(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】識別子の決定を有するセンサー組立品
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20231102BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20231102BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61M5/315 550N
A61M5/20 510
A61M5/31 520
(21)【出願番号】P 2020564226
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2019062644
(87)【国際公開番号】W WO2019219824
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-09
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン, キム アイホルム
(72)【発明者】
【氏名】ピーダスン, ベニー ピーザ スミゼク
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/161952(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/052275(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/20
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置(100、600、800)と、前記薬剤送達装置に取り外し可能に装着されるアドオン装置(300、700、900)とを備える組み合わせ組立品であって、
(i)前記薬剤送達装置が、
-
基準構成要素を形成するハウジング(101、601、801)と、
-
薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、
-
回転可能な用量設定部材を備える薬剤排出手段であって、ユーザーが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、薬剤排出手段と、
-
近位位置と遠位位置との間で作動可能な第一の解放部材であって、前記近位位置は投与量を設定することを可能にし、前記遠位位置は前記薬剤排出手段が設定用量を排出することを可能にする第一の解放部材と、
-
用量設定中に変形されるように配され、かつ前記第一の解放部材によって解放され、これによって前記薬剤貯蔵部からある量の薬剤を排出することを駆動する駆動ばねと、
-
投与量の設定中および/または排出中に、前記ハウジング(101、601、801)に対して、かつ基準軸に対応して回転するように配されるインジケータ要素(160M、660M)であって、回転の量が、設定および/または排出された投与量のサイズを表す、インジケータ要素(160、660)と、
-
視覚的なタイプ識別子(190、690、890)と、を備え、
(ii)前記アドオン装置が、
-前記インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出す
る第一のセンサー(766M、966M)
並びに前記タイプ識別子を検出す
る第二のセンサー(966O)
を含む、センサー組立品(460、760、960)と
-エネルギー源(766F)と、
-プロセッサと、
-オフ状態と動作サイクルが開始されるオン状態との間で作動可能であるスイッチ(766S、966)と、を備え、
-
前記薬剤送達装置に前記アドオン装置を装着した状態の下で、前記第一のセンサー
を、
前記プロセッサによって作動して、前記インジケータ要素によって
なされた回転移動の量を決定
し、
-
前記薬剤送達装置に前記アドオン装置を装着した状態の下で、前記第二のセンサー
を、
前記プロセッサによって作動して、タイプ識別子を決定
し、
-
前記動作サイクルは、意図された情報を取得するために前記第一のセンサーおよび前記第二のセンサーが作動する期間をカバーし、
-前記第一のセンサーおよび前記第二のセンサー
は、
動作サイクル中に前記プロセッサによって逐次的に
作動する、組み合わせ組立品。
【請求項2】
前記第一のセンサーが作動した後、前記インジケータ要素によって
なされた回転移動の量
の全部または
一部を決定するために
、所定の長さの時間
、前記第二のセンサー(966O)が作動する、請求項1に記載の組み合わせ組立品。
【請求項3】
前記スイッチ(766S、966)
のオン状態から
オフ状態へ
の移行時に、前記第二のセンサー(966O)が作動する、請求項1に記載の組み合わせ組立品。
【請求項4】
前記センサー組立
品は、前記スイッチ
のオフ状態の初期位置と
オン状態の作動位置との間で、前記基準構成要素(101、601、801、719、919)に対して
可動であり、
前記センサー組立品が
初期位置から作動位置へと移動
し、かつ前記スイッチが
オフ状態から
オン状態へと
移行した時に、
前記第一のセンサーは、前記インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出するように
配される、請求項1に記載の組み合わせ組立品。
【請求項5】
前記第二のセンサー
は、
(i)前記第一のセンサーが
作動して、前記インジケータ要素によって
なされ
た回転移動の量
の全部または
一部を決定した後の所定の長さの時間
内、または
(ii)前記センサー組立品が
初期位置へと移動
し、かつ前記スイッチが
オン状態から
オフ状態へと
移行した後の所定の長さの時間内
で、
タイプ識別子を検出するように
配される、請求項4に記載の組み合わせ組立品。
【請求項6】
前記インジケータ要素(160、660)
は、種類が磁石(160M、660M)
で、前記第一のセンサー
は、種類が磁石センサー(766M、966M)
であるか、
あるいは
前記インジケータ要素(160、660)
は、種類が視覚的マーカー(160M、660M)
で、前記第一のセンサー
は、種類が光学センサー(766M、966M)
である、請求項1~5のいずれかに記載の組み合わせ組立品。
【請求項7】
前記第一のセンサー
は、前記スイッチ
のオフ状態から
オン状態へ
の移行時に、作動し、前記スイッチ
のオン状態から
オフ状態へ
の移行時に、少なくとも
一部が停止
する、請求項1~
6のいずれかに記載の組み合わせ組立品。
【請求項8】
前記第二のセンサー
は、
前記スイッチ
のオン状態から
オフ状態へと
移行後に
、所定の長さの時間
作動する、請求項
1~7のいずれかに記載の組み合わせ組立品。
【請求項9】
前記アドオン装置
は、
軸方向に移動して前記第一の解放部材を作動
可能な第二の解放部材を備え、
前記センサー組立品
は、前記第二の解放部材に連結され
て、
前記第二の解放部材と共に
初期位置と
作動位置との間で軸方向に移動する、請求項
8に記載の組み合わせ組立品。
【請求項10】
前記
タイプ識別子
は前記第一の解放部材の色であり、前記第二のセンサー
は色を検出する
センサーである、請求項
9に記載の組み合わせ組立品。
【請求項11】
前記インジケータ要素(160M、660M)
は、前記ハウジング(101、601、801)に対し
て、かつ前記基準軸に対応
して、回転するように
配され、また複数の双極子磁石を備え、
前記第一のセンサー
(766M、966M)は、
-
装着した状態で、前記ハウジングに対して回転
しないように
配され
て、
前記複数の双極子磁石からの磁場の値を
測定する一つ以上の磁気計(766M)と、
- 前記一つ以上の磁気計からの測定値に基づいて、前記インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を決定す
るプロセッサ(766C)と、を備える、請求項
8~10のいずれかに記載の組み合わせ組立品。
【請求項12】
薬剤送達装置
に取り外し可能に装着されるアドオン装置(300、700、900)であって、前記薬剤送達装置が、
- ハウジング(101、601、801)と、
- 薬剤貯蔵部(113)または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、
- 回転可能な用量設定部材(180)を備える薬剤排出手段であって、ユーザーが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、薬剤排出手段と、
- 近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材(190、690、890)であって、前記近位位置は投与量を設定することを可能にし、前記遠位位置は前記薬剤排出手段が設定用量を排出することを可能にする解放部材と、
- 用量設定中に変形されるように
配され、かつ前記解放部材によって解放され、これによって前記薬剤貯蔵部からある量の薬剤を排出することを駆動する駆動ばねと、
- 投与量の設定中および/または排出中に、前記ハウジング(101、601、801)に対して、
かつ基準軸に対応して回転するように
配されるインジケータ要素(160M、660M)であって、回転の量が、設定および/または排出された投与量のサイズを表す、インジケータ要素と、
-
視覚的なタイプ識別子(190、690、890)と、を備え、
前記アドオン装置が、
-前記薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に
装着されるアドオンハウジング(410、719、919)と、
-前記インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出す
る第一のセンサー(766M、966M)
並びに前記タイプ識別子を検出す
る第二のセンサー(966O)
を含む、センサー組立品(460、760、960)と
- エネルギー源(766F)と、
-プロセッサと、
-オフ状態と動作サイクルが開始
するオン状態との間で作動可能であるスイッチ(766S、966)と、を備え、
-
前記薬剤送達装置にアドオン装置を装着した状態の下で、前記第一のセンサーを、
前記プロセッサによって作動して、前記インジケータ要素によって
なされた回転移動の量
を決定し、
-
前記薬剤送達装置にアドオン装置を装着した状態の下で、前記第二のセンサーを、
前記プロセッサによって作動して、タイプ識別子を決定
し、
-
前記動作サイクルは、意図された情報を取得するために前記第一のセンサーおよび前記第二のセンサーが作動する期間をカバーし、
-
前記第一のセンサーおよび前記第二のセンサーが、
前記動作サイクル中に前記プロセッサによって逐次的に
作動する、アドオン装置。
【請求項13】
前記センサー組立品(460、760、960)は、前記スイッチが
オフ状態
の初期位置と
オン状態
の作動位置との間で前記アドオンハウジング(719、919)に対して
可動であ
り、
-
前記センサー
組立品が
初期位置から作動位置へと移動
し、かつ前記スイッチが
オフ状態から
オン状態へと
移行した時に、
前記第一のセンサーは、前記インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出するように
配され、
-前記第二のセンサー
は、
(i)前記第一のセンサーが
作動して、前記インジケータ要素によって
なされ
た回転移動の量
の全部または
一部を決定した後の所定の長さの時間
内、または
(ii)前記センサー組立品が
初期位置へと移動
し、かつ前記スイッチが
オン状態から
オフ状態へと
移行した後の所定の長さの時間内
で、
タイプ識別子を検出するように
配される、請求項
12に記載のアドオン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、プロセス組立品およびそれへと取り付け可能なセンサー組立品を備える組み合わせ組立品に関する。特定の態様では、本発明は、データの生成、収集、および保存に関係のある装置およびシステムに関する。特定の実施形態では、本発明は、信頼性の高い、効果的な、そして使いやすいやり方で薬剤送達用量データを捕捉するための装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主に、例えば、インスリンの皮下送達による糖尿病の治療に使用される薬剤送達装置を参照するが、これは、本発明の例示的な使用に過ぎない。
【0003】
皮下注射のための薬剤送達装置は、薬剤および生物学的製剤を自己投与する必要がある患者の生活を大幅に改善した。こうした薬剤送達装置は多くの形態を取る場合があり、注入手段を有するアンプルに過ぎない単純な使い捨て装置を含み、または予め充填されたカートリッジとともに使用するように適合された耐久性のある装置であってもよい。かかる薬剤注射装置は、それらの形態およびタイプにかかわらず、注射可能な薬剤および生物学的製剤を患者が自己投与するのを支援するのに大きな助けになることが証明されている。また、それらは、介護者が自己注入を実施することができない者に注入可能な医薬品を投与するのを大いに支援する。一般的なタイプの薬剤送達装置は、送達される薬剤の望ましい用量サイズをユーザーが設定することを可能にする。典型的な機械的装置の場合、用量設定手段は、回転可能な用量設定またはダイヤル部材の形態であり、その後引き続いて装置から排出される望ましい用量サイズを、ユーザーが設定(または「ダイヤル」)することを可能にする。
【0004】
必要量のインスリン注射を適切な時点に適切なサイズで実施することは、糖尿病を管理するために必要不可欠であり、すなわち指定されたインスリンレジメンを遵守することが重要である。医療従事者が、処方された用量パターンの有効性を決定することを可能にするために、糖尿病患者は各注入のサイズおよび時間のログを保持することを推奨される。しかしながら、こうしたログは通常手書きのノートに記録され、そしてログされた情報はデータ処理のためにコンピュータに簡単にはアップロードされない場合がある。さらに、患者によって記載されるイベントのみがログされるため、ノートシステムは、ログされた情報が患者の糖尿病の治療において何らかの価値を持つとすれば、患者は各注入をログすることを覚えておく必要がある。ログ中の欠如した記録または誤った記録は、注射履歴の実態が誤ったものとなり、ひいては、将来の薬剤治療に関する医療従事者の意思決定の土台が誤ったものとなる。したがって、薬品送達システムからの注射情報のロギングを自動化することが望ましい場合がある。
【0005】
一部の注射装置は、例えば、米国特許出願公開第2009/0318865号および国際出願公開第2010/052275号に開示されているように、このモニタリング/取得機構を装置自体に統合するが、今日のほとんどの装置はそれがない。最も広く使用されている装置は、耐久性があるかまたは予め充填されたかのいずれかである、単なる機械的な装置である。後者の装置は、空になった後に廃棄されるため、安価であり、装置自体内に内蔵電子データ取得機能を構築することはコスト的に見合わない。この問題に対処するため、所与の医療用装置の使用を表すデータをユーザーが生成、収集、および分散するのに役立つであろう多くの解決策が提案されてきた。
【0006】
例えば、国際特許公開公報第2014/037331号は、ペンタイプの薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるように適合された電子補助装置(「アドオンモジュール」または「アドオン装置」とも称される)を第一の実施形態で説明している。装置は、カメラを含み、薬剤送達装置上の用量ウィンドウを通して見える回転するスケールドラムから捕捉された画像の光学文字認識(OCR)を実施し、これによって、薬剤送達装置へとダイヤルされた医薬の用量を決定するように構成されている。国際特許公開公報第2014/020008号および米国特許公開第2016/0082192号は、両方ともペンタイプの薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるように適合された電子補助装置を開示する。装置は、カメラを含み、OCRに基づいてスケールドラム値を決定するように構成されている。排出された用量のサイズを適正に決定するために、補助装置は、用量サイズが設定、修正、または送達されているかどうかを決定するための追加的な電気機械的センサー手段をさらに備える。ペン式装置用のさらなる外部装置が、国際特許公開公報第2014/161952号に示されている。排出された用量のサイズを検出することに加えて、国際特許公開公報第2014/020008号および米国特許出願公開第2016/0082192号に開示された補助装置は、ペン式ハウジングの色を決定するためにさらに適合され、その色は、アドオン装置が取り付けられた薬剤を含有するプレフィルドペン式装置のタイプに対するタイプ識別子として機能する。
【0007】
上記を考慮して、本発明の目的は、取り付け可能なセンサー組立品(例えば、ユーザー設置可能なアドオンロギング装置)を備えるプロセス組立品(例えば、薬剤送達装置)の安全、簡単、かつ効率的な動作を可能にする装置および方法を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の開示では、上記の目的のうちの一つ以上に対処する、または下記の開示だけでなく例示的な実施形態の説明から明らかな目的に対処する実施形態および態様が説明される。
【0009】
それ故に、本発明の第一の態様では、組み合わせ組立品が、プロセス組立品およびそれへと取り付け可能なセンサー組立品を備えて提供される。プロセス組立品は、インジケータ要素およびタイプ識別子を備え、インジケータ要素は、基準構成要素に対して回転するように配設され、プロセス組立品の基準軸に対応する。センサー組立品は、インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出するように適合された第一のセンサーと、タイプ識別子を検出するように適合された第二のセンサーと、エネルギー源と、プロセッサと、オフ状態と動作サイクルが開始されるオン状態との間で作動可能なスイッチと、を備える。センサー組立品がプロセス組立品に取り付けられた状態で、第一のセンサーは、プロセッサによって動作されて、インジケータ要素によって実行される回転移動の量を決定し、第二のセンサーは、プロセッサによって動作されて、タイプ識別子を決定する。動作サイクル中に、第一のセンサーおよび第二のセンサーは、プロセッサによって逐次的に動作される。
【0010】
この配設によって、回転移動ならびにセンサー組立品が取り付けられるプロセス組立品の識別子の両方を決定するように適合された取り付け可能なセンサー組立品の動作を、安定でかつ効率的な動作を確保するために最適化することができる。これは、例えば、エネルギーおよび処理に関して、センサーからのリソースのピークドローが同時に起こるのを防止することができるためである。連続動作は、センサーが部分的に重複して動作される状況、例えば、第一のセンサーに対するピーク電流の流れが発生したときに第二のセンサーが動作し得る状況を意味し、これは、両方のセンサーの安定した動作を可能にする。例えば、センサーは、センサーからのリソースの組み合わされたドローが、任意の単一のセンサーからのリソースの最大ドローよりも低いことを確実にするように動作されてもよい。
【0011】
「プロセス組立品」という用語は、組立品が、構成要素(インジケータ)が回転することに関与する活動(プロセス)を実施するように適合される実施形態を意味する。組立品は、インジケータの回転が変形されたばねによって、または手動での力のユーザー入力によって駆動される薬剤送達装置の形態であってもよい。
【0012】
「センサー」という用語は、センサー構成要素自体だけでなく、支持回路、そしてさらに必要な構成要素(例えば、プロセッサおよびメモリ)を幅広く意味し、これらは典型的には、二つのセンサーの間で共有され、かつその他のプロセスにも関与する。「センサー組立品」という用語は、特定の単一の設計を暗示するものではなく、任意の所与の実装のために必要に応じて異なる構成要素が分配される実施形態を意味する。
【0013】
「動作サイクル」という用語は、センサーが意図される情報を取得するために動作される期間、すなわち、検出された位置および/またはインジケータ要素の移動に基づいて、インジケータの回転量を決定し、かつ識別子のタイプを識別する期間を意味する。実際、ほとんどの場合、センサーは順調であることが予想されるが、しかし一つまたは二つのエラー状態により動作サイクルが終了する場合もある。
【0014】
例示的な実施形態では、第二のセンサーは、第一のセンサーが、インジケータ要素によって実行される回転移動の量を完全にまたは部分的に検出したとき、すなわち、インジケータ要素の回転位置および/または回転移動の検出に基づいて、動作される。「部分的」という用語は、第一のセンサーが、その時点での回転移動の量を検出するプロセスにあることを表し、その動きの量については、リソース上のドローは、リソース上の初期のドローよりも低くてもよい。
【0015】
別の方法として、スイッチがオン状態からオフ状態へと作動されたときに、第二のセンサーが動作される。これに応じて、第二のセンサーは、第一のセンサーの前に動作されてもよい。
【0016】
特定の実施形態において、センサー組立品は、スイッチがオフ状態にある初期位置と、スイッチがオン状態にある作動位置との間で、基準構成要素に対して移動可能である。第一のセンサーは、センサー組立品が初期位置から作動位置へと移動され、かつスイッチがオフ状態からオン状態へと作動されたときに、インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出するように配設される。
【0017】
第二のセンサーは、第一のセンサーが、インジケータ要素によって実行される回転移動の量を検出するために、完全にまたは部分的に動作した後、所定の長さの時間内にタイプ識別子を検出するように適合されてもよく、例えば、第二のセンサーは、第一のセンサーのピーク電力消費量が生じた後だが、回転の量が決定される前に動作されてもよい。
【0018】
別の方法として、第二のセンサーは、センサー組立品がその初期位置に移動され、かつスイッチがそのオン状態からオフ状態へと作動した後、所定の長さの時間内にタイプ識別子を検出するように適合されてもよく、これは、測定される対象に対して安定した非移動位置にあるときに第二のセンサーの動作を可能にする。
【0019】
例示的な実施形態では、インジケータ要素は磁石を備え、また第一のセンサーは磁石センサーを備える。他の実施形態では、インジケータ要素は、光学センサー手段、例えば、OCRを使用して回転位置を決定することを可能にする視覚的なしるしを備えてもよい。
【0020】
「識別子」という用語は、医療用装置の所与のタイプ(例えば所与のタイプの製剤を含む薬剤送達装置)などの、対象のクラスまたはタイプを識別する対象の構造または特性を意味する。さらに、識別子は、一意の識別子、例えば、シリアル番号を提供する情報を持ってもよい。
【0021】
タイプ識別子は、視覚的識別子(例えば、色またはバーコードもしくはマトリックスコードなどのコード)であってもよく、第二のセンサーは、光学センサー(例えば、光源と組み合わせたRGBカメラ)である。別の方法として、識別子は、磁石センサー組立品によって決定することができる磁気特性の形態であってもよい。識別子はまた、電気機械的スイッチ配設によって検出されるように適合された機械的コード構造の形態であってもよい。
【0022】
例示的な実施形態では、組み合わせ組立品は、薬剤送達装置および薬剤送達装置の上に取り外し可能に設置されるように適合されたアドオン装置を備える。薬剤送達装置は、基準構成要素を形成するハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容する手段と、ユーザーが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材を備える薬剤排出手段と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な第一の解放部材であって、近位位置は投与量の設定を可能にし、遠位位置は薬剤排出手段が設定用量の排出を可能にする、解放部材と、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これによって薬剤貯蔵部からのある量の薬剤の排出を駆動する駆動ばねと、投与量の設定中および/または排出中に移動するように適合されたインジケータ要素であって、移動量が、設定および/または排出された投与量のサイズを表す、インジケータ要素と、を備える。アドオン装置は、センサー組立品を備え、インジケータ要素の検出された回転位置および/または回転移動は、設定および/または排出された投与量を決定することを可能にする。
【0023】
特定の実施形態では、アドオン装置は、第一の解放部材を作動させるために軸方向に移動可能な第二の解放部材を備え、センサー組立品は、第二の解放部材と連結され、かつこれと共に初期位置と作動位置との間で軸方向に移動する。タイプ識別子は、第一の解放部材の色であってもよく、第二のセンサーは、色を検出するように適合される。
【0024】
本発明の第二の態様では、薬剤送達装置上に取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオン装置が提供される。薬剤送達装置は、ハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容する手段と、ユーザーが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材を備える薬剤排出手段と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な第一の解放部材であって、近位位置は投与量の設定を可能にし、遠位位置は薬剤排出手段が設定された用量の排出を可能にする、解放部材と、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これによって薬剤貯蔵部からのある量の薬剤の排出を駆動する駆動ばねと、投与量の設定および/または放出中にハウジングに対して、かつ基準軸に対応して回転するように適合されたインジケータ要素であって、回転量が、設定および/または排出された投与量のサイズだけでなくタイプ識別子も表す、インジケータ要素と、を備える。アドオン装置は、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオンハウジングと、インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出するように適合された第一のセンサーと、タイプ識別子を検出するように適合された第二のセンサーと、エネルギー源と、オフ状態と動作サイクルが開始されるオン状態との間で作動可能なスイッチとを備え、第一のセンサーは、インジケータ要素によって実行された回転移動の量を決定するために動作し、また第二のセンサーは、タイプ識別子を検出するように動作し、動作サイクル中に、第一のセンサーおよび第二のセンサーは逐次的に動作される。
【0025】
例示的な実施形態では、第一のセンサーおよび第二のセンサーは、スイッチがオフ状態にある初期位置と、スイッチがオン状態にある作動位置との間で、アドオンハウジングに対して移動可能であるセンサーユニットの一部を形成する。第一のセンサーは、センサーユニットが初期位置から作動位置へと移動され、かつスイッチがオフ状態からオン状態へと作動されたときに、インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出するように配設され、第二のセンサーが、第一のセンサーが動作されて、インジケータ要素によって実行される回転移動の量を完全にまたは部分的に決定した後、所定の長さの時間内にタイプ識別子を検出するように配設される。
【0026】
第二のセンサーは、色を検出するように適合されてもよく、タイプ識別子は、色付きの構成要素または薬剤送達装置の部分である。
【0027】
「完全にまたは部分的に」という用語は、第一のセンサーがインジケータ要素の位置/移動の検出を開始していてもよいことを表し、これは典型的には、動作の一部だが、まだ完了していない検出を要求するほとんどのリソースが関与する。別の方法として、第二のセンサーは、センサーユニットがその初期位置へと移動し、かつスイッチがオン状態からオフ状態へと作動した後、所定の長さの時間内にタイプ識別子を検出するように配設される。
【0028】
開示されるアドオン装置は、組み合わせ組立品の一部を形成する上述のアドオン装置に対応して修正されてもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「インスリン」という用語は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液などの制御された様式でカニューレまたは中空針などの送達手段を通過することができ、かつ血糖制御効果、例えば、ヒトインスリンおよびその類似体、ならびにGLP-1およびその類似体のような非インスリンを有する、任意の薬剤含有流動性医薬品を包含することを意味する。例示的な実施形態の説明では、インスリンの使用に対して参照がなされるが、しかし説明されるモジュールは、その他のタイプの薬剤(例えば成長ホルモン)のログを作り出すためにも使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下では、本発明の下記の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【
図5】
図5は薬剤送達装置のハウジング上に設置されたアドオン装置を断面図で示す。
【
図6】
図6は薬剤送達装置と組み合わせたアドオン装置の第二の実施形態を示す。
【
図8A】
図8A~
図8Dは薬剤送達装置上に設置された
図6のアドオン装置を備える組立品を、断面図で、かつ異なる動作状態で示す。
【
図8B】
図8A~
図8Dは薬剤送達装置上に設置された
図6のアドオン装置を備える組立品を、断面図で、かつ異なる動作状態で示す。
【
図8C】
図8A~
図8Dは薬剤送達装置上に設置された
図6のアドオン装置を備える組立品を、断面図で、かつ異なる動作状態で示す。
【
図8D】
図8A~
図8Dは薬剤送達装置上に設置された
図6のアドオン装置を備える組立品を、断面図で、かつ異なる動作状態で示す。
【
図9】
図9はアドオン装置の第三の実施形態の構成要素の分解組立図を示す。
【
図14】
図14はリング形態のトレーサー構成要素内に等距離で配設された個別の双極子磁石を示す。
【
図15A】
図15Aは個別の磁石の間に組み合わせて配設された、磁化可能な材料から製造されたトレーサー構成要素を示す。
【
図15B】
図15Bは多極電磁場内に配設された磁化可能な材料から製造されたトレーサー構成要素を示す。
【
図16】
図16はトレーサー構成要素に対して配設された磁気計を備えるセンサーシステムの異なる実施形態を示す。
【
図17A】
図17Aは第一のセンサーセットアップと組み合わせた双極トレーサー磁石に対する角度測定値を示す。
【
図17B】
図17Bは第二のセンサーセットアップと組み合わせた四重極トレーサー磁石の角度測定値を示す。
【
図18】
図18は磁石の完全な一回転にわたる四重極磁石からの信号を示す。
【
図20】
図20は四重極磁石および7個の磁気計の組立品を示す。
【
図21】
図21は薬剤送達装置上に設置されたアドオン装置のさらなる実施形態を示す。
【
図22】
図22は薬剤送達装置上に設置されたアドオン装置のまたさらなる実施形態を示す。
【0031】
図面において、同様の構造物は、主として同様の参照番号によって識別される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の用語、「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」、または類似の相対表現などが使用されているとき、これらは単に添付の図のみを参照し、そして必ずしも実際の使用状況を示すわけではない。示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成だけでなくそれらの相対的寸法は、図示的な目的を果たすことのみが意図されている。部材または要素という用語が所与の構成要素に対して使用されるとき、これは一般的に、説明される実施形態においてこの構成要素が単一の構成要素であることを表すが、代替的に、説明される構成要素のうちの二つ以上が単一の構成要素として提供される可能性があるように、例えば、単一の射出成形部品として製造される可能性があるように、同一の部材または要素がいくつかの下位構成要素を備えてもよい。「組立品」という用語は、説明された構成要素が所与の組立手順の間に単一の、または機能組立品を提供するために組み立てられる必要があることを暗示しておらず、機能的により密接に関連するものとして共にグループ化される構成要素を説明するために使用されるにすぎない。
【0033】
本発明それ自体の実施形態へ戻る前に、予め充填された薬剤送達の一実施例が説明され、このような装置は本発明の例示的な実施形態の基盤を提供する。
図1~3に示されるペン型の薬剤送達装置100は、「一般的な」薬剤送達装置を表す場合があり、実際に示される装置は、デンマークBagsverdのNovo Nordisk A/Sによって製造および販売される、FlexTouch(登録商標)の予め充填された薬剤送達ペンである。
【0034】
ペン式装置100は、キャップ部品107と、薬剤排出機構がその中に配設または統合されているハウジング101を持つ近位本体または駆動組立品部分を有する主要部分と、遠位の針貫通可能な隔壁を有する薬剤充填透明カートリッジ113が、近位部分に付着された取り外し不可能なカートリッジホルダーによって定位置に配設され保持される遠位カートリッジホルダー部分とを備え、カートリッジホルダーは、カートリッジの一部分が検査されるのを可能にする開口部、ならびに針組立品が取り外し可能に設置されるのを可能にする遠位連結手段115を有する。カートリッジには、排出機構の一部を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンが提供されており、例えば、インスリン、GLP-1または成長ホルモン製剤を含んでもよい。多数の軸方向に向けられた溝182を有する最も近位の回転可能な用量設定部材180は、表示ウィンドウ102に示される望ましい用量の薬剤を手動で設定し、その後、ボタン190が作動された時にこれを排出することができるように機能する。下記の説明から明らかとなるように、示される軸方向に向けられた溝182は、「駆動溝」と称されてもよい。用量設定部材180は、概して円筒状の外表面181を有し(すなわち、用量設定部材はわずかにテーパー状であってもよい)、示された実施形態では、外表面は、用量設定中の指のつかみを改善するために、複数の軸方向に向けられた微細溝を備えることによって質感が与えられている。ウィンドウは、面取りされた縁部分109および用量ポインタ109Pによって囲まれたハウジング内の開口部の形態であり、ウィンドウは、螺旋状に回転可能なインジケータ部材170(スケールドラム)の一部分を観察することを可能にする。薬剤送達装置内に具体化される排出機構のタイプに応じて、排出機構は、実施形態に示されるように、用量設定中に変形され、その後、解放ボタンが作動したときに解放されてピストンロッドを駆動するばねを備えてもよい。別の方法として、排出機構は完全に手動であってもよく、その場合、例えば、Novo Nordisk A/Sによって製造および販売されるFlexPen(登録商標)のように、設定された用量サイズに対応する用量設定中に、用量部材および作動ボタンを近位に移動し、次に、設定用量を排出するためにユーザーによって遠位に移動する。
【0035】
図1は、予め充填されたタイプの薬剤送達装置を示し、すなわち、これは予め設置されたカートリッジを有して供給され、カートリッジが空になったとき廃棄されるが、代替的な実施形態では、薬剤送達装置は、充填されたカートリッジと交換することが可能であるように、例えば、カートリッジホルダーが装置主要部分から取り外されるように適合された「後方装填式」薬剤送達装置の形態で、または別の方法として、カートリッジが遠位開口部を通して装置の主要部分に取り外し不可能に取り付けられたカートリッジホルダー内に挿入される、「前方充填式」装置の形態で設計されてもよい。
【0036】
本発明は、薬剤送達装置と相互作用するように適合された電子回路に関するため、このような装置の例示的な実施形態を、本発明をより良好に理解するために説明する。
【0037】
図2は、
図1に示すペン型の薬剤送達装置100の分解組立図を示す。より具体的には、ペンは、ウィンドウ開口部102を有する管状ハウジング101を備え、そしてその上にカートリッジホルダー110が固定的に取り付けられ、薬剤充填済みカートリッジ113がカートリッジホルダー内に配設される。カートリッジホルダーには、針組立品116が取り外し可能に設置されることを可能にする遠位連結手段115と、キャップ107が、カートリッジホルダーおよび取り付けられた針組立品を覆って、取り外し可能に設置されることを可能にする二つの対向する突出部111の形態の近位連結手段と、例えばテーブルの上面上でペンが転がるのを防止する突出部112と、が提供される。ハウジング遠位端には、ナット要素125が固定的に取り付けられ、ナット要素は中央ねじ穴126を備え、またハウジング近位端には中央の開口部を有するばね基部部材108が固定的に取り付けられる。駆動システムは、対向する二つの長軸方向の溝を有し、ナット要素のねじ穴内に受容されるねじピストンロッド120と、ハウジング内に回転可能に配設されたリング形態のピストンロッド駆動要素130と、駆動要素(下記参照)と回転係合し、その係合がクラッチ要素の軸方向移動を可能にするリング形態のクラッチ要素140とを備える。クラッチ要素には、ハウジング内表面上の対応するスプライン104(
図3Bを参照)と係合するように適合された外側スプライン要素141が提供され、これは、スプラインが係合している回転方向に係止された近位位置とスプラインが係合から外れている回転方向に自由な遠位位置との間でクラッチ要素が移動することを可能にする。今まさに述べたように、両方の位置では、クラッチ要素は駆動要素に対して回転方向に係止される。駆動要素は、ピストンロッドの溝と係合している二つの対向する突出部131を有する中央の穴を備え、それによって駆動要素の回転は、ピストンロッドとナット要素との間のねじ係合のために、ピストンロッドの回転をもたらし、それによって遠位の軸方向移動をもたらす。駆動要素は、ハウジング内表面上に配設された対応するラチェット歯105に係合するように適合された、一対の対向する円周方向に延びる可撓性のラチェットアーム135をさらに備える。駆動要素およびクラッチ要素は、それらを一緒に回転方向に係止するが、クラッチ要素が軸方向に移動することを可能にする協働する連結構造を備え、これはクラッチ要素が、回転することができるその遠位位置へと軸方向に移動することを可能にし、それによってダイヤルシステム(下記参照)から駆動システムへと回転移動を伝達する。クラッチ要素、駆動要素、およびハウジング間の相互作用は、
図3Aおよび3Bを参照しながらより詳細に示され、かつ説明される。
【0038】
ピストンロッド上には、内容量終了(EOC)部材128が螺着されており、また遠位端上にはワッシャー127が回転可能に取り付けられている。EOC部材は、リセットチューブと係合するための一対の対向する半径方向の突出部129を備える(下記参照)。
【0039】
ダイヤルシステムは、ラチェットチューブ150と、リセットチューブ160と、外側に螺旋状に配設された用量を示す列を形成するパターンを有するスケールドラム170と、排出される薬剤の用量を設定するためにユーザー操作されるダイヤル部材180と、解放ボタン190と、トルクばね155とを備える(
図3参照)。ダイヤル部材には、リセットチューブ上に配設された多数の対応する外側歯161に係合する円周の内側歯構造181が提供され、これは、リセットチューブが用量設定中に近位位置にあるときに係合状態にあり、リセットチューブが用量排出中に遠位側に移動するときに係脱状態にあるダイヤル連結を提供する。リセットチューブはラチェットチューブの内側に軸方向に係止されて取り付けられるが、数度回転することができる(下記参照)。リセットチューブは、その内表面上に、EOC部材の半径方向突出部129と係合するように適合された二つの対向する長軸方向の溝169を含み、それによってEOCはリセットチューブによって回転することができるが、軸方向に移動することが可能である。クラッチ要素は、ラチェットチューブ150の外側遠位端部分上に軸方向に係止されて設置されており、これにより、ラチェットチューブは、クラッチ要素を介してハウジングと回転係合に入り、かつ回転係合から外れるように、軸方向に移動することができる。ダイヤル部材180は軸方向に係止されて取り付けられるが、ハウジング近位端上で回転方向に自由であり、ダイヤルリングは,通常動作の下では、リセットチューブに回転方向に係止され(下記参照)、それによってダイヤルリングの回転はリセットチューブ160の、かつこれによってラチェットチューブの対応する回転をもたらす。解放ボタン190は、リセットチューブに対して軸方向に係止されているが、自由に回転することができる。戻りばね195は、ボタン上およびそこに取り付けられたリセットチューブに対して近位に方向付けられた力を提供する。スケールドラム170は、ラチェットチューブとハウジングとの間の円周方向の空間内に配設され、ドラムは協働する長軸方向スプライン151、171を介してラチェットチューブに回転方向に係止され、かつ協働するねじ構造103、173を介してハウジングの内表面と回転ねじ係合となっており、それによってドラムがラチェットチューブによってハウジングに対して回転するときに数字の列がハウジング内のウィンドウ開口部102を通る。トルクばねは、ラチェットチューブとリセットチューブとの間の円周方向の空間内に配設され、その近位端において、ばね基部部材108に固定され、かつその遠位端において、ラチェットチューブに固定され、それによってラチェットチューブがダイヤル部材の回転によってハウジングに対して回転されたときにばねは変形される。ラチェットチューブとクラッチ要素との間に可撓性のラチェットアーム152を有するラチェット機構が提供され、クラッチ要素には円周方向の内側歯構造142が提供され、各歯は、用量が設定されたときにリセットチューブを介してユーザーによって回転された位置にラチェットチューブが保持されるように、ラチェット停止部を提供する。設定用量の低減を可能にするため、ラチェット解放機構162がリセットチューブ上に提供され、かつラチェットチューブに作用し、これによって、ダイヤル部材を反対方向に回転することにより、一つ以上のラチェット増分だけ設定用量を低減することが可能になり、リセットチューブがラチェットチューブに対して上述の数度だけ回転されるとき、解放機構が作動される。
【0040】
排出機構の異なる構成要素およびそれらの機能的関係について説明してきたが、次に機構の動作について、主として
図3Aおよび
図3Bを参照しながら説明する。
【0041】
ペン式機構は、上述のとおり、用量システムおよびダイヤルシステムの二つの相互作用システムと見なすことができる。用量設定中、ダイヤル機構は回転し、ねじりばねに負荷がかけられる。用量機構はハウジングに係止され、移動することができない。押しボタンが押下されたとき、用量機構はハウジングから解放され、かつダイヤルシステムへの係合に起因して、ねじりばねはここでダイヤルシステムを開始点に戻すように回転させ、また用量システムをそれと共に回転させる。
【0042】
用量機構の中央部は、ピストンロッド120であり、プランジャーの実際の変位はピストンロッドによって実行される。用量送達中、ピストンロッドは、駆動要素130によって回転し、かつハウジングに固定されたナット要素125とのねじの相互作用によって、ピストンロッドが遠位方向で前方に移動する。ゴムピストンとピストンロッドとの間に、ピストンワッシャー127が定置され、これは回転ピストンロッドの軸方向軸受として機能し、かつゴムピストン上の圧力を均一にする。ピストンロッドは、ピストンロッド駆動要素がピストンロッドと係合する非円形断面を有するため、駆動要素はピストンロッドに対して回転方向に係止されているが、ピストンロッド軸に沿って自由に移動する。結果として、駆動要素の回転は、ピストンの直線的に前方に移動をもたらす。駆動要素には、駆動要素が(押しボタンの端から見て)時計回りに回転することを防止する小さいラチェットアーム134が提供される。したがって、駆動要素との係合に起因して、ピストンロッドは前方にのみ移動することができる。用量送達中、駆動要素は反時計回りに回転し、ラチェットアーム135は、ラチェット歯105と係合することによってユーザーに小さなクリック音、例えば、排出されたインスリン一単位あたり1クリック音も与える。
【0043】
ダイヤルシステムに目を移すと、ダイヤル部材180を回転することによって用量が設定され、かつリセットされる。ダイヤルを回すとき、リセットチューブ160、EOC部材128、ラチェットチューブ150、およびスケールドラム170は、ダイヤル連結が係合状態にあることに起因して、すべてそれと共に回転する。ラチェットチューブはトルクばね155の遠位端に接続されているため、ばねに負荷がかかる。用量設定中に、ラチェットのアーム152は、クラッチ要素の内側歯構造142との相互作用に起因して、ダイヤルされる各単位に対してダイヤルクリックを実施する。示された実施形態では、クラッチ要素には、ハウジングに対して360度の完全な回転に対して24回のクリック(増分)を提供する24個のラチェット停止部が提供される。ばねは組立中に予め負荷がかけられており、これによって機構は小用量および大用量の両方を許容可能な速度間隔内で送達することが可能になる。スケールドラムはラチェットチューブと回転可能に係合しているが、軸方向に移動可能であり、かつスケールドラムはハウジングとねじ係合しているため、ダイヤルシステムが回転されたとき、スケールドラムは螺旋状パターンで移動し、設定用量に対応する数字がハウジングウィンドウ102に示される。
【0044】
ラチェットチューブとクラッチ要素140との間のラチェット152、142は、ばねが部品の回転を戻すことを防止する。リセット中、リセットチューブはラチェットアーム152を移動させ、これによってクリックごとにラチェットを解放し、1つのクリックは、説明した実施形態ではインスリンの1単位IUに対応する。より具体的には、ダイヤル部材が時計回りに回転されたとき、リセットチューブは単にラチェットチューブを回転させ、ラチェットのアームがクラッチ要素の歯構造142と自由に相互作用することを可能にする。ダイヤル部材が反時計回りに回転されたとき、リセットチューブはラチェットクリックアームと直接相互作用し、クラッチ内の歯から離れてペンの中心に向かってクリックアームを押し、それ故にラチェット上のクリックアームが、負荷がかけられたばねによって生じるトルクに起因して「1クリック」後方に移動することを可能にする。
【0045】
設定用量を送達するために、
図3Bに示すように、押しボタン190はユーザーによって遠位方向に押される。ダイヤル連結161、181は係脱され、またリセットチューブ160はダイヤル部材から連結が外され、その後クラッチ要素140はハウジングスプライン104と係脱される。ここで、ダイヤル機構は、駆動要素130と共に「ゼロ」に戻り、これが排出される薬剤の用量につながる。薬剤送達中いつでも押しボタンを解放または押すことにより、いつでも用量を停止し開始することが可能である。ゴムピストンが非常に迅速に圧縮されるとゴムピストンの圧縮につながり、その後、ピストンが元の寸法に戻るときにインスリンの送達が行われるため、通常、5IU未満の用量は一時停止することができない。
【0046】
EOC機能は、ユーザーがカートリッジ内に残されているより大きい用量を設定することを防止する。EOC部材128は、リセットチューブに対して回転方向に係止され、これは用量設定中、リセット中、および用量送達中にEOC部材を回転させ、その間、ピストンロッドのスレッドのねじに従い、軸方向に前後に移動することができる。ピストンロッドの近位端に達すると、停止が提供され、これはダイヤル部材を含むすべての接続された部品が用量設定方向にさらに回転するのを防止する。すなわち、ここで設定用量はカートリッジ内の残りの薬剤含有量に対応する。
【0047】
スケールドラム170には、ハウジング内表面上の対応する停止表面と係合するように適合された遠位停止表面174が提供され、これは、スケールドラムに対する最大用量での停止を提供し、ダイヤル部材を含むすべての接続された部品が用量設定方向にさらに回転されることを防止する。示された実施形態では、最大用量は80IUに設定される。これに応じて、スケールドラムには、ばね基部部材上の対応する停止表面と係合するように適合された近位停止表面が提供され、これは、ダイヤル部材を含むすべての接続された部品が、用量排出方向にさらに回転されることを防止し、これによって排出機構全体に「ゼロ」停止を提供する。
【0048】
ダイヤル機構に何か障害があり、スケールドラムがゼロ位置を越えて移動することを可能にする場合、偶発的な過剰投薬を防止するために、EOC部材はセキュリティシステムを提供するように機能する。より具体的には、満杯のカートリッジを有する初期状態では、EOC部材は、駆動要素と接触する軸方向で最遠位側の位置に位置付けられる。所与の用量が排出された後、EOC部材は再び駆動要素と接触するように位置付けられる。これに応じて、機構がゼロ位置を超えて用量を送達しようとする場合には、EOC部材は駆動要素に対して係止する。機構の様々な部品の許容誤差および可撓性に起因して、EOCは短距離を移動し、薬剤の少量の「過剰用量」(例えば、3~5IUのインスリン)が排出されることがある。
【0049】
排出機構は、排出用量の終了時に明確なフィードバックを提供して、薬剤の全量が排出されたことをユーザーに知らせる用量終了(EOD)クリック機能をさらに含む。より具体的には、EOD機能は、ばね基部とスケールドラムとの間の相互作用によってなされる。スケールドラムがゼロに戻ると、ばね基部上の小さいクリックアーム106は、前進するスケールドラムによって後向きに強制される。「ゼロ」の直前に、アームが解放され、アームはスケールドラム上の皿穴面を打つ。
【0050】
示された機構には、ダイヤル部材を介してユーザーによって加えられる過負荷から機構を保護するために、トルクリミッターがさらに提供される。この機能は、ダイヤル部材とリセットチューブとの間の境界面によって提供され、これは上述のように、相互に回転方向に係止される。より具体的には、ダイヤル部材にはいくつかの対応する外側歯161と係合する円周の内側歯構造181が提供され、この内側歯構造は、リセットチューブの可撓性の担体部分上に配設される。リセットチューブ歯は、所与の指定された最大サイズのトルク(例えば、150~300Nmm)を伝達し、それを上回ると、可撓性の担体部分および歯が内向きに曲がり、ダイヤル機構の残りの部分を回転させることなく、ダイヤル部材を回転させるように設計されている。それ故に、ペンの内側の機構は、トルクリミッターが歯を通して伝達するより高い負荷で応力を受ける可能性はない。
【0051】
機械的薬剤送達装置の作動原理について説明したので、薬剤送達装置およびアドオン用量ロギング装置を備える組立品の実施形態を説明するが、こうした組立品は本発明をその上に実装することが可能である例示的なプラットフォームを形成する。
【0052】
図4Aおよび
図4Bは、予め充填されたペン形状の薬剤送達装置200の第一の組立品、およびそのために適合されたアドオン用量ロギング装置300の概略図を示す。アドオン装置は、ペン式装置ハウジングの近位端部分上に設置されるように適合され、
図4Bに示す取り付けられた状態でのペン式装置上の対応する手段を覆う用量設定および用量解放手段380が提供される。示される実施形態で、アドオン装置は、薬剤送達ハウジング上に軸方向に取り付けられ回転方向に係止されるように適合された連結部分385を備える。アドオン装置は、回転可能な用量設定部材380を備え、これは、用量設定中に、アドオン用量設定部材の回転移動がいずれの方向でもペン式用量設定部材に伝達されるように、ペン式用量設定部材280に直接的または間接的に連結される。用量排出中および用量サイズ決定中に外部からの影響を低減するために、外側アドオン用量設定部材380は、
図5の実施形態を参照しながらより詳細に説明されるように、用量排出中、ペン式用量設定部材280から回転方向に連結を外されていてもよい。アドオン装置は、遠位側に移動し、これによってペン式解放部材290を作動させることができる用量解放部材390をさらに備える。
図5を参照して以下でより詳細に説明されるように、ユーザーによってつかまれ回転されるアドオン用量設定部材は、それと回転方向で係合するペン式ハウジングに直接取り付けられてもよい。
【0053】
別の方法として、示された構成は、主に薬剤の用量を設定および解放するための器用さが低下した人のための補助として機能するように適合されてもよく、それ故に任意の用量感知および用量ロギング機能は省いてもよい。こうした構成では、用量の排出中に、外側アドオン用量設定部材がペン式用量設定部材280から回転方向で連結を外されていることはそれほど重要でない。これに応じて、外側アドオン用量設定部材は、ペン式用量設定部材280と永久的に回転係合していてもよい。
【0054】
図5に目を移すと、ペン型の薬剤送達装置100上に設置されるように適合されたアドオン用量ロギング装置400の第一の例示的な実施形態をより詳細に説明する。薬剤送達装置は、
図1~3を参照しながら説明した薬剤送達装置に本質的に対応し、それ故にハウジング101と、ユーザーが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材180と、近位用量設定位置と遠位用量放出位置との間で作動可能な解放部材190と、スケールドラム170と、リセットチューブ160とを備える。アドオンロギング装置と協働するために、薬剤送達装置は、リセットチューブ近位端に取り付けられているかまたはリセットチューブ近位端と一体的に形成されている概してリング形態のトレーサー磁石160Mを備えるように修正され、磁石は投与量の排出中に回転するインジケータとして機能し、回転移動の量は排出された投与量のサイズを表す。さらに、ハウジングには、用量設定部材のすぐ遠位に円周方向の溝101Gが提供され、アドオン装置のための連結手段として機能する。
【0055】
アドオン装置は、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付け可能な外側組立品410だけでなく内側組立品480も備える。内側組立品および外側組立品は、用量設定中に相互に回転方向に係止されているが、用量排出中は相互から回転方向で連結を外される。示された実施形態は実験的なプロトタイプに基づき、そのため構造の一部は多数の組み立てられた部品から形成される。
【0056】
外側組立品410は、アドオン装置に対する一般軸を画定し、かつアドオン用量設定部材として機能する概して円筒状のハウジング部材411と、ペン式ハウジングの連結溝101Gと係合するように適合された遠位に配設された連結手段415と、ハウジング部材411に連結され、かつ初期の近位位置と作動した遠位位置との間で軸方向に移動可能な近位に配設された用量解放部材490とを備える。示された実施形態では、連結手段415は、アドオン装置が薬剤送達装置100の近位端の上にスライドしたときに、スナップ作用によってハウジング溝101G内に取り外し可能に受容されるように適合された多数のばね付勢連結部材の形態であり、これによって連結手段はアドオン装置をペン式装置へと軸方向に係止する。連結手段は、例えば、引く動作または解放機構の作動によって解放されてもよい。ハウジングは、近位部分に、内円周フランジ412および軸方向に向けられた多数の案内溝413を備える。用量解放部材490は、案内溝413内に受容された、軸方向に配向され周辺に配設された多数のフランジ493を備え、溝は近位停止部を提供し、これに対して用量解放部材は、ハウジングフランジ412と用量解放部材490との間に支持されている第一の戻りばね418によって付勢される。用量解放部材は、遠位内側フランジ部分494を有する内側の円筒状スカート部分492を備え、内側フランジ部分は遠位円周リップ495および軸方向に配向された係止スプライン496の近位アレイを備える。
【0057】
内側組立品480は、内側ハウジング481と、その中に配設されたセンサーモジュール460の形態の軸方向に移動可能なセンサーシステムとを備える。内側ハウジングは、そこから中空の伝達チューブ483が近位に延びる近位壁部分482と、第二の付勢ばね468のための支持として機能する内円周フランジ部分484と、ペン式用量設定部材の駆動溝182(
図1Aを参照)内に受容されるように適合された、軸方向に配向された多数の内側突出部が提供される遠位に延びる円周方向のスカート部分487とを備え、これによって二つの部材を相互に回転方向に係止し、係合はアドオン装置の設置および動作中にいくらかの軸方向の遊びを与える。別の方法として、スカート部分487には、下記に説明するタイプの半径方向内向きに付勢された駆動構造が提供されてもよい。中空のチューブ483は、近位端に、円周リップ495と係合するように適合された遠位に面する停止表面を有するディスク型の部分と、用量解放部材490上の係止スプライン496と係合し、これによって内側組立品を用量解放部材に回転方向に係止し、それ故に外側組立品を回転方向に係止するように適合された、軸方向に配向されたスプライン486の円周方向アレイとを備える。
【0058】
センサーモジュール460は、センサー部分および近位に延びる作動ロッド部分462を備える。センサー部分は、概して円筒状のセンサーハウジング461を備え、その中に電子回路465が配設される(
図5に概略的に示す)。センサーハウジングは、ペン式作動部材190と係合するように適合された遠位作動表面を備える。初期用量設定モード(すなわち、用量解放部材490が初期近位位置にある)では、センサーハウジングは、内側ハウジング近位壁部分482と係合するように第二の付勢ばね468によって近位に付勢され、かつ作動ロッド462は、伝達チューブ483から用量解放部材490の内部へと延び、作動ロッドの近位端463と用量解放部材の内側作動表面との間に軸方向の間隙が形成される。
【0059】
電子回路465は、プロセッサ手段と、一つ以上のセンサーと、一つ以上のスイッチと、無線送信機/受信機手段と、エネルギー源と含む電子構成要素を備える。センサーは、ペン式トレーサー磁石160Mによって生成される磁場を測定するように適合された一つ以上の磁気計を備え、これは、ペン式リセットチューブの回転移動、それ故に排出された用量のサイズを決定することが可能になる(例えば、国際特許公開公報第2014/161952号を参照)。装置のタイプを認識することが可能になるさらなるセンサー手段(例えば、発光体およびペン式解放部材の色を決定するように適合された色センサー)が提供され、色は、予め充填されたペン式装置内に含有される薬剤タイプの識別子として機能する。識別子センサーの動作を、下記でより詳細に説明する。プロセッサ手段は、一般的なマイクロプロセッサまたはASIC、埋め込まれたプログラムコードのための記憶装置を提供するROMなどの不揮発性プログラムメモリ、データのためのフラッシュメモリおよび/またはRAMなどの書き込み可能メモリ、ならびに送信機/受信機用のコントローラの形態であってもよい。
【0060】
図5に示すペン式薬剤送達装置100上に設置されたアドオン装置400とともに使用する状況では、ユーザーは、ハウジング部材411(すなわち、アドオン用量設定部材)およびそれとともに用量解放部材490も回転させることによって望ましい用量の設定を開始する。用量設定中に、用量解放部材はその初期近位位置に向かって付勢され、それによって、係止スプライン486、496を介して内側組立品480に回転方向に係止され、これはアドオン用量設定部材の回転移動を内側ハウジング461へと、それ故にペン式用量設定部材180へと伝達することを可能にする。
【0061】
用量が設定されると、ユーザーは、第一の付勢ばね418の力に逆らって用量解放部材を遠位に移動することによって、用量解放部材490を作動させる。初期解放移動中に、係止スプライン486、496は係脱され、これは内側組立品480が用量解放部材から、それ故に、アドオン用量設定ハウジング部材411から回転方向に連結を外される。さらなる解放移動中に、用量解放部材490は作動ロッド近位端463と係合し、それによってさらなる解放移動中に、センサーモジュール460はペン式用量解放部材190に向かって遠位に移動し、その後ペン式解放部材と接触する。作動ロッド462およびアドオン用量解放部材490の係合表面は、回転移動の最小限の伝達のために最適化される。最後に、アドオン解放部材490のさらなる遠位移動がペン式解放部材190の作動をもたらし、これによって設定用量が排出され、これによってセンサーモジュール460はアクチュエータとして機能する。
【0062】
排出された用量サイズを決定するために、トレーサー磁石160M、それ故にリセットチューブ160の回転の量が決定される。より具体的には、センサーモジュールの初期移動はセンサースイッチ(図示せず)を起動し、これは次にセンサー電子機器465を起動し、そして磁気計からのデータのサンプリングを開始させ、これは排出機構の解放前にトレーサー磁石160Mの回転方向の開始位置を決定することを可能にする。リセットチューブは、薬剤の用量の排出中に360度を超えて回転する場合があるので、排出中の回転移動が検出され、完全な回転数(ある場合)が決定される。リセットチューブの回転が停止したことが検出されたとき、例えば、設定用量を完全に排出されたとき、またはユーザーによって外部投薬が一時停止されたとき、回転終了位置が決定され、これは排出された用量のサイズを決定することを可能にする。別の方法として、回転終了位置は、センサーモジュール460がその初期位置に戻ったことをセンサースイッチが検出したときに決定されてもよい。
【0063】
示されるように、薬剤排出中に外側組立品480から内側組立品460の回転方向で連結が外れることに起因して、アドオン装置の外側部品の移動がリセットチューブ160の回転移動および回転位置の正確な決定に悪影響を与えることが高度に防止される。
【0064】
決定された用量サイズは、タイムスタンプおよび薬剤タイプ識別子(検出された場合)と共にログメモリに保存される。次いで、ログメモリの内容は、NFC、Bluetooth(登録商標)またはその他の無線手段によって、アドオンロギング装置とペアリングされた外部装置(例えば、スマートフォン)に送信されてもよい。好適なペアリングプロセスの一例は、欧州特許出願第17178059.6号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
図6を参照すると、ペン型の薬剤送達装置600上に設置するように適合されたアドオン用量ロギング装置700の第二の例示的な実施形態をより詳細に説明する。薬剤送達装置は、
図1~
図3を参照しながら説明した薬剤送達装置に本質的に対応し、それ故にハウジング601と、ユーザーが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材680と、近位用量設定位置と遠位用量放出位置との間で作動可能な解放部材690と、スケールドラム670と、リセットチューブ660とを備える。アドオンロギング装置700と協働するために、薬剤送達装置は、リセットチューブ近位端に取り付けられているかまたはリセットチューブ近位端と一体的に形成された概してリング形態の磁石660Mを備えるように修正されており、磁石は投与量の排出中に回転するインジケータとして機能し、回転移動の量は排出された投与量のサイズを表す。さらに、ハウジング近位部分602には、用量設定部材のすぐ遠位に多数の突起601Pが提供され、アドオン装置のための連結手段として機能する。示された実施形態では、三つの連結突出部がハウジング上に等距離で位置する。
【0066】
アドオン装置700は、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付け可能な外側組立品710だけでなく、内側組立品も備える(下記参照)。外側組立品710は、アドオン装置の一般軸を画定する概して円筒状の遠位連結部分719(
図4Aの実施形態にあるように)を備え、連結部分は、薬剤送達ペンの対応する概して円筒状の連結部分を受容するように適合された概して円筒状の穴702を有し、ペン式ハウジング上の対応する連結突起601Pと係合し、かつ係合へと取り外し可能にスナップ留めされるように適合された多数のバヨネット連結構造715によって、薬剤送達ハウジング上で軸方向および回転方向に係止されて設置されるように適合されている。アドオン装置は、連結部分上で自由に回転可能に設置された近位用量設定部材711をさらに備え、これは
図5の実施形態にあるように、アドオン用量設定部材711の回転移動がいずれの方向でもペン式用量設定部材に伝達されるように、ペン式用量設定部材680に連結される。アドオン装置は、用量設定中に用量設定部材と共に回転する用量解放部材790をさらに備える。用量設定部材上の内円周フランジ712上に支持された第一の付勢ばね718は、用量解放部材上に近位に方向付けられた付勢力を提供する。
図5の実施形態にあるように、内側組立品および外側組立品は、用量設定中に相互に回転方向に係止されているが、用量排出中は相互に回転方向に連結を外される。
【0067】
内側組立品780は、概して、
図5の実施形態の内側組立品480に対応し、それ故に概して、同一の機能を提供する同じ構造を備える。これに応じて、内側組立品は(
図7Aを参照)、内側ハウジング781およびその中に配設された軸方向に移動可能なセンサーモジュール760を備える。内側ハウジングは、中空の伝達チューブ構造783がそこから近位に延びる近位壁部分782と、第二の付勢ばね768のための支持として機能する遠位内円周フランジ部分784と、ペン式用量設定部材の駆動溝682(
図6を参照)に係合するように適合された遠位に延びる周囲のスカート部分787とを備え、これによって二つの部材は相互に回転方向に係止し、係合はアドオン装置の設置および動作中にいくらかの軸方向の遊びを可能にする。示される実施形態では、用量設定部材の駆動溝682を係合する構造は、可撓性の指751の形態であり、以下でより詳細に説明するように設置を容易にすることができる。指は、示されるように、例えば、金属板部材の一部として形成された、スカート部分787に設置されてもよく、またはスカート部分と一体的に形成されてもよい。中空チューブ783は、近位端に、用量解放部材790の円周内側フランジ795と係合するように適合された遠位に面する停止表面を有する多数のフランジ部分788だけでなく、用量解放部材790上の係止スプライン796と係合し、これによって内側組立品を用量解放部材に、それ故に外側組立品に回転方向で係止するように適合された、軸方向に配向された多数のスプラインも備える。
【0068】
センサーモジュール760は、センサー部分および近位に延びる作動ロッド部分762を備える。センサー部分は、概して円筒状のセンサーハウジング761を備え、その中に電子回路765(下記参照)が配設される。センサーハウジングは、磁石センサーを覆い、かつペン式作動部材690と係合するように適合された遠位スペーサーキャップ764を備える。初期用量設定モード(すなわち、用量解放部材790が初期近位位置にある)では、センサーハウジングは、内側ハウジング近位壁部分782と係合するように第二の付勢ばね768によって近位に付勢され、作動ロッド762は、伝達チューブ783から用量解放部材790の内部へと延び、作動ロッドの近位端763と用量解放部材の内側作動表面との間に軸方向の間隙が形成される。
【0069】
電子回路765は、プロセッサ手段、センサー、起動スイッチ(例えば、作動ロッド部分762上に加えられる軸方向力によって作動するドームスイッチ)、無線送信機/受信機手段およびエネルギー源を含む電子構成要素を備える。より具体的には、示された実施形態では、電子回路765は、遠位端から、その上に多数のセンサー構成要素(例えば、磁気計766M)が配設された第一のPCB 766A、一対のコイン電池766E(
図8A参照)のための一対の電池コネクターディスク766B、その上に電子構成要素の大部分が設置されている(例えば、プロセッサ、送信機/受信機およびメモリ)第二のPCB 766C、および作動ロッド部分762がPCBに設置された起動スイッチ766Sに接触して作動させることを可能にするスロットを有する上方ディスク766Dを備える、層状構造を備え、5つの部材は可撓性のリボンコネクターによって相互接続されている。
【0070】
センサーは、ペン式磁石660Mによって生成される磁場を測定するように適合された多数の磁気計を備え、これは、ペン式リセットチューブの回転移動を可能にし、それ故に排出された用量のサイズが決定される(例えば、国際特許公開公報第2014/0161952号を参照)。装置のタイプを認識することができるさらなるセンサー手段(例えば、発光体およびペン式解放部材の色を決定するように適合された色センサー)が提供され、色は、予め充填されたペン式装置に含有される薬剤タイプの識別子として機能する。色センサーおよび発光体は、(ヒトの目に対する)可視光または可視スペクトルの完全に外または部分的に外の光で動作してもよい。タイプ識別子センサーの動作を、下記でより詳細に説明する。プロセッサ手段は、一般的なマイクロプロセッサまたはASIC、埋め込まれたプログラムコードのための記憶装置を提供するROMなどの不揮発性プログラムメモリ、データのためのフラッシュメモリおよび/またはRAMなどの書き込み可能メモリ、ならびに送信機/受信機用のコントローラの形態であってもよい。
【0071】
ペン式薬剤送達装置600上に設置されたアドオン装置700と使用する状況では、ユーザーは、用量設定部材711(すなわち、アドオン用量設定部材)およびそれと共に用量解放部材790も回転させることによって望ましい用量の設定を開始する。用量設定中に、用量解放部材はその初期近位位置に向かって付勢され、それによって、係止スプライン786、796を介して内側組立品780に回転方向に係止され、これはアドオン用量設定部材の回転移動を内側ハウジング761へと、それ故にペン式用量設定部材680へと伝達することを可能にする。
【0072】
用量が設定されると、ユーザーは、第一の付勢ばね718の力に逆らって用量解放部材を遠位に移動することによって、用量解放部材790を作動させる。初期解放移動中に、係止スプライン786、796は係脱され、これは電子機器を有する内側組立品780を用量解放部材790から、それ故にアドオン用量設定部材711から回転方向の連結を外される。さらなる解放移動の間、用量解放部材790は、作動ロッド近位端763と係合し(
図8Aを参照)、それによってさらなる解放移動中にセンサーモジュール760がペン式解放部材690に向かって遠位に移動し、その後ペン式解放部材と接触する(
図8B参照)。作動ロッド762およびアドオン用量解放部材790の係合表面は、回転移動の最小限の伝達のために最適化されている。最後に、アドオン解放部材790のさらなる遠位の移動がペン式解放部材690の作動をもたらし(
図8C参照、ここではリセットチューブ外側歯661が遠位に移動されている)、これによって設定用量が排出され(
図8D参照)、これによってセンサーモジュール760はアクチュエータとして機能する。
【0073】
排出された用量サイズを決定するために、磁石660M、それ故にリセットチューブ660の回転の量が決定される。より具体的には、センサーモジュールの初期移動はセンサースイッチを起動し、これは次にセンサー電子機器765を起動し、そして磁気計からのデータのサンプリングを開始させ、これは排出機構の解放前に磁石660Mの回転方向の開始位置を決定することを可能にする。リセットチューブ660は、薬剤の用量の排出中に360度を超えて回転する場合があるので、排出中の回転移動が検出され、完全な回転数(ある場合)が決定される。リセットチューブの回転が停止したことが検出されたとき、例えば、設定用量を完全に排出されたとき、またはユーザーによって外部投薬が一時停止されたとき、回転終了位置が決定され、これは排出された用量のサイズを決定することを可能にする。別の方法として、回転終了位置は、センサーモジュール760がその初期位置に戻ったことはセンサースイッチが検出したときに決定されてもよい。
【0074】
示されるように、薬剤排出中に外側組立品780から内側組立品760の回転方向で連結が外れることに起因して、アドオン装置の外側部品の移動がリセットチューブ660の回転移動および回転位置の正確な決定に悪影響を与えることが高度に防止される。
【0075】
図9を参照すると、ペン型の薬剤送達装置800上に設置するように適合されたアドオン用量ロギング装置900の第三の例示的な実施形態をより詳細に説明する。わずかに修正された薬剤送達ペン式装置800を、
図10Aおよび
図10Bを参照しながら説明する。
【0076】
アドオン用量ロギング装置900は、
図6~
図8を参照しながら説明したアドオン用量ロギング装置600に本質的に対応し、それ故に、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付け可能な外側組立品、センサーモジュールを有する内側組立品だけでなく、解放部材組立品も備える。上述の実施形態とは対照的に、
図9の分解組立図は、組立品が形成される個別の構成要素を示す。
【0077】
外側組立品は、遠位ハウジング連結部分901と、そこに取り付け可能な近位ハウジング部分919と、近位ハウジング部分上に自由に回転可能に取り付けられるように適合されたアドオン用量設定部材911と、用量設定部材に設置されて解放部材組立品を封入するように適合された係止リング916とによって形成されている。係止組立品は、解放スライダー908、捕捉部材905、付勢ばね906だけでなく、スライダーのための一対の戻りコイルばね909を備え、係止組立品構成要素はハウジング連結部分901内に設置されるように適合されている。
【0078】
より具体的には、遠位ハウジング連結部分901は、薬剤送達ペン式装置の対応する円筒状連結部分を滑り嵌めで受容するように適合された円筒状の穴902を備える(下記参照)。穴には、アドオン装置がペン式装置上に軸方向に取り付けられたときに、ペン式ハウジング係止突起805を受容するように適合された、遠位に面しかつ軸方向に配向された溝が、提供されている。遠位ハウジング連結部分の近位部分は、より大きい直径へと外向きにテーパー状であり、かつ各々が近位に面する端面を有する複数の長軸方向のリブ907を備え、端面は内側組立品のための遠位停止部として機能する。連結部分901は、取り付けられたときにペン式装置表示ウィンドウを覆うように適合されており、それ故に表示ウィンドウを観察することを可能にし、それ故にスケールドラムを観察することを可能にするウィンドウ開口部904を備える。ウィンドウ開口部の反対側には、係止組立品構成要素を受容するように適合された第二の開口部903が提供されている。捕捉部材905は、第二の開口部内に旋回可能に設置され、かつ付勢ばね906によって内向きに付勢され、これはアドオン装置がペン式装置上に軸方向に設置されたときに、捕捉部材がペン式ハウジング係止突起805の遠位の定位置にスナップ止めできるようにする。係止手段はウィンドウ開口部904の反対側に配設されているので、ユーザーが設置中にアドオン装置を簡単に回転方向に配向することができるように確実にする。解放スライダー908は、第二の開口部内に摺動可能に設置され、戻りばね909によって遠位方向に付勢される。ユーザーが解放スライダーを近位に動かすと、これは捕捉部材905を持ち上げてハウジング係止突起805との係合が外れ、アドオン装置を近位方向に移動できるようにし、それ故にペン式装置から取り外すことが可能になる。近位ハウジング部分919は、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によって連結部分901に固定的に取り付けられ、また用量設定部材911をスナップ作用によって自由に回転可能に設置することを可能にする円周の隆起部917を備える。用量設定部材は、組み立てられた状態では、内側組立品の近位停止部および解放部材戻りばね918の遠位停止部として機能する円周の内側フランジ912だけでなく、解放部材組立品のための多数のガイドトラック913を形成する多数の軸方向に延びる内側フランジとを備える。係止リング916は、示されるように例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によって用量設定部材に軸方向に固定されて設置され、これによって用量設定部材911とキャップ部材998との間の間隙をシールするように適合される。
【0079】
内側組立品は、概して円筒状の内側ハウジング部材981と、内側ハウジング部材上に設置されるように適合された円筒状の係止部材950と、内側ハウジング部材に取り付けられてそこに設置されたセンサーモジュールを封入するように適合された近位壁または蓋部材982とを備える。壁部材は、近位フランジ部材988を受容するように適合された近位に延びるチューブ部分983を備える。
【0080】
より具体的には、内側ハウジング部材981は、多数の開口部989を有するより大きい直径の遠位スカート部分987と、センサーモジュールのための多数のガイドトラックを形成する多数の軸方向に延びる壁セクション985を有するより小さい直径の近位部分とを備える。二つの部分間の移行部は、センサーばね968のための外円周遠位サポート984を形成する(下記参照)。示された実施形態では、円筒状の係止部材950は金属板の単一片から形成され、その中に、半径方向に内向きに延びる近位自由端部分を各々が有する、第一の複数の軸方向に延びる可撓性のダイヤル係止アーム951、および半径方向に内向きに延びる近位自由端部分を各々が有する、第二の複数の軸方向に延びる可撓性の設置アーム955が形成される。設置アームは、係止部材が内側ハウジング部材981上に設置されたときに、対応する設置開口部989との係合へとスナップ留めされるように機能し、これは二つの部材を軸方向および回転方向に係止する。ダイヤル係止アーム951の遠位端は、内向きに丸みが付けられ、かつペン式用量設定部材の駆動溝882と係合するように適合されている(下記参照)。近位壁部材982は、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によって内側ハウジングフランジに固定的に取り付けられるように適合され、そして組み立てられた状態でセンサーモジュールのための近位停止部として機能する。近位方向に延びるチューブ部分983は、近位端において、組み立てられた状態で解放部材上の対応するスプラインと係合するように適合された複数の軸方向に向けられた係止スプライン986を各々が備える、一対の対向する半径方向の延長部を備える。近位フランジ部材988は、示されるように、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によってチューブ部分983に固定的に取り付けられるように適合される。フランジ部材は、作動ロッド962のより大きな直径の遠位端より小さい直径を有する中央の穴を備え(下記参照)、これは、作動ロッドのための近位停止部を提供する。
【0081】
センサーモジュール960は、遠位に面するセンサー構成要素(例えば磁気計966Mおよび光学センサー要素966O)を有する電子回路965が設置された概して円筒状のセンサーハウジング961と、センサーモジュールハウジングの遠位端上に設置されて、センサー構成要素を覆いかつ封入するように適合されたスペーサーキャップ964と、壁部材チューブ部分983内に配設されるように適合された作動ロッド962とを備える。センサーモジュールの戻りばね968は、内側ハウジング部材981とセンサーハウジング961との間に配設されて、センサーモジュールに近位に方向付けられた付勢力を提供するように適合される。
【0082】
より具体的には、スペーサーキャップ964は、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によってセンサーハウジングに固定的に取り付けられるように適合されており、組み立てられた状態ではセンサー構成要素を保護し、かつペン式装置解放部材890と係合するように適合された遠位に面する接触面として機能する(
図13Aを参照)。センサーハウジングは、内側ハウジング部材ガイドトラック内に、回転可能ではないが軸方向に自由に受容されるように適合された、多数の半径方向に突出する遠位および近位ガイドフランジ967を備える。遠位ガイドフランジはまた、センサーばね968のための近位停止表面を提供する。センサーモジュールのための遠位停止部は、ガイドトラックの遠位端および/または圧縮されたセンサーばねに対応する内側ハウジングによって提供される。作動ロッド962は、ロッドがチューブ部分983内に自由に受容されるのを可能にするより大きい直径の遠位部分と、フランジ部材988の穴を通して突出するように適合されたより小さい直径の近位部分とを備える。作動ロッドは、丸みを付けられた近位端963を備え、作動ロッドおよびキャップ部材998の係合表面は回転移動の最小限の伝達のために最適化される。センサーモジュールは、作動ロッドによって作動されるように適合された、近位に面する中央に配設された作動スイッチ966(例えば、ドームスイッチ)を備える。
【0083】
解放部材組立品は、本体部材990およびその上に設置可能なキャップ部材998を備える。解放部材の戻りばね918は、用量設定部材フランジ912と解放本体部材990との間に配設されて、解放本体部材上に近位に方向付けられた付勢力を提供するように適合される。
【0084】
より具体的には、解放本体部材990は、組み立てられた状態でチューブ部分983上の係止スプライン986と係合するように適合された軸方向に向けられたスプライン996の内円周方向アレイを有する遠位リング部分994だけでなく、用量設定部材ガイドトラック913内に回転可能ではないが軸方向に自由に受容されるように適合された多数の半径方向に突出するガイドフランジ993も備える。キャップ部材988は、示されるように、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段995によって本体部材に軸方向に固定的に取り付けられるように適合される。組み立てられた状態で、フランジ部材988は、解放本体部材990のための近位停止部として機能し、かつ解放部材の戻りばね918はリング部分遠位表面上に作用する。
【0085】
図10Aおよび
図10Bに目を移すと、わずかに修正されたペン式薬剤送達装置800の近位部分が、アドオン装置とペン式用量設定部材との間に回転方向の係合を提供するアドオン装置の内側組立品の部品と組み合わせて示されている。
【0086】
より具体的には、ペン式ハウジング801は概して
図6の実施形態に対応するが、しかしわずかにテーパー状のハウジングの代わりに、ウィンドウ809を含むハウジングの近位連結部分802は、アドオン装置の円筒状の穴の中に受容されるように適合された「真の」円筒状の形態を有する。別の方法として、両方の構造は軽いテーパーを有してもよい。さらに、連結手段は、軸方向の簡単な設置のために、捕捉部材905と協働するように適合された単一の係止突起805の形態である。また、概して円筒状の外表面881を有し(すなわち、用量設定部材はわずかにテーパー状であってもよい)、示された実施形態では、外表面が、用量設定中の指のつかみを改善するために、複数の軸方向に向けられた微細溝を備えることによって質感が与えられている用量設定部材880だけでなく、
図6の実施形態に対応する多数の軸方向に向けられた駆動溝882も示される。
【0087】
図9Aおよび
図9Bを参照しながら上述したように、内側組立品は、多数の開口部989を有する遠位スカート部分987を有するハウジング部材981だけでなく、その上に設置された円筒状の係止部材950も備え、係止部材は多数の可撓性のダイヤル係止アーム951および多数の可撓性の設置アームを備える(後者は
図10Aおよび
図10Bには示されていない)。
【0088】
図10Aでは、内側ハウジング981は、その軸方向に設置された位置で示されている(アドオン装置の図示されていない部分によって決定されるように)。外側アドオンハウジング901が回転方向で所定の位置に設置されている一方で、設置されていない状態で外側ハウジングに対して自由に回転できる内側ハウジング組立品の場合はそうではなく、これは、内側ハウジング、それ故に係止アーム951が用量設定部材の駆動溝882と回転方向に位置合わせされていないように、「無作為な」回転位置に取り付けられているものと仮定する。さらに、用量設定部材880は、用量が設定されていないことに対応する初期の「駐車している」回転「ゼロ」位置を有するが、ランダム位置に設定されていてもよい。さらに、ゼロ位置に駐車している場合でも、用量設定機構のゆるみが、用量設定部材の駆動溝の回転位置のわずかな変動をもたらす場合がある。
【0089】
それ故に、アドオン装置がペン式装置上に設置されたとき、可撓性のダイヤル係止アーム951は、用量設定部材の駆動溝882と回転方向に位置合わせされていない場合がある。しかしながら、ダイヤル係止アームは可撓性であることに起因して、用量設定部材によってこれらは外向きに移動され、かつ
図10Aに示すように、駆動溝と平行に用量設定部材の外周上で軸方向にスライドする。可撓性の係止アームによって提供される抵抗は小さいので、ユーザーはほとんどの場合、アドオン装置の設置中に何が起こったかに気付かず、アドオン装置がまだペン式装置の用量設定部材と回転方向に係合していないという事実に気付かないであろう。示された実施形態では、係止アーム951の自由端は近位側に向けられているが、しかし別の方法として、それらは遠位に配向されてもよく、係止アームの自由端およびペン式装置の用量設定部材880の近位縁は、アドオン装置の設置中に係止アームを外向きに移動させるように構成されてもよい。
【0090】
その後、ユーザーが用量を設定することを希望する場合、ユーザーは、アドオン装置用量設定部材911を回転し始め、これによって内側ハウジングが係止アーム951とともに回転して次に用量設定部材の駆動溝882と位置合わせされ、それ故に
図10Bに示すように、内向きに曲がって駆動溝と回転方向に係合することができる。係止アームが駆動溝と簡単に係合することを確実にするために、それらは駆動溝よりもわずかに狭く形成される。アドオン装置の用量設定部材911のさらなる移動は、次にペン式装置の用量設定部材をこれに応じて回転させ、これはユーザーが通常どおり用量を設定および調整することを可能にする。実際、多くの事例では、係止アームは駆動溝の中へと直接移動される。
【0091】
係止アーム951の数および機械的特性は、アドオン装置の安全かつ堅牢な動作を可能にするように寸法形成されるべきである。これを確実にするため、組み合わせ組立品、すなわちペン式装置およびアドオン装置は、ユーザーがゼロを下回る、または最大設定可能投与量を上回るようにダイヤルしようとした場合に備えて、オーバートルク機構を備えてもよい。アドオン装置については、内側ハウジング組立品とアドオン用量設定部材との間のスプライン係合にオーバートルク機構を組み込んでもよいが、しかしほとんどの場合、アドオン装置のためのこうした機構は、ペン式装置には一般的にはオーバートルク保護機構(例えば、FlexTouch(登録商標)薬剤送達ペンで知られているように)が提供されるので、省くことができる。実際、係止アーム951および用量設定部材の駆動溝882は、ペン式装置オーバートルク機構に対する制限を上回るトルクに耐えるように設計および寸法設定されるべきである。
【0092】
図11Aおよび
図11Bは、係止アーム951がそれぞれ、ペン式装置の用量設定部材880の外円周と係合したとき、ペン式装置の用量設定部材の駆動溝882と係合したときを断面図で示す。
【0093】
図12Aおよび
図12Bを参照すると、
図9Aの構成要素が、初期の非設置および非作動状態に対応する組み立てられた状態で示されている。
【0094】
より具体的には、
図12Aは、内側組立品の内側に配設され、かつ内側ハウジングばねサポート984とセンサーハウジングの遠位ガイドフランジ967との間に作用するセンサーばね968によってその最も近位の位置に向かって付勢されているセンサーモジュール960を示す。ダイヤル係止アーム951は、内側ハウジングスカート部分987の内部へと突出しているのが分かる。解放本体部材990は、用量設定部材の内側フランジ912と解放本体部材のリング部分994との間に作用する解放部材の戻りばね918によって、その最も近位の位置に向かって付勢される。作動ロッド962は、内側ハウジングチューブ部分983の内側に配設され、フランジ部材988によって軸方向に定位置に保持され、軸方向のギャップが作動ロッド近位端963とキャップ部材998の遠位表面との間に形成される。内側ハウジングおよび解放部材組立品は、チューブ部分983と解放本体部材990との間のスプライン係合を介して相互に回転方向に係止される(
図12Aではわからない)。
【0095】
図13A~
図13Fを参照して、ペン型の薬剤送達装置800と組み合わせたアドオン用量ロギング装置900の第三の例示的な実施形態の異なる動作状態を説明する。示されるペン式装置は、Novo Nordisk A/S社製のFlexTouch(登録商標)の予め充填された薬剤送達装置の形態である。
【0096】
図13Aは、ペン型の薬剤送達装置800上に設置される前のアドオン用量ロギング装置900を示す。上述のように、薬剤送達装置は、アドオン装置の円筒状の穴に受容されるように適合された「真の」円筒状形態を有する近位連結部分802と、ウィンドウ809と、アドオン装置の捕捉部材905と協働するように適合された係止突起805と、軸方向に向けられた多数の駆動溝882を持つ概して円筒状の外表面881を有する用量設定部材880と、近位に配設された解放部材890とを備える。アドオン装置900は、ペン式装置の円筒状連結部分802を受容するように適合された円筒状の穴902と、係止突起805と係合するように適合された捕捉部材905と、ペン式装置のウィンドウ809と位置合わせして設置されるように配設されたウィンドウ開口部904と、用量設定部材911と、用量解放部材998とを備える。穴902の中へとダイヤル係止アーム951が突出しているのがわかる。
図12Aに対応して、アドオン装置は、その初期の非設置かつ非作動状態にある。
【0097】
図13Bでは、アドオン装置900はペン式装置800上に設置されており、捕捉部材905は、係止突起805の遠位側に位置し、また二つの窓904、809は整列している。
図10Aに示す状況に対応して、ダイヤル係止アーム951はまだ駆動溝882と係合していない。
【0098】
図13Cでは、アドオン用量設定部材911、およびこれによって内側組立品が回転されており、ダイヤル係止アーム951は駆動溝882と係合しており、用量が設定されている。
【0099】
図13Dでは、アドオン用量解放部材998が部分的に作動して、作動ロッドの丸みをつけた近位端963と係合し、この状態では、解放本体部材990上の軸方向に配向されたスプライン996の内円周方向アレイは、チューブ部分983上の係止スプライン986と係脱されており、これは用量設定部材911を内側組立品から、それ故にセンサーモジュール960から回転方向に連結を外す。アドオン用量解放部材998のさらなる遠位移動は、作動ロッド962を遠位に移動し始め、これによって当初は、近位に面する中央に配設された作動スイッチ966(
図9参照)が作動ロッドによって作動し、これによりセンサーモジュールはその動作状態へと変化する。
【0100】
図13Eでは、アドオン用量解放部材998がさらに作動されて、センサーモジュールのスペーサーキャップ964を移動させてペン式装置の解放部材890と係合する。
【0101】
図13Fでは、アドオン用量解放部材998は完全に作動されており、またセンサーモジュールおよびこれによってペン式装置の解放部材890は最も遠位の動作位置へと移動しており、これが排出機構を解放し、それによって薬剤充填済みカートリッジ上に設置された中空針を通して設定用量の薬剤が排出される。
図8A~
図8Dを参照しながら上述したように、排出された用量のサイズの決定が行われてもよい。設定用量が排出されると、ユーザーはアドオン用量解放部材998に対する圧力を解放してもよく、戻りばね968、918によって構成要素はそれらの初期の軸方向位置に戻る。
【0102】
図5、
図7A、および
図12Aのアドオン用量ロギング装置の機械的概念および作動原理について説明してきたが、相互に対する2センサーシステムの動作を説明する。
【0103】
より具体的には、記載された特定の実施形態は、インジケータ要素、タイプ識別子、およびセンサー組立品を備える組立品を表し、インジケータ要素は、基準構成要素に対して、かつ基準軸に対応して回転するように配設される。センサー組立品は、インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出するように適合された第一のセンサーと、タイプ識別子を検出するように適合された第二のセンサーと、エネルギー源と、オフ状態と動作サイクルが開始されるオン状態との間で作動可能なスイッチと、を備える。動作サイクルでは、第一のセンサーは、インジケータ要素によって実行される回転移動の量を検出するように動作し、また第二のセンサーは、タイプ識別子を検出するように動作される。電力消費量を分散し、ピーク電流の流れをより良好に管理し、かつ二つのセンサーの安定した動作を確実にするために、動作サイクル中に第一のセンサーおよび第二のセンサーは逐次的に動作し、これは、インジケータ要素によって実行される回転移動の量、および対応するタイプ識別子に関する情報を含むデータセットを捕捉することを可能にする。例えば、第二のセンサーは、第一のセンサーがインジケータ要素によって実行される回転移動の量を検出したときに動作してもよく、または第二のセンサーは、スイッチがオン状態からオフ状態へと作動されたときに動作してもよい。動作はまた、条件付きであってもよく、例えば、第二のセンサーは、第一のセンサーが回転移動の量を検出したときにのみ動作してもよい。薬剤送達組立品については、データセットは、所与の薬剤の排出された量、所与の薬剤を表すタイプ識別子を表すことが可能である。
【0104】
上述の実施形態に対応して、センサー組立品は、スイッチがオフ状態にある初期位置と、スイッチがオン状態にある作動位置との間で、基準構成要素に対して移動可能であってもよく、第一のセンサーは、センサー組立品が初期位置から作動位置へと移動され、かつスイッチがオフ状態からオン状態へと作動されたとき、インジケータ要素の回転位置および/または回転移動を検出するようには配設される。第一のセンサーが、インジケータ要素によって実行された回転移動の量を検出するように動作した後、所定の長さの時間内に第二のセンサーはタイプ識別子を検出するように設定されてもよい。別の方法として、第二のセンサーは、センサー組立品がその初期位置へと移動し、かつスイッチがオン状態からオフ状態へと作動した後、所定の長さの時間内にタイプ識別子を検出するように設定されてもよい。後者の場合、第二のセンサーは非移動状態で動作することが保証されることになる。また、上述の実施形態に対応すると、インジケータ要素は、第一のセンサーが磁石センサーを備える磁石を備えてもよい。タイプ識別子は、視覚的識別子であってもよく、第二のセンサーは光学センサーである。第一のセンサーは、スイッチがオフ状態からオン状態へと作動されたときに動作されてもよく、かつスイッチがオン状態からオフ状態へと作動されたときに少なくとも部分的に停止されてもよい。
【0105】
上述の実施形態により具体的に対応すると、組立品は、薬剤送達装置および薬剤送達装置の上に取り外し可能に設置されるように適合されたアドオン装置を備える。薬剤送達装置は、基準構成要素を形成するハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容する手段と、ユーザーが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材を備える薬剤排出手段と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な第一の解放部材であって、近位位置は投与量の設定を可能にし、遠位位置は薬剤排出手段が設定用量の排出を可能にする、第一の解放部材と、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これによって薬剤貯蔵部からのある量の薬剤の排出を駆動する駆動ばねと、インジケータ要素と、を備える。インジケータ要素は、投与量の排出中に移動するように適合され、移動量は、排出された投与量のサイズを表す。アドオン装置は、センサー組立品を備え、インジケータ要素の決定された回転移動は、排出された投与量に対応する。アドオン装置は、第一の解放部材を作動させるために軸方向に移動可能な第二の解放部材をさらに備え、センサー組立品は、第二の解放部材と連結され、かつこれと共に初期位置と作動位置との間で軸方向に移動する。タイプ識別子は、第一の解放部材の色であり、第二のセンサーは、色を検出するように適合されている。
【0106】
代替的な実施形態では、上述の逐次的なセンサー動作の概念を、他のプラットフォーム上で実装することが可能である。例えば、アドオン装置には、薬剤送達装置のスケールドラム上の数字を、数字がハウジング内のウィンドウ開口部を通る際に観察するように配設されたカメラが提供されてもよく、排出された用量のサイズはOCRを使用して決定される。識別子センサーは、アドオン装置が配設されるハウジングの一部分の色を検出するように配設される。装置をオンにし、かつデータ収集サイクルを実行できるようにするスイッチは、ユーザーによって動作されるボタンによって作動されてもよい。こうした装置の実施例は、例えば、米国特許出願公開第2016/0082192号に説明され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
代替的な実装形態では、アドオン装置には、薬剤送達装置のスケールドラム上の数字を、数字がハウジング内のウィンドウ開口部を通る際に観察するように配設されたカメラが提供され、排出された用量のサイズは、例えば、テンプレートマッチング、またはOCRを使用して決定される。上述の特定のプラットフォームの実施形態に対応して、アドオン装置は、薬剤送達装置上の第一の解放部材を作動させるための軸方向に移動可能な外側の第二の解放部材を備える。アドオン装置は、薬剤送達ペン式装置の第一の用量設定部材と係合し、かつ後者を回転させて排出される薬剤の用量を設定するように適合された外側の第二の用量設定部材をさらに備える。スイッチは、第二の用量設定部材に動作可能に連結され、これは、ユーザーが排出される用量の設定を開始すると、アドオン装置を自動的にオンにすることを可能にする。こうした装置の実施例は、例えば、米国特許出願公開第2017/148857号に説明され、これは参照により本明細書に組み込まれる。こうしたアドオン装置では、識別子センサーは、アドオン装置の本体内に配設されてもよく、かつ米国特許公開第2016/0082192号に開示されるように、ペン式装置本体上に配設されたタイプ識別子を検出するように適合されてもよい。別の方法として、識別子は、第二の解放部材に連結され、かつ第二の解放部材と共に初期位置と作動位置との間で軸方向に移動されてもよい。タイプ識別子は、薬剤送達装置の解放部材の色であってもよく、第二のセンサーは、色を検出するように適合されている。
【0108】
図5、
図7A、および
図12Aのアドオン用量ロギング装置の機械的概念および作動原理について説明してきたので、センサーおよびトレーサーシステムそれ自体をより詳細に説明する。基本的に、センサーおよびトレーサーシステムは移動する磁気トレーサー構成要素と、一つまたは磁気計(例えば3Dコンパスセンサー)を備えるセンサーシステムとを備える。
【0109】
例示的な実施形態では、磁気トレーサー構成要素は、四つの極を有する多重極磁石(すなわち、四重極磁石)の形態である。
図14では、四つの双極子標準磁石661は、リング型のトレーサー構成要素660M内に等距離で配設され、四つの別個の双極子磁石は、90度ごとの四重極オフセットを有する組み合わされた四重極磁石を提供する。実際に、双極子磁石の各々は、同じ方向に向けられた非常に多くの個々の磁性粒子によって形成される。個々の磁石は、同じ平面内に配設されてもよく、または相互に軸方向にオフセットされていてもよい。
【0110】
別の方法として、多重極磁石660Mは、
図15Aに示すように、個々の強力な磁石の使用、または
図15Bに示すように、電磁場の使用を通していずれかによって磁化可能な材料を磁化することによって作り出すことができる。
【0111】
所与のセンサーシステムは、
図16に図示されるようにトレーサー構成要素660Mに対して配設された、例えば4、5、6、または8個の磁気計766Mを使用してもよい。センサーは、例えば、
図7Bに示すように同一の平面内に配設されてもよく、または相互に軸方向にオフセットされてもよい。センサーがより多く、センサー間の間隔がより小さいと、それ故により良好な信号対雑音比を有するより多くのデータを収集することができる。しかしながら、センサーがより多いと、より多くのデータ処理が必要となり、そしてより多くの電力が消費される。
【0112】
一部の事例では、取り扱いが必要なのは外部場からの妨害だけではない。上述のような使い捨て装置内の用量排出モーターを駆動するためのトルク提供ばねは、外部磁場を受けたときに磁化される場合があり、それ故に内部妨害磁場をもたらす。
【0113】
外部妨害はすべてのセンサーに多かれ少なかれ等しくかつ同じ方向で影響するので、外部妨害が信号処理アルゴリズムによって大幅に相殺されうる場合、磁化されたトルクばねは、トレーサー磁石と同じようにセンサーに影響を与え、したがって測定値をオフセットし、誤差を発生させる可能性がより高い。
【0114】
しかしながら、
図17Aおよび
図17Bから分かるように、双極子トレーサー磁石の代わりに四重極トレーサー磁石を使用すると、トレーサー磁石の位置を決定する上で誤差を著しく低減する。
【0115】
より具体的には、
図17Aおよび
図17Bは、磁化の四つの異なるレベル(TS1~TS4)における磁化されたトルクばねの、投与設定(DS)および外部投薬(D)の両方に対する影響のシミュレーションを示す。
図17Aは、4個のセンサーセットアップと組み合わせた双極子トレーサー磁石の計算された角度測定誤差(すなわち、計算された角度と真の角度との差)を図示し、
図17Bは、8個のセンサーセットアップと組み合わせた四重極トレーサー磁石の計算された角度測定誤差を図示する。外部投薬中はセンサーがトレーサー磁石により近いため(例えば、
図8Aおよび
図8Cを参照)、角度誤差は外部投薬中の方がわずかにより小さい。つまり、上述の実施形態では、センサー測定は外部投薬中にのみ行われる。四重極トレーサー磁石における個々の極間のより小さい円周方向の間隔は、センサーシステムへのより高い入力率を提供し、これは4個センサーの代わりに8個のセンサーによってより正確に捕捉することができるので、四重極トレーサー磁石については8個のセンサーが使用されたが、しかし4個のセンサーセットアップと組み合わせた四重極トレーサー磁石に対しても同等の結果が予期されることになる。示されるように、四重極トレーサー磁石の使用は、角度誤差を約4~8度から約0.5~1度へと、およそ8倍低減した。
【0116】
示されたFlexTouch(登録商標)薬剤送達装置では、リセットチューブ660、そしてそれ故にトレーサー磁石660Mは、排出されるインスリンの各単位に対して7.5度回転する。それ故に、4~8度の範囲で起こる可能性がある角度誤差は、排出された投与量の誤った決定をもたらす場合がある。
【0117】
それ故に、四重極トレーサー磁石は、外部場からだけでなく内部場からの妨害に対するシステムの感受性も低減する。これは多重極トレーサー磁石の使用の重要な側面であるが、その理由は、鉄含有金属シートを使用することによる外部ソースの従来の磁気遮蔽を、外部場の影響を減少するために使用する場合があるが、トレーサー磁石と内部妨害磁場との間に適合することはできない場合があるからである。さらに、磁気シールドを組み込むことは場所を取り、追加費用が発生することになる。
【0118】
別の方法として磁化可能でない材料のばねを使用することによって、これを軽減できる場合があるが、しかし今日市販されている現在のばね駆動ペンは、磁化可能なトルクばねを備えており、ばねの他の要件に起因して取り換えは実現可能ではない場合がある。
【0119】
回転する四重極トレーサー磁石を組み込んだセンサー組立品に対する構造セットアップについて説明してきたが、以下ではこうした組立品に対して実際の移動を決定する例示的な方法が説明される。
【0120】
四重極磁石からの信号は定期的であり、一周期に磁石の1回の完全回転にわたって2回の信号がある。これは、接線方向、半径方向、および軸方向の磁場レベルが描写されている
図18から見ることができる。
【0121】
信号の周波数成分をマッピングすると、磁石からのほとんどの信号が周波数の二つの信号に適合することが分かる(
図19参照)。
【0122】
四重極場で使用する用量サイズを決定するには、四重極磁石の静的開始角度および終了角を決定する必要がある。磁石は用量が送達される前および後は静的であるため、磁場は経時的にサンプリングされる代わりに、空間にわたってサンプリングされる。例示的な実施形態では、測定システムは、円形状のレイアウトおよび等間隔を用いたn=7個のセンサーで構成され、
図20を参照すると、四重極磁石660Mに対するセンサー766Mの配置を示す。
【0123】
磁石の向きを決定するために、離散フーリエ変換(DFT)がセンサーで測定された磁場について計算された。
【0124】
ここで
は、k番目のセンサーのj番目のチャネルの磁場であり、j=1は接線方向磁場であり、j=2は半径方向であり、またj=3は軸方向であり、
は仮想単位であり、そして
は、j番目のチャネルの信号のn番目の周波数成分である。
【0125】
上述のように、四重極磁石からの信号は一周期n=2個の信号であり、したがって
の位相を見ることにより、センサーボードに対する磁石の向きを決定することができる。
【0126】
異なる周波数でのサインおよびコサインのサンプルは直交するので、例えば、周期n=0、1、または3である信号に対するあらゆる妨害は、フーリエ変換によって除去される。
【0127】
これは、外部妨害および内部妨害の両方に関連する。自動用量ペン式注射器内の内部構成要素は、用量機構を駆動するための金属ねじりばねである。これが磁化されている場合、ばね磁場は主に、センサー位置で周期1信号のように見える。センサーの付近にある双極子磁石のような外部妨害もまた、周期0または1の信号を有する傾向にある。DFTを使用して、その他の周波数からの妨害を除去し、かつ周波数2信号からのみ磁石の向きを決定することが可能である。
【0128】
したがって、四重極磁石とDFTとの組み合わせは、その周期1信号が共通妨害の周波数と類似している双極子磁石と比較して優れている。
【0129】
DFTベースのアルゴリズムを使用すると、ルックアップベースのアルゴリズムと比較して、任意の数のセンサーを選ぶより大きい自由度が与えられる。選ばれるセンサーの数は、ナイキストの標本化定理により、少なくとも5であることが好ましい。それ以外に、エイリアシング効果を防止することを目的として信号の特定の周波数を除去するために、センサーの数を自由かつ積極的に使用することができる。
【0130】
上記の開示では、外部妨害磁場とペン式装置のトルクばねからの内部妨害磁場との両方の問題は、多数の磁気計を備えるセンサーアレイと組み合わせた四重極トレーサー磁石の使用によって対処された。以下において、この問題は異なるアプローチによって対処され、これは上述の四重極設計の代替として、または上述の四重極設計に加えて使用されてもよい。
【0131】
磁気システムを外側干渉から遮蔽するために磁気シールドを使用することは一般的に知られており、かつ使用されている。通常、シールドは磁場を封じ込め、そして磁場がその他のシステムに影響を与えることを防止するためのバリアとして、または外部の(遮蔽されていない)磁場によって影響を受けないようにシステムを封じ込め、かつシステムを遮蔽するバリアとして使用される。妨害磁場をもたらす場合があるシステムの内部構成要素は通常、システムの遮蔽された容積の外側に置かれる。実際に、磁化可能な材料から製造された駆動ばねを備える薬剤送達装置内にシールドを組み込むことが可能である場合があるが、しかしこれはペン式装置の主要な再設計が必要となる場合があり、これは費用効果の高いオプションではない場合がある。
【0132】
それ故に、解決すべき技術的問題は、磁気計に基づいて捕捉装置または組立品の磁気センサーの測定値を妨害する内部磁場を防止/低減する磁気シールドを提供することである。さらに、こうしたシールドは、「通常の」外部磁場からの妨害を防止/低減するためにも機能する場合がある。
【0133】
提示される解決策は、センサーシステムを外部磁場から遮蔽するだけでなく、トルクばねによってもたらさせるあらゆる意図しない内部磁場もシールドに向かってそらし、かつトレーサー磁石の磁場の妨害を低減するために、ミューメタルのシールドを導入することである。トルクばねからの妨害磁場の強度を低減することによって、必要とされる精度および冗長性を得るためのより少ないセンサーの使用、ひいてはより少ない信号処理要件が可能になる場合があり、これによってコストおよび電力消費量の両方を低減することが可能になる場合がある。
【0134】
ミューメタルは、非常に高い透磁率を有するニッケル鉄軟磁性合金である。これはいくつかの組成を有し、およそ80%のニッケル、15%数パーセントのモリブデンを含み、またいくつかの組成では少量の銅およびクロムを含む。ミューメタルは非常に延性があり、かつ加工可能であり、磁気シールドのために必要な薄いシートへと簡単に形成することができる。しかしながら、ミューメタル物品は、最終形態に加工された後に熱処理を必要とする。
【0135】
ミューメタルで作製された磁気シールドは、遮蔽された区域の周りに封鎖する代わりに磁力線のための経路を提供することによって機能する。ミューメタルは、ずっと低い比透磁性を有する空気を通るより「簡単な」経路のようなものを提供し、それ故に磁場をわきにそらす。しかしながら、ミューメタルは非常に低い飽和レベルを有し、したがってより強力な磁場に対して遮蔽するのに適していない。
【0136】
図21は、薬剤送達装置トルクばね655が示されているが、
図8Aに示す組立品に本質的に対応する組立品を示しており、アドオン用量ロギング装置1000には、センサーの軸方向長さおよびトレーサー磁石容積、ならびにトルクばね655の近位部分を覆う、ミューメタルで作製された円筒状のシールド1020が提供されている。円筒状のミューメタルシールドは本質的に、磁化されているトルクばねからの磁力線を吸収し、かつそれらを円周状のシールドに向かってガイドし、これによって軸方向、それ故にセンサーに向かうトルクばねの妨害磁場の程度を制限する。同時に、円筒状のシールドは、円筒容積の内部に配設されたセンサー電子機器上の外部磁場EMFの影響を低減させるのに役立つ。
【0137】
円筒状のミューメタルシールド1020は基本的にトレーサー磁石660Mからの磁力線も吸収するが、(i)トルクばね655はトレーサー磁石よりも磁気センサー1066Mから軸方向でより遠くに配設されている、また(ii)トルクばねはトレーサー磁石よりもシールドに半径方向でより近くに配設されているので、これが測定性能に与える影響の程度はより小さい。このようにして、センサーシステムは、磁場の小さい部分のみがシールドによって吸収されるので、トレーサー磁石からの磁場を測定できる一方で、上述の幾何学的特性は、トルクばねからの磁場がシールドによって高度に吸収されることを可能にし、それによって、センサーへの影響の程度がより小さくなる。
【0138】
図22は、飽和することなくより強力な磁場を取り扱うことができる鋼の外側シールド1121が適用されて、外部磁場に対する経路を提供する、アドオン用量ロギング装置1100の実施形態を示す。ミューメタルによる内側シールド1122は、強力な外部磁場によって飽和されることなく、トルクばねによってもたらされた比較的弱い内部磁場に経路を提供するように配設されている。
【0139】
例示的実施形態の上記の説明では、異なる構成要素について記載された機能を提供する異なる構造および手段を、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度に、説明してきた。異なる構成要素に対する詳細な構築および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。