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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20231102BHJP
【FI】
A61M25/10 510
A61M25/10 512
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021508933
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009620
(87)【国際公開番号】W WO2020195697
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019063580
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 陽二郎
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 真弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 良紀
(72)【発明者】
【氏名】杖田 昌人
(72)【発明者】
【氏名】大角 真太郎
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517474(JP,A)
【文献】特開2017-060616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0191111(US,A1)
【文献】特許第4345478(JP,B2)
【文献】特開2011-245114(JP,A)
【文献】特開2016-178969(JP,A)
【文献】特開2018-102353(JP,A)
【文献】特表2007-532279(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠近方向に延在しているシャフトと、
前記シャフトの遠位側に設けられており、収縮状態で複数の羽根形状部を有しているバルーンと、
前記バルーンの外側面に設けられている突出部と、
前記バルーンが内腔に配置されている保護管と、を有しており、
前記保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な前記保護管の内腔の断面形状は、多角形であり、
前記保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、前記保護管の重心から前記突出部の頂部を通る前記保護管の内表面までの距離は、該突出部と隣接する前記突出部との間での、前記保護管の重心から前記突出部を通らない前記保護管の内表面までの距離よりも長いことを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、前記保護管の重心から前記突出部の頂部を通る前記保護管の内表面までの距離は、該突出部と隣接する前記突出部との間での、前記保護管の重心から前記突出部を通らない前記保護管の内表面までの距離の1.1倍以上4.0倍以下である請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記突出部の数は、複数であり
記多角形の角の数は、前記突出部の数の倍数である請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記多角形の角の数は、前記突出部の数と等しい請求項3に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記突出部は、前記多角形の角部に配置されている請求項3または4に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、前記バルーンから前記突出部を除いた面積は、前記保護管の内腔の面積から前記突出部の面積を除いた面積の20%以上である請求項1~5のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、前記保護管の内表面に接している前記バルーンの外周の割合は、前記バルーンの外周全体に対して20%以上である請求項1~6のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記バルーンの内腔に、ガイドワイヤを挿通する内管を有している請求項1~7のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、前記バルーンから前記突出部を除いた面積は、前記保護管の内表面と前記内管の外表面との間の面積から前記突出部を除いた面積の20%以上である請求項8に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記バルーンと前記突出部とは、一体成形品である請求項1~9のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記保護管の一方端部での、前記保護管の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積は、前記保護管の遠近方向の長さの中点での、前記保護管の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積よりも大きい請求項1~10のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項12】
記保護管の一方端部での、遠近方向に垂直な前記保護管の内腔の断面形状は、多角形であり、
前記保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な前記保護管の内腔の断面形状である多角形の角の数は、前記保護管の一方端部での、遠近方向に垂直な前記保護管の内腔の断面形状である多角形の角の数よりも少ない請求項1~11のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項13】
前記保護管の一方端部での、遠近方向に垂直な前記保護管の内腔の断面形状は、円形状または楕円形状である請求項1~11のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項14】
前記保護管は、前記保護管の遠近方向の長さの中点と前記保護管の一方端部との間に遷移部を有しており、
前記遷移部は、前記遷移部での内腔の形状が、遠近方向を中心として螺旋状にねじれている請求項1~13のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項15】
前記突出部の数は、複数であり、
遠近方向に垂直な断面において、前記突出部の前記頂部と該突出部に隣接する前記突出部の前記頂部との間の中点と前記保護管の重心とを結ぶ直線よりも一方側に前記羽根形状部の起点を有している請求項1~14のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項16】
遠近方向に垂直な断面において、前記一方側とは反対側の他方側に前記羽根形状部の先端を有している請求項15に記載のバルーンカテーテル。
【請求項17】
前記羽根形状部は、前記バルーンの周方向に巻回されて折り畳まれており、
全ての前記羽根形状部は、前記バルーンの周方向において、一方の方向に折り畳まれている請求項1~16のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項18】
前記羽根形状部に頂部が接している前記突出部がある請求項1~17のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項19】
前記保護管の内表面に頂部が接している前記突出部がある請求項1~18のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護管を有するバルーンカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
体内で血液が循環するための流路である血管に狭窄が生じ、血液の循環が滞ることにより、様々な疾患が発生することが知られている。特に心臓に血液を供給する冠状動脈に狭窄が生じると、狭心症、心筋梗塞等の重篤な疾病をもたらすおそれがある。このような血管の狭窄部を治療する方法として、PTA、PTCAといった血管形成術等の、バルーンカテーテルを用いて狭窄部を拡張させる手技がある。血管形成術は、バイパス手術のような開胸術を必要としない低侵襲療法であり、広く行われている。
【0003】
血管内壁には、石灰化等により硬化した狭窄部が形成される場合がある。このような石灰化病変においては、一般的なバルーンカテーテルでは硬化した狭窄部を拡張させにくい。
【0004】
また、ステントと称される留置拡張器具を血管の狭窄部に留置することによって狭窄部を拡張させる方法も用いられているが、この治療後に血管の新生内膜が過剰に増殖して再び血管の狭窄が発生してしまう、ISR(In-Stent-Restenosis)病変が起こる場合がある。ISR病変においては、新生内膜が柔らかく、また表面が滑りやすいため、一般的なバルーンカテーテルではバルーンの拡張時にバルーンの位置が病変部からずれてしまい、血管を傷つけてしまうことがある。
【0005】
これらのような石灰化病変やISR病変であっても狭窄部を拡張できるバルーンカテーテルとして、バルーンがスコアリングエレメントを有しているバルーンカテーテルがある(例えば、特許文献1~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2014-506140号公報
【文献】特開2015-104671号公報
【文献】特開2015-163219号公報
【文献】特開2016-221313号公報
【文献】特表2007-518448号公報
【文献】特表2005-518842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、バルーンカテーテルは、使用時まで折り畳まれた状態のバルーンを保護しておくために、折り畳まれたバルーンの外径よりも少し内径が大きい円筒形チューブで形成された保護管を被せるという形態が採用されている。特許文献1~6のようなスコアリングエレメントを備えているバルーンカテーテルも同様に、バルーンに保護管を被せることが考えられるが、この場合、製品としての出荷検査前に行うバルーンの空気漏れ試験において、バルーンと保護管との間の隙間が大きいために保護管内でバルーンが膨らみ、バルーンカテーテルの使用時に、保護管からバルーンを取り出した際にバルーンが広がって外径が大きくなりやすく、バルーンカテーテルの血管内の通過性が悪くなってしまうといった問題が生じることが判明した。また、バルーンと保護管との間の隙間を減らすために、保護管の内径を小さくした場合、保護管の内腔へのバルーンの収容が困難となり、バルーンやスコアリングエレメントが破損してしまうという問題が発生することが確認された。
【0008】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、保護管の内腔に突出部を有するバルーンを収容した状態にてバルーンと保護管との間の隙間が小さく、バルーンの空気漏れ試験時にバルーンが保護管内にて膨らみにくく、かつ保護管の内腔にバルーンを収容しやすいバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決することができたバルーンカテーテルは、遠近方向に延在しているシャフトと、シャフトの遠位側に設けられており、収縮状態で複数の羽根形状部を有しているバルーンと、バルーンの外側面に設けられている突出部と、バルーンが内腔に配置されている保護管と、を有しており、保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、保護管の重心から突出部の頂部を通る保護管の内表面までの距離は、該突出部と隣接する突出部との間での、保護管の重心から突出部を通らない保護管の内表面までの距離よりも長いことを特徴とするものである。
【0010】
本発明のバルーンカテーテルは、保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、保護管の重心から突出部の頂部を通る保護管の内表面までの距離は、該突出部と隣接する突出部との間での、保護管の重心から突出部を通らない保護管の内表面までの距離の1.1倍以上4.0倍以下であることが好ましい。
【0011】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、突出部の数は、複数であり、保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な保護管の内腔の断面形状は、多角形であり、多角形の角の数は、突出部の数の倍数であることが好ましい。
【0012】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、多角形の角の数は、突出部の数と等しいことが好ましい。
【0013】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、突出部は、多角形の角部に配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、バルーンから突出部を除いた面積は、保護管の内腔の面積から突出部の面積を除いた面積の20%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明のバルーンカテーテルは、保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、保護管の内表面に接しているバルーンの外周の割合は、バルーンの外周全体に対して20%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、バルーンの内腔に、ガイドワイヤを挿通する内管を有していることが好ましい。
【0017】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、バルーンから突出部を除いた面積は、保護管の内表面と内管の外表面との間の面積から突出部を除いた面積の20%以上であることが好ましい。
【0018】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、バルーンと突出部とは、一体成形品であることが好ましい。
【0019】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護管の一方端部での、保護管の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積は、保護管の遠近方向の長さの中点での、保護管の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積よりも大きいことが好ましい。
【0020】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護管の遠近方向の長さの中点、および保護管の一方端部での、遠近方向に垂直な保護管の内腔の断面形状は、多角形であり、保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な保護管の内腔の断面形状である多角形の角の数は、保護管の一方端部での、遠近方向に垂直な保護管の内腔の断面形状である多角形の角の数よりも少ないことが好ましい。
【0021】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護管の一方端部での、遠近方向に垂直な保護管の内腔の断面形状は、円形状または楕円形状であることが好ましい。
【0022】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護管は、保護管の遠近方向の長さの中点と保護管の一方端部との間に遷移部を有しており、遷移部は、遷移部での内腔の形状が、遠近方向を中心として螺旋状にねじれていることが好ましい。
【0023】
本発明のバルーンカテーテルは、突出部の数は、複数であり、遠近方向に垂直な断面において、突出部の頂部と該突出部に隣接する突出部の頂部との間の中点と保護管の重心とを結ぶ直線よりも一方側に羽根形状部の起点を有していることが好ましい。
【0024】
本発明のバルーンカテーテルは、遠近方向に垂直な断面において、一方側とは反対側の他方側に羽根形状部の先端を有していることが好ましい。
【0025】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、羽根形状部は、バルーンの周方向に巻回されて折り畳まれており、全ての羽根形状部は、バルーンの周方向において、一方の方向に折り畳まれていることが好ましい。
【0026】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、羽根形状部に頂部が接している突出部があることが好ましい。
【0027】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、保護管の内表面に頂部が接している突出部があることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のバルーンカテーテルによれば、保護管の遠近方向の長さの中点での遠近方向に垂直な断面において、保護管の重心から突出部の頂部を通る保護管の内表面までの距離が該突出部と隣接する突出部との間での保護管の重心から突出部を通らない保護管の内表面までの距離よりも長いことにより、保護管の内腔にバルーンを収容した状態にて保護管とバルーンとの隙間を小さくすることができる。そのため、バルーンの空気漏れ試験の際に保護管内にてバルーンが膨らみにくく、かつ、保護管の内腔に突出部を有するバルーンを容易に収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態におけるバルーンカテーテルの全体図を表す。
図2】本発明の実施の形態における収縮状態のバルーンの遠近方向に垂直な断面図を表す。
図3図1に示したバルーンカテーテルのIII-III断面図を表す。
図4図1に示したバルーンカテーテルのIV-IV断面図を表す。
図5】本発明の他の実施の形態における保護管の一方端部での、遠近方向に垂直な断面図を表す。
図6】本発明のさらに他の実施の形態における保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面図を表す。
図7】本発明の異なる実施の形態における保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0031】
図1は本発明の実施の形態におけるバルーンカテーテル1の全体図を表し、図2は収縮状態のバルーン20の遠近方向に垂直な断面図を表す。図1および図2に示すように、バルーンカテーテル1は、遠近方向に延在しているシャフト10と、シャフト10の遠位側に設けられており、収縮状態で複数の羽根形状部21を有しているバルーン20と、バルーン20の外側面に設けられている突出部30と、バルーン20が内腔に配置されている保護管40と、を有している。
【0032】
本発明において、遠位側とはシャフト10の延在方向に対して処置対象者側の方向を指し、近位側とは遠位側の反対側、すなわちシャフト10の延在方向に対して使用者、つまり術者の手元側の方向を指す。また、シャフト10の近位側から遠位側への方向を遠近方向と称する。
【0033】
図1には、シャフト10の遠位側から近位側にわたって、バルーンカテーテル1の進行をガイドするガイドワイヤを挿通する、所謂オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテル1の構成例を示している。なお本発明は、シャフト10の遠位側から近位側に至る途中までガイドワイヤを挿通する、所謂ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルにも適用できる。
【0034】
バルーンカテーテル1は、シャフト10を通じてバルーン20の内部に流体が供給されるように構成され、インデフレーター(バルーン用加圧器)を用いてバルーン20の拡張および収縮を制御することができる。流体は、ポンプ等によって加圧した圧力流体であってもよい。
【0035】
シャフト10は、遠近方向に延在しており、内部に流体の流路が設けられている。また、シャフト10は、内部にガイドワイヤの挿通路を有していることが好ましい。シャフト10が内部に、流体の流路およびガイドワイヤの挿通路を有する構成とするには、例えば、シャフト10が外側チューブと内側チューブとを有しており、内側チューブがガイドワイヤの挿通路として機能し、内側チューブと外側チューブの間の空間が流体の流路として機能することが挙げられる。シャフト10が外側チューブと内側チューブとを有している場合、内側チューブが外側チューブの遠位端から延出してバルーン20を遠近方向に貫通し、バルーン20の遠位側が内側チューブに接合され、バルーン20の近位側が外側チューブと接合されることが好ましい。
【0036】
シャフト10に流体を送り込むために、シャフト10の近位側にハブ2を有していてもよい。ハブ2は、バルーン20の内部に供給される流体の流路と連通した流体注入部3と、ガイドワイヤの挿通路と連通したガイドワイヤ挿入部4を有することが好ましい。バルーンカテーテル1が流体注入部3とガイドワイヤ挿入部4を備えるハブ2を有していることにより、バルーン20の内部に流体を供給してバルーン20を拡張させる操作、およびバルーン20の内部にある流体を除去してバルーン20を収縮させる操作や、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル1を処置対象部位へ送り込む操作を容易に行いやすくなる。
【0037】
シャフト10とハブ2との接合は、例えば、接着剤による接着、溶着等が挙げられる。中でも、シャフト10とハブ2は、接着によって接合されていることが好ましい。シャフト10とハブ2とが接着されていることにより、例えば、シャフト10は柔軟性の高い材料から構成され、ハブ2は剛性の高い材料から構成されている等、シャフト10を構成する材料とハブ2を構成する材料とが異なっている場合に、シャフト10とハブ2との接合強度を高めてバルーンカテーテル1の耐久性を高めることが可能となる。
【0038】
シャフト10を構成する材料は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、シャフト10を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂の少なくとも1つであることが好ましい。シャフト10を構成する材料がポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂の少なくとも1つであることにより、シャフト10の表面の滑り性を高めることができる。その結果、バルーンカテーテル1の血管への挿通性を向上させることができる。
【0039】
図1に示すように、バルーン20は、シャフト10の遠位側に設けられている。バルーン20とシャフト10との接合は、接着剤による接着、溶着、バルーン20の端部とシャフト10とが重なっている箇所にリング状部材を取り付けてかしめること等が挙げられる。中でも、バルーン20とシャフト10は、溶着によって接合されていることが好ましい。バルーン20とシャフト10とが溶着されていることにより、バルーン20を繰り返し拡張および収縮させてもバルーン20とシャフト10との接合が解除されにくくなり、バルーン20とシャフト10の接合強度を容易に高めることができる。
【0040】
バルーン20は、直管部、直管部の近位側に接続される近位側テーパー部、および直管部の遠位側に接続される遠位側テーパー部を有することが好ましい。近位側テーパー部および遠位側テーパー部は、直管部から離れるにつれて縮径するように形成されていることが好ましい。バルーン20が直管部を有していることにより、直管部が狭窄部と十分に接触して狭窄部の拡張が行いやすくなる。また、バルーン20が直管部から離れるにつれて外径が小さくなる近位側テーパー部および遠位側テーパー部を有していることにより、バルーン20を収縮させてシャフト10に巻き付けた際に、バルーン20の遠位端部および近位端部の外径を小さくして、シャフト10とバルーン20との段差を小さくすることができる。そのため、バルーン20を遠近方向に挿通させやすくなる。なお、本発明においては、膨張可能な部分をバルーン20と見なす。
【0041】
バルーン20を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ラテックスゴム等の天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。バルーン20を構成する材料は、中でも、ポリアミド系樹脂であることが好ましく、ナイロン12であることがより好ましい。バルーン20を構成する材料がポリアミド系樹脂であることにより、バルーン20の柔軟性を高め、バルーン20を収縮させて折り畳んだ際に外径を小さくすることができる。そのため、バルーン20を保護管40の内腔へ配置しやすくなる。
【0042】
バルーン20の外径は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。バルーン20の外径の下限値を上記の範囲に設定することにより、血管内の狭窄部を十分に拡張することができる。また、バルーン20の外径は、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。バルーン20の外径の上限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン20の外径が過度に大きくなることを防止し、保護管40の内腔に配置しやすいバルーン20とすることができる。
【0043】
バルーン20の遠近方向の長さは、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましい。バルーン20の遠近方向の長さの下限値を上記の範囲に設定することにより、一度に拡張できる狭窄部の面積を大きくして手技にかかる時間を短縮することが可能となる。また、バルーン20の遠近方向の長さは、300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。バルーン20の遠近方向の長さの上限値を上記の範囲に設定することにより、狭窄部の拡張のためにバルーン20の内部に送り込む流体の量を減らすことができ、バルーン20を十分に拡張させるために必要な時間を短くすることができる。
【0044】
バルーン20の厚みは、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。バルーン20の厚みの下限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン20の強度を高めて狭窄部を十分に拡張することができる。また、バルーン20の厚みの上限値は、バルーンカテーテル1の用途に応じて設定することができ、例えば、高耐圧のバルーン20として用いる場合には、30μm~45μmの厚みとすることが好ましい。また、バルーン20部分の通過性を向上させたい場合は、バルーン20の厚みの上限値を30μm以下とすることが好ましい。
【0045】
図2に示すように、バルーン20は、収縮状態で複数の羽根形状部21を有している。羽根形状部21は、バルーン20が収縮している状態において、バルーン20の内表面の一部同士が接している部分を指す。
【0046】
突出部30は、バルーン20の外側面に設けられている。石灰化病変においてバルーンカテーテル1のバルーン20を拡張することにより、突出部30が石灰化して硬化した病変部に亀裂を入れて十分に拡張することができる。また、ISR病変においてバルーンカテーテル1のバルーン20を拡張することにより、柔らかく、表面が滑りやすい新生内膜に突出部30が引っ掛かり、ISR病変の拡張時にバルーン20の位置ずれが起こりにくくなる。
【0047】
突出部30が設けられている位置は、羽根形状部21上であってもよいが、図2に示すように、羽根形状部21ではない部分であることが好ましい。突出部30が羽根形状部21ではない部分に設けられていることにより、収縮状態のバルーン20の周方向において羽根形状部21と突出部30とが異なる位置に配置されることとなる。その結果、バルーン20の羽根形状部21を折り畳んだ際にバルーン20の外径を小さくすることが可能となり、保護管40の内腔へバルーン20を配置しやすくなる。
【0048】
突出部30の数は、1つであってもよいが、複数であることが好ましい。つまり、バルーン20の外側面に複数の突出部30が設けられていることが好ましい。突出部30の数が複数であることにより、石灰化によって硬化した病変部に亀裂を入れやすくなる。また、突出部30の数が複数であることによって、ISR病変に対してバルーン20の位置ずれをさらに起こりにくくすることができる。
【0049】
突出部30の数が複数であり、突出部30が羽根形状部21ではない部分に設けられている場合、隣接する2つの突出部30間に設けられている羽根形状部21の数は、1つであってもよいが、複数であることが好ましい。隣接する2つの突出部30の間に複数の羽根形状部21が設けられていることにより、羽根形状部21の1つあたりの長さを短くすることができる。そのため、バルーン20を収縮させて羽根形状部21を折り畳んだ状態において、保護管40の内腔にバルーン20を収容することが容易となる。
【0050】
突出部30は、遠近方向に延在している。突出部30の遠近方向の長さは、バルーン20の遠近方向の長さよりも短いことが好ましい。突出部30の遠近方向の長さがバルーン20の遠近方向の長さよりも短いことにより、バルーン20の遠近方向の一部に突出部30が設けられていない箇所があるため、バルーン20が曲がりやすく、湾曲した血管等でのバルーンカテーテル1の挿通性を高めることができる。
【0051】
突出部30を構成する材料は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ-(4-メチルペンテン-1)等のポリメチルペンテン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ブタジエン-スチレン共重合体、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12等のポリアミド系樹脂、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅合金、タンタル、コバルト合金等の金属等の合成樹脂が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
突出部30を構成する材料は、バルーン20を構成する材料と同じであることが好ましい。突出部30を構成する材料とバルーン20を構成する材料とが同じであることにより、突出部30とバルーン20とを溶着等によって接合することが可能となって、突出部30とバルーン20との接合強度を高めることができる。
【0053】
バルーン20と突出部30とは、一体成形品であることが好ましい。つまり、突出部30を有するバルーン20を一体成形によって形成されていることが好ましい。バルーン20と突出部30とが一体成形によって形成されていることにより、バルーン20への突出部30の接合を強固なものとすることが可能となる。
【0054】
突出部30の高さは、バルーン20の厚みよりも大きいことが好ましい。突出部30の高さがバルーン20の厚みよりも大きいことにより、石灰化病変やISR病変であっても突出部30を狭窄部に引っ掛けて固定しやすくなる。なお、突出部30の高さは、突出部30の基部から突出部30の頂部31までの長さを指す。
【0055】
突出部30の高さは、バルーン20の厚みの2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましい。突出部30の高さとバルーン20の厚みの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、突出部30を狭窄部に引っ掛けて固定しやすく、狭窄部の拡張が行いやすいバルーン20とすることができる。また、突出部30の高さは、バルーン20の厚みの100倍以下であることが好ましく、85倍以下であることがより好ましく、70倍以下であることがさらに好ましい。突出部30の高さとバルーン20の厚みの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、収縮状態のバルーン20の外径を小さくして、バルーン20を保護管40の内腔に収容した状態にてバルーン20と保護管40との間に生じる隙間を小さくすることができる。そのため、バルーン20の空気漏れ試験時に保護管40内にてバルーン20を膨らみにくくすることが可能となる。
【0056】
図1に示すように、保護管40は、内腔にバルーン20が配置されている。保護管40は、突出部30が他物と接触して突出部30が曲がることや欠けること等、破損を防止するために、バルーンカテーテル1の使用時までバルーン20に被せてバルーン20を保護している。
【0057】
保護管40を構成する材料は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、保護管40を構成する材料は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。保護管40を構成する材料がポリオレフィン系樹脂であることにより、保護管40の表面の摺動性を向上させ、保護管40の内腔にバルーン20を配置することが容易となる。
【0058】
保護管40を構成する材料のショアD硬度は、突出部30を構成するショアD硬度よりも低いことが好ましい。保護管40を構成する材料のショアD硬度が突出部30を構成する材料のショアD硬度よりも低いことにより、保護管40の内腔に突出部30を有するバルーン20を配置する際に、保護管40の内表面と突出部30とが接触しても突出部30が潰れることや曲がること等、破損することを防止できる。なお、ショアD硬度は、ISO868:2003 プラスチック・デュロメータ硬さ試験方法に基づき計測することができる。
【0059】
保護管40の遠近方向の長さは、バルーン20の遠近方向の長さよりも長いことが好ましい。保護管40の遠近方向の長さがバルーン20の遠近方向の長さよりも長いことにより、バルーン20の全体を保護管40の内腔に収容することができる。そのため、突出部30を十分に保護することができる。
【0060】
保護管40の遠近方向の長さは、バルーン20の遠近方向の長さの1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上であることがさらに好ましい。保護管40の遠近方向の長さとバルーン20の遠近方向の長さの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン20の全体を保護管40によって十分に覆うことができ、突出部30が露出しないように保護管40にて保護することが可能となる。また、保護管40の遠近方向の長さは、バルーン20の遠近方向の長さの2倍以下であることが好ましく、1.8倍以下であることがより好ましく、1.6倍以下であることがさらに好ましい。保護管40の遠近方向の長さとバルーン20の遠近方向の長さの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、保護管40の遠近方向の長さが長くなりすぎることを防ぎ、保護管40の内腔にバルーン20を収容することやバルーンカテーテル1の使用時に保護管40を取り外すことを行いやすくなる。
【0061】
保護管40の厚みは、突出部30の高さよりも大きいことが好ましい。保護管40の厚みが突出部30の高さよりも大きいことにより、保護管40の強度を高め、保護管40の外部からバルーン20に力が加わっても、突出部30が変形することや破損することを防止して、突出部30を十分に保護することが可能となる。
【0062】
保護管40の厚みは、突出部30の高さの1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。保護管40の厚みと突出部30の高さの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、保護管40の強度が高まる。その結果、保護管40の内腔にバルーン20を収容した際に、突出部30によって保護管40が破損しにくくなる。また、保護管40の厚みは、突出部30の高さの10倍以下であることが好ましく、8倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることがさらに好ましい。保護管40の厚みと突出部30の高さの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン20を保護管40の内腔に収容する際に、突出部30やバルーン20が保護管40の内表面に押し付けられた場合に保護管40が変形することが可能となる。そのため、突出部30やバルーン20と保護管40の内表面とが接触しても破損しにくくすることができる。
【0063】
図3は、図1に示したバルーンカテーテル1のIII-III断面図を表しており、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面図を表す。図3に示すように、保護管40の内腔に収縮状態で複数の羽根形状部21が折り畳まれているバルーン20が配置されている。
【0064】
保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、図3(a)に示すように、保護管40の重心P2から突出部30の頂部31を通る保護管40の内表面までの距離D1は、図3(b)に示すように、該突出部30と隣接する突出部30との間での、保護管40の重心P2から突出部30を通らない保護管40の内表面までの距離D2よりも長い。なお、保護管40の重心P2は、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、保護管40の内腔の形状の重心である。保護管40の重心P2から突出部30の頂部31を通る保護管40の内表面までの距離D1が保護管40の重心P2から突出部30を通らない保護管40の内表面までの距離D2よりも長いことにより、保護管40の内腔において、突出部30の頂部31が位置する部分の空間が他の部分の空間よりも広くなるため、保護管40の内腔にバルーン20を収容しやすくなる。また、距離D1が距離D2よりも長いことにより、保護管40の内腔にバルーン20を収容した状態にて、保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間の隙間を小さくして、バルーン20の空気漏れ試験の際にバルーン20が保護管40内にて大きく膨らむことを防止することができる。
【0065】
保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、保護管40の重心P2から突出部30の頂部31を通る保護管40の内表面までの距離D1は、該突出部30と隣接する突出部30との間での、保護管40の重心P2から突出部30を通らない保護管40の内表面までの距離D2の1.1倍以上4.0倍以下であることが好ましい。保護管40の重心P2から突出部30の頂部31を通る保護管40の内表面までの距離D1と、保護管40の重心P2から突出部30を通らない保護管40の内表面までの距離D2との比率を上記の範囲に設定することにより、保護管40の内腔にバルーン20を収容した状態にて、保護管40の内表面とバルーン20の外表面との隙間を小さくすることができる。そのため、バルーン20の空気漏れ試験時に保護管40内にてバルーン20が膨らむ空間を十分に小さくして膨らみにくくすることができる。
【0066】
保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、保護管40の重心P2から突出部30の頂部31を通る保護管40の内表面までの距離D1は、該突出部30と隣接する突出部30との間での、保護管40の重心P2から突出部30を通らない保護管40の内表面までの距離D2の1.1倍以上であることが好ましいが、1.15倍以上であることがより好ましく、1.2倍以上であることがさらに好ましく、1.3倍以上であることがよりさらに好ましく、1.4倍以上であることが特に好ましく、1.5倍以上であることが最も好ましい。保護管40の重心P2から突出部30の頂部31を通る保護管40の内表面までの距離D1と、保護管40の重心P2から突出部30を通らない保護管40の内表面までの距離D2との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間に生じる隙間を十分に小さくすることができ、バルーン20の空気漏れ試験の際に保護管40内にてバルーン20が大きく膨らむことを妨げることができる。
【0067】
また、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、保護管40の重心P2から突出部30の頂部31を通る保護管40の内表面までの距離D1は、該突出部30と隣接する突出部30との間での、保護管40の重心P2から突出部30を通らない保護管40の内表面までの距離D2の4.0倍以下であることが好ましいが、3.9倍以下であることがより好ましく、3.8倍以下であることがさらに好ましく、3.7倍以下であることがよりさらに好ましく、3.6倍以下であることが特に好ましく、3.5倍以下であることが最も好ましい。保護管40の重心P2から突出部30の頂部31を通る保護管40の内表面までの距離D1と、保護管40の重心P2から突出部30を通らない保護管40の内表面までの距離D2との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、保護管40の内腔にバルーン20を収容しやすくすることが可能となる。
【0068】
図3に示すように、突出部30の数は、複数であり、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状は多角形であり、多角形の角の数は、突出部30の数の倍数であることが好ましい。保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状が多角形であって、多角形の角の数が突出部30の数の倍数であることにより、保護管40の内腔にバルーン20を配置した際に突出部30が多角形の角部に位置しやすく、保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間の隙間を減らしてバルーン20の空気漏れ試験時にバルーン20が保護管40の中で膨らむ空間を減らすことができる。
【0069】
なお、本発明における多角形は、多角形の角部の頂点が明確であって辺部が直線であるものの他に、多角形の角部が丸みを帯びている所謂角丸多角形や、多角形の辺部の少なくとも一部が曲線となっているものも含まれるものとする。また、多角形の角部が丸みを帯びている場合、多角形の角部の丸みの半径は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。多角形の角部の丸みの半径の上限値を上記の範囲に設定することにより、多角形の角部に突出部30を配置しやすくなり、保護管40の内腔にバルーン20を収容することが容易になる。
【0070】
多角形の角の数は、突出部30の数の倍数であることが好ましいが、突出部30の数と等しいことがより好ましい。多角形の角の数が突出部30の数と等しいことにより、保護管40の内腔が小さくなる。その結果、保護管40の内腔へバルーン20を配置した際に、保護管40の内表面とバルーン20の外表面との距離を小さくして、バルーン20の空気漏れ試験にてバルーン20が保護管40内にて膨らみにくくすることができる。
【0071】
突出部30は、多角形の角部に配置されていることが好ましい。突出部30が多角形の角部に配置されていることにより、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、保護管40の遠近方向に垂直な断面において、保護管40の重心P2からの距離が他の箇所よりも大きい角部に、断面積の大きい突出部30を配置することとなる。そのため、保護管40の内腔に突出部30を有するバルーン20を配置することが容易となる。
【0072】
図示していないが、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、保護管40の遠近方向に垂直な断面において、保護管40の重心P2と突出部30の頂部31とを通る直線上に、多角形の角部の頂点があることが好ましい。保護管40の重心P2と突出部30の頂部31とを通る直線上に多角形の角部の頂点があることにより、角部の中でも保護管40の重心P2からの距離が最も大きい部分に、突出部30の高さが最も大きい頂部31が位置する。その結果、保護管40とバルーン20との隙間を小さくするために保護管40の内腔の断面形状の面積を小さくしても、保護管40の内腔に突出部30を有するバルーン20を挿入しやすくすることができる。
【0073】
保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、バルーン20から突出部30を除いた面積は、保護管40の内腔の面積から突出部30の面積を除いた面積の20%以上であることが好ましい。バルーン20から突出部30を除いた面積が保護管40の内腔の面積から突出部30の面積を除いた面積の20%以上であることにより、保護管40の内腔に突出部30を有するバルーン20を配置した状態において、保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間に生じる隙間を小さくすることができる。そのため、バルーン20の空気漏れ試験の際に保護管40内にてバルーン20が膨らみにくくすることが可能となる。
【0074】
保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、バルーン20から突出部30を除いた面積は、保護管40の内腔の面積から突出部30の面積を除いた面積の20%以上であることが好ましいが、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。保護管40の内腔の面積から突出部30の面積を除いた面積に対するバルーン20から突出部30を除いた面積の割合の下限値を上記の範囲に設定することにより、保護管40の内腔の面積から突出部30の面積を除いた空間に対してバルーン20から突出部30を除いた部分が占める割合を大きくして、保護管40とバルーン20との間にできる隙間を減らし、バルーン20の空気漏れ試験にてバルーン20が保護管40の内部にて大きく膨らむことを防ぐことができる。また、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、保護管40の内腔の面積から突出部30の面積を除いた面積に対するバルーン20から突出部30を除いた面積の割合の上限値は特に限定されないが、例えば、80%以下、70%以下、60%以下とすることができる。
【0075】
保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、保護管40の内表面に接しているバルーン20の外周の割合は、バルーン20の外周全体に対して20%以上であることが好ましい。保護管40の内表面に接しているバルーン20の外周の割合がバルーン20の外周全体に対して20%以上であることにより、保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間に隙間が少ない状態で保護管40の内腔にバルーン20が配置されることとなる。そのため、バルーン20と保護管40との間に生じる隙間を減らして、バルーン20の空気漏れ試験の際に保護管40内でバルーン20を膨らみにくくすることが可能となる。
【0076】
保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、バルーン20の外周全体に対する保護管40の内表面に接しているバルーン20の外周の割合は、20%以上であることが好ましいが、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。バルーン20の外周全体に対する保護管40の内表面に接しているバルーン20の外周の割合の下限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン20が保護管40の内表面に多く接している状態にて保護管40の内腔に配置されており、バルーン20の外表面と保護管40の内表面との間に生じる隙間を減らしてバルーン20の空気漏れ試験時に保護管40の内部でバルーン20が大きく膨らむことを防止することができる。また、バルーン20の外周全体に対する保護管40の内表面に接しているバルーン20の外周の割合の上限値は特に限定されないが、例えば、50%以下、45%以下、40%以下とすることができる。
【0077】
図3に示すように、バルーンカテーテル1は、バルーン20の内腔に、ガイドワイヤを挿通する内管11を有していることが好ましい。バルーン20の内腔に内管11を有していることにより、バルーンカテーテル1にガイドワイヤを挿通しやすくなる。また、バルーン20の内腔に内管11を有していることによって、内管11にガイドワイヤを挿通するため、ガイドワイヤがバルーン20に接触してバルーン20が破損することを防止できる。
【0078】
従来の内管を有するバルーンカテーテルは、保護管内へ突出部を備えたバルーンカテーテルを収容した際に、保護管の内表面とバルーンの外表面との間に十分な隙間がない場合、保護管によってバルーンの突出部がバルーンの内方へ押されて内管を押し潰してしまい、ガイドワイヤが通る空間が狭まることにより、ガイドワイヤの摺動性が低下することやガイドワイヤが内管内を通過できなくなること(ガイドワイヤスタック)があった。
【0079】
保護管40が、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、保護管40の重心P2から突出部30の頂部31を通る保護管40の内表面までの距離D1は、該突出部30と隣接する突出部30との間での、保護管40の重心P2から突出部30を通らない保護管40の内表面までの距離D2よりも長いことにより、突出部30が内管11を押し潰しにくく、内管11内でのガイドワイヤの摺動性の低下やガイドワイヤスタックを防ぐことができる。
【0080】
シャフト10が外側チューブと内側チューブを有する構成である場合、内管11と内側チューブとが一体化されていることが好ましい。内管11と内側チューブとが一体化されていることにより、ガイドワイヤをバルーンカテーテル1に挿通しやすく、かつ、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル1を遠近方向に移動させることが容易となる。内管11と内側チューブとを一体化するには、例えば、内管11の近位端と内側チューブの遠位端を接合する、1つのチューブ部材にて内管11と内側チューブとを兼ねること等が挙げられる。
【0081】
内管11を構成する材料は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、内管11を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂の少なくとも1つであることが好ましい。内管11を構成する材料がポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂の少なくとも1つであることにより、内管11とガイドワイヤとの摺動性を高めて、ガイドワイヤに沿って遠近方向に移動させやすいバルーンカテーテル1とすることができる。
【0082】
内管11の遠近方向に垂直な断面での内管11の内腔の形状は、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。中でも、図3に示すように、内管11の遠近方向に垂直な断面での内管11の内腔の形状は、円形であることが好ましい。内管11の内腔の断面形状が円形であることにより、内管11の内表面の摺動性を高め、内管11の内腔に配置させたガイドワイヤを内管11内にて遠近方向へ円滑に移動させやすくなる。
【0083】
内管11の厚みは、バルーン20の厚みよりも薄くてもよく、バルーン20の厚みと同じであってもよいが、バルーン20の厚みよりも厚いことが好ましい。内管11の厚みがバルーン20の厚みよりも厚いことにより、内管11の剛性を高めることができる。そのため、保護管40の内表面とバルーン20の外表面とが接しており、バルーン20に力が加わっている場合でも内管11に変形が生じにくく、内管11へのガイドワイヤの挿通性を高めることができる。
【0084】
内管11の厚みは、バルーン20の厚みの1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上であることがさらに好ましい。内管11の厚みとバルーン20の厚みの比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、ガイドワイヤと接触しても破損しにくい、強度の高い内管11とすることができる。また、内管11の厚みは、バルーン20の厚みの5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることがさらに好ましい。内管11の厚みとバルーン20の厚みの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、内管11の剛性が高くなりすぎることを防ぎ、湾曲した血管等に合わせて内管11も湾曲してバルーンカテーテル1の挿通性を向上させることができる。
【0085】
内管11の厚みは、保護管40の厚みよりも薄いことが好ましい。内管11の厚みが保護管40の厚みよりも薄いことにより、バルーンカテーテル1を湾曲した血管等に配置した際に内管11も湾曲することが可能となり、挿通性のよいバルーンカテーテル1とすることができる。
【0086】
内管11の厚みは、保護管40の厚みの50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。内管11の厚みと保護管40の厚みの上限値を上記の範囲に設定することにより、内管11の剛性を適度なものとして、湾曲した血管等にもバルーンカテーテル1を容易に挿通することができる。また、内管11の厚みは、保護管40の厚みの5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。内管11の厚みと保護管40の厚みの下限値を上記の範囲に設定することにより、保護管40の内表面がバルーン20の外表面と接触している状態となり、バルーン20を通じて内管11に力が加わっていても内管11が変形しにくく、内管11内にガイドワイヤを円滑に挿通させることができる。
【0087】
保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、バルーン20から突出部30を除いた面積は、保護管40の内表面と内管11の外表面との間の面積から突出部30を除いた面積の20%以上であることが好ましい。バルーン20から突出部30を除いた面積が保護管40の内表面と内管11の外表面との間の面積から突出部30を除いた面積の20%以上であることにより、保護管40の内腔に、内腔に内管11が設けられており、突出部30を有するバルーン20を配置した際に、保護管40の内表面と内管11の外表面との間に大きな隙間ができにくくなる。その結果、バルーン20の空気漏れ試験を行ったときに、バルーン20が保護管40の内部にて膨らみにくくすることが可能となる。
【0088】
保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、バルーン20から突出部30を除いた面積は、保護管40の内表面と内管11の外表面との間の面積から突出部30を除いた面積の20%以上であることが好ましいが、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。保護管40の内表面と内管11の外表面との間の面積から突出部30を除いた面積に対する、バルーン20から突出部30を除いた面積の割合の下限値を上記の範囲に設定することにより、保護管40の内表面と内管11の外表面との間の空間に対してバルーン20から突出部30を除いた部分が占める割合を大きくし、保護管40とバルーン20との間にできる隙間を減らして、バルーン20の空気漏れ試験にてバルーン20が保護管40の内部にて大きく膨らむことを防ぐことができる。また、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面において、保護管40の内表面と内管11の外表面との間の面積から突出部30を除いた面積に対するバルーン20から突出部30を除いた面積の割合の上限値は特に限定されないが、例えば、80%以下、70%以下、60%以下とすることができる。
【0089】
保護管40の一方端部での、保護管40の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積は、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、保護管40の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積よりも大きいことが好ましい。保護管40の一方端部の内腔の面積が、保護管40の遠近方向の長さの中点P1の内腔の面積よりも大きいことにより、保護管40がバルーン20の一方端部に設けられている突出部30を押し潰しにくくなる。また、保護管40の一方端部の内腔の面積が、保護管40の遠近方向の長さの中点P1の内腔の面積よりも大きいことにより、保護管40の一方端部からバルーン20を挿通することによって保護管40の内腔にバルーン20を配置することが容易となる。
【0090】
保護管40の一方端部での、保護管40の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積は、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、保護管40の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積の1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上であることがさらに好ましい。保護管40の一方端部の内腔の面積と、保護管40の遠近方向の長さの中点P1の内腔の面積との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、バルーン20の一方端部に設けられている突出部30を保護管40が押し潰し、突出部30が潰れることを防止できる。また、保護管40の一方端部での、保護管40の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積は、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、保護管40の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積の3倍以下であることが好ましく、2.5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。保護管40の一方端部の内腔の面積と、保護管40の遠近方向の長さの中点P1の内腔の面積との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、保護管40の一方端部の内腔の面積が過度に大きくなることを防ぎ、その結果、バルーン20の空気漏れ試験の際に保護管40の一方端部に配置されているバルーン20が膨らみにくくなる。
【0091】
保護管40の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積は、保護管40の少なくとも一方の端部にて、保護管40の遠近方向の長さの中点P1よりも大きいことが好ましいが、保護管40の一方の端部での内腔の面積および他方の端部での内腔の面積が、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での内腔の面積よりも大きいことがより好ましい。つまり、保護管40の両端部での、保護管40の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積は、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、保護管40の遠近方向に垂直な断面での内腔の面積よりも大きいことがより好ましい。保護管40の両端部の内腔の面積が、保護管40の遠近方向の長さの中点P1の内腔の面積よりも大きいことにより、保護管40の内腔にバルーン20を配置する際に、保護管40の一方端部と他方端部とを区別する必要がなくなり、バルーンカテーテル1の製造効率を高めることができる。
【0092】
図4は、図1に示したバルーンカテーテル1のIV-IV断面図を表しており、保護管40の一方端部での遠近方向に垂直な断面図を表す。図3および図4に示すように、保護管40の遠近方向の長さの中点P1、および保護管40の一方端部での、遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状は、多角形であり、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状である多角形の角の数は、保護管40の一方端部での、遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状である多角形の角の数よりも少ないことが好ましい。保護管40の遠近方向の長さの中点P1での遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状である多角形の角の数が、保護管40の一方端部での遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状である多角形の角の数よりも少ないことにより、保護管40の一方端部の内腔の断面形状が、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での内腔の断面形状よりも角の数が多く、円形状に近い形状となる。つまり、保護管40の内腔にバルーン20を配置する際に、バルーン20の挿入口となる保護管40の一方端部の内腔の断面形状は円形状に近いため、挿入口が広く、保護管40の内腔にバルーン20を挿入しやすくなる。そのため、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での内腔の断面形状は保護管40の一方端部の内腔の断面形状よりも角が少ないため、保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間に生じる隙間が小さく、バルーン20の空気漏れ試験の際に保護管40の内部にてバルーン20を膨らみにくくすることができる。
【0093】
突出部30の数が複数であり、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状である多角形の角の数は、突出部30の数と等しく、保護管40の一方端部での、遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状である多角形の角の数は、突出部30の数の2倍であることが好ましい。保護管40の遠近方向の長さの中点P1での遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状である多角形の角の数が突出部30の数と等しく、かつ、保護管40の一方端部での遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状である多角形の角の数が突出部30の数の2倍であることにより、保護管40の遠近方向の長さの中点P1では保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間の隙間が小さく、かつ、保護管40の一方端部ではバルーン20の挿入口の大きさを十分に広くすることができる。そのため、保護管40へのバルーン20の挿通を容易としながら、バルーン20の空気漏れ試験時にバルーン20が保護管40内にて大きく膨らむことを防止することができる。
【0094】
図5は、他の実施の形態における保護管40の一方端部での、遠近方向に垂直な断面図を表す。図5に示すように、保護管40の一方端部での、遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状は、円形状または楕円形状であることも好ましい。保護管40の一方端部での遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状が円形状または楕円形状であることにより、バルーン20の挿入口となる保護管40の一方端部の内腔の断面形状の広さを大きく確保することができる。その結果、保護管40の内腔にバルーン20を挿入しやすくすることができる。
【0095】
保護管40の一方端部での遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状が円形状または楕円形状である場合、保護管40の遠近方向の長さの中点P1での遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状は、角の数が突出部30の数と等しい多角形であることが好ましい。保護管40の遠近方向の長さの中点P1での遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状が、突出部30の数と等しい数の角を有する多角形であり、かつ、保護管40の一方端部での遠近方向に垂直な保護管40の内腔の断面形状が円形状または楕円形状であることにより、保護管40の遠近方向の長さの中点P1では保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間に大きな隙間が生じにくく、また、保護管40の一方端部ではバルーン20の挿入口が広く、保護管40の内腔にバルーン20を挿入することが容易となる。
【0096】
図示していないが、保護管40は、保護管40の遠近方向の長さの中点P1と保護管40の一方端部との間に遷移部を有しており、遷移部は、遷移部での内腔の形状が、遠近方向を中心として螺旋状にねじれていることが好ましい。保護管40が保護管40の遠近方向の長さの中点P1と保護管40の一方端部との間に遷移部を有していることにより、保護管40の遠近方向の長さの中点P1および保護管40の一方端部のそれぞれでの保護管40の内腔の形状が異なっていても保護管40の内部の形状を滑らかに変形させることが可能となる。そのため、バルーン20を保護管40内に配置する際に保護管40の内表面とバルーン20の外表面とが干渉しにくく、保護管40の内腔にバルーン20を挿通しやすくすることができる。
【0097】
図6は、本発明のさらに他の実施の形態における保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面図を表す。図6に示すように、遠近方向に垂直な断面において、突出部30の数は、複数であり、突出部30の頂部31と該突出部30に隣接する突出部30の頂部31との間の中点P3と保護管40の重心P2とを結ぶ直線L1よりも一方側に羽根形状部21の起点22を有していることが好ましい。羽根形状部21の起点22が、突出部30の頂部31と該突出部30に隣接する突出部30の頂部31との間の中点P3と保護管40の重心P2とを結ぶ直線L1よりも一方側にあることにより、羽根形状部21の起点22が、一方の突出部30と一方の突出部30に隣接する他方の突出部30のうち一方の突出部30寄り、つまり、起点22が中点P3よりも一方側にあることとなる。そのため、中点P3よりも他方側の空間に羽根形状部21を折り畳んで収容することができるため、羽根形状部21の起点22から他方の突出部30までの空間に羽根形状部21を整然と収容しやすく、保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間に生じる隙間を小さくして、バルーン20の空気漏れ試験時に保護管40内にてバルーン20を膨らみにくくすることが可能となる。
【0098】
図6に示すように、遠近方向に垂直な断面において、一方側とは反対側の他方側に羽根形状部21の先端23を有していることが好ましい。つまり、遠近方向に垂直な断面において、突出部30の頂部31と該突出部30に隣接する突出部30の頂部31との間の中点P3と保護管40の重心P2とを結ぶ直線L1よりも一方側に羽根形状部21の起点22を有しており、他方側に羽根形状部21の先端23を有していることが好ましい。突出部30の頂部31と該突出部30に隣接する突出部30の頂部31との間の中点P3と保護管40の重心P2とを結ぶ直線L1よりも一方側に羽根形状部21の起点22を有しており、他方側に羽根形状部21の先端23を有していることにより、突出部30と該突出部30に隣接する突出部30との間の空間内にて、羽根形状部21の起点22と先端23との距離を離すことができる。そのため、バルーン20を保護管40内に収容しやすくすることができる。
【0099】
図7は、本発明の異なる実施の形態における保護管40の遠近方向の長さの中点P1での、遠近方向に垂直な断面図を表す。図7に示すように、遠近方向に垂直な断面において、隣接する2つの突出部30間の距離を3等分したうちの一方側の地点P5よりも一方側に羽根形状部21の起点22を有しており、他方側の地点P6よりも他方側に羽根形状部21の先端23を有していることがより好ましい。羽根形状部21の起点22が隣接する2つの突出部30間の距離を3等分したうちの一方側の地点P5よりも一方側にあり、羽根形状部21の先端23が隣接する2つの突出部30間の距離を3等分したうちの他方側の地点P6よりも他方側にあることにより、隣接する2つの突出部30の間の空間において、羽根形状部21の起点22がない側の空間に羽根形状部21を折り畳んで収容することができる。そのため、羽根形状部21の起点22から羽根形状部21の起点22と離れている方の突出部30までの空間の中に整った状態で羽根形状部21を収容することが可能となって、バルーン20の保護管40の内腔への収容を行いやすくすることができる。
【0100】
図3図6および図7に示すように、羽根形状部21は、バルーン20の周方向に巻回されて折り畳まれており、全ての羽根形状部21は、バルーン20の周方向において、一方の方向に折り畳まれていることが好ましい。つまり、全ての羽根形状部21が巻回されて折り畳まれている方向は、同じであることが好ましい。全ての羽根形状部21がバルーン20の周方向において一方の方向に折り畳まれていることにより、羽根形状部21を整然となるように折り畳むことができる。その結果、バルーン20を保護管40内に挿通しやすくなる。
【0101】
図3および図6に示すように、羽根形状部21に頂部31が接している突出部30があることが好ましい。また、全ての突出部30の頂部31は、羽根形状部21に接していることがより好ましい。羽根形状部21に頂部31が接している突出部30があることにより、保護管40の内表面と突出部30の頂部31とで羽根形状部21を押さえることができる。そのため、保護管40の内腔において、羽根形状部21が動くことやバルーン20の空気漏れ試験中にバルーン20の羽根形状部21が大きく膨らんでしまうことを防止できる。
【0102】
また、図7に示すように、保護管40の内表面に頂部31が接している突出部30があることも好ましい。また、全ての突出部30の頂部31は、保護管40の内表面に接していることがより好ましい。保護管40の内表面に頂部31が接している突出部30があることにより、保護管40の内腔にバルーン20を配置した際に保護管40の内表面とバルーン20の外表面との間に隙間が生じにくくなる。その結果、バルーン20の空気漏れ試験の際にバルーン20が保護管40内にて膨らみにくくすることができる。
【0103】
図示していないが、シャフト10のバルーン20が位置する部分には、X線不透過マーカーを配置してもよい。シャフト10のバルーン20が位置する部分にX線不透過マーカーが配置されていることにより、バルーン20の位置をX線透視下で確認することが可能となり、体内においてバルーン20がある位置を容易に確認することが可能である。
【0104】
X線不透過マーカーは、バルーン20の遠位端部および近位端部に位置する部分のシャフト10に設けられていることが好ましい。X線不透過マーカーがバルーン20の遠位端部および近位端部に位置する部分に設けられていることにより、バルーン20の遠位端部と近位端部の両方の位置をX線透視下にて確認することが可能となり、体内でのバルーン20の位置を把握することができる。
【0105】
X線不透過マーカーを構成する材料は、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金等のX線不透過物質を用いることができる。X線不透過物質は、中でも、白金であることが好ましい。X線不透過マーカーを構成する材料が白金であることにより、X線の造影性を高めることができ、バルーン20の位置を確認しやすくなる。
【0106】
X線不透過マーカーの形状は、円筒状、多角筒状、筒に切れ込みが入った断面C字状の形状、線材を巻回したコイル形状等が挙げられる。中でも、X線不透過マーカーの形状は、円筒状であることが好ましい。X線不透過マーカーの形状が円筒状であることにより、X線透視下にてX線不透過マーカーの視認性を高めることができ、体内におけるバルーン20の位置を迅速に確認することができる。
【0107】
以上のように、バルーンカテーテルは、遠近方向に延在しているシャフトと、シャフトの遠位側に設けられており、収縮状態で複数の羽根形状部を有しているバルーンと、バルーンの外側面に設けられている突出部と、バルーンが内腔に配置されている保護管と、を有しており、保護管の遠近方向の長さの中点での、遠近方向に垂直な断面において、保護管の重心から突出部の頂部を通る保護管の内表面までの距離は、該突出部と隣接する突出部との間での、保護管の重心から突出部を通らない保護管の内表面までの距離よりも長い。保護管の遠近方向の長さの中点での遠近方向に垂直な断面において、保護管の重心から突出部の頂部を通る保護管の内表面までの距離が該突出部と隣接する突出部との間での保護管の重心から突出部を通らない保護管の内表面までの距離よりも長いことにより、保護管の内腔にバルーンを収容した状態にて保護管とバルーンとの隙間を小さくしてバルーンの空気漏れ試験時にバルーンが保護管内にて膨らみにくく、かつ、保護管の内腔に突出部を有するバルーンを容易に収容することができる。
【0108】
本願は、2019年3月28日に出願された日本国特許出願第2019-063580号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年3月28日に出願された日本国特許出願第2019-063580号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0109】
1:バルーンカテーテル
2:ハブ
3:流体注入部
4:ガイドワイヤ挿入部
10:シャフト
11:内管
20:バルーン
21:羽根形状部
22:起点
23:先端
30:突出部
31:頂部
40:保護管
P1:保護管の遠近方向の長さの中点
P2:保護管の重心
P3:突出部の頂部と該突出部に隣接する突出部の頂部との間の中点
P5:隣接する2つの突出部間の距離を3等分したうちの一方側の地点
P6:隣接する2つの突出部間の距離を3等分したうちの他方側の地点
D1:保護管の重心から突出部の頂部を通る保護管の内表面までの距離
D2:保護管の重心から突出部を通らない保護管の内表面までの距離
L1:中点P3と保護管の重心P2とを結ぶ直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7