IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-分離システム及び分離方法 図1
  • 特許-分離システム及び分離方法 図2
  • 特許-分離システム及び分離方法 図3
  • 特許-分離システム及び分離方法 図4
  • 特許-分離システム及び分離方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】分離システム及び分離方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/10 20060101AFI20231102BHJP
   C08J 11/08 20060101ALI20231102BHJP
   B01D 17/025 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08J11/10 CFD
C08J11/08 ZAB
B01D17/025 504
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021091776
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022184117
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 亘
(72)【発明者】
【氏名】源田 稔
(72)【発明者】
【氏名】清木 義夫
(72)【発明者】
【氏名】堀添 浩司
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-522387(JP,A)
【文献】特開平8-325407(JP,A)
【文献】特開2002-86448(JP,A)
【文献】特開2003-49020(JP,A)
【文献】特開2002-60542(JP,A)
【文献】特開2005-14279(JP,A)
【文献】特開2005-2161(JP,A)
【文献】特開平7-286061(JP,A)
【文献】特開2000-297178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0361356(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0102441(US,A1)
【文献】特開平6-211971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-11/28
B29B 17/00-17/04
B09B 1/00-5/00
C07C 1/00-409/44
B01D 17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸由来のモノマーにポリエチレンテレフタラートが溶解したPET溶液と、前記ポリエチレンテレフタラート以外の成分である不純物とを含む溶解液が貯留されて、前記溶解液を、重力により前記PET溶液と前記不純物とに分離する貯留部と、
分離された前記不純物を前記貯留部内から排出する排出部と、
分離された前記PET溶液と、ポリエチレンテレフタラートと反応する反応溶媒とが導入されて、前記PET溶液中のポリエチレンテレフタラートを解重合する反応部と、
前記排出部から排出された前記不純物の少なくとも一部を前記溶解液に導入する導入部と、
を有する、分離システム。
【請求項2】
前記排出部は、前記貯留部内において前記PET溶液よりも下層に分離された前記不純物である第1不純物を排出する第1排出部と、前記PET溶液よりも上層に分離された前記不純物である第2不純物を排出する第2排出部と、を含む、請求項1に記載の分離システム。
【請求項3】
分離された前記PET溶液中に存在する前記不純物である第3不純物を、前記PET溶液から除去する除去部を更に有する、請求項又は請求項に記載の分離システム。
【請求項4】
ポリエチレンテレフタラートを含むPET原料と、カルボン酸由来のモノマーとが導入されて、前記溶解液を生成する溶解部を更に有し、
前記貯留部は、前記溶解部と接続されて、前記溶解部から前記溶解液が導入される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の分離システム。
【請求項5】
前記反応溶媒は、メタノールであり、前記カルボン酸由来のモノマーは、テレフタル酸ジメチルである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の分離システム。
【請求項6】
カルボン酸由来のモノマーにポリエチレンテレフタラートが溶解したPET溶液と、前記ポリエチレンテレフタラート以外の成分である不純物とを含む溶解液を、重力により前記PET溶液と前記不純物とに分離するステップと、
分離された前記不純物を排出するステップと、
分離された前記PET溶液と、ポリエチレンテレフタラートと反応する反応溶媒とを反応させて、前記PET溶液中のポリエチレンテレフタラートを解重合するステップと、
排出された前記不純物の少なくとも一部を前記溶解液に導入するステップと、
を有する、
分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分離システム及び分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポリエステルをリサイクルするために、ポリエステルから不純物を分離する技術が知られている。特許文献1には、ポリエチレンテレフタレート(PET)廃棄物をエチレングリコール(EG)に投入して解重合を行って、ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を得る旨、及び、解重合の反応中又は反応後に、PET以外の異物をろ過機により除去する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4065659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、PET以外の異物は、高粘度の溶融体として存在している場合がある。そのため、溶融した異物が、ろ過機のフィルタの開口部を閉塞してしまい、異物を適切に回収、分離できなくなるおそれがある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、PETと異物とを適切に分離可能な分離システム及び分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る分離システムは、カルボン酸由来のモノマーにポリエチレンテレフタラートが溶解したPET溶液と、前記ポリエチレンテレフタラート以外の成分である不純物とを含む溶解液が貯留されて、前記溶解液を、重力により前記PET溶液と前記不純物とに分離する貯留部と、分離された前記不純物を前記貯留部内から排出する排出部と、分離された前記PET溶液と、ポリエチレンテレフタラートと反応する反応溶媒とが導入されて、前記PET溶液中のポリエチレンテレフタラートを解重合する反応部と、を有する。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る分離方法は、カルボン酸由来のモノマーにポリエチレンテレフタラートが溶解したPET溶液と、前記ポリエチレンテレフタラート以外の成分である不純物とを含む溶解液を、重力により前記PET溶液と前記不純物とに分離するステップと、分離された前記不純物を排出するステップと、分離された前記PET溶液と、ポリエチレンテレフタラートと反応する反応溶媒とを反応させて、前記PET溶液中のポリエチレンテレフタラートを解重合するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、PETと異物とを適切に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態におけるポリエチレンテレフタラートのリサイクル工程の模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る分離システムの模式図である。
図3図3は、分離システムの動作フローを説明するフローチャートである。
図4図4は、反応部の他の例を示す模式図である。
図5図5は、第2実施形態に係る分離システムの一部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0011】
(第1実施形態)
(リサイクル工程)
図1は、本実施形態におけるポリエチレンテレフタラートのリサイクル工程の模式図である。本実施形態においては、PET(ポリエチレンテレフタラート)原料Pmを解重合してモノマー化し、モノマーを再度重合させることで、PET原料Pmをリサイクル(再生)する工程を行う。具体的には、図1に示すように、PET原料Pmをフレーク化し(ステップS100)、反応溶媒Mと混合してPET原料Pmを解重合し(ステップS102)、解重合したポリエステルのモノマーを精製(分離)してカルボン酸由来のモノマーDとアルコール成分のモノマーEとを抽出し(ステップS104)、モノマーDを加水分解して反応溶媒Mを分離し(ステップS106)、モノマーDが加水分解して生成されたモノマーFと、モノマーEとを重合させて(ステップS108)、PET原料Pmを再生する。なお、本実施形態の分離システム1を採用したリサイクル工程は、ステップS108のように再重合する処理まで行わずに、ステップS102、ステップS104に示すモノマーD、E、及びステップS106に示すモノマーFを回収する処理のみを行ってよい。
【0012】
(PET原料)
本実施形態において解重合の対象となるPET原料Pmは、PET(ポリエチレンテレフタラート)を含有する物質である。PET原料Pmは、PET成分のみを含有するものに限られず、PET成分以外の成分も含む。PET原料Pmに含まれるPET以外の成分としては、例えば、PET以外のポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチック類、金属類、顔料、及び重合触媒などが挙げられる。以下、PET原料Pmに含まれるPET以外の成分を、不純物Rとする。
【0013】
(反応溶媒)
反応溶媒Mは、PETと反応して、PETを解重合させる溶媒である。反応溶媒Mは、例えば、メタノール、エタノール、水及びエチレングリコールのうちの少なくとも1つであってよい。
【0014】
(カルボン酸のモノマー)
カルボン酸由来のモノマーDは、PETの解重合反応により生成された、カルボキシル基を有するモノマーである。モノマーDは、例えば、カルボン酸ジメチルやカルボン酸ジエチルであってよい。さらに言えば、モノマーDは、テレフタル酸のモノマーであることが好ましく、例えばテレフタル酸ジメチル(DMT)であってよい。
【0015】
(アルコールのモノマー)
アルコール成分のモノマーEは、PETの解重合反応により生成された、アルコール成分のモノマーである。モノマーEは、例えば、ジヒドロキシ化合物(二価アルコール)であってよく、さらに言えば、エチレングリコール(EG)であってよい。
【0016】
以降においては、反応溶媒Mがメタノールであり、モノマーDがDMTであり、モノマーEがEGである場合を例にして説明する。
【0017】
(分離システム)
図2は、第1実施形態に係る分離システムの模式図である。第1実施形態に係る分離システム1は、PET原料Pmに含まれるポリエステルをモノマー化して、モノマーD、Eを生成するシステムである。図1に示すように、分離システム1は、原料貯留部10と、溶解部12と、溶媒貯留部14と、反応部16と、分離部18と、貯留部20と、除去部26と、制御部30と、を有する。
【0018】
(原料貯留部)
原料貯留部10は、PET原料Pmが導入されて、PET原料Pmが貯留される槽(ホッパ)である。本実施形態においては、原料貯留部10には、フレーク化されたPET原料Pmが貯留されるが、PET原料Pmの形状や大きさは任意であってよい。原料貯留部10は、導入管10aを介して溶解部12に接続されている。原料貯留部10内のPET原料Pmは、導入管10aを通って、溶解部12に供給される。導入管10aには、原料貯留部10から溶解部12に供給されるPET原料Pmの量を調整する調整部10bが設けられている。調整部10bは、例えば開閉弁であり、開状態の場合に、原料貯留部10内のPET原料Pmを溶解部12に供給させ、閉状態の場合に、原料貯留部10内のPET原料Pmの溶解部12への供給を停止させる。ただし、調整部10bは、開閉弁であることに限られず、溶解部12へのPET原料Pmの供給を調整可能な任意の機構であってよい。
【0019】
(溶解部)
溶解部12は、溶解液Pdが貯留される槽である。溶解液Pdは、PET原料PmとモノマーDとが混合して生成される溶液である。ここで、PET原料Pmに含まれるPET成分は、モノマーDに溶解するが、PET原料Pmに含まれるPET以外の成分である不純物Rは、モノマーDに溶解せずに残存する。従って、溶解液Pdには、PET原料Pmに含まれるPETがモノマーDに溶解したPET溶液Pと、PET原料Pmに含まれる不純物Rとが含まれているといえる。
【0020】
溶解部12には、モノマーDとPET原料Pmとが供給される。溶解部12内では、PET原料Pmに含まれるPETがモノマーDに溶解しつつ、不純物RがモノマーDに溶解することなく残存して、PET溶液P及び不純物Rを含む溶解液Pdが生成される。このようにPETをモノマーDに溶解させることで、粘度を低下させて流動性を向上させることができ、PETを容易に反応部16に導出できる。なお、PET溶液Pは、PETの全量がモノマーDに溶解していることに限られず、少なくとも一部のPETが、モノマーDに溶解しない状態となっていてもよい。また、PET原料Pmに含まれるPET以外の成分のうちで、モノマーDに溶解可能な成分がある場合には、PET溶液Pには、モノマーDに溶解したその成分も含まれていてもよい。
【0021】
本実施形態では、溶解部12には、加熱部12Aが設けられている。加熱部12Aは、溶解部12内を加熱することで、溶解部12に供給されたモノマーD及びPET原料Pmを、所定温度に加熱する。所定温度は、PETがモノマーDに溶解可能な温度である。このように所定温度で加熱することで、PET原料Pmに含まれるPETを、モノマーDに適切に溶解させることができる。所定温度は、140℃以上300℃以下であることが好ましく、160℃以上280℃以下であることがより好ましく、190℃以上250℃以下であることがさらに好ましい。なお、不純物Rには、所定温度(PETがモノマーDに溶解可能な温度)に加熱されることで溶融する成分が含まれている。従って、不純物Rは、少なくとも一部が溶融した状態で、溶解液Pdに含まれることとなる。本実施形態では、加熱部12Aは溶解部12に設けられているが、加熱部12Aが設けられる位置はそれに限られず任意である。
【0022】
(貯留部)
貯留部20は、溶解液Pdが貯留される槽である。貯留部20は、導入管12aを介して、溶解部12に接続されている。溶解部12内の溶解液Pdは、導入管12aを通って、貯留部20に供給される。導入管12aには、溶解部12から貯留部20に供給されるPET原料Pmの量を調整する調整部12a1が設けられている。調整部12a1は、例えば開閉弁であり、開状態の場合に、溶解部12内の溶解液Pdを貯留部20に供給させ、閉状態の場合に、溶解部12内の溶解液Pdの貯留部20への供給を停止させる。ただし、調整部12a1は、開閉弁であることに限られず、貯留部20への溶解液Pdの供給を調整可能な任意の機構であってよい。
【0023】
貯留部20においては、溶解液Pdが、重力により、PET溶液Pと、不純物Rとに分離される。本実施形態では、貯留部20内に貯留された溶解液Pdが静置されることで、PET溶液Pと不純物Rとに重力分離される。
【0024】
本実施形態では、貯留部20に貯留された溶解液Pdは、重力により、第1不純物R1の層と、PET溶液Pの層と、第2不純物R2の層とに分離される。第1不純物R1の層は、PET溶液Pの層の鉛直方向下方に形成される。すなわち、第1不純物R1は、不純物Rのうちで、モノマーDに溶解せず、かつPET溶液Pよりも比重が大きいものである。第1不純物R1は、貯留部20内においてPET溶液P内を沈降して、第1不純物R1の層を形成する。一方、第2不純物R2の層は、PET溶液Pの層の鉛直方向上方に形成される。すなわち、第2不純物R2は、不純物Rのうちで、モノマーDに溶解せず、かつPET溶液Pよりも比重が小さいものである。第2不純物R2は、貯留部20内においてPET溶液P内を浮上して、第2不純物R2の層を形成する。
【0025】
なお、貯留部20内の溶解液Pdは、所定温度(PETがモノマーDに溶解可能な温度)以上に保持されている。第1不純物R1、及び第2不純物R2は、不純物Rのうちで、所定温度に加熱された状態で溶融する成分であるため、貯留部20内においても溶融した状態で存在する。第1不純物R1及び第2不純物R2は、例えば、PET以外のプラスチック類(PET以外のポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなど)である。
【0026】
本実施形態では、PET溶液Pの層には、第3不純物R3が含まれている。第3不純物R3は、不純物Rのうちで、モノマーDに溶解せず、かつ所定温度(PETがモノマーDに溶解可能な温度)においても溶融しない成分である。すなわち、第3不純物R3は、重力分離によってもPET溶液Pから分離されずに、溶融しない固体の状態で、PET溶液P中に存在する。本実施形態では、第3不純物R3は、PET溶液P中に分散している。第3不純物R3は、例えば、金属類、顔料、及び重合触媒などである。
【0027】
貯留部20には、排出管20aが接続されている。排出管20aは、PET溶液Pより下層に分離された第1不純物R1を、貯留部20から排出するための配管である。排出管20aは、貯留部20の第1不純物R1の層が形成される位置に接続されており、本実施形態の例では、貯留部20の底部に接続されている。排出管20aには、第1排出部22aが設けられている。第1排出部22aは、貯留部20内の第1不純物R1を貯留部20から排出する機構であり、本実施形態ではポンプである。
【0028】
貯留部20には、排出管20bが接続されている。排出管20bは、PET溶液Pより上層に分離された第2不純物R2を、貯留部20から排出するための配管である。排出管20bは、貯留部20の第2不純物R2の層が形成される位置に接続されており、排出管20aよりも鉛直方向上方に接続されている。貯留部20には、貯留部20内の第2不純物R2を貯留部20から排出する第2排出部22b1、22b2が取り付けられている。第2排出部22b1は、PET溶液Pの液面の位置に設けられるスキマーであり、PET溶液Pの液面に浮かぶ第2不純物R2を回収する(掻きとる)。第2排出部22b2は、排出管20bに設けられて、第2排出部22b1に回収された第2不純物R2を、排出管20bを介して排出する機構であり、本実施形態ではポンプである。このように、本実施形態の例では、第2不純物R2を排出する機構として、第2排出部22b1、22b2が設けられているが、第2不純物R2を排出する第2排出部の構成はこれに限られず任意であってよい。
【0029】
貯留部20でPET溶液Pから分離された第1不純物R1及び第2不純物R2は、第1排出部22a及び第2排出部22b1、22b2により、貯留部20の外部に排出される。これにより、PET溶液Pから、第1不純物R1及び第2不純物R2が除去される。以下、第1排出部22a及び第2排出部22b1、22b2を区別しない場合には、排出部22と記載する。なお、以上の説明では、不純物Rに、PET溶液Pよりも比重が大きい第1不純物R1と、PET溶液Pよりも比重が小さい第2不純物R2とが含まれていたが、それに限られず、不純物Rには、第1不純物R1と第2不純物R2との一方のみが含まれていてもよい。
【0030】
貯留部20には、導入管20cが接続されている。導入管20cは、不純物Rから分離されたPET溶液Pを、貯留部20から導出するための配管である。導入管20cは、貯留部20のPET溶液Pの層が形成される位置に接続されており、本実施形態の例では、鉛直方向において排出管20aと排出管20bとの間の位置に接続されている。導入管20cには、導出部24が設けられている。導出部24は、貯留部20内のPET溶液Pを貯留部20から導出する機構であり、本実施形態ではポンプである。
【0031】
なお、本実施形態では、溶解液Pdを生成する溶解部12と、溶解液Pdを重力分離する貯留部20とが、別の槽となっている。ただし、溶解部12と貯留部20とは別の槽であることに限られず、1つの槽で、溶解液Pdを生成して重力分離してもよい。この場合、貯留部20が、溶解部12の機能も兼ね備えるといえる。
【0032】
(除去部)
除去部26は、PET溶液Pに含まれる第3不純物R3を、PET溶液Pから除去する機構である。除去部26は、導入管20cに接続されている。本実施形態では、除去部26として、第1除去部26aと第2除去部26bとが設けられている。第1除去部26aは、ろ過機であり、PET溶液Pに含まれる固形成分を捕集する。第2除去部26bは、吸着塔であり、PET溶液Pに含まれる、第1除去部26aで補修されなかった固形成分を吸着する。また、第2除去部26bは、PET溶液Pに含まれる、第1除去部26aで補修されなかった固形成分を、充填塔内の充填物層でろ過する。第2除去部26bは、固形成分の吸着、又はろ過の少なくとも一方を実施してよい。
【0033】
貯留部20から導入管20cに導出されたPET溶液Pは、第1除去部26a内に導入されて、PET溶液Pに含まれる第3不純物R3の少なくとも一部が、第1除去部26aに捕集される。第1除去部26aで捕集された第3不純物R3は、第1除去部26aに接続された排出管26a1を通って外部に排出される。図1の例では、排出管26a1は、排出管20aと合流しているが、排出管20aと合流していなくてもよい。第1除去部26aによって第3不純物R3の少なくとも一部が除去されたPET溶液Pは、第1除去部26aから導出されて、第2除去部26bに導入される。第2除去部26bにおいては、PET溶液Pに残存していた第3不純物R3が、第2除去部26bに吸着又はろ過されて、PET溶液Pから除去される。第2除去部26bに吸着又はろ過される第3不純物R3は、例えば顔料や重合触媒である。第2除去部26bによって第3不純物R3が除去されたPET溶液Pは、第2除去部26bから導出されて、導入管20cを通って反応部16に導入される。
【0034】
このように、本実施形態では、PET溶液Pから第3不純物R3を除去する機構として、第1除去部26a及び第2除去部26bを設けているが、第3不純物R3を排出する除去部26の構成はこれに限られず任意であってよい。また、不純物Rは、第3不純物R3が含まれていない場合もあるため、除去部26は必須の構成ではない。
【0035】
(溶媒貯留部)
溶媒貯留部14は、反応溶媒Mが導入されて、反応溶媒Mが貯留される槽である。溶媒貯留部14は、導入管14aを介して反応部16に接続されている。溶媒貯留部14内の反応溶媒Mは、導入管14aを通って、反応部16に供給される。より詳しくは、導入管14aには、反応溶媒Mを加圧して加熱する加熱昇圧部14bが設けられている。加熱昇圧部14bは、反応溶媒Mを加圧して加熱することで、反応溶媒Mを超臨界状態、又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)とする。反応部16には、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mが供給される。
【0036】
(反応部)
反応部16は、貯留部20で不純物Rと分離されたPET溶液Pと、反応溶媒Mとが導入されて、PET溶液P中のPETを解重合する容器である。反応部16は、第1反応部16A及び第2反応部16Bを含む。
【0037】
(第1反応部)
第1反応部16Aは、反応部16内に形成される。本実施形態では、第1反応部16Aは、反応部16内において、充填材が充填された箇所といえる。第1反応部16Aには、充填剤として、気液又は液液の接触装置に用いられる公知のものを使用でき、例えば重油と水を接触させて有効成分を取り出す接触装置に用いられる充填材と同様なものを用いることができる。充填材の具体例としては、SUS 等からなるパイプ、ラシヒリング、ベルルサドル、テラレット等が挙げられる。
【0038】
第1反応部16Aには、導入管20cが接続される。より詳しくは、第1反応部16Aには、導入管20cの、貯留部20からのPET溶液Pが導入される開口である導入口16Cが接続される。導入口16Cは、第1反応部16Aの第1方向D1側の表面16A1に接続される。導入管20cは、導入口16Cが、第1方向D1と反対方向の第2方向D2側を向いて開口するように、表面16A1に接続される。このように、本実施形態では、第2方向D2側を向いて開口する導入口16Cが、第1反応部16Aの表面16A1に接続されているが、それに限られない。例えば、導入口16Cは、第1反応部16Aに直接接続されていなくてもよく、第2方向D2側を向いて開口する導入口16Cが、反応部16内における第1反応部16Aの表面16A1よりも第1方向D1側に接続されていてもよい。
【0039】
反応部16には、導入管14aが接続される。より詳しくは、反応部16には、導入管14aの、溶媒貯留部14からの反応溶媒Mが導入される開口である導入口16Dが接続される。導入口16Dは、第1反応部16Aの第2方向D2側の表面16A2よりも、第2方向D2側に接続される。導入管14aは、導入口16Dが、第1方向D1側を向いて、又は側面から中心側を向いて開口するように、表面16A2よりも第2方向D2側に接続される。このように、本実施形態では、第1方向D1側を向いて、又は側面から中心側を向いて開口する導入口16Dが、第1反応部16Aの表面16A2よりも第2方向D2側に接続されているが、それに限られない。例えば、導入口16Dは、第1反応部16Aに直接接続されていてもよく、第1反応部16Aの表面16A2に接続されていてもよい。
【0040】
このように、本実施形態においては、PET溶液Pが導入される導入口16Cが第2方向D2を向いて開口し、反応溶媒Mが導入される導入口16Dが第1方向D1を向いて、又は側面から中心側を向いて開口する。従って、第1反応部16Aには、PET溶液Pと反応溶媒Mとが、互いに向き合う方向で導入される。
【0041】
導入口16Cから第1反応部16Aに導入されたPET溶液Pは、第1反応部16Aの充填材の表面上を、第2方向D2に向かって移動する。一方、導入口16Dから導入された超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mは、第1反応部16A内を、第1方向D1に向かって移動する。第1反応部16Aにおいて、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mは、PET溶液Pと接触する。PET溶液P中のPETは、反応溶媒Mにより解重合(低分子量化)し、解重合されたPETは、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mに抽出される。以下、第1反応部16Aにおいて解重合されたPETを、第1解重合ポリエステルP1と記載し、第1解重合ポリエステルP1と反応溶媒Mとの混合物(第1解重合ポリエステルP1が抽出された反応溶媒M)を、第1溶媒M1と記載する。第1解重合ポリエステルP1を含む第1溶媒M1は、第1反応部16Aを第1方向D1側に進行して、第1反応部16Aの第1方向D1側に導出される。
【0042】
なお、第1解重合ポリエステルP1は、PET溶液P中のPETが解重合されることで生成されたモノマーD、Eと、PET溶液Pに元々混合されていたモノマーDと、PETが解重合されることで生成されたオリゴマーと、を含む。ここでのオリゴマーとは、モノマー化されていないが、PETから解重合されたカルボン酸由来やアルコール成分のオリゴマー(PETよりも分子量が小さいカルボン酸由来やアルコール成分のオリゴマー)といえる。
【0043】
(第2反応部)
第2反応部16Bは、反応部16内に形成されており、第2反応部16Bは、第1反応部16Aから第1溶媒M1が導出される箇所に形成されている。本実施形態では、第1溶媒M1は第1方向D1側に導出されるため、第2反応部16Bは、第1反応部16Aの第1方向D1側に形成された空間といえる。
【0044】
第2反応部16Bにおいては、第1溶媒M1に含まれる第1解重合ポリエステルP1が、第1溶媒M1に含まれる反応溶媒Mにより更に解重合(低分子量化)する。以下、第2反応部16Bにおいて更に解重合された第1解重合ポリエステルP1を、第2解重合ポリエステルP2と記載し、第2解重合ポリエステルP2と反応溶媒Mとの混合物(第2解重合ポリエステルPEが溶解した反応溶媒M)を、第2溶媒M2と記載する。第2反応部16Bには、導出管16aが接続される。より詳しくは、第2反応部16Bには、導出管16aの、第2反応部16Bからの第2溶媒M2が導出される開口である導出口16Eが接続される。第2反応部16B内の第2解重合ポリエステルP2を含む第2溶媒M2は、導出口16Eから導出管16aを通って、第2反応部16Bの外部に導出される。
【0045】
なお、第2解重合ポリエステルP2は、第1解重合ポリエステルP1中のモノマーD、Eと、第1解重合ポリエステルP1中のオリゴマーが解重合されることで生成されたモノマーD、Eと、第1解重合ポリエステルP1が解重合されることで生成されたオリゴマーと、を含む。
【0046】
反応部16の底部には、排出管16bが接続されている。より詳しくは、反応部16の底部には、排出管16bの、反応部16内の非抽出物(後述)が排出される開口である排出口16Fが接続される。排出口16Fからは、反応溶媒Mに抽出されなかった金属化合物などの不純物や、反応溶媒Mに抽出されなかった未分解ポリエステルの残滓などを含む、非抽出物が排出される。すなわち、反応部16の底部の非抽出物は、排出口16Fから排出管16bを通って、反応部16の外部に排出される。排出口16Fから排出される非抽出物は、PET溶液Pのうちで、第2溶媒M2(第2解重合ポリエステルP2が溶解した反応溶媒M)として分離部18に導出されずに、第1反応部16A及び第2反応部16Bに残存した成分といえる。
【0047】
また、反応部16には、反応部16の内部を加熱する加熱部と、反応部16の内部の圧力を所定値以上に保つ加圧部とが設けられていてもよい。反応部16の内部の温度は、250℃以上400℃以下とされることが好ましく、250℃以上350℃以下とされることがより好ましい。また、反応部16の内部の圧力は、1MPa以上30MPa以下が好ましく、6MPa以上25MPa以下とされることがより好ましい。加圧部及び加熱部は、制御部30により制御されてよい。
【0048】
(分離部)
分離部18は、第2解重合ポリエステルP2を含む第2溶媒M2が導入されて、第2溶媒M2を、反応溶媒Mと、第2解重合ポリエステルP2に含まれるカルボン酸由来のモノマーDと、第2解重合ポリエステルP2に含まれるアルコール成分のモノマーEと、残存物質とに、分離する。残存物質は、第2溶媒M2のうちの、反応溶媒M、モノマーD、及びモノマーE以外の成分であり、オリゴマーが含まれる。
【0049】
本実施形態においては、分離部18は、第1分離部18Aと、第2分離部18Bと、第3分離部18Cとを有する。
【0050】
第1分離部18Aは、導出管16aに接続される分離塔である。第1分離部18Aには、導出管16aを介して、第2解重合ポリエステルP2を含む第2溶媒M2が導入される。第1分離部18Aは、第2溶媒M2を、低沸点成分と、低沸点成分よりも沸点が高い高沸点成分とに分離する。例えば、第1分離部18Aにおいては、第2溶媒M2を所定温度として、気体となった成分を低沸点成分とし、液体成分を高沸点成分としてよい。第1分離部18Aには、導出管18Aa、18Abが接続されている。導出管18Aaからは、低沸点成分が導出され、導出管18Abからは、高沸点成分が導出される。
【0051】
第2分離部18Bは、導出管18Aaを介して第1分離部18Aに接続される分離塔である。第2分離部18Bには、導出管18Aaを介して、低沸点成分が導入される。第2分離部18Bは、低沸点成分を、反応溶媒Mと、モノマーEとに分離する。第2分離部18Bには、導出管18Ba、18Bbが接続されている。導出管18Baからは、反応溶媒Mが導出され、導出管18Bbからは、モノマーEが導出される。なお、導出管18Baは、第2分離部18Bと溶媒貯留部14とに接続されている。従って、第2分離部18Bから導出された反応溶媒Mは、溶媒貯留部14に戻されて、PETのモノマー化に再利用される。
【0052】
第3分離部18Cは、導出管18Abを介して第1分離部18Aに接続される分離塔である。第3分離部18Cには、導出管18Abを介して、高沸点成分が導入される。第3分離部18Cは、高沸点成分を、更に高沸点の残存物質と、反応溶媒M及びモノマーEを含む低沸点成分と、モノマーDとに分離する。第3分離部18Cには、導出管18Ca、18Cb、18Ccが接続されている。導出管18Caは、第2分離部18Bに接続されている。第3分離部18C内で分離された低沸点成分は、導出管18Caを介して、第2分離部18Bに導出される。また、第3分離部18C内で分離されたモノマーDは、導出管18Cbから導出され、第3分離部18C内で分離された残存物質は、導出管18Ccから導出される。
【0053】
第3分離部18Cには、導入管18Cdが接続されている。導入管18Cdは、溶解部12にも接続されており、第3分離部18Cから導出されたモノマーDを、溶解部12に導入する。図2の例では、導入管18Cdは、導出管18Cbから分岐している。導入管18Cdには、第3分離部18Cから溶解部12に供給されるモノマーDの量を調整する調整部18Ceが設けられている。調整部18Ceは、例えば開閉弁であり、開状態の場合に、モノマーDを溶解部12に供給させ、閉状態の場合に、モノマーDの溶解部12への供給を停止させる。ただし、調整部18Ceは、開閉弁であることに限られず、溶解部12へのモノマーDの供給を調整可能な任意の機構であってよい。なお、本実施形態では、調整部18Ceは、導入管18Cdの導出管18Cbからの分岐箇所に設けられているが、設けられる位置はそれに限られず任意であってよい。また、導入管18Cdは、導出管18Cbに接続されていなくてもよく、第3分離部18Cに直接接続されていてよい。また例えば、導出管18Cbに、モノマーDを貯留する貯留部(槽)が設けられ、導入管18Cdは、貯留部に接続されていてもよい。
【0054】
なお、導出管18Ccが溶解部12に接続されることで、残存物質の少なくとも一部を溶解部12に導入してもよい。残存物質を溶解部12に導入することで、残存物質に含まれるオリゴマーを反応部16で再度解重合させることが可能となり、モノマーの収率を向上させることができる。
【0055】
(制御部)
制御部30は、分離システム1を制御する制御装置である。制御部30は、調整部10bを制御して、原料貯留部10から溶解部12に供給されるポリエステル原料PEの量を制御する。制御部30は、調整部12a1を制御して、溶解部12から貯留部20に供給される溶解液Pdの量を制御する。制御部30は、排出部22を制御して、貯留部20でPET溶液Pから分離された不純物Rを、貯留部20から排出する。制御部30は、導出部24を制御して、貯留部20で不純物Rから分離されたPET溶液Pを貯留部20から導出して、反応部16に導入するPET溶液Pの量を制御する。制御部30は、加熱昇圧部14bを制御して、反応溶媒Mを超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)とし、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)の反応溶媒Mの反応部16への供給量を制御する。制御部30は、調整部18Ceを制御して、溶解部12へのモノマーDの供給量を制御する。
【0056】
制御部30は、本実施形態ではコンピュータであり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含むプロセッサと、プロセッサによる演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶する記憶部とを含む。制御部30は、記憶部からプログラムを読み出すことで、分離システム1の制御を実行する。
【0057】
ただし、分離システム1は、制御部30によって自動制御されることに限られず、例えば少なくとも一部の処理が、作業員の操作によって制御されてもよい。
【0058】
(分離システムの動作)
次に、分離システム1の動作について説明する。制御部30は、調整部10b、18Ceを制御して、PET原料PmとモノマーDとを、溶解部12に導入して、溶解部12内でPET原料PmとモノマーDとを混合させて、溶解液Pdを生成させる。制御部30は、調整部12a1を制御して、溶解部12で生成された溶解液Pdを、貯留部20に導入させる。貯留部20に導入された溶解液Pdは、所定の時間静置されることで、重力により、第1不純物R1の層と、PET溶液Pの層と、第2不純物R2の層とに分離される。なお、溶解液Pdを静置する方法は任意であってよいが、例えば、制御部30が、排出部22、導出部24を停止させることで、溶解液Pdを静置させてよい。
【0059】
制御部30は、排出部22を制御して、貯留部20内の第1不純物R1及び第2不純物R2を排出しつつ、導出部24を制御して、貯留部20内のPET溶液Pを貯留部20から導出させる。貯留部20から導出されたPET溶液Pは、除去部26によって第3不純物R3が除去されて、第1反応部16Aに導入される。制御部30は、加熱昇圧部14bを制御して、超臨界状態又は亜臨界状態(加圧気体もしくは加圧液体)とした反応溶媒Mを、反応部16に供給する。制御部30は、反応溶媒Mを、250℃以上400℃以下とすることが好ましく、250℃以上350℃以下とすることがより好ましい。制御部30は、反応溶媒Mを、1MPa以上30MPa以下とすることが好ましく、6MPa以上25MPa以下とすることがより好ましい。
【0060】
このように、PET溶液P及び反応溶媒Mが反応部16に供給されることで、第1反応部16Aにおいて、PET溶液Pに含まれるPETが解重合して、第1解重合ポリエステルP1が生成される。そして、第2反応部16Bにおいて、第1解重合ポリエステルP1が更に解重合されて、第2解重合ポリエステルP2と反応溶媒Mの混合物である第2溶媒M2が生成される。第2溶媒M2は、第1分離部18A、第2分離部18B、及び第3分離部18Cで、反応溶媒M、モノマーD、モノマーE、及び残存物質に分離される。これにより、ポリエステル原料PEからモノマーD、Eが回収され、それらを重合することで、ポリエステル原料PEを再生することができる。
【0061】
以上説明した分離システム1の動作のフローを、フローチャートに基づき説明する。図3は、分離システムの動作フローを説明するフローチャートである。図3に示すように、制御部30は、PET原料Pm及びモノマーDを溶解部12に導入させて、溶解液Pdを生成させる(ステップS10)。そして、制御部30は、溶解液Pdを貯留部20に供給して、溶解液Pdを、重力により、第1不純物R1と第2不純物R2とPET溶液Pとに分離させる(ステップS12)。制御部30は、第1不純物R1と第2不純物R2とPET溶液Pとを貯留部20から排出して(ステップS14)、除去部26によりPET溶液Pから第3不純物R3を除去させる(ステップS16)。そして、制御部30は、PET溶液Pと反応溶媒Mとを反応部16に導入して、PET溶液P中のPETを解重合させる(ステップS18)。
【0062】
(効果)
PET原料Pmには、PET以外の不純物Rが含まれている場合があり、PETを解重合してリサイクルするためには、不純物Rを除去する必要がある。しかし、不純物Rは、高粘度の溶融体として存在する場合があるため、ろ過機のフィルタの開口部を閉塞してしまい、不純物Rを適切に回収、分離できなくなるおそれがある。それに対し、本実施形態においては、重力分離により、溶解液Pdを、PET溶液Pと不純物Rとに分離する。そして、重力分離された不純物Rを排出し、重力分離されたPET溶液Pを用いて解重合させる。これにより、ろ過機のフィルタの開口部を閉塞することなどがなく、不純物Rを適切に回収して、PETと異物とを適切に分離することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態においては、不純物Rを重力分離した後に、PET溶液Pを解重合している。そのため、解重合の際のPETの純度を上げた状態で解重合することができ、モノマーD、Eの収率を向上させることができる。また、不純物Rには重合触媒が含まれている場合がある。重合触媒は、重合を促進する触媒なので、解重合を阻害するおそれがある。それに対し、本実施形態では、重合触媒も除去した上で解重合を実施するため、解重合を適切に実施して、モノマーD、Eの収率を向上させることができる。さらに言えば、解重合用の触媒を添加して解重合する場合には、重合触媒が除去された分、解重合用の触媒の添加量も少なくすることができる。
【0064】
(他の構成例)
本実施形態においては、第1反応部16Aにおいて、PET溶液Pと反応溶媒Mとは、互いに向き合う方向で供給されているが、それに限られず、互いに同じ方向で供給されてもよい。図4は、反応部の他の例を示す模式図である。この場合、例えば、図4に示すように、反応部16は、二重管構造となっており、内管部分を第1反応部16Abとし、外管部分を第2反応部16Bbとしてよい。この場合、PET溶液Pの導入口16Cbと、反応溶媒Mの導入口16Dbは、第2方向D2側に開口して、第1反応部16Abの第1方向D1側の表面に接続される。従って、PET溶液Pと反応溶媒Mとは、第2方向D2側に、すなわち同じ方向に、供給される。PET溶液Pと反応溶媒Mとは、第1反応部16Ab内で反応しつつ第2方向D2側に進行し、第1溶媒M1(第1解重合ポリエステルP1が抽出された反応溶媒M)として第1反応部16Abの先端で第2反応部16Bbに流入して、更に反応を続け、第2溶媒M2(第2解重合ポリエステルP2を含む反応溶媒M)として、第2反応部16Bbに開口する導出口16Ebから導出される。また、非抽出物は、反応部16の底部に開口する排出口16Fbから排出される。
【0065】
なお、PETを解重合する反応部16の構成は、以上の説明に限られず任意であってよい。例えば、反応部16は、第1反応部16A及び第2反応部16Bの2段階の構成でなくてもよい。また、モノマーD、Eなどを分離する分離部18の構成も、以上の説明に限られず任意であってよい。また、以上の説明では、PETを解重合するための反応溶媒Mとしてメタノールを用いたが、反応溶媒Mはメタノールに限られず、上述のようにエチレングリコールなどであってもよい。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、第1不純物R1及び第2不純物R2の少なくとも一部を、溶解液Pdに戻す点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0067】
図5は、第2実施形態に係る分離システムの一部模式図である。図5に示すように、第2実施形態に係る分離システム1Aは、第1不純物R1及び第2不純物R2の少なくとも一部を溶解液Pdに導入する導入部29を有している。
【0068】
具体的には、分離システム1Aにおいては、貯留部20と溶解部12とを接続する導入管20a1が設けられている。導入管20a1は、排出管20aから分岐して、排出管20aと溶解部12とを接続する配管である。導入管20a1には、貯留部20から溶解部12に導入される第1不純物R1の量を調整する導入部29aが設けられている。導入部29aは、例えば開閉弁であり、開状態の場合に、第1不純物R1を溶解部12に供給させ、閉状態の場合に、第1不純物R1の溶解部12への供給を停止させる。ただし、導入部29aは、開閉弁であることに限られず、溶解部12への第1不純物R1の供給を調整可能な任意の機構であってよい。また、図5の例では、導入部29aは、導入管20a1の排出管20aからの分岐箇所に設けられているが、設けられる位置はそれに限られず任意であってよい。また、導入管20a1は、排出管20aから分岐して設けられることに限られず、貯留部20と溶解部12とに直接接続されてもよい。
【0069】
また、分離システム1Aにおいては、貯留部20と溶解部12とを接続する導入管20b1が設けられている。導入管20b1は、排出管20bから分岐して、排出管20bと溶解部12とを接続する配管である。導入管20b1には、貯留部20から溶解部12に導入される第2不純物R2の量を調整する導入部29bが設けられている。導入部29bは、例えば開閉弁であり、開状態の場合に、第2不純物R2を溶解部12に供給させ、閉状態の場合に、第2不純物R2の溶解部12への供給を停止させる。ただし、導入部29bは、開閉弁であることに限られず、溶解部12への第2不純物R2の供給を調整可能な任意の機構であってよい。また、図5の例では、導入部29bは、導入管20b1の排出管20bからの分岐箇所に設けられているが、設けられる位置はそれに限られず任意であってよい。また、導入管20b1は、排出管20bから分岐して設けられることに限られず、貯留部20と溶解部12とに直接接続されてもよい。
【0070】
制御部30は、PET原料PmとモノマーDとを溶解部12に導入して溶解液Pdを生成しつつ、導入部29a、29bを制御することで、貯留部20内の第1不純物R1及び第2不純物R2の少なくとも一部を、溶解部12に導入する。これにより、PET原料PmとモノマーDとを混合して生成される溶解液Pdに、貯留部20からの第1不純物R1及び第2不純物R2が添加されるため、溶解液Pdにおける第1不純物R1及び第2不純物R2の濃度が向上する。制御部30は、このように第1不純物R1及び第2不純物R2の濃度が向上した溶解液Pdを、貯留部20に導入して、第1不純物R1の層と、PET溶液Pの層と、第2不純物R2の層とに重力分離させる。
【0071】
ここで、分離された第1不純物R1及び第2不純物R2は、排出管20a、20bから排出されるが、第1不純物R1及び第2不純物R2と共に、PET溶液Pの一部も排出される場合がある。第1不純物R1及び第2不純物R2の濃度が低い場合には、第1不純物R1及び第2不純物R2と共に排出されるPET溶液Pの量が多くなってしまうが、第2実施形態においては、第1不純物R1及び第2不純物R2の濃度が高められているため、排出されるPET溶液Pの量を少なくすることが可能となり、結果として、モノマーD、Eの収率を向上させることができる。なお、本実施形態においては、貯留部20で第1不純物R1及び第2不純物R2を分離して溶解部12に戻す処理を、所定回数実施することで、溶解部12に戻す第1不純物R1及び第2不純物R2の量を十分に確保することが好ましい。これにより、溶解液Pdにおける第1不純物R1及び第2不純物R2の濃度を適切に向上させることができる。
【0072】
(本開示の効果)
以上説明したように、本開示に係る分離システム1は、貯留部20と、排出部22と、反応部16とを有する。貯留部20は、カルボン酸由来のモノマーDにPETが溶解したPET溶液Pと、PET以外の成分である不純物Rとを含む溶解液Pdが貯留されて、溶解液Pdを、重力によりPET溶液Pと不純物Rとに分離する。排出部22は、分離された不純物Rを、貯留部20内から排出する。反応部16は、分離されたPET溶液Pと、PETと反応する反応溶媒Mとが導入されて、PET溶液P中のPETを解重合する。
【0073】
分離システム1は、重力分離により、溶解液Pdを、PET溶液Pと不純物Rとに分離する。そして、重力分離された不純物Rを排出し、重力分離されたPET溶液Pを用いて解重合させる。これにより、不純物Rを分離する際に、不純物Rによりろ過機のフィルタの開口部が閉塞させることなどがなく、PETと不純物R(異物)とを適切に分離することが可能となる。また、不純物Rを除去したPET溶液Pを解重合するため、PETの純度が高い状態で解重合させることが可能となり、モノマーD、Eの収率を向上させることもできる。
【0074】
排出部22は、貯留部20内においてPET溶液Pよりも下層に分離された不純物Rである第1不純物R1を排出する第1排出部22aと、PET溶液よりも上層に分離された不純物Rである第2不純物R2を排出する第2排出部22b2と、を含む。本開示によると、PET溶液Pよりも比重が重い第1不純物R1と比重が軽い第2不純物R2とを、適切に回収して、PETと不純物R(異物)とを適切に分離することが可能となる。
【0075】
分離システム1Aは、第1不純物R1及び第2不純物R2の少なくとも一部を溶解液Pdに導入する導入部29を更に有する。第1不純物R1及び第2不純物R2の少なくとも一部を溶解液Pdに戻すことで、第1不純物R1及び第2不純物R2の濃度を高めて、排出されるPET溶液Pの量を少なくすることが可能となり、結果として、モノマーD、Eの収率を向上させることができる。
【0076】
分離システム1は、PET溶液P中に存在する不純物Rである第3不純物R3を、PET溶液Pから除去する除去部26を更に有する。本開示によると、重力分離により分離されなかった第3不純物R3を除去することで、PET溶液PにおけるPETの純度を上げて、モノマーD、Eの収率を向上させることができる。
【0077】
分離システム1は、PETを含むPET原料Pmと、カルボン酸由来のモノマーDとが導入されて、溶解液Pdを生成する溶解部12を更に有し、貯留部20は、溶解部12と接続されて、溶解部12から溶解液Pdが導入される。本開示によると、PETと不純物R(異物)とを適切に分離することが可能となる。
【0078】
反応溶媒Mは、メタノールであり、カルボン酸由来のモノマーDは、テレフタル酸ジメチルである。本開示によると、PETをテレフタル酸ジメチルで溶解させることで、PETの流動性を高くして、PETを反応部16に容易に導入させることができる。また、PETをメタノールと反応させることで、PETを適切に解重合させることができる。
【0079】
本開示に係る分離方法は、カルボン酸由来のモノマーDにPETが溶解したPET溶液Pと、PET以外の成分である不純物Rとを含む溶解液Pdを、重力によりPET溶液Pと不純物Rとに分離するステップと、分離された不純物Rを排出するステップと、分離されたPET溶液Pと、PETと反応する反応溶媒Mとを反応させて、PET溶液P中のPETを解重合するステップと、を有する。本方法によると、PETと不純物R(異物)とを適切に分離することが可能となる。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
12 溶解部
14 溶媒貯留部
16 反応部
18 分離部
20 貯留部
22 排出部
30 制御部
D、E モノマー
M 反応溶媒
P PET溶液
Pd 溶解液
Pm PET原料
R 不純物
R1 第1不純物
R2 第2不純物
R3 第3不純物
図1
図2
図3
図4
図5