(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】導電塗り床構造体及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20231102BHJP
C04B 24/02 20060101ALI20231102BHJP
C04B 24/28 20060101ALI20231102BHJP
C04B 14/38 20060101ALI20231102BHJP
C04B 41/71 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/02
C04B24/28 Z
C04B14/38 A
C04B41/71
(21)【出願番号】P 2021029523
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-07-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 優太
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-073944(JP,A)
【文献】特開2020-037508(JP,A)
【文献】特開2001-207631(JP,A)
【文献】特開2017-065942(JP,A)
【文献】特開平07-206502(JP,A)
【文献】特開平04-074747(JP,A)
【文献】特開2005-097512(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105060782(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C04B 41/00 - 41/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m
2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、
該導電性水系ポリマーセメント組成物は水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成り、
水分散ポリオールは水と少なくともヒマシ油系3官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~800であり、水分散ポリオールは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部であり、
ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、
炭素繊維は長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであり、炭素繊維は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であり、
水硬性セメントは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部であり、
骨材は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部である、
ことを特徴とする導電塗り床構造体。
【請求項2】
床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m
2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、
該導電性水系ポリマーセメント組成物は水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成り、
水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとヒマシ油系2官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~600であり、水分散ポリオールは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部であり、
ヒマシ油系2官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中の0重量部超40重量部以下であり、
ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、
炭素繊維は長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであり、炭素繊維は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であり、
水硬性セメントは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部であり、
骨材は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部である、
ことを特徴とする導電塗り床構造体。
【請求項3】
床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m
2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、
該導電性水系ポリマーセメント組成物は水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成り、
水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールを含み、水酸基当量は500~800であり、水分散ポリオールは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部であり、
ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中の30重量部超50重量部以下であり、
ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、
炭素繊維は長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであり、炭素繊維は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であり、
水硬性セメントは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部であり、
骨材は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部である、
ことを特徴とする導電塗り床構造体。
【請求項4】
ポリイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の導電塗り床構造体。
【請求項5】
塗膜表面の電気抵抗が、NFPA(National Fire Protection Association)法の印加電圧500Vの条件において、0.01MΩ超100MΩ未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の導電塗り床構造体。
【請求項6】
床下地コンクリート表面に導電プライマーを塗付して導電プライマー層を形成した後、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m
2で塗付して導電性水系ポリマーセメント組成物層を形成することにより請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の導電塗り床構造体を形成することを特徴とする導電塗り床構造体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、床下地コンクリート表面に導電塗り床構造体を形成する組成物として、ポリオール組成物、水、ポリイソシアネート、水硬性セメントを基本成分とし、等方性PITCH系カーボン短繊維とPAN系カーボン繊維を含有することを特徴とするポリウレタン系セメント組成物が提案されている。しかし、このようなポリウレタン系セメント組成物は、塗膜の収縮力が極めて大きいため単に床下地コンクリート表面に塗付すると容易に剥離するという課題があった。
【0003】
特許文献2ではポリオール、触媒、ポリイソシアネート、セメント、骨材及び水を含有して成る水硬性ポリマーセメント組成物が提案されており、該水硬性ポリマーセメント組成物においても前記同様の課題があった。これを解決するために、同特許文献の ポリオール、触媒、ポリイソシアネート、セメント、骨材及び水を含有してなる水硬性ポリマーセメント組成物であって、ポリオールはヒマシ油変性3官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する2官能ポリエーテルポリオールから成りポリオール、触媒、ポリイソシアネート、セメント、骨材及び水を含有してなる水硬性ポリマーセメント組成物であって、ポリオールはヒマシ油変性3官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する2官能ポリエーテルポリオールから成り、請求項3に記載の発明と同様に(特許文献3に記載の組成物では、その塗付厚さは6~9mmに塗付する場合であるので、床下地コンクリートの際部に深さ7~13mmで幅が7~13mmの溝部を設け、対向する溝部と溝部との距離が12m超ある場合は、該溝部から12m以内毎に深さ7~13mmで幅が7~13mmの目地部を設け、該溝部内及び目地部内に特許文献3に記載の組成物を充填しながら、床下地コンクリート上に塗付しなければならないが、本願発明の導電塗り床構造体の膜厚は3.5mm未満であるので溝部の形状が経験的に小さくて良く)、床下地コンクリートの際部に深さ3~7mmで幅が3~7mmの溝部を設け、対向する溝部と溝部との距離が12m超ある場合は、該溝部から12m以内毎に深さ3~7mmで幅が3~7mmの目地部を設け、該溝部内及び目地部内に組成物を充填しながら、床下地コンクリート上に塗付しなければならないという課題があり、このような塗付方法は手間と時間がかかり、結果として高コストになるという課題があった。
【0004】
これを解決するために、特許文献3では水分散ポリオール、ポリイソシアネート、有機金属系触媒、水硬性セメント及び骨材を含有してなる水硬性ポリマーセメント組成物が提案されており、塗膜の収縮応力が小さいために塗膜が剥がれることがなく、前記施工方法のような目地部を設ける必要がなく、床下地コンクリート表面に0.2mm以上4.0mm未満に塗付するペースト状の水硬性ポリマーセメント組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5160522号公報
【文献】特開2015-81325号公報
【文献】特開2020-37508号公報
【0006】
しかしながら、特許文献1、特許文献2の組成物は、ポリイソシアネートとしてポリメチルポリフェニルポリイソシアネートを使用した場合は、紫外線により著しく黄変し、床に塗付した該組成物の色調が変化して、ついには茶色になり美観を損ねるという課題がある。
【0007】
また、特許文献3の組成物は、経時により塗膜表面に微細なクラックが発生する場合がある、という課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、導電塗り床構造体を形成する塗膜の収縮応力が小さいために塗膜の収縮応力によっては床下地コンクリートから剥離することがなく、これにより床下地コンクリート上に導電塗り床構造体を形成するに当たって、床下地コンクリートの際部に深さ3~7mmで幅が3~7mmの溝部や該溝部から12m以内毎に深さ3~7mmで幅が3~7mmの目地部を設ける必要が無く、さらには紫外線によって色調が変化せず、美観にも優れ、塗膜表面の電気抵抗がNFPA法の印加電圧500Vの条件において0.01MΩ超100MΩ未満の優れた帯電防止性を有し、経時によって微細クラックが生じることが殆ど無い導電塗り床構造体及びその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、
該導電性水系ポリマーセメント組成物は水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成り、
水分散ポリオールは水と少なくともヒマシ油系3官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~800であり、水分散ポリオールは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部であり、
ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、
炭素繊維は長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであり、炭素繊維は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であり、
水硬性セメントは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部であり、
骨材は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部である、
ことを特徴とする導電塗り床構造体を提供する。
【0010】
請求項2記載の発明は、床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、
該導電性水系ポリマーセメント組成物は水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成り、
水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとヒマシ油系2官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~600であり、水分散ポリオールは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部であり、
ヒマシ油系2官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中の0重量部超40重量部以下であり、
ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、
炭素繊維は長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであり、炭素繊維は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であり、
水硬性セメントは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部であり、
骨材は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部である、
ことを特徴とする導電塗り床構造体を提供する。
【0011】
請求項3記載の発明は、床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、
該導電性水系ポリマーセメント組成物は水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成り、
水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールを含み、水酸基当量は500~800であり、水分散ポリオールは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部であり、
ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中の30重量部超50重量部以下であり、
ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、
炭素繊維は長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであり、炭素繊維は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であり、
水硬性セメントは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部であり、
骨材は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部である、
ことを特徴とする導電塗り床構造体を提供する。
【0012】
請求項4記載の発明は、ポリイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の導電塗り床構造体を提供する。
【0013】
請求項5記載の発明は、塗膜表面の電気抵抗が、NFPA(National Fire Protection Association)法の印加電圧500Vの条件において、0.01MΩ超100MΩ未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の導電塗り床構造体を提供する。
【0014】
請求項6の発明は、床下地コンクリート表面に導電プライマーを塗付して導電プライマー層を形成した後、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して導電性水系ポリマーセメント組成物層を形成することにより請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の導電塗り床構造体を形成することを特徴とする導電塗り床構造体の形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電塗り床構造体は、導電塗り床構造体を形成する塗膜の内部に発生する応力である収縮応力が極めて小さいという効果がある。このため、床下地コンクリート表面に導電プライマーを塗付して導電プライマー層を形成し、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して導電性水系ポリマーセメント組成物層を形成することで導電塗り床構造体を形成した際に、塗膜の層間及び床下地コンクリートとの界面において、収縮応力によっては塗膜が剥離することがないという効果がある。
【0016】
また、本発明の導電塗り床構造体は、上記のように導電塗り床構造体を形成する塗膜の収縮応力が極めて小さいため、導電塗り床構造体の形成に際して従来のように床下地コンクリートの際部や床下地コンクリート表面の12m以内毎に深さ3~7mmで幅が3~7mmの目地部を設ける必要が無いという効果がある。このため、容易に且つ短時間で床下地コンクリート表面に、本発明の導電塗り床構造体を形成する導電プライマーと導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付することが出来るという効果があり、結果として低コストであるという効果がある。
【0017】
また、本発明の導電塗り床構造体は、十分な耐衝撃性を有する、という効果がある。
【0018】
また、本発明の導電塗り床構造体は、最表面に層を成す導電性水系ポリマーセメント組成物に含まれるポリイソシアネートが脂肪族のイソシアヌレートから成るため、塗膜が日光や紫外線等によって黄変することが無く、美観に優れるという効果がある。
【0019】
さらには、本発明の導電塗り床構造体は、塗膜表面の電気抵抗が、NFPA(National Fire Protection Association)法の印加電圧500Vの条件において、0.01MΩ超100MΩ未満の優れた導電性(帯電防止性)を有するという効果がある。
【0020】
加えて、本発明の導電塗り床構造体を形成する導電性水系ポリマーセメント組成物において、塗膜に導電性フィラーとして炭素繊維を有しているが、従来より本発明のような塗り床材や接着剤等といった樹脂組成物に導電性を付与する材料としては、鉄、銀、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、亜鉛、又はそれらの合金等の導電性金属やその酸化物の粉末、酸化チタンやチタン酸カリウム等を酸化銅、酸化アンチモン等で表面処理を行った粉末、人造黒鉛、炭素繊維、グラファイト等の導電性無機物等、又はそれらの混合物が挙げられるところ、本発明者は試行錯誤と実験を繰り返すことで、多くの導電性フィラーの中から炭素繊維を選択し、本発明の導電塗り床構造体を形成する導電性水系ポリマーセメント組成物として十分な導電性が付与されるのと同時に塗膜の強度が補強されることを発見した。その結果として、本発明の導電塗り床構造体は経時によって塗膜表面に微細なクラックが生じることが殆ど無い、という効果がある。
【0021】
また、ただ単に炭素繊維を配合することで塗膜に導電性が付与されたとしても、炭素繊維が絡んだブツや、材料が含む気泡が塗膜表面に移動する際に押し上げられて出来た炭素繊維の突起等により塗膜が平滑な仕上がりでなくなるといった問題が起こり得るところ、本発明者が試行錯誤と実験を繰り返した結果、本発明の導電塗り床構造は、塗膜の仕上がり、導電性、及び耐微細クラック性の全てが良好である、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】下地コンクリートの表面に塗付した塗床材の塗膜が塗膜収縮力Tにより、5度の角度にて剥離する状態を塗膜断面方向から見た塗膜剥離モデル図である。
【
図2】水セメント比60%の下地コンクリートの表面引張強度とレイタンス残留率との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
本発明の導電塗り床構造体は、請求項1の導電塗り床構造体については、床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、
該導電性水系ポリマーセメント組成物は水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成り、
水分散ポリオールは水と少なくともヒマシ油系3官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~800であり、水分散ポリオールは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部であり、
ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、
炭素繊維は長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであり、炭素繊維は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であり、
水硬性セメントは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部であり、
骨材は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部である、
ことを特徴とする導電塗り床構造体であり、導電性水系ポリマーセメント組成物には必要に応じてこれらの他に、着色顔料、体質顔料、分散剤、消泡剤、希釈剤等の添加剤を配合することができる。
【0025】
また、請求項2記載の導電塗り床構造体については、床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、
該導電性水系ポリマーセメント組成物は水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成り、
水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとヒマシ油系2官能ポリオールを含み、水酸基当量は200~600であり、水分散ポリオールは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部であり、
ヒマシ油系2官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中の0重量部超40重量部以下であり、
ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、
炭素繊維は長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであり、炭素繊維は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であり、
水硬性セメントは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部であり、
骨材は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部である、
ことを特徴とする導電塗り床構造体であり、導電性水系ポリマーセメント組成物には必要に応じてこれらの他に、着色顔料、体質顔料、分散剤、消泡剤、希釈剤等の添加剤を配合することができる。
【0026】
また、請求項3記載の導電塗り床構造体については、床下地コンクリート表面に形成された導電プライマー層と、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して形成された導電性水系ポリマーセメント組成物層と、から成る導電塗り床構造体であり、
該導電性水系ポリマーセメント組成物は水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成り、
水分散ポリオールは水とヒマシ油系3官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールを含み、水酸基当量は500~800であり、水分散ポリオールは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部であり、
ヒマシ油系3官能ポリオールは水分散ポリオール100重量部中の30重量部超50重量部以下であり、
ポリイソシアネートは脂肪族イソシアヌレートから成り、ポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、
炭素繊維は長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであり、炭素繊維は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であり、
水硬性セメントは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部であり、
骨材は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部である、
ことを特徴とする導電塗り床構造体であり、導電性水系ポリマーセメント組成物には必要に応じてこれらの他に、着色顔料、体質顔料、分散剤、消泡剤、希釈剤等の添加剤を配合することができる。
【0027】
導電プライマー
本発明の導電プライマーは、バインダーとなる樹脂に導電性フィラーを分散して成るものである。導電性フィラーとしては、従来より本発明のような塗り床材や接着剤等といった樹脂組成物に配合されているものを使用でき、鉄、銀、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、亜鉛、又はそれらの合金等の導電性金属やその酸化物の粉末、酸化チタンやチタン酸カリウム等を酸化銅、酸化アンチモン等で表面処理を行った粉末、人造黒鉛、炭素繊維、グラファイト等の導電性無機物等、又はそれらの混合物が挙げられる。また、バインダーとなる樹脂としては、エポキシ樹脂やウレタン樹脂等、塗り床材として一般的に使用されるものであればよい。
【0028】
本発明の導電塗り床構造体を形成するために使用できる導電プライマーとしては、少なくとも塗膜の連続方向に電気を導電し、基材となる床下地コンクリートや塗り床材、及び導電プライマーの上に塗付される導電性水系ポリマーセメント組成物との付着性に優れ、形成する導電プライマー層の収縮応力が小さいために収縮応力によっては塗膜が基材から剥離することがなく、具体的には本発明の導電塗り床構造体を形成する導電性水系ポリマーセメント組成物と共に使用した際、導電塗り床構造体として下記の評価項目を満足するものを使用することができる。
【0029】
前記のような導電プライマーの市販のものとしては、溶剤系エポキシ樹脂の導電プライマーであるジョリエースJE-2560(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ポリアミドアミン、固形分:40%、人造黒鉛:18%、アイカ工業株式会社製、商品名)、水系エポキシ樹脂の導電プライマーであるジョリエースJA-60(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ポリアミドアミン、固形分:60%、水:40%、人造黒鉛:18%、アイカ工業株式会社製、商品名)、及び水系硬質ウレタン樹脂の導電プライマーであるジョリエースJJ-565(ポリオールエマルション、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、セメント系骨材、固形分:95%、水:5%、等方性PITCH系炭素繊維:0.3%、PAN系炭素繊維:0.1%、アイカ工業株式会社製、商品名)等があり使用することができる。
【0030】
導電性水系ポリマーセメント組成物
本発明の導電性水系ポリマーセメント組成物は、水分散ポリオールと、ポリイソシアネートと、有機金属系触媒と、炭素繊維と、水硬性セメントと、骨材と、から成るものである。
【0031】
本発明の導電性水系ポリマーセメント組成物において、水分散ポリオールに含まれる水酸基(OH)のモル数とポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)のモル数の比率(以下、NCO/OHモル比)は、特に限定されないが、1.0~7.2であることが好ましく、2.0~6.5であることがより好ましい。0.5未満では塗膜の架橋率が低くなり、硬化性が乏しくなり耐衝撃性が不十分となる場合があり、3.5超では未反応のイソシアネートが残存し初期硬化性に悪影響をもたらす場合や膨れ等の仕上がり不良の原因となる場合がある。また、NCO/OHモル比が1.0~7.2の範囲内であれば、硬化反応時の二酸化炭素による発砲を最小限にとどめられ、また、未反応の多官能イソシアネート化合物の揮発による作業環境への悪影響が少ない。
【0032】
上記のポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)のモル数の計算方法は、
イソシアネート基(mol)=配合部数×(NCO%/100)÷42
であり、上記の水分散ポリオールに含まれる水酸基(OH)のモル数の計算方法は、
水酸基(mol)=配合部数÷水酸基当量
であり、NCO/OHモル比の計算方法は、
NCO/OHモル比=イソシアネート基(mol)÷水酸基(mol)
である。
【0033】
導電塗り床構造体は、塗膜の厚さ方向と塗膜の連続方向(略水平方向)に電気を導電することでその機能を発揮するところ、本発明の導電性水系ポリマーセメント組成物の硬化物が電気を導電し得るのは塗膜の厚さ方向のみであるため、塗膜の連続方向に電気を導電させることができる導電プライマーを併用する必要がある。つまりは、床下地コンクリート表面に導電プライマーを塗付して導電プライマー層を形成した後、該導電プライマー層の上に導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付して導電性水系ポリマーセメント組成物層を形成することで、塗膜の厚さ方向及び塗膜の連続方向に電気を導電することができる塗り床構造体、つまりは導電塗り床構造体を形成することとなる。
【0034】
<水分散ポリオール>
本発明に使用する水分散ポリオールは、請求項1に記載の導電塗り床構造体においては、少なくともヒマシ油系3官能ポリオールを含み、該ヒマシ油系3官能ポリオールは、ヒマシ油又はその誘導体で、例えばヒマシ油脂肪酸のトリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド及びそれらの混合物であり、水酸基数が3のポリオールである。本発明に使用する水分散ポリオールの水酸基当量は、200~800が好ましく、200未満では導電性水系ポリマーセメント組成物の硬化が速くなって作業性が不良となり、800超では導電性水系ポリマーセメント組成物の硬化塗膜の強度が不十分となる。水分散ポリオールの配合量は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部が好ましく、10重量部未満では組成物の硬化物の強度が低下し30重量部超では組成物を金鏝で塗付する際の作業性が低下する。
【0035】
本発明に使用する水分散ポリオールは、請求項2に記載の導電塗り床構造体においては、水とヒマシ油系3官能ポリオールとヒマシ油系2官能ポリオールからなり、ヒマシ油系3官能ポリオールは、上記同様、ヒマシ油及びその誘導体で、例えばヒマシ油脂肪酸のトリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド及びそれらの混合物であり、水酸基数が3のポリオールであり、ヒマシ油系2官能ポリオールは、同様にヒマシ油又はその誘導体を使用することができ、水酸基数が2のポリオールである。本発明に使用する水分散ポリオールの水酸基当量は、200~600が好ましく、200未満では導電性水系ポリマーセメント組成物としての硬化が速くなって作業性が不良となり、600超では導電性水系ポリマーセメント組成物として硬化後の強度が不十分となる。水分散ポリオールの配合量は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部が好ましく、10重量部未満では組成物の硬化物の強度が低下し30重量部超では組成物を金鏝で塗付する際の作業性が低下する。
【0036】
請求項2に記載の導電性水系ポリマーセメント組成物における水分散ポリオール中のヒマシ油系2官能ポリオールは、水分散ポリオール100重量部中の0重量部超40重量部以下であり、40重量部超となると、耐衝撃性が不十分となる場合がある。
【0037】
ヒマシ油系3官能ポリオールの代替としてヒマシ油系2官能ポリオールを含むことによる耐衝撃性の低下を、グリセリンを架橋剤として配合することで、不足する耐衝撃性を補うことができる。具体的には、導電塗り床構造体として下記評価項目で規定している性能の耐衝撃性とし、この性能を必要とする導電塗り床構造体として使用可能とする。このためヒマシ油系2官能ポリオールを配合し、より優れた耐衝撃性が要求される場合には、さらにグリセリンを配合することになる。
【0038】
使用可能なグリセリンの配合量は、導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0重量部超5重量部以下であり、上記ヒマシ油系2官能ポリオールの配合により不十分となった耐衝撃性を補う量を配合する。
【0039】
本発明に使用する水分散ポリオールは、請求項3に記載の導電塗り床構造体においては、水とヒマシ油系3官能ポリオールとビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールを含み、ヒマシ油系3官能ポリオールは、上記同様、ヒマシ油及びその誘導体で、例えばヒマシ油脂肪酸のトリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド及びそれらの混合物であり、水酸基数が3のポリオールである。本発明に使用するヒマシ油系3官能ポリオールの水酸基当量は250~450が好ましく、250未満では硬化物の収縮応力が大きくなって塗膜が下地コンクリートから剥離したり、硬化が速くなって作業性が不良となり、450超では導電性水系ポリマーセメント組成物として硬化後の強度が不十分となる。また水分散ポリオール中のヒマシ油系3官能ポリオールの含有量は水分散ポリオール100重量部中の30重量部超50重量部以下が好ましく、30重量部以下では強度が不足する場合があり、50重量部超では耐衝撃性が不十分となる場合がある。
【0040】
ビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールは、ビスフェノールA骨格を有するポリエポキシ化合物に活性水素化合物を反応させて得られるエポキシ開環ポリオールであり、水酸基当量は250~450が好ましい。水酸基当量が250未満では硬化物の収縮応力が大きくなって塗膜が下地コンクリートから剥離したり、硬化が速くなって作業性が不良となる場合があり、450超では導電性水系ポリマーセメント組成物として硬化後の強度が不十分となる場合がある。また水分散ポリオール中のビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールの含有量は水分散ポリオール100重量部中の2重量部超15重量部以下が好ましく、2重量部以下では強度が不足する場合があり、15重量部超では耐衝撃性が不十分となる場合がある。水分散ポリオールの配合量は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~30重量部が好ましく、10重量部未満では組成物の硬化物の強度が低下し30重量部超では組成物を金鏝で塗付する際の作業性が低下する。
【0041】
<ポリイソシアネート>
本発明に使用するポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートから得られ、イソシアヌレート構造体を有する脂肪族イソシアヌレートから成る。詳しくは、1,6ヘキサメチレンジイソシアネートを環化三量化することによって得られるヘキサメチレンジイソシアヌレートが優れた耐候性を有し、塗膜の硬度を向上させることから好ましい。1,6ヘキサメチレンジイソシアネートを環化三量化するには、特開平01-33115号公報に記載の方法を使用することができ、本願発明に使用するポリイソシアネートには、他の脂肪族ジイソシアネートや脂環式ジイソシアネート等、またこれらのプレポリマーを併用することが出来、ポリイソシアネートの含有量99重量%以上のものを使用する。
【0042】
また、本発明に使用するポリイソシアネートとしては、NCO%が15~25重量%のものを使用することができ、NCO%が20~25重量%のポリイソシアネートがより好ましい。15重量%未満では塗膜の強度が不足する場合があり、25重量%超ではイソシアヌレート構造体をとっているポリイソシアネートが少なくなり、また逆に三量化されていない、例えばジイソシアネートであるポリイソシアネートが増えることになるため、同様に塗膜の強度が不足する。
【0043】
また、本発明に使用するポリイソシアネートの粘度は500~3500mPa・s/25℃であることが好ましく、500mPa・s未満では塗膜の強度が不足する場合があり、3500mPa・s超では下地コンクリート表面に塗付する際の作業性が低下する場合がある。本発明に使用するポリイソシアネートは導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部であり、20重量部未満では塗膜の強度が不足する場合があり、40重量部超では硬化時間が短くなって、施工性が不足する場合がある。
【0044】
<炭素繊維>
炭素繊維はアクリル繊維を使ったPAN(polyacrylonitrile)系と、石油やコールタールなどの副生成物から得られるピッチを原料として使ったPITCH系に区分され、PITCH系は原料の違いによりさらに等方性ピッチ系とメソフェーズピッチ系に分類されるが、本発明にはいずれか一つ又は二つ以上の混合物を使用可能である。本発明に使用する炭素繊維は、長さ0.01~2.5mm、直径5~20μmであることが好ましく、長さが0.01mm未満では導電性が低下する場合があり、2.5mm超では炭素繊維の突起により塗膜表面の平滑性が低下する場合があり、直径が5μm未満では導電性が低下する場合があり、20μm超では金鏝を用いての施工性が低下する場合がある。
【0045】
本発明に使用する炭素繊維の配合量は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.05~0.2重量部であることが好ましく、0.05重量部未満では導電性が不足し、0.2重量部超では組成物の粘度が上がり流動性(作業性)が低下する場合や、炭素繊維が絡んでできるブツにより塗膜の平滑性が損なわれる場合がある。
【0046】
炭素繊維が塗膜内で導電経路を形成するには炭素繊維同士の接触が必須である。PAN系炭素繊維は繊維径が小さく均一であり、湾曲が無くまっすぐであり導電経路の距離を確保するのに適しているが、その形状のため分散状態では別の炭素繊維との接触確率が低いと考えられ、この繊維の配合量を増やして接触量を確保しようとすると、組成物の流動性を著しく低下させたり、絡まりが生じたりして作業性や塗膜の仕上がりに悪影響を与える場合がある。その一方で、PITCH系炭素繊維は繊維径が大きく、湾曲した形状であるため導電経路を形成するためには不利な形状であるが、分散状態では絡まりが生じにくく流動性の低下も少ないため比較的多く含有させることができる。特許文献1においては、これらを複合して用いることにより、PAN系炭素繊維によって形成される導電経路において、PITCH系炭素繊維がアンカーポイントの役割を果たし、断点の少ない連続的な3次元的経路を形成し易くなり、より少ない繊維量で導電性を確保できることが示されている。この方法は、特には組成物の硬化塗膜を占める炭素繊維の割合が少ない場合に有効であり、つまりは絶縁体である骨材等の割合が多いために炭素繊維が導電経路を形成し難い場合に有用である。そのため本発明の導電性水系ポリマーセメント組成物のように、絶縁体である骨材等の配合量が多くなく、炭素繊維が導電経路を形成することが難しくない場合には、PAN系炭素繊維、又はPITCH系炭素繊維のどちらかを含有するだけで十分である。勿論、このような場合においてもPAN系炭素繊維とPITCH系炭素繊維を混合して使用することを妨げない。
【0047】
また、本発明の導電性水系ポリマーセメント組成物において炭素繊維を配合することは導電性を付与するのみならず、導電性水系ポリマーセメント組成物が形成する塗膜を補強することができ、特には、経時での微細クラックの発生に対して効果的である(耐微細クラック性)。
【0048】
前記耐微細クラック性は塗膜内に均一に且つ多数の炭素繊維が分散している方がより効果的であると考察できるところ、上述のように比較的多い量を配合しようとするとPAN系炭素繊維は絡まりが生じて塗膜の仕上がりに悪影響を与える場合がある一方でPITCH系炭素繊維は絡まりが生じにくいため、耐微細クラック性と炭素繊維の関係においてはPITCH系炭素繊維が適していると推測する。そのため、PAN系炭素繊維とPITCH系炭素繊維を併用する際には、耐微細クラック性、導電性、塗膜の表面仕上がり性が損なわれない場合に可能であり、これらの点で主としてPITCH系炭素繊維を使用することが好ましい。
【0049】
<有機金属系触媒>
本発明に使用する有機金属系触媒は、導電性水系ポリマーセメント組成物の硬化を促進させるために配合され、例えば、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリン酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属系触媒等を使用することが出来る。これらの硬化触媒の中でも、有機錫化合物がより好ましい。また、これらの硬化触媒のうち、触媒効果の点から、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライドがより好ましい。有機金属系触媒の配合量は、導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の0.005~0.05重量部が好ましく、0.005重量部未満では塗膜の強度が不十分となる場合があり、0.05重量部超では硬化が速くなり金鏝等での塗付作業性が不良となる場合がある。
【0050】
<水硬性セメント>
本発明に使用する水硬性セメントは、特定の色調が付与できるように、主として白色ポルトランドセメントを使用することが好ましく、他に普通ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント、早強ポルトランドセメント等を併用することが出来る。水硬性セメントの配合量は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の10~20重量部が好ましく、10重量部未満では塗膜の強度が低下し、20重量部超では導電性水系ポリマーセメント組成物を金鏝等で塗付する際の塗付作業性が低下する。
【0051】
<骨材>
本発明に使用する骨材は、粒径が50μm~700μmの硅砂、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を使用することが出来る。粒径が50μm未満では導電性水系ポリマーセメント組成物の粘度が高くなり、塗付作業性が低下し、粒径が700μm超では導電性水系ポリマーセメント組成物を塗付した際に塗膜の表面平滑性が劣る場合がある。
【0052】
骨材の配合量は導電性水系ポリマーセメント組成物100重量部中の20~40重量部が好ましく、20重量部未満では塗膜平滑性が不良と成る場合があり、40重量部超では耐衝撃性が低下する場合がある。
【0053】
本発明の導電性水系ポリマーセメント組成物には、上記のほかに消石灰を配合することが好ましい。該消石灰は、ポリイソシアネートと水とのウレア反応で発生する炭酸ガスを吸収し、組成物が塗付され硬化するまでに発生する炭酸ガスが特定部分に集中して塗膜を押上げて膨れを生じさせることを抑制する効果がある。
【0054】
本発明で使用する導電プライマーを塗付する際には、粘度や塗付量を考慮して、ローラー又は金鏝を選択して施工することができる。また、本発明の導電性水系ポリマーセメント組成物の塗付は、金鏝を使用して塗付量2.5~4.5kg/m2で塗付して仕上げることが、導電性水系ポリマーセメント組成物の塗膜表面の仕上がりと導電性の点で好ましい。
【0055】
本発明の導電塗り床構造体を形成する際、導電プライマーを塗付して導電プライマー層を形成する前に、床下地コンクリート上に導電性を有さないエポキシ樹脂系塗り床材を塗付することができる。該エポキシ樹脂系塗り床材を塗付することで、床下地コンクリート上に緻密で強靭な床構造体を形成することができ、これにより床下地コンクリートから上昇してくる水分が本発明の導電塗り床構造体の裏面へ透過することを防止し、剥離や膨れの不具合を抑制することができる。該エポキシ樹脂系塗り床材の市販品としては、プライマーのJE-70(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性脂肪族ポリアミン、固形分:40%、アイカ工業株式会社製、商品名)と、エポキシ樹脂系塗り床材のJE-20G(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性脂肪族ポリアミン、固形分:100%、アイカ工業株式会社製、商品名)等が使用できる。
【0056】
以下、実施例及び比較例にて具体的に説明する。
【実施例】
【0057】
<実施例及び比較例>
実施例及び比較例の導電塗り床構造体について、層構成、塗付量、及び形成された導電塗り床構造体の膜厚について表1に示した。また、実施例及び比較例の導電塗り床構造体を形成する導電性水系ポリマーセメント組成物A~Iの配合及びNCO/OHモル比を表2に示した(表1及び表2中では組成物A~Iと略記)。
導電プライマー
導電プライマーとして、溶剤系エポキシ樹脂の導電プライマーであるジョリエースJE-2560(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ポリアミドアミン、固形分:40%、人造黒鉛:18%、アイカ工業株式会社製、商品名)、水系エポキシ樹脂の導電プライマーであるジョリエースJA-60(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ポリアミドアミン、固形分:60%、水:40%、人造黒鉛:18%、アイカ工業株式会社製、商品名)、及び水系硬質ウレタン樹脂の導電プライマーであるジョリエースJJ-565(ポリオールエマルション、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、セメント系骨材、固形分:95%、水:5%、等方性PITCH系炭素繊維:0.3%、PAN系炭素繊維:0.1%、アイカ工業株式会社製、商品名)を使用して実施例及び比較例の導電塗り床構造体を形成した。
導電性水系ポリマーセメント組成物
水分散ポリオールとして、ヒマシ油系3官能ポリオールから成り水酸基当量が280~560の水分散ポリオールA(水含有量:25~30重量%)と、ヒマシ油系3官能ポリオール100重量部に対してヒマシ油系2官能ポリオールが14~20重量部含まれ、全体として水酸基当量が200~500の水分散ポリオールB(水含有量:25~30重量%)と、水酸基当量が350のヒマシ油変性3官能ポリオールを35~40重量部と、水酸基当量が360のビスフェノールA骨格を有する4官能ポリオールを5~10重量部と、希釈剤としてスルホン酸エステル化合物(メザモール;商品名、バイエル社製)を20~25重量部と、水(イオン交換水)30重量部を含み全体として100重量部となり、水酸基当量が500~800の水分散ポリオールCを使用し、ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアヌレート(粘度2400mPa・s/25℃、NCO%:22重量%、ポリイソシアネート含有量99重量%以上)のポリイソシアネートAと、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネートであるポリイソシアネートB(粘度170mPa/25℃、NCO%:30.5重量%、ポリイソシアネート含有量99重量%以上)を使用し、有機金属系触媒として、ネオスタンU220H(ジブチル錫ジアセチルアセトナート)を使用し、炭素繊維として、長さ1.55mm、直径13μmである等方性PITCH系の炭素繊維Aと、長さ0.1mm、直径7μmであるPAN系の炭素繊維Bと、長さ3.0mm、直径7μmであるPAN系の炭素繊維Cを使用し、骨材として、粒径50~250μmの硅砂である骨材Aと、粒径75~425μmの硅砂である骨材Bと、粒径45μm~300μmの硅砂である骨材Cを使用し、水硬性セメントとして白色ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)を使用して、表2に示す導電性水系硬質ポリマーセメント組成物A~Hを調製し、これらを使用して実施例及び比較例の導電塗り床構造体を形成した。
【0058】
【0059】
【0060】
<評価項目及び評価方法>
【0061】
<塗膜表面平滑性>
23℃下でJISA5371の300mm×300mm×厚さ60mmの乾燥したコンクリート平板(ケット水分計HI-520コンクリートレンジにて5%以下)の表面に、導電プライマーであるJE-2560及びJA-60をローラーにて、JJ-565を金鏝にて所定の塗付量を塗付して15時間養生した後、導電性水系ポリマーセメント組成物を金鏝で所定の塗付量を塗布して7日間養生することで実施例及び比較例の導電塗り床構造体を形成した。塗膜の表面状態を目視にて観察し、平滑な仕上がりである場合を〇とし、炭素繊維が絡んだブツや、材料が含む気泡が塗膜表面に移動する際に押し上げられて出来た炭素繊維の突起等により平滑な仕上がりでない場合、及び組成物の粘度が高く流動性(作業性)が不良なために平滑な仕上がりでない場合を×と評価した。
【0062】
<帯電防止性>
23℃下でJISA5430規定のフレキシブルボード(900×900mm、厚さ7mm)の表面に、導電プライマーであるJE-2560及びJA-60をローラーにて、JJ-565を金鏝にて所定の塗付量を塗付して15時間養生した後、導電性水系ポリマーセメント組成物を金鏝で所定の塗付量を塗布して7日間養生することで実施例及び比較例の導電塗り床構造体を形成した。NFPA-56AStandard for the Use of Inhalation Anestheticsに準拠し、重量2.27kg(5ポンド)の所定の電極2つを導電塗り床構造体の上に91.4cm(3フィート)の距離で載置し印加電圧500Vにて表面抵抗値を測定した。0.01MΩ超100MΩ未満のものは導電性(帯電防止性)を有するとして〇と、それ以外のものを×と評価した。
【0063】
<耐衝撃性>
23℃下でJISA5371の300mm×300mm×厚さ60mmの乾燥したコンクリート平板(ケット水分計HI-520コンクリートレンジにて5%以下)の表面に、導電プライマーであるJE-2560及びJA-60をローラーにて、JJ-565を金鏝にて所定の塗付量を塗付して15時間養生した後、導電性水系ポリマーセメント組成物を金鏝で所定の塗付量を塗布して7日間養生することで実施例及び比較例の導電塗り床構造体を形成した。形成した導電塗り床構造体の中央部に高さ1mから1kgの鋼球を20回落下させ、割れ、剥がれ等の異常のないものを〇と、60回落下させ、割れ、剥がれ等の異常のないものを◎と、鉄球の落下回数が20回未満で割れ、剥がれ等の異常が生じたものを×と評価した。
【0064】
<耐微細クラック性>
23℃下でJISA5371の300mm×300mm×厚さ60mmの乾燥したコンクリート平板(ケット水分計HI-520コンクリートレンジにて5%以下)を4分の1にカットして150mm×150mm×厚さ60mmの試験板とし、該試験板の表面をサンドペーパー#80で十分に目荒らしをして脆弱層を除去し、導電プライマーであるJE-2560及びJA-60をローラーにて、JJ-565を金鏝にて所定の塗付量を塗付して15時間養生した後、導電性水系ポリマーセメント組成物を金鏝で所定の塗付量を塗布して7日間養生することで実施例及び比較例の導電塗り床構造体を形成した。その後、導電塗り床構造体の中央部に95℃熱水を5分流下させ次に20℃の冷水を10分流下させることを1サイクルとして400サイクル繰り返し、表面に微細クラックが発生していないものを〇と、微細なクラックが発生しているものを×と評価した。
【0065】
<付着強度>
23℃下でJISA5371の300mm×300mm×厚さ60mmの乾燥したコンクリート平板(ケット水分計HI-520コンクリートレンジにて5%以下)の表面に、導電プライマーであるJE-2560及びJA-60をローラーにて、JJ-565を金鏝にて所定の塗付量を塗付して15時間養生した後、導電性水系ポリマーセメント組成物を金鏝で所定の塗付量を塗布して7日間養生することで実施例及び比較例の導電塗り床構造体を形成した。建研式接着力試験器により、40×40mm部分の導電塗り床構造体とコンクリート平板との付着強度(N/mm2)を測定した。破壊状態が下地コンクリート100%凝集破壊を〇と、それ以外を×と評価した。
【0066】
<耐剥離性>
23℃で実施例及び比較例の導電塗り床構造体を、長さ160mm×幅10mmの短冊状に形成し、それぞれ7日間養生後、さらに50℃14日間加熱養生させた際の収縮歪み量L(mm)を測定する。次に長手方向に速度1mm/分で引張り、引張弾性係数E(N/mm
2)を測定する。収縮歪み量L(mm)と試験体の23℃7日養生後の長さL
0(mm)とから次式(1)により塗膜単位断面積当りの収縮応力(N/mm
2)を算出し、さらに表1に示す実施例及び比較例の導電塗り床構造体の膜厚を乗じて塗膜単位幅当りの塗膜収縮力T(N/mm)を求めた。
収縮応力(N/mm
2)=E(L/L
0)・・・(1)
ここで塗膜収縮力T(N/mm)は経験的に塗膜を剥離させる方向に作用するものと考えられるため、この際の塗膜収縮力をモデル的及び経験的に
図1に示すように5度程度の浅い角度で塗膜を引っ張るように働いて塗膜を剥離させるものと考え、次式(2)により塗膜の単位幅(mm)当りの垂直方向の力Tv(N/mm)に換算した。
垂直方向の力Tv(N/mm)=sin5°×T・・・(2)
この単位幅当り(1mm)の垂直方向の力Tv(N/mm)は、膜厚が2.0~3.5mmと厚いため、実験的及び経験的に塗膜が接着している下地の1mm
2に作用すると考え、該垂直方向の力は塗膜を下地コンクリートの単位表面積(1mm
2)に対して垂直方向に引っ張るように作用し、これを垂直応力Tv
2(N/mm
2)とした。
【0067】
その上で、まず、水/セメント比が60%での下地コンクリートの表面引張強度とレイタンス残留率との関係を示した
図2(塗り床のふくれ発生に及ぼす下地コンクリートの影響、日本建築学会構造体系論文集、第493号、1-7、1997年3月、表1及び図-12(気乾状態)参照。図-12(気乾状態)から下地凝集破壊のもののみを抽出して図示したもの)と、前記垂直応力Tv
2(N/mm
2)とを比較し、万が一レイタンスが下地コンクリートに100%残っていたとしても、その下地の表面引張強度は0.7N/mm
2であるとして(通常はレイタンスがすべて除去された下地コンクリートが塗床材の施工に適した下地コンクリート仕様となっている)、該0.7N/mm
2よりも垂直応力Tv
2(N/mm
2)が小さければ、塗膜の収縮力のみの作用では、該塗膜は下地コンクリートより剥離することがないものと考え、◎と評価した。垂直応力Tv
2(N/mm
2)が下地コンクリートの前記表面引張強度0.7N/mm
2(レイタンス残留率100%)より大きい場合は、塗膜の収縮力のみの作用で、塗膜が下地コンクリートの表面を破壊して剥離する場合があるとして×と評価した。
【0068】
また、平成24年度版の塗り床ハンドブック(平成24年3月1日発行、監修横山 裕、編著 日本塗り床工業会、発行・販売 工文社)には、塗り床の下地となる新設のコンクリート・モルタル及び改修下地の品質の一つとしての表面(引張)強度を 1.5N/mm2と規定していることより、この1.5N/mm2と前記垂直応力Tv2(N/mm2)とを比較し、該1.5N/mm2よりも垂直応力Tv2(N/mm2)が小さければ、塗膜の収縮力のみの作用では、該塗膜は下地コンクリートより剥離することがないものと考え、〇と評価した。垂直応力Tv2(N/mm2)が表面(引張)強度1.5N/mm2より大きい場合は、塗膜の収縮力のみの作用で、塗膜が下地コンクリートの表面を破壊して剥離する場合があるとして×と評価した。
【0069】
上記、2つの判定のうち少なくとも塗床ハンドブックでの規定値1.5N/mm2での判定が〇であれば、耐剥離性は良好であると判断し、いずれもが×の場合は、従来のように床下地コンクリートの際部に深さ3~7mmで幅が3~7mmの溝部を設け、対向する溝部と溝部との距離が12m超ある場合は、該溝部から12m以内毎に深さ3~7mmで幅が3~7mmの目地部を設け、該溝部内及び目地部内に組成物を充填しながら、床下地コンクリート上に塗付しなければならないと判断する。
【0070】
<耐黄変性>
23℃下でJISA5430規定のフレキシブルボード(900×900mm、厚さ7mm)の表面に導電プライマーであるJE-2560及びJA-60をローラーにて、JJ-565を金鏝にて所定の塗付量を塗付して15時間養生した後、導電性水系ポリマーセメント組成物を金鏝で所定の塗付量を塗布して7日間養生することで実施例及び比較例の導電塗り床構造体を形成した。それぞれブラックライト(殺菌灯、ピーク波長256nm、31μW/cm2)を高さ50cmから300時間照射し、照射前と照射後の色差(ΔE)を色彩色差計(CM-2600d、コニカミノルタセンシング株式会社製)にて測定した。ΔEが1.0以下のものを〇と、ΔEが1.0超のものを×と評価した。
【0071】
<評価結果>
評価結果を表3に示す。
【0072】