~56eは、隣接して配置される下部案内ローラ24の間に配置されている。排気口56fは、最も搬出口16a側の下部案内ローラ24と搬出口16aの間に配置されている。図1から明らかなように、排気口56a~56fのそれぞれは、搬入口15a側から1列目、3列目、5列目、7列目、9列目、11列目に配置された対応する給気管38及び第2ヒータ38と対向している。また、排気口56a~56fのそれぞれは、上部案内ローラ(22a,22b、22c)と対向しており、排気口56a~56fとワークWの間に上部案内ローラ(22a,22b、22c)が位置している。排気口56b~56eの上方には、隣接する下部案内ローラ24と、それらのx方向の中間に位置する上部案内ローラ24と、これらに架け渡されたワークWによって区画される空間(下部処理室19bの一部)が位置している。なお、本実施例では、排気口56a~56fは、下壁14のy方向の中間位置に1つ配設されているが、y方向の複数個所に配設されてもよい。
【0031】
排気ファン54は、排気口50a~50gと接続されている。排気ファン54と排気口50aとを接続する排気流路には流量調整弁52aが設けられている。同様に、排気ファン54と排気口50b~50gを接続する排気流路のそれぞれには、流量調整弁52b~52gが設けられている。本実施例では、排気口50a~50gを1つの排気ファン54に接続しながら、排気口50a~50gのそれぞれに流量調整弁52a~52gを設けることで、排気口50a~50gのそれぞれから排気される雰囲気ガスの流量を独立して制御することができる。
【0032】
同様に、排気ファン60は、排気口56a~56fと接続されている。排気ファン60と排気口56a~56fとを接続する排気流路(専用部分)のそれぞれには、流量調整弁58a~58fが設けられている。したがって、排気口56a~56fのそれぞれから排気される雰囲気ガスの流量も独立して制御することができる。
【0033】
コントローラ44は、CPU,ROM,RAMを備えたプロセッサによって構成され、搬送装置20と加熱装置(26,28)と給気装置と排気装置(54,60,52a~52g,58a~58f)を制御する。具体的には、コントローラ44は、搬送装置20を制御することでワークWの搬送速度及び張力を制御し、加熱装置(26,28)を制御することでワークWの加熱量を制御し、給気装置を制御することで給気管38からワークWに噴射される冷却ガスの流量及び流速を制御する。また、コントローラ44は、排気ファン54,60の回転数と流量調整弁(52a~52g,58a~58f)の開度を制御することで、排気口50a~50g、56a~56fのそれぞれから排気される雰囲気ガスの流量を制御する。
【0034】
なお、熱処理炉10には、搬入口ローラ21に巻回されたワークWを搬出口ローラ25にセットするための通し装置が設けられている。図1に示すように、通し装置は、処理室(19a,19b)内と処理室(19a,19b)外を通って循環するチェーン42と、チェーン42を駆動する駆動装置(図示省略)を備えている。チェーン42は、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWと同様に、搬入口15aから上下方向に向きを変えながら搬出口16aまで伸び、搬出口16aから処理室(19a,19b)の外側を通って搬入口15aに戻っている。図1に示すように、チェーン42が架け渡される経路は、ワークWが架け渡される経路(すなわち、ワークWの搬送経路)と複数個所で交差している。なお、チェーン42が配置される位置は、ワークWの幅方向(y方向)の外側の位置となるため、チェーン42とワークWが干渉することはない(図2参照)。通し装置によりワークWを搬出口ローラ25にセットするには、まず、チェーン42に設けられた図示しないクランプにより搬入口ローラ21に巻回されたワークWをクランプする。次いで、駆動装置によりチェーン42を循環させ、ワークWを搬入口ローラ21より送り出す。これにより、チェーン42のクランプに保持されたワークWは、処理室(19a,19b)内をチェーン42と共に移動し、搬出口16aまで移動する。搬出口16aまでワークWが移動すると、クランプを操作してチェーン42からワークWを開放し、ワークWを搬出口ローラ25にセットする。最後に、搬出口ローラ25を回転させてワークWに張力を与えることで、ワークWが搬入口15aから案内ローラ(22a,22b,22c,24)を介して搬出口16aまで架け渡される。
【0035】
次に、上述した熱処理炉10を用いてワークWから水分を除去する処理を説明する。まず、給気管38から処理室(19a,19b)内に冷却ガスを供給し、処理室(19a,19b)内を所定の雰囲気に調整する。次いで、コントローラ44は、搬送装置20を駆動することで、ワークWを搬入口15aから処理室(19a,19b)を通って搬出口16aまで搬送する。この際、コントローラ44は、加熱装置(26,28)を制御してワークWに赤外線領域の電磁波を照射すると共に、給気管38からワークWの表面に冷却ガスを噴出する。加熱装置(26,28)から赤外線領域の電磁波が照射されると、ワークWに含まれる水分が照射された電磁波を吸収し、水分が蒸発する。ワークWから蒸発した水分は、給気管38から噴射される冷却ガスによってワークWの表面から除去される。ワークWの表面から除去された水分(ただし、水分には微量の有機溶剤が含まれる)を含んだ雰囲気ガスは、下壁13の排気口13aと、上壁14の排気口14aのそれぞれから処理室(19a,19b)外に排気される。ワークWは、搬入口15aから搬出口16aまで搬送される間に水分が除去される。水分が除去されたワークWは、搬出口ローラ25に巻き取られる。
【0036】
上記の熱処理炉10によると、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の近傍で、案内ローラ(22a,22b,22c,24)と対向する第1ヒータ(26a,26b)を備えている。また、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24の間に第2ヒータ28を備えている。これらヒータ26a,26b,28のため、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に接触した状態におけるワークWに対する熱収支を制御でき、また、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に接触していない状態におけるワークWに対する熱収支を制御することができる。このため、ワークWの熱収支を好適に制御でき、ワークWから水分を除去する処理の効率を格段に向上することができる。例えば、ワークWが案内ローラ(22a,22b,22c,24)に接触することで、ワークWから案内ローラ(22a,22b,22c,24)に熱が流れてワークWが冷却され過ぎてしまう場合は、第1ヒータ(26a,26b)からワークWに供給する熱量を増加し、ワークWが冷却され過ぎないようにする。これによって、ワークWから水分を除去する効率が低下してしまうことを防止することができる。
【0037】
また、上記の熱処理炉10では、給気管38と第2ヒータ38が搬送方向に交互に配置され、また、給気管38からの冷却ガスはワークWの表面に直交する方向から噴射される。これによって、ワークWの内部から蒸発した水分がワークWの表面から速やかに除去され、ワークWからの水分の除去が促進される。これによっても、ワークWの水分の除去効率を高めることができる。
【0038】
さらに、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWによって、処理室(19a,19b)は上部処理室19aと下部処理室19bとに区分されるが、上部処理室19aと下部処理室19bのそれぞれに給気管38と排気口14a,13aが配置されている。このため、上部処理室19aに供給された冷却ガス及び下部冷却室19bに供給された冷却ガスは、除去された水分と共に速やかに処理室(19a,19b)外に排気される。これによっても、処理室(19a,19b)内のガスの流れが好適化され、ワークWの水分除去効率を高めることができる。特に、本実施例では、上壁14の排気口50b~50fは、ワークWと下部案内ローラ24で区画された空間(上部処理室19aの一部)に向かって開口し、給気管38からこの空間に供給された冷却ガスを速やかに炉外に排気することができる。同様に、下壁13の排気口56b~56eは、ワークWと上部案内ローラ22bで区画された空間(下部処理室19bの一部)に向かって開口し、給気管38からこの空間に供給された冷却ガスを速やかに炉外に排気することができる。このため、処理室(19a、19b)内の雰囲気ガスの流れが改善され、ワークWの水分除去効率を高めることができる。
【0039】
なお、ヒータ(26a,26b,28)は、内管及び外管を形成する赤外線透過材料を選択することで、放射する赤外線の波長領域を調整することができる。このため、ワークWの特性に応じて放射する電磁波の波長を調整することで、ワークWの熱処理効率を向上することができる。例えば、ワークWとして、固形分(フェノール・エポキシ樹脂、10~90wt%)と、該固形分をスラリー状又はペースト状とする溶媒(水又は溶剤(例えば、IPA(イソプロピルアルコール、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)等)から構成される物質を乾燥する場合を考える。このようなワークWを乾燥する場合、熱処理炉10の前半では近赤外線波長を選択したヒータ(26a,26b,28)により水又は溶剤の乾燥を行い、熱処理炉10の後半では遠赤外線波長を選択したヒータ(26a,26b,28)によるアニーリングを行うようにしてもよい。
【0040】
また、上記の実施例では、ヒータ(26a,26b,28)は、全て同一の波長領域の電磁波を放射したが、このような例に限られない。例えば、ヒータ(26a,26b,28)から放射される電磁波の波長は、搬送経路上の位置に応じて調整されていてもよい。例えば、熱処理炉10によってワークWから水分を除去する場合、ワークWに含まれる水分量は、搬入口15aから搬出口16aに向かって徐々に低下する。このため、ヒータ(26a,26b,28)から放射される電磁波の波長を、搬入口15aから搬出口16aに向かって徐々に長くすることで、水分量に応じた電磁波をワークWに照射することができる。
【0041】
また、上記の実施例では、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の近傍に第1ヒータ(26a,26b)を配置し、第1ヒータ(26a,26b)によってワークWを加熱したが、このような例に限られない。例えば、案内ローラの内部に熱媒が流れる流路を設け、案内ローラによってワークWを加熱してもよい。このような構成によっても、案内ローラに接触する状態におけるワークWの熱収支が制御可能となり、ワークWの熱処理効率を向上することができる。
【0042】
また、上記の実施例では、排気口50a~50g、排気口56a~56fのそれぞれから均等に雰囲気ガスを排気していたが、このような例に限られない。例えば、排気口50b~50f,56b~56eは、ワークWと下部案内ローラ24又はワークWと上部案内ローラ22bで区画された空間に向かって開口している。この空間は、ワークWによって囲まれているため、この空間にワークWから比較的に多くの水分が排出されると考えられる。そこで、排気口50b~50f,56b~56eについては、その他の排気口50a,50g,56a,56fと比較して、排気される雰囲気ガスの流量が多くなるように、流量調整弁52b~52f,58b~58eを調整してもよい。あるいは、ワークWに含まれる水分は、搬入口15aから搬出口16aに向かって徐々に低下する。このため、ワークWに含まれる水分量に応じて、搬入口15aから搬出口16aに向かって排気口50a~50g、排気口56a~56fから排気される雰囲気ガスの流量が変化するように、量調整弁52b~52f,58b~58eを調整してもよい。
【0043】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
10 熱処理炉
12 炉体
22 上部案内ローラ
24 下部案内ローラ
26 第1ヒータ
28 第2ヒータ
38 給気管
50a~50g、56a~56f 排気口
52a~52g、58a~58f 流量調整弁
54,60 排気ファン
図1
図2
図3
図4