(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】RFIDタグ設計を備えた遮蔽RFIDストラップの使用方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20231102BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G06K19/077 216
H01Q9/16
(21)【出願番号】P 2020558488
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 US2019028268
(87)【国際公開番号】W WO2019204694
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516243711
【氏名又は名称】エイブリィ・デニソン・リテイル・インフォメーション・サービシズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON RETAIL INFORMATION SERVICES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォースター,イアン
(72)【発明者】
【氏名】ハワード,ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】マクギニス,エドワード
【審査官】打出 義尚
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-100181(JP,A)
【文献】特開2013-114513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
H01Q 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一組のストラップパッドと、前記少なくとも一組のストラップパッドに接続されたRFIDチップとからなる第1導体と、
第2導体と、
前記第1導体と前記第2導体との間に位置し、
前記第1導体がアンテナ導体に結合する誘電体とを含有
し、
前記第2導体、前記第1導体及び前記アンテナ導体は、互いに重なりあって、相互領域に分離誘電体を提供し、それによりコンデンサの値を有する複数のコンデンサを生成する無線周波数識別(RFID)装置。
【請求項2】
前記少なくとも一組のストラップパッドは、導電性接着剤を介して前記アンテナ導体に結合される、請求項1に記載のRFID装置。
【請求項3】
前記少なくとも一組のストラップパッドは、静電容量を介して前記アンテナ導体に結合される、請求項1に記載のRFID装置。
【請求項4】
前記アンテナ導体は、ベース基板に取り付けられている、請求項1に記載のRFID装置。
【請求項5】
前記複数のコンデンサ
におけるコンデンサの値は、(i)前記相互領域、(ii)前記アンテナ導体、前記第1導体、及び前記第2導体の間の材料の誘電率、並びに(iii)前記アンテナ導体、前記第1導体、及び前記第2導体を隔てる距離により決定される、請求項1に記載のRFID装置。
【請求項6】
前記第2導体の領域は、前記一組のストラップパッドの領域よりも大きい、請求項1に記載のRFID装置。
【請求項7】
前記第2導体の領域は、前記少なくとも一組のストラップパッドの領域よりも小さい、請求項1に記載のRFID装置。
【請求項8】
一組のストラップパッドと、前記一組のストラップパッドの間に接続されたRFIDチップとからなる第1ストラップ導体と、
第2ブリッジ導体と、
前記第1ストラップ導体と前記第2ブリッジ導体との間に位置する誘電体とを含む無線周波数識別(RFID)ストラップ装置であって、
前記第1ストラップ導体は、アンテナ導体に結合し、且つ前記第2ブリッジ導体、前記第1ストラップ導体及び前記アンテナ導体は、互いに重なり合って、
相互領域に分離誘電体を提供し、それによりコンデンサの値を有する複数のコンデンサを生成する、RFIDストラップ装置。
【請求項9】
前記複数のコンデンサ
における前記コンデンサの値は、(i)前記相互領域、(ii)前記アンテナ導体、前記第1ストラップ導体、及び前記第2ブリッジ導体の間の材料の誘電率、並びに(iii)前記アンテナ導体、前記第1ストラップ導体、及び前記第2ブリッジ導体を隔てる距離により決定される、請求項
8に記載のRFIDストラップ装置。
【請求項10】
前記
第2ブリッジ導体の領域は、前記一組のストラップパッドの領域よりも大きい、請求項
8に記載のRFIDストラップ装置。
【請求項11】
前記
第2ブリッジ導体の領域は、前記一組のストラップパッドの領域よりも小さい、請求項
8に記載のRFIDストラップ装置。
【請求項12】
第2ブリッジ導体と、一組のストラップパッド
を備えた第1ストラップ導体と、アンテナ導体とを提供するステップと、
前記アンテナ導体を前記一組のストラップパッドに取り付けるステップと、
前記
第2ブリッジ導体を前記一組のストラップパッドに取り付けるステップと、を含み、
前記第2ブリッジ導体、前記第1ストラップ導体及び前記アンテナ導体は、互いに重なりあって、相互領域に分離誘電体を提供し、それによりコンデンサの値を有する複数のコンデンサを生成する、RFID装置に、増加した静電容量を有する遮蔽ストラップを製造する方法。
【請求項13】
前記
第2のブリッジ導体の形状及び領域の一つ以上を切断工程を介して修正するステップをさらに含む、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記切断工程は、前記アンテナ導体を前記一組のストラップパッドに取り付ける前に行われる、請求項1
3に記載の方法。
【請求項15】
前記切断工程は、前記アンテナ導体を前記一組のストラップパッドに取り付けた後に行われる、請求項1
3に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のコンデンサにおける前記コンデンサの値は、(i)前記相互領域、(ii)前記アンテナ導体、前記第1ストラップ導体、及び前記第2ブリッジ導体の間の材料の誘電率、並びに(iii)前記アンテナ導体、前記第1ストラップ導体、及び前記第2ブリッジ導体を隔てる距離により決定される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本発明は、2018年4月20日に出願された米国仮出願番号第62/660,498号の優先権及びその利益を主張し、これは本明細書に全体的に参照として含まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般的に、無線周波数識別(「RFID」)タグ設計を備えた遮蔽RFIDストラップの使用方法、及びその結果として得られる装置に関する。具体的に、本発明は、所望の周波数で共振するのに必要なインダクタンスの量を減らすために、取り付けられたRFIDストラップの静電容量への静電容量の追加を可能にする。本方法は、特にRFIDストラップ装置に適している。従って、本明細書は、これについて具体的な参照を可能とする。しかし、本発明の方法の態様はまた、他の類似の用途及び装置に同様に使用可能であることを理解されたい。
【0003】
RFIDは、それ自体を識別するために読み取り機システムにより送信された磁場、電界又は電磁場を使用し、一部の場合にはさらに保存されたデータを提供する。RFIDタグは、メモリ及び動作回路が形成される、通常「チップ」と称される半導体装置を含み、この半導体装置は、アンテナに接続される。通常、RFIDタグは、トランスポンダとして作用し、読み取り機から受信したインターロゲーター(interrogator)とも称される無線周波数(「RF」)質問信号(interrogation signal)に応答して、チップメモリに保存された情報を提供する。またパッシブRFID装置の場合、質問信号のエネルギーがRFID装置の作動に必要なエネルギーを提供してもよい。
【0004】
RFIDタグは、一般的にRFIDチップをある形態のアンテナに接続することにより形成される。アンテナの種類は、これを構成するのに用いられる方法と同じくらい多様である。RFIDタグを製造する一つの構成方法は、アンテナに結合され得る2つ以上の導体に接続されたRFIDチップを備える比較的小型の装置であるストラップを用いることである。上記結合は、導電性接続、電界接続、磁気接続、又は結合方法の組合せを利用して達成し得る。本技術分野で公知の他の方法は、アンテナへのチップの接続を助けるために、任意の種類のストラップ又は他の装置を用いずにチップをアンテナに直接取り付ける直接チップ取り付け(direct chip attachment)方法である。
【0005】
RFIDタグは、追跡する物品に組み込むか、貼り付けてもよい。ある場合には、タグが接着剤、テープ、又は他の手段を用いて物品の外部に貼り付けられてもよいし、他の場合には、タグが物品の容器内に挿入、例えばパッケージ内に含まれていたり、物品の容器内に位置していたり、又は衣服に縫製されていてもよい。RFIDタグは、通常チェックディジットが付加された数バイトの単純なシリアル番号である固有識別番号で製造され得る。この識別番号は、製造時にタグに装着される。ユーザーは、このようなシリアル番号/識別番号を変更することができず、製造業者は、それぞれのシリアル番号が一度だけ使用されることを保証する。このような読み取り専用のRFIDタグは、通常追跡する物品に永久的に貼り付けられ、一度貼り付けられたら、タグのシリアル番号は、コンピュータのデータベースにおいてそのホスト物品と関連付けられる。
【0006】
多数のRFIDアンテナの種類は、全体的な構造の一部として共振素子を必要とする。共振素子は通常、アンテナの一部として形成されたインダクタとRFIDチップの静電容量の組み合わせであり、様々な機能を実行することができる。例えば、共振素子は、最適な電力伝送のためにチップとアンテナのインピーダンスを整合するか、共振周波数、又はその近傍で読み取り機システムに磁気的に結合するネットワークの一部であってもよい。
【0007】
残念ながら、現在のRFIDタグ設計の限界は、比較的小さな領域内で所望の共振を達成することである。チップ静電容量は、公知の共振周波数の公式:Fres=1/(2πSQRT(LC))に従ってインダクタと結合しなければならず、ここで、Lはヘンリー(henry)における誘導性であり、導体のワイヤ又はフラットストリップの長さ及びその直径/幅に関し、Fはヘルツ単位の周波数と同じであり、Cはファラド単位の静電容量である。
【0008】
所定のインダクタンスを得るには、チップ静電容量を共振させるために、RFIDアンテナの一部として一定の長さ及び幅を収容する必要がある。ラインを狭くすると、製造公差が厳しくなり、抵抗が増大して、構造内のエネルギー損失量が増加し、そのためRFIDタグの効率とその動作範囲が低下する。RFIDアンテナでは、両端がRFIDストラップ/チップに接続されている領域内に収まるように、インダクタを折りたたむ(fold-up)のが一般的である。
【0009】
従って、所望の周波数で共振するために必要なインダクタンスの量を減らすために、取り付けられたRFIDストラップの静電容量に静電容量を追加する方法を有することが有利である。本発明は、RFIDタグ設計を備えた遮蔽ストラップを使用することにより、前記静電容量を追加する方法を開示する。具体的に、RFIDストラップ装置は、アンテナと一組のストラップパッドとを共に結合するブリッジ導体を含む。導体間のかかる結合は、RFIDストラップ装置の総静電容量を増加させる。さらに、ブリッジ導体の存在は、所定のインダクタンスが占める領域を縮小させ、ブリッジストラップがアンテナに接続された際に、より高い有効静電容量を提供する。
【発明の概要】
【0010】
以下は、開示された本発明の一部態様への基本的な理解を提供するための簡略化した要約を示す。本要約は、広範囲の概要ではなく、鍵となる/重要な要素の特定やその範囲を説明することを目的としたものではない。その唯一の目的は、追って示すより詳細な説明への前置きとして、いくつかの概念を簡略化した形式で示すものである。
【0011】
本態様において、本明細書で開示及び請求される主題は、第2ブリッジ導体をRFIDストラップ装置に統合することによって静電容量を増加させる方法を含む。より具体的に、RFIDストラップ装置は、分離誘電体を介してストラップ(又は第1)導体に結合されたブリッジ(又は第2)導体を含む。また、RFIDストラップ装置は、ベース基板上の分離アンテナ導体に結合される。アンテナは、アルミニウム箔で作ることができ、ベース基板は通常紙である。さらに、第2ブリッジ導体、第1ストラップ導体、及びアンテナ導体は、互いに重なりあって、分離誘電体を備え、複数のコンデンサを生成する相互領域を提供する。
【0012】
別の実施形態では、ブリッジ導体の領域は、橋絡容量を変更するために切断工程を介して修正される。例えば、ブリッジ導体の領域が一組のストラップパッドの領域よりも大きい場合、高い橋絡容量が提供される。ブリッジ導体の領域が一組のストラップパッドの領域よりも小さい場合、低い橋絡容量が提供される。
【0013】
本開示の一部の実施形態によると、無線周波数識別(RFID)装置は、少なくとも一組のストラップパッドと、少なくとも一組のストラップパッドに接続されたRFIDチップとからなる第1導体と、第2導体と、第1導体と第2導体との間に位置する誘電体とを含み、ここで前記第1ストラップ導体は、アンテナ導体に結合される。
【0014】
一部の実施形態において、少なくとも一組のストラップパッドは、導電性接着剤を介してアンテナ導体に結合される。他の実施形態において、少なくとも一組のストラップパッドは、静電容量を介してアンテナ導体に結合される。一部の実施形態において、アンテナ導体は、ベース基板に取り付けられる。
【0015】
一部の実施形態において、第2導体は、ブリッジである。一部の実施形態において、第2導体と、第1ストラップ導体と、アンテナ導体とは、互いに重なり合って、分離誘電体及び所定値を有する複数のコンデンサを備える相互領域を提供する。また別の実施形態において、複数のコンデンサの値は、(i)相互領域、(ii)アンテナ導体、第1ストラップ導体、及び第2導体の間の材料の誘電率、並びに(iii)アンテナ導体、第1ストラップ導体、及び第2導体を隔てる距離により決定される。
【0016】
一部の実施形態において、第2導体の領域は、一組のストラップパッドの領域よりも大きい。別の実施形態において、第2導体の領域は、少なくとも一組のストラップパッドの領域よりも小さい。
【0017】
一部の実施形態において、第2導体は、切断工程を介して修正される。また別の実施形態において、第2導体の形状及び領域は、切断工程を介して修正される。一部の実施形態において、切断工程は、レーザ切断線である。
【0018】
本発明の一部の実施形態において、無線周波数識別(RFID)ストラップ装置は、一組のストラップパッドと、前記一組のストラップパッドの間に接続されたRFIDチップとからなる第1ストラップ導体と、第2ブリッジ導体と、前記第1ストラップ導体と前記第2ブリッジ導体との間に位置する誘電体とを含み、ここで前記第1ストラップ導体は、アンテナ導体に結合し、且つ前記第2ブリッジ導体、前記第1ストラップ導体及び前記アンテナ導体は、互いに重なり合って、分離誘電体及び所定値を有する複数のコンデンサを備える相互領域を提供する。
【0019】
一部の実施形態において、複数のコンデンサの値は、(i)相互領域、(ii)アンテナ導体、第1ストラップ導体、及び第2ブリッジ導体の間の材料の誘電率、並びに(iii)アンテナ導体、第1ストラップ導体、及び第2ブリッジ導体を隔てる距離により決定される。
【0020】
一部の実施形態において、ブリッジ導体の領域は、一組のストラップパッドの領域よりも大きい。代案的な実施形態において、ブリッジ導体の領域は、一組のストラップパッドの領域よりも小さい。一部の実施形態において、第2ブリッジ導体は、切断工程を介して修正される。
【0021】
本開示は、ブリッジ導体と、一組のストラップパッドと、アンテナ導体とを提供するステップと、前記アンテナ導体を前記一組のストラップパッドに取り付けるステップと、前記ブリッジ導体を前記一組のストラップパッドに取り付けるステップと、を含む、RFID装置に、増加した静電容量を有する遮蔽ストラップを製造する方法もまた検討する。
【0022】
一部の実施形態において、RFID装置に増加した静電容量を有する遮蔽ストラップを製造する方法は、ブリッジ導体の形状及び領域の一つ以上を切断工程を介して修正するステップをさらに含む。一部の実施形態において、前記切断工程は、アンテナ導体を一組のストラップパッドに取り付ける前に行われる。別の実施形態において、前記切断工程は、アンテナ導体を一組のストラップパッドに取り付けた後に行われる。
【0023】
上述の、及び関連する目的を達成するために、本明細書では、開示された本発明の所定の例示的な態様を以下の説明及び添付した図面に関連付けて説明する。しかし、これら態様は、本明細書に開示された原理が採用され得る様々な方法のうちの一部のみを示し、これらあらゆる態様及びその等価物を含むように意図する。他の利点及び新規な特徴は、図面と併せて考慮すると、以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】開示のアーキテクチャに従ってストラップ誘電体の反対側に追加された第2導体を備えたRFIDストラップ装置の側面透視図を示す。
【
図1B】開示のアーキテクチャに従ってストラップ誘電体の反対側に追加された第2導体を備えたRFIDストラップ装置の上面透視図を示す。
【
図2】開示のアーキテクチャに従ってRFIDアンテナに接続されたさらなるブリッジ導体を備えたRFIDストラップ装置の側面透視図を示す。
【
図3】開示のアーキテクチャに従って複数の導体層、ブリッジ層、ストラップパッド、及びアンテナ導体を備えたRFIDストラップ装置の上面透視図を示す。
【
図4】開示のアーキテクチャに従ってストラップ、アンテナ、及びブリッジ導体間の結合を示す、RFIDストラップ装置の側面透視図を示す。
【
図5A】開示のアーキテクチャに従ってループインダクタを示すRFIDストラップ装置の上面透視図を示す。
【
図5B】開示のアーキテクチャに従ってループインダクタのサイズを縮小するブリッジストラップを備えたRFIDストラップ装置の上面透視図を示す。
【
図6A】開示のアーキテクチャに従って標準ストラップを備えた折り返しダイポールの長さを示す、RFIDストラップ装置の上面透視図を示す。
【
図6B】開示のアーキテクチャに従って折り返しダイポールの長さを増加させるブリッジストラップを備えた、RFIDストラップ装置の上面透視図を示す。
【
図7A】開示のアーキテクチャに従って遮蔽素子がストラップ導体よりも大きい、RFIDストラップ装置の上面透視図を示す。
【
図7B】開示のアーキテクチャに従って遮蔽素子がストラップ導体よりも小さい、RFIDストラップ装置の上面透視図を示す。
【
図8】開示のアーキテクチャに従ってブリッジ導体がレーザ切断線を介して変更されている、RFIDストラップ装置の上面透視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を説明し、ここで全体に渡って同様の要素を指すために、同様の参照番号を使用する。以下の詳細な説明において、説明を目的とし、完全に理解できるよう、多数の特定の詳細事項が提示される。ただし、本発明は、これら特定の詳細事項なしでも実施可能なことは明らかである。他の例示において、その説明を容易にするために、周知の構造及び装置がブロック図の形で示されている。
【0026】
本発明は、RFIDタグ設計を備える遮蔽ストラップの使用方法を開示する。具体的に、RFIDストラップ装置は、アンテナと少なくとも一組のパッド(本明細書では、ストラップパッド又はストラップ導体とも称する)とを共に結合するブリッジ導体を含む。従って、ブリッジ導体とストラップ導体との結合、ブリッジ導体とアンテナ導体との結合、及びアンテナ導体とストラップ導体との結合は、RFIDストラップ装置の総静電容量を増加させる。
【0027】
静電容量の量は、(i)(a)ブリッジ導体とストラップ導体、(b)ブリッジ導体とアンテナ導体、及び(c)アンテナ導体とストラップ導体との間のオーバーラップ領域と;ストラップ導体、ブリッジ導体、及びアンテナ導体の各々の間に介在する材料の誘電率及び厚さとのいずれか一つ以上に依存して増加する。大半の適用において、遮蔽することなくストラップに取り付けられたチップの静電容量を最大4倍まで増やすことが好ましい。高い値は、ストラップに結合したRFIDタグに対する広帯域アンテナの設計が困難になり得るためである。例えば、UHF RFIDタグに用いられる通常のストラップは、1pFの領域に静電容量を有することができ、従って、遮蔽ストラップは、1pF~4pFの間の静電容量の範囲を有するであろう。
【0028】
ブリッジ導体の存在により与えられる静電容量の増加は、それが用いられるRFIDタグの設計に多くの有益な効果をもたらし得る。例えば、本明細書でさらに説明するように、ストラップ静電容量が増加すると、共振を達成するために必要なインダクタンスが減少する。
【0029】
UHF RFIDタグが、ストラップに接続されたアンテナの一部として誘導性素子を含むことは一般的であり、前記誘導性素子は、所定の周波数、例えばRFIDタグの目的とする動作周波数で共振することを意図している。このインダクタは一般的に、所定の導体の幅及び面積の平面上のループとして製造される。ブリッジ導体を用いることで達成され得るストラップ静電容量の増加により、共振を達成するために必要なインダクタンスが減少するため、設計者はより小さい面積を有するループを製造することができ、残りのアンテナ構造が利用可能な総面積が少なくなるため、性能を向上させることができる。代案として、より小さい面積を有するループの使用は、より広い導体の使用を可能にする。より広い導体は、例えば抵抗が低くなり、動作周波数でこれを介した通電時にエネルギー損失が少ないといった多数の利点を有し得、また他の製造方法を用いることができ、例えば、0.2mmの線を規定するためにはエッチング工程が必要となる一方で、1mmの線については切断工程を用いることができ、切断工程はエッチング工程よりもコストがより低いため、有利である。
【0030】
まず、図面を参照すると、
図1A及び
図1Bは、少なくとも第2導体102を含むRFID装置100を図示する。第2導体は、例えばブリッジ又は遮蔽導体であり得るが、これらに限定されるものではない。本開示は、第2導体102の利用を考察しているが、本開示は任意の数のさらなる導体の利用をさらに考慮しており、特定の量に限定されるものではない。具体的に、RFID装置100は、少なくとも一組の導体パッド106である第1導体と、第2導体102(ブリッジ導体又は遮蔽導体とも称する)とを含み、前記第2導体102と前記少なくとも一組の導体パッド106との間には、誘電体104が位置する。一部の実施形態において、第1導体は、ストラップであり得る。
【0031】
第2導体102は、例えば、これらに限定されるものではないが、アルミニウム箔、銅箔又は印刷導電性インクといった、当業者に公知の任意の好適な導体であり得る。また、第2導体102は、本発明の全体的な概念に影響を与えることのない、当業者に公知の任意の適切なサイズ、形、及び構成であり得る。当業者は、
図1A~1Bに示すような第2導体102の形状及びサイズは、単に例示的な目的のためのものであり、第2導体102の多数の異なる形状及びサイズは、本開示の範囲内にあるということを理解するであろう。第2導体102の寸法(すなわち、長さ、幅、及び高さ)は、良好な性能のために重要な設計パラメータであるが、第2導体102は、使用中に最適な性能を確保する任意の形状、又はサイズであってもよい。
【0032】
RFID装置100は、好ましくは
一組の導体パッド106の間に位置し、プラスチック、紙、布、段ボール、発泡体、又はその他の適切な材料といった適切なキャリア(
図2に図示)に実装されたRFIDチップ108をさらに備える。次に、第2導体102は、
一組の導電パッド106及びRFIDチップ108からストラップ誘電体104の別の側、又は反対側に追加され、一組の導体パッド106、潜在的には別のアンテナ導体に結合される。
【0033】
図2に示すように、RFID装置200は、アンテナ導体210に接続されるか通信するブリッジ導体202(第2又は遮蔽導体とも称する)を含む。具体的に、ブリッジ導体202は、ストラップ導体206といった導体に結合され、ブリッジ導体202とストラップ導体206との間に位置する誘電体204を含む。ストラップ導体206は、少なくとも一組のストラップパッド208をさらに含み、このストラップパッド208の間には、RFIDチップ214が位置している。この時、ストラップパッド208は、導電性接着剤又は非導電性接着剤(図示せず)の塗布といった当業界に公知の任意の適切な方法を介してアンテナ導体210に取り付けられてもよい。導電性接着剤によりアンテナ導体210に取り付けられる際、ストラップパッド208は、導電性接着剤を介してアンテナ導体に結合されてもよい。他の実施形態において、アンテナ導体210とストラップパッド208との結合は、静電容量又は磁気結合といった当業界に公知の任意の他の適切な結合方法を介して行われる。例えば、磁気ループは、アンテナ導体210のようにアンテナに隣接している時にアンテナに結合し得る。さらに、アンテナ導体210は、アルミニウム箔、銅箔、又は印刷導電性インクといった、当業界に公知の任意の適切な材料で製造され得るが、これらに限定されるものではない。この時、アンテナ導体210は、RFIDストラップ装置200を完成させるために、アンテナベース層212に取り付けられ得る。
図3に示すまた別の実施形態において、ストラップを用いるRFID装置300は、少なくとも3つの導電層、すなわちブリッジ層302と、RFIDチップ306が取り付けられた一組のストラップパッド304と、アンテナ導体310とを含む。
図3は、3つの導電層の利用を示しているが、本発明は、任意の数の導電層に限定されるものではない。これら3つの導電層302、304、310は、分離誘電体を備える所定の相互領域308を提供するように互いに重なり合い、このようにしてコンデンサが生成される。各コンデンサの値は、少なくとも部分的に相互領域308、分離距離、及び各々の導電層302、304、310間の材料の誘電率によって決定される。さらに、RFID装置300上に生成された小型のフリンジコンデンサ(fringing capacitor)があるが、一般的にこれらは、導電層302、304、310により生成されたオーバーラップ静電容量よりも小さい。
【0034】
さらに、
図4は、RFID装置400と、ストラップ導体406、アンテナ導体408、及びブリッジ導体402の結合を開示している。開示のとおり、結合は、導電性誘電体404を介してではなく、静電容量(C
SA)を介して行われる。C
SAは、ストラップ導体406(すなわち、ストラップパッド)とアンテナ導体408との間の結合410を示す。一つの実施形態において、薄い誘電体接着剤は、このジョイントとして用いられ、この静電容量を大容量にする。C
BSは、ブリッジ導体402とストラップ導体406との結合412を示し、C
BAは、ブリッジ導体402とアンテナ導体408との結合414を示す。C
Cは、RFIDチップ416の静電容量である。一般的に、C
SAが他の静電容量と比較して相対的に大きいという点を考慮すると、C
BSとC
BAは、並列であることが効果的であり、従って、C
Cに並列で追加された静電容量は、次の式:(1/C
B)=2((C
BA+C
BS))により表され、ここでC
Bは、ブリッジ導体402の存在により追加された総静電容量であり、アンテナ導体408と共振素子の一部としてインダクタ構造に提供された静電容量は、C
C+C
Bまで増加する。代案として、ジョイントは、等方性導電性ペースト、異方性導電性ペースト、熱、レーザ若しくは超音波溶接、圧着又は他の方法を用いることにより導電性であり得る。
【0035】
図5Aは、本開示の発明の一態様、具体的に、標準ストラップを備えるループインダクタ502を開示する。ループインダクタ502は、所望の共振周波数を提供するために通常のインダクタのサイズで示されており、C
Cは、RFIDチップ500の静電容量である。対照的に、
図5Bは、ブリッジ導体を備えるループインダクタ506を開示し、より高い静電容量を有する。例えば、一実施形態において、ループインダクタの静電容量は、UHF周波数で1pF~4pFの領域にある。また、ブリッジ導体は、ループインダクタの静電容量を増加させるので、所望の共振周波数を提供するために必要なインダクタのサイズを有利に縮小させ、C
Cは、RFIDチップ500の静電容量であり、C
Bは、ブリッジ導体の存在により追加された総静電容量504である。従って、所定のインダクタンスが占める領域は、線幅が変わらないと仮定すると、ブリッジ導体の存在により縮小し、ブリッジ導体がアンテナに接続する際に、より高い有効静電容量がもたらされる。
【0036】
図6Aに示すように、ブリッジ導体のないループ領域、又は中央整合共振器602を図示している。具体的に、折り返しダイポールの長さ600は、標準ストラップを有する特定領域608内に示されている。
図6Bは、ブリッジ導体を備えるループ領域、又は中央整合共振器606を開示する。具体的に、折り返しダイポールの長さ604は、ブリッジ導体を備える特定領域608内に示されている。従って、特定領域608内部に収めるために必要なアンテナにブリッジ導体を用いる利点は、折り返しダイポールの長さ604の増加と共に表れる。具体的に、ダイポールアンテナの場合、RFIDチップとの整合の効率、性能及び容易さは、アンテナが特定領域608内にどの程度のダイポールの長さを収めることができるかに関係している。従って、
図6Aにおいて、ブリッジ導体がない場合、中央整合共振器602は、比較的大きな領域を占めるので、折り返しダイポールの長さ600の利用可能な空間が縮小し、より短い長さが用いられ得る。例えば、ブリッジがないストラップ(すなわち、ブリッジ導体なし)を用いる70mm×14.5mmのアンテナの場合、中央ループ(すなわち、インダクタ)は、32mm×8mm、すなわち256mm
2を占め得る一方で、2倍の静電容量を備えるストラップを用いると、16mm×8mm、すなわち128mm
2を占める中央ループ(すなわち、インダクタ)が必要となり得る。結果的に128mm
2の領域がダイポールなどのアンテナの他の要素に使用され得る。
図6Bにおいて、中央整合共振器606のサイズは、ブリッジ導体を用いることによって減少し、従って、折り返しダイポールの長さ604を収めることができる。
【0037】
図7A及び
図7Bに示す代案的な実施形態において、ストラップパッド702の上部上の遮蔽素子、又はブリッジ導体700、704のサイズ及び形状は、ユーザーの要望及び/又はニーズに応じて変えることができる。例えば、
図7Aに示すように、ブリッジ導体700の領域は、ストラップパッド702の領域よりもはるかに大きく、高い橋絡容量を提供する。反対に、
図7Bにおいて、ブリッジ導体704のサイズは縮小されて、ストラップパッド702の領域よりもはるかに小さいので、より低いレベルの橋絡容量を提供する。従って、ブリッジ導体は、ユーザーの要望及び/又はニーズに基づいて橋絡容量を調整する可変構造であり得る。
【0038】
さらに、
図8に示すように、RFID装置800は、橋絡容量を変更するために、例えばレーザ又は機械的なダイカットを介した切断工程を介して修正することができるブリッジ導体802を含む。特に、切断工程は通常、レーザ切断線などの切断線840であるが、当業界に公知の任意の適切な切断工程であり得る。切断工程は、一組のストラップパッド806とRFIDチップ808をアンテナ(図示せず)に取り付ける前、又は取り付けた後に行うことができる。切断工程は、ブリッジ導体802の形状及び/又は領域を修正することができ、従って橋絡容量を変更することができる。橋絡容量を変更することにより、RFIDチップ808及び橋絡容量の全体の調整が可能となる。
【0039】
静電容量のこの変化は、製造公差に対応するため、又はアンテナの動作周波数を2つの帯域間でシフトするのに用いられ得る。例えば、極超短波(UHF)タグの場合、ヨーロッパでは865MHz~868MHzの周波数が使用され、アメリカは902MHz~928MHzの間の周波数が使用される。従って、橋絡容量を変更しようとブリッジ導体802の形状及び/又は領域を修正するために切断工程を用いることにより、橋絡容量を変更するだけで同一のRFID装置800を2つの異なる帯域で使用することができる。可変橋絡容量を有するブリッジ導体を備える同一のRFID装置800を使用することは、多数の周波数帯域で一つのRFID装置の設計を使用することが可能となるので、製造コスト及び運用コストを有利に削減することができる。
【0040】
上述の説明は、請求された主題の例を含む。もちろん、請求された主題を説明する目的で構成要素又は方法論の考え得る全ての組合せを説明することは不可能であるが、当業者は、請求された主題の多くのさらなる組合せ及び変形が可能であることを認識することができる。従って、請求された主題は、添付の請求範囲の思想及び範囲内にあるかかる全ての変更、修正及び変形を含むことを意図する。また、用語「含む」は、詳細な説明又は請求範囲のいずれかにおいて使用される限り、かかる用語は請求範囲で「含有する」が転換語句として使用される場合に解釈されるように、用語「含有する」と同様に包括的であることを意図するものである。