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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】運転支援方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20231102BHJP
【FI】
B60W30/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020566341
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 IB2019000052
(87)【国際公開番号】W WO2020148561
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-06-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】青木 元伸
(72)【発明者】
【氏名】深沢 保彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸一郎
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】吉村 俊厚
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184563(JP,A)
【文献】特開2016-143137(JP,A)
【文献】特開2008-217079(JP,A)
【文献】特開2008-174023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W10/00-50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する第1車線において前記自車両の前方の第1障害物の位置を検出し、
前記第1車線に隣接する対向車線である第2車線において前記自車両の前方の第2障害物の位置を検出し、
対向車両の走行領域を推定し、推定した前記走行領域に基づいて、前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の位置を基準にして前記第1障害物の手前側に決定した停車位置で停車した場合に、前記自車両が前記対向車両の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判定し、
前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に前記対向車両の走行領域に干渉する可能性がある場合には、前記自車両の停車位置として前記第2障害物を基準に前記第2障害物よりも前記自車両の進行方向で手前の位置に停車位置を決定し、
前記決定した停車位置への前記自車両の停車を支援する、
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項7】
自車両が走行する第1車線において前記自車両の前方の第1障害物の位置を検出し、前記第1車線に隣接する対向車線である第2車線において前記自車両の前方の第2障害物の位置を検出するセンサと、
対向車両の走行領域を推定し、推定した前記走行領域に基づいて、前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の位置を基準にして前記第1障害物の手前側に決定した停車位置で停車した場合に、前記自車両が対向車両の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判定し、前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に対向車両の走行領域に干渉する可能性がある場合には、前記自車両の停車位置として前記第2障害物を基準に前記第2障害物よりも前記自車両の進行方向で手前の位置に停車位置を決定するコントローラと、
前記決定した停車位置に基づいて運転支援を行う走行制御装置と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項10】
前記第2障害物の位置が前記第1障害物の位置よりも前記自車両の進行方向で手前側であり且つ前記自車両が前記第1障害物の手前で停車した場合に対向車両の走行領域に干渉する可能性が無い場合には、前記自車両の進行方向で前記第1障害物よりも手前且つ前記第2障害物よりも前方の位置に停車位置を決定することを特徴とする請求項に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援方法及び運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の前方の障害物に応じて自車両を停車させる技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の車両用走行制御装置は、自車両の前方の駐車車両の位置に応じて自車両の停車位置を設定し、停車位置で停止後の追い越し走行をし易くする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-112911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用走行制御装置は、自車両が走行する車線と対向車線の両方に障害物が存在すると、停車した自車両と対向車線上の障害物とにより、対向車両の走行が妨害されるおそれがある。
本発明は、自車両の前方の障害物に応じて停車した自車両と対向車線上の障害物が対向車両の走行を妨害するのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る運転支援方法では、自車両が走行する第1車線において自車両の前方の第1障害物の位置を検出し、第1車線に隣接する対向車線である第2車線において自車両の前方の第2障害物の位置を検出し、第2障害物の位置が第1障害物の位置よりも自車両の進行方向で手前側である場合に、自車両の停車位置として第2障害物よりも自車両の進行方向で手前の位置に第1停車位置を決定し、決定した第1停車位置への前記自車両の停車を支援する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、自車両の前方の障害物に応じて停車した自車両と対向車線上の障害物とが、対向車両の走行を妨害するのを防ぐことができる。
本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に示した要素及びその組合せを用いて具現化され達成される。前述の一般的な記述及び以下の詳細な記述の両方は、単なる例示及び説明であり、特許請求の範囲のように本発明を限定するものでないと解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る運転支援装置の一例を示すブロック図である。
図2A】第1実施形態に係る運転支援装置が適用される運転シーンの一例を示す概略図である。
図2B】第1実施形態に係る運転支援装置が適用される運転シーンの一例を示す概略図である。
図3】第1実施形態に係るコントローラの一例を示すブロック図である。
図4】対向車両の走行領域の説明図である。
図5A】自車両が走行する車線上の障害物の前後方向位置を基準に停車位置を決定する場合の第1例の説明図である。
図5B】自車両が走行する車線上の障害物の前後方向位置を基準に停車位置を決定する場合の第2例の説明図である。
図6】第1実施形態に係る運転支援方法の一例を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る運転支援装置が適用される運転シーンの一例を示す概略図である。
図8】第2実施形態に係る運転支援方法の一例を示すフローチャートである。
図9】第3実施形態に係る運転支援装置が適用される運転シーンの一例を示す概略図である。
図10】第3実施形態に係る運転支援方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、図面を参照して第1~第3実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を貼付している。但し、図面は模式的なものである。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(第1実施形態)
(運転支援装置)
第1実施形態に係る運転支援装置は、例えば車両に搭載される(以下、実施形態に係る走行支援装置が搭載される車両を「自車両」という)。第1実施形態に係る運転支援装置は、自車両が走行経路に従って走行するように自動で運転する自動運転と、自車両が走行経路に従って走行するように運転者に対して促す案内とを、運転支援として実行可能である。
【0010】
自動運転は、乗員(運転者)が関与せずに自車両の駆動、制動及び操舵のすべての制御を実行する場合を含み、自車両の駆動、制動の少なくとも1つの制御を行う場合も含む。自動運転は、先行車追従制御、車間距離制御等であってもよい。
【0011】
第1実施形態に係る運転支援装置1は、図1に示すように、周囲センサ群10、ナビゲーションシステム20、車両センサ群30、コントローラ40、走行制御装置50及びアクチュエータ群51を備える。
【0012】
周囲センサ群10は、自車両の周囲環境、例えば自車両の周囲の物体を検出するセンサ群である。周囲センサ群10は、例えば自車両が走行する車線や対向車線において自車両の前方の障害物を検出する。周囲センサ群10は、測距装置11とカメラ12を含んでよい。測距装置11とカメラ12は、自車両周囲に存在する物体、自車両と物体との相対位置、自車両と物体との距離等の自車両の周囲環境を検出する。
【0013】
測距装置11は、例えば、レーザレンジファインダ(LRF)やレーダであってよい。カメラ12は、例えばステレオカメラであってよい。カメラ12は、単眼カメラであってもよく、単眼カメラにより複数の視点で同一の物体を撮影して、物体までの距離を計算してもよい。また、撮像画像から検出された物体の接地位置に基づいて、物体までの距離を計算してもよい。測距装置11とカメラ12は、検出した周囲環境の情報である周囲環境情報をコントローラ40へ出力する。
【0014】
ナビゲーションシステム20は、自車両の現在位置と、その現在位置における道路地図情報を認識する。ナビゲーションシステム20は、乗員が入力した目的地までの走行経路を設定し、この走行経路に従って乗員に経路案内を行う。ナビゲーションシステム20は、設定した走行経路の情報をコントローラ40へ出力する。自車両の走行状態が自動運転モードである場合、コントローラ40は、ナビゲーションシステム20が設定した走行経路に沿って走行するように自車両を自動で運転する。
【0015】
ナビゲーションシステム20は、ナビコントローラ21、測位装置22、地図データベース(DB)23、表示部24、操作部25、音声出力部26及び通信部27を備える。ナビコントローラ21は、ナビゲーションシステム20の情報処理動作を制御する電子制御ユニット(ECU)である。ナビコントローラ21は、プロセッサとその周辺部品とを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。周辺部品には記憶装置等が含まれる。記憶装置は、半導体記憶装置、磁気記憶装置及び光学記憶装置のいずれかを備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
【0016】
測位装置22は、自車両の現在位置を測定する。測位装置22は、例えばGPS(Global Positioning System)受信器であってよい。また測位装置22は、GLONASS(Global Navigation Satellite System)等の他の衛星測位システムの衛星信号に基づいて自車両の現在位置を測定してもよい。また測位装置22は、慣性航法装置であってもよい。
【0017】
地図データベース23は、道路地図データを記憶している。道路地図データは、道路線種、道路形状、勾配、車線数、法定速度(制限速度)、道幅、優先道路を指定する優先規制、一時停止などを指定する停止規制、合流地点の有無等に関する情報を含む。道路線種には、例えば一般道路と高速道路が含まれる。
【0018】
表示部24は、ナビゲーションシステム20において様々な視覚的情報を出力する。例えば、表示部24には、自車両周囲の地図画面や推奨経路の案内を表示してよい。操作部25は、ナビゲーションシステム20において乗員の操作を受け付ける。操作部25は、例えばボタン、ダイヤル、スライダなどであってよく、表示部24に設けられたタッチパネルであってもよい。例えば操作部25は、乗員による目的地の入力操作や、表示部24の表示画面の切り替え操作を受け付けてよい。
【0019】
音声出力部26は、ナビゲーションシステム20において様々な音声情報を出力する。音声出力部26は、設定した走行経路に基づく運転案内や、自車両周囲の道路地図データに基づく道路案内情報を出力してよい。通信部27は、自車両の外部の通信装置との間で無線通信を行う。通信部27による通信方式は、例えば公衆携帯電話網による無線通信や、車車間通信、路車間通信、又は衛星通信であってよい。ナビゲーションシステム20は、通信部27によって外部装置から道路地図データを取得してもよい。
【0020】
車両センサ群30は、自車両の走行状態を検出するセンサと、運転者により行われた運転操作を検出するセンサとを含む。自車両の走行状態を検出するセンサには、車速センサ31と、加速度センサ32と、ジャイロセンサ33が含まれる。車速センサ31は、自車両の車輪速を検出し、車輪速に基づいて自車両の速度を算出する。加速度センサ32は、自車両の前後方向の加速度、車幅方向の加速度及び上下方向の加速度を検出する。ジャイロセンサ33は、ロール軸、ピッチ軸及びヨー軸を含む3軸回りの自車両の回転角度の角速度を検出する。
【0021】
運転操作を検出するセンサには、操舵角センサ34と、アクセルセンサ35と、ブレーキセンサ36が含まれる。操舵角センサ34は、操舵操作子であるステアリングホイールの現在の回転角度(操舵操作量)である現在操舵角を検出する。アクセルセンサ35は、自車両のアクセル開度を検出する。例えばアクセルセンサ35は、自車両のアクセルペダルの踏み込み量をアクセル開度として検出する。ブレーキセンサ36は、運転者によるブレーキ操作量を検出する。例えばブレーキセンサ36は、自車両のブレーキペダルの踏み込み量をブレーキ操作量として検出する。
【0022】
車両センサ群30の各センサが検出した自車両の速度、加速度、角速度、操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量の情報を総称して「車両情報」と表記する。車両センサ群30は車両情報をコントローラ40へ出力する。
【0023】
コントローラ40は、自車両の運転支援を行うECUである。コントローラ40は、プロセッサ41と、記憶装置42等の周辺部品とを含む。プロセッサ41は、例えばCPUやMPUであってよい。記憶装置42は、半導体記憶装置、磁気記憶装置及び光学記憶装置のいずれかを備えてよい。記憶装置42は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM及びRAM等のメモリを含んでよい。なお、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路でコントローラ40を実現してもよい。例えば、コントローラ40はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)等を有していてもよい。
【0024】
コントローラ40は、周囲センサ群10から入力した周囲環境情報と、車両センサ群30から入力した車両情報とに基づいて、ナビゲーションシステム20により設定された走行経路を自車両に走行させる走行軌道を生成する。コントローラ40は、生成した走行軌道を走行制御装置50へ出力する。周囲センサ群10、ナビゲーションシステム20、車両センサ群30及びコントローラ40により、自車両に走行させる走行軌道を生成する走行軌道生成装置2を構成することができる。
【0025】
走行制御装置50は、自車両の走行制御を行うECUである。走行制御装置50は、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含む。プロセッサは、例えばCPUやMPUであってよい。記憶装置は、半導体記憶装置、磁気記憶装置及び光学記憶装置のいずれかを備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM及びRAM等のメモリを含んでよい。
【0026】
なお、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路で走行制御装置50を実現してもよい。例えば、走行制御装置50はFPGA等のPLD等を有していてもよい。走行制御装置50は、コントローラ40と一体の電子制御ユニットであってもよく、別個の電子制御ユニットであってもよい。走行制御装置50は、コントローラ40が生成した走行軌道を自車両が走行するようにアクチュエータ群51を駆動して自動的に自車両を走行させる。
【0027】
アクチュエータ群51は、コントローラ40からの制御信号に応じて、自車両のステアリングホイール、アクセル開度及びブレーキ装置を操作して、自車両の車両挙動を発生させる。アクチュエータ群51は、ステアリングアクチュエータ52と、アクセル開度アクチュエータ53と、ブレーキ制御アクチュエータ54を備える。ステアリングアクチュエータ52は、自車両のステアリングの操舵方向及び操舵量を制御する。アクセル開度アクチュエータ53は、自車両のアクセル開度を制御する。ブレーキ制御アクチュエータ54は、自車両のブレーキ装置の制動動作を制御する。
【0028】
次に図2A及び図2Bを参照して、第1実施形態に係る運転支援装置1が適用される運転シーンを説明する。片側1車線道路において、自車両60が走行する第1車線L1(自車線)において自車両60の前方に障害物(以下「第1障害物」と表記することがある)61が存在する。
【0029】
また、第1車線L1に隣接する隣接車線(対向車線)である第2車線L2には対向車両64が走行しており、自車両60に接近している。一点鎖線65は、対向車両64の右端が通りうる予想軌道を示し、一点鎖線66は対向車両64の左端が通りうる予想軌道を示す。予想軌道65と予想軌道66により挟まれた領域は、走行する対向車両64の車体全体が通りうる領域であり、以下「走行領域」と表記する。
【0030】
図2Aに示すように、対向車両64が接近している場合には、自車両60は車線境界線(センターライン)を越えて第1障害物61を回避することができないため、停車して自車両60と対向車両64とのすれ違いが完了するのを待つ必要がある。
このような状況で、第2車線L2において自車両の進行方向で(第1車線L1における進行方向で)第1障害物61よりも手前側(図2A及び図2Bにおいて下側)に障害物(以下「第2障害物」と表記することがある)62が存在すると、第1障害物61の手前の位置63に停車した自車両60が、第2障害物62を回避する対向車両64の走行領域に干渉するおそれがある。この結果、対向車両64の走行が妨害されるおそれがある。
【0031】
このため、コントローラ40は、図2Bに示すように自車両60が第2障害物62よりも進行方向で手前側の位置において、対向車両64が接近しており、第2障害物62が第1障害物61よりも自車両60に近い場合には、第2障害物62よりも手前の停車位置(以下「第1停車位置」と表記する)67に自車両60の停車位置を決定する。
このように、第2障害物62よりも手前の第1停車位置67に自車両60が停車すれば、第2障害物62を回避する対向車両64の走行を自車両60が妨害するのを防ぐことができる。すなわち、自車両60と第2車線L2上の第2障害物62が対向車両64の走行を妨害するのを防ぐことができる。
【0032】
図3を参照する。運転支援装置1のコントローラ40は、第1障害物検出部80と、対向車両検出部81と、第2障害物検出部82と、対向車両走行軌道推定部83と、干渉判断部84と、停止位置決定部85と、軌道生成部86を備える。第1障害物検出部80、対向車両検出部81、第2障害物検出部82、対向車両走行軌道推定部83、干渉判断部84、停止位置決定部85、及び軌道生成部86の機能は、例えばコントローラ40のプロセッサ41が、記憶装置42に格納されたコンピュータプログラムを実行することによって実現されてよい。
【0033】
第1障害物検出部80は、周囲センサ群10から出力される周囲環境情報を受信する。第1障害物検出部80は、周囲環境情報から、自車両60が走行する第1車線L1上で、且つ自車両60の進路前方に存在する第1障害物61を検出(特定)し、第1障害物61の位置等の情報を第1障害物情報として取得する。なお、ナビゲーションシステム20の通信部27は、車車間通信や路車間通信により、他車両が検出した第1障害物61の位置等の情報を受信してもよい。第1障害物検出部80は、通信部27が受信した情報を第1障害物情報として取得してもよい。
【0034】
本明細書において「障害物」とは、自車両60が回避すべき回避対象であり、例えば乗用車、大型トラック、二輪車等の駐車中、停車中、減速中の車両や、車両以外の静止物体、又は道路の規定車速に対して低速の移動体を含む。車両以外の静止物体は、道路上の工事現場等の仮設物や落下物を含む。低速の移動体は、自転車、歩行者、動物を含む。
第1障害物検出部80は、第1障害物情報を、対向車両走行軌道推定部83と、干渉判断部84と、停止位置決定部85へ出力する。
【0035】
対向車両検出部81は、周囲センサ群10から出力される周囲環境情報を受信する。第1障害物検出部80は、周囲環境情報から、第1車線L1に隣接する対向車線である第2車線L2を走行して自車両60へ接近する対向車両64を検出(特定)し、対向車両64の位置等の情報を対向車両情報として取得する。
また、対向車両検出部81は、測距装置11が測定した対向車両64の点群データや、カメラ12が撮影した対向車両64の画像に基づいて、対向車両64の大きさ(前後方向長さや車幅)や姿勢(例えばヨー角)を検出(特定)し、対向車両64の大きさや姿勢の情報を対向車両情報として取得してもよい。
【0036】
また、対向車両検出部81は、カメラ12が撮影した対向車両64の画像に基づいて、対向車両64の車種の情報を対向車両情報として取得してもよい。
例えば対向車両検出部81は、コントローラ40の記憶装置42等に予め記憶した様々な車両の画像とカメラ12が撮影した対向車両64の画像とのパターンマッチングによって対向車両64の車種を特定してよい。また、例えば対向車両検出部81は、カメラ12が撮影した対向車両64の画像を、通信部27を介して外部装置(例えばサーバ装置等)へ送信し、外部装置が対向車両64の画像に基づいて特定した対向車両64の車種の情報を通信部27により受信してもよい。
【0037】
対向車両検出部81は、対向車両64の車種に基づいて、対向車両64の大きさの情報を対向車両情報として取得してもよい。例えばコントローラ40の記憶装置42等には、様々な車両の車種と大きさの情報とを関連付けたデータベースを記憶されていてよい。対向車両検出部81は、データベースと対向車両64の車種に基づいて、対向車両64の大きさを特定してよい。
また、例えば対向車両検出部81は、対向車両64の車種の情報を、通信部27を介して外部装置(例えばサーバ装置等)へ送信し、外部装置が対向車両64の車種に基づいて特定した対向車両64の大きさの情報を通信部27により受信してもよい。
【0038】
さらに、対向車両検出部81は、対向車両64の運転技能レベルの情報を対向車両情報として取得してもよい。対向車両検出部81は、車車間通信や路車間通信により、対向車両64から受信してもよい。対向車両64は、対向車両64の運転者の運転履歴に基づいて対向車両64の運転技能レベルを算出するコントローラを備えてよい。例えば、運転技能レベルは、運転者の操舵操作の緩急、アクセル操作の緩急、ブレーキ操作の緩急、車間距離等の運転履歴に基づいて算出されてよい。
【0039】
さらに、対向車両検出部81は、対向車両64の車種に基づいて、対向車両64が自動運転車であるか否かを判断し、対向車両64の自動運転の運転技能レベルや制御内容の情報を、対向車両64の運転技能レベルの情報として取得してもよい。例えばコントローラ40の記憶装置42等には、様々な車両の車種と自動運転機能に関する情報とを関連付けたデータベースを記憶されていてよい。対向車両検出部81は、データベースと対向車両64の車種に基づいて、対向車両64が自動運転車であるか否かを判断し、対向車両64の自動運転の運転技能レベルや制御内容の情報を特定してよい。
【0040】
また、例えば対向車両検出部81は、対向車両64の車種の情報を、通信部27を介して外部装置(例えばサーバ装置等)へ送信し、対向車両64の車種に基づいて外部装置が特定した自動運転の運転技能レベルや制御内容の情報を、通信部27により受信してもよい。
なお、通信部27は、対向車両64の位置、大きさ、姿勢、車種の情報を車車間通信や路車間通信により、対向車両64等の他車両から受信してもよい。対向車両検出部81は、通信部27が受信した情報を対向車両情報として取得してもよい。
対向車両検出部81は、対向車両情報を対向車両走行軌道推定部83と停止位置決定部85へ出力する。
【0041】
第2障害物検出部82は、周囲センサ群10から出力される周囲環境情報を受信する。第2障害物検出部82は、周囲環境情報から、対向車線である第2車線L2上で、且つ自車両60の進路前方に存在する第2障害物62を検出(特定)し、第2障害物62の位置等の情報を第2障害物情報として取得する。なお、ナビゲーションシステム20の通信部27は、車車間通信や路車間通信により、他車両が検出した第2障害物62の位置等の情報を受信してもよい。第2障害物検出部82は、通信部27が受信した情報を第2障害物情報として取得してもよい。
第2障害物検出部82は、第2障害物情報を、対向車両走行軌道推定部83と停止位置決定部85へ出力する。
【0042】
対向車両走行軌道推定部83は、第1障害物情報と第2障害物情報に基づいて、第2車線L2の第2障害物62が、第1車線L1の第1障害物61よりも自車両60に近いか否かを判断する。すなわち対向車両走行軌道推定部83は、第2障害物62と自車両60との間の前後方向距離(すなわち進行方向距離)が第1障害物61と自車両60との間の前後方向距離よりも短いか否かを判断する。
対向車両走行軌道推定部83は、第2障害物62が第1障害物61よりも自車両60に近いか否かの判断結果を停止位置決定部85へ出力する。
【0043】
第2障害物62が第1障害物61よりも自車両60に近い場合、対向車両走行軌道推定部83は、対向車両64が将来走行すると予測される予測走行軌道を推定する。
例えば対向車両走行軌道推定部83は、周囲センサ群10から出力される周囲環境情報と、第1障害物情報と、第2障害物情報と、対向車両情報に基づいて、対向車両64の予測走行軌道を推定してよい。例えば図2A及び図2Bに示す運転シーンでは、対向車両走行軌道推定部83は、第2車線L2の第2障害物62を回避する対向車両64の予測走行軌道を推定する。
【0044】
例えば対向車両走行軌道推定部83は、周囲環境情報から、第2車線L2の車線境界を検出してよい。対向車両走行軌道推定部83は、第2車線L2の車線境界の位置、対向車両64の移動履歴、対向車両64の姿勢の履歴、対向車両64の車速、対向車両64と第1障害物61との間の相対位置関係、対向車両64と第2障害物62との間の相対位置関係等に基づき、対向車両64の予測走行軌道を推定してよい。
【0045】
図4を参照する。一点鎖線91は、対向車両64の予測走行軌道を示す。対向車両走行軌道推定部83は、対向車両64の予測走行軌道91に基づいて、対向車両64の右端が通りうる予想軌道65と対向車両64の左端が通りうる予想軌道66とに挟まれた対向車両64の走行領域を予測する。
例えば、対向車両走行軌道推定部83は、予測走行軌道91に沿って延伸し予測走行軌道91を中心とする幅Wの領域を走行領域として推定してよい。
【0046】
対向車両走行軌道推定部83は、対向車両検出部81が検出した車幅に所定のマージンを加えた長さを幅Wとして設定してよい。例えば対向車両走行軌道推定部83は、対向車両検出部81が取得した対向車両64の運転技能レベル等に応じて対向車両64の走行領域のマージンを変化させてよい。すなわち、対向車両走行軌道推定部83は、対向車両64の運転技能レベル等に基づいて対向車両64の走行領域を推定してよい。
【0047】
例えば、対向車両64の運転技能レベルが低い場合(例えば、対向車両64の運転者や自動運転の運転技能レベルが低い場合や、自動運転の制御内容の性能、品質が低い場合)には、対向車両64の走行軌道の予想が難しくなり、予測走行軌道91の変動が大きくなると考えられる。この場合には、走行領域のマージンを大きくして走行領域の幅Wを増加してよい。
【0048】
反対に対向車両64の運転技能レベルが高い場合には、対向車両64の走行軌道を高い精度で予想できると考えられるので、走行領域のマージンを小さくして走行領域の幅Wを低減してよい。
図3を参照する。対向車両走行軌道推定部83は、推定した対向車両64の走行領域の情報を干渉判断部84に出力する。
【0049】
干渉判断部84は、対向車両64の走行領域の情報と、第1障害物情報とに基づいて、自車両60を第1障害物61の手前に停車させた場合に自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判断する。
図2Aを参照する。例えば干渉判断部84は、第1障害物情報が示す第1障害物61の前後方向位置(すなわち自車両60の進行方向における位置であり、以下では進行方向位置とも記載する)に基づいて、第1障害物61の手前で自車両60が停車して自車両60と対向車両64とがすれ違う停車位置63を決定する。例えば干渉判断部84は、停車位置63に停車した自車両60と対向車両64とがすれ違った後に、スムーズな操舵で自車両60が第1障害物61を追い越すことができるように、停車位置63の前後方向位置や横方向位置(すなわち車幅方向位置)を決定してよい。
【0050】
さらに干渉判断部84は、例えば、自車両60の占有領域と対向車両64の走行領域とが重複するか否かに応じて、自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判断してよい。例えば干渉判断部84は、停車位置63に停車した自車両60の占有領域と対向車両64の走行領域とが重複する場合、自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性があると判断してよい。例えば干渉判断部84は、自車両60の占有領域と対向車両64の走行領域とが重複しない場合、自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性がないと判断してよい。
図3を参照する。干渉判断部84は、自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性の判断結果を停止位置決定部85に出力する。
【0051】
停止位置決定部85は、干渉判断部84の判断結果に基づいて、自車両60と対向車両64とのすれ違いが完了するのを待つ停車位置を決定する。自車両60を第1障害物61の手前に停車させた場合に自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性がある場合には、停止位置決定部85は、第2障害物62よりも手前の第1停車位置67(図2B参照)を自車両60の停止位置として決定する。
【0052】
例えば停止位置決定部85は、第1停車位置67の前後方向位置(すなわち進行方向位置)、例えば第2障害物62と自車両60の前後方向距離(すなわち進行方向距離)を、第1停車位置67に停車した自車両60が、第2障害物62を回避して第2車線L2へ戻る対向車両64の走行領域に干渉しないように決定してよい。
例えば停止位置決定部85は、第1停車位置67の前後方向位置を、対向車両64の走行領域が第1車線L1にはみ出している区間よりも手前に決定してよい。
【0053】
図5Aを参照する。第1障害物61が第2障害物62よりも自車両60に近いと対向車両走行軌道推定部83が判断した場合、停止位置決定部85は、第1障害物情報が示す第1障害物61の前後方向位置(すなわち進行方向位置)に基づいて、停車位置90を決定する。自車両60は、この停車位置90にて自車両60と対向車両64とのすれ違いの完了を待つ。停止位置決定部85は、例えば、自車両60が第1障害物61を回避可能な程度の所定の距離だけ第1障害物61から手前の位置に停車位置90を設定してよい。
【0054】
図5Bを参照する。自車両60が対向車両64の走行領域に干渉しないように第1障害物61の手前に自車両60を停車させる停車位置90が存在する場合にも、停止位置決定部85は、第1障害物情報が示す第1障害物61の前後方向位置(すなわち進行方向位置)に基づいて停車位置90を決定する。
図5A及び図5Bに示すように第1障害物61の手前に停車位置90を決定する場合、干渉判断部84は、停車位置90に停車した自車両60と対向車両64とがすれ違った後に、スムーズな操舵で自車両60が第1障害物61を追い越す(回避する)ことができるように、停車位置90の前後方向位置や横方向位置(すなわち車幅方向位置)を決定してよい。なお、停車位置90の前後方向位置や横方向位置は第1障害物61に対して、自車両60が第1障害物61を回避することが充分可能な程度の距離を確保した予め定められた位置であっても良いし、自車両60が第1障害物61をスムーズな操舵で回避する際の走行領域を算出して、算出した走行領域に基づいて設定した位置であっても良い。
【0055】
図3を参照する。停止位置決定部85は、決定した自車両60の停車位置の情報を軌道生成部86へ出力する。
軌道生成部86は、周囲センサ群10から出力される周囲環境情報、ナビゲーションシステム20から出力される道路地図データ及び走行経路、車両センサ群30から出力される車両情報等に基づいて、自車両に走行させる走行軌道を生成する。
【0056】
軌道生成部86は、自車両60が第1障害物61を回避する前に停車して対向車両64とのすれ違いの完了を待つために、停止位置決定部85が決定した停車位置へ到達するための走行軌道を生成する。
軌道生成部86は、車両センサ群30から出力される車両情報等に基づいて、自車両が停車位置で停止したり、停車位置を減速して通過したりするための速度のプロファイルを含むように走行軌道を生成してもよい。軌道生成部86は、生成した走行軌道を走行制御装置50へ出力する。
【0057】
走行制御装置50は、軌道生成部86により生成された走行軌道に基づき、停止位置決定部85が決定した停車位置まで自車両60を走行させて、自車両60を停車位置させることによって運転支援を行う。
例えば、第2障害物62が第1障害物61よりも自車両60進行方向で手前側に存在し、自車両60を第1障害物61の手前に停車させた場合に自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性がある場合には、図2Bに示すように第2障害物62よりも自車両60進行方向で手前の第1停車位置67まで自車両60を走行させ、自車両60を第1停車位置67に停車させる。
【0058】
このように第2障害物62よりも手前で自車両60が待機すれば、第2障害物62を回避する対向車両64の走行を妨害するのを防止できる。
また、例えば第1障害物61が第2障害物62よりも自車両60進行方向で手前側に存在する場合には、図5Aに示すように第1障害物61の位置を基準に、第1障害物61から自車両60進行方向で手前側に決定した停車位置90で自車両60が停車しても、第2障害物62を回避する対向車両64の走行を妨害しない。
【0059】
図5Bに示すように自車両60が対向車両64の走行領域に干渉しないように第1障害物61の手前に自車両60を停車させる停車位置90が存在する場合も同様である。これらの場合に走行制御装置50は、第1障害物61の前後方向位置(すなわち進行方向位置)に基づいて決定された停車位置90まで自車両60を走行させ、自車両60を停車位置90に停車させる。
【0060】
(運転支援方法)
次に、図6のフローチャートを参照して、第1実施形態に係る運転支援方法の一例を説明する。
ステップS1において第1障害物検出部80は、第1車線L1において自車両60の進路前方に第1障害物61が存在するか否かを判断する。第1障害物61が存在する場合(ステップS1:Y)に処理はステップS3へ進む。第1障害物61が存在しない場合(ステップS1:N)に処理はステップS2へ進む。
【0061】
ステップS2において軌道生成部86は、第1車線L1を直進する走行軌道を生成する。その後に処理はステップS12へ進む。
ステップS3において対向車両検出部81は、対向車線である第2車線L2を走行して自車両60へ接近する対向車両64が存在するか否かを判断する。対向車両64が存在する場合(ステップS3:Y)に処理はステップS5へ進む。対向車両64が存在しない場合(ステップS3:N)に処理はステップS4へ進む。
【0062】
ステップS4において軌道生成部86は、第1車線L1の第1障害物61を回避して走行する走行軌道を生成する。その後に処理はステップS12へ進む。
ステップS5において第2障害物検出部82は、第2車線L2において自車両60の進路前方に第2障害物62が存在するか否かを判断する。第2障害物62が存在する場合(ステップS5:Y)に処理はステップS6へ進む。第2障害物62が存在しない場合(ステップS5:N)に処理はステップS10へ進む。
【0063】
ステップS6において対向車両走行軌道推定部83は、第2車線L2の第2障害物62の位置が、第1車線L1の第1障害物61の位置よりも自車両60進行方向で手前側であるか否かを判断する。第2障害物62の位置が第1障害物61の位置よりも自車両60進行方向で手前側である場合(ステップS6:Y)に処理はステップS7へ進む。第1障害物61が第2障害物62よりも自車両60に近い場合(ステップS6:N)に処理はステップS10へ進む。
【0064】
ステップS7において対向車両走行軌道推定部83は、第2障害物62を回避して走行する対向車両64の予測走行軌道91を推定し、予測走行軌道91に基づいて、第2障害物62を回避して走行する対向車両64の走行領域を推定する。
ステップS8において干渉判断部84は、自車両60を第1障害物61の手前に停車させた場合に自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判断する。
【0065】
自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性がある場合(ステップS8:Y)に処理はステップS9へ進む。対向車両64の走行領域に干渉せずに第1障害物61の手前に停車させることができる場合(ステップS8:N)に処理はステップS10へ進む。
ステップS9において停止位置決定部85は、第2車線L2の第2障害物62の位置を基準に、自車両60を停車させる第1停車位置67の前後方向位置(すなわち進行方向位置)を決定する。例えば停止位置決定部85は、第2障害物62の手前に第1停車位置67の前後方向位置を決定する。その後に処理はステップS11に進む。
【0066】
ステップS10において停止位置決定部85は、第1車線L1の第1障害物61の位置を基準に、自車両60を停車させる停車位置90の前後方向位置(すなわち進行方向位置)を決定する。その後に処理はステップS11に進む。
ステップS11において軌道生成部86は、停止位置決定部85が決定した停車位置へ到達するための走行軌道を生成する。
ステップS12において走行制御装置50は、軌道生成部86により生成された走行軌道に基づき、停止位置決定部85が決定した停車位置まで自車両60を走行させて、自車両60を停車位置で停車させる運転支援を行う。その後に処理は終了する。
なお、上述した実施形態においては運転支援方法として、走行制御装置50が自車両60を停止位置決定部85が決定した停車位置で停車させる態様を記載したがこれに限らない。例えば停止位置決定部85が決定した停車位置をナビゲーション画面に表示する等によって自車両60の運転者に停車位置を提示して、自車両60の停止位置への停車を支援しても良い。
【0067】
(第1実施形態の効果)
(1)第1障害物検出部80は、自車両60が走行する第1車線L1において自車両60の進行方向前方の第1障害物61の位置を検出する。第2障害物検出部82は、第1車線L1に隣接する対向車線である第2車線L2において自車両60の進行方向前方の第2障害物62の位置を検出する。第2障害物62の位置が第1障害物61の位置よりも自車両60の進行方向で手前側である場合に、停止位置決定部85は、自車両60の停車位置を第2障害物62よりも手前の第1停車位置67に決定し、自車両60の第1停車位置67への停車を支援する。
【0068】
このような位置に自車両60を停車させることにより、第2障害物62を回避する対向車両64の走行を妨げることなく、自車両60と対向車両64とのすれ違いを待つことができる。すなわち、自車両60の前方の障害物に応じて停車した自車両60と対向車線L2上の第2障害物62が対向車両64の走行を妨害するのを防ぐことができる。このため、交通を妨げるおそれがなくなる。このように、自車両60の自動運転の走行軌道の品質が向上した、改良された走行軌道生成技術を提供できる。
対向車両64の走行を妨害する位置に停車してしまった後に自車両60をバックさせて対向車両64を通行させるなどの無駄な運転を防ぐことができるので、自車両60の燃費向上に貢献する。
【0069】
(2)第2障害物62の位置が第1障害物61の位置よりも自車両60の進行方向で手前側であって、且つ自車両60が第1障害物61の手前で停車した場合に対向車両64の走行領域に干渉する可能性がある場合に、停止位置決定部85は、自車両60の停車位置を第1停車位置67に決定してよい。
これにより、対向車両64の走行を妨害するか否かに基づいて、自車両60の停車位置を切り替えることができるので、第2障害物62を回避する対向車両64の走行を妨げることなく、自車両60と対向車両64とのすれ違いを待つことができる。
【0070】
(3)対向車両走行軌道推定部83は、対向車両64の走行領域を推定してよい。干渉判断部84は、推定した走行領域と第1障害物61の手前で停車した場合の自車両60の占有領域とが重複するか否かに応じて、自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性を判断してよい。
これにより、停車中の自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判定できる。
【0071】
(4)対向車両検出部81は、対向車両64の運転技能レベルを判断してよい。対向車両走行軌道推定部83は、運転技能レベルに応じて対向車両64の走行領域を推定してよい。
これにより、対向車両64の運転技能レベルが低くても安全な位置で自車両60を待機させることができる。
【0072】
(5)第2障害物62が第1障害物61よりも自車両60から遠い場合に、停止位置決定部85は、第1障害物61の前後方向位置(すなわち進行方向位置)を基準に自車両60の停車位置を決定してよい。
第2障害物62が第1障害物61よりも自車両60から遠い場合には、第1障害物61の手前の任意の位置で停車しても、第2障害物62を回避する対向車両64の走行と自車両60とは干渉しない。したがってこの場合には、対向車両64とすれ違う前に第1障害物61により近い位置まで自車両60を進めることにより、より速やかに第1障害物61を回避することができる。
【0073】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る運転支援装置1の構成は、図1に示した第1実施形態に係る運転支援装置1の構成と基本的に同様である。また、第2実施形態に係るコントローラ40の機能構成は、図3に示したコントローラ40の機能構成と基本的に同様である。
図7を参照する。第2実施形態に係る運転支援装置1は、第1実施形態と同様に、第1停車位置67に停車した自車両60が、第2障害物62を回避して第2車線L2へ戻る対向車両64の走行領域に干渉しないように第1停車位置67を決定する。
【0074】
次に第2実施形態に係る運転支援装置1は、対向車両64の大きさを判断する。運転支援装置1は対向車両64の大きさとして、例えば対向車両64の前後方向長さLを判断してよく、対向車両64の車幅を判断してもよい。対向車両64の大きさが閾値を超える場合に、第2障害物62から自車両60の進行方向でより手前側の位置92に第1停車位置を補正する。すなわち、対向車両64の大きさが閾値を超える場合に、第2障害物62から自車両60の進行方向でより手前側に第1停車位置を補正する。
このように対向車両64の大きさが閾値を超える場合には対向車両64の大きさが閾値を超えない場合に対して、第2障害物62から自車両60の進行方向でより手前側に第1停車位置を設定することにより、対向車両64が第2障害物62を回避するために第1車線L1へはみ出す位置(又は第1車線L1に接近した位置)から離れた場所で、対向車両64と自車両60とのすれ違いの完了を待つことができる。これにより、例えば、トラックや大型トレーラ等の大型の対向車両64とすれ違う場合に乗員が感じる恐怖を軽減できる。
【0075】
具体的には、図3に示す停止位置決定部85は、第1停車位置67の前後方向位置(すなわち進行方向位置)を、第1停車位置67に停車した自車両60が、第2障害物62を回避して第2車線L2へ戻る対向車両64の走行領域に干渉しないように決定する。
次に停止位置決定部85は、対向車両検出部81が出力する対向車両情報に基づいて、対向車両64の大きさが所定の閾値を超えるか否かを判断する。
対向車両64の大きさが所定の閾値を超える場合には対向車両64の大きさが閾値を超えない場合に対して、停止位置決定部85は第1停車位置を、第2障害物62から自車両60の進行方向でより手前側の位置92に補正する。
【0076】
次に、図8のフローチャートを参照して、第2実施形態に係る運転支援方法の一例を説明する。ステップS21~S29の処理は、図6を参照して説明したステップS1~S9の処理と同様である。ステップS32~S34の処理は、図6を参照して説明したステップS10~S12の処理と同様である。
ステップS29において停止位置決定部85が、第2障害物62の位置を基準に第1停車位置67の前後方向位置を決定した後、処理はステップS30へ進む。
【0077】
ステップS30において停止位置決定部85は、対向車両64の大きさが閾値以下か否かを判断する。対向車両64の大きさが閾値以下の場合(ステップS30:Y)に処理はステップS33へ進む。この場合には、ステップS29で決定した第1停車位置67は補正されずに、自車両60の停車位置として決定される。
対向車両64の大きさが閾値を超える場合(ステップS30:N)に処理はステップS31へ進む。
【0078】
ステップS31において停止位置決定部85は、ステップS29で決定した第1停車位置67を後方へずらす。
すなわち停止位置決定部85は、第2障害物62からより遠くなる位置92に、第1停車位置を補正する。その後に処理はステップS33へ進む。
【0079】
(第2実施形態の効果)
対向車両検出部81は、対向車両64の大きさを判断する。対向車両64の大きさが閾値を超える場合には対向車両64の大きさが閾値を超えない場合に対して、停止位置決定部85は第1停車位置を、第2障害物62から自車両60の進行方向でより手前側の位置に設定する。
このように第1停車位置を第2障害物62から自車両60の進行方向でより手前側の位置に設定することにより、第2障害物62を回避するために第1車線L1へ対向車両64がはみ出す位置(又は第1車線L1に接近した位置)から離れた場所で、対向車両64と自車両60とのすれ違いの完了を待つことができる。これにより、例えば、トラックや大型トレーラ等の大型の対向車両64とすれ違う場合に乗員が感じる恐怖を軽減できる。
【0080】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る運転支援装置1の構成は、図1に示した第1実施形態に係る運転支援装置1の構成と基本的に同様である。また、第3実施形態に係るコントローラ40の機能構成は、図3に示したコントローラ40の機能構成と基本的に同様である。
図9を参照する。第3実施形態に係るコントローラ40の干渉判断部84は、第1障害物61に対して自車両60の進行方向で手前の停車位置(以下「第2停車位置」と表記する)93に自車両60が停車した場合に第2障害物62を回避する対向車両64の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判断する。第2停車位置93は、例えば図5A及び図5Bを参照して説明した停車位置90と同様に決定してよい。
【0081】
第2停車位置93に停車した自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性がある場合に、停止位置決定部85は、第2車線L2から離れるように第2停車位置93を横方向(車線線幅方向)で対向車線64から離れる方向に移動した停車位置(以下「第3停車位置」と表記する)94を決定する。すなわち、車両の左側通行が義務づけられている場合には第2停車位置93を左へ移動して第3停車位置94を定める。車両の右側通行が義務づけられている場合には第2停車位置93を右へ移動して第3停車位置94を定める。
【0082】
停止位置決定部85は、第3停車位置94に停車した自車両60が対向車両64の走行領域に干渉するか否かを判断する。
第3停車位置94に停車した自車両60が対向車両64の走行領域に干渉しない場合、停止位置決定部85は、自車両60の停車位置を第3停車位置94に決定する。自車両60は第1障害物61を回避する前に第3停車位置94に停車して、対向車両64とのすれ違いの完了を待つ。
【0083】
次に、図10のフローチャートを参照して、第3実施形態に係る運転支援方法の一例を説明する。ステップS41~S47の処理は、図6を参照して説明したステップS1~S7の処理と同様である。ステップS51~S54の処理は図6を参照して説明したステップS9~S12の処理と同様である。
【0084】
ステップS47にて対向車両走行軌道推定部83が対向車両64の走行領域を推定した後、干渉判断部84は、第1障害物61の前後方向位置(すなわち進行方向位置)を基準にして、第1障害物61の手前に第2停車位置93を決定する。ステップS48にて干渉判断部84は、第2停車位置93に自車両60が停車した場合に、自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判断する。
第2停車位置93に停車した自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性がある場合(ステップS48:Y)に処理はステップS49へ進む。第2停車位置93に停車した自車両60が対向車両64の走行領域に干渉しない場合(ステップS48:N)に処理はステップS52へ進む。
【0085】
ステップS49において停止位置決定部85は、車線幅方向で第2車線L2から離れるように第2停車位置93を横方向に移動して第3停車位置94を定める。
停止位置決定部85は、第3停車位置94に停車した自車両60が対向車両64の走行領域に干渉するか否かを判断する。自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する場合(ステップS49:Y)に処理はステップS51へ進む。この場合に停止位置決定部85は、第2障害物62の位置を基準に第1停車位置67の前後方向位置を決定する。
【0086】
自車両60が対向車両64の走行領域に干渉しない場合(ステップS49:N)に処理はステップS50へ進む。
ステップS50において停止位置決定部85は、第2車線L2から離れるように第2停車位置93を横方向にずらして定めた第3停車位置94を、自車両60の停車位置として決定する。その後に処理はステップS53へ進む。
【0087】
(第3実施形態の効果)
干渉判断部84は、第1障害物61の手前の第2停車位置93に自車両60が停車した場合に第2障害物62を回避する対向車両64の走行領域に干渉する可能性があるか否かを判断する。第2停車位置93に停車した自車両60が対向車両64の走行領域に干渉する可能性がある場合に、停止位置決定部85は、車線幅方向で第2車線L2から離れるように第2停車位置93を横方向に移動して第3停車位置94を決定する。第3停車位置94に停車した場合の自車両60が対向車両64の走行領域に干渉しない場合、停止位置決定部85は、自車両60の停車位置を第3停車位置94に決定する。
これにより、対向車両64の走行を妨害しない位置に自車両60を停車させつつ、対向車両64とすれ違う前に第1障害物61により近い位置まで自車両60を進めることができるので、より速やかに第1障害物61を回避することができる。
【0088】
ここに記載されている全ての例及び条件的な用語は、読者が、本発明と技術の進展のために発明者により与えられる概念とを理解する際の助けとなるように、教育的な目的を意図したものであり、具体的に記載されている上記の例及び条件、並びに本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する本明細書における例の構成に限定されることなく解釈されるべきものである。本発明の実施例は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であると解すべきである。
【符号の説明】
【0089】
1…運転支援装置,2…走行軌道生成装置,10…周囲センサ群,11…測距装置,12…カメラ,20…ナビゲーションシステム,21…ナビコントローラ,22…測位装置,23…地図データベース,24…表示部,25…操作部,26…音声出力部,27…通信部,30…車両センサ群,31…車速センサ,32…加速度センサ,33…ジャイロセンサ,34…操舵角センサ,35…アクセルセンサ,36…ブレーキセンサ,40…コントローラ,41…プロセッサ,42…記憶装置,50…走行制御装置,51…アクチュエータ群,52…ステアリングアクチュエータ,53…アクセル開度アクチュエータ,54…ブレーキ制御アクチュエータ,60…自車両,第1車線…L1,61…第1障害物,L2…対向車線,62…第2障害物,64…対向車両,80…第1障害物検出部,81…対向車両検出部,82…第2障害物検出部,83…対向車両走行軌道推定部,84…干渉判断部,85…停止位置決定部,86…軌道生成部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10