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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】多層電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 513
H01G4/30 201F
H01G4/30 201A
H01G4/30 511
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021201537
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2018545178の分割
【原出願日】2017-03-06
(65)【公開番号】P2022033956
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】62/304,583
(32)【優先日】2016-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】リッター,アンドリュー・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ベロリーニ,マリアン
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-294527(JP,A)
【文献】特開2014-220378(JP,A)
【文献】特開2006-080479(JP,A)
【文献】特開2009-021512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層電子デバイスであって、
第一の縦方向端部と第二の縦方向端部との間の縦方向と、第一の横方向端部と第二の横方向端部との間の横方向と、に延びるセラミック層、ここで、前記第一の縦方向端部と第二の縦方向端部との間に縦方向中心線が画定されており、且つ前記第一の横方向端部と第二の横方向端部との間に横方向中心線が画定されている、
前記セラミック層の鉛直上方に配置されている第一の電極層、ここで、前記第一の電極層は前記セラミック層の前記第一の横方向端部に向かって延びる第一のタブ部分を含み、前記第一の電極層はさらに第一の端部と第二の端部との間にて縦方向に延びる第一の切り抜き領域を画定している、
前記セラミック層の鉛直下方に配置されている第二の電極層、ここで、前記第二の電極層は前記セラミック層の前記第一の横方向端部に向かって延びる第二のタブ部分を含み、前記第二の電極層はさらに第一の端部と第二の端部との間にて縦方向に延びる第二の切り抜き領域を画定している、
を含み、
前記第一の電極層の前記第一のタブ部分は、前記第二の電極層の前記第二のタブ部分と縦方向においてオフセットしていて、それにより第一の間隙領域が形成されており、前記第一の間隙領域内で前記第一のタブ部分は前記第二のタブ部分と重なり合わず、そしてさらに、前記第一の切り抜き領域は、前記第二の切り抜き領域と完全に重なり合っており、
前記第一の切り抜き領域の第一の端部と前記第二の切り抜き領域の第一の端部の両方が、縦方向において前記第一のタブ部分の範囲内に位置し、
前記第一の切り抜き領域の第二の端部と前記第二の切り抜き領域の第二の端部の両方が、縦方向において前記第二のタブ部分の範囲内に位置する、前記多層電子デバイス。
【請求項2】
前記第一のタブ部分と前記第二のタブ部分は、前記セラミック層の前記縦方向中心線に関して対称的に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第一のタブ部分と前記第二のタブ部分は、前記セラミック層の前記横方向中心線に関して対称的に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第一の電極層は、前記セラミック層の前記第二の横方向端部に向かって延びる第三のタブ部分をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第二の電極層は、前記セラミック層の前記第二の横方向端部に向かって延びる第四のタブ部分をさらに含む、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第一の電極層の前記第三のタブ部分は、前記第二の電極層の前記第四のタブ部分から、前記縦方向においてオフセットしていて、それにより第二の間隙領域が形成されており、前記第二の間隙領域内では前記第三のタブ部分は前記第四のタブ部分と重なり合っていない、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第一の間隙領域と前記第二の間隙領域は、前記セラミック層の前記縦方向中心線および/または前記横方向中心線に関して対称的に配置されている、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第一の切り抜き領域と前記第二の切り抜き領域は、前記セラミック層の前記縦方向中心線に関して対称的に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第一の切り抜き領域と前記第二の切り抜き領域は、前記セラミック層の前記横方向中心線に関して対称的に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記セラミック層はウェファーの形態である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記セラミック層は誘電体を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第一の電極層と電気接続している第一の外部コンタクト、および前記第二の電極層と電気接続している第二の外部コンタクトをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第一の外部コンタクトは、前記デバイスの上面および任意に一つ以上の対向する端部に存在し、そしてさらに、前記第二の外部コンタクトは、前記デバイスの底面および任意に一つ以上の対向する端部に存在する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第一の外部コンタクトは前記デバイスの上面だけに存在し、そして前記第二の外部コンタクトは前記デバイスの底面だけに存在する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスの端部に露出した前記第一の電極層および前記第二の電極層の複数の部分を覆うマスキング材料をさらに含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記デバイスは、セラミック層と第一の電極層と第二の電極層とが互い違いになっているものを複数含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスはコンデンサーである、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本出願は米国仮特許出願62/304583号(2016年3月7日出願)につ
いての優先権を主張するものであり、あらゆる関連する目的のためにこの仮特許出願の内容が参考文献として本明細書に取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は多層電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
[0002]コンデンサーは、フィルタリング、減結合、バイパス形成、およびこれらの現代的な用途のその他の側面、例えば、無線通信、警報装置、レーダー装置、回線交換、マッチング回路、および多くのその他のものを含めた用途のために用いられる主要な構成要素である。種々さまざまのコンデンサー環境は、コンデンサーが多くの異なる動作周波数をしばしば受けることを必要とする。衛星テレビ、GPS、および移動電話システムの用途を含めた無線通信システムに関連するもののような通常の周波数レベルにおける用途ならびに増大する高い周波数の用途に適応することができるコンデンサー技術は、一般に広い周波数範囲にわたって信頼できる性能特性を示さなければならない。過去において、広範囲の動作周波数にわたって望ましい性能を達成するために、複合のデバイス(例えば、多層コンデンサーと単層コンデンサー)が縦に並べて用いられた。しかし、そのような設計の複雑さとコストのために、同様の性能を達成することができる統合されたデバイスに対する必要性が現在存在する。
【発明の概要】
【0004】
[0003]本発明の一つの態様によれば、第一の縦方向端部と第二の縦方向端部との間の縦方向と、第一の横方向端部と第二の横方向端部との間の横方向と、に延びるセラミック層を含む多層電子デバイスが開示され、このとき第一の縦方向端部と第二の縦方向端部との間に縦方向中心線が画定されており、且つ第一の横方向端部と第二の横方向端部との間に横方向中心線が画定されている。デバイスはセラミック層の鉛直上方に配置されている第一の電極層を含み、この第一の電極層はセラミック層の第一の横方向端部に向かって延びる第一のタブ部分を含み、第一の電極層はさらに第一の切り抜き領域を画定している。デバイスはまた、セラミック層の鉛直下方に配置されている第二の電極層を含み、この第二の電極層はセラミック層の第一の横方向端部に向かって延びる第二のタブ部分を含み、第二の電極層はさらに第二の切り抜き領域を画定している。第一の電極層の第一のタブ部分は第二の電極層の第二のタブ部分と縦方向においてオフセットしていて、それにより第一の間隙領域が形成されており、その中で第一のタブ部分は第二のタブ部分と重なり合わない。さらに、第一の切り抜き領域は第二の切り抜き領域と少なくとも部分的に重なり合っている。
【0005】
[0004]本発明のその他の特徴部分および態様は以下でさらに詳しく示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
[0005]当分野における熟練者を対象として、現在開示される主題についての十分かつ可能な説明が、その最良の態様を含めて、明細書において示されるが、それは添付する図面に言及している。
図1A】[0006]図1Aは、本主題の態様に係る典型的な多層構成要素の第一の電極層の図を示す。
図1B図1Bは、本主題の態様に係る典型的な多層構成要素の第二の電極層の図を示す。
図2A】[0007]図2Aは、図1Aおよび図1Bに示す複数の第一および第二の電極層を積み重ねることによって製造される典型的な多層構成要素のメタライゼーション前の平面図を示す。
図2B】[0008]図2Bは、積み重ねた複数の電極層の典型的なメタライゼーション前の側面図を示す。
図3A】[0009]図3Aは、図2Aに示す集成体の上部、底部および側部の表面のメタライゼーション後の積み重ねた多層電極の典型的な側面図を示す。
図3B】[0010]図3Bは、本主題の多層構成要素の態様に係るメタライズした集成体の上面の斜視図を示す。
図3C図3Cは、本主題の多層構成要素の態様に係るメタライズした集成体の底面の斜視図を示す。
図4】[0011]図4は、一対の積層コンデンサーの以前に知られた形態を示し、本主題が取って代わろうと企図しているものである。
図5】[0012]図5は、以前に知られた積層形態のものと本技術に従って構成されたデバイスとの間のリターンロスのグラフでの比較である。
図6】[0013]図6は、以前に知られた積層形態のものと本技術に従って構成されたデバイスとの間のインサーションロスのグラフでの比較である。
図7】[0014]図7は、本技術のものと類似しているがしかし固体内部電極を伴って構成されたデバイスと切り抜き部分を含む本技術に従って構成されたデバイスとの間のリターンロスのグラフでの比較である。
図8】[0015]図8は、本技術のものと類似しているがしかし固体内部電極を伴って構成されたデバイスと切り抜き部分を含む本技術に従って構成されたデバイスとの間のインサーションロスのグラフでの比較である。
図9A】[0016]図9Aは、本開示の主題の典型的なさらなる態様であって、櫛形コンデンサー(IDC)の配置で広帯域用途のために構成されたものの側面斜視図である。
図9B】[0017]図9Bは、図9Aの典型的な態様において用いるための典型的な第一の電極パターンの上面図を示す。
図9C図9Cは、図9Aの典型的な態様において用いるための典型的な第二の電極パターンの上面図を示す。
図10A】[0018]図10Aは、本開示の主題の典型的なさらなる態様であって、ランドグリッドアレイ(LGA)の配置で広帯域用途のために構成されたものの側面斜視図である。
図10B】[0019]図10Bは、図10Aの典型的な態様において用いるための典型的な第一の電極パターンの上面図を示す。
図10C図10Cは、図10Aの典型的な態様において用いるための典型的な第二の電極パターンの上面図を示す。
【0007】
[0020]本明細書および添付図面を通しての参照符号の繰り返しの使用は、本技術の同一または類似の特徴部分、工程、またはその他の要素を表すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0021]ここでの論説は典型的な態様だけについて記述するものであり、それは典型的な構成において具体化される本発明の広い見地を限定することを意図していない、ということを当業者は理解するべきである。
【0009】
[0022]概して言えば、本発明は広範囲の動作周波数にわたって良好な電気的性能を達成することができる統合された多層電子デバイス(例えば、コンデンサー、バリスターなど)を対象とする。デバイスは、交互にある第一および第二の電極層の間に挿入されているセラミック層を含む。第一の電極層はセラミック層の第一の横方向端部に向かって延びる
第一のタブ部分を含んでいてもよく、そして第二の電極層は同様にセラミック層の第一の横方向端部に向かって延びる第二のタブ部分を含む。各々の電極層の第一および第二のタブ部分は縦方向において互いにオフセットしている。例えば、それらタブ部分は、セラミック層の縦方向中心線から特定の距離だけ対称的にオフセットしていてもよい。いずれにしても、第一の部分と第二の部分の間に間隙領域が形成されていて、その中で第一および第二の電極は鉛直方向で重なり合わない。所望により、追加のタブ部分を用いてもよい。例えば、第一の電極層は第一の横方向端部に対して反対側のセラミック層の第二の横方向端部に向かって延びる第三のタブ部分を含んでいてもよく、そして第二の電極層は同様にセラミック層の第二の横方向端部に向かって延びる第四のタブ部分を含んでいてもよい。各々の電極層の第三および第四のタブ部分は互いにオフセットしていてもよく(例えば、対称的にオフセットしていて)、それにより第三のタブ部分と第四のタブ部分の間に別の間隙領域が形成されていて、その中で第一および第二の電極層は鉛直方向で重なり合わない。
【0010】
[0023]加えて、第一の電極層は第一の切り抜き領域を画定していて、そして第二の電極層は第二の切り抜き領域を画定している。第一および第二の切り抜き領域が配置されて、電極が鉛直方向に配向するように配置されるとき、第一の切り抜き領域は第二の切り抜き領域と少なくとも部分的に重なり合う(例えば、第二の切り抜き領域の上方で重ね合わせられる)。所望により、第一の電極層は第三の切り抜き領域を画定していてもよく、そして第二の電極層は第四の切り抜き領域を画定していてもよい。そのような態様においては、第一の切り抜き領域と第三の切り抜き領域は、セラミック層の縦方向および/または横方向中心線に関して概ね対称的に一定の間隔を保っていてもよく、そして第二の切り抜き領域と第四の切り抜き領域は、セラミック層の縦方向および/または横方向中心線に関して概ね対称的に一定の間隔を保っていてもよい。第三および第四の切り抜き領域は同じように配置されていてもよく、それにより、電極が鉛直方向に配向するように配置されるとき、第三の切り抜き領域は第四の切り抜き領域と少なくとも部分的に重なり合う。
【0011】
[0024]電極層の特定の特質(例えば、オフセットしているタブ部分と切り抜き領域)に関しての選択的な制御を通して、本発明者らは、得られたデバイスが広範囲の周波数にわたって改善された性能を示すことができることを見出した。例えば、比較的高い周波数での操作の間、切り抜き領域は電流集中を生じさせることができ、これは、切り抜き領域と電極の外側の端部との間の電極の領域を通して電流を強制的に流すことによって低い値の静電容量を生成させることに寄与し、ひいては、デバイスのための静電容量の主要な供給源としての小さな表面積の電極をもたらす。一方、比較的低い周波数(例えば、デバイスの基本共振周波数未満)での操作の間は、電流集中効果は小さくなり、電極層の実質的に全表面積がデバイスの全静電容量値に寄与する。
【0012】
[0025]ここで図1~3を参照して、例えば、多層電子デバイスの一つの特定の態様について詳しく説明する。図1Aおよび図1Bに示すように、第一の電極層10を第一のセラミック層12の表面の鉛直上方に配置することができ(図1A)、そして第二の電極層20を第二のセラミック層22の表面の鉛直下方に配置することができる(図1B)。セラミック層12および/またはセラミック層22はそれぞれ、第一および第二の縦方向端部70の間で縦方向に延びていてもよく、また第一および第二の横方向端部72および74の間で横方向に延びていてもよく、それにより第一および第二の縦方向端部70の間に縦方向中心線が画定されていて、そして第一および第二の横方向端部72および74の間に横方向中心線が画定されている。電極層は当分野で知られている任意の様々な異なる金属から形成することができ、例えば、貴金属(例えば、銀、金、パラジウム、白金など)、卑金属(例えば、銅、スズ、ニッケル、クロム、チタン、タングステンなど)、ならびにこれらの様々な組み合わせである。スパッターをしたチタン/タングステン(Ti/W)合金、ならびにクロム、ニッケルおよび金のそれぞれのスパッターをした層が、本発明にお
いて用いるのに特に適しているかもしれない。
【0013】
[0026]セラミック層12および22は、ウェファー(例えば、予備焼成したもの)あるいはデバイス自体の中で共焼成した誘電体など、様々な形態で設けることができる。いずれにしても、セラミック層12および22は典型的に、比較的高い誘電率(K)(例えば、約10ないし約40000、幾つかの態様においては約50ないし約30000、そして幾つかの態様においては約100ないし約20000)を有する材料から形成される。高誘電材料のタイプの特定の例としては、例えば、NPO(COG)(約100まで)X7R(約3000から約7000まで)、X7S、Z5U、および/またはY5Vの材料がある。上述した材料は工業界で受け入れられた定義によって記述されているものと認識すべきであり、それらのうちの幾つかは米国電子機械工業会(EIA)によって確立された標準分類であり、従って、当業者であれば認識できるはずである。例えば、そのような材料にはペロブスカイト(灰チタン石)、例えば、チタン酸バリウムおよび関連する固溶体(例えば、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸チタン酸バリウム、ジルコン酸チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコン酸チタン酸バリウムカルシウムなど)、チタン酸鉛および関連する固溶体(例えば、ジルコン酸チタン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)、チタン酸ナトリウムビスマスなどが含まれるだろう。一つの特定の態様において、例えば、BaSr1-xTiOの式のチタン酸バリウムストロンチウム(BSTO)を用いることができ、ここでxは0から1まで、幾つかの態様においては約0.15から約0.65まで、また幾つかの態様においては約0.25から約0.6までである。その他の適当なペロブスカイトは、例えば、BaCa1-xTiO(ここでxは約0.2から約0.8まで、また幾つかの態様においては約0.4から約0.6まで)、PbZr1-xTiO(PZT)(ここでxは約0.05から約0.4までの範囲)、チタン酸鉛ランタンジルコニウム(PLZT)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸バリウムカルシウムジルコニウム(BaCaZrTiO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、KNbO、LiNbO、LiTaO、PbNb、PbTa、KSr(NbO) およびNaBa(NbO)KHb
POであろう。さらに追加の複合ペロブスカイトには、A[B11/3B22/3]Oの材料(ここでAはBaSr1-x(xは0から1までの値をとりうる)であり、B1はMgZn1-y(yは0から1までの値をとりうる)であり、B2はTaNb1-z(zは0から1までの値をとりうる))が含まれるだろう。
【0014】
[0027]再び図1Aおよび図1Bを参照すると、第一の電極層10はまた、セラミック層12の第一の横方向端部72に向かって延びる第一のタブ部分14を含み、そして第二の電極層20はセラミック層22の第一の横方向端部72に向かって延びる第二のタブ部分24を含む。上で示したように、各々の電極層の第一および第二のタブ部分は互いにオフセットしている。例えば、示している態様において、第一のタブ部分14と第二のタブ部分24は、セラミック層の縦方向中心線から特定の距離だけ対称的にオフセットしていて、それによりそれらは互いに「鏡」の像を形成している。必ずしも必要なことではないが、第一の電極層10はまた、第一の横方向端部72に対して反対側のセラミック層12の第二の横方向端部74に向かって延びる第三のタブ部分16を含んでいて、そして第二の電極層20はセラミック層22の第二の横方向端部74に向かって延びる第四のタブ部分26を含んでいる。第三のタブ部分16は、第一の電極層10の横方向および/または縦方向中心線に沿って第一のタブ部分14とは対称的にオフセットしていてもよく、一方、第四のタブ部分26は同様に、第二の電極層20の横方向および/または縦方向中心線に沿って第二のタブ部分24とは対称的にオフセットしていてもよい。第三のタブ部分16と第四のタブ部分26もまた、セラミック層の縦方向中心線から特定の距離だけ対称的にオフセットしていてもよく、それによりそれらは互いに「鏡」の像を形成している。
【0015】
[0028]加えて、第一の電極10はまた、第一の切り抜き領域32および反対側の第三の
切り抜き領域34を画定していて、これらは、(示しているように)電極層10の横方向および/または縦方向中心線から特定の距離だけ対称的にオフセットしていてもよい。同様に、第二の電極20は第二の切り抜き領域52および反対側の第四の切り抜き領域54を画定していて、これらは、(示しているように)電極層20の横方向および/または縦方向中心線から特定の距離だけ対称的にオフセットしていてもよい。
【0016】
[0029]多層電子デバイスを形成するために、第一の電極層10は概して第二の電極層20と鉛直の構成で配置されていて、それによりセラミック層12はそれらの間に配置される。図2Aは、この重なった構造の上面図を示す。示しているように、第一の電極層10の第一のタブ部分14および第二の電極層20の第二のタブ部分24はセラミック層12の第一の横方向端部72に向かって延びていて、そして第一の電極層10の第三のタブ部分16および第二の電極層20の第四のタブ部分26はセラミック層12の第二の横方向端部74に向かって延びている。このやり方において、セラミック層12の第一の横方向端部に沿って第一のタブ部分14と第二のタブ部分24の間に第一の間隙領域50が画定され、その中で第一の電極層10と第二の電極層20は重なり合わない。同様に、セラミック層12の第二の横方向端部に沿って第三のタブ部分16と第四のタブ部分26の間に第二の間隙領域60が画定され、その中で第一の電極層10と第二の電極層20は重なり合わない。第一および第二の間隙領域は、電極層の横方向および/または縦方向中心線に関して概ね対称的になっていてもよい。さらに、図2Aに示すように電極層が鉛直の構成で配置されるとき、第一の切り抜き領域32は第二の切り抜き領域52と重なり合い、そして第三の切り抜き領域34は第四の切り抜き領域54と重なり合う。重なり合った切り抜き領域32、52および34、54はそれぞれ、電極層の横方向および/または縦方向中心線に関して対称的に配置されてもよい。このような構成により、より高い周波数でのデバイスの静電容量は主として、重なり合った切り抜き領域とタブ部分に近接するそれぞれの領域との間の領域から生じるだろう。そのようなより高い周波数での静電容量が生じる領域は概ね、図2Aにおいて210および220で示した陰影をつけた領域に相当する。
【0017】
[0030]上述した態様においては、二つの基本の電極層について論及を行った。当然のことながら、多層電子デバイスの技術分野において良く知られているように、本発明においては多数の交互に配置される電極層とセラミック層を用いてもよい、ということを理解すべきである。例えば、図2Bにおいて、四つの追加の互い違いになった電極層を含む態様が示されている。このような態様においては、追加の電極層は上で説明したような特徴部分(例えば、タブ部分および/または切り抜き領域)を任意に有していてもよいが、そのような特徴部分は決して必須のものではない。
【0018】
[0031]内部の電極層が形成されたならば、当業者に周知の技術、例えば、スパッタリング、塗装、印刷、無電解めっき、または微細銅結線(FCT)、電解めっき、プラズマ蒸着、高圧スプレー/空気はけ塗りなどの技術を用いて多層電子デバイスを完成させること
ができる。図3A図3Bおよび図3Cは完成したデバイスの一つの態様を示し、これは第一の電極層10と電気接続している第一の外部コンタクト316および第二の電極層20と電気接続している第二の外部コンタクト326を含む。図3Bに示すように、第一の外部コンタクト316はデバイスの上面および/または一つ以上の対向する端部に存在することができ、一方、第二の外部コンタクト326はデバイスの底面および/または一つ以上の対向する端部に存在することができる。所望により、デバイスの端部に露出した電極の部分を覆うために、はんだマスクなどのマスキング材料(図示せず)を任意に用いてもよい。そのような態様においては、外部コンタクトは主としてデバイスの上面と底面に位置するだろう。
【0019】
[0032]当然のことであるが、多層電子デバイスの様々なその他の可能性のある構成が、
本発明の範囲内で想定される。特定の態様において、例えば、各々の電極層において複数のタブ部分を用いることができる。そのようなデバイスの一つの例が図9A図9Cに構成要素900として示されていて、これは複数の第一の電極層910と複数の第二の電極層920を含み、それらの各々はオフセットしていて対称的なタブ部分を含む。さらに別の態様においては、一つの電極層上のタブ部分が一つの中心線に関して対称的に配置されているが、しかし他の中心線についてはそうでなくてもよい。そのようなデバイスの例は図10A図10Cに示されている。この態様においては、例えば、複数の第一の電極層1010と複数の第二の電極層1020を含むデバイス1000が示されている。第一の電極層は第一のタブ部分と第三のタブ部分を含み(図10B)、両者のタブ部分は縦方向端部に沿って位置しているので、これらは縦方向中心線に関して対称的に配置されているが、しかし横方向中心線についてはそうではない。同様に、第二の電極層は第二のタブ部分と第四のタブ部分を含み(図10C)、両者のタブ部分は縦方向端部に沿って位置しているので、これらは縦方向中心線に関して対称的に配置されているが、しかし横方向中心線についてはそうではない。
【0020】
[0033]本発明の結果として、特定の回路の用途について多くの望ましい性能特性を示す多層電子デバイス(例えば、コンデンサー)を形成することができる。例えば、特定の態様において、このデバイスは低い等価直列インダクタンス(ESL)の薄い要素を提供することができる。例えば、図5図6は、本技術に従って構成されたデバイス500、600と従来の構成のもの510、610との間のリターンロス(図5)およびインサーションロス(図6)のグラフでの比較を示す。そのような従来のデバイスの例は図4において要素400として示され、これは多層コンデンサー402(例えば、約100nF)およびこれにはんだ付けされた単層コンデンサー404(例えば、約1.8nF)を含む。しかし、図5図6のグラフからわかるであろうが、本発明の統合された設計は従来の多層/単層はんだ付け要素の性能を達成することができて、また約-40dBないし40G
Hzのインサーションロスをもたらすこともできる。同様に、図7図8は、切り抜き領域を有するデバイス700、800および切り抜き領域の無いデバイス710、810についてのリターンロス(図7)およびインサーションロス(図8)を示す。示されているように、切り抜き領域の無いデバイス710は高いリターンロスをもたらす。
【0021】
[0034]本発明の主題をその特定の態様について詳しく説明したが、当分野における熟練者であれば、上述のことについての理解が得られたならば、それらの態様に対して改変を行い、それらの態様の変形および/または同等物を容易に作ることを認識するであろう。従って、本開示の範囲は限定を目的とするものではなく例示としてのものであり、本主題の開示は本主題に対してそのような修正、変更および/または付加を含めることを排除するものではなく、そのことは当業者であれば自明であろう。
本発明は以下の実施態様を含む。
(1)多層電子デバイスであって、
第一の縦方向端部と第二の縦方向端部との間の縦方向と、第一の横方向端部と第二の横方向端部との間の横方向と、に延びるセラミック層、ここで、前記第一の縦方向端部と第二の縦方向端部との間に縦方向中心線が画定されており、且つ前記第一の横方向端部と第二の横方向端部との間に横方向中心線が画定されている、
前記セラミック層の鉛直上方に配置されている第一の電極層、ここで、前記第一の電極層は前記セラミック層の前記第一の横方向端部に向かって延びる第一のタブ部分を含み、前記第一の電極層はさらに第一の切り抜き領域を画定している、
前記セラミック層の鉛直下方に配置されている第二の電極層、ここで、前記第二の電極層は前記セラミック層の前記第一の横方向端部に向かって延びる第二のタブ部分を含み、前記第二の電極層はさらに第二の切り抜き領域を画定している、
を含み、
前記第一の電極層の前記第一のタブ部分は、前記第二の電極層の前記第二のタブ部分と縦方向においてオフセットしていて、それにより第一の間隙領域が形成されており、前記第一の間隙領域内で前記第一のタブ部分は前記第二のタブ部分と重なり合わず、そしてさらに、前記第一の切り抜き領域は、前記第二の切り抜き領域と少なくとも部分的に重なり合っている、前記多層電子デバイス。
(2)前記第一のタブ部分と前記第二のタブ部分は、前記セラミック層の前記縦方向中心線に関して対称的に配置されている、(1)に記載のデバイス。
(3)前記第一のタブ部分と前記第二のタブ部分は、前記セラミック層の前記横方向中心線に関して対称的に配置されている、(1)に記載のデバイス。
(4)前記第一の電極層は、前記セラミック層の前記第二の横方向端部に向かって延びる第三のタブ部分をさらに含む、(1)に記載のデバイス。
(5)前記第二の電極層は、前記セラミック層の前記第二の横方向端部に向かって延びる第四のタブ部分をさらに含む、(4)に記載のデバイス。
(6)前記第一の電極層の前記第三のタブ部分は、前記第二の電極層の前記第四のタブ部分から、前記縦方向においてオフセットしていて、それにより第二の間隙領域が形成されており、前記第二の間隙領域内では前記第三のタブ部分は前記第四のタブ部分と重なり合っていない、(5)に記載のデバイス。
(7)前記第一の間隙領域と前記第二の間隙領域は、前記セラミック層の前記縦方向中心線および/または前記横方向中心線に関して対称的に配置されている、(6)に記載のデバイス。
(8)前記第一の切り抜き領域と前記第二の切り抜き領域は、前記セラミック層の前記縦方向中心線に関して対称的に配置されている、(1)に記載のデバイス。
(9)前記第一の切り抜き領域と前記第二の切り抜き領域は、前記セラミック層の前記横方向中心線に関して対称的に配置されている、(1)に記載のデバイス。
(10)前記セラミック層はウェファーの形態である、(1)に記載のデバイス。
(11)前記セラミック層は誘電体を含む、(1)に記載のデバイス。
(12)前記第一の電極層と電気接続している第一の外部コンタクト、および前記第二の電極層と電気接続している第二の外部コンタクトをさらに含む、(1)に記載のデバイス。
(13)前記第一の外部コンタクトは、前記デバイスの上面および任意に一つ以上の対向する端部に存在し、そしてさらに、前記第二の外部コンタクトは、前記デバイスの底面および任意に一つ以上の対向する端部に存在する、(12)に記載のデバイス。
(14)前記第一の外部コンタクトは前記デバイスの上面だけに存在し、そして前記第二の外部コンタクトは前記デバイスの底面だけに存在する、(12)に記載のデバイス。
(15)前記デバイスの端部に露出した前記第一の電極層および前記第二の電極層の複数の部分を覆うマスキング材料をさらに含む、(14)に記載のデバイス。
(16)前記デバイスは、セラミック層と第一の電極層と第二の電極層とが互い違いになっているものを複数含む、(1)に記載のデバイス。
(17)前記デバイスはコンデンサーである、(1)に記載のデバイス。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C