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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】複合成分繊維およびそのポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/06 20060101AFI20231102BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20231102BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20231102BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20231102BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20231102BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20231102BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
D01F8/06
C08L51/06
C08L67/00
C08K5/09
D04H3/147
D04H1/541
C08L23/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020548770
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019024236
(87)【国際公開番号】W WO2019191197
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】62/649,952
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ラリオス、ファブリシオ アルティエガ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルサー、ブライアン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、ジル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウェバーズ、ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ベル、ロバート ダブリュー.
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-081447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 -201/10
D01F 8/00 - 8/18
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合成分繊維であって、
縮合ポリマーで形成された第1の領域と、
(i)0.920g/cm~0.970g/cmの密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される0.5~150g/10分のメルトインデックス(I を有するエチレン系ポリマー、
(ii)無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、および
(iii)25℃で1~6.5の酸強度pKa値を有する無機ブレンステッド-ローリー酸のポリエチレンブレンドから形成された第2領域と、を含み、
前記ポリエチレンブレンドが、前記ポリエチレンブレンドの総重量に基づいて0.03~0.5重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を有し、
前記第1の領域が前記複合成分繊維のコア領域であり、前記第2の領域が前記複合成分繊維の鞘領域であり、前記鞘領域が前記コア領域を取り囲んでおり、
前記縮合ポリマーが、ポリエチレンテレフタレート、グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート、ポリヒドロキシブチレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、複合成分繊維。
【請求項2】
記縮合ポリマーが、前記第1の領域の少なくとも75重量パーセント(重量%)に含まれ、前記重量%が、前記第1の領域の総重量に基づく、請求項1に記載の複合成分繊維。
【請求項3】
前記縮合ポリマーが、ポリエチレンテレフタレート、リコール修飾ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるか、または
前記エチレン系ポリマーが、線状低密度ポリエチレン、線状中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1または2に記載の複合成分繊維。
【請求項4】
前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンが、前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの総重量に基づいて、0.05~3重量%のグラフ化無水マレイン酸を有するか、または
前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンが、0.920g/cm~0.959g/cmの範囲の密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される10~14g/10分のメルトインデックス(I)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合成分繊維。
【請求項5】
前記無機ブレンステッド-ローリー酸が、重硫酸ナトリウム一水和物、リン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるか、または
前記無機ブレンステッド-ローリー酸が、2~6のpKaを有するか、または
前記ポリエチレンブレンドが、5~75重量%の前記エチレン系ポリマーと、2~30重量%の前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、20~10000百万分率の前記無機ブレンステッド-ローリーとを含むか、または
前記ポリエチレンブレンドが、少なくとも75重量%の前記エチレン系ポリマーを含み、前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンおよび前記無機ブレンステッド-ローリー酸が、前記エチレン系ポリマーと共に存在して、100重量%の前記ポリエチレンブレンドを提供する、請求項1に記載の複合成分繊維。
【請求項6】
前記ポリエチレンブレンドが、12~21個の炭素鎖を有する極性飽和脂肪酸およびその金属塩をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合成分繊維。
【請求項7】
前記極性飽和脂肪酸が、ステアリン酸およびその金属塩である、請求項6に記載の複合成分繊維。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の複合成分繊維を含む、不織布物品。
【請求項9】
複合成分繊維を形成する方法であって、
熱結合条件下で、(a)縮合ポリマーと、
(b)
(i)0.920g/cm~0.965g/cmの密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される0.5~150g/10分のメルトインデックス(I を有するエチレン系ポリマー、
(ii)無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、および
(iii)25℃で1~6.5の酸強度pKa値を有する無機ブレンステッド-ローリー酸のポリエチレンブレンドと、
を共押し出しすることを含み、
前記ポリエチレンブレンドは、前記ポリエチレンブレンドの総重量に基づいて0.03~0.5重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を有し、
前記縮合ポリマーおよび前記ポリエチレンブレンドを熱結合条件下で接触させて、前記縮合ポリマーを有する第1の領域と、前記ポリエチレンブレンドを有する第2の領域とを有する前記複合成分繊維を形成し、
前記第1の領域が前記複合成分繊維のコア領域であり、前記第2の領域が前記複合成分繊維の鞘領域であり、前記鞘領域が前記コア領域を取り囲んでおり、
前記縮合ポリマーが、ポリエチレンテレフタレート、グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート、ポリヒドロキシブチレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記熱結合条件が、第1の領域の形成に使用される縮合ポリマーを200℃以上350℃未満で、第2の領域の形成に使用されるポリエチレンブレンドを100℃以上150℃未満で、それぞれ個別の溶融ポリマー流に対して押出しを行うことを含む、方法。
【請求項10】
前記複合成分繊維が、(a)および(b)を鞘/コア構成で共押し出しすることにより調製され
記ポリエチレンブレンドの前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンが、前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの総重量に基づいて、0.05~3重量%のグラフ化無水マレイン酸を有するか、または
前記ポリエチレンブレンドが、5~75重量%の前記エチレン系ポリマーと、2~30重量%の前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、20~10000百万分率の前記無機ブレンステッド-ローリーとを含むか、または
前記ポリエチレンブレンドが、12~21個の炭素鎖を有する極性飽和脂肪酸およびその金属塩をさらに含むか、または
前記複合成分繊維が、メルトブローン、スパンボンド、もしくはステープル繊維製造プロセス条件下で形成される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して繊維、より具体的には複合成分繊維のためのポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
複合成分繊維は、同じ紡糸口金から押し出された2つの異なるポリマーで構成されたフィラメントであり、両方のポリマーが同じフィラメント内に含まれている。フィラメントが紡糸口金を離れるとき、それは界面で融合する非混合成分からなる。2つのポリマーは、それらの化学組成および/または物理的特性において異なり、両方のポリマーの機能特性を1つのフィラメントに結合できるため、複合成分繊維は、より広くの様々な所望の特性を満たすことができる。
【0003】
複合成分繊維の多くの構成の中でも、非常に有用な構成の1つは、コア鞘複合成分繊維である。コア鞘構造の場合、コアは、鞘により完全に取り囲まれている。したがって、第1のポリマーがコアを形成し、第1のポリマーとは異なる第2のポリマーが鞘を形成する。これにより、単一の繊維構造から様々な特性を達成することが可能になる。例えば、コアのポリマーは、複合成分繊維に強度を与えるように選択され得るが(強化ポリマー)、鞘のポリマーは、染色される能力、外観、絶縁を提供する能力、またはとりわけ、その接着特性に関して選択され得る。
【0004】
しかしながら、コア鞘構造を有する複合成分繊維の継続的な欠点となる1つの問題は、コアのポリマーと鞘のポリマーとの間の界面結合の強度である。経験から、コア鞘接着は、ポリエチレンテレフタレート(PET)のコアおよびポリオレフィンの鞘を有する複合成分繊維に問題があることがわかっている。PETおよび多くのポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)は相互に適合性がないため、これは当然のことである。この非適合性により、カーディング中に鞘が剥がれるなどの問題が引き起こされ得る。紡糸後のプロセスステップ中、PETのコアがポリオレフィンの鞘から分離する可能性もある。
【0005】
したがって、当技術分野では、依然としてPETのコアのポリオレフィンの鞘に対する接着を改善する必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、複合成分繊維の層間の界面結合の強度を改善するのに役立つ複合成分繊維を提供する。本明細書で提供される様々な実施形態の場合、複合成分繊維は、複合成分繊維の第1の領域(例えば、コア)の縮合ポリマー(例えば、ポリエステル)と、第2の領域(例えば、鞘)のポリオレフィンブレンドとを含み、複合成分繊維の層間の界面結合の強度は、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの存在により改善され得る。非適合性の問題を被るポリマーを有する複合成分繊維(例えば、ポリオレフィン鞘を有するPETコア)の場合、本開示は、コアの鞘に対する接着の改善に役立ち得る。
【0007】
具体的には、本開示は、縮合ポリマーから形成された第1の領域と、ポリエチレンブレンドから形成された第2の領域とを含む複合成分繊維を提供する。ポリエチレンブレンドは、(i)0.920g/cm~0.970g/cmの密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、0.5~150g/10分のメルトインデックス、Iを有するエチレン系ポリマーと、(ii)無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、(iii)25℃で1~6.5の酸強度pKa値を有する無機ブレンステッド-ローリー酸と、を含み、ポリエチレンブレンドは、ポリエチレンブレンドの総重量に基づいて0.03~0.5重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を有する。様々な実施形態では、第1の領域は複合成分繊維のコア領域であり、第2の領域は複合成分繊維の鞘領域であり、鞘領域はコア領域を取り囲んでいる。
【0008】
様々な実施形態の場合、縮合ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態では、縮合ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾、ポリブチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。様々な実施形態の場合、縮合ポリマーは、第1の領域の少なくとも75重量パーセント(重量%)に含まれ、重量%は、第1の領域の総重量に基づく。
【0009】
様々な実施形態の場合、エチレン系ポリマーは、線状低密度ポリエチレン、線状中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびそれらの組み合わせから選択される。無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの総重量に基づいて、0.05~3重量%のグラフ化無水マレイン酸を有する。様々な実施形態の場合、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、0.920g/cm~0.959g/cmの範囲の密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、10~14g/10分のメルトインデックス、Iを有する。好ましくは、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、0.949g/cm~0.959g/cmの範囲の密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、10~14g/10分のメルトインデックス、Iを有する。
【0010】
様々な実施形態の場合、無機ブレンステッド-ローリー酸は、重硫酸ナトリウム一水和物、リン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、無機ブレンステッド-ローリー酸は、2~6のpKaを有する。
【0011】
より具体的な例として、ポリエチレンブレンドは、5~75重量%のエチレン系ポリマーと、2~30重量%の無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、20~10000百万分率の無機ブレンステッド-ローリーとを含む。ポリエチレンブレンドはまた、少なくとも75重量%のエチレン系ポリマーを含み得、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンおよび無機ブレンステッド-ローリー酸は、エチレン系ポリマーと共に存在して、100重量%のポリエチレンブレンドを提供する。
【0012】
ポリエチレンブレンドは、12~21個の炭素鎖を有する極性飽和脂肪酸およびその金属塩をさらに含み得る。様々な実施形態の場合、極性飽和脂肪酸は、ステアリン酸およびその金属塩を含み得る。
【0013】
本開示はまた、複合成分繊維を形成する方法を提供し、これは、熱結合条件下で、(a)縮合ポリマーと、(b)ポリエチレンブレンドとを共押し出しすることを含み、ポリエチレンブレンドは、(i)0.920g/cm~0.965g/cmの密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、0.5~150g/10分のメルトインデックス、Iを有するエチレン系ポリマーと、(ii)無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、(iii)25℃で1~6.5の酸強度pKa値を有する無機ブレンステッド-ローリー酸とを含む。ポリエチレンブレンドは、ポリエチレンブレンドの総重量に基づいて、0.03~0.5重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を有する。縮合ポリマーおよびポリエチレンブレンドを熱結合条件下で接触させて、縮合ポリマーを有する第1の領域と、ポリエチレンブレンドを有する第2の領域とを有する複合成分繊維を形成する。
【0014】
一実施形態では、複合成分繊維は、(a)および(b)を鞘/コア構成で共押し出しすることにより調製され、(a)は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、ポリエチレンブレンドの無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの総重量に基づいて、0.05~3重量%のグラフ化無水マレイン酸を有する。ポリエチレンブレンドは、5~75重量%のエチレン系ポリマー、2~30重量%の無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、および20~10000百万分率の無機ブレンステッド-ローリーを含み得る。ポリエチレンブレンドは、12~21個の炭素鎖を有する極性飽和脂肪酸およびその金属塩をさらに含み得る。
【0015】
複合成分繊維は、溶融紡糸、溶融吹き付け、スパンボンド、またはステープル繊維製造プロセス条件下で形成され得る。本開示はまた、本明細書に記載される複合成分繊維を含む不織布物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、複合成分繊維の層間の界面結合の強度を改善するのに役立つ複合成分繊維を提供する。本明細書で提供される様々な実施形態の場合、複合成分繊維は、複合成分繊維の第1の領域(例えば、コア)の縮合ポリマー(例えば、ポリエステル)と、第2の領域(例えば、鞘)のポリオレフィンブレンドとを含み、複合成分繊維の層間の界面結合の強度は、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの存在により改善され得る。非適合性の問題を被るポリマーを有する複合成分繊維(例えば、ポリオレフィン鞘を有するPETコア)の場合、本開示は、コアの鞘に対する接着の改善に役立ち得る。
【0017】
本明細書で論じられるように、本開示は、複合成分繊維、複合成分繊維を生成する方法、1つ以上のそのような複合成分繊維を含む不織布材料、およびそのような不織布材料を作製するための方法を対象とする。本開示による複合成分繊維は、縮合ポリマーから形成された第1の領域と、ポリエチレンブレンドから形成された第2の領域とを含む。ポリエチレンブレンドは、(i)0.920g/cm~0.970g/cmの密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、0.5~150g/10分のメルトインデックス、Iを有するエチレン系ポリマーと、(ii)無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、(iii)25℃で1~6.5の酸強度pKa値を有する無機ブレンステッド-ローリー酸と、を含み、ポリエチレンブレンドは、ポリエチレンブレンドの総重量に基づいて、0.03~0.5重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を有する。
【0018】
本開示の複合成分繊維は、任意の形状の異なるポリマー部分を含有し得る。例は、コア鞘、並列、または海島構成である。コア鞘構成が好ましい。本開示の複合成分繊維は、いずれかの形状の断面を有し得る。断面の例は、Hearle J.,“Fibers,2.Structure”(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Wiley-VCH:2002,1-85)で見られる。好ましい断面の例は、円形、楕円形、三角形もしくは多角形、または三葉形もしくは多葉形である。したがって、様々な実施形態の場合、第1の領域は複合成分繊維のコア領域であり得、第2の領域は複合成分繊維の鞘領域であり得、鞘領域はコア領域を取り囲んでいる。本明細書で論じられるような可能な限り生体成分繊維の他の構成。具体的には、本開示は、「コア」および「鞘」の複合成分繊維に言及する。本開示のコアおよび鞘の複合成分繊維は、鞘がコアを完全に取り囲む同心構成または偏心構成であり得る。本開示の複合成分繊維はまた、当該技術分野で既知のセグメント化パイ構成も有し得る。他の可能な構成には、既知の並列複合成分繊維構成が含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、任意に他のモノマーと共に2つ以上のモノマーを有するポリマーを含むことを意味し、インターポリマー、ターポリマーなどを指すことがある。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなど、ならびにそれらの合金およびブレンドを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語はまた、インパクト、ブロック、グラフト、ランダム、および交互コポリマーも含む。「ポリマー」という用語は、特に明記しない限り、すべての可能な幾何学的構成をさらに含むものとする。そのような構成には、アイソタクティック、シンジオタクティック、およびランダムな対称性が含まれ得る。本明細書で使用される場合、「ブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーの混合物を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「モノマー」または「コモノマー」という用語は、ポリマーを形成するために使用されるモノマー、すなわち、重合前の形態の未反応化合物を指すことができ、かつポリマーに組み込まれた後のモノマーを指すこともでき、さらに本明細書では「[モノマー]誘導単位」とも称され、これは、重合反応により、典型的には、重合反応前よりも少ない水素原子を有する。プロピレンモノマー、エチレンモノマー、およびジエンモノマーを含む異なるモノマーが本明細書で論じられる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレン」は、エチレンのホモポリマーおよびコポリマー、またはそれらの混合物を含む。1つ以上の追加のモノマーと重合した1つ以上のエチレンモノマーを含む生成物。本明細書で使用される場合、「エチレン系」は、エチレンが主成分である(例えば、50重量%を超えるエチレン)、単独でまたは1つ以上のコモノマーと組み合わせてエチレンを含む任意のポリマーを含むことを意味する。同様に、本明細書で使用される場合、「プロピレン系」は、プロピレンが主成分である(例えば、50重量%を超えるプロピレン)、単独でまたは1つ以上のコモノマーと組み合わせてプロピレンを含む任意のポリマーを含むことを意味する。
【0022】
第1の領域
複合成分繊維は、縮合ポリマーで形成された第1の領域を含む。本明細書で論じられるように、第1の領域は複合成分繊維のコア領域であり得、第2の領域は複合成分繊維の鞘領域であり得、鞘領域はコア領域を取り囲んでいる。本明細書に記載される複合成分繊維の第1の領域を対象とするポリマーは、縮合反応を介して形成されるポリマーである縮合ポリマーを含む。そのような縮合ポリマーの例には、溶融紡糸可能な縮合ポリマーが含まれ、これには、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが含まれる。
【0023】
上記のように、幅広い種類の縮合ポリマーには、生体成分繊維の第1の領域に好ましいポリエステルが含まれる。好ましくは、縮合ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾、ポリブチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエステルである。本開示の記載ポリエステルも1.2g/cm~1.5g/cmの範囲の密度を有し得る。例えば、ポリエステルは、1.35g/cm~1.45g/cmの範囲の密度を有する。そのようなポリエステルは、通常、0.5~1.4(dl/g)の固有粘度(IV)と同等の分子量を有し、VIは、ASTM D4603または2857に従って決定される。
【0024】
様々な実施形態の場合、縮合ポリマーは、第1の領域の少なくとも75重量パーセント(重量%)に含まれ得、重量%は、第1の領域の総重量に基づく。上記の特定された好ましいポリエステルの100重量%未満が第1の領域(例えば、ポリエチレンテレフタレート)に使用される場合、100重量%を達成するための残りの重量%は、例えば、いわゆる修飾剤として作用し、生成された繊維の物理的および化学的特性が特定の方法で影響を受けることを可能にする二炭酸単位とグリコール単位とから構成され得る。そのような二炭酸単位の例は、イソフタル酸または脂肪族二炭酸の残基、例えば、グルタル酸、アジピン酸、サバシン酸であり、修飾作用を有するジオール残基の例は、長鎖ジオール、例えば、プロパンジオールもしくはブタンジオール、ジエチレングリコールもしくはトリエチレングリコール、または少量で利用可能の場合は、500~2000g/molの分子量を有するポリグリコールである。第1の領域に特に好ましいのは、少なくとも95mol%のポリエチレンテレフタレートを含有するポリエステル、特に未変性のポリエチレンテレフタレートのポリエステルである。本明細書で論じられるように、ポリエステルからコアを形成するための処理温度は、200℃~350℃未満であり得る。
【0025】
第2の領域
複合成分繊維の第2の領域は、(i)0.920g/cm~0.970g/cmの密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、0.5~150g/10分のメルトインデックス、Iを有するエチレン系ポリマー、(ii)無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、かつ(iii)25℃で1~6.5の酸強度pKa値を有する無機ブレンステッド-ローリー酸のポリエチレンのブレンドから形成され、ポリエチレンブレンドは、ポリエチレンブレンドの総重量に基づいて0.03~0.5重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を有する。密度値は、ASTM D-792に従って測定される。
【0026】
エチレン系ポリマー
エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーおよび/または1つ以上のコモノマーを含むエチレンコポリマーであり得る。エチレン系ポリマーは、50重量%超のエチレンと、存在する場合、C~C12α-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーとを含み得、エチレンと1つ以上のコモノマー(存在する場合)との組み合わせは、エチレン系ポリマーの100重量%を提供する。1つ以上の実施形態では、α-オレフィンコモノマー単位は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、およびそれらの組み合わせから誘導され得る。好適なエチレン系ポリマーの例には、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、およびそれらの組み合わせから選択されるものが含まれる。
【0027】
LLDPEは、上で論じられるように、エチレンホモポリマー、またはエチレンと1つ以上の他のα-オレフィンとのコポリマーであり得る。本明細書での使用が意図されるLLDPEは、当技術分野で既知の反応条件下で、従来のチーグラー・ナッタ型触媒系およびメタロセンベースの触媒系を含む任意の好適な触媒系から生成され得る。ある特定の実施形態では、LLDPEポリマーは、約0.92g/cm~0.925g/cmの密度を有し得る。
【0028】
LMDPEは、上で論じられるように、エチレンホモポリマー、またはエチレンと1つ以上の他のα-オレフィンとのコポリマーであり得る。本明細書での使用が意図されるLMDPEは、当技術分野で既知の反応条件下で、従来のチーグラー・ナッタ型触媒系およびメタロセンベースの触媒系を含む任意の好適な触媒系から生成され得る。ある特定の実施形態では、LMDPEポリマーは、約0.926g/cm~0.940g/cmの密度を有し得る。
【0029】
HDPEは、MIまたはHLMI(メルトインデックスまたは高負荷メルトインデックス)で示される幅広い範囲の分子量で利用可能であり、典型的には、少なくとも99モルパーセント(HDPEの総モルに基づく)のエチレン含有量を有する。HDPEに組み込まれた場合、コモノマーは、1-ブテンおよび他のC~C20アルファオレフィンから選択され得る。一実施形態では、コモノマーは、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、およびそれらの組み合わせから選択される。ある特定の実施形態では、コモノマーは、HDPEの総モルに基づいて、HDPE中に最大約1モルパーセント存在し得る。さらなる実施形態では、コモノマーは、HDPE中に最大約2モルパーセント存在する。いくつかの実施形態では、HDPEは、約0.94g/cm~約0.97g/cm、または約0.95g/cm~約0.965g/cmの密度を有し得る。同じまたは他の実施形態では、示差走査熱量計(DSC)により測定される場合、HDPEの融点は、約120℃~約150℃、または約125℃~約135℃であり得る。
【0030】
HDPEは、チーグラー・ナッタ、フィリップス型触媒、クロム系触媒、およびメタロセン触媒系を含む様々な触媒系を使用して作製されたポリマーを含み、これは、アルモキサンおよび/またはイオン活性化剤と共に使用され得る。そのようなポリエチレンを調製するのに有用なプロセスには、気相、スラリー、溶液プロセスなどが含まれる。
【0031】
本明細書で提供されるエチレン系ポリマーはまた、190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、0.5~150g/10分のメルトインデックス、Iを有する。好ましくは、エチレン系ポリマーは、190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、5~50g/10分のメルトインデックス、Iを有する。最も好ましくは、エチレン系ポリマーは、190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、10~35g/10分のメルトインデックス、Iを有する。
【0032】
無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン
無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、エチレンホモポリマーおよび/または1つ以上のコモノマーを含むエチレンコポリマーであり得る。無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、50重量%超のエチレンと、存在する場合、C~C12α-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーとを含み得、エチレンと1つ以上のコモノマー(存在する場合)との組み合わせは、無水マレイン酸と共に、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの100重量%を提供する。1つ以上の実施形態では、α-オレフィンコモノマー単位は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、およびそれらの組み合わせから誘導され得る。
【0033】
本開示による無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、0.865~0.970g/cmの範囲の密度を有し得る。0.865~0.970g/cmの全ての個々の値および部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、密度は、下限値0.870、0.900、0.920、0.940、または0.950g/cm~上限値0.970、0.968、0.966、0.965、0.964、または0.963g/cmであり得る。例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、0.865~0.970g/cmの範囲の密度を有し得るか、あるいはポリエチレン組成物は、0.865~0.970g/cmの範囲の密度を有し得る。
【0034】
本開示による無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンはまた、190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、0.5~150g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。5~50g/10分のすべての個々の値および部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、メルトインデックス(I)は、下限値5、10、15、20、または25g/10分~上限値50、45、40、35、または30g/10分であり得る。例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、5~50g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得るか、あるいは無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、5~50g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0035】
好ましい実施形態では、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、0.920g/cm~0.959g/cmの範囲の密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、10~14g/10分のメルトインデックス、Iを有する。より好ましくは、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、0.949g/cm~0.959g/cmの範囲の密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、10~14g/10分のメルトインデックス、Iを有する。
【0036】
無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、無水マレイン酸でグラフ化される(例えば、「官能化」)。本明細書で使用される場合、「グラフト化」という用語は、ポリエチレン系ポリマーのポリマー鎖へのグラフト化モノマー(無水マレイン酸)の共有結合を意味する。本明細書の実施形態では、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの総重量に基づいて、0.05~3重量%のグラフ化無水マレイン酸を有する。
【0037】
無水マレイン酸官能性は、グラフト化または他の反応方法によりポリマーに組み込むことができる。グラフト化する場合、無水マレイン酸の組み込みレベルは、典型的には、ポリマーの重量に基づいて10重量パーセント以下である。市販の無水マレイン酸官能化ポリエチレンの例には、とりわけThe Dow Chemical Company(Midland,MI,USA)から入手可能なAMPLIFY(商標)GR204などのAMPLIFY(商標)の商品名で入手可能なものが含まれる。無水マレイン酸官能化ポリエチレンの他の例は、とりわけEI du Pont de Nemours and Company((Wilmington,DE,USA)から入手可能なFUSABOND(商標)E-100、FUSABOND(商標)E-158、FUSABOND(商標)E265、FUSABOND(商標)E528、FUSABOND(商標)E-589、FUSABOND(商標)M-603などのFUSABOND(商標)の商品名で入手可能である。他の無水マレイン酸官能化ポリエチレンポリマー、コポリマー、およびターポリマーには、とりわけChemtura Corporation(Middlebury,CT,USA)から入手可能なPOLYBOND(商標)3009およびPOLYBOND(商標)3029などのPOLYBOND(商標)、とりわけArkema Group(Colobes,France)から入手可能なOREVAC(商標)1851OPなどのOREVAC(商標)、PLEXAR(商標)PX-2049などのPLEXAR(商標)(LyondellBasell Industries(Houston,TX,USA)、さらにB.V.DSM Engineering Plastics(Heerlen,the Netherlands)からのYPAREX(商標)8305などのYPAREX(商標)の商品名で入手可能なグレード、ならびにExxonMobil Chemical Company(Houston,TX,USA)から入手可能なEXXELOR(商標)PE1040などのEXXELOR(商標)の商品名で入手可能なポリマーが含まれ得る。
【0038】
無機ブレンステッド-ローリー酸
ポリエチレンブレンドは、25℃で1~6.5の酸強度pKa値を有する無機ブレンステッド-ローリー酸をさらに含む。好ましくは、無機ブレンステッド-ローリー酸は、2~6のpKaを有する。また、好ましくは、無機ブレンステッド-ローリー酸は、重硫酸ナトリウム一水和物、リン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
本開示のポリエチレンブレンドは、ポリエチレンブレンドの総重量に基づいて、0.03~0.5重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を有する。好ましい実施形態では、ポリエチレンブレンドは、5~75重量%のエチレン系ポリマーと、2~30重量%の無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、20~10000百万分率の無機ブレンステッド-ローリーとを含む。別の好ましい実施形態では、ポリエチレンブレンドは、少なくとも75重量%のエチレン系ポリマーを含み、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンおよび無機ブレンステッド-ローリー酸は、エチレン系ポリマーと共に存在して、100重量%のポリエチレンブレンドを提供する。本開示のポリエチレンブレンドから鞘を形成するための処理温度は、100℃~150℃未満であり得る。
【0040】
本開示のポリエチレンブレンドは、意図する目的に応じて、様々な添加剤も含み得る。例えば、本開示のポリエチレンブレンドは、12~21個の炭素鎖を有する極性飽和脂肪酸およびその金属塩をさらに含み得る。そのような極性飽和脂肪酸の例には、ステアリン酸およびその金属塩が含まれる。他の添加剤には、安定剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、顔料、加工助剤、粘着付与樹脂などが含まれるが、これらに限定されない。他の添加剤には、カーボンブラック、粘土、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、シリケート、それらの組み合わせなどの充填剤および/または補強材料が含まれ得る。
【0041】
複合成分繊維および布の調製
本開示による複合成分繊維は、異なる技法を介して生成され得る。複合成分繊維および生体成分繊維の生成品を形成するためのそのような技法には、溶融紡糸、溶融吹き付けプロセス、スパンボンドプロセス、ステープルプロセス、カードウェブプロセス、エアレイドプロセス、熱カレンダープロセス、接着結合プロセス、熱風結合プロセス、ニードルパンチプロセス、水流交絡プロセス、および電界紡糸プロセスが含まれ、これらの製造プロセス条件のいずれかで複合成分繊維が形成される。そのような製造技法を使用して、本開示の複合成分繊維は、広く様々な潜在的な用途のための様々な布に形成され得る。本開示による布には、不織布、織布、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される場合、「不織布」は、製織以外の方法により生成された繊維材料を指す。例えば、不織布の場合、複合成分繊維は、平面シート状の布構造に直接処理され、次いで、化学的、熱的、および/または連動機械的に結合されて、粘着性のある布が達成される。本開示の不織繊維および布は、上記のものなどの当技術分野で既知の任意の方法により形成され得る。好ましくは、不織繊維は、溶融吹き付けまたはスパンボンドプロセスにより生成される。
【0043】
本開示の生体成分繊維はまた、梳綿、糊付け、製織などの従来の織物加工にも用いられ得る。本発明の複合成分繊維から作製された織布はまた、得られる布の特性を変えるために熱処理され得る。
【0044】
上記のように、溶融紡糸プロセスは、生体成分繊維を製造するために使用され得る。溶融紡糸プロセスでは、本開示による複合成分繊維を製造するために使用される成分は、押し出し機で独立して溶融され、溶融状態の縮合ポリマーおよびポリエチレンブレンドの各々は、紡糸口金を通して熱結合条件下で共押し出しされ、複合成分繊維紡糸ノズルは、所望の構造、例えば、コア鞘を形成するような方法で溶融ポリマーを押し出すように構成される。ダイを通して各ポリマーを押し出して複合成分繊維を形成することは、例えば、押し出し機、ギアポンプなどの従来の装置を使用して達成される。別個の押し出し機を用いることが好ましく、これは、ギアポンプにフィードして、複合成分繊維の個別の溶融ポリマー流をダイに供給し、縮合ポリマーおよびポリエチレンブレンドを熱結合条件下で接触させて、縮合ポリマーを有する第1の領域と、ポリエチレンブレンドを有する第2の領域とを有する複合成分繊維を形成する。熱結合条件には、本開示の複合成分繊維のためのコアの形成に使用されるポリエステルに関しては200℃~350℃未満の温度、および鞘を形成するために使用されるポリエチレンブレンドに関しては100℃~150℃未満の温度で、個別の溶融ポリマー流の各々に対して押し出し機を操作することが含まれる。本開示によるポリエチレンブレンドは、ポリマー成分のより均一な分散を得るために、押し出し機の混合ゾーンおよび/または静的混合機、例えば、ギアポンプの上流で混合されることが好ましい。
【0045】
ダイを通した押し出しに続いて、複合成分繊維は、ゴデットまたは別の巻き取り表面に固体の形で巻き取られる。複合成分ステープル繊維形成プロセスでは、複合成分繊維は、巻き取りゴデットの速度に比例して繊維を引き下げるゴデットに巻き取られる。スパンボンドプロセスでは、複合成分繊維は、例えば、エアガンなどのジェットで収集され、ローラーまたは移動ベルトなどの巻き取り表面に吹き付けられる。溶融吹き付けプロセスでは、空気が紡糸口金の表面に噴出され、それは、複合成分繊維が冷却空気の経路の巻き取り表面に堆積されるときに、複合成分繊維を同時に引き下げて冷却するのに役立つ。
【0046】
使用される手順のタイプに関係なく、複合成分繊維は、溶融状態で、すなわち、凝固が起こる前に、部分的に溶融延伸されて、ポリマー分子の配向に役立つことができる。紡糸口金ダイの直径および紡糸速度に応じて、最大約1:1000、好ましくは約1:10~約1:200、および特に1:20~1:100の溶融引き下げが用いられ得る。
【0047】
ステープル形成プロセスが用いられる場合、例えば、異なる速度で動作する例えば連続ゴデットなどの従来の延伸装置で複合成分繊維を冷感延伸することが望ましい場合がある。複合成分繊維はまた、加熱されたゴデットを用いることにより、熱処理またはアニールされ得る。複合成分繊維は、例えば、複合成分繊維をクリンプし、切断してステープルを形成することなどにより、さらに質感を加えることができる。スパンボンドまたは空気噴出プロセスでは、凝固した複合成分繊維を冷感延伸することおよび質感を加えることは、それぞれ空気噴出で、および巻き取り表面への衝撃により達成される。溶融ポリマー複合成分繊維と剪断状態にあり、凝固前に複合成分繊維をランダムに非直線化することもできる冷却流体により、溶融吹き付けプロセスで同様の質感を加えることが達成される。
【0048】
本開示の複合成分繊維は、同心コア鞘構成(同軸構成)で製造され得る。追加の実施形態では、複合成分繊維は、偏心コア鞘構成で製造され得る。当技術分野で既知であるように、複合成分繊維の他の可能な構成には、50/50並列、等しくない並列、セグメント化パイ、および「海島」構成も含まれる。本開示の複合成分繊維はまた、80/20~40/60のコア/鞘比、例えば、80/20~40/60のコア/鞘比、あるいは70/30~40/60のコア/鞘比、あるいは75/25~40/60のコア/鞘比、あるいは70/30~50/50のコア/鞘比も有し得る。
【0049】
本開示による複合成分繊維は、50g/9000m未満の範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得る。50g/9000m未満のすべての個々の値および部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、フィラメント当たりのデニールは、下限値0.1、0.5、1、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、5、10、15、17、20、25、30、33、40、または44g/9000m~上限値0.5、1、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、5、10、15、17、20、25、30、33、40、44、または50g/9000mであり得る。例えば、複合成分繊維は、40g/9000m未満の範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得るか、あるいは複合成分繊維は、0.1~10g/9000mの範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得るか、あるいは複合成分繊維は、1~5g/9000mの範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得るか、あるいは複合成分繊維は、0.1~5g/9000mの範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得るか、あるいは複合成分繊維は、0.1~2.6g/9000mの範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得るか、あるいは複合成分繊維は、1~3g/9000mの範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得るか、あるいは複合成分繊維は、1~2.5g/9000mの範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得るか、あるいは複合成分繊維は、1.5~3g/9000mの範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得るか、あるいは複合成分繊維は、1.6~2.4g/9000mの範囲のフィラメント当たりのデニールを有し得る。
【0050】
上記の不織布生成物は、おむつ、女性用ケア製品、および成人用失禁製品を含むがこれらに限定されない衛生製品などの多くの物品で使用され得る。不織布生成物はまた、無菌ラップ、隔離用ガウン、手術室用ガウン、手術用ガウン、手術用ドレープ、応急処置用包帯、および他の使い捨て用品などの医療製品でも使用され得る。
【実施例
【0051】
材料
Eastman(商標)ポリエステルF61HC(PET-A)-Eastman Chemical Companyから入手可能なポリエチレンテレフタレート(縮合ポリマー)。
【0052】
AMPLIFY(商標)GR 204(The Dow Chemical Company.TDCC)。0.1重量%を超えるMAHを有する無水マレイン酸変性HDPE。ASTM D1238に従って190℃/2.16kg、g/10分で測定した12.0のメルトインデックス(I)。ASTM D792に従って測定した0.954g/cmの密度。
【0053】
ASPUN(商標)6835(TDCC)。ASTM D1238に従って190℃/2.16kg、g/10分で測定した17.0のメルトインデックス(I)を有するエチレン系ポリマー(エチレン/1-オクテンLLDPEコポリマー)。ASTM D792に従って測定した0.950g/cmの密度。
【0054】
重硫酸ナトリウム(Sigma Aldrich)。水系で25℃で2のpKaを有する無機ブレンステッド-ローリー酸。
【0055】
繊維紡糸
以下の表1に提供される情報に従って、本明細書に提供される実施例および比較例の複合成分繊維を調製する。実施例1の場合、触媒(重硫酸ナトリウム)および鉱油でマスターバッチミックスを形成し、ポリエチレンブレンド(表1)のポリマー(AMPLIFY(商標)GR204)とブレンドして、触媒のポリオレフィンペレットに対する表面接着を促進する。表1に示す量で見られるように、マスターバッチを追加して、20重量%のポリエチレンブレンドをASPUN(商標)6835に提供する。最終ブレンド組成物を繊維紡糸ラインで直接使用した。
【0056】
実施例および比較例の複合成分繊維の各々は、コアとしてPETを使用し、鞘として表1に示すポリエチレンブレンドを使用するコア/鞘構成を有する。実施例および比較例の複合成分繊維を同じ方法で取り扱い、調製した。
【0057】
複合成分紡糸設備で、コアとしてPETを有し、鞘として表1に示すポリエチレンブレンドを有する同心断面を含む複合成分繊維を調製する。鞘押し出し機でポリエチレンブレンドの成分を混合する。40/60のコア/鞘比で、総スループットは0.6グラム/穴/分(GHM)、穴サイズ(コア)は0.6mm、長さ対直径比は4であった。
【0058】
鞘押し出し機の溶融温度を240℃に、コア押し出し機の溶融温度を290℃に維持する。15℃の空気で複合成分フィラメントを急冷する。600cfmでクエンチ率を60%に設定する。繊維が破断する前に、スロット内の最大圧力ハンドルへの延伸比を調整する。表1および表2で見られるフィラメント速度は、それを超えるとフィラメントが破断する最大フィラメント速度値である。
【表1】
【0059】
表1に示すデータは、本開示のポリエチレンブレンドが、本開示によるポリエチレンブレンドのすべての成分を含まないポリエチレンブレンドと比較して、より高いフィラメント速度を達成し得ることを示す。さらに、表1に見られるように、より高いフィラメント速度に加えて、本開示のポリエチレンブレンドは、本開示によるポリエチレンブレンドのすべての成分を含まないポリエチレンブレンドと比較して、より低いデニール値を有する繊維を達成するのにも役立つ。

なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]複合成分繊維であって、
縮合ポリマーで形成された第1の領域と、
(i)0.920g/cm ~0.970g/cm の密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、0.5~150g/10分のメルトインデックス、I を有するエチレン系ポリマー、
(ii)無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、かつ
(iii)25℃で1~6.5の酸強度pKa値を有する無機ブレンステッド-ローリー酸のポリエチレンブレンドから形成された第2領域と、を含み、前記ポリエチレンブレンドが、前記ポリエチレンブレンドの総重量に基づいて0.03~0.5重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を有する、複合成分繊維。
[2]前記第1の領域が前記複合成分繊維のコア領域であり、前記第2の領域が前記複合成分繊維の鞘領域であり、前記鞘領域が前記コア領域を取り囲んでいる、上記[1]に記載の複合成分繊維。
[3]前記縮合ポリマーが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[1]または[2]に記載の複合成分繊維。
[4]前記縮合ポリマーが、前記第1の領域の少なくとも75重量パーセント(重量%)に含まれ、前記重量%が、前記第1の領域の総重量に基づく、上記[3]に記載の複合成分繊維。
[5]前記縮合ポリマーが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾、ポリブチレンテレフタレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[1]または[2]に記載の複合成分繊維。
[6]前記エチレン系ポリマーが、線状低密度ポリエチレン、線状中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびそれらの組み合わせから選択される、上記[1]に記載の複合成分繊維。
[7]前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンが、前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの総重量に基づいて、0.05~3重量%のグラフ化無水マレイン酸を有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の複合成分繊維。
[8]前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンが、0.920g/cm ~0.959g/cm の範囲の密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、10~14g/10分のメルトインデックス、I を有する、上記[7]に記載の複合成分繊維。
[9]前記無機ブレンステッド-ローリー酸が、重硫酸ナトリウム一水和物、リン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[1]に記載の複合成分繊維。
[10]前記無機ブレンステッド-ローリー酸が、2~6のpKaを有する、上記[1]に記載の複合成分繊維。
[11]前記ポリエチレンブレンドが、5~75重量%の前記エチレン系ポリマーと、2~30重量%の前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、20~10000百万分率の前記無機ブレンステッド-ローリーとを含む、上記[1]に記載の複合成分繊維。
[12]前記ポリエチレンブレンドが、少なくとも75重量%の前記エチレン系ポリマーを含み、前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンおよび前記無機ブレンステッド-ローリー酸が、前記エチレン系ポリマーと共に存在して、100重量%の前記ポリエチレンブレンドを提供する、上記[1]に記載の複合成分繊維。
[13]前記ポリエチレンブレンドが、12~21個の炭素鎖を有する極性飽和脂肪酸およびその金属塩をさらに含む、上記[1]~[12]のいずれかに記載の複合成分繊維。
[14]前記極性飽和脂肪酸が、ステアリン酸およびその金属塩である、上記[13]に記載の複合成分繊維。
[15]上記[1]~[14]のいずれかに記載の複合成分繊維を含む、不織布物品。
[16]複合成分繊維を形成する方法であって、
熱結合条件下で、(a)縮合ポリマーと、(b)
(i)0.920g/cm ~0.965g/cm の密度、ならびに190℃および2.16kgでASTM D1238により決定される場合、0.5~150g/10分のメルトインデックス、I を有するエチレン系ポリマー、
(ii)無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、かつ
(iii)25℃で1~6.5の酸強度pKa値を有する無機ブレンステッド-ローリー酸のポリエチレンブレンドと、を共押し出しすることを含み、前記ポリエチレンブレンドは、前記ポリエチレンブレンドの総重量に基づいて0.03~0.5重量パーセントのグラフト化無水マレイン酸を有し、前記縮合ポリマーおよび前記ポリエチレンブレンドを熱結合条件下で接触させて、前記縮合ポリマーを有する第1の領域と、前記ポリエチレンブレンドを有する第2の領域とを有する前記複合成分繊維を形成する、方法。
[17]前記複合成分繊維が、(a)および(b)を鞘/コア構成で共押し出しすることにより調製され、(a)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記ポリエチレンブレンドの前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンが、前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの総重量に基づいて、0.05~3重量%のグラフ化無水マレイン酸を有する、上記[16]に記載の方法。
[18]前記ポリエチレンブレンドが、5~75重量%の前記エチレン系ポリマーと、2~30重量%の前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、20~10000百万分率の前記無機ブレンステッド-ローリーとを含む、上記[16]または[17]に記載の方法。
[19]前記ポリエチレンブレンドが、12~21個の炭素鎖を有する極性飽和脂肪酸およびその金属塩をさらに含む、上記[16]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]前記複合成分繊維が、溶融吹き付け、スパンボンド、またはステープル繊維製造プロセス条件下で形成される、上記[16]~[19]のいずれかに記載の方法。