(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】放射性同位体の製造装置および放射性同位体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G21K 5/08 20060101AFI20231102BHJP
G21G 1/02 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G21K5/08 R
G21G1/02
(21)【出願番号】P 2020198433
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒目 和也
(72)【発明者】
【氏名】小林 一太
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-503877(JP,A)
【文献】国際公開第2020/233814(WO,A1)
【文献】特開2011-47935(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0336975(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/08
G21G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉の内部に配置し、放射性同位体を製造する放射性同位体の製造装置であって、
一端部が前記原子炉の内部に配置され他端部が前記原子炉の外部に配置される計装管の内部を移動可能な供給部と、
一端部が前記原子炉の内部に配置された前記供給部により前記計装管の前記他端部側から前記供給部の前記一端部に前記RI原料を搬送可能な搬送機構と、
を含む放射性同位体の製造装置。
【請求項2】
前記供給部は、可撓性を有する供給チューブである、
請求項1に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項3】
前記搬送機構は、搬送用気体により前記RI原料を前記供給チューブの内部で搬送可能である、
請求項2に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項4】
前記供給チューブは、前記計装管の内部を移動可能な外管と、前記外管の内部に配置される内管とを有し、前記搬送機構は、前記搬送用気体により前記RI原料を前記内管の内部を通して前記計装管の一端部に搬送可能である、
請求項3に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記計装管の一端部に供給された前記搬送用気体を前記外管と前記内管との隙間から回収可能である、
請求項4に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項6】
前記RI原料は、前記内管の内部を移動可能であると共に、前記外管と前記内管との隙間を移動不能なRI原料粒状体である、
請求項4または請求項5に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項7】
前記外管は、一端部の外周面に前記計装管の内周面との隙間を塞ぐシールリングが設けられる、
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項8】
前記供給チューブは、一端部に前記RI原料が通過不能であると共に、前記搬送用気体が通過可能な開口部が設けられる、
請求項3に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項9】
前記搬送機構は、前記計装管の一端部に搬送された前記RI原料を前記原子炉の中性子線が照射される照射領域に保持する保持機構を有する、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項10】
前記計装管の一端部に充填された前記RI原料を回収可能な回収機構を含む、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項11】
前記回収機構は、前記計装管の一端部に負圧を作用させることで前記RI原料を回収可能である、
請求項10に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項12】
前記搬送機構は、前記RI原料を前記計装管の一端部に搬送可能であると共に、ダミー原料を前記計装管に搬送可能であり、前記回収機構は、前記RI原料および前記ダミー原料を回収可能であり、回収した前記RI原料と前記ダミー原料を仕分けする分離装置を有する、
請求項10または請求項11に記載の放射性同位体の製造装置。
【請求項13】
放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉の内部に配置し、放射性同位体を製造する放射性同位体の製造方法であって、
一端部が前記原子炉の内部に配置され他端部が前記原子炉の外部に配置される計装管の内部を移動させて供給部の一端部を前記原子炉の内部に配置する工程と、
前記RI原料を前記計装管の前記他端部側から前記供給部の前記一端部に搬送して前記原子炉の中性子線が照射される照射領域に配置する工程と、
前記RI原料を前記照射領域に保持する工程と、
を含む放射性同位体の製造方法。
【請求項14】
前記供給部を前記原子炉の内部から引き抜きながら、前記RI原料を前記供給部の一端部から前記計装管の一端部に充填する、
請求項13に記載の放射性同位体の製造方法。
【請求項15】
前記供給部の一端部を前記原子炉の内部に配置した状態で、前記RI原料を前記供給部の一端部に充填する、
請求項13に記載の放射性同位体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性同位体の製造装置および放射性同位体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用や工業用などの用途に、放射性同位体を用いることが知られている。特許文献1には、原料を原子炉容器の計装管に挿入して、原料に中性子を照射させることで、放射性同位体を製造する旨が記載されている。特許文献1では、原料が収納された保持構体を送り出しシステムの管から計装管に移動させることで、放射性同位体を製造する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、計装管は、長く形成されていたり、湾曲して形成されていたりするため、原料が収納された保持構体を計装管に適切に挿入して放射性同位体を製造するには、改善の余地がある。例えば特許文献1では、保持構体の構造について詳細構成が開示されておらず、保持構体を計装管に適切に挿入できないおそれもある。また、特許文献1に記載の装置は、保持構体を計装管の入り口から目的位置まで移動させる必要がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、放射性同位体の原料を計装管に適切に挿入可能な放射性同位体の製造装置および放射性同位体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る放射性同位体の製造装置は、一端部が前記原子炉の内部に配置され他端部が前記原子炉の外部に配置される計装管の内部を移動可能な供給部と、一端部が記原子炉の内部に配置された前記供給部により前記計装管の前記他端部側から前記供給部の前記一端部に前記RI原料を搬送可能な搬送機構と、を含む。
【0007】
また、本開示に係る放射性同位体の製造方法は、放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉の内部に配置し、放射性同位体を製造する放射性同位体の製造方法であって、一端部が前記原子炉の内部に配置され他端部が前記原子炉の外部に配置される計装管の内部を移動させて供給部の一端部を前記原子炉の内部に配置する工程と、前記RI原料を前記計装管の前記他端部側から前記供給部の前記一端部に搬送して前記原子炉の中性子線が照射される照射領域に配置する工程と、前記RI原料を前記照射領域に保持する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、放射性同位体の原料を計装管に適切に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る原子炉容器の模式的な一部断面図である。
【
図2】
図2は、計装管を説明する概略側面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る放射性同位体の製造装置の模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る計装管と供給チューブとRI原料粒状体との関係を説明する概略図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るRI原料粒状体の搬送装置および回収装置の模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る供給管を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する初期状態を表す概略図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する中間状態を表す概略図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する後期状態を表す概略図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る放射性同位体の製造装置の模式図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る供給管を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する初期状態を表す概略図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する中間状態を表す概略図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する後期状態を表す概略図である。
【
図16】
図16は、RI原料を構成するカプセルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0011】
[第1実施形態]
(原子炉容器)
図1は、第1実施形態に係る原子炉容器の模式的な一部断面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る原子炉容器101は、原子力発電プラントの加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる。ただし、原子炉容器101は、加圧水型原子炉に用いられることに限られず、例えば沸騰水型原子炉に用いられてもよい。
図1に示すように、原子炉容器101は、原子炉容器本体101aの内部に、燃料集合体120を含む炉内構造物を有している。
【0012】
図2は、計装管を説明する概略側面図である。
図1および
図2に示すように、原子炉容器本体101aは、複数の計装管147Aが接続されている。計装管147Aは、原子炉容器本体101aの下部の複数個所に配置される。計装管147Aは、計装管台146と、炉内計装案内管147と、コンジットチューブ148と、シンブルチューブ151と、を含む。計装管台146は、下部鏡101eを貫通する。計装管台146は、炉内側の上端部に炉内計装案内管147が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ148が連結されている。炉内計装案内管147は、計装管台146に接続され、炉心内部の燃料集合体120が配置される領域まで伸びている。コンジットチューブ148は、原子炉容器本体101aの外側に配置され、計装管台146とシールテーブル156とに接続される。シンブルチューブ151は、コンジットチューブ148、計装管台146および炉内計装案内管147に挿入される管である。シンブルチューブ151は、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が挿通される。シンブルチューブ151は、コンジットチューブ148、計装管台146および炉内計装案内管147に挿入されることで燃料集合体120が配置される領域まで挿入可能となっている。
【0013】
計装管147Aは、中性子束検出器が挿入される。計装管147Aは、炉心129まで延在することで、挿入された中性子束検出器が、中性子束に晒されて中性子束を検出する。
【0014】
図2に示すように、計装管147Aは、原子炉容器101の外部まで延出される。原子炉格納容器100は、原子炉容器101の下方に配管室155が形成されている。複数のコンジットチューブ148は、下部鏡101eにある計装管台146から原子炉容器101の外部に引き出され、配管室155を湾曲して上方に引き回された後、端部が別室のシールテーブル156に固定されている。シンブルチューブ151は、この固定されたコンジットチューブ148の端部から挿通される。そして、このシンブルチューブ151に中性子束検出器が挿入される。
【0015】
シールテーブル156は、板状に形成され、コンジットチューブ148の端部が下から上に貫通された状態で固定されている。複数のコンジットチューブ148は、シールテーブル156の上面から林立されている。
【0016】
このように、計装管147Aは、コンジットチューブ148がシンブルチューブ151に挿入される構成であるが、それに限られず、中性子束検出器や後述する供給部が挿入される任意の形状の管、また、内部空間が細長い通路となる中空部材であってよい。
【0017】
(放射性同位体の製造装置)
図3は、第1実施形態に係る放射性同位体の製造装置の模式図である。
図3に示すように、第1実施形態に係る放射性同位体の製造装置10は、供給部12と、搬送機構14と、回収機構16とを含む。供給部12は、計装管147A管の内部を移動可能である。搬送機構14および回収機構16は、供給部12の端部に接続される。
【0018】
(供給部)
供給部12は、計装管147Aに挿入される管路を形成する供給チューブ20である。供給チューブ20は、外管21と、内管22と、シールリング23とを有する。供給チューブ20は、外管21の内側に内管22が配置され、外管21の一端部にシールリング23が設けられる。内管22は、内部に第1経路22aが設けられる。外管21の内周面と内管22の外周面との間に隙間が確保され、隙間によりリング形状をなす第2経路21aが設けられる。内管22は、一端部が外管21の一端部から所定長さだけ突出しているが、突出しなくてもよい。シールリング23は、外管21の一端部に固定されているが、外管21の形成時に一体に形成してもよい。また、シールリング23は、外管21の一端から所定長さだけ他端部側にずれた位置に設けたが、外管21の一端に設けてもよい。また、シールリング23は、複数設けてもよい。なお、外管21と内管22は、ステンレス鋼管とすることが好ましいが、他の材質であってもよい。
【0019】
供給チューブ20を構成する外管21および内管22は、挿入される計装管147Aの内部で、移動可能な剛性を有し、かつ、計装管147A管に沿って変形可能な可撓性を有する。供給チューブ20は、外径が計装管147Aの内径よりも小さい。供給部12としての供給チューブ20は、原子炉容器101の所定位置、具体的には、中性子線が照射される照射領域からシールテーブル156まで到達可能な長さである。
【0020】
供給部12は、供給チューブ20を通してRI(Radioisotope)原料を原子炉容器101の照射領域に供給する。供給チューブ20は、内部にRI原料が充填されていない状態で、一端部が計装管147Aへ挿入され、この一端部が原子炉容器101の照射領域(燃料集合体120が配置されている位置)に到達した後、搬送機構14により内部にRI原料が供給される。なお、供給チューブ20は、内部にRI原料が充填された状態で、一端部が計装管147Aへ挿入され、この一端部を原子炉容器101の照射領域(燃料集合体120が配置されている位置)に到達させてもよい。
【0021】
(RI原料)
RI原料は、放射性同位体の原料である。RI原料は、計装管147Aの原子炉容器101内に位置する箇所内で、中性子束に暴露されることで、放射性同位体に変換される。RI原料は、後述する搬送機構14で搬送可能であればよく、粒状体が好ましいが、粒状体に限定されるものではなく、粉体、粉末が焼き固められたブロック体(焼結体)としてもよい。なお、ブロック体の形状は、どのような形状でもよく、球体、ペレット状、円柱形状、不定形等とすることができる。RI原料は、例えば、モリブデン‐98、クロム‐50、銅‐63、ジスプロシウム‐164、エルビウム‐168、ホルミウム‐165、ヨウ素-130、イリジウム-191、鉄‐58、ルテチウム‐176、パラジウム‐102、リン‐31、カリウム‐41、レニウム‐185、サマリウム‐152、セレン‐74、ナトリウム‐23、ストロンチウム‐88、イッテルビウム‐168、イッテルビウム‐176、イットリウム‐89、のうち少なくとも1つであってよい。そして、それらのRI原料に中性子束が照射されることで、放射性同位体として、それぞれ、モリブデン‐99、クロム‐51、銅‐64、ジスプロシウム‐165、エルビウム‐169、ホルミウム‐166、ヨウ素-131、イリジウム-192、鉄‐59、ルテチウム‐177、パラジウム‐103、リン‐32、カリウム‐42、レニウム‐186、サマリウム‐153、セレン‐75、ナトリウム‐24、ストロンチウム‐89、イッテルビウム‐169、イッテルビウム‐177、イットリウム‐90、が製造される。
【0022】
(供給チューブ)
図4は、第1実施形態に係る計装管と供給チューブとRI原料粒状体との関係を説明する概略図である。ここで、計装管147Aは、炉内計装案内管147、コンジットチューブ148、シンブルチューブ151などから構成される。以下、供給部12(供給チューブ20)は、シンブルチューブ151の内部、または、シンブルチューブ151が除去された炉内計装案内管147およびコンジットチューブ148の内部を移動可能である。
図4に示すように、計装管147Aの内径D0とし、供給チューブ20(シールリング23)の外径D1としたとき、D0>D1となるように供給チューブ20(シールリング23)の外径D1が設定される。但し、内径D0-外径D1の隙間は、微小隙間であり、RI原料粒状体Mが隙間から漏れることなく、供給チューブ20が計装管147Aの内部を移動可能な大きさである。
【0023】
内管22の内径D2とし、RI原料粒状体Mの外径D3としたとき、D2>D3となるように内管22の内径D2およびRI原料粒状体Mの外径D3が設定される。ここで、RI原料粒状体Mは、球形状をなすが、別の形状であってもよく、この場合、RI原料粒状体Mの外径D3は、最大外径である。また、外管21の内周面と内管22の外周面との径方向の隙間の長さD4としたとき、D3>D4となるように外管21の内径および内管22の外径とRI原料粒状体Mの外径D3が設定される。この場合、長さD4は、外管21の中心位置に内管22が位置したときの長さであるが、外管21に対して内管22が径方向にずれることを考慮すると、D3>2×D4となるように設定することが好ましい。
【0024】
(搬送装置および回収装置)
図5は、第1実施形態に係るRI原料粒状体の搬送装置および回収装置の模式図である。
図5に示すように、搬送機構14は、供給部12の他端部に接続される。すなわち、搬送機構14は、計装管147Aのシールテーブル156側に配置され、供給チューブ20の他端部に接続される。搬送機構14は、RI原料粒状体Mを供給チューブ20の他端部から内部を通して一端部まで搬送し、計装管147Aの一端部に供給する。具体的に、搬送機構14は、供給チューブ20を通して計装管147Aの照射領域にRI原料粒状体Mを充填する。搬送機構14は、搬送用気体によりRI原料粒状体Mを供給チューブ20の内部で搬送する。ここで、搬送用気体は、二酸化炭素が好ましいが、空気や他の不活性ガスや気体であってもよい。
【0025】
供給チューブ20は、外管21の内部に内管22が配置されて構成される。内管22は、内部に第1経路22aが形成され、外管21と内管22との間に第2経路21aが形成される。供給チューブ20によりRI原料粒状体Mを計装管147Aの照射領域に供給するとき、第1経路22aは、供給経路として使用され、第2経路21aは、気体回収経路として使用される。内管22は、他端部に分岐管31が連結される。分岐管31は、2つの分岐部31a,31bを有する。外管21は、他端部が分岐管31の手前で内管から分離され、図示しない給排部に接続される。給排部は、例えば、フィルタを介して外部に連通する。
【0026】
分岐管31は、一方の分岐部31aに気体供給管32が連結される。気体供給管32は、分岐管31との連結部に開閉弁33が設けられる。気体供給管32は、中間部に送風機34が設けられる。気体供給管32は、気体流動方向の上流側の端部に開閉弁35が設けられて外部に開放可能である。また、気体供給管32は、送風機34と開閉弁35との間に分岐管36が連結される。分岐管36は、三方弁37を介して連結管38,39が連結される。一方の連結管38は、RI原料貯留部40が連結され、他方の連結管39は、ダミー原料貯留部41が連結される。RI原料貯留部40は、多数のRI原料粒状体Mが貯留され、ダミー原料貯留部41は、多数のダミー原料粒状体Nが貯留される。ダミー原料粒状体Nは、例えば、RI原料以外のダミー原料により製造される。ここで、ダミー原料としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、ステンレス鋼および活性炭などの材料を用いることができる。
【0027】
回収機構16は、搬送機構14と同様に、供給部12の他端部に接続される。すなわち、回収機構16は、計装管147Aのシールテーブル156側に配置され、供給チューブ20の他端部に接続される。回収機構16は、計装管147Aの一端部に充填されているRI原料粒状体Mを供給チューブ20の一端部から内部を通して他端部まで搬送し、回収する。具体的に、回収機構16は、供給チューブ20を通して計装管147Aの照射領域にあるRI原料粒状体Mを回収する。また、回収機構16は、供給チューブ20を通して計装管147Aにあるダミー原料粒状体Nを回収する。回収機構16は、負圧によりRI原料粒状体Mおよびダミー原料粒状体Nを供給チューブ20の内部で吸引搬送する。
供給チューブ20により計装管147Aの照射領域にあるRI原料粒状体Mを回収するとき、第1経路22aは、回収経路として使用され、第2経路21aは、気体供給経路として使用される。
【0028】
内管22の他端部に連結された分岐管31は、他方の分岐部31bに気体排出管42が連結される。気体排出管42は、分岐管31との連結部に開閉弁43が設けられる。気体排出管42は、中間部に真空ポンプ44が設けられる。気体排出管42は、気体流動方向の下流側の端部に開閉弁45が設けられて外部に開放可能である。また、気体排出管42は、真空ポンプ44と開閉弁45との間に分岐管46が連結される。分岐管46は、分離装置47が連結される。分離装置47は、回収したRI原料粒状体Mとダミー原料粒状体Nとを仕分けする。
【0029】
分離装置47は、例えば、湿式フィルタである。湿式フィルタは、貯留槽の内部に溶解液として、例えば、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム溶液)が貯留されて構成される。回収機構16により回収されたRI原料粒状体Mおよびダミー原料粒状体Nは、湿式フィルタに投入される。RI原料粒状体Mは、貯留槽に貯留された溶解液により溶解し、ダミー原料粒状体Nは、貯留槽に貯留された溶解液により溶解しないで固体として残存する。そのため、RI原料粒状体Mが溶解した貯留槽の溶解液からダミー原料粒状体Nを除去することで、RI原料粒状体Mとダミー原料粒状体Nとを仕分けすることができる。
【0030】
なお、溶解液は、苛性ソーダに限るものではない。ダミー原料粒状体Nを構成するダミー原料の種類に応じて適宜設定すればよい。すなわち、溶解液は、RI原料粒状体Mが溶解し、ダミー原料粒状体Nが溶解しない溶液であればよい。また、分離装置47は、湿式フィルタに限るものではない。例えば、RI原料粒状体Mの粒径とダミー原料粒状体Nの粒径とを異ならせ、粒径分離により仕分けをしてもよい。
【0031】
また、搬送機構14は、計装管147Aの一端部に搬送されたRI原料粒状体Mを原子炉容器101内の中性子線が照射される照射領域に保持する保持機構を有する。保持機構は、計装管147Aに充填されたダミー原料粒状体Nにより構成される。すなわち、計装管147Aの一端部にRI原料粒状体Mを搬送した後、引き続いて、計装管147Aにダミー原料粒状体Nを充填する。そのため、計装管147Aに充填されたダミー原料粒状体Nにより計装管147Aの一端部に充填されたRI原料粒状体Mの落下が阻止され、照射領域に保持される。
【0032】
そのため、開閉弁33を開放し、開閉弁43を閉止する。また、開閉弁35を開放し、開閉弁45を閉止する。さらに、三方弁37により分岐管36と連結管38を連通する一方、分岐管36と連結管39との連通しない状態とする。この状態で、送風機34を駆動する。すると、送風機34の吸引力により外部の搬送用気体が気体供給管32に導入されると共に、RI原料貯留部40のRI原料粒状体Mが連結管38および分岐管36を介して気体供給管32に導入される。RI原料粒状体Mは、気体供給管32に導入された搬送用気体により吸引された後に押し出され、矢印A1で表すように、分岐管31から供給チューブ20の内管22に供給される。そして、RI原料粒状体Mは、内管22の第1経路22aを通って一端部に搬送され、計装管147Aの一端部に充填される。搬送用気体は、矢印A2で表すように、外管21と内管22の間の第2経路21aを通って回収される。
【0033】
そして、計装管147Aの一端部に所定量のRI原料粒状体Mが充填されると、三方弁37により分岐管36と連結管38を連通しない状態とする一方、分岐管36と連結管39とを連通する。すると、ダミー原料貯留部41のダミー原料粒状体Nが連結管39および分岐管36を介して気体供給管32に導入される。ダミー原料粒状体Nは、気体供給管32に導入された搬送用気体により吸引された後に押し出され、矢印A1で表すように、分岐管31から供給チューブ20の内管22に供給される。そして、RI原料粒状体Mは、内管22の第1経路22aを通って一端部に搬送され、計装管147Aに充填される。
【0034】
一方、開閉弁33を閉止し、開閉弁43を開放する。また、開閉弁35を閉止し、開閉弁45を開放する。この状態で、真空ポンプ44を駆動する。すると、真空ポンプ44の吸引力により発生する負圧が気体排出管42および分岐管31を介して供給チューブ20の内管22に作用する。内管22に負圧が作用すると、まず、計装管147Aに充填されているダミー原料粒状体Nは、矢印B1で表すように、内管22の第1経路22aを通って回収され、分岐管31、気体排出管42、分岐管46を介して分離装置47に回収される。このとき、搬送用気体は、矢印B2で表すように、外管21と内管22の間の第2経路21aを通って計装管147Aに供給される。計装管147Aに充填されているダミー原料粒状体Nの回収が終了すると、続いて、計装管147Aに充填されているRI原料粒状体Mが同様に回収される。
【0035】
なお、第1実施形態では、上述した構成の搬送機構14および回収機構16を設けたが、搬送機構14および回収機構16は、上述した構成に限定されるものではない。例えば、真空ポンプにより発生した負圧を外管21と内管22の間の第2経路21aに作用させることで、計装管147Aの一端部を負圧とし、RI原料粒状体Mやダミー原料粒状体Nを内管22の第1経路22aを通して計装管147Aの一端部に吸引搬送して供給してもよい。また、送風機により搬送用気体を外管21と内管22の間の第2経路21aに供給することで、計装管147Aの一端部を高圧とし、計装管147AにあるRI原料粒状体Mやダミー原料粒状体Nを内管22の第1経路22aを通して押し出し搬送して回収してもよい。
【0036】
(放射性同位体の製造方法)
次に、放射性同位体の製造装置10でRI原料を放射化し、放射性同位体を製造する方法を説明する。
図6は、第1実施形態に係る供給管を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図、
図7は、第1実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する初期状態を表す概略図、
図8は、第1実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する中間状態を表す概略図、
図9は、第1実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する後期状態を表す概略図である。
【0037】
図6に示すように、第1実施形態の放射性同位体の製造装置10は、シールテーブル156の上面から突出した計装管147Aの端部の開口から、計装管147A内に、供給部12としての供給チューブ20を挿入する。例えば、中性子束検出器が挿入されていないシンブルチューブ151に供給チューブ20を挿入する。すなわち、供給チューブ20は、中性子束検出器用のシンブルチューブ151(計装管147A)に挿入される。供給チューブ20は、内部にRI原料粒状体Mやダミー原料粒状体Nが充填されておらず、内部が空洞である。供給チューブ20が計装管147Aの内部を前進させることで、一端部を原子炉容器101内の所定の位置まで移動させる。
【0038】
供給チューブ20が計装管147Aの内部に配置されると、
図7に示すように、放射性同位体の製造装置10は、搬送機構14によりRI原料粒状体Mを供給チューブ20の他端部から一端部側に移動させる。なお、RI原料粒状体Mを供給チューブ20で移動させるとき、計装管147Aの内部を二酸化炭素雰囲気とすることが好ましい。RI原料粒状体Mが供給チューブ20の一端部に移動すると、内管22の一端部から計装管147Aの一端部にRI原料粒状体Mが排出される。このとき、放射性同位体の製造装置10は、搬送用気体により内管22の一端部からRI原料粒状体Mを排出しながら、供給チューブ20を引き抜いて後退させる。すると、供給チューブ20が後退して形成された計装管147Aの一端部の空間にRI原料粒状体Mが充填されていく。
図8に示すように、計装管147Aの一端部から充填されるRI原料粒状体Mは、内管22の一端部から排出される搬送用気体およびRI原料粒状体Mにより落下が阻止され、計装管147Aの一端部に所定量のRI原料粒状体Mが充填されていく。
【0039】
図9に示すように、RI原料粒状体Mが計装管147Aの一端部が配置される原子炉容器101内の照射領域L1まで充填されると、供給チューブ20に供給する粒状体をRI原料粒状体Mからダミー原料粒状体Nを切り替える。すなわち、RI原料粒状体Mは、計装管147Aの照射領域L1だけに充填され、非照射領域L2にはダミー原料粒状体Nが充填される。計装管147Aは、逆U字形状をなしている。また、RI原料粒状体Mとダミー原料粒状体Nとは、同じ質量である。そのため、ダミー原料粒状体Nは、計装管147Aにおける一端部、つまり、RI原料粒状体Mが充填された高さまで充填される。すると、計装管147Aの内部で、RI原料粒状体Mとダミー原料粒状体Nが釣り合い、計装管147Aの一端部に充填されたRI原料粒状体Mが保持され、落下が阻止される。なお、RI原料粒状体Mの質量がダミー原料粒状体Nの質量より大きい場合、ダミー原料粒状体Nをシールテーブル156の上面まで充填し、計装管147Aの他端部に栓を装着してもよい。栓の装着の代わりに常時送風によりRI原料粒状体Mやダミー原料粒状体Nの落下を阻止してもよい。また、ダミー原料粒状体Nを計装管147Aにおけるすべての領域に充填する必要はない。例えば、供給チューブ20を引き抜きながら計装管147Aにダミー原料粒状体Nを充填するとき、途中で、供給チューブ20の移動と計装管147Aへのダミー原料粒状体Nの供給を停止し、供給チューブ20を計装管147Aの内部に残存させたままとしてもよい。
【0040】
放射性同位体の製造装置10は、計装管147Aの一端部の照射領域L1にRI原料粒状体Mが充填されて保持された状態を維持する。すると、計装管147Aの照射領域L1に保持されたRI原料粒状体Mは、放射性同位体に中性子束が照射されて、放射性同位体が製造される。
【0041】
放射性同位体が製造されると、放射性同位体の製造装置10は、回収機構16により計装管147Aに充填されたRI原料粒状体Mを供給チューブ20の一端部から他端部側に移動させて放射性同位体を回収する。シールテーブル156の上面から突出した計装管147Aの端部の開口から、計装管147A内に、供給部12としての供給チューブ20を挿入する。このとき、回収機構16により供給チューブ20における内管22に一端部に吸引力を作用させる。すると、供給チューブ20は、一端部が計装管147Aの内部を前進するとき、内管22の一端部からダミー原料粒状体Nが吸引されて回収される。供給チューブ20を計装管147Aの内部をさらに前進させると、非照射領域L2に充填されていたダミー原料粒状体Nの回収が終了し、引き続いて、RI原料粒状体Mの回収が始まる。このとき、計装管147Aの一端部に保持されているRI原料粒状体Mは、下方のダミー原料粒状体Nが回収されると、自重により落下することから、供給チューブ20の一端部を計装管147Aの一端部まで前進させる必要はない。そして、供給チューブ20の内管22による吸引が継続されると、計装管147Aに充填されていた全てのRI原料粒状体Mが回収される。RI原料粒状体Mが回収されると、計装管147Aから供給チューブ20を引き抜く。
【0042】
(効果)
第1実施形態に係る放射性同位体の製造装置10は、RI原料粒状体Mを搬送可能な供給部12を計装管147Aに挿入し、原子炉容器101内の照射領域L1に移動させた後、供給部12を通して計装管147Aの一端部にRI原料粒状体Mを充填して保持させる。原子炉容器101内の照射領域L1に保持されたRI原料粒状体Mに中性子束を照射することで、放射性同位体を製造することができる。このようにRI原料に中性子線を照射させる構造物を、計装管147Aの内部で製造することで、計装管147Aの移動時に、RI原料を充填した構造物が損傷することを抑制できる。また、RI原料粒状体Mに中性子線を照射している工程では、供給部12を計装管147Aに配置する必要がないため、対象物以外で中性子線が照射されにくい環境とすることができる。これにより、より好適に放射性同位体を製造することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態に係る放射性同位体の製造装置の模式図である。なお、上述した第1施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
(放射性同位体の製造装置)
図10に示すように、第2実施形態に係る放射性同位体の製造装置10Aは、供給部12Aと、搬送機構14と、回収機構16とを含む。供給部12Aは、計装管147A管の内部を移動可能である。搬送機構14および回収機構16は、供給部12Aの端部に接続される。
【0045】
(供給部)
供給部12Aは、計装管147Aに挿入される管路を形成する供給チューブ50である。供給チューブ50は、管51と、メッシュ(開口部)52とを有する。供給チューブ50は、管51の一端部にメッシュ52が設けられる。メッシュ52に代えて、例えば、多孔板であってもよい。管51は、内部に経路51aが設けられる。管51は、経路51aがメッシュ52の開口を介して外部に挿通する。メッシュ52の開口の大きさは、RI原料粒状体Mおよびダミー原料粒状体Nの粒径より小さい。すなわち、メッシュ52の開口は、管51の経路51aに供給されたRI原料粒状体Mおよびダミー原料粒状体Nが開口を通して外部に漏れない大きさである。供給チューブ50を構成する管51は、挿入される計装管147Aの内部で、移動可能な剛性を有し、かつ、計装管147A管に沿って変形可能な可撓性を有する。供給チューブ50は、外径が計装管147Aの内径よりも小さい。供給部12Aとしての供給チューブ50は、原子炉容器101の所定位置、具体的には、中性子線が照射される照射領域からシールテーブル156まで到達可能な長さである。
【0046】
供給部12Aは、供給チューブ50を通してRI(Radioisotope)原料を原子炉容器101の照射領域に供給する。供給チューブ50は、内部にRI原料が充填されていない状態で、一端部が計装管147Aへ挿入され、この一端部が原子炉容器101の照射領域(燃料集合体120が配置されている位置)に到達した後、搬送機構14により内部にRI原料が供給される。なお、搬送機構14および回収機構16は、第1実施形態と同様であることから、説明は省略する。
【0047】
(放射性同位体の製造方法)
次に、放射性同位体の製造装置10でRI原料を放射化し、放射性同位体を製造する方法を説明する。
図11は、第2実施形態に係る供給管を計装管内に挿入する方法を説明するための模式図、
図12は、第2実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する初期状態を表す概略図、
図13は、第2実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する中間状態を表す概略図、
図14は、第2実施形態に係る供給管にRI原料粒状体を充填する後期状態を表す概略図である。
【0048】
図11に示すように、第2実施形態の放射性同位体の製造装置10Aは、シールテーブル156の上面から突出した計装管147Aの端部の開口から、計装管147A内に、供給部12Aとしての供給チューブ50を挿入する。供給チューブ50は、内部にRI原料粒状体Mやダミー原料粒状体Nが充填されておらず、内部が空洞である。供給チューブ50が計装管147Aの内部を前進させることで、一端部を、原子炉容器101内の所定の位置まで移動させる。
【0049】
供給チューブ50が計装管147Aの内部に配置されると、
図12に示すように、放射性同位体の製造装置10Aは、搬送機構14によりRI原料粒状体Mを供給チューブ50の他端部から一端部側に移動させる。RI原料粒状体Mが供給チューブ50の一端部に移動すると、RI原料粒状体Mは、管51の一端部に設けられたメッシュ52に当接してその位置に留まる。一方、搬送用気体は、メッシュ52を通り抜け、供給チューブ50と計装管147Aとの隙間から回収される。すると、供給チューブ50の一端部にRI原料粒状体Mが充填されていく。
図13に示すように、供給チューブ50の一端部から充填されるRI原料粒状体Mは、順次、搬送用気体により管51に供給されるRI原料粒状体Mにより落下が阻止され、供給チューブ50の一端部に所定量のRI原料粒状体Mが充填されていく。
【0050】
図14に示すように、RI原料粒状体Mが供給チューブ50の一端部が配置される原子炉容器101内の照射領域L1まで充填されると、供給チューブ50に供給する粒状体をRI原料粒状体Mからダミー原料粒状体Nを切り替える。すなわち、RI原料粒状体Mは、供給チューブ50の照射領域L1だけに充填され、非照射領域L2にはダミー原料粒状体Nが充填される。供給チューブ50は、計装管147Aの内部に配置されて逆U字形状をなしている。また、RI原料粒状体Mとダミー原料粒状体Nとは、同じ質量である。そのため、ダミー原料粒状体Nは、供給チューブ50における一端部、つまり、RI原料粒状体Mが充填された高さまで充填される。すると、供給チューブ50の内部で、RI原料粒状体Mとダミー原料粒状体Nが釣り合い、供給チューブ50の一端部に充填されたRI原料粒状体Mが保持され、落下が阻止される。
【0051】
放射性同位体の製造装置10Aは、計装管147Aの内部に配置された供給チューブ50の一端部の照射領域L1にRI原料粒状体Mが充填されて保持された状態を維持する。すると、計装管147Aの照射領域L1に保持されたRI原料粒状体Mは、放射性同位体に中性子束が照射されて、放射性同位体が製造される。
【0052】
放射性同位体が製造されると、放射性同位体の製造装置10Aは、回収機構16により計装管147Aの内部に配置された供給チューブ50に充填されたRI原料粒状体Mを供給チューブ50の一端部から他端部側に移動させて放射性同位体を回収する。回収機構16により供給チューブ50における管51の他端部に吸引力を作用させる。すると、供給チューブ50は、管51の他端部からダミー原料粒状体Nが吸引されて回収される。非照射領域L2に充填されていたダミー原料粒状体Nの回収が終了し、引き続いて、RI原料粒状体Mの回収が始まる。そして、供給チューブ50に充填されていた全てのRI原料粒状体Mが回収される。RI原料粒状体Mが回収されると、計装管147Aから供給チューブ50を引き抜く。
【0053】
(効果)
第2実施形態に係る放射性同位体の製造装置10Aは、RI原料粒状体Mを搬送可能な供給部12Aを計装管147Aに挿入し、原子炉容器101内の照射領域L1に移動させた後、供給部12Aを通して計装管147Aの一端部にRI原料粒状体Mを充填して保持させる。原子炉容器101内の照射領域L1に保持されたRI原料粒状体Mに中性子束を照射することで、放射性同位体を製造することができる。このようにRI原料に中性子線を照射させる構造物を、計装管147Aの内部で製造することで、計装管147Aの移動時に、RI原料を充填した構造物が損傷することを抑制できる。また、RI原料粒状体Mに中性子線を照射している工程では、供給部12Aを計装管147Aに配置するため、製造作業の簡素化を図ることができる。これにより、より好適に放射性同位体を製造することができる。
【0054】
[変形例]
なお、上述した各実施形態では、RI原料をRI原料粒状体Mとしたが、この構成に限定されるものではない。
図15は、RI原料の変形例を表す模式図、
図16は、RI原料を構成するカプセルの模式図である。
【0055】
図15に示すように、カプセルユニット60は、複数のカプセル61を備える。カプセル61は、
図16に示すように、RI原料M0が収納されるケース部62と、ケース部62の端部に取り付けられる接触部63と有する。カプセルユニット60は、1つのカプセル61の接触部63が、他のカプセル61の接触部63と接触する。
【0056】
ケース部62は、RI原料M0が収納される収納空間が内部に形成される中空の部材である。ケース部62は、筒部64と蓋部65とを有する。筒部64は、筒状、ここでは円筒状の部材である。筒部64の内周面に囲われる空間が、RI原料M0の収納空間となる。蓋部65は、筒部64の軸方向における一方の端部と他方の端部とに設けられる部材である。蓋部65は、筒部64の端部に形成される開口を覆うことで、収納空間を閉塞する。蓋部65は、円板状の部材であるが、形状はそれに限られず任意であってよい。蓋部65は、例えば、表面が筒部64の端部に接触した状態で溶接されることで、筒部64に対して固定される。この場合、例えば、ケース部62の収納空間にRI原料M0を収納した後で、蓋部65が筒部64に固定されて、収納空間が閉塞される。
【0057】
ケース部62の外径は、カプセル61が挿入される計装管147Aの内径よりも小さく形成されている。ケース部62は、例えば、アルミニウム、ケイ素、ステンレス鋼などある程度の強度を有する材料で製造されることが好ましいが、それに限られず、任意の材料で製造されてよい。
【0058】
接触部63は、ケース部62の端部に取り付けられる部材である。接触部63は、ケース部62に対して固定されている。接触部63は、ケース部62の一方側の端部と他方側の端部とのそれぞれに取り付けられる。接触部63は、ケース部62に接触する表面から、ケース部62から離れる方向に向かうに従って、外径が小さくなっている。言い換えれば、接触部63は、半球面形状となっている。
【0059】
なお、ケース部62に収納されるRI原料M0は、粉体であることが好ましいが、粒状体やブロック体などであってもよい。
【0060】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本開示に係る放射性同位体の製造装置は、放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉の内部に配置し、放射性同位体を製造する放射性同位体の製造装置10,10Aであって、一端部が原子炉の内部に配置され他端部が原子炉の外部に配置される計装管147Aの内部を移動可能な供給部12,12Aと、一端部が原子炉の内部に配置された供給部12,12Aにより計装管147Aの他端部側から供給部12,12A一端部にRI原料を搬送可能な搬送機構14と、を含む。これにより、放射性同位体の原料を計装管に適切に挿入することができる。
【0061】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、供給部12,12Aは、可撓性を有する供給チューブ20,50である。これにより、屈曲した計装管147Aに対して供給チューブ20,50を適切に挿入して移動することができる。
【0062】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、搬送機構14は、搬送用気体によりRI原料を供給チューブ20,50の内部で搬送可能である。これにより、簡単な構成で容易にRI原料を供給チューブ20,50の内部で移動することができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0063】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、供給チューブ20は、計装管147Aの内部を移動可能な外管21と、外管の内部に配置される内管22とを有し、搬送機構14は、搬送用気体によりRI原料を内管22の内部を通して計装管147Aの一端部に搬送可能である。これにより、搬送用気体によりRI原料を内管22から計装管147Aの一端部に容易に充填することができる。
【0064】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、搬送機構14は、計装管147Aの一端部に供給された搬送用気体を外管21と内管22との隙間から回収可能である。これにより、搬送用気体を内管22とは別の通路から回収することで、RI原料を内管22から計装管147Aの一端部に適切に充填することができる。
【0065】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、RI原料は、内管22の内部を移動可能であると共に、外管21と内管22との隙間を移動不能なRI原料粒状体Mである。これにより、RI原料粒状体Mが外管21と内管22との隙間から漏れることなく、計装管147Aの一端部に適正に充填することができる。
【0066】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、外管21は、一端部の外周面に計装管147Aの内周面との隙間を塞ぐシールリング23が設けられる。これにより、外管21と計装管147Aとの隙間からのRI原料粒状体Mの漏れを防止することができる。
【0067】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、供給チューブ50は、一端部にRI原料が通過不能であると共に、搬送用気体が通過可能なメッシュ(開口部)52が設けられる。これにより、供給チューブ50の一端部に搬送用気体が滞留することなく、RI原料を適切に充填することができる。
【0068】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、搬送機構14は、計装管147Aの一端部に搬送されたRI原料を原子炉の中性子線が照射される照射領域に保持する保持機構を有する。これにより、計装管147Aの一端部の照射領域にRI原料を保持することができ、適切に放射性同位体を製造することができる。
【0069】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、計装管147Aの一端部に充填されたRI原料を回収可能な回収機構16を含む。これにより、製造された放射性同位体を適切に回収することができる。
【0070】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、回収機構16は、計装管147Aの一端部に負圧を作用させて吸引する、あるいは他端部に正圧を作用させて押し出すことでRI原料を回収可能である。これにより、構造の簡素化を図ることができる。
【0071】
本開示に係る放射性同位体の製造装置は、搬送機構14は、RI原料を計装管147Aの一端部に搬送可能であると共に、ダミー原料を計装管147Aに搬送可能であり、回収機構16は、RI原料およびダミー原料を回収可能であり、回収したRI原料とダミー原料を仕分けする分離装置47を有する。これにより、RI原料からダミー原料を分離することで、RI原料の利用を妨げることが防止される。
【0072】
また、本開示の放射性同位体の製造方法は、放射性同位体の原料であるRI原料を原子炉の内部に配置し、放射性同位体を製造する放射性同位体の製造方法であって、一端部が原子炉の内部に配置され他端部が原子炉の外部に配置される計装管17Aの内部を移動させて供給部12,12Aの一端部を原子炉の内部に配置する工程と、RI原料を計装管の他端部側から供給部12,12Aの一端部に搬送して原子炉の中性子線が照射される照射領域に配置する工程と、RI原料を照射領域に保持する工程とを含む。これにより、放射性同位体の原料を計装管に適切に挿入することができる。
【0073】
本開示の放射性同位体の製造方法は、供給部12を原子炉の内部から引き抜きながら、RI原料を供給部12の一端部から計装管147Aの一端部に充填する。これにより、搬送用気体によりRI原料を内管22から計装管147Aの一端部に容易に充填することができると共に、搬送用気体を外管21と内管22との隙間から適切に回収することができる。
【0074】
本開示の放射性同位体の製造方法は、供給部12Aの一端部を原子炉の内部に配置した状態で、RI原料を供給部12Aの一端部に充填する。これにより、供給部12Aを原子炉から引き抜く必要がなく、作業性を向上することができる。
【0075】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0076】
10,10A 放射性同位体の製造装置
12,12A 供給部
14 搬送機構
16 回収機構
20 供給チューブ
21 外管
21a 第2経路
22 内管
22a 第1経路
23 シールリング
50 供給チューブ
51 管
51a 経路
60 カプセルユニット
101 原子炉容器
147A 計装管
M RI原料粒状体
N ダミー原料粒状体